(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127659
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】車両制御システム及びそれを備える運搬車両
(51)【国際特許分類】
B60W 30/17 20200101AFI20240912BHJP
B60W 40/068 20120101ALI20240912BHJP
B60W 30/18 20120101ALI20240912BHJP
F02D 29/00 20060101ALI20240912BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240912BHJP
E01C 23/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B60W30/17
B60W40/068
B60W30/18
F02D29/00 B
F02D29/02 H
E01C23/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037000
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】宮下 友尭
【テーマコード(参考)】
2D053
3D241
3G093
【Fターム(参考)】
2D053AA33
2D053FA00
3D241BA41
3D241BA60
3D241BC01
3D241CA19
3D241CC02
3D241CC08
3D241CD03
3D241CD11
3D241CD12
3D241CD15
3D241CE02
3D241CE04
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DB01Z
3D241DB03Z
3D241DB05Z
3D241DB46Z
3D241DC49Z
3D241DC51Z
3G093AA10
3G093BA26
3G093DA06
3G093DB15
3G093DB18
3G093EA01
3G093FA11
(57)【要約】
【課題】運搬車両の作業効率の低下を抑えつつ、走行中に車体に作用する負荷を低減可能な車両制御システムを提供する。
【解決手段】車両制御システムは、走行路内の運搬車両の走行を制御する制御装置を備え、制御装置は、運搬車両の走行路内の位置を表す車体位置データと、走行路の路面の状態を表す路面状態データと、運搬車両の車体に作用している負荷を表す車体負荷データと、を取得し、路面状態データ、車体負荷データ及び車体位置データに基づき、走行路を走行する際における運搬車両の位置に対応する運搬車両の走行速度の基準となる基準速度を演算し、基準速度を運搬車両の走行速度の上限または目標として運搬車両の走行制御を行う。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路内の運搬車両の走行を制御する制御装置を備えた車両制御システムにおいて、
前記制御装置は、
前記運搬車両の前記走行路内の位置を表す車体位置データと、前記走行路の路面の状態を表す路面状態データと、前記運搬車両の車体に作用している負荷を表す車体負荷データと、を取得し、
前記路面状態データ、前記車体負荷データ及び前記車体位置データに基づき、前記走行路を走行する際における前記運搬車両の位置に対応する前記運搬車両の走行速度の基準となる基準速度を演算し、
前記基準速度を前記運搬車両の走行速度の上限または目標として前記運搬車両の走行制御を行う
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記車体負荷データは、前記運搬車両が前記走行路を走行するときに前記車体に発生する応力であり、
前記制御装置は、前記応力が大きいほど前記基準速度を小さくする
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御システムにおいて、
前記路面状態データは、前記走行路の路面の劣化度であり、
前記制御装置は、前記劣化度が大きいほど前記基準速度を小さくする
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記制御装置には、空荷走行状態の前記運搬車両の走行速度の制御に用いられる前記基準速度である空荷基準速度と、積荷走行状態の前記運搬車両の走行速度の制御に用いられる前記基準速度である積荷基準速度と、が前記路面状態データ及び前記車体負荷データに対応付けられた速度換算テーブルが記憶され、
前記制御装置は、前記運搬車両から、前記運搬車両に積載されている積載物の重量に関する情報を取得し、前記積載物の重量に基づいて前記空荷基準速度及び前記積荷基準速度から選択した速度を前記基準速度として前記運搬車両の走行制御を行う
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の車両制御システムにおいて、
前記速度換算テーブルには、前記基準速度と天候状況とが対応付けられて記録されており、
前記制御装置は、外部から前記走行路を含む作業現場の気象情報を取得し、前記速度換算テーブルを用いて前記走行路の天候状況に対応する前記基準速度を読み出して前記運搬車両の走行制御を行う
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項6】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記制御装置は、前記走行路を走行する複数の前記運搬車両の走行制御を行うように構成され、
前記制御装置には、前記走行路が複数の区間に区分されるように前記走行路を含む作業現場が複数の領域に区画された走行路マップと、前記複数の領域の各々に対する前記基準速度が記録された基準速度テーブルと、が記憶され、
前記制御装置は、
前記複数の前記運搬車両の各々から、前記路面状態データ、前記車体負荷データ及び前記車体位置データを収集し、
収集した前記路面状態データ、前記車体負荷データ及び前記車体位置データに基づき、前記走行路の前記複数の区間ごとに前記基準速度を読み出して前記複数の前記運搬車両の走行制御を行う
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の車両制御システムにおいて、
前記路面状態データは、前記走行路の路面の劣化度であり、
前記車体負荷データは、前記運搬車両が前記走行路を走行するときに前記車体に発生する応力であり、
前記制御装置は、前記運搬車両に設けられる車体コントローラと、前記運搬車両の外部に設けられるサーバと、を有し、
前記車体コントローラは、
前記車体の位置を検出する位置センサを含む複数のセンサからセンサ信号を取得し、
前記センサ信号に基づき、前記劣化度及び前記応力を演算し、演算した前記劣化度及び前記応力を前記車体の位置と対応付けて記憶し、
前記劣化度が劣化度閾値未満であり、かつ前記応力が応力閾値未満であるか否かを判定し、
前記劣化度が前記劣化度閾値未満であり、かつ前記応力が前記応力閾値未満であると判定された場合には、その判定に用いた前記劣化度及び前記応力を送信対象から除外し、
前記劣化度が前記劣化度閾値以上であると判定された場合には、その判定に用いた前記劣化度と、該劣化度に対応付けられた前記応力とを送信対象とし、
前記応力が前記応力閾値以上であると判定された場合には、その判定に用いた前記応力と、該応力に対応付けられた前記劣化度とを送信対象とし、
前記送信対象とされた前記劣化度及び前記応力を前記車体の位置とともに前記サーバに送信し、
前記サーバには、前記走行路が複数の区間に区分された走行路マップが記憶され、
前記サーバは、
複数の前記運搬車両から送信された前記劣化度、前記応力及び前記車体の位置を収集し、
収集した前記劣化度、前記応力及び前記車体の位置に基づき、前記複数の区間ごとに前記基準速度を演算し、
前記複数の区間ごとに演算された前記基準速度を前記運搬車両に送信し、
前記車体コントローラは、前記基準速度に基づいて、前記運搬車両の走行速度を制御する
ことを特徴とする車両制御システム。
【請求項8】
請求項1に記載の車両制御システムを備える運搬車両であって、
前記制御装置は、前記基準速度に基づいて、前記車体の走行速度を制御する
ことを特徴とする運搬車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム及びそれを備える運搬車両に関する。
【背景技術】
【0002】
走行路の路面が劣化して凹凸などが形成されると、荒れた走行路を走行するダンプトラック等の運搬車両の燃費の悪化、車体へのダメージなどの悪影響が出る。このため、走行路の路面の劣化を抑制する発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、走行路の路面の劣化を低減させる車両運用を実行可能とする路面管理システムが開示されている。路面管理システムは、走行路の路面劣化度の変化率が所定の閾値を超えた時間帯の情報を集計する。路面管理システムは、集計した情報に基づき、出現回数が所定回数よりも多い気象情報(例えば、雨)、センサ出力値(例えば、アクセル開度が所定値より大きくなる走行操作)等を劣化条件として記憶する。その後、路面管理システムは、稼働情報と劣化条件とを比較することによって、劣化条件を満たす可能性があるか否かを判定する。劣化条件を満たす可能性があると判定された場合には、車両において、アクセル開度を減少させる制御が行われる。あるいは、車両において、アクセル開度を減少させる走行操作の実行をオペレータに促すための通知が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、路面劣化度の変化率を監視することにより、走行路の更なる劣化を抑制するものである。このため、例えば、既に走行路に凹凸が形成されている場合には、その凹凸の上を運搬車両が通過する際に、車体に負荷が作用することになる。このため、特許文献1に記載の発明では、車両が荒地等を走行する際に車体に作用する負荷を低減するという観点では改善の余地がある。
【0006】
本発明は、運搬車両の作業効率の低下を抑えつつ、走行中に車体に作用する負荷を低減可能な車両制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による車両制御システムは、走行路内の運搬車両の走行を制御する制御装置を備え、前記制御装置は、前記運搬車両の前記走行路内の位置を表す車体位置データと、前記走行路の路面の状態を表す路面状態データと、前記運搬車両の車体に作用している負荷を表す車体負荷データと、を取得し、前記路面状態データ、前記車体負荷データ及び前記車体位置データに基づき、前記走行路を走行する際における前記運搬車両の位置に対応する前記運搬車両の走行速度の基準となる基準速度を演算し、前記基準速度を前記運搬車両の走行速度の上限または目標として前記運搬車両の走行制御を行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運搬車両の作業効率の低下を抑えつつ、走行中に車体に作用する負荷を低減可能な車両制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、作業現場で作業を行う運搬車両と、運搬車両の管理を行う管理センタとを示す図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る運搬車両の側面図である。
【
図4】
図4は、第1実施形態に係る車両制御システムの構成図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る車両制御システムの機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、稼働情報テーブルの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、車体コントローラにより実行される稼働情報の送信処理の流れの一例について示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、稼働情報データベースの一例を示す図である。
【
図9】
図9は、走行路マップの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態に係る車両制御システムの機能ブロック図である。
【
図15】
図15は、天候状況に応じた路面劣化度の時間変化の一例について示す図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態に係る速度換算テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態に係る車両制御システムについて説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、作業現場で作業を行う運搬車両と、運搬車両の管理を行う管理センタとを示す図である。
図1に示すように、鉱山などの作業現場には、土砂や鉱石等の積荷を運搬する少なくとも1台以上の運搬車両20A,20B,20C,20Dと、運搬車両20A,20B,20C,20Dを管理する管理センタ30と、が存在する。なお、運搬車両20A,20B,20C,20Dは、総称して運搬車両20とも記す。なお、管理センタ30は、作業現場から遠く離れた場所に設けられていてもよい。
【0012】
積込場11では、油圧ショベル40によって掘削された土砂等の掘削物が運搬車両20に積み込まれる。掘削物を積載した運搬車両20は、放土場12に向かって走行路10上を走行する。運搬車両20は、放土場12において土砂等の掘削物の放出(放土)を行う。放土を終えた運搬車両20は、積込場11に向かって走行路10上を走行する。
【0013】
本実施形態に係る運搬車両20は、運搬車両20に搭乗したオペレータによって運転される。管理センタ30と運搬車両20とは、無線通信回線を介して相互の情報の授受を行う。運搬車両20は、自車両の稼働情報を管理センタ30に送信する。稼働情報には、車体の走行速度(車速)、車体の位置、並びに、その位置で発生した応力、及び、その位置の路面劣化度等が含まれる。稼働情報の詳細については、後述する。管理センタ30は、複数の運搬車両20の各々から送信された稼働情報を収集し、複数の運搬車両20を管理する。
【0014】
図2は、本発明の第1実施形態に係る運搬車両20の側面図である。以下の説明において断り書きのない場合は運転席の前方(同図中においては左方向)を車体101の前方とする。運搬車両20は、車体101、キャブ103、ベッセル104、前輪(車体前側の車輪)105及び後輪(車体後側の車輪)106を備えたダンプトラックである。キャブ103は、車体フレーム102により支持され、車体101上における前側でかつ左側に位置している。キャブ103は、運搬車両20のオペレータが搭乗する運転室を形成する。キャブ103の内部には運転席、運搬車両20を加速させるアクセル操作装置147(
図4参照)、運搬車両20を制動するブレーキ操作装置148(
図4参照)、操舵用のハンドル、及び荷台用の操作装置等が設けられている。また、キャブ103の内部には、運搬車両20の各部を制御する車体コントローラ120が設けられている。
【0015】
ベッセル104は、油圧ショベル40により掘削された掘削物などの積荷を積載する荷台である。ベッセル104は車体101の後部に起伏可能に搭載されている。ベッセル104は、車体101の後部側に連結ピンを介して回動可能に支持され、ホイストシリンダ108の伸縮動作によって連結ピンを支点として上下動する。前輪105は車体101の前部の左右、後輪106は車体101の後部の左右でそれぞれ車体101を走行可能に支持している。前輪105は、運搬車両20のオペレータによって操舵される操舵輪を構成し、運搬車両20のオペレータが操舵用のハンドルを操作したときに、左右のステアリングシリンダ(不図示)の伸縮動作に伴って舵取り操作される。後輪106は、運搬車両20の駆動輪を構成し、走行駆動装置146(
図4参照)により回転駆動される。
【0016】
左右一対の前輪105と車体フレーム102との間には、それぞれ、サスペンション107FL,107FRが設けられている(
図2には、車体左側のサスペンションのみ示している)。左右一対の後輪106と車体フレーム102との間には、それぞれ、サスペンション107BL,107BRが設けられている(
図2には、車体左側のサスペンションのみを示している)。
【0017】
サスペンション107FL,107FR,107BL,107BRは、それぞれが油圧シリンダで構成されている。以下では、サスペンション107FL,107FR,107BL,107BRを総称してサスペンションシリンダ107とも記す。サスペンションシリンダ107は、走行路10の路面の凹凸を乗り越える際のタイヤ荷重の緩衝機能、オペレータの乗り心地向上のための制振機能、及び旋回時のロールを抑える機能を有している。
【0018】
図3は、車体フレーム102の斜視図である。
図3に示すように、車体フレーム102の複数の部位Pa1,Pa2,Pa3,Pa4,Pa5,Pa6,Pa7には、その部位での歪みを検出する歪センサ144が取り付けられる。
【0019】
図4は、本発明の第1実施形態に係る車両制御システム1の構成図である。
図4に示すように、車両制御システム1は、運搬車両20に設けられる車体コントローラ120と、管理センタ30に設けられるサーバ130と、を有している。車体コントローラ120には車体通信装置149が接続され、サーバ130にはサーバ通信装置169が接続されている。
【0020】
車体通信装置149は、車体101に取り付けられている。車体通信装置149は、通信回線NTと無線通信可能な無線通信装置であって、例えば2.1GHz帯等の帯域を感受帯域とする通信アンテナを含む通信インタフェースを有する。車体通信装置149は、通信回線NTを介して、サーバ130等と情報の授受を行う。
【0021】
サーバ通信装置169は、管理センタ30に設けられ、通信回線NTを介して、作業現場で作業を行っている複数の運搬車両20と情報の授受を行う。サーバ130には、入力装置161及び表示装置162が接続されている。入力装置161は、サーバ130に所定の情報を入力するための装置であり、例えば、キーボード、マウス等により構成される。表示装置162は、サーバ130からの制御信号に基づいて所定の情報を出力する出力装置である。表示装置162は、例えば、液晶ディスプレイ装置であり、作業現場で作業を行っている複数の運搬車両20の稼働情報を表示画面に表示させる。
【0022】
車体コントローラ120は、走行駆動装置146を介して、運搬車両20の走行を直接的に制御する。また、サーバ130は、後述するように、走行路10を走行する際における運搬車両20の位置に対応する運搬車両20の走行速度の基準となる基準速度を演算し、車体コントローラ120に送信する。つまり、サーバ130は、走行路10を走行する複数の運搬車両20の走行を間接的に制御する。
【0023】
車体コントローラ120は、処理装置121、不揮発性メモリ122、揮発性メモリ123、入力インタフェース124、出力インタフェース125、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。サーバ130は、処理装置131、不揮発性メモリ132、揮発性メモリ133、入力インタフェース134、出力インタフェース135、及び、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。これらのハードウェアは、協働してソフトウェアを動作させ、複数の機能を実現する。
【0024】
不揮発性メモリ122,132は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体である。不揮発性メモリ122,132は、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ等である。不揮発性メモリ122,132には、各種演算を実行可能なプログラム、各種演算に用いられる閾値、及び、データベース等が格納されている。すなわち、不揮発性メモリ122,132は、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶装置である。
【0025】
処理装置121,131は、不揮発性メモリ122,132に記憶されたプログラムを所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ123,133に展開して演算実行する装置である。処理装置121,131は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)等である。処理装置121,131は、プログラムに従って入力インタフェース124,134、不揮発性メモリ122,132及び揮発性メモリ123,133から取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0026】
入力インタフェース124,134は、入力された信号を処理装置121,131で演算可能なデータに変換する。出力インタフェース125,135は、処理装置121,131での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を制御対象となる装置に出力する。
【0027】
車体コントローラ120の入力インタフェース124には、圧力センサ141、位置センサ142、速度センサ143、及び歪センサ144が接続され、各センサ141,142,143,144からのセンサ信号が入力される。なお、上述したように、圧力センサ141は、4つのサスペンションシリンダ107ごとに設けられるが、
図4では1つを代表して示している。また、歪センサ144は、車体101の複数の部位Pa1,Pa2,Pa3,Pa4,Pa5,Pa6,Pa7(
図3参照)に設けられるが、
図4では1つを代表して示している。
【0028】
圧力センサ141は、サスペンションシリンダ107の圧力を検出し、検出結果を表すセンサ信号を車体コントローラ120に出力する。位置センサ142は、車体101の位置及び方位を検出し、検出結果を表すセンサ信号を車体コントローラ120に出力する。
【0029】
位置センサ142は、例えば、複数のGNSS(Global Navigation Satellite System:全地球衛星測位システム)用のアンテナ(以下、GNSSアンテナと記す)と、GNSSアンテナで受信された複数の測位衛星からの衛星信号(GNSS電波)に基づいて、3次元空間の実座標で表される車体101の位置、及び基準方位からの角度である方位角を演算する測位演算装置と、を有する。車体の位置は、例えば、地理座標系(グローバル座標系)における車体の基準点(例えば、車体の中心点)の位置座標(緯度、経度)で表される。なお、車体の位置を検出するセンサと、車体の方位を検出するセンサとが個別に設けられていてもよい。
【0030】
速度センサ143は、車体の走行速度(車速)Vを検出し、検出結果を表すセンサ信号を車体コントローラ120に出力する。速度センサ143は、例えば、走行速度と相関性のある車輪の回転速度を検出する車輪速センサである。なお、速度センサ143は、位置センサ142により演算された車体101の位置の時間変化から速度を演算する装置であってもよい。
【0031】
歪センサ144は、車体フレーム102の複数の部位Pa1,Pa2,Pa3,Pa4,Pa5,Pa6,Pa7に設置され(
図3参照)、設置部位の歪みを検出し、検出結果を表すセンサ信号を車体コントローラ120に出力する。
【0032】
車体コントローラ120の出力インタフェース125には、報知装置145が接続されている。報知装置145は、車体101の稼働情報(各センサの検出結果等)及び警告情報をオペレータに知らせるための出力装置である。報知装置145には、例えば、液晶ディスプレイ装置などの表示装置やスピーカ等の音出力装置が採用される。
【0033】
図5は、車両制御システム1の機能ブロック図である。車体コントローラ120は、位置取得部151、劣化度演算部152、応力演算部153、積載量演算部154、車速演算部155、車体通信制御部156、及び走行制御部157を有する。また、車体コントローラ120には、稼働情報テーブルT1及び地図情報M0が記憶されている。
【0034】
位置取得部151は、位置センサ142により演算された車体位置データを取得する。車体位置データは、運搬車両20の走行路10内の位置を表すデータである。本実施形態に係る車体位置データは、車体101の位置の座標及び方位角を表すデータを含む。車速演算部155は、速度センサ143の検出結果に基づいて、車速Vを演算する。
【0035】
劣化度演算部152は、走行路10の路面の劣化度(以下、路面劣化度とも記す)Dを演算する。路面劣化度Dは、運搬車両20が走行する走行路10の路面の状態を表す路面状態データの一つである。路面劣化度Dは、例えば、予め整地されて凹凸のない路面を基準とした、路面の劣化(荒さ)の度合いを表す指標であり、轍など路面の凹凸が大きいほど大きくなる。つまり、路面劣化度Dは、路面の凹凸の大きさ(高さ)と一定の関係がある。路面劣化度Dが大きい場所は、路面が荒れている場所である。また、例えば、土質が粘土質である場所、車両の往来が多い場所、整地車両による整地作業(路面のメンテナンス作業)が行われていない場所、及び、雨が降って濡れた路面を車両が走行した場所では、路面劣化度Dが大きくなりやすい。路面劣化度Dが大きい場所を運搬車両20が走行する場合に車体101に加わる負荷は、路面劣化度Dが小さい場所を運搬車両20が走行する場合に比べて大きくなる傾向にある。また、路面劣化度Dが大きい場所での運搬車両20の燃料消費量は、路面劣化度Dが小さい場所での運搬車両20の燃料消費量に比べて大きくなる傾向にある。
【0036】
劣化度演算部152は、例えば、圧力センサ141によって検出されたサスペンション107FL,107FR,107BL,107BRの圧力の値のうち、いずれか1つの値が所定範囲外にあり、かつ、残りの3つの値が上記所定範囲内にある場合に、そのときの車体101の位置の路面は劣化状態であると判定する。また、劣化度演算部152は、例えば、上記所定範囲外にある圧力の値と上記所定範囲との差が大きいほど、大きな路面劣化度Dを演算する。
【0037】
なお、劣化度演算部152による路面劣化度Dの演算方法は、これに限定されない。劣化度演算部152は、圧力センサ141の検出結果に基づいて路面劣化度Dを演算することに代えて、例えば、アクセル開度やブレーキ開度の時間変化などに基づいて路面劣化度Dを演算してもよい。また、路面劣化度Dは、4本のサスペンションシリンダ107の圧力の所定時間幅での変化量のうち最大のものを上記所定時間幅での車速の平均値で除算した値として定義してもよい。
【0038】
応力演算部153は、複数の歪センサ144の検出結果に基づいて、車体101に作用している応力σを演算する。凹凸の大きい場所を運搬車両20が走行する場合、凹凸の小さい場所を運搬車両20が走行する場合に比べて、車体101に大きな負荷が作用する。路面から車体101に作用する負荷が大きいほど、車体101の各部位で発生する応力σが大きくなる。つまり、運搬車両20が走行路10内を走行するときに車体101に発生する応力σは、運搬車両20が走行路10内を走行するときに車体101に作用する負荷を表す車体負荷データの一つである。
【0039】
なお、応力演算部153の応力演算方法は、歪センサ144の検出結果を用いる方法に限定されない。例えば、応力演算部153は、圧力センサ141、速度センサ143、及び加速度センサ(不図示)などのセンサにより検出された稼働情報と、予め定められた応力演算式とに基づいて応力σを演算してもよい。応力演算式は、例えば、重回帰式や機械学習を使った回帰式等を用いて、運搬車両20を構成する部品の各々の部位について予め求め、車体コントローラ120に記憶される。また、実機測定を行わずともロジック構築できるというメリットから有限要素法に基づく応力解析を用いて、応力演算式を定めておいてもよい。
【0040】
積載量演算部154は、圧力センサ141の検出結果に基づいて、ベッセル104に積載された積載物の重量である積載量(ペイロード)Wを演算する。つまり、積載量演算部154は、圧力センサ141から運搬車両20に積載されている積載物の重量に関する情報であるサスペンションの圧力を取得し、取得したサスペンションの圧力に基づいて積載量Wを演算する。
【0041】
劣化度演算部152は、演算された路面劣化度Dと、演算に用いた圧力センサ141のセンサ信号の取得時刻とを対応付けて、稼働情報テーブルT1に記憶する。応力演算部153は、演算された応力σと、その応力の発生部位Paと、演算に用いた歪センサ144のセンサ信号の取得時刻とを対応付けて、稼働情報テーブルT1に記憶する。積載量演算部154は、演算された積載量Wと、演算に用いた圧力センサ141のセンサ信号の取得時刻とを対応付けて、稼働情報テーブルT1に記憶する。稼働情報テーブルT1には、運搬車両20を識別するための車両ID(識別情報)が記憶されている。
【0042】
図6は、稼働情報テーブルT1の一例を示す図である。稼働情報テーブルT1には、運搬車両20の稼働情報の時系列データが記憶されている。
図6に示すように、稼働情報テーブルT1には、車体コントローラ120が車体101に設けられたセンサからセンサ信号を取得した時刻t、センサ信号を取得したときの走行路10における車体101の位置を表す車体位置データ(以下、稼働情報取得位置とも記す)P、車速V、並びに、路面劣化度D、応力σ、応力σの発生部位Pa及び積載量Wが対応付けられて記憶される。なお、
図6では、部位Pa1で発生した応力σのみ図示しているが、実際には、複数の部位のそれぞれにおいて発生した応力σが記憶されている。
【0043】
図5に示す車体通信制御部156は、車体通信装置149を介して、稼働情報テーブルT1に記憶された稼働情報をサーバ130に送信する。本実施形態に係る車体通信制御部156は、稼働情報テーブルT1に記憶された稼働情報のうち、予め定められた送信条件を満たす情報のみサーバ130に送信する。
【0044】
送信条件は、以下の(条件1)及び(条件2)の少なくとも一方が満たされた場合に成立し、(条件1)及び(条件2)のいずれもが満たされていない場合には成立しない。
(条件1)路面劣化度Dが第1劣化度閾値D1以上である。
(条件2)応力σが第1応力閾値σ1以上である。
【0045】
図7は、車体コントローラ120により実行される稼働情報の送信処理の流れの一例について示すフローチャートである。
図7のフローチャートに示す処理は、イグニッションスイッチ(不図示)のオンにより開始され、所定の制御周期で繰り返し実行される。
【0046】
図7に示すように、ステップS110において、車体コントローラ120は、センサ141,142,143,144の検出結果を取得し、処理をステップS121,S123,S125,S127に進める。ステップS121,S123,S125,S127は並列処理として実行される。
【0047】
ステップS121において、車体コントローラ120は、ステップS110で取得した圧力センサ141の検出結果に基づいて路面劣化度Dを演算する。ステップS123において、車体コントローラ120は、ステップS110で取得した歪センサ144の検出結果に基づいて応力σを演算する。ステップS125において、車体コントローラ120は、ステップS110で取得した位置センサ142の検出結果に基づいて稼働情報取得位置Pを演算する。ステップS127において、車体コントローラ120は、ステップS110で取得した圧力センサ141の検出結果に基づいて積載量Wを演算する。
【0048】
なお、
図7では、車体コントローラ120がステップS121,S123,S125,S127の処理を並列に実行する例について説明した。しかしながら、車体コントローラ120は、ステップS121,S123,S125,S127の処理を直列に実行してもよい。ステップS121,S123,S125,S127の処理が完了すると、処理がステップS130に進む。
【0049】
ステップS130において、車体コントローラ120は、ステップS121で演算された路面劣化度Dが第1劣化度閾値D1以上であるか否かを判定する。ステップS130において、路面劣化度Dが第1劣化度閾値D1以上であると判定されると、処理がステップS135に進む。ステップS130において、路面劣化度Dが第1劣化度閾値D1未満であると判定されると、処理がステップS140に進む。
【0050】
ステップS135において、車体コントローラ120は、本制御周期で演算対象となった稼働情報(路面劣化度D、応力σ、稼働情報取得位置P、及び積載量W)を送信対象として決定する。さらに、車体コントローラ120は、それらの稼働情報を、稼働情報の取得時刻とともに稼働情報テーブルT1に記憶する。
【0051】
ステップS140において、車体コントローラ120は、ステップS123で演算された応力σが第1応力閾値σ1以上であるか否かを判定する。ステップS130において、応力σが第1応力閾値σ1以上であると判定されると、処理がステップS135に進む。ステップS140において、応力σが第1応力閾値σ1未満であると判定されると、処理がステップS145に進む。
【0052】
ステップS145において、車体コントローラ120は、本制御周期で演算対象となった稼働情報(路面劣化度D、応力σ、稼働情報取得位置P、及び積載量W)を非送信対象として決定する。さらに、車体コントローラ120は、それらの稼働情報を、稼働情報の取得時刻とともに稼働情報テーブルT1に記憶する。
【0053】
ステップS135またはステップS145の処理が完了すると、処理がステップS150に進む。ステップS150において、車体コントローラ120は、稼働情報テーブルT1に記憶されている稼働情報のうち送信対象となった稼働情報を、稼働情報の取得時刻(センサ信号の取得時刻)tとともに送信し、本制御周期における
図7のフローチャートに示す処理を終了する。なお、車体コントローラ120は、送信対象となった稼働情報をリアルタイムで送信してもよいし、ある程度、送信対象となった稼働情報が蓄積されてから送信してもよい。
【0054】
このように、本実施形態では、路面劣化度Dが第1劣化度閾値D1未満であり、かつ、応力σが第1応力閾値σ1未満である場合には、その路面劣化度D及び応力σが送信対象から除外される。これにより、演算された全ての路面劣化度D及び応力σが送信される場合に比べて、車体コントローラ120からサーバ130に送信されるデータの量が小さくなる。なお、送信対象から除外するかどうかの閾値(D1,σ1)は、オペレータがキャブ103内に設けられる入力装置(不図示)を操作することにより、変更することができる。これにより、車体コントローラ120からサーバ130に送信されるデータの量を調整することができる。また、閾値(D1,σ1)を0(ゼロ)に設定することにより、演算された全ての路面劣化度D及び応力σを送信対象とすることができる。
【0055】
図5に示すように、サーバ130は、最大値演算部172、基準速度演算部173、及びサーバ通信制御部175を有する。また、サーバ130には、稼働情報データベースDB1、走行路マップM1、最大値テーブルT2、速度換算テーブルT3、及び基準速度テーブルT4が記憶されている。
【0056】
サーバ通信制御部175は、サーバ通信装置169を介して車体コントローラ120から送信された稼働情報(路面劣化度D、応力σ、稼働情報取得位置P、センサ信号の取得時刻t等)を取得し、取得した稼働情報を稼働情報データベースDB1に記憶する。なお、本実施形態に係るサーバ通信制御部175は、複数の運搬車両20から送信された稼働情報を収集する。
図8は、稼働情報データベースDB1の一例を示す図である。稼働情報データベースDB1には、車両IDで識別される複数の運搬車両20から取得した稼働情報の時系列データが記憶されている。
図8に示すように、稼働情報データベースDB1には、車両ID1,ID2,ID3の運搬車両20の稼働情報が記憶されている。
【0057】
走行路10の路面の状況は、走行する運搬車両20のタイヤからの負荷、天候、整地車両による整地作業などの影響を受けて変化する。このため、稼働情報データベースDB1に、古いデータを保持しておく必要性は低い。サーバ通信制御部175は、センサ信号の取得時刻tから一定期間を経過した稼働情報については消去し、現時点から所定期間前までの稼働情報のみを保持する。なお、稼働情報の消去の方法はこれに限定されない。整地車両により作業現場の整地作業が完了した後に、管理者が入力装置161を操作することにより、過去の稼働情報を消去してもよい。
【0058】
図9は、走行路マップM1の一例を示す図である。
図9に示すように、走行路マップM1には、作業現場の地図情報を複数の矩形状の領域Aに区分した情報であり、領域Aの四隅の位置座標と、領域Aを特定するための領域記号とが対応付けられて記憶されている。
図9では、各領域Aの横幅(x軸方向の長さ)及び縦幅(y軸方向の長さ)が同じである例について示しているが、領域Aごとに横幅及び縦幅が異なっていてもよい。領域記号は、少なくとも走行路10を含む領域Aに付される。このように、走行路マップM1は、走行路10が複数の区間に区分されるように、走行路10を含む作業現場が複数の領域Aに区画されたマップである。例えば、走行路マップM1には、位置座標(x1,y1),(x1,y2),(x2,y1),(x2,y2)と、領域記号「A1」とが対応付けられて記憶されている。
【0059】
図5に示す最大値演算部172は、走行路マップM1を参照し、稼働情報データベースDB1に記憶されている稼働情報取得位置Pに基づき、路面劣化度Dを領域Aごとに収集する。最大値演算部172は、各領域Aの路面劣化度の最大値Dmaxを演算する。また、最大値演算部172は、走行路マップM1を参照し、稼働情報データベースDB1に記憶されている稼働情報取得位置Pに基づき、応力σを領域Aごとに収集する。最大値演算部172は、各領域Aの応力σの最大値σmaxを演算する。最大値演算部172は、演算した路面劣化度の最大値Dmaxと、演算した応力σの最大値σmaxと、それらの演算対象となった領域Aの領域記号とを対応付けたデータテーブル(以下、最大値テーブルと記す)T2を生成する。
【0060】
図10は、最大値テーブルT2の一例を示す図である。
図10に示すように、最大値テーブルT2には、領域Aを特定する領域記号と、領域Aごとに演算した路面劣化度の最大値Dmax及び応力の最大値σmaxとが対応付けられて記憶されている。
【0061】
図5に示す基準速度演算部173は、最大値テーブルT2及び速度換算テーブルT3に基づいて、走行路10における空荷基準速度VE及び積荷基準速度VLを演算する。空荷基準速度VEは、空荷走行状態の運搬車両20の走行速度の制御に用いられる基準速度である。積荷基準速度VLは、積荷走行状態の運搬車両20の走行速度の制御に用いられる基準速度である。
【0062】
図11は、速度換算テーブルT3の一例を示す図である。
図11に示すように、速度換算テーブルT3は、応力の最大値σmax及び路面劣化度の最大値Dmaxに応じた基準速度VE,VLを定めたデータテーブルである。つまり、速度換算テーブルT3は、空荷基準速度VEと、積荷基準速度VLと、が路面状態データ(Dmax)及び車体負荷データ(σmax)に対応付けられたデータテーブルである。速度換算テーブルT3は、実験等により予め定められている。なお、速度換算テーブルT3は、入力装置161を操作することにより、適宜変更することができる。
【0063】
速度換算テーブルT3は、応力の最大値σmaxが第1応力閾値σ1未満であり、かつ、路面劣化度の最大値Dmaxが第1劣化度閾値D1以上第2劣化度閾値D2未満である場合の空荷基準速度VE1及び積荷基準速度VL1を定めている。速度換算テーブルT3は、応力の最大値σmaxが第1応力閾値σ1未満であり、かつ、路面劣化度の最大値Dmaxが第2劣化度閾値D2以上である場合の空荷基準速度VE2及び積荷基準速度VL2を定めている。
【0064】
速度換算テーブルT3は、応力の最大値σmaxが第1応力閾値σ1以上第2応力閾値σ2未満であり、かつ、路面劣化度の最大値Dmaxが第1劣化度閾値D1未満である場合の空荷基準速度VE1及び積荷基準速度VL1を定めている。速度換算テーブルT3は、応力の最大値σmaxが第1応力閾値σ1以上第2応力閾値σ2未満であり、かつ、路面劣化度の最大値Dmaxが第1劣化度閾値D1以上第2劣化度閾値D2未満である場合の空荷基準速度VE2及び積荷基準速度VL2を定めている。速度換算テーブルT3は、応力の最大値σmaxが第1応力閾値σ1以上第2応力閾値σ2未満であり、かつ、路面劣化度の最大値Dmaxが第2劣化度閾値D2以上である場合の空荷基準速度VE3及び積荷基準速度VL3を定めている。
【0065】
速度換算テーブルT3は、応力の最大値σmaxが第2応力閾値σ2以上であり、かつ、路面劣化度の最大値Dmaxが第1劣化度閾値D1未満である場合の空荷基準速度VE2及び積荷基準速度VL2を定めている。速度換算テーブルT3は、応力の最大値σmaxが第2応力閾値σ2以上であり、かつ、路面劣化度の最大値Dmaxが第1劣化度閾値D1以上第2劣化度閾値D2未満である場合の空荷基準速度VE3及び積荷基準速度VL3を定めている。速度換算テーブルT3は、応力の最大値σmaxが第2応力閾値σ2以上であり、かつ、路面劣化度の最大値Dmaxが第2劣化度閾値D2以上である場合の空荷基準速度VE4及び積荷基準速度VL4を定めている。
【0066】
第2劣化度閾値D2は第1劣化度閾値D1よりも大きく(D2>D1)、第2応力閾値σ2は第1応力閾値σ1よりも大きい(σ2>σ1)。また、空荷基準速度VE1,VE2,VE3,VE4の大小関係はVE1>VE2>VE3>VE4であり、積荷基準速度VL1,VL2,VL3,VL4の大小関係はVL1>VL2>VL3>VL4である。つまり、基準速度VE,VLは、路面の状態が悪いほど(路面劣化度の最大値Dmaxが大きいほど)、小さくなる。また、基準速度VE,VLは、車体101に作用する負荷が大きいほど(応力の最大値σmaxが大きいほど)、小さくなる。
【0067】
また、空荷基準速度VE1,VE2,VE3,VE4と積荷基準速度VL1,VL2,VL3,VL4との大小関係は、VE1>VL1,VE2>VL2,VE3>VL3,VE4>VL4である。したがって、同じ応力の条件かつ同じ路面劣化度の条件では、積荷基準速度VLの方が、空荷基準速度VEよりも小さくなる。換言すれば、走行路10の所定の位置における積荷基準速度VLは、上記所定の位置における空荷基準速度VEよりも小さくなる。
【0068】
図5に示す基準速度演算部173は、速度換算テーブルT3を参照し、最大値テーブルT2に記憶されている各領域Aにおける路面劣化度の最大値Dmax及び応力の最大値σmaxに基づいて、各領域Aの基準速度VE,VLを演算する。換言すれば、基準速度演算部173は、複数の領域Aごとに、その領域Aでの路面劣化度の最大値Dmax及び応力の最大値σmaxに対応する基準速度VE,VLを速度換算テーブルT3から読み出す。基準速度演算部173は、演算した空荷走行用の基準速度VEと、演算した積荷走行用の基準速度VLと、それらの演算対象となった領域Aの領域記号とを対応付けたデータテーブルである基準速度テーブルT4を生成する。このように、基準速度演算部173は、複数の運搬車両20の各々から収集した路面状態データ、車体負荷データ及び車体位置データに基づき、複数の領域Aごと(すなわち走行路10の複数の区間ごと)に基準速度VE,VLを演算する。
【0069】
なお、基準速度演算部173は、最大値テーブルT2において路面劣化度の最大値Dmax及び応力の最大値σmaxが記憶されていない領域A、あるいは、路面劣化度の最大値Dmaxが第1劣化度閾値D1未満かつ応力の最大値σmaxが第1応力閾値σ1未満の領域Aの基準速度VE,VLには、最高速度VEx,VLxを設定する。空荷基準速度VEの最高速度VExは、空荷基準速度VE1よりも大きい。積荷基準速度VLの最高速度VLxは、積荷基準速度VL1よりも大きい。空荷基準速度VEの最高速度VExは、積荷基準速度VLの最高速度VLxよりも大きい。
【0070】
図12は、基準速度テーブルT4の一例を示す図である。
図12に示すように、基準速度テーブルT4には、領域Aを特定する領域記号と、領域Aごとに演算した基準速度VE,VLとが対応付けられて記憶されている。このように、基準速度テーブルT4は、複数の領域Aの各々に対する基準速度が記録されたデータテーブルである。
【0071】
図5に示すサーバ通信制御部175は、サーバ通信装置169を介して基準速度テーブルT4を運搬車両20に送信する。
【0072】
車体通信制御部156は、車体通信装置149を介して取得した基準速度テーブルT4に基づき、地図情報M0を更新する。地図情報M0には、走行路マップM1と同様の情報と、位置取得部151により取得された現在の車体101の位置の情報と、基準速度VE,VLの情報とが含まれる。
【0073】
走行制御部157は、アクセル操作装置147のアクセルペダルセンサにより検出されたアクセル操作量、ブレーキ操作装置148のブレーキペダルセンサにより検出されたブレーキ操作量、地図情報M0に記憶されている現在の車体101の位置での基準速度VE,VL、及び車速演算部155で演算された車速Vに基づいて、走行駆動装置146を制御する。
【0074】
走行駆動装置146は、エンジンと、エンジンによって駆動される発電機と、後輪106を駆動する走行モータと、発電機によって発電された電力を制御して走行モータに供給する電力制御装置と、前輪105及び後輪106に制動力を付与するブレーキ装置と、を有している。走行モータは、車体101を加速させるための電動モータである。走行モータへの供給電力は、電力制御装置によって制御され、走行モータの回転速度が制御される。
【0075】
図13は、作業中の運搬車両20の状態遷移図である。
図13に示すように、運搬車両20の状態は、積込状態S1、積荷走行状態S2、放土状態S3、及び空荷走行状態S4の順に遷移し、再び、積込状態S1に戻る。積込状態S1では、積込場11において、油圧ショベル40により掘削された掘削物50が運搬車両20のベッセル104に積み込まれる。積荷走行状態S2は、運搬車両20が掘削物(積荷)50を放土場12まで運搬する走行状態である。放土状態S3では、放土場12においてベッセル104がダンプ動作され、掘削物(積荷)50が放出される。空荷走行状態S4は、掘削物(積荷)50の放出が完了した後、運搬車両20が積込場11まで走行する走行状態である。
【0076】
図5に示す走行制御部157は、車速演算部155で演算された現在の車速(実車速)Vに基づいて、車体101が走行しているか、停止しているかを判定する。走行制御部157は、車速Vが速度閾値(例えば、0)よりも大きい場合には、車体101は走行していると判定し、車速Vが速度閾値以下である場合には、車体101は停止していると判定する。
【0077】
車体101が走行していると判定された場合、走行制御部157は、積載量演算部154で演算された現在の積載量Wに基づき、車体101が空荷走行状態であるか、積荷走行状態であるかを判定する。走行制御部157は、積載量Wが積載量閾値W1未満である場合には、空荷走行状態であると判定する。走行制御部157は、積載量Wが積載量閾値W1以上である場合には、積荷走行状態であると判定する。
【0078】
走行制御部157は、地図情報M0を参照し、位置取得部151で取得した車体101の現在の位置に対応する領域Aの基準速度VE,VLを読み出す。走行制御部157は、空荷走行状態である場合には、空荷基準速度VEを上限速度Vlimとして設定する(Vlim=VE)。走行制御部157は、積荷走行状態である場合には、積荷基準速度VLを上限速度Vlimとして設定する(Vlim=VL)。
【0079】
走行制御部157は、車速演算部155で演算された現在の車速(実車速)Vが上限速度Vlim以下である場合には、アクセル操作装置147及びブレーキ操作装置148からの操作信号に基づいて、走行駆動装置146を制御する。走行制御部157は、車速演算部155で演算された現在の車速(実車速)Vが上限速度Vlimを超えている場合には、走行駆動装置146のブレーキ装置を制御して、車速Vが上限速度Vlim以下となるように、車体101を減速させる。
【0080】
つまり、走行制御部157は、運搬車両20の速度Vが、上限速度Vlimを超えないように、車速Vの制限制御を実行する。一方、走行制御部157は、実車速Vが上限速度Vlim以下である場合には、車速Vの制限制御を実行しない。
【0081】
以上のとおり、本実施形態に係る車両制御システム1の制御装置は、運搬車両20に設けられる車体コントローラ120と、運搬車両20の外部に設けられるサーバ130と、を有している。車体コントローラ120は、車体101に設けられる複数のセンサ(141,142,143,144)からセンサ信号を取得する。車体コントローラ120は、センサ信号に基づき、路面劣化度D及び応力σを演算し、演算した路面劣化度D及び応力σを車体101の位置と対応付けて稼働情報テーブルT1に記憶する。車体コントローラ120は、路面劣化度Dが第1劣化度閾値(劣化度閾値)D1未満であり、かつ応力σが第1応力閾値(応力閾値)σ1未満であるか否かを判定する(
図7のS130,S140)。
【0082】
車体コントローラ120は、路面劣化度Dが第1劣化度閾値D1未満であり、かつ応力σが第1応力閾値σ1未満であると判定された場合には、その判定に用いた路面劣化度D及び応力σを送信対象から除外する(
図7のS130でNo,S140でNo,S145)。車体コントローラ120は、路面劣化度Dが第1劣化度閾値D1以上であると判定された場合には、その判定に用いた路面劣化度Dと、その路面劣化度Dに対応付けられた応力σとを送信対象とする(
図7のS130でYes,S135)。車体コントローラ120は、応力σが第1応力閾値σ1以上であると判定された場合には、その判定に用いた応力σと、その応力σに対応付けられた路面劣化度Dとを送信対象とする(
図7のS140でYes,S135)。車体コントローラ120は、送信対象とされた路面劣化度D及び応力σを車体101の位置とともにサーバ130に送信する(
図7のS150)。
【0083】
サーバ130は、複数の運搬車両20から送信された路面劣化度D、応力σ及び車体の位置(稼働情報取得位置P)を収集する。サーバ130は、収集した路面劣化度D、応力σ及び車体101の位置(稼働情報取得位置P)に基づき、走行路10における複数の区間(領域A)ごとに基準速度VE,VLを演算する。サーバ130は、複数の区間(領域A)ごとに演算された基準速度VE,VLを複数の運搬車両20に送信する。運搬車両20の車体コントローラ120は、サーバ130から受信した基準速度VE,VLに基づいて、運搬車両(自車両)20の走行速度を制御する。
【0084】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0085】
(1)車両制御システム1は、走行路10内の運搬車両20の走行を制御する制御装置(サーバ130及び車体コントローラ120)を備える。サーバ130は、運搬車両20の走行路10内の位置を表す車体位置データと、走行路10の路面の状態を表す路面状態データと、運搬車両20の車体101に作用している負荷を表す車体負荷データと、を取得する。サーバ130は、路面状態データ、車体負荷データ及び車体位置データに基づき、走行路10を走行する際における運搬車両20の位置に対応する運搬車両20の走行速度の基準となる基準速度VE,VLを演算する。サーバ130及び車体コントローラ120は、基準速度VE,VLを運搬車両20の走行速度の上限として運搬車両20の走行制御を行う。
【0086】
この構成では、路面の状態が悪いほど基準速度VE,VLを小さくすることで、路面の状態が悪い場所において、運搬車両20の走行速度を低減することができる。荒れた路面を高速で走行することが防止されるため、車体101に大きな負荷が作用することを防止できる。また、路面の状態がさらに悪化することを防止できる。また、車体101に作用する負荷が大きいほど基準速度VE,VLを小さくすることで、路面状態が良好であっても車体101に作用する負荷が大きくなりやすい場所において、運搬車両20の走行速度を低減することができる。なお、路面状態が良好であっても車体101に作用する負荷が大きくなりやすい場所とは、例えば、急ブレーキや急旋回が行われやすい場所である。具体的な一例としては、積込場11から放土場12に向かう走行路10において、下り坂の最下部に交差点がある場合、積荷走行状態の運搬車両20が交差点の手前で一時停止する際に、車体101に大きな負荷が作用しやすい。
【0087】
本実施形態によれば、路面の状態が悪い場所、及び路面の状態が良好であっても車体101に作用する負荷が大きくなりやすい場所のそれぞれにおいて、運搬車両20の走行速度を低減することにより、車体101に作用する負荷を効果的に低減することができる。その結果、車体101の早期損傷が防止される。
【0088】
一方、路面の状態が良好であり、かつ車体101に作用する負荷が大きくなりにくい場所では、運搬車両20の走行速度を高めることができる。つまり、本実施形態によれば、運搬車両20の作業効率の低下を抑えつつ、走行中に車体101に作用する負荷を低減可能な車両制御システム1を提供することができる。
【0089】
(2)本実施形態に係る車体負荷データは、運搬車両20が走行路10を走行するときに車体101に発生する応力σである。サーバ130は、応力σが大きいほど基準速度VE,VLを小さくする。この構成によれば、大きな応力σが発生しやすい場所での高速走行が防止される。これにより、車体101の早期損傷が防止される。
【0090】
(3)本実施形態に係る路面状態データは、走行路10の路面劣化度Dである。サーバ130は、路面劣化度Dが大きいほど基準速度VE,VLを小さくする。この構成によれば、路面劣化度Dが大きい場所での高速走行が防止される。これにより、車体101の早期損傷が防止される。
【0091】
(4)サーバ130には、空荷走行状態の運搬車両20の走行速度の制御に用いられる基準速度である空荷基準速度VEと、積荷走行状態の運搬車両20の走行速度の制御に用いられる基準速度である積荷基準速度VLと、が路面状態データ及び車体負荷データに対応付けられた速度換算テーブルT3が記憶されている。車体コントローラ120は、運搬車両20の圧力センサ141から、運搬車両20に積載されている積載物の重量に関する情報(サスペンションの圧力)を取得し、積載物の重量である積載量Wに基づいて空荷基準速度VE及び積荷基準速度VLから選択した速度を基準速度として運搬車両20の走行制御を行う。
【0092】
この構成によれば、積載物の重量に応じた適切な走行速度で運搬車両20を走行させることができる。
【0093】
(5)本実施形態において、走行路10の所定の位置における積荷基準速度VLは、上記所定の位置における空荷基準速度VEよりも小さい。なお、上記所定の位置とは、例えば、少なくとも路面劣化度Dが第1劣化度閾値D1以上となる場所、あるいは、少なくとも応力σが第1応力閾値σ1以上となる場所である。
【0094】
この構成によれば、大きな負荷が発生しやすい場所において、積荷走行状態では空荷走行状態よりも低速で運搬車両20を走行させることができる。これにより、運搬車両20の車体101に作用する負荷を効果的に低減することができる。また、空荷走行状態では積荷走行状態よりも高速で運搬車両20を走行させることができる。これにより、運搬車両20の作業効率を向上することができる。
【0095】
(6)サーバ130は、走行路10を走行する複数の運搬車両20の走行制御を行うように構成される。サーバ130には、走行路10が複数の区間に区分されるように走行路10を含む作業現場が複数の領域Aに区画された走行路マップM1と、複数の領域Aの各々に対する基準速度が記録された基準速度テーブルT4と、が記憶されている。サーバ130は、複数の運搬車両20の各々から、路面状態データ(路面劣化度D)、車体負荷データ(応力σ)及び車体位置データ(地理座標系における車体101の位置座標)を収集する。サーバ130は、収集した路面状態データ、車体負荷データ及び車体位置データに基づき、走行路10の複数の区間ごとに基準速度VE,VLを演算し、基準速度テーブルT4を生成する。サーバ130は生成した基準速度テーブルT4を不揮発性メモリ(記憶装置)132に記憶する。サーバ130は、不揮発性メモリ132に記憶された基準速度テーブルT4を読み出して、複数の運搬車両20に送信し、複数の運搬車両20の走行を制御する。車体コントローラ120は、サーバ130から取得した基準速度テーブルT4に基づいて地図情報M0を更新する。車体コントローラ120は、走行路10の複数の区間ごとに地図情報M0から基準速度VE,VLを読み出して自車両の走行を制御する。この構成によれば、一の運搬車両20の稼働情報に基づいて基準速度を設定する場合に比べて、随時状況が変化する走行路10において精度よく基準速度を設定することができる。また、複数の区間ごとに基準速度が設定されるため、位置座標ごとに基準速度が設定される場合に比べて、取り扱われるデータの量を低減できる。その結果、サーバ130の演算負荷を低減することができる。
【0096】
<第2実施形態>
図14~
図16を参照して、本発明の第2実施形態に係る車両制御システム1Bについて説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。
【0097】
図14は、第2実施形態に係る車両制御システム1Bの機能ブロック図である。
図15に示すように、第2実施形態に係る車両制御システム1Bは、第1実施形態に係る車両制御システム1と同様の構成を有しているが、車体コントローラ120Bは劣化度演算部152を有していない。つまり、第1実施形態に係る車体コントローラ120が路面状態データとしての路面劣化度Dを演算していたのに対し、本第2実施形態に係る車体コントローラ120Bは路面状態データを演算しない。
【0098】
作業現場の天候状況が悪化するほど走行路10の路面の状態も悪化する。つまり、作業現場の天候状況と走行路10の路面の状態には、一定の関係がある。
図15は、天候状況に応じた路面劣化度の時間変化の一例について示す図である。
図15に示すように、雨が降っている間の路面劣化度の時間変化率は、晴れ及び曇りのときに比べて大きい。
【0099】
このため、第2実施形態では、サーバ130Bが気象情報を路面の状態を表す路面状態データとして取得する。
図14に示すサーバ通信制御部175Bは、サーバ通信装置169を介して車両制御システム1Bの外部の気象情報データベースDB2から走行路10を含む作業現場の気象情報(本実施形態では天候状況)を取得し、稼働情報データベースDB1Bに記憶する。気象情報データベースDB2には、過去及び現在の気象情報が記憶されている。気象情報には、例えば、晴れ、雨、雪などの天候状況、温度、湿度、風速、降雨量、降雪量、台風情報、落雷情報などが含まれる。気象情報データベースDB2に記憶される気象情報は、気象庁などの公的機関から提供される気象情報であってもよいし、民間企業から提供される気象情報であってもよい。
【0100】
図16は、第2実施形態に係る速度換算テーブルT3Bの一例を示す図である。
図16に示すように、速度換算テーブルT3Bは、応力の最大値及び気象情報である作業現場の天候状況に応じた基準速度を定めたデータテーブルである。速度換算テーブルT3Bは、実験等により予め定められている。なお、速度換算テーブルT3Bは、入力装置161を操作することにより、適宜変更することができる。
【0101】
速度換算テーブルT3Bは、応力の最大値σmaxが第1応力閾値σ1未満であり、かつ、天候状況が雨である場合の空荷基準速度VE1及び積荷基準速度VL1を定めている。速度換算テーブルT3Bは、応力の最大値σmaxが第1応力閾値σ1未満であり、かつ、天候状況が雪である場合の空荷基準速度VE2及び積荷基準速度VL2を定めている。
【0102】
速度換算テーブルT3Bは、応力の最大値σmaxが第1応力閾値σ1以上第2応力閾値σ2未満であり、かつ、天候状況が晴れである場合の空荷基準速度VE1及び積荷基準速度VL1を定めている。速度換算テーブルT3Bは、応力の最大値σmaxが第1応力閾値σ1以上第2応力閾値σ2未満であり、かつ、天候状況が雨である場合の空荷基準速度VE2及び積荷基準速度VL2を定めている。速度換算テーブルT3Bは、応力の最大値σmaxが第1応力閾値σ1以上第2応力閾値σ2未満であり、かつ、天候状況が雪である場合の空荷基準速度VE3及び積荷基準速度VL3を定めている。
【0103】
速度換算テーブルT3Bは、応力の最大値σmaxが第2応力閾値σ2以上であり、かつ、天候状況が晴れである場合の空荷基準速度VE2及び積荷基準速度VL2を定めている。速度換算テーブルT3Bは、応力の最大値σmaxが第2応力閾値σ2以上であり、かつ、天候状況が雨である場合の空荷基準速度VE3及び積荷基準速度VL3を定めている。速度換算テーブルT3Bは、応力の最大値σmaxが第2応力閾値σ2以上であり、かつ、天候状況が雪である場合の空荷基準速度VE4及び積荷基準速度VL4を定めている。
【0104】
図14に示す基準速度演算部173Bは、速度換算テーブルT3Bを参照し、最大値テーブルT2Bに記憶されている各領域Aにおける応力の最大値σmaxと稼働情報データベースDB1Bに記憶されている作業現場の現在の天候状況に基づいて、各領域Aの基準速度VE,VLを演算する。つまり、基準速度演算部173Bは、速度換算テーブルT3Bを用いて走行路10の天候状況及び応力の最大値σmaxに対応する基準速度VE,VLを読み出す。基準速度演算部173Bは、演算した空荷基準速度VEと、演算した積荷基準速度VLと、それらの演算対象となった領域Aの領域記号とを対応付けたデータテーブルである基準速度テーブルT4Bを生成する。基準速度演算部173Bは、生成した基準速度テーブルT4Bを不揮発性メモリ132に記憶する。
【0105】
なお、基準速度演算部173Bは、最大値テーブルT2Bにおいて応力の最大値σmaxが記憶されていない領域A、あるいは、作業現場の現在の天候状況が晴れであり、かつ応力の最大値σmaxが第1応力閾値σ1未満の領域Aの基準速度VE,VLには、最高速度VEx,VLxを設定する。
【0106】
サーバ130Bは、不揮発性メモリ132に記憶された基準速度テーブルT4Bを読み出して、複数の運搬車両20に送信し、複数の運搬車両20の走行を制御する。
【0107】
以上のとおり、本第2実施形態に係る速度換算テーブルT3Bには、基準速度VE,VLと天候状況とが対応付けられて記録されている。また、制御装置(サーバ130B及び車体コントローラ120B)は、外部から走行路10を含む作業現場の気象情報を取得し、速度換算テーブルT3Bを用いて走行路10の天候状況に対応する基準速度VE,VLを読み出して運搬車両20の走行制御を行う。
【0108】
このような第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、第2実施形態では、天候状況に応じて、運搬車両20の走行速度を適切に制御することができる。例えば、天候状況が雨である場合に、天候状況が晴れである場合に比べて、運搬車両20の走行速度を低減させることができる。また、天候状況が雪である場合に、天候状況が雨である場合に比べて、運搬車両20の走行速度を低減させることができる。これにより、雨、及び雪の中、高速で運搬車両20が走行することによって路面劣化度が大きくなることを防止できる。また、発進時、旋回時、停止時のタイヤのスリップを防止し、走行路10上において適切に運搬車両20を走行させることができる。
【0109】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0110】
例えば、車両制御システムは、第1実施形態で説明した機能、及び第2実施形態で説明した機能の双方を備えていてもよい。つまり、車両制御システムは、路面劣化度及び気象情報(路面状態データ)と応力(車体負荷データ)とに基づいて、基準速度を演算してもよい。この場合、車両制御システムは、例えば、
図11に示す速度換算テーブルT3と路面劣化度の最大値及び応力の最大値とに基づいて基準速度を演算し、演算した基準速度に天候状況ごとに定めた天候係数を乗じることにより、基準速度を補正する。天候係数は、例えば、天候状況が晴れのときには「1」であり、天候状況が雨のときには「0.8」であり、天候状況が雪のときには「0.5」である。この構成によれば、第1実施形態及び第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0111】
<変形例1>
上記実施形態では、サーバ通信制御部175が基準速度テーブルT4を運搬車両20に送信し、車体通信制御部156が基準速度テーブルT4に基づき地図情報M0を更新し、地図情報M0に含まれる基準速度VE,VLと車体101の現在の位置とに基づいて、車速Vを制御する例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0112】
サーバ通信制御部175は、運搬車両20の現在の位置に対応する基準速度VE,VLを基準速度テーブルT4から読み出し、読み出した基準速度VE,VLを運搬車両20に送信してもよい。つまり、サーバ130は、複数の運搬車両20の各々から収集した路面状態データ、車体負荷データ及び車体位置データに基づき、走行路10の複数の区間ごとに基準速度VE,VLを読み出して複数の運搬車両20の走行制御を行ってもよい。この構成では、サーバ130から運搬車両20に一度に送信されるデータの量を小さく抑えることができる。また、サーバ130は、運搬車両20から、運搬車両20に積載されている積載物の重量に関する情報を取得し、積載物の重量に基づいて空荷基準速度VE及び積荷基準速度VLから選択した速度を基準速度として運搬車両20に送信し、運搬車両20の走行制御を行ってもよい。さらに、サーバ130は、外部から作業現場の気象情報を取得し、速度換算テーブルT3Bを用いて走行路10の天候状況に対応する基準速度を読み出して運搬車両20に送信し、運搬車両20の走行制御を行ってもよい。
【0113】
<変形例2>
上記実施形態では、基準速度の演算に用いた車体負荷データが、車体101に発生する応力σである例について説明した。しかしながら、車体負荷データは、応力σに限定されない。車体負荷データは、少なくとも、運搬車両20の車体101に作用する負荷を表すデータであればよい。例えば、車体負荷データは、累積損傷度であってもよい。
【0114】
車体コントローラ120は、車体101の各部位に作用する時刻歴応力波形と、応力振幅と繰り返し数のS-N線図とに基づいて、各部位の累積損傷度D´を算出する。累積損傷度D´は、例えば、レンジペア法、ピークバレー法、レインフロー法などによる時刻歴応力波形の頻度解析の後に、以下の式(1)に示すマイナー則や、修正マイナー則によって算出することができる。
【0115】
【0116】
式(1)において、Niは、S-N曲線における一定応力振幅の繰返し応力に対する破断繰り返し数(疲労寿命)である。niは、その応力振幅が働いている繰返し数である。
【0117】
<変形例3>
上記実施形態では、運搬車両20に搭乗するオペレータによって運搬車両20の走行速度が調整される例について説明したが、運搬車両20は、オペレータが搭乗することなく、自律走行が可能な無人車両であってもよい。本変形例では、自律走行をさせるために設定された目標速度が基準速度VE,VLを超える場合には、基準速度VE,VLが運搬車両20の目標速度として再設定される。つまり、本変形例に係る制御装置は、基準速度VE,VLを運搬車両20の走行速度の目標として運搬車両20の走行制御を行う。
【0118】
<変形例4>
上記実施形態に係るサーバ130の機能の一部または全部を車体コントローラ120が備えていてもよい。つまり、運搬車両20に搭載される車体コントローラ120が、路面状態データ、車体負荷データ及び車体位置データに基づいて基準速度VE,VLを演算してもよい。車体コントローラ120は、演算した基準速度VE,VLに基づいて車体101の走行速度を制御する。この構成によれば、運搬車両20の作業効率の低下を抑えつつ、走行中に車体101に作用する負荷を低減可能な運搬車両20を提供することができる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0120】
1,1B…車両制御システム、10…走行路、11…積込場、12…放土場、20…運搬車両、30…管理センタ、40…油圧ショベル、101…車体、102…車体フレーム、103…キャブ、104…ベッセル、105…前輪、106…後輪、107…サスペンションシリンダ、108…ホイストシリンダ、120,120B…車体コントローラ(制御装置)、121…処理装置、122…不揮発性メモリ(記憶装置)、123…揮発性メモリ(記憶装置)、130,130B…サーバ(制御装置)、131…処理装置、132…不揮発性メモリ(記憶装置)、133…揮発性メモリ(記憶装置)、141…圧力センサ(センサ)、142…位置センサ(センサ)、143…速度センサ(センサ)、144…歪センサ(センサ)、146…走行駆動装置、147…アクセル操作装置、148…ブレーキ操作装置、149…車体通信装置、151…位置取得部、152…劣化度演算部、153…応力演算部、154…積載量演算部、155…車速演算部、156…車体通信制御部、157…走行制御部、161…入力装置、162…表示装置、169…サーバ通信装置、172…最大値演算部、173,173B…基準速度演算部、175,175B…サーバ通信制御部、A…領域、D…路面劣化度(劣化度)、D´…累積損傷度(車体負荷データ)、D1…第1劣化度閾値(劣化度閾値)、D2…第2劣化度閾値、DB1,DB1B…稼働情報データベース、DB2…気象情報データベース、Dmax…応力の最大値、M0…地図情報、M1…走行路マップ、NT…通信回線、P…稼働情報取得位置(車体位置データ)、S1…積込状態、S2…積荷走行状態、S3…放土状態、S4…空荷走行状態、T1…稼働情報テーブル、T2…最大値テーブル、T3,T3B…速度換算テーブル、T4,T4B…基準速度テーブル、V…車速(走行速度)、VE…空荷基準速度(基準速度)、VL…積荷基準速度(基準速度)、Vlim…上限速度、W…積載量、W1…積載量閾値、σ…応力(車体負荷データ)、σ1…第1応力閾値(応力閾値)、σ2…第2応力閾値、σmax…応力の最大値