(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012766
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】伸縮性回路基板およびその製造方法、その伸縮性の評価方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20240124BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240124BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K1/03 670
H05K3/00 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114484
(22)【出願日】2022-07-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)掲載日:2022年3月22日、掲載アドレス:https://jiep.or.jp/event/convention/jiep2022s/index.php https://jiep.or.jp/event/convention/jiep2022s/assets/docs/pdf/program-temp_20220324.pdf (2)集会名:第36回エレクトロニクス実装学会春季講演大会(Web講演会https://jiep.or.jp/event/convention/jiep2022s/index.php、https://jiep.or.jp/event/convention/jiep2022s/assets/docs/pdf/program-temp_20220324.pdf)、開催日:2022年3月24日 (3)掲載日:2022年5月11日、掲載アドレス:https://www.toyal.co.jp/assets/rd/tech_report/pdf/new_business/tr_nb2022_040-ja.pdf
(71)【出願人】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124648
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 和夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154450
【弁理士】
【氏名又は名称】吉岡 亜紀子
(72)【発明者】
【氏名】南山 偉明
(72)【発明者】
【氏名】中尾 凌
【テーマコード(参考)】
5E338
【Fターム(参考)】
5E338AA02
5E338AA12
5E338AA16
5E338BB55
5E338CC10
5E338CD02
5E338EE11
5E338EE21
5E338EE33
(57)【要約】
【課題】本発明は、表面凹凸が少なく、伸縮しても電気抵抗変化の少ない伸縮性回路基板及びその製造方法、その伸縮性の評価方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によれば、伸縮性を有する樹脂製の基材と、基材の一方の面に積層された第1の金属箔と、そして基材の他方の面に積層された第2の金属箔とを備えた伸縮性回路基板において、Eを基材の弾性率(MPa)、t
0を基材の厚み(mm)、φ
1を第1の金属箔の伸び率(%)、t
1を第1の金属箔の厚み(μm)、φ
2を第2の金属箔の伸び率(%)、t
2を第2の金属箔の厚み(μm)としたとき、下記式(1)により求められる伸縮性指標Iが1以上32以下である伸縮性回路基板等が提供される。
I=(E×t
0
2×t
1×t
2)/{(φ
1+φ
2)/2}・・・(1)
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有する樹脂製の基材と、
前記基材の一方の面に積層された第1の金属箔から形成された第1の導電層と、そして
前記基材の他方の面に積層された第2の金属箔から形成された第2の導電層とを備えた伸縮性回路基板において、
Eを前記基材の弾性率(MPa)、t0を前記基材の厚み(mm)、φ1を前記第1の金属箔の伸び率(%)、t1を前記第1の金属箔の厚み(μm)、φ2を前記第2の金属箔の伸び率(%)、t2を前記第2の金属箔の厚み(μm)としたとき、下記式(1)により求められる伸縮性指標Iが1以上32以下であることを特徴とする伸縮性回路基板。
I=(E×t0
2×t1×t2)/{(φ1+φ2)/2}・・・(1)
【請求項2】
前記基材の厚みが50μm以上200μm以下であり、前記第1の金属箔の厚みが10μm以上50μm以下であり、そして前記第2の金属箔の厚みが10μm以上50μm以下である請求項1に記載の伸縮性回路基板。
【請求項3】
前記第1の金属箔はアルミニウムまたは銅からできており、および/または前記第2の金属箔はアルミニウムまたは銅からできている請求項1に記載の伸縮性回路基板。
【請求項4】
前記基材は、少なくともスチレン系エラストマー、アミド系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマーおよび動的加硫系エラストマーからなる群から選ばれる1種または2種以上のエラストマーからできている請求項3に記載の伸縮性回路基板。
【請求項5】
前記第1の金属箔は第1の回路パターンを形成しており、および/または前記第2の金属箔は第2の回路パターンを形成している請求項1に記載の伸縮性回路基板。
【請求項6】
前記基材と、前記第1の金属箔および前記第2の金属箔とは、押出ラミネート法により積層されている請求項1~4のいずれか1項に記載の伸縮性回路基板の製造方法。
【請求項7】
伸縮性を有する樹脂製の基材と、
前記基材の一方の面に積層された第1の金属箔から形成された第1の導電層と、そして
前記基材の他方の面に積層された第2の金属箔から形成された第2の導電層とを備えた伸縮性回路基板において、
Eを前記基材の弾性率(MPa)、t0を前記基材の厚み(mm)、φ1を前記第1の金属箔の伸び率(%)、t1を前記第1の金属箔の厚み(μm)、φ2を前記第2の金属箔の伸び率(%)、t2を前記第2の金属箔の厚み(μm)としたとき、下記式(1)により求めた伸縮性指標Iを用いて伸縮性回路基板の伸縮性を評価する方法。
I=(E×t0
2×t1×t2)/{(φ1+φ2)/2}・・・(1)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮性回路基板およびその製造方法、その伸縮性の評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ウェアラブル機器、ヘルスケア関連機器、ロボット等の分野においてフレキシブル回路の用途が広がってきている。そのような用途においてフレキシブル回路は、例えば人体や、機器のデザインにより造形された曲面、関節部等に沿わせて使用することが出来るだけでなく、人体やデザイン機器等から脱着しても回路の断線等を起こすことなく、電気的にも高いフレキシブル性と伸縮性が求められている。このような機器にフレキシブル回路を適用するために、電気的にも機械的にもより高度な伸縮性を有する回路用基板が求められている。
【0003】
上記の様な用途に用いられる回路用基板としては、例えば特開2019-197867号公報(特許文献1)に記載されているように、特定の引張弾性率と厚みを有する伸縮性樹脂基材と前記基材上に形成された導体層とを備える伸縮性配線基材や、特開2019-176170号公報(特許文献2)に記載されているように、伸縮性を有する基材と前記基材の表面上に形成された山部および谷部を含む蛇腹形状の配線を備えた伸縮性回路基板や、或いは特開2019-96826号公報(特許文献3)に記載されているように、伸縮性基材と前記伸縮性基材の表面に形成された伸縮性配線を備える伸縮性基板等が開発されている。
【0004】
しかし、特許文献1に記載の伸縮性配線基材は、伸縮性樹脂基材の厚みを厚くすると伸縮性が低下するという問題を生じるのみならず、製造時にシワが発生し歩留まりを低下させる等の問題があった。
【0005】
特許文献2に記載の伸縮性回路基板は、表面に蛇腹形状の配線を備えているため、伸縮性回路基板の表面に部品を実装しようとすると、応力集中を緩和するための調整層の形成が必要となるために製造工程が複雑になるという問題があった。さらに、調整層を形成したとしても部品の実装が困難となり、また、表面に形成される凹凸が伸縮性回路基板の美観や肌触りに悪化させるという問題もあった。
【0006】
また、特許文献3に記載の伸縮性基板は、ウレタン系エラストマーやニトリルゴム等からなる伸縮性基材上に、導電性クリームを用いて伸縮性回路を形成している。そのため、特許文献3に記載の伸縮性基板では、伸縮性基板の伸縮度合で電気抵抗値の大きく変化して安定しないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-197867号公報
【特許文献2】特開2019-176170号公報
【特許文献3】特開2019-96826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、表面凹凸が少なく、部品の実装性、実装信頼性、意匠性および触感に優れ、伸縮しても電気抵抗変化の少ない伸縮性回路基板およびその製造方法、その伸縮性の評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者等は、上記課題に鑑み、伸縮性回路基板を構成する各層に求められる物理的特性やそれらの組み合わせ等について鋭意検討を重ねた結果、樹脂製の基材の弾性率と厚み、並びに第1および第2の導電層に用いられる第1および第2の金属箔の伸び率と厚みを用いて、特定の関係式により算出される値が特定の範囲内にあれば上記の課題を解決できるとの知見を得た。
【0010】
すなわち、伸縮性回路基板において、伸縮によるシワの発生に影響を及ぼすのは、樹脂製の基材の弾性率と厚み、表裏面の導電層に用いられる第1および第2の金属箔の伸び率と厚みである。そのうち、樹脂製の基材の弾性率と厚みおよび第1,2の金属箔の厚みは、その値が大きくなるとシワの発生を助長し、一方、第1,2の金属箔の伸び率は、その値が大きくなるとシワの発生を抑制する効果があることが判った。
【0011】
そのため、樹脂製の基材の弾性率と厚みおよび第1,2の金属箔の厚みをシワの発生を助長する因子として関連付け、第1,2の金属箔の伸び率をシワの発生を抑制する因子として関連付けた関係式で整理したところ、上記関係式により算出される値が特定の範囲内にあれば、表面凹凸が少なく、部品の実装性、実装信頼性、意匠性および触感に優れ、伸縮しても電気抵抗変化の少ない伸縮性回路基板が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
より具体的には、本発明によれば、伸縮性を有する樹脂製の基材と、基材の一方の面に積層された第1の金属箔から形成された第1の導電層と、そして基材の他方の面に積層された第2の金属箔から形成された第2の導電層とを備えた伸縮性回路基板において、Eを基材の弾性率(MPa)、t0を基材の厚み(mm)、φ1を第1の金属箔の伸び率(%)、t1を第1の金属箔の厚み(μm)、φ2を第2の金属箔の伸び率(%)、t2を第2の金属箔の厚み(μm)としたとき、下記式(1)により求められる伸縮性指標Iが1以上32以下であることを特徴とする伸縮性回路基板が提供される。そのため、本発明によれば、下記式(1)により求めた伸縮性指標Iを用いることにより、上記の構成を有する伸縮性回路基板の伸縮性を評価することができる。
I=(E×t0
2×t1×t2)/{(φ1+φ2)/2}・・・(1)
【0013】
本発明では、伸縮性回路基板を曲げたときのシワの発生を抑制し、高い屈曲性を得るために、基材の厚みが50μm以上200μm以下であり、第1の導電層を形成する第1の金属箔の厚みが10μm以上50μm以下であり、そして第2の導電層を形成する第2の金属箔の厚みが10μm以上50μm以下であることが好ましい。
【0014】
本発明の伸縮性回路基板では、導電性等の電気的特性や加工の容易性等の観点から、第1の金属箔はアルミニウムまたは銅からできており、および/または第2の金属箔はアルミニウムまたは銅からできていることが好ましい。
【0015】
また、本発明では、基材は高い伸縮性を求められることから、基材は、少なくともスチレン系エラストマー、アミド系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマーおよび動的加硫系エラストマーからなる群から選ばれる1種または2種以上のエラストマーからできていることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明の伸縮性回路基板において、第1および第2の導電層に用いられる第1および第2の金属箔は、例えば電磁波シールド等を目的としてそのまま箔として使用してもよく、或いは、エッチング等を施すことにより、第1の導電層は第1の金属箔で形成された第1の回路パターンを備え、および/または第2の導電層は第2の金属箔で形成された第2の回路パターンを備えるように構成してもよい。
【0017】
本発明の伸縮性回路基板では、高度な伸縮性や屈曲性が求められることから、基材と、第1の導電層を形成する第1の金属箔および第2の導電層を形成する第2の金属箔との間でも伸縮性等に耐えるように強力に積層されていることが好ましい。このため、本発明では、樹脂製の基材と、第1の金属箔および第2の金属箔とは、押出ラミネート法により積層されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、伸縮性を有する樹脂製の基材と、基材の一方の面に積層された第1の金属箔から形成された第1の導電層と、そして基材の他方の面に積層された第2の金属箔から形成された第2の導電層とを備えた伸縮性回路基板において、Eを基材の弾性率(MPa)、t0を基材の厚み(mm)、φ1を第1の金属箔の伸び率(%)、t1を第1の金属箔の厚み(μm)、φ2を第2の金属箔の伸び率(%)、t2を第2の金属箔の厚み(μm)としたとき、
I=(E×t0
2×t1×t2)/{(φ1+φ2)/2}・・・(1)
上記式(1)により求められる伸縮性指標Iを1以上32以下とすることにより、引っ張った状態で曲面に沿わせるように取り付けても、樹脂からなる基材の弾性と、導電層を形成する金属箔の伸びとの相乗効果により、シワの発生が抑制された伸縮性回路基板およびその製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、式(1)により求めた伸縮性指標Iを用いることにより、上記の構成を有する伸縮性回路基板の伸縮性を評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の伸縮性回路基板において、表裏面の導電層に回路パターンを形成していない構成を模式的に示した断面図である。
【
図2】本発明の伸縮性回路基板において、表裏面の導電層へ、基材を挟んで鏡面対称となる位置に回路パターンを形成した構成を模式的に示した断面図である。
【
図3】本発明の伸縮性回路基板において、表裏面の導電層へ、基材を挟んでずれた位置に回路パターンを形成した構成を模式的に示した断面図である。
【
図4】鋼管を用いた巻き付け法による曲げ試験を行った後の実施例1の伸縮性回路基板の写真である。
【
図5】鋼管を用いた巻き付け法による曲げ試験を行った後の比較例1の伸縮性回路基板の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る伸縮性回路基板およびその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【0021】
本発明の一実施形態に係る伸縮性回路基板は、伸縮性を有する樹脂製の基材と、基材の一方の面に積層された第1の金属箔からなる第1の導電層と、そして基材の他方の面に積層された第2の金属箔からなる第2の導電層とを備えている。
【0022】
<基材>
本実施形態において、伸縮性回路基板に用いられる基材は伸縮性を有する樹脂が用いられる。本実施形態の樹脂製の基材の伸縮性は、例えば基材(試験片)の20%伸長後の伸長回復率が80%以上であることが好ましい。
【0023】
伸長回復率(%)は、上記伸縮性を有する樹脂製の基材の測定サンプルを用いた引張り試験により求められる。すなわち、樹脂製の基材サンプルに荷重を加えて伸張させ、該荷重を除去して収縮させる作用を加えた際に、初期長さ(標線距離)をL0、20%伸張させた際の長さ(標線距離)をL1、伸張荷重を除去した際の長さ(標線距離)をL2とした場合、下記式(2)により求められる。
伸長回復率(%)={(L1-L2)/(L1-L0)}×100・・・(2)
【0024】
樹脂製の基材の伸び率は、90%以上であることが好ましい。伸び率が90%以上であると、十分な伸縮性が得られ易くなる傾向にある。この観点から伸び率は高い方が好ましく、例えば100%以上、150%以上、300%以上であればより好ましい。
【0025】
伸び率(%)は、上述の伸縮性を有する樹脂製の基材からなる測定サンプルを用いた引張り試験において求められる。すなわち、樹脂製の基材サンプルに荷重を加えて伸張させ、破断させた際に、初期長さ(標線距離)をL0、破断した際の長さ(標線距離)をLとした場合、下記式(3)により求められる。
伸び率(%)={(L-L0)/L0}×100・・・(3)
【0026】
樹脂製の基材の弾性率は、1MPa以上200MPa以下であることが好ましく、5MPa以上100MPa以下であることがより好ましい。弾性率が1MPaよりも低くなると伸長時における基材の破断が起こり易くなり、また、弾性率が200MPaよりも高くなると、基材に求められる伸縮性が不十分となる。
【0027】
樹脂製の基材の伸長回復率、伸び率および弾性率は、作製した伸縮性回路基板から導電層を形成する金属箔を塩酸エッチングにより溶解ないし剥離させ、樹脂製の基材のみを残したものを試験片として用いることにより求められる。試験機としては、引張試験機 ストログラフ(東洋精機製,VGS1-E)を用いて測定することができる。測定は、JIS K 7311(1995)に準じ、サンプル幅5mmの短冊状に切断し、標線距離20mm、引張速度300mm/min、引張距離20mmの条件にて行うことができる。
【0028】
上述のエッチングの際に用いられるエッチング液としては、酸であってもアルカリであってもよく、樹脂製の基材に用いられる樹脂の種類や金属箔の種類に応じて適宜選択することができる。エッチング液の一例として、塩酸や塩化第二鉄液等が好適に用いられる。
【0029】
本実施形態の樹脂製の基材の形状に特に限定はないが、例えばシート状、フィルム状のように薄くて柔軟性を有する平板であることが好ましい。
【0030】
樹脂製の基材の厚みは、50μm以上200μm以下であることが好ましく、80μm以上150μm以下であることがより好ましい。樹脂製の基材の厚みが50μmよりも薄くなると、基材と金属箔とをラミネートする製造時に折れシワが発生し、フラットな面状態が保てなくなる。また、面方向へのストレッチ性が弱まり、全体的には引張による破断強度が低下する。また、樹脂製の基材の厚みが200μmよりも厚くなると、基材重量が不必要に重くなる。さらに、樹脂製の基材の厚みが厚くなると、誘電率に悪影響を及ぼし、例えば静電センサーとして用いた場合、感度が悪くなるといった不具合を生じ易くなるため、この点からも基材の厚みは200μm以下であることが好ましい。
【0031】
樹脂製の基材の厚みは、マイクロメータ(ミツトヨ U字形鋼板マイクロメータ 型番389-251-30)によって測定することができる。ラミネート前の基材、またはラミネート後の伸縮性回路基板から金属箔の一部または全部をエッチングにより溶解ないし剥離させ、金属箔が除去された基材の厚みを5点測定し、その平均値を樹脂製の基材の厚みとすればよい。
【0032】
樹脂製の基材は、伸縮性を有し、また、熱ラミネートまたは押し出しラミネートが可能な樹脂からできていることが好ましい。そのような樹脂としては、例えば、熱可塑性エラストマーがあり、その中でも、スチレン系エラストマー、アミド系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、動的架橋型熱可塑性エラストマー、動的加硫型熱可塑性エストラマー等が好適に用いられる。また、基材に用いられる樹脂は1種類でも、2種類以上の樹脂を混ぜたものであってもよい。
【0033】
<導電層>
本実施形態において、導電層に用いられる金属箔は導電性を有するものであれば特に限定はなく、例えば金箔、銀箔、銅箔、アルミニウム箔、チタン箔、ステンレス箔、ニッケル箔、錫箔または鉄箔等を用いることができる。中でも、アルミニウム箔および銅箔が好適に用いられる。
【0034】
金属箔の厚みは、10μm以上50μm以下であることが好ましく、12μm以上30μm以下であることがより好ましい。
【0035】
金属箔の厚みは、マイクロメータ(ミツトヨ U字形鋼板マイクロメータ 型番389-251-30)によって測定することができる。ラミネート前の金属箔、またはラミネート後に伸縮性回路基板から剥離させた金属箔の厚みを5点測定し、その平均値を金属箔の厚みとすればよい。
【0036】
金属箔の引張強度は、1N/mm2以上150N/mm2以下であることが好ましく、10N/mm2以上100N/mm2以下であることがより好ましい。上述の範囲であれば、伸縮性回路基板をRoll to Rollにて製造する際、金属箔からなる導電層に折れシワが発生するのを効果的に抑制することができる。
【0037】
金属箔の伸び率は、3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。金属箔の伸び率は、JIS Z 2241(2011)金属材料引張試験方法に準拠した方法によって測定することができる。試験機としてはストログラフ(東洋精機製,VGS1-E)を用い、金属箔をサンプル幅15mmの短冊状に切断し、試験速度10mm/min、チャック間距離50mmの条件にて測定することができる。
【0038】
本実施形態に用いられる金属箔は、導電層を形成するために、上述した樹脂製の基材の一方の面に積層される金属箔が第1の金属箔であり、基材の他方の面に積層される金属箔が第2の金属箔であるとき、後述する、本実施形態の伸縮性回路基板の伸縮性指標Iが1以上32以下である限りにおいて、第1の金属箔と第2の金属箔の材質および厚みは同じであっても異なっていてもよく、同じであることがより好ましい。
【0039】
本実施形態において、導電層は金属箔で形成された回路パターンを備えていてもよい。回路パターンの形状に特に限定はなく、用途や所望の性能に応じて適宜選択することができる。該回路パターンは定法によって形成することができ、例えば金属箔にレジストを塗工した後エッチングすることによって形成してもよい。本実施形態では、導電層が金属箔によって形成されているため、導電性塗料を用いて形成した導電層と比較して、伸縮性回路基板を伸長した際の電気抵抗の変化を抑えることができ、また、伸縮性回路基板への部品の実装性も向上させることができる。
【0040】
図1には、本実施形態の伸縮性回路基板1において、第1および第2の導電層2,3(第1および第2の金属箔20,30)に回路パターンが形成されていない構成(断面図)が示されている。また、
図2には、本実施形態の伸縮性回路基板に1aおいて、表裏面の導電層2a,3a(第1および第2の金属箔20a,30a)へ、基材4aを挟んで鏡面対称となる位置に回路パターンが形成されている構成(断面図)が示されており、
図3には、本実施形態の伸縮性回路基板に1bおいて、表裏面の導電層2b,3b(第1および第2の金属箔20b,30b)へ、基材4bを挟んでずれた位置に回路パターンが形成されている構成(断面図)が示されている。
【0041】
本実施形態の伸縮性回路基板1は、電磁波シールド機能等を付与する場合、
図1に示されるように、第1および第2の導電層2,3を形成する第1および第2の金属箔20,30には回路パターンを形成しなくてもよい。
【0042】
一方、本実施形態の伸縮性回路基板1a,1bが第1の導電層2a,2bおよび第2の導電層3a,3bに回路パターンを備える場合、
図2に示されるように、第1の金属箔20aにより樹脂製の基材4aの一方の面に形成される導電層2aの第1の回路パターンと、第2の金属箔30aにより該基材4aの他方の面に形成される導電層3aの第2の回路パターンとは、基材4aを挟んで鏡面対称となる位置に形成させてもよく、また、
図3に示されるように、第1の金属箔20bにより樹脂製の基材4bの一方の面に形成される導電層2bの第1の回路パターンと、第2の金属箔30bにより該基材4bの他方の面に形成される導電層3bの第2の回路パターンとは、基材4bを挟んでずれた位置に形成させてもよい。本実施形態では、
図3に示される伸縮性回路基板1bのように、ずれた位置に回路を形成した方が、製造した際の伸縮性回路基板1bの表面の凹凸を抑制できることから好ましい。
【0043】
<プライマー層>
本実施形態の伸縮性回路基板1aは、
図2に示されるように、樹脂製の基材4aと導電層2a,3aを形成する金属箔20a,30aとの間に接着性を向上させる目的でプライマー層5aをさらに備えていてもよい。プライマー層5aは、伸縮性を有するプライマーを用いることが好ましく、例えばアクリル樹脂系等プライマーが好適に用いられる。
【0044】
<伸縮性回路基板>
本実施形態では、伸縮性を有する樹脂製の基材と、基材の一方の面に積層された第1の金属箔から形成された第1の導電層と、そして基材の他方の面に積層された第2の金属箔から形成された第2の導電層とを備えた伸縮性回路基板において、Eを基材の弾性率(MPa)、t0を基材の厚み(mm)、φ1を第1の金属箔の伸び率(%)、t1を第1の金属箔の厚み(μm)、φ2を第2の金属箔の伸び率(%)、t2を第2の金属箔の厚み(μm)としたとき、下記式(1)により求められる伸縮性指標Iが1以上32以下であることが好ましい。そのため、本実施形態では、下記式(1)により求めた伸縮性指標Iを用いることにより、上記の構成を有する伸縮性回路基板の伸縮性を評価することができる。
I=(E×t0
2×t1×t2)/{(φ1+φ2)/2}・・・(1)
【0045】
本実施形態の伸縮性回路基板において、伸縮性指標Iが上記の範囲内にあると、φ76mmの鋼管を用いた巻き付け法による曲げ試験を行っても伸縮性回路基板に折れシワが生じることがない。しかし、伸縮性指標Iが32よりも大きくなると、上記の曲げ試験において伸縮性回路基板に折れシワが生じることになる。また、伸縮性指標Iが1よりも小さくなると、導電層の厚みが薄くなり、製造時に折れシワが生じ易くなるために好ましくない。
【0046】
また、本実施形態の伸縮性回路基板において、伸縮性指標Iは2以上32以下であることがより好ましく、2以上20以下であることがさらに好ましい。伸縮性指標Iが20よりも小さい場合、φ50mmの鋼管を用いた巻き付け法による曲げ試験を行っても伸縮性回路基板に折れシワが生じることがないので好ましい。
【0047】
鋼管を用いた巻き付け法による曲げ試験は、作製した伸縮性回路基板を長さ150mm以上、幅15mmの短冊状にカットし、φ76mm、φ50mmまたはφ20mmの鋼管に引っ張りながら巻き付け、目視により、伸縮性回路基板の表面上の折れシワの発生の有無を確認することにより行うことができる。
【0048】
以上のように、本実施形態の伸縮性回路基板は上述した構成を備えることにより、製造時の折れシワの発生が抑制されて高い歩留まりを達成することができ、表面の凹凸が少なく意匠性、触感に優れているという特徴を有する。また、本実施形態の伸縮性回路基板は良好な伸縮性を有するため、非貼付物が曲面形状であったとしても、伸縮性回路基板を引張した状態で曲面に添わせることで、シワの発生を生じることなく簡単に装着することができる。
【0049】
<伸縮性回路基板の製造方法>
本実施形態の伸縮性回路基板の製造方法は、導電層を形成する金属箔と樹脂製の基材とをラミネートするラミネート工程を備え、さらに導電層に回路パターンを形成する場合、導電層を形成する金属箔をエッチングするエッチング工程を備えていてもよい。
【0050】
<ラミネート工程>
本実施形態において、ラミネート工程は、金属箔と樹脂製の基材とをラミネートする工程である。本実施形態においてラミネートする方法に特に限定はなく、ドライラミネート法、熱ラミネート法、押出ラミネート法等を用いることができるが、製造時のシワの発生を効果的に抑制するためには押出ラミネート法を用いることが好ましい。また、ドライラミネート法を用いて製造する場合、一般的に金属箔と基材の接合に用いられる接着剤の伸縮性が低く、得られた伸縮性回路基板の伸縮性にも悪影響を及ぼすことがあることから注意が必要である。
【0051】
また、本実施形態では、樹脂製の基材と金属箔との接着性を向上させる目的で、上述のラミネート工程に先立って、基材と金属箔との間にプライマー塗工を施しておいてもよい。
【0052】
<エッチング工程>
本実施形態の伸縮性回路基板の製造方法では、上述のラミネート工程の後、導電層を構成する金属箔をエッチングし、回路パターンを形成するエッチング工程を備えていてもよい。エッチング工程は、伸縮性回路基板の金属箔の表面に所望の形状となるようにレジストインキを印刷し、次にエッチング液に浸漬してレジストインキが印刷されていない部分を溶解させた後、必要に応じてレジストインキを剥離することにより、金属箔に回路パターンを形成することができる。
【0053】
本実施形態において、レジストインキの印刷方法に特に限定はなく、公知の印刷方法を用いることができ、例えばグラビア印刷法やスクリーン印刷法等を採用することができる。
【0054】
レジストインキについても特に限定はなく、公知のインキを用いることができ、例えば有機系レジストインキや無機レジストインキ等を、エッチング液との相性や導電層を形成する金属箔表面への塗工性等を考慮して適宜選択することができる。
【0055】
また、エッチング液についても特に限定はなく、公知のエッチング液を用いることができ、基材に用いる樹脂の種類や金属箔の種類に応じて適宜酸性またはアルカリ性等のエッチング液を選択することができる。例えば、エッチング液として水酸化ナトリウム水溶液、塩酸、塩化第二鉄液、塩化銅液、過酸化水素等、またはそれらの混合液を用いることができる。
【0056】
以上のように、本実施形態の伸縮性回路基板の製造方法は上述した構成を備えることにより、伸縮性回路基板をRoll to Rollにて製造する際、金属箔からなる導電層に折れシワが発生するのを効果的に抑制することができる。
【実施例0057】
<伸縮性回路基板の作製>
押出ラミネート機を用い、以下の条件、構成にて実施例1~9および比較例1,2の伸縮性回路基板を作製した。
【0058】
[実施例1]
第1および第2の導電層には、それぞれ第1および第2のアルミニウム箔(1N30 東洋アルミニウム(株)製 30μm、最大引張り強度 21N)をそれぞれ用意し、各アルミニウム箔のマット面側に接着性付与のためアンカーコート剤を塗布した。次に、上記第1のアルミニウム箔と第2のアルミニウム箔との間に基材成形用の伸縮性樹脂として、日本ゼオン(株)製のスチレン系エラストマー(TPS) Quintac 3620(弾性率 25MPa)を用い、その厚みが100μmとなるように押出ラミネート法によりラミネートすることで実施例1の伸縮性回路基板を作製した。
【0059】
[実施例2]
ラミネートされた樹脂製の基材の厚みを50μmに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件、構成により実施例2の伸縮性回路基板を作製した。
【0060】
[実施例3]
第1および第2の導電層には、第1および第2のアルミニウム箔(1N30 東洋アルミニウム(株)製 21μm、最大引張り強度 12N)を用い、ラミネートされた樹脂製の基材の厚みを150μmに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件、構成により実施例3の伸縮性回路基板を作製した。
【0061】
[実施例4]
ラミネートされた樹脂製の基材の厚みを100μmに変更したこと以外は、実施例3と同じ条件、構成により実施例4の伸縮性回路基板を作製した。
【0062】
[実施例5]
ラミネートされた樹脂製の基材の厚みを50μmに変更したこと以外は、実施例3と同じ条件、構成により実施例5の伸縮性回路基板を作製した。
【0063】
[実施例6]
樹脂製の基材成形用の伸縮性樹脂として、BASF製のウレタン系エラストマー(TPU)ET580 100μm(弾性率45MPa)を用いたこと以外は、実施例1と同じ条件、構成により実施例6の伸縮性回路基板を作製した。
【0064】
[実施例7]
ラミネートされた樹脂製の基材の厚みを50μmに変更したこと以外は、実施例6と同じ条件、構成により実施例7の伸縮性回路基板を作製した。
【0065】
[実施例8]
第1および第2の導電層には、第1および第2の電解銅箔(厚み12μm 最大引張り強度 40N)を用いたこと以外は、実施例6と同じ条件、構成により実施例8の伸縮性回路基板を作製した。
【0066】
[実施例9]
第1および第2の導電層には、第1および第2の電解銅箔(厚み18μm 最大引張り強度 60N)を用いたこと以外は、実施例6と同じ条件、構成により実施例9の伸縮性回路基板を作製した。
【0067】
[比較例1]
ラミネートされた樹脂製の基材の厚みを150μmに変更したこと以外は、実施例1と同じ条件、構成により比較例1の伸縮性回路基板を作製した。
【0068】
[比較例2]
第1および第2の導電層には、第1および第2の電解銅箔(厚み35μm 最大引張り強度 110N)を用いたこと以外は、実施例6と同じ条件、構成により比較例2の伸縮性回路基板を作製した。
【0069】
<伸縮性回路基板の特性および評価>
実施例1~9および比較例1,2の伸縮性回路基板を以下の方法により測定し、評価した。
【0070】
[導電層(金属箔)の厚み]
実施例1~9および比較例1,2の伸縮性回路基板において、第1および第2の導電層の形成に用いたラミネート前の第1および第2の金属箔の厚みは、マイクロメータ(ミツトヨ U字形鋼板マイクロメータ 型番389-251-30)を用いて測定した。また、第1および第2の金属箔の厚みは、上記の方法により各金属箔について5点ずつ測定を行い、それぞれの平均値を第1および第2の金属箔の厚みとした。
【0071】
[導電層(金属箔)の伸び率]
実施例1~9および比較例1,2の伸縮性回路基板において、第1および第2の導電層の形成に用いたラミネート前の第1および第2の金属箔の伸び率は、引張試験によって測定した。引張試験の測定方法はJIS Z 2241(2011)金属材料引張試験方法に準拠する方法によって測定した。試験機はストログラフ(東洋精機製,VGS1-E)を用い、金属箔をサンプル幅15mmの短冊状に切断し、試験速度10mm/min、チャック間距離50mmの条件にて測定した。
【0072】
[基材の厚み]
実施例1~9および比較例1,2の伸縮性回路基板において、樹脂製の基材の厚みは、伸縮性回路基板から導電層を形成する金属箔を塩酸エッチングにより溶解ないし剥離させ、樹脂製の基材のみを残したものを試験片とし、その基材をマイクロメータ(ミツトヨ U字形鋼板マイクロメータ 型番389-251-30)を用いて測定した。樹脂製の基材の厚みは、上記の方法により5点測定を行い、その平均値を樹脂製の基材の厚みとした。
【0073】
[基材の弾性率]
実施例1~9および比較例1,2の伸縮性回路基板において、樹脂製の基材の弾性率は、伸縮性回路基板から導電層を形成する金属箔を塩酸エッチングにより溶解ないし剥離させ、樹脂製の基材のみを残したものを試験片とし、引張試験機 ストログラフ(東洋精機製,VGS1-E)を用いて測定した。測定は、JIS K 7311(1995)に準じ、サンプル幅5mmの短冊状に切断し、標線間距離20mm、引張速度300mm/min、引張距離20mmの条件にて行った。
【0074】
[基材の伸縮性指標Iの算出]
実施例1~9および比較例1,2の伸縮性回路基板において、樹脂製の基材の弾性率をE(MPa)、樹脂製の基材の厚みをt0(mm)、樹脂製の基材の一方の面に積層される第1の金属箔の伸び率をφ1(%)、該第1の金属箔の厚みをt1(μm)、樹脂製の基材の他方の面に積層される第2の金属箔の伸び率をφ2(%)、該第2の金属箔の厚みをt2(μm)とし、下記式(1)により各伸縮性回路基板の伸縮性指標Iを求めた。
I=(E×t0
2×t1×t2)/{(φ1+φ2)/2}・・・(1)
【0075】
[折れシワの評価]
実施例1~9および比較例1,2の伸縮性回路基板の折れシワの評価は、鋼管を用いた巻き付け法による曲げ試験において、該曲げ試験の際、伸縮性回路基板の折れシワの発生の有無を確認することにより行った。曲げ試験は、作製した伸縮性回路基板を長さ150mm以上、幅15mmの短冊状にカットし、φ76mm、φ50mmまたはφ20mmの鋼管に引っ張りながら巻き付けることにより行った。折れシワの評価は、上記の曲げ試験の結果、伸縮性回路基板に折れシワが発生しなかったものを「○」、伸縮性回路基板に折れシワが発生したものを「×」として評価した。
【0076】
[総合評価]
実施例1~9および比較例1,2の伸縮性回路基板の伸縮性に関する総合評価は、上述の3種類の径の鋼管を用いた巻き付け法による曲げ試験において、1種類以上の径の鋼管において折れシワの発生がなかったものを「○」とし、中でも3種類の径のいずれの鋼管でも折れシワの発生が無かったものを「◎」と評価した。一方、3種類の径のいずれの鋼管でも折れシワの発生が有ったものを「×」と評価した。
【0077】
実施例1~9および比較例1,2の伸縮性回路基板において、第1および第2の導電層(金属箔)の厚み及び伸び率の測定結果、樹脂製の基材の厚み及び伸び率の測定結果、並びに伸縮性回路基板の伸縮性指標Iの算出結果、折れシワの評価及び総合評価を下記表1に示す。
【0078】
【0079】
<考察>
図4には、鋼管を用いた巻き付け法による曲げ試験を行った後の実施例1の伸縮性回路基板1の写真が示されており、
図5には、鋼管を用いた巻き付け法による曲げ試験を行った後の比較例1の伸縮性回路基板1’の写真が示されている。
【0080】
表1および
図4,5より、実施例1~9の伸縮性回路基板と比較例1,2の伸縮性回路基板とを比較すると、比較例1,2の伸縮性回路基板は、φ76mm、φ50mmおよびφ20mmのいずれの鋼管に巻き付けた場合においても折れシワが発生するのに対して(
図5参照)、実施例1~9の伸縮性回路基板は、少なくともφ76mmの鋼管に巻き付けた場合において折れシワが発生しないことが判った(
図4参照)。
【0081】
また、実施例1~9の伸縮性回路基板の中でも、実施例1,7,8の伸縮性回路基板はφ76mmの鋼管に巻き付けた場合においても折れシワが発生せず、さらに、実施例2,4,5の伸縮性回路基板はφ50mmの鋼管に巻き付けた場合においても折れシワが発生しないことが判った。
【0082】
表1において、折れシワの発生しない巻き付け鋼管の曲率半径(直径)が小さいほど伸縮性回路基板の伸縮性、屈曲性は高いといえることから、比較例1,2の伸縮性回路基板よりも実施例3,6,9の伸縮性回路基板の方が伸縮性等が高く、実施例3,6,9の伸縮性回路基板よりも実施例1,7,8の伸縮性回路基板の方が伸縮性等が高く、さらに実施例1,7,8伸縮性回路基板よりも実施例2,4,5の伸縮性回路基板の方が伸縮性等が高いことが判った。
【0083】
各伸縮性回路基板における上述の関係は、伸縮性回路基板の樹脂製の基材の弾性率をE(MPa)、樹脂製の基材の厚みをt0(mm)、樹脂製の基材の一方の面に積層される第1の金属箔の伸び率をφ1(%)、該第1の金属箔の厚みをt1(μm)、樹脂製の基材の他方の面に積層される第2の金属箔の伸び率をφ2(%)、該第2の金属箔の厚みをt2(μm)とすると、下記式(1)により求められる各伸縮性回路基板の伸縮性指標Iと強い相関があることが判った。
I=(E×t0
2×t1×t2)/{(φ1+φ2)/2}・・・(1)
【0084】
すなわち、各伸縮性回路基板の伸縮性、屈曲性を、式(1)により求めた伸縮性指標Iを用いて整理し評価すると、伸縮性回路基板は、伸縮性指標Iが1以上32以下であるとφ76mmの鋼管に巻き付けても折れシワが生じることがなく(実施例3,6,9)、また、伸縮性指標Iが2以上20以下であるとφ50mmの鋼管に巻き付けても折れシワが生じることがなく(実施例1,7,8)、さらに、伸縮性指標Iが2以上15以下であるとφ30mmの鋼管に巻き付けても折れシワが生じることがなく(実施例1,7,8)、より高い伸縮性、屈曲性を得ることができることが判った。その結果、実施例1~9の伸縮性回路基板は、優れた伸縮性と屈曲性を発揮しつつ表面の凹凸を少なくすることができ、表裏面の導電層には金属箔を用いているので、優れた導電性及び部品の実装性を発揮することができる。