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特開2024-127661コイの抽出物を含有する動物用飼料、動物用サプリメント、白内障の予防用又は改善用組成物
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  • 特開-コイの抽出物を含有する動物用飼料、動物用サプリメント、白内障の予防用又は改善用組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127661
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】コイの抽出物を含有する動物用飼料、動物用サプリメント、白内障の予防用又は改善用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/22 20160101AFI20240912BHJP
   A23K 50/40 20160101ALI20240912BHJP
【FI】
A23K10/22
A23K50/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037002
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】522072183
【氏名又は名称】恵源食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122574
【弁理士】
【氏名又は名称】吉永 貴大
(72)【発明者】
【氏名】永▲浜▼ 健
(72)【発明者】
【氏名】土屋 泰則
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005AA02
2B005AA03
2B005AA04
2B150AA06
2B150AB10
2B150AE02
2B150AE06
2B150AE11
2B150AE12
2B150AE13
2B150BC06
2B150BD01
2B150BD02
2B150CD16
2B150CD24
2B150DD02
(57)【要約】
【課題】動物に必要な栄養素や機能性成分が含まれ、滋養強壮効果や病気の予防又は改善効果を有する動物用飼料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】コイの抽出物を主原料として含有する動物用飼料、およびコイ抽出物を主原料として含有する動物用飼料の製造方法であって、原料コイを細断し、沸騰水中で原料コイからコイの抽出物を得る抽出工程と、煮沸液から残渣を分離することにより前記抽出物を回収する固液分離工程と、前記抽出物を濃縮する濃縮工程と、を有する動物用飼料の製造方法により解決する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイの抽出物を主原料として含有する動物用飼料。
【請求項2】
前記コイが、コイの頭部と、尾部又は内蔵を含む、請求項1に記載の動物用飼料。
【請求項3】
前記抽出物が熱水抽出物である、請求項1に記載の動物用飼料。
【請求項4】
前記動物用飼料の形態が、液状、粒状、粉末状、棒状、ペースト状、タブレット状、ゲル状、泡状からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の動物用飼料。
【請求項5】
さらに、動物性タウリンを含有する、請求項1に記載の動物用飼料。
【請求項6】
前記動物がイヌ科動物又はネコ科動物である、請求項1に記載の動物用飼料。
【請求項7】
請求項1に記載の動物用飼料を含有する、動物用サプリメント。
【請求項8】
請求項1に記載の動物用飼料を含有する、白内障の予防用又は改善用組成物。
【請求項9】
コイ抽出物を主原料として含有する動物用飼料の製造方法であって、
原料コイからコイの抽出物を得る抽出工程と、
煮沸液から残渣を分離することにより前記抽出物を回収する固液分離工程と、
を有する動物用飼料の製造方法。
【請求項10】
前記抽出工程の前に、原料コイを細断する前処理工程を有する、請求項9に記載の動物用飼料の製造方法。
【請求項11】
前記固液分離工程の後に、前記抽出物を濃縮する濃縮工程を有する、請求項9に記載の動物用飼料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイの抽出物を含有する動物用飼料、該動物用飼料を含有する動物用サプリメント又は白内障の予防用又は改善用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イヌやネコなどの愛玩動物のおやつとして、セミモイストタイプやウエットタイプのペットフードが上市されている。例えば、特開2004-8022号公報には、嗜好性を高めるため、脂質含有量の少ない鶏肉やマグロ肉を主原料とし、チーズや野菜、鰹節などが添加され、ビタミンEと緑茶抽出物、及び、増粘結着剤を含有するスープ液とを合わせたことを特徴とするセミモイストタイプ又はウエットタイプの袋詰用ペットフードが開示されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-8022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に近年では、細長いパウチ袋から絞り出すペースト状の動物用飼料が種々提案されている。しかしながら、これらの動物用飼料はおやつとしての位置づけであり、各メーカーは塩分やカロリーの過剰摂取を防止するため、1日に与える分量を制限するなどの注意喚起をしている。
【0005】
2021年に一般社団法人ペットフード協会が実施した全国犬猫飼育実態調査の結果によれば、犬・猫の推計飼育頭数の全国合計は1605万2000頭であったことが報告されている。このようなペットブームに伴い、イヌやネコをペットとして飼育することが病気になるペットの数も増加している。そのため、動物用飼料にも、単に栄養を補給するだけではなく、特定の栄養素が強化されたものや、滋養強壮効果、病気の予防又は改善効果を有する動物用飼料が求められている。
【0006】
そこで、本発明は、動物に必要な栄養素や機能性成分が含まれ、滋養強壮効果や病気の予防又は改善効果を有する動物用飼料及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明者らは、上記の課題を達成する天然素材を検討したところ、コイ(鯉、Cyprinus carpio)を主原料とする動物用飼料が滋養強壮効果や特定の病気の予防又は改善効果を有するとの知見を得た。
【0008】
本発明はかかる知見に基づきなされたものであり、コイの抽出物を主原料として含有する動物用飼料を提供するものである。
【0009】
本発明はまた、コイ抽出物を主原料として含有する動物用飼料の製造方法であって、原料コイからコイの抽出物を得る抽出工程と、煮沸液から残渣を分離することにより前記抽出物を回収する固液分離工程と、を有する動物用飼料の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、コイ抽出物という高栄養価の動物用飼料により、これを摂取した動物の動物のクオリティーオブライフ(QOL)の向上に資することができるほか、動物用サプリメント及び白内障の予防用又は改善用組成物を提供することができる。そのため本発明の動物用飼料は日常食から食事療法食として幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の動物用飼料の給餌試験におけるミニチュアダックスフント(15歳、オス)の給餌前と給餌後の比較画像である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の実施形態に係る動物用飼料は、コイの抽出物を主原料として含有する。
【0013】
本実施形態において使用されるコイ(鯉、Cyprinus carpio)は、コイ目・コイ科に分類される魚で、比較的流れが緩やかな川や池、沼、湖、用水路などにも広く生息する大型の淡水魚である。コイの種類は問わないが、古来より食習慣がある養殖されたコイを使用することが好ましい。
【0014】
前記コイは、コイ全体を使用することができるが、少なくともコイの頭部を含み、尾部又は内蔵を含むことが好ましい。
【0015】
コイにはタンパク質が豊富に含まれているほか、ビタミンが数種類バランスよく含まれている。また、イヌ類、ネコ類などの肉食動物の消化に必要なミネラルである、カリウム、マグネシウム、リン、鉄、銅、亜鉛がバランスよく含まれている。特に亜鉛はマグロと比較して7倍以上含有している。
【0016】
一般的にコイの頭部、尾部及び内蔵は調理時に廃棄されることが多いが、上記のように栄養成分が豊富でありこれらを有効利用することができる。但し、胆のう(苦玉)は強烈な苦味を有し風味に影響を及ぼす恐れがあるため除去することが好ましい。
【0017】
コイの抽出物について、その抽出方法は特に限定はなく、例えば、熱水抽出法、煮沸抽出法、浸漬抽出法、振とう抽出法、ソックスレー抽出法、水蒸気蒸留法などが挙げられるが、コストの観点及び固液分離の容易さの観点からは熱水抽出法で抽出された熱水抽出物であることが好ましい。
【0018】
本実施形態に係る動物用飼料の形状に特に限定はなく、給餌の態様やハードタイプ・ソフトタイプの別に応じて、液状、粒状、粉末状、棒状、ペースト状、タブレット状、ゲル状、泡状から適宜選択することができる。
【0019】
本実施形態に係る動物用飼料は、さらに、動物性タウリンを含有することが好ましい。コイの肉には動物性タウリンが含まれているが、これに加えてさらに動物性タウリンを含有させることで、目の網膜の正常化、失明の予防、心臓、神経系、骨に関する疾患の予防、血管の強化、死亡の消化に必要な胆汁酸の正常化などの効果を向上させることができる。
【0020】
本実施形態に係る動物用飼料は、本発明の効果を損なわない範囲で、イヌ類又はネコ類のペットフードにおいて従来用いられている他の成分を含有させることができる。本実施形態の動物用飼料が含有し得る他の成分(原料)としては、例えば、動物性蛋白質原料(例えば、鶏、牛、豚、羊、魚、卵製品、乳製品);魚油等の動物性油脂;コーン油、サラダ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、ナタネ油、亜麻仁油、サフラワー油、オリーブ油、ヒマワリ油等の植物性油脂;抗菌剤(グレープフルーツ種子エキス、ホップ抽出物、白子タンパク抽出物、唐辛子抽出物);抗酸化剤(ミックストコフェロール、ビタミンA、ビタミンC、コエンザイムQ、フラボノイド系ポリフェノール、非フラボノイド系ポリフェノール);イモ類、トウモロコシ粉砕物、トウモロコシ粉等の炭水化物原料;栄養補強剤又は健康増進剤(ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、アミラーゼ阻害剤、リパーゼ阻害剤、小麦グルテン加水分解物、コンドロイチン硫酸、ポリフェノール含有素材、乳酸菌、γ-アミノ酪酸(GABA)、コエンザイムQ10、繊維成分);調味料(食塩、砂糖、グルタミン酸ソーダ等);香辛料(バジル、グローブ、ローズマリー等);香味料(魚エキス等);増粘剤(カラギーナン、トウモロコシでんぷん、ガム類等);ゲル化剤;繊維成分等が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本実施形態において対象となる動物は主にイヌ科動物又はネコ科動物であるが、愛玩動物としてのペット、例えば、鳥類、ウシ科動物、ウマ科動物、ヤギ、オオカミ科動物、ネズミ、ヒツジ又はブタといった動物であってもよい。
【0022】
本実施形態の動物用飼料は滋養強壮効果を有しているため、動物用飼料を含有する動物用サプリメントとすることができる。
【0023】
ここで、滋養強壮効果とは、食物から摂取した栄養素を体に必要な栄養に変え、その栄養を体の全身に届けることで、体の弱っているところを強くする働きのことをいう。具体的には、肉体疲労の改善、病中病後の体力の回復、食欲不振の改善、栄養障害の改善などを挙げることができる。
【0024】
本実施形態の動物用飼料は白内障の予防又は改善効果を有しているため、動物用飼料を含有する白内障の予防用又は改善用組成物とすることができる。
【0025】
ここで、白内障の予防又は改善効果とは、白内障の発症の予防及び疾患の改善のみならず、当該疾患に伴う症状の予防及び改善、当該疾患の再発の抑制をも包含する概念である。具体的には、白内障の発症を予防すること、白内障の進行を予防すること、加齢等により白濁した水晶体の白濁が減少すること、視力が回復すること等をいう。
【0026】
次に、本発明の実施形態に係る動物用飼料の製造方法について説明する。本実施形態の動物用飼料の製造方法は、原料コイからコイの抽出物を得る抽出工程と、煮沸液から残渣を分離することにより前記抽出物を回収する固液分離工程と、を有する。
【0027】
原料となるコイは、コイ全体を使用することができるが、少なくともコイの頭部を含み、尾部又は内蔵を含むことが好ましい。但し、胆のう(苦玉)は強烈な苦味を有し風味に影響を及ぼす恐れがあるため除去することが好ましい。
【0028】
なお、必須ではないが、抽出工程の前に、前処理工程として、原料コイを細断することで、より効率的にコイ抽出物を得ることができる。また、抽出工程の前に原料コイを事前に煮沸処理することで、より容易に原料コイを細断することができる。この際、煮沸液を次の抽出工程の煮沸液として再利用することが抽出物をより効率良く得る観点から好ましい。
【0029】
抽出工程は、原料コイからコイの抽出物を得る工程である。抽出方法は特に限定はなく、例えば、熱水抽出法、浸漬抽出法、振とう抽出法、ソックスレー抽出法、水蒸気蒸留法、超臨界抽出法、圧搾などが挙げられるが、コストの観点からは熱水抽出法であることが好ましい。
【0030】
抽出時間は時間に応じて抽出物が多く得られるが、一定時間で頭打ちになるため、1時間から6時間の範囲で設定することが好ましい。抽出工程を経ることで、原料コイの身、肉、骨、皮、鱗から有効成分が水に漏出し、煮沸液が白濁する。
【0031】
固液分離工程は、抽出工程の終了後、煮沸液から残渣を分離することにより抽出物を回収する工程である。固液分離方法は特に限定はなく、例えば、濾過、圧力、遠心分離などで行うことができる。
【0032】
ここで、本実施形態に係る動物用飼料の効果を高める目的で、前記抽出物を濃縮する濃縮工程を実施することが好ましい。濃縮工程は、固液分離工程で分取した抽出液を濃縮し有効成分の濃度を高めるための工程である。濃縮方法としては、例えば、通常の加熱による濃縮、減圧濃縮、低温濃縮、真空濃縮、凍結濃縮、及び逆浸透濃縮等、種々の濃縮方法を採用することができる。
【0033】
このようにして得られたコイ抽出物は、前述した追加の成分(動物性タウリンやペットフードにおいて従来用いられている他の成分)が添加されて、給餌の態様やハードタイプ・ソフトタイプの別に応じて、液状、粒状、粉末状、棒状、ペースト状、タブレット状、ゲル状、泡状にされて所望の動物用飼料に調製された後、滅菌工程を経て包装される。
【実施例0034】
1.動物用飼料の調製
宮崎県児湯郡西米良村産の養殖コイを主原料として、以下の要領で動物用飼料を調製した。まず、前処理工程として、原料コイ(頭部と尾部)1kgを10Lの沸騰した鍋に入れ、約10分間煮込んだ。その後、鍋から原料コイを取り出し、包丁で細断したものを調製した。そして、細断した調製物を、再び沸騰水に投入した。
【0035】
次に、抽出工程として、沸騰水中で原料コイを2時間加熱し、原料コイから有効成分を漏出させた。その後、ザルを用いて濾過を行い、コイ抽出物を分取した。
【0036】
次に、濃縮工程として、得られたコイ抽出物の粗熱を取った後、減圧低温濃縮装置を用いて60℃で減圧濃縮した。得られた濃縮抽出液は、重量310g、Brix20、水分80%であった。この濃縮抽出液85.36重量%に、トウモロコシデンプン12.5重量%、動物性タウリン2.00重量%、クエン酸0.07重量%、グレープフルーツ種子エキス0.07重量%、ミックストコフェロール0.007重量%を添加し混合することにより、ペースト状の動物用飼料を調製した。
【0037】
次に、ペースト状動物用飼料をレトルト袋(幅45mm、ピッチ90mm、3方シール分包)に14gづつ充填してシールし、これをオートクレーブで滅菌(80℃×30分)した。
【0038】
2.給餌試験
前記のように調製したペースト状動物用飼料を用いてイヌ科動物に対して給餌試験を実施した。原則として与える量は1日1包(14g)とし、小型犬については1日0.5包(7g)を目安とした。それ以外は自由給餌とした。そして飼い主に経過観察を依頼し、給餌前と給餌後のイヌの様子を自由記載してもらった。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
図1は、上記動物用飼料の給餌試験におけるミニチュアダックスフント(15歳、オス)の給餌前と給餌後の比較画像である(画像は同一個体)。給餌前(0日目)は白内障が進行し白濁が水晶体全体に及んでいた(白内障の成熟期)。加えて、食欲がなく頬が痩せ、毛のツヤも悪かった。しかしながら、上記動物用飼料を1日1回7gづつ与えたところ、食欲が回復し給餌後(18日目)には体重も増え、毛のツヤが良くなってきた。そして、白内障による瞳の白濁部分が明らかに減少していることが目視でも確認できた。
【0041】
本個体は日常、部屋の窓際にいることが多いが、給餌前はガラス越しに飼い主がいても反応しなかったのに対し、給餌後はガラス越しに飼い主が現れるとそれに反応して吠えるようになり、視力の回復が強く示唆された。
【0042】
以上の結果、本発明の動物用飼料に滋養強壮効果及び白内障の予防又は改善効果が認められることが判明した。
図1