(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127667
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】人孔内壁洗浄装置
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20240912BHJP
E02D 29/12 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B08B3/02 F
E02D29/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037009
(22)【出願日】2023-03-09
(71)【出願人】
【識別番号】520265088
【氏名又は名称】株式会社ノーブルマテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100074181
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 明博
(74)【代理人】
【識別番号】100206139
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 匡
(72)【発明者】
【氏名】今▲崎▼ 貴弘
【テーマコード(参考)】
2D147
3B201
【Fターム(参考)】
2D147BA07
3B201AA31
3B201AB52
3B201BB22
3B201BB72
3B201BB90
3B201BB92
(57)【要約】
【課題】 比較的装置が大掛かりにならず、また、人孔の内壁の洗浄作業を容易に行えるようにした人孔内壁洗浄装置を得る。
【解決手段】 開口部4を有する有底円筒状のケーシング5内に、開口部4から人孔の内壁に向かって高圧水を噴射する円盤状の高圧水噴射体6を、ケーシング5の内壁と高圧水噴射体6の外周囲との間に隙間Sを空けた状態で配置し、ケーシング5の側壁5bには、高圧水噴射体6の後面部6b側に位置してケーシング5の底壁5aと高圧水噴射体6の後面部6aとの間に圧縮空気を供給する空気供給口11を設けるとともに、高圧水噴射体6の前面部6b側に位置してケーシング5内に供給された圧縮空気と、噴射した高圧水により剥離した人孔の内壁の剥離片と洗浄処理水とからなる混合廃水をケーシング5外へ排出する空気・混合廃水排出口14を設けた洗浄装置本体2と、洗浄装置本体2を上下動可能に吊下する吊下手段3を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人孔の内壁に当接させる方向に開口部を有する有底円筒状のケーシング内に、前記ケーシング外から高圧水の供給を受けて前記開口部から人孔の内壁に向かって高圧水を噴射する円盤状の高圧水噴射体を、前記ケーシングと同心上に、前記ケーシングの内壁と前記高圧水噴射体の外周囲との間に隙間を空けた状態で配置し、前記ケーシングの側壁には、前記高圧水噴射体の後面部側に位置して前記ケーシングの底壁と前記高圧水噴射体の後面部との間に前記ケーシング外から圧縮空気を供給する空気供給口を設けるとともに、前記高圧水噴射体の前面部側に位置して前記空気供給口から前記ケーシング内に供給された圧縮空気と、前記高圧水噴射体から噴射した高圧水により剥離した人孔の内壁の剥離片と洗浄処理水とからなる混合廃水を前記ケーシング外へ排出する空気・混合廃水排出口を設けた洗浄装置本体と、
前記洗浄装置本体を上下動可能に吊下する吊下手段を備えたことを特徴とする人孔内壁洗浄装置。
【請求項2】
前記ケーシングの開口部には、その先端周縁に人孔の内壁に当接する植毛帯が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の人孔内壁洗浄装置。
【請求項3】
前記ケーシングの側壁の外面側には、人孔の内壁に当接する滑動手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の人孔内壁洗浄装置。
【請求項4】
前記ケーシングの側壁に設けた空気・混合廃水排出口には、空気・混合廃水排出口から排出される圧縮空気や混合廃水の排路となるダクトホースが接続されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1に記載の人孔内壁洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄装置本体を吊下する前記吊下手段はバランサーであることを特徴とする特徴とする請求項1~4のいずれか1に記載の人孔内壁洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存の人孔の内壁を洗浄する人孔内壁洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、壁面を洗浄する装置として、高圧水を噴射するノズルと、ノズルが内部に配置される円筒形のケーシングと、ケーシングの外側面に設けられた複数のローラと、ケーシングの開口部の先端に設けられたリング状のブラシと、高圧水の噴射により剥離した壁面の剥離片と洗浄処理水からなる混合廃水を吸引し外部に排出する吸込口を備えた高圧水噴射装置が知られている(例えば、特許文献1参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
人孔は、一般に道路に設置されている場合が多い。そのため人孔の内壁の洗浄の作業では、洗浄装置ができるだけ場所を取らず、そして、洗浄装置を短い時間で容易に設置でき、また撤去できることが望まれる。
【0005】
前記の特許文献1に記載された高圧水噴射装置は、混合廃水を吸込口から吸引し外部に排出するようになっているため、人孔の内壁の洗浄に使用した場合、混合廃水を吸込口から吸引するバキュームポンプ等の吸引手段を人孔の外の路面上に設置しなければならず、そして混合廃水は人孔の外に排出されるため、排出された混合廃水を回収するタンクが必要になる。そのため装置が大掛かりとなり、人孔の内壁の洗浄の作業に適するとは言い難いといった問題がある。
【0006】
本発明者は、かかる問題を解決するために思考を重ねた結果、混合廃水を人孔内に排出して配管から流すことに着想し、本発明を成すに至った。
【0007】
本発明の目的は、比較的装置が大掛かりにならず、また、人孔の内壁の洗浄作業を容易に行えるようにした人孔内壁洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、人孔の内壁に当接させる方向に開口部を有する有底円筒状のケーシング内に、前記ケーシング外から高圧水の供給を受けて前記開口部から人孔の内壁に向かって高圧水を噴射する円盤状の高圧水噴射体を、前記ケーシングと同心上に、前記ケーシングの内壁と前記高圧水噴射体の外周囲との間に隙間を空けた状態で配置し、前記ケーシングの側壁には、前記高圧水噴射体の後面部側に位置して前記ケーシングの底壁と前記高圧水噴射体の後面部との間に前記ケーシング外から圧縮空気を供給する空気供給口を設けるとともに、前記高圧水噴射体の前面部側に位置して前記空気供給口から前記ケーシング内に供給された圧縮空気と、前記高圧水噴射体から噴射した高圧水により剥離した人孔の内壁の剥離片と洗浄処理水とからなる混合廃水を前記ケーシング外へ排出する空気・混合廃水排出口を設けた洗浄装置本体と、前記洗浄装置本体を上下動可能に吊下する吊下手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、前記ケーシングの前記開口部を人孔の内壁に当接させ、前記ケーシングの側壁に設けた空気供給口から前記ケーシング内に圧縮空気を供給しながら、前記高圧水噴射体から高圧水を人孔の内壁に向かって噴射させることにより、高圧水で剥離した人孔の内壁の剥離片と洗浄処理水からなる混合廃水は、前記ケーシング内に供給された圧縮空気により前記空気・混合廃水排出口へ導かれ、圧縮空気とともに前記空気・混合廃水排出口から前記ケーシング外へ排出され、前記ケーシングから排出された混合廃水は人孔内に開口する下水配管に流すことができることから、前記ケーシングから混合廃水を吸引し排出するためのバキュームポンプ等の吸引手段や排出された混合廃水を回収するタンクの必要がなくなり、その分装置の簡素化を図ることができるので、作業現場における装置の設置や撤去が容易となり、人孔の内壁の洗浄作業を容易に行うことができる。
また、前記洗浄装置本体は吊下手段により上下移動可能に吊下されているので、作業者の作業負担を軽減させることができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の、前記ケーシングの開口部には、その先端周縁に人孔の内壁に当接する植毛帯が設けられていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の発明によれば、前記ケーシングの開口部には、その先端周縁に人孔の内壁に当接する植毛帯が設けられているので、内壁に凹凸があっても植毛帯はその柔軟性によって変形し、水の飛散を防止することができる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の、前記ケーシングの側壁の外面側には、人孔の内壁に当接する滑動手段が設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、前記ケーシングの側壁の外面側には、人孔の内壁に当接する滑動手段が設けられているので、人孔の内壁上における前記洗浄装置本体の移動を容易に行うことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1~3のいずれか1に記載の、前記ケーシングの側壁に設けた空気・混合廃水排出口には、空気・混合廃水排出口から排出される圧縮空気や混合廃水の排路となるダクトホースが接続されていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、前記ケーシングの側壁に設けた空気・混合廃水排出口には、空気・混合廃水排出口から排出される圧縮空気や混合廃水の排路となるダクトホースが接続されているので、ダクトホースを人孔の底面に届かせておくことにより、排出された混合廃水を人孔内に開口する下水配管に誘導することができる。
【0016】
請求項5に記載の発明は、請求項1~4のいずれか1に記載の、前記洗浄装置本体を吊下する前記吊下手段はバランサーであることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、前記洗浄装置本体を吊下する前記吊下手段はバランサーであるので、人孔内で作業する作業者は前記洗浄装置本体の重量を感じること無く作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明に係る人孔内壁洗浄装置によれば、装置の簡素化を図ることができるので、作業現場における装置の設置や撤去が容易となり、人孔の内壁の洗浄作業を容易に行うことができ、また、洗浄装置本体は吊下手段により上下移動可能に吊下されているので、作業者の作業の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る人孔内壁洗浄装置の実施の形態の一例を示す概略図である。
【
図2】
図1に示す人孔内壁洗浄装置の洗浄装置本体を示す一部省略拡大側面図である。
【
図5】本発明に係る人孔内壁洗浄装置による人孔内壁の洗浄を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る人孔内壁洗浄装置の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1~
図5は本発明に係る人孔内壁洗浄装置の実施の一例を示すものであり、
図1は本例の人孔内壁洗浄装置を示す概略図、
図2は
図1に示す人孔内壁洗浄装置の洗浄装置本体を示す一部省略拡大側面図、
図3は
図2の一部省略A-A断面図、
図4は
図2の一部省略縦断面図、
図5は本発明に係る人孔内壁洗浄装置による人孔内壁の洗浄を示す説明図である。
【0021】
本例の人孔内壁洗浄装置1は、洗浄装置本体2と、洗浄装置本体2を上下移動可能に吊下する吊下手段3を備えている。
【0022】
洗浄装置本体2は、人孔100の内壁101に当接させる方向に開口部4を有する有底円筒状のケーシング5内に、ケーシング5外から高圧水の供給を受けて開口部4から人孔100の内壁101に向かって高圧水を噴射する円盤状の高圧水噴射体6が、ケーシング5と同心上に、ケーシング5の内壁と高圧水噴射体6の外周囲との間に隙間Sを空けた状態で配置されている。高圧水噴射体6にあっては、正面に円周方向に複数の噴射口7が設けられている。
【0023】
本例では、ケーシング5の底壁5aに高圧水を高圧水噴射体6に導入する高圧水導入部8が貫通して設けられており、高圧水導入部8のケーシング5内に突出する端部に、前記したケーシング5内に配置される高圧水噴射体6が取り付けられている。高圧水導入部8のケーシング5外に突出する端部には、一端が高圧水供給装置9に接続されている高圧水供給ホース10の他端が接続され、高圧水供給装置9から高圧水供給ホース9を介して供給される高圧水を高圧水導入部8を通して高圧水噴射体6に導入するようになっている。そして、高圧水導入部8に取り付けられている高圧水噴射体6は、導入された高圧水の噴射反力を利用して回転するようになっている。
【0024】
また、ケーシング5の側壁5bには、高圧水噴射体6の後面部6a側に位置してケーシング5の底壁5aと高圧水噴射体6の後面部6aとの間にケーシング5外から圧縮空気を供給する空気供給口11が設けられており、空気供給口11には、一端が圧縮空気供給装置12に接続されている圧縮空気供給ホース13の他端が接続され、空気供給口11からケーシング5の底壁5aと高圧水噴射体6の後面部6aとの間に圧縮空気を供給するようになっている。
【0025】
さらに、ケーシング5の側壁5bには、高圧水噴射体6の前面部6b側に位置して空気供給口11からケーシング5内に供給された圧縮空気と、高圧水噴射体6から噴射した高圧水により剥離した人孔100の内壁101の剥離片と洗浄処理水とからなる混合廃水をケーシング5外へ排出する空気・混合廃水排出口14が設けられている。空気・混合廃水排出口14には、空気・混合廃水排出口14から排出される圧縮空気や混合廃水の排路となるダクトホース15が接続されている。ダクトホース15は人孔100の底面102に届く長さとすることが好ましい。
【0026】
また、ケーシング5の開口部4には、その先端周縁に人孔100の内壁101に当接する植毛帯16が設けられている。植毛帯16にあっては、この種の公知の高圧水供給装置で使用されている植毛帯と同様の植毛帯が使用されている。
【0027】
また、ケーシング5の側壁5bの外面側には、人孔100の内壁101に当接する滑動手段17が設けられている。滑動手段17は、人孔100の内壁101に当接させた洗浄装置本体2の移動を容易に行わせるものである。滑動手段17にあっては、この種の公知の高圧水供給装置で使用されている滑動手段と同様の滑動手段が使用されている。
また、ケーシング5の側壁5bの外面側には、作業者が握って洗浄装置本体2を移動させるための操作ハンドル18が設けられている。
【0028】
また、洗浄装置本体2を上下移動可能に吊下する吊下手段2は、本例ではバランサー19が使用されており、洗浄装置本体2はバランサー19から垂れ下がるワイヤー20に上下移動可能に且つ揺動自在に懸架されている。
【0029】
次に、以上のように構成した人孔内壁洗浄装置1による人孔100の内壁101の洗浄について説明する。
【0030】
先ず、路面102上に吊下手段3となるバランサー19と、高圧水供給装置9と圧縮空気供給装置12を設置する。そして、バランサー19のワイヤー20の先端に洗浄装置本体2を懸架し、また、一端が高圧水供給装置9に接続されている高圧水供給ホース10の他端を洗浄装置本体2のケーシング5から外に突出している高圧水導入部8の端部に接続し、また、一端が圧縮空気供給装置12に接続されている圧縮空気供給ホース13の他端を洗浄装置本体2のケーシング5の側壁5bに設けられている空気供給口11に接続し、この状態から、バランサー19により洗浄装置本体2を人孔100の路面開口部103から人孔100内に吊下する(
図1参照)。
【0031】
人孔100の内壁101の洗浄作業は、人孔100内に作業者が入り、洗浄装置本体2の操作ハンドル18を握って、洗浄装置本体2を操作し、ケーシング5の開口部4を人孔100の内壁101に当接させ、ケーシングの5の側5b壁に設けた空気供給口11からケーシング5内に圧縮空気を供給しながら、高圧水噴射体6から高圧水を人孔100の内壁101に向かって噴射させる(
図5参照)。
【0032】
このとき、ケーシング5の開口部4には、その先端周縁に植毛帯16が設けられているので、植毛帯16が人孔100の内壁101に当接し、内壁101に凹凸があっても植毛帯16はその柔軟性によって変形し、水の飛散を防止する。
【0033】
高圧水噴射体6から噴射した高圧水は人孔100の内壁101の表面に付着している汚れ等を剥離し、空気供給口11からケーシング5内に供給された圧縮空気は、ケーシング5の内壁と高圧水噴射体6の外周囲との間の隙間Sからケーシング5の開口部4側へ流れ、高圧水噴射体6から噴射した高圧水により剥離された剥離片と洗浄処理水からなる混合廃水を空気・混合廃水排出口14へ導く。
【0034】
空気・混合廃水排出口14へ導かれた混合廃水は圧縮空気とともに空気・混合廃水排出口14に接続されているダクトホース15から排出される。ダクトホース15から排出された混合廃水は人孔100内に開口する下水配管104に流す。下水配管104の開口部には、混合廃水に含まれている剥離片を除去するフィルター105を仮設しておくことが好ましい。
【0035】
人孔100の内壁101の洗浄は、洗浄装置本体2のケーシング5の開口部4を人孔100の内壁101に当接させた状態で、内壁101を上下左右に移動させて行うが、ケーシング5の側壁5bの外面側には、人孔100の内壁101に当接する滑動手段17が設けられているので、人孔100の内壁101上における洗浄装置本体2の移動を容易に行える。
【0036】
また、作業者は、洗浄装置本体2のケーシング5の開口部4を人孔100の内壁101に当接させた状態で、内壁101を上下左右に移動させるが、洗浄装置本体2を吊下する吊下手段3はバランサー19であるので、人孔100内で作業する作業者は洗浄装置本体2の重量を感じること無く作業を行える。
【符号の説明】
【0037】
1 人孔内壁洗浄装置
2 洗浄装置本体
3 吊下手段
4 開口部
5 ケーシング
5a 底壁
5b 側壁
6 高圧水噴射体
6a 後面部
6b 前面部
7 噴射口
8 高圧水導入部
9 高圧水供給装置
10 高圧水供給ホース
11 空気供給口
12 圧縮空気供給装置
13 圧縮空気供給ホース
14 空気・混合廃水排出口
15 ダクトホース
16 植毛帯
17 滑動手段
18 操作ハンドル
19 バランサー
20 ワイヤー
100 人孔
101 内壁
102 路面
103 路面開口部
104 下水配管
105 フィルター
S 隙間