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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127723
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】せん断力吸収部材及び耐震構造
(51)【国際特許分類】
   F16F 7/12 20060101AFI20240912BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20240912BHJP
   F16F 15/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F16F7/12
E04H9/02 351
F16F15/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191857
(22)【出願日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2023036063
(32)【優先日】2023-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】小山 高夫
【テーマコード(参考)】
2E139
3J048
3J066
【Fターム(参考)】
2E139AA01
2E139AC19
2E139AC26
2E139BA06
2E139BD23
3J048AC06
3J048AD05
3J048BC09
3J048EA38
3J066AA26
3J066BA04
3J066BB04
3J066BD07
(57)【要約】
【課題】せん断力をより良く吸収することができるせん断力吸収部材及び耐震構造を提供する。
【解決手段】せん断力吸収部材1は、正面視がU字形状で板状の吸収部2と、吸収部2における、U字の内側に配置された離間防止部3と、を備え、離間防止部3は、吸収部2のU字形状における湾曲部29の一端から延出する一方の平板部20と、湾曲部29の他端から延出する他方の平板部20との距離が離れないように、一方の平板部20を他方の平板部20に係止している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面視がU字形状で板状の吸収部と、
前記吸収部における、U字の内側に配置された離間防止部と、を備え、
前記離間防止部は、前記吸収部のU字形状における湾曲部の一端から延出する一方の平板部と、前記湾曲部の他端から延出する他方の平板部との距離が離れないように、一方の前記平板部を他方の前記平板部に係止しているせん断力吸収部材。
【請求項2】
前記離間防止部は、
一方の前記平板部における前記吸収部のU字形状の内側に配置された、蟻溝状のメス側レールと、
他方の前記平板部における前記吸収部のU字形状の内側に配置され、前記メス側レールに嵌め込まれたオス側レールと、を有し、
前記メス側レールと前記オス側レールとは、前記平板部の延在方向に沿って配設されており、
前記メス側レールは、前記メス側レールに嵌め込まれた状態で前記メス側レールに沿ってスライド移動可能とされている請求項1に記載のせん断力吸収部材。
【請求項3】
前記離間防止部は、一対の前記平板部における前記吸収部のU字形状の内側に配置された一対のレール部を有し、
一対の前記レール部は、前記平板部の延在方向に沿って配設されており、一方の前記レール部に沿って他方の前記レール部がスライド移動可能とされている請求項1に記載のせん断力吸収部材。
【請求項4】
前記吸収部を一対で備え、
一対の前記吸収部は、互いの頂部が対向する状態で、それらの前記吸収部のU字形状が同じ仮想の平面上に配置されている請求項1に記載のせん断力吸収部材。
【請求項5】
前記吸収部を一対で備え、
一対の前記吸収部は、互いの頂部が対向する状態で、それらの前記吸収部のU字形状が同じ仮想の平面上に配置されている請求項2に記載のせん断力吸収部材。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載されたせん断力吸収部材と、
一対の構造体を備え、
前記せん断力吸収部材の前記吸収部は、一方の前記平板部を一方の前記構造体に支持されており、他方の前記平板部を他方の前記構造体に支持されている耐震構造。
【請求項7】
板状の支持部を更に備え、
前記支持部は、
板面が、前記平板部と交差し、且つ、前記平板部の延在方向に沿うように配置され、
前記構造体に支持されており、
前記吸収部は、前記平板部における前記吸収部のU字形状の外側を前記支持部に支持されている請求項6に記載の耐震構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、せん断力吸収部材及び耐震構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、耐震構造が開示されている。この耐震構造は、上部横架材と、下部横架材と、前記上部横架材及び前記下部横架材の間に設けられた一対のエネルギー吸収部材と、を備えている。このエネルギー吸収部材は、湾曲部と、湾曲部の両端のそれぞれから連続して延びる一対の中間部と、一対の中間部の端からそれぞれ連続して延びる一対の固定部と、を有し、U字形状をしている。このエネルギー吸収部材は、上部横架材と下部横架材との水平方向の相対的変位に応じて、一対の固定部にその延在方向の相対的変位が生じるように構成されている。また、一対のエネルギー吸収部材は、一対の挟持部によって湾曲部同士が対向するように近接した状態で挟持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-161764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の開示に例示されるような、U字形状とされたエネルギーの吸収部材を用いた従来技術のせん断力吸収部材及び耐震構造にあっては、耐震構造に生じた変位に伴うせん断力を吸収部材で吸収しようとする際に、この吸収部材におけるU字形状の一対の平板部同士の距離が広がりやすい。そのため、せん断力吸収部材がせん断力を吸収する能力をさらに高めることが難しい場合があった。そのため、せん断力をより良く吸収することができるせん断力吸収部材及び耐震構造の提供が望まれる。
【0005】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、せん断力をより良く吸収することができるせん断力吸収部材及び耐震構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係るせん断力吸収部材は、
正面視がU字形状で板状の吸収部と、
前記吸収部における、U字の内側に配置された離間防止部と、を備え、
前記離間防止部は、前記吸収部のU字形状における湾曲部の一端から延出する一方の平板部と、前記湾曲部の他端から延出する他方の平板部との距離が離れないように、一方の前記平板部を他方の前記平板部に係止している。
【0007】
本発明に係るせん断力吸収部材では、
前記離間防止部は、
一方の前記平板部における前記吸収部のU字形状の内側に配置された、蟻溝状のメス側レールと、
他方の前記平板部における前記吸収部のU字形状の内側に配置され、前記メス側レールに嵌め込まれたオス側レールと、を有し、
前記メス側レールと前記オス側レールとは、前記平板部の延在方向に沿って配設されており、
前記メス側レールは、前記メス側レールに嵌め込まれた状態で前記メス側レールに沿ってスライド移動可能とされてもよい。
【0008】
本発明に係るせん断力吸収部材では、
前記離間防止部は、一対の前記平板部における前記吸収部のU字形状の内側に配置された一対のレール部を有し、
一対の前記レール部は、前記平板部の延在方向に沿って配設されており、一方の前記レール部に沿って他方の前記レール部がスライド移動可能とされてもよい。
【0009】
本発明に係るせん断力吸収部材では、
前記吸収部を一対で備え、
一対の前記吸収部は、互いの頂部が対向する状態で、それらの前記吸収部のU字形状が同じ仮想の平面上に配置されてもよい。
【0010】
上記目的を達成するための本発明に係る耐震構造は、
上記のせん断力吸収部材と、
一対の構造体を備え、
前記せん断力吸収部材の前記吸収部は、一方の前記平板部を一方の前記構造体に支持されており、他方の前記平板部を他方の前記構造体に支持されている。
【0011】
本発明に係る耐震構造では、
板状の支持部を更に備え、
前記支持部は、
板面が、前記平板部と交差し、且つ、前記平板部の延在方向に沿うように配置され、
前記構造体に支持されており、
前記吸収部は、前記平板部における前記吸収部のU字形状の外側を前記支持部に支持されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、せん断力をより良く吸収することができるせん断力吸収部材及び耐震構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一実施形態の耐震構造の正面図である。
図2】第一実施形態の耐震構造の側面図である。
図3】第一実施形態の耐震構造の上面図である。
図4】第一実施形態のせん断力吸収部材を斜め上から見た斜視図である。
図5】吸収部の側面図である。
図6】吸収部の上面図である。
図7】耐震構造におけるせん断力吸収の態様を説明する図である。
図8】吸収部によるせん断力吸収の態様を説明する図である。
図9】第一実施形態の変形例1における耐震構造の正面図である。
図10】第一実施形態の変形例2における耐震構造の正面図である。
図11】第一実施形態の変形例3における耐震構造の正面図である。
図12】第二実施形態の耐震構造の正面図である。
図13】第二実施形態の変形例1における耐震構造の正面図である。
図14】第二実施形態の変形例2における耐震構造の正面図である。
図15】第二実施形態の変形例3における耐震構造の正面図である。
図16】別のせん断力吸収部材を斜め上から見た斜視図である。
図17】別の吸収部の斜視図である。
図18】別の吸収部によるせん断力吸収の態様を説明する斜視図である。
図19】別の吸収部によるせん断力吸収の態様を説明する上面図である。
図20】別の吸収部によるせん断力吸収の態様を説明する上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係るせん断力吸収部材及び耐震構造について説明する。
【0015】
(第一実施形態)
図1には、本実施形態に係るせん断力吸収部材1及びせん断力吸収部材1を備えた耐震構造100を示している。
【0016】
本実施形態に係るせん断力吸収部材1は、正面視がU字形状で板状の吸収部2と、吸収部2における、U字の内側に配置された離間防止部3と、を備え、離間防止部3は、吸収部2のU字形状における湾曲部29の一端から延出する一方の平板部20と、湾曲部29の他端から延出する他方の平板部20との距離が離れないように、一方の平板部20を他方の平板部20に係止している。
【0017】
本実施形態に係る耐震構造100は、せん断力吸収部材1と、一対の構造体である縦枠8,8とを備え、せん断力吸収部材1の吸収部2,2は、一方の平板部20を一方の縦枠8に支持されており、他方の平板部20を他方の縦枠8に支持されている。
【0018】
せん断力吸収部材1及び耐震構造100では、縦枠8,8間に生じた縦枠8の延在方向に沿うせん断力をより良く吸収することができる。
【0019】
以下、せん断力吸収部材1及び耐震構造100について詳述する。
【0020】
耐震構造100は、例えば建物の壁の構造として採用されうる。建物は、鉄筋コンクリート造の基礎と、柱や梁などの骨組部材で構成された骨組架構と、壁や床などを形成するパネルとを有し、基礎に固定された上部構造体とで構成されてよい。骨組部材やパネルは、予め規格化(標準化)されたものとすることができる。この場合、骨組部材などを予め工場にて製造して建築現場に搬入し、建物を組み立てることができる。耐震構造100は、建物を新たに建築する際に、その一部として組み入れてもよいし、既存の建物に追加して構築してもよい。
【0021】
せん断力吸収部材1及び耐震構造100の構造について説明する。
【0022】
耐震構造100は、一対の構造体である縦枠8,8と、別の一対の構造体である横枠9,9と、せん断力吸収部材1と、を備えた、矩形状の架構である。耐震構造100は、建築物においては、いわゆる、耐力壁を構築することができる。
【0023】
縦枠8,8は、一例として、その延在方向が上下方向(鉛直方向と同じ)に沿って配設された柱部81,82である。柱部81と柱部82とは平行に配設されている。
【0024】
横枠9,9は、一例として、その延在方向が水平方向に沿って配設された上部梁91と下部梁92である。上部梁91と下部梁92とは平行に配設されている。
【0025】
柱部81、柱部82、上部梁91及び下部梁92は、正面視で矩形状の架構である耐震構造100を形成している。
【0026】
本実施形態では、鉛直方向と同じ方向である上下方向の下向きを単に下、上向きを単に上と称して説明する。例えば、下部梁92は上部梁91よりも下側に配置されている。また、柱部81から柱部82に向く向きを右、柱部82から柱部81に向く向きを左と称して説明する。例えば、図1の図示では、図の左側の縦枠8が柱部81、右側の縦枠8が柱部82である。また、本実施形態では、上側から下側を見る視点を上面視、左右方向で見る視点を側面視と称する。また、柱部81、柱部82、上部梁91及び下部梁92と重複する仮想の平面(以下、耐震構造100の仮想面と称する)と直交する方向を奥行き方向と称する。そして、奥行き方向に沿って耐震構造100を見た場合に、柱部81が左手側となる側を、奥行き方向における手前側、柱部81が左手側となる側を、奥行き方向における奥側と称する。また、奥行き方向において、手前側から奥側に向く向きで見る視点を正面視と称する。
【0027】
せん断力吸収部材1は、一例として、柱部81と柱部82とに支持されてよい。せん断力吸収部材1は、柱部81、柱部82、上部梁91及び下部梁92で囲われた領域内に配置される。
【0028】
本実施形態では、せん断力吸収部材1は、耐震構造100の仮想面上に配置されている。換言すると、耐震構造100を左側(柱部81の側)から見た側面視で、図2に示すように、せん断力吸収部材1と柱部81と柱部82(図1参照)とは重複しており、せん断力吸収部材1は、奥行き方向において、耐震構造100の仮想面と同じ位置である。また、耐震構造100の上面視で、図3に示すように、せん断力吸収部材1と上部梁91と下部梁92(図1参照)とは重複しており、せん断力吸収部材1は、奥行き方向において、耐震構造100の仮想面と同じ位置である。このようにせん断力吸収部材1が配置されることで、耐震構造100により構築される耐力壁の厚みを薄く保つことができる。
【0029】
本実施形態では、図1に示すように、耐震構造100においてせん断力吸収部材1は、その左側部を柱部81に支持されており、右側部を柱部82に支持されている。
【0030】
せん断力吸収部材1は、複数の枠材を介して柱部81,82支持されてよい。せん断力吸収部材1は、例えば、柱部81に支持された、枠材71,72,73を介して柱部81に支持されてよい。また、せん断力吸収部材1は、柱部82に支持された枠材75,76,77を介して柱部82に支持されてよい。
【0031】
枠材71,72,73,75,76,77は、直線状(棒状)であってよい。枠材71,72,73は、一端側を柱部81に支持されており、他端側でせん断力吸収部材1を支持している。枠材75,76,77は、一端側を柱部82に支持されており、他端側でせん断力吸収部材1を支持している。以下では、枠材71,72,73,75,76,77のように、せん断力吸収部材1を柱部81,82に支持する枠材を包括して、支持枠等と称する場合がある。
【0032】
枠材71,72,73及び枠材75,76,77は、柱部81,82に沿わせて配置され、これら柱部81,82に固定された補助枠81a,82aを介して柱部81,82に固定されてもよい。
【0033】
枠材71は、柱部82に支持された側からせん断力吸収部材1を支持する側にかけて、右下方向に傾斜して延在する斜材である。枠材72は、柱部82に支持された側からせん断力吸収部材1を支持する側にかけて、水平方向に延在する水平材である。枠材73は、柱部82に支持された側からせん断力吸収部材1を支持する側にかけて、右上方向に傾斜して延在する斜材である。
【0034】
枠材75は、柱部82に支持された側からせん断力吸収部材1を支持する側にかけて、左下方向に傾斜して延在する斜材である。枠材76は、柱部82に支持された側からせん断力吸収部材1を支持する側にかけて、水平方向に延在する水平材である。枠材77は、柱部82に支持された側からせん断力吸収部材1を支持する側にかけて、左上方向に傾斜して延在する斜材である。
【0035】
本実施形態において、せん断力吸収部材1は、図1図4に示すように、正面視がU字形状で板状の吸収部2,2と、吸収部2における、U字の内側に配置された離間防止部3,3と、せん断力吸収部材1を柱部81(図1参照)に支持させる支持部である第一支持部41と、せん断力吸収部材1を柱部82(図1参照)に支持させる支持部である第二支持部42とを備えている。なお、図4は、せん断力吸収部材1を斜め上から見た斜視図である。図4では、一例として、せん断力吸収部材1が、上下方向において面対称である場合を示している。
【0036】
図1に示すように、吸収部2は、柱部81,82がこれらの延在方向に沿って相対移動する際のせん断力(エネルギー)を吸収し、緩衝し、又は、相対移動の速度を減速させるためのエネルギーの吸収機構である。
【0037】
吸収部2は、矩形状の板状部材の一方の端部の板面と他方の端部の板面とが対向するように板状部材を曲げて形成された形状をしている。換言すると、吸収部2は、正面視がU字形状に形成されており、半円状に湾曲した湾曲部29と、湾曲部29の一端から延出する一方の平板部20と、湾曲部29の他端から延出する他方の平板部20とを有する。吸収部2を形成する板状部材は、一枚(一層)の部材であってもよいし、複数枚(二層以上)が積層されたものであってもよい。
【0038】
吸収部2では、その板面が、耐震構造100の仮想面と直交する配置であってよい。本実施形態では、湾曲部29と平板部20,20とは、耐震構造100の仮想面と直交している。
【0039】
吸収部2は、耐震構造100の仮想面上に配置されてよい。本実施形態では、湾曲部29と平板部20,20とは、耐震構造100の仮想面上に配置されている。
【0040】
吸収部2は、平板部20の延在方向が、柱部81,82の延在方向(図1では上下方向と同じ)に沿う配置となるようにして、柱部81,82に対して固定されている。すなわち、平板部20,20は、それぞれ、柱部81,82に沿わせて配置されている。なお、平板部20の延在方向とは、湾曲部29から平板部20が延出する方向のことである。
【0041】
平板部20,20の内、一方の平板部20は、柱部81に近接して配置されている。平板部20,20の内、他方の平板部20は、柱部82に近接して配置されている。
【0042】
せん断力吸収部材1は、図1図4に示すように、吸収部2,2を一対で備えてよい。吸収部2,2は、これらの湾曲部29,29が対向する状態で配置されている。具体的には、湾曲部29,29が一対となり、これら一対の頂部が対向する状態とされている。換言すると、一対の吸収部2,2のU字形状は、柱部81の延在方向に沿った状態で、それぞれ逆方向を向いている。湾曲部29,29同士は、接触してもよいし、離れていてもよい。
【0043】
吸収部2は、図1に示すように、第一支持部41と第二支持部42とにより、平板部20,20をそれぞれ支持されてよい。平板部20,20は、吸収部2のU字形状の外側を、第一支持部41と第二支持部42とにより支持されてよい。図1では、第一支持部41が、柱部81に近接する側(左側)の平板部20を支持し、第二支持部42が、柱部82に近接する側(右側)の平板部20を支持する場合を示している。
【0044】
第一支持部41と第二支持部42とは、それぞれ、板面が平板部20と交差し、且つ、平板部20の延在方向(柱部81の延在方向と同じ)に沿う板状の部材で形成されてよい。
【0045】
本実施形態では、第一支持部41は、奥行き方向において重複し、耐震構造100の仮想面に平行な、一対の板状部材である第一支持板41a,41bを有してよい。また、第二支持部42は、奥行き方向において重複し、耐震構造100の仮想面に平行な、一対の板状部材である第二支持板42a,42bを有してよい。第一支持板41a,41b及び第二支持板42a,42bは、一例として正面視で矩形状である。
【0046】
図4では、第一支持部41が、第一支持板41a,41bに加えて、更に、第一連結板41cを有する場合を示している。第一連結板41cは、長手方向が平板部20の延在方向に沿う矩形状で、平板部20における、吸収部2のU字形状の外側面と平行な板状部材である。
【0047】
第一支持板41aと第一支持板41bとはそれぞれ、吸収部2に近い側の端部が第一連結板41cにおける、奥行き方向のそれぞれの端部と接続されている。第一支持部41は、上面視で、第一支持板41a,41bと第一連結板41cとが、角張ったU字形状(カタカナのコの字形状)を形成している。換言すると、第一支持板41a,41bは、第一連結板41cにおける、奥行き方向のそれぞれの端部おいて、左右方向に沿って延出するように立設されている。
【0048】
第二支持部42は、第一支持部41と同様に、第二支持板42a,42bと第二連結板42cとを有してよい。第二支持部42は、第一支持部41と同様に、上面視で角張ったU字形状とされてよい。
【0049】
第一支持部41は、例えば一枚の板状部材を曲げ加工して第一支持板41a、第一連結板41c及び第一支持板41bを形成されてもよいし、第一連結板41cの両端部に第一支持板41a,41bを溶接などで接合されたものであってもよい。第二支持部42も第一支持部41と同様にして上面視で角張ったU字形状とすることができる。
【0050】
図4では、吸収部2が、平板部20,20を、第一連結板41cと第二連結板42cとを介して第一支持板41a,41bと第二支持板42a,42bとに支持されている場合を例示して示している。平板部20,20は、第一連結板41c、第二連結板42cに、溶接やボルト締めなどにより固定されて支持されてよい。
【0051】
なお、第一支持部41及び第二支持部42は、それぞれの平板部20における、湾曲部29とは反対側の端部寄りの位置を支持している。図4図5及び図6では、平板部20における湾曲部29の側の平板状の部分を中間平板部20bとして示し、平板部20における中間平板部20bよりも湾曲部29よりも遠い位置(湾曲部29とは反対側の端部寄りの位置)の平板状の部分を先端平板部分20aとして示している。吸収部2は、先端平板部分20a,20aを第一支持部41と第二支持部42とで支持されるとよい。例えば、先端平板部分20a,20aと第一連結板41c、第二連結板42cとが固定されてよい。
【0052】
本実施形態では、せん断力吸収部材1が吸収部2,2を備えているが、それぞれの吸収部2は、相対位置を固定されてよい。図4に示す例では、対になる吸収部2,2が、それぞれの左側(図1では柱部81に近接する側)の平板部20,20を一対として一つの第一支持部41(第一連結板41c)で支持されて、相対位置を固定されている。また、対になる吸収部2,2が、それぞれの右側(図1では柱部82に近接する側)の平板部20,20を一対として一つの第二支持部42(第二連結板42c)で支持されて、相対位置を固定されている。
【0053】
図1に示すように、枠材71,72,73は、第一支持部41における、第一支持板41a,41b(図4参照)に挟み込まれた状態で、溶接やボルト締めなどにより第一支持部41に固定されてよい。これにより吸収部2が柱部81に対して固定される。吸収部2を2枚の板状部材である第一支持板41a,41bを介して柱部81に固定することで、一枚の板状部材で固定する場合よりも頑丈に固定することができる。これにより、耐震構造100の耐力が向上する。
【0054】
また、枠材75,76,77は、第二支持部42における、第二支持板42a,42b(図4参照)に挟み込まれた状態で、溶接やボルト締めなどにより第二支持部42に固定されてよい。これにより吸収部2が柱部82に対して固定される。吸収部2を2枚の板状部材である第二支持板42a,42bを介して柱部82に固定することで、一枚の板状部材で固定する場合よりも頑丈に固定することができる。これにより、耐震構造100の耐力が向上する。
【0055】
離間防止部3は、平板部20,20がこれらの延在方向に沿った相対移動をすることを許容しつつ、平板部20,20同士の、吸収部2のU字形状におけるU字の幅方向(図1では、左右方向と同じ、以下、吸収部2の幅方向と称する場合がある)の距離が離れないように(幅方向に離間しないように)、一方の平板部20を他方の平板部20に係止する係止部材である。
【0056】
離間防止部3は、平板部20,20の間、すなわち、吸収部2のU字形状の内側に配置されている。これにより、奥行き方向における吸収部2の厚みが厚くなることを防止して、耐震構造100の奥行き方向における厚みが厚くなることを防止することができる。耐震構造100で耐力壁を構成する場合は、耐力壁が薄くても耐力の高いものになる。
【0057】
離間防止部3の一例は、レール状機構である。図4から図6には、離間防止部3が、蟻溝状のレール機構である場合を例示している。
【0058】
離間防止部3は、一例として、吸収部2をそのU字形状における上方から見た場合にT字形状をしているオス側レール31と、オス側レール31が係合する蟻溝状又はTスロット状の溝部32aを有するメス側レール32とを有する。
【0059】
オス側レール31は、一方の平板部20(平板部21)における、吸収部2のU字形状の内側面に配置され、平板部20から突出した形状をしている。オス側レール31の突出形状における先端側、すなわち、他方の平板部20(平板部22)に近い側は、基端側よりも、奥行き方向の幅が幅広に形成された幅広部31aとされている。
【0060】
メス側レール32は、オス側レール31が配置された平板部20(平板部21)に対して他方の平板部20(平板部22)に配置されている。メス側レール32は、吸収部2のU字形状の内側面に配置されている。メス側レール32の溝部32aには、オス側レール31の幅広部31aが嵌り込む。溝部32aは、幅広部31aが平板部20の延在方向にスライド移動することを許容し、且つ、幅広部31aが吸収部2の幅方向においてメス側レール32から離間する(遠ざかる)ことを禁止する。これにより、離間防止部3は、平板部20,20がこれらの延在方向に沿った相対移動をすることを許容しつつ、平板部20,20同士の、吸収部2のU字形状におけるU字の幅方向の距離が離れないように、一方の平板部20を他方の平板部20に係止する離間防止機能を実現する。奥行き方向において、溝部32aにおけるオス側レール31から離間している側の溝幅は、オス側レール31に対向(近接)する側の幅よりも広くなっている。
【0061】
オス側レール31とメス側レール32との平板部20の延在方向に沿う長さは、耐震構造100の上下方向の幅及び左右方向の幅と、耐震構造100で許容する変形量(柱部81,82間の、これらの延在方向に沿う方向での相対的な変位量)に基づいて定める。すなわち、オス側レール31とメス側レール32との長さは、上記変形量の範囲でオス側レール31とメス側レール32との係合が解除されず、離間防止機能を維持する長さとする。これにより、後述するように、吸収部2におけるせん断力の吸収等が可能となる。
【0062】
図1に示すように、耐震構造100では、一対の構造体の一例である柱部81,82間に、2以上のせん断力吸収部材1を配置されてよい。この場合、せん断力吸収部材1は、柱部81の延在方向に沿って、例えば等間隔で配列されてよい。図1では、一つのせん断力吸収部材1と、このせん断力吸収部材1と組になる支持枠等とを、機構Aと称した場合、この機構Aが、柱部81,82間において、柱部81の延在方向に沿って配列されている場合を例示して示している。隣り合う機構A,Aは接触又は当接している必要は無く、離間してよい。耐震構造100が複数のせん断力吸収部材1(機構A)を有することで、耐震構造100の耐力が向上する。
【0063】
中間平板部20bの、平板部20の延在方向に沿う長さは、耐震構造100の上下方向の幅及び左右方向の幅と、耐震構造100で許容する変形量(柱部81,82間の、これらの延在方向に沿う方向での相対的な変位量)に基づいて定める。すなわち、中間平板部20bの長さは、上記変形量を許容する長さとする。これにより、後述するように、吸収部2におけるせん断力の吸収等が可能となる。
【0064】
引き続いて、せん断力吸収部材1及び耐震構造100の動作及び機能について説明する。
【0065】
図7に示すように、柱部81,82がこれらの延在方向に沿って相対移動する際には、せん断力吸収部材1の吸収部2が変形して柱部81,82が相対移動する際のせん断力等を吸収などする。
【0066】
具体的には、図8に示すように、吸収部2では、平板部20,20がこれら柱部81,82(図7参照)の延在方向に沿って相対移動する。この平板部20,20が相対移動する際に、湾曲部29及び湾曲部29に連なる平板部20,20の端部である中間平板部20b,20bに曲げ力が加わる。具体的には、一方の中間平板部20bには、湾曲するように曲げ力が加わり、湾曲部29には平板状となるように曲げ戻す力が加わる。なお、他方の中間平板部20bは移動するのみである。これら湾曲部29及び中間平板部20b,20bは、この曲げ力によって変形する際に、柱部81,82が相対移動する際のせん断力を吸収し、緩衝し、又は、相対移動の速度を減速させる。
【0067】
上記のようにして吸収部2で柱部81,82が相対移動する際のせん断力等を吸収する際、平板部20,20は、離間防止部3によって、吸収部2の幅方向への離間を阻害される。これにより、平板部20,20が吸収部2の幅方向へ離間した場合における吸収部2でのせん断力等の吸収能の低下が回避される。吸収部2が離間防止部3を有することで、吸収部2が吸収することができるせん断力等のエネルギーは、離間防止部3を有しない場合の例えば2倍以上となる。
【0068】
中間平板部20bの、平板部20の延在方向に沿う長さが耐震構造100で許容する変形量を許容する長さであれば、湾曲部29及び中間平板部20b,20bが変形してせん断力を吸収する場合に、この長さの範囲で中間平板部20b,20bが変形しろとして機能する。
【0069】
なお、本実施形態で説明したせん断力吸収部材1及び耐震構造100は、左右を入れ替えた構造であっても同様に成り立つ。
【0070】
以上のようにして、せん断力吸収部材1及び耐震構造100では、離間防止部3で平板部20,20が吸収部2の幅方向へ離間することを防止して、縦枠8,8のような一対の構造体間のせん断力をより良く吸収することができるのである。
【0071】
(第一実施形態の変形例1)
第一実施形態の耐震構造100では、せん断力吸収部材1を支持する支持枠等を省略することもできる。
【0072】
図9では、せん断力吸収部材1が、一方の縦枠8(柱部81)に直接固定されて支持された第一支持部41と、他方の縦枠8(柱部82)に直接固定されて支持された第二支持部42とで縦枠8,8(柱部81,82)に支持されている場合の変形例を例示している。
【0073】
また、図9では、せん断力吸収部材1(機構A)が4つ配列されている場合を例示している。
【0074】
この変形例では、第一支持部41の第一支持板41aが柱部81に、複数個所の点溶接や、柱部81の延在方向に沿って一定間隔で非溶接部分が存在する、複数個所の線溶接で直接固定されてよい。第一支持板41b(図4参照)も第一支持板41aと同様であってよい。また、第二支持部42の第二支持板42aが柱部81に、点溶接や線溶接で直接固定されてよい。第二支持板42b(図4参照)も第二支持板42aと同様であってよい。
【0075】
例えば上部梁91が水平方向に移動し、これに伴って柱部81,82がその延在方向に沿って相対移動する場合、耐震構造100における、隣接するせん断力吸収部材1,1の中間位置、すなわち、機構A,A間の境界部分に加わる曲げモーメントはゼロになる。また、この境界部分近傍に加わる曲げモーメントは、この境界部分よりも遠い部分に加わるまげモーメントに比べて小さくなる。このため、第一支持板41aにおける上下方向の幅は、柱部81に近い側が広く、柱部81から遠い側が狭くされてよい。第一支持板41b(図4参照)も第一支持板41aと同様であってよい。また、第二支持板42aにおける上下方向の幅は、柱部82に近い側が広く、柱部82から遠い側が狭くされてよい。第二支持板42b(図4参照)も第二支持板42aと同様であってよい。これらのごとく、第一支持板41a,41b及び第二支持板42a,42bの幅を、柱部81,82から離れるほど狭く変化させることで、第一支持板41a,41b及び第二支持板42a,42bを正面視で矩形状とした場合と比べて、耐震構造100の耐力を弱めることなく耐震構造100の重量を削減し、また、必要な資材を削減することができる。
【0076】
(第一実施形態の変形例2)
耐震構造100において、せん断力吸収部材1は、図10に示すように、一方の縦枠8(柱部81)に対して第一支持部41を直接固定され、他方の縦枠8(柱部82)に対しては支持枠等を介して固定されてもよい。図10では、第一支持部41が第一連結板41cのみの場合を例示しており、第一支持部41としての第一連結板41cが一方の縦枠8に直接固定されている場合を示している。
【0077】
(第一実施形態の変形例3)
耐震構造100において、せん断力吸収部材1は、図11に示すように、一方の縦枠8(柱部81)に対して第一支持部41としての第一連結板41cを直接固定され、他方の縦枠8(柱部82)に対しては第二支持部42の第二支持板42aなどを直接固定されてもよい。
【0078】
なお、上記変形例で説明したせん断力吸収部材1及び耐震構造100は、耐震構造100の構造の左右が反転したような場合においてもこれら変形例と同様の変形が成り立つ。例えば、第一支持部41と第二支持部42とは、左右を相互に入れ替え可能であり、第一又は第二との称呼の区別は、本実施形態における説明の便宜である。
【0079】
(第二実施形態)
第一実施形態では、耐震構造100において、せん断力吸収部材1が、その吸収部2の平板部20の延在方向が縦枠8,8(柱部81,82)の延在方向に沿う配置となる向きであり、吸収部2の平板部20,20が柱部81,82に対して固定されている場合を説明した。第二実施形態では、図12に示すように、せん断力吸収部材1の向きが第一実施形態とは異なり、その吸収部2の平板部20の延在方向が横枠9,9(上部梁91と下部梁92)の延在方向に沿う配置となる向きとされている。以下の説明では、第一実施形態との相違点を中心に説明し、同じ部分については適宜説明を省略する。
【0080】
本実施形態に係る耐震構造100は、せん断力吸収部材1と、一対の構造体である横枠9,9である上部梁91と下部梁92とを備え、せん断力吸収部材1の吸収部2,2は、一方の平板部20を一方の横枠9である上部梁91に支持されており、他方の平板部20を他方の横枠9である下部梁92に支持されている。
【0081】
せん断力吸収部材1及び耐震構造100では、上部梁91と下部梁92と間に生じた上部梁91の延在方向に沿うせん断力をより良く吸収することができる。
【0082】
せん断力吸収部材1は、上部梁91に一端を支持された枠材71,75を介して第一支持部41を支持されてよい。また、下部梁92に一端を支持された枠材73,77を介して第二支持部42を支持されてよい。なお、枠材71,73,75,77は、これらの一端を、上部梁91と柱部81とが交差する隅部、下部梁92と柱部81とが交差する隅部、上部梁91と柱部82とが交差する隅部及び下部梁92と柱部82とが交差する隅部で支持されてよい。枠材71,75は、他端側を、第一支持部41の第一支持板41a,41b(図4参照)に挟み込まれた状態で、第一支持部41に固定されてよい。枠材73,77は、他端側を、第二支持部42の第二支持板42a,42b(図4参照)に挟み込まれた状態で、第二支持部42に固定されてよい。
【0083】
以上のようにして、せん断力吸収部材1及び耐震構造100では、離間防止部3で平板部20,20が吸収部2の幅方向へ離間することを防止して、横枠9,9のような一対の構造体間のせん断力をより良く吸収することができるのである。
【0084】
(第二実施形態の変形例1)
第二実施形態の耐震構造100では、第一実施形態の変形例1の場合と同様に、せん断力吸収部材1を支持する支持枠等を省略することもできる。
【0085】
図13では、せん断力吸収部材1が、上部梁91に直接固定された第一支持部41と、下部梁92に直接固定された第二支持部42とで上部梁91及び下部梁92に支持されている場合の変形例を例示している。
【0086】
(第二実施形態の変形例2)
耐震構造100において、せん断力吸収部材1は、図14に示すように、一方の横枠9(上部梁91)に対して第一支持部41を直接固定され、他方の横枠9(下部梁92)に対しては支持枠等を介して固定されてもよい。図14では、第一支持部41が第一連結板41cのみの場合を例示しており、第一支持部41としての第一連結板41cが、一方の横枠9(上部梁91)に直接固定されている場合を示している。なお、図示は省略するが、耐震構造100の構造の上下が反転したような場合においてもこの変形例と同様の変形が成り立つ。
【0087】
(第二実施形態の変形例3)
耐震構造100において、せん断力吸収部材1は、図15に示すように、一方の横枠9(上部梁91)に対しては第一支持部41の第一支持板41aなどを直接固定され、他方の横枠9(下部梁92)に対して第二支持部42としての第二連結板42cを直接固定されてもよい。
【0088】
なお、上記変形例で説明したせん断力吸収部材1及び耐震構造100は、耐震構造100の構造の一部の上下が反転したような場合においてもこれら変形例と同様の変形が成り立つ。例えば、第一支持部41と第二支持部42とは、左右を相互に入れ替え可能であり、第一又は第二との称呼の区別は、本実施形態における説明の便宜である。
【0089】
以上のようにして、せん断力をより良く吸収することができるせん断力吸収部材及び耐震構造を提供することができる。
【0090】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、せん断力吸収部材1が吸収部2を二つ備えている場合を例示して説明した。しかし、せん断力吸収部材1は、吸収部2を一つのみ備えてもよい。吸収部2において、平板部20,20が吸収部2の幅方向へ離間することを離間防止部3で防止できれば、せん断力吸収部材1は耐震構造100に生じたせん断力等を良く吸収することができる。
【0091】
(2)上記実施形態では、平板部21にオス側レール31が配置され、平板部22にメス側レール32が配置されている場合を例示して説明したが、これらの組み合わせは逆でもよい。また、平板部21,22、オス側レール31及びメス側レール32と、柱部81,82との位置関係又は上部梁91及び下部梁92との位置関係の組み合わせは特に制限されない。
【0092】
(3)上記実施形態では、第一支持部41が、第一支持板41a,41bと第一連結板41cとを有する場合を説明した。また、第二支持部42が、第二支持板42a,42bと第二連結板42cとを有する場合を説明した。そして、平板部20,20は、第一連結板41c、第二連結板42cに固定されて支持されてよいことを説明した。しかし、第一支持部41及び第二支持部42は、第一連結板41c及び第二連結板42cが省略されたものであってもよい。この場合、図16に示すように、平板部20,20の先端平板部分20a,20aは、第一支持板41a,41b、第二支持板42a,42bに、溶接などにより固定されて支持されてよい。
【0093】
(4)上記実施形態において、一対の構造体である縦枠8,8又は横枠9,9における、構造体同士の距離は適宜定めてよい。なお、一対の構造体間の距離、例えば縦枠8,8間の距離又は横枠9,9間の距離は、広くなると、縦横比の関係から、一つのせん断力吸収部材で許容される、各構造体に交差する方向の力(例えば、縦枠8,8に対する水平力)を高めることができる。
【0094】
(5)上記実施形態では、図4などに示すように、離間防止部3が、吸収部2をそのU字形状における上方から見た場合にT字形状をしているオス側レール31と、オス側レール31が係合する蟻溝状又はTスロット状の溝部32aを有するメス側レール32とを有する場合を例示して説明した。また、オス側レール31は、一方の平板部20における、吸収部2のU字形状の内側面に配置されており、メス側レール32は、オス側レール31が配置された平板部20に対して他方の平板部20に配置されている場合を例示して説明した。しかし、離間防止部3は、オス側レール31と、オス側レール31が係合するメス側レール32とを有する場合に限られない。離間防止部3は、上記実施形態で説明したように、平板部20,20がこれらの延在方向に沿った相対移動をすることを許容しつつ、平板部20,20同士が吸収部2の幅方向に離間しないように、一方の平板部20を他方の平板部20に係止するものであればよい。
【0095】
離間防止部3は、図17図18に示す吸収部2の斜視図のごとく、平板部20の延在方向に沿って配設されたL字状レール部36,36や、図19図20に示す吸収部2の上面図のごとく、平板部20の延在方向に沿って配設されており、L字形状の内側がより鋭角に屈曲した、カタカナのレ字状レール部37,37を有するように構成されてもよい。
【0096】
図17図18に示す吸収部2では、離間防止部3は、平板部20,20における、吸収部2のU字形状の内側面に配置され、一方の平板部20から他方の平板部20に向けて延出し、他方の平板部20に近接する側の端部が、奥行き方向に向けて(幅方向に対して交差するように)アルファベットのL字形状に屈曲したL字状レール部36,36で構成されている。L字状レール部36,36は、一方のL字状レール部36に沿って他方のL字状レール部36がスライド移動可能とされている。
【0097】
図17図18に示す例では、平板部20,20における、吸収部2のU字形状の内側面に配置され、一方の平板部20から他方の平板部20に向けて延出する板状の係合板部35,35の側面(奥行き方向に向く一方の面)に、平板部20の延在方向に沿う溝状の係合溝部35a,35aが形成されている。係合板部35,35同士は平行であってよい。係合板部35は、平板部20に対して垂直に立接されてよい。図17図18に示す例では、係合板部35が平板部20に対して垂直に立接されている場合を示している。係合溝部35aの形成により、係合板部35では、他方の平板部20に近接する側の端部に、平板部20の延在方向に沿う方向に幅の広い(すなわち、レール部分が平板部20の延在方向に沿って延在する)L字状レール部36が形成されている。
【0098】
図18に示すように、L字状レール部36,36は、オス側レール31及びメス側レール32(図8参照)と同様に、一方のL字状レール部36のL字形状の内側部分に他方のL字状レール部36のL字形状の内側部分が係合し(一方の係合板部35の係合溝部35aに他方の係合板部35のL字状レール部36のL字形状の先端部が嵌り込んで係合し)、平板部20,20の、その延在方向へのスライド移動を許容しつつ、これらが吸収部2の幅方向において離間すること(平板部20,20の板面間の距離が離れること)を禁止する。
【0099】
図17図18に示したような、L字状レール部36,36を有する離間防止部3は、図4などに示すような、オス側レール31とメス側レール32とを有する離間防止部3よりも、離間防止部3の材積や質量を小さくすることができる場合がある。また、離間防止部3の構造の形成が容易となる場合がある。また、離間防止部3を構築するための部品点数を少なくすることができる場合がある。また、このような、係合板部35に係合溝部35aを設けてL字状レール部36が形成されている離間防止部3は、係合溝部35aを設けず、係合板部35全体をL字形状とする場合と比べて、切削加工でこれを製造する場合に切削量が少なく、せん断力吸収部材として組付けられたのちは、L字状レール部36,36同士の係合の安定性が高く、また、偏心距離が小さくより捩じれ難い。
【0100】
図19図20に示す吸収部2では、離間防止部3は、平板部20,20における、吸収部2のU字形状の内側面に配置され、一方の平板部20から他方の平板部20に向けて延出し、他方の平板部20に近接する側の端部が、一方の平板部20に近接する側に折り返す、カタカナのレ字形状(アルファベットのL字形状よりも鋭角に屈曲した形状、角張ったL字形状)に屈曲したレ字状レール部37,37で構成されている。一例として、レ字状レール部37は、L字形状の先端部分が、根元側(係合溝部35bの底部側、以下、係合溝部35bの底部を単に底部と称する)よりも一方の平板部20に近接する側に向けて吸収部2の幅方向において広がる拡大部36aを有することで、レ字形状とされてよい。レ字状レール部37,37は、一方のレ字状レール部37に沿って他方のレ字状レール部37がスライド移動可能とされている。
【0101】
図19図20に示す例では、レ字状レール部37のレ字形状の内側空間が、平板部20の延在方向に沿う溝状の係合溝部35bとなっている。すなわち、レ字状レール部37は、平板部20,20における、吸収部2のU字形状の内側面に配置され、一方の平板部20から他方の平板部20に向けて延出する板状の係合板部35,35の側面(奥行き方向に向く一方の面)に、平板部20の延在方向に沿う溝状の係合溝部35b,35bが形成されて、レ字状とされている。
【0102】
係合溝部35bは、係合板部35の表面側から凹み、底部に向かうほど、一方の平板部20の側から他方の平板部20に向けて広がる形状をした溝となる。
【0103】
係合板部35のレ字状レール部37のレ字形状の先端側における、レ字形状の内側の面である内側面37aは、係合板部35が支持されている側の平板部20に対して、底部に向かうほど離間する方向に傾斜している。
【0104】
係合板部35,35同士は平行であってよい。係合板部35は、平板部20に対して垂直に立接されてもよいし、平板部20に対してやや傾斜して立接されてもよい。図19に示す例では、係合板部35が平板部20に対して垂直に立接されている場合を示している。図20に示す例では、係合板部35が平板部20に対して奥行き方向にやや傾斜して立接されている場合を示している。すなわち、図20に示す例では、レ字状レール部37のレ字形状が、奥行き方向に傾斜している。
【0105】
図19図20に示すように、レ字状レール部37,37は、L字状レール部36,36(図17図18参照)と同様に、一方のレ字状レール部37のレ字形状の内側部分に他方のレ字状レール部37のレ字形状の内側部分が係合し(一方の係合板部35の係合溝部35bに他方の係合板部35のレ字状レール部37のレ字形状の先端部が嵌り込んで係合し)、平板部20,20の、その延在方向へのスライド移動を許容しつつ、これらが吸収部2の幅方向において離間すること(平板部20,20の板面間の距離が離れること)を禁止する。換言すると、レ字状レール部37,37は、一方のレ字状レール部37の係合溝部35bと、他方のレ字状レール部37の係合溝部35bとを噛み合わせてスライド移動可能とされつつ、平板部20,20の板面間の距離が離れることを禁止している。
【0106】
図19図20に示したような、レ字状レール部37,37を有する離間防止部3は、L字状レール部36,36(図17図18参照)を有する離間防止部3と同様に離間防止部3の材積や質量を小さくすることができる場合がある。また、この離間防止部3は、レ字状レール部37,37の係合の安定性が高く、また、偏心距離が小さくより捩じれ難い。
【0107】
この離間防止部3は、内側面37aが係合板部35が支持されている側の平板部20に対して、底部に向かうほど離間する方向に傾斜しているため、L字状レール部36,36(図17図18参照)を有する離間防止部3と比べて、レ字状レール部37,37同士を離間させる力に対してよりよく抵抗し、内側面37a,37a同士が離間しにくくなっている。
【0108】
特に図20に示すように係合板部35が平板部20に対してやや傾斜して立接されている場合は、レ字状レール部37,37にねじれモーメントが生じにくくなって、これによりレ字状レール部37,37同士の係合の安定性がより高まって、離間防止部3が更に捩じれ難いものとなる。
【0109】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明は、せん断力吸収部材及び耐震構造に適用できる。
【符号の説明】
【0111】
1 :せん断力吸収部材
100 :耐震構造
2 :吸収部
20 :平板部
20a :先端平板部分
20b :中間平板部
21 :平板部
22 :平板部
29 :湾曲部
3 :離間防止部
31 :オス側レール
31a :幅広部
32 :メス側レール
32a :溝部
35 :係合板部
35a :係合溝部
35b :係合溝部
36 :L字状レール部
37 :レ字状レール部
37a :内側面
41 :第一支持部
41a :第一支持板
41b :第一支持板
41c :第一連結板
42 :第二支持部
42a :第二支持板
42b :第二支持板
42c :第二連結板
71 :枠材
72 :枠材
73 :枠材
75 :枠材
76 :枠材
77 :枠材
8 :縦枠(構造体)
81 :柱部
81a :補助枠
82 :柱部
82a :補助枠
9 :横枠(構造体)
91 :上部梁
92 :下部梁
A :機構
図1
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