(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127731
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】エアバッグ収納カバー及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/215 20110101AFI20240912BHJP
C08K 5/01 20060101ALI20240912BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B60R21/215
C08K5/01
C08L23/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023204766
(22)【出願日】2023-12-04
(31)【優先権主張番号】P 2023034738
(32)【優先日】2023-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】山條 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】小座間 洋子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 美結
(72)【発明者】
【氏名】佐野 真由
【テーマコード(参考)】
3D054
4J002
【Fターム(参考)】
3D054BB24
4J002BB05X
4J002BB12W
4J002BB14W
4J002BB15X
4J002BP02W
4J002BP03W
4J002EA016
4J002FD026
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】低温耐衝撃性、成形性及び耐ブリードアウト性のうち、少なくとも一つが改善された熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバーを提供する。
【解決手段】下記成分(A)~(C)を含む熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバー。下記成分(A)~成分(C)を含む熱可塑性エラストマー組成物を得る工程と、当該熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してエアバッグ収納カバーを得る工程とを含むエアバッグ収納カバーの製造方法。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体
成分(C):イソアルカン混合物
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含む熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバー。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体
成分(C):イソアルカン混合物
【請求項2】
前記成分(A)は、プロピレン単独重合体及びプロピレン系ブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項3】
前記成分(A)は、プロピレン系ブロック共重合体を含む、請求項2に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項4】
前記プロピレン系ブロック共重合体が、プロピレン単位含有率が90~100質量%であるブロック(a1)と、プロピレン単位含有率が30~70質量%であり、かつエチレン単位含有率が30~70質量%であるブロック(a2)とを有する、請求項3に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項5】
前記プロピレン系ブロック共重合体のブロック(a1)とブロック(a2)の合計量に対するブロック(a2)の含有率が3質量%以上70質量%以下である、請求項4に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項6】
前記成分(A)100質量部に対して、前記成分(C)を0.1質量部以上30質量部以下含む、請求項1に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項7】
前記成分(C)の流動点が-60℃以上0℃以下である、請求項1又は2に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項8】
前記成分(C)の40℃における動粘度が15cSt以上8000cSt以下である、請求項1又は2に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項9】
前記成分(C)をFD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される主要な構成単位が、分子式C16H34及びC16H32の少なくとも一方で表される、請求項1又は2に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項10】
前記成分(C)が、主成分として、前記成分(C)をFD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される分子式C48H96及びC48H98で表される化合物のうち、少なくとも一方を含有する、請求項1又は2に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項11】
前記成分(C)が、主成分として、前記成分(C)をFD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される分子式C48H96及びC48H98で表される化合物のうち、少なくとも一方を含有する、請求項9に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項12】
前記成分(C)が、主成分として、FD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される分子式CnH2n+2及びCnH2n(40≦n<60)で表される化合物のうち、少なくとも一方を含有するイソアルカン混合物である、請求項1又は2に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項13】
前記成分(C)が、更に、前記成分(C)をFD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される分子式CnH2n+2及びCnH2n(30≦n<40)で表される化合物のうち、少なくとも一方を含有する、請求項12に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項14】
前記成分(C)が、更に、前記成分(C)をFD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される分子式CnH2n+2及びCnH2n(60≦n≦80)で表される化合物のうち、少なくとも一方を含有する、請求項12に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項15】
前記成分(C)が、更に、前記成分(C)をFD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される分子式CnH2n+2及びCnH2n(30≦n<40)で表される化合物のうちの少なくとも一方と、分子式CnH2n+2及びCnH2n(60≦n≦80)で表される化合物のうちの少なくとも一方とを含有する、請求項12に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項16】
前記成分(B)のα-オレフィンの炭素数が3~8である、請求項1又は2に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項17】
前記成分(B)が、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体及びエチレン・α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項16に記載のエアバッグ収納カバー。
【請求項18】
下記成分(A)~成分(C)を含む熱可塑性エラストマー組成物を得る工程と、当該熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してエアバッグ収納カバーを得る工程とを含むエアバッグ収納カバーの製造方法。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体
成分(C):イソアルカン混合物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物よりなるエアバッグ収納カバーに関する。本発明はまた、このエアバッグ収納カバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エアバッグシステムは自動車等の衝突の際に運転手や搭乗者を保護するシステムであり、衝突の際の衝撃を感知する装置とエアバッグ装置とからなる。このエアバッグ装置は、ステアリングホイール、助手席前方のインストルメントパネル、運転席及び助手席のシート、フロント及びサイドピラー等に設置される。
【0003】
エアバッグ装置におけるエアバッグ収納カバーについては、エアバッグ膨張時に設計通りに開裂するように、その構造や材質において種々提案がなされている
【0004】
エアバッグ収納カバーの材料として、例えば、特許文献1ではプロピレン系重合体とエチレン・α-オレフィン共重合体の組み合わせ、特許文献2では、プロピレン系重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、及びスチレン系共重合体の組み合わせが提案されている。また、特許文献3では、プロピレン系重合体、エチレン・α-オレフィン共重合体、及びスチレン系共重合体と、ゴム用炭化水素系軟化剤を組み合わせるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-077128号公報
【特許文献2】特開2021-147469号公報
【特許文献3】特開2019-038925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、エアバッグ展開出力向上に対応した安全性の強化、設計の自由度等の観点から、低温耐衝撃性や成形性がより改善された材料の開発が望まれている。しかしながら、本発明者らの詳細な検討によれば、前記特許文献1~3に記載されているような従来のエアバッグ収納カバー向けの樹脂とエラストマーの組み合わせでは、低温耐衝撃性や成形性の観点で改良の余地があった。
【0007】
また、特許文献3のように、成形性を向上させる観点からゴム用炭化水素系軟化剤を加えると、一定の条件では、ゴム用炭化水素系軟化剤に由来する低分子量成分のブリードアウトにより、エアバッグ収納カバー表面のベタツキや、塗装後の塗装剥がれの問題が発生する場合があることがわかった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題に鑑みてなされたものであり、低温耐衝撃性、成形性及び耐ブリードアウト性のうち、少なくとも一つが改善された熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の成分(A)と成分(B)と成分(C)を含む熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバーが上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0011】
[1] 下記成分(A)~(C)を含む熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバー。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体
成分(C):イソアルカン混合物
【0012】
[2] 前記成分(A)は、プロピレン単独重合体及びプロピレン系ブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[1]に記載のエアバッグ収納カバー。
【0013】
[3] 前記成分(A)は、プロピレン系ブロック共重合体を含む、[2]に記載のエアバッグ収納カバー。
【0014】
[4] 前記プロピレン系ブロック共重合体が、プロピレン単位含有率が90~100質量%であるブロック(a1)と、プロピレン単位含有率が30~70質量%であり、かつエチレン単位含有率が30~70質量%であるブロック(a2)とを有する、[3]に記載のエアバッグ収納カバー。
【0015】
[5] 前記プロピレン系ブロック共重合体のブロック(a1)とブロック(a2)の合計量に対するブロック(a2)の含有率が3質量%以上70質量%以下である、[4]に記載のエアバッグ収納カバー。
【0016】
[6] 前記成分(A)100質量部に対して、前記成分(C)を0.1質量部以上30質量部以下含む、[1]~[5]のいずれかに記載のエアバッグ収納カバー。
【0017】
[7] 前記成分(C)の流動点が-60℃以上0℃以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のエアバッグ収納カバー。
【0018】
[8] 前記成分(C)の40℃における動粘度が15cSt以上8000cSt以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のエアバッグ収納カバー。
【0019】
[9] 前記成分(C)をFD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される主要な構成単位が、分子式C16H34及びC16H32の少なくとも一方で表される、[1]~[8]のいずれかに記載のエアバッグ収納カバー。
【0020】
[10] 前記成分(C)が、主成分として、前記成分(C)をFD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される分子式C48H96及びC48H98で表される化合物のうち、少なくとも一方を含有する、[1]~[9]のいずれかに記載のエアバッグ収納カバー。
【0021】
[11] 前記成分(C)が、主成分として、FD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される分子式CnH2n+2及びCnH2n(40≦n<60)で表される化合物のうち、少なくとも一方を含有するイソアルカン混合物である、[1]~[10]のいずれかに記載のエアバッグ収納カバー。
【0022】
[12] 前記成分(C)が、更に、前記成分(C)をFD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される分子式CnH2n+2及びCnH2n(30≦n<40)で表される化合物のうち、少なくとも一方を含有する、[11]に記載のエアバッグ収納カバー。
【0023】
[13] 前記成分(C)が、更に、前記成分(C)をFD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される分子式CnH2n+2及びCnH2n(60≦n≦80)で表される化合物のうち、少なくとも一方を含有する、[11]又は[12]に記載のエアバッグ収納カバー。
【0024】
[14] 前記成分(C)が、更に、前記成分(C)をFD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される分子式CnH2n+2及びCnH2n(30≦n<40)で表される化合物のうちの少なくとも一方と、分子式CnH2n+2及びCnH2n(60≦n≦80)で表される化合物のうちの少なくとも一方とを含有する、[11]~[13]のいずれかに記載のエアバッグ収納カバー。
【0025】
[15] 前記成分(B)のα-オレフィンの炭素数が3~8である、[1]~[14]のいずれかに記載のエアバッグ収納カバー。
【0026】
[16] 前記成分(B)が、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体及びエチレン・α-オレフィンブロック共重合体からなる群から選択される少なくとも1種を含む、[15]に記載のエアバッグ収納カバー。
【0027】
[17] 下記成分(A)~成分(C)を含む熱可塑性エラストマー組成物を得る工程と、当該熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してエアバッグ収納カバーを得る工程とを含むエアバッグ収納カバーの製造方法。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体
成分(C):イソアルカン混合物
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、低温耐衝撃性、成形性及び耐ブリードアウト性のうち、少なくとも一つが改善された熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】FD-MSスペクトルの一例を示すチャートである。
【
図2】FD-MSスペクトルの他の例を示すチャートである。
【
図3】FD-MSスペクトルの別の例を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の内容に限定されない。本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後に記載される数値あるいは物性値を含む意味で用いることとする。また、上限、下限として記載した数値あるいは物性値は、その値を含む意味で用いることとする。
【0031】
なお、本発明において「エアバッグ収納カバー」とは、エアバッグを収納する容器全般
を意味するものであり、例えば、エアバッグが収納されている容器において、エアバッグ
が展開する際の開口部、又はこの開口部と一体となっている容器全体である。
【0032】
〔エアバッグ収納カバー〕
本発明のエアバッグ収納カバーは少なくとも下記成分(A)~成分(C)を含む熱可塑性エラストマー組成物(以下、「本発明の熱可塑性エラストマー組成物」と称す場合がある)からなる。
成分(A):プロピレン系共重合体
成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体
成分(C):イソアルカン混合物
【0033】
[メカニズム]
上記成分(A)~成分(C)を含む本発明の熱可塑性エラストマー組成物によれば、低温耐衝撃性、成形性及び耐ブリードアウト性のうち、少なくとも一つが改善されたエアバッグ収納カバーを得ることができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物がこのような効果を奏する理由の詳細は定かではないが、以下のように推察される。
【0034】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)のプロピレン系重合体及び成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体と共に、成分(C)イソアルカン混合物を含有することで、成分(B)と成分(C)との絡み合いにより、成分(B)と成分(C)との親和性が上がり、成分(B)の可塑化が促され、低温耐衝撃性、成形性及び耐ブリードアウト性を改善することができると推測される。
【0035】
特に、成分(C)のイソアルカン混合物が側鎖アルキル基、好ましくは炭素数1~18の側鎖アルキル基を有することで、成分(B)と成分(C)の絡み合い効果をより得やすくなり、安定した流動性を有し、耐熱性やその他機械的強度に優れた成形体を得やすくなる。
とりわけ、成分(C)がFD-MSで測定して得られるマススペクトルより特定される特定の特徴を有することは、低粘度成分の含有量が従来公知のゴム用炭化水素系軟化剤と比較して少ないことを意味しており、耐ブリードアウト性に優れたエアバッグ収納カバーを得やすくなると考えられる。同様に高粘度量成分も従来公知のゴム用炭化水素系軟化剤と比較して少ないことを意味しており、成分(B)と成分(C)の親和性が上がり、成形性、低温耐衝撃性を有したエアバッグ収納カバーを得ることができると推察できる。
【0036】
[成分(A):プロピレン系重合体]
成分(A)のプロピレン系重合体とは、全単量体単位に対するプロピレン単位の含有率が50質量%よりも多い重合体である。即ち、成分(A)は、プロピレン単位の含有率が50質量%を超え100質量%以下であるポリプロピレン系樹脂である。
【0037】
成分(A)のプロピレン系重合体としては、公知のものが使用でき、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン系ランダム共重合体、プロピレン系ブロック共重合体が挙げられる。これらのうちでも成形性と低温耐衝撃性の両立の観点からプロピレン系ブロック共重合体が好ましい。
【0038】
プロピレン系ブロック共重合体としては、プロピレン単位含有率が90~100質量%であるブロック(a1)と、プロピレン単位含有率が30~70質量%であり、かつエチレン単位含有率が30~70質量%であるブロック(a2)とを有するプロピレン系ブロック共重合体が好ましい。
ブロック(a1)のプロピレン単位の含有率が前記下限値以上であることにより、耐熱性及び剛性が良好となる傾向にある。なお、ブロック(a1)及びブロック(a2)のプロピレン単位含有量率や、エチレン単位含有率等は、赤外分光法により求めることができる。
【0039】
ブロック(a1)のプロピレン単位含有率は、ブロック(a1)全体に対し、95~100質量%であることがより好ましい。
ブロック(a1)は、プロピレン単位を主構成単位とし、プロピレン単位以外に、エチレン単位、プロピレン以外のα-オレフィン単位、エチレン及びα-オレフィン以外の単量体単位等を10質量%以下の範囲で含有していてもよい。
プロピレン以外のα-オレフィン単位のα-オレフィンとしては、炭素数4~20のα-オレフィンを挙げることができる。炭素数4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、2,2,4-トリメチル-1-ペンテン等が挙げられる。プロピレン以外のα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数4~10のα-オレフィンであり、より好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンである。
【0040】
ブロック(a2)は、低温耐衝撃性及び流動性の観点から、ブロック(a2)全体に対し、プロピレン単位含有率が40~60質量%であり、エチレン単位含有率が40~60質量%であることがより好ましい。
【0041】
ブロック(a2)は、プロピレン単位及びエチレン単位に加え、プロピレン以外のα-オレフィン単位、その他の単量体単位等を10質量%以下の範囲で含有していてもよい。
ブロック(a2)がα-オレフィンを含有する場合、ブロック(a1)のα-オレフィンとして例示したものを挙げることができ、好ましいものも同様である。
【0042】
プロピレン系ブロック共重合体は、第1工程でブロック(a1)を重合し、続いて第2工程でブロック(a2)を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体であることが、低温耐衝撃性及び高温強度の観点から好ましい。
【0043】
プロピレン系ブロック共重合体のブロック(a1)とブロック(a2)の合計量に対するブロック(a2)の含有率の下限は、低温耐衝撃性の観点から、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましい。一方、プロピレン系ブロック共重合体のブロック(a1)とブロック(a2)の合計量に対するブロック(a2)の含有率の上限は、低温耐衝撃性と剛性や強度との両立の観点から70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0044】
プロピレン系重合体のメルトフローレート(JIS K7210、230℃、21.2N荷重)は、特に定めることはないが、通常0.05~200g/10分であり、0.05~100g/10分であることが好ましく、0.1~80g/10分であることがより好ましい。メルトフローレートを上記範囲とすることで、成形性に優れ、得られる成形体の外観が良好となり、また機械的特性、特に引張破壊強さを所望の範囲に制御することができる。
【0045】
成分(A)のプロピレン系重合体は市販のものを用いてもよい。市販品としては、例えば、プライムポリマー社製「PrimPolypro(登録商標)」、住友化学社製「住友ノーブレン(登録商標)」、サンアロマー社製「ポリプロピレンブロックコポリマー」、日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP」、LyondellBasell社製「Moplen(登録商標)」、LyondellBasell社製「ADFLEX(登録商標)」、LyondellBasll社製「Hifax(登録商標)」、ExxonMobil社製「ExxonMobilPP」、FormosaPlastics社製「Formolene(登録商標)」、Borealis社製「BorealisPP」、LGChemical社製「SEETECPP」、A.Schulman社製「ASIPOLYPROPYLENE」、INEOSOlefins&Polymers社製「INEOSPP」、Braskem社製「BraskemPP」、HanwhaTOTALPETROCHEMICALS社製「HanwhaTotal」、Sabic社製「Sabic(登録商標)PP」、TOTALPETROCHEMICALS社製「TOTALPETROCHEMICALSPolypropylene」、SK社製「YUPLENE(登録商標)」が挙げられる。
【0046】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)の1種のみを含んでいてもよく、単量体単位組成や物性等の異なるものの2種以上を含んでもよい。
【0047】
[成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体]
成分(B)は少なくともエチレン単位とα-オレフィン単位とを含む共重合体である。 成分(B)に用いられるα-オレフィンとしては、1-プロピレン、1-ブテン、2-メチルプロピレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテン等を例示することができる。成分(B)に用いられるα-オレフィンは好ましくは、1-プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等の末端の炭素原子に炭素間二重結合を有する炭素数3~8のα-オレフィンである。成分(B)におけるα-オレフィンは1種のみがエチレンと共重合したものであっても、2種以上がエチレンと共重合したものであってもよい。
【0048】
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレン単位及び炭素数3~8のα-オレフィン単位に加え、非共役ジエンに基づく単量体単位(非共役ジエン単位)等の他の単量体単位を有していてもよい。該非共役ジエンとしては、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、7-メチル-1,6-オクタジエンのような鎖状非共役ジエン;シクロへキサジエン、ジシクロペンタジエン、メチルテトラヒドロインデン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネンのような環状非共役ジエン等が挙げられる。好ましくは、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエンである。
【0049】
また、成分(B)が非共役ジエン単位等の他の単量体単位を有する場合、その含有率は成分(B)全体に対して、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。成分(B)中の非共役ジエン単位やα-オレフィン単位の含有率は、赤外分光法により求めることができる。
【0050】
本発明に用いる成分(B)としては、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体、エチレン・α-オレフィンブロック共重合体のいずれも使用できる。
【0051】
成分(B)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、測定温度190℃、測定荷重21.2N)は限定されないが、通常10g/10分以下であり、強度の観点から、好ましくは8.0g/10分以下であり、より好ましくは5.0g/10分以下であり、更に好ましくは3.0g/10分以下である。また、通常0.01g/10分 以上であり、流動性の観点から、好ましくは0.05g/10分以上であり、更に好ましくは0.10g/10分以上である。
【0052】
成分(B)の密度は低温耐衝撃性の観点から、好ましくは0.880g/cm3以下であり、より好ましくは0.870g/cm3以下である。一方、その下限については特に 制限されないが、通常0.85g/cm3以上である。成分(B)の密度は、ISO 1183-A法に従って測定温度23℃で測定される。
【0053】
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体としては市販品を用いることができる。市販品としては、具体的には、三井化学社製「タフマー(商標登録)」、ダウ・ケミカル社製「Engage(登録商標)」、SK Chemical社製「Solumer(商標登録)」などが挙げられる。
【0054】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(B)の1種のみを含んでいてもよく、単量体単位組成や物性等の異なるものの2種以上を含んでいてもよい。
【0055】
[成分(C):イソアルカン混合物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(C)として、イソアルカン混合物を含む。
イソアルカンは、末端にイソメチル基を有するアルカンを意味し、二重結合や環状の置換基を含まない。
「イソアルカン混合物」とは、イソアルカンとイソアルカン構造を有さない炭化水素との混合物を意味する。
本発明に係る「イソアルカン」は、末端にイソメチル基を有するアルカンであればよく、末端イソメチル基以外に側鎖の存在しないイソアルカンであっても、アルカンの主鎖に末端イソメチル基以外の側鎖としてのアルキル基(本発明においては、このアルキル基を「側鎖アルキル基」と称す。)を有するものであってもよい。前述の通り、成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体とイソアルカンの絡み合い効果の観点から、側鎖アルキル基を有するイソアルカンが好ましい。
イソアルカンは、一般的にイソアルカン混合物として市販されているものが多いため、本発明においては、成分(C)を「イソアルカン混合物」と称すが、成分(C)は、イソアルカンの単一物質であってもよい。
【0056】
成分(C)のイソアルカン混合物が有する側鎖アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基が挙げられる。これらの中でも炭素数1~18のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~3のアルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
なお、イソアルカンの側鎖アルキル基とは、最も長い直鎖状のアルキル鎖を主鎖とし、この主鎖から分岐するアルキル鎖であり、1分子中に側鎖アルキル基は1つに限らず、2つ以上であってもよい。イソアルカンが有する側鎖アルキル基の数は、2~16が好ましく、4~12がより好ましく、4~8が更に好ましい。
【0057】
成分(C)のイソアルカン混合物は、分子中に1~80%の含有率で側鎖アルキル基を有することが好ましく、側鎖アルキル基の含有率は5~70%であることがより好ましく、10~60%であることが更に好ましく、15~50%であることが特に好ましい。側鎖アルキル基の含有率は、耐ブリードアウト性、低温耐衝撃性の観点では大きい方が好ましく、成形性の観点では、小さい方が好ましい。
ここで、側鎖アルキル基の含有率とは、イソアルカン全体の分子量に対する側鎖アルキル基の分子量(複数の側鎖アルキル基を有する場合はその合計の分子量)の割合(百分率)である。
【0058】
成分(C)の炭素数は10~60が好ましく、12~50がより好ましく、12~40が更に好ましく、18~36が特に好ましく、18~32がとりわけ好ましい。炭素数は、上記範囲において、耐ブリードアウト性、ゴム弾性の観点では大きい方が好ましく、成形性の観点では、小さい方が好ましい。
【0059】
成分(C)のイソアルカン混合物の具体的な構造例としては、水添ファルネセン骨格やスクワランが挙げられる。
【0060】
成分(C)の流動点(ASTM D97で測定される)は、耐ブリードアウト性の観点から、-60℃以上であることが好ましく、-50℃以上であることがより好ましく、-40℃以上であることが更に好ましい。一方で、加工時のハンドリング性の観点から、0℃以下であることが好ましく、-10℃以下であることがより好ましく、-20℃以下であることが更に好ましく、-25℃以下であることが特に好ましい。
【0061】
成分(C)の40℃における動粘度は、耐ブリードアウト性及び低温耐衝撃性の観点から15センチストークス(cSt)以上が好ましく、20cSt以上であることがより好ましく、25cSt以上であることが更に好ましい。一方で、成分(C)の40℃における動粘度は、加工性及び成形性の観点から8000cSt以下であることが好ましく、3000cSt以下であることがより好ましく、1000cSt以下であることが更に好ましい。
ここで、動粘度は、JIS K2283に準拠した方法によって測定した40℃における動粘度である。
【0062】
成分(C)のイソアルカン混合物の引火点(COC法)は、加工時の安全性の観点から、使用する成分(A)のプロピレン系共重合体の融点以上、または加工温度以上であることが好ましく、150℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることが更に好ましく、250℃以上であることが特に好ましい。
【0063】
成分(C)のイソアルカン混合物の分子量分散度(PDI)は、耐ブリードアウト性の観点から1.30以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましく、1.1以下であることがより一層好ましい。
【0064】
成分(C)のイソアルカン混合物の重量平均分子量は、耐ブリードアウト性及び低温耐衝撃性の観点から、GPCにより測定したポリスチレン換算の値として200以上が好ましく、300以上がより好ましく、350以上が更に好ましい。一方で、加工性及び成形性の観点から5000以下が好ましく、3000以下がより好ましく、1500以下が更に好ましい。
【0065】
ここで、分子量分散度及び重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCと略記する場合がある)により測定することができる。
【0066】
成分(C)のイソアルカン混合物は、環分析によるナフテン炭素の割合(%CN)は通常20%以下であり、好ましくは15%以下であり、より好ましくは10%以下であり、更に好ましくは5%以下である。
また、環分析による芳香族炭素の割合(%CA)が5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。
ここで、上記環分析は具体的にはASTM D2140またはASTM D3238に規定されるn-d-M法により実施することができる。
ナフテン炭素の割合及び芳香族炭素の割合を上記範囲とすることで、耐熱及び耐光変色に優れたものとなる。
【0067】
成分(C)のイソアルカン混合物はバイオマス由来の原料を含んでもよい。成分(C)のバイオマス度は14C含有量をもとにASTM D6866により算出される。環境負荷低減の観点から、イソアルカン混合物のバイオマス度は40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることが更に好ましい。イソアルカン混合物のバイオマス度の上限は特に限定されず、100%以下である。
【0068】
本発明に係る成分(C)はまた、FD-MSで測定して得られるマススペクトルにより特定される主要な構成単位が分子式C16H34及びC16H32の少なくとも一方で表されるイソアルカン混合物であることが好ましい。このようなイソアルカン混合物を含むことで、得られる熱可塑性エラストマー組成物の低温耐衝撃性を増加させるとともに、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性、流動性及び耐ブリードアウト性を向上させることができる。
【0069】
ここでいう主要な構成単位は以下のように定義する。
FD-MSで測定されるマススペクトルにおいて、ピークのm/zの値で表される炭化水素の分子式は、炭素の原子量:12、水素の原子量:1.00794をもとに特定される。m/zの値は、例えば、CH4の場合16.0、C30H60の場合420.5、C60H120の場合841.0となる。
FD-MSで測定されるマススペクトルにおいて、分子そのものを表すピークを抽出する観点から、水素原子数2~118の炭化水素においてはm/zの一の位が偶数のピークを抽出する。水素原子数120~244の炭化水素においてはm/zの一の位が奇数のピークを、水素原子数246~370の炭化水素においてはm/zの一の位が偶数のピークを抽出する。
このようにして抽出されるピークの中からピーク強度の強いものを順に複数抽出する。ここで抽出したピークが表すm/zの差から特定できる炭化水素の分子式のことを主要な構成単位という。なお、炭素数が同じピークは主要な構成単位の計算に含めない。
【0070】
以下の具体例では、主要な構成単位を確認するために、ピーク強度の強い6つのピークを抽出し、m/zが小さい順に記載したが、主要な構成単位が見つかれば抽出数はこの方法に特定されない。
図1においてはm/z(分子式)=450.5(C
32H
66)、672.8(C
48H
96)、674.8(C
48H
98)、897.0(C
64H
128)、1121.3(C
64H
128)、1345.5(C
96H
192)のピークが抽出でき、主要な構成単位は分子式C
16H
34及びC
16H
32で表すことができる。
図2においてはm/z=460.5(C
33H
64)、462.5(C
33H
66)、474.5(C
34H
66)、476.6(C
34H
68)、488.6(C
35H
68)、490.6(C
35H
70)のピークが抽出でき、主要な構成単位は分子式CH
2で表すことができる。
図3においてはm/z=654.7(C
47H
90)、668.8(C
48H
92)、682.8(C
49H
94)、694.8(C
50H
94)、696.8(C
50H
96)、708.8(C
51H
96)のピークが抽出でき、主要な構成単位は分子式CH
2で表すことができる。
【0071】
成分(C)のイソアルカン混合物は、FD-MSで測定されるマススペクトルにおいて主成分として分子式C
48H
96及びC
48H
98で表される化合物のうち、少なくとも一方を含有することが望ましい。ここでいう主成分とはFD-MSで測定されるマススペクトルにおいて、分子そのものを表すピークを抽出し、最も強度の強いピークをいう。
図1においてはm/z=674.8(C
48H
98)のピークが該当する。
図2においてはm/z=460.5(C
33H
64)のピークが、
図3においてはm/z=682.8(C
49H
94)のピークがそれぞれ該当する。
【0072】
また、成分(C)として、FD-MSで測定して得られるマススペクトルにより特定される主成分として分子式CnH2n+2及びCnH2n(40≦n<60)で表される化合物のうち、少なくとも一方を主成分として含有するイソアルカン混合物を含むことで、得られる熱可塑性エラストマー組成物を軟化させ、低温耐衝撃性能を増加させるとともに、得られる熱可塑性エラストマー組成物の加工性、流動性及び耐ブリードアウト性を向上させることができる。
成分(C)のイソアルカン混合物は、さらに、分子式CnH2n+2及びCnH2n(30≦n<40)で表される化合物のうち、少なくとも一方を含有することがより好ましく、分子式CnH2n+2及びCnH2n(60≦n≦80)で表される化合物のうち、少なくとも一方を含有することが更に好ましく、分子式CnH2n+2及びCnH2n(30≦n<40)で表される化合物のうちの少なくとも一方と、分子式CnH2n+2及びCnH2n(60≦n≦80)で表される化合物のうちの少なくとも一方とを含有することが特に好ましい。
【0073】
成分(C)のイソアルカン混合物は市販のものを用いてもよい。成分(C)の市販品としては、例えば、H&R社製「VIVA-B-FIX」シリーズが挙げられ、これらの中から適宜選択して使用することができる。
【0074】
成分(C)のイソアルカン混合物は、以下の一般的なゴム用炭化水素系軟化剤と併用することもできる。
【0075】
[ゴム用炭化水素系軟化剤]
本発明において、一般的なゴム用炭化水素系軟化剤とは、成分(C)以外のゴム用炭化水素系軟化剤のことをいう。
【0076】
一般的なゴム用炭化水素系軟化剤としては、鉱物油系軟化剤、合成樹脂系軟化剤等が挙げられ、特に鉱物油系軟化剤が好ましい。鉱物油系軟化剤は、一般的に、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物であり、全炭素原子の50%以上がパラフィン系炭化水素であるものがパラフィン系オイル、全炭素原子の30~45%がナフテン系炭化水素であるものがナフテン系オイル、全炭素原子の35%以上が芳香族系炭化水素であるものが芳香族系オイルと各々呼ばれている。これらの中でも、パラフィン系オイルが好ましい。
【0077】
ゴム用炭化水素系軟化剤の40℃における動粘度は、20センチストークス(cSt)以上であることが好ましく、50cSt以上であることがより好ましい。一方、800cSt以下であることが好ましく、600cSt以下であることがより好ましい。また、ゴム用炭化水素系軟化剤の引火点(COC法)は、200℃以上であることが好ましく、250℃以上がより好ましい。
【0078】
ゴム用炭化水素系軟化剤は市販のものを用いてもよい。市販品としては、例えば、JX日鉱日石エネルギー社製「日石ポリブテン(登録商標)HV」シリーズ、出光興産社製「ダイアナ(登録商標)プロセスオイルPW」シリーズが挙げられ、これらの中から適宜選択して使用することができる。
【0079】
ゴム用炭化水素系軟化剤は1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0080】
[スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、更にスチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物(以下、「成分(D)」と称す場合がある。)を含有していてもよく、成分(D)を含有することで、低温耐衝撃性をより高めることができる。
スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物としては、例えばスチレン・エチレン・ブチレン・スチレン共重合体(以下、単に「SEBS」と略記することがある。)が挙げられる。
【0081】
スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物のスチレン含量(スチレン単位含有率)は特に制限されないが、強度と耐熱性の観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上であり、更に好ましくは10質量%以上である。また、スチレン含量は、柔軟性と耐衝撃性の観点から、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは45質量%以下であり、更に好ましくは40質量%以下である。
【0082】
このようなスチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物としては市販品を用いることができる。市販品としては、具体的には、クレイトンポリマー社製「クレイトン(登録商標) G」が挙げられる。
【0083】
スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物は1種類のみを単独で、又は2種類以上を任意の組み合わせ及び比率で用いることができる。
【0084】
[含有割合]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、成分(B)の含有率は、得られる成形体の低温耐衝撃性の観点から、成分(A)100質量部に対し、70質量部以上であることが好ましく、73質量部以上であることがより好ましく、75質量部以上であることが更に好ましい。一方で、成分(B)の含有率は、剛性及び良好な成形性の観点から、120質量部以下であることが好ましく、115質量部以下であることがより好ましく、110質量部以下であることが更に好ましい。
【0085】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、成分(C)の含有率は、得られる成形体の低温耐衝撃性の観点から、成分(A)100質量部に対し、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることが更に好ましく、5質量部以上であることが特に好ましい。一方で、成分(C)の含有率の上限は、安定した加工性及び剛性の観点から、成分(A)100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、27質量部以下であることがより好ましく、25質量部以下であることが更に好ましい。
【0086】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が、成分(C)と共に、前述のゴム用炭化水素系軟化剤を含有する場合、ゴム用炭化水素系軟化剤の含有量は、軽量化及び良好な成形性の観点から成分(B)100質量部に対し、27質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましい。また、成分(C)とゴム用炭化水素系軟化剤との合計の含有量として、上記成分(C)の含有量範囲となるように用いることが好ましい。
【0087】
この場合において、成分(C)とパラフィン系オイル等のゴム用炭化水素系軟化剤との合計量に対する成分(C)の含有率は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが更に好ましい。成分(C)とパラフィン系オイル等のゴム用炭化水素系軟化剤との合計量に対する成分(C)の含有率が上記下限以上であれば、成分(C)を用いることによる成形性、耐ブリードアウト性、低温耐衝撃性の向上効果を有効に得ることができる。
【0088】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が、前述の成分(D)のスチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物を含有する場合、成分(D)の含有量は、得られる成形体の低温耐衝撃性の観点から、成分(A)100質量部に対して通常5質量部以上であり、好ましくは10質量部以上であり、より好ましくは15質量部以上である。また成分(D)の含有量は、成形性、得られる成形体の剛性、耐熱老化特性の観点から、成分(A)100質量部に対して通常100質量部以下であり、好ましくは90質量部以下であり、より好ましくは80質量部以下である。
【0089】
[その他の成分]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、上記した成分(A)~成分(D)やゴム用炭化水素系軟化剤以外に本発明の効果を損なわない範囲で、各種目的に応じて以下の添加剤、無機フィラー、有機フィラーや成分(A)~成分(D)以外の樹脂(以下、「その他の樹脂」と称する。)等の任意成分を配合することができる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物が含有し得るその他の樹脂としては、低密度ポリエチレン、ポリエステルエラストマー、ウレタンエラストマー、スチレンエラストマー(ただし、成分(D)に該当するものを除く。)、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレン樹脂(ただし、成分(D)に該当するものを除く。)、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、前記以外の各種エラストマー(ただし、成分(B)、成分(C)、成分(D)に該当するものを除く。)等が挙げられる。上記で挙げたその他の樹脂は1種のみを含有しても2種以上を含有してもよい。
【0090】
その他の成分として他には、無機フィラー、有機フィラー、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、架橋剤、架橋助剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤等の各種添加物を挙げることができる。これらは任意のものを単独又は併用して用いることができる。これらの添加剤は通常、成分(A)~(C)の合計100質量部、或いは成分(D)を含有する場合は成分(A)~(D)の合計100質量部に対し、それぞれの添加剤を0.01~2質量部の範囲で配合して用いることができる。
【0091】
[熱可塑性エラストマー組成物の製造方法]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)~(C)、必要に応じて用いられるその他の成分を通常の押出機やバンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーブラベンダー等を用いて常法で混練して製造することができる。これらの製造方法の中でも、押出機、特に二軸押出機を用いることが好ましい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物を押出機等で混練して製造する際には通常160~240℃、好ましくは180~220℃に加熱した状態で溶融混練することによって製造することができる。
【0092】
[エアバッグ収納カバーの製造方法]
本発明のエアバッグ収納カバーの製造方法は、下記成分(A)~成分(C)を含む熱可塑性エラストマー組成物を得る工程と、当該熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してエアバッグ収納カバーを得る工程とを含むものである。
成分(A):プロピレン系重合体
成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体
成分(C):イソアルカン混合物
ここで用いられる熱可塑性エラストマー組成物は、前述の本発明の熱可塑性エラストマー組成物が適用され、この熱可塑性エラストマー組成物は上述の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に従って製造することができる。
【0093】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いて、通常の射出成形法、又は、必要に応じて、ガスインジェクション成形法、射出圧縮成形法、ショートショット発泡成形法等の各種成形法を用いて成形体とすることによりエアバッグ収納カバーとすることができる。
【0094】
特に、本発明のエアバッグ収納カバーは射出成形により製造することが好ましく、射出成形を行う際の成形条件は以下の通りである。
エアバッグ収納カバーを射出成形する際の成形温度は一般に150~300℃であり、好ましくは180~280℃である。射出圧力は通常、5~100MPaであり、好ましくは10~80MPaである。また、金型温度は通常0~80℃であり、好ましくは20~60℃である。
【0095】
この様にして得られたエアバッグ収納カバーは、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適に用いられる。また、本発明のエアバッグ収納カバーは、運転席用エアバッグ収納カバー、助手席用エアバッグ収納カバー、歩行者用エアバッグ収納カバー、ニー・エアバッグ収納カバー、サイド・エアバッグ収納カバー、カーテン・エアバッグ収納カバー等のいずれにも好適に用いることができる。
【実施例0096】
以下、実施例を用いて本発明の内容を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0097】
[原材料]
以下の実施例・比較例で使用した原材料は以下の通りである。
【0098】
<成分(A)>
A-1:プロピレン系重合体
日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP BC3B」
ブロック(a1)とブロック(a2)とを有するプロピレン系ブロック共重合体
ブロック(a1)のプロピレン単位の含有率:100質量%
ブロック(a2)のプロピレン単位の含有率:54質量%
ブロック(a2)のエチレン単位の含有率:46質量%
プロピレン系ブロック共重合体のブロック(a1)とブロック(a2)の合計量に対するブロック(a2)の含有率:15質量%
MFR(JIS K7210、230℃、21.2N荷重):10g/10分
【0099】
<成分(B)>
B-1:エチレン・α-オレフィン共重合体
ダウ・ケミカル社製「Engage(登録商標)8180」
エチレン・1-オクテンランダム共重合体
MFR(ASTM D1238、190℃、21.2荷重):0.5g/10分
密度(ISO 1183-A法):0.86g/cm3
B-2:エチレン・α-オレフィン共重合体
ダウ・ケミカル社製「Engage(登録商標)XLT8677」
エチレン・1-オクテンランダム共重合体
MFR(ASTM D1238、190℃、21.2荷重):0.5g/10分
密度(ISO 1183-A法):0.87g/cm3
【0100】
<成分(C)>
C-1:イソアルカン混合物
H&R社製「VIVA-B-FIX 10227」
40℃の動粘度:56cSt
引火点:280℃
流動点:-27℃
Mw:1110
分子量分散度:1.0
バイオマス度:100%
FD-MSスペクトル:
図1に示す。
主要な構成単位:C
16H
34及びC
16H
32
主成分:C
48H
98
【0101】
<成分(D)>
D-1:スチレン・ブタジエンブロック共重合体の水素添加物
クレイトンポリマー社製「クレイトン(登録商標)G1652」
スチレン含量:30質量%
【0102】
<成分(X)>
X-1:パラフィン系オイル
出光興産株式会社製ダイアナ(登録商標)「プロセスオイルPW-90」
40℃の動粘度:95.54cSt
引火点:272℃
流動点:-17.5
Mw:728
分子量分散度:1.2
FD-MSスペクトル:
図2に示す。
主要な構成単位:CH
2
主成分:C
33H
64
【0103】
[評価方法]
以下の実施例・比較例の熱可塑性エラストマー組成物の評価方法は以下の通りである。
【0104】
1)溶融流動性
実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットについて、ISO1133に参考し、メルトインデクサー(東洋精機製作所製)を用い、230℃、21.2Nの条件でMFRを測定した。MFR値が大きいほど、溶融流動性に優れており成形性が優れていると言える。
【0105】
2)射出流動性
実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットについて、インラインスクリュウタイプ射出成形機(日本製鋼所製「J110AD-180H」を用い、シリンダー温度210℃、金型温度40℃、射出圧88MPa、厚み1mm、成形品幅10mmで射出したときのスパイラルフロー長を測定した。フロー長が長いほど、射出流動性に優れており成形性が優れていると言える。
【0106】
3)低温耐衝撃性
実施例及び比較例で得られた熱可塑性エラストマー組成物を、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180DU」)により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、アイゾット衝撃強さ用の試験片として、厚さ4mm×幅10mm×長さ80mmに成形した。その後、ダンベルにノッチを入れ(ノッチの寸法と評価方法はISO 180(2013年)に準拠)、-45℃、-50℃、-52.5℃、-55℃の温度のうちいずれか2温度で測定した。また、アイゾット衝撃試験で非破壊のものを「NB」、破壊されたものを「CB」とした。アイゾット衝撃強度の値が大きいものほど、また、非破壊「NB」のものほど低温耐衝撃性に優れるものと評価した。
【0107】
4)耐ブリードアウト性
実施例2及び比較例3,4で得られた熱可塑性エラストマー組成物を、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180DU」)により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、射出成形体(120mm×80mm×2mm)を成形した。該射出成形体よりφ80mmの試験片を打ち抜き、エアー式フォギングテスターを用いて、100℃、72時間条件で測定した。
試験前後のガラスと比較してのグロス保持率を評価した。数値が大きいほど、耐ブリードアウト性に優れることを示している。
【0108】
[実施例/比較例]
<実施例1>
表-1に示す様に(A-1)を100質量部、(B-1)を100質量部、酸化防止剤(BASFジャパン社製イルガノックス(登録商標)1010)を0.22質量部、及び滑剤(クローダジャパン社製CRODAMIDE(登録商標)VR-X-BE-HU)0.22質量部をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドし、同方向2軸押出機(神戸製鋼製「TEX30α」、L/D=45、シリンダブロック数:13)へ20kg/hrの速度で投入し、180~210℃の範囲で昇温させ、溶融混練を行った。成分(C-1)10質量部は、押出機の途中の供給口から液添ポンプにて供給した。このようにして、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットについて、前記1)~4)の評価を行った。それらの評価結果を表-1に示す。
【0109】
<比較例1~2>
表-1に示す配合にした以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、実施例1と同様に評価し、評価結果を表-1に示した。
【0110】
<実施例2>
表-1に示す様に(A-1)を100質量部、(B-1)を78質量部、(C-1)を22質量部、(D-1)を22質量部、酸化防止剤(BASFジャパン社製イルガノックス(登録商標)1010)を0.22質量部、及び滑剤(クローダジャパン社製CRODAMIDE(登録商標)VR-X-BE-HU)0.22質量部をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドし、同方向2軸押出機(神戸製鋼製「TEX30α」、L/D=45、シリンダブロック数:13)へ20kg/hrの速度で投入し、180~210℃の範囲で昇温させ、溶融混練を行い、熱可塑性エラストマー組成物のペレットを製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットについて、前記1)~3)の評価を行った。それらの評価結果を表-1に示す。
【0111】
<実施例3~4、比較例3~6>
表-1及び表-2に示す配合にした以外は実施例2と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、実施例1と同様に評価し、評価結果を表-1及び表-2に示した。
【0112】
【0113】
【0114】
<評価結果>
表-1に示す通り、実施例1のMFRとスパイラルフロー長は、(C-1)を含まない比較例1と比較し、それぞれ大きな値であったことから、実施例1は比較例1よりも成形性に優れることが分かる。
実施例1のMFRとスパイラルフロー長は、実施例1において(C-1)を(X-1)に替えた以外は同様にした比較例2と同等の数値を有していることから、実施例1と比較例2とは、同等の成形性を有していることが分かる。
実施例2は、(C-1)を含まない比較例3と比較し、それぞれ大きな値であったことから、実施例2は比較例3よりも成形性に優れることが分かる。
実施例2のMFRとスパイラルフロー長は、実施例2において(C-1)を(X-1)に替えた以外は同様にした比較例4と比較して、MFRは同等であるもののスパイラルフロー長は大きいことから、実施例2は、比較例4よりも優れた射出成形性を有していることが分かる。
実施例1と比較例1、2の低温耐衝撃性を比較すると、-50℃のアイゾット衝撃試験で、実施例1は試験片が破壊されなかったのに対し、比較例1や比較例2では試験片が破壊された。この結果から(C-1)を含有している実施例1の方が比較例1、2よりも低温耐衝撃性に優れることが分かる。
また実施例2と比較例3、4との比較でも、実施例2は-55℃でも試験片が破壊されなかったのに対し、比較例3、4では、-55℃において試験片が破壊された。この結果から(C-1)を含有している実施例2の方が比較例3、4よりも低温耐衝撃性に優れることが分かる。
実施例1と比較例2の耐ブリードアウト性を比較すると、実施例1のほうがグロス保持率が高かった。この結果から(C-1)を含有している実施例1の方が比較例2よりも耐ブリードアウト性に優れることが分かる。
また、実施例2と比較例4の耐ブリードアウト性を比較すると、実施例2のほうがグロス保持率が高かった。この結果から(C-1)を含有している実施例2の方が比較例4よりも耐ブリードアウト性に優れることが分かる。
【0115】
表-2においても同様のことが示されており、実施例3と比較例5との比較では、実施例3が-50℃のアイゾット試験でも試験片が破壊されなかったのに対し、(C-1)を(X-1)に替えた以外は同様にした比較例5では試験片が破壊された。この結果から(C-1)を含有している実施例3の方が比較例5よりも低温耐衝撃性に優れることが分かる。
実施例4と比較例6の比較において、実施例4が-52.5℃のアイゾッド試験でも破壊されなかったのに対し、(C-1)を(X-1)に替えた以外は同様にした比較例6では破壊されている。この結果から(C-1)を含有している実施例4の方が比較例6よりも低温耐衝撃性に優れることが分かる。
実施例3と比較例5の耐ブリードアウト性を比較すると、実施例3のほうがグロス保持率が高かった。この結果から(C-1)を含有している実施例3の方が比較例5よりも耐ブリードアウト性に優れることが分かる。
また、実施例4と比較例6の耐ブリードアウト性を比較すると、実施例4のほうがグロス保持率が高かった。この結果から(C-1)を含有している実施例4の方比較例6よりもが耐ブリードアウト性に優れることが分かる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成形性、低温耐衝撃性、耐ブリードアウト性に優れるため、本発明の熱可塑性エラストマー組成物により、優れた成形性のもとに、低温耐衝撃性、耐ブリードアウト性に優れたエアバッグ収納カバーを提供することができる。本発明のエアバッグ収納カバーは、各種のエアバッグ収納カバーの中でも、例えば、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開によって乗員を保護するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適である。