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  • 特開-突出し窓の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024012774
(43)【公開日】2024-01-31
(54)【発明の名称】突出し窓の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/28 20060101AFI20240124BHJP
   E06B 3/38 20060101ALI20240124BHJP
【FI】
E06B7/28 Z
E06B3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114493
(22)【出願日】2022-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】000175560
【氏名又は名称】三協立山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136331
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 陽一
(72)【発明者】
【氏名】細川 孝敏
(72)【発明者】
【氏名】網谷 志郎
(72)【発明者】
【氏名】小笹 太寛
【テーマコード(参考)】
2E014
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014EB01
2E014EB05
2E014EB08
(57)【要約】
【課題】 製造性が良い突出し窓の製造方法の提供。
【解決手段】 枠1内にガラス2を取付ける前の状態の障子3を収め、下枠4又は無目5の上面4a,5aと下框6の下面6a間の隙間7に見込方向の軸回りに回転させることで高さが変わる治具8を高さが低い状態で室内側から取付け、治具8を見込方向の軸回りに回転させると治具8の高さが高くなり下框6の下面6aを適正な高さに保持し、障子3にガラス2を収めてガラス2を框6,13,14のガラス呑み込み溝9にシール材10で固定する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠内にガラスを取付ける前の状態の障子を収め、下枠又は無目の上面と下框の下面間の隙間に見込方向の軸回りに回転させることで高さが変わる治具を高さが低い状態で室内側から取付け、治具を見込方向の軸回りに回転させると治具の高さが高くなり下框の下面を適正な高さに保持し、障子にガラスを収めてガラスを框のガラス呑み込み溝にシール材で固定することを特徴とする突出し窓の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突出し窓の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、框のガラス呑み込み溝にガラスをシール材で固定した突出し窓が知られている。かかる突出し窓においては、製造性の向上が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は以上に述べた実情に鑑み、製造性が良い突出し窓の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を達成するために請求項1記載の発明による突出し窓の製造方法は、枠内にガラスを取付ける前の状態の障子を収め、下枠又は無目の上面と下框の下面間の隙間に見込方向の軸回りに回転させることで高さが変わる治具を高さが低い状態で室内側から取付け、治具を見込方向の軸回りに回転させると治具の高さが高くなり下框の下面を適正な高さに保持し、障子にガラスを収めてガラスを框のガラス呑み込み溝にシール材で固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
請求項1記載の発明による突出し窓の製造方法は、枠内にガラスを取付ける前の状態の障子を収め、下枠又は無目の上面と下框の下面間の隙間に見込方向の軸回りに回転させることで高さが変わる治具を高さが低い状態で室内側から取付け、治具を見込方向の軸回りに回転させると治具の高さが高くなり下框の下面を適正な高さに保持し、障子にガラスを収めてガラスを框のガラス呑み込み溝にシール材で固定することで、シール材の養生中に下框が自重やガラスの重みで撓むのを防ぐことができ、しかも治具の取付けが室内側から行えるので、製造性が良い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】治具の側面図と室内側から見た正面図であって、(a)は治具着脱時の姿勢、(b)シール材の養生時の姿勢を示す。
図2】治具の使用状態を示す突出し窓の室内側正面図であって、(a)は治具を下枠の上面と下框の下面間の隙間に取付けた状態、(b)は治具をセッティングブロックの真下にスライドさせた状態、(c)は治具を見込方向の軸回りに90°回転させた状態を示す。
図3】(a)は治具の室内側から見た正面図、(b)同側面図、(c)は同底面図である。
図4】治具の斜視図である。
図5】本発明に係る突出し窓の一実施形態を示す縦断面図である。
図6】同突出し窓の横断面図である。
図7】本発明に係る突出し窓の他の実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図5,6は、本発明に係る突出し窓の一実施形態を示している。この突出し窓は、ビル用サッシに適用したものであり、躯体開口部に取付けられる枠1と、枠1内に開閉自在に収めた障子3とを備えている。
【0008】
枠1は、アルミニウム合金の押出形材よりなる上枠11と下枠4と左右の縦枠12,12を四周枠組みして構成してある。
障子3は、アルミニウム合金の押出形材よりなる上框13と下框6と左右の縦框14,14を四周框組みし、その内側にガラス(複層ガラス)2を嵌め込んで構成してある。
左右の縦枠12,12の室外側面の上部にはピボットヒンジ15が取付けてあり、ピボットヒンジ15により障子3が枠1に取付けられている。障子3は、ピボットヒンジ15の軸16を支点として下部を室外側に突き出すように回動して開く。
【0009】
障子3の各框6,13,14は、図5,6に示すように、内周側が開口したガラス呑み込み溝9を有し、ガラス呑み込み溝9内にガラス2の周縁部を呑み込ませ、ガラス呑み込み溝9の室外側壁9aとガラス2の室外側面との隙間、ガラス呑み込み溝9の室内側壁9bとガラス2の室内側面との隙間に湿式のシール材10を充填し、シール材10によりガラス2を框6,13,14のガラス呑み込み溝9に接着して取付けてある。図中の符合29は、シール材10を受けるバックアップ材である。下框6と縦框14は、ガラス呑み込み溝9の室外側壁9aが着脱自在な押縁になっている。下框6のガラス呑み込み溝9内の底部には、ガラス2を受けるセッティングブロック17が左右2箇所に設けてある。
本障子3は、各框6,13,14のガラス呑み込み溝9の底壁に相当する見込壁9cに中空部を設けないことで、各框6,13,14の見付寸法をなるべく小さくしており、框6,13,14がガラス2とシール材10で接着されることで必要十分な強度が出るようにしている。障子3の框6,13,14は、室内側から見ると枠1に隠れて見えないようになっている。
【0010】
本突出し窓は、ガラス2を框6,13,14と接着するシール材10の養生時において、図5に示すように、下枠4の上面4aと下框6の下面6a間の隙間7に治具8を取付けることで、下框6が自重やガラス2の重量によって下に撓むのを防止する。治具8は、下枠4の上面4aと下框6の下面6a間の隙間7に配置されるベース部18と、ベース部18から下框6の室内側の下枠4との見込方向の隙間を通って障子3内周側にのびる操作部19とを一体に有している。本治具8は、硬質樹脂で一体成形してある。
【0011】
ベース部18は、図3に示すように、室内外方向にのびる略矩形断面のブロック状に形成されており、縦寸法Yが横寸法Xよりも大きくなっている。縦寸法Yは、下枠4の上面4aと下框6の下面6a間の隙間7の設計上の寸法と同じか、それより僅かに小さくなっている。具体的には、下枠4の上面4aと下框6の下面6a間の隙間7の設計上の寸法は10.5mmで、ベース部18の縦寸法Yはそれより1mm小さい9.5mmとしてある。ベース部18の横寸法Xは、縦寸法Yよりも1.5mm小さい8mmとしてある。ベース部18は、室内側から見て左側の側面20(以下、「左」「右」は室内側から見ての「左」「右」をいう)と上面21との間の角部22aと、右側の側面23と下面24との間の角部22bがR状に面取りしてある。ベース部18の左側の側面20の室外側端部には、室外側に向かうにつれて横寸法Xが小さくなるように傾斜したテーパー部25が設けてある。
操作部19は、一定の幅の薄板状に形成され、ベース部18の室内側端部から左斜め45°にのびている。操作部19の先端部には左側に水平にのびる延出部28が形成してあり、延出部28の室内側面には勝手に治具8が外されるのを防ぐための注意書きを表示したラベルが貼り付けてある。また、操作部19の先端側には孔26が形成してあり、その孔26にワイヤー等を通し、ワイヤー等を何かに縛り付けたり枠1にテープで貼ったりすることで、障子3を開ける際などに治具8が室外側に落下するのを防ぐことができる。
ベース部18と操作部19との間の入隅コーナー部には肉盛り27が施されており、これにより操作部19を操作してベース部18を回転させる際に操作部19の付け根が破損するのを防いでいる。
【0012】
本治具8は、着脱する際には、図1(a)に示すように、右側の側面23が下枠4の上面4aに当接するように90°回転した状態で取付けられる。このとき、ベース部18は高さが低い状態となっており、操作部19は右斜め45°に傾き、延出部28は上方に延びている。その後、シール材10を充填・養生する際には、操作部19に手を掛けて左方向に動かすことでベース部18を室内外方向の軸回りに反時計方向に90°回転させ、図1(b)の状態にする。すると、ベース部18の高さが高くなって下框6の下面6aが適正な高さに保持され、下框6が自重やガラス2の重みで撓むのを防ぐことができる。
【0013】
次に、本突出し窓の製造手順を説明する。まず、上枠11と下枠4と左右の縦枠12,12を枠組みした枠1を躯体開口部に取付ける。
次に、上框13と下框6と左右の縦框14,14とが框組され、ガラス2を入れる前の状態の障子3をピボットヒンジ15で枠1に取付ける。
次に、障子3を開けた状態で、図2(a)に示すように、治具8,8を先に説明した着脱時の姿勢(ベース部18の高さが低い状態)で下枠4上面の中央寄りの位置に2つ並べて置く。その後、治具8,8を手で押えながら障子3を閉める。
次に、図2(b)に示すように、操作部19に手を掛けてベース部18がセッティングブロック17,17の真下の位置に来るまで治具8,8をスライドさせる。
次に、図2(c)に示すように、操作部19に手を掛けて左方向に動かすことで、ベース部18を室内外方向の軸回りに反時計方向に90°回転させる。この作業は、障子3を手で室内側に引き寄せた状態で行う。このように治具8を回転させると、治具8のベース部18の高さが高くなって下框6の下面6aが適正な高さに保持され、この状態で下框6及び縦框14,14の押縁(ガラス呑み込み溝9の室外側壁9a)を外して障子3にガラス2を収め、押縁9aを取付けてから框6,13,14のガラス呑み込み溝9とガラス2との隙間にバックアップ材29を挿入し、その内周側にシール材10を充填する。
シール材10が固まったら、操作部19に手を掛けて右方向に動かすことで、ベース部18を室内外方向の軸回りに時計方向に90°回転させる。これによりベース部18の高さが低くなり(図1(a)参照)、障子3を開けられる状態になるので、障子3を開けて治具8,8を取り外す。このとき、ベース部18の左側の側面20が上になっており、その室外側端部にテーパー部25が設けてあることで、障子3を開く際に下框6の室内側の角がベース部18と擦れて治具8が室外側に引っ張られ、治具8が室外側に脱落するのを防ぐことができる。
【0014】
なお、シール材10の養生時に下框6が撓むのを防ぐための対策としては、下枠4の上面4aと下框6の下面6a間の隙間7に室外側から楔を打ち込むことも考えられるが、そのように室外側から楔を打ち込むのは容易ではなく、ガラス2を入れてシール材10の養生後に楔を取り外す作業は、作業者が外に出て行わなければならないため、さらに大変である。本治具8を使用する場合は、治具8の取付け・取り外しが室内側から行え、作業者が外に出る必要がないことから、作業性が良い。
【0015】
図7は、本発明に係る突出し窓の他の実施形態を示している。この突出し窓も、ビル用サッシに適用したものであり、枠1は左右の縦枠12,12間の上枠11寄りの位置に無目5が架設してあり、無目5より下側の開口部にはガラス30を嵌め込んで嵌め殺し窓が構成されており、無目5より上側の開口部には障子3をピボットヒンジ15により開閉自在に取付けて突出し窓が構成されている。
そして、先に説明した実施形態と同様に、ガラス2を框6,13,14のガラス呑み込み溝9に接着するシール材10の養生時に、無目5の上面5aと下框6の下面6a間の隙間7に治具8を設置して、下框6の撓みを防止する。
【0016】
以上に述べたように本突出し窓の製造方法は、枠1内にガラス2を取付ける前の状態の障子3を収め、下枠4又は無目5の上面4a,5aと下框6の下面6a間の隙間7に見込方向の軸回りに回転させることで高さが変わる治具8を高さが低い状態で室内側から取付け、治具8を見込方向の軸回りに回転させると治具8の高さが高くなり下框6の下面6aを適正な高さに保持し、障子3にガラス2を収めてガラス2を框6,13,14のガラス呑み込み溝9にシール材10で固定することで、シール材10の養生中に下框6が自重やガラス2の重みで撓むのを防ぐことができ、しかも治具8の取付けが室内側から行えるので、製造性が良い。
また、本突出し窓の製造方法は、治具8を下枠4又は無目5の長手方向にスライドさせて、下框6のセッティングブロック17の真下に配置することで、治具8を下框6の撓みを最も効果的に防止できる位置に容易に設置することができる。
治具8は、下枠4又は無目5の上面4a,5aと下框6の下面6a間の隙間7に配置される縦横寸法X,Yが異なるベース部18と、下枠4又は無目5と下框6との間の室内外方向の隙間から障子3内周側にのびる操作部19を有するので、治具8を見込方向の軸回りに回転させるのが容易であり、回転させることで治具8の高さを確実に変化させることができる。
治具8は、ベース部18の治具着脱時に下になる面(右側の側面23)とシール材10の養生時に下になる面(下面24)との間の角部22bがR状に面取りしてあることで、ベース部18を見込方向の軸回りに回転させるのが容易であり、且つ当該角部22bと隣接する角部には面取りがしてないので、逆方向には回転し難い。
治具8は、着脱時に上になる面(左側の側面20)の室外側端部にテーパー部25が形成してあることで、シール材10の養生後に障子3を開ける際に、下框6の室内側の角がベース部18と擦れて治具8が室外側に引っ張られ、治具8が室外側に脱落するのを防ぐことができる。
【0017】
本発明は以上に述べた実施形態に限定されない。治具は、見込方向の軸回りに回転することで高さが変わる部分を有していればよく、具体的な形状や材質は、適宜変更することができる。枠や障子の形状や材質、障子を枠に取付けるヒンジの形態等は、任意である。
【符号の説明】
【0018】
1 枠
2 ガラス
3 障子
4 下枠
5 無目
6 下框
7 隙間
8 治具
9 ガラス呑み込み溝
10 シール材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7