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特開2024-127744物理的タックフリー構造及び調理器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127744
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】物理的タックフリー構造及び調理器具
(51)【国際特許分類】
   A47J 36/02 20060101AFI20240912BHJP
   A47J 37/10 20060101ALI20240912BHJP
   C25F 3/02 20060101ALI20240912BHJP
   C23F 4/00 20060101ALI20240912BHJP
   B24C 1/06 20060101ALI20240912BHJP
   B24C 1/04 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
A47J36/02 A
A47J37/10 301
C25F3/02 B
C23F4/00 A
B24C1/06
B24C1/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221360
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】202310246936.1
(32)【優先日】2023-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202320483211.X
(32)【優先日】2023-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202310935625.6
(32)【優先日】2023-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202322007750.9
(32)【優先日】2023-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】524002164
【氏名又は名称】浙江新唐実業有限公司
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG SHINTOWN INDUSTRY CO., LTD
【住所又は居所原語表記】No.391 Huaxia Road, Yongkang Economic Development Zone, Jinhua, Zhejiang 321399, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】張明偉
(72)【発明者】
【氏名】姚伊奇
(72)【発明者】
【氏名】唐建中
【テーマコード(参考)】
4B055
4B059
4K057
【Fターム(参考)】
4B055AA01
4B055BA15
4B055CB03
4B059AA02
4B059AB02
4B059CA02
4K057DB01
4K057DD01
4K057DK01
4K057DN10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】表面のタックフリー性能を向上させるだけでなく、耐摩耗で脱落しにくい調理器具を提供する。
【解決手段】金属基材1の表面に応用される物理的タックフリー構造及び調理器具を開示し、物理的タックフリー構造は、凹部構造と、凹部構造の少なくとも一部の領域に設けられた凸部構造3と、を含み、少なくとも一部の凹部構造及び/又は凸部構造の表面に物理蒸着層が設けられ、物理蒸着層の表面のトポグラフィはそれに覆われた凹部構造及び/又は凸部構造の表面のトポグラフィと類似する。物理的タックフリー構造及び調理器具は、硬度が高く、タックフリー性能がよい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属基材(1)の表面に適用される物理的タックフリー構造(2)であって、前記物理的タックフリー構造(2)は、凹部構造と、前記凹部構造の少なくとも一部の領域に設けられた凸部構造(3)と、を含み、少なくとも一部の前記凹部構造及び/又は前記凸部構造(3)の表面に物理蒸着層(4)が設けられ、前記物理蒸着層(4)の表面のトポグラフィはそれに覆われた前記凹部構造及び/又は前記凸部構造(3)の表面のトポグラフィと類似することを特徴とする物理的タックフリー構造(2)。
【請求項2】
前記凹部構造及び前記凸部構造(3)は前記金属基材(1)と一体構造であり、前記物理蒸着層(4)は前記凹部構造及び/又は前記凸部構造(3)と直接接触することを特徴とする請求項1に記載の物理的タックフリー構造(2)。
【請求項3】
前記凹部構造は深さが45~85マイクロメートルである複数の凹部(21)を含むことを特徴とする請求項1に記載の物理的タックフリー構造(2)。
【請求項4】
前記凹部構造は、直径0.3~0.55ミリメートル、深さ55~75マイクロメートル、ボアピッチ(a)0.6~0.8ミリメートルである複数の凹部(21)が直交してアレイ状に配列されるように設けられることを特徴とする請求項3に記載の物理的タックフリー構造(2)。
【請求項5】
前記物理蒸着層(4)の厚さは0.8~1.45マイクロメートルであることを特徴とする請求項1に記載の物理的タックフリー構造(2)。
【請求項6】
前記凸部構造(3)は、少なくとも前記凹部構造の一部の表面に設けられた複数の突起(31)を含み、前記突起(31)の高さが0.1~0.3マイクロメートルであることを特徴とする請求項1に記載の物理的タックフリー構造(2)。
【請求項7】
金属基材(1)の表面に適用される物理的タックフリー構造(2)であって、前記物理的タックフリー構造(2)は、前記金属基材(1)の表面に設けられたショットブラスト層(22)と、前記ショットブラスト層(22)の表面に設けられた物理蒸着層(4)を含み、ショットブラスト層(22)の表面に凹部構造及び凸部構造が形成され、前記物理蒸着層(4)の表面のトポグラフィはそれに覆われた前記ショットブラスト層(22)の表面のトポグラフィと類似することを特徴とする物理的タックフリー構造(2)。
【請求項8】
前記ショットブラスト層(22)は前記金属基材(1)と一体構造であり、前記物理蒸着層(4)は前記ショットブラスト層(22)と直接接触することを特徴とする請求項7に記載の物理的タックフリー構造(2)。
【請求項9】
前記ショットブラスト層(22)と前記物理蒸着層(4)との間に電解層がさらに設けられることを特徴とする請求項7に記載の物理的タックフリー構造(2)。
【請求項10】
前記ショットブラスト層(22)と前記物理蒸着層(4)との間にプラズマ研磨層がさらに設けられることを特徴とする請求項7に記載の物理的タックフリー構造(2)。
【請求項11】
前記金属基材(1)のビッカース硬度は100以上であり、前記ショットブラスト層(22)は複数の凹部(21)を有し、前記凹部(21)の球面直径は0.3~0.95ミリメートルであり、前記凹部(21)のボアピッチ(a)の範囲は0.3~0.8ミリメートルであることを特徴とする請求項7に記載の物理的タックフリー構造(2)。
【請求項12】
調理器具であって、請求項1に記載の物理的タックフリー構造(2)を含み、前記物理的タックフリー構造(2)は少なくとも前記調理器具の内面(51)の底部の一部の領域に設けられることを特徴とする調理器具。
【請求項13】
前記物理的タックフリー構造(2)は前記調理器具の内面(51)の設定領域に設けられ、前記調理器具の内面(51)の前記設定領域の外に前記凹部構造及び前記凸部構造(3)が設けられることを特徴とする請求項12に記載の調理器具。
【請求項14】
前記物理的タックフリー構造(2)は少なくとも前記調理器具の外面(52)の一部の領域に設けられることを特徴とする請求項12に記載の調理器具。
【請求項15】
前記物理的タックフリー構造(2)は、前記調理器具の外面(52)の底部から離れた領域に設けられ、又は前記凹部構造及び前記凸部構造(3)は前記調理器具の外面(52)の底部から離れた領域に一体に設けられることを特徴とする請求項14に記載の調理器具。
【請求項16】
金属基材(1)で成形された本体を含む調理器具であって、前記本体の表面には、請求項7に記載の物理的タックフリー構造(2)が設けられることを特徴とする調理器具。
【請求項17】
前記ショットブラスト層(22)は、前記本体が成形した後、前記本体の内面(51)に対してショットブラスト処理を行って形成された45~85マイクロメートルの段差を有する凹凸構造であり、前記物理蒸着層(4)の厚さは0.8~1.45マイクロメートルであることを特徴とする請求項16に記載の調理器具。
【請求項18】
物理的タックフリー構造(2)の加工方法であって、金属基材(1)において請求項7に記載の物理的タックフリー構造(2)を加工するために用いられ、前記加工方法は、
金属基材(1)を所定の寸法形状に加工する成形ステップと、
切断された前記金属基材(1)又は成形された製品に対してショットブラスト加工を行ってショットブラスト層(22)を形成するショットブラストステップと、
ショットブラスト後の金属基材(1)又は成形後の製品を200℃~500℃まで昇温して真空環境下で、前記ショットブラスト層(22)表面に対してPVDメッキを行うメッキステップと、を含むことを特徴とする物理的タックフリー構造(2)の加工方法。
【請求項19】
調理器具の加工方法であって、請求項16に記載の調理器具に適用され、前記加工方法は、
金属基材(1)を加工して調理器具本体を形成する成形ステップと、
前記本体の内面(51)において球面凹部(21)を有するショットブラスト層(22)を形成するために前記本体の内面(51)に対してショットブラスト加工を行うショットブラストステップと、
ショットブラスト後の前記本体を200℃~500℃まで昇温して真空環境下で、前記本体の内面(51)に対してPVDメッキを行うメッキステップと、を含むことを特徴とする調理器具の加工方法。
【請求項20】
前記ショットブラストステップとメッキステップとの間に、前記ショットブラスト層(22)の表面に電解層又はプラズマ層を形成するために電解又はプラズマ研磨加工ステップをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は調理器具の技術分野に関し、特に物理的タックフリー構造及び調理器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の調理器具のタックフリー性能の実現はいずれも調理器具の表面に一層のポリテトラフルオロエチレンを塗布することであり、ポリテトラフルオロエチレン塗布層は常態で無毒であるが、塗布層の受熱温度が260℃に達すると揮発し始め、温度が350℃に達すると、ポリテトラフルオロエチレン塗布層は分解し始める。そのためポリテトラフルオロエチレンコーティング付きの非粘着鍋の使用温度は一般的に250℃を超えることができない。しかし一般的な調理器具例えばフライパンは、加熱温度が常に260℃を超えるため、セキュリティリスクが存在する。また塗布層は耐摩耗ではなく、脱落のリスクが存在し、食物に追従して誤飲されやすく、身体の健康に影響を与える。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上の技術的問題を解決するために、本願は物理的タックフリー構造及び調理器具を提供し、調理器具表面のタックフリー性能を向上させるだけでなく、また耐摩耗で脱落しにくいという利点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様では、本願は、金属基材の表面に応用される物理的タックフリー構造を提供し、前記物理的タックフリー構造は、凹部構造と、前記凹部構造の少なくとも一部の領域に設けられた凸部構造と、を含み、少なくとも一部の前記凹部構造及び/又は前記凸部構造の表面に物理蒸着層が設けられ、前記物理蒸着層の表面のトポグラフィはそれに覆われた前記凹部構造及び/又は前記凸部構造の表面のトポグラフィと類似する。
【0005】
上記技術案を採用することにより、まず、金属基材の表面に凹部構造を加工し、さらに凹部構造の表面に凸部構造を加工し、凹部構造及び凸部構造は金属基材の表面に疎水構造を形成することができるが、このような疎水構造は耐摩耗ではない。凹部構造及び凸部構造を加工した後、さらに凹部構造及び凸部構造の表面に、耐摩耗の特性を有する物理蒸着層を一層メッキする。物理蒸着層は、凹部構造及び凸部構造に類似するトポグラフィを有するため、物理蒸着層の表面は、凹部構造及び凸部構造と類似する疎水性を有する。そのため、金属基材の表面に加工された物理的タックフリー構造は金属表面に耐摩耗とタックフリーの特性を備えさせる。
【0006】
第1の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記凹部構造及び前記凸部構造は前記金属基材と一体構造であり、前記物理蒸着層は前記凹部構造及び/又は前記凸部構造と直接接触する。
【0007】
上記技術案を採用することにより、金属基材の表面に凹部構造及び凸部構造を直接加工し、一体構造の強度がより高く、二体構造による脱落リスクを低減することができる。物理蒸着層は凹部構造及び凸部構造に直接接触し、中間に遷移層がなく、加工工程を減少し、加工コストを削減することができる。
【0008】
第1の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記凹部構造は深さが45~85マイクロメートルである複数の凹部を含む。
【0009】
上記技術案を採用することにより、金属基材の表面の複数の凹部は調理時にオイルを効果的に保持することができ、オイルをより均一に分布させることができ、タックフリー性能を効果的に向上させる。深さが45~85マイクロメートルである複数の凹部は良好なオイル保持効果を有するだけでなく、また物理蒸着層との良好な結合強度を有し、それにより凹部表面に物理蒸着層塗布層を直接メッキすることができ、従来工程の中間遷移層を必要とせず、強度が確実であり且つ工程を減少し、コストを削減する。
【0010】
第1の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記凹部構造は、直径0.3~0.55ミリメートル、深さ55~75マイクロメートル、ボアピッチ0.6~0.8ミリメートルである複数の凹部が直交してアレイ状に配列されるように設けられる。
【0011】
上記技術案を採用することにより、凹部構造は、直径0.3~0.55ミリメートル、深さ55~75マイクロメートル、ボアピッチ0.6~0.8ミリメートルである複数の凹部が直交して均一に分布するように設計され、金属基材の表面に一定の疎水性を備えさせるだけでなく、また金属基材と物理蒸着層との間の結合性能を向上させ、物理蒸着層の脱落リスクを低減させることができる。
【0012】
第1の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記物理蒸着層の厚さは0.8~1.45マイクロメートルである。
【0013】
上記技術案を採用することにより、物理蒸着層の厚さを設定された範囲内に制御することで、物理蒸着層が凹部構造及び凸部構造の表面を覆うとき、物理蒸着層が凹部構造及び凸部構造と類似するトポグラフィを有し、物理蒸着層の表面にタックフリー性を備えさせることを効果的に実現することができる。
【0014】
第1の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記凸部構造は、少なくとも前記凹部構造の一部の表面に設けられた複数の突起を含み、前記突起の高さが0.1~0.3マイクロメートルである。
【0015】
上記技術案を採用することにより、凸部構造は少なくとも凹部構造の一部の表面に設けられ、突起の高さは0.1~0.3マイクロメートルに設計され、このように、凹部構造の疎水性をさらに向上させることができ、金属基材の表面のタックフリー性能を向上させ、さらに物理蒸着層塗布層と金属基材の結合強度を向上させ、塗布層の脱落リスクを低減させることができる。
【0016】
第2の態様では、本願は、金属基材の表面に応用されるもう1つの物理的タックフリー構造を提供し、前記物理的タックフリー構造は、前記金属基材の表面に設けられたショットブラスト層と、前記ショットブラスト層の表面に設けられた物理蒸着層と、を含み、ショットブラスト層の表面に凹部構造及び前記凸部構造が形成され、前記物理蒸着層の表面のトポグラフィはそれに覆われた前記ショットブラスト層の表面のトポグラフィと類似することを特徴とする。
【0017】
上記技術案を採用することにより、まず、金属基材の表面にショットブラストにより凹凸構造を加工し、凹凸構造は金属基材の表面に疎水構造を形成することができるが、このような疎水構造は耐摩耗ではない。ショットブラストにより凹凸構造を加工した後、さらに凹凸構造の表面に、耐摩耗の特性を有する物理蒸着層を一層メッキする。物理蒸着層が凹凸構造に類似するトポグラフィを有するため、物理蒸着層の表面は、凹凸構造と類似する疎水性を有する。そのため、金属基材の表面に加工された物理的タックフリー構造は金属表面に耐摩耗とタックフリーの特性を備えさせる。
【0018】
第2の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記ショットブラスト層は前記金属基材と一体構造であり、前記物理蒸着層は前記ショットブラスト層と直接接触する。
【0019】
上記技術案を採用することにより、金属基材の表面にショットブラストにより凹凸構造を直接加工し、一体構造の強度がより高く、二体構造による脱落リスクを低減することができる。物理蒸着層は凹凸構造に直接接触し、中間に遷移層がなく、加工工程を減少し、加工コストを削減すると共に耐摩耗タックフリー性能を達成することもできる。
【0020】
第2の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記ショットブラスト層と前記物理蒸着層との間に電解層がさらに設けられる。
【0021】
上記技術案を採用することにより、電解の作用でショットブラスト層の表面にマイクロメートル、ナノオーダーのV型、C型、U型又はランダムな大きさの凹状体を構造させ、食材と鍋体との接触面積をさらに小さくすることができ、凹状体における空気が熱膨張による流動を受けて形成された反発力の二重作用を加え、タックフリー効果をよく実現することができる。また、電解によりショットブラスト層の表面に酸化膜を形成してその色を変えてその性能を向上させ、製品の性能と製品の等級を向上させることができる。
【0022】
第2の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記ショットブラスト層と前記物理蒸着層との間にプラズマ研磨層がさらに設けられる。
【0023】
上記技術案を採用することにより、ショットブラスト層の表面にさらにマイクロメートル又はナノオーダーの凹凸構造を加工することができ、さらに疎水性能を向上させ、製品表面のタックフリー性能を向上させる。プラズマ研磨層はさらに製品表面の光輝度を向上させることができ、製品の品質を向上させる。
【0024】
第2の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記金属基材のビッカース硬度は100以上であり、前記ショットブラスト層は複数の凹部を有し、凹部の球面直径は0.3~0.95ミリメートルであり、凹部のボアピッチ範囲は0.3~0.8ミリメートルである。
【0025】
実験テストにより分かるように、物理蒸着(PVD)の加工プロセスは、ビッカース硬度が100を超える金属基材の表面に形成されたショットブラスト層の球面直径は0.3~0.95ミリメートルであり、好ましくは0.4~0.65ミリメートルであり、凹部のボアピッチ範囲は0.3~0.8ミリメートルあり、好ましくは0.6ミリメートルの凹部がより優れたタックフリー性能及び耐摩耗性を有する。
【0026】
第3の態様では、本願により提供される調理器具は、第1の態様に記載の物理的タックフリー構造を含み、前記物理的タックフリー構造は少なくとも前記調理器具の内面の底部の一部の領域に設けられる。
【0027】
上記技術案を採用することにより、実際の設計要求に基づき、調理器具の内面の少なくとも一部の領域はタックフリー性能及び耐摩耗性を有することができる。
【0028】
第3の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記物理的タックフリー構造は、前記調理器具の内面の設定領域に設けられ、前記調理器具の内面の前記設定領域の外に前記凹部構造及び前記凸部構造が設けられる。
【0029】
上記技術案を採用することにより、調理器具の内面の底部がオイルと接触し且つ受熱領域が設定領域であり、設定領域に物理的タックフリー構造を設け、調理器具が調理を行う時に底部のタックフリー性能を向上させることができる。物理的タックフリー構造は内面の底部領域に設けられ、底部の主調理領域のタックフリー及び耐摩耗性能を実現することができるだけでなく、また材料の使用を減少してコストを削減することができる。調理器具の内面全体のタックフリー性能を向上させるために、必要に応じて、物理的タックフリー構造を調理器具の全ての内面に設けてもよい。
【0030】
設定領域は調理器具の底部の常に擦れる部位に設けられてもよく、この領域に物理的タックフリー構造を設けることで、設定領域は耐摩耗性を有するだけでなくタックフリー性能を有し、調理器具のタックフリーの需要を満たす。設定領域外に凹部構造と凸部構造を設け、設定領域外にタックフリー性能を実現することができ、耐摩耗性に劣るが、設定領域外は常にスプーンと接触せず、そのため耐摩耗性を低減することができ、調理器具の一定のタックフリー及び耐摩耗の性能を満たすことができ、また材料コストを低減することができる。
【0031】
第3の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記物理的タックフリー構造は少なくとも前記調理器具の外面の一部の領域に設けられる。
【0032】
上記技術案を採用することにより、調理器具の外面に物理的タックフリー構造が設けられ、調理器具の外面のタックフリー及び耐摩耗性能を向上させることができ、調理器具の外面をクリーニングしやすい。
【0033】
第3の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記物理的タックフリー構造は前記調理器具の外面の底部から離れた領域に設けられ、又は前記凹部構造及び前記凸部構造は前記調理器具の外面の底部から離れた領域に一体に設けられる。
【0034】
上記技術案を採用することにより、調理器具の底部から離れた領域、例えば鍋の口などの部位には、調理時にオイルと接触して汚れが発生しやすい。これらの領域に物理的タックフリー構造を設けると、これらの領域のタックフリー及び耐摩耗性を向上させることができ、また材料の使用コストを削減することができる。これらの領域に凹部構造及び凸部構造を設けると、これらの領域のタックフリー性能を向上させることができ、これらの領域に要求される耐摩耗性能が低いため、金属基材と一体に設けられた凹部構造及び凸部構造は、通常の耐摩耗性能を満たすことができ、材料コストをさらに削減することができる。
【0035】
第4の態様では、本願によりさらに提供される調理器具は、金属基材で成形された本体を含み、前記本体の表面に第2の態様の一部に記載の物理的タックフリー構造が設けられる。
【0036】
上記技術案を採用することにより、物理的タックフリー構造を有する調理器具は、食品を調理する時にタックフリー性能を向上させることができ、食品が本体表面に粘着する確率を低下させ、さらに調理器具を洗浄しやすく、調理の楽しみを向上させる。
【0037】
第4の態様を合わせて、さらなる技術案では、前記ショットブラスト層は、前記本体が成形した後、前記本体の内面に対してショットブラスト処理を行って形成された45~85マイクロメートルの段差を有する凹凸構造であり、前記物理蒸着層の厚さは0.8~1.45マイクロメートルである。
【0038】
実験テストから分かるように、45~85マイクロメートルの段差を有する凹凸構造、又は55~75マイクロメートルの段差を有する凹凸構造は、加工しやすく且つ良好な疎水性能を有する。物理蒸着層の厚さが0.8~1.45マイクロメートルであることは、物理蒸着層がショットブラスト層の表面を覆うとき、物理蒸着層がショットブラスト層の凹凸構造と類似するトポグラフィを有し、物理蒸着層の表面にタックフリー性能及び耐摩耗性能を備えさせることを効果的に実現することができる。
【0039】
第5の態様では、本願は、金属基材の表面に第1の態様に記載の物理的タックフリー構造を加工するために用いられる物理的タックフリー構造の加工方法を提供し、物理的タックフリー構造はショットブラスト層を含み、前記の加工方法は、
金属基材を所定の寸法形状に加工する成形ステップと、
切断された前記金属基材又は成形された製品に対してショットブラスト加工を行ってショットブラスト層を形成するショットブラストステップと、
ショットブラスト後の金属基材又は成形後の製品を200℃~500℃まで昇温して真空環境下で、前記ショットブラスト層の表面に対してPVDメッキを行うメッキステップと、を含む。
【0040】
上記技術案を採用することにより、加工コストが低く且つ加工効率が高い。
【0041】
第6の態様では、本願は、第3の態様に記載の調理器具に適用される調理器具の加工方法をさらに提供し、前記の加工方法は、
金属基材を加工して調理器具本体を形成する成形ステップと、
前記本体の内面において球面凹部を有するショットブラスト層を形成するために前記本体の内面に対してショットブラスト加工を行うショットブラストステップと、
ショットブラスト後の前記本体を200℃~500℃まで昇温して真空環境下で、前記本体の内面に対してPVDメッキを行うメッキステップと、を含む。
【0042】
上記技術案を採用することにより、従来技術がまず金属板材に対して凹凸構造を加工した後にさらに延伸して器具の本体に成形する方式を放棄する。まず金属板材を本体に延伸成形して続いて本体の内面にショットブラスト加工を行って凹凸構造を形成し、プロセスが簡単でコストが低く、且つ延伸後に凹凸構造のトポグラフィを破壊するリスクが発生せず、凹凸構造の疎水性能をよりよく保護し、製品のタックフリー性能の一致性がより高い。
【0043】
第6の態様を合わせて、さらなる技術案では、ショットブラストステップとメッキステップとの間に、前記ショットブラスト層の表面に電解層又はプラズマ層を形成する電解又はプラズマ研磨加工ステップをさらに含む。
【0044】
上記技術案を採用することにより、ショットブラストにより形成された凹凸構造の表面にさらにナノオーダー又はマイクロメートルの凹凸構造を形成することができ、それにより疎水性能をさらに向上させる。また金属基材の加工プロセスにおける変色問題を低減することができる。
【発明の効果】
【0045】
要約すると、本願は少なくとも1つの有益な効果を有し、
1、本願の物理的タックフリー構造は、金属表面に耐摩耗及びタックフリーの特性を有させる。
2、本願の物理的タックフリー構造は、二体構造による脱落リスクを低減することができ、強度がより高い。
3、本願の物理的タックフリー構造では、物理蒸着層は凹部構造及び凸部構造に直接接触し、中間に遷移層がなく、結合強度を確保しつつ加工工程を減少し、加工コストを削減することができる。
4、本願の調理器具では、設計の必要に応じて調理器具の異なる領域に物理的タックフリー構造を設けることができ、それにより調理器具が正常に調理する時に有する耐摩耗及びタックフリー性能を満たすことができ、また調理器具のコストパフォーマンスを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】本願の物理的タックフリー構造付きの実施例1の金属基材の構造概略図である。
図2図1におけるA部の拡大概略図である。
図3図2におけるB-Bの断面概略図である。
図4図3におけるC部の拡大概略図である。
図5図4におけるD部の拡大概略図である。
図6図5におけるE部の拡大回転後の概略図である。
図7】本願の物理的タックフリー構造付きの実施例2の構造概略図である。
図8】本願の調理器具の実施例1の構造概略図である。
図9】本願の調理器具の実施例2の構造概略図である。
【符号の説明】
【0047】
1...金属基材、2...物理的タックフリー構造、21...凹部、22...ショットブラスト層、3...凸部構造、31...突起、4...物理蒸着層、5...鍋本体、51...内面、511...底部領域、52...外面、521...鍋口領域、6...ハンドル、a...ボアピッチ、b...孔の深さ、c...突起高さ。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本願の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、以下、図面を参照して本願についてさらに詳細に説明する。本明細書において一般に図示及び説明される本願の実施例の構成要素は、様々な異なる構成で配置及び設計されてもよい。本願における実施例に基づき、当業者が創造的な労働をしない前提で得た全ての他の実施例は、本願の保護範囲に属する。
【0049】
なお、以下の図面において同様の符号及び文字は同様の項目を表しており、ある項目が一度1つの図面において定義されると、それ以降の図面においては更なる定義及び解釈を必要しない。
【0050】
本願の説明において、なお、特に明記及び限定されない限り、用語「取付け」、「連結」及び「接続」は、広い意味で理解されるべきであり、例えば、固定接続であってもよく、取り外し可能な接続又は一体接続であってもよく、機械的接続であってもよく、又は電気的接続であってもよく、直接連結であってもよく、仲介者を介して間接的に連結されてもよく、2つの部材内部の連通であってもよい。当業者にとって、本願における上記の用語の特定の意味は、特定の状況に応じて理解することができる。
【0051】
本願の説明において、なお、用語「上」、「下」、「左」及び「右」などで示される向き又は位置関係は、図面に示す向き又は位置関係に基づくものであり、本願を説明し、説明を簡略化するためのものであり、装置又は素子が特定の方向を持たなければならず、特定の方位で構築及び操作されなければならないように示したり暗示したりするのではなく、したがって本願の限定として理解することはできない。
【0052】
以下、図面を参照して本願のいくつかの実施形態について詳細に説明する。矛盾がない場合、下記の実施例の特徴は、互いに組み合わせることができる。
【0053】
本願における調理器具は、食事器具及び調理器具を含む。
(実施例1)
【0054】
図1図6は物理的タックフリー構造2の実施例の構造概略図である。物理的タックフリー構造2は金属基材1の表面に設けられ、物理的タックフリー構造2は、凹部構造と、凹部構造の少なくとも一部の領域に設けられた凸部構造3と、を含み、少なくとも一部の凹部構造及び/又は凸部構造3の表面に物理蒸着層4が設けられ、物理蒸着層4の表面のトポグラフィはそれに覆われた凹部構造及び/又は凸部構造3の表面のトポグラフィと類似する。
【0055】
図1を参照し、本実施例における物理的タックフリー構造2は、金属基材1の表面に設定された領域においてエッチングなどの加工方法で一体的に加工されたものであり、本実施例は、化学的エッチング及び物理的エッチングの加工方法を採用して金属基材1の表面に加工された物理的タックフリー構造2である。
【0056】
図2を参照し、物理的タックフリー構造2は凹部構造を含み、凹部構造は複数の凹部21が直交してアレイ状に配列されてなり、本実施例における凹部21の断面は円形であり、設計生産のニーズに応じて多角形、例えば六角形又は四角形に設計されてもよい。凹部21の直径は0.3~0.55ミリメートルであり、最も好ましくは0.4~0.45ミリメートルである。凹部21のボアピッチaの範囲は0.6~0.8ミリメートルであり、最も好ましくは0.6ミリメートルである。凹部21が多角形である場合、多角形は均一に配置され、多角形の内接円の直径は0.3~0.55ミリメートルであり、最も好ましくは0.4~0.45ミリメートルである。
【0057】
図3を参照し、凹部21は、金属基材1の表面に化学エッチング加工を行うことにより形成され、凹部21の孔の深さbは45~85マイクロメートルであり、最も好ましくは55~75マイクロメートルである。
【0058】
図4を参照し、凹部構造の表面にエッチングにより凸部構造3を加工し、本実施例において凸部構造3に対するエッチング加工は物理的エッチング加工である。
【0059】
図5を参照し、凸部構造3は、少なくとも凹部構造の少なくともの一部の表面に設けられた複数の突起31を含み、突起31の高さが0.1~0.3マイクロメートルである。本図は突起31の構造のみを示しており、プラズマ源により凹部構造の表面をエッチング加工する時、突起31の形状は不規則であるが、各突起31の高さ範囲は0.1~0.3マイクロメートルに制御する必要がある。
【0060】
図6を参照し、少なくとも一部の凹部構造及び/又は凸部構造3の表面に物理蒸着層4が設けられ、PVDコーティングプロセスパラメータの設定及び制御によって、物理蒸着層4の表面のトポグラフィは、それに被覆された凹部構造及び/又は凸部構造3の表面のトポグラフィに類似し、これにより金属基材1の表面のタックフリー効果が達成される。物理蒸着層4は、凹部構造及び/又は凸部構造3に直接接触し、物理蒸着層4の厚さは0.8~1.45マイクロメートルである。従来のPVD塗布層は金属基材1と直接接触して結合することができず、PVD塗布層と金属基材1との間に一層の遷移層を設ける必要があり、例えば、出願番号がCN202121169683.5で、CN202222426611.5である特許は、いずれも遷移層の形態を採用して結合を実現する。遷移層は塗布層に優れた結合力を有するだけでなく、また金属基材1に優れた結合力を有し、PVD塗布層と金属基材1との良好な結合力を保証し、脱落しにくい。本願の物理的タックフリー構造2は理論分析及び長期の実験テストにより、新たな構造を研究し、直接金属基材1の表面に関連する構造を加工し、PVD塗布層と金属基材1との良好な結合力を実現することができるだけでなく、また金属基材1の表面のタックフリー性能を向上させることができ、さらに耐摩耗性を有し、金属基材1の表面の耐摩耗及びタックフリー性能を長く保持することができる。本金属基材1は、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼及びチタン合金などの金属材料である。
【0061】
一部の凹部構造に凸部構造3が設けられ、一部の凸部構造3、又は一部の凹部構造、又は一部の凹部構造及び一部の凸部構造3の表面に物理蒸着層4塗布層がメッキされ、金属基材1の表面に複数の組み合わせ構造を形成することができ、異なる使用ニーズに応じて異なる表面効果を実現し、又は金属基材1の表面の領域別に異なる表面効果を実現する。
【0062】
【0063】
性能比較テストから分かるように、第5~8項の物理蒸着厚さは0.8~1.45μmの範囲内にあり、PVDエッチング深さが0.1~0.3μmである時に呈する総合性能は最適であり、このパラメータ範囲のコストも最も合理的である。
【0064】
物理蒸着厚さが0.8μm未満で、PVDエッチング深さが0.1μm未満である場合、メッキ層の結合力が非常に悪くてレベル3しかに達せず、脱落しやすく、硬度が600~800HVであり、硬度が不十分であり、耐摩耗性が悪く、煎卵のタックフリー効果はIII級であり、タックフリー効果が悪い。
【0065】
物理蒸着厚さが0.8μm未満、PVDエッチング深さが0.3μmを超える場合、メッキ層の硬度が300~800HVであり、硬度が不十分であり、耐摩耗性が悪く、煎卵のタックフリー効果はIII級であり、タックフリー効果が悪い。
【0066】
物理蒸着厚さが1.45μmを超え、PVDエッチング深さが0.1μm未満である場合、メッキ層の結合力が非常に悪くてレベル3しかに達せず、脱落しやすく、硬度が1500~2000HVであることは要求を達成することができるが、原料の無駄によってコストが高くなり、煎卵のタックフリー効果はIII級であり、タックフリー効果が悪い。
【0067】
物理蒸着厚さが1.45μmを超え、PVDエッチング深さが0.3μmを超える場合、結合力がレベル2以上に達し、硬度が1500~2000HVであることは要求を達成することができるが、原料の無駄によってコストが高くなり、煎卵のタックフリー効果はIII級であり、タックフリー効果が悪い。
【0068】
物理蒸着厚さが0.8~1.45μmの範囲内にあり、PVDエッチング深さが0.1~0.3μmである場合、結合力がレベル2に達し、硬度が1500~2000HVであり、煎卵のタックフリー効果はII級であり、コストパフォーマンスが最高である。
(実施例2)
【0069】
図7は、物理的タックフリー構造2の実施例2の構造概略図である。物理的タックフリー構造2は、金属基材1の表面に設けられたショットブラスト層22を含み、物理蒸着層4はショットブラスト層22の表面に設けられ、金属基材1の表面の凹部21はショットブラスト加工により形成され、物理蒸着層4の表面のトポグラフィはそれに被覆されたショットブラスト層22の表面のトポグラフィと類似する。
【0070】
本実施例における物理的タックフリー構造2は、金属基材1の表面に設定された領域に、ショットブラスト又はロールプレスなどの加工方法により一体加工した後、PVDメッキを施したものからなる。
【0071】
本実施例のショットブラスト層22はショットブラストの加工方法を用いて金属基材1の表面に加工された凹凸構造であり、ショットブラスト層22は複数の凹部21が規則的又は不規則的に配列されてなり、本実施例における凹部21の横断面は円形である。凹部21の直径は0.3~0.95ミリメートルであり、最も好ましくは0.4~0.65ミリメートルであり、凹部21は0.6~1ミリメートルの鋼球を介して2Mpa-8Mpaの圧力で金属基材1の表面に噴射して形成された球面凹部21であり、上記凹部21の直径は球面直径である。またロールプレスなどの加工方式により設計の必要に応じて円形、楕円形又は多角形、例えば六角形又は四角形を加工することができる。凹部21のボアピッチaの範囲は0.3~0.8ミリメートルであり、最も好ましくは0.6ミリメートルであり、ここでいうボアピッチaの範囲とは、凹部21の球心距離を意味する。凹部21が多角形である場合、多角形は、圧延により均一に配置されてもよく、必要に応じて不規則に配置されてもよく、多角形の内接円の直径は0.3~0.95ミリメートルであり、最も好ましくは0.4~0.65ミリメートルである。
【0072】
ショットブラスト層22は、本体成形後に本体内面に対してショットブラスト処理を行ってなる凹部21と凹部21との間の突起31が接続されて形成された表面であり、凹部深さbが45~85マイクロメートルであり、最も好ましくは55~75マイクロメートルである。ショットブラスト層22は金属基材1と一体構造であり、物理蒸着層4はショットブラスト層22と直接接触する。
【0073】
少なくとも一部のショットブラスト層22の表面に物理蒸着層4が設けられ、PVDコーティングプロセスパラメータを設定することによってメッキ膜の厚さを制御することができ、物理蒸着層4の表面のトポグラフィは、それに被覆されたショットブラスト層22の表面のトポグラフィに類似し、これにより金属基材1の表面のタックフリー効果が達成される。物理蒸着層4は、ショットブラスト層22に直接接触し、物理蒸着層4の厚さは0.8~1.45マイクロメートルである。従来のPVD塗布層は金属基材1と直接接触して結合することができず、PVD塗布層と金属基材1との間に一層の遷移層を設ける必要があり、例えば、出願番号がCN202121169683.5で、CN202222426611.5である特許は、いずれも遷移層の形態を採用して結合を実現する。遷移層は塗布層に優れた結合力を有するだけでなく、また金属基材1に優れた結合力を有し、PVD塗布層と金属基材1との良好な結合力を保証し、脱落しにくい。本願の物理的タックフリー構造は理論分析及び長期の実験テストにより、新たな構造を研究し、直接金属基材1の表面に対応する凹凸構造をショットブラスト加工し、PVD塗布層と金属基材1との良好な結合力を実現することができるだけでなく、また金属基材1の表面のタックフリー性能を向上させることができ、さらに耐摩耗性を有し、金属基材1の表面の耐摩耗及びタックフリー性能を長く保持することができる。本金属基材1は、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼及びチタン合金などの金属材料である。
(実施例3)
【0074】
図7を参照し、実施例2と異なる点は、ショットブラスト層22と物理蒸着層4との間にさらに電解層又はプラズマ研磨層が設けられることである。一部のショットブラスト層22の表面に電解層又はプラズマ研磨層が設けられ、一部の電解層又はプラズマ研磨層、又は一部のショットブラスト層22、又は一部のショットブラスト層22及び一部の電解層/又はプラズマ研磨層の表面に物理蒸着層4塗布層がメッキされ、金属基材1の表面に複数の組み合わせ構造を形成することができ、異なる使用ニーズに応じて異なる表面効果を実現し、又は金属基材1の表面の領域別に異なる表面効果を実現する。
【0075】
図6を参照し、実施例1と異なる点は以下のとおりであり、ショットブラスト層22の表面に電解又はプラズマ研磨により凸部構造3を加工し、本実施例において凸部構造3に対する加工は電解加工である。
【0076】
図5を参照し、実施例1と異なる点は以下のとおりであり、凸部構造3は、少なくともショットブラスト層22の少なくとも一部の表面に設けられた複数の突起31を含み、突起31の高さが45~85マイクロメートルであり、電解層は、突起31と突起31が接続されて形成された表面である。本図は突起31の構造のみを示しており、電解又はプラズマ研磨によりショットブラスト層22の表面をエッチング加工する時、突起31の形状は不規則であるが、各突起31の高さ範囲は45~85マイクロメートルに制御される必要がある。
(実施例4)
【0077】
図8を参照し、本実施例は調理器具を開示し、具体的にフライパンであり、フライパンは鍋本体5及びハンドル6を含み、フライパンの鍋本体5の内面51の底部領域511に以上の実施例におけるいずれかの物理的タックフリー構造2が設けられる。実際の応用において、より良好なタックフリー性能を実現するために、鍋本体5の内面51の全領域に物理的タックフリー構造2を設けてもよい。本実施例ではフライパンのみで例を挙げて説明し、実際の応用では、本物理的タックフリー構造2は、食事器具及び調理器具を含む全ての調理器具の表面に適用することができる。本実施例ではフライパンのみで例を挙げて説明し、実際の応用では、本物理的タックフリー構造は、食事器具及び調理器具を含む全ての調理器具の表面に適用することができ、調理器具の容器(豆乳機カップ体、炊飯器、圧力調理器、鍋内釜又はオーブンケースなど)、ジューサーカップ体、スプーンなどを含むがこれらに限定されない。
(実施例5)
【0078】
図9を参照し、本実施例と実施例4との相違点は以下のとおりであり、本実施例の鍋本体5の外面52にも物理的タックフリー構造2が設けられ、物理的タックフリー構造2は鍋底から離れた鍋口位置に設けられ、実際の応用において、外面52の良好なタックフリー性能を実現するために、外面52の全ての領域に物理的タックフリー構造2を設けてもよい。又は凹部構造及び凸部構造3は鍋本体5の外面52の底部から離れる鍋口領域521に一体的に設けられる。
(実施例6)
【0079】
図1図7を参照し、本実施例はさらに、金属基材1の表面に実施例1又は実施例2又は実施例3における物理的タックフリー構造2を加工するために用いられる物理的タックフリー構造の加工方法を開示し、加工方法は、
金属基材1を所定の寸法形状に加工する成形ステップと、
切断された金属基材1又は成形された製品に対してショットブラスト加工を行うステップであって、金属基材1又は成形品の表面に球面状の凹部21を有するショットブラスト層22を形成するまで、0.6~1ミリメートルのショットを2MPa~8MPaの圧力で3秒~5分間噴射するショットブラストステップと、
ショットブラスト後の金属基材1又は成形後の製品を200℃~500℃まで昇温して真空環境下で、内面に対してPVDメッキを行うメッキステップと、を含む。
(実施例7)
【0080】
図8図9を参照し、本実施例はさらに調理器具の加工方法を開示し、実施例4又は実施例5における調理器具に適用され、加工方法は、
金属基材1を加工してフライパンの鍋本体5を形成する成形ステップと、
フライパン鍋本体5の内面51に対してショットブラスト加工を行うステップであって、鍋本体5の内面51に球面状の凹部21を有するショットブラスト層22を形成するまで、0.6~1ミリメートルのショットを2MPa~8MPaの圧力で3秒~5分間噴射するショットブラストステップと、
ショットブラスト層22の表面に電解加工を行って電解層を形成する電解ステップと、
電解後の鍋本体5を200℃~500℃まで昇温して真空環境下で、本体の内面51に対してPVDメッキを行うメッキステップと、を含む。
【0081】
以上は本発明の基本的な原理、主要な特徴及び本発明の利点を表示して説明する。当業者であれば理解されるように、本発明は上記実施例に限定されず、上記実施例及び明細書に記載されたのは本発明の原理を説明するだけであり、本発明の精神及び範囲から逸脱しない前提で、本発明はさらに様々な変更、修正、置換及び変形を有し、これらの変更、修正、置換及び変形はいずれも保護を請求する本発明の範囲内に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9