(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127756
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】コイルユニット
(51)【国際特許分類】
H01F 38/14 20060101AFI20240912BHJP
B60L 5/00 20060101ALI20240912BHJP
H02J 50/12 20160101ALI20240912BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240912BHJP
B60L 53/12 20190101ALN20240912BHJP
【FI】
H01F38/14
B60L5/00 B
H02J50/12
H02J7/00 301D
B60L53/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007449
(22)【出願日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2023035500
(32)【優先日】2023-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩成
(72)【発明者】
【氏名】瀧田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】高橋 英介
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】大坪 誠
【テーマコード(参考)】
5G503
5H105
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503FA06
5G503GB08
5H105BA09
5H105BB05
5H105CC07
5H105CC19
5H105DD10
5H105EE15
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC26
5H125FF15
(57)【要約】
【課題】給電性能を維持しつつ、収容ケースの強度を向上させることが可能なコイルユニットを提供する。
【解決手段】コイルユニット(10)は、フェライト板(13)と、交流電力を送電または受電するためのコイル(112)を実装しフェライト板に載置されるコイル基板(14)と、フェライト板およびコイル基板を積層方向に積層した状態で収容する収容ケース(11)と、フェライト板およびコイル基板を積層方向に貫通する開口部(41,42)に挿通される支柱(31,32)を有し、収容ケース内の積層方向の空間を保持する複数の支柱形成部であって、交流電力の送電または受電の際にコイルが発生させるフェライト板の外縁から中心軸へ向けて流れる磁束の流れ方向にそれぞれ沿って設けられ、かつ、積層方向に見て中心軸まわりに互いに離間して設けられる複数の支柱形成部(21,22,23,24)と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非接触給電システム(300)に用いられるコイルユニットであって、
磁性材板(13)と、
交流電力を送電または受電するためのコイル(112)を実装するコイル基板(14)と、
前記磁性材板および前記コイル基板を積層方向に積層した状態で収容する収容ケース(11)と、
前記磁性材板および前記コイル基板を前記積層方向に貫通する開口部(41,42)に挿通される支柱(31,32)を有し、前記収容ケース内の前記積層方向の空間を保持する複数の支柱形成部であって、前記交流電力の送電または受電の際に前記コイルが発生させる前記磁性材板の外縁から中心軸へ向けて流れる磁束の流れ方向にそれぞれ沿って設けられ、かつ、前記積層方向に見て前記中心軸まわりに互いに離間して設けられる複数の支柱形成部(21,22,23,24)と、
を備える、コイルユニット。
【請求項2】
前記開口部の前記中心軸側における前記積層方向に見た開口面積は、前記開口部の前記外縁側における前記積層方向に見た開口面積よりも小さい、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項3】
前記複数の支柱形成部のうち少なくとも一つは、複数の前記開口部に挿通される複数の前記支柱を有し、
前記中心軸側に形成される前記開口部の形成間隔は、前記外縁側に形成される前記開口部の形成間隔よりも広い、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項4】
複数の前記支柱形成部は、前記積層方向に見て、前記中心軸を対称中心とした点対称に設けられている、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項5】
前記支柱の前記積層方向に直交する平面における断面形状と、前記開口部の前記積層方向に直交する平面における断面形状とは、同じである、請求項1に記載のコイルユニット。
【請求項6】
前記支柱は、前記開口部を挿通して前記収容ケースの内壁まで前記積層方向に延びて前記収容ケースと一体に形成されている、請求項1~請求項5のうちいずれか一項に記載のコイルユニット。
【請求項7】
非接触給電システムに用いられるコイルユニットであって、
磁性材板と、
交流電力を送電または受電するためのコイルと、
前記磁性材板および前記コイルを積層方向に積層した状態で収容する収容ケースであって、前記積層方向に分割可能な第1カバー部材および第2カバー部材を有する収容ケースと、
前記磁性材板および前記コイルを前記積層方向に貫通して前記第1カバー部材から前記第2カバー部材まで至り、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とを連結させるための支柱を有する複数の支柱形成部であって、前記交流電力の送電または受電の際に前記コイルが発生させる磁束であって前記磁性材板の外縁から中心軸へ向けてまたは前記中心軸から前記外縁へ向けて流れる磁束の流れ方向にそれぞれ沿って設けられ、かつ、前記積層方向に見て前記中心軸まわりに互いに離間して設けられる複数の支柱形成部と、
を備える、コイルユニット。
【請求項8】
請求項7に記載のコイルユニットにおいて、
前記複数の支柱形成部に含まれる複数の前記支柱のうちの少なくとも一部は、支柱部材であって、前記積層方向の一端が前記第1カバー部材に接合され、他端が前記第2カバー部材に接合される支柱部材を含む、コイルユニット。
【請求項9】
請求項7に記載のコイルユニットであって、
前記磁性材板を挟んで前記コイルとは反対側に配置されて前記磁束の少なくとも一部をシールドする金属製のシールド板と、金属製のスペーサ部材と、を更に備え、
前記コイルと前記磁性材板と前記シールド板とは、前記積層方向に積層され、
前記第1カバー部材は、磁性と導電性とのうちの少なくとも磁性を有しない材料により形成されており、前記コイルに接し、前記積層方向に沿って突出して前記コイルおよび前記磁性材板を前記積層方向に貫く突出部を有し、
前記第2カバー部材は、前記シールド板に接し、
前記スペーサ部材は、前記突出部と前記積層方向に接し、前記シールド板を前記積層方向に貫くように配置され、
前記複数の支柱形成部に含まれる複数の前記支柱のうちの少なくとも一部は、前記突出部と前記スペーサ部材により構成される、コイルユニット。
【請求項10】
請求項9に記載のコイルユニットにおいて、
前記第1カバー部材は、導電性を有する繊維を含む材料により生成されており、
前記突出部において、前記繊維の少なくとも一部は、前記コイルが発生させる前記突出部における磁束の方向に沿うように配置されている、コイルユニット。
【請求項11】
請求項9に記載のコイルユニットにおいて、
前記突出部は、前記積層方向に沿って前記コイルから前記磁性材板に向かうに従って前記積層方向と直交する断面積が小さくなるテーパ状の外観形状を有する、コイルユニット。
【請求項12】
請求項8に記載のコイルユニットにおいて、
前記支柱部材は、前記積層方向に沿って前記コイルから前記磁性材板に向かうに従って前記積層方向と直交する断面積が小さくなるテーパ状の外観形状を有する、コイルユニット。
【請求項13】
請求項7に記載のコイルユニットにおいて、
前記複数の支柱形成部に含まれる複数の前記支柱のうち、前記コイルが発生させる磁束が予め定められた閾値よりも大きい位置に配置される前記支柱は、導電性を有しない材料により形成されており、前記コイルが発生させる磁束が前記閾値以下である位置に配置される前記支柱は、金属により形成されている、コイルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気自動車に対し、DWPT(ダイナミック・ワイヤレス・パワー・トランスファー:動的ワイヤレス充電)と呼ばれる技術を用いて、非接触で電力を供給する非接触給電システムが開発されている。この非接触給電システムでは、地上側に埋め込んだ送電用コイルから、車両の床下に搭載した受電コイルに非接触で電力を伝送している。例えば、特許文献1には、上記のような非接触給電システムに用いられるコイルユニットが開示されている。
【0003】
このコイルユニットは、収容ケースを備えており、コイル、フェライト板、基板などが、収容ケースの中に配置されている。基板の表面には、コンデンサ等の電気素子が実装される。さらに、基板には、スリットが形成されており、収容ケースに外部からの衝撃が加わり撓み変形が生じた際でも、スリットにおいて衝撃を吸収して、基板自体に割れ等の損傷が生じることを抑制するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のコイルユニットでは、基板に加わる応力をスリットで吸収するのみであるため、収容ケース自体の強度を向上させるという点では不十分であった。なお、収容ケースのような筐体の強度を向上させる手段として、単純に内部空間に支柱を設けることが考えられるが、無作為に支柱を設ける構成では、フェライト板の磁束の流れを遮ってしまい、給電性能が低下する虞があった。本開示は、上記のような点に鑑みて創作されたものであり、その目的は、給電性能を維持しつつ、収容ケースの強度を向上させることが可能なコイルユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
本開示の一形態によれば、コイルユニットが提供される。このコイルユニットは、非接触給電システム(300)に用いられるコイルユニットであって、フェライト板(13)と、交流電力を送電または受電するためのコイル(112)を実装し、前記フェライト板に載置されるコイル基板(14)と、前記フェライト板および前記コイル基板を積層方向に積層した状態で収容する収容ケース(11)と、前記フェライト板および前記コイル基板を前記積層方向に貫通する開口部(41,42)に挿通される支柱(31,32)を有し、前記収容ケース内の前記積層方向の空間を保持する複数の支柱形成部であって、前記交流電流の送電または受電の際に前記コイルが発生させる前記フェライト板の外縁から中心軸へ向けて流れる磁束の流れ方向にそれぞれ沿って設けられ、かつ、前記積層方向に見て前記中心軸まわりに互いに離間して設けられる複数の支柱形成部(21,22,23,24)と、を備える。
上記構成によれば、複数の支柱形成部が、フェライト板の外縁から中心軸へ向けて流れる磁束の流れ方向に沿い、かつ、積層方向に見て中心軸まわりに互いに離間して設けられる。フェライト板において、支柱形成部が設けられる部分では、フェライト板の外縁から中心軸へ向けての磁束の流れが阻害されるが、中心軸まわりに離間して設けられる支柱形成部同士の間の領域では、フェライト板の外縁から中心軸への磁束の流れが確保できる。したがって、このコイルユニットによれば、給電性能を維持しつつ、収容ケースの強度を向上させることができる。
【0008】
本開示の他の実施形態によれば、非接触給電システムに用いられるコイルユニットが提供される。このコイルユニットは、磁性材板と、交流電力を送電または受電するためのコイルであって、前記磁性材板に載置されるコイルと、前記磁性材板および前記コイルを積層方向に積層した状態で収容する収容ケースであって、前記積層方向に分割可能な第1カバー部材および第2カバー部材を有する収容ケースと、前記磁性材板および前記コイルを前記積層方向に貫通して前記第1カバー部材から前記第2カバー部材まで至り、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とを連結させるための支柱を有する複数の支柱形成部であって、前記交流電力の送電または受電の際に前記コイルが発生させる磁束であって前記磁性材板の外縁から中心軸へ向けてまたは前記中心軸から前記外縁へ向けて流れる磁束の流れ方向にそれぞれ沿って設けられ、かつ、前記積層方向に見て前記中心軸まわりに互いに離間して設けられる複数の支柱形成部と、を備える。
上記構成によれば、複数の支柱形成部が、磁性材板の外縁から中心軸へ向けてまたは中心軸から外縁へ向けて流れる磁束の流れ方向に沿い、かつ、積層方向に見て中心軸まわりに互いに離間して設けられる。磁性材板において、支柱形成部が設けられる部分では、磁性材板の外縁から中心軸へ向けてまたは中心軸から外縁へ向けての磁束の流れが阻害されるが、中心軸まわりに離間して設けられる支柱形成部同士の間の領域では、磁性材板の外縁から中心軸への磁束の流れが確保できる。したがって、このコイルユニットによれば、給電性能を維持しつつ、収容ケースの強度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1実施形態における、走行中給電システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本開示の第1実施形態における、走行中給電システムの回路構成を示す図である。
【
図3】本開示の第1実施形態における、コイルユニットの内部構成を示す分解斜視図である。
【
図4】コイルユニットを模式的に示す平面図である。
【
図5】コイルユニットを模式的に示す断面図であり、
図4のV-V線断面図である。
【
図8】本開示の第2実施形態における、フェライト板を示す平面図である。
【
図9】本開示の第3実施形態における、フェライト板を示す平面図である。
【
図10】本開示の第4実施形態における、フェライト板を示す平面図である。
【
図11】本開示の第5実施形態における、コイルユニットの内部構成を示す分解斜視図である。
【
図12】第5実施形態におけるコイルユニットを模式的に示す断面図であり、
図11のXII-XII線断面図である。
【
図13】本開示の第6実施形態におけるコイルユニットを模式的に示す断面図である。
【
図14】本開示の第7実施形態におけるコイルユニットを模式的に示す部分断面図である。
【
図15】本開示の第8実施形態におけるコイルユニットを模式的に示す断面図である。
【
図16】本開示の第9実施形態におけるコイルを模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の複数の実施形態について
図1~
図10に基づいて説明する。
【0011】
A.第1実施形態:
A1.非接触給電システム300の構成:
第1実施形態のコイルユニット10について、
図1~
図7を参照して説明する。第1実施形態のコイルユニット10は、非接触給電システム300に用いられる。
図1に示すように、非接触給電システム300は、道路RSに設置される送電器100と、車両200に搭載される受電器205とを含んでいる。非接触給電システム300は、送電器100から非接触で車両200の受電器205に電力を供給することが可能なシステムである。本実施形態では、コイルユニット10は、送電器100に備えられている。
【0012】
送電器100は、送電共振回路110と、送電回路120と、電源回路130とを備えている。本実施形態では、送電共振回路110と、送電回路120と、電源回路130とは、道路RSの内部に埋設されている。送電共振回路110および送電回路120は、複数を備えてよく、例えば、車両200の進行方向となる道路RSの延在方向に沿って連続的に配列して備えられてよい。送電共振回路110、送電回路120、ならびに電源回路130は、必ずしも道路RS内部に埋設される必要はなく、例えば、道路RS上において、車両200の走行の弊害とならない位置に備えられてよい。送電回路120および電源回路130は、送電共振回路110近傍に備えられることが好ましい。
【0013】
電源回路130は、例えば、系統電源などの交流電源からの交流電力を、電源ケーブルを介して送電回路120に供給する。送電回路120は、整流回路、インバータ回路、ならびにフィルタ回路などを有する交流変換回路である。送電回路120は、電源回路130から供給される交流電力を直流電力に変換し、直流電力を車両200の受電器205へ送電可能な高周波の交流電力に変換して、送電共振回路110に供給する。
【0014】
送電共振回路110は、電磁誘導現象を利用して送電コイル112(
図2参照)に誘導された交流電力を受電共振回路210に送電する。送電共振回路110は、
図2に示すように、送電コイル112と、共振コンデンサとして機能する第一コンデンサ116とが直列に接続されているLC回路である。送電コイル112と、第一コンデンサ116とは、並列に接続されていてもよい。送電コイル112は、本実施形態のコイルユニット10に含まれている。
【0015】
車両200は、例えば、電気自動車やハイブリッド車等の駆動モータを搭載する車両で構成される。車両200は、
図1に示すように、受電器205と、バッテリ230とを備えている。受電器205は、受電共振回路210と、受電回路220とを有している。
【0016】
受電共振回路210は、
図2に示すように、受電コイル212と、共振コンデンサとして機能する第二コンデンサ216とを含んでいる。受電共振回路210は、例えば、車両200の底面に配置されている。受電共振回路210は、送電器100の送電共振回路110に誘導された交流電力を受電コイル212から受電する。
【0017】
受電回路220は、受電共振回路210から出力される交流電力を直流電力に変換する。受電回路220は、例えば、フィルタ回路と、交流電力を直流電力に変換する整流回路と、バッテリ230の充電に適した直流電力に変換する電力変換回路とを有している。バッテリ230は、例えば、車両200の駆動源である駆動モータを駆動するための直流電力を出力する二次電池である。受電回路220から出力される直流電力は、バッテリ230の充電に利用することができる。受電回路220からの直流電力は、図示しない補機バッテリの充電や、駆動モータや補機の駆動に利用されてよい。
【0018】
A2.コイルユニット10の構成:
次に、コイルユニット10の構成について、
図3を参照して説明する。
図3に示すように、コイルユニット10は、収容ケース11、アルミ板12、フェライト板13、およびコイル基板14を備えている。なお、上述のように
図1では、技術の理解を容易にするために、コイルユニット10は、送電器100の送電共振回路110および送電回路120を含むように図示されているが、含まなくてもよい。コイルユニット10には、例えば、送電共振回路110、送電回路120、ならびに電源回路130に含まれるそれ以外の任意の部材が含まれてもよい。
【0019】
なお、コイルユニット10は、収容ケース11内の上下方向の空間を保持するための複数の支柱形成部21,22,23,24(
図4参照)をさらに備えている。ただし、複数の支柱形成部の詳細構成については、
図4以降の図を参照して説明するものとし、
図3では図示を省略している。
【0020】
収容ケース11は、上面カバー15と、下面カバー16と、を有して構成されている。上面カバー15および下面カバー16は、非導電性を有し、例えば、樹脂などの非磁性体によって形成されている。なお、本実施形態において、上面カバー15と下面カバー16との上下方向の境界は、アルミ板12の上面12Tの位置と一致している(
図5参照)。このように、アルミ板12の上面12Tより下側に下面カバー16が位置している形態において、下面カバー16は、上記のように非磁性、非導電性材料でなくてもよく、アルミ板12と同様にシールド性能を持つ材料で形成してもよい。収容ケース11の側面を樹脂材料とすることにより、送電コイル112から発生する磁束が遮断されることを低減または防止することができる。
【0021】
上面カバー15は、略平板形状を有している。上面カバー15の上面15Tは、コイルユニット10が有する面のうち、車両200の受電コイル212と対向する面(以下、「コイル対向面」とも呼ぶ。)である。上面カバー15の下面15Bは、コイル基板14の上面14Tを覆っており、コイル基板14および送電コイル112を外気などから保護している。本実施形態では、上面カバー15は、道路RSに埋設されているが、道路RSから露出されていてもよい。
【0022】
上面カバー15と、下面カバー16とが図示しない固定具によって嵌合することによって、コイル基板14と、フェライト板13と、アルミ板12とを収容する収容ケース11が形成される。収容ケース11内には、下面カバー16から上面カバー15に向かって、アルミ板12、フェライト板13、ならびにコイル基板14がこの順に積層されて備えられている。
【0023】
アルミ板12は、平面視で略矩形の外観形状を有している。アルミ板12は、その上面12Tがフェライト板13の下面13Bと当接する状態で設けられている。アルミ板12は、アルミニウムやアルミニウム合金によって形成されている。アルミ板12は、送電コイル112に発生する熱を放熱する。また、アルミ板12は、コイル基板14から発生する磁束を外に逃がさないようにシールドする機能を有する。なお、アルミ板12に変えて、銅やその他の金属板により放熱とシールドのための板部材を構成してもよい。
【0024】
フェライト板13は、平面視で略矩形状の外観形状を有している。フェライト板13は、コイル基板14を載置するための上面13Tと、上面13Tの裏側に位置する下面13Bとを備えている。上面13Tは、下面13Bよりもコイル対向面に近い位置に配置される面である。フェライト板13は、上面13Tがコイル基板14の下面14Bと対向する状態で配置されている。本実施形態では、フェライト板13は、コイル基板14の下面14Bと当接する状態で備えられているが、フェライト板13は、コイル基板14の下面14Bから離間した状態で備えられていてもよい。
【0025】
コイル基板14は、リジッドタイプのプリント配線板である。コイル基板14は、平面視で略矩形の外観形状を有している。コイル基板14の内部には、送電コイル112が形成されている。本実施形態では、送電コイル112は、中心軸CXの周囲を取り囲む環状の導体を複数積層して形成される積層コイルである。送電コイル112には、中心軸CXを含む位置に、導体を含まない中空領域が備えられている。なお、中心軸CXは、コイルユニット10の中心軸CXであって、アルミ板12、フェライト板13、およびコイル基板14の中心を通り、上下方向に延びる。なお、中心軸CXの延びる方向は、フェライト板13とコイル基板14が積層される「積層方向」と一致する。
【0026】
送電コイル112には、例えば、マグネットワイヤなどの導線が用いられてよく、この場合には、送電コイル112は、コイル状に巻き回されたマグネットワイヤが樹脂モールドされることによって形成されてもよい。送電コイル112は、例えば、導体を渦巻き状に切り出したスパイラルコイルであってもよく、横断面形状が円形や角形の導体がらせん状に巻き回されたヘリカルコイルなどの種々のコイルであってもよい。送電コイル112に導線が用いられる場合には、導線は、撚り線で形成されてもよい。
【0027】
送電コイル112に交流電流が流れると、送電コイル112の周囲に磁束が形成される。送電コイル112の周囲に形成される磁束は、送電コイル112の中空領域と、フェライト板13と、送電コイル112の外周側とを通る。送電コイル112の周囲に形成される磁束の一部が受電コイル212と鎖交すると、受電コイル212に交流電流が流れる。受電コイル212内に交流電流が流れると、受電コイル212周囲にも磁束が形成される。送電コイル112と、受電コイル212とのいずれにも鎖交する磁束によって、受電コイル212が送電コイル112から非接触で電力を受電する。
【0028】
A3.支柱形成部21,22,23,24の構成:
図4に示すように、収容ケース11内には、複数(本実施形態では4つ)の支柱形成部21,22,23,24が設けられている。なお、理解を容易にするため、
図4では、上面カバー15の図示を省略し、上面カバー15側から見た、収容ケース11内の各部材を図示している。
図4に示すように、4つの支柱形成部21,22,23,24は、第1支柱形成部21、第2支柱形成部22、第3支柱形成部23、第4支柱形成部24により構成されている。これらの各支柱形成部21,22,23,24が、第1支柱形成部21、第2支柱形成部22、第3支柱形成部23、第4支柱形成部24の順に、中心軸CXまわりに約90度の等間隔で互いに離間して放射状に配置されている。各支柱形成部21,22,23,24は、積層方向に見て、中心軸CXを対称中心とした点対称に設けられている。
【0029】
各支柱形成部21,22,23,24は、コイルユニット10内での設置位置が異なるものの、構成については同様であるため、各支柱形成部21,22,23,24のうち、代表として第1支柱形成部21の構成を例に説明する。第1支柱形成部21は、第1支柱31と、第2支柱32と、を有している。第2支柱32は、第1支柱31よりも中心軸CX寄りの位置に設けられている。第1支柱31と第2支柱32の並び方向は、フェライト板13の外縁から中心軸CXへ向けての磁束の流れ方向と一致する。
【0030】
第1支柱形成部21は、複数の支柱31,32が磁束の流れ方向に沿うように配置されていることで、全体として、磁束の流れ方向に沿っている。支柱31,32は、フェライト板13およびコイル基板14を積層方向に貫通する開口部41,42に挿通している。
図5に示すように、第1支柱31は、フェライト板13およびコイル基板14を積層方向に貫通する第1開口部41に挿通している。同様に、第2支柱32は、フェライト板13およびコイル基板14を積層方向に貫通する第2開口部42に挿通している。
【0031】
図4に示すように、支柱31,32は、いずれも同じ大きさの円柱形状をなしている。支柱31,32の、中心軸CXに直交する平面における断面積は、フェライト板13の上面13Tの面積に対して、十分に小さい。第1支柱形成部21を構成する第1支柱31と第2支柱32、および、第3支柱形成部23を構成する第1支柱31と第2支柱32、が、中心軸CXを通る一つの対角線上に並んでいる。第2支柱形成部22を構成する第1支柱31と第2支柱32、および、第4支柱形成部24を構成する第1支柱31と第2支柱32、が、中心軸CXを通るもう一つの対角線上に並んでいる。4つの支柱形成部全体で見ると、各支柱31,32は、積層方向に見た平面視において、放射状かつ飛び石状に設けられている。
【0032】
なお、中心軸CX上および中心軸CX近傍には、開口部41,42および支柱31,32は設けられていない。また、各支柱31,32はいずれも、コイル基板14の電流の流れを遮らないように、送電コイル112の巻きの周回ターンの間、例えば、積層方向に見てコイルの巻きの1周目と2周目の間に位置するように配置されている。なお、
図4,
図7では、渦巻き状に巻かれている送電コイル112を例示として図示し、周回ターンの間に各支柱31,32を設けたが、各支柱31,32の位置は周回ターンの間に限らず、送電コイル112の電流の流れを遮らない形態であればよい。
【0033】
図5に示すように、各支柱31,32は、上面カバー15の下面15Bからアルミ板12の上面12Tまで積層方向に延びて、上面カバー15と一体に形成されている。各支柱31,32は、アルミ板12から上面カバー15まで連続して設けられることによって、収容ケース11内の空間を上下方向において保持する。支柱31,32は、非導電性を有し、例えば、樹脂などの非磁性体によって形成されている。よって、上記したように同じく樹脂で形成される上面カバー15の成形時に、例えば一体成形により製造される。
【0034】
図5~
図7の各図に示すように、フェライト板13およびコイル基板14には、支柱31,32を挿通する開口部41,42が複数形成されている。フェライト板13およびコイル基板14の開口部41,42は、上記詳述した各支柱形成部21,22,23,24が有する複数の支柱31,32が設けられる位置と、積層方向において対応するように、複数の支柱31,32と同様の配置にて設けられている。
【0035】
図6に示すように、フェライト板13には、第1支柱31が挿通する4つの第1開口部41Aと、第2支柱32が挿通する4つの第2開口部42Aと、の合計8つの開口部41A,42Aが放射状かつ飛び石状に設けられている。同様に、
図7に示すように、コイル基板14には、第1支柱31が挿通する4つの第1開口部41Bと、第2支柱32が挿通する4つの第2開口部42Bと、の合計8つの開口部41B,42Bが放射状かつ飛び石状に設けられている。なお、以下、フェライト板13に形成される開口部41A,42Aと、コイル基板14に形成される開口部41B,42Bとを、特に区別しないときには、単に「開口部41、42」という。
【0036】
各開口部41,42は、支柱31,32が挿通可能な大きさの断面円形状を有する貫通孔として形成されている。フェライト板13の開口部41A,42Aと、コイル基板14の開口部41B,42Bは、いずれも同じ大きさである。換言すると、各支柱31,32の積層方向に直交する方向の断面形状と、各開口部41,42の積層方向に直交する方向の断面形状とは、同じである。なお、厳密には、各支柱31,32は、各開口部41,42に挿通可能であるため、各支柱31,32の断面形状の方が各開口部41,42の断面形状よりも小さい。しかし、上記「同じ」とは、厳密な意味での「同じ」に限らず、当該技術分野の技術常識に照らして、支柱31,32が開口部41,42に挿通可能な程度において、通常「同じ」であると判断される範囲の同一性を有していれば、「同じ」であると解釈する。
【0037】
図6において、フェライト板13を流れる磁束を、模式的に複数の矢印で図示している。送電の際に、送電コイル112から、送電コイル112と対向する受電コイル212側へ発生する磁束は、
図6に示すように、フェライト板13の外縁から中心軸CXへ向けて流れる。開口部41A,42Aは、放射状かつ飛び石状に設けられているため、磁束は、開口部41A,42Aが設けられていない大部分において中心軸CXへ向けて流れる。
【0038】
A4.効果:
(1)上記第1実施形態のコイルユニット10では、複数の支柱形成部21,22,23,24が、フェライト板13の外縁から中心軸CXへ向けて流れる磁束の流れ方向に沿い、かつ、積層方向に見て中心軸CXまわりに互いに離間して設けられている。フェライト板13において、支柱形成部21,22,23,24が設けられる部分では、フェライト板13の外縁から中心軸CXへ向けての磁束の流れが阻害される。しかし、中心軸CXまわりに離間して設けられる支柱形成部同士の間の領域では、フェライト板13の外縁から中心軸CXへの磁束の流れが確保できる。具体的には、開口部41,42および支柱31,32は、放射状かつ飛び石状に設けられており、支柱形成部21,22,23,24は、磁束の流れの全てを遮断するようには設けられていない。
【0039】
例えば、支柱および開口部が、積層方向に見て中心軸CXを内側領域に含んで環状に連続して設けられる構成の場合には、外縁から中心軸CXへ向かう磁束の流れの大部分が遮断されてしまう。しかし、上記第1実施形態によれば、各支柱形成部21,22,23,24は、磁束の流れ方向に沿いつつ、かつ、中心軸CXまわりに間隔をおいて離間して設けられている。このため、支柱31,32および開口部41,42が存在しない部位では、磁束の流れが阻害されない。
【0040】
そして、複数の支柱31,32により、収容ケース11の強度を向上させることができる。すなわち、上記第1実施形態のコイルユニット10によれば、磁束の流れを良好に保つことで給電性能を維持しつつ、収容ケース11の強度を向上させることができる。
【0041】
(2)上記第1実施形態のコイルユニット10では、支柱形成部21,22,23,24は、積層方向に見て、中心軸CXを対称中心とした点対称に設けられている。このため、フェライト板13における磁束密度が均等にでき、バランスよく送電できる。
【0042】
(3)上記第1実施形態のコイルユニット10では、各支柱31,32の積層方向に直交する方向の断面形状と、各開口部41,42の積層方向に直交する方向の断面形状とは、略同じである。このため、例えば、各開口部41,42の断面形状方が各支柱31,32の断面形状よりも大きい構成と比較して、フェライト板13において磁束の流れる領域を確保しやすい。
【0043】
(4)上記第1実施形態のコイルユニット10では、支柱31,32は、上面カバー15と一体成形されている。このため、支柱31,32の製造が容易であるとともに、支柱と収容ケース11とを別部材として製造してから接着する構成と比較して、より強度を高めることができる。
【0044】
(5)上記第1実施形態のコイルユニット10では、開口部41,42および支柱31,32は、中心軸CX上および中心軸CX近傍には設けられていない。中心軸CX近傍は、フェライト板13の外縁から中心軸CXへと流れる磁束が集中し、磁束密度が高くなりやすいため、中心軸CX近傍に開口部41,42を設けないことで、中心軸CX近傍で磁気飽和することを抑制できる。
【0045】
B.第2実施形態:
次に、第2実施形態について、
図8を参照して説明する。なお、第2実施形態および後述する各実施形態において、非接触給電システム300の全体構成(
図1)、非接触給電システム300の回路構成(
図2)、および支柱形成部21,22,23,24を除くコイルユニット10の全体構成(
図3)は、上記第1実施形態と略同様であるため、実質的に同一の部分については同一の符号を付すとともに説明は省略する。
【0046】
第2実施形態では、4つの支柱形成部21,22,23,24を、中心軸CXを対称中心として点対称に有する点は上記第1実施形態と同じであるが、各支柱形成部21,22,23,24の詳細構成が異なっている。
図8に示すように、フェライト板13には、合計16個の開口部が、中心軸CXを対称中心として放射状かつ飛び石状に貫通して設けられている。より詳細には、第1支柱形成部21を構成する図示しない4つの支柱が挿通する開口部として、第1開口部51A、第2開口部52A、第3開口部53A、および第4開口部54Aの4つの開口部が形成されている。第1開口部51A、第2開口部52A、第3開口部53A、および第4開口部54Aは、外縁から中心軸CXへ向けてこの順に等間隔に設けられている。
【0047】
各開口部51A,52A,53A,54Aの、積層方向に直交する平面における開口面積は、中心軸CX側の開口部ほど、外縁側の開口部よりも小さくなっており、本実施形態では徐々に小さくなっている。つまり、第1開口部51Aの開口面積が最も大きく、第2開口部52A、第3開口部53A、第4開口部54Aの順に開口面積が小さくなっている。換言すると、中心軸CX側に形成される開口部の積層方向に直交する平面における開口面積は、外縁側に形成される開口部の積層方向に直交する平面における開口面積よりも小さい。なお、第2支柱形成部22、第3支柱形成部23、および第4支柱形成部24を構成する支柱が挿通する他の開口部についても同様の開口面積となっている。開口部51A,52A,53A,54Aに挿通される支柱は、それぞれの開口部51A,52A,53A,54Aの開口面積に対応した形状となっている。
【0048】
第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、フェライト板13の中心軸CX寄りにある開口部ほど、開口面積が小さいため、磁気密度が高くなりやすい中心軸CXを含むフェライト板13の中央部において磁気飽和することを抑制できる。
【0049】
C.第3実施形態:
次に、第3実施形態について、
図9を参照して説明する。
図9に示すように、第3実施形態では、4つの支柱を有する支柱形成部21,22,23,24が、中心軸CXを対称中心として点対称に4つ有する点は上記第2実施形態と同じであるが、各支柱形成部21,22,23,24の詳細構成が異なっている。フェライト板13には、合計16個の開口部61A,62A,63A,64Aが、中心軸CXを対称中心として放射状かつ飛び石状に貫通して設けられている。
【0050】
より詳細には、第1支柱形成部21を構成する図示しない4つの支柱が挿通する開口部として、第1開口部61A、第2開口部62A、第3開口部63A、および第4開口部64Aの4つの開口部が形成されている。第1開口部61A、第2開口部62A、第3開口部63A、および第4開口部64Aは、外縁から中心軸CXへ向けてこの順に設けられている。
【0051】
各開口部61A,62A,63A,64Aの、積層方向に直交する平面における開口面積は同じである。本実施形態において、フェライト板13の中心軸CX側に形成される開口部の形成間隔は、外縁側に形成される開口部の形成間隔よりも広い。すなわち、第1開口部61Aと第2開口部62Aとの間隔T1、第2開口部62Aと第3開口部63Aとの間隔T2、第3開口部63Aと第4開口部64Aとの間隔T3は、この順で広くなっている。なお、第2支柱形成部22、第3支柱形成部23、および第4支柱形成部24を構成する支柱が挿通する他の開口部についても同様の間隔となっている。開口部61A,62A,63A,64Aに挿通される支柱は、それぞれの開口部61A,62A,63A,64Aに対応した形状となっている。
【0052】
第3実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、フェライト板13の中心軸CX側に形成される開口部の形成間隔は、外縁側に形成される開口部の形成間隔よりも広いため、磁気密度が高くなりやすい中心軸CXを含むフェライト板13の中央部において磁気飽和することを抑制できる。
【0053】
D.第4実施形態:
次に、第4実施形態について、
図10を参照して説明する。
図10に示すように、第4実施形態では、第1実施形態に対して、4つの支柱形成部21,22,23,24は、単数の開口部71A,72A,73A,74Aおよび支柱を有して構成されている点が異なっている。開口部71A,72A,73A,74Aおよび支柱の積層方向から見た形状は、外縁から中心軸CXへ向けて長手方向を有する矩形状をなしている。フェライト板13には、スリット状をなす合計4つの開口部71A,72A,73A,74Aが、中心軸CXを対称中心として放射状に設けられている。開口部71A,72A,73A,74Aに挿通される支柱は、それぞれの開口部に対応した形状、すなわち四角柱形状となっている。
【0054】
第4実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、支柱を、フェライト板13の外縁から中心軸CXへ亘って広範囲に連続して形成しやすいため、支柱の強度を向上させることができ、ひいては収容ケース11の強度を向上させることができる。
【0055】
E.第5実施形態:
図11および
図12に示す第5実施形態のコイルユニット80は、第1ないし第4実施形態のコイルユニット10とは異なり、受電側、すなわち車両200において用いられる。コイルユニット80は、受電器205の一部として構成され、受電回路220および受電共振回路210のうちの少なくとも受電コイル212を含む。なお、コイルユニット80は、受電器205の全部として構成されてもよい。
図12では、
図11に示すXII-XII線でのコイルユニット80の断面を示している。
【0056】
コイルユニット80は、収容ケース81、アルミ板82、磁性材板83、コイル84、4つの支柱形成部P1、および複数のネジ98を備えている。
【0057】
収容ケース81は、上面カバー85と、下面カバー86とを有して構成されている。上面カバー85および下面カバー86は、例えば樹脂などの非導電性且つ非磁性材料によって形成されている。
図12に示すように、第5実施形態において、上面カバー85と下面カバー86との上下方向の境界は、コイル84の下面の位置と一致している。下面カバー86は、略平板形状を有している。上面カバー85は、略平板形状の部材において外縁部に全周に亘って下方に突出した壁が形成された構造を有する。そして、かかる壁の下方端面が下面カバー86の上面に接して配置された状態で、上面カバー85と下面カバー86とが図示しない固定具によって互いに嵌合され、収容ケース81が形成される。収容ケース81は、互いに積層されたアルミ板82、磁性材板83およびコイル84を収容する。第5実施形態において、上面カバー85は、車両200の本体の底部290に接して配置される。したがって、第5実施形態では、コイルユニット80は、すべて車両200の外部に露呈している。下面カバー86の下面は、道路に面している。したがって、下面カバー86の下面は、送電器100の送電コイル112と対向することとなる。上面カバー85には、合計8か所のネジ穴h1が形成されている。同様に、下面カバー86には、合計8か所のネジ穴h2が形成されている。各ネジ穴h1、h2には、ネジ98が挿入される。ネジ98は、後述の支柱部材91と螺合する。なお、下面カバー86は、本開示の第1カバー部材に相当する。また、上面カバー85は、本開示の第2カバー部材に相当する。
【0058】
アルミ板82は、第1実施形態のアルミ板12と同様な構成を有する。アルミ板82には、厚さ方向(上下方向)に貫く8つの貫通孔h82が形成されている。
【0059】
磁性材板83は、第1実施形態のフェライト板13と同様な構成を有する。磁性材板83には、厚さ方向(上下方向)に貫く8つの貫通孔h83が形成されている。本実施形態において、磁性材板83は、フェライトにより形成されているが、フェライトに限らず、磁性を有する任意の材料により形成されてもよい。
【0060】
コイル84は、第1実施形態のコイル基板14と同様な構成を有する。コイル84には、厚さ方向(上下方向)に貫く8つの貫通孔h84が形成されている。
【0061】
上述のアルミ板82の貫通孔h82、磁性材板83の貫通孔h83、およびコイル84の貫通孔h84は、上下方向において互いに対応する位置に配置されている。また、各貫通孔h82~84の寸法は同じである。したがって、
図12に示すように、コイルユニット80が組付けられた状態において、アルミ板82からコイル84まで貫通する合計8つの貫通孔htが形成される。
【0062】
図11に示す4つの支柱形成部P1は、それぞれ2つの支柱90を有する。第5実施形態では、各支柱90は、いずれも単一の支柱部材91により構成されている。第5実施形態において、支柱部材91は、非導電性且つ非磁性の樹脂により形成されている。
図12に示すように、各支柱90(各支柱部材91)は、上述した貫通孔htに収容されている。このため、各支柱形成部P1は、アルミ板82、磁性材板83およびコイル84を積層方向に貫通して下面カバー86から上面カバー85まで至り、下面カバー86と上面カバー85とを連結させる。また、支柱形成部P1は、第1実施形態の支柱形成部21~24と同様に、中心軸CXまわりに約90度の等間隔で互いに離間して放射状に配置されている。各支柱形成部P1は、積層方向に見て、中心軸CXを対称中心とした点対称に設けられている。支柱部材91は、軸孔92が形成された円筒形の外観形状を有する。軸孔92にはネジ山が形成されている。
【0063】
図12に示すように、上面カバー85に形成されているネジ穴h1は、段付きの断面構造を有している。ネジ穴h1には、ネジ98が挿入されている。ネジ穴h1に挿入されたネジ98の先端は、支柱部材91の軸孔92に達し、軸孔92のネジ山と螺合している。したがって、支柱部材91の上方端部は、上面カバー85に接合される。同様に、下面カバー86に形成されているネジ穴h2は、段付きの断面構造を有している。ネジ穴h2には、ネジ98が挿入されている。ネジ穴h2に挿入されたネジ98の先端は、支柱部材91の軸孔92に達し、軸孔92のネジ山と螺合している。したがって、支柱部材91の下方端部は、下面カバー86に接合される。このように、支柱部材91の上下両端がネジ98と螺合することにより、コイルユニット80の内部において支柱部材91が固定されると共に、上面カバー85と下面カバー86とによりアルミ板82、磁性材板83およびコイル84を上下方向に挟んで締結させる力を加えることができる。
【0064】
コイルユニット80の組付けおよび車両200への取り付け手順は、以下の通りである。まず、下面カバー86に支柱90をネジ98で締結する。次に、コイル84、磁性材板83およびアルミ板82の順序で、各板の貫通孔に支柱90を挿入させるように配置して積層する。次に、上面カバー85と支柱90とを、ネジ98で締結する。このようにして完成したコイルユニット80を、車両200の底部290に取り付ける。かかる取り付けは、例えば、予め底部290に設けられた突起部に、コイルユニット80をネジ止めすることで実現してもよい。上述のように、支柱90を先に下面カバー86に取り付けることにより、支柱90を、各板82、83、84を配置する際の位置決め部として利用できる。
【0065】
以上説明した第5実施形態のコイルユニット80は、第1実施形態のコイルユニット10と同様な効果を奏する。すなわち、第5実施形態のコイルユニット80では、複数の支柱形成部P1が、磁性材板83の外縁から中心軸CXへ向けて流れる磁束の流れ方向に沿い、かつ、積層方向に見て中心軸CXまわりに互いに離間して設けられている。磁性材板83において、支柱形成部P1が設けられる部分では、磁性材板83の外縁から中心軸CXへ向けてまたは中心軸CXから磁性材板83の外縁へ向けての磁束の流れが阻害される。しかし、中心軸CXまわりに離間して設けられる支柱形成部同士の間の領域では、磁性材板83の外縁から中心軸CXへの磁束の流れまたはその逆の流れが確保できる。
【0066】
また、複数の支柱90(支柱部材91)により、収容ケース81の強度を向上させることができる。すなわち、上記第5実施形態のコイルユニット80によれば、磁束の流れを良好に保つことで給電性能を維持しつつ、収容ケース81の強度を向上させることができる。また、コイルユニット80では、支柱形成部P1は、積層方向に見て、中心軸CXを対称中心とした点対称に設けられている。このため、磁性材板83における磁束の流れを妨げることを抑えつつ効率良く送電できる。また、各支柱90の積層方向に直交する方向の断面形状と、貫通孔htの積層方向に直交する方向の断面形状とは、略同じである。このため、例えば、各貫通孔htの断面形状方が各支柱90の断面形状よりも大きい構成と比較して、磁性材板83において磁束の流れる領域を確保しやすい。
【0067】
コイルユニット80は、車両200の底部290に設けられるため、自重により鉛直下方へと荷重がかかる。しかし、アルミ板82、磁性材板83およびコイル84を貫く支柱90の両端を、上面カバー85および下面カバー86に接合させることで、上述の荷重がかかる状態においても、各部材の下方へのたわみや落下を抑制し、荷重に対する強度(耐性)を向上させることができる。
【0068】
F.第6実施形態:
図13に示す第6実施形態のコイルユニット80aは、下面カバー86に代えて下面カバー86aを備える点と、支柱部材91に代えてスペーサ部材93を備える点と、下面カバー86aに挿入されるネジがネジ98に代えてネジ99が用いられる点とにおいて、第5実施形態のコイルユニット80と異なる。第6実施形態のコイルユニット80aにおけるその他の構成は、コイルユニット80と同じであるので、同じ構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。第5実施形態のコイルユニット80では、支柱90は、単一の支柱部材91により構成されていた。これに対して、第6実施形態のコイルユニット80aでは、支柱90は、スペーサ部材93と下面カバー86aが有する後述の突出部861とから構成されている。
【0069】
下面カバー86aは、貫通孔htに対応する位置に突出部861を備えている。突出部861は、コイル84および磁性材板83に接し、積層方向に突出して磁性材板83およびコイル84を積層方向に貫く。突出部861は、下面カバー86aの他の部分と一体形成されている。したがって、突出部861は、下面カバー86aと同様に非導電性の樹脂により形成されている。突出部861の上方端の積層方向の位置は、磁性材板83の上面の積層方向の位置と一致している。下面カバー86aには、ネジ穴h1に代えてネジ穴h3が形成されている。ネジ穴h3は、下面カバー86aの下面に開口し、積層方向に延びて突出部861の内部に位置している。ネジ穴h3は、ネジ穴h1と同様に段付きの穴である。ネジ穴h3には、ネジ99が挿入される。ネジ99は、ネジ98に比べて若干小さい。なお、ネジ98に代えてネジ99を用いる構成としてもよい。かかる構成においては、ネジ穴h3をより大きく構成してもよい。
【0070】
貫通孔htのうち、アルミ板82に相当する部分、すなわち、貫通孔h82には、スペーサ部材93が配置されている。スペーサ部材93は、ネジ山が形成された軸孔を有する円筒形の外観形状を有する。スペーサ部材93は、アルミ板82よりも強度が高い金属により形成されている。具体的には、第6実施形態では、スペーサ部材93は、アルミニウム合金により形成されている。なお、スペーサ部材93は、アルミニウム合金に代えて、ステンレス鋼など、任意の金属により形成されてもよい。スペーサ部材93の軸孔には、上方からネジ98の先端が挿入され、下方からネジ99の先端が挿入される。そして、各ネジ98、99は、スペーサ部材93の軸孔に螺合する。スペーサ部材93の厚さ、すなわち、上下方向(積層方向)の寸法は、アルミ板82の厚さと同じである。スペーサ部材93は、突出部861の上方端面に接して配置されている。したがって、スペーサ部材93の下方端面の積層方向の位置は、アルミ板82の上方端面の積層方向の位置に一致する。第6実施形態では、支柱90は、互いに積層方向に接して配置された突出部861およびスペーサ部材93により構成される。貫通孔htのうち、アルミ板82の位置については、金属製のスペーサ部材93が用いられても磁束を遮ることを抑制できる。加えて、金属製のスペーサ部材93を用いることにより、支柱90の強度を増加でき、荷重に対する耐性をより向上できる。
【0071】
以上説明した第6実施形態のコイルユニット80aは、第5実施形態のコイルユニット80と同様な効果を奏する。加えて、支柱90の一部を金属製のスペーサ部材93により構成するので、支柱90の強度を増加でき、荷重に対する耐性をより向上できる。また、スペーサ部材93を、貫通孔htのうちのアルミ板82に相当する位置に用いることにより、磁性材板83やコイル84に相当する位置に用いる構成に比べて、磁束を遮ることを抑制できる。
【0072】
G.第7実施形態:
図14に示す第7実施形態のコイルユニット80bは、下面カバー86aに代えて下面カバー86bを備える点において、第6実施形態のコイルユニット80aと異なる。第7実施形態のコイルユニット80bにおける他の構成は、コイルユニット80aと同じであるので、同じ構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0073】
下面カバー86bは、強化繊維を含む樹脂により形成されている点において、第6実施形態の下面カバー86aと異なる。第7実施形態において、「強化繊維」とは、炭素繊維CFを意味する。なお、炭素繊維CFに限らず、ガラス繊維など任意の種類の繊維を強化繊維として用いてもよい。
【0074】
ここで、突出部861を構成する側壁部862と、突出端部863とで、炭素繊維CFの配置方向が異なっている。側壁部862とは、突出部861における筒状部分を意味する。突出端部863は、積層方向(Z軸方向)において、磁性材板83と略同じ位置に配置されている。突出端部863は、筒状の側壁部862の上端に接してネジ穴h3のうちの大きな穴部分を閉塞するように配置されている。上述の「炭素繊維CFの配置方向」とは、炭素繊維CFの長さ方向を意味する。側壁部862では、炭素繊維CFの配置方向は、上下方向(Z軸方向)に略平行である。これに対して、突出端部863では、炭素繊維CFは、磁性材板83の外縁から磁性材板83の中心に向かう方向およびその逆の方向と略平行である。炭素繊維CFの配置方向は、例えば、下面カバー86bを射出成形する際の金型における樹脂の導入口の位置や樹脂を流す方向を調整することによって調整できる。下面カバー86bにおける炭素繊維CFの配置方向を上述のように設定している理由について以下説明する。
【0075】
コイル84を構成する導線C1に電流が流れることにより、導線C1の周りに磁束B1が生じる。
図14では、磁束B1の方向を破線の矢印にて表している。側壁部862の近傍における磁束B1の方向は、略上下方向である。このため、側壁部862における炭素繊維CFの長さ方向を略上下方向とすることにより、渦電流の発生を抑制して渦電流損を抑制できる。また、磁性材板83では、外縁から中心に向かう方向の磁束およびその逆の方向の磁束が生じる。
図14では、外縁から中心に向かう方向の磁束B2の方向を、模式的に破線の矢印にて表している。磁性材板83に対応する位置に配置された突出端部863に含まれる炭素繊維CFの配置方向を磁束B2の方向と略平行とすることにより、渦電流の発生を抑制して渦電流損を抑制できる。
【0076】
以上説明した第7実施形態のコイルユニット80bは、第6実施形態のコイルユニット80aと同様な効果を奏する。加えて、下面カバー86bは、炭素繊維CFを含む樹脂により形成されており、突出部861において、炭素繊維CFは、導線C1が発生させる突出部861における磁束B1、B2の方向に沿うように配置されているので、渦電流の発生を抑制して渦電流損を抑制できる。
【0077】
H.第8実施形態:
図15に示す第8実施形態のコイルユニット80cは、下面カバー86aに代えて下面カバー86cを備える点と、磁性材板83に代えて磁性材板83cを備える点と、コイル84に代えてコイル84cを備える点とにおいて、第6実施形態のコイルユニット80aと異なる。第8実施形態のコイルユニット80cにおけるその他の構成は、コイルユニット80aと同じであるので、同じ構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0078】
下面カバー86cは、突出部861に代えて突出部861cを備える点においてのみ、第6実施形態の突出部861と異なる。第6実施形態の突出部861の側壁部は、略円筒形の外観形状を有していた。これに対して、第8実施形態の突出部861cは、積層方向に沿って上方に向かうにつれて、換言すると、積層方向に沿ってコイル84cから磁性材板83cに向かうにつれて、積層方向と直交する断面積が小さくなるいわゆるテーパ状の外観形状を有する。ネジ穴h3の大きさは、第6実施形態の突出部861のネジ穴h3の大きさと同じである。したがって、第8実施形態の側壁部862cの厚さ(積層方向と直交する方向の厚さ:X軸方向の厚さ)は、上方に向かうにつれて次第に小さくなっている。
【0079】
磁性材板83cは、貫通孔h83に代えて、上方に向かうにつれて次第に開口面積が小さくなる貫通孔が形成されている点においてのみ、磁性材板83と異なる。同様に、コイル84cは、貫通孔h84に代えて、上方に向かうにつれて次第に開口面積が小さくなる貫通孔が形成されている点においてのみ、コイル84と異なる。
【0080】
突出部861cの外観形状は、積層方向に沿って上方に向かうにつれて積層方向と直交する方向の断面積が小さくなるテーパ形状であるので、コイルユニット80cを組み付ける際に、コイル84cおよび磁性材板83cの貫通孔を容易に突出部861cに挿入させることができる。このため、磁性材板83cおよびコイル84cを容易に位置決めし易くでき、製造時の作業効率を向上させることができる。また、磁性材板83cやコイル84cの積層方向に沿った位置を容易に調整できる。具体的には、例えば、コイル84cの下面と下面カバー86cの上面との間に所定寸法の空隙を設けようとする場合において、コイル84cの貫通孔の寸法や突出部861cのテーパ角度を調整することによりコイル84cの積層方向の位置を調整して、上記空隙の大きさを容易に調整できる。
【0081】
I.第9実施形態:
第9実施形態のコイルユニット80は、コイル84に代えて
図16に示すコイル84dを備える点と、支柱90の数が多い点と、複数の支柱90のうち、一部の支柱90については、支柱部材91に代えて支柱部材91aにより構成されている点と、において、第5実施形態のコイルユニット80と異なる。第9実施形態のコイルユニット80におけるその他の構成要素は、第5実施形態のコイルユニット80と同じであるので、同じ構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0082】
第9実施形態では、コイル84dを構成する導線C2が略3周渦巻き状に巻かれている。そして、各周回ターンの間および、最外周回ターンの導線の外側および最内周回ターンの導線の内側に支柱90が配置されている。支柱90を構成する支柱部材のうち、第5実施形態の支柱部材91と同じ支柱部材91には同一の符号を付している。したがって、この支柱部材91は、非導電性の樹脂により構成されている。
図16では、この支柱部材91を白丸にて模式的に表している。他方、
図16において黒丸にて表されている支柱部材91aは、支柱部材91と同じ形状を有する一方、支柱部材91とは異なり導電性材料により形成されている。具体的には、第9実施形態では、支柱部材91aは、アルミニウム合金にて形成されている。なお、支柱部材91aは、アルミニウム合金に代えて、ステンレス鋼など任意の種類の金属等の導電性材料により形成されてもよい。
【0083】
図16の下方には、X軸方向に沿ったコイル84dにおけるZ軸方向の磁束の強度が示されている。導線C2に通電されることにより各周回ターンの導線C2の周囲には磁束が発生する。
図16に示すように、最外周回ターンの導線C2のわずかに外側、および最内周回ターンの導線C2のわずかに内側に、磁束強度のピークがある。そして、最外周回ターンと最内周回ターンとの間、および、互いにX軸方向に対向する最内周回ターン同士の間においては、磁束強度は、比較的低い強度の領域である強度領域BAr内に収まっている。最外周回ターンと最内周回ターンとの間においては、並んだ導線C2の磁束同士が互いにキャンセルしあうからである。また、最内周回ターン同士の間には、導線C2が存在しないからである。強度領域BArの下限閾値-Bthおよび上限閾値+Bthは、最外周回ターンおよび最内周回ターンを構成する導線C2の近傍における磁束ピークよりも低い所定値である。
【0084】
第6実施形態では、磁束強度が強度領域BAr内となる位置に配置された支柱90は、金属性の支柱部材91aにより構成されている。他方、磁束が強度領域BArの外となる位置に配置された支柱90は、樹脂製の支柱部材91により構成されている。強度領域BAr内においては、金属製の支柱部材91aを用いることにより、コイルユニット80の自重による荷重の耐性を向上させることができ、また、強度領域BAr内においては、磁束強度が比較的低いため、渦電流損が比較的小さく抑えられるからである。これに対して、強度領域BArの外となる位置においては、樹脂製の支柱部材91を用いることにより、過剰に渦電流損が生じることを抑えることができる。
【0085】
以上説明した第9実施形態のコイルユニット80は、第5実施形態のコイルユニット80と同様な効果を奏する。加えて、強度領域BAr内においては、金属製の支柱部材91aを用いるので、渦電流損を比較的小さく抑えつつ、コイルユニット80の自重による荷重の耐性を向上させることができる。また、強度領域BArの外となる位置においては、樹脂製の支柱部材91を用いることにより、過剰に渦電流損が生じることを抑えることができる。
【0086】
J.他の実施形態:
(J1)上記各実施形態において、支柱形成部21,22,23,24,P1は、積層方向に見て、中心軸CXを対称中心とした点対称に4つ設ける構成としたが、点対称でなくてもよいし、その個数についても、2つや3つ、5つ以上の複数設ける構成としてもよい。また、各支柱形成部21,22,23,24,P1同士の、中心軸CXまわりの離間角度は均等でなくてもよい。
【0087】
(J2)上記各実施形態において、一つの支柱形成部21,22,23,24,P1が有する開口部および支柱の数は、適宜変更可能である。
【0088】
(J3)上記第2実施形態と上記第3形態とを組合わせて、フェライト板13において、外縁側よりも中心軸CX側ほど、開口部の形成間隔は広く、かつ、開口部の開口面積は小さい構成としてもよい。
【0089】
(J4)上記第2実施形態では、第1開口部51Aの開口面積が最も大きく、第2開口部52A、第3開口部53A、第4開口部54Aの順に中心軸CXへ向けて徐々に開口面積が小さくなるものとした。これに代えて、例えば、第1開口部と第2開口部、および、第3開口部と第4開口部の開口面積がそれぞれ同じであり、第3開口部と第4開口部の開口面積が、第1開口部と第2開口部の開口面積よりも小さい構成としてもよい。
【0090】
(J5)上記各実施形態において、開口部および支柱の断面形状は、正円、矩形状の他、楕円、多角形など、適宜変更可能である。また、開口部に支柱が挿通可能であればよく、支柱と開口部の断面形状が異なっていてもよい。
【0091】
(J6)上記第1ないし第4実施形態において、支柱31,32は、収容ケース11の上面カバー15と一体に成形されるものとしたが、別体でもよい。例えば、収容ケース11と、支柱31,32とを別体で製造し、接着した後、フェライト板13とコイル基板14とを組み付けてもよい。また、支柱31,32は、収容ケース11の下面カバー16と一体化していてもよいし、アルミ板12と一体成形されていてもよい。
【0092】
(J7)上記第1ないし第4実施形態では、送電側のコイルユニット10として説明したが、受電側のコイルユニットに本開示を適用してもよい。また、第5ないし第9実施形態では、受電側のコイルユニット80,80a,80b,80cとして説明したが、送電側のコイルユニットに本開示を適用してもよい。
【0093】
(J8)上記第4実施形態において、開口部71A,72A,73A,74Aは、外縁から中心軸CXに向かうほど、開口面積が小さくなるように徐々に細くなっていてもよいし、段階的に細くなっていてもよい。
【0094】
(J9)上記第4実施形態において、スリット状の開口部71A,72A,73A,74Aは、中央部で繋がっていてもよい。
【0095】
(J10)上記第5ないし第9実施形態において、支柱90の構成要素(支柱部材91、支柱部材91a、スペーサ部材93、突出部861、突出部861c)は、ネジ98、99により、上面カバー85または下面カバー86、86aに接合されていたが、本開示はこれに限定されない。圧入、かしめ、接着など任意の
方法により接合されてもよい。
【0096】
(J11)第6ないし第8実施形態において、スペーサ部材93を省略してもよい。かかる構成においては、突出部861、861cの上方端部が上面カバー85の下面に接するように突出部861、861cの積層方向の長さを増大させる構成としてもよい。かかる構成においては、支柱90は、突出部861、861cのみで構成される。かかる構成においては、複数の支柱90のうち、一部の支柱90のみ、突出部861、861cのみで構成され、他の支柱90は、第6ないし第8実施形態の構成としてもよい。
【0097】
(J12)第7実施形態の側壁部862では、炭素繊維CFの配置方向は、上下方向(Z軸方向)に略平行であったが、本開示はこれに限定されない。側壁部862において、炭素繊維CFのうちの少なくとも一部が予め定められた角度条件を満たす方向に沿うように配置されていてもよい。「予め定められた角度条件」とは、炭素繊維CFのうちの少なくとも一部の平均方向と、コイル84が発生させる磁束B1の方向(以下、単に「磁束方向」と呼ぶ)とがなす角度が45°以下であるとの条件を意味する。上述の「平均方向」とは、各炭素繊維CFの長さ方向の平均的な方向を意味する。炭素繊維CFのうちの少なくとも一部の平均方向と、コイル84が発生させる磁束方向とがなす角度が45°以下の場合には、かかる角度が45°よりも大きい場合に比べて渦電流の発生を抑制できる。
同様に、第7実施形態の突出端部863では、炭素繊維CFは、磁性材板83の外縁から磁性材板83の中心に向かう方向およびその逆の方向と略平行であったが、本開示はこれに限定されない。突出端部863において、炭素繊維CFのうちの少なくとも一部が予め定められた角度条件を満たす方向に沿うように配置されていてもよい。この場合の「予め定められた角度条件」とは、上記と同じである。すなわち、「炭素繊維CFのうちの少なくとも一部の平均方向と、コイル84が発生させる磁束B1の磁束方向とがなす角度が45°以下である」との条件を意味する。
すなわち、一般には、突出部861において、炭素繊維CFの少なくとも一部は、予め定められた角度条件を満たす方向に沿うように配置され、上記角度範囲は、炭素繊維CFの少なくとも一部の平均方向とコイル84が発生させる磁束の磁束方向とがなす角度が45°以下であるとの条件である任意の構成を、本開示のコイルユニットに適用してもよい。
【0098】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した形態中の技術的特徴に対応する各実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。例えば、第5実施形態と第8実施形態とを組み合わせて、第8実施形態の突出部861cの外観形状を第5実施形態の支柱部材91に適用してもよい。具体的には、支柱部材91を、積層方向に沿って上方に向かうにつれて、換言すると、積層方向に沿ってコイル84から磁性材板83に向かうにつれて、積層方向と直交する断面積が小さくなるテーパ状の外観形状を有するように構成してもよい。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0099】
(形態1)
非接触給電システム(300)に用いられるコイルユニットであって、
フェライト板(13)と、
交流電力を送電または受電するためのコイル(112)を実装するコイル基板(14)と、
前記フェライト板および前記コイル基板を積層方向に積層した状態で収容する収容ケース(11)と、
前記フェライト板および前記コイル基板を前記積層方向に貫通する開口部(41,42)に挿通される支柱(31,32)を有し、前記収容ケース内の前記積層方向の空間を保持する複数の支柱形成部であって、前記交流電流の送電または受電の際に前記コイルが発生させる前記フェライト板の外縁から中心軸へ向けて流れる磁束の流れ方向にそれぞれ沿って設けられ、かつ、前記積層方向に見て前記中心軸まわりに互いに離間して設けられる複数の支柱形成部(21,22,23,24)と、
を備える、コイルユニット。
(形態2)
前記開口部の前記中心軸側における前記積層方向に見た開口面積は、前記開口部の前記外縁側における前記積層方向に見た開口面積よりも小さい、形態1に記載のコイルユニット。
(形態3)
前記複数の支柱形成部のうち少なくとも一つは、複数の前記開口部に挿通される複数の前記支柱を有し、
前記中心軸側に形成される前記開口部の形成間隔は、前記外縁側に形成される前記開口部の形成間隔よりも広い、形態1または形態2に記載のコイルユニット。
(形態4)
複数の前記支柱形成部は、前記積層方向に見て、前記中心軸を対称中心とした点対称に設けられている、形態1~形態3のうちいずれか一形態に記載のコイルユニット。
(形態5)
前記支柱の前記積層方向に直交する平面における断面形状と、前記開口部の前記積層方向に直交する平面における断面形状とは、同じである、形態1~形態4のうちいずれか一形態に記載のコイルユニット。
(形態6)
前記支柱は、前記開口部を挿通して前記収容ケースの内壁まで前記積層方向に延びて前記収容ケースと一体に形成されている、形態1~形態5のうちいずれか一形態に記載のコイルユニット。
(形態7)
非接触給電システムに用いられるコイルユニットであって、
磁性材板と、
交流電力を送電または受電するためのコイルと、
前記磁性材板および前記コイルを積層方向に積層した状態で収容する収容ケースであって、前記積層方向に分割可能な第1カバー部材および第2カバー部材を有する収容ケースと、
前記磁性材板および前記コイルを前記積層方向に貫通して前記第1カバー部材から前記第2カバー部材まで至り、前記第1カバー部材と前記第2カバー部材とを連結させるための支柱を有する複数の支柱形成部であって、前記交流電力の送電または受電の際に前記コイルが発生させる磁束であって前記磁性材板の外縁から中心軸へ向けてまたは前記中心軸から前記外縁へ向けて流れる磁束の流れ方向にそれぞれ沿って設けられ、かつ、前記積層方向に見て前記中心軸まわりに互いに離間して設けられる複数の支柱形成部と、
を備える、コイルユニット。
(形態8)
形態7に記載のコイルユニットにおいて、
前記複数の支柱形成部に含まれる複数の前記支柱のうちの少なくとも一部は、支柱部材であって、前記積層方向の一端が前記第1カバー部材に接合され、他端が前記第2カバー部材に接合される支柱部材を含む、コイルユニット。
(形態9)
形態7または形態8に記載のコイルユニットであって、
前記磁性材板を挟んで前記コイルとは反対側に配置されて前記磁束の少なくとも一部をシールドする金属製のシールド板と、金属製のスペーサ部材と、を更に備え、
前記コイルと前記磁性材板と前記シールド板とは、前記積層方向に積層され、
前記第1カバー部材は、磁性と導電性とのうちの少なくとも磁性を有しない材料により形成されており、前記コイルに接し、前記積層方向に沿って突出して前記コイルおよび前記磁性材板を前記積層方向に貫く突出部を有し、
前記第2カバー部材は、前記シールド板に接し、
前記スペーサ部材は、前記突出部と前記積層方向に接し、前記シールド板を前記積層方向に貫くように配置され、
前記複数の支柱形成部に含まれる複数の前記支柱のうちの少なくとも一部は、前記突出部と前記スペーサ部材により構成される、コイルユニット。
(形態10)
形態9に記載のコイルユニットにおいて、
前記第1カバー部材は、導電性を有する繊維を含む材料により生成されており、
前記突出部において、前記繊維の少なくとも一部は、前記コイルが発生させる前記突出部における磁束の方向に沿うように配置されている、コイルユニット。
(形態11)
形態9または形成10に記載のコイルユニットにおいて、
前記突出部は、前記積層方向に沿って前記コイルから前記磁性材板に向かうに従って前記積層方向と直交する断面積が小さくなるテーパ状の外観形状を有する、コイルユニット。
(形態12)
形態8に記載のコイルユニットにおいて、
前記支柱部材は、前記積層方向に沿って前記コイルから前記磁性材板に向かうに従って前記積層方向と直交する断面積が小さくなるテーパ状の外観形状を有する、コイルユニット。
(形態13)
形態7から形態12までのいずれか一形態に記載のコイルユニットにおいて、
前記複数の支柱形成部に含まれる複数の前記支柱のうち、前記コイルが発生させる磁束が予め定められた閾値よりも大きい位置に配置される前記支柱は、導電性を有しない材料により形成されており、前記コイルが発生させる磁束が前記閾値以下である位置に配置される前記支柱は、金属により形成されている、コイルユニット。
【符号の説明】
【0100】
10…コイルユニット、11…収容ケース、12…アルミ板、13…フェライト板、14…コイル基板、15…上面カバー、16…下面カバー、21,22,23,24…支柱形成部、31,32…支柱、41,42…開口部、51A,52A,53A,54A…開口部、61A,62A,63A,64A…開口部、71A,72A,73A,74A…開口部、100…送電器、110…送電共振回路、112…送電コイル、116…第一コンデンサ、120…送電回路、130…電源回路、200…車両、205…受電器、210…受電共振回路、212…受電コイル、216…第二コンデンサ、220…受電回路、230…バッテリ、300…非接触給電システム、CX…中心軸