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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127757
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】映像信号送受信システム
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/088 20060101AFI20240912BHJP
   H03F 3/34 20060101ALI20240912BHJP
   H04N 7/085 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H04N7/088
H03F3/34 210
H04N7/085
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007648
(22)【出願日】2024-01-22
(31)【優先権主張番号】P 2023036981
(32)【優先日】2023-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 勝
【テーマコード(参考)】
5C063
5J500
【Fターム(参考)】
5C063AA01
5C063AB01
5C063AC01
5C063DA13
5C063DB01
5J500AA01
5J500AA51
5J500AC13
5J500AF18
5J500AH10
5J500AH38
5J500AK05
5J500AT01
(57)【要約】
【課題】コンポジット映像信号の受信側から送信側に対してバックチャネル通信を行う際に、コンポジット映像信号線に、バックチャネル送信回路に含まれる差動増幅回路のオフセット電圧が累積されてしまうことを抑制する。
【解決手段】バックチャネル送信回路10は、デコーダ30からのパルス制御信号102に基づいて、バックチャネル通信のためのパルス信号をコンポジット映像信号のペデスタルレベルに重畳することにより、CVBS信号線経由でデコーダ30からエンコーダ40の方向にバックチャネル通信を行う。デコーダ30は、バックチャネル送信回路10に反転制御信号101を出力することにより、バックチャネル送信回路10を制御して複数のパルス信号を生成する毎に、バックチャネル送信回路10内のパルス信号を出力するためのオペアンプ12、13におけるオフセット電圧が発生する電圧の極性を反転させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
RGB映像信号をコンポジット映像信号に変換するエンコーダと、
前記エンコーダにより変換されたコンポジット映像信号を、コンポジット映像信号線を介して受信してRGB映像信号に変換するデコーダと、
パルス信号を出力する差動増幅回路を有し、前記デコーダからのパルス制御信号に基づいて、前記パルス信号を前記コンポジット映像信号のペデスタルレベルに重畳することにより、前記コンポジット映像信号線経由で前記デコーダから前記エンコーダの方向にバックチャネル通信を行うバックチャネル送信回路と、
前記コンポジット映像信号線に重畳されたパルス信号を受信するバックチャネル受信回路と、を備え、
前記デコーダは、前記バックチャネル送信回路を制御して複数のパルス信号を生成する毎に、前記差動増幅回路において発生するオフセット電圧の極性を反転させる、
映像信号送受信システム。
【請求項2】
前記デコーダは、前記バックチャネル送信回路を制御して複数のパルス信号を生成する毎に、反転制御信号を出力し、
前記差動増幅回路は、前記反転制御信号に基づいて非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子の回路構成を切り替える複数のスイッチ素子を有する、
請求項1記載の映像信号送受信システム。
【請求項3】
前記デコーダは、前記コンポジット映像信号線に前記コンポジット映像信号が重畳されていない期間に、前記バックチャネル送信回路を制御して複数のパルス信号を生成して前記コンポジット映像信号線に重畳する回数が偶数となるように前記バックチャネル送信回路を制御する請求項1記載の映像信号送受信システム。
【請求項4】
前記デコーダは、複数のパルス信号を重畳する前後の前記コンポジット映像信号線の電圧を比較することにより電圧変化を検出し、検出された電圧変化を打ち消すようなパルス信号を生成して前記コンポジット映像信号線に重畳するよう前記バックチャネル送信回路を制御する請求項1記載の映像信号送受信システム。
【請求項5】
前記デコーダは、複数のパルス信号を重畳した後の前記コンポジット映像信号線の電圧が、当該複数のパルス信号を重畳する前の前記コンポジット映像信号線の電圧よりも高い場合には、前記ペデスタルレベルよりも電圧が低い負の電圧調整パルス信号を生成して前記コンポジット映像信号線に重畳するよう前記バックチャネル送信回路を制御し、複数のパルス信号を重畳した後の前記コンポジット映像信号線の電圧が、当該複数のパルス信号を重畳する前の前記コンポジット映像信号線の電圧よりも低い場合には、前記ペデスタルレベルよりも電圧が高い正の電圧調整パルス信号を生成して前記コンポジット映像信号線に重畳するよう前記バックチャネル送信回路を制御する、
請求項4記載の映像信号送受信システム。
【請求項6】
前記デコーダは、複数のパルス信号を重畳した前後の前記コンポジット映像信号線の電圧差に応じて、出力される電圧調整パルス信号の時間幅を変更することにより、検出された電圧変化が打ち消されるような制御を行う、
請求項5記載の映像信号送受信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンポジット映像信号を送受信する映像信号送受信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
送信側と受信側との間で、コンポジット映像信号等の映像信号を送受信するような各種システムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。そして、このような映像信号送受信システムにおいて、受信側から送信側の装置に対して制御信号等の各種情報を送信しようとする場合、バックチャネル通信が用いられる場合がある。このバックチャネル通信では、コンポジット映像信号において映像信号が送受信されていない区間のペデスタルレベルに受信側からパルス信号を重畳して送信側に逆方向に送信するような制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平03-208489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このようなバックチャネル通信を行う際に、パルス信号を生成するバックチャネル送信回路に含まれる差動増幅回路にオフセット電圧が存在すると、コンポジット映像信号線にパルス信号を重畳する度にこのオフセット電圧が重畳されてしまう。そして、コンポジット映像信号線に重畳されたオフセット電圧には放電経路が存在しない。そのため、次にパルス信号を生成する際にもオフセット電圧が発生すると、オフセット電圧が累積されてしまいコンポジット映像信号線の電圧レベルが正常な値からずれていってしまう。そして、累積したオフセット電圧があるレベルを超えると、コンポジット映像信号線に重畳されるパルス信号のハイレベル又はロウレベルの判定が正確にできなくなりデータを誤判定してしまう可能性もある。また、ペデスタルレベルがずれることにより受信した映像信号の明暗レベルが変化してしまうという問題も発生する可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、コンポジット映像信号の受信側から送信側に対してバックチャネル通信を行う際に、コンポジット映像信号線に、バックチャネル送信回路に含まれる差動増幅回路のオフセット電圧が累積されてしまうことを抑制することが可能な映像信号送受信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の映像信号送受信システムは、RGB映像信号をコンポジット映像信号に変換するエンコーダと、
前記エンコーダにより変換されたコンポジット映像信号を、コンポジット映像信号線を介して受信してRGB映像信号に変換するデコーダと、
パルス信号を出力する差動増幅回路を有し、前記デコーダからのパルス制御信号に基づいて、前記パルス信号を前記コンポジット映像信号のペデスタルレベルに重畳することにより、前記コンポジット映像信号線経由で前記デコーダから前記エンコーダの方向にバックチャネル通信を行うバックチャネル送信回路と、
前記コンポジット映像信号線に重畳されたパルス信号を受信するバックチャネル受信回路と、を備え、
前記デコーダは、前記バックチャネル送信回路を制御して複数のパルス信号を生成する毎に、前記差動増幅回路において発生するオフセット電圧の極性を反転させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施形態の映像信号送受信システムの構成を示すブロック図である。
図2】CVBS信号線においてバックチャネル通信が行われる様子を説明するための図である。
図3】本発明の第1の実施形態におけるバックチャネル送信回路10の回路構成を示す図である。
図4図3に示したオペアンプ12、13の回路構成を示す図である。
図5】反転制御を行わない場合のVX点、VY点の波形を示す図である。
図6】反転制御を行う場合のVX点、VY点の波形を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態の映像信号送受信システムの構成を示すブロック図である。
図8】CVBS信号線に重畳されるパルス信号に遅延が発生する様子を説明するための図である。
図9図7に示した映像信号モニタ回路80の構成を示すブロック図である。
図10図7に示したデコーダ30Aの構成を示すブロック図である。
図11】負の電圧調整パルスによる電圧調整が行われる場合のタイミングチャートである。
図12】正の電圧調整パルスによる電圧調整が行われる場合のタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態の映像信号送受信システムの構成を示すブロック図である。
【0010】
本実施形態の映像信号送受信システムは、バックチャネル送信回路10と、バックチャネル受信回路20と、デコーダ30と、エンコーダ40と、カメラ50と、ディスプレイ60とを有している。
【0011】
図1に示した映像信号送受信システムは、カメラ50からのRGB映像信号をエンコーダ40、CVBS(Composite Video Blanking and Sync)信号線、デコーダ30を経由してディスプレイ60に表示するようなシステムとなっている。
【0012】
エンコーダ40は、カメラ50からのRGB映像信号をコンポジット映像信号に変換する。また、デコーダ30は、エンコーダ40により変換されたコンポジット映像信号を、コンポジット映像信号線であるCVBS信号線を介して受信してRGB映像信号に変換する。
【0013】
そのため、カメラ50により撮影されたRGB映像信号はエンコーダ40においてコンポジット映像信号に変換され、デコーダ30においてRGB映像信号に戻されてディスプレイ60に表示されることになる。
【0014】
このような映像信号送受信システムにおいて、受信側のデコーダ30から送信側のエンコーダ40に対する制御を行いたい場合がある。例えば、デコーダ30から、エンコーダ40内のレジスタの読み出し/書き込みを行いたい場合、エンコーダ40に接続されたSPI(Serial peripheral Interface)フラッシュメモリの制御を行いたい場合、エンコーダ40が接続されたI2Cバスに接続された他の装置に対する読み出し/書き込みを行いたい場合がある。
【0015】
このような目的を実現するために、本実施形態の映像信号送受信システムでは、デコーダ30にはバックチャネル送信回路10が接続され、エンコーダ40にはバックチャネル受信回路20が接続され、バックチャネル通信が可能となっている。
【0016】
バックチャネル通信では、CVBS信号線において映像信号が伝送されている区間以外の区間を利用して、CVBS信号線経由で、デコーダ30側のバックチャネル送信回路10からエンコーダ40側のバックチャネル受信回路20に向けてパルス信号等のデータが送信される。
【0017】
このバックチャネル通信が行われる様子について図2を参照して説明する。
【0018】
図2(A)は、通常の映像信号の通信時のCVBS信号線上の波形を示す模式図である。図2(A)を参照すると、通常の映像信号の通信時には、コンポジット映像信号がペデスタルレベルに重畳されてエンコーダ40側からデコーダ30側に送信されているのが分かる。
【0019】
そして、図2(B)は、バックチャネル通信時のCVBS信号線上の波形を示す模式図である。図2(B)を参照すると、バックチャネル通信時には、バックチャネル送信回路10により生成されたパルス信号がペデスタルレベルに重畳されてデコーダ30側からエンコーダ40側に送信されているのが分かる。
【0020】
次に、本実施形態におけるバックチャネル送信回路10の回路構成を図3に示す。
【0021】
バックチャネル送信回路10は、図3に示されるように、クランプ電圧回路11、オペアンプ(差動増幅回路)12、13、LPF(Low Pass Filter)14と、スイッチ素子15、16と電圧源17、18と、パルススイッチ(パルスSWと略す。)19と、から構成されている。
【0022】
図3に示されるように、CVBS信号線の途中にはカップリングコンデンサ70が設けられている。これは、エンコーダ40とデコーダ30との間の直流電圧差を吸収して、それぞれの直流成分(DC成分)を除去して交流成分(AC成分)のみを伝達するために設けられている。
【0023】
なお、カップリングコンデンサ70とエンコーダ40との間はVX点として説明し、カップリングコンデンサ70とデコーダ30との間はVY点として説明する。
【0024】
そして、VX点では、ペデスタルレベルは0.284Vに設定され、VY点では、ペデスタルレベルは、例えば1.1Vのクランプ電圧に0.284Vを加算した電圧、例えば1.384Vに設定されているものとして説明する。
【0025】
ここで、バックチャネル送信回路10内のオペアンプ12、13においてオフセット電圧が発生すると、このオフセット電圧がCVBS信号線のVY点に印加される。すると、カップリングコンデンサ70に電荷がチャージされることにより印加されたオフセット電圧が保持されたままとなってしまうことになる。
【0026】
そこで、本実施形態の映像信号送受信システムでは、以下において説明するような回路構成とすることにより、CVBS信号線に、オフセット電圧が累積されてしまうことを抑制するようにしている。
【0027】
デコーダ30は、バックチャネル通信のためのパルス信号を生成するためのパルス制御信号102をバックチャネル送信回路10に出力している。そして、バックチャネル送信回路10は、パルス信号を出力するオペアンプ12、13を有し、デコーダ30からのパルス制御信号102に基づいて、バックチャネル通信のためのパルス信号をコンポジット映像信号のペデスタルレベルに重畳することにより、CVBS信号線経由でデコーダ30からエンコーダ40の方向にバックチャネル通信を行う。そして、バックチャネル受信回路20は、CVBS信号線に重畳されたパルス信号を受信する。
【0028】
また、デコーダ30は、バックチャネル送信回路10内のパルスSW19を制御するためのパルスSW信号103をバックチャネル送信回路10に出力している。パルスSW19は、パルスSW信号103がハイレベル(以下Hレベルと略す。)の時に閉状態となり、ロウレベル(以下Lレベルと略す。)の時に開状態となる。つまり、パルスSW信号103の時のみバックチャネル送信回路10からのパルス信号がCVBS信号線に重畳されることになる。
【0029】
さらに、デコーダ30は、反転制御信号101をバックチャネル送信回路10に出力している。デコーダ30は、バックチャネル送信回路10に反転制御信号101を出力することにより、バックチャネル送信回路10を制御して複数のパルス信号を生成する毎に、バックチャネル送信回路10内のパルス信号を出力するためのオペアンプ12、13において発生するオフセット電圧の極性を反転させる。
【0030】
次に、バックチャネル送信回路10の動作について図3を参照して説明する。
【0031】
バックチャネル送信回路10では、CVBS信号線のペデスタルレベルをオペアンプ13によりモニタしている。具体的には、CVBS信号線のVY点の電圧がLPF14を経由してオペアンプ13の非反転入力端子に入力されている。LPF14は、CVBS信号線におけるパルス信号を除去してDC成分のみを通過させてオペアンプ13の非反転入力端子に入力する。オペアンプ13の出力端子と反転入力端子とが電気的に接続されていることにより、オペアンプ13は増幅率が1倍のバッファ回路として機能する。その結果、オペアンプ13の出力端子からはVY点のペデスタルレベルの電圧が出力される。なお、CVBS信号線のVY点は、クランプ電圧回路11によりクランプ電圧にクランプされている。例えば、CVBS信号線のVY点は、クランプ電圧回路11により1.1Vにクランプされている。
【0032】
そのため、エンコーダ40から出力されるコンポジット映像信号のペデスタルレベルは0.284Vとなっているが、VY点におけるペデスタルレベルは、1.384V(0.284V+1.1V)となっている。
【0033】
そして、オペアンプ13の出力端子から出力されるペデスタルレベルに電圧源17の電圧を加算した電圧がパルスH電圧となり、電圧源18の電圧を減算した電圧がパルスL電圧となる。パルスH電圧は、パルス信号がHレベルの時の電圧である。また、パルスL電圧は、パルス信号がLレベルの時の電圧である。例えば、電圧源17、18がそれぞれ0.5Vの電圧の場合、パルスH電圧は、1.384Vに0.5Vを加えた1.884Vとなる。また、パルスL電圧は、1.384Vから0.5Vを差し引いた0.884Vとなる
【0034】
そして、スイッチ素子15は、パルス制御信号102がHレベルの時に閉状態となり、Lレベルの時に開状態となる。また、スイッチ素子16は、パルス制御信号102がHレベルの時に開状態となり、Lレベルの時に閉状態となる。
【0035】
そして、オペアンプ12の出力端子と反転入力端子とが電気的に接続されていることにより、オペアンプ12も増幅率が1倍のバッファ回路として機能する。その結果、パルス制御信号102がHレベルの場合には、パルスH電圧となり、パルス制御信号102がLレベルの場合には、パルスL電圧となるようなパルス信号がオペアンプ12の出力端子から出力される。
【0036】
このように、バックチャネル送信回路10は、ペデスタルレベルを基準として、デコーダ30からのパルス制御信号102に基づいて、パルスH電圧/パルスL電圧のパルス信号を生成して、CVBS信号線に重畳する。
【0037】
そして、デコーダ30は、バックチャネル送信回路10を制御して複数のパルス信号を生成する毎に、反転制御信号101を出力する。また、オペアンプ12、13には、デコーダ30からの反転制御信号101が入力されている。
【0038】
そのため、オペアンプ12、13は、それぞれ、反転制御信号101に基づいて非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子の回路構成を切り替えることにより発生するオフセット電圧の極性を反転させる。
【0039】
次に、図3に示したオペアンプ12、13の回路構成を図4に示す。
【0040】
オペアンプ12、13の回路構成は同じ回路構成となっているため、以下の説明においてはオペアンプ12の回路構成についてのみ説明する。
【0041】
オペアンプ12は、図4に示されるように、PチャネルFET21、22、23と、NチャネルFET24、25と、電流源26、27と、コンデンサ28と、スイッチ素子31~38とから構成されている。
【0042】
そして、PチャネルFET21、22、23と、NチャネルFET24、25と、電流源26、27と、コンデンサ28とにより反転入力端子(-)、非反転入力端子(+)、出力端子を有する差動増幅回路が構成されている。
【0043】
スイッチ素子31、33、35、37は、反転制御信号101がHレベルの時に閉状態となり、Lレベルの時に開状態となる。また、スイッチ素子32、34、36、38は、反転制御信号101がHレベルの時に開状態となり、Lレベルの時に閉状態となる。
【0044】
そのため、反転制御信号101がHレベルとLレベルとの間で切り替わることにより、オペアンプ12の回路構成がプラス側とマイナス側とで入れ替わり、発生するオフセット電圧の極性が反転することになる。このように、オペアンプ12は、反転制御信号101に基づいて非反転入力端子、反転入力端子及び出力端子の回路構成を切り替える複数のスイッチ素子31~38を有する。
【0045】
そして、デコーダ30は、複数のパルス信号から構成されるパルス信号群をバックチャネル送信回路10に生成させる際に、パルス信号群が生成される毎に反転制御信号101の論理を切り替えて、発生するオフセット電圧の極性を反転させる。
【0046】
その結果、あるパルス信号群を生成した際にオフセット電圧が発生したとしても、そのオフセット電圧は、次のパルス信号群を生成した際には逆の極性のオフセット電圧により打ち消されることになる。
【0047】
次に、このような制御によりオフセット電圧が打ち消される様子について図面を参照して説明する。なお、以下の説明ではオペアンプ12、13による合計のオフセット電圧がプラス方向となっている場合について説明する。
【0048】
まず、反転制御を行わない場合のVX点、VY点の波形について図5を参照して説明する。
【0049】
図5では、反転制御信号101はLレベル固定となっており反転制御は行われていない。そのため、1回目のパルス信号群を生成した際のオフセット電圧によりVY点の電圧が、クランプ電圧+0.284Vという電圧からずれた場合、2回目のパルス信号群を生成した際のオフセット電圧によりさらにずれてしまっているのが分かる。つまり、発生したオフセット電圧が累積されてしまっているのが分かる。
【0050】
次に、反転制御を行う場合のVX点、VY点の波形について図6を参照して説明する。
【0051】
図6では、反転制御信号101は、1回目のパルス信号群を生成した際にはLレベルとなっているが、2回目のパルス信号群を生成するタイミングである時刻T1においてHレベルとなり、反転制御は行われている。そのため、1回目のパルス信号群を生成した際のオフセット電圧によりVY点の電圧が、クランプ電圧+0.284Vという電圧からずれた場合でも、2回目のパルス信号群を生成した際のオフセット電圧により打ち消されて元の電圧に戻っているのが分かる。
【0052】
このように本実施形態の映像信号送受信システムでは、複数のパルス信号からなるパルス信号群を生成する毎にオペアンプ12、13において発生するオフセット電圧の極性を反転させる制御が行われる。その結果、本実施形態によれば、コンポジット映像信号の受信側から送信側に対してバックチャネル通信を行う際に、CVBS信号線に、バックチャネル送信回路10に含まれるオペアンプ12、13のオフセット電圧が累積されてしまうことを抑制することが可能となる。
【0053】
なお、あるパルス信号群を生成する際にCVBS信号線のVY点に保持されたオフセット電圧は、次のパルス信号群を生成する際に発生した逆の極性のオフセット電圧により打ち消されるが、生成するパルス信号群の数が奇数の場合には、最後に生成したパルス信号群によるオフセット電圧がCVBS線に打ち消されずに残ってしまうことになる。
【0054】
そのため、デコーダ30は、CVBS信号線にコンポジット映像信号が重畳されていない期間に、バックチャネル送信回路10を制御して複数のパルス信号からなるパルス信号群を生成してCVBS信号線に重畳する回数が偶数となるようにバックチャネル送信回路10を制御する。
【0055】
この結果、CVBS信号線にオフセット電圧による電圧ずれが残ってしまうことを抑制することが可能となる。
【0056】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態の画像表示システムについて説明する。図7は、本発明の第2の実施形態の映像信号送受信システムの構成を示すブロック図である。
【0057】
本実施形態の画像表示システムは、図7に示すように、上記で説明した第1の実施形態に対して、バックチャネル送信回路10、デコーダ30が、それぞれバックチャネル送信回路10A、デコーダ30Aに置き換わり、映像信号モニタ回路80が追加された点のみが異なっている。そのため、本実施形態の画像表示システムの説明では、上記で説明した第1の実施形態と異なる回路構成のみについて説明する。
【0058】
なお、本実施形態におけるバックチャネル送信回路10Aは、図3に示した第1の実施形態におけるバックチャネル送信回路10に対して、反転制御信号101による反転制御の機能を削除した回路構成となっているが、他の回路構成については同様であるため詳細な説明は省略する。
【0059】
上記で説明した第1の実施形態の画像表示システムでは、複数のパルス信号からなるパルス信号群を生成する毎にオペアンプ12、13において発生するオフセット電圧の極性を反転させる制御を行うことにより、CVBS信号線にバックチャネル送信回路10に含まれるオペアンプ12、13のオフセット電圧が累積されてしまうことを抑制するものであった。しかし、例えオペアンプ12、13にオフセット電圧が発生しない場合であっても、パルス信号をCVBS信号線に重畳し続けるとCVBS信号線の電圧が理想的な電圧からずれていってしまう場合がある。
【0060】
例えば、CVBS信号線に重畳されるパルス信号には立上りと立下りの両方のタイミングにおいて遅延が発生する。このようにCVBS信号線に重畳されるパルス信号に遅延が発生する様子について図8を参照して説明する。
【0061】
図8(A)は、パルス信号に遅延が発生しない理想的な状態を示す図である。これに対して、図8(B)は、パルス信号の立上りと立下りの両方のタイミングにおいて遅延が発生している様子を示す図である。この図8(B)に示すようにパルス信号に遅延が発生する場合、パルス信号の立上り/立下り遅延差によりCVBS信号線の電圧が正常な電圧からずれていってしまう。具体的には、正のパルス信号の面積が負のパルス信号の面積よりも広い場合、正の電圧ずれがCVBS信号線に発生してしまうことになる。また、負のパルス信号の面積が正のパルス信号の面積よりも広い場合、負の電圧ずれがCVBS信号線に発生してしまうことになる。そして、パルス信号をCVBS信号線に重畳する毎に電圧ずれが発生して、この電圧ずれがCVBS信号線に蓄積されていくことなってしまう。
【0062】
そこで、本実施形態におけるデコーダ30Aは、複数のパルス信号を重畳する前後のCVBS信号線の電圧を比較することにより電圧変化を検出し、検出された電圧変化を打ち消すようなパルス信号を生成してCVBS信号線に重畳するようバックチャネル送信回路10Aを制御する。
【0063】
本実施形態の画像表示システムでは、このような制御が行われることにより、CVBS信号線に発生した電圧ずれを打ち消してCVBS信号線の電圧が正常な電圧に維持されることになる。
【0064】
具体的には、デコーダ30Aは、複数のパルス信号を重畳した後のCVBS信号線の電圧が、複数のパルス信号を重畳する前のCVBS信号線の電圧よりも高い場合には、ペデスタルレベルよりも電圧が低い負の電圧調整パルス信号を生成してCVBS信号線に重畳するようバックチャネル送信回路10Aを制御する。そして、デコーダ30Aは、複数のパルス信号を重畳した後のCVBS信号線の電圧が、複数のパルス信号を重畳する前のCVBS信号線の電圧よりも低い場合には、ペデスタルレベルよりも電圧が高い正の電圧調整パルス信号を生成してCVBS信号線に重畳するようバックチャネル送信回路10Aを制御する。
【0065】
次に、図7に示した本実施形態の画像表示システムにおける各ブロックの具体的な構成について説明する。
【0066】
まず、図7に示した映像信号モニタ回路80の構成を図9のブロック図に示す。
【0067】
映像信号モニタ回路80は、CVBS信号線のVY点の電圧を常にリアルタイムで測定してデコーダ30Aに測定結果を出力していて、図9に示されるように、VY電圧変換回路81と、AD変換回路82とから構成されている。
【0068】
VY電圧変換回路81は、VY点の電圧をAD変換回路82のダイナミックレンジ内の電圧に変換する。AD変換回路82は、VY電圧変換回路81からの出力電圧値をデジタル変換して、デコーダ30Aに出力している。
【0069】
次に、図7に示したデコーダ30Aの構成を図10のブロック図に示す。なお、図10では、デコーダ30Aを構成する回路構成のうち、CVBS信号線からのコンポジット映像信号をRGB映像信号に変換する回路構成については省略して示す。
【0070】
デコーダ30Aは、図10に示されるように、映像信号処理回路91と、送信前電圧記憶用レジスタ92と、送信後電圧記憶用レジスタ93と、パルス制御回路94とを備えている。
【0071】
映像信号処理回路91は、AD変換回路82からの出力によりCVBS信号線のVY点の電圧を監視していて、パルス信号を出力する前のVY点の電圧値を送信前電圧記憶用レジスタ92に書き込み、パルス信号を出力した後のVY点の電圧値を送信後電圧記憶用レジスタ93に書き込む。
【0072】
パルス制御回路94は、通常動作時においては、パルス制御信号102とパルスSW信号103とを用いて、バックチャネル送信回路10Aに対してパルス信号を生成させる制御を行っている。そして、パルス制御回路94は、複数のパルス信号をCVBS信号線に出力した後に、送信前電圧記憶用レジスタ92に記憶されている電圧値と、送信後電圧記憶用レジスタ93に記憶されている電圧値とを比較することにより、CVBS信号線のペデスタルレベルの電圧ずれを検出する。
【0073】
そして、送信前電圧記憶用レジスタ92に記憶されている電圧値よりも、送信後電圧記憶用レジスタ93に記憶されている電圧値の方が大きい場合、パルス制御回路94は、CVBS信号線に正方向の電圧ずれが発生していると判定して、負の電圧調整パルスをバックチャネル送信回路10Aに発生させるよう制御する。また、送信前電圧記憶用レジスタ92に記憶されている電圧値よりも、送信後電圧記憶用レジスタ93に記憶されている電圧値の方が小さい場合、パルス制御回路94は、CVBS信号線に負方向の電圧ずれが発生していると判定して、正の電圧調整パルスをバックチャネル送信回路10Aに発生させるよう制御する。
【0074】
このような制御が行われることにより、複数のパルス信号の立上り/立下り時間差によりCVBS信号線に発生した電圧ずれは、電圧調整パルスにより打ち消されて電圧ずれが0となる。なお、パルス制御回路94は、パルス信号を重畳した前後の電圧値の差に応じて、出力される電圧調整パルスの時間幅を変更することにより、検出された電圧変化を打ち消して発生した電圧ずれが0となるような制御を行う。つまり、パルス制御回路94は、パルス信号の送信前後の電圧値の差が大きい場合には、時間幅の長い電圧調整パルスが生成され、パルス信号の送信前後の電圧値の差が小さい場合には、時間幅の短い電圧調整パルスが生成されるようにバックチャネル送信回路10Aを制御する。
【0075】
このような制御が行われる際のタイミングチャートを図11図12に示す。図11は、負の電圧調整パルスによる電圧調整が行われる場合のタイミングチャートである。また、図12は、正の電圧調整パルスによる電圧調整が行われる場合のタイミングチャートである。
【0076】
図11に示したタイミングチャートでは、CVBS信号線に出力された複数のパルス信号の立上り/立下り遅延時間差により正の電圧ずれが発生した場合が示されている。そのため、デコーダ30Aのパルス制御回路94は、パルス制御信号102をLレベルのままパルスSW信号103をHレベルとして、負の電圧調整パルスを発生させているのが分かる。そして、この負の電圧調整パルスにより複数のパルス信号の出力後に発生した正の電圧ずれが打ち消されてCVBS信号線のVY点が元のペデスタルレベルの電圧に戻っているのが分かる。
【0077】
また、図12に示したタイミングチャートでは、CVBS信号線に出力された複数のパルス信号の立上り/立下り遅延時間差により負の電圧ずれが発生した場合が示されている。そのため、デコーダ30Aのパルス制御回路94は、パルス制御信号102をHレベルとして、パルスSW信号103をHレベルとし、正の電圧調整パルスを発生させているのが分かる。そして、この正の電圧調整パルスにより複数のパルス信号の出力後に発生した負の電圧ずれが打ち消されてCVBS信号線のVY点が元のペデスタルレベルの電圧に戻っているのが分かる。
【0078】
このように、本実施形態の画像表示システムによれば、複数のパルス信号を出力したことにより発生したCVBS信号線の電圧ずれを電圧調整パルスにより打ち消することが可能となる。
【0079】
なお、本実施形態では、パルス信号を出力する毎にオペアンプ12、13において発生するオフセット電圧の極性を反転させる制御を行う第1の実施形態とは独立して構成する場合について説明した。しかし、第1の実施形態による構成と本実施形態における構成とを組み合わせて両方の制御を行うようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0080】
10、10A バックチャネル送信回路
11 クランプ電圧回路
12、13 オペアンプ(差動増幅回路)
14 LPF(Low Pass Filter)
15、16 スイッチ素子
17、18 電圧源
19 パルスSW
20 バックチャネル受信回路
21~23 PチャネルFET
24、25 NチャネルFET
26、27 電流源
28 コンデンサ
30、30A デコーダ
31~38 スイッチ素子
40 エンコーダ
50 カメラ
60 ディスプレイ
70 カップリングコンデンサ
80 映像信号モニタ回路
81 VY電圧変換回路
82 AD変換回路
91 映像信号処理回路
92 送信前電圧記憶用レジスタ
93 送信後電圧記憶用レジスタ
94 パルス制御回路
101 反転制御信号
102 パルス制御信号
103 パルスSW信号
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12