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特開2024-127770ファストリカバリダイオード及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127770
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ファストリカバリダイオード及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/861 20060101AFI20240912BHJP
   H01L 21/329 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01L29/91 D
H01L29/91 B
H01L29/91 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024016623
(22)【出願日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】10-2023-0029811
(32)【優先日】2023-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】505087780
【氏名又は名称】マグナチップセミコンダクター有限会社
【氏名又は名称原語表記】MAGNACHIP SEMICONDUCTOR LTD
【住所又は居所原語表記】1 Hyangjeong-dong,Heungduk-gu,Cheongju City,Chung Cheong Bok-do,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジョ,ヨンソ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ホヒョン
(72)【発明者】
【氏名】イム,ジヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,チャンホ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ファストリカバリダイオード及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ファストリカバリダイオード100は、基板110、基板上に形成されるエピタキシャル層120、エピタキシャル層の上部の一部に形成されるP型低濃度ドーピング領域130、P型低濃度ドーピング領域上に形成されるP型高濃度ドーピング領域140、P型低濃度ドーピング領域及びP型高濃度ドーピング領域を囲むようにエピタキシャル層の上部の一部に形成されるP型ガードリング150、P型ガードリング及びP型高濃度ドーピング領域上に形成されるフィールド酸化膜160、P型高濃度ドーピング領域及びフィールド酸化膜の一部と重畳するように形成されるアノード電極180及び基板の下部に形成されるカソード電極190を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファストリカバリダイオード(fast recovery diode)であって、
基板;
前記基板上に形成されるエピタキシャル層;
前記エピタキシャル層内の上部側に形成されるP型低濃度ドーピング領域及び前記P型低濃度ドーピング領域上に形成されるP型高濃度ドーピング領域;
前記P型低濃度ドーピング領域及び前記P型高濃度ドーピング領域を囲むように前記エピタキシャル層内の上部側に形成されるP型ガードリング;
前記P型ガードリング及び前記P型高濃度ドーピング領域上に形成されるフィールド酸化膜;
前記P型高濃度ドーピング領域及び前記フィールド酸化膜の一部と重畳するように形成されるアノード電極;及び
前記基板の下部に形成されるカソード電極を含むことを特徴とする、ファストリカバリダイオード。
【請求項2】
前記基板は、
N型(N+)高濃度基板であることを特徴とする、請求項1に記載のファストリカバリダイオード。
【請求項3】
前記エピタキシャル層は、
N型低濃度バッファ層;及び
前記N型低濃度バッファ層上に形成されるN型ドリフト層を含むことを特徴とする、請求項1に記載のファストリカバリダイオード。
【請求項4】
さらに、前記アノード電極上に形成されるパッシベーション膜を含むことを特徴とする、請求項1に記載のファストリカバリダイオード。
【請求項5】
前記P型低濃度ドーピング領域の下部面は、前記エピタキシャル層の上面に対して、前記P型ガードリングの下部面よりも低いことを特徴とする、請求項1に記載のファストリカバリダイオード。
【請求項6】
前記フィールド酸化膜の下部面は、前記P型ガードリング、エピタキシャル層及び前記P型高濃度ドーピング領域と接していることを特徴とする、請求項1に記載のファストリカバリダイオード。
【請求項7】
前記フィールド酸化膜は、前記P型低濃度ドーピング領域と重畳していることを特徴とする、請求項6に記載のファストリカバリダイオード。
【請求項8】
前記P型高濃度ドーピング領域は、前記アノード電極とオーミックコンタクト(ohmic contact)することを特徴とする、請求項1に記載のファストリカバリダイオード。
【請求項9】
前記P型低濃度ドーピング領域と前記P型高濃度ドーピング領域との濃度比は、1:10~1:100であることを特徴とする、請求項1に記載のファストリカバリダイオード。
【請求項10】
さらに、前記エピタキシャル層内に形成されるヘリウム照射欠陥層を含み、
前記ヘリウム照射欠陥層は、前記P型低濃度ドーピング領域の下部に生成され、
前記エピタキシャル層の上面を基準に15μm~30μmの深さに位置することを特徴とする、請求項1に記載のファストリカバリダイオード。
【請求項11】
前記ヘリウム照射欠陥層内にはヘリウムが含まれることを特徴とする、請求項10に記載のファストリカバリダイオード。
【請求項12】
基板上にエピタキシャル層を形成するステップ;
前記エピタキシャル層の一部にP型イオンを注入することによってP型ガードリングを形成するステップ;
前記P型ガードリング上にフィールド酸化膜を形成するステップ;
前記エピタキシャル層内にP型低濃度ドーピング領域を形成するステップ;
前記P型低濃度ドーピング領域上にP型高濃度ドーピング領域を形成するステップ;
前記P型高濃度ドーピング領域及び前記フィールド酸化膜の一部と重畳するようにアノード電極を形成するステップ;
前記アノード電極を形成した後に電子ビーム照射を実行するステップ;
前記電子ビーム照射を実行した後にヘリウム照射を実行するステップ;及び
前記基板の下部にカソード電極を形成するステップを含むことを特徴とする、ファストリカバリダイオードの製造方法。
【請求項13】
さらに、前記フィールド酸化膜及び前記アノード電極の上面の一部を覆うようにパッシベーション膜を形成するステップを含むことを特徴とする、請求項12に記載のファストリカバリダイオードの製造方法。
【請求項14】
前記エピタキシャル層を形成するステップは、
前記基板上にバッファ層を形成するステップ;及び
前記バッファ層上にドリフト層を形成するステップを含むことを特徴とする、請求項12に記載のファストリカバリダイオードの製造方法。
【請求項15】
前記P型低濃度ドーピング領域を形成するステップは、
前記エピタキシャル層にP型低濃度イオンを注入する工程及び900℃~1300℃の温度で第1アニーリング工程を実施するステップを含み、
前記P型低濃度イオンは、ホウ素(B)を含むことを特徴とする、請求項12に記載のファストリカバリダイオードの製造方法。
【請求項16】
前記P型高濃度ドーピング領域を形成するステップは、
前記P型高濃度ドーピング領域にP型高濃度イオンを注入する工程及び700℃~900℃の温度で第2アニーリング工程を実施するステップを含み、
前記P型高濃度イオンは、フッ素(F)を含むホウ素(B)イオンを含むことを特徴とする、請求項12に記載のファストリカバリダイオードの製造方法。
【請求項17】
前記P型低濃度ドーピング領域の下部面は、前記エピタキシャル層の上面に対して、前記P型ガードリングの下部面よりも低く位置する、請求項12に記載のファストリカバリダイオードの製造方法。
【請求項18】
前記P型高濃度ドーピング領域は、フィールド酸化膜の下部の一側面まで拡散するように形成されることを特徴とする、請求項12に記載のファストリカバリダイオードの製造方法。
【請求項19】
前記P型低濃度ドーピング領域と前記P型高濃度ドーピング領域との濃度比は、1:2~1:20であることを特徴とする、請求項12に記載のファストリカバリダイオードの製造方法。
【請求項20】
前記フッ素(F)を含むホウ素イオンは、フッ化ホウ素(BF)を含むことを特徴とする、請求項16に記載のファストリカバリダイオードの製造方法。
【請求項21】
前記ヘリウム照射によって生成される欠陥層は、前記P型低濃度ドーピング領域の下部に位置するドリフト層に形成されることを特徴とする、請求項14に記載のファストリカバリダイオードの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファストリカバリダイオード及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ファストリカバリダイオード(FRD:Fast Recovery Diode)は、一般的なPNダイオードに比べて高速スイッチング特性に優れているため、高速スイッチングが要求されるパワー半導体素子(power semiconductor device)である絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar mode Transistor)、パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)、及び高い降伏電圧が要求されるパワー半導体素子において、スイッチング素子または整流素子として広く使用されている。
【0003】
ファストリカバリダイオードは、一般的に、アノード(anode)側にP型高濃度ドーピング領域(Pウエル(P-well))を形成するために、高濃度のイオン注入工程を実施して製造される。このように、正孔キャリア(hole carrier)が多数注入されるため、ファストリカバリダイオードは、適切なターンオン損失(Eon:turn-on switching energy)、逆回復時間(reverse recovery time:Trr)、及び最大逆回復電流(maximum reverse recovery current:Irrm)を維持した状態で、電子と正孔キャリアが再結合できる工程が要求される。
【0004】
即ち、ファストリカバリダイオードは、電子ビーム照射(e-beam irradiation)工程時の高い吸収線量及びヘリウム照射(helium irradiation)工程時の高濃度ヘリウム注入によって正孔キャリアの再結合を促し、正孔キャリアの寿命(life time)を短縮させることで逆回復時間(Trr)を短くする。
【0005】
しかし、ファストリカバリダイオード(FRD)は、電子ビーム照射工程時の高い吸収線量によって、基板及びエピタキシャル層内に多数の結晶欠陥(crystal defect)が発生し、また、ヘリウム照射工程時の高濃度ヘリウム注入によって、特定のエピタキシャル層内に欠陥が生成される。
【0006】
その結果、ファストリカバリダイオードは、高い逆電圧が印加されるとPN接合付近に大きな電界が形成され、また、高温での逆回復動作によって漏れ電流が増加し、電力の損失が発生する問題が生じるようになり、信頼性を保証し得る範囲(例:温度範囲)が制限される問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点を解決するためのものであって、高温での漏れ電流を減少し得るファストリカバリダイオード及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するための本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードは、基板;前記基板上に形成されるエピタキシャル層;前記エピタキシャル層内の上部側に形成されるP型低濃度ドーピング領域及び前記P型低濃度ドーピング領域上に形成されるP型高濃度ドーピング領域;前記P型低濃度ドーピング領域及び前記P型高濃度ドーピング領域を囲むように前記エピタキシャル層内の上部側に形成されるP型ガードリング;前記P型ガードリング及び前記P型高濃度ドーピング領域上に形成されるフィールド酸化膜;前記P型高濃度ドーピング領域及び前記フィールド酸化膜の一部と重畳するように形成されるアノード電極;及び前記基板の下部に形成されるカソード電極を含み得る。
【0009】
前記基板は、N型(N+)高濃度基板であり得る。
【0010】
前記エピタキシャル層は、N型低濃度バッファ層;及び前記N型低濃度バッファ層上に形成されるN型低濃度ドリフト層を含み得る。
【0011】
前記ファストリカバリダイオードは、さらに、前記アノード電極上に形成されるパッシベーション膜を含み得る。
【0012】
前記P型低濃度ドーピング領域の下部面は、前記エピタキシャル層の上面部に対して、前記P型ガードリングの下部面よりも低く位置し得る。
【0013】
前記フィールド酸化膜の下部面は、前記P型ガードリング、前記エピタキシャル層及び前記P型高濃度ドーピング領域と接し得る。
【0014】
前記フィールド酸化膜は、前記P型低濃度ドーピング領域と重畳し得る。
【0015】
前記P型高濃度ドーピング領域は、前記アノード電極とオーミックコンタクト(ohmic contact)し得る。
【0016】
前記P型低濃度ドーピング領域と前記P型高濃度ドーピング領域との濃度比は、1:10~1:100であり得る。
【0017】
前記ファストリカバリダイオードは、さらに、前記エピタキシャル層内に形成されるヘリウム照射欠陥層を含み、前記ヘリウム照射欠陥層は、前記P型低濃度ドーピング領域の下部に設けられ、前記エピタキシャル層の上面を基準に15μm~30μmの深さに位置し得る。
【0018】
前記ヘリウム照射欠陥層内にはヘリウムが含まれ得る。
【0019】
本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードの製造方法は、基板上にエピタキシャル層を形成するステップ;前記エピタキシャル層内の一部にP型イオンを注入することによってP型ガードリングを形成するステップ;前記P型ガードリング上にフィールド酸化膜を形成するステップ;前記エピタキシャル層内にP型低濃度ドーピング領域を形成するステップ;前記P型低濃度ドーピング領域上にP型高濃度ドーピング領域を形成するステップ;前記P型高濃度ドーピング領域及び前記フィールド酸化膜の一部と重畳するようにアノード電極を形成するステップ;前記アノード電極を形成した後に電子ビーム照射を実行するステップ;前記電子ビーム照射を実行した後にヘリウム照射を実行するステップ;及び前記基板の下部にカソード電極を形成するステップを含み得る。
【0020】
前記方法は、さらに、前記フィールド酸化膜及び前記アノード電極の上面の一部を覆うようにパッシベーション膜を形成するステップを含み得る。
【0021】
前記エピタキシャル層を形成するステップは、前記基板上にバッファ層を形成するステップ;及び前記バッファ層上にドリフト層を形成するステップを含み得る。
【0022】
前記P型低濃度ドーピング領域を形成するステップは、エピタキシャル層にP型低濃度イオンを注入する工程及び900℃~1300℃の温度で第1アニーリング工程を実施するステップを含み、前記P型低濃度イオンは、ホウ素(B)を含み得る。
【0023】
前記P型高濃度ドーピング領域を形成するステップは、P型低濃度ドーピング領域にP型高濃度イオンを注入する工程及び700℃~900℃の温度で第2アニーリング工程を実施するステップを含み、前記P型高濃度イオンは、フッ素(F)を含むホウ素(B)イオンを含み得る。
【0024】
前記P型低濃度ドーピング領域の下部面は、前記エピタキシャル層の上面部に対して、前記P型ガードリングの下部面よりも低く位置し得る。
【0025】
前記P型高濃度ドーピング領域は、前記フィールド酸化膜の下部の一側面まで拡散するように形成され得る。
【0026】
前記P型低濃度ドーピング領域と前記P型高濃度ドーピング領域との濃度比は、1:2~1:20であり得る。
【0027】
前記フッ素を含むホウ素イオンとしては、フッ化ホウ素(BF)が挙げられる。
【0028】
前記ヘリウム照射によって生成される欠陥層は、前記P型低濃度ドーピング領域の下部に位置するドリフト層に形成され得る。
【発明の効果】
【0029】
本発明の多様な実施例によるファストリカバリダイオードは、電子ビーム照射の吸収線量及びヘリウム照射の濃度を減少させ、基板及びエピタキシャル層内に生成される結晶欠陥(crystal defect)の数を減少させることが可能である。また、前記ファストリカバリダイオードは、適切なターンオン損失、逆回復時間(Trr)、及び最大逆回復電流の特性を維持しつつ、高温での漏れ電流を減少させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードの断面図である。
図2】本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードのアノードからカソードまでの深さ(depth)によるP型領域及びN型領域のドーピング濃度の変化を示すグラフである。
図3a】従来技術及び本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードの構造を比較して示す断面図である。
図3b】従来技術及び本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードの構造を比較して示す断面図である。
図4a】従来技術及び本発明の一実施例による電子ビーム照射時に注入される吸収線量を比較して示すグラフである。
図4b】従来技術及び本発明の一実施例によるヘリウム照射時に注入されるヘリウム濃度を比較して示すグラフである。
図5a】従来技術及び本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードの特性を比較して示すグラフである。
図5b】従来技術及び本発明の一実施例による漏れ電流の値を比較して示すグラフである。
図6】本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードの製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。本発明の目的及び効果、そして、それを達成するための技術的な構成は、添付の図面とともに詳細に後述される実施例を参照すれば明らかになるといえる。しかし、本発明は、以下に開示される実施例に限定されるのではなく、異なった多様な形態で具現され得り、本実施例は、本発明の開示が完全となるようにするためのものであって、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に発明のカテゴリーを完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇(category)によって定義される。よって、その定義は、本明細書の全般にわたる内容をもとに定められなければならないといえる。
【0032】
本発明を説明するにおいて、公知の機能または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不必要に不明瞭にし得ると判断される場合には、その詳細な説明を省略することが可能である。そして、後述する用語は、本発明における機能を考慮して定義された用語であって、これは、使用者、運用者の意図または慣例等によって異なり得る。即ち、本明細書で使用される用語は、実施例を説明するためのものであって、本発明を制限しようとするものではない。また、他の定義がなければ、本明細書で使用される全ての用語(技術及び科学的用語を含む)は、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に共通して理解され得る意味で使用されるといえる。また、一般的に使用される辞典に定義されている用語は、明白且つ特別に定義されていない限り、理想的または過度に解析されることはない。
【0033】
第1、第2などの用語は、多様な素子、構成要素及び/またはセクションを叙述するために使用されるが、これらの素子、構成要素及び/またはセクションは、これらの用語によって制限されるものではないことは言うまでもない。これらの用語は、一つの素子、構成要素またはセクションを他の素子、構成要素またはセクションと区別するために使用するものである。よって、以下で言及する第1素子、第1構成要素または第1セクションなどのような用語は、本発明の技術的な思想内で第2素子、第2構成要素または第2セクションであり得ることもあるのは言うまでもない。
【0034】
本明細書において、単数形は、言句で特別言及されない限り、複数形も含み得る。明細書で使用される「含み得る(comprises)」及び/または「~からなる(made of)」は、言及された構成要素、ステップ、動作及び/または素子が、一つ以上の構成要素、ステップ、動作及び/または素子の存在または追加を排除するものでない。以下における同一の参照符号は、同一の構成要素を指称する。
【0035】
図1は、本発明の実施例によるファストリカバリダイオードの断面図である。
【0036】
図1を参照すると、本発明の実施例によるファストリカバリダイオード(100)は、基板(110)、前記基板(110)上に形成されるエピタキシャル層(120)、前記エピタキシャル層(120)内の上部側に形成されるP型低濃度ドーピング領域(130)及び前記P型低濃度ドーピング領域(130)上に形成されるP型高濃度ドーピング領域(140)、前記P型低濃度ドーピング領域(130)及び前記P型高濃度ドーピング領域(140)を囲むように前記エピタキシャル層(120)内の上部側に形成されるP型ガードリング(150)、前記P型ガードリング(150)及び前記P型高濃度ドーピング領域(140)上に形成されるフィールド酸化膜(160)、前記P型高濃度ドーピング領域(140)及び前記フィールド酸化膜(160)の一部と重畳するように形成されるアノード電極(180)、及び前記基板(110)の下部に形成されるカソード電極(190)を含み得る。
【0037】
また、ファストリカバリダイオード(100)は、さらに、フィールド酸化膜(160)及びアノード電極(180)上にパッシベーション膜(170)を含み得る。また、ファストリカバリダイオード(100)は、ドリフト層(122)内にヘリウム照射欠陥層(302)を含み得る。
【0038】
基板(110)は、N型(N+)高濃度基板からなり得る。前記基板(110)は、半導体基板、例えば、ケイ素(silicon)基板及び炭化ケイ素(silicon carbide)基板で形成し得る。
【0039】
エピタキシャル層(120)は、基板(110)上に形成され、バッファ層(121)及びバッファ層(121)上に形成されるドリフト層(122)を含み得る。バッファ層(121)及びドリフト層(122)は同じN導電型を有し得り、ドリフト層(122)はバッファ層(121)よりも低い濃度を有し得る。
【0040】
P型低濃度ドーピング領域(130)は、エピタキシャル層(120)内に形成され得る。例えば、P型低濃度ドーピング領域(130)は、ドリフト層(122)へのP型イオン注入(ion implant)及び第1アニーリング(annealing)工程によって形成され得り、アニーリングは900℃以上1300℃未満の温度で実行され、工程時間は100分~200分未満であり得る。
【0041】
前記P型低濃度ドーピング領域(130)は、ホウ素(Boron)イオン注入工程によって形成され得る。
【0042】
P型高濃度ドーピング領域(140)は、P型低濃度ドーピング領域(130)上に形成され得る。例えば、P型高濃度ドーピング領域(140)は、P型高濃度イオン注入及び第2アニーリング工程によって形成され得り、前記P型高濃度ドーピング領域(140)は、アノード電極(180)とのオーミックコンタクト(ohmic contact)を形成し得る。P型高濃度ドーピング領域(140)は、フッ素(F)を含むホウ素(boron)イオン、例えば、フッ化ホウ素(BF;Boron Fluoride)を使用したイオン注入工程によって形成され得る。第2アニーリングは700℃以上900℃未満の温度で実行され、工程時間は20分~60分未満であり得る。
【0043】
P型高濃度ドーピング領域(140)の形成時にフッ化ホウ素(BF)を使用する理由は、従来のホウ素(B)よりもフッ化ホウ素(BF2)のイオン質量のほうが重いため、イオン注入工程時にエピタキシャル層(120)の下部まで拡散されないからである。これにより、浅い深さの高濃度領域を形成することができる。
【0044】
P型高濃度ドーピング領域(140)は、アノード電極(180)とオーミックコンタクト(ohmic cantact)を形成するので、コンタクト形成工程であるともいえる。
【0045】
前記第1及び第2アニーリング工程後のP型低濃度ドーピング領域(130)とP型高濃度ドーピング領域(140)との濃度比は、1:10~1:100の範囲であり得る。
【0046】
P型ガードリング(guard ring)(150)は、逆方向バイアス(reverse bias)時の電界集中を緩和し、より安定した降伏電圧(breakdown voltage)を確保するために、ファストリカバリダイオード(100)の周囲(外周)に形成される。P型ガードリング(150)は、P型イオン注入後のフィールド酸化膜(160)のアニーリング工程によって最終形成され得る。また、P型ガードリング(150)の下部表面は、P型低濃度ドーピング領域(130)の下部表面よりも深く形成され得る。
【0047】
フィールド酸化膜(160)は、エピタキシャル層(120)上に熱酸化及びエッチング工程によって形成される。フィールド酸化膜(160)は、P型ガードリング(150)及び前記P型高濃度ドーピング領域(140)の一部上に形成され得る。
【0048】
アノード電極(180)は、前記P型高濃度ドーピング領域(140)及び前記フィールド酸化膜(160)の一部と重畳するように形成され得る。また、P型低濃度ドーピング領域(130)は、前記アノード電極(180)と重畳されるように形成され得る。
【0049】
パッシベーション膜(170)は、フィールド酸化膜(160)、ドリフト層(122)、及びアノード電極(180)の一部を覆うように形成され得る。パッシベーション膜(170)は、フィールド酸化膜(160)及びアノード電極(180)の上面及び側面の一部と接触するように形成され得る。
【0050】
カソード電極(190)は、基板(110)の下部に形成され得る。例えば、カソード電極(190)は、基板(110)の下部を研削した後に、前記研削された基板(110)の下部に金属物質を蒸着させた後、パターニングすることによって形成され得る。
【0051】
上述の本発明の一実施例によるファストリカバリダイオード(100)は、正孔キャリア(hole carrier)の数を減らすために、Pウエル領域を形成するために注入されるドーズ量を減少させ、P型低濃度ドーピング領域(130)を形成する。一方、P型高濃度ドーピング領域(140)は、アノード電極(180)とのオーミックコンタクト(ohmic contact)を保証するために、P型低濃度ドーピング領域(130)上に形成される。
【0052】
本発明によれば、正孔キャリアの数が減少するにつれて、前記電子ビームの吸収線量(kGy)が電子ビーム照射工程の間減少する。前記電子ビーム照射工程は、キャリアライフタイム(carrier life time)を減少させる工程であるので、キャリア寿命が短縮される。また、ヘリウム照射工程時にヘリウム濃度を減少させることにより、基板(110)及びエピタキシャル層(120)内の結晶欠陥の領域が減少する。これにより、高電圧で発生する漏れ電流を減少させることが可能である。
【0053】
ヘリウム照射工程を実施した後に、ドリフト層(122)内にヘリウム照射欠陥層(302)が生成される。また、本発明は、ファストリカバリダイオードのターンオン損失(Eon:turn-on switching energy)、逆回復時間(Trr)、及び最大逆回復電流(Irr)の特性が低下することなく、従来のファストリカバリダイオードと類似に特性を維持することが可能である。
【0054】
図2は、本発明の実施例によるファストリカバリダイオードのアノードからカソードまでの深さ(depth)によるP型領域及びN型領域のドーピング濃度の変化を示したグラフであり、図3a及び図3bは、従来技術及び本発明の実施例によるファストリカバリダイオードの構造を比較して示す断面図であり、図4aは、従来技術及び本発明の実施例による電子ビーム照射時に注入される吸収線量を比較して示すグラフであり、図4bは、従来技術及び本発明の実施例によるヘリウム照射時に注入されるヘリウム濃度を比較して示すグラフであり、図5aは、従来技術及び本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードの特性を比較して示すグラフであり、図5bは、従来技術及び本発明の実施例による漏れ電流の値を比較して示すグラフである。
【0055】
先ず、図2を参照すると、本発明の実施例によるファストリカバリダイオードは、深さ(depth)によってドーピング濃度(doping concentration)が変化する。例えば、アノード電極(anode electrode)上に配置されたP型高濃度ドーピング領域(P+)及びP型低濃度ドーピング領域(P-)は、カソード電極(cathode electrode)の方向にいくにつれて濃度が徐々に減少し、ドリフト層(drift layer)は均一な濃度を有し、バッファ層(buffer layer)及び基板は、カソード電極(cathode electrode)の方向にいくにつれて濃度が徐々に増加し得る。一方、電子ビーム照射(e-beam irradiation)によって、ファストリカバリダイオードのアノードからカソード領域まで結晶欠陥(crystal defect)が発生し得り、ヘリウム照射(helium irradiation)によってドリフト層に結晶欠陥が発生し得る。
【0056】
しかし、本発明は、電子ビーム照射の吸収線量及びヘリウム照射の濃度を調節することによって、基板及びエピタキシャル層内に生成される結晶欠陥(crystal defect)の数を減少(最少化)させ得る。
【0057】
図3a及び図3bを参照すると、従来技術と本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードとを比較して、本発明は、Pウエル(P+)領域の厚み(深さ)が薄くなっていることが分かる。これは、Pウェル(P+)領域及びオーミックコンタクトを一度に形成するためにエピタキシャル層にP型高濃度ドーピング領域を形成する従来の構造とは異なり、本発明は、P型低濃度ドーピング領域(P-)を形成し、アノード電極と接触する部位にP型高濃度ドーピング領域(P+)を追加する構造を有するためである。即ち、本発明は、従来技術に比べて、P型高濃度ドーピング領域が減少し、Pウエル(P+)領域の厚み(depth)が薄くなり、正孔キャリア(hole carrier)の数も減少し得る。
【0058】
従来技術によるファストリカバリダイオードのPウエル(P+)領域は、本発明の実施例によるファストリカバリダイオードのPウエル(P+)領域よりも高濃度のP型ドーピングで形成される。
【0059】
一方、図3aの符号301の従来技術によるヘリウム照射欠陥層及び符号302の本発明の一実施例によるヘリウム照射欠陥層は、従来技術に比べて本発明のヘリウム照射欠陥層の深さが減少していることを表すために示した。これは、正孔キャリアの数が減少するに伴い、正孔キャリア寿命(life time)を減殺するためのヘリウム照射の濃度及び電子ビーム照射の吸収線量を減らして工程を実施した結果である。ここで、前記図3aの符号301及び302は、ヘリウム照射の濃度が減少することを示すためのもので、実際の構成とは相違し得る。ヘリウム照射の注入工程は、エピタキシャル層の上面を基準に約15~30μm内にヘリウムによる結晶欠陥が生成されるように注入する工程である。これによって、ヘリウム照射欠陥層内にヘリウムが存在し得る。
【0060】
図4aのグラフは、本発明と従来技術の電子ビーム照射の吸収線量(kGy)の差を示し、図4bのグラフは、ヘリウム照射の濃度の差を示すものである。図4a及び図4bを参考にすると、本発明の電子ビーム照射の吸収線量は、従来技術に比べて最大値を基準に約30%減少しており、ヘリウム照射の濃度は、最大値を基準に70%程度減少していることが確認できる。
【0061】
図5aを参照すると、本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードは、従来技術のファストリカバリダイオードと類似の特性を有することが分かる。例えば、符号410は、本発明の逆回復電流値のグラフであり、420は、従来技術の逆回復電流値のグラフである。410と420のグラフを比較すると、逆回復電流(Irr;reverse recovery current)の変化が類似であることが分かる。一方、符号430は、本発明の逆回復電荷値のグラフであり、符号440は、従来技術の逆回復電荷値のグラフである。符号430と440とを比較すると、逆回復電荷(Qrr;reverse recovery charge)の変化が類似であることが分かる。
【0062】
逆回復電荷(Qrr)は、内部ダイオードの逆回復電流が消滅するために必要な電荷量を意味する。
【0063】
本発明は、ターンオン損失(Eon)、逆回復時間(Trr)、逆回復電荷(Qrr)及び最大逆回復電流(Irr)の特性が、従来技術と類似に維持されることが分かる。一方、本発明は、従来技術に比べて欠陥(defect)の数が減少するため、高温での漏れ電流を減少させる効果を有する。例えば、本発明のファストリカバリダイオードは、パワー素子である絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)素子のスイッチング時に動作するが、動作時に発生する漏れ電流は、従来技術よりも約4~5倍減少する特徴を有する。例えば、摂氏25~150℃での動作時における従来技術及び本発明の漏れ電流を示した図5bのグラフを参考にすると、本発明の漏れ電流量は、従来技術よりも最大で4~5倍減少することが確認できる。
【0064】
図6は、本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードの製造方法を示すフローチャートである。
【0065】
図6を参照すると、本発明の一実施例によるファストリカバリダイオードの製造方法は、基板上にエピタキシャル層を形成するステップ(S10)、前記エピタキシャル層の一部領域にP型イオンを注入してP型ガードリングを形成するステップ(S20)、前記P型ガードリング上にフィールド酸化膜を形成するステップ(S30)、前記エピタキシャル層内にP型低濃度ドーピング領域を形成するステップ(S40)、前記P型低濃度ドーピング領域上にP型高濃度ドーピング領域を形成するステップ(S50)、前記P型高濃度ドーピング領域及び前記フィールド酸化膜の一部と重畳するようにアノード電極を形成するステップ(S60)、前記フィールド酸化膜及び前記アノード電極の上面の一部を覆うようにパッシベーション膜を形成するステップ(S70)、電子ビームを照射するステップ(S80)、ヘリウムを照射するステップ(S90)、及び前記基板の下部にカソード電極を形成するステップ(S100)を含み得る。
【0066】
前記エピタキシャル層を形成するステップ(S10)は、前記基板上にバッファ層を形成し、前記バッファ層上にドリフト層を形成するステップを含み得る。前記基板は、N型(N+)高濃度基板であってよく、バッファ層及びドリフト層は、N型(N-)低濃度バッファ層及びドリフト層であってよい。
【0067】
前記P型ガードリング上にフィールド酸化膜を形成するステップ(S30)は、熱酸化工程によってエピタキシャル層の上面に酸化膜を形成した後、前記酸化膜をパターニングしてガードリングの上部表面の一部を露出させるステップを含み得る。
【0068】
前記P型低濃度ドーピング領域を形成するステップ(S40)は、P型イオン注入及びアニーリングによって前記P型低濃度ドーピング領域を形成するステップを含み得る。例えば、フィールド酸化膜の上部にマスクを形成した後、前記P型低濃度ドーピング領域を形成する部分を除く残りの領域をパターニングした後にP型低濃度イオン注入工程を実施する。このように、本発明は、P型領域を低濃度で形成することによって、正孔キャリア(hole carrier)の数を減少させることが可能である。
【0069】
前記P型高濃度ドーピング領域を形成するステップ(S50)は、P型高濃度イオン注入及びアニーリングによって前記P型高濃度ドーピング領域を形成するステップを含み得る。このように、本発明は、アノード電極とP型低濃度ドーピング領域との間にP型高濃度ドーピング領域を形成することによって、抵抗の増加を防ぐことが可能である。
【0070】
前記アノード電極の上部にパッシベーション膜を形成するステップ(S70)は、さらに、フィールド酸化膜上にパッシベーション膜を形成するステップを含み得る。この場合、前記パッシベーション膜は、前記フィールド酸化膜及び前記アノード電極の上部及び側面と接触するように形成され得る。
【0071】
前記電子ビーム照射及びヘリウム照射を実行するステップ(S80、S90)は、高速スイッチング動作のために、正孔キャリア寿命(life time)を減殺する工程であり得る。前記S80ステップにおいて、電子ビームは、ファストリカバリダイオードの全領域に照射され得る。前記S90ステップにおいて、ヘリウム照射工程は、ファストリカバリダイオードのドリフト層付近に照射され得る。
【0072】
一方、本発明は、前記S40ステップにおいて正孔キャリアの数が減少したため、前記S80ステップ及びS90ステップにおいて電子ビーム照射の吸収線量及びヘリウム照射の濃度が減少し得る。よって、本発明は、電子ビーム照射及びヘリウム照射によって基板及びエピタキシャル層内に生成される結晶欠陥(crystal defect)の数を減少させる効果を奏し、欠陥の減少に伴って高温での漏れ電流の減少をもたらす効果を奏する。よって、本発明は、従来技術に比べて信頼性が保証される領域(例:温度範囲)を確保し得る。
【0073】
一方、前記イオン注入工程における前記P型低濃度ドーピング領域と前記P型高濃度ドーピング領域との濃度比は、1:2~1:20程度で形成され、濃度比はアニーリング及びその後の工程による拡散に応じて値が異なり得る。
【0074】
以上のように、本発明の図示された実施例を参考にして説明したが、これは例示的なものに過ぎず、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者であれば、本発明の要旨及び範囲を逸脱することなく、多様な変形、変更及び均等な他の実施例が可能であることが明らかになった。よって、本発明の真正な技術的保護範囲は、添付の請求の範囲の技術的な思想によって定められるべきである。
【符号の説明】
【0075】
100:ファストリカバリダイオード
110:基板
120:エピタキシャル層
130:P型低濃度ドーピング領域
140:P型高濃度ドーピング領域
150:P型ガードリング
160:フィールド酸化膜
170:パッシベーション膜
180:アノード電極
190:カソード電極

図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b
図5a
図5b
図6