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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127791
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】焼成炉
(51)【国際特許分類】
   F27D 9/00 20060101AFI20240912BHJP
   F27B 17/00 20060101ALI20240912BHJP
   A61C 5/77 20170101ALI20240912BHJP
   A61C 13/083 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
F27D9/00
F27B17/00 C
A61C5/77
A61C13/083
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024024187
(22)【出願日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2023035863
(32)【優先日】2023-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】星野 晃佑
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一雄
(72)【発明者】
【氏名】新井 祈
(72)【発明者】
【氏名】滝原 悠世
【テーマコード(参考)】
4C159
4K063
【Fターム(参考)】
4C159RR15
4C159RR19
4C159SS01
4C159TT02
4K063AA06
4K063BA04
4K063CA06
4K063EA05
4K063EA10
(57)【要約】
【課題】被焼成物を炉内から遠ざけて冷却を行うことで冷却時間を早める。
【解決手段】下方に開口した開口部を有する焼成ユニット40と、焼成ユニット40内で焼成される被焼成物2bを載置する炉床2と、焼成ユニット40内部を加熱する加熱手段11と、炉床2を移動させる駆動手段10と、炉床2を冷却する冷却ファン20とを備え、加熱手段11による被焼成物の加熱動作の終了後に、駆動手段10により焼成ユニット40内から取り出された炉床2および被焼成物を、冷却ファン20による風を当てることで冷却することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下方に開口した開口部を有する焼成ユニットと、
前記焼成ユニット内で焼成される被焼成物を載置する炉床と、
前記焼成ユニット内部を加熱する加熱手段と、
前記炉床を移動させる駆動手段と、
前記炉床を冷却する冷却ファンと
を備え、
前記加熱手段による前記被焼成物の加熱動作の終了後に、前記駆動手段により前記焼成ユニット内から取り出された前記炉床および前記被焼成物を、前記冷却ファンによる風を当てることで冷却することを特徴とする焼成炉。
【請求項2】
前記冷却ファンは、前記開口部の下方の空間に向けて風を排気するように配置され、
前記冷却ファンから排気される風が、前記空間において下方に向けて排気されるように方向を変更するルーバーを有することを特徴とする請求項1に記載の焼成炉。
【請求項3】
前記風が、前記空間の底面に向けて吹き出すように前記ルーバーが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の焼成炉。
【請求項4】
前記冷却ファンは、前記開口部の下方の空間に向けて風を排気するよう、前記空間の左右にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の焼成炉。
【請求項5】
前記冷却ファン同士が前後にずれて配置されていることを特徴とする請求項4に記載の焼成炉。
【請求項6】
ヒンジを中心として縦開きに回動して前記空間を開閉する扉と、
前記扉をロックするロック手段または扉の開閉を制御するダンパ機構の少なくとも一方と
を有し、
前記冷却ファンのうち装置背面側に配置された第1の冷却ファンは、前記ロック手段または前記ダンパ機構に背面側で対向する位置に配置されたことを特徴とする請求項5に記載の焼成炉。
【請求項7】
前記駆動手段は、前記炉床を前記開口部から下方に向けて鉛直に移動させたのち、装置前面側に向けてせり出すように下方に移動させ、
前記第1の冷却ファンは、下方に向けて鉛直に移動する前記炉床と装置の幅方向で対向する位置に配置され、前記第1の冷却ファンの他方の冷却ファンである第2の冷却ファンは、装置前面側に向けてせり出すように下方に移動される前記炉床と装置の幅方向で対向する位置に配置されたことを特徴とする請求項6に記載の焼成炉。
【請求項8】
前記冷却ファンは、前記炉床の移動に追従して移動することを特徴とする請求項1に記載の焼成炉。
【請求項9】
前記冷却ファンは、前記炉床の移動に追従して前記炉床に風を吹き出すように首振り動作を行うことを特徴とする請求項1に記載の焼成炉。
【請求項10】
前記冷却ファンは前記炉床に固定され、前記炉床とともに前記駆動手段により移動されながら前記炉床および前記被焼成物を冷却することを特徴とする請求項1に記載の焼成炉。
【請求項11】
前記炉床は前記駆動手段により下方に移動したのちに前面側に移動され、
前記冷却ファンは、前記開口部の下方の空間に向けて風を背面側から排気するように配置されたことを特徴とする請求項1に記載の焼成炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱により対象物の焼結を行う焼成炉、特に補綴物などを焼成する歯科用焼成炉に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、焼成装置において、被焼成物を焼成後に冷却する工程では炉外に出すことなく炉内にて冷却を行うものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3291014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、炉内で被焼成物の冷却を行っているため、冷却を高速で行うことができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の焼成炉は、
下方に開口した開口部を有する焼成ユニットと、
前記焼成ユニット内部で焼成される被焼成物を載置する炉床と、
前記焼成ユニット内部を加熱する加熱手段と、
前記炉床を移動させる駆動手段と、
前記炉床を冷却する冷却ファンと
を備え、
前記加熱手段による前記被焼成物の加熱動作の終了後に、前記駆動手段により前記焼成ユニット内から取り出された前記炉床および前記被焼成物を、前記冷却ファンによる風を当てることで冷却することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、被焼成物を炉内から遠ざけて冷却を行うことで冷却時間を早めることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1実施形態に係る焼成炉の斜視図
図2】本発明の第1実施形態に係る焼成炉の右断面図
図3】本発明の第1実施形態に係る焼成炉の左断面図
図4】本発明の第2実施形態における概略断面図
図5】本発明の第3実施形態における概略断面図
図6】本発明の第4実施形態における概略断面図
図7】本発明の第1実施形態における冷却ファン説明図
図8】本発明の第1実施形態におけるファンからの気流説明図
図9】本発明の第5実施形態における概略断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0009】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態に係る焼成炉の一例である歯科用焼成炉100について、図1から図5を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る歯科用焼成炉100の外観斜視図である。
【0010】
歯科用焼成炉100は図1に示すように、被焼成物を収容して焼成する焼成ユニット40(後述)と、その下方に設けられた冷却空間3を外装カバー101内に有しており、冷却空間3の手前にはヒンジを中心として縦開きに回動して冷却空間3を開閉する安全扉102が設けられている。被焼成物は、冷却空間3と焼成ユニット40との間を昇降可能に設けられた炉床2に載置される。冷却空間3の左右には冷却ファン20が設けられており、焼成後に冷却空間3に炉床2を下降させ、冷却することが可能になっている。なお、図1においては、冷却ファン20を図示するために省略しているが、本実施形態においては、冷却ファン20に対向する位置にルーバーを設けており(図7参照)、詳しくは後述する。
【0011】
図2には本実施形態に係る焼成炉の右断面図を示しおり、図3には左断面図を示している。焼成ユニット40の支持部材としてのフレーム1と、それぞれフレーム1に支持された移動手段としてのカム機構10と、被焼成物2bを焼成後に冷却する冷却ファン20と、電装ユニット30と、断熱材2aを備えた焼成ユニット40とを収容している。安全扉102を開けて被焼成物2bの出し入れが可能となっている。
【0012】
焼成ユニット40はフレーム1の面に支持されており、上下方向に移動可能な炉床2に載置された被焼成物2bをその内部に収容した状態で加熱手段によって加熱して焼成を行う。なお、加熱手段として本実施形態では二珪化モリブデンヒータが用いられているが、これに限られず、炭化ケイ素からなるヒータや、誘導加熱用のコイル、あるいは誘電加熱用のマグネトロンなどを用いることが可能である。焼成ユニット40内部に被焼成物2bを収容し最高温度として約1600度で焼成を行う。
【0013】
カム機構10は、フレーム1に支持されており、カム機構が有するカム溝12に係合した炉床2及びそれに載置される被焼成物2bを、焼成ユニット40内と冷却空間3との間で移動可能である。カム機構10は、モーター11とZ軸方向に延在して配置されているベルト13とプーリー、位置固定用のブレーキ15、昇降時のブレを矯正するガイド14を有しており、モーター11の駆動によりベルト13を回転させることでベルト13に接続している炉床2を鉛直方向に往復移動(昇降)させることができる。
【0014】
また、カム機構10が有するカム溝12は、その上方(第1の領域)においては、炉床2を歯科用焼成炉100の載置面対し垂直に(鉛直に)移動させるべく、載置面の法線方向(上下方向)に延びており、その下方(第2の領域)においては、装置の前方に向かって傾斜するように延びている。具体的には炉床2を下降させていったときに、炉床2および被焼成物2bが焼成ユニット40から完全に露出する位置から、さらに下降させたときに炉床2が前方に移動するように、カム溝12が上下方向から45度傾斜して延びている。このカム溝12に、炉床2と連結した部材を挿通させつつ上下に移動させることで、炉床2が焼成ユニット40内から下方向に一定距離進むと45度の角度で降下しながら作業者側へ移動する。本実施形態においては、最下点で後述の冷却ファン20による冷却を行う。
【0015】
冷却ファン20は、フレーム1に支持されており、炉床2が降下した際に炉床2に風を吹き付けることで被焼成物2bの温度を下げる。
【0016】
電装ユニット30は、フレーム1に支持されている。焼成ユニット40の加熱手段を動作させる電源と歯科用焼成炉100の制御基板などを備えている。
【0017】
図1に示すとおり、本実施形態に係る歯科用焼成炉100はその冷却空間3の左右に冷却ファン20を有しており、すなわち、焼成後の被焼成物2bの冷却手段を有している。以下、その冷却方法について説明する。
【0018】
図2に示すように、底部に設けられた開口部により開放されている焼成ユニット40の下部には冷却空間3が設けられており、焼成ユニット40の開口部は炉床2により閉鎖することが出来る。上述した通り、炉床2はフレーム1に支持されているカム溝12に従い、降下時は焼成ユニット40から下方向への移動後に作業者側へ45度の角度でせり出す。
【0019】
炉床2には熱対策のための断熱材2aを載置し、断熱材2aの上部に被焼成物2bを載置する。なお、図2においては、断熱材2aが2段構成のものを示しており、その上部に被焼成物2bを載置している。炉床2は上昇時にはカム溝12に従い上昇し、閉鎖位置で焼成ユニット40を閉じる。密閉した焼成ユニット40で熱処理を終了した後、炉床2がカム溝12に従い下降する。
【0020】
下降した炉床2、断熱材2a、被焼成物2bは、最下点における被焼成物2bの位置に対応して配置された冷却ファン20から風を吹き付けられ高速で冷却することが可能となり、全体の作業時間を短縮することが出来る。また、冷却が完了するまでの間は安全扉102を開けることが出来ないようになっているため熱風が直接作業者に当たることはない。
【0021】
なお、本実施形態においては、冷却ファン20が歯科用焼成炉100における冷却空間3の左右に配置され、また、前後方向にずれて配置されている。この左右の冷却ファン20は装置外から吸気し、いずれも被焼成物2bに吹き付ける向きで配置されている。
【0022】
ここで、冷却ファン20について詳細に説明する。図7(a)に示すように左右の冷却ファン20の吸気側、排気側にはそれぞれに対応するルーバー80が計4つ配置されており、吸気側には吸気ルーバー80a、排気側には排気ルーバー80bがそれぞれの冷却ファン20に対して1つずつ配置されている。この吸気ルーバー80aは上方向に向いており、外からの防塵、防滴対策になっている。排気ルーバー80bは下側に向いて設けられており、排気ルーバー80bから吹き出された風の方向が、冷却空間3の底面における炉床2と側壁3bとの間に吹き出す向きに変更されるようにルーバーの角度が設定されている。図7(b)を用いて詳しく説明する。
【0023】
図7(b)には、排気ルーバー80b周辺の拡大断面図を示している。なお、以下の説明に用いない構成は省略して図示している。本実施形態においては、排気ルーバー80bは冷却ファン20に対向して冷却空間3の側壁3bに対し上下に6つ並設されている。排気ルーバー80bの排気角度を決定する庇部80cは、6つのルーバー全てで同じ角度θに設定されている。
【0024】
この場合、最上段の排気ルーバー80bの庇部80cの先端部の延長線が冷却空間3の底面3aにおける炉床2と側壁3bとの間の部分に対し交差するように設定されている。図7(b)において、庇部80cの先端部の延長線と底面3aとの交点を点Aで示しており、概ね炉床2(端部)と側壁3bとの中点あたりに設定されている。
【0025】
最上段のルーバー以外のルーバーから排気された冷却風は点Aよりも側壁3b側に到達し、その後、冷却風全体として炉床2側に向かって流れる。この冷却風は、反対側に設けられた排気ルーバー80bからも同様に流れ込んでおり、排気ルーバー80b同士は上述した通り前後にずらして配置しているため、炉床2付近で冷却風同士がぶつかる、もしくは渦をなすように流れ、そのまま上昇あるいは背面側に向けて流れる。その結果、被焼成物2bに直接風を当てることで落下させてしまうのを防ぎつつ、冷却風が下方から流れることで炉床2の上部に載置された被焼成物2bを冷却している。
【0026】
このように、冷却風は排気ルーバー80bの向きに沿って冷却空間3内に排気され、被焼成物2bに直接当たることなく冷却した後に、冷却空間3の奥に向けて通過し、その他の冷却風とともに図8に示す背面の通気口90から抜けていく構造になっている。
【0027】
なお、上記説明においては、すべての排気ルーバー80bの庇部80cが同じ角度θで設けられている態様について説明したがこれに限られず、いくつかのルーバーが異なる角度で設けられてもよい。その場合、庇部80cの先端の延長線が、もっとも炉床2側に位置するルーバーの角度θ1が、冷却風が炉床2に直接当たらずに底面2aに向くように設定されていればよい。
【0028】
以上説明したことを換言すると、冷却ファン20から吹き出された冷却風の吹き出し方向が、排気ルーバー80bにより下向きに変更され、炉床2に載置された被焼成物2bに対し直接当たらないようになっている。更に言えば、排気ルーバー80bによって吹き出し方向が変更された冷却風が、冷却空間3における底面に向くことで、炉床2に直接吹き付けないようになっていることで、被焼成物2bに直接冷却風を当てることで落下させてしまうことを防ぎつつ、効果的に冷却することができる。
【0029】
また、一方の冷却ファン20が装置外からの吸気、他方の冷却ファン20が装置内からの排気を行う向きで配置していてもよい。従って、安全扉102が冷却完了前に開放可能だったとしても、作業者側には熱風が届きにくくなっており、また、作業者に近い側の冷却ファン20(図1においては右側の冷却ファン20)が吸気、作業者から遠い側の冷却ファン20(図1においては左側の冷却ファン20)が排気を行うように配置されている。従って、冷却空間3においては、作業者側から離れる方向の気流が発生しており、熱風が作業者から離れる方向に流れるため、より安全である。
【0030】
また、冷却ファン20の位置は被焼成物2bに対応する位置として、図1では歯科用焼成炉100の左右の位置に配置してあるが、被焼成物2bに冷却ファン20の風を吹き付けることができれば、歯科用焼成炉100の背面側に配置していてもよい。
【0031】
特に、本実施形態のように炉床2が前後方向に移動しながら上下する構成においては、装置の背面側に冷却ファン20を配置することで、炉床2が前後に移動したとしても冷却ファン20からの冷却風と炉床2の移動方向を一致させ、常時冷却風を効果的に当てることができ、冷却効果を向上することができる。
【0032】
なお、冷却ファン20を背面側にのみ配置した場合には、熱風が前方に向かって流れ出る。この場合、本実施形態のように安全扉102をヒンジを中心として縦開きに回動して開閉するように構成し、安全扉102を例えば5度程回動させて開放する時点で一度回動させるための負荷が減少してから、あるいはそのまま負荷が増加するように構成することが好ましい。この構成によれば、5度程回動させた時点で安全扉102が一度停止しやすくなり、その時点で上方に向けて熱風が排出されやすくなるため、その位置において効果的に冷却空間3内の熱風が排出されて温度低下を促すとともに、作業者に対して熱風が吹き出すことを注意喚起することが可能となり、安全性を向上させることができる。
【0033】
なお、これらは冷却ファン20を左右に配置した場合に実施しても同様の効果を発揮することができ、好適である。
【0034】
また、いずれの場合であっても、炉床2を前後にせり出さずに上下させるように構成してもよい。
【0035】
<第2実施形態>
次に本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態の構成は基本的には第1実施形態と同様である。そこで以下の説明において同様の箇所においては同じ符号を用いるともに説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0036】
本実施形態は炉床2の昇降に合わせて(連動して)、冷却ファンも昇降を行う方式である。図4には、本実施形態に係る歯科用焼成炉100の要部の模式図を示している。図4には、被焼成物2bが炉床2とともに下降し、焼成ユニット40から完全に露出した位置から完全に降下した位置(最下点)に移動するまで冷却ファン50が追尾して冷却することを示している。被焼成物2bが最下点まで降下したら冷却ファン50もその地点で停止し、冷却を続ける。本実施形態において冷却ファン50の移動手段は炉床2の移動手段からは独立しており、フレーム1に支持されているモーター51とベルト53で冷却ファン50を昇降させている。冷却ファン50はベルト53に固定されており、ガイド54で風向の固定を行っている。
【0037】
本実施形態においては、下降しつつ歯科用焼成炉100の前面側に移動する炉床2に対し、背面側から冷却風を当てることにより、炉床2が前面側に移動したとしても、確実に冷却風を当て続けることができる。
【0038】
なお、第1実施形態と同様に冷却ファン50の位置は、歯科用焼成炉100の左右、正面のどちらに配置していてもよいが、上述した通り、背面側に冷却ファン50を配置することで、確実に冷却風を当て続けることができるため、より好適である。
【0039】
<第3実施形態>
次に本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態の構成は基本的には第1実施形態と同様である。そこで以下の説明において同様の箇所においては同じ符号を用いるともに説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0040】
本実施形態は冷却ファン自体は昇降を行わず、昇降する被焼成物2bの位置に風を吹き付け続けるように、首振り動作によって冷却ファンの向きのみを変更する方式である。図5には、本実施形態に係る歯科用焼成炉100の要部の模式図を示している。図5に示すように、被焼成物2bが焼成ユニット40から完全に露出した位置である最上点から最下点まで風を当て続けられる位置に冷却ファン60をセットして固定する。この冷却ファン60の向きを炉床2の移動に追従するように変更する首振り動作は、炉床2を昇降させる昇降位置に応じて制御基板によって向きを変更するよう制御される。
【0041】
<第4実施形態>
次に本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態の構成は基本的には第2実施形態と同様である。そこで以下の説明において同様の箇所においては同じ符号を用いるともに説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0042】
第2実施形態と同様に冷却ファンが被焼成物2bを追尾して冷却を行う方式であるが、炉床2と冷却ファンが別々に駆動しているのではなく、同一の移動手段によって移動される構成となっている。図6には、本実施形態に係る歯科用焼成炉100の要部の模式図を示している。図6に示すように、冷却ファン70が炉床2に固定されており、炉床2をモーター11で昇降させることによって炉床2とともに冷却ファン70が移動されるようになっている。
【0043】
本実施形態においては、炉床2が焼成ユニット40の内部に少なくともその一部が収容された状態においては冷却ファン70を停止してもよい。また、この場合、図6に示すように炉床2の背面側に冷却ファン70を配置することが好ましいが、必ずしもこれに限られず、左右に設けた冷却ファン70の両方、あるいは一方のみが炉床2の昇降に連動して昇降するように構成してもよい。
【0044】
以上説明した各実施形態は本発明の実施の形態の一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、その一部を変更あるいは各実施形態を組み合わせて利用することが可能である。
【0045】
例えば、上記実施形態において冷却ファンが左右に配置されたものにおいては、その一方のみを設けてもよいし、左右の冷却ファンとして性能が異なるものを用いてもよい。
【0046】
また、上記実施形態において冷却ファンが左右に配置されたものにおいて、左右の冷却ファン両方が冷却空間3への吸気になっていてもよい。この場合であっても、装置に設けられた隙間などから熱気を排出することが可能であり、また、上述したように安全扉102を5度程開放した際に上方に排出される熱風を増加させることができ、冷却効率を向上させることが可能である。
【0047】
また、上記実施形態においては冷却ファンを1つあるいは2つ配置するものを例示したが、本発明はこれに限られず、3つ以上の冷却ファンを設けてもよい。その場合、いずれか1つあるいは2つの冷却ファンが上述した各実施形態に記載の冷却ファンの構成を有していれば十分である。
【0048】
また、上記実施形態においては、2段構成とされた断熱材2aのうちの上段のさらに上に被焼成物2を載置する態様について説明したが、本発明はこれに限られず、例えば上段側の断熱材2aの内部に被焼成物2bを収容可能に構成しも良いし、さらにその上部に蓋を設けるなどしてもよい。いずれの場合であっても、温度が上昇している断熱材2aを周囲から冷却することにより、冷却時間の短縮が可能となる。
【0049】
<第5実施形態>
次に本発明の第5実施形態について図9を用いて説明する。本実施形態の構成は基本的には第1実施形態と同様である。そこで以下の説明において同様の箇所においては同じ符号を用いるともに説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
【0050】
本実施形態は第1実施形態と同様に冷却ファン20を左右に有し、前後方向にずれて配置されたものであるが、排気ルーバー80bを下向きに設け、吹き出される風を炉床2側に向け、炉床2と被焼成物2bの冷却速度を高めるだけでなく、同時に、炉床2が降下することにより焼成ユニット40の加熱手段の下部が露出することで放出される輻射熱から冷却ファン20を保護している。
【0051】
また、左右の冷却ファン20は炉床2と被焼成物2bとがカム溝12に沿って通過するルートに沿うようにそれぞれ配置されており、常に冷却ファン20の冷却風が炉床2及び被焼成物2bに当たり続けるようになっている。
【0052】
また、図7に示す左側の排気ルーバー80bの位置は、図9に示すようにカム溝12が載置面の法線方向に延在する部分に装置前側で隣接する位置、すなわちカム溝12がその下方で作業者側へ45度の角度でせり出している部分よりも上部側に配置されていると同時に、図9で示すように扉をロックする電磁ロック110と扉の開閉を制御するソフトダウンステー111にその背面側で対向してそれらをその背面側に避けて配置されており、右側の排気ルーバー80aは、カム溝12がその下方で作業者側にせり出している部分と装置前後方向で重なる位置で電磁ロック110とソフトダウンステー111の少なくとも一方と装置の幅方向で重なる位置に配置される(本実施形態ではソフトダウンステー111と重なる)ことで、上述したような左右の冷却ファン20が全体として炉床2と被焼成物2bとがカム溝12に沿って通過するルートに沿うような配置が実現され、かつ装置前後方向の省スペース化が図れている。また、上述したように排気ルーバー80を取り付けることで冷却空間3側からは冷却ファン20が視認できないようになっている。そのため炉床2の熱が冷却ファン50に熱影響を与えるより先に冷却風を当て、冷却することが可能となっている。
【0053】
なお、本実施形態においては第1実施形態と同様に、左右の冷却ファン20の位置は、電磁ロック110の配置されている位置に合わせ左右の上下位置、前後位置を変更してもよい。
【0054】
また、電磁ロック110は扉をロックするロック手段の一例であり、他の方式で扉をロックしてもよい。ソフトダウンステー111も扉の開閉を制御するダンパ機構の一例であり、他の方式で扉の開閉を制御(ダンパ機能を発揮)してもよい。さらに、ロック手段、ダンパ機構のうちの一方、あるいは両方を設けなくてもよい。少なくとも一方を設ける場合には、上述したように、装置後ろ側に配置される方の冷却ファンの前側にロック手段あるいはダンパ機構が配置される。
【符号の説明】
【0055】
1 支持部材フレーム
2 炉床
2a 断熱材
2b 被焼成物
3 冷却空間
3a 底面
3b 側壁
10 カム機構
11 モーター
12 カム溝
13 ベルト
14 リニアガイド
15 ブレーキ
20 冷却ファン
30 電装ユニット
40 焼成ユニット
100 歯科用焼成炉
101 外装カバー
102 安全扉

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9