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特開2024-127798ポリヒドロキシアルカン酸フィルム、包装体、農林水産業資材、生分解方法、農林水産素材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127798
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ポリヒドロキシアルカン酸フィルム、包装体、農林水産業資材、生分解方法、農林水産素材
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240912BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20240912BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08J5/18 CFD
B32B27/36
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024027174
(22)【出願日】2024-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2023036330
(32)【優先日】2023-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023036331
(32)【優先日】2023-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023036332
(32)【優先日】2023-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023036333
(32)【優先日】2023-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023036334
(32)【優先日】2023-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】今西 康之
(72)【発明者】
【氏名】坂本 光隆
(72)【発明者】
【氏名】巽 規行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 渉
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC07
3E086AD01
3E086AD05
3E086BA04
3E086BA13
3E086BA15
3E086BB02
3E086BB05
3E086BB85
3E086BB90
4F071AA43
4F071AC05
4F071AC12
4F071AE22
4F071AF06Y
4F071AF14Y
4F071AF15Y
4F071AF21Y
4F071AF31Y
4F071AF61Y
4F071AG17
4F071AG28
4F071AH01
4F071AH04
4F071BB06
4F071BB08
4F071BC01
4F071BC12
4F100AB10B
4F100AK41A
4F100AR00B
4F100BA02
4F100EH66B
4F100GB01
4F100GB04
4F100GB15
4F100JA03A
4F100JA04A
4F100JA07A
4F100JA11A
4F100JC00
4F100JD04B
4F100JK01A
4F100JK08A
4F100JN18A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】本発明は、生分解性を有しながら、繰り返し屈曲させた後のピンホール発生個数を少なくできるポリヒドロキシアルカン酸フィルムを提供する。
【解決手段】突刺強度(厚み20μm換算値)が80gf以上である、ポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の測定装置および測定条件で求めた、突刺強度(厚み20μm換算値)が80gf以上である、ポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
測定装置: KATOTECH社製 HANDY-TYPE COMPRESSION TESTER KES-G5
(測定条件)
SENS:10
SPEED:0.20cm/秒
STROKE:20mm/10V
ニードル径:1.0mmφ
穴径:10.0mmφ
【請求項2】
主配向軸方向の破断強度をS1(MPa)、主配向軸方向と直交する方向の破断強度をS2(MPa)とした際に、S1、およびS2が式(1)、および式(2)を満たす、請求項1に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
30MPa≦S1≦280MPa・・・式(1)
30MPa≦S2≦280MPa・・・式(2)
【請求項3】
熱機械分析装置(TMA)で求められる熱収縮曲線において、フィルムの主配向軸方向の収縮開始温度T1(℃)、主配向軸方向と直交する方向の収縮開始温度T2(℃)がいずれも40℃以上150℃以下である、請求項1または2に記載に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
【請求項4】
主配向軸方向の波長1550nmにおける屈折率をN1、主配向軸方向と直交する方向の波長1550nmにおける屈折率をN2とした際に、N1、およびN2が式(3)を満たす、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
2.0×10-4≦|N1-N2|≦1.3×10-2・・・式(3)
【請求項5】
120℃15分間の加熱処理によって求められるフィルムの主配向軸方向の熱収縮率H1(%)、主配向軸方向と直交する方向の熱収縮率H2(%)がいずれも0%以上20%以下である、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
【請求項6】
主配向軸方向の破断伸度をL1(%)、主配向軸方向と直交する方向の破断伸度をL2(%)とした際に、L1、L2がいずれも10%以上350%以下である、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
【請求項7】
以下の測定装置および測定条件で求めた、突刺変位が2.0mm以上4.5mm以下である請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
測定装置: KATOTECH社製 HANDY-TYPE COMPRESSION TESTER KES-G5
(測定条件)
SENS:10
SPEED:0.20cm/秒
STROKE:20mm/10V
ニードル径:1.0mmφ
穴径:10.0mmφ
【請求項8】
主配向軸方向の波長1550nmにおける屈折率をN1、主配向軸方向と直交する方向の波長1550nmにおける屈折率をN2、厚み方向の波長1550nmにおける屈折率をNz、N1とN2の平均値をN12とした際に、式(4)を満たす、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
0.002≦(N12-Nz)≦0.015・・・式(4)
【請求項9】
CuKα線を用いた厚み方向の広角X線回折において、回折角2θが19°以上21°以下の範囲の配向度0.50以上のピークのうち最も強度の高いピークをPBとした際に、PBの半値幅から求めた結晶子サイズが5nm以上60nm以下である、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
【請求項10】
少なくとも片面にさらに機能層を有する請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
【請求項11】
包装用途に用いられる、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
【請求項12】
請求項1または2のポリヒドロキシアルカン酸フィルムを含む包装体。
【請求項13】
農林水産業用途に用いられる、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
【請求項14】
請求項1または2のポリヒドロキシアルカン酸フィルムを含む農林水産業資材。
【請求項15】
請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルムをコンポスト機材で分解する、生分解方法。
【請求項16】
請求項12に記載の包装体をコンポスト機材で分解する、生分解方法。
【請求項17】
請求項14に記載の農林水産業資材をコンポスト機材で分解する、生分解方法。
【請求項18】
農林水産素材の被覆に用いられるフィルムであって、前記農林水産素材が肥料、飼料、種苗、薬剤から選択される1種以上を含む、請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
【請求項19】
請求項1または2に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルムによって被覆されたことを特徴とする農林水産素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシアルカン酸フィルム、包装体、農林水産業資材、生分解方法、農林水産素材に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の抑制の観点から、世界各国でカーボンニュートラルの目標達成に向けた様々な取り組みが進められており、中でもプラスチック製品は製造や廃棄時に多くのCOを排出することから使用量、廃棄量の削減が求められている。包装用プラスチックは各種プラスチック製品の中でも特に使用量が多く、さらにその多くが使い捨てとなることから、フィルムをはじめとした包装用プラスチックの使用量、廃棄量の削減やリサイクル、植物由来材料への置き換えが求められている。
【0003】
また、近年では海洋に流入するプラスチックの環境汚染問題も注目されている。例えば、魚類、海鳥、海洋哺乳動物が海洋に漂流したプラスチック製品を誤って摂取し死亡する被害や、波や紫外線で微細化されたマイクロプラスチックが海洋中の食物連鎖で生体濃縮され、魚類などを摂食する人体への影響が指摘されている。これらの課題は、適切な方法で廃棄されなかった包装用プラスチック、ならびに農業用途で使用されるプラスチック資材が河川を経由して海洋に流入したり、漁業、養殖業で用いられた後に投棄されたプラスチック資材が海を漂流したりすることによって引き起こされる。そのため、包装用プラスチックや農林水産業資材用プラスチックが適切に廃棄されなかった場合に備え、プラスチックの生分解性機能付与も求められている。
【0004】
この様なプラスチックによる海洋汚染に対し、生分解性プラスチックの使用が期待されるが、国連環境計画が2015年に取り纏めた報告書では、ポリ乳酸などのコンポストで生分解可能なプラスチックは、温度が低い実海洋中では短期間での分解が期待できないために、海洋汚染の対策にはなりえないと指摘されている。この様な中、生分解性プラスチックの中でも、脂肪族ポリエステル樹脂が高い生分解性を有する点から、特にポリヒドロキシアルカン酸樹脂製のフィルムが注目され、包装材料用などへ適用検討がなされている。
【0005】
生分解性フィルムとしてポリ乳酸あるいはポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート共重合体、ポリヒドロキシアルカン酸などの樹脂をインフレーション法で製造した青果物の鮮度保持包装用シート状物の提案がされている(特許文献1)。また、生分解性フィルムとしてポリヒドロキシアルカン酸樹脂シートを当該シートの融点-25℃以上融点以下の温度領域で一次延伸として部分融解延伸させ次いで二次延伸する製造方法が提案されている(特許文献2)。さらにはポリヒドロキシアルカン酸フィルムとしてポリ(3-ヒドロキシブチレート)樹脂をブレンドし得られたシートをロール圧延することなく、フィルム製造工程における流れ方向(MD方向)及びそれと直交する方向(TD方向)へそれぞれ、延伸倍率1.1倍以上で、連続的に二軸延伸する製造方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-106249号公報
【特許文献2】特開2003-311825号公報
【特許文献3】特開2022-62759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1はインフレーション法で製造されるためポリヒドロキシアルカン酸樹脂の分子鎖伸張が不十分であり、更なる強度向上に改良の余地がある。特に特許文献1のフィルムは繰り返し屈曲させた後にはピンホールが多く発生し、内容物保護性が高く求められる用途に用いることは難しい。また特許文献2に記載のフィルムはいずれも二次延伸することで強度向上しているが、一軸方向への多段延伸であり強度向上が一方向に限定的であるため、延伸方向と直交する方向への強度を改良する余地がある。また、複数の向きに繰り返し屈曲させた後にはピンホールが多く発生する。特許文献3に記載のフィルムはポリヒドロキシアルカン酸フィルムを二軸延伸する製造方法であるが製膜時の面積延伸倍率が小さくポリヒドロキシアルカン酸樹脂の分子鎖伸張が不十分であり、更なる強度向上に改良の余地があった。
【0008】
そこで本発明は、生分解性を有しながら、繰り返し屈曲させた後のピンホール発生個数を少なくできるポリヒドロキシアルカン酸フィルムを提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を重ね、以下の本発明に至った。すなわち本発明の好ましい一態様は以下の通りである。
1.以下の測定装置および測定条件で求めた、突刺強度(厚み20μm換算値)が80gf以上である、ポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
測定装置: KATOTECH社製 HANDY-TYPE COMPRESSION TESTER KES-G5
(測定条件)
SENS:10
SPEED:0.20cm/秒
STROKE:20mm/10V
ニードル径:1.0mmφ
穴径:10.0mmφ
2.主配向軸方向の破断強度をS1(MPa)、主配向軸方向と直交する方向の破断強度をS2(MPa)とした際に、S1、およびS2が式(1)、および式(2)を満たす、1.に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
30MPa≦S1≦280MPa・・・式(1)
30MPa≦S2≦280MPa・・・式(2)
3.熱機械分析装置(TMA)で求められる熱収縮曲線において、フィルムの主配向軸方向の収縮開始温度T1(℃)、主配向軸方向と直交する方向の収縮開始温度T2(℃)がいずれも40℃以上150℃以下である、1.または2.に記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
4.主配向軸方向の波長1550nmにおける屈折率をN1、主配向軸方向と直交する方向の波長1550nmにおける屈折率をN2とした際に、N1、およびN2が式(3)を満たす、1.~3.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
2.0×10-4≦|N1-N2|≦1.3×10-2・・・式(3)
5.120℃15分間の加熱処理によって求められるフィルムの主配向軸方向の熱収縮率H1(%)、主配向軸方向と直交する方向の熱収縮率H2(%)がいずれも0%以上20%以下である、1.~4.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
6.主配向軸方向の破断伸度をL1(%)、主配向軸方向と直交する方向の破断伸度をL2(%)とした際に、L1、L2がいずれも10%以上350%以下である、1.~5.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
7.以下の測定装置および測定条件で求めた、突刺変位が2.0mm以上4.5mm以下である1.~6.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
測定装置: KATOTECH社製 HANDY-TYPE COMPRESSION TESTER KES-G5
(測定条件)
SENS:10
SPEED:0.20cm/秒
STROKE:20mm/10V
ニードル径:1.0mmφ
穴径:10.0mmφ
8.主配向軸方向の波長1550nmにおける屈折率をN1、主配向軸方向と直交する方向の波長1550nmにおける屈折率をN2、厚み方向の波長1550nmにおける屈折率をNz、N1とN2の平均値をN12とした際に、式(4)を満たす、1.~7.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
0.002≦(N12-Nz)≦0.015・・・式(4)
9.CuKα線を用いた厚み方向の広角X線回折において、回折角2θが19°以上21°以下の範囲の配向度0.50以上のピークのうち最も強度の高いピークをPBとした際に、PBの半値幅から求めた結晶子サイズが5nm以上60nm以下である、1.~8.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
10.少なくとも片面にさらに機能層を有する1.~9.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
11.包装用途に用いられる、1.~10.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
12.1.~11.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルムを含む包装体。
13.農林水産業用途に用いられる、1.~11.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
14.1.~11.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルムを含む農林水産業資材。
15.1.~11.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルムをコンポスト機材で分解する、生分解方法。
16.12.に記載の包装体をコンポスト機材で分解する、生分解方法。
17.14.に記載の農林水産業資材をコンポスト機材で分解する、生分解方法。
18.農林水産素材の被覆に用いられるフィルムであって、前記農林水産素材が肥料、飼料、種苗、薬剤から選択される1種以上を含む、1.~11.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルム。
19.1.~11.のいずれかに記載のポリヒドロキシアルカン酸フィルムによって被覆されたことを特徴とする農林水産素材。
【発明の効果】
【0010】
本発明により得られたポリヒドロキシアルカン酸フィルムは、生分解性を有しながら、繰り返し屈曲させた後のピンホール発生個数を少なくできる。それにより、内容物を十分に保護することができるため包装用途や農林水産用途に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】広角X線回析測定におけるX線源、試料、回折像の位置関係の概要を示す斜め俯瞰図である。
図2図1におけるA-B方向から見た際の図である。
図3図1におけるB-C方向から見た際の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムについて詳細に説明する。以下好ましい範囲について上限と下限が別々に記載されている場合、その組み合わせは任意とすることができる。また、本明細書において、以下ポリヒドロキシアルカン酸フィルムを単にフィルムと称する場合がある。また、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムにおいて、「厚み方向」とはフィルム面に垂直な方向をいう。「長手方向」とは、フィルム製造工程における流れ方向に対応する方向(以下、「MD」という場合がある。)であり、「幅方向」とは、前記のフィルム製造工程における流れ方向とフィルム面内で直交する方向(以下、「TD」という場合がある。)である。フィルムサンプルがリール、ロール等の形状の場合は、フィルム巻き取り方向が長手方向といえる。延伸方向(長手方向と幅方向)が不明である場合は、後述する引張試験で破断する破断強度を測定し、測定値の大きい方向を主配向軸方向とする。具体的には以下の方法により主配向軸方向を特定する。具体的には、フィルムを準備し、任意の方向を上に向けて、長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプル<1>とし、サンプル<1>の長辺の方向を0°と定義する。次に、長辺方向が0°方向から右に15°回転した方向となるように、同サイズのサンプル<2>を採取する。以下同様に、矩形のサンプルの長辺方向を15°ずつ回転させ、同様にサンプル<3>~<12>を採取する。次に、各矩形のサンプルを引張試験機(例えば、エー・アンド・デイ製“テンシロン万能試験機”RTG-1210)に、長辺方向が引っ張り方向となるように初期チャック間距離30mmでセットし、25±5℃、65±10%RHの温湿度の雰囲気下で引張速度を300mm/分として引張試験を行う。このときサンプルが破断するまでの最大荷重を読み取り、試験前の試料の断面積(フィルム厚み×幅)で除した値を破断強度として算出し、当該値が最大であったサンプルの長辺方向をポリヒドロキシアルカン酸フィルムの主配向軸とする。またこれにフィルム面内で直交する方向をポリヒドロキシアルカン酸フィルムの主配向軸方向と直交する方向とする。
【0013】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは突刺強度(厚み20μm換算値)が80gf以上であることが好ましい。突刺強度(厚み20μm換算値)を80gf以上とすることで、加工に適した強度を付与できポリヒドロキシアルカン酸フィルムの耐突刺性は十分高いものとなり耐ピンホール性に優れるため、例えば包装用途や農林水産用途として用いる際に内容物の保存性やバリア性を向上することができる。また、好ましくは突刺強度(厚み20μm換算値)を1500gf以下とすることで、加工に適した柔軟性を付与できポリヒドロキシアルカン酸フィルムの穴あけ加工性を両立しながら、耐ピンホール性にも優れるため、例えば包装用途や農林水産用途として用いる際に手切れ性付与などの打ち抜き加工が容易となる。上記観点から、突刺強度(厚み20μm換算値)は、より好ましくは150gf以上、さらに好ましくは200gf以上、特に好ましくは250gf以上である。また上記観点から、突刺強度(厚み20μm換算値)は、より好ましくは1500gf以下、さらに好ましくは1000gf以下、よりさらに好ましくは900gf以下、特に好ましくは850gf以下、最も好ましくは800gf以下である。なお、突刺強度(厚み20μm換算値)は実施例に記載の方法にて測定するものとする。
【0014】
上記のような範囲に突刺強度を制御する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、後述するように特定の結晶核剤を含むポリヒドロキシアルカン酸樹脂を用い、フィルムの製膜時にキャスティングドラム出口での速度に対する縦延伸入り口のフィルム搬送速度を調整し、かつ二軸延伸する方法が挙げられる。より具体的には、結晶核剤として脂肪酸アミド、尿素誘導体、ソルビトール系化合物、窒化ホウ素、脂肪酸塩、および芳香族脂肪酸塩より選ばれる1種以上を含むポリヒドロキシアルカン酸樹脂を用いることでフィルム中の結晶子サイズの小さい微細結晶を多く形成することができ、次いでキャスティングドラム出口と縦延伸入り口のフィルム搬送速度を制御することにより縦延伸後の分子鎖配列の秩序性を高められ適度な柔軟性と強度を付与することができる。さらに高倍率で延伸するほど絡まりにより隣接する分子鎖間の拘束力が向上し、さらに延伸後の熱処理により熱結晶化することで相乗効果を発揮し突刺強度を向上させ、耐ピンホール性に優れたフィルムを得ることが可能となる。より具体的には、製膜時にキャスティングドラム出口での速度に対しする縦延伸入り口のフィルム搬送速度を101%以上125%以下とし、逐次二軸法にて面倍率4倍以上に二軸延伸し、二軸延伸後の熱処理温度を70℃以上150℃以下に制御することにより達成可能である。
【0015】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは主配向軸方向の破断強度をS1(MPa)、主配向軸方向と直交する方向の破断強度をS2(MPa)とした際に、S1、およびS2が式(1)、および式(2)を満たすことが好ましい。
30MPa≦S1≦280MPa・・・式(1)
30MPa≦S2≦280MPa・・・式(2)
S1、S2をともに30MPa以上とすることで、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの機械的強度が十分高いものとなり、特に包装用途や農林水産用途として用いるため各種機能層を付与する際の蒸着加工時のたるみや搬送時のたるみを抑制し、張力に対してフィルムが破れることを抑制できる。また、S1、S2はともに280MPa以下となることが好ましい。280MPaを超える機械的強度とするには製膜時に延伸倍率を上げるか延伸温度を下げて配向を高める必要があるため、破れを抑制し生産性を向上させる観点から、S1、S2はともに、より好ましくは240MPa以下、さらに好ましくは200MPa以下である。他方、ロールtoロールでの蒸着加工時や搬送時の張力による変形を抑制する観点から、S1、S2はともに、より好ましくは35MPa以上、さらに好ましくは40MPa以上である。なお、破断強度は実施例に記載の方法にて測定するものとする。また、上記のような範囲のS1、S2に制御する方法は特に限定されるものではないが、例えば、上記記載の突刺強度を制御する際の方法と同様の方法が好ましく挙げられる。
【0016】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは熱機械分析装置(TMA)で求められる熱収縮曲線において、フィルムの主配向軸方向の収縮開始温度T1(℃)、主配向軸方向と直交する方向の収縮開始温度T2(℃)がいずれも40℃以上150℃以下であることが好ましい。ポリヒドロキシアルカン酸フィルムはガラス転移温度が0℃近傍に存在することが一般的に知られており、なかでも二軸延伸されたポリヒドロキシアルカン酸フィルムはガラス転移温度の0℃近傍から収縮開始する場合がある。そのため本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムのT1、T2をいずれも40℃以上150℃以下とすることで、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの寸法安定性が十分高いものとなり、特に蒸着加工をする際に蒸着時に生じる熱でポリヒドロキシアルカン酸フィルムが膨張することなく、かつ過剰な収縮ではなく適度に収縮側に変形することができ、後述のD層中にピンホールやクラックといった欠陥が発生することを抑制し、後述のD層を積層した積層体のバリア性を良好なものとすることができる。なおT1、T2をいずれも150℃を超えるようにするためには製膜時に150℃を超す熱処理を施すことが必要であり、製膜時に破膜するなど生産性が劣る観点から、T1、T2はいずれも150℃以下が好ましい。上記観点からT1、T2は、より好ましくは44℃以上、さらに好ましくは49℃以上、特に好ましくは55℃以上である。また、上記観点からT1、T2は、より好ましくは144℃以下、さらに好ましくは139℃以下、よりさらに好ましくは130℃以下、特に好ましくは119℃以下である。なお、各収縮開始温度は実施例に記載の方法で測定するものとする。上記のような範囲のT1、T2に制御する方法は特に限定されるものではないが、例えば、後述するように、特定の結晶核剤を含むポリヒドロキシアルカン酸樹脂を用い、フィルムの製膜時にキャスティングドラム出口での速度に対する縦延伸入り口のフィルム搬送速度を調整し、かつ二軸延伸した後に熱処理する方法が挙げられる。特に、結晶化作用がある核剤を含むポリヒドロキシアルカン酸樹脂を用いることでフィルム中の結晶子サイズの小さい微細結晶を多く形成することができ、次いでキャスティングドラム出口と縦延伸入り口のフィルム搬送速度を制御することにより縦延伸後の分子鎖配列の秩序性を高められることができ、さらに高倍率で延伸するほど絡まりにより隣接する分子鎖間の拘束力を向上させることができる。さらに延伸後の熱処理により熱結晶化することで相乗効果を発揮し収縮開始温度を高温化することが可能となる。より具体的には、製膜時にキャスティングドラム出口での速度に対しする縦延伸入り口のフィルム搬送速度を101%以上125%以下とし、逐次二軸法にて面倍率4倍以上に二軸延伸し、二軸延伸後の熱処理温度を70℃以上150℃以下に制御することにより達成可能である。
【0017】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは主配向軸方向の波長1550nmにおける屈折率をN1、主配向軸方向と直交する方向の波長1550nmにおける屈折率をN2とした際に、N1およびN2が式(3)を満たすことが好ましい。
2.0×10-4≦|N1-N2|≦1.3×10-2・・・式(3)
|N1-N2|が2.0×10-4以上となることは、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの面内で分子鎖がらせん構造などではなく伸び切った状態の結晶構造を形成していることを表しており、分子鎖配向の異方性が付与されていると考えられ、分子鎖のエステル基が露出しやすいために優れた生分解性を発現することができる。また分子鎖配向がフィルムの平面方向に高くなり、分子鎖同士の相互作用が高まり、機械的強度を高くすることが可能となる。上記のとおり面内で分子鎖配向の異方性を付与することで例えば包装用途や農林水産用途として用いる際に生じうる蒸着加工時のたるみや搬送時のたるみを抑制し、張力に対してフィルムが破れることを抑制できる。また、フィルムの主配向軸方向と、主配向軸方向と直交する方向との分子鎖配向の異方性が高すぎる場合、後加工工程におけるフィルム搬送時の応力によってフィルムに破壊が生じる場合があるほか、包装材や農林水産業資材として使用した際に内包物等の突起の突刺による亀裂などの部分的な破壊の起点になる場合がある。そのため、|N1-N2|は1.3×10-2以下とすることが好ましい。上記観点から|N1-N2|は、より好ましくは4.0×10-4以上、さらに好ましくは6.0×10-4以上、特に好ましくは1.0×10-3以上である。また、上記観点から|N1-N2|は、より好ましくは1.1×10-2以下、さらに好ましくは1.0×10-2以下、特に好ましくは9.0×10-3以下である。上記のような範囲の|N1-N2|に制御する方法は特に限定されるものではないが、例えば、フィルムの製膜時にキャスティングドラム出口での速度に対する縦延伸入り口のフィルム搬送速度を調整し、かつ二軸延伸する方法が挙げられる。より具体的には、製膜時にキャスティングドラム出口での速度に対しする縦延伸入り口のフィルム搬送速度を101%以上125%以下とし、逐次二軸法にて面倍率4倍以上に二軸延伸することにより達成可能である。なお、各屈折率は実施例に記載の方法で求めるものとする。
【0018】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは、120℃15分間の加熱処理によって求められるフィルムの主配向軸方向の熱収縮率H1(%)、主配向軸方向と直交する方向の熱収縮率H2(%)がいずれも0%以上20%以下であることが、フィルムの寸法安定性が主配向軸方向ならびに主配向軸方向と直交する方向の両方で十分に高いものとなり、高速加工時のシワや弛みを抑制できる観点から好ましい。上記観点から、H1、H2はいずれも15%以下がより好ましく、9%以下がさらに好ましく、6%以下が特に好ましい。またH1、H2の下限は特に限定されるものでは無いが、熱膨張によって高速加工時のシワや弛みを防止する観点から、H1、H2はいずれも0.1%以上がより好ましく、0.3%以上がさらに好ましい。本明細書において、熱収縮率は、所定方向のフィルムを120℃で15分間熱処理した前後のフィルム長さの変化率(%)として求めることができ、具体的には実施例に記載の方法で測定するものとする。上記のような範囲にH1、H2を制御する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、特定の結晶核剤を含むポリヒドロキシアルカン酸樹脂を用いる方法や、製膜時のキャスティングドラム出口と縦延伸入り口のフィルム搬送速度を制御する方法、延伸倍率を調整する方法、延伸後の熱処理、弛緩処理の条件を調整する方法が挙げられる。特に結晶化作用がある核剤を含むポリヒドロキシアルカン酸樹脂を用いることでフィルム中の結晶子サイズの小さい微細結晶を多く形成することができ、次いでキャスティングドラム出口と縦延伸入り口のフィルム搬送速度を制御することにより縦延伸後の分子鎖配列の秩序性を高めることができる。また延伸後の熱処理を後述する好ましい時間範囲内で行うことで熱結晶化させ、弛緩処理を後述する好ましい速度範囲内で施すことで余分な緊張分子鎖を緩和させることができ、熱収縮率を小さくすることが可能となる。
【0019】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは主配向軸方向の破断伸度をL1(%)、主配向軸方向と直交する方向の破断伸度をL2(%)とした際に、L1、L2がともに10%以上350%以下であることが好ましい。L1、L2をともに10%以上とすることで、適度な柔軟性を付与できポリヒドロキシアルカン酸フィルムが極端に変形しにくくなることを防ぎ、蒸着加工時や搬送時の張力に対してフィルムを破れにくくすることができる。また、L1、L2をともに350%以下とすることで、例えば後述のD層を積層した構成において、搬送時や製袋加工時にD層にクラックが発生しバリア性が損なわれるのを軽減することができる。上記観点からL1、L2はともに、より好ましくは50%以上、さらに好ましくは90以上%である。また、上記観点からL1、L2はともに、より好ましくは330%以下、さらに好ましくは310%以下である。なお、破断伸度は実施例に記載の方法にて測定するものとする。上記のような範囲のL1、L2に制御する方法は特に限定されるものではないが、例えば、フィルムの製膜時にキャスティングドラム出口での速度に対する縦延伸入り口のフィルム搬送速度を調整し、かつ二軸延伸する方法が挙げられる。より具体的には、製膜時にキャスティングドラム出口での速度に対しする縦延伸入り口のフィルム搬送速度を101%以上125%以下とし、逐次二軸法にて面倍率4倍以上に二軸延伸することにより達成可能である。
【0020】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは突刺変位が2.0mm以上4.5mm以下であることが好ましい。突刺変位を2.0mm以上とすることで、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの柔軟性が十分に高いものとなり蒸着加工時のたるみや搬送時のたるみを抑制し、張力に対してフィルムが破れることを抑制できる。また、突刺変位を4.5mm以下とすることで、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムが極端に変形しにくくなることを防ぎ、例えば後述のD層を積層した構成において、搬送時や製袋加工時にD層にクラックが発生し水蒸気バリア性や酸素バリア性が損なわれるのを軽減することができる。上記観点から、突刺変位は、より好ましくは2.2mm以上、さらに好ましくは2.5mm以上、特に好ましくは3.0mm以上であり、突刺変位は、より好ましくは4.0mm以下、さらに好ましくは3.5mm以下である。なお、突刺変位は実施例に記載の方法にて測定するものとする。上記のような範囲に突刺変位を制御する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記記載のL1、L2を制御する際の方法と同様の方法が好ましく挙げられる。
【0021】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは厚み方向の波長1550nmにおける屈折率をNz、前記N1と前記N2の平均値をN12とした際に、式(4)を満たすことが好ましい。
0.002≦(N12-Nz)≦0.015・・・式(4)
(N12-Nz)はポリヒドロキシアルカン酸フィルムの厚み方向に対して面内方向の配向度が十分に高いことを意味し、(N12-Nz)が0.002以上であることは、フィルム面内で分子鎖がらせん構造などではなく、伸び切った状態の結晶構造を形成している状態であると考えられる。そのため、分子鎖のエステル基が露出しやすいために優れた生分解性を発現できる。また分子鎖配向がフィルムの面内方向に高くなることで、分子鎖同士の相互作用が高まり、突刺強度を高くできる。上記のとおり面内における分子鎖配向度を高めることで、例えば包装用途や農林水産用途として用いるため各種機能層を付与する際の蒸着加工時のたるみや搬送時のたるみを抑制し、張力に対してフィルムが破れることを抑制できる。また、フィルム面内方向の配向度が高すぎる場合、後加工工程におけるフィルム搬送時の応力によってフィルムに破壊が生じる場合があるほか、包装材や農林水産業資材として使用した際の内包物等の突起の突刺による亀裂などの部分的な破壊の起点になる場合があったり、フィルム製造時に面積延伸倍率を高める必要があるため破れやすく生産性が劣る場合があるため、(N12-Nz)は0.015以下とすることが好ましい。上記観点から(N12-Nz)は、より好ましくは0.003以上、さらに好ましくは0.004以上である。また、上記観点から(N12-Nz)は、より好ましくは0.010以下、さらに好ましくは0.009以下、特に好ましくは0.008以下である。上記のような範囲の(N12-Nz)に制御する方法は特に限定されるものではないが、例えば、上記記載のL1、L2を制御する際の方法と同様の方法が好ましく挙げられる。
【0022】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムはCuKα線を用いた厚み方向の広角X線回折において、回折角2θが19°以上21°以下の範囲の配向度0.50以上のピークのうち最も強度の高いピークをPBとした際に、PBの半値幅から求めた結晶子サイズが5nm以上60nm以下であることが好ましい。上記の回折ピークはフィルムの突刺強度や柔軟性、生分解性に寄与するポリヒドロキシアルカン酸の結晶構造に由来するものであり、配向度が0.50以上であると、フィルムの中に生分解性に優れる結晶構造が存在しながら、それらの配向性が面方向に高くなり、衝撃時にそれらが破断の起点になり難くなり、またフィルムの柔軟性を高めることができる。このような配向度を有する結晶の結晶子サイズを5nm以上とすることで、フィルムの中に生分解性に優れ、配向性が十分に高い結晶構造を形成することができ、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの生分解性をより向上させることができる。加えて、本フィルムを例えば包装用途や農林水産用途として用いる際に生じうる蒸着加工時のたるみや搬送時のたるみを抑制し、張力に対してフィルムが破れることを抑制できる。また、前記結晶子サイズを60nm以下とすることで、上記結晶構造が製造過程で過剰に成長せずに存在させることができ、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの強度低下を防ぐことができる。加えて、本フィルムを例えば包装用途や農林水産用途として用いる際に、フィルムが極端に変形することを防ぎ、蒸着などの機能層の割れや劈開によって生じる特性低下を軽減することができる。また、生分解性も良好にすることができる。上記観点から、前記結晶子サイズは、より好ましくは7nm以上、さらに好ましくは9nm以上、特に好ましくは11nm以上である。また、上記観点から前記結晶子サイズは、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下、よりさらに好ましくは30nm以下、特に好ましくは25nm以下、最も好ましくは20nm以下である。なお、CuKα線を用いた厚み方向の広角X線回折による測定は実施例に記載の方法で行うものとする。上記のような範囲の結晶子サイズに制御する方法は特に限定されるものではないが、例えば、前述の方法で結晶の配向度を制御した上で、後述するように、製膜時の延伸工程の延伸倍率や熱処理および弛緩処理工程における熱処理温度を調整する方法が挙げられる。より具体的には、縦延伸倍率を1.5~4.2倍、横延伸倍率を1.5~4.2倍、または面倍率を4~18倍とすることにより、予熱区間で生成した結晶子サイズを物理的な延伸応力によって好ましい範囲に制御することができる。また二軸延伸後に(ポリヒドロキシアルカン酸樹脂の融点(℃)-100℃)~(当該融点(℃)-10℃)で熱処理することにより、結晶の成長を制御することができる。延伸倍率が上記範囲よりも低いと結晶サイズが粗大なままで製膜後に残る場合があり、上記範囲よりも高いと過剰に結晶サイズが小さくなる場合がある。また熱処理温度が上位範囲よりも低いと結晶成長が不十分となる場合があり、上記範囲よりも高いと成長した粗大な結晶のみが残ってしまう場合がある。
【0023】
また、結晶の過剰な配向による強度の低下を防ぐ観点からは、前記配向度は0.99以下とすることがより好ましい。上記観点から配向度は、より好ましくは0.75以上、さらに好ましくは0.90以上、特に好ましくは0.95以上である。また上記観点から前記配向度は、さらに好ましくは0.98以下、特に好ましくは0.97以下である。なお、配向が平面方向に高いフィルムを適切に測定する観点から、実施例に記載の方法で結晶配向度を求める際において配向プロファイルの最も強度が高いピーク位置(以下、配向角度と称する場合がある)が円周角90°±10°以内に現れることが好ましい。上記範囲の配向度に制御する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、フィルム製膜時のキャスティングドラム工程と縦延伸工程の区間における搬送速度を調整することで生成した結晶に予備配向を加えた後、二軸延伸する方法が挙げられる。
【0024】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムの重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、二軸延伸後のフィルムの突刺強度と製膜安定性を両立する観点から、5.0×10~2.0×10が好ましく、1.0×10~1.50×10がより好ましく、2.5×10~1.0×10が最も好ましい。
【0025】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは、室温でのコンポスト化や海洋での生分解性を良好とする観点から、フィルムの全質量を100質量%とした際に、ポリヒドロキシアルカン酸樹脂の含有量が50質量%を超えて100質量%以下である。ここで、ポリヒドロキシアルカン酸樹脂とは、ヒドロキシアルカン酸を構成成分として含むポリマーであり、例えば、[-CHR-CH-CO-O-]の一般式で示される3-ヒドロキアルカノエート繰り返し単位(式中、RはC2n+1で表されるアルキル基で、nは1~15の整数である。)を含むポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(P3HAとも称する)などが挙げられる。ヒドロキシアルカン酸樹脂を構成するヒドロキシアルカン酸は、1種類のみの単独重合体であってもよいし、2種類以上の共重合体構成でもよい。また、本発明におけるポリヒドロキシアルカン酸樹脂は、複数のヒドロキシアルカン酸樹脂の混合物の構成でも構わない。
【0026】
P3HAは、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(P3HB)ポリ(3-ヒドロキシバレレート)(P3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-cо-3-ヒドロキシバレレート)(P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-cо-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-cо-3-ヒドロキシバレレート-cо-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HV3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-cо-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-cо-3-ヒドロキシオクタノエート)(P3HB3HO)、ポリ( 3-ヒドロキシブチレート-cо-3-ヒドロキシデカノエート)(P3HBP3HD)等が挙げられる。なお-co-は共重合されているものを意味する。
【0027】
P3HAとしては、化学合成されるもの(例えば、対応するラクトンの開環重合により得られるもの)、微生物により産生されるもののいずれでもよいが、植物油等のバイオマス原料を用いて製造しやすい観点からは、微生物により産生されるP3HAが好ましい。微生物から産生されるP3HAの中でも、工業的に生産しやすい観点からは、P3HB、P3HV、P3HB3HH、P3HB3HV、P3HB3HV3HH、P3HB4HBが好ましく用いられる。
【0028】
P3HAをはじめとするポリヒドロキシアルカン酸樹脂は、繰り返し単位の組成比を変えることで、融点や結性を調整することが可能である。ポリヒドロキシアルカン酸樹脂は熱分解しやすいことが一般的に知られているが、2種類以上のヒドロキシアルカン酸の共重合体構成として融点を低く設計することで、押出加工温度を低温にすることが可能となる。
【0029】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムに用いるポリヒドロキシアルカン酸樹脂の重量平均分子量Mwは、特に限定されないが、二軸延伸後のフィルムの突刺強度と製膜安定性を両立する観点から、1.0×10~2.0×10が好ましく、3.0×10~1.5×10がより好ましく、4.0×10~1.0×10が最も好ましい。
【0030】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムはフィルムの突刺強度を高める観点や、結晶子サイズを制御する観点から結晶核剤を含んでいることが好ましい。結晶核剤はフィルムの結晶性を高める特性を有する造核剤をあらわし、このような結晶核剤としては、脂肪酸アミド、尿素誘導体、ソルビトール系化合物、窒化ホウ素、脂肪酸塩、芳香族脂肪酸塩等が挙げられ。本発明においてはペンタエリスリトール、ガラクチトール、マンニトール等の多価アルコールやオロチン酸、アスパルテーム、シアヌル酸、グリシン、フェニルホスホン酸亜鉛、窒化ホウ素等が好ましく、中でも、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)樹脂成分の結晶化を促進する効果が特に優れている点で、ペンタエリスリトールが好ましい。結晶核剤の含有量はポリヒドロキシアルカン酸フィルムの全質量を100質量%としたときに0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、フィルムの突刺強度の向上効果や結晶子サイズを制御し易くする観点から、結晶核剤の含有量は0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。他方、造核剤としての効果が飽和したり過剰添加によるコスト影響などの観点から、結晶核剤の含有量は5質量%以下が好ましく、3質量%以下がさらに好ましい。
【0031】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは本発明の目的を損なわない範囲で種々の添加剤、例えば有機粒子、無機粒子、酸化防止剤、熱安定剤、すべり剤、帯電防止剤、ブロッキング防止剤、充填剤、粘度調整剤、着色防止剤を含有してもよい。
【0032】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは、包装用途、離型用途ならびに包装材や梱包材、衛生用品、農林水産用品、建築用品、医療用品や各製品を製造する際の工程フィルムなど様々な用途に広く使用でき、例えば、包装用途に用いる際、加工工程ならびに蒸着工程の搬送張力でも破断もしくは変形することなく、バリア性が良好なポリヒドロキシアルカン酸フィルムとしてや、生分解性を有するため農林水産用のポリヒドロキシアルカン酸フィルムとして好適に用いることができる。
【0033】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムの厚みは、用途に応じて設定することができるが、例えば一般包装用、離型用、農林水産用途のうちシート状で用いる用途等においては、厚みは6μm以上200μm以下であることが好ましく、加工時や使用時のハンドリングの観点から厚みはより好ましくは100μm以下、さらに好ましくは50μm以下であり、厚みはより好ましくは8μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。また、各種用途においてトレー成型等の成型工程を含む用途や自立性を求められる用途においては、加工性やハンドリング性の観点から、厚みは10μm以上300μm以下であることが好ましく、コストや製膜性および生分解性の観点からは厚みはより好ましくは250μm以下、さらに好ましくは220μm以下、また、厚みはより好ましくは30μm以上、さらに好ましくは50μm以上である。
【0034】
<機能層を有するポリヒドロキシアルカン酸フィルム>
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは、用途に応じて機能層を設けることが好ましく、以下、機能層を有するポリヒドロキシアルカン酸フィルムについて説明する。なお機能層を設けた本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムを単に「積層体」と称することがある。ポリヒドロキシアルカン酸フィルムに積層しうる機能層としては、ガスバリア層、粘着層、ヒートシール層、易接着層、着色層、印刷層、易剥離層、離型層、易滑層、多孔質層、不織布等を挙げることができる。機能層の積層方法は、機能層に応じて選択すればよいが、例えば、蒸着、スパッタリング、コーティング、グラビア印刷やオフセット印刷等の各種印刷法、熱接着、接着層を介しての積層等により積層することができる。例えば、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムを包装用途に用いる場合、ガスバリア性を付与するコーティング層や蒸着層、ヒートシール層が機能層として好ましく選択される。例えば、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムを肥料、飼料、種苗、薬剤などの農林水産素材の被覆に用いる場合、圧着性を付与する粘着層や熱圧着性を付与するヒートシール層などが接着性を付与する機能層として好ましく選択される。なお、本発明の効果を損なわない観点からは、機能層は生分解性を有するか、毒性の低いものとすることが好ましい。好ましく積層しうる機能層は、例えば、包装用途や農林水産用に用いる場合、ガスバリア性を付与するコーティング層や蒸着層などであることが好ましい。高いガスバリア性能を発揮できる観点から機能層は蒸着層であることがより好ましい。
【0035】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムに、機能層として蒸着層を積層する場合、蒸着層は、フィルムの少なくとも片面に積層することが好ましい。また、蒸着層は、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)とすることが、ガスバリア性発現の観点から好ましい。ここで、「金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層」とは、層を構成する全成分を100質量%としたときに、金属のみを50質量%より多く含む層、無機化合物のみを50質量%より多く含む層、金属と無機化合物をいずれも含み、それらの合計が50質量%を超える層のいずれかを指す。D層に用いうる金属及び/又は無機化合物としては、フィルムとの密着性向上、フィルムに積層した際のガスバリア性向上、及び環境負荷低減の観点から、アルミニウム、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ゲルマニウム、酸化マグネシウム、酸化セリウム、酸化カルシウム、ダイアモンド状炭素膜、あるいはこれらの混合物のいずれかが好適に用いられる。また、内容物の視認性の観点からは、無機化合物、特に酸化アルミニウム、酸化珪素またはこれらを含む混合物を用いることがより好ましい。積層体におけるD層の厚みは、積層体を樹脂あるいはフィルムとして再利用する際のリサイクル性や亀裂によるガスバリア性の低下を抑制する観点、包装材としたときの内容物の視認性を得る観点から200nm以下が好ましい。上記観点から、積層体におけるD層の厚みは、より好ましくは110nm以下、さらに好ましくは50nm以下、特に好ましくは30nm以下である。下限は特に限定されないが、バリア性発現の観点から積層体におけるD層の厚みは1nm以上であることが好ましい。
【0036】
また、本発明の積層体においてD層とポリヒドロキシアルカン酸フィルム表面の間には、コーティング等により厚み1μm以下の樹脂層を設けてもかまわない。かかる樹脂層を設けることで、D層とポリヒドロキシアルカン酸フィルムの密着性を向上させるなどの効果を得られる場合がある。但し、製造コストの観点からは、該樹脂層を有さない態様、すなわち、D層が、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの最表面上に直接積層される態様、が好ましい。
【0037】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムにD層を形成して積層体とする方法としては、コーティング、蒸着、ラミネート等が挙げられるが、湿度依存性がなく、薄膜で優れたガスバリア性を発現できることから、蒸着が特に好ましい。蒸着方法としては、真空蒸着法、EB(電子線)蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的蒸着法、プラズマCVD等の各種化学蒸着法を用いることができるが、生産性の観点からは真空蒸着法が特に好ましく用いられる。
【0038】
また、本発明の積層体において、ガスバリア性の向上、D層の蒸着欠陥や亀裂によるガスバリア性の低下を抑制する観点から、D層上にオーバーコート層を設けてもかまわない。
【0039】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムに、機能層として粘着層やヒートシール層などの接着性を付与する層(E層)を積層する場合、それらはフィルムの少なくとも片面に積層することが好ましい。E層に用いうる樹脂成分としては、高いヒートシール強度を有する観点から、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等、あるいはこれらの混合物のいずれかが好適に用いられる。複数のフィルムを積層する場合は最終製品の厚みを抑える観点から、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)系ホットメルト接着剤、オレフィン系ホットメルト接着剤、ゴム系ホットメルト接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤、ポリアミド系ホットメルト接着剤、ポリウレタン系ホットメルト接着剤等、あるいはこれらの混合物のいずれかがより好適に用いられ、積層体全体の生分解性を高める観点から、例えば、前記に例示したポリヒドロキシアルカン酸の共重合成分を調整した樹脂成分や、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート等の、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムよりも軟化点または融点が低い生分解性樹脂等、あるいはこれらの混合物のいずれかがさらに好適に用いられる。
【0040】
積層体におけるE層の厚みは、高い接着強度を発現させる観点から0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、3.0μm以上がさらに好ましい。また積層体の生分解性の低下を抑える観点や、複数のフィルムを積層する場合に最終製品の厚みを抑える観点から積層体におけるE層の厚みは、100μm以下が好ましく、70μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。
【0041】
また、積層体において、E層とポリヒドロキシアルカン酸フィルム表面の間には、コーティング等により厚み1μm以下の樹脂層を設けてもかまわない。かかる樹脂層を設けることで、E層とポリヒドロキシアルカン酸フィルムの密着性を向上させるなどの効果を得られる場合がある。但し、製造コストの観点からは、該樹脂層を有さない態様(すなわち、E層が、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの最表面上に直接積層される態様)が好ましく、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの表面上にE層を有する態様がより好ましい。
【0042】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムにE層を形成して積層体とする方法としては、コーティングやラミネートが特に好ましい。コーティング方法としては、バーコーティング法、グラビアコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を用いることができ、ラミネート方法としてはドライラミネート法、無溶剤ラミネート法、押出ラミネート法、共押出法等を用いることができるが、生産性の観点からはグラビアコーティング法、ダイコーティング法、押出ラミネート法、共押出法がさらに好ましく用いられる。
【0043】
<包装材、梱包体>
以下、本発明の包装材、梱包体について説明する。本発明の包装材は、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルム、及び本発明の積層体の少なくとも一方を用いることを特徴とする。本発明の包装材は、ガスバリア層として設ける蒸着層の蒸着加工工程の搬送張力でも破断もしくは変形することなく、ガスバリア性が良好であることから、水蒸気や酸素により劣化しやすいものの包装に好適に用いることができる。
【0044】
本発明の梱包体は、本発明の包装材により内容物が梱包されていることを特徴とする。内容物は特に制限されないが、本発明の包装材が透明性、ガスバリア性に優れることから、外部からの視認性が求められ、水蒸気や酸素により劣化しやすいものであることが好ましい。なお、本発明の梱包体は本発明の包装材で内容物を覆うことで得られ、その態様は特に制限されない。例えば、ヒートシールにより本発明の包装材を袋状に加工し、その中に内容物を入れることで得られる梱包体、トレー状の容器に内容物を充填もしくは盛りつけたのち、本発明の包装材を用いて封止した梱包体等が挙げられる。
【0045】
<農林水産業資材>
以下、本発明の農林水産業資材について説明する。本発明の農林水産業資材は、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルム、及び本発明における積層体の少なくとも一方を用いることを特徴とする。本発明の農林水産業資材は、生分解性を有することを特徴とし、土壌用マルチフィルム、植生フィルム、燻蒸フィルム、保水用フィルム、肥料被覆材、飼料被覆材、種苗被覆材、薬剤被覆材、養殖サポートフィルム、海洋生物付着抑制フィルム、環境保全資材など、使用後は生分解する機能を有した資材に好適に用いられる。
【0046】
<農林水産素材の被覆フィルム>
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは、肥料、飼料、種苗、薬剤から選択される1種以上を含む農林水産素材の被覆に用いることで、被覆した農林水産素材を保護して劣化による品質低下や漏洩による環境汚染を防止しながら、土壌中や海洋中で生分解することで、肥料、飼料、薬剤を適切な時期に拡散、飛散させることや、種苗の定着、定床までの期間を保護した後、生分解することでそれらの成長の妨げになることを防ぐことができる。ここでの農林水産素材とは農林水産資材に内包される素材、成分を示し、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、公知のもの広く使用することができる。前述した通り、優れた生分解性と高い強度、適度な柔軟性を有する本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムを本用途に用いることで、ピンホールやクラック、被覆厚みが不均一な部分から内容物である農林水産素材の漏洩を防ぐことが可能であり、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムの厚みによって、土壌中や海洋中での拡散、飛散速度を制御が可能となる。加えて、肥料、飼料、種苗、薬剤の農林水産素材を2種類以上一緒に被覆することもできる。例えば、種苗と作用させたい肥料、薬剤を一緒に被覆することで、発芽と同時に作物の成長を高めることも可能となるため好ましい。
【0047】
上記観点から、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの厚みは、前述した好ましい範囲内で土壌中や海洋中での拡散、飛散速度に合わせて選択することが好ましく、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの厚みが過剰に薄いと強度が不足して、内容物の保護性が低下する場合や、加工時に破れが発生する場合がある。また、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの厚みが過剰に厚いと柔軟性が不足して、後述する好ましい形状への加工が困難となる場合がある。例えば即効性の肥料には生分解後に拡散、飛散が早くなるような厚みが薄いフィルム、遅効性の肥料には生分解後に拡散、飛散が遅くなるような厚みが厚いフィルムを選択しておき、それらの被覆肥料を一緒に撒くことで、農業従事者の作業を低減することができる。
【0048】
更に、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムの特徴を生かして被覆を多層構造とすることができる。具体的には、遅効性の肥料を本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムで被覆して作製した後、即効性の肥料と本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムで周りを被覆することで、遅効性の肥料と即効性の肥料を順番に本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムで被覆した肥料を作製することが可能となる。また、同様の方法で種苗と肥料や飼料、薬剤を順番に被覆することで、生育した農水産物に適切なタイミングで肥料や飼料、薬剤を作用させる効果が期待できる。
【0049】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムによって被覆されたことを特徴とする農林水産素材は、上記の通り、意図しない漏洩による環境汚染を防止しながら、特に肥料、飼料、種苗、薬剤から選択される農林水産素材の効果を高めることが可能となり、土壌中や海洋中において適切な時期に拡散、飛散することで、効能の向上効果や作業従事者の作業を低減することができ、農林水産分野において特に好適に用いることができる。
【0050】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムによって被覆されたことを特徴とする肥料、飼料、種苗、薬剤の形態としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、ペレット状、顆粒状、ブロック状、パウチ状、ロープ状、シート状など、様々な形態で使用することができる。具体的には農業用の被覆された肥料であれば、散布機に対応したブロック状、ペレット状、顆粒状が好ましく、被覆された種苗であれば、作業低減が期待できるロープ状やシート状が好ましい。
【0051】
<製造方法>
以下、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムの製造方法の好ましい一態様について説明する。
【0052】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムの製造方法の好ましい一態様は、ポリヒドロキシアルカン酸樹脂を溶融する溶融工程、溶融して口金からシート状に吐出し、支持体上で冷却固化してポリヒドロキシアルカン酸シートを得るキャスト工程、ポリヒドロキシアルカン酸シートを直交する二方向に延伸する延伸工程、及び、延伸工程で得られたフィルムに熱処理および弛緩処理を施す熱処理工程をこの順に行うものである。また本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは、層構成については特に限定されず、例えばA層/B層の2種2層構成、A層/B層/A層の2種3層構成、A層/B層/C層(ここでC層はA層、B層とは異なる層を意味する。)の3種3層構成等を採用することができる。以下、A層からなる単層構成のポリヒドロキシアルカン酸フィルムを例に挙げて、その製造方法についてより具体的に説明するが、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルム及びその製造方法は必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
【0053】
まず、ポリヒドロキシアルカン酸樹脂を単軸押出機で溶融させる。押出温度150℃~220℃に設定した単軸押出機から溶融押出し、濾過フィルタを通過させて異物等を取り除く。続いてこの溶融樹脂をスリット状口金から押し出す。このときポリヒドロキシアルカン酸樹脂の劣化を防ぎフィルムの突刺強度を高める観点から原料投入ホッパー内の酸素濃度を0.10体積%以下に制御することが好ましい。
【0054】
次に、スリット状口金から押し出された溶融樹脂シートを、表面温度が10℃~40℃に制御されたキャスティングドラム上で冷却固化させ、未延伸ポリヒドロキシアルカン酸フィルムを得る。溶融シートのキャスティングドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法、エアーチャンバー法等のうちいずれの手法を用いてもよく、また複数の方法を組み合わせてもよい。
【0055】
ここで本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムでは、二軸延伸後のフィルム強度を高める観点からキャスティングドラム出口の速度に対して次工程である縦延伸入り口のフィルム搬送速度を早く調整することで、未延伸ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの分子鎖配向を高める方法を好ましく用いることができる。より具体的には、キャスティングドラム出口での速度に対する縦延伸入り口のフィルム搬送速度を101%以上125%以下とすることが好ましく、フィルムの突刺強度の向上効果をより得る観点から、キャスティングドラム出口での速度に対する縦延伸入り口のフィルム搬送速度を103%以上とすることがより好ましく、106%以上とすることがさらに好ましい。他方、上限はフィルム破れなど生産性の観点から、キャスティングドラム出口での速度に対する縦延伸入り口のフィルム搬送速度を116%以下とすることがより好ましく、112%以下とすることがさらに好ましい。
【0056】
次いで縦延伸工程にて一軸配向フィルムを得る。縦延伸工程では複数のロール群にて1秒以上1000秒以下で予熱し、予熱温度は好ましくはキャスティングドラム温度と同一温度以上、より好ましくはキャスティングドラム温度+10℃以上であり、予熱温度は好ましくはキャスティングドラム温度+50℃以下、より好ましくはキャスティングドラム温度+40℃以下である。予熱は予熱温度に保たれたロール間に通して行う。このとき、予熱温度をキャスティングドラム温度と同じ温度以上、キャスティングドラム温度+50℃以下にすることで、延伸直前の球晶の成長ならびに球晶変態を制御でき高倍率でも安定して延伸することが可能となる。次いで延伸直前にポリヒドロキシアルカン酸フィルムを100℃以上ポリヒドロキシアルカン酸樹脂の融点以下の温度で0.1秒以上100秒以下の時間で当該温度を保ったまま長手方向に1.5倍以上10倍以下で延伸を施す。長手方向の延伸倍率は突刺強度を向上させる観点と製膜安定性の観点から、1.6倍以上が好ましく、2.1倍以上がより好ましく、2.4倍以上がさらに好ましく、2.6倍以上が特に好ましい。他方、延伸倍率は8倍以下が好ましく、4倍以下がさらに好ましい。縦延伸した後、室温まで冷却して一軸配向フィルムを得る。
【0057】
次いで一軸配向フィルムの端部をクリップで把持したまま、テンターに導き、フィルムの端部をクリップで把持したまま60℃以上ポリヒドロキシアルカン酸樹脂の融点以下の温度を保ったまま幅方向に1.5倍以上10倍以下で延伸(横延伸)を施す。幅方向の延伸倍率は突刺強度を向上させる観点と製膜安定性の観点から、1.6倍以上が好ましく、2.1倍以上がより好ましく、2.4倍以上がさらに好ましく、2.6倍以上が特に好ましい。他方、延伸倍率は8倍以下が好ましく、4倍以下がさらに好ましい。
【0058】
ここで、面積延伸倍率は4倍以上であることが好ましい。面積延伸倍率を4倍以上とすることにより、フィルム面内の分子鎖緊張が高まって結晶子サイズも小さくなりフィルムの突刺強度を高くすることができ、面内に適度な歪みを持たせることで加熱時に膨張することを防ぎ、D層を蒸着により形成して積層体とする際に、D層にピンホールやクラックといった欠陥が生じる、いわゆる熱負けやシワ現象を抑制することができる。面積延伸倍率は、より好ましくは6倍以上、さらに好ましくは8倍以上である。面積延伸倍率の上限は特に限定されないが、実現可能性の観点から、面積延伸倍率は逐次二軸延伸の場合は50倍以下、より好ましくは35倍以下、さらに好ましくは20倍以下である。
【0059】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムの製造においては、横延伸後に熱処理及び弛緩処理を施すことが好ましい。熱処理及び弛緩処理は、テンターのクリップで幅方向両端部を緊張把持したまま幅方向に2%以上20%以下の弛緩を10%/min以上500%/min以下の速度で与えつつ、好ましくは50℃以上150℃以下の温度で1秒以上100秒以下の処理を行う。熱処理温度はより好ましくは55℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、熱処理温度は145℃以下がより好ましく、さらに好ましくは140℃以下である。弛緩処理の速度はより好ましくは350%/min以下、さらに好ましくは200%/min以下であり、弛緩処理の速度はより好ましくは15%/min以上、さらに好ましくは20%/min以上である。熱処理時間は60秒以下がより好ましく、45秒以下がさらに好ましい。熱処理時間は4秒以上がより好ましく8秒以上がさらに好ましい。かかる弛緩処理及び熱処理を行うことで、フィルムの熱に対する構造安定性を向上させ、D層を蒸着により形成して積層体とする際に、D層にピンホール、クラックといった欠陥が生じる熱負け現象を抑制することができる。その結果、ポリヒドロキシアルカン酸フィルムから得られる積層体のバリア性を良好なものとすることができる。弛緩処理においては、フィルムの熱に対する構造安定性を高める観点から、弛緩率は2%以上がより好ましく、さらに好ましくは4%以上である。また弛緩率は15%以下がより好ましく、さらに好ましくは11%以下である。弛緩率が2%より小さい場合は、得られるポリヒドロキシアルカン酸フィルムが加熱時の寸法安定性に劣るものとなる場合がある。そのため、D層を蒸着により形成して積層体とする際に、フィルムが変形してD層にピンホールやクラックといった欠陥が発生する結果、D層を積層した積層体のバリア性が損なわれる場合がある。一方、弛緩率が20%を超える場合はテンター内部でフィルムが弛みすぎる結果、製膜後のフィルムにシワが入り、機械特性の低下や蒸着時のムラに繋がる場合がある。
【0060】
上記の熱処理を経た後は、フィルムをテンターの外側へ導き、室温雰囲気にてフィルム幅方向両端部のクリップを解放し、ワインダー工程にてフィルム幅方向両側のエッジ部をスリットする。その後、金属と無機化合物を合計で50質量%を超えて100質量%以下含む層(D層)を積層する面(通常はキャスティングドラムと接していた側の表面)に対し、D層との密着力を高くすることを目的として、コロナ処理などの表面改質処理をインラインで施すことが好ましい。こうして得られたフィルムをロール状に巻き取って、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムを得ることができる。
【0061】
次に本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムによって被覆された肥料や、飼料、種苗、薬剤の製造方法について、例に挙げて、その製造方法についてより具体的に説明するが、必ずしもこれに限定して解釈されるものではない。
【0062】
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムによって被覆された肥料の製造方法としては、上記の方法で得られたポリヒドロキシアルカン酸フィルムをペレット形状の窪みに成型した上下の金型に導いた後、吸引して金型にフィルムを密着させる。次いで、下側の金型のフィルム上に被覆したい肥料を展開し、上側の金型を下降させて加熱することで上下のフィルムを接着させる。
【0063】
ここで本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムで被覆する肥料としては、ペレット状でもよく、顆粒状や、粉状、ペースト状、液状のものも使用することができる。中でもフィルムでの保護のしやすさや金型形状への追従性の観点から肥料の形状は、顆粒状、粉状、ペースト状、液状のいずれかであることが好ましい。
【0064】
さらにこの時、接着性の観点から、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムに前述したヒートシール層を接着層(E層)として設けておくことが好ましく、その場合はフィルム同士が接する面の少なくとも片側にE層が位置するように金型に配置しておくことがより好ましい。
【0065】
次いで、肥料を被覆したフィルムを金型から取り出し、過剰なフィルム同士の圧着部分を裁断し、除去することでペレット状に加工した被覆肥料を得ることができる。ここで裁断方法としては刃物を搭載した裁断機を用いることが好ましく、あらかじめ刃物を配置した型を用いてバッチ方式で枚葉処理する方法や、回転刃を用いて1方向に連続的に裁断してロープ状に加工した後、直交方向に周期的に裁断する方法や上記の金型に刃物を搭載させて熱圧着と裁断を同時に行う方法などが挙げられる。
【0066】
その他の農林水産素材の被覆方法としては、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムのロールを2つ準備しておき、一定周期で農林水産素材を間に挿入しながらラミネートする方法や、農林水産素材をフィルム上に保持した状態で加熱することで熱収縮させて被覆する方法、減圧によりフィルムを収縮させることで被覆する方法が挙げられる。
【0067】
本発明はかかる製造方法によって、優れた生分解性と強度、柔軟性を有する本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムに被覆された肥料、飼料、種苗、薬剤を得ることできる。
【0068】
<分解方法>
本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルム、及び、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムを含む包装体、農林水産資材は、コンポスト機材により生分解させることができる。コンポスト機材としては、60℃前後に加熱、あるいは保温して生分解性を高める産業コンポスト、土壌に穴を掘って製作する簡易コンポスト、土壌に一部または全部を埋設するコンポスト容器、コンポストバッグ等の小型コンポスト、ミミズコンポストやハエを用いたズーコンポストなどの生物利用コンポスト等、公知の機材を用いることができる。本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルム、及び、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムを含む包装体、農林水産資材が機能層を有しない場合、もしくは機能層が生分解性または低毒性の蒸着層である場合、コンポスト機材に投入し、土壌や微生物含有発酵促進材等の分解用資材との混交等の一般的な処理を施すことで分解することができる。また、生分解性を有さない機能層や他の層を併用する場合、機能層を剥離したうえでコンポスト機材に投入してもよいし、環境毒性や人体毒性等の毒性が低い層であれば、生分解性を有さない場合であってもコンポスト機材に投入し、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムの分解後に残留物を回収しても構わない。なお、コンポストの目的については、減容化による廃棄物削減、堆肥化、バイオガスの生成等があるが、本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルム、包装体及び農林水産業資材は、どの目的のコンポスト機材にも適応する。
【実施例0069】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下に示す態様に限定されない。なお、各項目の評価は以下の方法により行った。
【0070】
<特性値の測定方法、効果の評価方法>
本発明における特性値の測定方法、並びに効果の評価方法は次の通りである。
【0071】
(1)フィルムの厚み
ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの任意の5箇所の厚みを、23℃65%RHの雰囲気下で接触式のミツトヨ製高精度デジタル測長機“ライトマチックVL50B”を用いて測定した。その10箇所の厚みの算術平均値をフィルムの厚み(単位:μm)とした。
【0072】
(2)主配向軸方向ならびに主配向軸方向と直交する方向の決定
フィルム製造工程における流れ方向(MD)を主配向軸方向、またフィルム製造工程における流れ方向とフィルム面内で直交する方向(TD)を主配向軸方向と直交する方向とした。方向が不明なフィルムについては任意の方向を上に向けて、長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出しサンプル<1>とし、サンプル<1>の長辺の方向を0°とした。次に、長辺方向が0°方向から右に15°回転した方向となるように、同サイズのサンプル<2>を採取した。以下同様に、矩形のサンプルの長辺方向を15°ずつ回転させ、同様にサンプル<3>~<12>を採取した。次に、各矩形のサンプルを引張試験機(エー・アンド・デイ製“テンシロン万能試験機”RTG-1210)に、長辺方向が引っ張り方向となるように初期チャック間距離30mmでセットし、25±5℃、65±10%RHの温湿度の雰囲気下で引張速度を300mm/分として引張試験を行う。このときサンプルが破断するまでの最大荷重を読み取り、試験前の試料の断面積((1)で求めたフィルム厚み×幅)で除した値を破断強度として算出した。各サンプルについて同様の測定を5回ずつ行って破断強度の平均値をサンプルの破断強度とした(単位:MPa)。当該値が最大であったサンプルの長辺方向をポリヒドロキシアルカン酸フィルムの主配向軸方向とした。またこれに直交する方向をポリヒドロキシアルカン酸フィルムの主配向軸方向と直交する方向とした。
【0073】
(3)突刺強度および突刺変位
JIS Z1707(2019)に準じて、以下の条件でフィルムの突刺強度(Force)と突刺変位(Strain)を測定した。尚、5回の測定を行い、各測定値を測定したフィルムの厚み(μm)で割ったあとに20(μm)を掛けた値を求め、それらの平均値を突刺強度(厚み20μm換算値)として採用した。突刺変位は測定ニードルの先端がフィルムに触れてからフィルムに穴が開く、もしくは破膜するまでのニードル押し込み長さの短い方を選択し、5回の測定値の平均値を突刺変位として採用した。
装置 :KATOTECH社製 HANDY-TYPE COMPRESSION TESTER KES-G5
(測定条件)
SENS:10
SPEED:0.20cm/秒
STROKE:20mm/10V
ニードル径:1.0mmφ
穴径:10.0mmφ
(4)主配向軸方向の破断強度(S1)ならびに主配向軸方向と直交する方向の破断強度(S2)
主配向軸方向ならびに主配向軸方向と直交する方向について(2)と同様のサンプル寸法、引張試験機ならびに測定条件で引張試験を行った。測定は5回行いサンプルが破断した時点の破断強度の平均値として、当該ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの主配向軸方向の破断強度(S1)ならびに主配向軸方向と直交する方向の破断強度(S2)を求めた(いずれも単位:MPa)。
【0074】
(5)熱機械分析(TMA)による主配向軸方向の収縮開始温度T1、主配向軸方向と直交する方向の収縮開始温度T2
主配向軸方向、主配向軸方向と直交する方向の、それぞれを長辺として幅4mm、長さ50mmの長方形の試料を切り出し、試長10mmとなるよう下記の熱機械分析装置の金属製チャックに挟み込んだ。その後、下記温度条件、荷重条件にて試長を一定保持したフィルムにおける主配向軸方向と直交する方向及び主配向軸方向の熱収縮曲線を求めた。フィルムの主配向軸方向および主配向軸方向と直交する方向についてそれぞれ1%収縮した温度を読み取り、主配向軸方向の収縮開始温度T1、主配向軸方向と直交する方向の収縮開始温度T2を求めた(いずれも単位:℃)
・装置:TMA/SS6000(セイコーインスツルメント(株)製)
(温度条件)
・温度:初期温度25℃、最大温度:160℃、昇温レート:10℃/分
・最大温度到達後の保持時間 :10分
・窒素冷却 :なし
(荷重条件)
・制御モード :Fモード(荷重制御モードで荷重一定)
・荷重 :29.4mN(一定)
(6)主配向軸方向の波長1550nmにおける屈折率N1、主配向軸方向と直交する方向の波長1550nmにおける屈折率N2から求められる|N1-N2|
プリズムカプラにて主配向軸方向の面内屈折率N1、主配向軸方向と直交する方向の面内屈折率N2を測定し、その差の絶対値を算出した。
・装置 :SAIRON TECHNOLOGY,INC.製 PRISM COUPLER & LOSS MEASUREMENT SPA-4000
・AIR PRESSURE(押付圧) : 0.5MPa
・プリズム :GGG(ガドリニウムガリウムガーネット。n=1.965)
・光源 :1550nm ダイオードレーザー。
【0075】
(7)複屈折率(N12-Nz)
(6)と同様の測定方法により厚み方向の屈折率Nzを測定し、下記式にて厚み方向の複屈折率を算出した。
複屈折率(N12-Nz)=|(N1+N2)/2-Nz|
(8)主配向軸方向の破断伸度(L1)ならびに主配向軸方向と直交する方向の破断伸度(L2)
主配向軸方向ならびに主配向軸方向と直交する方向について(2)と同様のサンプル寸法、引張試験機ならびに測定条件で引張試験を行った。測定は5回行いサンプルが破断した時点の伸度の平均値として、当該ポリヒドロキシアルカン酸フィルムの主配向軸方向の破断伸度(L1)ならびに主配向軸方向と直交する方向の破断伸度(L2)を求めた(いずれも単位:%)。
【0076】
(9)ポリヒドロキシアルカン酸樹脂およびフィルムの融点
示差走査熱量計(リガク製、Thermo plus EVO2 DSCvesta)を用い、JIS K7121-1987、JIS K7122-1987に準拠して測定および、解析を行った。試料を5.0mg秤量し、窒素雰囲気下-50℃から昇温速度20℃/分で200℃まで昇温した際のDSC曲線より得られた吸熱ピークの頂点の温度をポリヒドロキシアルカン酸樹脂およびフィルムの融点とした。尚、吸熱ピークが複数存在する場合は、最も吸熱量が大きいピークを採用した。
【0077】
(10)樹脂の重量平均分子量Mw
試料10mgに後述の測定溶媒5mLを加え、試料が溶解するまで室温で攪拌した。その後、0.45μmフィルターを用いてろ過を行い、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)を用いて下記条件で重量平均分子量Mwを求めた。
・検出器:示差屈折率検出器RI (東ソー製RI-8020、感度32)
・カラム:TSKgel GMHHR-M(7.8mm×30cm、東ソー製) 、2本
・溶媒:クロロホルム
・流速:1.0mL/min
・カラム温度:40℃
・注入量:0.200mL
・標準試料:東ソー製単分散ポリスチレン
・データ処理:東レリサーチセンター製GPC データ処理システム。
【0078】
(11)結晶子サイズ
(11-1)2次元回折像の取得
フィルム試料を主配向軸方向に2cm、主配向軸に直交する方向に1cmの大きさに切り出し、合計厚みが100μm以上になる枚数を、主配向軸が同一方向となるように直接重ね、サンプル中心部に、主配向軸方向に対して垂直方向にX線をサンプル中心部に入射するようにサンプルをホルダーに固定した後、フィルム厚み方向の反射測定を以下の条件で行い、2次元のX線回折像を得た。
装置:Bruker AXS社製 D8 DISCOVER μHR Hybrid
X線源:CuKα線(多層膜ミラー使用)、波長λ=0.15418nm
出力:50kV、22mA
スリット系:(X線源側)1mm-1mm-0.1mmΦ(試料側)
検出器:2次元検出器(Vantec500)
スキャン:2θ=20°
仰角:ω=10°
カメラ長:10cm
積算時間:300秒/フレーム。
【0079】
(11-2)配向プロファイル
(11-1)で得られた回折像から、回折角(2θ)が19°以上21°以下の範囲を0.5°刻みに、90°を厚み方向とした円周角で40°から140°にスキャンし、それらを積算して配向プロファイルを得た。
【0080】
(11-3)配向角度、配向度
(11-2)で得られた配向プロファイルの最小値にてベースラインを設け、ガウス分布関数を用いて、回折角2θが19°以上21°以下の範囲の配向度0.50以上のピークのうち最も強度が高くなるピークをPBとして分離した。この時のピーク位置を配向角度(°)とした。PBの配向度はピークの半値幅HOから、下記式を用いて求めた。
配向度=(180-HO)/180。
【0081】
(11-4)配向方向における2θプロファイル
(11-3)から求めた配向角度±10°の範囲を0.05°刻みでスキャンし、それらを積算して2θプロファイルを得た。
【0082】
(11-5)結晶子サイズ
(11-4)で得られた2θプロファイルの最小値にてベースラインを設け、ガウス分布関数を用いて、回折角(2θ)が19°以上21°以下の範囲の配向度0.50以上のピークのうち最も強度が高くなるピークを分離した。結晶子サイズ(nm)は、分離した時のピークの半値幅から、Scherrerの式より求めた。尚、Scherrer定数は0.9とし、半値幅の補正値はNIST製のX線回折用標準Si粉末を上記の光学系で測定し、Si回折ピーク(111)から求めた。
【0083】
(12)120℃15分間の加熱処理によって求められるフィルムの主配向軸方向の熱収縮率H1と主配向軸方向と直交する方向の熱収縮率H2
主配向軸方向ならびに主配向軸方向と直交する方向についてフィルムを長さ150mm×幅10mmの矩形に切り出し、中央部の100mm間に油性マジックでマークをつけ、その長さを万能投影機にて測長することで初期長I0を求める。次いで測長したサンプルを120℃に調整したギア式熱風オーブンにセットし、吊るしたフィルムの最下部に2.1gの荷重を取付けて、ギアを回転させながら15分間熱処理する。その後フィルムを取出し常温に冷ましてからマーク間の長さを万能投影機にて測長することで熱収長IHを求める。測長したI0とIHから下記の式(5)より120℃熱収縮率(単位:%)を算出した。各サンプルの主配向軸方向ならびに主配向軸方向と直交する方向で同様の測定を5回ずつ行い、主配向軸方向の平均値をH1(%)、主配向軸方向と直交する方向の平均値をH2(%)とした。
120℃熱収率(%)=(I0-IH)/I0×100 ・・・式(5)。
【0084】
(13)ポリヒドロキシアルカン酸樹脂の含有量
脂肪族ポリエステルフィルムをヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)に溶解し、H-NMRおよび13C-NMRを用いてポリヒドロキシアルカン酸樹脂の含有量(質量%)を測定した。なお、実施例及び比較例においては、フィルム製造時の樹脂含有量から組成を算出した。
【0085】
(14)生分解性
JIS K6954(2008)に準じて湿潤合成コンポストを1L作製し、10Lのポリプロピレン製容器の中に投入した。次いで、5cm×5cmに切り出した評価用フィルムを、内側に2cm角の正方形の形がくり抜かれたポリエチレン製ホルダーで挟み込み、ホルダー内部のフィルムが外部に露出された状態とした。
【0086】
その後、ポリプロピレン製容器内の湿潤合成コンポストに、ホルダーで固定されたフィルムサンプルを投入、28±2℃に制御したオーブン中で、60日間の培養試験をJIS K6954(2008)に準じた方法で実施した。なお、フィルムサンプルを投入する際には、ホルダー中の2cm角のフィルム露出部分がすべて湿潤合成コンポストに覆われる状態とした。また、最初の投入を行った後、2日置きにフィルムサンプルを取り出し、湿潤合成コンポストをスコップで攪拌した後、再度フィルムサンプルを投入することを繰り返し実施した。
【0087】
最初の投入から60日間経過後に、フィルムサンプルを容器から取り出し、デジタルカメラで写真を撮影した。なお、写真の画素数は1200dpi(200万画素)以上として撮影した。写真の画像から、ホルダーの内側の2cm角の枠内に残存したサンプルの面積を求め、(ホルダー内のサンプル初期面積-ホルダー内のサンプル残存面積)/(ホルダー内のサンプル初期面積)×100の計算式を用いて崩壊面積比率(%)を求めた。合計3個のホルダーを同一のコンポスト内で評価し、3個の測定値の算術平均値をフィルムサンプルの崩壊面積比率(%)とし、以下の基準で判定を行った。
A:崩壊面積比率が60%以上
B:崩壊面積比率が40%以上、60%未満
C:崩壊面積比率が20%以上、40%未満
D:崩壊面積比率が5%以上、20%未満
E:崩壊面積比率が5%未満
フィルムの生分解性はD以上が好ましい。
【0088】
(15)搬送速度・張力を変えた際の破れ発生
300mm幅、200m長(6インチ、350mm長コア巻)のフィルムを準備し、下記条件で、3インチ、350mm長コアに巻返しを行い、搬送速度、張力を増加しながら下記の基準で判定を行った。
A:速度10m/分、搬送張力70N/mで巻き返しても破れが発生しなかった
B:速度8m/分、搬送張力70N/mで巻き返しても破れが発生しなかったが、速度10m/分、搬送張力70N/mに変更すると破れが発生した
C:速度5m/分、搬送張力70N/mで巻き返しても破れが発生しなかったが、速度8m/分、搬送張力70N/mに変更すると破れが発生した
D:速度5m/分、搬送張力50N/mで巻き返しても破れが発生しなかったが、速度5m/分、搬送張力70N/mに変更すると破れが発生した
E:速度5m/分、搬送張力50N/mで巻き返すと破れが発生した
フィルムの加工性はD以上が好ましい。
【0089】
(16)Al蒸着後の水蒸気バリア性
<Al蒸着の方法>
フィルム走行装置を具備した真空蒸着装置内にフィルムをセットして、1.00×10-2Paの高減圧状態にした後に、20℃の冷却金属ドラムの上で、アルミニウム金属を加熱蒸発させながらフィルムを走行させてフィルム上に蒸着薄膜層を形成した。その際、蒸着膜の厚みが100nmになるよう制御した。蒸着後、真空蒸着装置内を常圧に戻して、巻取ったフィルムを巻き返し、40℃の温度で2日間エージングして、フィルムにAl(アルミニウム)の蒸着層が積層された積層体を得た。
【0090】
<水蒸気バリア性の評価方法>
Al蒸着した積層体について、MOCON/Modern Controls社製の水蒸気透過率測定装置“PERMATRAN-W”(登録商標)3/30を用いて、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定した。測定はサンプル毎に5回行い、得られた値の平均値を算出し、該フィルムの水蒸気透過率とした(単位:g/m/day)。得られた水蒸気透過率より、積層体の水蒸気バリア性を下記基準に従い判定した。
A:20g/m/day以下
B:20g/m/dayより大きく50g/m/day以下
C:50g/m/dayより大きく75g/m/day以下
D:75g/m/dayより大きく100g/m/day以下
E:100g/m/dayより大きい
フィルムのバリア性はD以上が好ましい。
【0091】
(17)屈曲試験後のピンホール
ASTM F-392に準じて、297×210mmの大きさに切り出したフィルムをテスター産業(株)製恒温槽付ゲルボテスターを用いて、10℃の温度雰囲気にて、500回の繰り返し屈曲試験を10サンプル分実施した後のピンホール個数の平均値を算出した。内容物保持性として下記基準に従い判定した。なお、試験片として切り出した10サンプルは主配向軸方向ならびに主配向軸方向と直交する方向を定めずランダムに切り出した試験片を用いた。
A:0個もしくは3個未満のピンホールが生じた。
B:3個以上、5個未満のピンホールが生じた。
C:5個以上、7個未満のピンホールが生じた。
D:7個以上、10個未満のピンホールが生じた。
E:10個以上のピンホールが生じた。
フィルムの内容物保護性はD以上が好ましい。
【0092】
[樹脂等]
各実施例及び比較例におけるポリヒドロキシアルカン酸フィルムの製造には、以下の樹脂等を使用した。
【0093】
(ポリヒドロキシアルカン酸樹脂)
A1:PHBH樹脂(ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、結晶核剤:ペンタエリスリトール1.0質量%、重量平均分子量Mw:50万、融点:153℃)
A2:PHBH樹脂(ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、結晶核剤:ペンタエリスリトール1.0質量%、重量平均分子量Mw:60万、融点:146℃)
A3:PHBH樹脂(ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、結晶核剤:ベヘン酸アミド1.0質量%、重量平均分子量Mw:50万、融点:153℃)
A4:PHBH樹脂(ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、結晶核剤:タルク1.0質量%、重量平均分子量Mw:50万、融点:153℃)
A5:結晶核剤を含まないPHBH樹脂(ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシヘキサノエート)、重量平均分子量Mw:50万、融点:153℃)
A6:PHBV樹脂(ポリ(3-ヒドロキシブチレート-co-3-ヒドロキシバレレート)結晶核剤:ペンタエリスリトール1.0質量%、重量平均分子量Mw:45万、融点:170℃)
(実施例1)
ポリヒドロキシアルカン酸樹脂原料(A1)を単軸溶融押出機に供給した。ここで、押出機供給ホッパー内の酸素濃度を0.05体積%に制御し、それぞれの押出機にて温度170℃で溶融押出を行った後、250μmカットのメッシュ状フィルタで押し出された溶融樹脂から異物を除去した。その後、Tダイに導いてシート状に吐出させ、吐出させた溶融シートを30℃に保持されたキャスティングドラム上で冷却固化し、未延伸シートを得た。
【0094】
次に、該未延伸シートをキャスティングドラムと長手方向(MD)延伸工程に入る区間にて製膜速度ドロー比を108%掛けながら、MD延伸工程に未延伸シートを導き、MD延伸工程内で複数のロール群にて予熱30℃で100秒間保ち、引き続き152℃の温度に1秒間保ち、次いで周速差を設けた152℃の温度で保たれたロール間に通し、長手方向に3.5倍に延伸した。続いて、延伸後のフィルムを30℃に保たれたロール間に通して冷却した後、室温まで冷却して一軸配向フィルムを得た。さらに、得られた一軸配向フィルムをテンターに導き、幅方向両端部をクリップで把持したまま100℃に予熱し、幅方向に100℃で2.4倍に延伸した後、幅方向に120℃で5%の弛緩を40%/minの速度で与えながら120℃で15秒間の熱処理を行った。その後、クリップで幅方向両端部を引き続き緊張把持したまま50℃の冷却工程を経てフィルムをテンターの外側へ導き、幅方向両端部のクリップを解放し、一方の表面にコロナ処理をした後、巻き取り機にて厚み20μmのポリヒドロキシアルカン酸フィルムをロールとして巻き取った。
【0095】
続いて、上記のポリヒドロキシアルカン酸フィルムをロールより巻き出し、そのコロナ放電処理を施した面に前述の方法でAl蒸着を施し、Al蒸着層(D層)を有する積層体を得た。
【0096】
(実施例2~6、10~15)
製造条件を表に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にしてポリヒドロキシアルカン酸フィルムおよび積層体の作製を行った。
【0097】
(実施例7)
ポリヒドロキシアルカン酸樹脂としてA2を用い、製膜条件を表に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にしてポリヒドロキシアルカン酸フィルムおよび積層体の作製を行った。
【0098】
(実施例8)
ポリヒドロキシアルカン酸樹脂としてA3を用い、製膜条件を表に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にしてポリヒドロキシアルカン酸フィルムおよび積層体の作製を行った。
【0099】
(実施例9)
ポリヒドロキシアルカン酸樹脂としてA6を用い、押出機の温度を190℃、製膜条件を表に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にしてポリヒドロキシアルカン酸フィルムおよび積層体の作製を行った。
【0100】
(比較例1)
ポリヒドロキシアルカン酸樹脂原料(A1)を単軸溶融押出機に供給し、170℃で溶融押出を行った後、250μmカットのメッシュ状フィルタで押し出された溶融樹脂から異物を除去した。その後、直径60mmの丸ダイを有するインフレーション成形機にて成形温度150℃、ブロー比2.5で成形し、コロナ処理を行った後、巻き取り機にて厚み20μmのインフレーション法のポリヒドロキシアルカン酸フィルムをロールとして巻き取った。続いて、上記のポリヒドロキシアルカン酸フィルムをロールより巻き出し、そのコロナ放電処理を施した面に前述の方法でAl蒸着を施し、Al蒸着層(D層)を有する積層体を得た。
【0101】
(比較例2)
二軸延伸ならびに熱処理を施さない以外は実施例1と同様にして厚み60μmの未延伸ポリヒドロキシアルカン酸フィルムおよび積層体の作製を行った。
【0102】
(比較例3)
押出機供給ホッパー内の酸素濃度を0.15体積%に制御し、縦延伸、横延伸の倍率、熱処理温度を表に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にして厚み40μmポリヒドロキシアルカン酸フィルムおよび積層体の作製を行った。
【0103】
(比較例4)
ポリヒドロキシアルカン酸樹脂としてA4を用い、製膜条件を表に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にしてポリヒドロキシアルカン酸フィルムおよび積層体の作製を行った。
【0104】
(比較例5)
ポリヒドロキシアルカン酸樹脂として核剤を含有しないA5を用い、製膜条件を表に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にしてポリヒドロキシアルカン酸フィルムを得ようとしたが、延伸工程で破れが発生しフィルムを得ることができなかった。
【0105】
(比較例6)
延伸方向をMDのみとし、製膜条件を表に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にして厚み25μmのポリヒドロキシアルカン酸フィルムおよび積層体の作製を行った。
【0106】
(比較例7)
キャスト出口に対する縦延伸入り口のフィルム搬送速度を100%に制御し、他の製膜条件を表に示す条件に変更した以外は実施例1と同様にしてポリヒドロキシアルカン酸フィルムおよび積層体の作製を行った。
【0107】
【表1】
【0108】
【表2】
【0109】
【表3】
【0110】
【表4】
【0111】
【表5】
【0112】
【表6】
【0113】
【表7】
【0114】
【表8】
【0115】
【表9】
【0116】
【表10】
【0117】
【表11】
【0118】
【表12】
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、優れた生分解性を有しながら突刺強度に優れたポリヒドロキシアルカン酸フィルムを提供することができる。本発明のポリヒドロキシアルカン酸フィルムは、上記特性を具備するため、生分解性、内容物保護機能、バリア性に優れるため、包装用途や農林水産用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0120】
1:回折像
2:X線源
3:試料
4:厚み方向
5:主配向軸方向
6:スキャン範囲
7:回折角2θ
8:主配向軸方向と直交する方向
9:仰角
図1
図2
図3