IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社パイオラックスの特許一覧

特開2024-127814ディテントスプリング及びその製造方法
<>
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図1
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図2
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図3
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図4
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図5
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図6
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図7
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図8
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図9
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図10
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図11
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図12
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図13
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図14
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図15
  • 特開-ディテントスプリング及びその製造方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127814
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】ディテントスプリング及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/38 20060101AFI20240912BHJP
   F16F 1/18 20060101ALI20240912BHJP
   B21D 28/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
F16H63/38
F16F1/18 Z
B21D28/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024030385
(22)【出願日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】P 2023036210
(32)【優先日】2023-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】楠木 竜
(72)【発明者】
【氏名】和田 明伸
【テーマコード(参考)】
3J059
3J067
4E048
【Fターム(参考)】
3J059AD04
3J059BA33
3J059BC01
3J059BD03
3J059CA03
3J059CA12
3J059EA01
3J059EA02
3J059GA20
3J067FA27
3J067GA01
4E048AB03
(57)【要約】
【課題】被固定部材に対する固定時の剛性や荷重特性を高めることができる、ディテントスプリングを提供する。
【解決手段】このディテントスプリング10は、基部20と、延出部30と、ローラ支持部35と、基部20の側辺から延出して折曲形成されると共に、固定具が挿入される固定孔45を有し、固定具を介して被固定部材に固定される固定フランジ部40と、基部20に第1折曲部を51介して連設されると共に、基部20に対して重ね合わされる、基部重なり部50と、基部重なり部50に対して、第2折曲部61を介して連設され、固定フランジ部40に対して重ね合わされると共に、固定具が挿入される挿通孔65が形成された、フランジ重なり部60とを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被固定部材に固定され、1枚の金属板からなる板状をなしたディテントスプリングであって、
基部と、
該基部に対して折曲され且つ所定長さで延出する延出部と、
該延出部の延出方向の先端部に設けられ、ローラを回転支持するローラ支持部と、
前記基部の側辺から延出して折曲形成されると共に、固定具が挿入される固定孔を有しており、前記固定具を介して前記被固定部材に固定される固定フランジ部と、
前記基部に第1折曲部を介して連設されると共に、前記基部に対して重ね合わされる、基部重なり部と、
前記基部重なり部に対して、第2折曲部を介して連設され、前記固定フランジ部に対して重ね合わされると共に、前記固定具が挿入される挿通孔が形成された、フランジ重なり部とを有していることを特徴とするディテントスプリング。
【請求項2】
前記基部及び/又は前記基部重なり部には、前記基部に前記基部重なり部が重ね合わされた状態で、前記基部から前記基部重なり部が離間する方向の動きを規制する、規制部が設けられている請求項1記載のディテントスプリング。
【請求項3】
前記フランジ重なり部は、前記固定フランジ部に対して離間した状態で重ね合わされる請求項1記載のディテントスプリング。
【請求項4】
前記挿通孔の内周に生じたバリが前記固定孔の内周に生じたバリに向き合うように、前記フランジ重なり部が、前記固定フランジ部に対して重ね合わされる請求項1又は3記載のディテントスプリング。
【請求項5】
前記基部重なり部は、前記基部に対する前記延出部の折曲方向と同じ方向となるように、前記第1折曲部を介して折曲されている請求項1又は3記載のディテントスプリング。
【請求項6】
前記第1折曲部は、両端が貫通した筒状をなしている請求項1又は3記載のディテントスプリング。
【請求項7】
前記規制部は所定長さで延びる板状をなしており、
該規制部は、前記基部又は前記基部重なり部の一方から延出すると共に、折曲部を介して折り返されて、延出方向の先端部が、前記基部又は前記基部重なり部の他方の、厚さ方向の一端面に係止するように構成されている請求項2記載のディテントスプリング。
【請求項8】
請求項1又は3記載のディテントスプリングを製造するための、ディテントスプリングの製造方法であって、
前記基部、延出部形成部分、ローラ支持部形成部分、固定フランジ部形成部分、第1折曲部形成部分、基部重なり部形成部分、第2折曲部形成部分、フランジ重なり部形成部分、及び、前記固定孔及び前記挿通孔を、1枚の金属板から所定の打ち抜き方向に打ち抜き形成する第1工程と、
前記基部に対して前記延出部形成部分を所定方向に折曲して前記延出部を形成すると共に、前記ローラ支持部形成部分から前記ローラ支持部を形成する、第2工程と、
前記基部に対して前記基部重なり部形成部分を、前記第1折曲部形成部分を介して、前記固定孔及び前記挿通孔が互いに連通するように重ね合わせて、前記第1折曲部を形成すると共に、前記基部重なり部を形成する第3工程と、
前記基部に対して前記固定フランジ部形成部分を所定方向に折曲すると同時に、前記基部重なり部に対して前記フランジ重なり部形成部分を、前記第2折曲部形成部分を介して、前記固定フランジ部形成部分の折曲方向と同じ方向に折曲して、前記固定フランジ部を形成すると共に、前記第2折曲部を形成しつつ前記固定フランジ部に対して前記フランジ重なり部形成部分を重ね合わせて、前記フランジ重なり部を形成する、第4工程とを有することを特徴とするディテントスプリングの製造方法。
【請求項9】
前記第3工程において、前記基部に対して前記基部重なり部形成部分を、前記打ち抜き方向と同一方向に向くように重ね合わせる請求項8記載のディテントスプリングの製造方法。
【請求項10】
前記第1工程において、前記基部と前記基部重なり部形成部分との間に、前記基部及び前記基部重なり部形成部分の連設方向に延びる切欠きを、打ち抜き形成する請求項8記載のディテントスプリングの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動変速機に用いられる、ディテントスプリング及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の自動変速機は、シフトレバーを操作して、P(駐車)や、R(後退)、D(ドライブ)等の作動モードを適宜切り替えている。このシフトレバーを、上記の「P」や「R」等の作動モードに保持するための構造として、マニュアルプレートと、ディテントスプリングとが用いられている。マニュアルプレートには、「P」や「R」等に対応した複数の嵌合凹部が形成されており、シフトレバーの操作に連動して回動する。
【0003】
一方、ディテントスプリングは板状をなし、その先端側に二股状をなしたローラ支持部が設けられ、これにローラが回動支持されており、マニュアルプレートの複数の嵌合凹部に弾性的に嵌合するようになっている。
【0004】
そして、シフトレバーを所定荷重で操作して、マニュアルプレートを回動させることによって、所定の嵌合凹部に嵌合したローラを、ディテントスプリングの先端側を撓ませつつ、他の嵌合凹部に嵌合させることで、シフトレバーを所定の動作モードに切り替え可能となっている。
【0005】
上記構造を有するものとして、下記特許文献1には、マニュアルプレートとディテントスプリングからなるディテント機構において、ディテントスプリングの固定側への取り付け部が、ディテントスプリングとは別体のブラケットを用いて固定するようにした、自動変速機のディテント機構が記載されている。
【0006】
特許文献1の図2(a)に示すように、ディテントスプリングは、取付部と、該取付部から延出したばね部とを有している。また、ブラケットは、ディテントスプリングが取付けられるスプリング取付部と、該スプリング取付部に対して折曲形成され、変速機ケースの側壁にボルトを介して固定される部分とを有している(特許文献1の図2(b)参照)。
【0007】
そして、特許文献1の図2(a),(c)に示すように、ディテントスプリングは、その取付部が、ブラケットのスプリング取付部に重ね合わされた状態で、ボルト及びナットで締付け固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3358848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、ディテントスプリングとしては、被取付部材に対してしっかりと固定可能な剛性が求められていると共に、ローラが所定の嵌合凹部から他の嵌合凹部へと移動する際に、節度感・クリック感が低下しない、という荷重特性が求められている。
【0010】
この点、上記特許文献1のディテント機構では、ディテントスプリングの取付部が、ブラケットのスプリング取付部に重ね合わされており、取付部全体の剛性向上は図られているものの、ディテントスプリング自体の剛性は向上しない。そのため、マニュアルプレート回動時に、ローラによってディテントスプリングの延出部が撓み変形したときに、その弾性力(ばね力、弾性復元力とも言える)が維持されにくく、上記のような荷重特性は満足しにくい傾向となる。
【0011】
したがって、本発明の目的は、1枚の金属板からなるディテントスプリングのみで、被固定部材に対する固定時の剛性や荷重特性を高めることができる、ディテントスプリング、及び、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一つは、被固定部材に固定され、1枚の金属板からなる板状をなしたディテントスプリングであって、基部と、該基部に対して折曲され且つ所定長さで延出する延出部と、該延出部の延出方向の先端部に設けられ、ローラを回転支持するローラ支持部と、前記基部の側辺から延出して折曲形成されると共に、固定具が挿入される固定孔を有しており、前記固定具を介して前記被固定部材に固定される固定フランジ部と、前記基部に第1折曲部を介して連設されると共に、前記基部に対して重ね合わされる、基部重なり部と、前記基部重なり部に対して、第2折曲部を介して連設され、前記固定フランジ部に対して重ね合わされると共に、前記固定具が挿入される挿通孔が形成された、フランジ重なり部とを有していることを特徴とする。
【0013】
また、本発明のもう一つは、上記のディテントスプリングを製造するための、ディテントスプリングの製造方法であって、前記基部、延出部形成部分、ローラ支持部形成部分、固定フランジ部形成部分、第1折曲部形成部分、基部重なり部形成部分、第2折曲部形成部分、フランジ重なり部形成部分、及び、前記固定孔及び前記挿通孔を、1枚の金属板から所定の打ち抜き方向に打ち抜き形成する第1工程と、前記基部に対して前記延出部形成部分を所定方向に折曲して前記延出部を形成すると共に、前記ローラ支持部形成部分から前記ローラ支持部を形成する、第2工程と、前記基部に対して前記基部重なり部形成部分を、前記第1折曲部形成部分を介して、前記固定孔及び前記挿通孔が互いに連通するように重ね合わせて、前記第1折曲部を形成すると共に、前記基部重なり部を形成する第3工程と、前記基部に対して前記固定フランジ部形成部分を所定方向に折曲すると同時に、前記基部重なり部に対して前記フランジ重なり部形成部分を、前記第2折曲部形成部分を介して、前記固定フランジ部形成部分の折曲方向と同じ方向に折曲して、前記固定フランジ部を形成すると共に、前記第2折曲部を形成しつつ前記固定フランジ部に対して前記フランジ重なり部形成部分を重ね合わせて、前記フランジ重なり部を形成する、第4工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、固定フランジ部にフランジ重なり部が重ね合わせられた状態で、固定孔及び挿通孔に挿入される固定具を介して、固定フランジ部が、被固定部材に対して、フランジ重なり部ごと固定されるので、被固定部材に対する固定フランジ部の剛性を高めて、被固定部材にディテントスプリングをしっかりと固定することができる。
【0015】
また、基部には、基部重なり部が重ね合わされるので、基部の肉厚を増大させることができ、ディテントスプリングとしての荷重特性を高めることができる。
【0016】
よって、1枚の金属板からなる板状をなしたディテントスプリングのみによって、被固定部材に対する固定時の剛性を高めることができると共に、荷重特性も高めることができる、ディテントスプリングを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るディテントスプリングの、第1実施形態を示す斜視図である。
図2】同ディテントスプリングであって、図1とは異なる方向から見た場合の斜視図である。
図3】同ディテントスプリングの展開図である。
図4】同ディテントスプリングの側面図である。
図5】同ディテントスプリングを、被固定部材に固定具を介して固定した状態の斜視図である。
図6図5のA-A矢視線における断面図である。
図7】本発明に係るディテントスプリングとマニュアルプレートとの関係を示す説明図である。
図8】本発明に係るディテントスプリングの、第2実施形態を示す斜視図である。
図9】同ディテントスプリングを、被固定部材に固定具を介して固定した状態の斜視図である。
図10】同ディテントスプリングとマニュアルプレートとの関係を示す説明図である。
図11】本発明に係るディテントスプリングの、第3実施形態を示しており、規制部を折曲する前の状態の斜視図である。
図12】同ディテントスプリングにおいて、規制部を折曲して、基部から基部重なり部が離間する方向の動きを規制した状態の斜視図である。
図13】本発明に係るディテントスプリングの、第4実施形態を示しており、規制部を折曲する前の状態の斜視図である。
図14】同ディテントスプリングにおいて、規制部を折曲して、基部から基部重なり部が離間する方向の動きを規制した状態の斜視図である。
図15】本発明に係るディテントスプリングの、第5実施形態を示しており、規制部を折曲する前の状態の斜視図である。
図16】同ディテントスプリングにおいて、規制部を折曲して、基部から基部重なり部が離間する方向の動きを規制した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(ディテントスプリングの第1実施形態)
以下、図1~7を参照して、本発明に係るディテントスプリングの、第1実施形態について説明する。
【0019】
図5に示すように、この実施形態におけるディテントスプリング10は、被固定部材1に固定され、1枚の金属板からなる板状をなしたものであって、また、図7に示すように、マニュアルプレート3に形成された複数の嵌合凹部4に、嵌合するローラ37を支持するものである。なお、ローラ37は、外周が円形状をなした本体を有しており、この本体の両端から一対の軸部38,38が突出した構成となっている。
【0020】
前記マニュアルプレート3は、略扇状をなしており、自動変速機の、図示しないシフトレバーに連動して回動するようになっている。
【0021】
また、マニュアルプレート3の、扇状をなした外周に沿って、山部(頂部)及び谷部(底部)が交互に連続してなる、複数(ここでは3個)の嵌合凹部4が形成されている。各嵌合凹部4の両側には、凸状をなした頂部4aが設けられている。なお、各嵌合凹部4は、自動変速機のシフトレバーの「P」や、「R」、「D」等の各作動モードに対応して所定位置に形成されている。
【0022】
そして、図1及び図2に示すように、このディテントスプリング10は、基部20と、該基部20から延出する延出部30と、該延出部30の先端部に設けられローラ37を回転支持するローラ支持部35と、被固定部材1に固定され且つ固定孔45を有する固定フランジ部40と、基部20に対して重ね合わされる基部重なり部50と、固定フランジ部40に対して重ね合わされ且つ挿通孔65を有するフランジ重なり部60とを有している。
【0023】
まず、基部20について説明する。
【0024】
この実施形態の基部20は、所定幅で且つ所定長さで延びる長板状をなしている。なお、基部20が延びる方向を「延出方向X」とする。また、延出方向Xに対して直交する方向を「幅方向Y」とする。更に、延出方向X及び幅方向Yに対して直交する方向を「厚さ方向Z」とする。これらは、ディテントスプリング10自体、及び、ディテントスプリング10を構成する基部20以外の各部分においても同様の意味である。
【0025】
また、基部20の延出方向Xの一端側が「一端部21」をなしており、延出方向Xの他端側が「他端部22」をなしている。更に、基部20は、幅方向Yに沿って延びる両側辺23,24を有している。また、基部20は、その厚さ方向Z(基部20の平坦面の面方向に直交する方向とも言える)の一方の面が「一端面20a」をなし、厚さ方向の他方の面が「他端面20b」をなしている。
【0026】
次に、基部20に対して折曲され且つ所定長さで延出する、延出部30について説明する。
【0027】
この実施形態の場合、基部20の延出方向Xの一端部21から、基部20に対して所定角度で折曲された(折り曲げられた)延出部30が所定長さで延びている。この延出部30は、基部20の厚さ方向Zの一端面20aに近接する方向となるように折曲されている。なお、基部20に対する延出部30の折曲方向を、「折曲方向B1」とする(図3参照)。
【0028】
また、延出部30の延出方向の先端部には、二股状に延びる一対の延出片31,31が設けられている。更に、各延出片31の延出方向の先端部には、ローラ支持部35がそれぞれ設けられている。ここでは、各延出片31の先端部分を、所定方向(図3の屈曲方向B2参照)に巻回するように曲げ形成することで、略円筒状をなしたローラ支持部35がそれぞれ設けられている。
【0029】
そして、一対のローラ支持部35,35に、ローラ37の軸部38,38が回動可能に支持されるようになっている(図1,2参照)。
【0030】
次に、基部20の側辺から延出して折曲形成されると共に、固定具が挿入される固定孔45を有しており、固定具を介して被固定部材1に固定される、固定フランジ部40について説明する。
【0031】
なお、この実施形態における固定具は、図5図6に示すように、頭部5a及び該頭部5aから延びる軸部5bを有するボルト5と、該ボルト5の軸部5bに螺着されるナット6とからなる。
【0032】
そして、この実施形態における固定フランジ部40は、基部20の幅方向Yの一側辺23であって、基部20の他端部22寄りの位置から延出して折曲形成されている(折り曲げられて形成されている)。なお、固定フランジ部40は、基部20に対して屈曲形成されている(屈曲させて形成されている)、とも言える。これは延出部30や、基部重なり部50、フランジ重なり部60等においても同様である。
【0033】
また、固定フランジ部40は、基部20の一側辺23から外方に向けてやや突出した(張り出した)基端部41を有しており、この基端部41の所定箇所が、折曲部分43を介して、基部20の一端面20aに近接する方向に折曲されて、基部20の面方向に対して直交するように立設されている。
【0034】
なお、固定フランジ部40は、立設方向先端部の角部が丸みを帯びた略四角片状をなしている。また、前記折曲部分43は、丸みを帯びた曲面形状(R形状)をなしている。
【0035】
なお、固定フランジ部40の、幅方向Yの一端側の面を「一端面40a」とし(厚さ方向の一端面とも言える)し、幅方向Yの他端側の面を「他端面40b」とする(厚さ方向の他端面とも言え、一端面40aとは反対面)。
【0036】
また、固定フランジ部40の所定箇所(ここでは延出方向Xの中央部で且つ立設方向の中央位置)には、円形孔状をなした固定孔45が、板厚方向に貫通して形成されている。この固定孔45に、固定具をなすボルト5の軸部5bが挿通される。なお、この固定孔45の内径は、フランジ重なり部60に形成された挿通孔65の内径よりも大きくなるように形成されている(図1及び図6参照)。
【0037】
次に、基部20に第1折曲部51を介して連設されると共に、基部20に対して重ね合わされる、基部重なり部50について説明する。
【0038】
図1に示すように、この実施形態における基部重なり部50は、基部20の延出方向Xの他端部22の、幅方向Yの両側部に設けられた一対の第1折曲部51,51を介して連設されており、基部20と同一幅の板状をなしている。
【0039】
なお、一対の第1折曲部51,51は、基部20の他端部22に対して、その幅方向Yの中央部に設けられた切欠き57を介して、幅方向Yの両側部に設けられている、とも言える。
【0040】
また、基部重なり部50は、その厚さ方向Zの一端面50aが、基部20の厚さ方向Zの他端面20bに当接する方向となるように折曲されている。すなわち、基部重なり部50は、基部20に対する延出部30の折曲方向B1とは反対方向となるように、第1折曲部51を介して折曲されている。なお、基部20に対する基部重なり部50の折曲方向を、「折曲方向B3」とする(図3参照)。
【0041】
各第1折曲部51は、軸方向の両端が貫通した筒状をなしている。この実施形態の場合、各第1折曲部51は、幅方向Yに沿った軸方向両端部が開口した略円筒状をなしている。
【0042】
また、図1,2,4に示すように、各第1折曲部51の周方向の、基部20の厚さ方向Zの一端面20a側の部分は、基部20に対する延出部30の折曲方向B1と同一方向に向けて、曲面状に膨らんだ膨出部分52をなしている。一方、各第1折曲部51の周方向の、基部20の厚さ方向Zの他端面20b側は、平坦面状の平坦面部分53をなしている。
【0043】
すなわち、各第1折曲部51は、周方向に膨らんだ膨出部分52と、平坦面状をなした平坦面部分53とを有する、軸方向から見て異形の略円筒状をなしている。
【0044】
なお、図2に示すように、基部重なり部50の延出方向Xの一方の端部54の、幅方向Yの両側部分に、各第1折曲部51の平坦面部分53が連結されている。
【0045】
次に、基部重なり部50に対して、第2折曲部61を介して連設され、固定フランジ部40に対して重ね合わされると共に、固定具が挿入される挿通孔65が形成された、フランジ重なり部60について説明する。
【0046】
図2に示すように、この実施形態におけるフランジ重なり部60は、基部重なり部50の延出方向Xの一端部寄りの箇所であって、且つ、幅方向Yの一方の側辺56に折曲形成されている。
【0047】
また、フランジ重なり部60は、その基端部62が、基部重なり部50の側辺56から外方に向けてやや突出しており、この基端部62の所定箇所が、第2折曲部61を介して、固定フランジ部40の他端面40bに近接する方向に折曲されて、基部20の面方向に対してほぼ直交するように立設されている。
【0048】
更に、フランジ重なり部60は、固定フランジ部40と同一形状、すなわち、その立設方向先端部の角部が丸みを帯びた略四角片状をなしている。また、前記第2折曲部61は、固定フランジ部40の折曲部分43に適合するように、丸みを帯びた曲面形状をなしている。
【0049】
更に図1図2に示すように、フランジ重なり部60は、固定フランジ部40の外側に位置するように重ね合わされる構成となっている。
【0050】
なお、フランジ重なり部60の、固定フランジ部40の他端面40bに対向配置される、幅方向Yの一端側の面を「一端面60a」とし(厚さ方向の一端面とも言える)、幅方向Yの他端側の面を「他端面60b」とする(厚さ方向の他端面とも言え、一端面60aとは反対面)。
【0051】
また、図1図2に示すように、フランジ重なり部60は、固定フランジ部40に対して離間した状態で重ね合わされる構成となっている。すなわち、フランジ重なり部60は、その一端面60aが、固定フランジ部40の他端面40bに対して、所定の隙間Sを空けて離間するように立設されている。
【0052】
更に、フランジ重なり部60には、固定フランジ部40に形成された固定孔45に対して整合した位置、すなわち、延出方向Xの中央で且つ立設方向の中央位置に、円形孔状をなした挿通孔65が、板厚方向に貫通して形成されている。この挿通孔65は、固定孔45と同様に、固定具をなすボルト5の軸部5bが挿通される。なお、この挿通孔65の内径は、固定孔45の内径よりも小さくなるように形成されている(図1及び図6参照)。
【0053】
ところで、図1図3には、ディテントスプリング10を製造すべく(この製造方法については後述する)、打ち抜き形成する際の金属板Mが示されており、また、図1には、金属板Mを打ち抜き形成するときの、打ち抜き方向Pが示されている。このように金属板Mを打ち抜き形成する際には、挿通孔65の内周(挿通孔65の、打ち抜き方向P側に向く内周縁部、すなわち、挿通孔65の、フランジ重なり部60の一端面60a側の内周縁部)にバリが生じることがある。
【0054】
なお、固定フランジ部40に形成される固定孔45の内周(固定孔45の、打ち抜き方向P側に向く内周縁部、すなわち、固定孔45の、固定フランジ部40の他端面40b側の内周縁部)にも、同様にバリが生じることがある。
【0055】
この実施形態の場合、挿通孔65の内周に生じたバリが、固定孔45の内周に生じたバリに向き合うように、フランジ重なり部60が、固定フランジ部40に対して重ね合わされるように構成されている。
【0056】
すなわち、図1図2、及び図6に示すように、固定フランジ部40の外側に位置するように重ね合わされる、フランジ重なり部60は、更に、その一端面60a(内面)が、固定フランジ部40の他端面40b(外面)に対して、互いに向き合うように対向配置された状態で、重ね合わされるようになっており、バリが生じる部分(挿通孔65の一端面60a側の内周縁部、及び、固定孔45の他端面50b側の内周縁部)が互いに向き合って外面側に露出しない構成となっている。
【0057】
以上の各構成部分からなるディテントスプリング10は、基部20、延出部30、ローラ支持部35、固定フランジ部40、基部重なり部50、フランジ重なり部60が、1枚の金属板から一体形成されている。
【0058】
この実施形態の場合、ディテントスプリング10は、バネ鋼や、バネ用ステンレス鋼等からなる1枚の金属板Mを、所定形状に打ち抜いて適宜曲げ形成(折曲形成)することによって、基部20、延出部30、ローラ支持部35、固定フランジ部40、基部重なり部50、フランジ重なり部60の全ての部分が一体形成されるようになっている。
【0059】
また、ディテントスプリング10を構成する各部分(基部20,延出部30、固定フランジ部40、基部重なり部50、フランジ重なり部60等)の板厚は、全て同一となっている。
【0060】
(ディテントスプリングの製造方法)
次に、上記構成からなるディテントスプリング10の製造方法の、一実施形態について説明する。
【0061】
このディテントスプリング10の製造方法は、以下の第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とを有している。
【0062】
第1工程は、基部20、延出部形成部分30´、ローラ支持部形成部分35´、固定フランジ部形成部分40´、基部重なり部形成部分50´、第1折曲部形成部分51´、フランジ重なり部形成部分60´、第2折曲部形成部分61´、及び、固定孔45及び挿通孔55を、1枚の金属板Mから所定の打ち抜き方向Pに打ち抜き形成する工程である。
【0063】
また、この実施形成においては、上記の第1工程において、基部20と基部重なり部形成部分50´との間に、基部20及び基部重なり部形成部分50´の連設方向に延びる切欠き57を、打ち抜き形成する工程を含むものとなっている。
【0064】
これらについて具体的に説明すると、図3には、ディテントスプリング10を打ち抜いて折曲形成する前の、展開状態が示されている。また、図3中には、ディテントスプリング10の外周形状及び各孔45,55を打ち抜き形成するための、1枚の金属板M(ここでは便宜上、長方形状をなしている)が示されている。
【0065】
そして、上記の第1工程によって、1枚の金属板Mを、所定の打ち抜き方向P(図1参照)に打ち抜いて、基部20を形成すると共に(基部20は折曲する必要がないので、打ち抜きと同時に形成されることになる)、将来的に各部をなす部分、すなわち、延出部30が形成される部分をなす延出部形成部分30´と、ローラ支持部35が形成される部分をなすローラ支持部形成部分35´と、固定フランジ部40が形成される部分をなす固定フランジ部形成部分40´と、基部重なり部50が形成される部分をなす基部重なり部形成部分50´と、第1折曲部51が形成される部分をなす第1折曲部形成部分51´と、フランジ重なり部60が形成される部分をなすフランジ重なり部形成部分60´と、第2折曲部形成部分61が形成される部分をなす第2折曲部形成部分61´と、を打ち抜き形成する。
【0066】
また、上記第1工程においては、更に、固定フランジ部形成部分40´に固定孔45を打ち抜き形成すると共に、フランジ重なり部形成部分60´に挿通孔65を打ち抜き形成する。
【0067】
更に図3に示すように、基部20の延出方向Xの他端部22と、基部重なり部形成部分50´の延出方向Xの一端部との間であって、それらの幅方向Yの中間部分に、基部20及び基部重なり部形成部分50´の連設方向(延出方向Xに沿った方向)に沿って延びる長手方向両端が円弧状をなした貫通孔状の切欠き57を打ち抜き形成する。
【0068】
第2工程は、基部20に対して延出部形成部分30´を所定方向に折曲して延出部30を形成すると共に、ローラ支持部形成部分35´からローラ支持部35を形成する工程である。
【0069】
この実施形態では、図3に示すように、基部20の延出方向Xの一端部21に位置する折曲線L1を介して、基部20に対して延出部形成部分30´を、折曲方向B1に示す方向に折曲することで、延出部30を折曲形成する。また、延出部30の一対の延出片31,31の延出方向の先端部を、図3の屈曲方向B2に示す方向に、巻回するように曲げ形成することで、一対のローラ支持部35,35がそれぞれ形成する。
【0070】
第3工程は、基部20に対して基部重なり部形成部分50´を、第1折曲部形成部分51´を介して、固定孔45及び挿通孔55が互いに連通するように重ね合わせて、第1折曲部51を形成すると共に、基部重なり部50を形成する工程である。
【0071】
また、上記3工程においては、更に、基部20に対して基部重なり部形成部分50´を、打ち抜き方向P(図1参照)と同一方向に向くように重ね合わせるように折曲する。すなわち、基部20が打ち抜き方向Pとは反対方向(打ち抜き方向Pの基端側であり、矢印とは反対側)に配置され、且つ、基部重なり部形成部分50´が打ち抜き方向Pに向かう方向(打ち抜き方向Pの先端側であり、矢印側)に配置されるように、基部20に対して基部重なり部形成部分50´を重ね合わせる。
【0072】
この実施形態では、図3に示すように、第1折曲部形成部分51´の延出方向中間に位置する折曲線L2を介して、基部20に対して基部重なり部形成部分50´を、打ち抜き方向Pと同一方向とされた折曲方向B3に示す方向に折曲する。
【0073】
これによって、略円筒状をなした一対の第1折曲部51,51を形成すると共に、基部20の厚さ方向Xの他端面20bに当接して重ね合わされる、基部重なり部50を折曲形成する。
【0074】
第4工程は、基部20に対して固定フランジ部形成部分40´を所定方向に折曲すると同時に、基部重なり部50に対してフランジ重なり部形成部分60´を、第2折曲部形成部分61´を介して、固定フランジ部形成部分40´の折曲方向と同じ方向に折曲して、固定フランジ部40を形成すると共に、第2折曲部61を形成しつつ固定フランジ部40に対してフランジ重なり部形成部分60´を重ね合わせて、フランジ重なり部60を形成する工程である。
【0075】
この実施形態では、図3に示すように、固定フランジ部40の基端部41に位置する折曲線L3を介して、基部20に対して固定フランジ部形成部分40´を、折曲方向B4に示す方向に折曲する。
【0076】
これと同時に、第2折曲部形成部分61´に位置する折曲線L4を介して、基部重なり部50に対してフランジ重なり部形成部分60´を、折曲方向B5に示す方向に折曲する。この折曲方向B5は、一旦、基部20に対して基部重なり部形成部分50´を折曲方向B3に折曲した後、折曲するものであるので、基部20に対する固定フランジ部形成部分40´の折曲方向B4と同一方向となる。
【0077】
これによって、丸みを帯びた折曲部分43を形成しつつ、固定フランジ部40を折曲形成すると共に、丸みを帯びた第2折曲部61を形成しつつ、固定フランジ部40に対してフランジ重なり部形成部分60´を外側に重ね合わせて、フランジ重なり部60を折曲形成する。
【0078】
この際、フランジ重なり部60の内面(一端面60a)が、固定フランジ部40の外面(他端面40b)に対して、所定隙間Sを空けて離間した状態で重ね合わされるように、フランジ重なり部60と固定フランジ部40とが折曲形成される。
【0079】
上記のように、1枚の金属板Mを所定形状に打ち抜き形成した後、折曲形成してなるディテントスプリング10は、その生材(熱処理前のもの)を、所定速度で移動する図示しないコンベアに載置した後、図示しない熱処理炉内を所定速度で移動させて、熱処理を施すことによって、所定の弾性力を有するディテントスプリング10を製造することができる。
【0080】
(変形例)
本発明を構成する基部、延出部、固定フランジ部、基部重なり部、フランジ重なり部等の、形状や、構造、レイアウト等は、上記態様に限定されるものではない。
【0081】
また、この実施形態における固定フランジ部40は、基部20の一方の側辺23側に折曲形成されているが、固定フランジ部は、基部20の他方の側辺24側に折曲形成されていてもよい。
【0082】
更に、この実施形態では、第1折曲部51は、略円筒状をなす一対のものからなるが、第1折曲部は、筒状でなくともよく、例えば、U字枠状をなしていてもよい。また、第1折曲部は、基部20の幅方向Yの中央部に配置されたり、基部20の幅方向Yの全域に亘って配置されたりしていてもよく、3個以上の筒状等としてもよい。
【0083】
更に、この実施形態では、基部重なり部50は、基部20の他端面20bに当接する方向となるように折曲されているが、基部重なり部は、基部20の一端面20aに当接する方向に折曲してもよい(これについては他の実施形態で説明する)。
【0084】
また、この実施形態では、固定孔45及び挿通孔65は共に円形孔状をなしているが、各孔は、例えば、楕円形、長孔状、矩形状、多角形状等としてもよく、更に、固定孔と挿通孔とで異なる形状としてもよく、固定具を挿通可能であればよい。
【0085】
更に、この実施形態では、ディテントスプリング10を構成する各部分の板厚は、全て同一となっているが、各部分のうち、所定の部分を他の部分よりも肉厚又は肉薄に形成してもよい。
【0086】
また、この実施形態における固定具は、ボルト5及びナット6からなるが、固定具としては、被固定部材1に固定フランジ部40を介して、ディテントスプリング10を固定可能であれば、特に限定はされない。
【0087】
更に、この実施形態における被固定部材1としては、例えば、自動変速機のケース内側に配置、又は、同ケース内側に直接固定されたブラケットや、バルブユニットのケース等が挙げられるが、被固定部材は特に限定されるものではない。
【0088】
(作用効果)
次に、上記構成からなるディテントスプリング10の適用箇所やその作用効果について説明する。
【0089】
まず、被固定部材1に対するディテントスプリング10の固定手順について説明する。すなわち、図5図6に示すように、固定フランジ部40の固定孔45側から、ボルト5の軸部5bを挿通していき、フランジ重なり部60の挿通孔65を通過させる。
【0090】
この際、固定フランジ部40に形成した固定孔45の内径の方が、フランジ重なり部60に形成した挿通孔65の内径よりも大きいので、固定孔45にボルト5の軸部5bを挿通しやすく、また、ボルト5の軸部5bを固定孔45の内周でガイドしつつ、挿通孔65に挿通でき、挿通孔65に軸部5bを挿通しやすい。
【0091】
その後、ボルト5の軸部5bを、被固定部材1の軸挿通孔1aから挿出させて、軸部5bの先端部にナット6を螺着する。それによって、図5図6に示すように、被固定部材1に、固定フランジ部40及びフランジ重なり部60を介して、ディテントスプリング10を固定することができる。
【0092】
このとき、互いに離間した固定フランジ部40及びフランジ重なり部60を、それらの弾性力に抗して、ボルト5の頭部5aとナット6とで挟持して締め付け固定する。その結果、フランジ重なり部60の内面(一端面60a)と、固定フランジ部40の外面(他端面40b)との間に生じていた隙間Sが消失して、フランジ重なり部60の内面と固定フランジ部40の外面とが互いに当接した状態で重ね合わされることになる。
【0093】
また、図7に示すように、ローラ37は、マニュアルプレート3の所定の嵌合凹部4に常時嵌合しており、該マニュアルプレート3を所定の回動位置に保持している。
【0094】
そして、自動変速機のシフトレバーを、「P」や「D」等の作動モードにすべく、シフトレバーを操作すると、それに連動してマニュアルプレート3が所定方向(例えば、図7の矢印F1方向)に回動させると、嵌合凹部4の頂部4aが、ローラ37を押圧して、延出部30を矢印F2方向に撓ませつつ、ローラ37が所定の嵌合凹部4から抜け出ていく。
【0095】
そして、ローラ37が隣接する他の嵌合凹部4に至ると、延出部30が弾性復帰して、ローラ37が他の嵌合凹部4に嵌合する。
【0096】
このように、延出部30の弾性力(ばね力、弾性復元力)を利用して、ローラ37がマニュアルプレート3の所定の嵌合凹部4に嵌合するので、自動車の操作者は、ある程度の節度感・クリック感を得つつ、シフトレバーを操作できるようになっている。
【0097】
そして、本発明のディテントスプリング10においては、固定フランジ部40にフランジ重なり部60が重ね合わせられた状態で、固定孔45及び挿通孔65に挿入される固定具(ここではボルト5の軸部5b)を介して、固定フランジ部40が、被固定部材1に対して、フランジ重なり部60ごと固定される。
【0098】
その結果、被固定部材1に対する、固定フランジ部40の剛性を高めることができる。すなわち、固定フランジ部にフランジ重なり部が存在しない場合と比べて、固定フランジ部40がフランジ重なり部60と併せて全体として肉厚となるので、その剛性を高めることができる。したがって、被固定部材1にディテントスプリング10をしっかりと固定することができる。
【0099】
また、基部20には、基部重なり部50が重ね合わされるので、基部20の肉厚を増大させることができる。すなわち、基部20の肉厚が、基部重なり部50の肉厚と併せて全体として増大する。そのため、ディテントスプリング10としての荷重特性、すなわち、ローラ37が、マニュアルプレート3の複数の嵌合凹部4の間を移動して、所定の嵌合凹部4に嵌合する際の、節度感・クリック感を高めることができる。
【0100】
以上のように、本発明においては、1枚の金属板からなる板状をなしたディテントスプリングのみによって、被固定部材1に対する固定時の剛性を高めることができると共に、荷重特性も高めることができる、ディテントスプリング10を得ることができる。
【0101】
ところで、上記の特許文献1に記載のディテント機構において、当該ディテント機構を構成するディテントスプリングは、別体の別体のブラケットを利用して、変速機ケースの側壁に固定しているので、部品点数が多かった。
【0102】
これに対して、本発明のディテントスプリング10においては、1枚の金属板からなる板状なしている。すなわち、ディテントスプリング10は、基部20、延出部30、ローラ支持部35、固定フランジ部40、基部重なり部50、フランジ重なり部60が、1枚の金属板Mから一体形成されているので、複数の部品を用意する必要がなく、部品点数を削減できる。
【0103】
また、この実施形態においては、図1及び図2に示すように、フランジ重なり部60は、固定フランジ部40に対して離間した状態で重ね合わされるように構成されている。
【0104】
上記態様によれば、フランジ重なり部60は、固定フランジ部40に対して離間した状態で重ね合わされるので、被固定部材1に固定具を介して固定フランジ部40を固定して、固定フランジ部40とフランジ重なり部60とが当接した状態となると(図6参照)、固定フランジ部40とフランジ重なり部60とが元の離間状態に復帰しようとするばね力、いわゆるスプリングバックSBが固定具(ここではボルト5の頭部5aとナット6)に作用することになる。
【0105】
そのため、スプリングワッシャー(ばね座金)のように、固定具の緩み(ここではボルト5の軸部5bに対するナット6の緩み)を抑制することができ、いわゆる緩み止めとなるので、被固定部材1にディテントスプリング10を長期に亘り安定して固定することができる。
【0106】
更に、この実施形態においては、挿通孔65の内周に生じたバリが、固定孔45の内周に生じたバリに向き合うように、フランジ重なり部60が、固定フランジ部40に対して重ね合わされるように構成されている。
【0107】
上記態様によれば、挿通孔65の内周に生じたバリが固定孔45の内周に生じたバリに向き合うように、フランジ重なり部60が、固定フランジ部40に対して重ね合わされるので、固定孔45や挿通孔65に固定具を挿入する際に支障が生じにくくなる。
【0108】
すなわち、バリが生じる部分がディテントスプリング10の厚さ方向内側に位置することになるので、固定孔45や挿通孔65の厚さ方向外側に位置する開口から、固定具を挿入する際に引っ掛かりにくくすることができ、固定具を比較的スムーズに挿入することができる。
【0109】
また、上記のように、固定孔45や挿通孔65への固定具の挿入時に支障が生じにくいので、バリ取りの必要がなくなり、ディテントスプリング10の製造工数を削減することができる。
【0110】
また、この実施形態においては、第1折曲部51は、軸方向両端が貫通した筒状をなしている(図1,2参照)。
【0111】
上記態様によれば、第1折曲部51は、両端が貫通した筒状をなしているので、例えば、筒状をなした第1折曲部51内に、工具の軸部等を挿入することで、ディテントスプリング10全体を、回転規制したり、位置決めしたりしつつ、被固定部材1に対して固定具で固定することができ、被固定部材1に対するディテントスプリング10の固定作業性を向上させることができる。
【0112】
一方、本発明のディテントスプリングの製造方法は、上述したように、第1工程と、第2工程と、第3工程と、第4工程とを有するものとなっている。
【0113】
このディテントスプリングの製造方法によれは、上記のような第1工程、第2工程、第3工程を有するので、被固定部材1に対する固定時の剛性や、ディテントスプリング10の荷重特性を高めながらも、部品点数を削減できる、ディテントスプリング10を確実且つ迅速に製造することができる。
【0114】
また、この実施形態においては、上記第3工程において、基部20に対して基部重なり部形成部分50´を、打ち抜き方向P(図3参照)と同一方向に向くように重ね合わせるようになっている。
【0115】
上記態様によれば、マニュアルプレート3の動作時における節度感・クリック感をより高めることができる、ディテントスプリング10を製造することができる。
【0116】
更に、この実施形態においては、第1工程において、基部20と基部重なり部形成部分50´との間に、基部20及び基部重なり部形成部分50´の連設方向に延びる切欠き57を、打ち抜き形成するようになっている。
【0117】
上記態様によれば、上記のような切欠き57を設けたことにより、基部20に対して基部重なり部形成部分50´を折曲する際に、基部重なり部形成部分50´を曲げやすくすることができる。
【0118】
すなわち、切欠き57を設けたことで、基部重なり部形成部分50´の一部が肉抜きされたので、肉抜きされていない場合に比べて、基部20に対して基部重なり部形成部分50´を曲げやすくなる。その結果、基部重なり部50を折曲形成しやすくなり、製造性を向上させることができる。
【0119】
また、基部20に対して基部重なり部50を密着させやすくすることができ、ディテントスプリング10の荷重特性をより確実に高めることができる。
【0120】
(ディテントスプリングの第2実施形態)
図8~10には、本発明に係るディテントスプリングの、第2実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0121】
この第2実施形態のディテントスプリング10Aは、主として、基部20に対する基部重なり部50の折曲方向が異なっている。
【0122】
すなわち、この実施形態においては、基部重なり部50は、基部20に対する延出部30の折曲方向と同じ方向となるように、第1折曲部51を介して折曲されている。
【0123】
より具体的には、基部重なり部50は、その厚さ方向Zの他端面50bが、基部20の厚さ方向Zの一端面20aに当接する方向となるように、すなわち、基部20に対して、折曲方向B3´(図3参照)に示す方向に折曲されている。
【0124】
また、図8図9に示すように、フランジ重なり部60は、固定フランジ部40の内側に位置するように重ね合わされる構成となっている。
【0125】
更に図8図9に示すように、フランジ重なり部60は、固定フランジ部40に対して離間した状態で重ね合わされる構成となっている。すなわち、フランジ重なり部60は、その他端面60bが、固定フランジ部40の一端面40aに対して、所定の隙間Sを空けて離間するように立設されている。
【0126】
そして、この実施形態のディテントスプリング10Aにおいても、前記実施形態のディテントスプリング10と同様の作用効果を得ることができる。
【0127】
また、この実施形態では、上述したように、基部重なり部50は、基部20に対する延出部30の折曲方向と同じ方向となるように、第1折曲部51を介して折曲されているので、以下の作用効果がもたらされる。
【0128】
すなわち、マニュアルプレート3が回動すると、マニュアルプレート3の所定の嵌合凹部4に嵌合したローラ37が、嵌合凹部4の頂部4aによって押圧されて、嵌合凹部4から離間する方向に押し上げられた後、頂部4aを乗り越えると、延出部30が沈み込むように撓み変形する(図10の矢印F3参照)。
【0129】
すると、図10の矢印F4に示すように、延出部30に連設された基部20が浮き上がりやすくなるが、この際には、基部重なり部50によって、基部20の浮き上がりを抑制することができるので、マニュアルプレート3の動作時における節度感・クリック感を高めることができる。
【0130】
(ディテントスプリングの第3実施形態)
図11及び図12には、本発明に係るディテントスプリングの、第3実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0131】
この第3実施形態のディテントスプリング10Bは、基部20から基部重なり部50が離間する方向の動きを規制する(基部20に対して基部重なり部50が離間する方向に動くことを規制するとも言える)、規制部が設けられた構造となっている。
【0132】
なお、基部20から基部重なり部50が離間する方向の動きは、「基部20に対する基部重なり部50の浮き上がり」動作とも言え、当該規制部は、このような基部20に対する基部重なり部50の浮き上がりを規制するものであるとも言える。
【0133】
また、後述する図13及び図14に示す第4実施形態、及び、図15及び図16に示す第5実施形態も、上記のような規制部を設けた構造である。
【0134】
図11に示すように、このディテントスプリング10Bは、図8及び図9に示す第2実施形態のディテントスプリング10Aと同様に、基部重なり部50が、基部20に対する延出部30の折曲方向と同じ方向となるように、第1折曲部51を介して折曲された構成となっている。
【0135】
そして、このディテントスプリング10Aにおいては、基部20側に、基部20から基部重なり部50が離間する方向の動きを規制する、規制部70が設けられている。なお、図11には、規制部70の折曲前の状態が示されており、図12には、規制部70の折曲後の状態が示されている。
【0136】
図12に示すように、この規制部70は所定長さで延びる板状をなしており、該規制部70は、基部20から延出する(基部20の側辺24から延出する)と共に、第3折曲部73を介して折り返されて、延出方向の先端部75が、基部重なり部50の厚さ方向Zの一端面50aに係止するように構成されている。
【0137】
また、規制部70は、その延出方向の基端部71が基部20に連結されると共に、延出方向の先端部75が、基端部71に対して規制部70の延出方向に離間する方向となるように(先端部75と基端部71とが、規制部70の延出方向において重ならないように)第3折曲部73を介して折り返されて(図12参照)、当該先端部75が基部重なり部50の一端面50aに係止するように構成されている、とも言える。
【0138】
更には、規制部70は、基部20の側辺24から外側に張り出すと共に、その先端部75が第3折曲部73を介して側辺24に近づく方向に折り返されて、当該先端部75が基部重なり部50の一端面50aに係止するように構成されている、とも言える。
【0139】
より具体的には、図11に示すように、基部20の延出方向Xの他端部22寄りの箇所であって、固定フランジ部40が形成された側辺23とは反対側に位置する側辺24に、第3折曲部73を介して規制部70が連設されている。この規制部70は、一定幅にて所定長さで延びる細長い帯状をなした板状片となっており、その延出方向の基端部71が基部20の側辺24に連結されている。
【0140】
なお、規制部70は、固定フランジ部40よりも更に基部20の他端部22寄りの位置に配置されていると共に、固定フランジ部40と固定孔45、及び、フランジ重なり部60と挿通孔65に対して、延出方向Xに対して一部がラップ(重なる)ように配置される、レイアウトとなっている。
【0141】
また、図11に示すように、折曲前の規制部70は、側面視(延出方向X側から見た場合)において、略L字状をなした屈曲形状となっている。そして、基部20に対して基部重なり部50が重ね合わされた状態で、規制部70の先端部75を、第3折曲部73を介して、基部重なり部50の厚さ方向Zの一端面50aに近接する方向に折り返すように折曲させて、当該一端面50aに規制部70の厚さ方向の一端面70aを当接させる。
【0142】
すると、図12に示すように、規制部70が側面視において、第3折曲部73を介して折り返されて略U字状に屈曲すると共に、先端部75における厚さ方向の一端面70aが、基部重なり部50の一端面50aに係止する。
【0143】
その結果、規制部70が、基部重なり部50を基部20と相まって挟み込み(基部重なり部50が基部20と規制部70とで挟持されるとも言える)、当該規制部70が、図12の矢印F5に示すように、基部20の厚さ方向Zの一端面20aに対して、基部重なり部50の厚さ方向Zの他端面50bを押圧するようになっている。
【0144】
以上説明したように、この実施形態では、基部20に規制部70が設けられているが、規制部は、基部重なり部に設けられていてもよく、また、基部及び基部重なり部の両方に設けられていてもよい。
【0145】
また、この実施形態では、基部20に規制部70が設けられ、この規制部70が基部重なり部50の厚さ方向Zの一端面50aに係止するように構成されていることで、基部20に対して基部重なり部50を押圧するようになっているが、基部重なり部に規制部を設け、当該規制部が基部の厚さ方向の一端面に係止するように構成されていることで、基部に対して基部重なり部が押圧される態様としてもよい(これについては、図15及び図16の第5実施形態について説明する)。
【0146】
そして、この実施形態のディテントスプリング10Bにおいても、前記第2実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0147】
また、この実施形態では、以下の作用効果がもたらされる。すなわち、この実施形態においては、基部20には、基部20に対して基部重なり部50が重ね合わされた状態で、基部20から基部重なり部50が離間する方向の動きを規制する、規制部70が設けられている。
【0148】
上記態様によれば、基部20に基部重なり部50が重ね合わされた状態で、規制部70が、基部20から基部重なり部50が離間する方向の動き(基部20に対する基部重なり部50の浮き上がり)を規制するので、基部20に対して基部重なり部50を当接した状態に維持することができ、ディテントスプリング10Bの所定の荷重特性を確実に得ることができる。
【0149】
また、この実施形態においては、上記のように、規制部70によって、基部20から基部重なり部50が離間する方向の動きが規制されるので、固定フランジ部40に対してフランジ重なり部60が離間することを間接的に規制することができる。
【0150】
更に、この実施形態における規制部70は、図12に示すように、所定長さで延びる板状をなしており、該規制部70は、基部20から延出すると共に、第3折曲部73を介して折り返されて、延出方向の先端部75が、基部重なり部50の厚さ方向Zの一端面50aに係止するように構成されている。
【0151】
上記態様によれば、基部20に基部重なり部50が重ね合わされた状態で、規制部70が基部重なり部50の厚さ方向Zの一端面50aに係止するので、基部20から基部重なり部50が離間する方向の動きを、より効果的に規制することができ、ディテントスプリング10Bの所定の荷重特性を更に確実に得ることができる。
【0152】
なお、上記のような規制部70が基部重なり部50に係止する状態では、図12の矢印F5に示すように、規制部70が基部20に対して基部重なり部50を押圧する態様も含むことになり、このような態様では、基部20から基部重なり部50が離間する方向の動きを、より一層規制することができる。
【0153】
また、この実施形態における規制部70は、基部20の、固定フランジ部40が形成された側辺23とは反対側に位置する側辺24に、第3折曲部73を介して連設されているので、基部20から基部重なり部50が離間する方向の動きを、簡素な構造で適切に規制することができる。
【0154】
すなわち、基部20に対して、規制部70が第3折曲部73を介して一体形成されているので、上述したディテントスプリングの製造方法の第1工程において、基部20や、基部重なり部形成部分50´、フランジ重なり部形成部分60´等と併せて、規制部70を形成し得る「規制部形成部分」を、1枚の金属板から打ち抜き形成できるので、別途、浮き上がり規制部を設ける必要がなく、構造を簡素化できる。
【0155】
(ディテントスプリングの第4実施形態)
図13及び図14には、本発明に係るディテントスプリングの、第4実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0156】
この第4実施形態のディテントスプリング10Cは、第3実施形態と同様に、基部20から基部重なり部50が離間する方向の動きを規制する、規制部が設けられた構造となっている。
【0157】
すなわち、基部重なり部50には、切欠き部58が形成されており、基部20には、切起こし状をなした一対の規制部80,80が形成されており、これらの一対の規制部80,80が、基部重なり部50の切欠き部58の内周縁部58aに係止するように構成されている。なお、図13には、規制部80の折曲前の状態が示されており、図14には、規制部80の折曲後の状態が示されている。
【0158】
また、この規制部80は、基部20から延出する(基部20に形成された後述する切欠き81の内周縁部から延出する)と共に、第3折曲部85を介して折り返されて(図14参照)、延出方向の先端部87が、基部重なり部50の厚さ方向Zの一端面50aに係止するように構成されている。
【0159】
より具体的には、図13に示すように、基部重なり部50の先端部寄りの位置に、延出方向Xの一端側が開口し且つ基部重なり部50の面方向に直交する方向に開口する、略矩形状をなした切欠き部58が形成されている。
【0160】
一方、基部20の、基部重なり部50に形成した切欠き部58に対応する位置に、基部20の幅方向Yに沿って延び且つ互いに平行に配置された一対の切欠き81,81が形成されており、これらの一対の切欠き81,81を介して、切起こし状をなした一対の規制部80,80がそれぞれ形成されている。
【0161】
また、一方の切欠き81の、幅方向Yの一側部の内周縁部に、第3折曲部85を介して第1の規制部80が立設しており、他方の切欠き81の、幅方向Yの他側部の内周縁部に、第3折曲部85を介して第2の規制部80が立設している。
【0162】
そして、基部20に対して基部重なり部50が重ね合わされた状態で、一対の規制部80,80の先端部87,87どうしが互いに離間する方向となるように折曲させて、一対の規制部80,80を基部重なり部50の厚さ方向Zの一端面50aに当接させる。
【0163】
すると、図14に示すように、一方の規制部80の先端部87が、切欠き部58の内周縁部58aにおける厚さ方向Zの一端面50aに係止し、他方の規制部80の先端部87が、切欠き部58の内周縁部58aにおける厚さ方向Zの一端面50aに係止して、一対の規制部80,80が、図14の矢印F5に示すように、基部20の厚さ方向Zの一端面20aに対して、基部重なり部50の厚さ方向Zの他端面50bを押圧する。
【0164】
なお、この実施形態では、基部重なり部50に切欠き部58が形成され、基部20に切起こし状をなした一対の規制部80,80(以下、単に「規制部80」とも言う)が形成され、これらの一対の規制部80,80が先端部どうしが離間するように互いに開く方向となるように折曲されて、基部重なり部50の切欠き部58の内周縁部58aの幅方向両側部に係止する構成である、とも言える。
【0165】
また、この実施形態においては、切起こし状をなした一対の規制部80,80を有する構成となっているが、切起こし状なした規制部は、1個でも3個以上であってもよい。
【0166】
そして、この実施形態のディテントスプリング10Cにおいても、前記第2,第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0167】
また、この実施形態においては、基部重なり部50には、切欠き部58が形成されており、基部20には、切起こし状をなした一対の規制部80,80が形成されており、これらの一対の規制部80,80が、基部重なり部50の切欠き部58の内周縁部58aにおける厚さ方向Zの一端面50aに係止するように構成されている。
【0168】
上記態様によれば、切起こし状をなした一対の規制部80,80の先端部87,87が、切欠き部58の内周縁部58aにおける厚さ方向Zの一端面50aに係止するように構成されているので、切欠き部58の内周縁部58aにおける剛性や接合強度等を高めて、基部20から基部重なり部50が離間する方向の動きを、より安定的に規制することができる。
【0169】
それと共に、基部20に、切起こし状の規制部80が形成されているので、基部20の側辺24に規制部70が形成される場合よりも、基部20の幅を維持でき(基部20を幅広にする必要がなく、幅方向Yにおいてコンパクトにできる)、ディテントスプリング10Cの打ち抜き成型時の歩留まりを向上させることができる。
【0170】
(ディテントスプリングの第5実施形態)
図15及び図16には、本発明に係るディテントスプリングの、第5実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0171】
この第5実施形態のディテントスプリング10Dは、第3,第4実施形態と同様に、基部20から基部重なり部50が離間する方向の動きを規制する、規制部が設けられているが、基部重なり部50に規制部90が設けられた構造となっている。なお、図15には、規制部90の折曲前の状態が示されており、図16には、規制部90の折曲後の状態が示されている。
【0172】
また、この規制部90は、基部重なり部50から延出する(基部重なり部50の先端50cから延出する)と共に、第3折曲部85を介して折り返されて(図16参照)、延出方向の先端部95が基部20の厚さ方向Zの他端面20bに係止するように構成されている。
【0173】
より具体的には、基部20の幅方向Yの中央部であって、基部重なり部50に近接する位置に、略矩形状をなした切欠き部25が形成されている。
【0174】
一方、基部重なり部50の、延出方向Xの先端50cの中央部に、第3折曲部93を介して規制部90が設けられている。この規制部90は、その基端部91が基部重なり部50の先端50cの中央部に連結されていると共に、図15中において略逆L字状をなした屈曲形状となっている。
【0175】
そして、基部20に対して基部重なり部50が重ね合わされた状態で、規制部90の先端部95を、基部20の厚さ方向Zの他端面20bに近接する方向に折曲させて、同他端面20bに当接させることで、規制部90が略U字状に屈曲すると共に、基部20の切欠き部25の内周縁部における他端面20bに係止して、図16の矢印F5に示すように、基部20の厚さ方向Zの一端面20aに対して、基部重なり部50の厚さ方向Zの他端面50bを押圧するようになっている。
【0176】
そして、この実施形態のディテントスプリング10Dにおいても、前記第2~4の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0177】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0178】
1 被固定部材
10,10A,10B,10C,10D ディテントスプリング
20 基部
30 延出部
30´ 延出部形成部分
35 ローラ支持部
35´ ローラ支持部形成部分
37 ローラ
40 固定フランジ部
40´ 固定フランジ部形成部分
45 固定孔
50 基部重なり部
50´ 基部重なり部形成部分
51 第1折曲部
55 挿通孔
57 切欠き
58 切欠き部
60 フランジ重なり部
60´ フランジ重なり部形成部分
61 第2折曲部
70,80,90 規制部
71,82,91 基端部
75,87,95 先端部
73,85,93 第3折曲部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16