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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127822
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】断面積の小さいダイポールアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/16 20060101AFI20240912BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01Q9/16
H01Q21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024032245
(22)【出願日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】18/119,747
(32)【優先日】2023-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523412463
【氏名又は名称】コミュニケーション コンポーネンツ アンテナ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール ロバート ワトソン
【テーマコード(参考)】
5J021
【Fターム(参考)】
5J021AA06
5J021AA09
5J021AB03
5J021HA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小さい断面積を有するダイポールアンテナの新しい構造を提供する。
【解決手段】ダイポールアンテナにおいて、容量性結合素子122が導電性ストリップの形をして導入され、第1のブランチ156aと第2のブランチ156bとを有するダイポール・アームのダイポール導電性ストリップと平行に設置される。容量性素子の導電性ストリップは、PCB10aの第1の銅層上に同様に配置されるダイポール・アームの延長された導電性ストリップと平行にPCBの第1の銅層上に形成され、ダイポール・アームの中心から水平に各側に等距離で延びる。第1の銅層とは反対側のPCBの第2の銅層の上に容量性プレートが設置され、めっきスルーホール128を介して容量性素子の導電性ストリップと結合される。第2の銅層の上の容量性プレートは、一部が第1の銅層上に位置するダイポール導電性ストリップと重複し容量性結合素子を形成するように下向きに延びる。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板上に形成されたダイポールアンテナであって、前記プリント回路基板は、垂直部分および前記垂直部分の頂部から延びる水平部分を有し、前記ダイポールアンテナは、
前記プリント回路基板の第1および第2の銅層上の前記垂直部分上に形成されたバラン素子と、
前記プリント回路基板の前記第1および第2の銅層上の前記水平部分上に形成された、第1のブランチと第2のブランチとを有するダイポール・アームであって、各ブランチは、他方のブランチに対して反対方向に水平に延び、前記ダイポール・アームの前記第1および第2のブランチは、前記プリント回路基板の前記第1の銅層の上に形成された対応する第1および第2のダイポール銅ストリップを有するダイポール・アームと、
前記ダイポール・アームの前記水平部分は、前記プリント回路基板の垂直中心軸から水平軸に沿って反対方向に等しく延びる第1の幅広部分を有し、前記幅広部分の前記第1の銅層は、前記第1および第2のダイポール銅ストリップと平行であり、かつそれらから電気的に絶縁されている容量性素子の導電性ストリップを含み、前記水平部分は、前記ダイポール・アームに沿って両方向に延びる幅狭部分を有し、
前記プリント回路基板の前記第1の銅層とは反対側の前記プリント回路基板の前記第2の銅層と同じ側において前記水平部分の前記幅広部分の端部に取り付けられた容量性プレートであって、容量性素子を形成するべく、重複導体を画定する第1および第2のダイポール導電性ストリップとは反対側に矩形底部を有する、容量性プレートと、
を包含するダイポールアンテナ。
【請求項2】
前記バラン素子は、前記水平部分に沿って前記水平部分へ延びて前記ダイポール導電性ストリップを形成する2つの銅ストリップのブランチを形成する2つの垂直バラン銅ストリップを含む、請求項1に記載のダイポールアンテナ。
【請求項3】
前記容量性プレートは、前記容量性素子の導電性ストリップとめっきバイア・ホールにより結合される、請求項1に記載のダイポールアンテナ。
【請求項4】
前記容量性素子のキャパシタンスは、
C=εr×εo×A/d [ファラッド]
として定義され、
εrは、前記プリント回路基板の材料の比誘電率であり、
εoは、真空の誘電率[F/m]であり、
Aは、前記重複導体の重複エリアであり、
dは、前記プリント回路基板の厚さである、
請求項3に記載のダイポールアンテナ。
【請求項5】
前記重複エリアを超えて延びる容量性素子の長さLが、任意のアンテナ装置のリターン・ロス特性に基づいて変更される、請求項4に記載のダイポールアンテナ。
【請求項6】
交差形状の配置で取り付けられる2つのダイポールアンテナを有するプリント回路基板上に形成された交差形状ダイポールアンテナであって、前記ダイポールアンテナのそれぞれが、垂直部分および前記垂直部分の頂部から延びる水平部分を有する前記プリント回路基板を有し、前記ダイポールアンテナのそれぞれが、
前記プリント回路基板の第1の銅層および第2の銅層上の前記垂直部分上に形成されたバラン素子と、
前記プリント回路基板の前記第1の銅層および第2の銅層上の前記水平部分上に形成された、第1のブランチと第2のブランチとを有するダイポール・アームであって、各ブランチは、他方のブランチに対して反対方向に延び、前記ダイポール・アームの前記第1および第2のブランチは、前記プリント回路基板の前記第1の銅層の上に形成された対応する第1および第2のダイポール銅ストリップを有するダイポール・アームと、
前記水平部分は、前記プリント回路基板の垂直中心軸から水平軸に沿って反対方向に等しく延びる第1の幅広部分を有し、前記幅広部分の前記第1の銅層が、前記第1および第2のダイポール銅ストリップと平行であり、かつそれらから電気的に絶縁されている容量性素子の導電性ストリップを含み、前記水平部分は、前記ダイポール・アームに沿って両方向に延びる幅狭部分を有し、
前記プリント回路基板の前記第1の銅層とは反対側の前記プリント回路基板の前記第2の銅層と同じ側において前記水平部分の前記幅広部分の端部に取り付けられた容量性プレートであって、容量性素子を形成するべく、重複導体を画定する第1および第2のダイポール導電性ストリップとは反対側に矩形底部を有する、容量性プレートと、
を包含する、交差形状のダイポールアンテナ。
【請求項7】
前記バラン素子は、前記水平部分に沿って前記水平部分へ延びて前記ダイポール導電性ストリップを形成する2つの銅ストリップのブランチを形成する2つの垂直バラン銅ストリップを含む、請求項6に記載の交差形状のダイポールアンテナ。
【請求項8】
前記容量性プレートは、前記容量性素子の導電性ストリップとめっきバイア・ホールにより結合される、請求項6に記載の交差形状のダイポールアンテナ。
【請求項9】
前記容量性素子のキャパシタンスは、
C=εr×εo×A/d [ファラッド]
として定義され、
εrは、前記プリント回路基板の材料の比誘電率であり、
εoは、真空の誘電率[F/m]であり、
Aは、前記重複導体の重複エリアであり、
dは、前記プリント回路基板の厚さである、請求項8に記載の交差形状のダイポールアンテナ。
【請求項10】
前記重複エリアを超えて延びる容量性素子の長さLが、任意の装置のリターン・ロス特性に基づいて変更される、請求項9に記載の交差形状のダイポールアンテナ。
【請求項11】
少なくとも低帯域および高帯域の周波数帯域として特徴付けされる複数の周波数帯域において動作し、前記低帯域の周波数の範囲は、前記高帯域の周波数の範囲を下回るアンテナ・アレイであって、
反射器上に設置された前記高帯域の周波数の帯域内において動作する複数のアンテナ素子と、
前記低帯域周波数の帯域内において動作する複数の交差形状のダイポールアンテナであって、前記交差形状のダイポールアンテナのそれぞれが交差形状の配置で取り付けられる2つのダイポールアンテナを有するプリント回路基板上に形成され、前記ダイポールアンテナのそれぞれが、垂直部分および前記垂直部分の頂部から延びる水平部分を有する前記プリント回路基板を有し、前記ダイポールアンテナのそれぞれが、さらに、
前記プリント回路基板の第1の銅層および第2の銅層上の前記垂直部分上に形成されたバラン素子と、
前記プリント回路基板の前記第1および第2の銅層上の前記水平部分上に形成された、第1のブランチと第2のブランチとを有するダイポール・アームであって、各ブランチは、他方のブランチに対して反対方向に延び、前記ダイポール・アームの前記第1および第2のブランチは、前記プリント回路基板の前記第1の銅層の上に形成された対応する第1および第2のダイポール銅ストリップを有するダイポール・アームと、
前記水平部分は、前記プリント回路基板の垂直中心軸から水平軸に沿って反対方向に等しく延びる第1の幅広部分を有し、前記幅広部分の前記第1の銅層は、前記第1および第2のダイポール銅ストリップと平行であり、かつそれらから電気的に絶縁されている容量性素子の導電性ストリップを含み、前記水平部分が前記ダイポール・アームに沿って両方向に延びる幅狭部分を有し、
前記プリント回路基板の前記第1の銅層とは反対側の前記プリント回路基板の前記第2の銅層と同じ側において前記水平部分の前記幅広部分の端部に取り付けられた容量性プレートであって、容量性素子を形成するべく、重複導体を画定する第1および第2のダイポール導電性ストリップとは反対側に矩形底部を有する、容量性プレートと、
を包含するアンテナ・アレイ。
【請求項12】
前記バラン素子は、前記水平部分に沿って前記水平部分へ延びて前記ダイポール導電性ストリップを形成する2つの銅ストリップのブランチを形成する2つの垂直バラン銅ストリップを含む、請求項11に記載のアンテナ・アレイ。
【請求項13】
前記容量性プレートは、前記容量性素子の導電性ストリップとめっきバイア・ホールにより結合される、請求項12に記載のアンテナ・アレイ。
【請求項14】
前記容量性素子のキャパシタンスは、
C=εr×εo×A/d [ファラッド]
として定義され、
εrは、前記プリント回路基板の材料の比誘電率であり、
εoは、真空の誘電率[F/m]であり、
Aは、前記重複導体の重複エリアであり、
dは、前記プリント回路基板の厚さである、
請求項13に記載のアンテナ・アレイ。
【請求項15】
前記重複エリアを超えて延びる容量性素子の長さLが、任意の装置のリターン・ロス特性に基づいて変更される、請求項14に記載のアンテナ・アレイ。
【請求項16】
少なくとも2つの別々の周波数帯域内において動作し、第1の低周波数帯域内の周波数の範囲が第2の高周波数帯域内の周波数の範囲より低いとする複数のアンテナ素子を有するアンテナ・アレイであって、前記低周波数帯域の前記アンテナ素子のそれぞれがプリント回路基板上に形成された交差形状のダイポールアンテナであり、前記プリント回路基板は、垂直部分および前記垂直部分の頂部から延びる水平部分を有し、前記ダイポールアンテナのそれぞれが、
前記プリント回路基板の第1および第2の銅層上の前記垂直部分上に形成されたバラン素子と、
前記プリント回路基板の前記第1および第2の銅層上の前記水平部分上に形成された、第1のブランチと第2のブランチとを有するダイポール・アームであって、各ブランチは、他方のブランチに対して反対方向に水平に延び、前記ダイポール・アームの前記第1および第2のブランチは、前記プリント回路基板の前記第1の銅層の上に形成された対応する第1および第2のダイポール銅ストリップを有するダイポール・アームと、
前記ダイポール・アームの前記水平部分は、前記プリント回路基板の垂直中心軸から水平軸に沿って反対方向に等しく延びる第1の幅広部分を有し、前記幅広部分の前記第1の銅層は、前記第1および第2のダイポール銅ストリップと平行であり、かつそれらから電気的に絶縁されている容量性素子の導電性ストリップを含み、前記水平部分は、前記ダイポール・アームに沿って両方向に延びる幅狭部分を有し、
前記プリント回路基板の前記第1の銅層とは反対側の前記プリント回路基板の前記第2の銅層と同じ側において前記水平部分の前記幅広部分の端部に取り付けられた容量性プレートであって、容量性素子を形成するべく、重複導体を画定する第1および第2のダイポール導電性ストリップとは反対側に矩形底部を有する、容量性プレートと、
を包含するアンテナ・アレイ。
【請求項17】
前記バラン素子は、前記水平部分に沿って前記水平部分へ延びて前記ダイポール導電性ストリップを形成する2つの銅ストリップのブランチを形成する2つの垂直バラン銅ストリップを含む、請求項16に記載のアンテナ・アレイ。
【請求項18】
前記容量性プレートは、前記容量性素子の導電性ストリップとめっきバイア・ホールにより結合される、請求項17に記載のアンテナ・アレイ。
【請求項19】
前記容量性素子のキャパシタンスは、
C=εr×εo×A/d [ファラッド]
として定義され、
εrは、前記プリント回路基板の材料の比誘電率であり、
εoは、真空の誘電率[F/m]であり、
Aは、前記重複導体の重複エリアであり、
dは、前記プリント回路基板の厚さである、
請求項18に記載のアンテナ・アレイ。
【請求項20】
前記重複エリアを超えて延びる容量性素子の長さLが、任意のアンテナ装置のリターン・ロス特性に基づいて変更される、請求項19に記載のアンテナ・アレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本装置は、ダイポールアンテナのアームのための容量性結合配置に関する。より詳細に述べれば、本装置は、素子の上方または下方から見たときに低減された導電性断面積を伴うダイポールアンテナのアームのための垂直に配向される容量性結合配置に関する。
【背景技術】
【0002】
セル方式の基地局アンテナの分野においては、ダイポールアンテナの性能の改善が、ファーザネイ(Farzaneh)ほかに発行された特許文献1(‘559特許)の中に図解されており、それによれば、ダイポール素子は、通常、2つのメイン・アームの上部の適所にはんだ付けされるか、または機械的に保持されて、アンテナの垂直軸に対して垂直に(すなわち、反射器に対して平行に)向けられる非励振素子と呼ばれる中心容量性結合素子を有する。この追加の非励振素子の目的は、ダイポールアンテナの周波数帯域幅の増加である。非励振素子の寸法および位置を最適化することによって、複数の共振周波数を作り出してダイポールアンテナの帯域幅を修正すること、および/または増加することが可能であり、それにおいては、ダイポール・アームが帯域の低い側の部分で放射することができる一方、非励振素子は、帯域の高い側の部分で放射することができる。非励振素子は、ダイポール・アームと容量性結合される。
【0003】
図1は、参照によってこの中に援用される‘559特許の図7を参照した例示的な従来技術のダイポールアンテナ740の典型であり、図2は、‘559特許の図8を参照した、アームを有するダイポール760を示しており、交差形状の二重極性型ダイポール配置の2つのアームの中心に配置された非励振素子を伴う。
【0004】
より詳細には‘559特許に説明されているとおり、図2のアンテナは、図1に図解されているアンテナに類似であるが、さらに、非励振素子810を含む。PCBの誘電体部分等の基材820が、垂直に延びるタブ830を含む。垂直に延びるタブは、非励振素子810の対応するスリット840を通り抜け、非励振素子810をアンテナのダイポール・アーム850と整列させる。図2の基材820は、4つの垂直に延びるタブ830を含んでいるが、基材820は、1つ、2つ、3つ、または4つのタブを有することができる。非励振素子810は、二重極性ダイポール・アームおよびバラン給電面と直交して方向づけされ、結果として導電性断面積の増加がもたらされる。
【0005】
上で論じた非励振素子が組み込まれたダイポール素子は、複数の帯域で信号を送信するアレイ・アンテナに設置したときに有するリターン・ロス特性が望ましい特性に届かないことが明らかになった。セル方式の基地局アンテナは、通常、単一の反射器に素子の複数アレイを有する。一例として述べれば、いくつかのアンテナは、3.2~4.2GHzの範囲の(ここでは「H」帯域と呼ぶ)周波数の高または中帯域素子、および1.695~2.690GHzの範囲の(ここでは「E」帯域と呼ぶ)周波数の中帯域素子の第1のシリーズを有する。
【0006】
パッチ素子またはダイポールの形をしたこれらの素子は、アンテナ上においてはより小さい素子となる傾向にある。同一のアンテナ上において、698~960MHzの範囲(ここでは「K」帯域周波数と呼ぶ)の低帯域素子アレイも存在させることが可能であり、これらは、通常、中および高帯域素子よりサイズが大きい。その結果として、上に述べられている低帯域素子の2つのアームおよび寄生容量性素子は、しばしば中および高帯域素子の上方に位置決めされる。
【0007】
その結果、非励振素子は、ダイポールの-多帯域アンテナ素子を設置する必要がある装置のため-送信特性を改善するが、放射信号パターンへの干渉および中または高帯域信号のリターン・ロスを招く可能性がある。
【0008】
この問題を具体的に示すために、図3が、例示的な従来技術の、反射器上に位置する中帯域ダイポール素子のアレイを示し、図4が、例示的な1.6GHz~2.8GHzの中帯域の周波数範囲のリターン・ロスのプロットを図4に示す。図4のプロットは、6つのポートにおける(すなわち、中帯域ダイポール素子の6つについての)リターン・ロスを示しており、その種の中帯域素子についての例示的な理想的リターン・ロス・シナリオを具体的に示す。この用語「理想的」は、アンテナ素子のリターン・ロスに、近傍の隣接する帯域外アンテナ素子からの擾乱を、その種のアンテナ素子がまったく存在しないことから、まったく有していないという意味において使用され、この「理想的な」リターン・ロスの場合においては、中帯域素子のみが含められる。
【0009】
奇数ポート(p1/p3/p5)は、2つのダイポール素子列のそれぞれの-45°の直線偏波部に給電し、偶数ポート(p2/p4/p6)は、+45°の直線偏波部に給電する。図4は、周波数対リターン・ロスのプロットを示し、+45°ポートのリターン・ロス応答が互いに極めて類似していること、また-45°ポートのリターン・ロス応答も互いに極めて類似していることが示されている。-10dB未満のリターン・ロスが、概して良好なリターン・ロスと考えられ、その一方、すべての-45°の直線偏波ポートのリターン・ロスの類似性および+45°ポートのそれは、素子ペアの3つ列にわたってこれらの応答が非常に反復性を有することを示している。観察されるリターン・ロスの反復性は、実際に、ダイポール・ペアの垂直3列にわたる放射パターンの反復性の表示である。
【0010】
しかしながら、図5に従来技術の装置を示すが、図2の非励振素子等の非励振素子810を伴う低帯域ダイポール760が中帯域素子860のトップの上を覆うように配されている。図6は、中帯域素子の上を覆うように位置決めされたより大きな低帯域ダイポールによって歪まされたそれらの素子のリターン・ロスのプロットを示す。
【0011】
図6に示されているとおり、ポート#1~#6において測定された中帯域素子のリターン・ロス・プロットには、図4に示されている理想的なプロットと比較したときのプロットにおける劣化が具体的に現れている。このため、p1、p3、p5のプロットをはじめ、p2、p4、p6のプロットが、より大きな上方にある素子に対するそれらの物理的な位置/関係のために、それぞれ異なった影響を受けて互いに逸れる。さらにまた、これらのアンテナは、いくつかの装置にとって許容可能でないリターン・ロス値を示す。図5に示されるような低帯域素子の追加に伴い、中帯域2素子垂直列のそれぞれの中心軸周りの対称性が失われる:低帯域素子は、中帯域素子の垂直列のそれぞれのために異なってオフセットされる。このオフセットは、より大きな水平および垂直の低帯域素子の間隔に起因し、より低い動作周波数のために必要となる。
【0012】
素子の独特な物理的構成の結果として、中帯域の中心軸に対し、中帯域素子の各個別の列が、より大きな低帯域素子に起因して独特な寄生効果を受ける。上で考察したとおり、これらの寄生効果は、ポート入力リターン・ロスを擾乱し、図6にそれが示されているが、図4のプロット(低帯域素子が存在しない)と比較すると、奇数ポート(p1/p3/p5)のリターン・ロスのプロットの方が偶数ポート(p2/p4/p6)より互いに対する相違が大きいことが示されている。
【0013】
また、リターン・ロス周波数応答におけるこの相違は、3つの垂直2素子中帯域の列の放射パターンの相違の表示でもある。
【0014】
これらの相違する性能特性に伴って導入される問題には、反復可能な個別の列パターンの重ね合わせに依拠するアレイ・パターンの全体的な劣化、およびより複雑かつ3つの中帯域2素子垂直列の間において異なるPCB調整がある。
【0015】
図7は、別の従来技術の装置を示しており、前の低帯域ダイポールが中帯域素子の頂部を覆うように配設され、そこに大きな円形の容量性結合素子を伴う。
【0016】
図8は、中帯域素子の上を覆うように位置決めされたより大きな低帯域ダイポールによって、これにおいてもアーム上部の大きな丸い容量性結合素子のために歪まされたそれらの素子のリターン・ロスを図解している。
【0017】
図8に示されているとおり、ポート#1-#6において測定された中帯域素子のリターン・ロス・プロットには、すでに擾乱のある図6の応答と比べてもより一層大きなポート周波数応答の擾乱が具体的に現れ、したがって、図4に示されている理想的なリターン・ロス周波数応答からより一層離れたプロットのセットが示される。
【0018】
このリターン・ロスの干渉がアームから、およびより大きな低帯域ダイポールの反射器と平行な寄生容量性結合素子からであり、反射器に垂直な垂直バラン給電からでないことを例証するために、図9に、バラン給電のみが存在し、アームが取り除かれたより大きな低帯域素子の隣に位置決めされる中帯域素子を伴う第1のシミュレーション・テストを示す。
【0019】
図9に図解されている装置のシミュレーションは、結果として図10に図解されているリターン・ロス・プロットをもたらした。図10に示されているとおり、テストされたポート#1~#6におけるリターン・ロスは、非常に良好であり、かつ中帯域素子自体についての理想的なリターン・ロスを伴い、かつ低帯域素子および低帯域素子の寄生効果を伴わず、その視点から理想的なケースとして考えられる図4に示されているそれと類似している。
【0020】
これは、より大きな低帯域素子の隣に中帯域素子が位置決めされ、垂直バラン給電が存在せず、アームおよび寄生容量性結合素子だけが含まれる図11のシミュレーション・テスト装置との対比をなす。図12に示されているとおり、テストされたポート#1-#6におけるリターン・ロスは、重度に劣化され、図4に示されている中帯域素子についての理想的なリターン・ロスとは似つかない図7および9に示されているそれと類似している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第10,892,559号
【特許文献2】米国特許第11,387,567号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本装置は、その下方に位置決めされるより高い帯域のより小さい素子のためのポートにおいて経験されるリターン・ロスに対する寄生効果の低減を伴う小さい断面積を有するダイポール上の容量性結合素子のための新しい構造を提供することによって従来技術の欠点を克服する。
【課題を解決するための手段】
【0023】
この容量性結合素子は、PCB(プリント回路基板)構造上に形成された導電性ストリップの形をして、ダイポール・アームのダイポール導電性ストリップと平行に設置される。そのため、前記容量性素子の前記導電性ストリップは、前記PCBの第1の銅層上に、これもまた前記PCBの前記第1の銅層に配置されるダイポール・アームの延長された導電性ストリップと平行に形成される。前記容量性素子の前記導電性ストリップは、前記ダイポール・アームの中心から水平に各側に等距離で延びる。前記第1の銅層とは反対側の前記PCBの第2の銅層の上に容量性プレートが設置され、めっきスルーホールを介して前記容量性素子の前記導電性ストリップと結合される。前記第2の銅層の上に設置された前記容量性プレートは、前記第1の銅層上に位置する前記ダイポール導電性ストリップと重複する部分が前記容量性結合素子のキャパシタンスを形成するように下向きに延びる。
【0024】
これは、前記キャパシタの断面が実質的に前記ダイポールPCBボードの厚さに限定されることから、結果として、前記容量性結合素子から利益を得つつ、たとえば低周波数範囲内における広い帯域幅のリターン・ロスを達成しつつも、同時に同一反射器上に位置するより小さい中または高帯域素子のリターン・ロスへの影響を殆ど有していないダイポール装置をもたらす。
【0025】
さらに別の実施態様によれば、前記容量性結合素子のキャパシタンスが、各ダイポール・アームの前記第1の銅層上に位置する前記ダイポール導電性ストリップと重複する前記導電性プレートの面積の関数として定義される。
【0026】
さらにまた別の実施態様によれば、前記バイア・ホールを超える前記容量性結合素子の長さを調整して前記ダイポールアンテナの前記リターン・ロスを最適化することが可能である。
【0027】
本発明は、以下の説明および次に挙げる添付図面を通じてもっとも良好に理解することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】従来技術のダイポールアンテナを示した斜視図である。
図2】交差形状の寄生容量性結合素子を伴う従来技術のダイポールアンテナを示した斜視図である。
図3】6つの給電ポートによって給電される従来技術の中帯域素子のセットを示した斜視図である。
図4】1.6~2.8GHzの範囲における図3の6つのポートにわたるリターン・ロスを示したグラフである。
図5】6つの給電ポートによって給電され、上を覆う図2からのダイポールを伴った従来技術の中帯域素子のセットを示した斜視図である。
図6】1.6~2.8GHzの範囲における図5の6つのポートにわたるリターン・ロスを示したグラフである。
図7】6つの給電ポートによって給電され、円形の寄生容量性素子を有するダイポールを伴った従来技術の中帯域素子のセットを示した斜視図である。
図8】1.6~2.8GHzの範囲における図6の6つのポートにわたるリターン・ロスを示したグラフである。
図9】6つの給電ポートによって給電され、上を覆う図2からのダイポールを(バラン給電のみ)伴った中帯域素子のセットのシミュレーションを示した斜視図である。
図10】1.6~2.8GHzの範囲における図9の6つのポートにわたるリターン・ロスを示したグラフである。
図11】6つの給電ポートによって給電され、上を覆う図2からのダイポール(アームおよび寄生容量性結合素子)を伴った中帯域素子のセットのシミュレーションを示した斜視図である。
図12】1.6~2.8GHzの範囲における図11の6つのポートにわたるリターン・ロスを示したグラフである。
図13】第1の実施態様に従ったアーム上に垂直に位置決めされた容量性結合素子を伴うPCBダイポールの第1の銅層を示した断面図である。
図14図13に図解されているPCBダイポールの第2の銅層を示した断面図である。
図15】PCBダイポールの第1の銅層および第2の銅層によって形成されるダイポールの容量性素子を図解した断面図である。
図16】本発明の別の実施態様を図解した断面図である。
図17A図13および14に図解されている2つのダイポールによって形成される交差形状のダイポールPCBを図解した斜視図である。
図17B】反時計回りの方向に90度回転した図17Aのダイポールを図解した斜視図である。
図17C】反時計回りの方向に180度回転した図17Aのダイポールを図解した斜視図である。
図17D】2つの交差形状のダイポールの交差接続をより詳細に図解した斜視図である。
図18A】容量性結合素子を伴わないダイポール素子についての0.5~1.1GHzにわたるリターン・ロスを示したグラフである。
図18B】1つの実施態様に従った容量性結合素子を伴うダイポール素子についての0.5~1.1GHzにわたるリターン・ロスを示したグラフである。
図19図4からのより小さい中帯域ダイポール素子の上を覆うように垂直に位置決めされる容量性結合素子を伴う本件のダイポールを示した平面図である。
図20図4からのより小さい中帯域ダイポール素子の上を覆うように垂直に位置決めされる容量性結合素子を伴う本件のダイポールを示した斜視図である。
図21】1.6~2.8GHzの範囲における図19、20の6つのポートにわたるリターン・ロスを示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図13~17に示されている1つの実施態様を用いて低帯域ダイポール10(698MHz~960MHz)の素子をより詳細に説明する。上に示されているようなダイポール10は、2つのダイポール10aおよび10bによって形成される交差形状の二重極性型アンテナである。
【0030】
より明確には、図13~16は、ダイポール10a等のダイポールのうちの1つの装置を図解している。1つの実施態様によれば、ダイポールは、第1の銅層および第2の銅層をボードの各側に有するプリント回路基板(PCB)上に形成される。
【0031】
図13は、PCBダイポール10aが形成されたPCBの第1の銅層を図解している。垂直部分180は、ダイポールの水平部分182沿って水平部分182へ延びる2つの銅ストリップのブランチ156a、156bを形成する2つの垂直バラン銅ストリップを含む第1の銅層によって形成されたバラン112を含み、各ブランチは水平方向外向きに延び、第1のブランチ156aは一方向に、第2のブランチ156bはその反対方向に延びる。バラン給電112は、PCBダイポールの各側の導電性ストリップによって形成され、信号およびグラウンド導体を伴うマイクロストリップ構造を形成するべくエッチングされる。
【0032】
PCBの水平部分182は、PCBの垂直中心軸184から水平軸に沿って反対方向に等しく延びる中心容量性結合素子122を画定する第1の幅広部分を含む。水平部分182は、両方の方向にダイポール・アームに沿って延びる幅狭部分186aおよび186bを含む。幅広部分188の第1の銅層は、ストリップ156aおよび156bと平行であり、かつそれらから図15に示されている距離d等の距離で電気的に絶縁される導電性ストリップ188を含む。
【0033】
1つの実施態様によれば、ダイポール10は、参照によってこの中に援用される2022年7月12日に発行された特許文献2により詳細に説明されているとおり、第1のより低い周波数帯域(「低帯域」)において実質的な閉回路を、また第2のより高い周波数帯域(「中帯域」)において実質的な開回路を生じさせ、隣接する高帯域周波数アンテナ素子(図示せず)からのアンテナ送信への低帯域素子の寄生効果を効果的に低減する共振構造116をアンテナ・バランおよび交差アームに沿って含む。
【0034】
図14は、PCBダイポール10aの第2の銅層のレイアウトを図解しており、これは、図13に図解されているダイポール10aのPCBの第1の銅層の裏側である。第2の銅層上のダイポールのバラン112は、PCBの垂直部分180に沿って垂直に延びる導電性ストリップによって形成される。
【0035】
図14に図解されているとおり、PCBの第1の銅層上の導電性ストリップ188の反対側の第2の銅層は、導電性ストリップを有していないが、PCBに取り付けられ、かつ容量性素子122のそれぞれの端部の近傍においてめっきバイア・ホール128によって導電性ストリップ188と電気的に結合される容量性プレート160を含む。このため、容量性プレート160の部分126が下向きに延びて、PCBの第1の銅層上の導電性ストリップ156aおよび156bと重複する。
【0036】
1つの実施態様に従った、部分126だけでなく容量性プレート160も、PCBの第2の銅層上の導電性部分126とPCBの第1の銅層上の導電性ストリップ156aおよび156bが、中心容量性素子122と呼ばれるキャパシタンスCを伴うキャパシタを形成するように矩形形状を有する。
【0037】
第1の銅層上の導電性ストリップ156と第2の銅層上に配置された容量性重複部分126によって形成されるキャパシタンスCは、次のとおりに定義される:
C=εr×εo×A/d [ファラッド]
εrは、PCB材料の比誘電率であり、
εoは、真空の誘電率[F/m]であり、
Aは、重複導体の重複エリアであり、
dは、PCBの厚さである(導体160および156の分離)。
【0038】
1つの実施態様によれば、上述の導電性構造が、Rogers(ロジャーズ)RO4534等の絶縁PCB基板の第1および第2の銅層上に実装される。本発明の1つの実施態様によれば、ダイポール10aが、導電性プレート160の5mmの幅140、4.3mmの導電性ストリップ188の高さ、0.5mmのPCB絶縁材料の厚さ、2.6mmの重複プレート126の高さ146、その中心軸から端部までが95.9mmダイポール・アームの長さ、11mmのダイポール・アームの狭い部分186の幅、54.5mmの容量性素子122の長さ、およびアームから反射器までの81.6mmのダイポール素子の高さ154を含めて多様な寸法を有する。
【0039】
さらにまた、図16に本発明の別の実施態様を図解するが、それにおいては、重複エリアを超えて延びる容量性素子122の長さLが、任意の装置のための最適リターン・ロス特性の決定に応じて、たとえば図15の1.3mmから図16の11mmまで変化する。
【0040】
図17Aは、2つのダイポール10aおよび10bによって形成される交差形状のダイポールPCB 10を図解しており、それぞれのダイポールの詳細は、図13~16を参照してより詳細に説明済みである。図17Aは、各ダイポール10aおよび10bの第1の銅層が見えるダイポール10の図を表している。
【0041】
図17Bは、反時計回りの方向に90度回転した図17Aのダイポールを図解しており、ダイポール10aの第1の銅層およびダイポール10bの第2の銅層が見えるダイポール10の図を表している。
【0042】
図17Cは、反時計回りの方向に180度回転した図17Aのダイポール10を図解しており、ダイポール10aの第2の銅層およびダイポール10bの第2の銅層が見えるダイポール10の図を表している。
【0043】
図17Dは、2つの交差形状のダイポールの交差接続を図解しており、ダイポール10aおよび10bの交差部によって形成される中心容量性素子122の4つのコーナ190のそれぞれが、角192に沿ってはんだ付けされる。このため、組み立て後のダイポールは、4つの中心コーナに4つのはんだの適用がある。
【0044】
本発明に係るダイポール・アームの性能は、上記の例で述べられている容量性結合の効果を含めて、容量性結合の適用の前後のダイポールのリターン・ロスにおける変化を図解することによって認識することが可能である。図18Aに見られるとおり、リターン・ロスのプロットは、次のとおりに定義される:
リターン・ロス=v(反射)v/(入射)
v(反射)は、反射された電圧波であり、
v(入射)は、入射電圧波である。
【0045】
リターン・ロス(dB)=20×log10(v(反射)/v(入射))
が、0.5~1.1GHz(低帯域)にわたって与えられ、中心容量性素子122を伴わないときに許容可能なリターン・ロス特性を伴う周波数範囲の狭い帯域幅が存在することが示される一方、図18Bは、中心キャパシタンス122が与えられるときに達成されるように、許容可能なリターン・ロス特性を伴う周波数範囲の幅広帯域幅を示す。
【0046】
図19および図20は、多帯域アンテナ・アレイを示しており、図19は、上から見た低帯域素子の小さい断面積を強調した平面図であり、図20は、図4からのより小さい中帯域ダイポール素子の上を覆うように垂直に位置決めされた中心容量性結合素子122を伴うダイポールを示した等角図である。
【0047】
図13に示されるように、本発明に係るダイポール10およびそれの中心容量性結合素子122の効果を明らかに示すために、ダイポール10の下方かつ反射器の上方に位置する同じ中帯域ダイポール素子アレイの上に位置決めされたダイポール10を用いてテストが行われた(たとえば、図4参照)。
【0048】
図21のグラフは、6ポートにおける(すなわち、中帯域ダイポール素子の6つについての)例示的な1.6GHz~2.8GHzの中帯域の周波数範囲のリターン・ロスを示し、軽微な変動を例外として図5に示されているものと非常に類似するその種の中帯域素子についてのほぼ理想的なリターン・ロスのシナリオを実証している。
【0049】
ここでは、本発明の特定の特徴のみを図解し、説明してきたが、この分野の当業者には、これにより多くの修正、置き換え、変更、または均等が思い浮かぶであろう。したがって、本件出願が、本発明の真の精神に含まれるすべてのその種の修正および変更を保護することを意図しているものと理解する。
【符号の説明】
【0050】
10 低帯域ダイポール、ダイポール、ダイポールPCB
10a ダイポール、PCBダイポール
10b ダイポール
112 バラン、バラン給電
122 中心容量性結合素子、容量性素子、中心容量性素子、中心キャパシタンス
126 部分、導電性部分、重複プレート
128 めっきバイア・ホール
140 幅
146 高さ
154 高さ
156 導電性ストリップ
156a 第1のブランチ
156b 第2のブランチ
160 容量性プレート、導電性プレート
180 垂直部分
182 水平部分
184 垂直中心軸
186 狭い部分
188 幅広部分、導電性ストリップ
190 コーナ
192 角
740 ダイポールアンテナ
760 ダイポール、低帯域ダイポール
810 非励振素子
820 基材
830 垂直に延びるタブ
840 スリット
850 ダイポール・アーム
860 中帯域素子
156aおよび156b ストリップ、導電性ストリップ
160および156 分離導体
186aおよび186b 幅狭部分
C キャパシタンス
d 距離
L 長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図18A
図18B
図19
図20
図21
【外国語明細書】