(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127839
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】バイポーラ電極アセンブリおよび方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0245 20160101AFI20240912BHJP
H01M 8/0232 20160101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M8/0245
H01M8/0232
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024033593
(22)【出願日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】23160646
(32)【優先日】2023-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】505161552
【氏名又は名称】メリコン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】MELICON GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ウルリッヒ ミュラー
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA14
5H126BB06
5H126GG02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来技術から周知の燃料電池または電解装置を、電流消費および寿命に関して改善したバイポーラ電極アセンブリ、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】バイポーラプレート電極アセンブリ15は、ガス拡散電極を形成する層状に配置されたエキスパンドメタル層4、5、6、14のスタック11およびバイポーラプレート7を備え、スタックは、外側エキスパンドメタル層14によって少なくとも一端でスタックの方向に範囲が定められ、外側エキスパンドメタル層は、バイポーラプレートに面で材料的に結合され、外側エキスパンドメタル層は、エキスパンドメタル要素9と、エキスパンドメタル要素に挿入されるとともに、エキスパンドメタル要素に材料的に結合された金属インサート8とを含み、外側エキスパンドメタル層は、金属インサートの領域のみにおいてバイポーラプレートに材料的に結合される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池または電解装置のバイポーラプレート電極アセンブリであって、前記バイポーラプレート電極アセンブリは、ガス拡散電極を形成する層状に配置されたエキスパンドメタル層(4、5、6)のスタック(11)およびバイポーラプレート(7)を備え、前記スタック(11)は、外側エキスパンドメタル層(14)によって少なくとも一端で前記スタックの方向に範囲が定められ、前記外側エキスパンドメタル層(14)は、前記バイポーラプレート(7)に面で材料的に結合され、前記外側エキスパンドメタル層(14)は、エキスパンドメタル要素(9)と、前記エキスパンドメタル要素(9)に挿入されるとともに、前記エキスパンドメタル要素(9)に材料的に結合された金属インサート(8)とを含み、前記外側エキスパンドメタル層(14)は、前記金属インサート(8)の領域のみにおいて前記バイポーラプレート(7)に材料的に結合された、バイポーラプレート電極アセンブリ。
【請求項2】
少なくとも前記外側エキスパンドメタル層(14)はチタン製である、請求項1に記載のバイポーラプレート電極アセンブリ。
【請求項3】
少なくとも前記外側エキスパンドメタル層(14)は、格子構造を有し、前記格子構造は、一方では個々のメッシュ(2)を形成するとともに、他方では交点(3)を形成する交差するウェブを有し、面状の外側は、共通の平面に配置された複数の交点(3)によって形成され、各交点(3)と前記バイポーラプレート(7)の1つの対応する接触点との間に、材料的に結合された接続点が形成された、請求項1または2に記載のバイポーラプレート電極アセンブリ。
【請求項4】
前記スタック(11)の前記エキスパンドメタル層(4、5、6)の少なくとも一部は、異なるメッシュサイズを有し、前記エキスパンドメタル層(4、5、6)は、好ましくは、前記エキスパンドメタル層(4、5、6)のメッシュサイズが、前記バイポーラプレート(7)に接続された前記外側エキスパンドメタル層(14)から始まって前記スタックの方向に減少するように、前記スタックに連続的に配置された、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のバイポーラプレート電極アセンブリ。
【請求項5】
前記バイポーラプレート(7)に接続された前記外側エキスパンドメタル層(14)は、規則的なメッシュサイズを有し、好ましいメッシュサイズは、12mmのメッシュ幅および6mmのメッシュ長さを有する、請求項3または4に記載のバイポーラプレート電極アセンブリ。
【請求項6】
前記金属インサート(8)は、エキスパンドメタルまたはワイヤメッシュ製である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のバイポーラプレート電極アセンブリ。
【請求項7】
前記外側エキスパンドメタル層(14)と前記バイポーラプレート(7)との間の材料結合は、溶接接合、特に、抵抗プロジェクション溶接接合または融接接合として行われる、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のバイポーラプレート電極アセンブリ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の燃料電池または電解装置のバイポーラプレート電極アセンブリを製造する方法であって、
エキスパンドメタル層(4、5、6)を有するガス拡散電極、バイポーラプレート(7)、および追加的エキスパンドメタル層(14)を用意する工程と、
複数のメッシュ(2)を含む平面セクションを、前記追加的エキスパンドメタル層(14)から完全に除去する工程であって、除去されたセクションの形状の1つ以上の第1エキスパンドメタル要素(8)と、前記除去されたセクションに対応する貫通孔(10)を有する残りのエキスパンドメタル層の形状の第2エキスパンドメタル要素(9)とが、前記追加的エキスパンドメタル層(14)から形成される工程と、
前記第2エキスパンドメタル要素(9)を、抵抗溶接によって前記ガス拡散電極の外側エキスパンドメタル層(4、5、6)上に溶接する工程と、
前記第1エキスパンドメタル要素(8)を、次いで、前記第2エキスパンドメタル要素(9)の前記貫通孔(10)に再び挿入する工程と、
前記バイポーラプレート(7)を、前記第1エキスパンドメタル要素(8)の前記ガス拡散電極とは反対側の平面側に抵抗プロジェクション溶接によって溶接する工程であって、前記バイポーラプレート(7)および前記第1エキスパンドメタル要素(8)は、好ましくは1回の作業で互いに溶接され、前記第1エキスパンドメタル要素(8)および前記第2エキスパンドメタル要素(9)は、互いに溶接される、工程と、を備える方法。
【請求項9】
前記第1エキスパンドメタル要素(8)を形成するために、前記セクションは、レーザ切断によって前記追加的エキスパンドメタル層(14)から除去される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ガス拡散電極は、層状に積み重ねられた前記エキスパンドメタル層(4、5、6)を有し、前記エキスパンドメタル層(4、5、6)のメッシュサイズは、スタック高さが増加するにつれて増加する、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記第2エキスパンドメタル要素(9)は、前記ガス拡散電極内で最大のメッシュサイズを有する前記ガス拡散電極の前記エキスパンドメタル層(4、5、6)上に溶接され、前記第2エキスパンドメタル要素(9)は、溶接される前記ガス拡散電極の前記エキスパンドメタル層(4、5、6)よりも大きいメッシュサイズを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1エキスパンドメタル要素(8)は、前記第2エキスパンドメタル要素(9)に対する前記第1エキスパンドメタル要素(8)の相対的な向きが前記第1エキスパンドメタル要素(8)の除去前の前記第1エキスパンドメタル要素(8)の向きに対応するように、前記第2エキスパンドメタル要素(9)に挿入される、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第2エキスパンドメタル要素(9)の溶接前に、さらなるエキスパンドメタル要素(8)を形成するために、第1セクションである前記セクションに従って、さらなるセクションが、前記追加的エキスパンドメタル層(14)および/または前記第2エキスパンドメタル要素(9)から完全に除去され、溶接される前記第2エキスパンドメタル要素(9)に再び挿入され、次いで、一方でバイポーラプレート(7)に、他方で第2エキスパンドメタル要素(9)に、好ましくは前記第1エキスパンドメタル要素(8)と同時に、抵抗プロジェクション溶接によって溶接される、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池または電解装置のバイポーラプレート電極アセンブリに関する。バイポーラプレート電極アセンブリは、ガス拡散電極を形成する層状に配置されたエキスパンドメタル層のスタックおよびバイポーラプレートを含む。スタックは、外側エキスパンドメタル層によって少なくとも一端でスタックの方向に範囲が定められる。外側エキスパンドメタル層は、バイポーラプレートに面で材料的に結合される。さらに、本発明は、燃料電池または電解装置のバイポーラ電極アセンブリを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池および電解装置は、それ自体が従来技術から周知である。したがって、電解装置は、電流による材料変換、いわゆる電解を可能にする装置として理解される。異なる電解種類の多様性に応じて、複数の異なる電解装置もまた存在する。例えば、水素電解のための電解装置によって、水を水素と酸素とに分解することができる。
【0003】
そのような電解装置は、いわゆるPEM電解装置として構成することができ、PEM(プロトン交換膜)は、プロトンが透過可能な膜を表す。プロトン透過性膜は、通常、2つの電極、つまりアノードとカソードとの間に配置される。さらに、第1バイポーラプレートがアノードに配置され、第2バイポーラプレートがカソードに配置される。バイポーラプレートは、反応ガスを導くように設計される。膜、電極、およびバイポーラプレートは、まとめて電解セルとも称される。複数の電解セルを使用する場合、バイポーラプレートはさらに、電解セルのアノードを隣接する電解セルのカソードに導電的に接続する。
【0004】
上記実施形態では、通常、アノード側に蒸留水が供給されることで、プロトン透過膜で水素と酸素に分離される。水は、アノードで酸素に酸化する。プロトンはプロトン透過膜を通過する。水素はカソード側で生成される。性能を向上させるために、複数の上記の電解セルが、通常、電解セルスタックに、または互いの上にもしくは横に並んでスタックに配置される。つまり、個々の電解セルの配置は、一般的に、個々の電解セルを互いに接触させることができるように、個々の電解セルを一緒に押圧するフレーム構造で達成される。
【0005】
燃料電池は、電気化学的エネルギー変換器であるとともに、移動用途および固定用途において使用される。連続的に供給される燃料、例えば水素と、酸化剤、一般的には酸素との化学反応エネルギーは、電気エネルギーに変換される。この目的のために、燃料電池は、通常、上記の電解装置において、2つの電極、すなわちアノードとカソードとの間に配置された膜と、電極のそれぞれの上に配置されたバイポーラプレートとを備えるアセンブリを備える。複数の燃料電池を使用する場合、バイポーラプレートはさらに、燃料電池のアノードを隣接する電解セルのカソードに導電的に接続する。
【0006】
燃料は通常、それぞれ1つのバイポーラプレートによってアノード領域に供給され、酸化剤はカソード領域に供給される。燃料は、電子を放出することによってアノードで触媒により酸化される。残りのイオンは膜を通過してカソードに到達し、そこでカソードに供給された酸化剤と反応するとともに、カソードに導かれた電子と反応して反応生成物、上記の実施形態の場合には水となる。電解セルスタックへの複数の電解セルの配置を説明する上記の電解セル配置と同様に、性能を向上させるために、複数の燃料電池が、通常、燃料電池スタックに、またスタックは互いの上にもしくは横に並んでスタックに配置される。また、個々の燃料電池の配置は、一般的に、個々の燃料電池を互いに接触させることができるように、個々の燃料電池を一緒に押圧するフレーム構造で達成される。
【0007】
バイポーラプレートは、燃料電池および電解装置の効率および性能密度にとって非常に重要である。バイポーラプレートは、とりわけ、反応ガスを均一に分配し、反応熱を放散または供給し、スタック内部の電流をセルからセルへ伝達する役割を果たす。
【0008】
燃料電池または電解槽のために提供されるガス拡散層は、特許文献1による先行技術により周知である。このガス拡散層は3つの層を含み、第1層はプロトン透過膜(PEM)に近接して位置するように設けられる。第2層は、第1層と第3層との間に配置され、例えば溶接によってこれらの2つの層に冶金的に結合される。第3層は、1つまたは複数のエキスパンドメタル層を含んでよい。バイポーラプレートは、表面全体にわたって第3層上に位置する。つまり、バイポーラプレートは、特に溶接によって第3層に冶金的に接合される。特許文献1は、一般的な先行技術を開示する。
【0009】
燃料電池または電解装置のためのガス拡散電極は、特許文献2から周知である。ガス拡散電極は、層状に配置された複数のエキスパンドメタル層を有し、隣接するエキスパンドメタル層は、抵抗パルス溶接によって、その互いに対向する平坦側の接触点で互いに面で接続される。膜からより離れたエキスパンドメタル層は、特定のばね効果を達成するために、より大きなメッシュサイズを有することが好ましい。バイポーラプレートは、膜から離れた側でガス拡散電極を封止するエキスパンドメタル層に設けられる。マルチセルスタックの最終的な製造において、セルは、50バール(5000kPa)を超える高圧で圧縮される。したがって、従来技術では、バイポーラプレートは、バイポーラプレートに面する電極のエキスパンドメタル層に押し付けられる。
【0010】
スタックに圧縮されたセルのばね特性によって、定着現象が起こる。これらの定着現象が一定の限界を超えると、表面全体にわたってセルを密着させることはもはや達成できない。さらに、適切な動作中に、酸化物の形成が各セルの内部で起こり、酸化物の形成は、特にアノード側に存在する酸素によって引き起こされる。セル内部に酸化物層が形成されると、動作時間の増加とともに、表面全体にわたる電極とバイポーラプレートとの密着が低下する。したがって、電極とバイポーラプレートとの互いの接触が動作時間の増加とともに低下し、電子輸送が損なわれるために、燃料電池または電解装置の適切な動作がもはや達成されなくなる。
【0011】
特に、バイポーラプレートとガス拡散電極との間の接触領域は、比較的強い酸化物形成の傾向があり、その結果、オーム抵抗が増加し続けることが見出された。生産率を一定のレベルに維持するために、オーム抵抗の増加に伴ってより高い電流が使用される。例えば電解槽の適切な動作のためのコストは、主に電流消費に依存する。コストの割合は約70%である。オーム抵抗が増加すると、電流消費がより高くなるか、または電流消費が一定の場合、変換率が低下する。この欠点を克服する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/006782号明細書
【特許文献2】欧州特許第2985096号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記の従来技術から出発して、本発明の課題は、従来技術から周知の燃料電池または電解装置を、電流消費および寿命に関して改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この目的を達成するために、本発明は、燃料電池または電解装置のバイポーラプレート電極アセンブリを提供する。外側エキスパンドメタル層は、エキスパンドメタル要素と、エキスパンドメタル要素に挿入されるとともに、エキスパンドメタル要素に材料的に結合された金属インサートとを含み、外側エキスパンドメタル層は、金属インサートの領域のみにおいてバイポーラプレートに材料的に結合される。
【0015】
バイポーラプレートと本発明によるガス拡散電極との材料結合によって、従来技術から周知の欠点が完全に解消される。一方では、バイポーラプレートと電極との間の相対的な動きが妨げられるので、好ましくない定着現象が有利に排除される。さらに、通常の使用において、接合材料の領域におけるバイポーラプレートと電極との間の境界層での電子輸送を損なう酸化物が発生することはない。これは特に、特に溶接接続として行われる材料結合により、反応ガスと能動的に接触していないバイポーラプレートと電極との間に導電性材料ブリッジが形成されるという事実に起因する。本発明による実施形態では、長い動作時間の後でも、実質的に変わらず静止位置決めおよび電荷輸送を達成することができる。したがって、本発明による実施形態は、少なくともこの点に関してメンテナンスフリーである。
【0016】
本発明によれば、外側エキスパンドメタル層は、2つの部分、特に複数の部分を含む。具体的には、エキスパンドメタル層は、所定数のエキスパンドメタル要素で構成されている。しかしながら、これらのエキスパンドメタル要素は、連続的なエキスパンドメタル層になるように、互いに材料的に結合される。複数のエキスパンドメタル要素を含むエキスパンドメタル層の構成は、特定の有利な溶接方法を適用することによって具体的な方法の簡略化が可能になるので、選択された製造方法に関して利点を有する。外側エキスパンドメタル層は、有利には、2つ以上のエキスパンドメタル要素を含み、そのうちの1つの要素はフレームとして構成され、残りの要素はインサートとして、特に金属インサートとして、好ましくはエキスパンドメタルまたはワイヤメッシュ製のインサートとして構成される。外側エキスパンドメタル層は、インサートの領域においてのみ、バイポーラプレートに材料的に結合され、特に溶接されることが好ましい。したがって、本発明の目的は、製造方法のさらなる簡略化によって達成される。
【0017】
「材料的に結合された」とは、本発明では、特に付加的な材料供給なしの、主に溶接接合を示す。しかしながら、はんだ接続としての構成も基本的には技術的に可能である。溶接接合は機械的により安定しているが、はんだ接続の構成は、より少ない処理技術的労力で済む。適用される溶接方法に関して、バイポーラプレート電極アセンブリの製造方法に必要とされる労力には段階が存在する。以下でより詳細に説明する具体的なプロセス制御に応じて、融接法および抵抗溶接法が好ましい。
【0018】
本発明によれば、電極アセンブリは、ガス拡散電極を形成する層状に配置されたエキスパンドメタル層のスタックを備える。つまり、「エキスパンドメタル」とは、表面に開口部を有するように構成された金属シートを意味し、メッシュとも称される開口部が、金属シートの歪みを同時に拡大しながら、材料の損失なしにオフセットカットによって形成される。エキスパンドメタルの複数の層が、本発明によるガス拡散電極を構成する。それぞれ隣接するエキスパンドメタル層は、互いに溶接されることが好ましい。こうして、複数のエキスパンドメタル層を含む頑丈なスタックが得られ、後に意図される目的に応じて、4つ、5つ、6つまたはそれ以上のエキスパンドメタル層を設けることができる。
【0019】
好ましくは溶接によって互いに接続されたエキスパンドメタル層は、有利には、一方では、膜電極アセンブリのプロトン伝導膜のための、ならびに他方では、本発明によるバイポーラ電極アセンブリのバイポーラプレートのための、平滑で面状の安定した支持体を構成する。最終的に組み立てられた状態において、このバイポーラプレートは、2つのガス拡散電極の間に位置する。
【0020】
隣接するエキスパンドメタル層は、好ましくはその対向する平坦側の接触点において、抵抗溶接によって互いに面で接続される。エキスパンドメタル層の格子構造により、本発明の意味の範囲内の「面で」は、表面全体にわたることを意味しない。しかし、エキスパンドメタル層の格子構造の結果として、エキスパンドメタル層の対向する平坦側全体にわたって規則的に延在する2つの隣接するエキスパンドメタル層の接触点において、面構成の意味での接続が行われる。複数の接触点が、隣接するエキスパンドメタル層と相互に接触して平坦側の表面全体にわたって規則的な配置で形成されるので、点状の接続が達成されるだけでなく、面状の接続が達成される。したがって、エキスパンドメタル層の非常に頑丈なアセンブリが有利に提供される。
【0021】
製造上の理由から、個々のエキスパンドメタル層は、基本材料として選択された金属パネルのシート厚さよりも大きい塑性高さを有する。この塑性高さは、抵抗溶接によってエキスパンドメタル層を接続するときに有利に維持される特定のばね特性をエキスパンドメタルに与える。したがって、最終的に組み立てられた状態でスタックに互いに溶接されたエキスパンドメタル層は、個々のエキスパンドメタル層のばね特性に基づいて計算することができ、再現可能である指定されたばね特性を有する。したがって、本発明による構造的設計により、関連するガス拡散電極における膜の永続的に確実な取付けを確実にするために、有利には、一方ではガス拡散電極と、他方ではその上の取付け膜との間の後の接触力に影響を及ぼすことが可能である。
【0022】
本発明の意味における「バイポーラプレート」は、特定の寸法を有する、好ましくはチタンなどの金属材料から作製されたプレートを示す。チタンは、有利な耐食性、有利な機械的安定性および導電性と同時に軽量性のために特に好ましい。本発明によれば、「プレート」という用語は、曲げに対して耐性のある金属製であるとともに、その上に垂直に作用する力によって、およびプレート平面内にある軸を中心とするモーメントによって負荷が与えられる、平面に配置された構成要素を示す。その他の幾何学的構造に応じて、プレートは常に、プレート平面に沿って二次元的に延在する2つの対向して形成された大きな表面を有する。プレートは、特に直方体に形成されている。具体的には、プレートは、2つの対向して形成された大きな表面と、2つの大きな表面を円周方向に接続する4つの小さな表面とを有する。
【0023】
バイポーラプレート電極装置が最終組立状態にあるとき、外側エキスパンドメタル層は常にガス拡散電極の一部である。したがって、この場合、ガス拡散電極は、スタック全体によって構成される。しかしながら、製造技術を差別化する必要がある。そのため、最初に電極が製造され、その後にバイポーラプレートが電極に接続されてもよい。他方では、最初にバイポーラプレートを後の外側エキスパンドメタル層に接続し、次いでバイポーラプレートとエキスパンドメタル層との複合体を、ガス拡散電極を構成するエキスパンドメタル層の予め製造されたスタックに接続することも可能である。この場合、事前に既にガス拡散電極を構成していたスタックは、さらなるエキスパンドメタル層によって完成する。完成したバイポーラ電極アセンブリにおける、後に完成する今後の外側エキスパンドメタル層は、同様にガス拡散電極の一部である。
【0024】
さらに、少なくとも外側エキスパンドメタル層、好ましくはスタックの全てのエキスパンドメタル層はチタン製が好ましい。チタンは、有利な耐食性、有利な機械的安定性および導電性と同時に軽量性のために、バイポーラプレートのためだけでなく、エキスパンドメタル層のためにも特に好ましい。さらに、エキスパンドメタル層としての構成におけるチタンは、後の燃料電池または電解装置に対して表面法線の方向において、有利なばね弾性特性を有する。
【0025】
少なくとも外側エキスパンドメタル層は、好ましくは格子構造を有し、格子構造は、一方では個々のメッシュを形成するとともに、他方では交点を形成する交差するウェブを有し、面状の外側は、共通の平面に配置された複数の交点によって形成され、各交点とバイポーラプレートの1つの対応する接触点との間に、材料結合された接続点が形成される。個々のエキスパンドメタル層の接続に関して前述したような「面」の接続は、ここでも同様に理解されるべきである。
【0026】
本発明の好ましい特徴によれば、スタックのエキスパンドメタル層の少なくとも一部は、互いに異なるメッシュサイズを有する。エキスパンドメタル層に応じて、特定のメッシュサイズを有する。このメッシュサイズは、エキスパンドメタル層ごとに異なってよい。この構成は、2つの点で有利である。これは、意図された使用事例において達成されることが望ましい乱流流体貫流をサポートする。さらに、この構成は、個々のエキスパンドメタル層の間に生じる接触点の不均一な分布をもたらすことで、後の複合体の形状安定性をさらに高める。
【0027】
本発明のさらなる特徴によれば、バイポーラ電極アセンブリのバイポーラプレートに隣接する外側エキスパンドメタル層のメッシュは、最大のメッシュサイズを有する。エキスパンドメタル層は、好ましくは、エキスパンドメタル層のメッシュサイズが、バイポーラプレートに接続された外側エキスパンドメタル層から始まってスタックの方向に減少するように、スタックに連続的に配置される。エキスパンドメタル層がより大きなメッシュを有する目的は、一方では安定した平坦な表面を形成することであり、他方ではばね効果を高めることである。したがって、意図された使用事例において、バイポーラプレート電極アセンブリのバイポーラプレートと接触する外側エキスパンドメタル層は、全てのエキスパンドメタル層のうち最大のメッシュサイズを有することが好ましい。したがって、バイポーラプレートに接続された外側エキスパンドメタル層は、特に向上したばね弾性特性を有することが保証される。これは、製造方法にとっても、後の燃料電池または電解装置にとっても有利である。外側エキスパンドメタル層は、規則的なメッシュサイズを有することが好ましい。外側エキスパンドメタル層の好ましいメッシュサイズは、特に10~15mm、特に12mmのメッシュ幅と、4~8mm、特に6mmのメッシュ長さを有する。
【0028】
さらに、本発明は、本発明に係る燃料電池または電解装置の本発明に係るバイポーラプレート電極アセンブリを製造する方法であって、
層状に配置されたエキスパンドメタル層のスタック、バイポーラプレート、および追加的エキスパンドメタル層を用意する工程と、
複数のメッシュを含む平面セクションを、追加的エキスパンドメタル層から完全に除去する工程であって、除去されたセクションの形状の1つ以上の第1エキスパンドメタル要素と、除去されたセクションに対応する貫通孔を有する残りのエキスパンドメタル層の形状の第2エキスパンドメタル要素とが、追加的エキスパンドメタル層から形成される工程と、
第2エキスパンドメタル要素を、抵抗溶接によってスタックの外側エキスパンドメタル層上に溶接する工程と、
第1エキスパンドメタル要素を、その後、第2エキスパンドメタル要素の貫通孔に再び挿入する工程と、
バイポーラプレートを、第1エキスパンドメタル要素のスタックとは反対側の平面側にプロジェクション溶接によって溶接する工程であって、バイポーラプレートおよび第1エキスパンドメタル要素は、好ましくは1回の作業で互いに溶接され、第1エキスパンドメタル要素および第2エキスパンドメタル要素は、互いに溶接される、工程と、を備える方法に関する。
【0029】
本発明に係る方法は、本発明に係るバイポーラプレート電極アセンブリを製造するために用いられる。プロセスに関連する利点は、アセンブリの全ての構成要素が抵抗溶接によって互いに材料的に結合され得ることにある。抵抗溶接法は、制御技術に関して比較的容易であり、特に、他の溶接法と比較してそれほど精巧でない溶接ツールで済む。バイポーラプレートの性質のために、抵抗溶接による電極への直接溶接は不可能である。それにもかかわらず、本発明による方法により、抵抗溶接は、方法が含む革新的かつ相乗的な中間的な工程によって可能になる。プロセス制御は、特により大きなメッシュサイズを有するエキスパンドメタル層が溶接中に表面方向に膨張するという認識に基づいている。したがって、溶接されたエキスパンドメタル層の塑性高さは、同一の溶接されていないエキスパンドメタル層の塑性高さよりも低い。個々の要素(第1エキスパンドメタル要素)が、溶接されていないエキスパンドメタル層(追加的エキスパンドメタル層)から初めに除去され、次いで、スタックのエキスパンドメタル層に今度は溶接されている残りのエキスパンドメタル層(第2エキスパンドメタル要素)に再び挿入される場合、溶接されている第2エキスパンドメタル要素は、事前に除去された第1エキスパンドメタル要素よりも低い塑性高さを有する。第1エキスパンドメタル要素が意図されたように第2エキスパンドメタル要素に挿入されると、第1エキスパンドメタル要素は、したがって、スタックの厚さ方向またはスタックの方向に第2エキスパンドメタル要素よりも突出する。本発明の特別な特徴は、バイポーラプレートと外側エキスパンドメタル層とを溶接する際に、第1エキスパンドメタル要素の突出部をプロジェクション溶接法における溶接突起として使用できることにある。つまり、突出部の形状の溶接突起は、ほぼ完全に溶融する。したがって、第1エキスパンドメタル要素の領域において、バイポーラプレートと外側エキスパンドメタル層との間に材料的に結合された接続が存在する。第2エキスパンドメタル要素の領域において、従来技術から知られている圧縮によるバイポーラプレートへの接合を、後の過程で実現することができる。さらに、個々のエキスパンドメタル要素は、この溶接工程中に互いに溶接されて、ほぼ均一な外側エキスパンドメタル層になる。最後に、事前に分離された要素は、このようにしてエキスパンドメタル層に再組立てされる。
【0030】
一方、ガス拡散電極の外側エキスパンドメタル層と隣接するエキスパンドメタル層との間の第2エキスパンドメタル要素の領域には、材料結合が存在する。したがって、バイポーラプレートとガス拡散電極との間には、第1エキスパンドメタル要素から第2エキスパンドメタル要素にわたって、スタックにおいて隣接するエキスパンドメタル層に向かって、材料的に結合された導電性リンクが存在する。
【0031】
第1エキスパンドメタル要素を形成するために、好ましくは、セクションは、切断処理、特にレーザ切断によって追加的エキスパンドメタル層から除去される。レーザ切断は、優れた品質で技術的に自動化することができ、正確性が高い。
【0032】
好ましくは、第2エキスパンドメタル要素は、ガス拡散電極またはエキスパンドメタル層のスタック内で最大のメッシュサイズを有する、ガス拡散電極またはエキスパンドメタル層のスタックのエキスパンドメタル層上に溶接され、第2エキスパンドメタル要素は、ガス拡散電極のエキスパンドメタル層よりも大きいメッシュサイズを有する。バイポーラプレートに接続された外側エキスパンドメタル層が特に大きなばね弾性特性を有することが保証される。
【0033】
本発明の好ましい特徴によれば、第1エキスパンドメタル要素は、第2エキスパンドメタル要素に対する第1エキスパンドメタル要素の相対的な向きが第1エキスパンドメタル要素の除去前の向きに対応するように、第2エキスパンドメタル要素に挿入される。特に、得られるエキスパンドメタル層の機械的特性、特にばね弾性および安定性などは、元の接続点を使用することによってほとんど損失なく回復される。しかしながら、第1エキスパンドメタル要素の向きを元の向きからずらして設定することも原理的に考えられる。こうして、セクションにおいて互いに対してねじれたメッシュをエキスパンドメタル層の内部に形成することができる。したがって、特に、電極アセンブリを通過する流体の層流の形成が、このように有利に回避される。
【0034】
本発明による方法の好ましいさらなる発展形態により、追加的に設けられたエキスパンドメタル層から、個々のセクションが除去されるだけでなく、同じ種類の複数のそのようなセクションが除去される。特に、溶接後に対応する数の貫通孔を有する第2エキスパンドメタル要素に後で再び挿入するために、エキスパンドメタル層から合計4つのセクションが除去されるのが好ましい。セクションは、第2エキスパンドメタル要素にわたって規則的に分布して配置された貫通孔が形成されるように選択されることが好ましい。したがって、後のプロジェクション溶接のために、複数の溶接突起が形成される。したがって、バイポーラプレートと外側エキスパンドメタル層との間の接続面は増加し、溶接作業中の安定性は、突起の形状の対応しかつ規則的に分布した支持面によって改善される。具体的には、第1セクションに従って、第2エキスパンドメタル要素を溶接する前に、さらなるエキスパンドメタル要素を形成するために、さらなるセクションが追加的エキスパンドメタル層および/または第2エキスパンドメタル要素から完全に除去される。さらなるセクショは、好ましくは、溶接された第2エキスパンドメタル要素に再び挿入され、続いて、プロジェクション溶接によって、好ましくは同時に、第1エキスパンドメタル要素に、一方ではバイポーラプレートに、他方では第2エキスパンドメタル要素に溶接される。
【0035】
本発明はまた、本発明に係る燃料電池または電解装置の本発明に係るバイポーラプレート電極アセンブリを製造する変更された方法であって、
層状に配置されたエキスパンドメタル層のスタック、バイポーラプレート、および追加的エキスパンドメタル層を用意する工程と、
複数のメッシュを含む平面セクションを、追加的エキスパンドメタル層から完全に除去する工程であって、除去されたセクションの形状の1つ以上の第1エキスパンドメタル要素と、除去されたセクションに対応する貫通孔を有する残りのエキスパンドメタル層の形状の第2エキスパンドメタル要素とが、追加的エキスパンドメタル層から形成される工程と、
第1エキスパンドメタル要素を、抵抗溶接によってスタックの外側エキスパンドメタル層上に溶接する工程と、
第2エキスパンドメタル要素を、その後、外側エキスパンドメタル層上にセットする工程であって、第1エキスパンドメタル要素は、第2エキスパンドメタル要素の貫通孔内に位置決めされる工程と、
バイポーラプレートを、第2エキスパンドメタル要素のスタックとは反対側の平面側にプロジェクション溶接によって溶接する工程であって、バイポーラプレートおよび第2エキスパンドメタル要素は、好ましくは1回の作業で互いに溶接され、第2エキスパンドメタル要素および第1エキスパンドメタル要素は、互いに溶接される、工程と、を備える。
【0036】
本発明による第1方法の全ての利点は、本発明によるこの第2方法によっても達成することができる。第2方法は、第1および第2エキスパンドメタル要素が挿入される順序においてのみ、第1方法と異なる。第2方法はまた、第1方法の好ましい特徴によって有利にさらに発展させてよい。従って、2つの方法は、共通の発明概念によって結びついている。
【0037】
本発明はまた、本発明に係る燃料電池または電解装置の本発明に係るバイポーラプレート電極アセンブリを製造する代替的な方法であって、
層状に配置されたエキスパンドメタル層のスタック、バイポーラプレート、および平坦側にわたって規則的に分布して配置された複数の交点を有する追加的エキスパンドメタル層を用意する工程と、
バイポーラプレートに、複数の貫通孔を設ける工程であって、貫通孔は、バイポーラプレートを完全に貫通するとともに、2つの大きな表面の間に延在する工程と、
バイポーラプレートと追加的エキスパンドメタル層とを互いに接触させる工程であって、バイポーラプレートの各貫通孔は、エキスパンドメタル層の交点の上に配置される工程と、
バイポーラプレートと追加的エキスパンドメタル層とを、融接法によって互いに面で溶接して複合体を形成する工程であって、1つ以上の溶接電極を貫通孔に挿入するとともに、交点の領域においてバイポーラプレートとエキスパンドメタル層との間に溶接接合が形成される工程と、
スタックの複合体側のエキスパンドメタル層と、複合体の追加的エキスパンドメタル層とが、抵抗溶接によって互いに面で溶接される工程と、を備える。
【0038】
本発明による代替的なプロセス制御により、ガス拡散電極とバイポーラプレートとの間の材料結合が達成されるとともに、電極とバイポーラプレートとの間の境界層における定着現象および酸化物の形成が回避されるという特定の利点を有する。この方法は、追加的エキスパンドメタル層を個々の要素に分割する必要がないという技術的な利点を有する。したがって、本方法のこの部分は、有利に簡略化される。本発明による第1方法とは対照的に、溶接突起がないため、追加的エキスパンドメタル層とバイポーラプレートとの溶接は、比較的容易なプロジェクション溶接によって実現することができず、融接法によって実現しなければならない。この目的のために、特に、溶接電極のエキスパンドメタル層への溶接に関連したアクセスを提供するために、溶接前にバイポーラプレートには貫通孔が設けられる。
【0039】
基本的に、複数の融接法が、本発明による代替的な方法での使用に適している。しかし、不活性ガス融接、特にタングステン不活性ガス(Wolfram-Inertgas-Schweissen)溶接(TIG溶接)が有利であることが分かっている。TIG溶接は、アルゴンを含む不活性ガス雰囲気下で行われる。
【0040】
この方法によれば、バイポーラプレートに孔が設けられる。これらの孔は、好ましくはチタン製のバイポーラプレートに、好ましくはレーザ切断によって形成される。孔は、その幾何学的サイズおよび向きに関して、バイポーラプレートに隣接するエキスパンドメタル層のメッシュの交点に対応している。TIG溶接プロセスの過程で、孔は添加剤、特にチタンで充填される。添加物としてチタンを導入することによって、一方では、特にチタン製のエキスパンドメタル層と、特にチタン製のバイポーラプレートとの間に材料結合が生じる。このようにして、エキスパンドメタル層とバイポーラプレートとの間に(酸化チタンを含まない)金属間接続が形成される。これにより、バイポーラプレートは、エキスパンドメタル層に対して永続的に材料的に結合されるので、定着現象が回避される。さらに、最小限のオーム抵抗が生じるように、エキスパンドメタル層とバイポーラプレートとの間に金属間接続が形成される。その結果、ガス拡散電極とバイポーラプレートとの間のオーム抵抗が、これも永続的に低減される。
【0041】
さらに、本発明は、アノード側のバイポーラプレート電極アセンブリ、結果としてバイポーラプレートアノードアセンブリの使用に関する。
ステンレス鋼のエキスパンドメタル層は、好ましくは、バイポーラプレートのカソード側に固定される。バイポーラプレートへの接続はまた、溶接によって、すなわち抵抗溶接によって、またはさらにはビーム溶接、特にレーザビーム溶接によって行われる。しかし、はんだ付け、特にレーザはんだ付けも考えられる。
【0042】
本発明に関して、特に、バイポーラプレート側でスタックを終端させるガス拡散電極を形成するスタックのエキスパンドメタル層は、特に、電極とバイポーラプレートとの間の接続リンクを技術的に形成するので、非常に重要である。本発明の意味において、このエキスパンドメタル層は、「外側」エキスパンドメタル層と称される。
【0043】
しかしながら、膜側の電極を形成するスタックを終端する他方の端部に配置された外側エキスパンドメタル層もまた、本発明にとって非常に重要である。これは、酸化物の不利な形成もまた、膜と膜側のエキスパンドメタル層との間の接続に関係するためである。したがって、本発明は、膜と本発明によるバイポーラプレート電極アセンブリとを有するシステムも含む。この点に関して、少なくとも膜側の他方の外側エキスパンドメタル層の表面に導電性コーティングが設けられることが好ましい。コーティングは、特に、意図されるように電極で終了する化学反応の触媒作用を引き起こし、エキスパンドメタル層の材料の防食を提供し、および/またはエキスパンドメタル層の導電性を改善してよい。このようにして、本発明による電極の効率および抵抗を改善し得る。本発明の好ましい特徴によれば、コーティングは、金、銀、パラジウム、白金、ロジウム、イリジウム、レニウム、ルテニウム、モリブデン、タングステン、ニッケル、またはこれらの金属の1つ以上との化合物から形成される。前述の金属はすべて、前述の分野、触媒作用、防食、または導電性のうちの1つ以上において特に利点を有する。特に好ましくは、コーティングは、イリジウムおよび/またはイリジウム含有化合物、特に酸化イリジウムから形成される。イリジウムおよびその化合物、特に酸化イリジウムは、電解装置における電気分解、特に水の電気分解の間に起こる反応に関して特に有利であるとともに、触媒、防食、および導電性に関連する改善を提供することが見出された。
【0044】
しかしながら、イリジウムは、比較的希少な元素であり、抽出量が、無期限に制限されているという問題がある。したがって、膜側の外側エキスパンドメタル層のみ、特にスタックからとは反対側の膜側の外側エキスパンドメタル層の表面のみが、イリジウムおよび/またはイリジウム含有化合物、特に酸化イリジウムでコーティングされることが好ましい。本発明によるエキスパンドメタル層のスタックに関して、意図された使用のために膜に隣接するエキスパンドメタル層のコーティング、またはイリジウムもしくはイリジウム含有化合物を有する膜側のその表面は、関連する利点を達成するのに十分であることが見出された。
【0045】
本発明の好ましい特徴によれば、スタックは、少なくとも部分的にコーティングされていないエキスパンドメタル層を含む。コーティングされたエキスパンドメタル層と少なくとも部分的にコーティングされていないエキスパンドメタル層とは互いに溶接されるとともに、圧縮されることで複合体を形成する。好ましくは溶接によって互いに結合されたエキスパンドメタル層は、プロトン伝導膜のための平滑で面状の安定した支持体を有利に形成する。燃料電池または電解装置の最終組立状態において、この膜は、2つのガス拡散電極の間に位置する。2つのガス拡散電極の一方は、例えば水電解の場合、チタン(酸素側)製であり、他方のガス拡散電極は、ステンレス鋼(水素側)製である。
【0046】
本発明のさらなる特徴によれば、バイポーラプレート側の外側エキスパンドメタル層は、コーティングされずに構成される。
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照して以下に記載される。具体的には、
図1乃至
図5は、本発明による第1方法に関し、
図1、
図6、および
図7は、本発明による代替的な第2方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】本発明による方法で使用される本発明によるエキスパンドメタル層の上面図および側面図の概略図。
【
図2】本発明による第1制御方法による第1エキスパンドメタル要素の概略的な拡大上面図および、第2エキスパンドメタル要素の概略的な上面図。
【
図3】本発明による第1制御方法の中間製品を示す概略切断側面図。
【
図4】本発明による第1制御方法の中間製品を示す概略切断側面図。
【
図5】本発明に係る第1制御方法による、本発明に係るバイポーラプレート電極アセンブリを示す概略切断側面図。
【
図6】本発明による第2制御方法による、貫通孔が設けられた本発明によるバイポーラプレートの上面図および側面図の概略図。
【
図7】本発明による第2制御方法の中間製品の概略的な上面図および概略的な側面図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、本発明によるバイポーラプレート側の外側エキスパンドメタル層1の上面図および側面図を示す。
ここで、エキスパンドメタル層1はチタン製である。エキスパンドメタル層1は、一方では個々のメッシュ2を形成するとともに、他方では交点3を形成する交差するウェブである格子構造を有する。エキスパンドメタル層1の面状の外側または平坦側は、共通の平面に配置された複数の交点3によって形成される。
図1の上面図では、合計16の交点が、一例としてそれぞれ1つの点でマークされている。
【0049】
この場合、エキスパンドメタル層1は、全てのメッシュについて均一である単一の規則的なメッシュサイズを有する。エキスパンドメタル層のメッシュサイズは、特に、12mmのメッシュ幅および6mmのメッシュ長さを有する。図の平面を参照すると、メッシュ2の2つの直接的に隣接する交点3の間のメッシュ長さは、水平方向で測定され、メッシュ2の2つの間接的に隣接する交点3の間のメッシュ幅は、垂直方向で測定される。
【0050】
図1に示されるエキスパンドメタル層1は、
図2~
図5による本発明による第1プロセス制御、ならびに
図6および
図7による第2プロセス制御において、追加的エキスパンドメタル層として使用される。
【0051】
意図されるように、エキスパンドメタル層は、この形態または変更された形態の最終組立状態で、バイポーラプレート側に外側エキスパンドメタル層を形成する。
図2乃至
図5は、
図1に示されるエキスパンドメタル層1に関する、本発明による第1プロセス制御を示す。
【0052】
最初に、層状に配置されたエキスパンドメタル層4、5、6のスタック11、バイポーラプレート7、およびエキスパンドメタル層1の形状の追加的エキスパンドメタル層が用意される。
【0053】
図2は、複数のメッシュ2を含む合計4つの同一の平面セクションがエキスパンドメタル層1から完全に除去されていることを示す。
図2には1つのセクション8のみが示されている。この場合、セクション8は、レーザ切断によってエキスパンドメタル層1から切り出される。セクション8は、ここでは円形の外形を有する。セクション8の除去により、除去されたセクション8の形状の4つの第1エキスパンドメタル要素8と、除去されたセクション8に対応する4つの円形の貫通孔10を有する残りのエキスパンドメタル層1の形状の第2エキスパンドメタル要素9とが得られる。
【0054】
メッシュ2および交点3は、セクション8の拡大図において明確に認識可能である。
図3に示されるように、第2エキスパンドメタル要素9は、次いで、第2エキスパンドメタル要素9に面するスタック11のエキスパンドメタル層6上に面で溶接される。ここでは、プロジェクション溶接法を用いる。第2エキスパンドメタル要素9は、溶接によってスタック11に追加されるとともに、最終組立状態では、外側エキスパンドメタル層14の形状の第1エキスパンドメタル要素と共に、最終組立状態のスタック11全体によって形成されるガス拡散電極の一部である。
【0055】
第2エキスパンドメタル要素9の交点の形状の溶接突起は、溶接によって少なくとも部分的に溶融される。したがって、溶接されたエキスパンドメタル要素9の塑性高さは、溶接されていないエキスパンドメタル要素9の塑性高さよりも低く、したがって、溶接されていない第1エキスパンドメタル要素8の塑性高さよりも低い。
【0056】
第1方法のその後のスナップショットを
図4に示す。第1エキスパンドメタル8は、貫通孔10に再び正確に挿入される。したがって、第1エキスパンドメタル8は、第2エキスパンドメタル要素9およびスタック11のエキスパンドメタル層6と接触している。さらに、大きな表面13を有するバイポーラプレート7は、第1エキスパンドメタル要素8と接触する。
【0057】
図示されるように、溶接されていない第1エキスパンドメタル要素8は、この場合スタック11の方向に対応する厚さ方向に第2エキスパンドメタル要素9を超えて突出している。したがって、バイポーラプレート7は、第1エキスパンドメタル要素8の交点3にのみ隣接する。第2エキスパンドメタル要素9とバイポーラプレート7との間の接触は、この時点では存在しない。この場合、バイポーラプレートはチタン製である。
【0058】
次の工程では、この段階で突出している第1エキスパンドメタル要素8を溶接突起として使用してよい。したがって、バイポーラプレート7と外側エキスパンドメタル層14とを溶接するための次のプロジェクション溶接の使用を可能にする。つまり、第1エキスパンドメタル8の突出部の形状の溶接突起は、ほぼ完全に溶融する。したがって、第1エキスパンドメタル要素の領域において、バイポーラプレートと外側エキスパンドメタル層との間に材料結合が存在する。溶接工程中または後の過程で、圧縮によって第2エキスパンドメタル要素9の領域でバイポーラプレート7との接触を実現することができる。さらに、個々のエキスパンドメタル要素8、9は、この溶接工程中にほぼ均一な外側エキスパンドメタル層14に溶接される。結果として、事前に分離された要素8、9は、このようにして、材料的に結合されたエキスパンドメタル層14を通してマルチパートに再組立てされる。
【0059】
図5は、本発明による第1プロセス制御に従って製造される、本発明によるバイポーラプレート電極アセンブリ15を示す。
バイポーラプレート電極アセンブリ15は認識可能である。バイポーラプレート電極アセンブリ15は、層状に配置されたエキスパンドメタル層4、5、6、14を含む電極を形成するスタック11と、バイポーラプレート側の外側エキスパンドメタル層14に面で溶接されたバイポーラプレート7とを含む。バイポーラプレート7に溶接された第1エキスパンドメタル要素8の交点3が溶融していることが分かる。したがって、エキスパンドメタル層14とバイポーラプレート7との間の材料的に結合された接続領域は、有利に拡大される。
【0060】
ここで、異なるハッチングは、スタック11のエキスパンドメタル層4、5、6、14が異なるメッシュサイズを有することを表す。エキスパンドメタル層に応じて、特定のメッシュサイズを有する。このメッシュ幅は、エキスパンドメタル層ごとに異なる。この構成は、特に2つの点で有利である。これは、意図された使用事例において達成されることが望ましい乱流流体の流れをサポートする。さらに、この構成は、個々のエキスパンドメタル層4、5、6、14の間に生じる接触点の不均一な分布をもたらすことで、後のスタックの形状安定性をさらに高める。
【0061】
つまり、バイポーラプレート電極アセンブリ15のバイポーラプレート7に隣接する外側エキスパンドメタル層14のメッシュ2が最大のメッシュサイズを有する。エキスパンドメタル層4、5、6、14は、好ましくは、エキスパンドメタル層4、5、6、14のメッシュサイズが、バイポーラプレート7に接続された外側エキスパンドメタル層14から始まってスタックの方向に減少するように、スタックに連続的に配置される。エキスパンドメタル層がより大きなメッシュを有する目的は、一方では安定した平坦な表面を形成することであり、他方ではばね効果を高めることである。したがって、意図された使用事例において、バイポーラプレート電極アセンブリ15のバイポーラプレート7と接触する外側エキスパンドメタル層14は、全てのエキスパンドメタル層4、5、6、14のうちで最大のメッシュサイズを有することが好ましい。したがって、バイポーラプレート7に接続された外側エキスパンドメタル層14は、特に向上したばね弾性特性を有することが保証される。これは、製造方法にとっても、後の燃料電池または電解装置にとっても有利である。
【0062】
図6および
図7は、
図1に示されるエキスパンドメタル層1に関する、本発明による第2プロセス制御を示す。
最初に、層状に配置されたエキスパンドメタル層4、5、6のスタック11、バイポーラプレート7、およびエキスパンドメタル層1の形状の追加的エキスパンドメタル層が用意される。
【0063】
エキスパンドメタル層1は、平坦側にわたって規則的に分布して配置された複数の交点3を含む。
図1の平面を参照すると、平坦側は、上面図において上側に位置する。
図6に示されるように、バイポーラプレート7には、最初に、複数の貫通孔16が設けられる。貫通孔16は、バイポーラプレート7を完全に貫通するとともに、その2つの大きな表面13、17の間に延在する。
【0064】
貫通孔16は、好ましくはチタン製のバイポーラプレート7にレーザ切断によって形成される。貫通孔は、その幾何学的サイズおよび向きに関して、バイポーラプレート7に隣接するエキスパンドメタル層1のメッシュの交点3に対応している。
図1にマークされた合計16個の交点3に従って、16個の対応する貫通孔16が同様にバイポーラプレート7に形成される。
【0065】
図7は、バイポーラプレート7とエキスパンドメタル層1とが互いに接触していることを示している。つまり、バイポーラプレート7の各貫通孔16は、エキスパンドメタル層1の対応する交点3の上に位置する。
【0066】
以下の方法の工程は図示されない。バイポーラプレート7とエキスパンドメタル層1とを、アルゴンを含む不活性ガス雰囲気下でTIG溶接することにより、面で溶接して複合体を形成する工程。さらには、1つ以上の溶接電極を貫通孔16に挿入するとともに、バイポーラプレート7とエキスパンドメタル層1との間にチタンの添加剤を添加することによって、交点3の領域に溶接接続を構成する工程。
【0067】
TIG溶接の過程で、孔はチタンの添加物で充填される。その結果、一方の特にチタン製のエキスパンドメタル層1と、他方のチタン製のバイポーラプレート7との間に材料結合が生じる。これにより、バイポーラプレート7は、エキスパンドメタル層1に対して永続的に材料的に固定されるので、定着現象が回避される。さらに、最小限のオーム抵抗が生じるように、エキスパンドメタル層1とバイポーラプレート7との間に金属間接続が形成される。その結果、ガス拡散電極とバイポーラプレート7との間のオーム抵抗が永続的に減少する。
【0068】
本発明によるバイポーラプレート電極アセンブリを形成するために、層状に配置されたエキスパンドメタル層4、5、6を含むスタック11の複合材側のエキスパンドメタル層6と、複合体のエキスパンドメタル層1とが、抵抗溶接によって互いに面で溶接される。
【符号の説明】
【0069】
1 エキスパンドメタル層
2 メッシュ
3 交点
4 エキスパンドメタル層
5 エキスパンドメタル層
6 エキスパンドメタル層
7 バイポーラプレート
8 第1エキスパンドメタル要素/セクション
9 第2エキスパンドメタル要素
10 貫通孔
11 スタック
13 大きな表面
14 外側エキスパンドメタル層
15 バイポーラプレート電極アセンブリ
16 貫通孔
17 大きな表面
【外国語明細書】