(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127844
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】堆積プロセス中の構造体の形成を防止するためのスート堆積機の駆動同期化
(51)【国際特許分類】
C03B 37/018 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
C03B37/018 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024033976
(22)【出願日】2024-03-06
(31)【優先権主張番号】23160463.8
(32)【優先日】2023-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】599089712
【氏名又は名称】ヘレウス・クアルツグラース・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング・ウント・コンパニー・コマンディット・ゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Quarzglas GmbH & Co. KG
(71)【出願人】
【識別番号】000190138
【氏名又は名称】信越石英株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルテ アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】バデケ クラオス-ウヴェ
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021EA03
4G021EB14
4G021EB26
(57)【要約】
【課題】少なくとも2つの相互に離間して隣接するビルドアップバーナを使用して堆積表面上にSiO2スート粒子を堆積させるための方法であり、SiO2スート粒子の均一な堆積が良好な堆積効率で達成される方法を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも2つの相互に離間したビルドアップバーナを使用して堆積表面上にSiO2スート粒子を堆積させる方法であって、前記ビルドアップバーナが、前記堆積表面に対して、前記回転するキャリアの前記長手方向軸線に対して実質的に平行に、n倍のバーナ間距離dの振幅だけ並進移動を実行し、前記堆積表面が、前記キャリアの前記長手方向軸線を中心にm1回数で回転し、m1が、整数以外の正の10進数であり、前記キャリアの前記長手方向軸線の前記m1回の回転のための期間が、バーナ間距離dによる前記ビルドアップバーナの前記並進移動のための期間と実質的に等しいことを特徴とする方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの相互に離間して隣接するビルドアップバーナを使用して堆積表面上にSiO2スート粒子を堆積させる方法であって、
前記少なくとも2つのビルドアップバーナ間の距離が、dであり、
前記堆積表面が、キャリアの長手方向軸線を中心に回転する前記キャリアの円筒ジャケット表面であり、キャリアSiO2スート粒子が、前記円筒ジャケット表面上に層ごとに堆積される方法において、
前記ビルドアップバーナが、前記堆積表面に対して、前記回転するキャリアの前記長手方向軸線に対して実質的に平行に、n倍のバーナ間距離dの振幅だけ並進移動を実行し、nが、2以上の整数であり、dが、単一のバーナ間距離に対応し、
前記堆積表面が、前記キャリアの前記長手方向軸線を中心にm1回数で回転し、m1が、整数以外の正の10進数であり、
前記キャリアの前記長手方向軸線の前記m1回の回転のための期間が、バーナ間距離dによる前記ビルドアップバーナの前記並進移動のための期間と実質的に等しいことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記堆積表面が、前記キャリアの前記長手方向軸線を中心に回転し、
前記キャリアの前記長手方向軸線を中心とした前記堆積表面の(m2+(k/n))回の回転のための期間が、バーナ間距離dによる前記ビルドアップバーナの前記並進移動のための期間に実質的に対応し、m2が、1~100、好ましくは3~35、さらにより好ましくは5~25の整数であり、kが、n未満の自然数であり、m1=m2+(k/n)であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビルドアップバーナの前記並進移動が、変曲点で方向が変化する反転移動を表し、前記変曲点の軸方向位置が、前記堆積表面及び前記長手方向軸線に対して変化することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記反転移動の前記変曲点が、ストロークごとに変化することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記変曲点が、固定的に予め定義された移動パターンに従ってストロークごとに変化することを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記変曲点が、ストロークごとに統計的に変更されたオフセットによって変化することを特徴とする、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項7】
前記ビルドアップバーナが、2倍の前記バーナ間距離2dの振幅だけ前記回転するキャリアの前記長手方向軸線に対して実質的に平行な並進移動を実行し、一方、前記堆積表面が、(m2+(k/n)+y)回転の回転を実質的に同時に実行し、m2が、1~100、好ましくは3~35、さらにより好ましくは5~25の整数であり、kが、n未満の自然数であり、m1=m2+(k/n)であり、yが、-0.3~0.3の間で変動することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記堆積表面の前記回転及び前記変曲点の変動が、前記方法が均一なスートビルドアップをもたらすように適合されることを特徴とする、請求項1~4,7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記堆積表面上の前記ビルドアップバーナの移動プロファイルが、判定されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記堆積表面上の前記ビルドアップバーナの前記移動プロファイルが、前記SiO2スート粒子の前記堆積中にプロセッサによってオンラインで連続的に監視されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項11】
前記プロセッサが、前記堆積表面上の前記ビルドアップバーナの前記移動プロファイルから、均一なスートビルドアップのために堆積されたSiO2スート粒子が少なすぎる前記堆積表面の領域を識別することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記プロセッサが、実質的に均一なスート体がビルドアップされるように、前記キャリアの前記長手方向軸線を中心とした前記堆積表面の前記回転及び/または前記ビルドアップバーナの反転並進移動の前記変曲点を制御することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記回転するキャリアの前記長手方向軸線が、垂直方向または水平方向に配向されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記回転するキャリアの前記長手方向軸線が、水平方向に配向されることを特徴とする、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ビルドアップバーナの並進及び前記堆積表面の前記回転の周波数が、前記ビルドアップバーナの反転移動の方向の各変化中に、SiO2スート体の現在の直径に適合されることを特徴とする、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体の形成が堆積プロセス中に実質的に防止される、合成石英ガラスを製造するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
合成石英ガラスを製造するための多数の方法が先行技術から知られており、ここではSiO2スート粒子が、CVD法においてケイ素含有出発物質から加水分解または酸化によって生成され、移動するキャリア上に堆積される。これらの方法では、SiO2スート粒子が生成される複数の隣接するビルドアップバーナが使用されることがある。
【0003】
米国特許第5,211,732号明細書は、合成石英ガラスを製造するためのスートビルドアップ方法を記載しており、ここでは、ビルドアップバーナの最終走行位置(変曲点)を変動させることにより、隣接するビルドアップバーナの不均等な堆積速度、及び各往復移動中の対応する反転点でのビルドアップバーナのより長い滞留時間が、固定されたパターンに従って不鮮明になる。振動移動は、追加の変位移動によって重ね合わせられ、米国特許第5,211,732号明細書の
図7によれば、振動及び変位移動は、バーナ間距離と同一の振幅を有し得る。並進振幅は、振動振幅の約半分である。次いで、並進移動の周波数は、振動周波数の約1/10に対応する。これにより、軸方向の2つの隣接するビルドアップバーナによって、及び並進反転点(変曲点)の領域における3つの隣接するバーナによって、ターゲットのすべての領域が実質的に一様に重なる。しかしながら、この先行技術では、振動周波数と回転周波数との間に相関はない。したがって、好ましくない周波数比を除外することはできず、定期的に発生する。
【0004】
米国特許出願公開第2018/0237330号明細書は、光ファイバ用の多孔質プリフォームを製造するためのOVDスートビルドアップ方法を記載している。この場合、特に大きなプリフォームの場合、スートビルドアップ中に堆積厚さが不均一であることに起因して起こり得るコア偏心を回避することに焦点が当てられている。この目的のために、バーナトレースが一致するのを防ぐために、スートビルドアップの異なる段階で異なる仕様が作成される。この場合、装置は、1つ以上のスートビルドアップバーナを有し得る。この先行技術によるバーナトレース一致の防止は、石英ガラス製造の他の方法、例えばMCVD法またはPCVD法に対しても記載されている。記載された方法では、石英ガラス本体はビルドアッププロセス中に回転させられ、バーナは反転移動を描き、この場合、本体が回転に必要とする時間とバーナが反転移動に必要とする時間とが、1回以上の動作後に反転バーナ移動の開始点が同一になる互いに対しての比率であるようなときに、バーナトレースが一致する。加えて、先行技術は、バーナトレースが一致するこの状態は、特に高い層厚の場合には回避されるべきであるが、低い層厚では非常に肯定的であり得ることを教示している。バーナトレースが高い層厚で互いに一致するのを防止するために、仕様が移動角度に対して定義され、移動角度は、反転バーナ移動の持続時間中の、本体軸線からスート体表面上の固定点までの線を表す。それ故、この先行技術は、単一のバーナの調整と、単一のバーナトレースの位置の調整とを考慮している。
【0005】
欧州特許第3279155号明細書は、キャリア本体上に堆積されるスート体をビルドアップするための方法に関する。キャリア本体は、ビルドアップバーナに対して往復し、したがって反転移動を実行する。本体半径がターゲット半径の50~80%の範囲内にある場合、回転速度r及びバーナ並進速度Vは、トレース幅V/rが実質的に一定のままであり、10%を超えて変化しないように、徐々に減少させられる。この対策は、スート体の直径のばらつきを小さくすることを意図している。
【0006】
特開2013-043810号公報は、スート体から製造される光ファイバの伝送性の向上を達成するために、スート体における波の形成が抑制されるスート体のビルドアップ方法を記載している。スート体は、ビルドアッププロセス中に回転させられ、ビルドアップバーナは、それに対して反転移動で往復させられる。波の形成は、回転移動を並進移動と同期させることによって達成され、往復移動のサイクルは、その本体が(n+1/2)の回数で回転させられている間に完了する(式中、n=0、1、2、..である)。これにより、全く同じバーナの隣接する層のオフセットが達成される。しかしながら、先行技術は、バーナアセンブリの隣接するバーナによるトレースが干渉しないように、スート体の回転及びバーナの並進がどのように同期されるべきかを記載していない。
【0007】
米国特許第6,678,940号明細書、米国特許第7,451,623号明細書、米国特許第7,541,624号明細書、米国特許出願公開第2009/0038346号明細書、及び米国特許第8,635,888号明細書は、うねりを回避するために回転速度のランダムな変動が用いられる、スート体をビルドアップするための方法を記載している。
【0008】
米国特許出願公開第2002/081377号明細書は、バーナトレースの螺旋状の層が互いに意図的に相関付けられるマルチバーナアセンブリを記載している。この方法は、連続するバーナトレースが離間されるように実施される。
【0009】
特開平7-25637号公報は、OVDスートビルドアップ方法を記載しており、ここでは、トレース幅の一定の変動が実施される。例示的な実施形態では、この変動は、バーナ速度またはスート体の回転のいずれかを小さな領域で変動させることによって達成される。
【0010】
特開平6-87624号公報は、スート体表面のうねりを回避するOVDスートビルドアップ方法を記載している。この目的のために、ビルドアップバーナは、ビルドアップターゲットに対して反転移動を実行し、それによってスート螺旋を生成する。ビルドアップバーナの復路では、ターゲットが反対方向に回転させられ、スートトレースが、往路のトレースの間に正確に生成されるように位置付けされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,211,732号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2018/0237330号明細書
【特許文献3】欧州特許第3279155号明細書
【特許文献4】特開2013-043810号公報
【特許文献5】米国特許第6,678,940号明細書
【特許文献6】米国特許第7,451,623号明細書
【特許文献7】米国特許第7,541,624号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2009/0038346号明細書
【特許文献9】米国特許第8,635,888号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2002/081377号明細書
【特許文献11】特開平7-25637号公報
【特許文献12】特開平6-87624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この先行技術に基づいて、本発明の目的は、少なくとも2つの相互に離間したビルドアップバーナを使用して堆積表面上にSiO2スート粒子を堆積させる方法であって、SiO2スート粒子の均一な堆積が良好な堆積効率で達成されるように、堆積バーナの振動周波数、スート体の回転周波数、及び必要により変曲点の位置が、連続的に変更される方法を提供することである。
【0013】
本発明による方法は、特に、SiO2スート粒子の繰り返される堆積が、同じ角度平面内、すなわち、スート体の長手方向軸線及びそのジャケット表面上の任意の点からなる平面内の同じまたは密接に隣接する軸方向位置でスート体の複数の回転にわたって生じる好ましくない移動パターンを防止するのに適するように意図されている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
〔SiO2スート粒子の堆積方法〕
これらの目的は、少なくとも2つの相互に離間したビルドアップバーナを使用して堆積表面上にSiO2スート粒子を堆積させる方法によって達成され、一方では、振動周波数と回転周波数との特別な相関が選択され、他方では、基礎となる技術的効果はビルドアップバーナの並進移動中の反転点の位置変位によって達成される。この文脈において、振動周波数は、ビルドアップバーナの移動、スート体の移動、またはビルドアップバーナ及びスート体の同時移動のいずれかによって形成されたスート体の長手方向軸線に対するビルドアップバーナの並進の周波数を意味し、回転周波数は、スート体の長手方向軸線を中心としたスート体の回転の周波数を意味する。
【0015】
したがって、本発明は、少なくとも2つの相互に離間して隣接するビルドアップバーナを使用して堆積表面上にSiO2スート粒子を堆積させる方法であって、
少なくとも2つのビルドアップバーナ間の距離が、dであり、
堆積表面が、キャリアの長手方向軸線を中心に回転するキャリアの円筒ジャケット表面であり、キャリアSiO2スート粒子が、円筒ジャケット表面上に層ごとに堆積される方法が提供される。
【0016】
次いで、本発明による方法は、
ビルドアップバーナが、堆積表面に対して、回転するキャリアの長手方向軸線に対して実質的に平行に、n倍のバーナ間距離dの振幅だけ並進移動を実行し、nが、2以上の整数であり、dが、単一のバーナ間距離に対応し、
堆積表面が、キャリアの長手方向軸線を中心にm1回数で回転し、m1が、整数以外の正の10進数であり、
キャリアの長手方向軸線のm1回の回転のための期間が、バーナ間距離dによるビルドアップバーナの並進移動のための期間に実質的に対応することを特徴とする。
【0017】
したがって、本発明の範囲内では、ビルドアップバーナの隣接するトレースの位置は、スート体の回転周波数とスート体の長手方向軸線に対するビルドアップバーナの並進との比率を調整することによって調整される。したがって、本発明によれば、スート体は整数ではない回転数(m1は、整数ではない10進数)を実行し、一方、バーナは1ストローク中に単一のバーナ間距離による並進を実行することが規定される。
【0018】
本発明による方法では、各ビルドアップバーナは、SiO2スート体の同時回転を伴うビルドアップバーナの並進移動中に、スート体上に螺旋状のトレースを堆積させ、上述の回転と並進との比率によって、ビルドアップバーナのトレースは均一なスート体を形成するように位置付けされる。本発明の文脈においては、均一なスート体は、特に、例えば得られた均一なトレース層に起因して均一な密度を有するスート体を意味すると理解される。
【0019】
本発明による方法を詳細に説明する前に、本発明による方法についていくつかの定義を最初に与えるべきである。
【0020】
〔定義〕
本発明の範囲内では、ビルドアップバーナの「反転移動」は、ビルドアップバーナが時間的に調節された変化中に回転するキャリアの長手方向軸線に対して平行な一方または他方の方向に移動するときを意味すると理解される。
【0021】
本発明の範囲内では、ビルドアップバーナは、SiO2スート粒子が生成され、円筒から堆積表面上に堆積する、バーナを意味すると理解される。本発明の文脈においては、単数形のビルドアップバーナを参照する場合、単数形の使用は、必ずしも1つのビルドアップバーナのみが使用されることを意味しない。同様に、単数形「ビルドアップバーナ」は、2つ以上のビルドアップバーナに使用することができる。
【0022】
本発明の範囲内では、「変曲点」は、ビルドアップバーナ及び/または堆積表面の反転移動の方向が変化する、長手方向軸線の空間点または回転するキャリアの長手方向軸線上の軸方向位置を意味すると理解される。
【0023】
本発明の範囲内では、「ストローク」は、ビルドアップバーナ及び/または堆積表面の、反転移動の方向へのビルドアップバーナ及び/または堆積表面の移動が反転する変曲点までの完全な移動を意味するものと理解される。
【0024】
本発明の範囲内では、「並進の振幅」は、
a)反転移動の変曲点までの、回転するキャリアの静的長手方向軸線に沿った方向におけるビルドアップバーナの移動の絶対経路、
b)反転移動の変曲点までの、静的に固定されたビルドアップバーナに沿った堆積表面の移動の絶対経路、または
c)ビルドアップバーナと堆積表面とが逆方向に移動するときの、ビルドアップバーナの反転移動の変曲点までのビルドアップバーナの移動経路と、堆積表面の反転移動の変曲点までの堆積表面の移動経路との絶対和
を意味する。
【0025】
本発明の文脈においては、少なくとも2つのビルドアップバーナが使用される。これらの少なくとも2つのビルドアップバーナは、スート体の長手方向軸線に対して実質的に平行な、互いからの距離dを有する。当然ながら、本発明による方法では、3つ以上のビルドアップバーナを使用することが可能である。この実施形態では、隣接するビルドアップバーナの距離は、いずれの場合もdであり、これは、ビルドアップバーナが互いに等距離に配置されていることを意味する。本発明による方法では、少なくとも2つ、好ましくは10~100、さらにより好ましくは20~50のビルドアップバーナが使用される。本発明の文脈においては、互いに等距離に配置されたビルドアップバーナの全体は、バーナアセンブリと称される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明による方法は、好ましくはOVD法として実施される。本発明によるOVD法では、ブランクの長手方向軸線に対して実質的に同心円状に延びる螺旋層を有する層構造体が、好ましくは、ビルドアップバーナが円筒ジャケット表面の長手方向軸線に対して平行な並進移動を実行する間に、キャリアの長手方向軸線を中心に回転するキャリアの円筒ジャケット表面にSiO2粒子を層ごとに堆積させることによって生成される。対照的に、円盤状の回転するキャリア上に円筒の長手方向軸線の方向に軸方向堆積によって大量のSiO2円筒がビルドアップされる本発明によっても可能であるVAD法は、通常、円筒の長手方向軸線に対して垂直に延在する軸方向に連続する層を有する螺旋層構造体をもたらす。
【0027】
OVD法の文脈において、本発明によれば、異なる方法設計が可能である。
第1の実施形態では、OVD法は、SiO2スート粒子がその上に堆積されるスート中空円筒を使用して実施される。この場合、中空円筒は、保持装置によって垂直または水平配向、好ましくは水平配向に保持される。水平配置は、特に比較的重いSiO2スート体の生成において好ましい。次いで、対応するSiO2スート粒子を中空円筒上に堆積させる。中空円筒の形態であるSiO2スート体は、中空円筒の内部にキャリアを有し得、その上に第1のSiO2スート粒子が本発明による方法の開始時に堆積される。この目的のために、例えば、セラミックキャリアが使用され得、これはスートビルドアッププロセスの後に除去され、その後にスート体がさらに処理され最終的にガラス化される。
【0028】
加えて、本発明による方法は、一般に石英ガラスで作製されたコアロッド上に生成したSiO2スート粒子を直接堆積させる、いわゆるSOCR法(SOCR=soot on core rod)として実施され得る。その場合、コアロッドはOVD体内に留まり得る。SOCR法を用いて生成され得る対応するプロセス生成物は、スート層を有するコアロッドから作製されたプリフォームである。
【0029】
本発明による方法のさらなる実施形態は、いわゆるAVAD法(高度なVAD法)であり、ここではVADスート体が最初に生成される。続いて、OVD法により、未ガラス化VADスート体の外側にSiO2スート粒子を堆積させる。
【0030】
先行技術では、SiO2粒子を層ごとに堆積させるため、前述の製造方法においては層構造体の形成が固有のものである。これらは、隣接する層間の屈折率差を示す脈理として知られるものとして目立つようになり得る。
【0031】
本発明による移動パターンを調整することにより、層構造体のこれらの及び上述の欠点を効率的に回避することができる。
【0032】
本発明による方法の好ましい実施形態では、堆積表面は、キャリアの長手方向軸線を中心に回転する。
【0033】
さらに好ましい実施形態では、キャリアの長手方向軸線を中心とした堆積表面の(m2+(k/n))回の回転のための期間は、バーナ間距離dによるビルドアップバーナの並進移動のための期間に実質的に対応し、m2は、1~100、好ましくは3~35、さらにより好ましくは5~25の整数である。kはn未満の自然数であり、m1はm1=m2+(k/n)に等しい。一方向の並進の総量、したがって振幅を決定する変数nは、好ましくは2以上の整数、より好ましくは2以上10以下の整数、さらにより好ましくは2以上5以下の整数、さらにより好ましくは2、3、または4、特に2である。
【0034】
n倍のバーナ間距離による並進の振幅の本発明による利点は、SiO2で作製された、生成されたスート体が、そこから生じる円錐端部を有することである。これらの円錐端部は、追加の加熱バーナ及び追加のヒータを使用して凝固され得る。ビルドアップバーナと同様に、追加の加熱バーナは、ビルドアップバーナの移動中にビルドアップバーナとともに並進を実行し、同時に、追加のヒータはスート体に対して静止位置を有する。
【0035】
n倍のバーナ間距離による振幅の更なる利点は、SiO2スート体の各領域において、2つ以上のバーナがスート体をビルドアップし、その結果、個々のビルドアップバーナのビルドアップ率の偏差に起因するいかなる幾何学的形状の変動も大きな影響を及ぼさないことである。
【0036】
本発明によるマルチバーナ方法では、バーナは等距離配置を有し、スート体の長手方向軸線に沿って一緒に移動させられる。この場合、各バーナは、1ストロークにおける振幅がビルドアップされるスート体の長さよりも著しく小さいため、スート体の限られた領域においてのみスート体をビルドアップする。
【0037】
少なくとも2つのビルドアップバーナである、基準ビルドアップバーナ及びそれに隣接する第2のビルドアップバーナを使用すると仮定すると、バーナ間距離d分の第2の並進におけるスート体の不均一な回転は、基準ビルドアップバーナの第1の堆積トレース(単一のバーナ間距離d分の第1の並進中に形成される)と第2の堆積トレース(単純なバーナ間距離d分の第2の並進中に形成される)との間の第2のビルドアップバーナの螺旋状堆積トレースをもたらす。
【0038】
これにより、個々の並進後、基準ビルドアップバーナ及び隣接する第2のビルドアップバーナの堆積トレースが重ならないことが保証される。
【0039】
本発明による方法の上述の好ましい実施形態では、ビルドアップバーナは、n倍のバーナ間距離dの振幅だけ、回転するキャリアの長手方向軸線に対して実質的に平行な並進移動を実行し、一方、並進が単一のバーナ間距離だけ進行する期間内に、堆積表面は、キャリアの長手方向軸線を中心に(m2+(k/n))の数だけ回転し、m2は、1~100、好ましくは3~35、さらにより好ましくは5~25の整数に等しい。kは、n及びm1未満の自然数であり、m1は、m1=m2+(k/n)に等しく、第2のビルドアップバーナの堆積トレースは、基準ビルドアップバーナの2つの堆積トレース間のちょうど中間に配置される。
【0040】
本発明の装置が3つ以上のビルドアップバーナを備える場合、使用されるビルドアップバーナのすべての堆積トレースの干渉、すなわち重ね合わせは、それぞれのビルドアップバーナ間の実質的に等距離の距離によって効率的に回避される。
【0041】
本発明による方法では、隣接するビルドアップバーナの距離が一般に等距離であり、2つの隣接するビルドアップバーナ間の距離が好ましくは10~300mm、より好ましくは30~300mm、さらにより好ましくは15~150mmである装置が使用される。
【0042】
本発明では、ビルドアップバーナの並進移動は反転移動を表し、その方向は、いずれの場合もスート体の長手方向軸線に対して平行であり、変曲点で変化する。ビルドアップバーナの前進移動(第1の完全なストローク)及びビルドアップバーナの戻り移動(第2の完全なストローク)の後、いずれの場合もスート体の長手方向軸線に対して実質的に平行に、ビルドアップバーナの次の前進移動(第3の完全なストローク)中にバーナの開始点が重なり合わないようにするために、本発明による方法の更なる実施形態では、変曲点の位置が堆積表面に対して変化することがもたらされる。更に、往復移動の堆積トレースを考慮した場合、クラスタ堆積が発生する交点が得られる。移動パターンを決定する際の目標は、これらの交点がスート体にわたって均等に分布されることである。
【0043】
変曲点を変更することによる並進の変動は、反転移動のストロークごとに起こり得る。さらに、反転移動の第2、第3、第4または第5のストロークごとに変曲点を変更することによって、並進の変動を生じさせることが可能である。
【0044】
第1の実施形態では、変曲点の位置は、変曲点の変更が実施される対応するストロークにおける固定的に定義されたオフセットによって変更され得る(すなわち、変曲点は、固定的に予め定義された移動パターンに従ってストロークごとに変化する)。
【0045】
あるいは、変曲点の変更が実施されるそれぞれのストロークにおける変曲点の位置を、対応するストロークごとに統計的に変更されたオフセットによって変更させることも可能である。この実施形態では、変曲点の位置の変化は統計的に変動する(すなわち、変曲点は、ストロークごとに統計的に変更されたオフセットによって変化する)。
【0046】
両方の実施形態において、オフセットは、その場合、基準変曲点に対して決定される。
【0047】
原則として、変曲点の特定の変化に対して2つの手順が可能である。
【0048】
第1の手順では、固定された基準変曲点の前の完全な回転の後に、0~1の乱数を乗算した部分回転が加えられ、基準変曲点の位置がこの長さだけ変更される。残りの部分回転は、復路で実施される。次いで、次の変曲点の前の最後の完全な回転の終わりまで移動が行われ、方法が繰り返される。反転点のオフセットは、後続のストロークにおけるバーナの入射点が0°平面内でオフセットされるようにされなければならず、0~1の一様な分布もまたオフセットを許容しない(例えば、0及び1の第1のストロークにおいて)。数値は、対応する前のストロークの長さまたはストロークの変曲点位置に応じて、後続のストロークで変化する。
【0049】
第2の手順では、ビルドアップバーナの第1の堆積点が固定された基準変曲点に対して復路上の特定の場所に常に位置するように、各変曲点の位置が変更される。この位置は、基準変曲点に対する部分回転に-0.5~+0.5の乱数を乗じて加えることによって決定される。
【0050】
干渉を回避するための上述の手段の組合せはまた、ビルドアップバーナが、2倍のバーナ間距離2dの振幅だけ回転するキャリアの長手方向軸線に対して実質的に平行な並進移動を実行し、一方、堆積表面が、(m2+(k/n)+y)回転の回転を実質的に同時に実行し、m2が、1~100、好ましくは3~35、さらにより好ましくは5~25の整数である。kはn未満の自然数であり、m1はm1=m2+(k/n)に等しく、yは-0.3~0.3でありかつ本発明による方法で連続的に変化し得る。
【0051】
本発明による方法のこの実施形態では、変曲点の位置の変動は省略され得る。結果として、この実施形態の第1の変形例では、変曲点の位置が固定的に画定されるが、この実施形態の第2の変形例では、変曲点の位置は変動し得る。
【0052】
本発明による方法のこの実施形態において、変曲点の位置の変動が生じる場合、変曲点の位置は、反転移動のストロークごとに変化し得る。あるいは、変曲点の位置は、ストロークごとに固定的に定義されたオフセットだけ変化することが可能である。
【0053】
本発明による方法で連続的に変化し得る上記の変数yは、-0.3~0.3であり、本発明による方法の過程で、固定されたパターン、統計的分布のいずれかに従って、または制御された方法で変更され得、制御された動作モードは、一様なスートの適用を最適化するのに役立ち得る。
【0054】
変曲点の位置が変化する場合、変曲点はいずれの場合も、振幅が平均してn倍のバーナ間距離に等しくなるように変更され、そうでなければ、スート体に直径の揺らぎが発生することとなることに留意されたい。変曲点は、ストロークごとに統計的に変更されるオフセットによって変更され得る。本発明では、全体的な方法条件、すなわち堆積表面の回転及び変曲点の変動は、方法全体が均一なスート構造体をもたらすように当業者によって実施されることが重要である。
【0055】
堆積表面上のビルドアップバーナの移動プロファイルが判定されることが好ましい。均一なスート構造体を保証するために、堆積表面上のビルドアップバーナの移動プロファイルは、SiO2スート粒子の堆積中に連続的に監視されることが好ましい。
【0056】
特に、堆積表面上のビルドアップバーナの移動プロファイルが、SiO2スート粒子の堆積中にプロセッサによってオンラインで連続的に監視されることが好ましい。
【0057】
さらに、本発明の装置は、堆積表面上のビルドアップバーナの移動プロファイルから、均一なスートビルドアップのために、堆積されたSiO2スート粒子が少なすぎる堆積表面の領域を識別するように設計されたプロセッサを備えることが好ましい。
【0058】
そのような場合、プロセッサは、好ましくは、実質的に均一なスート体がビルドアップされるように、キャリアの長手方向軸線を中心とした堆積表面の回転及び/またはビルドアップバーナの反転並進移動の変曲点の位置を制御する。
【0059】
本発明による方法では、回転するキャリアの長手方向軸線は、垂直方向または水平方向に配向され得、ビルドアップバーナはそれに応じて配置される。回転するキャリアの長手方向軸線は水平方向に配向されることが好ましい。
【0060】
本発明による方法ではスート体が層ごとにビルドアップされるため、ビルドアップバーナの並進及び堆積表面の回転の周波数は、ビルドアップバーナの反転移動の方向の各変化中に、SiO2スート体の現在の直径に適合される。
【0061】
本発明の文脈においては、ビルドアップバーナの互いに対する空間的配置は、一般に固定であり、キャリアに対する並進移動は、一般に一緒に実行される。
【0062】
SiO2スート粒子の堆積のために、少なくとも2つのビルドアップバーナ、好ましくは10~100個のビルドアップバーナ、より好ましくは20~50個のビルドアップバーナが通常使用され、それぞれのビルドアップバーナ間の距離は実質的に一定であり、dに等しい。
【0063】
さらに、ビルドアップバーナの反転移動の方向の各変化中のビルドアップバーナの並進及び堆積表面の回転の周波数は、通常、SiO2スート体の現在の直径に適合される。
【0064】
本発明による方法は、好ましくは以下の方法ステップを含む。
(1)少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含有する原料材料を蒸発させて原料材料蒸気を形成する方法ステップ
(2)方法ステップ(1)による原料材料蒸気を反応ゾーンに供給し、反応ゾーンにおいて、原料材料蒸気が火炎中の酸素の存在下で燃焼され、酸化及び/または加水分解によってSiO2スート粒子に変換される方法ステップ
(3)方法ステップ(2)から得られたSiO2スート粒子を堆積表面上に堆積させてスート体を形成する方法ステップ
(4)方法ステップ(3)から得られたスート体を乾燥及びガラス化して合成石英ガラスを形成する方法ステップ
個々の方法ステップを以下により詳細に説明する。
【0065】
方法ステップ(1)-原料材料の蒸発
方法ステップ(1)では、少なくとも1つの有機ケイ素出発化合物を含有する原料材料を蒸発させて原料材料蒸気を形成する。重合性ケイ素含有出発化合物は、重合性ポリアルキルシロキサン化合物であることが好ましい。
【0066】
原則として、合成石英ガラスの製造に適した任意の重合性ポリアルキルシロキサン化合物を本発明に従って使用することができる。本発明の範囲内では、「ポリアルキルシロキサン」という用語は、直鎖(分岐構造も含む)及び環状分子構造の両方を含む。
【0067】
特に好適な環状代表物は、一般的な実験式
SipOp(R)2p
を有するポリアルキルシロキサンであり、式中、pは3以上の整数である。基の「R」はアルキル基であり、最も単純な場合にはメチル基である。
【0068】
ポリアルキルシロキサンは、重量パーセント当たりのケイ素の割合が特に高いことにより特徴付けられており、合成石英ガラスの製造におけるそれらの使用を経済的にする。
ポリアルキルシロキサン化合物は、好ましくは、ヘキサメチルシクロトリシロキサン(D3)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、テトラデカメチルシクロヘプタシロキサン(D7)、ヘキサデカメチルシクロオクタシロキサン(D8)、ならびにそれらの直鎖同族体及び上述の化合物の任意の混合物からなる群から選択される。D3、D4、D6、D7、及びD8という表記法は、General Electric Inc.によって導入された表記法に由来し、「D」は、基[(CH3)2Si]-O-を表す。
【0069】
本発明の文脈においては、前述のポリアルキルシロキサン化合物の混合物も使用され得る。
【0070】
オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)は、高純度で広く入手可能なため、現在好ましい。したがって、本発明の文脈においては、ポリアルキルシロキサン化合物がオクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)であることが特に好ましい。
【0071】
原則として、原料材料を、方法ステップ(1)に導入する前に精製に供することが可能である。そのような精製方法は当業者に公知である。しかしながら、好ましい実施形態では、原料材料は事前に上流精製(ろ過)の方法に供されない。
【0072】
原料材料の蒸発は、キャリアガス成分の存在の有無にかかわらず行われ得る。原料の蒸発は、キャリアガスの存在下で実施されることが好ましく、これは、有機ケイ素出発化合物の沸点未満の温度で蒸発が起こることを可能にするためである。キャリアガスとしては、通常、不活性ガス、例えば窒素またはアルゴンが使用される。キャリアガスを使用する場合、キャリアガスに対する有機ケイ素出発化合物のモル比は、好ましくは0.01~2の範囲であり、特に好ましくは0.02~1.5の範囲であり、非常に特に好ましくは0.05~1.25の範囲である。特に、水分含有量が<40ppmの窒素をキャリアガスとして使用し、OMCTSを有機ケイ素出発化合物として使用することが好ましい。さらに好ましくは、窒素に対するOMCTSの分子比は、0.015~1.5の範囲内である。
【0073】
蒸発の方法ステップは、それ自体は当業者に公知である。有機ケイ素出発化合物は、好ましくは、有機ケイ素出発化合物とキャリアガスとの選択された分子比に応じて、120~200℃の温度で蒸気相に変換される。蒸発チャンバ内の蒸発温度は、常に有機ケイ素出発化合物の露点を少なくとも数度上回るべきである。次に、露点は、キャリアガスに対する有機ケイ素出発化合物の選択された分子比に依存する。好ましい実施形態の方法では、この目的のために、有機ケイ素出発化合物は、蒸発の前に40~120℃の温度に予熱され、次いで出発材料の予熱よりも高い温度を有する蒸発チャンバ内に噴霧される。好ましい実施形態では、不活性キャリアガスは、蒸発チャンバに供給される前に、最大250℃の温度にさらに予熱され得る。蒸発チャンバ内の温度は、有機ケイ素出発化合物とキャリアガスとの混合物の露点温度より常に高いことが有利である。好適な蒸発方法は、例えば、国際特許出願の国際公開第2013/087751号及び国際公開第2014/187513号並びにドイツ国特許出願のドイツ国特許第10 2013 209 673号明細書に記載されている。
【0074】
本発明の範囲内では、「露点」という用語は、液体の凝縮と蒸発との間に平衡が確立される温度を表す。
【0075】
本発明の範囲内では、「蒸発」は、原料材料が液相から気相に実質的に移行されるプロセスを意味すると理解される。これは、好ましくは、上述のように、原料材料の主成分としての有機ケイ素出発化合物の露点を超える温度を用いることによって行われる。当業者は、プロセス技術の観点から、原料材料の小さな液滴が混入される可能性を排除することができないことを認識しているであろう。したがって、方法ステップ(1)では、好ましくは97mol.%以上、好ましくは98mol.%以上、特に好ましくは99mol.%以上、非常に特に好ましくは99.9mol.%以上の気体成分を含有する原料材料蒸気が生成されることが好ましい。
【0076】
蒸気状有機ケイ素出発化合物、またはキャリアガスと蒸気状有機ケイ素出発化合物との混合物は、通常、蒸発チャンバから除去され、ビルドアップバーナに供給される。ビルドアップバーナに導入される前に、蒸気状材料または蒸気状材料とキャリアガスとの混合物は、好ましくは酸素と混合される。火炎中で、有機ケイ素出発化合物はSiO2に酸化される。微粒子の非晶質SiO2(SiO2カーボンブラック)が形成され、これは最初にキャリアの表面上に多孔質塊の形態で堆積され、その後、形成されるスート体の表面上に堆積される。
【0077】
方法ステップ(2)-原料材料蒸気を反応ゾーンに供給し、反応ゾーンにおいて、原料材料蒸気が火炎中の酸素の存在下で燃焼され、酸化及び/または加水分解によってSiO
2
スート粒子に変換される
方法ステップ(2)では、方法ステップ(1)から得られたガス状原料材料蒸気は、原料材料蒸気が酸化及び/または加水分解によってSiO2粒子に変換される反応ゾーンに供給される。
【0078】
この方法ステップは、上記でより詳細に既に説明した既知のスート法に対応する。
【0079】
バーナ口の対応する中心点の周りに円形に配置されたガス出口ノズルを有する同心ビルドアップバーナは、通常、原料材料蒸気の燃焼に使用される。
【0080】
本発明の範囲内では、ビルドアップバーナには、中央領域内に第1のケイ素含有出発成分、外側領域内に酸素流、及び中央領域と外側領域との間にバリアガス流(水素)が供給される手順が好ましい。
【0081】
中央ノズルは、一般に、本発明の範囲内ではキャリアガスと予混合された形態で通常使用される原料材料蒸気を供給するために使用される。加えて、酸素が原料材料蒸気に添加されることが好ましく、その結果、通常使用される同心ビルドアップバーナの中央ノズルから供給流が生じ、この供給流は、原料材料蒸気に加えてキャリアガス及び酸素を含有する。
【0082】
ビルドアップバーナの中央ノズルは、通常、中央ノズルの周りに同心円状に配置されており、そこからバリアガスがバーナに導入される、第2のノズルによって構成されている。このバリアガスは、SiO2出発化合物を残りの酸素流から分離し、酸素流は、中央ノズル及びバリアガスノズルの周りに同心円状に配置された別の同心ノズルからバーナに流入する。
【0083】
ビルドアップバーナによって生成されたSiO2スート粒子は、通常、キャリアの長手方向軸線を中心に回転するキャリア管上に堆積され、その結果、スート体は層ごとにビルドアップされる。この目的のために、ビルドアップバーナは、キャリア管の長手方向軸線に沿った2つの変曲点間で往復させられる。この並進の実施形態は、上記でより詳細に説明された。
【0084】
そのうちの少なくとも2つが本発明の範囲内で使用されるビルドアップバーナは、バーナブロックを構成する。
【0085】
方法ステップ(3)-SiO
2
粒子の堆積
方法ステップ(3)では、方法ステップ(2)から得られたSiO2粒子が堆積表面上に堆積される。この方法ステップの設計は、当業者の技能及び知識の範囲内である。
【0086】
この目的のために、方法ステップ(2)で形成されたSiO2粒子は、回転するキャリア上に層ごとに堆積されて多孔質スート体を形成する。
【0087】
スート粒子の堆積中、上記条件を満たすために、バーナとキャリア材との間の距離は任意選択で変更される。
【0088】
方法ステップ(4)-任意選択の乾燥及びガラス化
方法ステップ(4)では、プロセスステップ(3)から得られたSiO2粒子が乾燥及びガラス化されて合成石英ガラスが形成される。この方法ステップは、先に実施された方法ステップがスート法に従って実施されたために必要である。この方法ステップの設計は、当業者の技能及び知識の範囲内である。
【0089】
本発明による方法は、方法ステップ(3)におけるSiO2粒子の堆積中の温度が非常に低いために、多孔質SiO2スート層が得られ、それが別個の方法ステップ(4)で乾燥及びガラス化されて合成石英ガラスが形成される「スート法」として実施される。
【0090】
先行技術の上記の欠点を、本発明による方法によって効率的に回避することができる。
【0091】
〔SiO2スート粒子の堆積のための装置〕
さらなる態様では、本発明は、上述の本発明による方法を実施するための装置に関する。本発明の装置は、堆積表面上にSiO2スート粒子を堆積させるために使用され、少なくとも2つの相互に離間したビルドアップバーナを有し、
少なくとも2つのビルドアップバーナ間の距離が、dであり、
堆積表面が、キャリアの長手方向軸線を中心に回転するキャリアの円筒ジャケット表面であり、キャリアSiO2スート粒子が、円筒ジャケット表面上に層ごとに堆積される。
【0092】
したがって、本発明の装置は、
ビルドアップバーナ及び堆積表面が、ビルドアップバーナが堆積表面に対して、回転するキャリアの長手方向軸線に対して実質的に平行に、n倍のバーナ間距離dの振幅だけ並進移動を実行し、nが、2以上の整数であり、dが、単一のバーナ間距離に対応するように構成されており、
堆積表面が、キャリアの長手方向軸線を中心にm1の回数で回転し、m1が、整数以外の正の10進数であるように構成されており、
装置が、キャリアの長手方向軸線のm1回の回転のための期間がバーナ間距離dによるビルドアップバーナの並進移動のための期間に実質的に対応するように構成されたコントローラを有することを特徴とする。
【0093】
装置のコントローラは、適切なプログラミングを有するプロセッサであり得る。
本発明によるコントローラは、好ましくは、ビルドアップバーナが、回転するキャリアの長手方向軸線に対して実質的に平行に、n倍のバーナ間距離dの振幅だけ並進移動を実行し、nが、2以上の整数であり、dが、単一のバーナ間距離に対応し、堆積表面が、キャリアの長手方向軸線を中心に回転するように構成されている。
【0094】
本発明の装置を制御することにより、キャリアの長手方向軸線を中心とした堆積表面の(m2+k/n)回の回転のための期間が、バーナ間距離dによるビルドアップバーナの並進移動のための期間に実質的に対応することが達成され、式中、m2は1~100、好ましくは3~35、さらにより好ましくは5~25の整数である。k及びnは上記で定義した通りである。
【0095】
本発明の装置は、ビルドアップバーナの並進移動が、その方向が変曲点で変化する反転移動を表すことを可能にするように構成されており、変曲点の位置は、堆積表面に対して変化し得る。変曲点の変更も、本発明の装置のコントローラによって実施される。
【0096】
装置のコントローラは、反転移動の変曲点がストロークごとに変化し得るようにさらに構成されており、コントローラは、変曲点が固定的に定義されたオフセットだけストロークごとに変化することを可能にするか、または変曲点が統計的に変更されたオフセットだけストロークごとに変化することを可能にすることができる。
【0097】
本発明の装置は、ビルドアップバーナが、2倍のバーナ間距離2dの振幅だけ回転するキャリアの長手方向軸線に対して実質的に平行な並進移動を実行し、一方、堆積表面が、(m2+(k/n)+y)回転の回転を実質的に同時に実行するように構成されており、式中、nは2以上の整数であり、yは0.3未満、好ましくは0.2未満、より好ましくは0.15未満、より好ましくは0.1未満の数であり、m2は1~100、好ましくは3~35、さらにより好ましくは5~25の整数である。k及びnは上記で定義した通りである。
【外国語明細書】