(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127856
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】音響信号発生装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/20 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A61M5/20 510
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024034638
(22)【出願日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】23160738
(32)【優先日】2023-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】514207337
【氏名又は名称】ゼンジーレ・メディカル・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】リヒャート フォースター
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス ゴースヘーファー
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ゾマー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン プフラング
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE06
4C066FF05
4C066HH02
4C066HH30
4C066QQ78
(57)【要約】 (修正有)
【課題】医療用注射機器用の音響信号発生装置、および前記音響信号発生装置を備える医療用注射機器を提供する。
【解決手段】医療用注射機器用の音響信号発生装置1に関する。音響信号発生装置は、第1の自由端部13を備える第1の弾性アーム12と、当接面19と、衝撃面18と、を備える基体10を有している。第1の弾性アームは、第1の弾性アームに加えられた第1の荷重によって撓んで、第1の弾性アームの第1の自由端部が当接面と圧縮係合するように構成されており、これにより、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、第1の自由端部は当接面との圧縮係合から解放され、第1の弾性アームが衝撃面に衝突し、これにより音響信号が発生する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用注射機器(5)用の音響信号発生装置(1)であって、
第1の自由端部(13)を備える第1の弾性アーム(12)と、
当接面(19)と、
衝撃面(18)と、
を備える基体(10)を有しており、
前記第1の弾性アーム(12)は、前記第1の弾性アーム(12)に加えられた第1の荷重によって撓んで、前記第1の弾性アーム(12)の前記第1の自由端部(13)が前記当接面(19)と圧縮係合するように構成されており、これにより、前記第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、前記第1の自由端部(13)は前記当接面(19)との圧縮係合から解放され、前記第1の弾性アーム(12)が前記衝撃面(18)に衝突し、これにより音響信号が発生する、音響信号発生装置(1)。
【請求項2】
前記基体(10)は、第2の弾性アーム(14)をさらに備え、前記当接面(19)は、前記第2の弾性アーム(14)に配置されており、これにより、前記第2の弾性アーム(14)は、前記第1の荷重が前記第2の荷重まで増大すると、前記第1の自由端部(13)が前記当接面(19)との圧縮係合から解放される程度まで、前記第2の弾性アーム(14)が撓むように構成されている、請求項1記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項3】
前記基体(10)は、前記第1の荷重が前記第2の荷重まで増大すると、前記当接面(19)を前記第1の自由端部(13)との圧縮係合から係合解除するように撓むように構成されている第3の弾性アーム(16)をさらに備える、請求項2記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項4】
前記第1の弾性アーム(12)、前記第2の弾性アーム(14)、および前記第3の弾性アーム(16)は、実質的に平らな作動面(7)を前記音響信号発生装置(1)に対して第1の距離だけ移動させることで、前記第1の自由端部(13)を前記当接面(19)に対して押し付けるように配置されており、前記実質的に平らな作動面(7)を前記音響信号発生装置(1)に対して付加的な第2の距離だけさらに移動させることで、前記第3の弾性アーム(16)を、前記当接面(19)を前記第1の自由端部(13)との係合から係合解除するように撓ませる、請求項3記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項5】
前記第2の弾性アーム(14)は、第2の自由端部(15)を備えており、前記第3の弾性アーム(16)は、第3の自由端部(17)を備えており、前記第2の自由端部(15)と前記第3の自由端部(17)とは、前記第3の弾性アーム(16)が撓むと、互いに係合するように構成されている、請求項3または4記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項6】
前記基体(10)は、前記第1の弾性アーム(12)、前記第2の弾性アーム(14)、前記第3の弾性アーム(16)、前記当接面(19)、および/または前記衝撃面(18)と一体形に形成されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項7】
前記基体(10)、前記第1の弾性アーム(12)、前記第2の弾性アーム(14)、前記第3の弾性アーム(16)、前記当接面(19)、および/または前記衝撃面(18)は、射出成形されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項8】
前記第1の弾性アーム(12)、前記第2の弾性アーム(14)、および/または前記第3の弾性アーム(16)は、除荷された後、初期の撓んでいない状態に戻るように配置されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項9】
前記第1の弾性アーム(12)、前記第2の弾性アーム(14)、および/または前記第3の弾性アーム(16)は、荷重が加えられていないときには互いに接触しない、請求項1から8までのいずれか1項記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項10】
前記基体(10)は、細長い中空形状を有しており、前記基体(10)は、任意選択で、実質的に中空円筒形状を有する、請求項1から9までのいずれか1項記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項11】
前記第1の弾性アーム(12)および/または前記第3の弾性アーム(16)は、前記基体(10)の長手方向に対して実質的に平行な方向に可動である、請求項10記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項12】
前記第1の弾性アーム(12)および/または前記第3の弾性アーム(16)は、前記基体(10)の実質的に周方向に沿って延在する湾曲部分を備えている、請求項10または11記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項13】
前記第2の弾性アーム(14)は、前記基体(10)の周方向に沿って実質的に可動であり、任意選択で、前記第2の弾性アーム(14)は、前記基体(10)の長手方向に対して実質的に平行に延在している、請求項10から12までのいずれか1項記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の音響信号発生装置(1)を備える医療用注射機器(5)。
【請求項15】
前記医療用注射機器(5)は、請求項10から13までのいずれか1項記載の音響信号発生装置(1)を備えており、前記医療用注射機器(5)は、前記音響信号発生装置(1)を作動させるための作動面(7)を有する中空円筒形の作動スリーブ(6)をさらに備えており、前記作動スリーブ(6)は、前記基体(10)に対して摺動可能に配置されており、任意選択で、前記作動面(7)は実質的に平らである、請求項14記載の医療用注射機器(5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.技術分野
本開示は、医療用注射機器用の音響信号発生装置、および前記音響信号発生装置を備える医療用注射機器に関する。
【0002】
2.背景技術
自動注射器または注射ペンなどの医療用注射機器では、多くの場合、医療用注射機器が特定の動作状態に到達した時点、および/または特定の動作状態から離れた時点で、フィードバックを患者に提供する必要がある。例えば、アレルギーショックの際にアドレナリンなどの緊急薬剤を注射する自動注射器の場合、薬剤が完全に投与された時点で患者に知らせる必要がある。さもないと、例えば技術的な機能不全によって注射が中断されたことを確認することができない。このことは、患者にとって重大な健康リスクをもたらす可能性があることを理解されたい。
【0003】
物質が医療用注射機器からどの程度投与されたかを示す視覚的表示に加えて、多くの場合、音響フィードバックもまた必要とされることが判っている。その理由は数多くある。例えば、視覚障害者にフィードバックすることを保証する必要がある。加えて、視覚表示が患者の視野に入らないように注射領域が位置することがある。さらに、注射の状態/進行のフィードバックは、照明条件が悪い場合にも必要であることを理解されたい。
【0004】
医療用注射機器では、例えば注射プロセスが完了したとき、または注射プロセスが開始されたときに音響フィードバックを提供するための様々な解決手段が従来技術から知られている。しかしながら、これらの解決手段は、以下に述べるような様々な欠点を有している。
【0005】
第一に、医療用注射機器用の音響信号発生装置は、それらが予荷重下で設置される必要があるように規則的に設計されており、これにより、予荷重が、解放されたときに、音響信号を発生させる役割を果たす。したがって、例が、米国特許第10918811号明細書および国際公開第2018/082886号から公知である。しかしながら、予荷重下で設置される必要がある音響信号発生装置は、様々な不利な効果を有している。最初に予荷重を加える必要があるという事実は、組立てを複雑にする。加えて、予荷重が加えられた音響信号発生装置は、設置された状態での予荷重に起因して破損する可能性があることが判っている。さらに、予荷重が加えられた音響信号発生装置は、例えば、周囲のポリマー材料に変形が発生した場合、医療用注射機器の損傷につながる可能性がある。さらに、特にポリマー材料から製造されている場合、予荷重下で設置される必要がある音響信号発生装置は、その予荷重を完全にまたは部分的に失うことがあり、これは、音響信号の音量を低下させるか、または音響信号を現れなくすることさえある。
【0006】
第二に、国際公開第2018/082886号に記載されているような従来技術の音響信号発生装置は、多くの場合、時には特に複雑な構成の複数の部品を備えたアセンブリを備えている。通常、これらの複数の部品は、互いに対して配置され、固定される必要がある。これにより、組立ての手間および組立て時間が増大する。加えて、複数の部品が存在することで、誤った組立てが行われるリスクも高まる。さらに、増加した部品点数のために、製造の手間も増える。なぜならば、より多くの部品を製造する必要があるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本開示の目的は、前述した欠点を少なくとも部分的に克服した、医療用注射機器用の音響信号発生装置、および前記音響信号発生装置を備える医療用注射機器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
3.発明の概要
この目的は、独立請求項に定義されているように、医療用注射機器用の音響信号発生装置、および前記音響信号発生装置を備える医療用注射機器によって少なくとも部分的に達成される。本開示の更なる態様は、従属請求項に定義されている。
【0009】
特に、この目的は、医療用注射機器用の音響信号発生装置によって達成される。この音響信号発生装置は、第1の自由端部を備える第1の弾性アームと、当接面と、衝撃面と、を備える基体を有している。第1の弾性アームは、第1の弾性アームに加えられた第1の荷重によって撓んで、第1の弾性アームの第1の自由端部が当接面と圧縮係合するように構成されており、これにより、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、第1の自由端部は当接面との圧縮係合から解放され、第1の弾性アームが衝撃面に衝突し、これにより音響信号が発生する。
【0010】
第1の自由端部が当接面との圧縮係合から解放されることを可能にする様々な構成が存在することを理解されたい。例示的に、第1の弾性アームは、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、第1の自由端部が当接面から後退するように屈曲していてよい。さらに、当接面は、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、第1の自由端部が当接面から滑動するように傾斜していてよい。さらに例示的に、当接面は、可動要素に配置されており、可動要素は、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、第1の自由端部が当接面との圧縮係合から解放されるように移動する。さらに、これらの構成の組み合わせも可能であることを理解されたい。第1の荷重を第2の荷重まで増大させることにより、直接的かつ/または間接的に、第1の自由端部が当接面との圧縮係合から解放されることにつながる可能性があることにも留意されたい。例示的に、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、付加的な要素が、第1の自由端部と当接面との圧縮係合を解放することを支援してよい。このための具体例を以下に示す。
【0011】
音響信号発生装置は、自動注射器、注射ペンおよび/またはシリンジなどの医療用注射機器用に構成することができる。
【0012】
前記基体は、音響信号発生装置を医療用注射機器内に配置および/または保持することを可能にする形状を有することができる。例示的に、基体は、医療用注射機器の凹部などの内部の幾何学的形状に適合させることができる。
【0013】
基体は、個別の部品を備えることができる。例示的に、衝撃面は、基体の別個の部品に配置されていてよく、この別個の部品は、特定のピッチおよび/または音量を有する音響信号を可能にする材料を含む。しかしながら、好ましくは、基体は、衝撃面と当接面とを有する一体部品を備えており、第1の弾性アームが前記一体部品に取り付けられる。
【0014】
例示的に、第1の弾性アームは、第1の弾性アームの長手方向に対して実質的に垂直な方向に第1の弾性アームに加えられる力によって引っ張られるように構成することができる。さらに、第1の自由端部が当接面と圧縮係合することは、第1の自由端部が当接面に圧力を加えるという態様を指してよい。
【0015】
例示的に、本開示全体を通して使用される「弾性」という用語は、塑性変形することなく弾性変形に耐える材料の能力を指してよい。したがって、本開示による「弾性アーム」という用語は、別の構成要素に取り付けられる取付け端部と、弾性アームを弾性変形させることによって取付け端部に対して自由に可動である自由端部とを有する細長い要素を指してよい。さらに、「弾性アーム」という用語は、「ばねアーム」とも表現されてよいことを理解されたい。
【0016】
本開示による音響信号発生装置は様々な利点を有しており、そのうちの2つを以下にさらに詳細に説明する。
【0017】
第一に、音響信号発生装置は、音響信号を発生させるために、予荷重下で設置および/または維持する必要がない。したがって、音響信号発生装置と医療用注射機器との組立てが容易になる。さらに、音響信号発生装置が、設置された状態での予荷重によって破損することを回避することができる。さらに、音響信号発生装置は、予荷重による医療用注射機器の破損を招かない。さらに、音響信号発生装置は、設置時に予荷重を失うリスクがない。
【0018】
第二に、従来技術の音響信号発生装置と比較して、本発明の音響信号発生装置の構成により、部品点数の削減および/または複雑でない構成が可能になる。したがって、組立ての手間および/または組立て時間を削減することができる。加えて、製造の手間および/または誤った組立てのリスクを最小限に抑えることができる。
【0019】
上述の利点は、異なる表現で以下の場合にも適用することができることを理解されたい。
【0020】
基体は、第2の弾性アームをさらに備えており、当接面は、第2の弾性アームに配置されており、これにより、第2の弾性アームは、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、第1の自由端部が当接面との圧縮係合から解放される程度まで、第2の弾性アームが撓むように構成されていてよい。この構成により、第1の自由端部と当接面との分離を実現するために必要とされるより低い荷重が可能になる。これは、前記分離が第2の弾性アームの撓みによって促進されるためである。分離を実現するために必要とされる前記より低い荷重によって、音響信号発生装置の遮断などの機能不全を回避することができる。
【0021】
さらに、基体は、第3の弾性アームであって、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、第3の弾性アームが、当接面を第1の自由端部との圧縮係合から係合解除するように撓むように構成されている第3の弾性アームをさらに備えてよい。この構成により、第1の自由端部と当接面とを分離するために必要な荷重を特に正確に調整することが可能になる。例示的に、第3の弾性アームは、第1の弾性アームおよび/または第2の弾性アームを撓ませることができる。特に、第3の弾性アームは、第2の弾性アームを撓ませることができ、この結果、当接面が第1の自由端部との圧縮係合から後退する。第3の弾性アームの撓みは、例えばアームが運動学的に結合されている場合、第1の弾性アームの撓みと直接的に関連付けされてよいことを理解されたい。代替的に、第3の弾性アームの撓みは、第1の弾性アームの撓みと間接的に関連付けされてよい。例示的に、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、第3の弾性アームは、第1の弾性アームに力を加える中間要素によって、第1の弾性アームとは独立して撓むことができる。それぞれの例を次の段落に示す。
【0022】
任意選択で、第1の弾性アーム、第2の弾性アーム、および/または第3の弾性アームは、実質的に平らな作動面を音響信号発生装置に対して第1の距離だけ移動させることで、第1の自由端部を当接面に押し付けるように配置されており、実質的に平らな作動面を音響信号発生装置に対して付加的な第2の距離だけさらに移動させることで、第3の弾性アームを、当接面を第1の自由端部との係合から係合解除するように撓ませる。作動面を音響信号発生装置に対して前記第1の距離だけ移動させることは、第1の弾性アームに加えられる第1の荷重と関連付けされてよく、作動面を音響信号発生装置に対して前記第2の距離だけ移動させることは、第1の弾性アームに加えられる第2の荷重と関連付けされてよいことを理解されたい。したがって、第3の弾性アームの撓みは、第1の弾性アームの撓みと間接的に関連付けされてよいことを理解されたい。したがって、当業者であれば、さらに、第1の荷重が第2の荷重に増大することで、第1の自由端部が当接面との圧縮係合から解放されることに間接的につながる可能性があることを理解されたい。
【0023】
さらに、音響信号発生装置は、前記実質的に平らな作動面を音響信号発生装置に対して移動させるとき、作動面が最初に第3の弾性アームまたは第1の弾性アームに接触するように構成されてよいことを理解されたい。代替的に、作動面は、第3の弾性アームと第1の弾性アームとに同時に接触してもよい。前記弾性アームの構成により、容易な音響信号発生装置の作動を実現することができる。特に、それぞれの医療用注射機器内の単純な作動要素を利用して、音響信号発生装置を作動させることができる。
【0024】
第2の弾性アームは、第2の自由端部を備えており、第3の弾性アームは、第3の自由端部を備えており、第2の自由端部と第3の自由端部とは、第3の弾性アームが撓むと、互いに係合するように構成されていてよい。任意選択で、第3の自由端部は、第3の弾性アームが撓むと、第1の自由端部と第2の自由端部とに係合するように構成されている。例示的に、第3の自由端部は、第1の自由端部と第2の自由端部との間に形成された隙間に押し付けられることができる。したがって、第2の自由端部からの第1の自由端部の分離を、より一層確実に実現することができる。
【0025】
基体は、第1の弾性アーム、第2の弾性アーム、第3の弾性アーム、当接面、および/または衝撃面と一体形に形成されていてよい。したがって、換言すれば、基体は、第1の弾性アーム、第2の弾性アーム、第3の弾性アーム、当接面、および/または衝撃面と共に一体部品として形成することができる。「一体形に形成され」という用語は、それぞれの要素同士の間で材料境界を識別することができないという態様を指してよい。例示的に、基体が、第1の弾性アーム、第2の弾性アーム、第3の弾性アーム、当接面、および衝撃面と一体形に形成されている場合、前記要素同士の間で材料境界を識別することはできない。好ましくは、基体は、少なくとも2つの弾性アームと一体形に形成されている。基体を第1の弾性アーム、第2の弾性アーム、第3の弾性アーム、および/または衝撃面と一体形に形成することで、特に、部品点数の削減および/または複雑でない構成が可能になる。したがって、上記と同様に、組立ての手間、組立て時間、製造の手間、および/または誤った組立てのリスクを減らすことができる。
【0026】
さらに、基体、第1の弾性アーム、第2の弾性アーム、第3の弾性アーム、当接面、および/または衝撃面は、射出成形されていてよい。射出成形は、例示的に高い生産速度を可能にする非常に効率的なプロセスである。したがって、音響信号発生装置の製造に必要とされる時間を短縮することができる。このことは、基体、第1の弾性アーム、第2の弾性アーム、第3の弾性アーム、および衝撃面が一体形に形成され、射出成形される場合に特に当てはまる。この場合、組立ての手間、組立て時間、製造の手間、および/または誤った組立てのリスクを、従来技術の音響信号発生装置と比較して大幅に減らすことができる。
【0027】
さらに、第1の弾性アーム、第2の弾性アーム、および/または第3の弾性アームは、除荷された後、初期の撓んでいない状態に戻るように配置されていてよい。このことは、例えば、弾性アームの弾性材料の挙動によって実現することができる。したがって、音響信号発生装置は、再使用することができ、すなわち、繰り返し音響信号を発生させることができる。特に、音響信号発生装置を再使用が可能な位置に移動させるための付加的なステップは必要ない。加えて、初期の引っ張られていない状態に戻ることで、音響信号発生装置に変形および/または他の材料疲労が発生することを防止することができる。
【0028】
任意選択として、第1の弾性アーム、第2の弾性アーム、および/または第3の弾性アームは、荷重が加えられていないときには互いに接触しない。これにより、音響信号発生装置の作動、すなわち、第1の弾性アームが引っ張られていない場合、弾性アームが引張状態にないことをさらに保証することができる。したがって、予荷重が加えられた音響信号発生装置に通常適用される上述の欠点を回避することができる。
【0029】
音響信号は、少なくとも40dB、任意選択で少なくとも60dB、さらに任意選択で少なくとも80dB、さらにまた任意選択で少なくとも100dBの音圧を有することができる。これらの値は、様々な用途において音響信号の十分な音量を可能にすることが証明されている。音響信号発生装置によって達成することができる音圧は、例示的に、(複数の)選択された材料および/または第1の弾性アームを第2の弾性アームに対してどの程度まで引っ張ることができるかによって影響される可能性がある。
【0030】
任意選択で、基体は、細長い中空形状を有しており、基体は、任意選択で、実質的に中空円筒形状を有している。細長い中空形状は、プランジャのような要素を通して案内することができるため好ましい。実質的に中空円筒形状が特に好ましい。なぜならば、これにより、音響信号発生装置を複数の通常の医療用注射機器に設置することができる一方、中空形状により、プランジャのような要素を通して案内することができるからである。したがって、要約すると、このような形状を有する基体により、設置空間を効率的に使用することができる。
【0031】
第1の弾性アームおよび/または第3の弾性アームは、基体の長手方向に対して実質的に平行な方向に可動であってよい。したがって、例示的に、上述の移動を伴う上述の作動面は、第1の弾性アームおよび第3の弾性アームを移動させる役割を果たすことができる。
【0032】
さらに、第1の弾性アームおよび/または第3の弾性アームは、基体の実質的に周方向に沿って延在する湾曲部分を備えていてよい。例示的に、第1の弾性アームおよび/または第3の弾性アームは、実質的に中空円筒形状を有する基体の周に沿って少なくとも部分的に延在することができる。したがって、弾性アームの形状を基体の形状に適合させることができる。これにより、音響信号発生装置の全体的な形状を小さくすることが可能になる。したがって、例示的に医療用注射機器では、設置空間をより効率的に利用することができる。
【0033】
第2の弾性アームは、基体の周方向に沿って実質的に可動であり、任意選択で、第2の弾性アームは、基体の長手方向に対して実質的に平行に延在していてよい。この構成は、第1の弾性アームおよび/または第3の弾性アームが、前述の2つの段落で説明したように構成されている場合に特に有益である。なぜならば、第1の弾性アームおよび第3の弾性アームを第2の弾性アームに向かって一方向に沿って移動させることができる一方、第2の弾性アームの一回の直線移動により、第1の弾性アームを解放することができるからである。したがって、簡単な機構を提供することができる。
【0034】
さらに、上記の目的は、上記のような音響信号発生装置を備える医療用注射機器によって達成される。医療用注射機器が上記のような音響信号発生装置を備えているので、音響信号発生装置に関して説明した利点および/または特徴はまた、医療用注射機器にも適用されてよいことを理解されたい。
【0035】
医療用注射機器は、音響信号発生装置を作動させるための作動面を有する中空円筒形の作動スリーブをさらに備えており、作動スリーブは、基体に対して摺動可能に配置されており、任意選択で、作動面は実質的に平らであってよい。この構成により、音響信号発生装置を備える医療用注射機器を、従来技術の解決手段と比較して特に簡単に構成することができる。
【0036】
4.添付図の簡単な説明
以下では、添付図について簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明による第1の音響信号発生装置を示す斜視図である。
【
図2】本発明による第2の音響信号発生装置を示す斜視図である。
【
図3】本発明による第3の音響信号発生装置を示す側面図である。
【
図4】第3の音響信号発生装置を示す斜視図である。
【
図5】作動スリーブと共に第3の音響信号発生装置を示す斜視図である。
【
図6】第3の音響信号発生装置を示す更なる斜視図である。
【
図7】(a)~(c)は、作動中の第3の音響信号発生装置を示す図である。
【
図8】第3の音響信号発生装置が設置された医療用注射機器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
5.図面の詳細な説明
図1は、本発明による第1の音響信号発生装置1を示す。音響信号発生装置1は、第1の自由端部13を備える第1の弾性アーム12を備える基体10を有している。さらに、基体10は、当接面19と衝撃面18とを備えている。
【0039】
第1の弾性アーム12は、第1の弾性アーム12に加えられた第1の荷重によって撓んで、第1の弾性アーム12の第1の自由端部13が当接面19と圧縮係合するように構成されており、これにより、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、第1の自由端部13は当接面19との圧縮係合から解放され、第1の弾性アーム12が衝撃面18に衝突し、これにより音響信号が発生する。特に、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、第1の弾性アーム12が屈曲して、第1の自由端部13は当接面19から少なくとも部分的に後退し、さらに当接面19は傾斜しているので、第1の自由端部13の当接面19からの滑動が促進される。
【0040】
図2は、本発明による第2の音響信号発生装置1を示す。第2の音響信号発生装置1は、第1の音響信号発生装置1と同様に構成されており、第2の音響信号発生装置1の基体10は、第2の弾性アーム14をさらに備えている。
【0041】
当接面19は、第2の弾性アーム14に配置されており、これにより、第2の弾性アーム14は、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、第1の自由端部13が当接面19との圧縮係合から解放される程度まで、第2の弾性アーム14が撓むように構成されている。
【0042】
図3、
図4、
図5、
図6および
図7(a)~(c)は、本発明による第3の音響信号発生装置1を示す。第3の音響信号発生装置1は、第1の音響信号発生装置1および第2の音響信号発生装置1と同様に構成されており、第3の音響信号発生装置1の基体10は、当接面19を第1の自由端部13との圧縮係合から係合解除するように撓むように構成された第3の弾性アーム16をさらに備えている。特に、第3の弾性アーム16は、第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、第3の弾性アーム16が当接面19を第1の自由端部13との圧縮係合から係合解除するように構成されている。特に、第2の弾性アーム14は第2の自由端部15を備えており、第3の弾性アーム16は第3の自由端部17を備えており、第2の自由端部15と第3の自由端部17とは、第3の弾性アーム16が撓むと互いに係合するように構成されている。
【0043】
より詳細には、
図7(a)~(c)にも示されているように、弾性アーム12,14,16は、例えば作動スリーブ6の実質的に平らな作動面7を音響信号発生装置1に対して第1の距離だけ移動させることで、第1の弾性アーム12の第1の自由端部13を、第2の弾性アーム14の当接面19に対して押し付けるように配置されており(
図7(b)参照)、さらに、実質的に平らな作動面7を音響信号発生装置1に対して同じ方向に付加的な第2の距離だけ移動させることで、第3の弾性アーム16を、当接面19を第1の自由端部13との係合から係合解除するように撓ませる(
図7(c)参照)。
【0044】
さらに、特に
図7(c)から、当業者であれば、弾性アーム12,14,16が、除荷された後、初期の撓んでいない状態(
図7(a)参照)に戻るように配置されていることを理解する。
図7(a)のように、弾性アーム12,14,16は、荷重が加えられていないときには互いに接触しない。したがって、図示の音響信号発生装置1は、作動中にのみ張力下/応力下にある。
【0045】
図3~
図6に示すように、基体10は、実質的に中空円筒形状を有しており、第1の弾性アーム12および第3の弾性アーム16は、基体10の長手方向に対して実質的に平行な方向に可動である。さらに、第1の弾性アーム12および第3の弾性アーム16はそれぞれ、実質的に中空円筒形状の基体10の実質的に周方向に沿って延在する湾曲部分を備えている。さらに、第2の弾性アーム14は、実質的に中空円筒形状の基体10の周方向に沿って実質的に可動であり、第2の弾性アーム14は、基体10の長手方向に対して実質的に平行に延在している。
【0046】
図8は、上述した音響信号発生装置1を構成する医療用注射機器5を示す図である。
図9は、
図8の詳細図である。医療用注射機器5は、音響信号発生装置1を作動させるための作動面7を有する中空円筒形の作動スリーブ6を備えている。作動スリーブ6は、基体10に対して摺動可能に配置されている。作動面7は、実質的に平らである。
【符号の説明】
【0047】
1 音響信号発生装置
5 医療用注射機器
6 作動スリーブ
7 平らな作動面
10 基体
12 第1の弾性アーム
13 第1の自由端部
14 第2の弾性アーム
15 第2の自由端部
16 第3の弾性アーム
17 第3の自由端部
18 衝撃面
19 当接面
【手続補正書】
【提出日】2024-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用注射機器(5)用の音響信号発生装置(1)であって、
第1の自由端部(13)を備える第1の弾性アーム(12)と、
当接面(19)と、
衝撃面(18)と、
を備える基体(10)を有しており、
前記第1の弾性アーム(12)は、前記第1の弾性アーム(12)に加えられた第1の荷重によって撓んで、前記第1の弾性アーム(12)の前記第1の自由端部(13)が前記当接面(19)と圧縮係合するように構成されており、これにより、前記第1の荷重が第2の荷重まで増大すると、前記第1の自由端部(13)は前記当接面(19)との圧縮係合から解放され、前記第1の弾性アーム(12)が前記衝撃面(18)に衝突し、これにより音響信号が発生する、音響信号発生装置(1)。
【請求項2】
前記基体(10)は、第2の弾性アーム(14)をさらに備え、前記当接面(19)は、前記第2の弾性アーム(14)に配置されており、これにより、前記第2の弾性アーム(14)は、前記第1の荷重が前記第2の荷重まで増大すると、前記第1の自由端部(13)が前記当接面(19)との圧縮係合から解放される程度まで、前記第2の弾性アーム(14)が撓むように構成されている、請求項1記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項3】
前記基体(10)は、前記第1の荷重が前記第2の荷重まで増大すると、前記当接面(19)を前記第1の自由端部(13)との圧縮係合から係合解除するように撓むように構成されている第3の弾性アーム(16)をさらに備える、請求項2記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項4】
前記第1の弾性アーム(12)、前記第2の弾性アーム(14)、および前記第3の弾性アーム(16)は、実質的に平らな作動面(7)を前記音響信号発生装置(1)に対して第1の距離だけ移動させることで、前記第1の自由端部(13)を前記当接面(19)に対して押し付けるように配置されており、前記実質的に平らな作動面(7)を前記音響信号発生装置(1)に対して付加的な第2の距離だけさらに移動させることで、前記第3の弾性アーム(16)を、前記当接面(19)を前記第1の自由端部(13)との係合から係合解除するように撓ませる、請求項3記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項5】
前記第2の弾性アーム(14)は、第2の自由端部(15)を備えており、前記第3の弾性アーム(16)は、第3の自由端部(17)を備えており、前記第2の自由端部(15)と前記第3の自由端部(17)とは、前記第3の弾性アーム(16)が撓むと、互いに係合するように構成されている、請求項3記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項6】
前記基体(10)は、前記第1の弾性アーム(12)、前記第2の弾性アーム(14)、前記第3の弾性アーム(16)、前記当接面(19)、および/または前記衝撃面(18)と一体形に形成されている、請求項3記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項7】
前記基体(10)、前記第1の弾性アーム(12)、前記第2の弾性アーム(14)、前記第3の弾性アーム(16)、前記当接面(19)、および/または前記衝撃面(18)は、射出成形されている、請求項3記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項8】
前記第1の弾性アーム(12)、前記第2の弾性アーム(14)、および/または前記第3の弾性アーム(16)は、除荷された後、初期の撓んでいない状態に戻るように配置されている、請求項3記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項9】
前記第1の弾性アーム(12)、前記第2の弾性アーム(14)、および/または前記第3の弾性アーム(16)は、荷重が加えられていないときには互いに接触しない、請求項3記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項10】
前記基体(10)は、細長い中空形状を有しており、前記基体(10)は、任意選択で、実質的に中空円筒形状を有する、請求項3記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項11】
前記第1の弾性アーム(12)および/または前記第3の弾性アーム(16)は、前記基体(10)の長手方向に対して実質的に平行な方向に可動である、請求項10記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項12】
前記第1の弾性アーム(12)および/または前記第3の弾性アーム(16)は、前記基体(10)の実質的に周方向に沿って延在する湾曲部分を備えている、請求項10記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項13】
前記第2の弾性アーム(14)は、前記基体(10)の周方向に沿って実質的に可動であり、任意選択で、前記第2の弾性アーム(14)は、前記基体(10)の長手方向に対して実質的に平行に延在している、請求項10記載の音響信号発生装置(1)。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか1項記載の音響信号発生装置(1)を備える医療用注射機器(5)。
【請求項15】
前記医療用注射機器(5)は、請求項10記載の音響信号発生装置(1)を備えており、前記医療用注射機器(5)は、前記音響信号発生装置(1)を作動させるための作動面(7)を有する中空円筒形の作動スリーブ(6)をさらに備えており、前記作動スリーブ(6)は、前記基体(10)に対して摺動可能に配置されており、任意選択で、前記作動面(7)は実質的に平らである、医療用注射機器(5)。
【外国語明細書】