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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127859
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電動式二輪車
(51)【国際特許分類】
   B62J 43/16 20200101AFI20240912BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20240912BHJP
   B62K 25/20 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B62J43/16
B62M7/02 A
B62K25/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024034910
(22)【出願日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】18/180,464
(32)【優先日】2023-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523044769
【氏名又は名称】ライブワイヤー イーブイ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】コンケル エリック
(72)【発明者】
【氏名】レイティンゲール サミュエル ニコラス
(72)【発明者】
【氏名】ルイス エリック ジェイムズ
(72)【発明者】
【氏名】ゲイルズ マーク
(72)【発明者】
【氏名】アンカー マシュー
【テーマコード(参考)】
3D014
【Fターム(参考)】
3D014DF34
3D014DF40
(57)【要約】
【課題】電動式二輪車及びその構造を提供する。
【解決手段】 電動式二輪車が、横向きの回転軸線を有する電動モータを含み、モータはケースを含む。後輪が、推進のためのモータに駆動可能に結合される。揺動アームは、揺動アーム枢動軸線を規定する前端部を有する。バッテリパックは、モータフランジを含むように形成されたバッテリケースの内部セルキャビティ内に受容される複数の再充電可能な電気化学セルを含む。モータケース及びバッテリケースはモータフランジで結合されて二輪車のフレームを形成する。側面視において、モータフランジは、モータの少なくとも一部を覆い、セルキャビティから離れる方向に少なくともモータの回転軸線まで延びる。揺動アームの前端部は、モータケースに枢動可能に結合した第1の側部と、バッテリケースのモータフランジに枢動可能に結合した第2の側部とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動式二輪車であって、当該電動式二輪車は、
該二輪車の長手方向の走行軸線を横切る方向に向き合わせされた回転軸線を有する電動モータであって、モータケースを含む電動モータと、
前記電動モータに駆動可能に結合されて前記二輪車を推進させる後輪と、
揺動アーム枢動軸線を規定する前端部と、前記後輪を回転可能に支持する後端部とを有する揺動アームと、
バッテリケースの内部セルキャビティ内に受容される複数の再充電可能な電気化学セルを含むバッテリパックと、を含み、
前記バッテリケースは、ちょうどその側面の一方にモータフランジを含むように形成され、前記モータケース及び前記バッテリケースは、前記モータフランジで結合されて、前記二輪車のフレームを形成し、
前記モータフランジは、前記二輪車の側面視において、前記電動モータの少なくとも一部を覆い、前記内部セルキャビティから離れる方向に少なくとも前記電動モータの前記回転軸線まで延び、
前記揺動アームの前端部は、二股に分かれており、第1の側面に第1の側部と、第2の側面に第2の側部とを規定し、前記第1の側部は前記モータケースに枢動可能に結合され、前記第2の側部は前記バッテリケースの前記モータフランジに枢動可能に結合される、
電動式二輪車。
【請求項2】
前記電動モータのシャフトが、前記モータケースから前記揺動アームの前端部の前記第1の側部を通って延びており、前記二輪車は前記第1の側面の前記シャフトに固定された駆動スプロケットをさらに含む、請求項1に記載の電動式二輪車。
【請求項3】
前記電動モータ及び前記モータフランジは一緒に横水平方向にクランプされる請求項1に記載の電動式二輪車。
【請求項4】
前記モータケースは、前記モータフランジとは反対側の側面において、前記電動モータの回転軸線と直交する軸線に沿って少なくとも1つの締結具を用いて前記バッテリケースに固定される、請求項1に記載の電動式二輪車。
【請求項5】
前記電動モータは、前記第2の側面に軸方向端壁を有しており、該軸方向端壁と前記モータフランジとの間には、環境から密閉された空間が形成され、該空間には前記電動モータに接続された複数の電気導体が収容される、請求項1に記載の電動式二輪車。
【請求項6】
前記空間には、モータ速度センサが位置付けされる、請求項5に記載の電動式二輪車。
【請求項7】
前記モータフランジは、前記二輪車の側面視において、前記電動モータの大部分を覆う、請求項1に記載の電動式二輪車。
【請求項8】
ショックアブソーバ及びサスペンションリンクをさらに含み、前記バッテリケースの後側には、前記ショックアブソーバの第1の端部のためのショックアブソーバマウントが含まれ、前記モータケースには、サスペンションリンクマウント、該サスペンションリンクマウントに結合した前記サスペンションリンク、前記揺動アーム、及び前記ショックアブソーバの第2の端部が含まれる、請求項1に記載の電動式二輪車。
【請求項9】
前記モータフランジを含む前記バッテリケースは鋳造アルミニウムである、請求項1に記載の電動式二輪車。
【請求項10】
電動式二輪車であって、当該電動式二輪車は、
ステアリングヘッドによって支持される操向可能な前輪と、
前記二輪車を推進するように動作可能であり、前記二輪車の応力フレーム部材であるモータケースを含む電動モータと、
第1の側面及び第2の側面を有するバッテリケースを含むバッテリパックと、を含み、
前記バッテリケースは前記ステアリングヘッドから斜め後方且つ下方に延びており、前記バッテリケースは前記二輪車の応力フレーム部材であり、
前記バッテリケースの前記第2の側面は、側面視において、前記第2の側面のみが前記電動モータと重なるように、前記第1の側面よりも斜め方向にさらに延びる、
電動式二輪車。
【請求項11】
前記第1の側面の第1の揺動アームマウントと前記第2の側面の第2の揺動アームマウントとをさらに含み、前記電動モータのシャフトが、前記第1の揺動アームマウントの外側に延びて、前記二輪車の後輪への駆動接続を確立し、前記シャフトは前記第2の揺動アームマウントの内側に間隔を置いて配置される、請求項10に記載の電動式二輪車。
【請求項12】
前記バッテリケースの前記第2の側面にはモータフランジが含まれ、前記電動モータ及び前記モータフランジは横水平方向に一緒にクランプされる、請求項10に記載の電動式二輪車。
【請求項13】
前記モータケースは、前記第1の側面において、前記電動モータの回転軸線と直交する軸線に沿って少なくとも1つの締結具を用いて前記バッテリケースに固定される、請求項12に記載の電動式二輪車。
【請求項14】
前記電動モータは、前記第2の側面に隣接する軸方向端壁を含み、該軸方向端壁と前記バッテリケースの前記第2の側面との間に環境から密閉された空間が形成され、該空間には前記電動モータに接続された複数の電気導体が収容される、請求項10に記載の電動式二輪車。
【請求項15】
前記バッテリケースの前記第2の側面は、前記二輪車の側面視において、前記電動モータの少なくとも中央部分と重なるように延びる、請求項10に記載の電動式二輪車。
【請求項16】
ショックアブソーバ及びサスペンションリンクをさらに含み、前記バッテリケースの後側には、前記ショックアブソーバの第1の端部のためのショックアブソーバマウントが含まれ、前記モータケースには、サスペンションリンクマウント、該サスペンションリンクマウントに結合した前記サスペンションリンク、揺動アーム、及び前記ショックアブソーバの第2の端部が含まれる、請求項10に記載の電動式二輪車。
【請求項17】
前記バッテリケースは鋳造アルミニウムである、請求項10に記載の電動式二輪車。
【請求項18】
電動式二輪車であって、当該電動式二輪車は、
ステアリングヘッドによって支持される操向可能な前輪と、
前記二輪車を推進するように動作可能な電動モータであって、駆動側と反対側の非駆動側とを規定する電動モータと、
前記ステアリングヘッドに結合される第1の端部を有するバッテリケースを含むバッテリパックであって、前記バッテリケースは第1の端部から斜め後方且つ下方に第2の端部まで延びる、前記バッテリパックと、
前端部で枢動可能に支持される揺動アームであって、前記電動モータにより駆動される後輪を後端部で回転可能に支持する揺動アームと、を含み、
前記バッテリケースの前記第2の端部は、前記揺動アームの前記前端部を枢動可能に支持する揺動アームマウントを形成する、
電動式二輪車。
【請求項19】
前記バッテリケースの前記第2の端部における前記揺動アームマウントを形成する部分が、前記電動モータの非駆動側となる片側面に重なるモータフランジであり、前記電動モータ及び前記モータフランジは横水平方向に一緒にクランプされる、請求項18に記載の電動式二輪車。
【請求項20】
前記電動モータの前記駆動側に追加の揺動アームマウントをさらに含み、前記電動モータのシャフトが、前記追加の揺動アームマウントの外側に延びて、前記二輪車の後輪への駆動接続を確立し、前記シャフトは、前記バッテリケースによって形成された前記揺動アームマウントの内側に間隔を置いて配置される、請求項19に記載の電動式二輪車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に関し、より具体的には電動式二輪車及びその構造に関する。
【発明の概要】
【0002】
一態様では、本発明は電動式二輪車を提供し、電動式二輪車は、この二輪車の長手方向の走行軸線を横切る方向に向き合わせされた回転軸線を有する電動モータを含み、電動モータはモータケースを含む。後輪は、二輪車を推進するために電動モータに駆動可能に結合される。揺動アームは、揺動アーム枢動(swingarm pivot)軸線を規定する前端部と、後輪を回転可能に支持する後端部とを有する。バッテリパックは、バッテリケースの内部セルキャビティ内に受容される複数の再充電可能な電気化学セルを含み、バッテリケースはちょうどその側面の一方にモータフランジを含むように形成される。モータケース及びバッテリケースは、モータフランジで結合されて二輪車のフレームを形成する。モータフランジは、二輪車の側面視において、電動モータの少なくとも一部を覆い、内部セルキャビティから離れる方向に少なくとも電動モータの回転軸線まで延びる。揺動アームの前端部は、二股に分かれており、第1の側面に第1の側部と、第2の側面に第2の側部とを規定し、第1の側部はモータケースに枢動可能に結合され、第2の側部はバッテリケースのモータフランジに枢動可能に結合される。
【0003】
別の態様では、本発明は電動式二輪車を提供し、電動式二輪車は、ステアリングヘッドによって支持される操向可能な前輪を含む。電動モータは、二輪車を推進するように動作可能であり、モータケースを含む。モータケースは、二輪車の応力フレーム部材(stressed flame member:応力がかかる部材)である。バッテリパックは、第1の側面及び第2の側面を有するバッテリケースを含む。バッテリケースは、ステアリングヘッドから斜め後方且つ下方(diagonal direction rearward and downward)に延びており、バッテリケースは二輪車の応力フレーム部材である。バッテリケースの第2の側面は、側面視において、第2の側面のみが電動モータと重なるように、第1の側面よりも斜め方向にさらに延びる。
【0004】
さらに別の態様では、本発明は電動式二輪車を提供し、電動式二輪車は、ステアリングヘッドによって支持される操向可能な前輪を含む。電動モータは二輪車を推進するように動作可能であり、電動モータは駆動側と反対側の非駆動側とを規定する。バッテリパックは、ステアリングヘッドに結合される第1の端部を有するバッテリケースを含む。バッテリケースは、第1の端部から斜め後方且つ下方に第2の端部まで延びる。揺動アームはその前端部で枢動可能に支持(pivotally supported:軸支)され、揺動アームの後端部は電動モータにより駆動される後輪を回転可能に支持する。バッテリケースの第2の端部は、揺動アームの前端部を枢動可能に支持する揺動アームマウントを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】本開示の一実施形態に係る電動式二輪車の右側斜視図である。
図2図1の二輪車の左側斜視図である。
図3図1の二輪車の左側正面図であり、この図は、その二輪車の下にあるシャーシ構造をより良く示すためにいくつかの部分が除去される。
図4図1の二輪車の右側正面図であり、この図は、その二輪車の下にあるシャーシ構造をより良く示すためにいくつかの部分が除去される。
図5図4の線5-5に沿って切り取った二輪車の駆動モータの中心を通る断面図である。
図6図1図4の二輪車の駆動モータ、バッテリパックハウジング及びパワーエレクトロニクスハウジングの分解組立図である。
図7図4と同様の右側正面図であるが、バッテリパックハウジングの一体型キャビティ内のパワーエレクトロニクスコントローラへの電気接続を示すためにカバーが取り外される。
図8】バッテリパックハウジングの一体型キャビティ内の電気接続の詳細図である。
図9】モータ相リード線(図示せず)とバッテリ接続部との間の長手方向平面に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明のあらゆる態様を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、以下の説明に記載する、又は以下の図面に示す構成要素の構造及び配置の詳細に限定されないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実施又は実行することができる。
【0007】
図1は、本開示の一実施形態に係る二輪車20を示す。二輪車20は、前輪22及び後輪24(例えば、単一の軌道を形成するために単一の前輪22とこの前輪22と整列する単一の後輪24と)を含む。二輪車20は、従来のメインフレームを省略したフレーム構造を含み、これについて以下でさらに詳細に説明する。フロントフォーク32が、前輪22を支持し、前輪22が路面に沿って回転できるようにする。フロントフォーク32は、前輪22の操向制御のためにフレームのヘッドチューブ36に回転可能に結合される。ハンドルバー40はフロントフォーク32に結合され、ライダーがフロントフォーク32及び前輪22の向きを制御できるようにする。後部揺動アーム44が、後輪24をその中で回転できるように支持し、後部揺動アーム44は、後輪24及び揺動アーム44が軸線Aの周りで一緒に枢動するサスペンション動作を可能にする。軸線Aでの枢動支持に加えて、揺動アーム44は、ショックアブソーバユニット46(例えば、コイルスプリング及び油圧ダンパを含む)によって支持される。二輪車20は、少なくとも1つのシート48(例えば、オペレータ及びオプションで同乗者用のサドルシート)及び少なくとも1組のフットサポート50(例えば、横方向に延びるフットペグ)をさらに含む。
【0008】
図示されるように、二輪車20は、電動パワートレインによって駆動するように動作可能な電動式二輪車であり、電動パワートレインは、充電式エネルギー蓄積システム(「バッテリパック54」)と、バッテリパック54に電気的に接続された電動モータ58とを含み、バッテリパックからの蓄電した電気エネルギーを回転運動エネルギーに変換して二輪車20を駆動する。バッテリパック54は、複数の再充電可能な電気化学セル65を受容する内部セルキャビティを規定する中空のバッテリケース60を含む(図9)。図示されるように、モータ58は、駆動スプロケット66(図5)及び後輪24に堅固に固定された従動スプロケット68(図2及び図3)の周りに巻き付けられたループの形態の無端(endless)駆動部材62(例えば、ベルト又はチェーン)を介して後輪24に動力を供給する。以下でさらに詳細に議論するように、無端駆動部材62を駆動する駆動スプロケット66は、揺動アーム44の枢軸でもある軸線Aの周りに回転するように位置付けられる。さらに、駆動スプロケット66は、軸線Aの周りに電動モータ58の出力シャフト(図7)と一体的に回転するように取り付けられる。そのため、二輪車20には、電動モータ58と駆動スプロケット66との間に多段変速機が設けられず、またいかなるギアボックスも設けられない。これは、電動モータ58を、高トルク密度を有する高極数モータ(high pole count motor)として提供することによってさらに促進され得る。図面から分かるように、モータ出力軸線Aは、二輪車20の長手方向走行軸線を横切る方向に向き合わせされる。
【0009】
揺動アーム枢動軸線を規定する別個のピボットシャフトを有するのとは対照的に、揺動アーム44をモータ出力軸線Aと同軸に枢動させることにより、二輪車20は、揺動アーム44の移動全体を通じて、駆動スプロケット66と従動スプロケット68との間の中心距離の変動が排除されるので、広範囲のサスペンション移動に適応することができるようになる。無端駆動部材62の張力はサスペンションの移動によって変化せず、これにより耐久性が向上すると同時に張力を効率に合わせて最適化することができる。
【0010】
電動モータ58のハウジング又はケース72は、モータのロータ86を収容するために設けられ、モータのロータ86には、出力シャフト70が、軸線Aの周りに回転するように取り付けられる。ロータ86は、例えば永久磁石を含む回転アセンブリであり、回転アセンブリは、モータ58に通電すると、ステータ87及びモータケース72に対して回転駆動される。モータケース72は、組み立てのために、例えば軸線Aに平行に一緒に結合する複数の部品で形成することができる。出力シャフト70は、モータケース72の駆動側の外側の横方向に突出するボス82を通って出る。モータ58は、バッテリパックのセルからパワーエレクトロニクス(例えば、インバータを含む)を介して制御された方法で供給される電力で通電される。パワーエレクトロニクスは、バッテリケース60とは別に設けられ得るハウジング100内に設けることができる。パワーエレクトロニクスハウジング100は、バッテリケース60の前向き側に沿って位置付けする(及びそこに固定する)ことができる。パワーエレクトロニクスハウジング100は、図示されるように、バッテリケース60の前向き側の下端部に隣接して位置付けすることができる。パワーエレクトロニクスハウジング100は、とりわけ、インバータ、充電器、及びDC/DCコンバータの1つ又は任意の組合せを収容することができる。パワーエレクトロニクスハウジング100内の構成要素は、一般に、バッテリパック54とモータ58との間、またバッテリパック54と充電のために選択的に結合される外部(グリッド)電力との間の電力を制御するように動作可能なパワーエレクトロニクスコントローラを構成する。パワーエレクトロニクスエンクロージャ100は、互いに結合した1つ又は複数の個別の部品によって提供され得る。
【0011】
図3及び図4は二輪車20の側面図であり、基礎となるシャーシ構造をよりよく示すためにいくつかの要素が取り除かれているが、前述したように、前輪22と後輪24との間にメインフレームを一切使用せずに構成される。むしろ、車輪22、24の支持部同士の間の構造的剛性接続は、バッテリケース60と電動モータ58のケース72とによって提供される。いくつかの構造では、バッテリケース60にはフロントフォーク32のための一体化した支持部を設けることができるが、図示の実施形態のヘッドチューブ36は、別個の鋳造又は機械加工した構成要素であり、複数の締結具を用いてバッテリケース60の前端部に固定される。いずれにせよ、ヘッドチューブ36から後部揺動アーム44の構造フレーム支持部までずっと延びる二輪車20の唯一のフレームは、バッテリケース60である。図6に示されるように、バッテリケース60は、内部セルキャビティを形成するために互いに横方向に結合する2つの別個の部分60L、60Rで構成される。これらの部分は、左右のシェル又は半体60L、60Rと呼ばれ得るが、これらは、二輪車20の横方向中心線で均等に又は正確に分割してもよく、又は分割しなくてもよい。バッテリケース60の2つの別個の部分60L、60Rは、相互のインターフェイスにおいて締結具及び/又は接着剤によって堅固且つ密閉して結合され得る。いくつかの構造では、バッテリケース60は、例えば、左側のバッテリケースシェル60L用の第1の鋳物及び右側のバッテリケースシェル60R用の第2の鋳物を含む鋳造アルミニウムである。バッテリケース60は、ヘッドチューブ36から軸線Aに向けて斜め方向Dにほぼ後方且つ下方に延びる。以下にさらに詳細に説明するように、揺動アーム44の二股前端部は、モータケース72のボス82によって提供される第1の揺動アームマウントとバッテリケース60の第2の揺動アームマウント82’とを含む揺動アームマウントによって二輪車のフレームに枢動可能に支持される。各揺動アームマウント82、82’では、揺動アーム44の前端部は(例えば、ころ軸受等の軸受92を介して)枢動可能に支持される。揺動アーム44の前端部は、軸受92の外側部分の周りに組み立てるのを可能にする取り外し可能な軸受クランプを含むことができる。
【0012】
図5の断面図にとりわけ示されるように、第1の揺動アームマウント82は、側方に突出するボスとしてモータケース72に一体的に形成される。第1の揺動アームマウント82は、二輪車20の駆動側、すなわち、図示の構造によれば、スプロケット66、68及び無端駆動部材62を有する側にある。そのため、モータ出力シャフト70は、第1の揺動アームマウント82を通ってモータケース72の外に延びる。図示の構造では、駆動側は(ライダーの)左側にあるが、他の構造ではこれが逆であってもよい。二輪車20の非駆動側にある第2の揺動アームマウント82’は、バッテリケース60、特に図示の構造では右側のバッテリケースシェル60Rと一体的に形成される。バッテリケースシェル60Rは、他のバッテリケースシェル60Lに比べて、側面視で電動モータ58と重なるように斜め方向Dにさらに延びることができる(図4)。対照的に、反対側の側面視(図3)では、バッテリケースシェル60Lは、重なり合うことなくモータケース72と結合し、代わりにモータケース72を露出させたままにする。右側のバッテリケースシェル60Rの延長したモータ重なり部分は、一方の側面(例えば、非駆動側)専用のモータ取り付け部分又はモータフランジ88を提供する。モータフランジ88は、ほぼ長手方向に、換言すれば二輪車20の長手方向中心面に平行に延びる。
【0013】
モータケース72は、モータフランジ88においてバッテリケース60と(例えば、複数の締結具90を用いて)結合されて、二輪車20のフレームを形成又は確立する。特に、モータ58のモータケース72及びモータフランジ88は、軸線Aに平行に、横水平方向(transverse horizontal direction)に一緒にクランプされる。中間シール94を、モータケース72とモータフランジ88との間に設けることができる。モータフランジ88は、側面視において、少なくとも電動モータ58の部分を覆い、バッテリケース60の内部セルキャビティから離れる方向に延びる。換言すれば、モータフランジ88は、右側のバッテリケースシェル60Rと一体であるが、バッテリセルを保持する部分から分離される。モータフランジ88は、セルキャビティから離れて、少なくとも電動モータ58の回転軸線Aまで延びる。図示されるように、モータフランジ88は、電動モータ58の円周全体、すなわち側面プロファイルを覆う。シール94及び複数の締結具90のピッチ円は、モータケース72の円周に外接するように配置される。
【0014】
モータフランジ88は、全体的に又は大部分が固体の壁であってもよい。モータフランジ88及びモータケース72の軸方向(axial)端壁は、互いに結合されると、環境から密閉されたキャビティ又はポケットの形態の空間106を残すことができる。モータケース72とバッテリケース60のモータフランジ88との間のこの空間106は、モータ58上の1つ又は複数の電気部品及び/又は接続部品を収容することができる。特に、図5は、モータケース72とモータフランジ88との間の空間106に位置付けされたモータ速度センサ104を示す。モータ速度センサ104は、出力シャフト70の回転位置、ひいては速度を検出するように(例えば、磁気的、光学的に)動作可能である。図示されるように、出力シャフト70の非駆動端部は、モータケース72の軸方向端壁を通って突出して、モータ速度センサ104によって検出可能な部分を提供することができる。モータフランジ88は、図示のものとは別の形状及び構成で提供することができ、モータフランジ88は、側面視でモータケース72の1つ又は複数の部分を露出させる1つ又は複数の開口又は窓を含むことができる。
【0015】
上述したように、バッテリケース60及び電動モータケース72は、複数の締結具90によって非駆動側で互いに構造的に固定される。複数の締結具90は、軸線Aに平行に、こうして二輪車20の長手方向走行方向に直交して延びる。モータフランジ88の反対側の側面(非駆動側)では、モータケース72は、少なくとも1つ(例えば、2つ以上)の追加の締結具108を用いてバッテリケース60に固定される。締結具108は、軸線Aに直交する軸線に沿って延びる。他の実施形態では、締結具は軸線Aと交差するように配置してもよいが、図示した締結具108は、軸線Aから(均等に)オフセットされたそれぞれの軸線に沿って挿入される。図示されるように、これらの締結具108は、斜め方向Dに平行に延びることができる。締結具108は、間隔を置いて配置された上部及び下部の締結具を含むことができ、上部及び下部の締結具は、モータケース72のそれぞれの開口を有する締結具フランジ部分110を通ってバッテリケース60(例えば、左側バッテリケースシェル60L)内に延びる。バッテリケース60は、締結具108を固定し、バッテリケース60及びモータケース72を斜め方向Dに沿ってクランプするためのねじ付き開口を含むことができる。他の構造では、締結具108の一方又は両方は、代わりの向き、例えば、示される特定の斜めの向きよりもより垂直方向又はより水平方向を有することができる。モータケース72のフランジ部分110は、ガセット(gusset)、強化ブロック、又は局所的に強化した領域を形成するための任意の適切な構造を含むことができる。モータケース72及びバッテリケース60を一緒に固定するときに、これら両者の間には斜め方向に沿ってギャップが存在する場合がある。モータケース72の外円筒面は、バッテリケース60の隣接する外面部分と接触又は密閉する必要はない。後輪24から揺動アーム44への負荷は、モータケース72及びバッテリケース60によって支えられる。特に、揺動アーム44における負荷は、揺動アームマウント82、82'における接続部を介してモータケース72及びバッテリケース60に直接伝達されるか、又は後部サスペンションを介してモータケース72及びバッテリケース60に間接的に伝達される。特に、バッテリケース60は第1のサスペンション取付点60Cを含み、モータケース72は第2のサスペンション取付点72Cを含む。図示の実施形態では、後部揺動アーム44は中間リンク112を介してショックアブソーバユニット46に接続されるが、他の代替サスペンション構成も考えられる。第1のサスペンション取付点60Cは、バッテリケース60の後側に設けられ、ショックアブソーバユニット46の第1の端部(上端)のショックアブソーバマウントである。第2のサスペンション取付点72Cは、モータケース72の上部に設けられ、中間サスペンションリンク112のためのサスペンションリンクマウントである。
【0016】
電子機器に戻ると、図6は、モータ58の主電源接続部124に接続するように構成されたインバータ120を示す。インバータ120は、(例えば、ツイストグリップ(twist grip)等のライダーのスロットルコントロールの要求に基づいて)制御された駆動電流をモータ58に供給するように動作可能な回路基板アセンブリ上の複数の構成要素で構成することができる。モータ58の主電源接続部124は、インバータ120からの三相AC供給に対応する3つの端子を含むことができる。そのため、インバータ120とモータ58との間の接続を確立するために、3つのACモータリード線128の形態のケーブルが設けられる。主電源接続部124及びACモータリード線128の接続端部は空間106内に位置する。モータ58が回生ブレーキ中に機械エネルギーを電気エネルギーに変換する条件下では、モータ58から生成される電力は、ACモータリード線128を介してインバータ120に送られる。
【0017】
図6及び図8に最も良く示されるように、モータ58とパワーエレクトロニクスエンクロージャ100との間に、モータ遠隔測定用の1つ又は複数の追加のケーブルが設けられる。例えば、遠隔測定ケーブルは、モータ速度センサ104に結合したケーブル132と、モータ温度センサ136に結合したケーブル134のいずれか又は両方を含むことができる。ケーブル132、134のそれぞれは、ケーブル132、134によって提供される接続を行ったり切断したりするためのプラグ型コネクタを有することができる。ケーブル132、134のそれぞれのモータ対向端部は、空間106内に位置することができる。ケーブル132、134は、ACモータリード線128に沿って延びることができる。
【0018】
ACモータリード線128は、環境に露出せず、むしろバッテリケース60の一部、特に右側バッテリケースシェル60Rによって提供されるモータフランジ88の一部内に隠される。モータフランジ88のこの部分は、一体型接続(junction)ボックス140を提供する。図示した構造の一体型接続ボックス140は、二輪車20の側面視において、バッテリケース60(右側のバッテリケースシェル60R)の下部前隅から電動モータ58の中心に向けて(すなわち、軸線Aに向けて)延びる。場合によっては、パワーエレクトロニクスハウジング100とモータ58上の様々な電気コネクタとの間の関係に応じて、接続ボックス140がそれらの間にまたがるように、一体型接続ボックス140の他の形状及び位置も可能である。接続ボックス140は、接続ボックス140の内部への選択的なアクセスを提供する取り外し可能な外側カバーパネル144を有しており、アクセスは、モータ58及びバッテリケース60が一緒に組み立てられる間に(二輪車20の組立中又は組立後に)、カバーパネル144を取り外すことによって提供され得る。内部窓148が、接続ボックス140から空間106まで開いている。特に図8から理解されるように、窓148は、接続ボックス140の内部に沿って、且つ電動モータ58の外部に沿って、主電源接続部124の位置に設けられる。そのため、ACモータリード線とモータ58との間の接続(又は切断)は、カバーパネル144を取り外した接続ボックス140によって提供されるアクセスを介して外部から達成することができる。
【0019】
一体型接続ボックス140を通って延びるACモータリード線128に加えて、本明細書で説明するように、接続ボックス140によって任意の1つ又は複数の追加機能を提供することができる。例えば、図示の構造は、接続ボックス140を通した遠隔測定ケーブル132、134の延長を提供する。ケーブルオーガナイザ150を接続ボックス140内に設けることができる。例えば、ケーブルオーガナイザ150を、(例えば、ネジを用いて)接続ボックス140の内壁に沿って接続ボックス140内の所定の位置に固定することができる。ケーブルオーガナイザ150は、個々のケーブル用のロケータ(locator)を含むことができ、ロケータはケーブル毎の所定の位置又は経路を確立し、オプションでケーブルを所定の位置にスナップ又はラッチ留めする。ケーブルオーガナイザ150は、ACモータリード線128及び遠隔測定ケーブル132、134のいずれか/全てのためのロケータを含むことができる。さらに、バッテリパック54とパワーエレクトロニクスハウジング100との間の電気接続(DC)(セル65からインバータ120への電気エネルギー供給)は、接続ボックス140を介して行われる。より具体的には、図9は、バッテリパック54の主高電圧リード線154を、インバータDCリンクコンデンサ156を介してインバータ120に接続する一対のDC接続152(例えば、ケーブル、バスバー等)を示す。インターロック158(例えば、常開スイッチ)は、カバーパネル144の取り外しに応答して、バッテリパック54と電動モータ58との間の高電圧接続を自動的に開き、それによって、接続ボックス140を介して直接アクセス可能な構成要素のいずれにも高電圧が存在しないようにする。
【0020】
パワーエレクトロニクスハウジング100の内部への通路を確立するために、ポート162が接続ボックス140から延びる。図示の構造では、ポート162は、バッテリケース60のモータフランジ88の前方を向いた表面又はエッジに形成され、接続ボックス140と交差する経路に沿って延びる。ポート162の断面形状は、丸みを帯びた形状(例えば、円形、楕円形、長円形)である。パワーエレクトロニクスハウジング100の相補的なポート164は、ポート162と嵌合し、例えば周囲シール166によって密閉したインターフェイスを形成するために設けられる。図示の構造では、パワーエレクトロニクスハウジング100のポート164は、モータフランジ88の雌型構成のポート162内に挿入するように構成される雄型構成を有する。さらに、ポート164は、パワーエレクトロニクスハウジング100の下部後部に形成される。周囲シール166は、雄型構成のポート164上に支持され、ポート162の内部と接触する連続する周囲長さを確立する。周囲シール166は、バッテリケース60とパワーエレクトロニクスハウジング100との間のアセンブリクランプ力に依存せず、周囲シール166は、ポート164をポート162内に挿入する正確な深さとは独立してインターフェイスを密閉するように機能する。バッテリケース60とパワーエレクトロニクスハウジング100との間の密閉インターフェイスは、適切な機能のために厳密な公差及び位置合わせを必要とするのではなく、角度の位置ずれを許容する。ポート162、164は、互いに嵌合すると、接続ボックス140とパワーエレクトロニクスハウジング100の内部との間に経路を確立する。この経路は、バッテリパック54とインバータ120との間にAC電力リード線128、遠隔測定ケーブル132、134、及びDC接続152を含む複数の機能的電気接続に使用される。実際に、接続ボックス140は、モータ58の単一の側面(例えば、非駆動側)でのモータ58への全ての電気接続を容易にすることができる。このような場合に、カバーパネル144が取り外されると、モータ58への全ての電気接続は、一体型接続ボックス140との間の接続及び切断のためにアクセス可能となり得る。
【0021】
本発明の様々な特徴及び利点は、特許請求の範囲に記載される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】