(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127866
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】高分子量化合物および有機エレクトロルミネッセンス素子
(51)【国際特許分類】
C08G 61/12 20060101AFI20240912BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20240912BHJP
H10K 50/18 20230101ALI20240912BHJP
H10K 50/17 20230101ALI20240912BHJP
H10K 85/10 20230101ALI20240912BHJP
【FI】
C08G61/12
H10K50/15
H10K50/18
H10K50/17
H10K85/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024035101
(22)【出願日】2024-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2023035758
(32)【優先日】2023-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005315
【氏名又は名称】保土谷化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富樫 和法
(72)【発明者】
【氏名】武井 貴紀
(72)【発明者】
【氏名】三枝 優太
(72)【発明者】
【氏名】吉澤 由香
(72)【発明者】
【氏名】北原 秀良
【テーマコード(参考)】
3K107
4J032
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC04
3K107CC21
3K107DD71
3K107DD79
3K107FF18
4J032BA14
4J032BB06
4J032BC03
4J032BC12
4J032CG01
4J032CG03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】正孔の注入・輸送性能に優れ、電子阻止能力を有し、薄膜状態での安定性が高い高分子材料を提供する。また、上記高分子材料により形成された有機層(薄膜)を有しており、発光効率が高く、長寿命な有機EL素子を提供する。
【解決手段】少なくとも下記一般式(1)で表される、熱架橋基Qを有するカルバゾール構造単位を含み、ポリスチレン換算で10,000以上1,000,000未満の重量平均分子量を有する高分子量化合物。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(1)で表される、熱架橋基Qを有するカルバゾール構造単位を含み、ポリスチレン換算で10,000以上1,000,000未満の重量平均分子量を有する高分子量化合物。
【化1】
式中、
R
11、R
12、およびR
13は、それぞれ独立に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、またはアリールオキシ基を示す。
R
12およびR
13は、互いに、単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して結合することで環を形成していてもよい。
L
1は、単結合または2価のアリール基を示し、mは1~2の整数を示す。
また、上記式中、a11、a12、およびb1は、以下の整数である。
a11およびa12、0,1,2または3である。
b1は、0,1,2,3または4である。
【請求項2】
前記熱架橋基Qが下記一般式(2a)~(2q)のいずれか1つに示す基である請求項1に記載の高分子量化合物。
【化2】
式中、
R
21は、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、またはアリールオキシ基を示す。
また、上記式中、a2、b2は、以下の整数である。
a2は、0,1,2または3である。
b2は、0,1,2,3または4である。
【請求項3】
下記一般式(3)で表される構造単位と下記一般式(4)で表される構造単位とを含む請求項2に記載の高分子量化合物。
【化3】
式中、
R
31およびR
33は、それぞれ独立に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、またはアリールオキシ基を示す。
R
32は、炭素数が3~40である、アルキル基、シクロアルキル基、またはアルキルオキシ基を示す。
L
3は、単結合または2価のアリール基を示し、nは1~2の整数を示す。
また、上記式中、a3、b31およびb32は、以下の整数である。
a3は、0,1,2または3である。
b31およびb32は、0,1,2,3または4である。
【化4】
式中、
R
41は、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、またはアリールオキシ基を示す。
Xは、水素原子、アミノ基、1価のアリール基、または1価のヘテロアリール基を示す。
また、上記式中、a4は、以下の整数である。
a4は、0,1,2または3である。
【請求項4】
下記一般式(5)で表される繰り返し構造単位Iを含む、請求項3に記載の高分子量化合物。
【化5】
【請求項5】
下記一般式(6)で表される繰り返し構造単位IIをさらに含む請求項4に記載の高分子量化合物。
【化6】
【請求項6】
前記一般式(1)~(6)において、a11、a12、a2、a3、a4、b1、b2、b31、およびb32がいずれも0である請求項5に記載の高分子量化合物。
【請求項7】
前記一般式(3)および(5)において、R32が炭素数3~40のアルキル基である請求項5に記載の高分子量化合物。
【請求項8】
前記一般式(4)、(5)および(6)において、Xが水素原子、ジフェニルアミノ基、フェニル基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、インデノカルバゾリル基、またはアクリジニル基である請求項7に記載の高分子量化合物。
【請求項9】
請求項1~請求項8のいずれか1項に記載の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
前記有機層が正孔輸送層である、請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
前記有機層が電子阻止層である、請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
前記有機層が正孔注入層である、請求項9に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の表示装置に好適な自発光素子である有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)に適した高分子量化合物とその素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は自己発光性素子であるため、液晶素子にくらべて明るく視認性に優れ、鮮明な表示が可能であるため、活発な研究がなされてきた。
【0003】
有機EL素子は、有機化合物の薄膜(有機層)を、陽極と陰極に挟んだ構成を有している。薄膜の形成方法としては、真空蒸着法と塗布法に大別される。真空蒸着法は、主に低分子化合物を用い、真空中で基板上に薄膜を形成する手法であり、既に実用化されている技術である。一方、塗布法は、主に高分子化合物を用い、インクジェットや印刷など、溶液を用いて基板上に薄膜を形成する手法であり、材料の使用効率が高く、大面積化、高精細化に適しており、今後の大面積有機ELディスプレイには不可欠の技術である。
【0004】
低分子材料を用いた真空蒸着法は、材料の使用効率が極端に低く、大型化すればシャドーマスクのたわみが大きくなり、大型基板への均一な蒸着は困難となる。また製造コストも高くなるといった問題も抱えている。
【0005】
一方、高分子材料は、有機溶剤に溶解させたその溶液を塗布することにより、大型基板でも均一な膜を形成することが可能であり、これを利用してインクジェット法や印刷法に代表される塗布法を用いることができる。そのため、材料の使用効率を高めることが可能となり、素子作製にかかる製造コストを大幅に削減することができる。
【0006】
これまで、高分子材料を用いた有機EL素子が、種々検討されてきたが、発光効率や寿命などの素子特性は必ずしも十分でないという問題があった(例えば、特許文献1~特許文献5参照)。
【0007】
また、これまで高分子有機EL素子に用いられてきた代表的な正孔輸送材料としては、TFBと呼ばれるフルオレンポリマーが知られていた(特許文献6~特許文献7参照)。しかしながら、TFBは正孔輸送性が不十分であり、かつ電子阻止性が不十分であるため、電子の一部が発光層を通り抜けてしまい、発光効率の向上が期待できないという問題があった。また、隣接層との膜密着性が低いことから、素子の長寿命化も期待できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005-272834号公報
【特許文献2】特開2007-119763号公報
【特許文献3】特開2007-162009号公報
【特許文献4】特開2007-177225号公報
【特許文献5】国際公開2005/049546号
【特許文献6】特許第4375820号公報
【特許文献7】国際公開2005/059951号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、正孔の注入・輸送性能に優れ、電子阻止能力を有し、薄膜状態での安定性が高い高分子材料を提供することにある。
また、本発明の目的は、上記高分子材料により形成された有機層(薄膜)を有しており、発光効率が高く、長寿命な有機EL素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らはカルバゾール構造単位を含む高分子量化合物が高い正孔注入・輸送能力を有し、さらにワイドギャップ化も期待できることに着目し、種々のカルバゾール構造単位を含むトリアリールアミン高分子量化合物を合成して検討した結果、正孔注入・輸送能力に加え、ワイドギャップ且つ優れた耐熱性と薄膜安定性を有する新規な構造の高分子量化合物を見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下に記載するものである。
【0012】
[1]少なくとも下記一般式(1)で表される、熱架橋基Qを有するカルバゾール構造単位を含み、ポリスチレン換算で10,000以上1,000,000未満の重量平均分子量を有する高分子量化合物。
【0013】
【化1】
前記一般式(1)の式中、
R
11、R
12、およびR
13は、それぞれ独立に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、またはアリールオキシ基を示す。
R
12およびR
13は、互いに、単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して結合することで環を形成していてもよい。
L
1は、単結合または2価のアリール基を示し、mは1~2の整数を示す。
また、上記式中、a11、a12、およびb1は、以下の整数である。
a11およびa12は、0,1,2または3である。
b1=0,1,2,3または4である。
【0014】
[2]前記熱架橋基Qが下記の(2a)~(2q)のいずれか1つに示す基である[1]に記載の高分子量化合物。
【0015】
【化2】
式中、
R
21は、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、またはアリールオキシ基を示す。
また、上記式中、a2、b2は、以下の整数である。
a2は、0,1,2または3である。
b2は、0,1,2,3または4である。
【0016】
[3]下記一般式(3)で表される構造単位と下記一般式(4)で表される構造単位とを含む[2]に記載の高分子量化合物。
【0017】
【化3】
式中、
R
31およびR
33は、それぞれ独立に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、またはアリールオキシ基を示す。
R
32は、炭素数が3~40である、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、またはシクロアルキルオキシ基を示す。
L
3は、単結合または2価のアリール基を示し、nは1~2の整数を示す。
また、上記式中、a3、b31、およびb32は、以下の整数である。
a3は、0,1,2または3である。
b31およびb32は、0,1,2,3または4である。
【0018】
【化4】
式中、
R
41は、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、またはアリールオキシ基を示す。
Xは、水素原子、アミノ基、1価のアリール基、または1価のヘテロアリール基を示す。
また、上記式中、a4は、以下の整数である。
a4は0,1,2または3である。
【0019】
[4]下記一般式(5)で表される繰り返し構造単位Iを含む[3]に記載の高分子量化合物。
【0020】
【0021】
[5]下記一般式(6)で表される繰り返し構造単位IIをさらに含む[4]に記載の高分子量化合物。
【0022】
【0023】
[6]前記一般式(1)~(6)において、a11、a12、a2、a3、a4、b1、b2、b31、およびb32がいずれも0である[5]に記載の高分子量化合物。
【0024】
[7]前記一般式(3)および(5)において、R32が炭素数3~40のアルキル基である[5]に記載の高分子量化合物。
【0025】
[8]前記一般式(4)、(5)および(6)において、Xが水素原子、ジフェニルアミノ基、フェニル基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、インデノカルバゾリル基、またはアクリジニル基である[7]に記載の高分子量化合物。
【0026】
[9][1]~[8]のいずれか1項に記載の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0027】
[10]前記有機層が正孔輸送層である、[9]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0028】
[11]前記有機層が電子阻止層である、[9]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【0029】
[12]前記有機層が正孔注入層である、[9]に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、上記一般式(1)で表される、熱架橋基Qを有するカルバゾール構造単位を含む高分子量化合物が提供される。
【0031】
本発明の高分子量化合物は、例えば、該構造単位を繰り返し単位として有するポリマーであり、好適には、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)で測定したポリスチレン換算での重量平均分子量が10,000以上1,000,000未満の範囲にある。
【0032】
本発明の高分子量化合物は、
(1)正孔の注入特性が良いこと、
(2)正孔の移動度が大きいこと、
(3)ワイドギャップであり、電子阻止能力に優れること、
(4)薄膜状態が安定であること、
(5)耐熱性に優れていること、
という特性を有している。
【0033】
このような物性を持つ高分子量化合物により形成された有機層は、有機EL素子の正孔輸送層、電子阻止層、または正孔注入層とすることが好適であり、一対の電極間に該有機層を含む有機EL素子は、
(1)発光効率および電力効率が高いこと、
(2)実用駆動電圧が低いこと、
(3)長寿命であること、
という利点を有している。
【0034】
即ち、本発明によれば、一対の電極と、該電極間に挟まれた少なくとも一つの有機層を有する有機EL素子において、該有機層が、上記の高分子量化合物を含有していることを特徴とする有機EL素子が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の一般式(5)で表される繰り返し構造単位として好適な例示の構造単位5-1~5-6の化学構造
【
図2】本発明の一般式(5)で表される繰り返し構造単位として好適な例示の構造単位5-7~5-12の化学構造
【
図3】本発明の一般式(5)で表される繰り返し構造単位として好適な例示の構造単位5-13~5-18の化学構造
【
図4】本発明の一般式(5)で表される繰り返し構造単位として好適な例示の構造単位5-19~5-24の化学構造
【
図5】本発明の一般式(5)で表される繰り返し構造単位として好適な例示の構造単位5-25~5-30の化学構造
【
図6】本発明の一般式(5)で表される繰り返し構造単位として好適な例示の構造単位5-31~5-36の化学構造
【
図7】本発明の一般式(5)で表される繰り返し構造単位として好適な例示の構造単位5-37~5-42の化学構造
【
図8】本発明の一般式(5)で表される繰り返し構造単位として好適な例示の構造単位5-43~5-48の化学構造
【
図9】本発明の一般式(5)で表される繰り返し構造単位として好適な例示の構造単位5-49~5-54の化学構造
【
図10】本発明の一般式(5)で表される繰り返し構造単位として好適な例示の構造単位5-55~5-60の化学構造
【
図11】本発明の一般式(5)で表される繰り返し構造単位として好適な例示の構造単位5-61~5-66の化学構造
【
図12】本発明の一般式(5)で表される繰り返し構造単位として好適な例示の構造単位5-67~5-72の化学構造
【
図13】本発明の一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)の置換基Xとして好適な例示の置換基1~24の化学構造
【
図14】本発明の一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)の置換基Xとして好適な例示の置換基25~48の化学構造
【
図15】本発明の有機EL素子が有する層構成の一例
【
図16】本発明の実施例1で得た高分子量化合物(化合物A)の
1H-NMRチャート
【
図17】本発明の実施例2で得た高分子量化合物(化合物B)の
1H-NMRチャート
【発明を実施するための形態】
【0036】
<本願発明の概要>
本発明の高分子量化合物は、熱架橋基Qを有するカルバゾール構造単位(以下、単に「構造単位A」とも称する。)を含み、ポリスチレン換算で10,000以上1,000,000未満の重量平均分子量を有する高分子量化合物である。特に、本願の構造単位Aは、ジアリールアミン骨格に、カルバゾール構造を介して熱架橋基Qが結合していることを特徴とする。このような構造単位Aを有する本発明の高分子量化合物は、熱架橋反応を利用して、有機溶剤に溶解させた高分子量化合物を不溶化して膜を形成する塗布法に好適であり、良好な硬化性を有する。この塗布法を用いて上記高分子化合物により形成された有機層は、正孔の注入特性、正孔の移動度、電子阻止能力、薄膜安定性、耐熱性等の特性に優れ、該有機層を含む有機EL素子では、高い発光効率と長寿命化を実現できる。
また、これらの特性をより高め且つ成膜性を確保するという観点から、上記構造単位Aと他の構造単位とからなる繰り返し単位を有する高分子量化合物(ポリマー)であることが好ましい。他の構造単位として、溶解性を高め、塗布性を確保する観点から、トリアリールアミン構造単位(以下、単に「構造単位B」とも称する。)や、膜の密着性、耐久性を確保する観点から連結構造単位(以下、単に「構造単位C」とも称する。)を有することが好ましい。
以下、詳細について説明する。
【0037】
<カルバゾール構造単位、トリアリールアミン構造単位及び連結構造単位>
本発明の高分子量化合物が有するカルバゾール構造単位、トリアリールアミン構造単位及び連結構造単位はいずれも2価の基であり、それぞれ前記の一般式(1)、(3)及び(4)で表される。尚、式中、水素原子は省略して記載している。
【0038】
前記一般式(1)において、R11、R12、およびR13は、それぞれ独立に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子;アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、またはアリールオキシ基を示す。該アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、およびアリールオキシ基は、それぞれ、炭素数が1~40であることが好ましい。
【0039】
かかるR11、R12、およびR13において、上記の炭素数が1~40であることが好ましい(特に3~40が好ましい)、アルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキル基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、及びアリールオキシ基の例としては、以下の基を例示することができる。
アルキル基(炭素数が1~40);
メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソへキシル基、ネオへキシル基、n-ヘプチル基、イソへプチル基、ネオへプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ネオオクチル基等。
アルキルオキシ基(炭素数が1~40);
メチルオキシ基、エチルオキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ペンチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、n-ヘプチルオキシ基、n-オクチルオキシ基等。
シクロアルキル基(炭素数が5~40);
シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1-アダマンチル基、2-アダマンチル基等。
シクロアルキルオキシ基(炭素数が5~40);
シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、1-アダマンチルオキシ基、2-アダマンチルオキシ基等。
アルケニル基(炭素数が2~40);
ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基等。
アリールオキシ基;
フェニルオキシ基、トリルオキシ基等。
【0040】
かかるR11、R12およびR13は上記基を示すが、
R11は、重水素原子、または、それぞれ、炭素数が1~40である、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、もしくはアリールオキシ基であることが好ましく、重水素原子、または、それぞれ、炭素数が1~40である、アルキル基、アルキルオキシ基、もしくはアリールオキシ基であることがより好ましい。
また、R12およびR13は、重水素原子、または、それぞれ、炭素数が1~40である、アルキル基、シクロアルキル基、アルキルオキシ基、シクロアルキルオキシ基、アルケニル基、もしくはアリールオキシ基であることが好ましく、重水素原子、または、それぞれ、炭素数が1~40である、アルキル基、アルキルオキシ基、もしくはアリールオキシ基であることがより好ましい。
【0041】
R12およびR13は、互いに、単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して結合することで環を形成していてもよく、例えば、R12のb1が2である場合、ベンゼン環が縮環したカルバゾール誘導体のようなものであっても良い。
【0042】
前記一般式(1)において、a11、a12、およびb1は、以下の整数を示す。
a11およびa12は0,1,2または3である。
b1は0,1,2,3または4である。
a11、a12、およびb1が0のとき、一般式(1)に示される各環構造(ベンゼン環)に結合する置換基は、すべて水素原子であることを意味する。
本発明の高分子量化合物においては、合成上、a11、a12、およびb1が0であり、一般式(1)に示される各環構造(ベンゼン環、カルバゾール環)に結合する置換基が、すべて水素原子であることが最も好適である。また、一般式(1)に示される各環構造に結合する置換基の少なくとも1つが重水素原子であることも好適である。つまり、R11が重水素原子であり、a11が1~3であることも好適であり、R12が重水素原子であり、b1が1~4であることも好適あり、R13が重水素原子であり、a12が1~3であることも好適である。
【0043】
一般式(1)のカルバゾール構造単位が有する熱架橋基Qは、熱を加えることにより架橋する基(典型的には、炭化水素基)を有する1価の有機基である。有機EL素子等の有機層形成のための上記塗布法における熱架橋反応に好適な熱架橋基Qとして、例えば、ベンゾシクロブテニル基、アルケニル基(特に、ビニル基、ブタジエニル基、3,5ヘキサジエニル基)、(メタ)アクリレート基等を含むものが挙げられ、ベンゾシクロブテニル基(ベンゾシクロブテン環)を含むことが好ましい。これらの熱架橋基Qを用いることにより、熱架橋率を向上させることができる。
熱架橋基Qに含まれる上記基は、一般式(1)のカルバゾール環に直接結合してもよく、また、2価のアリール基を介してカルバゾール環に結合してもよく、例えば、置換若しくは無置換のフェニレニル基を介してカルバゾール環に結合することができる。
また、熱架橋基Qは、カルバゾール環の3位に結合していることが好ましく、特に、より良好な硬化性及び有機EL素子の更なる長寿命化の観点から、熱架橋基Qとして、ベンゾシクロブテニル基が、カルバゾール環の3位に直接結合していることがより好ましい。
熱架橋基Qの具体例としては、前記一般式(2a)~(2q)で示した。
【0044】
尚、前記一般式(2a)~(2q)において、波線は、一般式(1)のカルバゾール構造との結合点を示し、環から延びている先端がフリーの実線は、その先端がメチル基であることを示している。
【0045】
前記一般式(2a)~(2q)において、R21は、前記一般式(1)で示したR11、R12、およびR13と同様の基を示す。一般式(2p)、(2q)において、各ベンゼン環に結合する各R21は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。各ベンゼン環に結合する各R21は、互いに、単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して結合することで環を形成していてもよい。
【0046】
前記一般式(2)において、a2、b2は、以下の整数を示す。
a2は0,1,2または3である。
b2は0,1,2,3または4である。
a2、b2が0のとき、一般式(2)に示される各環構造(ベンゼン環)に結合する置換基は、すべて水素原子であることを意味する。
本発明の高分子量化合物においては、合成上、a2、b2が0であり、一般式(2a)~(2q)に示される各環構造(ベンゼン環)に結合する置換基が、すべて水素原子であることが最も好適である。また、一般式(2a)~(2q)に示される各環構造に結合する置換基の少なくとも1つが重水素原子であることも好適であり、つまり、R21が重水素原子であり、a2が1~3であり、b2が1~4であることも好適である。
【0047】
前記一般式(3)、(4)において、R31、R33、およびR41は、いずれも前記一般式(1)のR11、R12、およびR13で示したものと同じ定義である。また、一般式(3)おいて、各環構造(ベンゼン環)に結合する各置換基は同一でも異なっていてもよい。つまり、各R31および各R33は、それぞれ同一でも異なっていてもよい。各ベンゼン環に結合する各R31は、互いに、単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して結合することで環を形成していてもよい。また、各ベンゼン環に結合する各R33、は、互いに、単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子、または硫黄原子を介して結合することで環を形成していてもよい。
【0048】
前記一般式(3)~(4)において、a3、a4、b31、b32は、以下の整数を示す。
a3およびa4は、0,1,2または3である。
b31およびb32は、0,1,2,3または4である。
a3、a4、b31およびb32が0のとき、一般式(3)~(4)に示される各環構造に結合する置換基は、すべて水素原子であることを意味する。一般式(3)において、各b31は、同一でも、異なる値であってもよい。
本発明の高分子量化合物においては、合成上、a3、b31およびb32が0であり、一般式(3)に示される各環構造(ベンゼン環)に結合する置換基が、すべて水素原子であることが最も好適である。また、一般式(3)に示される各環構造に結合する置換基の少なくとも1つが重水素原子であることも好適である。つまり、R31が重水素原子であり、b31が1~4であることも好適であり、R33が重水素原子であり、a3が1~3であり、b32が1~4であることも好適である。
同様に、本発明の高分子量化合物においては、合成上、a4が0であり、一般式(4)に示される各環構造(ベンゼン環)に結合する置換基が、すべて水素原子であることが最も好適である。また、一般式(4)に示される各環構造に結合する置換基の少なくとも1つが重水素原子であることも好適であり、つまり、R41が重水素原子であり、a4が1~3であることも好適である。
【0049】
前記一般式(3)において、R32は炭素数が3~40である、アルキル基、シクロアルキル基、またはアルキルオキシ基を示す。
【0050】
かかるR32は、一般式(1)のR11、R12、およびR13のアルキル基、アルキルオキシ基、またはシクロアルキル基の例として示した基と同様の基があげられる。
【0051】
本発明の高分子量化合物においては、上記のR32は、溶解性を高めるため、炭素数3~40のアルキル基であることが好ましく、n-ヘキシル基、n-オクチル基であることが最も好適である。
【0052】
前記一般式(4)において、Xは、水素原子、アミノ基、1価のアリール基、または1価のヘテロアリール基を示す。
【0053】
かかるXにおいて、1価のアリール基、1価のヘテロアリール基の例としては、以下の基を例示することができる。
アリール基;
フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基等。
ヘテロアリール基;
ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、フリル基、ピロリル基、チエニル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、インデノカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、ナフチリジニル基、フェナントロリニル基、アクリジニル基、カルボリニル基等。
かかるXにおいて、アミノ基の例としては、上記1価のアリール基で置換されたジ置換アリールアミノ基であることが好ましく、以下の基を例示することができる。
ジフェニルアミノ基(フェニル基で置換されたジ置換アリールアミノ基)、フェニルナフチルアミノ基(フェニル基とナフチル基で置換されたジアリールアミノ基)、フェニルフルオレニルアミノ基(フェニル基とフルオレニル基で置換されたジ置換アミノ)等。
【0054】
また、上記のアミノ基、アリール基、またはヘテロアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換、または、一置換若しくは二置換であることが好ましい。置換基としては、重水素原子、シアノ基、ニトロ基などに加え、以下の基を挙げることができる。
ハロゲン原子、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子;
アルキル基、特に炭素数が1~8のもの、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、イソへキシル基、ネオへキシル基、n-ヘプチル基、イソへプチル基、ネオへプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、ネオオクチル基;
アルキルオキシ基、特に炭素数1~8のもの、例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、プロピルオキシ基;
アルケニル基、例えば、ビニル基、アリル基;
アリールオキシ基、例えば、フェニルオキシ基、トリルオキシ基;
アリール基、例えば、フェニル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、インデニル基、ピレニル基、ペリレニル基、フルオランテニル基、トリフェニレニル基;
ヘテロアリール基、例えば、ピリジル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、チエニル基、フリル基、ピロリル基、キノリル基、イソキノリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、インドリル基、カルバゾリル基、インデノカルバゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、キノキサリニル基、ベンゾイミダゾリル基、ピラゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、カルボリニル基;
アリールビニル基、例えば、スチリル基、ナフチルビニル基;
アシル基、例えば、アセチル基、ベンゾイル基。
【0055】
また、これらの置換基は、上記で例示した置換基をさらに有していてもよい。
さらに、これらの置換基は、それぞれ独立して存在していることが好ましいが、これらの置換基同士が、互いに、単結合、置換基を有していてもよいメチレン基、酸素原子または硫黄原子を介して結合することで、環を形成していてもよい。
【0056】
例えば、上記のアリール基やヘテロアリール基は、置換基としてフェニル基を有していてもよく、このフェニル基は、さらに置換基としてフェニル基を有していてもよい。即ち、アリール基を例に取ると、このアリール基は、ビフェニリル基、ターフェニリル基、トリフェニレニル基であってもよい。
【0057】
本発明において、上述した一般式(4)で表される連結構造単位Cが有する置換基Xの具体例を、
図13と
図14に、置換基1~48として示した。尚、
図13と
図14に示された化学式において、波線は、連結構造単位Cのベンゼン環への結合位置を示し、環から延びている先端がフリーの実線は、そのフリーの先端がメチル基であることを示している。置換基Xとして、好ましい具体例を示したが、本発明で用いられる置換基Xはこれらの置換基に限定されるものではない。
【0058】
前記一般式(4)において、Xが、水素原子、フェニル基、ビフェニリル基、ナフチル基、フェナントレニル基、カルバゾリル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、フルオレニル基、インデノカルバゾリル基、ジアザインデノフルオレニル基、インデノカルバゾリル基、インドロカルバゾリル基、トリフェニレニル基、スピロビフルオレニル基、ジフェニルアミノ基(フェニル基で置換されたジアリールアミノ基)、フェニルナフチルアミノ基(フェニル基とナフチル基で置換されたジアリールアミノ基)、フェニルフルオレニルアミノ基(フェニル基とフルオレニル基で置換されたジ置換アミノ)または、アクリジニル基であることが好ましい。また、Xが、水素原子、ジフェニルアミノ基、フェニル基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基、ジベンゾチエニル基、フェナントレニル基、フルオレニル基、カルバゾリル基、インデノカルバゾリル基、またはアクリジニル基であることがより好ましい。さらに、Xが、水素原子であることがさらに好ましい。
また、Xのアミノ基、アリール基、またはヘテロアリール基は、無置換、または、重水素原子、炭素数が1~8のアルキル基、もしくはアリール基に置換されていることが好ましく、無置換または、メチル基、tert-ブチル基、もしくはフェニル基で置換されていることがより好ましく、無置換であることがさらに好ましい。
【0059】
前記一般式(1)において、L1は、単結合または2価のアリール基を示し、mは1~2の整数を示す。
上記L1のアリール基は、Xのアリール基で例示したものと同様の基である。L1の2価のアリール基は、置換又は無置換であってもよい。L1は、単結合または置換若しくは無置換のフェニレニル基であることが好ましい。2価のアリール基が置換基を有する場合、一置換または二置換である好ましい。
【0060】
上記の2価のアリール基の置換基としては、上述のXが有していてもよい置換基と同様に、重水素原子、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルキルオキシ基、アルケニル基、アリールオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールビニル基、またはアシル基が挙げられる。
上記のアルキル基、アルキルオキシ基、アルケニル基、アリールオキシ基、アリール基、ヘテロアリール基、アリールビニル基、またはアシル基は、さらに置換基を有していてもよい。
L1の2価のアリール基は、無置換、または、アリール基もしくは炭素数が1~8のアルキル基で置換されていることが好ましく、無置換、または、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、もしくはメチル基で置換されていることがより好ましく、無置換であることがさらに好ましい。
【0061】
前記一般式(3)において、L3は、一般式(1)におけるL1と同じ定義であり、nは1~3の整数を示す。L3の2価のアリール基は、置換または無置換であってもよい。L3は、単結合または置換若しくは無置換のフェニレニル基であることが好ましい。
L3の2価のアリール基は、無置換、または、アリール基もしくは炭素数が1~8のアルキル基で置換されていることが好ましく、無置換、または、フェニル基、ナフチル基、フェナントレニル基、もしくはメチル基で置換されていることがより好ましく、無置換であることがさらに好ましい。
【0062】
<高分子量化合物>
上述した一般式(1)で表されるカルバゾール構造単位を含む本発明の高分子量化合物では、GPCで測定したポリスチレン換算での重量平均分子量は10,000以上1,000,000未満であり、より好ましくは10,000以上500,000未満、さらに好ましくは10,000以上300,000未満の範囲である。当該範囲とすることで溶解性及び粘度特性に優れる。
【0063】
また、本発明の高分子量化合物は、例えばコーティングにより有機EL素子中の有機層の形成に適用した場合の塗布性や他の層との密着性、耐久性を確保するために、他の構造単位との共重合体であることが好ましい。このような他の構造単位としては、溶解性を高めるための一般式(3)で表される構造単位Bや、一般式(4)で表される連結構造単位Cがある。上記一般式(5)、(6)で用いられる、R11、R31、R32、R41、Q、L1、L3、a11、a12、a2~a4、b1、b2、b31およびb32は、一般式(1)~(4)と同じものを意味する。
【0064】
本発明において、構造単位Bと構造単位Cからなる一般式(5)で表される繰り返し構造単位Iが、構造単位Aと共にさらに含まれる高分子量化合物が好ましい態様である。また、上記繰り返し構造単位Iおよび、構造単位Aと構造単位Cからなる繰り返し構造単位IIを含む高分子量化合物A、あるいは、繰り返し構造単位Iおよび、構造単位Aと構造単位Bからなる繰り返し構造単位IIIを含む高分子量化合物が好ましい態様であり、さらに好ましくは、繰り返し構造単位Iおよび繰り返し構造単位IIを含む高分子量化合物Aが好ましい態様としてあげられるが、これらに限定されない。
また、上記のような、2つ以上の繰り返し単位を有する高分子量化合物において、2つ以上の構造単位A、B、Cが含まれる場合、各一般式(1)、(3)、(4)中のR11、R31、R32、R41、Q、L1、L3、a11、a12、a2~a4、b1、b2、b31およびb32は、繰り返し単位ごとに、異なっていてもよい。
【0065】
本発明の高分子量化合物において、一般式(1)で表されるカルバゾール構造単位を構造単位A、一般式(3)で表されるトリアリールアミン構造単位を構造単位B、一般式(4)で表される連結構造単位を構造単位Cで表したとき、構造単位Aを1~20モル%の量で含んでいることが好ましく、このような量で構造単位Aを含んでいることを条件として、構造単位Bを1モル%以上、特に20~70モル%の量で含み、さらには、構造単位Cを1モル%以上、特に30~70モル%の量で含んでいることが好ましく、このような条件を満足するように構造単位A、B及びCを含む高分子量化合物であることが、有機EL素子の有機層を形成する上で最も好適である。
【0066】
このような本発明の高分子量化合物は、スズキ重合反応やHARTWIG-BUCHWALD重合反応により、それぞれC-C結合或いはC-N結合を形成して各構造単位を連鎖することにより合成される。即ち、各構造単位を有する単位化合物を用意し、この単位化合物を適宜ホウ酸エステル化或いはハロゲン化し、適宜の触媒を使用して重縮合反応することにより、本発明の高分子量化合物を合成することができる。
【0067】
例えば、一般式(1)で表される構造単位Aを5モル%、一般式(3)で表される構造単位Bを45モル%、一般式(4)で表される構造単位Cを50モル%で含む共重合体は下記に示す一般式(7)で表される。
【0068】
【0069】
但し、構造単位Aと構造単位Bを導入するための中間体がホウ酸エステル化体であり、これに対し、構造単位Cを導入するための中間体がハロゲン化体であることが好ましい。または、構造単位Aと構造単位Bを導入するための中間体がハロゲン化体であり、これに対し、構造単位Cを導入するための中間体がホウ酸エステル化体であることが好ましい。つまり、ハロゲン化体とホウ酸エステル化体のモル比率は等しいことが好ましい。
【0070】
上述した本発明の高分子量化合物は、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族系有機溶媒に溶解させて塗布液を調製し、この塗布液を所定の基材上にコーティングし、加熱乾燥することにより、正孔注入性、正孔輸送性、電子阻止性などの特性に優れた薄膜を形成することができる。かかる薄膜は耐熱性も良好であり、さらには他の層との密着性も良好である。
【0071】
例えば、上記高分子量化合物は、有機EL素子の正孔注入層および/または正孔輸送層の構成材料として使用することができる。このような高分子量化合物により形成された正孔注入層或いは正孔輸送層は、従来の材料で形成されたものに比して、正孔の注入性が高く、移動度が大きく、電子阻止性が高く、発光層内で生成した励起子を閉じ込めることができ、さらに正孔と電子が再結合する確率を向上させ、高発光効率を得ることができると共に、駆動電圧が低下して、有機EL素子の耐久性が向上するという利点を実現できる。
【0072】
また、上記のような電気特性を有する本発明の高分子量化合物は、従来の材料よりもワイドギャップであり、励起子の閉じ込めに有効なため、当然、電子阻止層にも好適に使用することができる。
【0073】
<有機EL素子>
上述した本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子は、例えば
図15に示す構造を有している。即ち、ガラス基板1(透明樹脂基板など、透明基板であればよい)の上に、透明陽極2、正孔注入層3、正孔輸送層4、電子阻止層5、発光層6、電子輸送層7及び陰極8が設けられている。
【0074】
勿論、本発明の高分子量化合物が適用される有機EL素子は、上記の層構造に限定されるものではなく、発光層6と電子輸送層7との間に正孔阻止層を設けることができ、さらには、陰極8と電子輸送層7の間に電子注入層を設けることもできる。さらに、いくつかの層を省略することもできる。例えば、基板1上に、陽極2、正孔輸送層4、発光層6
、電子輸送層7及び陰極8を設けたシンプルな層構造とすることもできる。また、同一の機能を有する層を重ねた2層構造とすることも可能である。
【0075】
本発明の高分子量化合物は、その正孔注入性や正孔輸送性などの特性を活かして、上記の陽極2と陰極8との間に設けられる有機層(例えば、正孔注入層3、正孔輸送層4、或いは電子阻止層5)の形成材料として好適に使用される。
【0076】
上記の有機EL素子において、透明陽極2は、それ自体公知の電極材料で形成されていてよく、ITOや金のような仕事関数の大きな電極材料を基板1(ガラス基板等の透明基板)の上に蒸着することにより形成される。
【0077】
また、透明陽極2上に設けられている正孔注入層3は、本発明の高分子量化合物を、例えばトルエン、キシレン、アニソールなどの芳香族系有機溶媒に溶解させた塗布液を用いて形成することができる。即ち、この塗布液を、スピンコート、インクジェットなどにより、透明陽極2上にコーティングすることにより、正孔注入層3を形成することができる。
【0078】
また、本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子において、上記の正孔注入層3は本発明の高分子量化合物を用いずに、従来公知の材料、例えば以下の材料を用いて形成することもできる。
銅フタロシアニンに代表されるポルフィリン化合物;
スターバースト型のトリフェニルアミン誘導体;
単結合またはヘテロ原子を含まない2価基で連結した構造を有するアリールアミン(例えば、トリフェニルアミン3量体及び4量体);
ヘキサシアノアザトリフェニレンのようなアクセプター性の複素環化合物;
塗布型の高分子材料、例えばポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)(PEDO
T)、ポリ(スチレンスルフォネート)(PSS)等。
【0079】
このような材料を用いての層(薄膜)の形成は、蒸着法や、スピンコート法やインクジェット法などによるコーティングにより成膜することができる。これらは、他の層についても同様であり、膜形成材料の種類に応じて、蒸着法やコーティング法により成膜が行われる。
【0080】
上記の正孔注入層3の上に設けられている正孔輸送層4も、正孔注入層3と同様、本発明の高分子量化合物を用いてのスピンコートやインクジェットなどによるコーティングによって形成することができる。
【0081】
また、本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子において、従来公知の正孔輸送材料を用いて正孔輸送層4を形成することもできる。このような正孔輸送材料として代表的なものは、次のとおりである。
ベンジジン誘導体、例えば、
N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(m-トリル)ベンジジン
(以下、TPDと略す);
N,N'-ジフェニル-N,N'-ジ(α-ナフチル)ベンジジン
(以下、NPDと略す);
N,N,N',N'-テトラビフェニリルベンジジン;
アミン系誘導体、例えば、
1,1-ビス[4-(ジ-4-トリルアミノ)フェニル]シクロヘキサン
(以下、TAPCと略す);
種々のトリフェニルアミン3量体および4量体;
正孔注入層用としても使用される塗布型高分子材料;
【0082】
上述した正孔輸送層の化合物は、本発明の高分子量化合物を含め、それぞれ単独で成膜してもよいが、2種以上混合して成膜することもできる。また、上記化合物の1種または複数種を用いて複数の層を形成し、このような層が積層された多層膜を正孔輸送層とすることもできる。
【0083】
また、
図15に示す本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子において、正孔注入層3と正孔輸送層4とを兼ねた層とすることもでき、このような正孔注入・輸送層は、PEDOTなどの高分子材料を用いてコーティングにより形成することができる。
【0084】
尚、正孔輸送層4(正孔注入層3も同様)において、該層に通常使用される材料に対し、さらにトリスブロモフェニルアミンヘキサクロルアンチモンやラジアレン誘導体(例えば、WO2014/009310参照)などをPドーピングしたものを使用することができる。また、TPD基本骨格を有する高分子化合物などを用いて正孔輸送層4(或いは正孔注入層3)を形成することができる。
【0085】
さらに、
図15に示すように、正孔輸送層と発光層との間に、電子阻止層を設けることができ、本発明の高分子量化合物を用いてスピンコートやインクジェットなどによるコーティングによって形成することができる。
【0086】
また、本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子において、電子阻止作用を有する公知の電子阻止性化合物、例えば、カルバゾール誘導体や、トリフェニルシリル基を有し且つトリアリールアミン構造を有する化合物などを用いて電子阻止層を形成することもできる。カルバゾール誘導体及びトリアリールアミン構造を有する化合物の具体例は、以下の通りである。
カルバゾール誘導体の例
4,4',4''-トリ(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン
(以下、TCTAと略す);
9,9-ビス[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]
フルオレン;
1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン
(以下、mCPと略す);
2,2-ビス(4-カルバゾール-9-イルフェニル)アダマンタン
(以下、Ad-Czと略す);
トリアリールアミン構造を有する化合物の例
9-[4-(カルバゾール-9-イル)フェニル]-9-[4-(トリフェニルシリル)フェニル]-9H-フルオレン;
【0087】
電子阻止層も、本発明の高分子量化合物を含め、それぞれ単独で成膜してもよいが、2種以上混合して成膜することもできる。また、上記化合物の1種または複数種を用いて複数の層を形成し、このような層が積層された多層膜を電子阻止層とすることもできる。
【0088】
本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子において、発光層6は、Alq3をはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体の他、亜鉛やベリリウム、アルミニウムなどの各種の金属錯体、アントラセン誘導体、ビススチリルベンゼン誘導体、ピレン誘導体、オキサゾール誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体などの発光材料を用いて形成することができる。
【0089】
また、発光層6をホスト材料とドーパント材料とで構成することもできる。この場合のホスト材料として、上記の発光材料に加え、チアゾール誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ポリジアルキルフルオレン誘導体などを使用することができる。ドーパント材料としては、キナクリドン、クマリン、ルブレン、ペリレンおよびそれらの誘導体、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、アミノスチリル誘導体などを用いることができる。
【0090】
このような発光層6も、各発光材料の1種或いは2種以上を用いた単層構成とすることもできるし、複数の層を積層した多層構造とすることもできる。
【0091】
さらに、発光材料として燐光発光材料を使用して発光層6を形成することもできる。燐光発光材料としては、イリジウムや白金などの金属錯体の燐光発光体を使用することができる。例えば、Ir(ppy)3などの緑色の燐光発光体、FIrpic、FIr6などの青色の燐光発光体、Btp2Ir(acac)などの赤色の燐光発光体などを用いることができ、これらの燐光発光材料は、正孔注入・輸送性のホスト材料や電子輸送性のホスト材料にドープして使用される。
【0092】
尚、燐光性の発光材料のホスト材料へのドープは濃度消光を避けるため、発光層全体に対して1~30重量パーセントの範囲で、共蒸着によってドープすることが好ましい。
【0093】
また、発光材料としてPIC-TRZ、CC2TA、PXZ-TRZ、4CzIPNなどのCDCB誘導体などの遅延蛍光を放射する材料を使用することも可能である。(Appl.Phys.Let.,98,083302(2011)、Chem.Comumm.,48,11392(2012)、Nature,492,234(2012)参照)。
【0094】
本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子において、正孔注入・輸送性のホスト材料としては、4,4'-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(以後、CBPと略称する)、TCTA、mCPなどのカルバゾール誘導体などを用いることもできる。
【0095】
また、本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子において、電子輸送性のホスト材料としては、p-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン(以後、UGH2と略称する)や2,2',2''-(1,3,5-フェニレン)-トリス(1-フェニル-1H-ベンズイミダゾール)(以後、TPBIと略称する)などを用いることができる。
【0096】
本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子において、発光層6と電子輸送層7との間に設ける正孔阻止層(
図9では示されていない)としては、それ自体公知の正孔阻止作用を有する化合物を用いて形成することができる。このような正孔阻止作用を有する公知化合物の例としては、以下のものをあげることができる。
バソクプロイン(以後、BCPと略称する)などのフェナントロリン誘導体;
アルミニウム(III)ビス(2-メチル-8-キノリナート)-4-フェニルフェノレート(以後、BAlqと略称する)などのキノリノール誘導体の金属錯体;
各種希土類錯体;
トリアゾール誘導体;
トリアジン誘導体;
オキサジアゾール誘導体。
【0097】
これらの材料は、以下に述べる電子輸送層7の形成にも使用することができ、さらには、正孔阻止層兼電子輸送層7として使用することもできる。
【0098】
このような正孔阻止層も、単層或いは多層の積層構造とすることができ、各層は、上述した正孔阻止作用を有する化合物の1種或いは2種以上を用いて成膜される。
【0099】
本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子において、電子輸送層7は、それ自体公知の電子輸送性の化合物、例えば、Alq3、BAlqをはじめとするキノリノール誘導体の金属錯体のほか、各種金属錯体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、トリアゾール誘導体、トリアジン誘導体、オキサジアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、カルボジイミド誘導体、キノキサリン誘導体、フェナントロリン誘導体、シロール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体などを用いて形成される。
【0100】
この電子輸送層7も、単層或いは多層の積層構造とすることができ、各層は、上述した電子輸送性化合物の1種或いは2種以上を用いて成膜される。
【0101】
さらに、本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子において、必要に応じて設けられる電子注入層(
図15では示されていない)も、それ自体公知のもの、例えば、フッ化リチウム、フッ化セシウムなどのアルカリ金属塩、フッ化マグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、酸化アルミニウムなどの金属酸化物、リチウムキノリンなどの有機金属錯体などを用いて形成することができる。
【0102】
本発明の高分子量化合物を用いて形成される有機層を備えた有機EL素子の陰極8としては、アルミニウムのような仕事関数の低い電極材料や、マグネシウム銀合金、マグネシウムインジウム合金、アルミニウムマグネシウム合金のような、より仕事関数の低い合金が電極材料として用いられる。
【0103】
以上に述べたように、本発明の高分子量化合物を用いて、正孔注入層、正孔輸送層、及び電子阻止層の少なくとも何れかの層を形成することにより、発光効率および電力効率が高く、実用駆動電圧が低く、発光開始電圧も低く、極めて優れた耐久性を有する有機EL素子が得られる。特に、この有機EL素子では、高い発光効率を有しながら、駆動電圧が低下し、電流耐性が改善されて、最大発光輝度が向上している。
【実施例0104】
以下、本発明を次の実験例により説明する。
尚、以下の説明において、本発明の高分子量化合物が有する一般式(1)で表されるカルバゾール構造単位を「構造単位A」、一般式(3)で表されるトリアリールアミン構造単位を「構造単位B」、一般式(4)で表される連結構造単位を「構造単位C」として示した。
【0105】
また、合成された化合物の精製は、カラムクロマトグラフによる精製、溶媒による晶析法によって行った。化合物の同定は、NMR分析によって行った。
【0106】
本発明の高分子量化合物を製造するために、以下の中間体1~4を合成した。
【0107】
【0108】
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
N,N-ビス(4-ブロモフェニル)-9,9-ジ-n-オクチル-9H-フルオレ
ン-2-アミン:16.7g
ビス(ピナコラト)ジボロン:11.9g
酢酸カリウム:5.7g
1,4-ジオキサン:170ml
次いで、{1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン}パラジウム(II)ジクロリドのジクロロメタン付加物0.19gを加えて加熱し、100℃で7時間撹拌した。室温まで冷却した後、水とトルエンを加え、分液操作を行うことによって有機層を採取した。この有機層を無水硫酸マグネシウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をカラムクロマトグラフ(酢酸エチル/n-ヘキサン=1/20)で精製することによって中間体1の白色粉体7.6g(収率40%)を得た。
【0109】
【0110】
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)カルバゾール:5.3g
4-ブロモベンゾシクロブテン:3.5g
炭酸カリウム:3.4g
水:10ml
1,4-ジオキサン:30ml
次いで、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム0.4gを加えて加熱し、84℃で3時間撹拌した。室温まで冷却した後、水とトルエンを加え、分液操作を行うことによって有機層を採取した。この有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をトルエンにより再結晶することによって、中間体2の類白色粉体3.5g(収率71%)を得た。
【0111】
【0112】
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、110℃で5時間撹拌した。
中間体2:3.5g
1,3-ジブロモ-5-フルオロベンゼン:6.6g
炭酸セシウム:6.3g
ジメチルスルホシキド:28ml
室温まで冷却した後、メタノールを加えてろ過し、粗製物を得た。粗製物を酢酸エチルにより再結晶することによって、中間体3の類白色粉体4.1g(収率63%)を得た。
【0113】
【0114】
下記の成分を、窒素置換した反応容器に加え、30分間窒素ガスを通気した。
中間体3:4.1g
ビス(ピナコラト)ジボロン:4.3g
酢酸カリウム:2.4g
1,4-ジオキサン:30ml
次いで、{1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン}パラジウム(II)ジクロリドのジクロロメタン付加物67mgを加えて加熱し、90℃で5時間撹拌した。室温まで冷却した後、水とトルエンを加え、分液操作を行うことによって有機層を採取した。この有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗製物を得た。粗製物をトルエン/メタノール=1/1により晶析することによって、中間体4の白色粉体1.9g(収率38%)を得た。
次いで、酢酸パラジウム(II)を1.5mg、及びトリ-o-トリルホスフィン12.4mgを加えて加熱し、87℃で6時間撹拌した。この後、フェニルボロン酸を19mg加えて2時間撹拌し、次いでブロモベンゼン262mgを加えて2時間撹拌した。トルエン50ml、5wt%N,N-ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム水溶液50mlを加えて加熱し、還流下で2時間撹拌した。室温まで冷却した後、分液操作を行うことによって有機層を採取し、飽和食塩水で3回洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで脱水した後、減圧下で濃縮することによって粗ポリマーを得た。粗ポリマーをトルエンに溶解させ、シリカゲルを加えて吸着精製を行い、ろ過してシリカゲルを除去した。得られた濾液を減圧下で濃縮し、乾固物にトルエン100mlを加えて溶解させ、n-ヘキサン300ml中に滴下し、得られた沈殿物を濾取した。この操作を3回繰り返し、乾燥させることにより高分子量化合物Aを3.4g(収率72%)得た。
上記化学組成から理解されるようにこの高分子化合物Aは、一般式(1)で表される構造単位Aを5モル%含み、一般式(3)で表される構造単位Bを45モル%含み、一般式(4)で表される連結構造単位Cを50モル%の量で含有していた。