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特開2024-127904情報表示システムおよび情報表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127904
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】情報表示システムおよび情報表示方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 19/00 20110101AFI20240912BHJP
   G06F 3/04815 20220101ALI20240912BHJP
【FI】
G06T19/00 600
G06F3/04815
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024105448
(22)【出願日】2024-06-28
(62)【分割の表示】P 2023035419の分割
【原出願日】2023-03-08
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】520283510
【氏名又は名称】南国アールスタジオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小林 礼
(72)【発明者】
【氏名】影嶋 宏一
(72)【発明者】
【氏名】山本 新吾
(72)【発明者】
【氏名】秦 勝敏
(72)【発明者】
【氏名】村上 正樹
【テーマコード(参考)】
5B050
5E555
【Fターム(参考)】
5B050BA09
5B050CA07
5B050DA04
5B050EA07
5B050EA13
5B050EA19
5B050FA05
5B050FA14
5E555AA27
5E555BA01
5E555BA90
5E555BB01
5E555BB40
5E555BC01
5E555BE17
5E555CA06
5E555CA41
5E555CA42
5E555CA44
5E555CA45
5E555CB01
5E555CC05
5E555DB53
5E555DC43
5E555DD06
5E555EA14
5E555EA22
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】大量の学習データを必要とすることなく、現実空間において撮影された画像に仮想空間における物体とを重ね合わせて表示することができる情報表示システムおよび情報表示方法を提供する。
【解決手段】情報表示システムは、カメラ、GPSモジュール、高度センサを備えるドローンと、プロポと、コンピュータとを含む。コンピュータの情報演算部は、ドローンから各情報を取得する情報取得部と、情報取得部が取得した現実空間における位置情報、方向情報および範囲情報を、仮想空間内における位置情報、方向情報および範囲情報に変換して、仮想空間においてカメラが撮影する場合に撮影することとなる仮想物体の画像を生成し、生成した仮想物体の画像を現実画像に重ね合わせてディスプレイに表示する、表示制御部と、を備える。表示制御部は、現実空間において選択された基準位置と仮想空間における原点を一致させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体、前記本体に可動に取り付けられ、画像を撮影する撮影装置、および前記撮影装置の位置を測定する位置測定装置、を備える飛翔体と、
前記飛翔体から、世界座標系によって定義される現実空間における前記撮影装置の位置情報、前記撮影装置の前記本体に対する方向情報、前記撮影装置が撮影する画像の範囲情報、および前記撮影装置が撮影した現実画像を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した前記現実空間における前記位置情報、前記方向情報および前記範囲情報を、仮想空間内における前記撮影装置の位置情報、方向情報および範囲情報に変換して、前記仮想空間において前記撮影装置が撮影する場合に撮影することとなる仮想物体の画像を生成し、生成した前記仮想物体の画像を前記現実画像に重ね合わせて表示する、表示制御部と、を備え、
前記表示制御部は、前記現実空間において選択された基準位置と前記仮想空間における原点を一致させる、
情報表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報表示システムおよび情報表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータを利用して建築物を設計し、建設および管理に利用することが行われている。コンピュータを利用して設計された建築物は、コンピュータ上で3次元(3D)データとして生成される。
【0003】
ドローンを含む無人航空機(UAV、Unmanned Aerial Vehicle)に搭載されたカメラに撮影される風景に建築物のデータを重ね合わせて表示することができれば、設計中の建築物が現実にあるかのようにユーザに仮想的な体験をさせることができる。
【0004】
しかし、建築物の3Dデータは直交座標系を用いて表現されるに対し、ドローンに搭載されるGPSモジュールは、世界座標系を用いて自機の位置を表現する。このため、カメラに撮影される風景に、コンピュータ上で設計された建築物の画像を重ね合わせるには、異なる座標系を対応付ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-087229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
対応付ける方法の一つである特許文献1に記載された技術は、ドローンの仮想空間における位置を画像から推定するものである。特許文献1に記載された技術は、機械学習により学習したモデルを用いて推定する。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載された技術は、機械学習を用いるため、仮想空間における位置を求めるには、大量の学習データが必要となるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑み、大量の学習データを必要とすることなく、現実空間において撮影された画像に仮想空間における物体とを重ね合わせて表示することができる情報表示システムおよび情報表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの観点に係る情報表示システムは、本体、本体に可動に取り付けられ、画像を撮影する撮影装置、および撮影装置の位置を測定する位置測定装置、を備える飛翔体と、飛翔体から、世界座標系によって定義される現実空間における撮影装置の位置情報、撮影装置の本体に対する方向情報、撮影装置が撮影する画像の範囲情報、および撮影装置が撮影した現実画像を取得する情報取得部と、情報取得部が取得した現実空間における位置情報、方向情報および範囲情報を、仮想空間内における撮影装置の位置情報、方向情報および範囲情報に変換して、仮想空間において撮影装置が撮影する場合に撮影することとなる仮想物体の画像を生成し、生成した仮想物体の画像を現実画像に重ね合わせて表示する、表示制御部と、を備え、表示制御部は、現実空間において選択された基準位置と仮想空間における原点を一致させる。
【0010】
仮想物体は、仮想空間において設計された2つ以上の建築物であり、表示制御部は、各建築物について、仮想画像を生成してもよい。
【0011】
基準位置は、飛翔体が飛翔を開始する位置であってもよい。
【0012】
仮想空間は、平面直交座標系によって定義されていてもよい。
【0013】
本発明の1つの観点に係る情報表示システムは、飛翔体に移動または旋回の方向を指示する操作に基づいて、移動または旋回の方向に対応する識別符号を計算する操作情報算出部を備え、表示制御部は、操作情報算出部によって計算された識別符号に基づいて、移動または旋回の方向に対応する図形を、現実画像に重ね合わせて表示してもよい。
【0014】
本発明の別の観点に係る情報表示方法は、本体、本体に可動に取り付けられ、画像を撮影する撮影装置、および撮影装置の位置を測定する位置測定装置、を備える飛翔体から、世界座標系によって定義される現実空間における撮影装置の位置情報、撮影装置の本体に対する方向情報、撮影装置が撮影する画像の範囲情報、および撮影装置が撮影した現実画像を取得する情報取得ステップと、情報取得ステップにおいて取得した現実空間における位置情報、方向情報および範囲情報を、仮想空間内における撮影装置の位置情報、方向情報および範囲情報に変換して、仮想空間において撮影装置が撮影する場合に撮影することとなる仮想物体の画像を生成し、生成した仮想物体の画像を現実画像に重ね合わせて表示する、表示制御ステップと、現実空間において選択された基準位置と仮想空間における原点を一致させる対応付けステップと、を含み、対応付けステップは、情報取得ステップが実行される前に実行される。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る情報表示システムおよび情報表示方法によれば、大量の学習データを必要とすることなく、現実空間において撮影された画像に仮想空間における物体とを重ね合わせて表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る情報表示システムの概要を示す図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る情報表示システムの機能を実現するコンピュータの一例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施の形態に係る情報表示システムの機能ブロック図である。
図4】本発明の第1の実施の形態に係る情報表示システムにおいて用いられるデータ構造の例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る情報表示システムの動作の例を説明するフローチャートである。
図6】本発明の第1の実施の形態に係る情報表示システムの動作の例を説明する別のフローチャートである。
図7】本発明の第1の実施の形態に係る情報表示システムにおける異なる座標系の関係を説明する図である。
図8】本発明の第1の実施の形態に係る情報表示システムの動作の例を説明する別のフローチャートである。
図9】本発明の第1の実施の形態に係る情報表示システムに含まれるディスプレイに表示される画像の例を示す図である。
図10】本発明の第2の実施の形態に係る情報表示システムの機能ブロック図である。
図11】本発明の第2の実施の形態に係る情報表示システムにおいて用いられるデータ構造の例を示す図である。
図12】本発明の第2の実施の形態に係る情報表示システムに含まれるディスプレイに表示される画像の例を示す図である。
図13】本発明の第2の実施の形態に係る情報表示システムに含まれるディスプレイに表示される別の画像の例を示す図である。
図14】本発明の第2の実施の形態に係る情報表示システムに含まれるディスプレイに表示される別の画像の例を示す図である。
図15】本発明の第2の実施の形態に係る情報表示システムに含まれるディスプレイに表示される別の画像の例を示す図である。
図16】本発明の第2の実施の形態に係る情報表示システムに含まれるディスプレイに表示される別の画像の例を示す図である。
図17】本発明の第2の実施の形態に係る情報表示システムに含まれるディスプレイに表示される別の画像の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を、図面等を参照しながら説明する。
【0018】
(情報表示システム1)
図1に示す第1の実施の形態に係る情報表示システム1は、ドローン2、プロポ3およびコンピュータ4を含む。ドローン2の飛行は、ユーザがプロポ3を操作することによって制御される。コンピュータ4には、予め建築物の3Dデータが記憶されている。コンピュータ4は、建築予定地上空を飛行するドローン2の位置、向き等に応じて、3Dデータとして記憶されている建築物が建築予定地にあるかのような画像を生成する。
【0019】
(ドローン2)
ドローン2は、プロペラ、制御回路、電池などを搭載した本体21と、本体21に取り付けられたカメラ22と、通信機23と、GPS(Global Positioning System)モジュール24と、方向センサ25と、画角情報設定取得部26と、高度センサ27と、を備える。
【0020】
GPSモジュール24は、複数のGPS衛星が発する電波を受信し、これを比較することで、GPSモジュール24の位置に関する情報を出力する装置である。GPSモジュール24は、本体21の中央付近で、カメラ22に近い位置に配置されているため、以下、GPSモジュール24の位置をドローン2の位置またはカメラ22の位置ということがある。
【0021】
方向センサ25は、本体21およびカメラ22が向いている方向に関する情報を測定する装置である。方向センサ25は、例えば、電子コンパス、ジャイロセンサを含み、本体21が向いている方向、および本体21が向いている方向に対してカメラ22が向いている相対的な方向をそれぞれ測定することができる。
【0022】
画角情報設定取得部26は、カメラ22のズーム倍率、画角等を切り替える装置である。画角情報設定取得部26は、例えば、カメラ22のイメージセンサに接続されたデジタルズームの倍率を設定および取得する値を保持するレジスタである。ズームの倍率と画角が対応しているため、画角情報設定取得部26に設定する倍率の値によって、カメラ22の画角が切り替えられる。また、画角情報設定取得部26に設定された倍率の値を読み出すことで、カメラ22に設定されている画角を取得することができる。
【0023】
高度センサ27は、圧力センサを備え、気圧を測定して高度を出力する装置である。ドローン2は、飛翔体の一例である。
【0024】
(プロポ3)
プロポ3は、ドローン2と無線で接続され、相互に通信することにより、ドローン2に上昇、下降、右旋回、左旋回、前後左右への移動を指示して、ドローン2を操縦する装置である。
【0025】
プロポ3は、本体31と、本体31に配置され、操縦者が手で本体31を掴んで、左右の親指で押して倒すことができる左スティック32、右スティック33と、本体31に内蔵され、ドローン2および後述するコンピュータ4と通信する通信機34と、を備える。左スティック32は、本体31の左側に配置され、右スティック33は、本体31の右側に配置されている。
【0026】
通信機34は、ユーザが左スティック32、右スティック33を操作することにより、飛行するドローン2の高度、進行方向を変えたり、ドローン2を旋回させたり、カメラ22の向きを変えたりする信号を発する。通信機34は、例えば、ドローン2の通信機23と2.4GHz帯の帯域で通信を行う。
【0027】
また、通信機34は、ドローン2のカメラ22が撮影した画像を、通信機23を介して取得する。通信機34は、取得した画像を、後述するコンピュータ4に送信する。通信機34は、ドローン2のGPSモジュール24、方向センサ25、画角情報設定取得部26、高度センサ27が出力した情報を、通信機23を介して取得する。通信機34は、取得した情報を、後述するコンピュータ4に送信する。
【0028】
左スティック32、右スティック33を各方向に倒したり、押し込んだりした場合に通信機34が発する信号および通信機23がそれらの信号を検知してドローン2の飛行を制御する規則は、上述したものに限られない。
【0029】
(コンピュータ4)
コンピュータ4は、情報演算装置41と、ディスプレイ42と、通信機43と、を備える。情報演算装置41は、詳しくは後述するが、ドローン2から取得した各種の情報を処理して、処理した結果をディスプレイ42に表示する装置である。通信機43は、例えば、無線ネットワークインタフェースであり、プロポ3の通信機34と相互に通信することができる装置である。
【0030】
(情報演算装置41のハードウェア構成)
図2に情報演算装置41のハードウェア構成の一例を示す。情報演算装置41は、プロセッサ41a、主記憶部41b、通信部41c、補助記憶部41dおよびバス41eを備える。プロセッサ41aは、主記憶部41bまたは補助記憶部41dに記憶されているプログラムを実行して、後述する機能を実現する。
【0031】
(情報演算部5)
図3に、情報表示システム1の機能的構成を示す。情報演算部5は、各種情報をドローン2から取得する情報取得部51と、コンピュータ4のディスプレイ42に表示する情報を制御する表示制御部52と、を備える。
【0032】
位置情報測定部61、方向情報測定部62、画角情報測定部63、画像撮影部64および高度測定部65は、図1に示したGPSモジュール24、方向センサ25、画角情報設定取得部26、カメラ22および高度センサ27にそれぞれ対応する。位置情報測定部61は、ドローン2の位置を測定する機能を有する。方向情報測定部62は、ドローン2のカメラ22の撮影方向を測定する機能を有する。画角情報測定部63は、カメラ22によって撮影される画像の画角を測定する機能を有する。高度測定部65は、ドローン2の高度を測定する機能を有する。画像撮影部64は、画像を撮影する機能を有する。
【0033】
(情報取得部51)
情報取得部51は、位置情報測定部61、方向情報測定部62、画角情報測定部63および画像撮影部64と接続されている。以下、情報取得部51が取得する情報について説明する。情報取得部51がドローン2から取得する情報は、以下で説明するものに限られず、異なる情報または追加の情報が取得されてもよい。
【0034】
(データ構造)
情報取得部51が取得するカメラ22の位置に関する情報は、例えば、図4に示す位置データ1、2を含む。位置データ1、2は、より具体的には、緯度および経度を示す数値である。
【0035】
情報取得部51が取得するカメラ22の方向に関する情報は、例えば、図4に示す方向データ1~6を含む。方向データ1~3は、より具体的には、ドローン2の本体21の正面の向き3Dベクトルとして表した場合のx、y、z成分である。方向データ4~6は、より具体的には、ドローン2の本体21の正面の向きに対するカメラ22の正面の向きを3Dベクトルとして表した場合のx、y、z成分である。
【0036】
情報取得部51が取得するカメラ22の画角に関する情報は、例えば、図4に示す画角データ1、2を含む。画角データ1、2は、より具体的には、カメラ22が撮影する画像の水平方向と垂直方向の広がりをそれぞれ角度で表した数値である。
【0037】
情報取得部51が取得するカメラ22の画像は、例えば、図4に示す画素データ1~Nを含む。画素データ1~Nは、より具体的には、カメラ22が撮影する各画像の輝度を画像の走査の起点から終点まで並べたものである。
【0038】
(表示制御部52)
表示制御部52は、情報取得部51から取得した情報に基づいて、飛行しているドローン2のカメラ22が撮影している映像に、建築物の3Dデータを重ね合わせてAR表示をする制御を行う。以下、表示制御部52が行う制御について説明する。
【0039】
図5に示すように、表示制御部52が行うAR表示の処理は、大要、座標の対応付け(S100)と表示(S200)の2つのステップを含む。
【0040】
図6に、座標の対応付けステップ(図5:S100)の詳細を示す。まず、表示制御部52は、現実空間における基準位置および基準方向を決定する(S101)。ユーザは、例えば、ドローン2の電源を入れて、ドローン2がプロポ3を介してコンピュータ4と通信可能な状態になった後、コンピュータ4の入力装置を操作して、飛行を開始するドローン2の位置を選択する。また、ユーザは、例えば、プロポ3を操作するなどして、カメラ22の向きを任意の位置に変えた後、コンピュータ4の入力装置を操作して、操作時のドローン2のカメラの方向を選択する。情報取得部51は、ユーザによって選択された位置を位置情報測定部61から取得する。情報取得部51は、ユーザによって選択された方向を方向情報測定部62から取得する。表示制御部52は、情報取得部51が取得した位置および方向を、それぞれ基準位置および基準方向として決定する。
【0041】
なお、情報取得部51が基準位置および基準方向を決定する方法は上述したものに限られない。情報取得部51は、ユーザによる選択なしに、ドローン2が離陸したこと、ドローン2が無線でプロポ3と接続されたこと等のイベントを検知して、基準位置および基準方向として決定してもよい。
【0042】
次に、表示制御部52は、現実空間における座標と仮想空間における座標を対応付ける変換パラメータTPを求める(S102)。表示制御部52は、決定したドローン2の基準位置P(緯度と経度)を取得する。また、表示制御部52は、情報取得部51を介して方向情報測定部62からカメラ22の向きを示す3DベクトルD(dx、dy、dz)を取得する。
【0043】
より具体的には、図7に示すように、表示制御部52は、現実空間と仮想空間の間で位置、方向および尺度をそれぞれ対応させた変換パラメータTPを求める。現実空間における基準位置Pの緯度、経度は、仮想空間における原点O(0,0,0)に対応する。世界座標系から平面直交座標系への変換は、公知の変換式を用いることができる。変換した後にx座標とy座標がともに0となるよう、座標軸を平行移動してもよい。さらに、表示制御部52は、基準位置において高度測定部65が測定する高度が仮想空間における高度0となるよう、z軸を平行移動してもよい。現実空間における基準方向Dは、仮想空間におけるy方向に対応する。現実空間における単位距離(例えば1メートル)は、仮想空間における単位距離(例えば1メートル)に対応する。
【0044】
なお、表示制御部52が現実空間における基準位置に合わせる仮想空間の座標は、任意のオフセットを含んでいてもよい。同様に、表示制御部52が現実空間における基準方向に合わせる仮想空間の方向は、任意のオフセットを含んでいてもよい。
【0045】
以上の流れによって、図5に示した座標の対応付け(S100)が完了する。なお、基準位置Pの決定と基準方向Dの決定は、いずれか一方が他方の先に行われてもよく、同時に行われてもよい。
【0046】
図4に戻って、表示制御部52は、座標の対応付け(図6:S102)において求められた変換パラメータTPを利用して、AR表示を行う(S200)。
【0047】
以下、図8を参照して、ドローン2が撮影する画像に、コンピュータ4上で設計された3Dデータとしての建築物を重ね合わせてディスプレイ42に表示するAR表示の詳細を説明する。
【0048】
まず、情報取得部51は、位置情報測定部61から位置情報を取得する(S201)。位置情報は、例えば、図4に示した位置データ1(値36.0613)と位置データ2(値140.0516)である。
【0049】
情報取得部51は、方向情報測定部62から方向情報を取得する(S202)。方向情報は、例えば、図4に示した方向データ1(値0.7327)、方向データ2(値0.8523)、方向データ3(値-0.4291)、方向データ4(値0.9631)、方向データ5(値0.0448)、方向データ6(値-0.3737)である。
【0050】
情報取得部51は、画像撮影部64から範囲情報を取得する(S203)。範囲情報は、次のステップで取得される画像の水平画角と垂直画角を表すものであり、例えば、図4に示した画角データ1(値83.2192)、画角データ2(値46.3229)である。
【0051】
情報取得部51は、画像撮影部64から画像を取得する(S204)。画像は、例えば、図4に示した各画素データの値(輝度値32、輝度値29、…、輝度値215)である。なお、画素は、各画素の輝度値で表されてなくてもよく、赤、緑、青のチャネル別の輝度値を含んでいてもよく、色差情報を含んでいてもよい。画像は、圧縮され、符号化された情報であってもよい。
【0052】
表示制御部52は、建築物の背景画像を生成する(S205)。表示制御部52は、建築物の背景に表示する画像として、例えば、情報取得部51が画像撮影部64から取得した画像を、画像バッファに描画する。
【0053】
表示制御部52は、背景画像の上に建築物を描画する(S206)。表示制御部52は、ステップS102において求められた変換パラメータTPと、ステップS201~S203において取得した位置情報、方向情報および範囲情報から、仮想的なカメラVCが撮影する建築物の画像を生成する。例えば、表示制御部52は、現実空間におけるカメラの座標を、変換パラメータTPによって仮想空間における位置に変換する。また、表示制御部52は、ドローン2の正面の向きと、その正面の向きに対するカメラの向きによって表されている現実空間における相対的なカメラの方向を、現実空間におけるカメラの絶対的な方向に変換する。続いて、表示制御部52は、変換パラメータTPによって、現実空間におけるカメラの方向を仮想空間における方向に変換する。生成する建築物の画像の大きさは、仮想的なカメラVCの方向を中心として、水平方向に水平画角の範囲、垂直方向に垂直画角の範囲に仮想的なスクリーンがあるものとして求められる。そして、表示制御部52は、求めたカメラの方向およびスクリーンの大きさに対応する画像バッファに建築物の画像をレンダリングする。建築物が2つ以上である場合には、それぞれの建築物についてレンダリングを行う。
【0054】
S201からS206を実行することにより、現実空間において撮影されている背景画像の上に、建築物のデータが重ねられたAR画像を表示することができる。
【0055】
なお、ステップS206に続けて、表示制御部52は、画像バッファに現実空間における位置情報、変換パラメータTP、変換パラメータTPによって変換された後の仮想空間における位置情報等をディスプレイに重ねて表示してもよい。
【0056】
(AR表示のイメージ)
図9は、カメラ22が撮影した画像BGに2つの建築物VBを重ね合わせて表示した画像EIの一例である。画像BGの上に建築物VBが表示されているため、画像BGの一部が建築物VBに隠れたように見え、自然な画像として認識される。また、図示した例においては、現実空間における位置情報(緯度、経度)、変換パラメータTPによって変換された後の仮想空間における位置情報(x座標、y座標、z座標)を文字および数字で示す領域SDが重ねて表示されている。画像BG、建築物VBに領域SDを重ねて表示することにより、ユーザは、基準位置および基準方向を選択する際の手がかりが得られ、現実空間における座標と仮想空間における座標の対応付けの修正を直感的に行うことができる。
【0057】
以上説明したように、情報表示システム1は、機械学習を用いたものではないため、大量の学習データを必要としない。
【0058】
また、ユーザによって選択され、表示制御部52によって決定された基準位置および基準方向と仮想空間における原点Oが対応付けられるため、情報表示システム1のユーザが現地の測量、方位の測定等を行う必要はない。このため、情報表示システム1によれば、現実空間における座標と仮想空間における座標の対応付けに複雑な操作は必要とされず、直感的に行うことができる。
【0059】
以上のようにして、1フレーム分のAR表示が完了する。これを、カメラ22が新しい画像を撮影する度に、または所定のフレームレート分の時間が経過する度に、繰り返す。
【0060】
カメラ22が撮影している画像が表示されるため、あたかもドローン2が仮想空間を飛行し、建築物が存在するかのような映像を映し出すことができる。
【0061】
GPS情報は位置情報の一例であり、これに限られない。情報表示システム1は、GPSモジュール24の代わりにGPS情報以外のGNSS情報を測定するGNSSモジュールを備えていてもよい。
【0062】
(第2の実施の形態)
情報表示システム1は、仮想空間における物体、現実空間において撮影された画像および情報取得部51が取得した各種情報を表示するシステムである。これに対し、図10に機能的構成を示す情報表示システム7は、仮想空間における物体、現実空間において撮影された画像に加えて、ドローン2の操作に関する情報を表示するシステムである。以下、図10図11および図1を参照して、情報表示システム1と異なる部分について説明する。
【0063】
情報表示システム7の情報演算部8は、情報取得部51、表示制御部52に加え、図1に示したプロポ3から入力され、ドローン2を操作する情報に関する情報を計算する操作情報算出部81と、を備える。
【0064】
(データ構造)
操作情報算出部81が計算するドローン2に対する操作に関する情報は、例えば、図11に示す操作データ1~3を含む。操作データ1~3はそれぞれ、より具体的には、旋回操作の方向を示す識別符号(ID)、平行移動操作の方向を示すID、上昇下降操作の方向を示すIDである。
【0065】
操作データ1は、例えば、本体21の正面方向に対する平行移動の操作が行われていない場合に値「0」、前後方向または左右方向の平行移動の操作が行われている場合に以下の「1」~「4」のいずれかの値となるデータである。例えば、図1に示したプロポ3の左スティック32が上方向に倒された場合に、操作情報算出部81は、操作データ1として値「1」を計算する。左スティック32が下方向に倒された場合に、操作情報算出部81は、操作データ1として値「2」を計算する。右スティック33が左方向に倒された場合に、操作情報算出部81は、操作データ1として値「3」を計算する。右スティック33が右方向に倒された場合に、操作情報算出部81は、操作データ1として値「4」を計算する。
【0066】
図12図15にそれぞれ示すように、前後左右の各方向に平行移動の操作が行われた場合に、操作情報算出部81によって各方向に対応して計算された値に応じて、表示制御部52は、画像BGおよび建築物VBに重ねて各方向を示す矢印OAを表示する。
【0067】
操作データ2は、例えば、旋回操作が行われていない場合に値「0」、左(反時計回り)旋回操作が行われている場合に値「1」、右(時計回り)旋回操作が行われている場合に値「2」となるデータである。例えば、左スティック32が左方向に倒された場合に、操作情報算出部81は、操作データ2として値「1」を計算する。左スティック32が右方向に倒された場合に、操作情報算出部81は、操作データ2として値「2」を計算する。
【0068】
図16、17にそれぞれ示すように、左右の各方向に旋回移動の操作が行われた場合に、操作情報算出部81によって各方向に対応して計算された値に応じて、表示制御部52は、画像BGおよび建築物VBに重ねて各方向を示す矢印OAを表示する。
【0069】
操作データ3は、例えば、上昇下降操作が行われていない場合に値「0」、上昇操作が行われている場合に値「1」、下降操作が行われている場合に値「2」となるデータである。例えば、右スティック33が上方向に倒された場合に、操作情報算出部81は、操作データ3として値「1」を計算する。右スティック33が下方向に倒された場合に、操作情報算出部81は、操作データ3として値「2」を計算する。
【0070】
上下の各方向に上昇下降操作が行われた場合に、操作情報算出部81によって各方向に対応して計算された値に応じて、表示制御部52は、図14図15に示した矢印OAを、それぞれ上向きまたは下向きにして、画像BGおよび建築物VBに重ねて表示する。
【0071】
操作データ1~3のうち2つ以上のデータの値が「0」以外の値である場合、表示制御部52は、対応する複数の矢印を重ねて表示してもよく、その複数の矢印を合体させた別の矢印を表示してもよい。例えば、操縦者がドローン2を上昇させながら前方に移動させるため左スティック32と右スティック33をともに上方向に倒した場合、操作情報算出部81は、図11に示した操作データ1~3を計算する。表示制御部52は、操作データ1~3に応じて、図12に示した奥向きの矢印OAと図18に示した上向きの矢印OAを重ねて表示してもよく、これらの矢印OAを並べて表示してもよい。また、表示制御部52は、例えば、前方向の平行移動操作と上昇操作を合わせた操作を示す、図12に示した矢印OAの先端を画面の手前側に起こした形状の矢印OAを表示してもよい。
【0072】
ドローン2から取得された情報に加えて、プロポ3から取得した情報に基づいて計算された図形を表示することにより、ドローン2の操縦者にとって操縦しやすくなり、より容易に建築物の見たい部分に接近することができる。
【0073】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0074】
1、7 情報表示システム
2 ドローン
21 本体
22 カメラ
23 通信機
24 GPSモジュール
25 方向センサ
26 画角情報設定取得部
27 高度センサ
3 プロポ
31 本体
32 左スティック
33 右スティック
34 通信機
4 コンピュータ
41 情報演算装置
42 ディスプレイ
43 通信機
5、8 情報演算部
51 情報取得部
52 表示制御部
61 位置情報測定部
62 方向情報測定部
63 画角情報測定部
64 画像撮影部
65 高度測定部
81 操作情報算出部
図1
図2
図3
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