(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127936
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】光学フィルム、偏光板、画像表示装置及び光学フィルムの選定方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240912BHJP
G02B 1/11 20150101ALI20240912BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20240912BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/11
B32B7/023
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107201
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2021551350の分割
【原出願日】2020-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2019181043
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保田 翔生
(72)【発明者】
【氏名】田中 佳子
(72)【発明者】
【氏名】石井 憲雄
(72)【発明者】
【氏名】黒田 剛志
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 裕章
(72)【発明者】
【氏名】牛山 章伸
(57)【要約】
【課題】面内位相差を高くすることなく、裸眼で視認した際の虹ムラを抑制し得る、光学フィルムを提供する。
【解決手段】プラスチックフィルム上に低屈折率層を有し、前記プラスチックフィルムは、面内位相差が2500nm以下の二軸延伸プラスチックフィルムであり、前記低屈折率層が最表面に位置してなる光学フィルムであって、前記光学フィルムと偏光子と面光源とを含む積層体1を特定条件下で測定したL*値、a*値及びb*値と、前記偏光子と前記面光源とを含む積層体2を特定条件下で測定したL*値、a*値及びb*値との差分から算出したΔEabが、特定の条件を満たす領域を有する、光学フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する光学フィルムであって、
前記プラスチックフィルムは、面内位相差が2500nm以下の二軸延伸プラスチックフィルムであり、
前記低屈折率層は前記光学フィルムの最表面に位置し、
ΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満である下領域を有する、光学フィルム。
ここで、積層体1について、測定1を実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。積層体2について、測定2を実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。測定1と測定2との結果に基づいて、条件1によりΔEabを算出する。
<測定1>
面光源上に、偏光子及び前記光学フィルムをこの順に積層してなる積層体1を作製する。前記積層体1において、前記光学フィルムは前記低屈折率層側の面が前記偏光子とは反対側を向くように配置する。また、前記偏光子は、偏光子の吸収軸と、前記面光源の左右方向又は上下方向との成す角が±5度以内となるように配置する。さらに、前記偏光子の吸収軸と、前記光学フィルムの前記二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内となるように配置する。
前記積層体1の面光源を白表示し、前記積層体1の前記低屈折率層側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内の任意の1mm2以上10mm2以下の領域とする。
<測定2>
前記測定1と同一の面光源上に、偏光子を積層してなる積層体2を作製する。また、前記面光源に対する前記偏光子の吸収軸の方向は、前記測定1と同じ方向となるように配置する。
前記積層体2の面光源を白表示し、前記積層体2の前記偏光子側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内において測定1と略一致させる。
<条件1>
全ての仰角及び全ての方位角において、測定1のL*値から測定2のL*値を引いたΔL*を算出する。ΔL*の最大値から最小値までを所定の諧調でグレースケール化し、仰角を同心円、方位角を縦横で表した2次元座標にグレースケールで表示する。
2次元座標内においてΔL*が同心円状に分布する領域が2箇所存在すること、及び前記2箇所の領域が2次元座標の略対称位置にあることを確認する。
ΔL*が同心円状に分布する領域の中心に位置する仰角に関して、一方の仰角をα度、他方の仰角をβ度とする。
仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定1のL*値、a*値及びb*値と、仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定2のL*値、a*値及びb*値との差分から、各方位角におけるΔEabを算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光学フィルム、偏光板、画像表示装置及び光学フィルムの選定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置等の光学部材には、種々の光学用のプラスチックフィルムが用いられる場合が多い。例えば、表示素子上に偏光板を有する画像表示装置には、偏光板を構成する偏光子を保護するためのプラスチックフィルムが用いられている。
【0003】
偏光子保護フィルム等として使用される画像表示装置用のプラスチックフィルムは、機械的強度が優れるものが好ましい。このため、画像表示装置用のプラスチックフィルムとしては、延伸プラスチックフィルムが好ましく用いられている。
【0004】
偏光子上に延伸プラスチックフィルムを配置する場合、偏光子を通過した直線偏光の偏光状態を延伸プラスチックフィルムが乱すことを原因として、虹模様のムラ(rainbow pattern unevenness)が観察されるという問題がある。かかる問題を解決するため、特許文献1~3等の技術が提案されている。以下、本明細書において、「虹模様のムラ(rainbow pattern unevenness)」のことを「虹ムラ(rainbow unevenness)」と称する場合がある。
【0005】
特許文献1には、画像表示装置の光源を特定の白色光源とすること、延伸プラスチックフィルムの面内位相差(リタデーション)を3000nm以上30000nm以下と高くすること、及び、偏光子の吸収軸と延伸プラスチックフィルムの遅相軸とを略45度で配置することにより、偏光サングラスを介して画像を視認した際の虹ムラを解消し得る液晶表示装置が示されている。
しかし、特許文献1の手段は、面内位相差の大きい延伸プラスチックフィルムを用いる必要がある。そして、面内位相差の大きい延伸プラスチックフィルムは、通常は一軸延伸であるため、延伸方向に裂けやすい等の問題がある。
【0006】
特許文献2には、ブリュースター角での反射率が特定範囲の偏光板保護フィルムが開示されている。特許文献3には、入射角50度でのP波の反射率と、S波の反射率との差が20%以下である偏光板保護フィルムが開示されている。
特許文献2及び3の偏光板保護フィルムは、画像表示装置の内部から視認者側に向かう光の偏光成分であるP波とS波との反射率差を小さくすることにより、特許文献1のようにフィルムの面内位相差を大きくすることなく、目視での虹ムラ解消を狙ったものである。
【0007】
二軸延伸プラスチックフィルムは、一般的に、フィルムを構成するプラスチックを溶融押し出ししてなるキャスティングフィルムを得た後、キャスティングフィルムを流れ方向及び幅方向に延伸することにより得られる。この際、いわゆるボーイング現象によって、幅方向の取り位置によって配向角が異なることが知られている。
一般的に、二軸延伸プラスチックフィルムの幅方向の真ん中付近は光学性能が安定しているといわれているが、特許文献2及び3の偏光板保護フィルムは、真ん中付近から取得した二軸延伸プラスチックフィルムを用いても、虹ムラを解消できない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2011-107198号公報
【特許文献2】特開2009-14886号公報
【特許文献3】特開2010-204630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、面内位相差を高くすることなく、裸眼で視認した際の虹ムラを抑制し得る、光学フィルム、並びに、前記光学フィルムを用いた偏光板及び画像表示装置を提供することを課題とする。また、本開示は、面内位相差を高くすることなく、裸眼で視認した際の虹ムラを抑制し得る、光学フィルムの選定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する光学フィルムであって、
前記プラスチックフィルムは、面内位相差が2500nm以下の二軸延伸プラスチックフィルムであり、
前記低屈折率層は前記光学フィルムの最表面に位置し、
ΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満である領域を有する、光学フィルム。
ここで、積層体1について、測定1を実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。積層体2について、測定2を実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。測定1と測定2との結果に基づいて、条件1によりΔEabを算出する。
<測定1>
面光源上に、偏光子及び前記光学フィルムをこの順に積層してなる積層体1を作製する。前記積層体1において、前記光学フィルムは前記低屈折率層側の面が前記偏光子とは反対側を向くように配置する。また、前記偏光子は、偏光子の吸収軸と、前記面光源の左右方向又は上下方向との成す角が±5度以内となるように配置する。さらに、前記偏光子の吸収軸と、前記光学フィルムの前記二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内となるように配置する。
前記積層体1の面光源を白表示し、前記積層体1の前記低屈折率層側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内の任意の1mm2以上10mm2以下の領域とする。
<測定2>
前記測定1と同一の面光源上に、偏光子を積層してなる積層体2を作製する。また、前記面光源に対する前記偏光子の吸収軸の方向は、前記測定1と同じ方向となるように配置する。
前記積層体2の面光源を白表示し、前記積層体2の前記偏光子側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内において測定1と略一致させる。
<条件1>
全ての仰角及び全ての方位角において、測定1のL*値から測定2のL*値を引いたΔL*を算出する。ΔL*の最大値から最小値までを所定の諧調でグレースケール化し、仰角を同心円、方位角を縦横で表した2次元座標にグレースケールで表示する。
2次元座標内においてΔL*が同心円状に分布する領域が2箇所存在すること、及び前記2箇所の領域が2次元座標の略対称位置にあることを確認する。
ΔL*が同心円状に分布する領域の中心に位置する仰角に関して、一方の仰角をα度、他方の仰角をβ度とする。
仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定1のL*値、a*値及びb*値と、仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定2のL*値、a*値及びb*値との差分から、各方位角におけるΔEabを算出する。
【0011】
[2]偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置されてなる第1の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置されてなる第2の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第1の透明保護板及び前記第2の透明保護板の少なくとも一方が[1]に記載の光学フィルムである、偏光板。
[3]表示素子と、前記表示素子の光出射面側に配置されてなる偏光子及び光学フィルムとを有する画像表示装置であって、前記光学フィルムが[1]に記載の光学フィルムであり、前記偏光子の吸収軸と前記光学フィルムの前記二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内となるように配置されてなり、かつ、前記光学フィルムの前記低屈折率層側の面が前記表示素子とは反対側を向くように配置されてなる、画像表示装置。
【0012】
[4]表示素子の光出射面上に、偏光子及び光学フィルムを有してなる画像表示装置であって、
前記偏光子の吸収軸の方向と、前記表示素子の左右方向又は上下方向との成す角が±5度以内となるように配置されてなり、
前記偏光子の吸収軸と、前記光学フィルムの前記二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内となるように配置されてなり、
前記光学フィルムは、面内位相差が2500nm未満である二軸延伸プラスチックフィルム上に低屈折率層を有してなり、前記低屈折率層が光学フィルムの最表面に位置してなり、かつ、ΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満である領域を有する、画像表示装置。
ここで、積層体1Aについて、測定1Aを実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。積層体2Aについて、測定2Aを実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。測定1Aと測定2Aとの結果に基づいて、条件1AによりΔEabを算出する。
<測定1A>
表示素子上に、偏光子及び前記光学フィルムをこの順に積層してなる積層体1Aを作製する。前記積層体1Aにおいて、前記光学フィルムは前記低屈折率層側の面が前記偏光子とは反対側を向くように配置する。また、前記偏光子は、偏光子の吸収軸と、前記表示素子の左右方向又は上下方向との成す角が±5度以内となるように配置する。さらに、前記偏光子の吸収軸と、前記光学フィルムの前記二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内となるように配置する。
前記積層体1Aの表示素子を白表示し、前記積層体1Aの前記低屈折率層側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内の任意の1mm2以上10mm2以下の領域とする。
<測定2A>
前記測定1Aと同一の表示素子上に、偏光子を積層してなる積層体2Aを作製する。
前記積層体2Aの表示素子を白表示し、前記積層体2Aの前記偏光子側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内において測定1Aと略一致させる。
<条件1A>
全ての仰角及び全ての方位角において、測定1AのL*値から測定2AのL*値を引いたΔL*を算出する。ΔL*の最大値から最小値までを所定の諧調でグレースケール化し、仰角を同心円、方位角を縦横で表した2次元座標にグレースケールで表示する。
2次元座標内においてΔL*が同心円状に分布する領域が2箇所存在すること、及び前記2箇所の領域が2次元座標の略対称位置にあることを確認する。
ΔL*が同心円状に分布する領域の中心に位置する仰角に関して、一方の仰角をα度、他方の仰角をβ度とする。
仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定1AのL*値、a*値及びb*値と、仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定2AのL*値、a*値及びb*値との差分から、各方位角におけるΔEabを算出する。
【0013】
[5]表示素子の光出射面上に、偏光子及び光学フィルムを有してなり、前記偏光子の吸収軸の方向と、前記表示素子の左右方向又は上下方向とが平行になるように配置されてなる画像表示装置の光学フィルムの選定方法であって、
面内位相差が2500nm未満である二軸延伸プラスチックフィルム上に低屈折率層を有してなる光学フィルムXであって、前記低屈折率層が光学フィルムXの最表面に位置してなり、かつ、ΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満である領域を有することを判定条件として、前記判定条件を満たす光学フィルムXを前記光学フィルムとして選定する、画像表示装置の光学フィルムの選定方法。
ここで、積層体1Bについて、測定1Bを実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。積層体2Bについて、測定2Bを実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。測定1Bと測定2Bとの結果に基づいて、条件1BによりΔEabを算出する。
<測定1B>
表示素子上に、偏光子及び前記光学フィルムXをこの順に積層してなる積層体1Bを作製する。前記積層体1Bにおいて、前記光学フィルムは前記低屈折率層側の面が前記偏光子とは反対側を向くように配置する。また、前記偏光子は、偏光子の吸収軸と、前記表示素子の左右方向又は上下方向との成す角が±5度以内となるように配置する。さらに、前記偏光子の吸収軸と、前記光学フィルムXの前記二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内となるように配置する。
前記積層体1Bの表示素子を白表示し、前記積層体1Bの前記低屈折率層側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内の任意の1mm2以上10mm2以下の領域とする。
<測定2B>
前記測定1Bと同一の表示素子上に、偏光子を積層してなる積層体2Bを作製する。
前記積層体2Bの表示素子を白表示し、前記積層体2Bの前記偏光子側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内において測定1Bと略一致させる。
<条件1B>
全ての仰角及び全ての方位角において、測定1BのL*値から測定2BのL*値を引いたΔL*を算出する。ΔL*の最大値から最小値までを所定の諧調でグレースケール化し、仰角を同心円、方位角を縦横で表した2次元座標にグレースケールで表示する。
2次元座標内においてΔL*が同心円状に分布する領域が2箇所存在すること、及び前記2箇所の領域が2次元座標の略対称位置にあることを確認する。
ΔL*が同心円状に分布する領域の中心に位置する仰角に関して、一方の仰角をα度、他方の仰角をβ度とする。
仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定1BのL*値、a*値及びb*値と、仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定2BのL*値、a*値及びb*値との差分から、各方位角におけるΔEabを算出した際に、ΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満。
【発明の効果】
【0014】
本開示の光学フィルム、並びに、前記光学フィルムを用いた偏光板及び画像表示装置は、面内位相差を3000nm以上と高くすることなく、裸眼で視認した際の虹ムラを抑制することができる。また、本開示の光学フィルムの選定方法は、面内位相差を高くすることなく、裸眼で視認した際の虹ムラを抑制し得る光学フィルムを効率よく選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の光学フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【
図2】測定1で使用する積層体1の厚み方向の配置を説明するための断面図である。
【
図3】測定2で使用する積層体2の厚み方向の配置を説明するための断面図である。
【
図4】測定1のL*値から測定2のL*値を引いた値(ΔL*)を所定の諧調にグレースケール化し、仰角を同心円、方位角を縦横で表した2次元座標にグレースケールで表示した図である。
【
図5】本開示の偏光板の一実施形態を示す断面図である。
【
図6】本開示の画像表示装置の一実施形態を示す断面図である。
【
図7】サンプルから面内位相差等を算出する際における、サンプル内の5箇所の測定位置を説明するための平面図である。
【
図8】中空粒子と非中空粒子とが均一に分散した低屈折率層の一例の断面写真である。
【
図9】中空粒子と非中空粒子とが均一に分散していない低屈折率層の一例の断面写真である。
【
図10】連続折り畳み試験の様子を模式的に示した図である。
【
図11】条件Aの[+α
B-(-α
B)]、[+α
G-(-α
G)]及び[+α
R-(-α
R)]を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態を説明する。
[光学フィルム]
本開示の光学フィルムは、プラスチックフィルム上に低屈折率層を有してなり、前記プラスチックフィルムは、面内位相差が2500nm以下の二軸延伸プラスチックフィルムであり、前記低屈折率層は前記光学フィルムの最表面に位置し、ΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満である領域を有するものである。
ここで、積層体1について、測定1を実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。積層体2について、測定2を実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。測定1と測定2との結果に基づいて、条件1によりΔEabを算出する。
【0017】
<測定1>
面光源上に、偏光子及び前記光学フィルムをこの順に積層してなる積層体1を作製する。前記積層体1において、前記光学フィルムは前記低屈折率層側の面が前記偏光子とは反対側を向くように配置する。また、前記偏光子は、偏光子の吸収軸と、前記面光源の左右方向又は上下方向との成す角が±5度以内になるように配置する。さらに、前記偏光子の吸収軸と、前記光学フィルムの前記二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内となるように配置する。
前記積層体1の面光源を白表示し、前記積層体1の前記低屈折率層側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内の任意の1mm2以上10mm2以下の領域とする。
【0018】
<測定2>
前記測定1と同一の面光源上に、偏光子を積層してなる積層体2を作製する。
前記積層体2の面光源を白表示し、前記積層体2の前記偏光子側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内において測定1と略一致させる。
前記測定結果から、仰角が前記(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下におけるL*値、a*値及びb*値をそれぞれ確認する。
【0019】
<条件1>
全ての仰角及び全ての方位角において、測定1のL*値から測定2のL*値を引いたΔL*を算出する。ΔL*の最大値から最小値までを所定の諧調でグレースケール化し、仰角を同心円、方位角を縦横で表した2次元座標にグレースケールで表示する。
2次元座標内においてΔL*が同心円状に分布する領域が2箇所存在すること、及び前記2箇所の領域が2次元座標の略対称位置にあることを確認する。
ΔL*が同心円状に分布する領域の中心に位置する仰角に関して、一方の仰角をα度、他方の仰角をβ度とする。
仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定1のL*値、a*値及びb*値と、仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定2のL*値、a*値及びb*値との差分から、各方位角におけるΔEabを算出する。
【0020】
本明細書において、測定1及び測定2、並びに、後述する測定(面内位相差、厚み方向の位相差、遅相軸の方向、低屈折率層の表面粗さ等)は、特に断りのない限り、温度23℃±5℃、相対湿度40%RH以上65%RH以下の雰囲気で実施するものとする。また、各測定の前に、前記雰囲気に測定サンプルを30分以上晒すものとする。
【0021】
図1は、本開示の光学フィルム100の実施の形態を示す断面図である。
図1に示すように、本開示の光学フィルム100は、プラスチックフィルム10上に低屈折率層30を有している。
本開示の光学フィルム100は、プラスチックフィルム10及び低屈折率層30以外の層を有していてもよい。プラスチックフィルム10及び低屈折率層30以外の層としては、ハードコート層、防眩層及び高屈折率層等が挙げられる。
図1の光学フィルム100は、プラスチックフィルム10と低屈折率層30との間にハードコート層20を有している。
【0022】
《測定1について》
測定1は下記(1-1)~(1-2)のように行うことができる。
(1-1)面光源上に、偏光子及び光学フィルムをこの順に積層してなる積層体1を作製する。前記積層体1において、前記光学フィルムは前記低屈折率層側の面が前記偏光子とは反対側を向くように配置する。また、前記偏光子は、偏光子の吸収軸の方向と、前記面光源の左右方向又は上下方向との成す角が±5度以内となるように配置する。さらに、前記偏光子の吸収軸と、前記光学フィルムの前記二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内となるように配置する。
【0023】
図2は、上記(1-1)で使用する積層体1の厚み方向の配置を説明するための断面図である。
図2の積層体1(X)は、面光源200と、偏光子300と、光学フィルム100とが、接着剤層400を介して積層されている。
図2に示すように、面光源と、偏光子と、光学フィルムとは、接着剤層等を介して貼り合わせることが好ましい。なお、前述した貼り合わせは、見かけ上接着していれば足り、例えば、水及び溶剤等の液体を介した仮接着であってもよい。また、積層体1は、光学的等方性のフィルムを有していてもよい。例えば、偏光子の片面又は両面に、偏光子保護フィルムとして光学的等方性のフィルムを有していてもよい。
【0024】
積層体1及び後述する積層体2の作製に用いる接着剤層は、屈折率が1.42以上1.53以下であることが好ましく、厚みが15μm以上40μm以下であることが好ましい。前記接着剤層は、屈折率が1.45以上1.50以下であることがより好ましく、厚みが20μm以上30μm以下であることがより好ましい。接着剤層の屈折率及び厚みが前記範囲であれば、後述するΔEabに実質的な影響を与えないといえる。本明細書において、屈折率は無次元のパラメータである。積層体1及び後述する積層体2の作製に用いる接着剤層は内部ヘイズを実質的に有さないことが好ましい。
なお、接着剤層は、硬化型の接着剤層、感圧接着剤層(いわゆる粘着剤層)及び感熱接着剤層(ヒートシール層)等の汎用の接着剤層を用いることができる。
【0025】
上記(1-1)において、前記偏光子は、偏光子の吸収軸と、前記面光源の左右方向又は上下方向とが略平行になるように配置する。本明細書において、略平行とは、偏光子の吸収軸と、前記面光源の左右方向又は上下方向との差が±5度以内であることを意味し、好ましくは±3度以内、さらに好ましくは±1度以内である。
面光源の平面視形状が長方形又は正方形であれば、左右方向又は上下方向の認定は容易である。なお、左右と上下との判別は必要ない。
面光源の平面視形状が長方形又は正方形以外の形状(円、三角形等)の場合、面光源の外枠形状からはみ出さない面積が最大となる長方形又は正方形を描き、描いた長方形又は正方形に基づいて、左右方向又は上下方向を認定すればよい。
なお、上記(1-1)において、偏光子の吸収軸の方向と、面光源の左右方向又は上下方向との成す角が±5度以内となるように配置したのは、汎用の画像表示装置の光出射面側の偏光子がそのように配置されていることを考慮したものである。
【0026】
上記(1-1)において、偏光子の吸収軸と光学フィルムの二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸とは略直交するように配置する。本明細書において、略直交とは、偏光子の吸収軸と、二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内であることを意味し、好ましくは90度±3度以内、より好ましくは90度±1度以内である。
遅相軸とは、二軸延伸プラスチックフィルムの面内で屈折率が最も大きい方向を意味する。なお、二軸延伸プラスチックフィルムの面内で遅相軸の方向が均一ではない場合には、二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸の方向は、二軸延伸プラスチックフィルムの面内の遅相軸の平均的な方向を意味するものとする。
【0027】
上記(1-1)において、偏光子は、偏光度99.00%以上かつ平均透過率35%以上のものが好ましく、より好ましくは偏光度99.90%以上かつ平均透過率37%以上であり、さらに好ましくは偏光度99.95%以上かつ平均透過率40%以上である。なお、本明細書において、平均透過率とは波長400nm以上700nm以下の分光透過率の平均を意味する。平均透過率の測定波長間隔は5nmである。
また、偏光子は、その片面又は両面に、光学的等方性のフィルムを有するものであってもよい。また、偏光子と光学的等方性のフィルムとは、接着剤層を介して貼り合わせられていてもよい。
【0028】
測定1及び測定2で用いる偏光子は、表示素子上に予め配置されている偏光子であってもよいし、別途用意した偏光子であってもよい。
【0029】
上記(1-1)において、面光源は白表示し得るものであれば特に限定されない。
面光源から出射した光は、偏光子を通過して直線偏光となり、前記直線偏光が光学フィルムに入射する。光学フィルムに入射する前記直線偏光は、汎用の画像表示装置の表示素子から出射した光であって、さらに視認側偏光子を通過した状態の光(直線偏光)であると擬制することができる。
面光源は、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置等の汎用の画像表示装置を用いることができる。但し、画像表示装置が表示素子上に視認側偏光子を有する場合には、視認側偏光子を除いたものを面光源とみなすものとする。視認側偏光子は積層体1及び積層体2の偏光子になり得るためである。また、面光源が液晶表示装置の場合、液晶表示装置のバックライトとしては、量子ドットを用いたバックライト、白色発光ダイオードを用いたバックライトが挙げられる。
なお、表示素子上に視認側偏光子を有する画像表示装置上に光学フィルムを配置してなる積層体は、測定1の他の条件を満たす限りにおいて、測定1で用いる積層体1とみなすことができる。
また、表示素子上に視認側偏光子を有する画像表示装置は、測定2の他の条件を満たす限りにおいて、測定2で用いる積層体2とみなすことができる。
【0030】
(1-2)前記積層体1の面光源を白表示し、前記積層体1の前記低屈折率層側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内の任意の1mm2以上10mm2以下の領域とする。
【0031】
上記(1-2)において測定領域を1mm2以上としたのは、領域が小さすぎると人が目で認識しにくいことを考慮したものである。また、測定領域を10mm2以下としたのは、面光源の出射角分布の影響を抑制することを考慮するとともに、領域が大きすぎるとΔEabが平均化されていまい、目視の結果と相関しにくくなることを考慮したものである。
なお、仰角の最大値を80度としているのは、一般的に80度超の仰角からの出射光は平面に対して平行に近いため出射光を検出しにくいためである。
上記(1-2)において測定領域は1mm2以上5mm2以下とすることが好ましい。
【0032】
上記(1-2)において、積層体1と、透過光の測定装置との間隔は0mm超1.5mm以下とすることが好ましく、0.5mm以上1.5mm以下とすることがより好ましく、1.0mmとすることがさらに好ましい。前記間隔とすることにより、測定装置の重量による積層体1の変形を抑制するとともに、出射光の広がりを抑制し、測定誤差を低減しやすくできる。同様に、後述する(2-2)において、積層体2と、透過光の測定装置との間隔も上記範囲とすることが好ましい。
【0033】
上記(1-2)、並びに、後述の(2-2)、並びに、後述の(3-1)~(3-4)における測定及び解析は、例えば、ELDIM社の商品名「EzContrast」で実施することができる。
【0034】
本明細書において、L*値、a*値及びb*値は、1976年に国際照明委員会(CIE)により規格化されたL*a*b*表色系に基づくものである。L*a*b*表色系は、JIS Z8781-4:2013において採用されている。
【0035】
《測定2について》
測定2は下記(2-1)~(2-2)のように行うことができる。
【0036】
(2-1)前記測定1と同一の面光源上に偏光子を積層してなる積層体2を作製する。また、前記面光源に対する前記偏光子の吸収軸の方向は、前記測定1と同じ方向となるように配置する。また、測定2の偏光子は、測定1の偏光子と同様のものを用いる。
【0037】
図3は、上記(2-1)で使用する積層体2の厚み方向の配置を説明するための断面図である。
図3の積層体2(Y)は、面光源200と偏光子300とが、接着剤層400を介して積層されている。
図3に示すように、面光源と偏光子とは、接着剤層等を介して貼り合わせることが好ましい。なお、前述した貼り合わせは、見かけ上接着していれば足り、例えば、水及び溶剤等の液体を介した仮接着であってもよい。
【0038】
上記(2-1)において、前記面光源に対する前記偏光子の吸収軸の方向は、前記測定1と同じ方向となるように配置する。例えば、測定1において、偏光子の吸収軸の方向と面光源の左右方向とが平行になるように配置した場合、上記(2-1)でも同様の配置とする。
【0039】
(2-2)前記積層体2の面光源を白表示し、前記積層体2の前記偏光子側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内において測定1と略一致させる。
【0040】
上記(2-2)において、透過光の測定領域は面内において測定1と略一致させるとは、積層体1と積層体2とを重ねて平面視した際に、測定1における透過光の測定領域の中心と、測定2における透過光の測定領域の中心との距離が0.5mm以内であることを意味し、好ましくは0.3mm以内、より好ましくは0.1mm以内である。
【0041】
上記(1-1)で述べたように、測定1及び測定2で用いる面光源は白表示し得るものであれば特に限定されないが、安定した測定を行うため、積層体2の状態において、L*値、a*値及びb*値の平均が、下記(a1)~(a3)を示す面光源が好ましい。言い換えると、安定した測定を行うため、測定2のL*値、a*値及びb*値の平均は、下記の範囲を示すことが好ましい。
(a1)上記(2-2)の測定で得られた、全角度のL*値の平均が95以上105以下を示す。全角度のL*値の平均は、より好ましくは95以上100以下である。
(a2)上記(2-2)の測定で得られた、全角度のa*値の平均が-10以上10以下を示す。全角度のa*値の平均は、より好ましくは-5以上5以下である。
(a3)上記(2-2)の測定で得られた、全角度のb*値の平均が-10以上10以下を示す。全角度のb*値の平均は、より好ましくは-5以上5以下である。
【0042】
また、より安定した測定を行うため、積層体2の状態において、L*値、a*値及びb*値のバラツキ(3σ)が、下記(b1)~(b3)を示す面光源がより好ましい。言い換えると、安定した測定を行うため、測定2のL*値、a*値及びb*値のバラツキ(3σ)は、下記の範囲を示すことが好ましい。
(b1)上記(2-2)の測定で得られた、全角度のL*値のバラツキ(3σ)が120以下を示す。全角度のL*値のバラツキ(3σ)は、より好ましくは115以下である。
(b2)上記(2-2)の測定で得られた、全角度のa*値の絶対値のバラツキ(3σ)が15以下を示す。
(b3)上記(2-2)の測定で得られた、全角度のb*値の絶対値のバラツキ(3σ)が15以下を示す。
【0043】
また、面光源は、虹ムラをより抑制しやすくするために、以下の条件Aを満たすものが好ましい。条件Aを満たすことは、青の波長域、緑の波長域、及び赤の波長域にそれぞれ存在する強度のピークの半値全幅の少なくとも何れかが、所定の値以上(10nm以上)であることを意味している。
図11は、条件Aの[+α
B-(-α
B)]、[+α
G-(-α
G)]及び[+α
R-(-α
R)]を説明するための図である。なお、
図11の分光スペクトルは、汎用の有機EL素子の面光源の分光スペクトルである。
【0044】
<条件A>
面光源上に第1偏光子を配置し、第1偏光子側から垂直方向に出射する光L1の強度を波長1nmごとに測定する。青の波長域を400nm以上500nm未満、緑の波長域を500nm以上570nm未満、赤の波長域を570nm以上780nm以下とする。前記L1の青の波長域の最大強度をBmax、前記L1の緑の波長域の最大強度をGmax、前記L1の赤の波長域の最大強度をRmaxとする。
前記Bmaxを示す波長をL1λB、前記Gmaxを示す波長をL1λG、前記Rmaxを示す波長をL1λRとする。
前記Bmaxの1/2以下の強度を示す波長であってL1λBのマイナス方向側に位置する最小波長を-αB、前記Bmaxの1/2以下の強度を示す波長であってL1λBのプラス方向側に位置する最小波長を+αB、前記Gmaxの1/2以下の強度を示す波長であってL1λGのマイナス方向側に位置する最大波長を-αG、前記Gmaxの1/2以下の強度を示す波長であってL1λGのプラス方向側に位置する最小波長を+αG、前記Rmaxの1/2以下の強度を示す波長であってL1λRのマイナス方向側に位置する最大波長を-αR、前記Rmaxの1/2以下の強度を示す波長であってL1λRのプラス方向側に位置する最大波長を+αRとする。
[+αB-(-αB)]、[+αG-(-αG)]及び[+αR-(-αR)]の少なくとも何れかが10nm以上を示す。
【0045】
条件Aは、[+αB-(-αB)]、[+αG-(-αG)]及び[+αR-(-αR)]の中の2以上が10nm以上を示すことがより好ましく、3つ全てが10nm以上を示すことがさらに好ましい。
【0046】
《条件1について》
条件1では、上記測定1及び測定2で得られたL*値、a*値及びb*値に基づいて、下記手順で算出したΔEabの最大値と最小値との差を算出する。本開示の光学フィルムは、前記差が17.0未満である領域を有することを要する。
<条件1>
全ての仰角及び全ての方位角において、測定1のL*値から測定2のL*値を引いたΔL*を算出する。ΔL*の最大値から最小値までを所定の諧調でグレースケール化し、仰角を同心円、方位角を縦横で表した2次元座標にグレースケールで表示する。
2次元座標内においてΔL*が同心円状に分布する領域が2箇所存在すること、及び前記2箇所の領域が2次元座標の略対称位置にあることを確認する。
ΔL*が同心円状に分布する領域の中心に位置する仰角に関して、一方の仰角をα度、他方の仰角をβ度とする。
仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定1のL*値、a*値及びb*値と、仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定2のL*値、a*値及びb*値との差分から、各方位角におけるΔEabを算出する。
【0047】
ΔEabは、いわゆる色差である。
特定の方位角における測定1及び測定2の「L*値、a*値及びb*値」を、それぞれ、「L1*、a1*及びb1*」及び「L2*、a2*及びb2*」と定義した際に、前記特定の方位角における色差(ΔEab)は下記式で表すことができる。
<色差(ΔEab)を示す式>
ΔEab={(L1*-L2*)2+(a1*-a2*)2+(b1*-b2*)2}1/2
【0048】
条件1のΔEabは、測定1及び測定2で得られたL*値、a*値及びb*値に基づいて、下記(3-1)~(3-4)の手順から算出することができる。すなわち、条件1のΔEabは、光学フィルムを有する状態と、光学フィルムを有さない状態との色差を規定している。これは、面光源の影響をキャンセルし、虹ムラとの相関を付与するためである。
測定2の結果を用いず、測定1の結果のみに基づき算出し得る「(L1*2+a1*2+b1*2)1/2」は、虹ムラの視認性との相関がない。この理由は、面光源のL*値の影響が大きいためと考えらえる。
【0049】
(3-1)全ての仰角及び全ての方位角において、測定1のL*値から測定2のL*値を引いたΔL*を算出する。ΔL*の最大値から最小値までを所定の諧調でグレースケール化し、仰角を同心円、方位角を縦横で表した2次元座標にグレースケールで表示する。
【0050】
図4は、ΔL*の最大値から最小値までを所定の諧調でグレースケール化し、仰角を同心円、方位角を縦横で表した2次元座標にグレースケールで表示した図である。言い換えると、
図4は、上記(3-1)の2次元座標である。なお、
図4では、白に近くなるほどΔL*が大きいことを示している。
なお、
図4において、円状の2次元座標の中央は仰角0度(面光源に対して垂直方向)、縁部は仰角の最大角度を示している。また、
図4において、中心から右方向が方位角0度、中心から上方向が方位角90度、中心から左方向が方位角180度、中心から下方向が方位角270度を示している。
【0051】
上記(3-1)の諧調は、通常は2のn乗であり、例えば、16諧調、32諧調、64諧調、128諧調、256諧調が挙げられる。
上記(3-1)のグレースケール表示の2次元座標は、例えば、ELDIM社の商品名「EzContrast」で作成することができる。
【0052】
(3-2)2次元座標内においてΔL*が同心円状に分布する領域が2箇所存在すること、及び前記2箇所の領域が2次元座標の略対称位置にあることを確認する。
ここで、「略対称」とは、ΔL*が同心円状に分布する一方の領域の中心に位置する仰角及び方位角をX1及びY1、ΔL*が同心円状に分布する他方の領域の中心に位置する仰角及び方位角をX2及びY2と定義した際に、X1とX2との差が±3度以下、Y1とY2との差の絶対値が180度±5度以下であることを意味する。X1とX2との差は±1度以下であることが好ましく、Y1とY2との差の絶対値は180度±3度以下であることが好ましい。
【0053】
図4に示した2次元座標は、ΔL*が同心円状に分布する領域が2箇所存在しており、前記2箇所の領域が2次元座標の略対称位置に存在している。
かかる対称位置の同心円は、測定領域内の屈折率分布(二軸延伸プラスチックフィルムは遅相軸方向の屈折率が高いため、遅相軸に沿って同心円が形成される。
図4の場合、二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸の向きは、
図4の左右方向である。)と、測定領域内の低屈折率層の光学距離(測定中心から離れるにしたがって光学距離(低屈折率層を通過する透過光の距離)は増加する。)の変化とにより、P波及びS波の反射率が変動することにより形成されると考えられる。言い換えると、かかる対称位置の同心円は、二軸延伸プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する光学フィルム(測定1)、及び、二軸延伸プラスチックフィルムの単体において、通常に形成されるものである(また、面内位相差が高いほど、より一層、同心円が対称位置に形成されやすくなる)。さらに、測定2ではP波又はS波の何れか一方のみであり前述したような同心円が形成されないため、測定1と測定2とのL*値の差分(ΔL*)においては、測定1のL*値が形成した同心円が維持される(ΔL*は光源の影響がキャンセルされている分、P波及びS波の反射率の変動がより鮮明となり、同心円もより鮮明に形成される。)。
【0054】
(3-3)ΔL*が同心円状に分布する領域の中心に位置する仰角に関して、一方の仰角をα度、他方の仰角をβ度とする。
【0055】
上記(3-3)において、「ΔL*が同心円状に分布する領域の中心に位置する仰角」は、例えば、測定装置のソフトウェア上で2次元座標を表示し、同心円状に分布する領域の中心を選択する(例えば、同心円状に分布する領域の中心をマウスでクリックする)ことにより判別することができる。
【0056】
(3-4)前記測定結果から、仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定1のL*値、a*値及びb*値と、仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定2のL*値、a*値及びb*値との差分から、各方位角におけるΔEabを算出する。そして、ΔEabの最大値と最小値との差を算出する。
【0057】
上記(3-4)において、(α+β)/2に端数が生じた場合には、数値を切り上げるものとする。例えば、αが30度、βが31度の場合、仰角が31度の時の方位角0度以上359度以下におけるL*値、a*値及びb*値からΔEabを算出するものとする。
【0058】
(α+β)/2は、50度以下であることが好ましく、40度以下であることがより好ましく、30度以下であることがさらに好ましい。(α+β)/2を50度以下とすることにより、(α+β)/2の値がブリュースター角近傍から離れるため、(α+β)/2の前後の角度におけるP波及びS波の反射率が変動することを抑制しやすくできる。(α+β)/2の下限は特に制限されないが、5度以上であることが好ましく、10度以上であることがより好ましく、15度以上であることがさらに好ましい。
二軸延伸プラスチックフィルムの厚み方向の屈折率nzを小さくすることにより、(α+β)/2を前記範囲にしやすくできる。
【0059】
本開示の光学フィルムは、各方位角(0度以上359度以下)で算出したΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満であることを要する。前記差が大きいことは、特定の方位角において色味が強く感じられることを意味する。このため、前記差が17.0以上の場合、ΔEabが最大値を示す方位角において色味が強く感じられ、裸眼の虹ムラを抑制することができない。
前記差は、16.0以下であることが好ましく、15.0以下であることがより好ましく、14.0以下であることがさらに好ましい。
前記差の下限は特に限定されないが、通常、3.0程度である。
前記差は、例えば、後述する条件2を満たす二軸延伸プラスチックフィルムを用いることにより、17.0未満にしやすくできる。
【0060】
条件1において、(α+β)/2を通る方位角0度以上359度以下の測定値を用いている理由は、(α+β)/2を通る方向では、同心円の明るい領域と暗い領域とを交互に測定することになり(
図4参照)、ΔEabの最大値と最小値との差が理論的に最も大きくなるためである。
また、本開示では、ブリュースター角ではなく、同心円の中心((α+β)/2)を通る方位角を用いている点が特徴である。上述したΔL*の同心円は、面内位相差の影響を受ける(面内位相差が大きくなるほど同心円が小さくなる)。一方、ブリュースター角は屈折率に支配されるため面内位相差の影響を受けない。このため、ブリュースター角を通る方位角の測定値から算出した「ΔEabの最大値と最小値との差」が小さくても、(α+β)/2を通る方位角の測定値から算出した「ΔEabの最大値と最小値との差」を小さくすることは難しい。すなわち、本開示は、ブリュースター角ではなく、(α+β)/2を通る方位角の測定値から算出した「ΔEabの最大値と最小値との差」が所定の条件を満たすことにより、虹ムラが視認されることを抑制することを可能とした点において、特許文献2及び3よりも優れた技術的意義を有するものである。
また、後述するように、n
x>n
y≧n
zの関係を満たす二軸延伸プラスチックフィルムは、斜め方向の位相差が遅相軸の方向に沿って傾くほど徐々に減少し、「(α+β)/2」近傍で0nmとなる。本発明者らは、仰角を「(α+β)/2」に固定して、方位角0~359度の色味を観察した際に、虹ムラに類する色ムラが強く感じられることを見出した。通常、虹ムラは位相差が所定の値を有する方向において観察する。しかし、仰角を「(α+β)/2」に固定して、方位角0~359度の方向における観察は、遅相軸方向の斜め位相差が0nmであるため、通常の観察とは全く異なる。このため、本明細書において、仰角を「(α+β)/2」に固定して、方位角0~359度の方向において視認される色ムラのことを、「虹ムラ」と区別するために「色歪み」と称する場合がある。
【0061】
光学フィルム内において、ΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満を満たす領域は、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%であることがよりさらに好ましい。
同様に、前記差以外の各種のパラメータ(面内位相差、厚み方向の位相差、条件2、低屈折率層の表面粗さ等)を満たす領域も、光学フィルム内において、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%であることがよりさらに好ましい。
【0062】
各方位角(0度以上359度以下)で算出したΔEabの最大値は、16.0以下であることが好ましく、15.0以下であることがより好ましく、14.0以下であることがさらに好ましい。ΔEabの最大値を前記範囲とすることにより、裸眼において虹斑をより視認させにくくできる。
【0063】
本開示の光学フィルムは、光学フィルムに対して二軸延伸プラスチックフィルム側から入射する可視光全域の光に対するブリュースター角をX度と定義した際に、前記(α+β)/2と、前記Xとが、下記式(A)を満たすことが好ましい。
X-(α+β)/2≦20度 (A)
ブリュースター角(X)は、2つの物質の屈折率から下記式(B)で算出できる。なお、n1は入射側の屈折率、n2は透過側の屈折率を示す。
X=Arctan(n2/n1) (B)
【0064】
本開示の光学フィルムは、ブリュースター角と同心円の中心((α+β)/2)とがずれた場合に、より顕著な効果を発揮することができる。言い換えると、上記式(A)を満たす光学フィルムは、本開示の効果を発揮しやすい点で好ましい。
X-(α+β)/2は、30度以上であることがより好ましく、35度以上であることがさらに好ましい。X-(α+β)/2の上限は特に限定されないが40度程度である。
【0065】
<プラスチックフィルム>
プラスチックフィルムは、面内位相差が2500nm以下の二軸延伸プラスチックフィルムである。
二軸延伸プラスチックフィルムとすることにより、機械的強度を良好にすることができる。また、二軸延伸プラスチックフィルムの面内位相差を2500nm以下とすることにより、縦横の延伸比率を適度な範囲として機械的強度をより良好にできるとともに、耐引裂き性を良好にすることができる。また、二軸延伸プラスチックフィルムの面内位相差を2500nm以下とすることにより、二軸延伸プラスチックフィルムの薄膜化にも寄与できる。
【0066】
二軸延伸プラスチックフィルムの面内位相差は、虹ムラを抑制しやすくするために、2000nm以下であることが好ましく、1500nm以下であることがより好ましく、1400nm以下がより好ましく、1150nm以下がより好ましく、1000nm以下であることがより好ましく、600nm以下であることがより好ましい。二軸延伸プラスチックフィルムの厚みを10μm以上50μm以下のように薄膜化した場合には、面内位相差は1400nm以下が好ましい
【0067】
なお、二軸延伸プラスチックフィルムの面内位相差が小さすぎると、二軸延伸でも機械的強度を十分にできない場合がある。このため、二軸延伸プラスチックフィルムの面内位相差は20nm以上であることが好ましく、100nm以上であることがより好ましく、300nm以上であることがさらに好ましく、520nm以上であることがよりさらに好ましい。
【0068】
二軸延伸プラスチックフィルムの面内位相差の好ましい範囲は、20nm以上2000nm以下、20nm以上1500nm以下、20nm以上1400nm以下、20nm以上1150nm以下、20nm以上1000nm以下、20nm以上600nm以下、100nm以上2000nm以下、100nm以上1500nm以下、100nm以上1400nm以下、100nm以上1150nm以下、100nm以上1000nm以下、100nm以上600nm以下、300nm以上2000nm以下、300nm以上1500nm以下、300nm以上1400nm以下、300nm以上1150nm以下、300nm以上1000nm以下、300nm以上600nm以下、520nm以上2000nm以下、520nm以上1500nm以下、520nm以上1400nm以下、520nm以上1150nm以下、520nm以上1000nm以下、520nm以上600nm以下が挙げられる。
【0069】
二軸延伸プラスチックフィルムの厚み方向の位相差(Rth)は、2000nm以上であることが好ましく、3000nm以上であることがより好ましく、4000nm以上であることがさらに好ましい。Rthの上限は10000nm程度であり、好ましくは8000nm以下、より好ましくは7000nm以下である。Rthを前記範囲とすることにより、虹ムラをより抑制しやすくできる。
二軸延伸プラスチックフィルムのRthの好ましい範囲は、2000nm以上10000nm以下、2000nm以上8000nm以下、2000nm以上7000nm以下、3000nm以上10000nm以下、3000nm以上8000nm以下、3000nm以上7000nm以下、4000nm以上10000nm以下、4000nm以上8000nm以下、4000nm以上7000nm以下が挙げられる。
二軸延伸プラスチックフィルムのRthを上記範囲とするためには、縦方向及び横方向の延伸倍率を大きくすることが好ましい。縦方向及び横方向の延伸倍率を大きくすることにより、二軸延伸プラスチックフィルムの厚み方向の屈折率nzが小さくなるため、Rthを大きくしやすくできる。また、二軸延伸プラスチックフィルムのnzを小さくすることにより、「(α+β)/2」の値を小さくしやすくできる。「(α+β)/2」の値が小さくなると、(α+β)/2の値がブリュースター角近傍から離れるため、(α+β)/2の前後の角度におけるP波及びS波の反射率が変動することを抑制しやすくできる。
【0070】
面内位相差及び厚み方向の位相差を上記範囲とすることにより、二軸延伸プラスチックフィルムの延伸の程度を均等な二軸性に近づけ、二軸延伸プラスチックフィルムの機械的強度を良好にすることができる。
【0071】
面内位相差(Re)及び厚み方向の位相差(Rth)は、屈折率が最も大きい方向である遅相軸方向の屈折率nx、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率ny、プラスチックフィルムの厚み方向の屈折率nz、及び、プラスチックフィルムの厚みT[nm]により、下記式(1)及び(2)によって表わされるものである。なお、本明細書において、面内位相差、及び厚み方向の位相差は、波長550nmにおける値を意味するものとする。
Re=(nx-ny)×T[nm] (1)
Rth=((nx+ny)/2-nz)×T[nm] (2)
【0072】
遅相軸の方向、面内位相差及び厚み方向の位相差は、例えば、大塚電子社(Otsuka Electronics Co.,Ltd.)の商品名「RETS-100」により測定できる。
大塚電子社(Otsuka Electronics Co.,Ltd.)の商品名「RETS-100」を用いて面内位相差等を測定する場合には、以下の手順(A1)~(A4)に沿って測定の準備をすることが好ましい。
【0073】
(A1)まず、RETS-100の光源を安定させるため、光源をつけてから60分以上放置する。その後、回転検光子法を選択するとともに、θモード(角度方向位相差測定およびRth算出のモード)選択する。このθモードを選択することにより、ステージは傾斜回転ステージとなる。
(A2)次いで、RETS-100に以下の測定条件を入力する。
(測定条件)
・リタデーション測定範囲:回転検光子法
・測定スポット径:φ5mm
・傾斜角度範囲:0°
・測定波長範囲:400nm以上800nm以下
・プラスチックフィルムの平均屈折率。例えば、PETフィルムの場合には、N=1.617とする。なお、プラスチックフィルムの平均屈折率Nは、nx、ny及びnzを元に、(N=(nx+ny+nz)/3)の式で算出できる。
・厚み:SEM又は光学顕微鏡で別途測定した厚み
(A3)次いで、この装置にサンプルを設置せずに、バックグラウンドデータを得る。装置は閉鎖系とし、光源を点灯させる毎にこれを実施する。
(A4)その後、装置内のステージ上にサンプルを設置して、測定する。
【0074】
面内位相差及び厚み方向の位相差、並びに、後述する遅相軸の方向は、二軸延伸プラスチックフィルムから縦50mm×横50mmの大きさのサンプルを切り出し、前記サンプルの5か所の測定値の平均値とすることが好ましい。5箇所の測定点は、中央部の1箇所と、サンプルの四隅から中央部に向かって10mm進んだ箇所の4箇所との合計5箇所である(
図7の黒丸の5箇所)。
【0075】
二軸延伸プラスチックフィルムは、厚み方向の位相差に対する面内位相差(面内位相差/厚み方向の位相差)が0.10以下であることが好ましい。本明細書において、厚み方向の位相差に対する面内位相差を「Re/Rth」で表すことがある。Re/Rthは、例えば、以下のように測定できる。
【0076】
上記サンプルの5箇所で測定した面内位相差をそれぞれRe1、Re2、Re3、Re4及びRe5と定義し、上記サンプルの5箇所で測定した厚み方向の位相差をそれぞれRth1、Rth2、Rth3、Rth4、及びRth5と定義する。
二軸延伸プラスチックフィルムは、Re1/Rth1、Re2/Rth2、Re3/Rth3、Re4/Rth4及びRe5/Rth5の平均が0.10以下であることが好ましい。
【0077】
面内位相差と厚み方向の位相差との比(Re/Rth)が小さいことは、二軸延伸プラスチックフィルムの二軸の延伸が均等な二軸性に近づくことを意味する。したがって、Re/Rthを0.10以下とすることにより、二軸延伸プラスチックフィルムの機械的強度を良好にすることができる。Re/Rthは0.07以下であることがより好ましく、0.05以下であることがさらに好ましい。Re/Rthの下限は0.01程度である。
完全な一軸性の延伸プラスチックフィルムのRe/Rthは2.0である。汎用の一軸延伸プラスチックフィルムは、流れ方向にも若干延伸されている。このため、汎用の一軸延伸プラスチックフィルムのRe/Rthは1.0程度である。
【0078】
Re1/Rth1、Re2/Rth2、Re3/Rth3、Re4/Rth4及びRe5/Rth5は、それぞれ0.10以下であることが好ましく、0.07以下であることがより好ましく、0.05以下であることがさらに好ましい。これらの比の下限は0.01程度である。
【0079】
二軸延伸プラスチックフィルムは、下記の条件2を満たすことが好ましい。
<条件2>
前記サンプルの5箇所で遅相軸の方向を測定する。前記サンプルの任意の1辺と、各測定箇所の遅相軸の方向とが成す角度を、それぞれD1、D2、D3、D4、D5と定義した際に、D1~D5の最大値と、D1~D5の最小値との差が5.0度以上。
【0080】
二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸がきれいに配向していると、虹ムラが視認されやすくなる傾向がある。一方、二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸にバラツキを付与すると、虹ムラがぼやけて視認されにくくなる。このため、条件2を満たすことにより、裸眼での虹ムラが視認されることを抑制しやすくできる。言い換えると、条件2を満たすことにより、ΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満を満たしやすくすることができる。
汎用の延伸プラスチックフィルムは、遅相軸の方向がずれないように設計している。しかし、上記のように、あえてプラスチックフィルムの遅相軸の方向をずらすことにより、虹ムラを抑制しやすくできる。また、大きな領域で遅相軸がバラついても虹ムラの抑制効果は小さいが、縦50mm×横50mmという比較的小さい領域において遅相軸がバラつくことにより、虹ムラを抑制しやすくできる。
【0081】
条件2において、遅相軸の方向との成す角の基準となるサンプルの任意の1辺は、D1~D5で全て同じ辺を基準とする限り、サンプルの縦及び横の何れの辺でもよい。
【0082】
また、条件2を満たすことは、二軸延伸プラスチックフィルムの耐折り曲げ性を良好にすることができる点で好ましい。
一方、条件2を満たさずに遅相軸が揃っている汎用の配向フィルムは、屈曲試験後にフィルムが破断したり、曲げ癖が強く残ったりしてしまう。具体的には、特許文献1のような一軸延伸フィルムは、遅相軸に沿って屈曲試験した場合には破断してしまい、遅相軸と直交する方向で屈曲試験した場合には曲げ癖が強く残ってしまう。また、汎用の二軸延伸フィルムは、遅相軸と直交する方向で屈曲試験した場合には曲げ癖が強く残ってしまう。
条件2を満たす二軸延伸プラスチックフィルムは、折り曲げの方向に関わらず、屈曲試験後に曲げ癖が残ったり、破断したりすることを抑制できる点で好ましい。
【0083】
D1~D5の最大値と、D1~D5の最小値との差は、6.0度以上であることが好ましく、8.0度以上であることがより好ましく、10.0度以上であることがさらに好ましい。
なお、D1~D5の最大値と、D1~D5の最小値との差が大きすぎると、プラスチックフィルムの配向性が低くなり、機械的強度が低下する傾向がある。このため、前記差は20.0度以下であることが好ましく、17.0度以下であることがより好ましく、15.0度以下であることがさらに好ましい。
【0084】
条件2において、D1~D5の最大値と最小値との差の好ましい範囲は、例えば、5.0度以上20.0度以下、6.0度以上20.0度以下、8.0度以上20.0度以下、10.0度以上20.0度以下、5.0度以上17.0度以下、6.0度以上17.0度以下、8.0度以上17.0度以下、10.0度以上17.0度以下、5.0度以上15.0度以下、6.0度以上15.0度以下、8.0度以上15.0度以下、10.0度以上15.0度以下が挙げられる。
【0085】
二軸延伸プラスチックフィルムは、D1~D5が、それぞれ、5度以上30度以下又は60度以上85度以下であることが好ましく、7度以上25度以下又は65度以上83度以下であることがより好ましく、10度以上23度以下又は67度以上80度以下であることがさらに好ましい。
D1~D5を、それぞれ、5度以上又は85度以下とすることにより、偏光サングラスで視認した際のブラックアウトを抑制しやすくできる。また、D1~D5を、それぞれ、30度以下又は60度以上とすることにより、プラスチックフィルムの配向性が低くなることによる機械的強度の低下を抑制しやすくできる。
【0086】
二軸延伸プラスチックフィルムは、例えば、シート状の形態である場合と、ロール状の形態である場合とがある。何れの場合においても、縦50mm×横50mmの大きさのサンプルは、プラスチックフィルムのどの場所から切り出してもよいが、シート及びロールの縦及び横の方向性を確認できる場合には、確認した縦及び横の方向に沿ってサンプルを切り出すものとする。例えば、ロールの場合、ロールの流れ方向(MD方向)を縦方向、ロールの幅方向(TD方向)を横方向とみなすことができる。また、シートの流れ方向及び幅方向を確認できる場合には、流れ方向を縦方向、幅方向を横方向とみなすことができる。シートの流れ方向及び幅方向の確認が困難な場合において、シートが長方形又は正方形の場合は、長方形又は正方形を構成する四辺で縦及び横の方向性を確認すればよい。シートの流れ方向及び幅方向の確認が困難な場合において、シートが長方形又は正方形以外の形状(円、三角形等)の場合、シートの外枠形状からはみ出さない面積が最大となる長方形又は正方形を描き、描いた長方形又は正方形が有する辺で縦及び横の方向性を確認すればよい。
なお、シート状のプラスチックフィルムから縦50mm×横50mmの大きさのサンプルを複数採取できる場合には、複数のサンプルの中で条件2を満たすサンプルの割合が50%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、100%であることがよりさらに好ましい。面内位相差、厚み方向の位相差、Re/Rthも同様である。
【0087】
二軸延伸プラスチックフィルムは、実施例に示す折り畳み試験を10万回行った後(より好ましくは30万回行った後)に、割れまたは破断が生じないことが好ましい。また、二軸延伸プラスチックフィルムは、実施例に示す折り畳み試験を10万回行った後(より好ましくは30万回行った後)に、測定サンプルを水平な台に置いた際に、台からサンプルの端部が浮き上がる角度が20度以下であることが好ましく、15度以下であることがより好ましい。サンプルの端部から浮き上がる角度が15度以下であることは、折り畳みによる癖がつきにくいことを意味している。また、二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸の方向の平均、及び進相軸の方向の平均の、何れの方向についても前述の結果(割れ、破断及び折り畳みによる癖が生じないこと。試験後のサンプルの端部の浮き上がる角度が20度以下であること。)を示すものが好ましい。
なお、一軸延伸プラスチックフィルムは、折り畳み試験を行うと、延伸方向では破断が生じ、延伸方向に直交する方向では曲げ癖が強く残ってしまう。
【0088】
《二軸延伸プラスチックフィルムの具体的構成》
二軸延伸プラスチックフィルムの積層構成は、単層構造及び多層構造が挙げられる。この中でも単層構造であることが好ましい。
二軸延伸プラスチックフィルムは、機械的強度を良好にしつつ虹ムラを抑制するために、面内位相差を小さくすることが好ましい。そして、延伸プラスチックフィルムの面内位相差を小さくするためには、縦方向及び横方向の延伸を均等に近づけるなどの細かな延伸制御が重要となる。細かな延伸制御に関して、多層構造では各層の物性の違い等により細かな延伸制御が難しいが、単層構造は細かな延伸制御を行いやすい点で好ましい。
【0089】
二軸延伸プラスチックフィルムを構成する樹脂成分としては、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート、ポリウレタン及び非晶質オレフィン(Cyclo-Olefin-Polymer:COP)等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルは、機械的強度を良好にしやすい点で好ましい。すなわち、二軸延伸プラスチックフィルムはポリエステルフィルムであることが好ましく、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
【0090】
また、二軸延伸プラスチックフィルムは、機械的強度を良好にするため、nx>ny≧nzの関係を満たすものが好ましい。nx>ny≧nzの関係を満たすため、二軸延伸プラスチックフィルムを構成する樹脂成分は、正の複屈折材料であることが好ましい。
nx>ny≧nzの関係を満たす二軸延伸プラスチックフィルムは、斜め方向の位相差が遅相軸の方向に沿って傾くほど徐々に減少し、「(α+β)/2」近傍で0nmとなる。上述したように、「色歪み」は、遅相軸に沿った仰角が「(α+β)/2」の時の斜め位相差が0nmの強く感じられやすい。本開示では、色歪みが生じやすくなるnx>ny≧nzの関係を満たす二軸延伸プラスチックフィルムを用いても、ΔEabの最大値と最小値との差を17.0未満とすることにより、色歪みを抑制しやすくできる。
【0091】
正の複屈折率材料としては、ポリエステル、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリイミドフィルム及びポリアミドが挙げられる。
【0092】
二軸延伸ポリエステルフィルムを構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びポリブチレンテレフタレート(PBT)等が挙げられる。これらの中でも、固有複屈折が低く面内位相差を低くしやすい点で、PETが好ましい。
【0093】
二軸延伸プラスチックフィルムは、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、ゲル化防止剤及び界面活性剤等の添加剤を含有しても良い。
【0094】
二軸延伸プラスチックフィルムの厚みは、下限は好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、より好ましくは20μm以上、より好ましくは25μm以上、より好ましくは30μm以上であり、上限は好ましくは200μm以下、より好ましくは180μm以下、より好ましくは150μm以下、より好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下である。薄膜化のためには、二軸延伸プラスチックフィルムの厚みは、50μm以下であることが好ましい。
厚みを10μm以上とすることにより、機械的強度を良好にしやすくすることができる。また、厚みを200μm以下とすることにより、面内位相差を2500nm以下としやすくできる。
【0095】
二軸延伸プラスチックフィルムの厚みの好ましい範囲は、例えば、10μm以上200μm以下、15μm以上200μm以下、20μm以上200μm以下、25μm以上200μm以下、30μm以上200μm以下、10μm以上180μm以下、15μm以上180μm以下、20μm以上180μm以下、25μm以上180μm以下、30μm以上180μm以下、10μm以上150μm以下、15μm以上150μm以下、20μm以上150μm以下、25μm以上150μm以下、30μm以上150μm以下、10μm以上100μm以下、15μm以上100μm以下、20μm以上100μm以下、25μm以上100μm以下、30μm以上100μm以下、10μm以上80μm以下、15μm以上80μm以下、20μm以上80μm以下、25μm以上80μm以下、30μm以上80μm以下、10μm以上60μm以下、15μm以上60μm以下、20μm以上60μm以下、25μm以上60μm以下、30μm以上60μm以下、10μm以上50μm以下、15μm以上50μm以下、20μm以上50μm以下、25μm以上50μm以下、30μm以上50μm以下である。
【0096】
二軸延伸プラスチックフィルムは、JIS K7136:2000のヘイズが3.0%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.5%以下であることがさらに好ましく、1.0%以下であることがよりさらに好ましい。
また、二軸延伸プラスチックフィルムは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。
【0097】
二軸延伸プラスチックフィルムは、プラスチックフィルムを構成する成分を含む樹脂層を延伸することによって得ることができる。延伸の手法は、逐次二軸延伸及び同時二軸延伸が挙げられる。
【0098】
-逐次二軸延伸-
逐次二軸延伸では、キャスティングフィルムを流れ方向に延伸した後に、フィルムの幅方向の延伸を行う。
流れ方向の延伸は、通常は、一対の延伸ロールの周速の差により施される。流れ方向の延伸は、1段階で行ってもよいが、複数の延伸ロール対を使用して多段階に行っても良い。面内位相差等の光学特性の過度なバラツキを抑制するために、延伸ロールには複数のニップロールを近接させることが好ましい。流れ方向の延伸倍率は、通常は2倍以上15倍以下であり、面内位相差等の光学特性の過度なバラツキを抑制するために、好ましくは2倍以上7倍以下、より好ましくは3倍以上5倍以下、さらに好ましくは3倍以上4倍以下である。
延伸温度は、面内位相差等の光学特性の過度なバラツキを抑制するために、樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+100℃以下が好ましい。PETの場合、70℃以上120℃以下が好ましく、80℃以上110℃以下がより好ましく、95℃以上110℃以下がさらに好ましい。
延伸温度に関して、フィルムを速く昇温するなどして、低温での延伸区間を短くすることにより、面内位相差の平均値が小さくなる傾向がある。一方、フィルムを遅く昇温するなどして、低温での延伸区間を長くすることにより、配向性が高まり、面内位相差の平均値が大きくなるとともに、遅相軸のバラツキが小さくなる傾向がある。
なお、延伸時の加熱の際、乱流を生じるヒーターを用いることが好ましい。乱流を含む風で加熱することにより、フィルム面内の微細な領域で温度差が生じ、前記温度差によって配向軸に微細なズレが生じ、条件2を満たしやすくできる。また、プラスチックフィルムが条件2を満たすことにより、ΔEabの最大値と最小値との差を17.0未満にしやすくできる。
【0099】
流れ方向に延伸したフィルムに、易滑性、易接着性、帯電防止性などの機能をインラインコーティングにより付与してもよい。また、インラインコーティングの前に、必要に応じてコロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理などの表面処理を施してもよい。
このようにインラインコーティングに形成される塗膜は厚み10nm以上2000nm以下程度のごく薄いものである(また、前記塗膜は延伸処理によりさらに薄く引き延ばされる。)。本明細書では、このような薄い層は、プラスチックフィルムを構成する層の数としてカウントしないものとする。
【0100】
幅方向の延伸は、通常は、テンター法を用いて、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、幅方向に延伸する。幅方向の延伸倍率は、通常は2倍以上15倍以下であり、面内位相差等の光学特性の過度なバラツキを抑制するために、好ましくは2倍以上5倍以下、より好ましくは3倍以上5倍以下、さらに好ましくは3倍以上4.5倍以下である。また、縦延伸倍率よりも幅延伸倍率を高くすることが好ましい。
延伸温度は、樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+120℃以下が好ましく、上流から下流に行くに従って温度が高くなっていくことが好ましい。具体的には、横延伸区間を2分割した場合、上流の温度と下流の温度の差は好ましくは20℃以上であり、より好ましくは30℃以上、さらに好ましくは35℃以上、よりさらに好ましくは40℃以上である。また、PETの場合、1段目の延伸温度は80℃以上120℃以下が好ましく、90℃以上110℃以下がより好ましく、95℃以上105℃以下がさらに好ましい。
【0101】
上記のように逐次二軸延伸されたプラスチックフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、テンター内で延伸温度以上融点未満の熱処理を行うのが好ましい。具体的には、PETの場合、150℃以上255℃以下の範囲で熱固定を行うことが好ましく、200℃以上250℃以下がより好ましい。また、面内位相差等の光学特性の過度なバラツキを抑制するために、熱処理前半で1%以上10%以下の追延伸を行うことが好ましい。
プラスチックフィルムを熱処理した後は、室温まで徐冷した後に巻き取られる。また、必要に応じて、熱処理及び徐冷の際に弛緩処理などを併用してもよい。熱処理時の弛緩率は、面内位相差等の光学特性の過度なバラツキを抑制するために、0.5%以上5%以下が好ましく、0.5%以上3%以下がより好ましく、0.8%以上2.5%以下がさらに好ましく、1%以上2%以下がよりさらに好ましい。また、徐冷時の弛緩率は、面内位相差等の光学特性の過度なバラツキを抑制するために、0.5%以上3%以下が好ましく、0.5%以上2%以下がより好ましく、0.5%以上1.5%以下がさらに好ましく、0.5%以上1.0%以下がよりさらに好ましい。徐冷時の温度は、平面性を良好にするために、80℃以上150℃以下が好ましく、90℃以上130℃以下がより好ましく、100℃以上130℃以下がさらに好ましく、100℃以上120℃以下がよりさらに好ましい。
【0102】
-同時二軸延伸-
同時二軸延伸は、キャスティングフィルムを同時二軸テンターへ導き、フィルムの両端をクリップで把持しながら搬送して、流れ方向と幅方向に同時および/または段階的に延伸する。同時二軸延伸機としては、パンタグラフ方式、スクリュー方式、駆動モーター方式、リニアモーター方式があるが、任意に延伸倍率を変更可能であり、任意の場所で弛緩処理を行うことができる駆動モーター方式もしくはリニアモーター方式が好ましい。
【0103】
同時二軸延伸の倍率は、面積倍率として通常は6倍以上50倍以下である。面積倍率は、面内位相差等の光学特性の過度なバラツキを抑制するために、好ましくは8倍以上30倍以下、より好ましくは9倍以上25倍以下、さらに好ましくは9倍以上20倍以下、よりさらに好ましくは10倍以上15倍以下である。同時二軸延伸では、流れ方向の延伸倍率及び幅方向の延伸倍率が2倍以上15倍以下の範囲内において、前記の面積倍率となるように調整することが好ましい。
また、同時二軸延伸の場合には、面内の配向差を抑制するために、流れ方向及び幅方向の延伸倍率をほぼ同一とするとともに、流れ方向及び幅方向の延伸速度もほぼ同一とすることが好ましい。
【0104】
同時二軸延伸の延伸温度は、面内位相差等の光学特性の過度なバラツキを抑制するために、樹脂のガラス転移温度以上ガラス転移温度+120℃以下が好ましい。PETの場合、80℃以上160℃以下が好ましく、90℃以上150℃以下がより好ましく、100℃以上140℃以下がさらに好ましい。
【0105】
同時二軸延伸されたフィルムは、平面性、寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内の熱固定室で延伸温度以上融点未満の熱処理を行うのが好ましい。前記熱処理の条件は、逐次二軸延伸後の熱処理条件と同様である。
【0106】
<低屈折率層>
低屈折率層は、光学フィルムの反射防止性を高めるとともに、裸眼で視認した際の虹ムラを抑制しやすくする役割を有する。
画像表示装置の内部から視認者側に向かう光は、偏光子を通過した段階では直線偏光であるが、二軸延伸プラスチックフィルムを通過した後には、直線偏光の偏光状態が乱れて、P波及びS波が混在した光となる。そして、P波の反射率とS波の反射率とには差があり、かつ、反射率差には波長依存性があるため、裸眼で虹ムラが視認されると考えられる。ここで、二軸延伸プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する場合には、前述の反射率差を小さくすることができるため、虹ムラを抑制しやすくできると考えられる。但し、単に、汎用的な二軸延伸プラスチックフィルム上に低屈折率層を形成するのみでは、ΔEabの最大値と最小値との差を前記範囲とすることは困難であり、虹ムラを高いレベルで抑制することはできない。ΔEabの最大値と最小値との差を前記範囲にしやすくするためには、上述したように、二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸の向きにバラツキを付与することが好適である。
低屈折率層は、光学フィルムの二軸延伸プラスチックフィルムから最も離れた側に形成することが好ましい。なお、低屈折率層よりも二軸延伸プラスチックフィルム側に後述する高屈折率層を低屈折率層に隣接して形成することで、反射防止性をより高めることができるとともに、虹ムラをより抑制しやすくできる。
【0107】
低屈折率層の屈折率は、1.10以上1.48以下が好ましく、1.20以上1.45以下がより好ましく、1.26以上1.40以下がより好ましく、1.28以上1.38以下がより好ましく、1.30以上1.32以下がより好ましい。
また、低屈折率層の厚みは、80nm以上120nm以下が好ましく、85nm以上110nm以下がより好ましく、90nm以上105nm以下がより好ましい。また、低屈折率層の厚みは、中空粒子等の低屈折率粒子の平均粒子径よりも大きいことが好ましい。
【0108】
低屈折率層を形成する手法としては、ウェット法とドライ法とに大別できる。ウェット法としては、金属アルコキシド等を用いてゾルゲル法により形成する手法、フッ素樹脂のような低屈折率の樹脂を塗工して形成する手法、樹脂組成物に低屈折率粒子を含有させた低屈折率層形成用塗布液を塗工して形成する手法が挙げられる。ドライ法としては、後述する低屈折率粒子の中から所望の屈折率を有する粒子を選び、物理気相成長法又は化学気相成長法により形成する手法が挙げられる。
ウェット法は、生産効率、斜め反射色相の抑制、及び耐薬品性の点で、ドライ法よりも優れている。また、ウェット法の中でも、密着性、耐水性、耐擦傷性及び低屈折率化のために、バインダー樹脂組成物に低屈折率粒子を含有させた低屈折率層形成用塗布液により形成することが好ましい。
【0109】
低屈折率層は、通常、光学フィルムの最表面に位置する。このため、低屈折率層には良好な耐擦傷性が求められており、汎用の低屈折率層も所定の耐擦傷性を有するように設計されている。
近年、低屈折率層の屈折率を下げるために、低屈折率粒子として粒子径の大きい中空粒子が用いられるようになっている。本発明者らは、このように粒子径の大きい中空粒子を含む低屈折率層の表面を、微細な固形物(例えば砂)のみが付着したもの、又は油分のみが付着したもので擦っても傷が視認できない場合でも、固形物及び油分の両方が付着したもので擦った場合に傷が付くという課題(以下、この課題を「オイルダスト耐性」と称する場合がある。)を見出した。固形物及び油分が付着したもので擦る動作は、例えば、化粧品及び食品等に含まれる油分と、大気中に含まれる砂とが付着した指で使用者がタッチパネル式の画像表示装置を操作する動作に相当する。
低屈折率層のオイルダスト耐性を良好にすることは、虹ムラ抑制効果を長期に渡って維持し得ることにつながる点で好ましい。
【0110】
本発明者らが検討した結果、上述の傷は、主として、低屈折率層に含まれる中空粒子の一部分が欠けたり、中空粒子が脱落したりすることによって発生することを見出した。この原因として、低屈折率層の表面に形成された中空粒子に起因する凹凸が大きいことが考えられた。すなわち、固形物及び油分が付着した指で低屈折率層表面を擦ると、油分がバインダーとなり固形物が指に付着したまま、指が低屈折率層表面を移動する。このとき、低屈折率層表面の凹部に固形物の一部(例えば砂の尖った箇所)が入り込む現象、及び、凹部に入り込んだ固形物が指とともに凹部を抜けて凸部(中空粒子)を乗り越える現象が生じやすくなり、その際に凸部(中空粒子)に大きな力がかかるため、中空粒子が損傷したり脱落したりすると考えられた。また、凹部に位置する樹脂自体も固形物による摩擦で傷付き、樹脂の損傷により中空粒子がより脱落しやすくなったと考えられた。
本発明者らは鋭意検討を行い、オイルダスト耐性を付与するためには、低屈折率粒子として中空粒子と非中空粒子とを併用し、かつ、中空粒子と非中空粒子とを均一に分散することが有効であることを見出した。
図8に、中空粒子と非中空粒子とが均一に分散した低屈折率層、
図9に、中空粒子と非中空粒子とが均一に分散していない低屈折率層の断面写真を示す。
図8及び
図9の断面写真は、日立ハイテク社(Hitachi High-Tech Corporation)の電子顕微鏡「品番:H-7650」を用い、エミッション電流:10μA、加速電圧100keV、フィラメント電圧20Vの条件で観察し、取得したものである。
【0111】
オイルダスト耐性を良好にするために、低屈折率粒子は、中空粒子及び非中空粒子を含むことが好ましい。
中空粒子及び非中空粒子の材質は、シリカ及びフッ化マグネシウム等の無機化合物、有機化合物のいずれであってもよいが、低屈折率化及び強度のためにシリカが好ましい。以下、中空シリカ粒子及び非中空シリカ粒子を中心として説明する。
【0112】
中空シリカ粒子とは、シリカからなる外殻層を有し、外殻層に囲まれた粒子内部が空洞であり、空洞の内部に空気を含む粒子をいう。中空シリカ粒子は、空気を含むことにより、シリカ本来の屈折率に比べて気体の占有率に比例して屈折率が低下する粒子である。非中空シリカ粒子とは、中空シリカ粒子のように内部が空洞となっていない粒子である。非中空シリカ粒子は、例えば中実のシリカ粒子である。
中空シリカ粒子及び非中空シリカ粒子の形状は、特に限定はなく、真球状、回転楕円体状、及び、球体に近似できる多面体形状等の略球状などであってもよい。なかでも、耐擦傷性を考慮すると、真球状、回転楕円体状または略球状であることが好ましい。
【0113】
中空シリカ粒子は、内部に空気を含むことから、低屈折率層全体の屈折率を低下させる役割を果たす。空気の比率を高めた粒子径の大きい中空シリカ粒子を用いることにより、低屈折率層の屈折率をより低下させることができる。一方で、中空シリカ粒子は、機械的強度に劣る傾向がある。特に、空気の比率を高めた粒子径の大きい中空シリカ粒子を用いた場合、低屈折率層の耐擦傷性を低下させやすい傾向がある。
非中空シリカ粒子は、バインダー樹脂中に分散することにより、低屈折率層の耐擦傷性を向上させる役割を果たす。
【0114】
中空シリカ粒子及び非中空シリカ粒子を高濃度でバインダー樹脂中に含有させつつ、粒子を樹脂内で膜厚方向に均一に分散させるには、中空シリカ粒子の間が近接し、更に、中空シリカ粒子の間に非中空粒子が入り込めるように、中空シリカ粒子の平均粒子径及び非中空シリカ粒子の平均粒子径を設定することが好ましい。具体的に、中空シリカ粒子の平均粒子径に対する非中空シリカ粒子の平均粒子径の比(非中空シリカ粒子の平均粒子径/中空シリカ粒子の平均粒子径)は、0.29以下であることが好ましく、0.27以下であることがより好ましい。また、前記平均粒子径の比は、0.05以上であることが好ましく、0.10以上であることがより好ましい。
光学的特性および機械的強度を考慮すると、中空シリカ粒子の平均粒子径は、20nm以上100nm以下であることが好ましい。低屈折率層全体の屈折率を低くしやすいため、中空シリカ粒子の平均粒子径は、50nm以上100nm以下であることがより好ましく、60nm以上80nm以下であることがさらに好ましい。また、非中空シリカ粒子の凝集を防止しつつ分散性を考慮すると、非中空シリカ粒子の平均粒子径は、5nm以上20nm以下であることが好ましく、10nm以上15nm以下であることがより好ましい。
【0115】
中空シリカ粒子及び非中空シリカ粒子は、表面がシランカップリング剤で被覆されていることが好ましい。(メタ)アクリロイル基又はエポキシ基を有するシランカップリング剤を用いることがより好ましい。
シリカ粒子にシランカップリング剤による表面処理を施すことにより、シリカ粒子とバインダー樹脂との親和性が向上し、シリカ粒子の凝集が生じにくくなる。このため、シリカ粒子の分散が均一となりやすい。
【0116】
シランカップリング剤としては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、1,6-ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン及びビニルトリエトキシシラン等が挙げられる。特に、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、及び、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシランから選ばれる1種以上を用いることが好ましい。
【0117】
中空シリカ粒子の含有量が多くなるほど、バインダー樹脂中の中空シリカ粒子の充填率が高くなり、低屈折率層の屈折率が低下する。このため、中空シリカ粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して100質量部以上であることが好ましく、125質量部以上であることがより好ましい。
一方で、バインダー樹脂に対する中空シリカ粒子の含有量が多すぎると、バインダー樹脂から露出する中空シリカ粒子が増加する上、粒子間を結合するバインダー樹脂が少なくなる。このため、中空シリカ粒子が損傷したり、脱落したりしやすくなって、低屈折率層の耐擦傷性等の機械的強度が低下する傾向がある。このため、中空シリカ粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して400質量部以下であることが好ましく、300質量部以下であることがより好ましく、200質量部以下であることがさらに好ましい。
【0118】
非中空シリカ粒子の含有量が少ないと、低屈折率層の表面に非中空シリカ粒子が存在していても硬度上昇に影響を及ぼさないことがある。また、非中空シリカ粒子を多量に含有すると、バインダー樹脂の重合による収縮ムラの影響を小さくし、樹脂硬化後に低屈折率層表面に発生する凹凸を小さくすることができる。このため、非中空シリカ粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して20質量部以上であることが好ましく、40質量部以上であることがより好ましく、90質量部以上であることがさらに好ましく、100質量部以上であることがよりさらに好ましい。
一方で、非中空シリカ粒子の含有量が多すぎると、非中空シリカが凝集しやすくなり、バインダー樹脂の収縮ムラが生じ、表面の凹凸が大きくなる。このため、非中空シリカ粒子の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましく、120質量部以下であることがさらに好ましい。
【0119】
上記の割合でバインダー樹脂中に中空シリカ粒子及び非中空シリカ粒子を含有させることにより、低屈折率層のバリア性を向上させることができる。これは、シリカ粒子が高充填率で均一に分散されていることにより、ガス等の透過が阻害されているためと推測される。
また、日焼け止め及びハンドクリーム等の各種の化粧品には、揮発性の低い低分子ポリマーが含まれている場合がある。低屈折率層のバリア性を良好にすることにより、低分子ポリマーが低屈折率層の塗膜内部に浸透することを抑制でき、低分子ポリマーが塗膜に長期残存することによる不具合(例えば外観異常)を抑制することができる。
【0120】
低屈折率層のバインダー樹脂は、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましい。また、電離放射線硬化性樹脂組成物に含まれる電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましい。中でも、(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート系化合物がより好ましい。
以下、エチレン性不飽和結合基を4つ以上有する(メタ)アクリレート系化合物のことを「多官能性(メタ)アクリレート系化合物」と称する。また、エチレン性不飽和結合基を2以上3以下有する(メタ)アクリレート系化合物のことを「低官能性(メタ)アクリレート系化合物」と称する。
【0121】
(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。特に、硬化時の収縮ムラを抑制して低屈折率層表面の凹凸形状を平滑化しやすくするために、電離放射線硬化性化合物は、低官能(メタ)アクリレート系化合物を含むことが更に好ましい。
電離放射線硬化性化合物中の低官能(メタ)アクリレート系化合物の割合は60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
また、前述した硬化時の収縮ムラを抑制して低屈折率層表面の凹凸形状を平滑化しやすくするために、低官能(メタ)アクリレート系化合物は、2つのエチレン性不飽和結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物であることが好ましい。
【0122】
(メタ)アクリレート系化合物のうち、2官能(メタ)アクリレート系化合物としては、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエトキシジアクリレート、ビスフェノールAテトラプロポキシジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート等が挙げられる。
3官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸変性トリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
4官能以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの(メタ)アクリレート系化合物は、後述するように変性したものであってもよい。
【0123】
また、(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等のアクリレート系重合体等が挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、多価アルコール及び有機ジイソシアネートとヒドロキシ(メタ)アクリレートとの反応によって得られる。
また、好ましいエポキシ(メタ)アクリレートは、3官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等と多塩基酸と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレート、及び2官能以上の芳香族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等とフェノール類と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる(メタ)アクリレートである。
【0124】
また、上記(メタ)アクリレート系化合物は、架橋による収縮ムラを抑制して表面の平滑性を高めるために、分子骨格の一部を変性しているものでも良い。例えば、上記(メタ)アクリレート系化合物として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、カプロラクトン、イソシアヌル酸、アルキル、環状アルキル、芳香族、ビスフェノール等による変性がなされたものも使用することができる。特に、低屈折率粒子(中でのシリカ粒子)との親和性を高めて低屈折率粒子の凝集を抑制するために、上記(メタ)アクリレート系化合物は、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドで変性されたものが好ましい。
電離放射線硬化性化合物中のアルキレンオキサイド変性の(メタ)アクリレート系化合物の割合は60質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、95質量%以上であることがよりさらに好ましく、100質量%であることが最も好ましい。また、アルキレンオキサイド変性の(メタ)アクリレート系化合物は、低官能(メタ)アクリレート系化合物であることが好ましく、2つのエチレン性不飽和結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物であることがより好ましい。
【0125】
アルキレンオキサイド変性されてなる2つのエチレン性不飽和結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物としては、ビスフェノールFアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAアルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート及びポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられ、中でもポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートに含まれるアルキレングリコールの平均繰り返し単位は3以上5以下が好ましい。また、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートに含まれるアルキレングリコールは、エチレングリコール及び/又はポリエチレングリコールが好ましい。
アルキレンオキサイド変性されてなる3つのエチレン性不飽和結合基を有する(メタ)アクリレート系化合物としては、トリメチロールプロパンアルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート及びイソシアヌル酸アルキレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートが挙げられる。
上記電離放射線硬化性樹脂は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0126】
低屈折率層中には、防汚性及び表面平滑性のためにレベリング剤を含むことが好ましい。
レベリング剤は、フッ素系及びシリコーン系が挙げられるが、シリコーン系が好ましい。シリコーン系レベリング剤を含むことにより、低反射率層表面をより平滑にすることができる。更に、低反射率層表面の滑り性及び防汚性(指紋拭き取り性、純水及びヘキサデカンに対する大きな接触角)を良好にすることができる。
【0127】
レベリング剤の含有量は、バインダー樹脂100質量部に対して、1質量部以上25質量部以下であることが好ましく、2質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、5質量部以上18質量部以下であることがさらに好ましい。レベリング剤の含有量を1質量部以上とすることにより、防汚性等の諸性能を付与しやすくできる。また、レベリング剤の含有量を25質量部以下とすることにより、耐擦傷性の低下を抑制できる。
【0128】
低屈折率層は、最大高さ粗さRzが110nm以下であることが好ましく、90nm以下であることがより好ましく、70nm以下であることがさらに好ましく、60nm以下であることがよりさらに好ましい。また、Rz/Ra(Raは算術平均粗さ)が12.0以下であることが好ましく、10.0以下であることがより好ましい。Rz/Raを前記範囲とすることは、Rzが90nm以上110nm以下程度と大きい場合に特に有効である。
本明細書においてRa及びRzは、島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)の走査プローブ顕微鏡SPM-9600アップグレードキット取扱説明書(SPM-9600 2016年2月、P.194-195)に記載されている2次元粗さパラメータの粗さを3次元に拡張したものである。Ra及びRzは、以下のように定義される。
【0129】
(算術平均粗さRa)
粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さ(L)だけを抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向にX軸を縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、次の式で求められる。
【0130】
【0131】
(最大高さ粗さRz)
粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定した値。
【0132】
島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)の走査プローブ顕微鏡SPM‐9600を用いた場合、例えば、以下の条件でRa及びRzを測定及び解析することが好ましい。
<測定条件>
測定モード:位相
走査範囲:5μm×5μm
走査速度:0.8Hz以上1Hz以下
画素数:512×512
使用したカンチレバー:ナノワールド社(NanoWorld Holding AG,)の品番「NCHR」、共鳴周波数:320kHz、ばね定数:42N/m
<解析条件>
傾き補正:ラインフィット
【0133】
Rzが小さいことは、微小領域における中空シリカ粒子に起因する凸部が小さいことを意味している。また、Rz/Raが小さいことは、微小領域におけるシリカ粒子に起因する凹凸が均一であり、凹凸の平均的な標高差に対して突出した凹凸を有さないことを意味している。なお、本開示ではRaの数値は特に限定されないが、Raは15nm以下であることが好ましく、12nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることがさらに好ましく、6.5nm以下であることがよりさらに好ましい。
低屈折率層中の低屈折率粒子を均一に分散したり、低屈折率層の収縮ムラを抑制したりすることにより、上記のRz及びRz/Raの範囲を満たしやすくなる。
【0134】
低屈折率層表面のRz及びRz/Raが上記範囲であることにより、固形物が低屈折率層表面の凸部(表面近傍に存在する中空シリカ粒子に起因)を乗り越える際の抵抗を小さくすることができる。このため、油分を伴う砂で荷重をかけながら擦っても、固形物が低屈折率層表面を滑らかに移動すると考えられる。また、凹部の硬度自体も上がっていると考えられる。この結果、中空シリカ粒子の破損又は脱落が防止され、バインダー樹脂自体の損傷も防止されたと推測できる。
【0135】
Rz及びRa等の表面粗さは、特に断りのない限り16箇所の測定値の最小値及び最大値を除外した14箇所の測定値の平均値を意味する。
本明細書において、上記16の測定箇所は、測定サンプルの外縁から0.5cmの領域を余白として、前記余白よりも内側の領域に関して、縦方向及び横方向を5等分する線を引いた際の、交点の16箇所を測定の中心とすることが好ましい。測定サンプルは、5cm×5cmとすることが好ましい。
【0136】
低屈折率層は、低屈折率層を構成する各成分を溶解又は分散してなる低屈折率層形成塗布液を塗布、乾燥することにより形成することができる。通常、低屈折率層形成塗布液中には、粘度を調節したり、各成分を溶解または分散可能としたりするために溶剤を用いる。
溶剤は、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、脂肪族炭化水素類(ヘキサン等)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサン等)、芳香族炭化水素類(トルエン、キシレン等)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等)、アルコール類(ブタノール、シクロヘキサノール等)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(ジメチルスルホキシド等)、グリコールエーテル類(1-メトキシ-2-プロピルアセテート等)、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等)等が例示でき、これらの混合物であってもよい。
【0137】
溶剤の揮発が速すぎる場合、低屈折率層形成用塗布液の乾燥時に溶剤が激しく対流する。このため、塗布液中のシリカ粒子が均一分散の状態であっても、乾燥時の溶剤の激しい対流によって均一分散の状態が崩れやすくなる。このため、溶剤としては、蒸発速度が遅いものを含むことが好ましい。具体的には、相対蒸発速度(n-酢酸ブチルの蒸発速度を100としたときの相対蒸発速度)が70以下の溶剤を含むことが好ましく、30以上60以下の溶剤を含むことがより好ましい。また、相対蒸発速度が70以下の溶剤は、全溶剤の10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
蒸発速度が遅い溶剤の相対蒸発速度の例を挙げると、イソブチルアルコールが64、1-ブタノールが47、1-メトキシ-2-プロピルアセテートが44、エチルセロソルブが38、シクロヘキサノンが32である。
なお、溶剤の残分(蒸発速度が遅い溶剤以外の溶剤)は、樹脂の溶解性に優れるものであることが好ましい。また、溶剤の残分は、相対蒸発速度が100以上のものが好ましい。
【0138】
また、乾燥時の溶剤の対流を抑制しシリカ粒子の分散性を良好にするために、低屈折率層形成時の乾燥温度は、できる限り低い方が好ましい。乾燥温度は、溶剤の種類、シリカ粒子の分散性、生産速度等を考慮して適宜設定することができる。
【0139】
<反射率>
本開示の光学フィルムは、低屈折率層側から測定した反射率が2.00%以下、1.70%以下であることが好ましく、1.20%以下であることがより好ましく、1.00%以下であることがさらに好ましい。
【0140】
本明細書において、反射率とは、CIE1931標準表色系の視感反射率Y値のことをいう。反射率は、任意の10箇所の平均値として算出することが好ましい。
また、本明細書において、光学フィルムの反射率は、光学フィルムの反射率測定面とは反対側に、透明粘着剤層を介して黒色板を貼り合わせたサンプルを作製し、前記サンプルの低屈折率層側から入射角5°で光を入射させて測定するものとする。反射率を測定する際の光源はC光源とすることが好ましい。
サンプルの透明粘着剤層と接する部材(例えば二軸延伸プラスチックフィルム)と、透明粘着剤層との屈折率差は0.15以内とすることが好ましく、0.10以内とすることがより好ましく、0.05以内とすることがより好ましく、0.01以内とすることがより好ましい。また、黒色板は、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が1%以下のものが好ましく、0%のものがより好ましい。また、黒色板を構成する樹脂の屈折率と、透明粘着剤層との屈折率差は0.15以内とすることが好ましく、0.10以内とすることがより好ましく、0.05以内とすることがより好ましく、0.01以内とすることがより好ましい。
【0141】
<ヘイズ、全光線透過率>
光学フィルムは、JIS K7136:2000のヘイズが5%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。また、光学フィルムは、JIS K7136:2000のヘイズが0.5%以上であることが好ましく、1.0%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることがさらに好ましい。
また、光学フィルムは、JIS K7361-1:1997の全光線透過率が90%以上であることが好ましく、91%以上であることがより好ましく、92%以上であることがさらに好ましい。
【0142】
<その他の層>
本開示の光学フィルムは、二軸延伸プラスチックフィルム及び低屈折率層以外のその他の層を有していてもよい。なお、低屈折率層、及び、低屈折率層以外のその他の層は、光学的等方性であることが好ましい。光学的等方性を有する層とは、面内位相差が20nm未満のものを指し、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下である。
例えば、本開示の光学フィルムは、二軸延伸プラスチックフィルムと低屈折率層との間に、ハードコート層、防眩層及び高屈折率層から選ばれる1種以上の層を有することが好ましい。
【0143】
《高屈折率層》
高屈折率層は、低屈折率層よりも二軸延伸プラスチックフィルム側に必要に応じて形成される。なお、後述するハードコート層を有する場合、高屈折率層は、ハードコート層と低屈折率層との間に形成することが好ましい。
【0144】
高屈折率層は、屈折率が1.53以上1.85以下が好ましく、1.54以上1.80以下がより好ましく、1.55以上1.75以下がより好ましく、1.56以上1.70以下がより好ましい。
また、高屈折率層の厚みは、200nm以下が好ましく、50nm以上180nm以下がより好ましく、70nm以上150nm以下がさらに好ましい。なお、高屈折率ハードコート層とする場合には、ハードコート層の厚みに準じることが好ましい。
【0145】
高屈折率層は、例えば、バインダー樹脂組成物及び高屈折率粒子を含む高屈折率層形成用塗布液から形成することができる。前記バインダー樹脂組成物としては、例えば、後述するハードコート層で例示する硬化性樹脂組成物が挙げられる。
【0146】
高屈折率粒子としては、五酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム、スズドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化スズ、酸化イットリウム及び酸化ジルコニウム等が挙げられる。なお、五酸化アンチモンの屈折率は約1.79、酸化亜鉛の屈折率は約1.90、酸化チタンの屈折率は約2.3以上2.7以下、酸化セリウムの屈折率は約1.95、スズドープ酸化インジウムの屈折率は約1.95以上2.00以下、アンチモンドープ酸化スズの屈折率は約1.75以上1.85以下、酸化イットリウムの屈折率は約1.87、酸化ジルコニウムの屈折率は2.10である。
【0147】
高屈折率粒子の平均粒子径は、2nm以上が好ましく、5nm以上がより好ましく、10nm以上がさらに好ましい。また、高屈折率粒子の平均粒子径は、白化抑制及び透明性のために、200nm以下が好ましく、100nm以下がより好ましく、80nm以下がより好ましく、60nm以下がより好ましく、30nm以下がより好ましい。高屈折率粒子の平均粒子径が小さいほど透明性が良好であり、特に、60nm以下とすることにより透明性を極めて良好にすることができる。
【0148】
高屈折率粒子又は低屈折率粒子の平均粒子径は、以下の(y1)~(y3)の作業により算出できる。
(y1)高屈折率層又は低屈折率層の断面をTEM又はSTEMで撮像する。TEM又はSTEMの加速電圧は10kv以上30kV以下、倍率は5万倍以上30万倍以下とすることが好ましい。
(y2)観察画像から任意の10個の粒子を抽出し、個々の粒子の粒子径を算出する。粒子径は、粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、前記2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。粒子が凝集している場合、凝集した粒子を一個の粒子とみなして測定する。
(y3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を、高屈折率粒子又は低屈折率粒子の平均粒子径とする。
【0149】
《ハードコート層》
ハードコート層は、光学フィルムの耐擦傷性を向上するために、必要に応じて形成される。ハードコート層は、二軸延伸プラスチックフィルムと低屈折率層との間に形成することが好ましい。なお、光学フィルムがさらに高屈折率層を有する場合、二軸延伸プラスチックフィルム上に、ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層をこの順に配置することが好ましい。
【0150】
ハードコート層は、耐擦傷性を良好にするために、熱硬化性樹脂組成物又は電離放射線硬化性樹脂組成物等の硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことが好ましく、電離放射線硬化性樹脂組成物の硬化物を含むことがより好ましい。
【0151】
熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも熱硬化性樹脂を含む組成物であり、加熱により、硬化する樹脂組成物である。熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂組成物には、これら硬化性樹脂に、必要に応じて硬化剤が添加される。
【0152】
電離放射線硬化性樹脂組成物は、電離放射線硬化性官能基を有する化合物(以下、「電離放射線硬化性化合物」ともいう)を含む組成物である。電離放射線硬化性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合基、及びエポキシ基、オキセタニル基等が挙げられる。電離放射線硬化性化合物としては、エチレン性不飽和結合基を有する化合物が好ましく、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する化合物がより好ましく、中でも、エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する(メタ)アクリレート系化合物が更に好ましい。エチレン性不飽和結合基を2つ以上有する(メタ)アクリレート系化合物としては、モノマー及びオリゴマーのいずれも用いることができる。
なお、電離放射線とは、電磁波又は荷電粒子線のうち、分子を重合あるいは架橋し得るエネルギー量子を有するものを意味し、通常、紫外線(UV)又は電子線(EB)が用いられるが、その他、X線、γ線などの電磁波、α線、イオン線などの荷電粒子線も使用可能である。
本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0153】
ハードコート層の厚みは、耐擦傷性を良好にするために、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、1.0μm以上がさらに好ましく、2.0μm以上がよりさらに好ましい。また、ハードコート層の厚みは、カール抑制のために、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がより好ましい。ハードコート層の厚みは、耐屈曲性を良好にするためには10μm以下が好ましく、8μm以下がより好ましい。
【0154】
《防眩層》
防眩層は、例えば、バインダー樹脂組成物及び粒子を含む防眩層形成用塗布液から形成することができる。前記バインダー樹脂組成物としては、例えば、ハードコート層で例示した硬化性樹脂組成物を用いることができる。
【0155】
粒子は、有機粒子及び無機粒子の何れも用いることができる。有機粒子としては、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル-スチレン共重合体、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ベンゾグアナミン-メラミン-ホルムアルデヒド縮合物、シリコーン、フッ素系樹脂及びポリエステル系樹脂等からなる粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、アルミナ、アンチモン、ジルコニア及びチタニア等からなる粒子が挙げられる。
【0156】
防眩層中の粒子の平均粒子径は、防眩層の厚みにより異なるため一概には言えないが、1.0μm以上10.0μm以下が好ましく、2.0μm以上8.0μm以下であることがより好ましく、3.0μm以上6.0μm以下であることがさらに好ましい。
【0157】
防眩層の粒子の平均粒子径は、以下の(z1)~(z3)の作業により算出できる。
(z1)光学顕微鏡にて防眩層断面の透過観察画像を撮像する。倍率は500倍以上2000倍以下が好ましい。
(z2)観察画像から任意の10個の粒子を抽出し、個々の粒子の粒子径を算出する。粒子径は、粒子の断面を任意の平行な2本の直線で挟んだとき、前記2本の直線間距離が最大となるような2本の直線の組み合わせにおける直線間距離として測定される。
(z3)同じサンプルの別画面の観察画像において同様の作業を5回行って、合計50個分の粒子径の数平均から得られる値を防眩層中の粒子の平均粒子径とする。
【0158】
防眩層中の粒子の含有量は、目的とする防眩性の程度により異なるため一概にはいえないが、樹脂成分100質量部に対して、1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、5質量部以上50質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがさらに好ましい。
なお、防眩層は、帯電防止性を付与したり、屈折率を制御したり、硬化性樹脂組成物の硬化による防眩層の収縮を調整したりするために、均粒子径500nm未満の微粒子を含有してもよい。
【0159】
防眩層の厚みは、0.5μm以上が好ましく、1.0μm以上がより好ましく、2.0μm以上がさらに好ましい。また、防眩層の厚みは、50μm以下が好ましく、30μm以上がより好ましく、20μm以下がより好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下がより好ましい。防眩層の厚みは、耐屈曲性を良好にするためには10μm以下であることが好ましく、8μm以下がより好ましい。
【0160】
<層構成の例>
以下の(1)~(5)は、本開示の光学フィルムの層構成の例である。
(1)二軸延伸プラスチックフィルム上に低屈折率層を有する構成。
(2)二軸延伸プラスチックフィルム上に、ハードコート層及び低屈折率層をこの順に有する構成。
(3)二軸延伸プラスチックフィルム上に、高屈折率層及び低屈折率層をこの順に有する構成。
(4)二軸延伸プラスチックフィルム上に、防眩層及び低屈折率層をこの順に有する構成。
(5)二軸延伸プラスチックフィルム上に、ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層をこの順に有する構成。
【0161】
光学フィルムの全体厚みは、機械特性を維持するとともに、面内位相差等の光学特性の過度なバラツキを抑制し、ブラックアウトを良好に抑制するため、100μm以下が好ましく、60μm以下がより好ましい。また、光学フィルムにおいて、二軸延伸プラスチックフィルムの厚みと、二軸延伸プラスチックフィルム以外の層の厚みとのバランスは、10:4~10:0.5が好ましい。
【0162】
<形態、大きさ>
光学フィルムは、所定の大きさにカットした枚葉状の形態でもよいし、長尺シートをロール状に巻き取ったロール状の形態であってもよい。また、枚葉の大きさは特に限定されないが、最大径が2インチ以上500インチ以下程度であり、本開示では30インチ以上80インチ以下が好適である。「最大径」とは、光学フィルムの任意の2点を結んだ際の最大長さをいうものとする。例えば、光学フィルムが長方形の場合は、長方形の領域の対角線が最大径となる。また、光学フィルムが円形の場合は、直径が最大径となる。
ロール状の幅及び長さは特に限定されないが、一般的には、幅は500mm以上3000mm以下、長さは100m以上5000m以下程度である。ロール状の形態の光学フィルムは、画像表示装置等の大きさに合わせて、枚葉状にカットして用いることができる。カットする際、物性が安定しないロール端部は除外することが好ましい。
また、枚葉の形状も特に限定されず、例えば、多角形(三角形、四角形、五角形等)、円形であってもよいし、ランダムな不定形であってもよい。より具体的には、光学フィルムが四角形状である場合には、縦横比は表示画面として問題がなければ特に限定されない。例えば、横:縦=1:1、4:3、16:10、16:9、2:1等が挙げられる。
【0163】
<用途>
本開示の光学フィルムは、画像表示装置用の光学フィルムとして好適に用いることができる。
また、本開示の光学フィルムは、画像表示装置の表示素子の光出射面側に配置する光学フィルムとして好適に用いることができる。この際、表示素子と、本開示の光学フィルムとの間に偏光子を有することが好ましい。
なお、二軸延伸プラスチックフィルムが条件2を満たす場合には、折り曲げの方向に関わらず、屈曲試験後に曲げ癖が残ったり、破断したりすることを抑制できる。このため、二軸延伸プラスチックフィルムが条件2を満たす場合には、曲面の画像表示装置、折り畳み可能な画像表示装置のプラスチックフィルムとしてより好適に用いることができる。
【0164】
[偏光板]
本開示の偏光板は、偏光子と、前記偏光子の一方の側に配置されてなる第1の透明保護板と、前記偏光子の他方の側に配置されてなる第2の透明保護板とを有する偏光板であって、前記第1の透明保護板及び前記第2の透明保護板の少なくとも一方が上述した本開示の光学フィルムであるものである。
偏光板において、二軸延伸プラスチックフィルム側の面が偏光子側を向くように光学フィルムを配置することが好ましい。
【0165】
図5は、本開示の偏光板700の実施の形態を示す断面図である。
図5の偏光板700は、偏光子300と、前記偏光子の一方の側に配置されてなる第1の透明保護板(500)と、前記偏光子の他方の側に配置されてなる第2の透明保護板(600)とを有している。また、
図5の偏光板700は、第1の透明保護板(500)として光学フィルム100を用いている。なお、
図5の偏光板700は、偏光子300と、第1の透明保護板(500)及び第2の透明保護板(600)とが、接着剤層400を介して積層されている。
【0166】
偏光板は、例えば、λ/4位相差板との組み合わせにより反射防止性を付与するために使用される。この場合、画像表示装置の表示素子上にλ/4位相差板を配置し、λ/4位相差板よりも視認者側に偏光板が配置される。
また、偏光板を液晶表示装置用に用いる場合、液晶シャッターの機能を付与するために使用される。この場合、液晶表示装置は、下側偏光板、液晶表示素子、上側偏光板の順に配置され、下側偏光板の偏光子の吸収軸と上側偏光板の偏光子の吸収軸とが直交して配置される。液晶表示装置の構成では、上側偏光板として本開示の偏光板を用いることが好ましい。
【0167】
<透明保護板>
本開示の偏光板は、第1の透明保護板及び第2の透明保護板の少なくとも一方として上述した本開示の光学フィルムを用いる。第1の透明保護板及び第2の透明保護板の両方が上述した本開示の光学フィルムであることが好ましい。
【0168】
第1の透明保護板及び第2の透明保護板の一方が上述した本開示の光学フィルムである場合、他方の透明保護板は特に限定されないが、光学的等方性の透明保護板が好ましい。本明細書において、光学的等方性の透明保護板とは、面内位相差が20nm未満のものを指し、好ましくは10nm以下、より好ましくは5nm以下である。光学的等方性を有する透明保護板は、アクリルフィルム、環状ポリオレフィンフィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルムなどが挙げられる。二軸延伸プラスチックフィルムと透湿性が似ている方が、偏光板が吸水した折に歪みにくく、また良好に偏光子を保護できるため、アクリルフィルム、環状ポリオレフィンフィルムが好ましい。
また、第1の透明保護板及び第2の透明保護板の一方のみが上述した本開示の光学フィルムである場合、光出射側の透明保護板として上述した本開示の光学フィルムを用いることが好ましい。
【0169】
<偏光子>
偏光子としては、例えば、ヨウ素等により染色したフィルムを延伸してなるシート型偏光子(ポリビニルアルコールフィルム、ポリビニルホルマールフィルム、ポリビニルアセタールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体系ケン化フィルム等)、平行に並べられた多数の金属ワイヤからなるワイヤーグリッド型偏光子、リオトロピック液晶及び二色性ゲスト-ホスト材料を塗布した塗布型偏光子、多層薄膜型偏光子等が挙げられる。なお、これらの偏光子は、透過しない偏光成分を反射する機能を備えた反射型偏光子であってもよい。
【0170】
偏光子は、その吸収軸と、二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が、90度±5度以内となるように配置することが好ましい。前記角は、より好ましくは90度±3度以内、さらに好ましくは90度±1度以内である。
【0171】
[画像表示装置(1)]
本開示の画像表示装置(1)は、表示素子と、前記表示素子の光出射面側に配置されてなる偏光子及び光学フィルムとを有する画像表示装置であって、前記光学フィルムが上述した本開示の光学フィルムであり、前記偏光子の吸収軸と前記光学フィルムの前記二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内となるように配置されてなり、かつ、前記光学フィルムの前記低屈折率層側の面が前記表示素子とは反対側を向くように配置されてなるものである。前記角は、好ましくは90度±3度以内、より好ましくは90度±1度以内である。
【0172】
図6は、本開示の画像表示装置(1)及び後述の画像表示装置(2)の実施形態を示す断面図である。
図6の画像表示装置1000は、表示素子800の光出射面側(
図6の上側)に、光学フィルム100を有している。また、
図6の画像表示装置100は、何れも、表示素子800と、光学フィルム100との間に偏光子300を有している。
【0173】
なお、画像表示装置1000は、
図6の形態に限定されない。例えば、
図6では、画像表示装置1000を構成する各部材は所定の間隔を空けて配置されているが、各部材は接着剤層を介するなどして一体化して積層されていることが好ましい。また、画像表示装置は、図示しない部材(その他の光学フィルム等)を有していてもよい。
【0174】
<表示素子>
表示素子としては、液晶表示素子、EL表示素子(有機EL表示素子、無機EL表示素子)、プラズマ表示素子等が挙げられ、さらには、ミニLED、マイクロLED表示素子等のLED表示素子、QDを使用した液晶表示素子やLED表示素子などが挙げられる。
表示装置の表示素子が液晶表示素子である場合、液晶表示素子の樹脂シートとは反対側の面にはバックライトが必要である。
【0175】
また、画像表示装置は、タッチパネル機能を備えた画像表示装置であってもよい。
タッチパネルとしては、抵抗膜式、静電容量式、電磁誘導式、赤外線式、超音波式等の方式が挙げられる。
タッチパネル機能は、インセルタッチパネル液晶表示素子のように表示素子内に機能が付加されたものであってもよいし、表示素子上にタッチパネルを載置したものであってもよい。
【0176】
また、二軸延伸プラスチックフィルムが条件2を満たすものであれば、光学フィルムは、屈曲試験後に曲げ癖が残ったり、破断したりすることを抑制できる。このため、二軸延伸プラスチックフィルムが条件2を満たすものであれば、画像表示装置は、曲面の画像表示装置、折り畳み可能な画像表示装置であることが好ましい。
なお、画像表示装置が、曲面の画像表示装置、折り畳み可能な画像表示装置である場合には、表示素子は有機EL表示素子であることが好ましい。
【0177】
<その他のプラスチックフィルム>
本開示の画像表示装置は、本開示の効果を阻害しない範囲でその他のプラスチックフィルムを有していてもよい。
その他のプラスチックフィルムとしては、光学的等方性を有するものが好ましい。
【0178】
[画像表示装置(2)]
本開示の画像表示装置は、表示素子の光出射面上に、偏光子及び光学フィルムを有してなる画像表示装置であって、
前記偏光子の吸収軸の方向と、前記表示素子の左右方向又は上下方向との成す角が±5度以内となるように配置されてなり、
前記偏光子の吸収軸と、前記光学フィルムの前記二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内となるように配置されてなり、
前記光学フィルムは、面内位相差が2500nm未満である二軸延伸プラスチックフィルム上に低屈折率層を有してなり、前記低屈折率層が光学フィルムの最表面に位置してなり、かつ、ΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満である領域を有する、ものである。
ここで、積層体1Aについて、測定1Aを実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。積層体2Aについて、測定2Aを実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。測定1Aと測定2Aとの結果に基づいて、条件1AによりΔEabを算出する。
【0179】
<測定1A>
表示素子上に、偏光子及び前記光学フィルムをこの順に積層してなる積層体1Aを作製する。前記積層体1Aにおいて、前記光学フィルムは前記低屈折率層側の面が前記偏光子とは反対側を向くように配置する。また、前記偏光子は、偏光子の吸収軸と、前記表示素子の左右方向又は上下方向との成す角が±5度以内となるように配置する。さらに、前記偏光子の吸収軸と、前記光学フィルムの前記二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内となるように配置する。
前記積層体1Aの表示素子を白表示し、前記積層体1Aの前記低屈折率層側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内の任意の1mm2以上10mm2以下の領域とする。
【0180】
<測定2A>
前記測定1Aと同一の表示素子上に、偏光子を積層してなる積層体2Aを作製する。
前記積層体2Aの表示素子を白表示し、前記積層体2Aの前記偏光子側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内において測定1Aと略一致させる。
【0181】
<条件1A>
全ての仰角及び全ての方位角において、測定1AのL*値から測定2AのL*値を引いたΔL*を算出する。ΔL*の最大値から最小値までを所定の諧調でグレースケール化し、仰角を同心円、方位角を縦横で表した2次元座標にグレースケールで表示する。
2次元座標内においてΔL*が同心円状に分布する領域が2箇所存在すること、及び前記2箇所の領域が2次元座標の略対称位置にあることを確認する。
ΔL*が同心円状に分布する領域の中心に位置する仰角に関して、一方の仰角をα度、他方の仰角をβ度とする。
仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定1AのL*値、a*値及びb*値と、仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定2AのL*値、a*値及びb*値との差分から、各方位角におけるΔEabを算出する。
【0182】
画像表示装置(2)の測定1Aにおける「積層体1A」は、画像表示装置(2)を意味する。また、画像表示装置(2)の測定1Bにおける「積層体2」は、画像表示装置(2)から上述した本開示の光学フィルムを除いたものを意味する。
【0183】
本開示の画像表示装置(2)における測定1A及び測定2Aは、面光源と表示素子とが異なる以外は、上述した本開示の光学フィルムの測定1及び測定2と同じである。
また、測定1A及び測定2Aの好ましい実施形態は、測定1及び測定2の好ましい実施形態と同様である(例えば、積層体2Aの状態におけるL*値、a*値及びb*値の好ましい範囲は、積層体2の状態におけるL*値、a*値及びb*値の好ましい範囲と同様である)。また、条件1Aの好ましい実施の形態は、上述した条件1の好ましい実施形態と同様である。
【0184】
[画像表示装置の光学フィルムの選定方法]
本開示の画像表示装置の光学フィルムの選定方法は、表示素子の光出射面上に、偏光子及び光学フィルムを有してなり、前記偏光子の吸収軸の方向と、前記表示素子の左右方向又は上下方向とが平行になるように配置されてなる画像表示装置の光学フィルムの選定方法であって、面内位相差が2500nm未満である二軸延伸プラスチックフィルム上に低屈折率層を有してなる光学フィルムXであって、前記低屈折率層が光学フィルムXの最表面に位置してなり、かつ、ΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満である領域を有することを判定条件として、前記判定条件を満たす光学フィルムXを前記光学フィルムとして選定するものである。
ここで、積層体1Bについて、測定1Bを実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。積層体2Bについて、測定2Bを実施して、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。測定1Bと測定2Bとの結果に基づいて、条件1BによりΔEabを算出する。
【0185】
<測定1B>
表示素子上に、偏光子及び前記光学フィルムXをこの順に積層してなる積層体1Bを作製する。前記積層体1Bにおいて、前記光学フィルムは前記低屈折率層側の面が前記偏光子とは反対側を向くように配置する。また、前記偏光子は、偏光子の吸収軸と、前記表示素子の左右方向又は上下方向との成す角が±5度以内となるように配置する。さらに、前記偏光子の吸収軸と、前記光学フィルムXの前記二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸との成す角が90度±5度以内となるように配置する。
前記積層体1Bの表示素子を白表示し、前記積層体1Bの前記低屈折率層側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内の任意の1mm2以上10mm2以下の領域とする。
【0186】
<測定2B>
前記測定1Bと同一の表示素子上に、偏光子を積層してなる積層体2Bを作製する。
前記積層体2Bの表示素子を白表示し、前記積層体2Bの前記偏光子側から出射する透過光を仰角0度以上80度以下、方位角0度以上359度以下の範囲で1度ずつ測定し、各角度の透過光に基づき、L*a*b*表色系のL*値、a*値及びb*値を算出する。透過光の測定領域は面内において測定1Bと略一致させる。
【0187】
<条件1B>
全ての仰角及び全ての方位角において、測定1BのL*値から測定2BのL*値を引いたΔL*を算出する。ΔL*の最大値から最小値までを所定の諧調でグレースケール化し、仰角を同心円、方位角を縦横で表した2次元座標にグレースケールで表示する。
2次元座標内においてΔL*が同心円状に分布する領域が2箇所存在すること、及び前記2箇所の領域が2次元座標の略対称位置にあることを確認する。
ΔL*が同心円状に分布する領域の中心に位置する仰角に関して、一方の仰角をα度、他方の仰角をβ度とする。
仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定1BのL*値、a*値及びb*値と、仰角が(α+β)/2の時の方位角0度以上359度以下における測定2BのL*値、a*値及びb*値との差分から、各方位角におけるΔEabを算出する。
【0188】
本開示の画像表示装置の光学フィルムの選定方法において、「前記偏光子の吸収軸の方向と、前記表示素子の左右方向又は上下方向とが平行になるように配置されてなる画像表示装置」とは、前記偏光子の吸収軸の方向と、前記表示素子の左右方向又は上下方向との成す角が±5度以内であるものを意味する。また、前記成す角は、好ましくは±3度以内であり、より好ましくは±5度以内である。
【0189】
本開示の画像表示装置の光学フィルムの選定方法における測定1B及び測定2Bは、面光源と表示素子とが異なる以外は、上述した本開示の光学フィルムの測定1及び測定2と同じである。
また、測定1B及び測定2Bの好ましい実施形態は、測定1及び測定2の好ましい実施形態と同様である(例えば、積層体2Bの状態におけるL*値、a*値及びb*値の好ましい範囲は、積層体2の状態におけるL*値、a*値及びb*値の好ましい範囲と同様である)。また、条件1Bの好ましい実施の形態は、上述した条件1の好ましい実施形態と同様である。
【0190】
本開示の画像表示装置の光学フィルムの選定方法は、判定条件として、さらに追加の判定条件を有することが好ましい。追加の判定条件としては、本開示の光学フィルムの好適な実施形態(例えば、厚み方向の位相差、表面粗さ等)が挙げられる。
本開示の画像表示装置の光学フィルムの選定方法は、表示素子の光出射面側の面上に偏光子を有する画像表示装置の光学フィルムの選定方法として有用であり、中でも、偏光子の吸収軸の方向と、前記表示素子の左右方向又は上下方向とが平行になるように配置されてなる画像表示装置の光学フィルムの選定方法として有用である。
【実施例0191】
次に、本開示を実施例により更に詳細に説明するが、本開示はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0192】
1.測定、評価
以下の測定及び評価の雰囲気は、温度23℃±5℃、相対湿度40%RH以上65%RH以下とする。また、測定及び評価の前に、前記雰囲気にサンプルを30分以上晒すものとする。
【0193】
1-1.面内位相差(Re)、厚み方向の位相差(Rth)及び遅相軸の方向
後述の「2」で作製又は準備した実施例、比較例及び参考例で用いるプラスチックフィルムから縦50mm×横50mmのサンプルを切り出した。その際、プラスチックフィルムの流れ方向(MD方向)を縦方向、プラスチックフィルムの幅方向(TD方向)を横方向とみなした。前記サンプルの四隅から中央部に向かって10mm進んだ箇所の4箇所、及び前記サンプルの中央部の合計5箇所に関して、面内位相差、厚み方向の位相差及び遅相軸の方向を測定した。測定結果から算出したRe1~Re5の平均等を表1に示す。測定装置は、大塚電子社(Otsuka Electronics Co.,Ltd.)製の商品名「RETS-100(測定スポット:直径5mm)」を用いた。なお、遅相軸の方向は、プラスチックフィルムの流れ方向(MD方向)を基準の0度として、0度以上90度以下の範囲で測定した。
【0194】
1-2.耐屈曲性
<TD方向>
後述の「2」で作製又は準備した実施例、比較例及び参考例で用いるプラスチックフィルムから、短辺(TD方向)30mm×長辺(MD方向)100mmの短冊状のサンプルを切り出した。耐久試験機(製品名「DLDMLH-FS」、ユアサシステム機器社(YUASA SYSTEM CO., LTD.))に、前記サンプルの短辺(30mm)側の両端を固定し(先端から10mmの領域を固定)、180度折り畳む連続折り畳み試験を10万回行った。折り畳み速度は、1分間に120回とした。折り畳み試験のより詳細な手法を下記に示す。
折り畳み試験後に短冊状のサンプルを水平な台に置き、台からサンプルの端部が浮き上がる角度を測定した。角度が15度以下であれば合格レベルである。結果を表1に示す。なお、サンプルが途中で破断したものは「破断」とした。
<MD方向>
後述の「2」で作製又は準備した実施例、比較例及び参考例で用いるプラスチックフィルムから、短辺(MD方向)30mm×長辺(TD方向)100mmの短冊状のサンプルを切り出し、上記と同様の評価を行った。
【0195】
<折り畳み試験の詳細>
図10(A)に示すように連続折り畳み試験においては、まず、プラスチックフィルム10の辺部10Cと、辺部10Cと対向する辺部10Dとを、平行に配置された固定部60でそれぞれ固定する。固定部60は水平方向にスライド移動可能なっている。
次に、
図10(B)に示すように、固定部60を互いに近接するように移動させることで、プラスチックフィルム10を折り畳むように変形させ、更に、
図10(C)に示すように、プラスチックフィルム10の固定部60で固定された対向する2つの辺部の間隔が2mmとなる位置まで固定部60を移動させた後、固定部60を逆方向に移動させてプラスチックフィルム10の変形を解消させる。
図10(A)~(C)に示すように固定部60を移動させることで、プラスチックフィルム10を180度折り畳むことができる。また、プラスチックフィルム10の屈曲部10Eが固定部60の下端からはみ出さないように連続折り畳み試験を行い、かつ固定部60が最接近したときの間隔を2mmに制御することで、光学フィルム10の対向する2つの辺部の間隔を2mmにすることができる。
【0196】
1-3.ΔEabの最大値と最小値との差の算出
液晶表示素子上に偏光子を有してなる液晶表示装置(EIZO社の商品名「EV2450」、横:527.0mm、縦:596.4mm、偏光子の吸収軸は画面の縦方向と平行、バックライト:白色発光ダイオードを用いたバックライト)を準備した。前記液晶表示装置を積層体2とみなした。前記液晶表示装置(積層体2)を暗室環境で白表示し、それぞれの角度において、ELDIM社の商品名「EzContrast」を用いて、本明細書の測定2を行った。測定領域は直径2mmの円(面積約3.14mm2である。
次いで、上記液晶表示装置上に実施例及び比較例の光学フィルムを接着剤層を介して配置してなる積層体1を作製した。この際、記偏光子の吸収軸と、光学フィルムのプラスチックフィルムの遅相軸とが90度となるように配置した。そして、積層体1を暗室環境で白表示し、それぞれの角度において、ELDIM社の商品名「EzContrast」を用いて、本明細書の測定1を行った。測定領域は直径2mmの円(面積約3.14mm2であり、測定1の領域と一致させた。
測定1及び2は、積層体1及び積層体2の面内の中心位置で行った。
次いで、明細書本文の(3-1)~(3-4)のステップに基づいて、各方位角におけるΔEabを算出し、さらに、ΔEabの最大値と最小値との差を算出した。なお、(3-1)~(3-4)のステップは、ELDIM社の商品名「EzContrast」及びこれに付属のソフトウェア「EzCom」を用いて行った(上記(3-1)の諧調は16諧調である)。結果を表1に示す。
なお、積層体2の状態において、L*値、a*値及びb*値の平均、並びに、L*値、a*値及びb*値のバラツキ(3σ)は、下記の値を示すものであった。言い換えると、測定2において、L*値、a*値及びb*値の平均、並びに、L*値、a*値及びb*値のバラツキ(3σ)は、下記の値を示すものであった。
・全角度のL*値の平均:95.9
・全角度のa*値の平均:4.2
・全角度のb*値の平均:-4.6
・全角度のL*値のバラツキ(3σ):113.3
・全角度のa*値のバラツキ(3σ):10.7
・全角度のb*値のバラツキ(3σ):14.1
【0197】
1-4.虹ムラの評価
上記1-3と同様にして積層体1を作製した。その際、光学フィルムの二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸と、偏光板の偏光子の吸収軸とが直交するように配置した。面光源(液晶表示素子)を暗室環境で白表示し、積層体1から30cm以上100cm以下離れた距離から顔を上下左右に動かし、上下±90度、左右±90度の方向から視認した。評価者は20歳台の視力0.7以上の健康な人として、下記の基準で、裸眼で虹ムラの有無を評価した。前記の視力は矯正視力も含む。
A:あらゆる位置かつあらゆる方向から視認した際にも虹ムラが視認できない。
B:虹ムラがごく一部の領域に視認される位置及び/又は方向が若干存在する。
C:虹ムラがごく一部の領域に視認される位置及び/又は方向が多く存在する。
D:虹ムラが大部分の領域に視認される位置及び/又は方向が多く存在する。
【0198】
1-5.色歪みの評価
上記1-3と同様にして積層体1を作製した。その際、光学フィルムの二軸延伸プラスチックフィルムの遅相軸と、偏光板の偏光子の吸収軸とが直交するように配置した。面光源(液晶表示素子)を暗室環境で白表示し、仰角を約(α+β)/2に固定した状態で、積層体1の周囲を1周して観察した。前記観察は、仰角を約(α+β)/2に固定した状態で、方位角0~359度における観察といえる。前記観察は、積層体1から30cm以上100cm以下離れた距離から実施した。評価者は20歳台の視力0.7以上の健康な人として、下記の基準で、裸眼で色歪みの有無を評価した。前記の視力は矯正視力も含む。
A:全ての方位角において、色の見え方が同等である。
B:色が異なって見える方位角が少数存在する。
C:色が異なって見える方位角が多数存在する。
D:大部分の方位角において色が異なって見える。
【0199】
1-6.反射率の測定
実施例及び比較例の光学フィルムの二軸延伸プラスチックフィルム側に、厚み25μmの透明粘着剤層(パナック社(PANAC CO.,LTD.)、商品名「パナクリーンPD-S1(Panaclean PD-S1)」、屈折率1.49)を介して黒色板(クラレ社(KURARAY CO.,LTD)、商品名「コモグラス DFA2CG 502K(黒)系(COMOGLAS DFA2CG 502K(Black)type)」、全光線透過率0%、厚み2mm、屈折率1.49)を貼り合わせたサンプル(5cm×5cm)を作製した。
前記サンプルの低屈折率層側の表面に対して垂直方向を0度とした際に、5度の方向からサンプルに光を入射し、入射した光の正反射光に基づいて反射率(視感反射率Y値)を測定した。反射率は、分光反射率測定器(島津製作所社(SHIMADZU CORPORATION)、商品名:MPC3100)を用いて、5°正反射率を380nm以上780nm以下までの波長範囲で測定し、その後、人間が目で感じる明度として換算するソフト(MPC3100内蔵。反射率を算出する条件:C光源、視野角2度)で算出される、視感反射率を示す値を反射率として求めた。各サンプルについて10箇所の反射率を測定し、平均値を各サンプルの反射率とした。
【0200】
2.二軸延伸ポリエステルフィルムの作製及び準備
[二軸延伸ポリエステルフィルム1]
1kgのPET(融点258℃、吸収中心波長:320nm)と、0.1kgの紫外線吸収剤(2,2’-(1,4-フェニレン)ビス(4H-3,1-ベンズオキサジノン-4-オン)とを、混練機で280℃にて溶融混合し紫外線吸収剤を含有したペレットを作製した。そのペレットと、融点258℃のPETを単軸押出機に投入し280℃で溶融混練し、Tダイから押出し、25℃に表面温度を制御したキャストドラム上にキャストしてキャスティングフィルムを得た。キャスティングフィルム中の紫外線吸収剤の量はPET100質量部に対して1質量部であった。
得られたキャスティングフィルムを、95℃に設定したロール群で加熱した後、延伸区間400mm(始点が延伸ロールA、終点が延伸ロールB。延伸ロールA及びBは、それぞれ2本のニップロールを有する)の250mmの地点でのフィルム温度が103℃となるように、フィルムの表裏両側をラジエーションヒーターにより加熱しながら、フィルムを流れ方向に3.3倍延伸し、その後一旦冷却した。なお、ラジエーションヒーターでの加熱時に、ラジエーションヒーターのフィルムの反対側から、92℃、4m/sの風をフィルムに向けて送風することで、フィルムの表裏に乱流を生じさせ、フィルムの温度均一性が乱れるようにした。
続いて、この一軸延伸フィルムの両面に空気中でコロナ放電処理を施し、基材フィルムの濡れ張力を55mN/mとし、フィルム両面のコロナ放電処理面に、「ガラス転移温度18℃のポリエステル樹脂、ガラス転移温度82℃のポリエステル樹脂、及び平均粒径100nmのシリカ粒子を含む易滑層塗布液」をインラインコーティングし、易滑層を形成した。
次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、95℃の熱風で予熱後、1段目105℃、2段目140℃の温度でフィルム幅方向に4.5倍延伸した。ここで、横延伸区間を2分割した場合、横延伸区間中間点におけるフィルムの延伸量(計測地点でのフィルム幅-延伸前フィルム幅)は、横延伸区間終了時の延伸量の80%となるように2段階で延伸した。横延伸したフィルムは、そのまま、テンター内で段階的に180℃から熱処理温度245℃の熱風にて熱処理を行い、続いて同温度条件で幅方向に1%の弛緩処理を、さらに100℃まで急冷した後に幅方向に1%の弛緩処理を施し、その後、巻き取り、厚み40μmの二軸延伸ポリエステルフィルム1(実施例1で用いる二軸延伸ポリエステルフィルム)を得た。
【0201】
[二軸延伸ポリエステルフィルム2]
比較例1で用いる二軸延伸ポリエステルフィルムとして、市販の二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社(TOYOBO CO., LTD.)、商品名:コスモシャインA4100(Cosmoshine A4100)、厚み:50μm)を準備した。
【0202】
[二軸延伸ポリエステルフィルム3]
幅方向の延伸倍率を4.5倍から5.1倍に変更した以外は、二軸延伸ポリエステルフィルム1と同様にして、厚み40μmの二軸延伸ポリエステルフィルム3(実施例2で用いる二軸延伸ポリエステルフィルム)を得た。
【0203】
[二軸延伸ポリエステルフィルム4]
二軸延伸ポリエステルフィルム1のキャスティングフィルムの厚みを増し、最終的な厚みを80μmに変更した以外は、二軸延伸ポリエステルフィルム3と同様にして、二軸延伸ポリエステルフィルム4(実施例3で用いる二軸延伸ポリエステルフィルム)を得た。
【0204】
[二軸延伸ポリエステルフィルム5]
比較例2で用いる二軸延伸ポリエステルフィルムとして、市販の二軸延伸ポリエステルフィルム(東レ社(Toray Industries, Inc.)、商品名:75U403、厚み:75μm)を準備した。
【0205】
[二軸延伸ポリエステルフィルム6]
比較例3で用いる二軸延伸ポリエステルフィルムとして、市販の二軸延伸ポリエステルフィルム(東洋紡社(TOYOBO CO., LTD.)、商品名:コスモシャインA4300(Cosmoshine A4300)、厚み:23μm)を準備した。
【0206】
3.光学フィルムの作製
[実施例1]
上記2で作製した二軸延伸ポリエステルフィルム1上に、下記処方のハードコート層形成用塗布液を塗布し、その後70℃×1分で乾燥し溶剤を揮発させた。続いて紫外線照射(100mJ/cm2)し、ハードコート層(ドライ厚み10μm)を形成した。
ハードコート層上に下記処方の低屈折率層形成用塗布液1を塗布し、その後60℃×1分で乾燥し溶剤を揮発させた。続いて紫外線照射(200mJ/cm2)し、低屈折率層(ドライ厚み100nm)を形成し、実施例1の光学フィルムを得た。
【0207】
<ハードコート層形成用塗布液>
・紫外線硬化型アクリレート含有組成物:22質量部
(日本化薬株式会社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)、商品名「KAYARAD PET-30」、固形分100%)
・紫外線硬化型アクリレート含有組成物:17質量部
(第一工業製薬株式会社(DKS Co. Ltd.)、商品名「ニューフロンティア R-1403MB(NewFrontier R-1403M)」、固形分80%)
・フッ素系レベリング剤:1質量部
(DIC株式会社(DIC Corporation)、商品名「メガファック F―568(MEGAFACE F-568)」)
・光重合開始剤:1質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名「Omnirad 184」)
・メチルイソブチルケトン:15質量部
・メチルエチルケトン:44質量部
【0208】
<低屈折率層形成用塗布液>
・紫外線硬化型アクリレート含有組成物:1質量部
(日本化薬株式会社(Nippon Kayaku Co., Ltd.)、商品名「KAYARAD PET-30」、固形分100%)
・光重合開始剤:0.2質量部
(IGM Resins B.V.社、商品名「Omnirad 127」)
・中空シリカ粒子:1.3質量部
(平均一次粒子径60nm)
・中実シリカ粒子:0.7質量部
(平均一次粒子径15nm)
・レベリング剤:0.1質量部
(大日精化工業社(Dainichiseika Color & Chemicals Mfg. Co., Ltd.)、商品名「セイカビーム10-28(MB)(SEIKABEAM 10-28(MB))」)
・希釈溶剤:90質量部
(MIBK/AN=7/3)
【0209】
[実施例2~3]
二軸延伸ポリエステルフィルム1を、上記「2」で準備した二軸延伸ポリエステルフィルム3~4に変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~3の光学フィルムを得た。
【0210】
[比較例1]
二軸延伸ポリエステルフィルム1を、上記「2」で準備した二軸延伸ポリエステルフィルム2に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1の光学フィルムを得た。
【0211】
[比較例2~3]
二軸延伸ポリエステルフィルム1を、上記「2」で準備した二軸延伸ポリエステルフィルム5~6に変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例2~3の光学フィルムを得た。
【0212】
[参考例1]
二軸延伸ポリエステルフィルム3の単体(二軸延伸ポリエステルフィルム3上に、ハードコート層及び低屈折率層を形成していないもの)を参考例1の光学フィルムとした。
【0213】
[参考例2]
二軸延伸ポリエステルフィルム2の単体(二軸延伸ポリエステルフィルム2上に、ハードコート層及び低屈折率層を形成していないもの)を参考例2の光学フィルムとした。
【0214】
[参考例3]
市販の一軸延伸ポリエステルフィルムの単体(東洋紡社(TOYOBO CO., LTD.)、商品名「コスモシャインTA048(Cosmoshine TA048)」、厚み:80μm)を参考例3の光学フィルムとした。
【0215】
【0216】
表1の結果から、ΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満である実施例の光学フィルムは、面内位相差を高くすることなく、裸眼で視認した際の虹ムラを抑制し得ることが確認できる。さらに、表1の結果から、ΔEabの最大値と最小値との差が17.0未満である実施例の光学フィルムは、色歪みを抑制し得ることが確認できる。これに対して、比較例の光学フィルムは、低屈折率層を有し、かつ、実施例の光学フィルムと反射率が同等であるにもかかわらず、虹ムラ及び色歪みを抑制できないことが確認できる。
また、実施例の光学フィルムは、折り曲げの方向に関わらず、屈曲試験後に曲げ癖が残ったり、破断したりすることを抑制できることが確認できる(実施例の光学フィルムは、一軸延伸ポリエステルフィルム(参考例3)、及び、一般的な二軸延伸フィルム(比較例1~3)に比べて、曲げ癖が残り難く、破断することもない。)。
なお、表1のΔEabは、積層体1及び積層体2の面内の中心位置での測定結果に基づくものであるが、測定箇所をずらしても同様の結果が得られた(例えば、中心位置から左に130mmの箇所(その他の測定箇所1)、中心位置から右に130mmの箇所(その他の測定箇所2)、中心位置から上に75mmの箇所(その他の測定箇所3)、中心位置から下に75mmの箇所(その他の測定箇所4)のΔEabは、表1の値と概ね同等であった。)。