(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127938
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物、車載ロータコア、及びロータコア固定体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 299/02 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
C08F299/02
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107249
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2020062411の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000230364
【氏名又は名称】日本ユピカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【弁理士】
【氏名又は名称】坂野 博行
(72)【発明者】
【氏名】小山 智仁
(72)【発明者】
【氏名】小澤 雄一
(72)【発明者】
【氏名】上田 涼
(72)【発明者】
【氏名】櫻庭 悠朔
(57)【要約】
【課題】
本発明は、結晶性ラジカル重合性組成物の可塑化温度領域での安定性に優れ、取扱い性が良好、かつ速硬化で成形性が良好である結晶性ラジカル重合性組成物を提供することにある。
【解決手段】
本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、結晶性ラジカル重合性化合物と、無機充填材と、シランカップリング剤と、ラジカル重合開始剤とを少なくとも含むラジカル重合性組成物であって、前記ラジカル重合開始剤が熱重合開始剤であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性ラジカル重合性化合物と、無機充填材と、シランカップリング剤と、ラジカル重合開始剤とを少なくとも含むラジカル重合性組成物であって、前記ラジカル重合開始剤が熱重合開始剤であり、かつ、前記ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が60~170℃であり、前記結晶性ラジカル重合性化合物の融点は、30~150℃の範囲であることを特徴とする電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物。
【請求項2】
前記結晶性ラジカル重合性化合物は、結晶性不飽和ポリエステル、結晶性エポキシ(メタ)アクリレート、結晶性ウレタン(メタ)アクリレート、結晶性ポリエステル(メタ)アクリレート、結晶性ポリエーテル(メタ)アクリレート、結晶性ラジカル重合性単量体、結晶性ラジカル重合性多量体から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物。
【請求項3】
前記電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物において、90℃に加熱したシリンダー試料挿入孔に前記ラジカル重合性組成物を入れ、溶融粘度を高化式フローテスタにて測定した場合、23℃で7日保管前後の溶融粘度保持率は90~120%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物。
【請求項4】
前記電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の成形品において、150℃で5hrs後硬化前後の曲げ強さ保持率は90~150%であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物。
【請求項5】
前記電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物において、90℃に加熱したシリンダー試料挿入孔に前記ラジカル重合性組成物を入れ、溶融粘度を高化式フローテスタにて測定した場合、90℃で1hr保管前後の溶融粘度保持率は90~1000%であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物。
【請求項6】
前記結晶性ラジカル重合性組成物は、23℃で固体であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物。
【請求項7】
前記無機充填材は、前記結晶性ラジカル重合性組成物全量に対して50~95質量%であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物。
【請求項8】
ラジカル重合性化合物全量に対する結晶性ラジカル重合性化合物の割合は、30重量部以上であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の電気電子部品固定用ラジカル重合性組成物。
【請求項9】
電気電子装置と、請求項1~8のいずれか1項に記載の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物により前記電気電子装置に固定された電気電子部品と、からなる電気電子部品固定電気電子装置。
【請求項10】
請求項9記載の電気電子部品固定電気電子装置を有することを特徴とする機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物、前記組成物により固定されている車載ロータコア、及びロータコア固定体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械、作業用ロボット、車両、自動車、電化製品等に使用されている電気電子部品は埃、水分、衝撃等の外的要因から守るために筐体あるいはユニット、モジュール、デバイス等の構成パーツに固定されている。金属による電気電子部品の筐体あるいはユニット、モジュール、デバイス等の構成パーツへの固定は高い信頼性を有するが高価であるため、安価で生産性が良好な樹脂製材料による固定材に置き換わっている。また、金属による電気電子部品の固定を樹脂製固定材にすることにより、電気絶縁性を有することから固定された電気電子部品を小さくすることが可能となり、搭載される工作機械、作業用ロボット、車両、自動車、電化製品等の設計自由度が向上する。また、電気電子部品は高温高湿環境下の過酷な条件で使用されることもあるため、樹脂製材料を使用する場合に、耐熱性に優れた熱硬化性樹脂が多く使用されている。
【0003】
最近では樹脂製基板や金属と密着性が良好であり、機械強度、流動性に優れる液状エポキシ樹脂が使用されている。
【0004】
このようなことから、従来、固定用エポキシ樹脂組成物、固定用エポキシ樹脂組成物を使用した電子装置、自動車及び電子装置の製造方法が知られている(例えば特許文献1)。また、半導体装置の製造方法とそれに使用される半導体封止用熱硬化性樹脂組成物が知られている(例えば特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-148586号公報
【特許文献2】特開2005-146008号公報
【特許文献3】特開2020-23678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タブレット状のエポキシモールディングコンパウンド(EMC)は高い生産性を有するトランスファー成形法で使用され、密着性や線膨張係数等の物理的特性に優れていることから高い信頼性を確立しているが、冷凍保管、後硬化工程が必要であることから、使用方法の簡素化が求められている。
【0007】
上記特許文献1において、封止用エポキシ樹脂組成物はトランスファー成形法で成形されている。トランスファー成形に使用するエポキシ樹脂組成物は冷凍保管した樹脂組成物を常温に戻す必要がある。エポキシ樹脂組成物を常温で保管すると流動性が大きく低下することや、成形時間中に完全硬化しないため、必要な成形品特性を得るために数時間の後硬化を行う等の課題がある。
【0008】
上記特許文献2は、エポキシ樹脂組成物の保存安定性を改善する熱硬化性樹脂組成物であり、特定の構造を有する重合性化合物を含む熱硬化性樹脂が提案されている。但し、当該特許における引用例、当該特許明細書、実施例の記載から、当該特許での想定温度安定性は、室温、常温領域であることが示唆されるものである。
【0009】
また特許文献3は、光に高感度で低エネルギー光でも硬化する光硬化性樹脂による電子部品用封止剤が提案されているが、光に高感度で低エネルギー光でも硬化する特性付与に伴う、保存安定性、取り扱いに関する記載はなされていない。
【0010】
そこで、本発明は、結晶性ラジカル重合性組成物の可塑化温度領域での安定性が良いため取扱性に優れ、硬化成形性が良好である結晶性ラジカル重合性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、結晶性ラジカル重合性化合物を少なくとも含む組成物について種々の観点から多角的に検討を重ねた結果、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を見出すに至った。
【0012】
すなわち、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、結晶性ラジカル重合性化合物と、無機充填材と、シランカップリング剤と、ラジカル重合開始剤とを少なくとも含むラジカル重合性組成物であって、前記ラジカル重合開始剤が熱重合開始剤であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記結晶性ラジカル重合性化合物は、結晶性不飽和ポリエステル、結晶性エポキシ(メタ)アクリレート、結晶性ウレタン(メタ)アクリレート、結晶性ポリエステル(メタ)アクリレート、結晶性ポリエーテル(メタ)アクリレート、結晶性ラジカル重合性単量体、結晶性ラジカル重合性多量体から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記ラジカル重合開始剤の10時間半減期温度が60~170℃であることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物において、23℃で7日保管前後の溶融粘度保持率は90~120%であることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の成形品において、後硬化前後の物性保持率は90~150%であることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物において、90℃で1hr保管前後の溶融粘度保持率は90~1000%であることを特徴とする。
【0018】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記結晶性ラジカル重合性化合物が、30~150℃の範囲で融点を示す結晶性ラジカル重合性化合物であることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記結晶性ラジカル重合性組成物は、23℃で固体であることを特徴とする。
【0020】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記無機充填材は、前記結晶性ラジカル重合性組成物全量に対して50~95質量%であることを特徴とする。
【0021】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、ラジカル重合性化合物全量に対する結晶性ラジカル重合性化合物の割合は、30重量部以上であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の車載ロータコアは、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を用いて磁石を固定したことを特徴とする。
【0023】
また、本発明のロータコア固定体の製造方法は、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を用いて、射出成形法、トランスファー成形法、又は注型法によるインサート成形法により、磁石を固定する工程を有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の電気電子部品固定電気電子装置は、電気電子装置と、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物により前記電気電子装置に固定された電気電子部品と、からなることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の機械は、本発明の電気電子部品固定電気電子装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物によれば、保存安定性に優れ、射出成形、トランスファー成形時の可塑化温度でも粘度変化が少ないため、成形安定性に優れるという有利な効果を奏する。更に、結晶性ラジカル重合性組成物の硬化速度が速いため大型ロータコアの後硬化工程を実施しなくても十分な機械強度を確保できるという有利な効果を奏する。
【0027】
また、本発明により電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物により固定されている車載ロータコアを提供することができるという有利な効果を奏する。
【0028】
さらに、本発明により電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物からなる粒状物、粉末、タブレットを射出成形法、トランスファー成形法、又は注型法によるインサート成形法により磁石を固定する工程を有する電気電子部品の製造方法を提供することができるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、結晶性ラジカル重合性化合物と、無機充填材と、シランカップリング剤と、ラジカル重合開始剤とを少なくとも含むラジカル重合性組成物であって、前記ラジカル重合開始剤が熱重合開始剤であることを特徴とする。これは、熱重合開始剤であるラジカル重合開始剤の使用により、後述する実施例に示されているように、結晶性ラジカル重合性組成物の可塑化工程温度領域での保管安定性に優れるため生産安定性が良好であり、常温で保管できるため保管コストが安価であり、また、後硬化を実施しなくても十分な物性が確保できる結晶性ラジカル重合性組成物が提供可能であるからである。なお、本明細書中において電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を、結晶性ラジカル重合性組成物と称することがある。
【0030】
なお、固定とは一つの場所から動かないようにすること、また、動かないことである。固定は接着や封止等を含み、固定用途は接着用途や封止用途等を含む。本電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を使用した固定は、固定される装置及び/または部品の一部及び/または全部を固定することができる。
【0031】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記結晶性ラジカル重合性化合物は、結晶性不飽和ポリエステル、結晶性エポキシ(メタ)アクリレート、結晶性ウレタン(メタ)アクリレート、結晶性ポリエステル(メタ)アクリレート、結晶性ポリエーテル(メタ)アクリレート、結晶性ラジカル重合性単量体、結晶性ラジカル重合性多量体から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする。これらの重合性化合物を使用すると機械特性、取扱い性が良好となる(以下では、結晶性を省略する場合がある。)。
【0032】
なお、本明細書において、結晶性化合物とは融点を有する化合物であり、ガラス転移点と融点を有する化合物であってもよい。これらの温度はDSC( 示差走査熱量計 )、TGDTA( 示差熱熱重量同時測定装置 )等の熱分析装置により確認できる。本発明における結晶性化合物は熱分析装置により融点が確認できる化合物とすることができる。
【0033】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記ラジカル重合開始剤は、電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の安定性、生産性という観点から、10時間半減期温度60~170℃であり、より好ましくは70~160℃であり、さらに好ましくは80~150℃である。分解温度が上記範囲より低いと溶融混練時に硬化反応が進行する虞があり、分解温度が上記範囲より高いと成形時間が長く生産性が低下する虞がある。上記範囲とすることで射出成形時のシリンダー温度で保管しても粘度変化が微少であるため生産安定性が向上し、常温保管可能であるため物流費用の低減や冷凍保管せずに保管できることから簡便な取扱が可能となり、さらには硬化速度が速いため後硬化を行わなくても十分な物性が確保できる可能性がある。
【0034】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は生産安定性という観点から、23℃で7日保管前後の溶融粘度保持率90~120%であり、より好ましくは95~120%であり、さらに好ましくは98~120%である。上記範囲とすることで流動性が安定するため成形性が良好であり、歩留まりが向上する可能性がある。
【0035】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の成形品は工程短縮化、品質安定化の観点で後硬化前後の物性保持率90~150%であり、より好ましくは95~140%であり、さらに好ましくは98~130%である。上記範囲とすることで、後硬化の工程削除と時間の短縮が図れるため、生産性の向上や、成形品物性のばらつきが少ないため品質の安定する可能性がある。
【0036】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は生産安定性、信頼性という観点から、90℃で1hr保管前後の溶融粘度保持率90~1000%であり、より好ましくは95~900%であり、さらに好ましくは98~800%である。上記範囲とすることで電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の溶融粘度増加による成形圧力により部品の損傷、変形を抑制できる可能性がある。また、狭小部への未充填を抑制できる可能性がある。
【0037】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記結晶性ラジカル重合性化合物は、作業性、成形性という観点から、前記結晶性ラジカル重合性化合物の融点が30~150℃であり、より好ましくは30~120℃であり、さらに好ましくは30~100℃の範囲で融点を示すことを特徴とする。融点が30℃未満の結晶性ラジカル重合性化合物、または融点が150℃より高い結晶性ラジカル重合性化合物を使用した場合に比較して、30~150℃の範囲で融点を示す結晶性ラジカル重合性化合物を使用すると、より良好な取扱い性を実現可能であるためである。結晶性ラジカル重合性化合物の融点が上記範囲よりも低い場合は、常温で液体になりやすいため、結晶性ラジカル重合性組成物が固体を維持しにくくなる虞がある。結晶性ラジカル重合性化合物の融点が上記範囲よりも高い場合は、金型の成形温度と近接するため、流動開始から硬化までの時間が短くなり、成形不良が発生する虞がある。
【0038】
また、融点が30℃未満の結晶性ラジカル重合性化合物のみを使用した場合は、23℃で固体の結晶性ラジカル重合性組成物になりにくい傾向がある。一方、融点が150℃より高い結晶性ラジカル重合性化合物のみを使用した場合は、射出成形法において、シリンダー内で結晶性ラジカル重合性組成物を可塑化する際に、シリンダー温度と金型の温度が近接しているため、シリンダー内で安定性に乏しい傾向がある。
【0039】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、前記結晶性ラジカル重合性組成物は、結晶性ラジカル重合性化合物の取扱い性という観点から、23℃で固体であることを特徴とする。上記範囲としたのは、結晶性ラジカル重合性組成物の製造・成形・輸送環境下において組成物の形状が変化しないため、汎用の製造設備・条件で連続生産が可能となるためである。なお、固体とは外力によって容易に形及び体積が変化しないものとすることができる。
【0040】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、製品品質という観点から、前記無機充填材が、前記結晶性ラジカル重合性組成物全量に対して50~95質量%であり、より好ましくは55~93質量%であり、さらに好ましくは60~90質量%とすることができる。上記範囲としたのは、無機充填材の量が上記範囲より少ない場合は収縮率が大きく成形品が変形し、前記範囲よりも多い場合は成形時の溶融粘度が高くインサート物に負荷がかかり、インサート物が損傷する虞があるためである。
【0041】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の好ましい実施態様において、固体を維持する観点から、結晶性及び非晶性ラジカル重合性化合物全量(100重量部)に対する結晶性ラジカル重合性化合物の割合が、30重量部以上であり、より好ましくは、40重量部以上、更に好ましくは、50重量部以上とすることができる。上記範囲としたのは、結晶性ラジカル重合性化合物の割合が上記範囲よりも少ない場合は、固体になりにくくなる虞があるためである。
【0042】
また、本発明の車載ロータコアは、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を用いて磁石を固定したことを特徴とする。
【0043】
また、本発明のロータコア固定体の製造方法は、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を用いて、射出成形法、トランスファー成形法、又は注型法によるインサート成形法により、磁石を固定する工程を有することを特徴とする。
【0044】
また、本発明の応用例として、本発明の電気電子部品固定電気電子装置は、電気電子装置と、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物により前記電気電子装置に固定された電気電子部品と、からなることを特徴とする。
【0045】
また、本発明の電気電子部品固定電気電子装置の好ましい実施態様において、前記電気電子装置は、ユニット、モジュール、デバイス体、又はロータコアであることを特徴とする。
【0046】
電気電子部品固定ユニット、モジュール、デバイス体は電気電子部品を含んだユニット、モジュール、デバイス体(電気電子装置)である。電気電子部品は筐体あるいはユニット、モジュール、デバイス等の構成パーツに固定されている。固定された電気電子部品は、高粘度な成形材料を用いた射出成形やトランスファー成形等の流動圧力より電気電子部品の損傷を起こす虞がある。なお、本発明において、電気電子部品には、半導体、コンデンサー、集積回路等のいわゆる電気電子部品のほか、センサー、スイッチ、磁性体、一次・二次電池等の広義の電気電子部品を含むことができる。要するに、本発明の組成物は、取り扱い性、流動性等が要求される電気電子部品固定ユニット、モジュール、デバイス等に広く適用することができる。
【0047】
また、本発明の機械は、本発明の電気電子部品固定電気電子装置を有することを特徴とする。機械についても、本発明の電気電子部品固定電気電子装置を有する限りにおいて、特に限定されない。例えば、機械として、一般機械、電気機械、輸送用機械、精密機械等を例示することができ、これらの機械に、本発明の電気電子部品固定電気電子装置を組み込むことが可能である。また、一般機械としては、例えば、農業機械、建設機械、ボイラー・原動機、繊維機械、工作機械、各種産業機械、事務機械、ミシン等を挙げることができ、電気機械としては、発電機、民生用電気機器、通信機械、電子応用装置、電気計測器等を挙げることができ、輸送用機械としては、自動車、鉄道車両、船舶、航空機等を挙げることができ、精密機械としては、光学器械、時計、精密測定器等を挙げることができる。
【0048】
本発明においては、溶融粘度が低く流動性が良好な組成物は常温でも組成物が柔らかいため、取扱い性に不具合が生じる虞がある。また、柔らかい組成物が塊状となり、射出成形法ではホッパー内で組成物の融着が発生、トランスファー成形法では事前に成形したタブレットが融着、さらには形状変化が発生してトランスファー成形機内のタブレット挿入孔に入らなくなる不具合が発生する虞がある。本発明は結晶性ラジカル重合性組成物の可塑化工程温度領域での保管安定性に優れるため生産安定性が良好であり、常温で保管できるため保管コストが安価であり、かつ、後硬化を実施しなくても十分な物性が確保できる優れた効果を奏する。
【0049】
<不飽和ポリエステルの製造方法>
本発明に使用される不飽和ポリエステルは、一例において、例えば、不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸及びグリコール類を公知の脱水縮合反応によりせしめ、通常、2~40mg―KOH/gの酸価を有することができる。不飽和ポリエステルの製造において、不飽和多塩基酸、飽和多塩基酸の酸成分の選択や組合せ、及びグリコール類の選択や組合せ、それらの配合割合等を適宜選択することにより結晶性を有する不飽和ポリエステルとすることができる。
【0050】
不飽和多塩基酸類は、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、グルタコン酸等を挙げることができる。
【0051】
飽和多塩基酸類は、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、ヘット酸、テトラブロム無水フタル酸等を挙げることができる。
【0052】
グリコール類は、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-ブタンジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールAプロピレンオキシド化合物、シクロヘキサンジメタノール、ジブロムネオペンチルグリコール等を挙げることができる。
【0053】
本発明においては、結晶性不飽和ポリエステルの中でも、不飽和多塩基酸としてフマル酸、飽和多塩基酸としてイソフタル酸やテレフタル酸が使用され、グリコールとして主成分にエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、シクロヘキサンジメタノールを使用した不飽和ポリエステルが好適である。
【0054】
<エポキシ(メタ)アクリレートの製造方法 >
本発明に使用されるエポキシ(メタ)アクリレートは、それ自体公知の方法で製造することが出来る。公知の禁止剤、公知のエステル化触媒の存在下又は非存在下、不活性ガス気流中又は空気雰囲気下にてエポキシ樹脂、及び不飽和一塩基酸を適宜選択することにより結晶性を有するエポキシ(メタ)エポキシアクリレートとすることが出来る。必要に応じて反応系の溶融粘度を下げる目的で他のラジカル重合性単量体や有機溶剤を入れて反応させることが出来る。
【0055】
本発明におけるエポキシ(メタ)アクリレートは、一例として、例えば、1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂にアクリル酸またはメタクリル酸を付加反応させて得られる分子末端にアクリレートまたはメタクリレートの二重結合を有するエポキシ(メタ)アクリレートとすることができる。エポキシ(メタ)アクリレートをラジカル重合性単量体及び/又はラジカル重合性多量体に溶解したエポキシ(メタ)アクリレート樹脂でもよい。上記1分子中に2個以上のグリシジルエーテル基を有するエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS等、あるいはこれらの誘導体からのビスフェノール型エポキシ樹脂、ビキシレノールおよびその誘導体からのビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノールおよびその誘導体からのビフェノール型エポキシ樹脂、あるいはナフタレンおよびその誘導体からのナフタレン型エポキシ樹脂、さらにはノボラック型エポキシ樹脂などのエポキシ樹脂が挙げられ、これらは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。エポキシ樹脂の分子量の目安になるエポキシ当量は174~2000eq/gのものが好ましい。
【0056】
<ウレタン(メタ)アクリレートの製造方法>
また本発明におけるウレタン(メタ)アクリレートは、一例として、例えば、一分子中に2個以上の水酸基を有するポリアルコールおよび/またはポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールとジイソシアネートとを反応させた分子末端のイソシアネート、および/または 一分子中に1個以上のイソシアネートにアルコール性水酸基と1個以上のアクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物を反応させるか、または先ずアルコール性水酸基と1個以上のアクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物とジイソシアネートとをイソシアネート基が残るように反応させ、残ったイソシアネート基と一分子中に2個以上の水酸基を有するポリアルコールおよび/またはポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールとを反応させて得られる分子末端にアクリレートまたはメタクリレートの二重結合を有するウレタンアクリレートとすることができる。ウレタン(メタ)アクリレートの製造において、イソシアネートと、ポリアルコールおよび/またはポリエステルポリオールおよび/またはポリエーテルポリオールの組み合わせ、及びアルコール性水酸基と1個以上のアクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物を適宜選択する事により結晶性を有するウレタン(メタ)エポキシアクリレートとすることが出来る。ウレタンアクリレート、またはウレタンメタクリレートを、スチレン、ジエチレングリコールジメタクリレートなどのラジカル重合性単量体及び/又はラジカル重合性多量体に溶解したウレタン(メタ)アクリレート樹脂でもよい。これらは単独で、または2種以上の混合物で使用することができる。
【0057】
上記アルコール性水酸基と1個以上のアクリレート基またはメタクリレート基を有する化合物には、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等を用いることができる。
【0058】
また、上記一分子中に2個以上の水酸基を有するポリアルコールには、例えば、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、 1,5-ペンタンジオール、 1,6-ヘキサンジオール、 1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等を、上記一分子中に2個以上の水酸基を有するポリエステルポリオールには、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物等のポリアルコールと、アジピン酸、(無水)フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸等の多塩基酸との脱水縮合反応から得られる分子量1000~2000の飽和ポリエステルポリオールを、上記一分子中に2個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールには、エチレンオキシド或いはプロピレンオキシドの開環反応により得られる分子量300~2000のポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール類又は、カプロラクトンの開環反応で得られるポリカプロラクトン等を、単独或いは2種類以上を併用して使用することができる。
【0059】
上記一分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物としては、芳香族及び/又は脂肪族ポリイソシアネート化合物が用いられ、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、2官能イソシアネート化合物が3量化されたイソシアヌレート環を有する3官能イソシアネート、市販されているポリオールで変性されたイソシアネートプレポリマー等を挙げることができる。これらを単独或いは2種類以上を混合して用いることができる。
【0060】
<ポリエステル(メタ)アクリレートの製造方法>
また本発明におけるポリエステル(メタ)アクリレートは、一例として、例えば、ポリエステルポリオールとアクリル酸あるいはメタクリル酸とのエステル化、あるいは酸末端ポリエステルとグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレートとの反応により得られる分子末端にアクリレートまたはメタクリレートの二重結合を有するポリエステルアクリレート、またはポリエステルメタクリレートとすることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート の製造において、ポリエステルポリオールと アクリル酸あるいはメタクリル酸、あるいは 酸末端ポリエステルとグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレートを適宜選択する事により結晶性を有するポリエステル(メタ)アクリレート とすることが出来る。ポリエステルアクリレート、またはポリエステルメタクリレートを例えばスチレン、ジエチレングリコールジメタクリレートなどのラジカル重合性単量体及び/又はラジカル重合性多量体に溶解したポリエステルアクリレート樹脂、またはポリエステルメタクリレート樹脂でもよい。これらは単独で、または2種以上の混合物で使用することができる。
【0061】
<ポリエーテル(メタ)アクリレートの製造方法>
また、本発明におけるポリエーテル(メタ)アクリレートは、一例として、例えば、ポリエーテルポリオールとアクリル酸あるいはメタクリル酸とのエステル化、あるいは酸末端ポリエーテルとグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレートとの反応により得られる分子末端にアクリレートまたはメタクリレートの二重結合を有するポリエーテルアクリレート、またはポリエーテルメタクリレートとすることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレートの製造において、ポリエーテルポリオールとアクリル酸あるいはメタクリル酸、あるいは酸末端ポリエステルとグリシジル基を有するアクリレートまたはメタクリレートを適宜選択する事により結晶性を有するポリエステル(メタ)アクリレートとすることが出来る。ポリエーテルアクリレート、またはポリエーテルメタクリレートを例えばスチレン、ジエチレングリコールジメタクリレートなどのラジカル重合性単量体及び/又はラジカル重合性多量体に溶解したポリエーテルアクリレート樹脂、またはポリエーテルメタクリレート樹脂でもよい。これらは単独で、または2種以上の混合物で使用することができる。
【0062】
また、好ましい態様において、本発明における30~150℃で固体の結晶性ラジカル重合性単量体は、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(融点約50℃)、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート(融点35~53℃)、メトキシポリエチレングリコー(メタ)アクリレート(融点33~40℃)、ベヘニルアクリレート(融点46℃)、テトラメチルピペリニジルメタクリレート(融点56~60℃)、トリメタリルイソシアヌレート(融点83~87℃)、ダイアセトンアクリルアミド(融点約56℃)、イタコン酸ジメチルエステル(融点36℃)、ステアリン酸ビニル(融点36℃)、N-ビニルカルバゾール(融点67℃)、N-メチロールアクリルアミド(融点71~75℃)、アクリルアミド(融点84℃)、トリレンジアリルカルバメート(融点85~110℃)、マレイミド(融点93℃)、アセナフチレン(融点95℃)等から選ばれる1種以上を含むことができる。これらの結晶性ラジカル重合性化合物を使用すると取扱い性が良好となる。
【0063】
本発明におけるラジカル重合性単量体は本目的を損なわない範囲において常温にて液体のラジカル重合性単量体を使用することが出来る。例えば、ビニル基を有するスチレンモノマー、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、α-クロルスチレンなどのビニル芳香族化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、乳酸ビニル、酪酸ビニル、ベオバモノマー(シェル化学社製)などのビニルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステルなどが挙げられる。
【0064】
また、トリアリルシアヌレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジアリルテトラブロムフタレート、フェノキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、アリル基を有するジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレートなどの2官能以上のラジカル重合性単量体を用いることができる。これらのラジカル重合性単量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0065】
本発明におけるラジカル重合性多量体は、ジアリルフタレートプレポリマー、タイクプレポリマー、エポキシプレポリマー、ウレタンプレポリマー、アクリレートプレポリマーを用いることが出来る。これらのラジカル重合性多量体は単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0066】
本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物において、無機充填材を配合することができる。該無機充填材は、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、酸化亜鉛、マイカ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素が挙げられるが、これらのうち、流動性の観点からシリカが好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0067】
前記無機充填材としては、平均粒子径が100μm以下、好ましくは0.01~50μmのものを使用することができる。上記平均粒子径を有する無機充填材を使用することにより、成形時の流動性、強度に優れた電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物とすることができる。
【0068】
本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物において、無機充填材、強化材と密着する各種添加剤、例えば、極性基を有する(メタ)アクリレート化合物やカップリング剤を配合することが出来る。
【0069】
極性基を有する(メタ)アクリレート化合物としては、特に限定されないが、例えば、炭素、水素以外の原子を含む置換基がエステル結合する(メタ)アクリレート化合物が挙げられ、置換基としては、水酸基、エポキシ基、グリシジルエーテル基、テトラヒドロフルフリル基、イソシアネート基、カルボキシル基、アルコキシシリル基、リン酸エステル基、ラクトン基、オキセタン基、テトラヒドロピラニル基、アミノ基等を挙げることができる。カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シラン系カップリング剤やチタネート系カップリング剤等を用いることができ、シランカップリング剤としては、例えば、エポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系、およびこれらの複合系等を用いることができる。
【0070】
これらのうち、強度向上の観点からアクリルシラン系カップリング剤が好ましい。その他、本発明の目的を損なわない限り、いかなる添加剤も使用できる。
【0071】
本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物においては、ラジカル重合開始剤として、通常不飽和ポリエステル樹脂組成物、ラジカル重合性組成物に用いられる加熱分解型の有機過酸化物や重合禁止剤を用いることができる。
【0072】
熱重合開始剤は、加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物であれば特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、ベンゾイン化合物、ベンゾインエーテル化合物、アセトフェノン化合物、ベンゾピナコール等が挙げられ、有機過酸化物が好適に用いられる。有機過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド、等の熱分解型を用いることができ、ジラウロリルパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジサクシニックアシッドパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(エチルヘキサノイル)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘイサノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ベンゾイル(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド&ジベンゾイルパーオキサイド、ジベンソイルパーオキサイド、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキサイド)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキサイド)シクロヘキサン、2,2-ジ(4,4-ジ-(t-ブチルパーオキサイド)シクロヘキシル)プロパン、t-ヘキシルパーオキサイドイソプロペニルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウリレート、t-ブチルパーオキシイソプロペニルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジ-メチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシアセテート、2,2-ジ-(t-ブチルパーオキシ)ブタン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、n-ブチル4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バルエレート、ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ヘキシルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、p-メタンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン-3、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0073】
これらの中でも、材料の安定性、生産性という観点から、10時間半減期温度が60~170℃の有機過酸化物を用いることが好ましく、より好ましくは70~160℃であり、さらに好ましくは80~150℃である。分解温度が上記範囲より低いと混練時に硬化反応が進行する虞がある。分解温度が上記範囲より高いと、硬化温度を高くするために樹脂の劣化、または成形時間が長時間となるため生産性が低下する虞がある。上記範囲とすることで射出成形時のシリンダー温度で保管しても粘度変化が微少であるため生産安定性が向上し、常温保管可能であるため物流費用の低減や冷凍保管せずに保管できることから簡便な取扱が可能となり、さらには硬化速度が速いため後硬化を行わなくても十分な物性が確保できるという優れた効果を奏する。
【0074】
重合禁止剤としてはハイドロキノン、モノメチルエーテルハイドロキノン、トルハイドロキノン、ジ-t-4-メチルフェノール、モノメチルエーテルハイドロキノン、フェノチアジン、t-ブチルカテコール、パラベンゾキノン、ピロガロール等のキノン類、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,2-メチレン-ビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス-(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン等のフェノール系化合物、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-カルボキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のピペリジン-1-オキシル類を挙げることができる。これらを使用することにより成形時の充填途中における増粘を抑制し、低溶融粘度なラジカル重合性組成物にすることが出来る。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0075】
本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物においては、強化材を配合することができる。強化材を用いることにより、優れた強度特性、寸法安定性を有する電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物とすることができる。
【0076】
本発明に用いられる強化材としては通常、BMC(バルク・モールディング・コンパウンド)、SMC(シート・モールディング・コンパウンド)等の繊維強化プラスチックスに使用されているガラス繊維が用いられるが、ガラス繊維に限定されずそれ以外のものも用いることができる。
【0077】
ガラス繊維としては、珪酸ガラス、ホウ珪酸ガラスを原料とするEガラス(電気用無アルカリガラス)、Cガラス(化学用含アルカリガラス)、Aガラス(耐酸用ガラス)、Sガラス(高強度ガラス)等のガラス繊維を挙げることができ、これらを長繊維(ロービング)、短繊維(チョップドストランド)、ミルドファイバーとしたものを用いることができる。さらに、これらのガラス繊維は表面処理を施したものを用いることもできる。
【0078】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物においては、組成物の流動性や、固定材としたときの特性を阻害しない範囲において、他の無機充填材を適宜配合することができる。
【0079】
これらのものとしては、酸化物及びその水和物、無機発泡粒子、シリカバルーン等の中空粒子等を挙げることができる。
【0080】
本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物においては、離型剤を用いることができる。離型剤としては、一般に熱硬化性樹脂に用いられる脂肪酸系、脂肪酸金属塩系、鉱物系等のワックス類を用いることができ、特に、耐熱変色性に優れた脂肪酸系、脂肪酸金属塩系、及びワックス類を好適に用いることができる。
【0081】
これらの離型剤としては、具体的にはステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス等を挙げることができる。これらの離型剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
【0082】
離型剤は、必要に応じて金型に噴霧、あるいは塗布するタイプの離型剤、離型剤を配合した成形材料等の外部離型剤を使用することもできる。
【0083】
本発明においては、これらの配合成分以外に、結晶性ラジカル重合性組成物の硬化条件を調整するための硬化触媒、重合禁止剤、着色剤、増粘剤、湿潤分散剤、表面調整剤、減粘剤、流動改質剤、その他有機系添加剤、無機系添加剤等を必要に応じて適宜配合することができる。
【0084】
<結晶性ラジカル重合性組成物の製造方法>
本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、各成分を配合して、ミキサー、ブレンダー等を用いて十分均一に混合した後、加熱加圧可能な混練機、押し出し機等にて調製し、造粒して製造することができる。
【0085】
また、本発明の粒状物、粉末、タブレットは、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物からなることを特徴とする。本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物よりなる粒状物は、ペレット状であっても良い。
【0086】
また、本発明の電気電子部品固定体は、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物よりなる粒状物、粉末、タブレットを成形して固定することを特徴とする。電気電子部品固定体は、常法により、種々の熱硬化性組成物の成形方法により成形することができる。
【0087】
また、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、乾式で、かつ溶融時の熱安定性が良好なため、成形方法として、射出成形法、射出圧縮成形法、トランスファー成形法、圧縮成形法等の溶融加熱成形法を好適に用いることができる。
【0088】
これらの中でも射出成形機を用いた射出成形法、トランスファー成形機を用いたトランスファー成形法が特に好適であり、射出成形法により成形時間をより短く、トランスファー成形法により一度に多くの成形体を成形でき複雑な形状の電気電子部品固定体を製造することができる。
【0089】
<電気電子部品固定体および電気電子部品固定体の製造方法>
本発明の電気電子部品固定体は、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物を用いてインサート成形法により電気電子部品を固定することにより製造することができる。ここで、本発明の電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、結晶性ラジカル重合性組成物を構成する全成分が別途あらかじめ加熱混練されたものであっても、構成成分の一部または全部が金型注入直前に混合され加熱混練されたものであってもよい。
【0090】
金型注入の際の結晶性ラジカル重合性組成物温度および圧力は特に限定されないが、射出成形機を用いた場合は、結晶性ラジカル重合性組成物温度60~130℃、金型温度130~190℃、かつ結晶性ラジカル重合性組成物圧力0.1~10MPa、トランスファー成形機では金型温度130~190℃、かつ結晶性ラジカル重合性組成物圧力0.1~10MPaとすると電気電子部品へのダメージが少なくなり好ましい。
【実施例0091】
以下、実施例により本発明の一実施態様についてさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0092】
<電気電子部品固定用ラジカル重合性組成物の製造例>
実施例1~6、及び比較例1
表2に示す実施例1~6、及び表3に示す比較例1の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物は、下記表2、及び3に記載の配合量にて配合し、加圧加熱・冷却可能な混練機を用いて均一に調製した後、調製物を押し出し機に投入してホットカットして粒状物とした。一部の粒状物、塊状のラジカル重合性組成物は粉砕機を用いて粉末とした。
【0093】
(1)ラジカル重合性化合物
1.結晶性ラジカル重合性化合物1:ウレタンメタクリレート(1,6-ヘキサメチレンジイソシアネートの2-ヒドロキシエチルメタクリレート付加物)
2.結晶性ラジカル重合性化合物2:エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学(株)製 A-9300)
3.非晶性ラジカル重合性化合物3:ビスフェノールA型エポキシメタクリレート(ビスフェノールA型エポキシ樹脂のメタクリル酸付加物)
【0094】
(2)無機充填材
1.無機充填材1:溶融シリカ(デンカ(株)製 平均粒子径24μm)
2.無機充填材2:酸化マグネシウム(宇部マテリアルズ(株)平均粒径55μm)
【0095】
(3)ラジカル重合開始剤
1.熱重合開始剤1:ジクミルパーオキサド
(日油(株)製、10時間半減期温度:116℃、ジアルキルパーオキサイド)
2.熱重合開始剤2:パーヘキサC
(日油(株)製、10時間半減期温度:91℃、パーオキシケタール)
3.熱重合開始剤3:ナイパーFF
(日油(株)製、10時間半減期温度:74℃、ジアシルパーオキサイド)
4.光重合開始剤1:オムニラット184
(IGM Resins B.V.製、アルキルフェノン)
【0096】
(4)添加剤
1.シランカップリング剤:メタクリル系シラン(信越化学工業(株)製 KBM-503)
2.離型剤:ステアリン酸亜鉛(日油(株)製 GF-200)
3.重合禁止剤:ペラベンゾキノン(精工化学(株)製 PBQ)
4.着色剤:カーボンブラック(三菱化学(株)製 CB40)
【0097】
<ラジカル重合性化合物特性>
結晶性、及び非晶性ラジカル重合性化合物の融点を測定して表1に示した。
【0098】
【0099】
【0100】
【表3】
<化合物特性、組成物特性、物性評価方法>
【0101】
(1)融点
表1に示すラジカル重合性化合物を示差走査熱量分析計「DSC6220」(セイコーインスツル(株)製)にて、測定試料10mgをアルミパンに入れ、蓋を押さえて密封し、-60℃から200℃まで、10℃/minの昇温速度で測定した。得られた曲線の吸熱ピークを融点とした。その結果を表1に示す。
【0102】
(2)硬化成形性
評価方法はJIS K 6911の曲げ試験片の作製可否で判断した。表2に示す実施例1~6、及び表3に示す比較例1の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物を用いて、曲げ試験片作製金型を備えた補助ラム式トランスファー成形機にて評価した。成形条件は金型温度165℃、圧力3.2MPa、硬化時間180秒で成形を行い、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの曲げ成形片を得た。成形片が得られたものを〇、未硬化で成形片が得られなかったものを×とした。
【0103】
(3)23℃粘度保持率
表2に示す実施例1~6、及び表3に示す比較例1の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物を高化式フローテスタ((株)島津製作所製 CFT-100EX)にて溶融粘度を測定した。直径2mmで長さ10mmダイスを備え、90℃に加熱したシリンダー試料挿入孔にラジカル重合性組成物を入れ、240秒の予備加熱後に5kgf/cm2圧力でピストンを加圧し、ラジカル重合性組成物をダイのノズルから流出させ、直線性が良好な箇所から溶融粘度を求めた。保持率は初期溶融粘度をAとし、23℃で7日保管した溶融粘度をBとしてB/Aにて保持率を算出した。その結果を表2、及び3に示す。目標とする粘度保持率は100~120%とし、100~120%を良、90~120%を可とした。但し、前記厳格な基準をクリアせずとも、所望の用途、要求される品質等によっては、90~120%の範囲を超える場合でも条件が適合する場合もあるので、一つの目安として検討すればよいものである。
【0104】
(4)90℃粘度保持率
表2に示す実施例1~6、及び表3に示す比較例1の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物を高化式フローテスタ((株)島津製作所製 CFT-100EX)にて溶融粘度を測定した。直径2mmで長さ10mmダイスを備え、90℃に加熱したシリンダー試料挿入孔にラジカル重合性組成物を入れ、240秒の予備加熱後に5kgf/cm2圧力でピストンを加圧し、ラジカル重合性組成物をダイのノズルから流出させ、直線性が良好な箇所から溶融粘度を求めた。保持率は初期溶融粘度をAとし、90℃で1hr保管した溶融粘度をCとしてC/Aにて保持率を算出した。その結果を表2、及び3に示す。目標とする粘度保持率は90~1000%とし、100~500%を良、その90~1000%を可とした。但し、前記厳格な基準をクリアせずとも、所望の用途、要求される品質等によっては、90~1000%の範囲を超える場合でも条件が適合する場合もあるので、一つの目安として検討すればよいものである。
【0105】
(5)曲げ強さ保持率
表2に示す実施例1~6、及び表3に示す比較例1の結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物を用いて、曲げ試験片作製金型を備えた補助ラム式トランスファー成形機にて曲げ試験片を作製した。成形条件は金型温度165℃、圧力3.2MPa、硬化時間180秒で成形を行い、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの曲げ成形片を得た。保持率は後硬化を実施しない初期曲げ強さをαとし、150℃で5hrs後硬化した曲げ強さをβとしてβ/αにて保持率を算出した。その結果を表2、及び3に示す。目標とする保持率は90~150%とし、100~130%の範囲を良、90~150%を可とした。但し、前記 厳格な基準をクリアせずとも、所望の用途、要求される品質等によっては、が90~150%を超える場合でも条件が適合する場合もあるので、一つの目安として検討すればよいものである。
【0106】
<評価結果>
表2及び表3に示すように、本発明における電気電子部品固定用結晶性又は非晶性ラジカル重合性組成物は、取扱性に優れることが判明した。また、特に、本発明における電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物の実施例1~6は、熱硬化性に優れ、保存安定性も良好であった。本発明における電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、全体的に優れた結果を示すことが判明した。
【0107】
比較例1は結晶性ラジカル重合性化合物を含まない組成物の例である。所定の条件では成形片を得ることができず、硬化成形性に劣る結果となっている。粘度保持率は十分な結果を示した。
【0108】
以上に述べたように、結晶性ラジカル重合性化合物を少なくとも含む電気電子部品固定用結晶性ラジカル重合性組成物は、取扱性に優れ、硬化形成性も良好であることが判明した。