(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127950
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】パルプモールド品の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
D21J 5/00 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
D21J5/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107424
(22)【出願日】2024-07-03
(62)【分割の表示】P 2020111233の分割
【原出願日】2020-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】390007537
【氏名又は名称】株式会社ケーピープラテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 一成
(57)【要約】
【課題】内側面及び外側面の両面が滑らかな表面のパルプモールド品を繰り返し効率よく生産すること。
【解決手段】上下方向に沿って互いに摺動可能に嵌合する外周面22及び内周面28を有することにより、容積可変な貯容室20を画定する第1型12及び第2型14と、第2型14に、型外から貯容室20を画定する型面に至るように設けられたパルプスラリ供給通路46と、第1型12に、前記型面から前記型外に至るように設けられた複数の脱水通路34と、貯容室20にパルプスラリを受容するべく、貯容室20の容積が第1の容積となるようにする第1型締め状態、前記パルプスラリを脱水するべく、貯容室20の容積を前記第1の容積よりも小さい第2の容積となるようにする第2型締め状態、及び貯容室20を開放するべき型開き状態をとり得るように、第1型12及び第2型14を上下方向に沿って互いに変位可能に駆動する型駆動装置18と有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線方向に沿って互いに摺動可能に嵌合する外周面及び内周面を有することにより、容積可変な貯容室を画定する第1型及び第2型と、
少なくとも前記第1型及び前記第2型の一方に、型外から前記貯容室を画定する型面に至るように設けられたパルプスラリ供給通路と、
少なくとも前記第1型及び前記第2型の一方に、前記型面から前記型外に至るように設けられた複数の脱水通路と、
少なくとも前記第1型及び前記第2型の一方に、前記型外から前記型面に至るように設けられた複数の加熱流体通路と、
前記貯容室にパルプスラリを受容するべく、前記貯容室の容積が第1の容積となるようにする第1型締め状態、前記パルプスラリを脱水するべく、前記貯容室の容積を前記第1の容積よりも小さい第2の容積となるようにする第2型締め状態、及び前記貯容室を開放するべき型開き状態をとり得るように、前記第1型及び前記第2型を前記所定の軸線方向に沿って互いに変位可能に駆動する型駆動装置と有するパルプモールド品の製造装置。
【請求項2】
前記第2型は、前記貯容室を画定する面を有する型本体と、前記内周面を含み、前記第1型の外周を取り囲む枠状をなし、前記型本体に対して型締め・離型方向に離接可能に且つ前記内周面が前記第1型の前記外周面に摺接して前記第1型に対して型締め・離型方向に移動可能に設けられた外郭部材とを個別に有し、
前記型本体及び前記外郭部材は、型締め・離型により互いに離接する対向面を含み、前記外郭部材の前記対向面に、前記貯容室に連通して連続成形のための連結片部を成形する拡張凹部が形成されている請求項1に記載のパルプモールド品の製造装置。
【請求項3】
前記第1型及び前記第2型は複数の前記貯容室を画定する請求項2に記載のパルプモールド品の製造装置。
【請求項4】
所定形状をなすパルプモールド品の製造方法であって、
所定の軸線方向に沿って互いに摺動可能に嵌合する外周面及び内周面を有することにより、容積可変な貯容室を画定する第1型及び第2型と、少なくとも前記第1型及び前記第2型の一方に、型外から前記貯容室を画定する型面に至るように設けられたパルプスラリ供給通路と、少なくとも前記第1型及び前記第2型の一方に、前記貯容室を画定する型面から型外に至るように設けられた複数の脱水通路と、少なくとも前記第1型及び前記第2型の一方に、前記型外から前記型面に至るように設けられた複数の加熱流体通路と、前記貯容室にパルプスラリを受容するべく、前記貯容室の容積が第1の容積となるようにする第1型締め状態、前記パルプスラリを脱水するべく、前記貯容室の容積を前記第1の容積よりも小さい第2の容積となるようにする第2型締め状態、及び前記貯容室を開放するべき型開き状態をとり得るように、前記第1型及び前記第2型を前記所定の軸線方向に沿って互いに変位可能に駆動する型駆動装置とを有する製造装置を用い、
前記第1型締め状態において、前記貯容室にパルプスラリを充填するパルプスラリ充填工程と、
前記第1型締め状態から前記第2型締め状態へ変化させ、前記脱水通路によって前記貯容室の前記パルプスラリを脱水しつつ当該パルプスラリを圧縮する圧縮脱水工程と、
前記第2型締め状態において、前記加熱流体通路から前記貯容室に向けて加熱流体を供給して前記貯容室の前記パルプスラリを乾燥させ、前記パルプモールド品を完成させる乾燥工程と、
前記型開き状態において、前記パルプモールド品を前記貯容室から取り出す離型工程とを有するパルプモールド品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパルプモールド品の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パルプモールド品の製造装置として、抄造型の表面にパルプスラリ中のパルプを積層することにより、パルプモールド品の抄造を行い、その後に抄造型の表面に抄造されたパルプモールド品の乾燥を行うものが知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-316800号公報
【特許文献2】特開2006-45711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の如き製造装置により製造されるパルプモールド品は、抄造型の表面に接触する側の表面は滑らかな表面になるが、その反対の面は比較的荒い粗面になり、食品容器に適した内側面及び外側面の両面が滑らかな表面のパルプモールド品を製造することができない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、内側面及び外側面の両面が滑らかな表面のパルプモールド品を繰り返し効率よく生産することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態によるパルプモールド品の製造装置は、所定の軸線方向に沿って互いに摺動可能に嵌合する外周面及び内周面を有することにより、容積可変な貯容室を画定する第1型及び第2型と、少なくとも前記第1型及び前記第2型の一方に、型外から前記貯容室を画定する型面に至るように設けられたパルプスラリ供給通路と、少なくとも前記第1型及び前記第2型の一方に、前記型面から前記型外に至るように設けられた複数の脱水通路と、前記貯容室にパルプスラリを受容するべく、前記貯容室の容積が第1の容積となるようにする第1型締め状態、前記パルプスラリを脱水するべく、前記貯容室の容積を前記第1の容積よりも小さい第2の容積となるようにする第2型締め状態、及び前記貯容室を開放するべき型開き状態をとり得るように、前記第1型及び前記第2型を前記所定の軸線方向に沿って互いに変位可能に駆動する型駆動装置とを有する。
【0007】
この構成によれば、内側面及び外側面の両面が滑らかな表面のパルプモールド品を繰り返し効率よく生産することができる。
【0008】
上記製造装置において、好ましくは、少なくとも前記第1型及び前記第2型の一方に、前記型外から前記型面に至るように設けられた複数の加熱空気通路を有する。
【0009】
この構成によれば、圧縮脱水工程及び乾燥工程が、同一の第1型及び第2型によって行われ、製造装置の構造が簡単になる。
【0010】
上記製造装置において、好ましくは、前記第2型は、前記貯容室を画定する面を型本体と、前記内周面を含み、前記第1型の外周を取り囲む枠状をなし、前記型本体に対して型締め・離型方向に離接可能に且つ前記内周面が前記第1型の前記外周面に摺接して前記第1型に対して型締め・離型方向に移動可能に設けられた外郭部材とを個別に有し、前記型本体及び前記外郭部材は、型締め・離型により互いに離接する対向面を含み、前記外郭部材の前記対向面に、前記貯容室に連通して連続成形のための連結片部を成形する拡張凹部が形成されている。
【0011】
この構成によれば、複数のパルプモールド品が連結片部によって互いに接合された帯状に製造され、パルプモールド品に対するラミネートフィルムのコーティング等の2次加工処理及びその処理のための搬送が容易に行われ得るようになる。
【0012】
上記製造装置において、好ましくは、前記第1型及び前記第2型は複数の前記貯容室を画定する。
【0013】
この構成によれば、内側面及び外側面の両面が滑らかな表面のパルプモールド品を生産性よく複数個、同時に製造することができる。
【0014】
本発明の一つの実施形態によるパルプモールド品の製造方法は、所定形状をなすパルプモールド品の製造方法であって、所定の軸線方向に沿って互いに摺動可能に嵌合する外周面及び内周面を有することにより、容積可変な貯容室を画定する第1型及び第2型と、少なくとも前記第1型及び前記第2型の一方に、前記貯容室を画定する型面から型外に至るように設けられた複数の脱水通路と、少なくとも前記第1型及び前記第2型の一方に、前記型外から前記型面に至るように設けられた複数の加熱流体通路と、前記貯容室にパルプスラリを受容するべく、前記貯容室の容積が第1の容積となるようにする第1型締め状態、前記パルプスラリを脱水するべく、前記貯容室の容積を前記第1の容積よりも小さい第2の容積となるようにする第2型締め状態、及び前記貯容室を開放するべき型開き状態をとり得るように、前記第1型及び前記第2型を前記所定の軸線方向に沿って互いに変位可能に駆動する型駆動装置と有する製造装置を用い、前記第1型締め状態において、前記貯容室にパルプスラリを充填するパルプスラリ充填工程と、前記第1型締め状態から前記第2型締め状態へ変化させ、前記脱水通路によって前記貯容室の前記パルプスラリを脱水しつつ当該パルプスラリを圧縮する圧縮脱水工程と、前記第2型締め状態において、前記加熱流体通路から前記貯容室に向けて加熱流体を供給して前記貯容室の前記パルプスラリを乾燥させ、前記パルプモールド品を完成させる乾燥工程と、前記型開き状態において、前記パルプモールド品を前記貯容室から取り出す離型工程とを有する。
【0015】
この方法によれば、内側面及び外側面の両面が滑らかな表面のパルプモールド品が繰り返し効率よく生産される。
【発明の効果】
【0016】
本発明による製造装置によれば、内側面及び外側面の両面が滑らかな表面のパルプモールド品を繰り返し効率よく生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態1のパルプモールド品製造装置を示す縦断面図
【
図2】同製造装置によるパルプスラリ充填工程を示す縦断面図
【
図3】同製造装置による圧縮脱水工程を示す縦断面図
【
図6】同製造装置によって製造される食品容器(パルプモールド品)の一例を示す斜視図
【
図7】本発明の実施形態2のパルプモールド品製造装置を示す縦断面図
【
図9】同製造装置によるパルプスラリ充填工程を示す縦断面図
【
図10】同製造装置による圧縮脱水工程を示す縦断面図
【
図13】本発明の実施形態3のパルプモールド品製造装置による圧縮脱水工程を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明によるパルプモールド品製造装置の実施形態1を、
図1~
図5を参照して説明する。
【0019】
実施形態1のパルプモールド品製造装置10は、パルプモールドによる食品容器100(
図6参照)を製造する装置であり、下金型(第1型)12と上金型(第2型)14とを有する。
【0020】
パルプモールド品製造装置10によって製造される食品容器100は、
図6に示されているように、上方開口の長方体形状の食品収容空間を画定する食品収容部102と、食品収容部102の上縁から外方に延長したフランジ部104とを有する。フランジ部104は、平面視で矩形の外形を有する四角枠状をなし、食品収容部102を隔てて互いに平行な2組の平行片部106A、106B及び108A、108Bを含む。パルプモールド品製造装置10による食品容器100の製造は、
図5に示されているように、上下に反転した状態で行われる。
【0021】
下金型12は固定台16上に固定されている。上金型14は型駆動装置18により上下方向(所定の軸線方向)に移動可能に設けられている。
【0022】
下金型12は、後述する貯容室20の外形と同形状の外周面22を有する。外周面22は、平面視で食品容器100のフランジ部104の外郭形状と同形状に配置され、上下方向、つまり型移動方向に所定の寸法に亘って垂直に延在する。
【0023】
下金型12は、更に、外周面22の上縁に沿って延在する平面視で四角枠形状の水平上面24及び水平上面24から上方に向けて突出した長方体形状の凸形状面26を有する。
【0024】
上金型14は、貯容室20の外形と同形状の内周面28を有する。内周面28は、平面視で食品容器100のフランジ部104の外郭形状と同形状に配置され、上下方向、つまり型移動方向に所定の寸法に亘って垂直に延在し、下金型12の外周面22に上下方向に摺動可能に嵌合する。
【0025】
上金型14は、更に、内周面28の上縁に沿って延在し、水平上面24と正対する平面視で四角枠形状の水平下面30及び水平下面30から上方に向けて窪んだ長方体形状の凹形状面32を有する。
【0026】
水平上面24及び凸形状面26と水平下面30及び凹形状面32とは、下金型12と上金型14との間に貯容室20を画定する型面である。換言すると、貯容室20は、フランジ部104を成形するための水平上面24及び水平下面30と、食品収容部102を成形するための凸形状面26及び凹形状面32とにより、実質的に密閉空間として画定される。
【0027】
貯容室20は、下金型12及び上金型14が上下方向に互いに摺動可能に嵌合する外周面22及び内周面28を有していることにより、下金型12に対する上金型14の上下変位に応じて、実質的な密閉状態を保って、容積を変化する。
【0028】
尚、内周面28には、貯容室20の密閉性を高めるために、ゴム状弾性材によるシール部材29が取り付けられている。
【0029】
下金型12には、型面(水平上面24及び凸形状面26)に開口し、当該型面から型外に至るように複数の脱水通路34が形成されている。各脱水通路34は、下金型12の下部に設けられた通路部材36により画定された集合排水通路38及び外部通路40によって吸引ポンプ42に接続されている。外部通路40の途中には開閉弁44が設けられている。これより、貯容室20に充填されたパルプスラリは、各脱水通路34、集合排水通路38及び外部通路40を経て、開閉弁44の開閉に応じて貯容室20外に排出される。吸引ポンプ42は、貯容室20のパルプスラリ中の水分を吸引し、強制排水を行う。
【0030】
下金型12の水平上面24及び凸形状面26には比較的細かい網目の通水性を有する金網27が張られている。金網27は、濾過作用により、パルプスラリ中のパルプが貯容室20から脱水通路34を通って外部に漏出することを抑制する。
【0031】
上金型14には、型外から型面(凹形状面32)に至り、当該型面に開口するパルプスラリ通路46が形成されている。パルプスラリ通路46は外部通路48によってパルプスラリ供給源50に接続されている。パルプスラリ供給源50はパルプを水に懸濁分散したパルプスラリの供給源である。外部通路48の途中には開閉弁52が設けられている。これにより、パルプスラリ供給源50のパルプスラリは、外部通路48及びパルプスラリ通路46を経て、開閉弁52の開閉に応じて貯容室20に選択的に供給(充填)される。
【0032】
上金型14には、型外から型面(凹形状面32)に至り、当該型面に開口する複数の加熱流体通路54が形成されている。各加熱流体通路54は、上金型14の上部に設けられた通路部材56により画定された集合加熱流体通路58及び外部通路60によって加熱流体源62に接続されている。加熱流体源62は加熱流体である蒸気の供給源である。外部通路60の途中には開閉弁64が設けられている。これにより、加熱流体源62の加熱流体は、外部通路60、集合加熱流体通路58及び加熱流体通路54を経て開閉弁64の開閉に応じて貯容室20に選択的に供給(噴出)される。
【0033】
加熱流体源62は外部通路61によってパルプスラリ通路46に接続されている。外部通路60の途中には開閉弁64が設けられている。これにより、加熱流体源62の加熱流体は、外部通路61を経て開閉弁63の開閉に応じてパルプスラリ通路46から貯容室20に選択的に供給(噴出)される。
【0034】
型駆動装置18は、流体圧シリンダ装置を含み、上金型14を下金型12に対して上下方向に延在する軸線方向(型移動方向)に沿って変位可能に駆動するものである。型駆動装置18は、
図1及び
図2に示されているように、上金型14の降下により、貯容室20に食品容器100を成形するために必要な所要量(容量)のパルプスラリを受容するべく、貯容室20の容積が第1の容積となるようにする第1型締め状態(上金型14の第1降下位置)と、
図3及び
図4に示されているように、食品容器100を成形すべく、貯容室20のパルプスラリを圧縮しつつ脱水するべく、貯容室20の容積を上述の第1の容積よりも小さい第2の容積となるようにする第2型締め状態(上金型14の第2降下位置)と、
図5に示されているように、貯容室20を開放するべき型開き状態(上金型14の上昇位置)をとり得るように、上金型14を下金型12に対して上下方向に変位させる。
【0035】
貯容室20は、第1型締め状態及び第2型締め状態の何れの状態でも、
図1~
図4に示されているように、下金型12の外周面22と上金型14の内周面28とが嵌合していていることにより、実質的な密閉状態にある。
【0036】
次に、パルプモールド品製造装置10を用いて自動制御により行われるパルプモールド品である食品容器100の製造工程(方法)について説明する。
【0037】
先ず、
図1に示されているように、初期工程として、開閉弁52、63及び64が全閉の状態で、型駆動装置18により上金型14を第1降下位置に降下変位させる。これにより、上金型14と下金型12とは第1型締め状態になる。尚、この初期工程では、開閉弁44の開閉状態を特定する必要はない。
【0038】
次に、
図2に示されているように、パルプスラリ充填工程として、第1型締め状態において、開閉弁44が部分開(半開)、開閉弁52が全開、開閉弁63及び64が全閉する。これにより、パルプスラリ供給源50からパルプスラリ通路46を通って貯容室20にパルプスラリが供給される。開閉弁44が部分開であることにより、貯容室20に供給されたパルプスラリ中の水分の一部が、重力或いは吸引ポンプ42の吸引力によって脱水通路34から貯容室20外(型外)に排出される。
【0039】
貯容室20に所定量のパルプスラリが供給されると、開閉弁52が全閉になり、パルプスラリ充填工程が終了する。貯容室20に対するパルプスラリの供給量は、開閉弁52が全開している時間の計測或いは貯容室20の内圧の計測等により、予め定められた所定量になるように制御されればよい。
【0040】
次に、
図3に示されているように、圧縮脱水工程として、開閉弁44が全開、開閉弁52、63及び64が全閉し、型駆動装置18により上金型14を第2降下位置に降下変位させる。これにより、上金型14と下金型12とは第2型締め状態になり、各脱水通路34によって貯容室20のパルプスラリの脱水が行われつつ当該パルプスラリが圧縮される。この時には吸引ポンプ42の吸引力によって強制脱水が行われることにより、加熱流体通路54へのパルプスラリの侵入が抑制される。
【0041】
また、この圧縮脱水工程時には、開閉弁63が全開することにより、加熱流体源62からパルプスラリ通路46に加熱流体である蒸気が供給される。これにより、蒸気の圧力によってパルプスラリ通路46に残留しているパルプスラリが貯容室20に排出される。
【0042】
次に、
図4に示されているように、乾燥工程として、第2型締め状態において、開閉弁44、63及び64が全開、開閉弁52が全閉する。これにより、加熱流体源62からパルプスラリ通路46及び各加熱流体通路54によって貯容室20に向けて加熱流体である蒸気が供給され、貯容室20の脱水後のパルプスラリ、つまりパルプの乾燥、硬化が行われる。このようしてパルプによる食品容器(パルプモールド品)100が成形される。
【0043】
次に、
図5に示されているように、離型工程として、開閉弁52、63及び64が全閉した状態で、型駆動装置18により上金型14を上昇位置に上昇変位させる。これにより、下金型12と上金型14とは型開き状態になり、貯容室20から食品容器100を取り出すことが行われる。
【0044】
上述のように、食品容器100は、第2型締め状態において食品容器100と同一形状の空間をなす貯容室20を画定する下金型12及び上金型14により型成形されるので、内側面及び外側面の両面が滑らかな表面の食品容器100が効率よく繰り返し生産される。
【0045】
圧縮脱水工程及び乾燥工程が、同一の下金型12及び上金型14によって行われるから、パルプモールド品製造装置10の構造が簡単になると共に、圧縮脱水工程及び乾燥工程において、パルプスラリや食品容器100を移動(トランスファ)させる必要がなく、食品容器100が効率よく生産されるようになる。
【0046】
次に、本発明によるパルプモールド品製造装置の実施形態2を、
図7~
図12を参照して説明する。なお、
図7~
図12において、
図1~
図5に対応する部分は、
図1~
図5に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0047】
実施形態2のパルプモールド品製造装置11は、実施形態1と同様に、
図6に示されている食品容器100を製造する。
【0048】
実施形態2では、パルプモールド品製造装置11は、水平下面30及び凹形状面32を含む上金型14の型本体15と、内周面28を含む外郭部材70とが別部材により構成されている。
【0049】
外郭部材70は下金型12の外周を取り囲む四角枠形状をしている。外郭部材70は、通路部材36から立接された複数のガイドポスト72が係合孔71に嵌合することにより、各ガイドポスト72に案内されて略水平状態を保って、内周面28が下金型12の外周面22に摺接した態様で、下金型12に対して型締め・離型方向である上下方向に移動可能である。型本体15及び外郭部材70は型締め・離型により互いに離接する対向面として、水平下面30及び水平上面76を含む。
【0050】
外郭部材70と通路部材36との間にはガイドポスト72毎に圧縮コイルばね74が設けられている。ガイドポスト72は外郭部材70を通路部材36に対して上方に付勢している。外郭部材70の水平上面76(
図7参照)は、第1型締め状態時には、
図7及び
図9に示されているように、圧縮コイルばね74のばね力に抗して少し降下した状態で、型本体15の水平下面30に押し付けられる。
【0051】
外郭部材70の水平上面76の図にて右側の辺部には、
図8に示されているように、貯容室20に連通するフランジ部104の厚さ相当の深さの三角波形の拡張凹部78が形成されている。外郭部材70の水平上面76の左側の辺部は、
図8に示されているように、貯容室20に連通する、その全体がフランジ部104の厚さ相当の深さの拡張凹部80になっている。つまり、外郭部材70の水平上面76の左側の辺部は、他の辺部に比してフランジ部104の厚さ相当の深さだけ低くなっている。
【0052】
拡張凹部78は、上金型14の水平下面30と協働して食品容器100のフランジ部104の平行片部108Bの外方に、連続成形のための非製品部である三角波形の連結片部110(
図8参照)を成形する。拡張凹部80は、上金型14の水平下面30及び拡張凹部80に配置される前回成形品の連結片部110と協働して食品容器100のフランジ部104の平行片部108Aの外方に、連続製造のための非製品部であって、連結片部110に成形部として連続する連続成形のための連結片部112(
図8参照)を成形する。
【0053】
外郭部材70は、第1型締め状態から第2型締め状態へ移行する時には、
図10及び
図11に示されているように、上金型14の降下に伴い圧縮コイルばね74のばね力に抗して押し下げられ、上金型14の降下を阻害することなく、前回成形の食品容器100の連結片部110と協働して貯容室20の実質的な密閉状態を維持する。
【0054】
外郭部材70は、型開き状態では、
図12に示されているように、圧縮コイルばね74のばね力によって最上昇位置(初期位置)に戻る。
【0055】
次に、パルプモールド品製造装置11を用いて自動制御により行われるパルプモールド品である食品容器100の製造工程(方法)について説明する。
【0056】
先ず、
図7に示されているように、初期工程として、前回成形の食品容器100の連結片部110が拡張凹部80に載置されるように、前回成形の食品容器100を図にて左側に搬送し、搬送完了後に、開閉弁52、63及び64が全閉の状態で、型駆動装置18により上金型14を第1降下位置に降下変位させる。これにより、上金型14と下金型12とは第1型締め状態になる。尚、この初期工程では、開閉弁44の開閉状態を特定する必要はない。
【0057】
この状態では、拡張凹部80に載置された連結片部110自体が貯容室20を密閉空間にするシール要素として作用する。尚、食品容器100の初回の成形時には、貯容室20の密閉性のために、拡張凹部80に矩形板状のシール部材(不図示)が載置されればよい。
【0058】
次に、
図9に示されているように、パルプスラリ充填工程として、第1型締め状態において、開閉弁44が部分開(半開)、開閉弁52が全開、開閉弁63及び64が全閉する。これにより、パルプスラリ供給源50からパルプスラリ通路46を通って貯容室20及び拡張凹部78、80による空間にパルプスラリが供給される。開閉弁44が部分開であることにより、貯容室20に供給されたパルプスラリ中の水分の一部が、重力或いは吸引ポンプ42の吸引力によって脱水通路34から貯容室20外(型外)に排出される。
【0059】
貯容室20に所定量のパルプスラリが供給されると、開閉弁52が全閉になり、パルプスラリ充填工程が終了する。
【0060】
次に、
図10に示されているように、圧縮脱水工程として、開閉弁44が全開、開閉弁52、63及び64が全閉し、型駆動装置18により上金型14を第2降下位置に降下変位させる。これにより、上金型14と下金型12とは第2型締め状態になり、各脱水通路34によって貯容室20及び拡張凹部78、80のパルプスラリの脱水が行われつつ当該パルプスラリが圧縮される。この時には吸引ポンプ42の吸引力によって強制脱水が行われることにより、加熱流体通路54へのパルプスラリの侵入が抑制される。
【0061】
また、この圧縮脱水工程時に、開閉弁63が全開することにより、加熱流体源62からパルプスラリ通路46に加熱流体である蒸気が供給される。これにより、蒸気の圧力によってパルプスラリ通路46に残留しているパルプスラリが貯容室20に排出される。
【0062】
次に、
図11に示されているように、乾燥工程として、第2型締め状態において、開閉弁44、63及び64が全開、開閉弁52が全閉する。これにより、加熱流体源62からパルプスラリ通路46及び各加熱流体通路54によって貯容室20に向けて加熱流体である蒸気が供給され、貯容室20及び拡張凹部78、80の脱水後のパルプスラリ、つまりパルプの乾燥、硬化が行われる。このようにしてパルプによる食品容器(パルプモールド品)100が成形される。
【0063】
この食品容器100の成形と同時に、拡張凹部78において、連結片部110がフランジ部104の平行片部108Bと一体成形されると共に、拡張凹部80において、連結片部112が、フランジ部104の平行片部108Aと一体に、且つ前回に成形された連結片部110と接合された形態で成形される。
【0064】
次に、
図12に示されているように、離型工程として、開閉弁52、63及び64が全閉した状態で、型駆動装置18により上金型14を上昇位置に上昇変位させる。これにより、下金型12と上金型14とは型開き状態になり、貯容室20から食品容器100を取り出すことが行われる。
【0065】
この食品容器100は、下金型12と上金型14との間の空間を、図にて左側に、連結片部110が拡張凹部80に載置され得る位置にまで移送され、その後に、上金型14が第1降下位置に降下することにより、次の食品容器100の成形のために
図7に示されている初期工程に戻る。
【0066】
実施形態2でも、食品容器100は、第2型締め状態において食品容器100と同一形状の空間をなす貯容室20を画定する下金型12及び上金型14により型成形されるので、内側面及び外側面の両面が滑らかな表面の食品容器100が効率よく繰り返し生産される。
【0067】
実施形態2では、複数の食品容器100が連結片部110、112によって互いに接合された帯状に製造されるので、食品容器100に対するラミネートフィルムのコーティング等の2次加工処理及びその処理のための搬送が容易に行われ得るようになる。
【0068】
連結片部110、112によって互いに接合された帯状に連なる複数の食品容器100は、連結片部110、112が平行片部108A、108Bから切除されることにより、個別の食品容器100になる。
【0069】
次に、本発明によるパルプモールド品製造装置の実施形態3を、
図13及び
図14を参照して説明する。なお、
図13及び
図14において、
図1~
図12に対応する部分は、
図1~
図12に付した符号と同一の符号を付けて、その説明を省略する。
【0070】
実施形態3でも、外郭部材70は、下金型12の外周を取り囲む枠形状をしており、内方に複数の貯容室20を内包する。換言すると、複数の貯容室20は、外郭部材70の内方にあって、内周面28との嵌合により、実質的な密閉状態になる。
【0071】
実施形態3のパルプモールド品製造装置11を用いて行われる食品容器100の製造工程は、複数の食品容器100か同時に製造されること以外は、実施形態2と実質的に同一であるので、その説明は省略する。
【0072】
これにより、実施形態3では、一組の下金型12及び上金型14により、複数の食品容器100を同時に製造することができ、食品容器100の生産効率が向上する。
【0073】
以上、本発明を、その好適な実施形態について説明したが、当業者であれば容易に理解できるように、本発明はこのような実施形態により限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0074】
例えば、加熱流体は、蒸気以外に、加熱空気等の加熱気体であってもよい。型駆動装置18は、流体圧式のものに限られるものでなく、電動送りねじやリニアモータ等によるものであってもよい。脱水通路34は上金型14に設けられてもよい。パルプスラリ通路46及び加熱流体通路54は下金型12に設けられてもよい。連結片部110の先端縁の形状は三角波形に限られることなく、半円波形や単純な直線形であってもよい。
【0075】
本発明のパルプモールド品の製造装置及び製造方法は、食品容器100の製造に限られることはなく、各種形状の食品容器、各種のパルプモールド品の製造に用いられてよい。
【0076】
また、上記実施形態に示した構成要素は必ずしも全てが必須なものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。例えば、吸引ポンプ42は必須ではなく、貯容室20のパルプスラリ中の水分の排出(脱水)は、貯容室20のパルプスラリの圧縮に伴う絞り出しだけであってもよい。
【符号の説明】
【0077】
10 :パルプモールド品製造装置
11 :パルプモールド品製造装置
12 :下金型(第1型)
14 :上金型(第2型)
15 :型本体
16 :固定台
18 :型駆動装置
20 :貯容室
22 :外周面
24 :水平上面
26 :凸形状面
27 :金網
28 :内周面
29 :シール部材
30 :水平下面
32 :凹形状面
34 :脱水通路
36 :通路部材
38 :集合排水通路
40 :外部通路
42 :吸引ポンプ
44 :開閉弁
46 :パルプスラリ通路
48 :外部通路
50 :パルプスラリ供給源
52 :開閉弁
54 :加熱流体通路
56 :通路部材
58 :集合加熱流体通路
60 :外部通路
61 :外部通路
62 :加熱流体源
63 :開閉弁
64 :開閉弁
70 :外郭部材
71 :係合孔
72 :ガイドポスト
74 :圧縮コイルばね
76 :水平上面
78 :拡張凹部
80 :拡張凹部
100 :食品容器
102 :食品収容部
104 :フランジ部
106A :平行片部
106B :平行片部
108A :平行片部
108B :平行片部
110 :連結片部
112 :連結片部