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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127978
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】双方向電力連系回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
H02M7/12 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107853
(22)【出願日】2024-07-04
(62)【分割の表示】P 2022200946の分割
【原出願日】2022-12-16
(71)【出願人】
【識別番号】516131843
【氏名又は名称】ANP株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516091112
【氏名又は名称】神崎産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095267
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 高城郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124176
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 典子
(74)【代理人】
【識別番号】100224269
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 佑太
(72)【発明者】
【氏名】羽田 正二
(57)【要約】
【課題】電子制御ユニットによる自動制御が不要であり、自律的動作によって双方向の交流直流電力連系回路を提供する。
【解決手段】交流電力部と直流電力部とを双方向に連系する双方向電力連系装置であって、前記交流電力部からの交流を全波整流して前記直流電力部に出力可能な複数の第1の整流素子を具備する第1の全波整流部と、前記交流電力部からの交流を全波整流して抵抗素子に出力可能な複数の第2の整流素子を具備する第2の全波整流部と、前記複数の第1の整流素子の各々とそれぞれ並列である複数のスイッチ素子を具備し、各スイッチ素子は前記複数の第2の整流素子の各々と関係し、関係する第2の整流素子の非導通時にオフであり導通時にオンであるように切り換わるスイッチ部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力部と直流電力部とを双方向に連系する双方向電力連系回路であって、
前記交流電力部からの交流を全波整流して前記直流電力部に出力可能な複数の第1の整流素子を具備する第1の全波整流部と、
前記交流電力部からの交流を全波整流して抵抗素子に出力可能な複数の第2の整流素子を具備する第2の全波整流部と、
前記複数の第1の整流素子の各々とそれぞれ並列である複数のスイッチ素子を具備し、各スイッチ素子は前記複数の第2の整流素子の各々と関係し、関係する第2の整流素子の非導通時にオフであり導通時にオンであるように切り換わるスイッチ部と、を有する双方向電力連系回路。
【請求項2】
前記第1の全波整流部の前記複数の第1の整流素子は、
前記交流電力部からの交流の各相の端子にアノードがそれぞれ接続されかつ前記直流電力部の正極端にカソードが共通接続された第1の正側整流素子と、
前記交流電力部からの交流の各相の端子にカソードがそれぞれ接続されかつ前記直流電力部の負極端にアノードが共通接続された第1の負側整流素子と、を有し、
前記第2の全波整流部の前記複数の第2の整流素子は、
前記交流電力部からの交流の各相の端子にアノードがそれぞれ接続されかつ前記抵抗素子の一端にカソードが共通接続された第2の正側整流素子と、
前記交流電力部からの交流の各相の端子にカソードがそれぞれ接続されかつ前記抵抗素子の他端にアノードが共通接続された第2の負側整流素子と、を有する請求項1に記載の双方向電力連系回路。
【請求項3】
前記スイッチ素子のオンオフを切り換える駆動部は、
前記第2の整流素子と直列に挿入接続され前記第2の整流素子の導通時にのみ発光する発光素子と、前記発光素子の光を受光する受光素子と、を有し、
前記受光素子は、前記発光素子からの光の受光時に前記スイッチ素子をオンとし非受光時にオフとする駆動信号を出力する請求項2に記載の双方向電力連系回路。
【請求項4】
前記第1の整流素子は、電界効果トランジスタの寄生ダイオード又は寄生ダイオードと並列接続されたダイオードであり、
前記スイッチ素子は、前記電界効果トランジスタのドレインとソース間の電流路であり、前記電界効果トランジスタのゲートが前記駆動部の駆動信号により駆動される請求項3に記載の双方向電力連系回路。
【請求項5】
前記第1の整流素子は、IGBT又はバイポーラトランジスタの導通時に流れる電流とは逆方向の電流を流すための外付けダイオードであり、
前記スイッチ素子は、前記IGBT又は前記バイポーラトランジスタのエミッタとコレクタ間の電流路であり、前記IGBTのゲート又は前記バイポーラトランジスタのベースが前記駆動部の駆動信号により駆動される請求項3に記載の双方向電力連系回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流と直流の間で双方向に電力変換する双方向電力連系回路に関する。
【背景技術】
【0002】
商用交流電力系統と、発電システムや蓄電池等の直流電力設備との間で電力変換する双方向電力連系装置が知られている。特許文献1には、風力発電装置及び蓄電池を、系統連系インバータを介して電力会社系統と連系させたシステムが開示されている。
【0003】
特許文献2、3では、双方向ではないが、交流を整流して直流に変換する際にAC/DCコンバータを使用せずに多相変圧器を使用することで高周波スイッチングノイズの問題を解消している。また、変圧器の二次側端子の結線方法として、特許文献2ではスター結線を、特許文献3ではデルタ結線を基本とする変形的な結線を提案している。これらの変形的な結線においては、多相変圧器の各相に独立した巻線を設けることによる変圧器の大型化の問題を解消している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-250227号公報
【特許文献2】特開2022-71713号公報
【特許文献3】特開2022-540927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1等の従来の交直双方向連系技術においては、双方向コンバータ等の電子制御のために制御用IC等の電子制御ユニットが必要であった。また、特許文献2、3の多相変圧器を用いた交直連系は、多相変圧器の出力を全波整流して直流変換しているが、全波整流回路のみでは双方向連系を実現できない。
【0006】
以上に鑑み本発明の目的は、電子制御ユニットによる自動制御が不要であり、自律的動作による双方向の交流直流電力連系を行う回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するべく、本発明は、以下の構成を提供する。
[1]本発明の第1の態様は、交流電力部と直流電力部とを双方向に連系する双方向電力回路であって、
前記交流電力部からの交流を全波整流して前記直流電力部に出力可能な複数の第1の整流素子を具備する第1の全波整流部と、
前記交流電力部からの交流を全波整流して抵抗素子に出力可能な複数の第2の整流素子を具備する第2の全波整流部と、
前記複数の第1の整流素子の各々とそれぞれ並列である複数のスイッチ素子を具備し、各スイッチ素子は前記複数の第2の整流素子の各々と関係し、関係する第2の整流素子の非導通時にオフであり導通時にオンであるように切り換わるスイッチ部と、を有する。
【0008】
[2]上記態様において、
前記第1の全波整流部の前記複数の第1の整流素子は、
前記交流電力部からの交流の各相の端子にアノードがそれぞれ接続されかつ前記直流電力部の正極端にカソードが共通接続された第1の正側整流素子と、
前記交流電力部からの交流の各相の端子にカソードがそれぞれ接続されかつ前記直流電力部の負極端にアノードが共通接続された第1の負側整流素子と、を有し、
前記第2の全波整流部の前記複数の第2の整流素子は、
前記交流電力部からの交流の各相の端子にアノードがそれぞれ接続されかつ前記抵抗素子の一端にカソードが共通接続された第2の正側整流素子と、
前記交流電力部からの交流の各相の端子にカソードがそれぞれ接続されかつ前記抵抗素子の他端にアノードが共通接続された第2の負側整流素子と、を有する。
[3]上記態様において、
前記スイッチ素子のオンオフを切り換える駆動部は、
前記第2の整流素子と直列に挿入接続され前記第2の整流素子の導通時にのみ発光する発光素子と、前記発光素子の光を受光する受光素子と、を有し、
前記受光素子は、前記発光素子からの光の受光時に前記スイッチ素子をオンとし非受光時にオフとする駆動信号を出力する。
[4]上記態様において、
前記第1の整流素子は、電界効果トランジスタの寄生ダイオード又は寄生ダイオードと並列接続されたダイオードであり、
前記スイッチ素子は、前記電界効果トランジスタのドレインとソース間の電流路であり、前記電界効果トランジスタのゲートが前記駆動部の駆動信号により駆動される。
[5]上記態様において、
前記第1の整流素子は、IGBT又はバイポーラトランジスタの導通時に流れる電流とは逆方向の電流を流すための外付けダイオードであり、
前記スイッチ素子は、前記IGBT又は前記バイポーラトランジスタのエミッタとコレクタ間の電流路であり、前記IGBTのゲート又は前記バイポーラトランジスタのベースが前記駆動部の駆動信号により駆動される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電子制御ユニットによる自動制御を不要とし、自律的動作による双方向の交流直流電力連系を行う回路が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、双方向電力連系装置を含む全体構成を概略的に示した図である。
図2図2は、図1の連系回路部の具体的構成の一例を示している。
図3図3は、図2のスイッチ素子の別の例を示す。
図4図4(a)(b)は、図6(a)の波形のx点における連系回路部の動作の一例を示している。
図5図5(a)(b)は、図6(a)の波形のy点における連系回路部の動作の一例を示している。
図6図6(a)は12相交流の電圧波形、(b)は(a)に示した12相交流の電圧波形を全波整流した波形である。
図7図7(a)は、12相変圧器の二次側の12個の端子と、12個の線間電圧との対応関係を示した図である。(b)は線間電圧の位相関係のベクトル図である。
図8図8は、図4(b)及び図5(b)に示した蓄電池から放電される場合に多相変圧器の一次側で観測された三相交流の波形を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本発明による双方向電力連系装置の実施形態について説明する。本明細書において「三相交流」は対称三相交流を指す。対称三相交流は、大きさと周波数が等しく互いに120度の位相差がある3相の正弦波からなる。
【0012】
(1)連系回路部の構成及び動作
図1は、双方向電力連系装置を含む全体構成を概略的に示した図である。双方向電力連系装置は、交流電力部と直流電力部との間で電力を双方向に需給するための装置である。交流電力部は、ここではラインR0、S0、T0に三相交流が流れる系統電力とする。直流電力部は、ここでは蓄電池5とする。蓄電池5に、太陽発電システム等の直流発電設備をさらに接続することもできる。双方向電力連系装置は、多相変圧器1と、連系回路部10とを有する。
【0013】
多相変圧器1の一次側巻線は、系統電力の三相ラインR0、S0、T0と接続されている。図1の多相変圧器1は、一次側の三相交流を12相の多相交流に変換し、12個の二次側端子R1..T4から出力する。12相交流電圧の各々は、12個の二次側端子R1..T4のうちの所定の2端子間からそれぞれ出力される線間電圧であり、4組の三相交流からなる。図6(a)に12相交流電圧の波形を示している。
【0014】
連系回路部10は、図1では模式的に表している。連系回路部10は、多相変圧器1の出力を全波整流して蓄電池5に出力する機能と、蓄電池5からの電力を多相変圧器1の二次側端子に出力する機能とを有する。連系回路部10は、多相変圧器1の各二次側端子R1..T4にそれぞれ接続された同じ構成の12個の正側回路11と、同じ構成の12個の負側回路12とを有する。
【0015】
端子R1を例として説明する。端子R1には、正側回路11の第1の正側整流素子P1のアノードと第2の正側整流素子P2のアノードが接続されている。さらに端子R1には、負側回路12の第1の負側整流素子N1のカソードと第2の負側整流素子N2のカソードが接続されている。「アノード」は陽極であり電流が流れ込む電極である。「カソード」は陰極であり、電流が流れ出す電極である。「整流素子」は典型的にはダイオードである。しかしながら、第1の正側整流素子P1及び第1の負側整流素子N1については、独立した素子ではなく他の素子の一部に組み込まれた整流要素である場合も整流素子に含むものとする。そのような整流要素は、例えば電界効果トランジスタ(FET)の寄生ダイオードである。
【0016】
第1の正側整流素子P1のカソードは蓄電池5の正極接続端子6に接続され、第1の負側整流素子N1のアノードは蓄電池5の負極接続端子7に接続されている。
【0017】
第2の正側整流素子P2のカソードは抵抗素子4の一端に接続され、第2の負側整流素子N2のアノードは抵抗素子4の他端に接続されている。なお、第2の正側整流素子P2のカソードと抵抗素子4の一端との間、並びに、第2の負側整流素子N2のアノードと抵抗素子4の他端との間には、後述するフォトボルのフォトダイオードがそれぞれ順方向に挿入接続されているが、第2の正側整流素子P2及び第2の負側整流素子N2の機能には影響を及ぼさないので、このように間接的に抵抗素子4と接続されている場合も「接続されている」と称する。
【0018】
さらに、第1の正側整流素子P1及び第1の負側整流素子N1は、それぞれスイッチ素子SWと並列接続されている。ここでの「スイッチ素子」は、制御端と電流路を有し制御端を駆動されて電流路の非導通又は導通を切り換え可能な素子を含む。そのような素子は、例えばFET、バイポーラトランジスタ、IGBT等の半導体素子である。
【0019】
第1の正側整流素子P1と並列のスイッチ素子SWは、関係する第2の正側整流素子P2の非導通時にオフであり導通時にオンであるように切り換わる。同様に、第1の負側整流素子N1と並列のスイッチ素子SWは、第2の負側整流素子N2が非導通時にオフであり導通時にオンであるように切り換わる。各スイッチ素子SWは、その制御端を駆動するための駆動部を備えている。図1では、各スイッチ素子SWの駆動部の一部を、第2の正側整流素子P2及び第2の負側整流素子N2とそれぞれ直列接続されたフォトダイオードで簡略的に表している。このスイッチ素子SWの動作機構の詳細は後述する。
【0020】
他の二次側端子R2..T4の各々と蓄電池5との間、他の二次側端子R2..T4と抵抗素子4との間にも、上記と同じ構成の回路がそれぞれ接続されている。
【0021】
総じて見ると、12個の第1の正側整流素子P1は、各アノードが各二次側端子R1..T4にそれぞれ接続されかつ各カソードが蓄電池5の正極接続端子6に共通接続されている。また、12個の第1の負側整流素子N1は、各カソードが各二次側端子R1..T4にそれぞれ接続されかつ各アノードが蓄電池5の負極接続端子7に共通接続されている。したがって、これら12個の第1の正側整流素子P1と12個の第1の負側整流素子N1は、多相変圧器1の二次側の多相交流を全波整流して蓄電池5に出力する第1の全波整流部を構成している。
【0022】
同様に、12個の第2の正側整流素子P2は、各アノードが各二次側端子R1..T4にそれぞれ接続されかつ各カソードが抵抗素子4の一端に共通接続されている。また、12個の第2の負側整流素子N2は、各カソードが各二次側端子R1..T4にそれぞれ接続されかつ各アノードが抵抗素子4の他端に共通接続されている。したがって、これら12個の第2の正側整流素子P2と12個の第2の負側整流素子N2は、多相変圧器1の二次側の多相交流を全波整流して抵抗素子4に出力する第2の全波整流部を構成している。
【0023】
第1の全波整流部と第2の全波整流部の整流動作は、基本的に同じであり、出力先が蓄電池5であるか抵抗素子4であるかが異なる。整流動作においては、二次側端子R1..T4から出力される12個の線間電圧のうち、最大電圧を出力する2つの端子間、すなわち最高電位の二次側端子と最低電位の二次側端子の間にのみ全波整流された電流が流れることができる。
【0024】
ただし、第1の全波整流部については、多相変圧器1の二次側端子の電位が蓄電池5の正極接続端子6の電位よりも低いときは、多相変圧器1から蓄電池5の方へ電流が流れることができない。またこのとき、第1の全波整流部においては、正側整流素子P1及び負側整流素子N1が逆方向となるため、蓄電池5から多相変圧器1の方へも電流が流れることができない。
【0025】
そこで本発明では、第2の全波整流部を流れる電流をトリガーとしてスイッチ素子SWをオンさせることによって、第1の全波整流部の整流素子P1、N1をバイパスさせ、蓄電池5から多相変圧器1へ電流がスイッチ素子SWを通って流れるようにしている。第2の全波整流部は、スイッチ素子SWを動作させるために設けられている。この仕組みによって交流電力部と直流電力部との双方向連系を実現している。また、この仕組みは、連系回路部10の回路素子のみによって自律的に実現されるので、電子制御ユニットによる自動制御を必要としない。
【0026】
多相変圧器1と蓄電池5の間で電力を需給するための主電流は第1の全波整流回路を流れる。第2の全波整流回路は、スイッチ部の各スイッチ素子SWを駆動するための電流検出回路であるから、検出に必要な程度の電流が流れればよい。よって、第2の全波整流回路の負荷である抵抗素子4の抵抗値は、電流検出感度に応じて設定される。
【0027】
図2は、図1の連系回路部10の具体的構成の一例を示している。図2では、1つの線間電圧V1r(図6(a)参照)を出力する二次側端子R1とS1との間に接続された回路のみを示している。
【0028】
二次側端子R1に接続された正側回路11rについて説明する。スイッチ素子SWprはNチャネルMOS電界効果トランジスタ(MOSFET)である。このMOSFETは、ドレインが蓄電池5の正極に、ソースが端子R1にそれぞれ接続されている。また、MOSFETの寄生ダイオードが、第1の全波整流部における正側整流素子P1rに相当する。ここでは、寄生ダイオードと並列に外付けダイオードを接続しており、これも正側整流素子P1rの役割を果たす。スイッチ素子がMOSFETの場合、この外付けダイオードはは必須ではない。
【0029】
さらに、第2の全波整流部の正側整流素子P2rであるダイオードのアノードが端子R1に接続され、カソードがフォトボルPVprの入力側の一端に接続されている。フォトボルPVprの入力側の他端は抵抗素子4の一端に接続されている。よって、フォトボルPVprの入力側の発光素子であるフォトダイオードは、正側整流素子P2rと直列に挿入接続されており、正側整流素子P2rを流れる電流を検出したときに発光する。フォトボルPVprの出力側の受光ダイオードは、入力側のフォトダイオードが発光したとき、所定の電流を外部に出力する。フォトボルPVprの出力電流は、抵抗素子8を流れることによりMOSFETであるスイッチ素子SWprのゲート駆動電圧を生成する。このように、フォトボルPVprは、正側整流素子P2rが導通したとき、スイッチ素子SWprの駆動部に対する駆動信号を出力する。
【0030】
二次側端子S1に接続された正側回路11sは、上述した正側回路11rと全く同じ構成を有する。
【0031】
次に、二次側端子R1に接続された負側回路12rについて説明する。スイッチ素子SWnrはNチャネルMOSFETである。このMOSFETは、ドレインが端子R1に、ソースが蓄電池5の正極にそれぞれ接続されている。また、MOSFETの寄生ダイオードが、第1の全波整流部における負側整流素子N1rに相当する。ここでは、寄生ダイオードと並列に外付けダイオードを接続しており、これも負側整流素子N1rの役割を果たす。なお、この外付けダイオードは必須ではない。
【0032】
さらに、第2の全波整流部の負側整流素子N2rであるダイオードのアノードがフォトボルPVnrの入力側の一端に接続され、カソードが端子R1に接続されている。フォトボルPVnrの入力側の他端は抵抗素子4の他端に接続されている。よって、フォトボルPVnrの入力側の発光素子であるフォトダイオードは、負側整流素子N2rと直列に挿入接続されており、負側整流素子N2rを流れる電流を検出したときに発光する。フォトボルPVnrの出力側の受光ダイオードは、入力側のフォトダイオードが発光したとき、所定の電流を外部に出力する。フォトボルPVnrの出力電流は、抵抗素子8を流れることによりMOSFETであるスイッチ素子SWnrのゲート駆動電圧を生成する。このように、フォトボルPVnrは、負側整流素子N2rが導通したとき、スイッチ素子SWnrの駆動部に対する駆動信号を出力する。
【0033】
二次側端子S1に接続された負側回路12sは、上述した負側回路12rと全く同じ構成を有する。
【0034】
図3は、図2のスイッチ素子SWpr、SWnr、SWps、SWnsの別の例を示す。スイッチ素子がIGBT又はバイポーラトランジスタの場合、スイッチ素子の導通時に流れる電流とは逆方向の電流を流すための外付けダイオードは必須である。外付けダイオードは、第1の全波整流部の正側整流素子P1r、P1s又は負側整流素子N1r、N1sとして機能する
【0035】
図4(a)(b)は、図6(a)の波形のx時点における連系回路部10の動作を示している。x時点では、R1端子とS1端子間の線間電圧V1rが最大(R1端子が高電位、S1端子が低電位)となっており、よってR1端子は12個の二次側端子の中で最高電位となっている。
【0036】
図4(a)は、R1端子の電位が蓄電池5の正極の電位よりも高い場合である。第1の全波整流回路には太線の経路で電流I1が流れ、第2の全波整流回路には細線の経路で電流I2が抵抗素子4を通って流れる。正側整流素子P2r及び負側整流素子N2sに電流I2が流れることによってスイッチ素子SWpr、SWnsはオンとなる。この場合、正側整流素子P1r及び負側請求素子N1sは、電流I1に対して順方向であるので、スイッチ素子SWpr、SWnsがオンであるかオフであるかに関わらず、端子R1から蓄電池5の正極へ、そして蓄電池5の負極から端子S1へと、蓄電池5を充電する電流I1が流れることができる。
【0037】
図4(b)は、蓄電池5の正極の電位がR1端子の電位よりも高い場合である。蓄電池5から端子R1に向かう電流I1に対して、正側整流素子P1r及び負側整流素子N1sは逆方向となる。一方、第2の全波整流回路には、図4(a)と同じ方向の電流I2が抵抗素子4を通って流れる。正側整流素子P2r及び負側整流素子N2sに電流I2が流れることによってスイッチ素子SWpr、SWnsはオンとなる。その結果、電流I1はスイッチ素子SWpr、SWnsを通って流れることができる。すなわち、正側整流素子P1r及び負側整流素子N1sは、スイッチ素子SWpr、SWnsによってバイパスされることとなる。
【0038】
図5(a)(b)は、図6(a)の波形のy時点における連系回路部10の動作の一例を示している。y時点では、R1端子とS1端子間の線間電圧V1rが最大(S1端子が高電位、R1端子が低電位)となっており、よってS1端子は12個の二次側端子の中で最高電位となっている。
【0039】
図5(a)は、S1端子の電位が蓄電池5の正極の電位よりも高い場合である。第1の全波整流回路には太線の経路で電流I1が流れ、第2の全波整流回路には細線の経路で電流I2が抵抗素子4を通って流れる。正側整流素子P2s及び負側整流素子N2rに電流I2が流れることによってスイッチ素子SWps、SWnrはオンとなる。この場合、正側整流素子P1s及び負側整流素子N1rは、電流I1に対して順方向であるので、スイッチ素子SWps、SWnrがオンであるかオフであるかに関わらず、端子S1から蓄電池5の正極へ、そして蓄電池5の負極から端子R1へと、蓄電池5を充電する電流I1が流れることができる。
【0040】
図5(b)は、蓄電池5の正極の電位がS1端子の電位よりも高い場合である。蓄電池5から端子S1に向かう電流I1に対して、正側整流素子P1s及び負側整流素子N1rは逆方向となる。一方、第2の全波整流回路には、図5(a)と同じ方向の電流I2が抵抗素子4を通って流れる。正側整流素子P2s及び負側整流素子N2rに電流I2が流れることによってスイッチ素子SWps、SWnrはオンとなる。その結果、電流I1はスイッチ素子SWps、SWnr通って流れることができる。すなわち、正側整流素子P1s及び負側整流素子N1rは、スイッチ素子SWps、SWnrによってバイパスされることとなる。
【0041】
図6(b)は、図6(a)に示した12相交流電圧波形を全波整流した波形である。これは、図4(a)及び図5(a)のように蓄電池5が充電される場合の蓄電池5の両端電圧波形である。12相変圧器の二次側端子R1..T4から出力される12個の線間電圧V1r~V4tは位相15度毎に最大電圧が入れ替わり、最高電位の端子から最低電位の端子へと、第1の全波整流回路を通って電流が流れる。多相変圧器の相数が多くなるほど、整流された波形の脈流が小さくなり完全な直流に近くなる。
【0042】
図7(a)は、12相変圧器の二次側の12個の端子R1~T4と、12個の線間電圧Vr1~Vt4との対応関係を示した図である。(b)は12個の線間電圧Vr1~Vt4の位相関係をベクトル図で示したものである(時計回りが進み方向)。12個の線間電圧Vr1~Vt4は第1~第4の4組の三相交流からなり、以下の通りである。括弧内はいずれの端子間の線間電圧であるかを示す。
・第1の三相交流:V1r(R1-S1間)、V1s(S1-T1間)、V1t(T1-R1間)
・第2の三相交流:V2r(R1-R3間)、V2s(S1-S3間)、V2t(T1-T3間)
・第3の三相交流:V3r(R1-R2間)、V3s(S1-S2間)、V3t(T1-T2間)
・第4の三相交流:V4r(R1-R4間)、V4s(S1-S4間)、V4t(T1-T4間)
【0043】
第2の三相交流、第3の三相交流、第4の三相交流は、第1の三相交流に対して位相が15度、30度、45度それぞれ遅れている。
【0044】
図8は、図4(b)及び図5(b)のように蓄電池5から多相変圧器1へ放電される場合に多相変圧器1の一次側に出力される三相交流の計測波形を示す。本発明の双方向電力連系装置によれば、電子制御ユニットによる自動制御なしで、連系回路部自体の自律動作によって直流電力部から安定した三相交流波形を生成して系統に電力を供給することができる。これにより、系統に及ぼす悪影響が低減される。
【0045】
原理的には、多相変圧器1は、12相、9相、6相に限られず、三相交流を3n相の多相交流に変換するものが含まれる。n=4のとき12相変圧器、n=3のとき9相変圧器、n=2のとき6相変圧器となる。二次側端子は、第1の三相交流を出力する第1~第3のメイン端子と、第4~第3nのサブ端子とからなる。二次側の線間電圧は、第1の三相交流Vr1、Vs1、Vstと、第1の三相交流の各相から60/n度、2×(60/n)度..(n-1)×(60/n)度だけ位相がそれぞれ遅れた第2~第nの三相交流となる。
【0046】
nが大きくなるほど、図6(b)に示した全波整流波形における脈流が少なくなり、直流に近くなる。しかしながら、nが大きくなると、多相変圧器及び連系回路部の構成が複雑となり部品数も多くなる。
【0047】
以上、本発明の実施形態を、例示としての構成を参照して説明したが、具体的な構成はこれらに限定されない。本発明の原理に従う限り、多様な変形形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
1 多相変圧器
10 連系回路部
11 正側回路
12 負側回路
4 抵抗素子
5 蓄電池
6、7 直流接続端子
P1 第1正側整流素子
P2 第2正側整流素子
N1 第1負側整流素子
N2 第2負側整流素子
SW スイッチ
R0、S0、T0 三相交流ライン
R1、S1、T1 メイン端子
R2、R3、R4、S2、S3、S4、T2、T3、T4 サブ端子
V1r、V1s、V1t 第1の三相交流(線間電圧)
V2r、V2s、V2t 第2の三相交流(線間電圧)
V3r、V3s、V3t 第3の三相交流(線間電圧)
V4r、V4s、V4t 第4の三相交流(線間電圧)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8