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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024127979
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240912BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240912BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20240912BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/38 Z
H01M10/052
H01M4/587
H01M4/36 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024107856
(22)【出願日】2024-07-04
(62)【分割の表示】P 2023029518の分割
【原出願日】2017-08-07
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】落合 輝明
(72)【発明者】
【氏名】三上 真弓
(72)【発明者】
【氏名】門馬 洋平
(72)【発明者】
【氏名】町川 一仁
(72)【発明者】
【氏名】内田 彩
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 丞
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正弘
(57)【要約】
【課題】高容量で充放電サイクル特性に優れた、リチウムイオン二次電池用正極活物質を
提供する。
【解決手段】リチウム、フッ素、およびマグネシウムを有する第1の混合物と、リチウム
、ニッケル、マンガンおよび酸素を有する複合酸化物を混合し加熱することにより作製さ
れ、マンガンのモル数がニッケルのモル数の0.5倍以上2倍以下である領域を有し、空
間群R-3mで表され、a軸の格子定数をc軸の格子定数で割った値が0.198より大
きく0.202より小さい正極活物質である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活物質を有する正極と、
金属リチウムを負極に有する二次電池において、
前記正極活物質は、リチウム、ニッケル、マンガン、コバルト、酸素、マグネシウムおよびフッ素を有し、前記マンガンの原子数比は、前記ニッケルの0.5倍以上2倍以下である領域を有し、
前記二次電池を、25℃環境下において電池電圧が2.5Vとなるまで定電流放電した後、前記正極をCuKα1線による粉末X線回折で分析したとき、
前記正極は空間群R-3mで表される第1の結晶相と、第2の結晶相と、第3の結晶相と、を有し、
前記第1の結晶相において、a軸の格子定数をa1、c軸の格子定数をc1とし、
前記第2の結晶相において、a軸の格子定数をa2、c軸の格子定数をc2とし、
前記第3の結晶相において、a軸の格子定数をa3、c軸の格子定数をc3とし、
前記a1/c1および前記a2/c2の平均値は、前記a3/c3の0.993倍より大きく1.02倍より小さい、二次電池。
【請求項2】
請求項1に記載の正極と、
負極と、を有し、
前記負極は、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラックのうち少なくとも一を有する二次電池。
【請求項3】
請求項2において、
前記負極は、炭素、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウムのうち少なくとも一を有する二次電池。
【請求項4】
請求項1に記載の正極と、
負極と、を有し、
前記負極は、炭素、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウムのうち少なくとも一を有する二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一様態は、物、方法、又は、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス
、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する
。本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、照明装置または電子
機器、またはそれらの製造方法に関する。特に、二次電池に用いることのできる正極活物
質、二次電池、および二次電池を有する電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書中において、蓄電装置とは、蓄電機能を有する素子及び装置全般を指す
ものである。例えば、リチウムイオン二次電池などの蓄電池(二次電池ともいう)、リチ
ウムイオンキャパシタ、及び電気二重層キャパシタなどを含む。
【0003】
また、本明細書中において電子機器とは、蓄電装置を有する装置全般を指し、蓄電装置
を有する電気光学装置、蓄電装置を有する情報端末装置などは全て電子機器である。
【背景技術】
【0004】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池等、種々の蓄電
装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高エネルギー密度であるリチウムイオン
二次電池は、携帯電話、スマートフォン、タブレット、もしくはノート型コンピュータ等
の携帯情報端末、携帯音楽プレーヤ、デジタルカメラ、医療機器、又は、ハイブリッド車
(HEV)、電気自動車(EV)、もしくはプラグインハイブリッド車(PHEV)等の
次世代クリーンエネルギー自動車など、半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大
し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている
【0005】
リチウムイオン二次電池に要求されている特性としては、さらなる高エネルギー密度化
、サイクル特性の向上及び様々な動作環境での安全性、長期信頼性の向上などがある。
【0006】
そこでリチウムイオン二次電池のサイクル特性の向上および高容量化を目指した、正極
活物質の改良が検討されている(特許文献1および特許文献2)。また、正極活物質の結
晶構造に関する研究も行われている(非特許文献1乃至非特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-216760号公報
【特許文献2】特開2006-261132号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Toyoki Okumura et al,”Correlation of lithium ion distribution and X-ray absorption near-edge structure in 03-and 02・lithium cobalt oxides from first-principle calculation”, Journal of Materials Chemistry, 2012, 22, p.17340-17348
【非特許文献2】Motohashi, T. et al,”Electronic phase diagram of the layered cobalt oxide system LixCoO2(0.0≦x≦1.0) ”, Physical Review B, 80(16) ;165114
【非特許文献3】Zhaohui Chen et al, “Staging Phase Transitions in LixCoO2, Journal of The Electrochemical Society, 2002, 149(12) A1604-A1609
【非特許文献4】W. E. Counts et al, Journal of the American Ceramic Society,(1953) 36[1] 12-17. Fig.01471
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の一態様は、高容量で充放電サイクル特性に優れた、リチウムイオン二次電池用
正極活物質、およびその作製方法を提供することを目的の一とする。または、生産性のよ
い正極活物質の作製方法を提供することを目的の一とする。または、本発明の一態様は、
リチウムイオン二次電池に用いることで、充放電サイクルにおける容量の低下が抑制され
る正極活物質を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、高容量の二
次電池を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、充放電特性の優れた二次電
池を提供することを課題の一とする。または、本発明の一態様は、安全性又は信頼性の高
い二次電池を提供することを課題の一とする。
【0010】
または、本発明の一態様は、新規な物質、活物質粒子、蓄電装置、又はそれらの作製方
法を提供することを課題の一とする。
【0011】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、明細書、図面、
請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、正極活物質を有する正極と、金属リチウムを負極に有する二次電池
であり、正極活物質は、リチウム、ニッケル、マンガン、コバルト、酸素、マグネシウム
およびフッ素を有し、マンガンの原子数比は、ニッケルの0.5倍以上2倍以下である領
域を有し、二次電池を、25℃環境下において電池電圧が4.6Vとなるまで定電流充電
し、その後電流値が0.01Cとなるまで定電圧充電した後、正極をCuKα1線による
粉末X線回折で分析したとき、2θが17.5°より大きく20°より小さい範囲におい
て1以上のピークが観測され、2θが36°より大きく38.5°より小さい範囲におい
て1以上のピークが観測され、2θが43.5°より大きく46.5°より小さい範囲に
おいて1以上のピークが観測され、正極の粉末X線回折のパターンをリートベルト法によ
り解析したとき、正極は第1の結晶相と、第2の結晶相と、を有し、第1の結晶相および
第2の結晶相は、空間群R-3mで表され、第1の結晶相において、a軸の格子定数をa
1、c軸の格子定数をc1とし、第2の結晶相において、a軸の格子定数をa2、c軸の
格子定数をc2とし、a1/c1とa2/c2の平均値は0.198より大きく0.20
2より小さい、二次電池である。
【0013】
または、本発明の一態様は、正極活物質を有する正極と、金属リチウムを負極に有する
二次電池であり、正極活物質は、リチウム、ニッケル、マンガン、コバルト、酸素、マグ
ネシウムおよびフッ素を有し、マンガンの原子数比は、ニッケルの0.5倍以上2倍以下
である領域を有し、二次電池を、25℃環境下において電池電圧が2.5Vとなるまで定
電流放電した後、正極をCuKα1線による粉末X線回折で分析したとき、正極は空間群
R-3mで表される第3の結晶相を有し、第3の結晶相において、a軸の格子定数をa3
、c軸の格子定数をc3とし、a1/c1およびa2/c2の平均値は、a3/c3の0
.993倍より大きく1.02倍より小さい、二次電池である。
【0014】
または、本発明の一態様は、上記に記載の正極と、負極と、を有し、該負極は、黒鉛、
易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハードカーボン)、カーボンナノ
チューブ、グラフェン、カーボンブラックのうち少なくとも一を有する二次電池であり、
負極は、炭素、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモ
ン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウムのうち少なくとも一を有する二次電池
である。
【0015】
または、本発明の一態様は、上記に記載の正極と、負極と、を有し、該負極は、炭素、
シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、
銀、亜鉛、カドミウム、インジウムのうち少なくとも一を有する二次電池である。
【0016】
または、本発明の一態様は、リチウムと、ニッケルと、マンガンと、マグネシウムと、
酸素と、フッ素と、を有する正極活物質の作製方法であって、正極活物質は、第1の混合
物と、第2の混合物と、加熱する加熱工程を経て作製され、第1の混合物は、リチウム源
およびフッ素源としてフッ化リチウムを有し、フッ素源およびマグネシウム源としてフッ
化マグネシウムを有し、フッ化リチウムとフッ化マグネシウムのモル比は、フッ化リチウ
ム:フッ化マグネシウム=x:1(0.1≦x≦0.5)であり、第2の混合物は、ニッ
ケルと、第2の混合物が有するニッケルの0.5倍以上2倍以下のマンガンと、を有し、
加熱工程の温度は、600℃以上950℃以下である正極活物質の作製方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様により、高容量で充放電サイクル特性に優れた、リチウムイオン二次電
池用正極活物質、およびその作製方法を提供することができる。また、生産性のよい正極
活物質の作製方法を提供することができる。また、リチウムイオン二次電池に用いること
で、充放電サイクルにおける容量の低下が抑制される正極活物質を提供することができる
。また、高容量の二次電池を提供することができる。また、充放電特性の優れた二次電池
を提供することができる。また、安全性又は信頼性の高い二次電池を提供することができ
る。また、新規な物質、活物質粒子、蓄電装置、又はそれらの作製方法を提供することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一態様の正極活物質の作製方法の一例を説明する図。
図2】本発明の一態様の正極活物質の結晶構造を示す図。
図3】本発明の一態様の正極活物質の結晶構造を示す図。
図4】導電助剤としてグラフェン化合物を用いた場合の活物質層の断面図。
図5】二次電池の充電方法を説明する図。
図6】二次電池の充電方法を説明する図。
図7】二次電池の放電方法を説明する図。
図8】コイン型二次電池を説明する図。
図9】円筒型二次電池を説明する図。
図10】二次電池の例を説明する図。
図11】二次電池の例を説明する図。
図12】二次電池の例を説明する図。
図13】二次電池の例を説明する図。
図14】ラミネート型の二次電池を説明する図。
図15】ラミネート型の二次電池を説明する図。
図16】二次電池の外観を示す図。
図17】二次電池の外観を示す図。
図18】二次電池の作製方法を説明するための図。
図19】曲げることのできる二次電池を説明する図。
図20】曲げることのできる二次電池を説明する図。
図21】電子機器の一例を説明する図。
図22】電子機器の一例を説明する図。
図23】電子機器の一例を説明する図。
図24】電子機器の一例を説明する図。
図25】XRDによる測定結果。
図26】XRDによる測定結果。
図27】XRDによる測定結果。
図28】二次電池の充放電特性。
図29】二次電池のサイクル特性。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明
は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であ
れば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈
されるものではない。
【0020】
また、本明細書等において結晶面および方向はミラー指数で示す。結晶面および方向の
表記は、結晶学上、数字に上付きのバーを付すが、本明細書等では出願表記の制約上、数
字の上にバーを付す代わりに、数字の前に-(マイナス符号)を付して表現する場合があ
る。また、結晶内の方向を示す個別方位は[ ]で、等価な方向すべてを示す集合方位は
< >で、結晶面を示す個別面は( )で、等価な対称性を有する集合面は{ }でそれ
ぞれ表現する。また1Åは10‐10mである。
【0021】
本明細書等において、偏析とは、複数の元素(たとえばA,B,C)からなる固体にお
いて、ある元素(たとえばB)が空間的に不均一に分布する現象をいう。
【0022】
本明細書等において、活物質等の粒子の表層部とは、表面から10nm程度までの領域
をいう。ひびやクラックにより生じた面も表面といってよい。また表層部より深い領域を
、内部という。
【0023】
本明細書等において、リチウムと遷移金属を含む複合酸化物が有する層状岩塩型の結晶
構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列する岩塩型のイオン配列を有し、遷移金属と
リチウムが規則配列して二次元平面を形成するため、リチウムの二次元的拡散が可能であ
る結晶構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損等の欠陥があってもよい。また、
層状岩塩型結晶構造は、厳密に言えば、岩塩型結晶の格子が歪んだ構造となっている場合
がある。
【0024】
また本明細書等において、岩塩型の結晶構造とは、陽イオンと陰イオンが交互に配列し
ている構造をいう。なお陽イオンまたは陰イオンの欠損があってもよい。
【0025】
層状岩塩型結晶、および岩塩型結晶の陰イオンは立方最密充填構造(面心立方格子構造
)をとる。擬スピネル型結晶も、陰イオンは立方最密充填構造をとると推定される。これ
らが接するとき、陰イオンにより構成される立方最密充填構造の向きが揃う結晶面が存在
する。ただし、層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶の空間群はR-3mであり、岩塩
型結晶の空間群Fm-3m(一般的な岩塩型結晶の空間群)およびFd-3m(最も単純
な対称性を有する岩塩型結晶の空間群)とは異なるため、上記の条件を満たす結晶面のミ
ラー指数は層状岩塩型結晶および擬スピネル型結晶と、岩塩型結晶では異なる。本明細書
では、層状岩塩型結晶、擬スピネル型結晶、および岩塩型結晶において、陰イオンにより
構成される立方最密充填構造の向きが揃うとき、結晶の配向が概略一致する、と言う場合
がある。
【0026】
二つの領域の結晶の配向が概略一致することは、TEM(透過電子顕微鏡)像、STE
M(走査透過電子顕微鏡)像、HAADF-STEM(高角散乱環状暗視野走査透過電子
顕微鏡)像、ABF-STEM(環状明視野走査透過電子顕微鏡)像等から判断すること
ができる。X線回折(XRD)、電子線回折、中性子線回折等も判断の材料にすることが
できる。TEM像等では、陽イオンと陰イオンの配列が、明線と暗線の繰り返しとして観
察できる。層状岩塩型結晶と岩塩型結晶において立方最密充填構造の向きが揃うと、結晶
間で、明線と暗線の繰り返しのなす角度が5度以下、より好ましくは2.5度以下である
様子が観察できる。なお、TEM像等では酸素、フッ素をはじめとする軽元素は明確に観
察できない場合があるが、その場合は金属元素の配列で配向の一致を判断することができ
る。
【0027】
また本明細書等において、正極活物質の理論容量とは、正極活物質が有する挿入脱離可
能なリチウムが全て脱離した場合の電気量をいう。たとえばLiCoOの理論容量は2
74mAh/g、LiNiOの理論容量は274mAh/g、LiMnの理論容
量は148mAh/gである。
【0028】
また本明細書等において、挿入脱離可能なリチウムが全て挿入されているときの充電深
度を0、正極活物質が有する挿入脱離可能なリチウムが全て脱離したときの充電深度を1
ということとする。
【0029】
また本明細書等において、充電とは、電池内において正極から負極にリチウムイオンを
移動させ、外部回路において負極から正極に電子を移動させることをいう。正極活物質に
ついては、リチウムイオンを離脱させることを充電という。また充電深度が0.8以上の
正極活物質を、高電圧で充電された正極活物質ということとする。そのためたとえばLi
CoOにおいて219.2mAh/g以上充電されていれば、高電圧で充電された正極
活物質である。またLiCoOにおいて、25℃環境下で、電池電圧が4.6V(対極
リチウムの場合)となるまで定電流充電し、その後電流値が0.01Cとなるまで定電圧
充電した後の正極活物質も、高電圧で充電された正極活物質ということとする。
【0030】
同様に、放電とは、電池内において負極から正極にリチウムイオンを移動させ、外部回
路において正極から負極に電子を移動させることをいう。正極活物質については、リチウ
ムイオンを挿入することを放電という。また充電深度が0.06以下の正極活物質、また
は高電圧で充電された状態から充電容量の90%以上の容量を放電した正極活物質を、十
分に放電された正極活物質ということとする。たとえばLiCoOにおいて充電容量が
219.2mAh/gならば高電圧で充電された状態であり、ここから充電容量の90%
である197.3mAh/g以上を放電した後の正極活物質は、十分に放電された正極活
物質である。また、LiCoOにおいて、25℃環境下で電池電圧が3V以下(対極リ
チウムの場合)となるまで定電流放電した後の正極活物質も、十分に放電された正極活物
質ということとする。
【0031】
粒子径は例えば、レーザー散乱法により評価できる。あるいは、SEM(走査電子顕微
鏡)により粒子の表面を観察して評価できる場合がある。あるいは、SEM、TEM等に
より粒子の断面を観察し、評価できる場合がある。
【0032】
(実施の形態1)
[正極活物質の作製方法]
まず、図1を用いて、本発明の一態様である正極活物質100の作製方法の一例につい
て説明する。
【0033】
<S11>
図1のS11に示すように、まず第1の混合物の材料として、フッ素等のハロゲン源お
よびマグネシウム源を用意する。またリチウム源も用意することが好ましい。
【0034】
フッ素源としては、例えばフッ化リチウム、フッ化マグネシウム等を用いることができ
る。なかでも、フッ化リチウムは融点が848℃と比較的低く、後述するアニール工程で
溶融しやすいため好ましい。塩素源としては、例えば塩化リチウム、塩化マグネシウム等
を用いることができる。マグネシウム源としては、例えばフッ化マグネシウム、酸化マグ
ネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等を用いることができる。リチウム源
としては、例えばフッ化リチウム、炭酸リチウムを用いることができる。つまり、フッ化
リチウムはリチウム源としてもフッ素源としても用いることができる。またフッ化マグネ
シウムはフッ素源としてもマグネシウム源としても用いることができる。
【0035】
例えば、フッ素源およびリチウム源としてフッ化リチウムを用意し、フッ素源およびマ
グネシウム源としてフッ化マグネシウムを用意し、フッ化リチウムLiFとフッ化マグネ
シウムMgFは、LiF:MgF=65:35(モル比)程度で混合すると融点を下
げる効果が最も高くなる(非特許文献4)。一方、フッ化リチウムが多くなると、リチウ
ムが過剰になりすぎサイクル特性が悪化する懸念がある。そのため、フッ化リチウムLi
Fとフッ化マグネシウムMgFのモル比は、LiF:MgF=x:1(0≦x≦1.
9)であることが好ましく、LiF:MgF=x:1(0.1≦x≦0.5)がより好
ましく、LiF:MgF=0.33:1程度がさらに好ましい。
【0036】
また、次の混合および粉砕工程を湿式で行う場合は、溶媒を用意する。溶媒としてはア
セトン等のケトン、エタノールおよびイソプロパノール等のアルコール、エーテル、ジオ
キサン、アセトニトリル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等を用いることができ
る。リチウムと反応が起こりにくい、非プロトン性溶媒を用いることがより好ましい。本
実施の形態では、アセトンを用いることとする。
【0037】
<S12>
次に、上記の第1の混合物の材料を混合および粉砕する(S12)。混合は乾式または
湿式で行うことができるが、湿式はより小さく粉砕することができるため好ましい。混合
には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は
、たとえばメディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。この混合および粉
砕工程を十分に行い、第1の混合物を微粉化することが好ましい。
【0038】
<S13、S14>
上記で混合、粉砕した材料を回収し(S13)、第1の混合物を得る(S14)。
【0039】
第1の混合物は、たとえば平均粒子径(D50)600nm以上20μm以下であるこ
とが好ましい。このように微粉化された第1の混合物ならば、後の工程でリチウム、遷移
金属および酸素を有する複合酸化物と混合したときに、複合酸化物の粒子の表面に第1の
混合物を均一に付着させやすい。複合酸化物の粒子に第1の混合物が均一に付着している
と、加熱後に複合酸化物粒子の表層部にもれなくハロゲンおよびマグネシウムを分布させ
ることができるため好ましい。第1の混合物の平均粒子径は例えば、後述するS25で得
られる複合酸化物の平均粒子径の0.2倍以上5倍以下、あるいは0.2倍より大きく0
.8倍より小さい。
【0040】
<S21>
次に、図1のS21に示すように、リチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物
の材料として、リチウム源および遷移金属源を用意する。
【0041】
リチウム源としては、例えば炭酸リチウム、フッ化リチウム等を用いることができる。
【0042】
遷移金属としては、コバルト、マンガン、ニッケルの少なくとも一を用いることができ
る。リチウム、遷移金属および酸素を有する酸化物は層状岩塩型の結晶構造を有すること
が好ましいため、層状岩塩型をとりうるコバルト、マンガン、ニッケルの混合比であるこ
とが好ましい。また、層状岩塩型の結晶構造をとりうる範囲で、これらの遷移金属にアル
ミニウムを加えてもよい。
【0043】
本発明の一態様の正極活物質を用いることにより、高い電流密度において二次電池を充
電、あるいは放電することができる。遷移金属としてニッケルを用いることにより例えば
、二次電池の容量を高めることができる。また遷移金属としてニッケルを用いることによ
り例えば、充電の電圧を低くすることができる場合がある。充電の電圧を低くすることに
より、二次電池に本発明の一態様の正極活物質を用いた場合に、電解液の分解を抑制でき
る。また、遷移金属としてニッケルを用いることにより例えば、二次電池のコストを低減
できる。
【0044】
遷移金属としてマンガンを用いることにより例えば、二次電池の安全性を高めることが
できる。また、遷移金属としてマンガンを用いることにより例えば、充放電サイクルに伴
う容量低下を抑制できる。また、遷移金属としてマンガンを用いることにより例えば、二
次電池のコストをさらに低減できる。また、遷移金属としてマンガンを用いることにより
例えば、複合酸化物の、充放電における構造変化を抑制できる場合がある。
【0045】
また、遷移金属として、ニッケルおよびマンガンを有することが好ましい。遷移金属と
してニッケルおよびマンガンを有することにより例えば、容量が高く、かつ充放電におけ
る構造変化の小さい、より安定した二次電池を実現することができる。
【0046】
遷移金属源としては、上記遷移金属の酸化物、水酸化物等を用いることができる。コバ
ルト源としては、例えば酸化コバルト、水酸化コバルト等を用いることができる。マンガ
ン源としては、酸化マンガン、水酸化マンガン等を用いることができる。ニッケル源とし
ては、酸化ニッケル、水酸化ニッケル等を用いることができる。アルミニウム源としては
、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム等を用いることができる。
【0047】
<S22>
次に、上記のリチウム源および遷移金属源を混合する(S22)。混合は乾式または湿
式で行うことができる。混合には例えばボールミル、ビーズミル等を用いることができる
。ボールミルを用いる場合は、たとえばメディアとしてジルコニアボールを用いることが
好ましい。
【0048】
<S23>
次に、上記で混合した材料を加熱する。本工程は、後の加熱工程との区別のために、焼
成または第1の加熱という場合がある。加熱は800℃以上1100℃未満で行うことが
好ましく、900℃以上1000℃以下で行うことがより好ましく、950℃程度がさら
に好ましい。温度が低すぎると、出発材料の分解および溶融が不十分となるおそれがある
。一方温度が高すぎると、遷移金属が過剰に還元される、リチウムが蒸散するなどの原因
で欠陥が生じるおそれがある。たとえばコバルトが2価となる欠陥が生じうる。
【0049】
加熱時間は、2時間以上20時間以下とすることが好ましい。焼成は、乾燥空気等の水
が少ない雰囲気(たとえば露点-50℃以下、より好ましくは100℃以下)で行うこと
が好ましい。たとえば1000℃で10時間加熱することとし、昇温は200℃/h、乾
燥雰囲気の流量は10L/minとすることが好ましい。その後加熱した材料を室温まで
冷却する。たとえば規定温度から室温までの降温時間を10時間以上50時間以下とする
ことが好ましい。
【0050】
<S24、S25>
上記で焼成した材料を回収し(S24)、リチウム、遷移金属および酸素を有する複合
酸化物を得る(S25)。具体的には、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、ニッ
ケル酸リチウム、コバルトの一部がマンガンで置換されたコバルト酸リチウム、またはニ
ッケル-マンガン-コバルト酸リチウムを得る。
【0051】
また、S25としてあらかじめ合成されたリチウム、遷移金属および酸素を有する複合
酸化物を用いてもよい。この場合、S21乃至S24を省略することができる。
【0052】
あらかじめ合成されたリチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物を用いる場合
、不純物の少ないものを用いることが好ましい。ここでは、主成分をリチウム、遷移金属
(コバルト、ニッケル、マンガン)およびアルミニウム、酸素とし、上記主成分の元素を
不純物とする。たとえばグロー放電質量分析法で分析したとき、リチウム、遷移金属およ
び酸素以外の元素の濃度があわせて10,000ppm wt以下であることが好ましく
、5000ppm wt以下がより好ましい。特に、チタンまたはヒ素等の遷移金属の不
純物濃度があわせて3000ppm以下であることが好ましく、1500ppm以下であ
ることがより好ましい。
【0053】
S25のリチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物は欠陥およびひずみの少な
い層状岩塩型の結晶構造を有することが好ましい。そのため、不純物の少ない複合酸化物
であることが好ましい。リチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物に不純物が多
く含まれると、欠陥またはひずみの多い結晶構造となる可能性が高い。
【0054】
<S31>
次に、第1の混合物と、リチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物と、を混合
する(S31)。リチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物と、第1の混合物M
ix1が有するマグネシウムとの原子数比は、複合酸化物:MgMix1=1:y(0.
0005≦y≦0.03)であることが好ましく、複合酸化物:MgMix1=1:y(
0.001≦y≦0.01)であることがより好ましく、複合酸化物:MgMix1=1
:0.005程度がさらに好ましい。
【0055】
S31の混合は、複合酸化物の粒子を破壊しないためにS12の混合よりも穏やかな条
件とすることが好ましい。混合は乾式または湿式で行うことができる。混合には例えばボ
ールミル、ビーズミル等を用いることができる。ボールミルを用いる場合は、たとえばメ
ディアとしてジルコニアボールを用いることが好ましい。
【0056】
<S32、S33>
上記で混合した材料を回収し(S32)、第2の混合物を得る(S33)。
【0057】
なお、本実施の形態ではフッ化リチウムおよびフッ化マグネシウムの混合物を、複合酸
化物に添加する方法について説明しているが、本発明の一態様はこれに限らない。S33
の第2の混合物の代わりに、複合酸化物の出発材料にマグネシウム源およびフッ素源を添
加して焼成したものを用いてもよい。この場合は、S11乃至S14の工程と、S21乃
至S25の工程を分ける必要がないため簡便で生産性が高い。
【0058】
または、あらかじめマグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウムを用い
てもよい。マグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウムを用いれば、S3
2までの工程を省略することができより簡便である。
【0059】
さらに、あらかじめマグネシウムおよびフッ素が添加されたコバルト酸リチウムに、さ
らにマグネシウム源およびフッ素源を添加してもよい。
【0060】
<S34>
次に、第2の混合物を加熱する。本工程は、先の加熱工程との区別のために、アニール
または第2の加熱という場合がある。
【0061】
アニールは、適切な温度および時間で行うことが好ましい。適切な温度および時間は、
S25のリチウム、遷移金属および酸素を有する複合酸化物の粒子の大きさおよび組成等
の条件により変化する。粒子が小さい場合は、大きい場合よりも低い温度または短い時間
がより好ましい場合がある。
【0062】
アニール後の降温時間は、たとえば10時間以上50時間以下とすることが好ましい。
【0063】
第2の混合物をアニールすると、まず第1の混合物のうち融点の低い材料(たとえばフ
ッ化リチウム、融点848℃)が溶融し、複合酸化物粒子の表層部に分布すると考えられ
る。次に、この溶融した材料の存在により他の材料の融点降下が起こり、他の材料が溶融
すると推測される。たとえばフッ化マグネシウム(融点1263℃)が溶融し、複合酸化
物粒子の表層部に分布すると考えられる。
【0064】
そして表層部に分布した第1の混合物が有する元素は、リチウム、遷移金属および酸素
を有する複合酸化物中に固溶すると考えられる。
【0065】
この第1の混合物が有する元素の拡散は、複合酸化物粒子の内部よりも、表面および粒
界の方が速い。そのためマグネシウムおよびハロゲンは、表面および粒界において、内部
よりも高濃度となる。後述するが表面および粒界のマグネシウム濃度が高いと、結晶構造
の変化をより効果的に抑制することができる。
【0066】
<S35>
上記でアニールした材料を回収し、本発明の一態様である正極活物質100を得る。
【0067】
正極活物質100は遷移金属として、ニッケルおよびマンガンを有することが好ましい
。遷移金属としてニッケルおよびマンガンを有することにより例えば、容量が高く、かつ
安全性の高い二次電池を実現することができる。正極活物質100は、ニッケルおよびマ
ンガンを有することが好ましく、マンガンのモル数がニッケルのモル数の0.5倍以上3
倍以下である領域を有することが好ましく、1.2倍より大きく2倍より小さい領域を有
することがより好ましい。また正極活物質100はニッケル、マンガンおよびコバルトを
有することが好ましく、マンガンのモル数がニッケルのモル数の0.5倍以上3倍以下で
あり、かつコバルトのモル数がニッケルのモル数の0.5倍以上2倍以下である領域を有
することが好ましい。あるいは、正極活物質100はニッケル、マンガンおよびコバルト
を有することが好ましく、マンガンのモル数がニッケルのモル数の1.2倍より大きく2
倍より小さく、かつコバルトのモル数がニッケルのモル数の0.5倍以上2倍以下である
領域を有することが好ましい。
【0068】
正極活物質100が有する遷移金属の原子数比は例えば、誘導結合プラズマ質量分析法
(Inductively Coupled Plasma Mass Spectro
metry:ICP-MS分析法)、エネルギー分散型X線分光分析(EDX:Ener
gy Dispersion X-ray Spectroscopy)、電子エネルギ
ー損失分光法(EELS:Electron Energy-Loss Spectro
scopy)、X線光電子分光法(XPS:X-ray Photoelectron
Spectroscopy)、等を用いて測定できる場合がある。
【0069】
[正極活物質の構造]
図2は、本発明の一態様の正極活物質が有する結晶構造を示す。図2は、空間群R-3
mを有するニッケル-マンガン-コバルト酸リチウムの結晶構造の一例を示す。
【0070】
≪表層部≫
マグネシウムは正極活物質100の粒子全体に分布していることが好ましいが、これに
加えて粒子表層部のマグネシウム濃度が、粒子全体の平均よりも高いことがより好ましい
。粒子表面はいうなれば全て結晶欠陥である上に、充電時には表面からリチウムが抜けて
いくので内部よりもリチウム濃度が低くなりやすい部分である。そのため、不安定になり
やすく結晶構造の変化が始まりやすい部分である。表層部のマグネシウム濃度が高ければ
、結晶構造の変化をより効果的に抑制することができる。また表層部のマグネシウム濃度
が高いと、電解液が分解して生じたフッ酸に対する耐食性が向上することも期待できる。
【0071】
またフッ素等のハロゲンも、正極活物質100の表層部の濃度が、粒子全体の平均より
も高いことが好ましい。電解液に接する領域である表層部にハロゲンが存在することで、
フッ酸に対する耐食性を効果的に向上させることができる。
【0072】
このように正極活物質100の表層部は内部よりも、マグネシウムおよびフッ素の濃度
が高い、内部と異なる組成であることが好ましい。またその組成として常温で安定な結晶
構造をとることが好ましい。そのため、表層部は内部と異なる結晶構造を有していてもよ
い。たとえば、正極活物質100の表層部の少なくとも一部が、岩塩型の結晶構造を有し
ていてもよい。なお表層部と内部が異なる結晶構造を有する場合、表層部と内部の結晶の
配向が概略一致していることが好ましい。
【0073】
ただし表層部がMgOのみ、またはMgOとCoO(II)が固溶した構造のみでは、
上述したようにリチウムの挿入脱離の経路がなくなってしまう。そのため表層部は少なく
ともコバルトを有し、放電状態においてはリチウムも有し、リチウムの挿入脱離の経路を
有している必要がある。また、マグネシウムよりもコバルトの濃度が高いことが好ましい
【0074】
≪粒界≫
さらに、正極活物質100の結晶粒界およびその近傍のマグネシウム濃度も、内部の他
の領域よりも高いことが好ましい。また結晶粒界およびその近傍のハロゲン濃度も高いこ
とが好ましい。
【0075】
粒子表面と同様、結晶粒界も面欠陥である。そのため不安定になりやすく結晶構造の変
化が始まりやすい。そのため、結晶粒界およびその近傍のマグネシウム濃度が高ければ、
結晶構造の変化をより効果的に抑制することができる。
【0076】
また、結晶粒界およびその近傍のマグネシウムおよびハロゲン濃度が高い場合、正極活
物質100粒子の結晶粒界に沿ってクラックが生じた場合でも、クラックにより生じた表
面の近傍でマグネシウムおよびフハロゲン濃度が高くなる。そのためクラックが生じた後
の正極活物質においてもフッ酸に対する耐食性を高めることができる。
【0077】
なお本明細書等において、結晶粒界の近傍とは、粒界から10nm程度までの領域をい
うこととする。
【0078】
マグネシウム、フッ素、等の原子数比はXPS、EDX、等を用いて測定することが好
ましい。正極活物質100は例えば、XPS分析を行ったとき、正極活物質100が有す
るマグネシウムの原子数比は、遷移金属の0.4倍以上1.5倍以下が好ましく、0.4
5倍以上1.00倍未満がより好ましい。例えば、正極活物質100が遷移金属としてニ
ッケル、マンガンおよびコバルトを有する場合、マグネシウムの原子数比は、ニッケル、
マンガンおよびコバルトの原子数比の和に対して、0.4倍以上1.5倍以下が好ましく
、0.45倍以上1.00倍未満がより好ましい。また、EDX分析を行ったとき、正極
活物質100が有するマグネシウムの原子数比は、遷移金属の0.020倍以上0.50
倍以下であることが好ましく、さらには0.025倍以上0.30倍以下が好ましく、さ
らには0.030倍以上0.20倍以下が好ましい。また、XPS分析を行ったとき、正
極活物質100が有するフッ素の原子数比は、遷移金属の0.05倍以上1.5倍以下が
好ましく、0.3倍以上1.00倍以下がより好ましい。
【0079】
≪充電方法≫
上記判断をするための高電圧充電は、例えば対極リチウムでコインセル(CR2032
タイプ、直径20mm高さ3.2mm)を作製して行うことができる。
【0080】
より具体的には、正極には、正極活物質、導電助剤およびバインダを混合したスラリー
を、アルミニウム箔の正極集電体に塗工したものを用いることができる。
【0081】
対極にはリチウム金属を用いることができる。なお対極にリチウム金属以外の材料を用
いたときは、二次電池の電位と正極の電位が異なる。本明細書等における電圧および電位
は、特に言及しない場合、正極の電位である。
【0082】
電解液が有する電解質には、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を
用い、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)が
EC:DEC=3:7(体積比)、ビニレンカーボネート(VC)が2wt%で混合され
たものを用いることができる。
【0083】
セパレータには厚さ25μmのポリプロピレンを用いることができる。
【0084】
正極缶及び負極缶には、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いることがで
きる。
【0085】
上記条件で作製したコインセルを、4.6V、0.5Cで定電流充電し、その後電流値
が0.01Cとなるまで定電圧充電する。なおここでは1Cは137mA/gとする。温
度は25℃とする。このようにして充電した後に、コインセルをアルゴン雰囲気のグロー
ブボックス中で解体して正極を取り出せば、高電圧で充電された正極活物質を得られる。
この後各種分析を行う際も、アルゴン雰囲気でハンドリングすることが好ましい。たとえ
ばXRDは、アルゴン雰囲気の密閉容器内に封入して行うことができる。
【0086】
≪XRD≫
図3は、図2に示す結晶構造において、(0 0 3)面、(1 0 4)面、および
(1 0 1)面を追記した図である。なお、図をみやすくするため、図3においてはリ
チウム原子を表記していない。
【0087】
本発明の一態様の正極活物質のXRDパターンが空間群R-3mに対応する場合、2θ
が18.5°近傍、例えば17.5°より大きく20°より小さい範囲に一以上のピーク
を有し、かつ、2θが37.0°近傍、例えば36°より大きく38.5°より小さい範
囲に一以上のピークを有し、かつ、2θが45.0°近傍、例えば43.5°より大きく
46.5°より小さい範囲に一以上のピークを有する。
【0088】
本発明の一態様の正極活物質のXRDパターンが空間群R-3mに対応する場合、18
.5°近傍のピークは、図3の実線に示す(0 0 3)面に対応し、37.0°近傍の
ピークは、図3の二点鎖線に示す(1 0 1)面に対応し、45.0°近傍のピークは
図3の一点鎖線に示す(1 0 4)面に対応する。
【0089】
充電において正極活物質からリチウムが脱離することにより、正極活物質の格子定数が
変化する。このとき、格子定数の変化はa、b、およびc軸のそれぞれの方向において、
なるべく均等に変化することが好ましい。ここで均等に変化するとは、充放電の過程にお
いて格子定数が変化する場合に、結晶の歪みの異方性が、より小さいことを指す。結晶の
歪みの異方性が小さいとは例えば、それぞれの軸の格子定数の比の変化が、より小さいこ
とを指す。例えば、本発明の一態様の正極活物質において、a軸とc軸の格子定数の比は
、充放電の過程において、その値の変化がより小さいことが好ましい。
【0090】
充電状態から放電状態に変化する際の結晶の歪みの異方性が大きい場合には、結晶構造
が崩れやすくなり、充放電サイクルの繰り返しに伴い、顕著な容量低下が生じる場合があ
る。また、歪みの異方性が小さい場合には例えば、本発明の一態様の正極活物質を用いた
正極において、歪みが小さくなる場合がある。
【0091】
本発明の一態様の正極活物質は、充放電に伴う歪みの異方性が小さいため、充放電の過
程を経た後も、固体電解質と良好な界面を保つことができる。よって、本発明の一態様の
正極活物質は、固体電解質を用いた二次電池に適している。
【0092】
図2に示す結晶構造からわかるように、リチウムはc軸にほぼ垂直な面状に分布する。
リチウムの脱離により、結晶構造のc軸方向の伸縮が生じやすいことが示唆される。また
、結晶構造のc軸方向の伸縮を抑制できれば、充放電に伴う容量の低下を抑制できる場合
があり、好ましい。
【0093】
図3より、c軸は(1 0 1)面に対して角度が小さい。このことから、結晶のc軸
方向の伸縮は、(1 0 1)面の間隔の変化への寄与が小さいと考えられる。一方、(
0 0 3)面はc軸と平行であり、結晶のc軸方向の進捗の影響を顕著にうけると考え
られる。また、(1 0 4)面についても、c軸との角度が大きいことから、影響を受
けやすいと考えられる。
【0094】
本発明の一態様の正極活物質がリチウム、ニッケル、およびマンガンを有し、該正極活
物質を正極に用い、金属リチウムを負極に用いたリチウムイオン二次電池を、25℃環境
下において、4.6Vとなるまで定電流充電し、その後電流値が0.01Cとなるまで定
電流充電した場合のa軸の格子定数をc軸の格子定数で割った値をa_0/c_0とし、
a_0/c_0は、0.198より大きく0.202より小さいことが好ましい。さらに
、25℃環境下において電池電圧が2.5Vとなるまで定電流放電した場合のa軸の格子
定数をc軸の格子定数で割った値をa_N/c_Nとし、a_0/c_0は、a_N/c
_Nの0.993倍より大きく1.02倍より小さいことが好ましい。
【0095】
また、正極活物質において、複数の相が存在する場合がある。例えば、本発明の一態様
の正極活物質は、第1相と第2相を有し、それぞれの相において、格子定数が異なる場合
がある。それぞれの相において、空間群は異なってもよいが、同一であることがより好ま
しい。
【0096】
正極活物質が複数の相を有する場合には、先に述べた18.5°近傍のピーク、45.
0°近傍のピーク、および37.0°近傍のピークのうちいずれか一以上において、リー
トベルト解析を行った場合に、ピークが半値幅が0.5°以下、あるいは0.3°以下の
二以上のピークに分離する場合がある。
【0097】
二以上のピークに分離する場合、リートベルト解析において正極活物質が二以上の相を
有する場合がある。
【0098】
本発明の一態様の正極活物質のXRDパターンを解析することにより得られる結晶子サ
イズは例えば、10nmより大きく500nmより小さく、あるいは、30nmより大き
く300nmより小さい。
【0099】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0100】
(実施の形態2)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した正極活物質100を有する二次電池に用
いることのできる材料の例について説明する。本実施の形態では、正極、負極および電解
液が、外装体に包まれている二次電池を例にとって説明する。
【0101】
[正極]
正極は、正極活物質層および正極集電体を有する。
【0102】
<正極活物質層>
正極活物質層は、少なくとも正極活物質を有する。また、正極活物質層は、正極活物質
に加えて、活物質表面の被膜、導電助剤またはバインダなどの他の物質を含んでもよい。
【0103】
正極活物質としては、先の実施の形態で説明した正極活物質100を用いることができ
る。先の実施の形態で説明した正極活物質100を用いることで、高容量でサイクル特性
に優れた二次電池とすることができる。
【0104】
導電助剤としては、炭素材料、金属材料、又は導電性セラミックス材料等を用いること
ができる。また、導電助剤として繊維状の材料を用いてもよい。活物質層の総量に対する
導電助剤の含有量は、1wt%以上10wt%以下が好ましく、1wt%以上5wt%以
下がより好ましい。
【0105】
導電助剤により、活物質層中に電気伝導のネットワークを形成することができる。導電
助剤により、正極活物質どうしの電気伝導の経路を維持することができる。活物質層中に
導電助剤を添加することにより、高い電気伝導性を有する活物質層を実現することができ
る。
【0106】
導電助剤としては、例えば天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ等の人造黒鉛、炭素
繊維などを用いることができる。炭素繊維としては、例えばメソフェーズピッチ系炭素繊
維、等方性ピッチ系炭素繊維等の炭素繊維を用いることができる。また炭素繊維として、
カーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどを用いることができる。カーボンナ
ノチューブは、例えば気相成長法などで作製することができる。また、導電助剤として、
例えばカーボンブラック(アセチレンブラック(AB)など)、グラファイト(黒鉛)粒
子、グラフェン、フラーレンなどの炭素材料を用いることができる。また、例えば、銅、
ニッケル、アルミニウム、銀、金などの金属粉末や金属繊維、導電性セラミックス材料等
を用いることができる。
【0107】
また、導電助剤としてグラフェン化合物を用いてもよい。
【0108】
グラフェン化合物は、高い導電性を有するという優れた電気特性と、高い柔軟性および
高い機械的強度を有するという優れた物理特性と、を有する場合がある。また、グラフェ
ン化合物は平面的な形状を有する。グラフェン化合物は、接触抵抗の低い面接触を可能と
する。また、薄くても導電性が非常に高い場合があり、少ない量で効率よく活物質層内で
導電パスを形成することができる。そのため、グラフェン化合物を導電助剤として用いる
ことにより、活物質と導電助剤との接触面積を増大させることができるため好ましい。ス
プレードライ装置を用いることで、活物質の表面全体を覆って導電助剤であるグラフェン
化合物を被膜として形成することが好ましい。また、電気的な抵抗を減少できる場合があ
るため好ましい。ここでグラフェン化合物として例えば、グラフェンまたはマルチグラフ
ェンまたはRGOを用いることが特に好ましい。ここで、RGOは例えば、酸化グラフェ
ン(graphene oxide:GO)を還元して得られる化合物を指す。
【0109】
粒径の小さい活物質、例えば1μm以下の活物質を用いる場合には、活物質の比表面積
が大きく、活物質同士を繋ぐ導電パスがより多く必要となる。そのため導電助剤の量が多
くなりがちであり、相対的に活物質の担持量が減少してしまう傾向がある。活物質の担持
量が減少すると、二次電池の容量が減少してしまう。このような場合には、導電助剤とし
てグラフェン化合物を用いると、グラフェン化合物は少量でも効率よく導電パスを形成す
ることができるため、活物質の担持量を減らさずに済み、特に好ましい。
【0110】
以下では一例として、活物質層200に、導電助剤としてグラフェン化合物を用いる場
合の断面構成例を説明する。
【0111】
図4(A)に、活物質層200の縦断面図を示す。活物質層200は、粒状の正極活物
質100と、導電助剤としてのグラフェン化合物201と、バインダ(図示せず)と、を
含む。ここで、グラフェン化合物201として例えばグラフェンまたはマルチグラフェン
を用いればよい。ここで、グラフェン化合物201はシート状の形状を有することが好ま
しい。また、グラフェン化合物201は、複数のマルチグラフェン、または(および)複
数のグラフェンが部分的に重なりシート状となっていてもよい。
【0112】
活物質層200の縦断面においては、図4(B)に示すように、活物質層200の内部
において概略均一にシート状のグラフェン化合物201が分散する。図4(B)において
はグラフェン化合物201を模式的に太線で表しているが、実際には炭素分子の単層又は
多層の厚みを有する薄膜である。複数のグラフェン化合物201は、複数の粒状の正極活
物質100を一部覆うように、あるいは複数の粒状の正極活物質100の表面上に張り付
くように形成されているため、互いに面接触している。
【0113】
ここで、複数のグラフェン化合物同士が結合することにより、網目状のグラフェン化合
物シート(以下グラフェン化合物ネットまたはグラフェンネットと呼ぶ)を形成すること
ができる。活物質をグラフェンネットが被覆する場合に、グラフェンネットは活物質同士
を結合するバインダとしても機能することができる。よって、バインダの量を少なくする
ことができる、又は使用しないことができるため、電極体積や電極重量に占める活物質の
比率を向上させることができる。すなわち、二次電池の容量を増加させることができる。
【0114】
ここで、グラフェン化合物201として酸化グラフェンを用い、活物質と混合して活物
質層200となる層を形成後、還元することが好ましい。グラフェン化合物201の形成
に、極性溶媒中での分散性が極めて高い酸化グラフェンを用いることにより、グラフェン
化合物201を活物質層200の内部において概略均一に分散させることができる。均一
に分散した酸化グラフェンを含有する分散媒から溶媒を揮発除去し、酸化グラフェンを還
元するため、活物質層200に残留するグラフェン化合物201は部分的に重なり合い、
互いに面接触する程度に分散していることで三次元的な導電パスを形成することができる
。なお、酸化グラフェンの還元は、例えば熱処理により行ってもよいし、還元剤を用いて
行ってもよい。
【0115】
従って、活物質と点接触するアセチレンブラック等の粒状の導電助剤と異なり、グラフ
ェン化合物201は接触抵抗の低い面接触を可能とするものであるから、通常の導電助剤
よりも少量で粒状の正極活物質100とグラフェン化合物201との電気伝導性を向上さ
せることができる。よって、正極活物質100の活物質層200における比率を増加させ
ることができる。これにより、二次電池の放電容量を増加させることができる。
【0116】
また、予め、スプレードライ装置を用いることで、活物質の表面全体を覆って導電助剤
であるグラフェン化合物を被膜として形成し、さらに活物質同士間をグラフェン化合物で
導電パスを形成することもできる。
【0117】
バインダとしては、例えば、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプ
レン-スチレンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン-
プロピレン-ジエン共重合体などのゴム材料を用いることが好ましい。またバインダとし
て、フッ素ゴムを用いることができる。
【0118】
また、バインダとしては、例えば水溶性の高分子を用いることが好ましい。水溶性の高
分子としては、例えば多糖類などを用いることができる。多糖類としては、カルボキシメ
チルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピル
セルロース、ジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘導体や、澱粉な
どを用いることができる。また、これらの水溶性の高分子を、前述のゴム材料と併用して
用いると、さらに好ましい。
【0119】
または、バインダとしては、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸
メチル(PMMA)、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポ
リエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド、ポリイミド、ポリ塩化ビニル
、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポ
リエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリアクリ
ロニトリル(PAN)、エチレンプロピレンジエンポリマー、ポリ酢酸ビニル、ニトロセ
ルロース等の材料を用いることが好ましい。
【0120】
バインダは上記のうち複数を組み合わせて使用してもよい。
【0121】
例えば粘度調整効果の特に優れた材料と、他の材料とを組み合わせて使用してもよい。
例えばゴム材料等は接着力や弾性力に優れる反面、溶媒に混合した場合に粘度調整が難し
い場合がある。このような場合には例えば、粘度調整効果の特に優れた材料と混合するこ
とが好ましい。粘度調整効果の特に優れた材料としては、例えば水溶性高分子を用いると
よい。また、粘度調整効果に特に優れた水溶性高分子としては、前述の多糖類、例えばカ
ルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキ
シプロピルセルロースおよびジアセチルセルロース、再生セルロースなどのセルロース誘
導体や、澱粉を用いることができる。
【0122】
なお、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は、例えばカルボキシメチ
ルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩などの塩とすることにより溶解度が上がり
、粘度調整剤としての効果を発揮しやすくなる。溶解度が高くなることにより電極のスラ
リーを作製する際に活物質や他の構成要素との分散性を高めることもできる。本明細書に
おいては、電極のバインダとして使用するセルロースおよびセルロース誘導体としては、
それらの塩も含むものとする。
【0123】
水溶性高分子は水に溶解することにより粘度を安定化させ、また活物質や、バインダと
して組み合わせる他の材料、例えばスチレンブタジエンゴムなどを、水溶液中に安定して
分散させることができる。また、官能基を有するために活物質表面に安定に吸着しやすい
ことが期待される。また、例えばカルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体は
、例えば水酸基やカルボキシル基などの官能基を有する材料が多く、官能基を有するため
に高分子同士が相互作用し、活物質表面を広く覆って存在することが期待される。
【0124】
活物質表面を覆う、または表面に接するバインダが膜を形成する場合には、不動態膜と
しての役割を果たして電解液の分解を抑える効果も期待される。ここで、不動態膜とは、
電子の伝導性のない膜、または電気伝導性の極めて低い膜であり、例えば活物質の表面に
不動態膜が形成された場合には、電池反応電位において、電解液の分解を抑制することが
できる。また、不動態膜は、電気の伝導性を抑えるとともに、リチウムイオンは伝導でき
るとさらに望ましい。
【0125】
<正極集電体>
正極集電体としては、ステンレス、金、白金、アルミニウム、チタン等の金属、及びこ
れらの合金など、導電性が高い材料をもちいることができる。また正極集電体に用いる材
料は、正極の電位で溶出しないことが好ましい。また、シリコン、チタン、ネオジム、ス
カンジウム、モリブデンなどの耐熱性を向上させる元素が添加されたアルミニウム合金を
用いることができる。また、シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素で形成し
てもよい。シリコンと反応してシリサイドを形成する金属元素としては、ジルコニウム、
チタン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブデン、タングステ
ン、コバルト、ニッケル等がある。集電体は、箔状、板状(シート状)、網状、パンチン
グメタル状、エキスパンドメタル状等の形状を適宜用いることができる。集電体は、厚み
が5μm以上30μm以下のものを用いるとよい。
【0126】
[負極]
負極は、負極活物質層および負極集電体を有する。また、負極活物質層は、導電助剤お
よびバインダを有していてもよい。
【0127】
<負極活物質>
負極活物質としては、例えば合金系材料や炭素系材料等を用いることができる。
【0128】
負極活物質として、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電反応を行うことが
可能な元素を用いることができる。例えば、シリコン、スズ、ガリウム、アルミニウム、
ゲルマニウム、鉛、アンチモン、ビスマス、銀、亜鉛、カドミウム、インジウム等のうち
少なくとも一つを含む材料を用いることができる。このような元素は炭素と比べて容量が
大きく、特にシリコンは理論容量が4200mAh/gと高い。このため、負極活物質に
シリコンを用いることが好ましい。また、これらの元素を有する化合物を用いてもよい。
例えば、SiO、MgSi、MgGe、SnO、SnO、MgSn、SnS
Sn、FeSn、CoSn、NiSn、CuSn、AgSn、Ag
Sb、NiMnSb、CeSb、LaSn、LaCoSn、CoSb
InSb、SbSn等がある。ここで、リチウムとの合金化・脱合金化反応により充放電
反応を行うことが可能な元素、および該元素を有する化合物等を合金系材料と呼ぶ場合が
ある。
【0129】
本明細書等において、SiOは例えば一酸化シリコンを指す。あるいはSiOは、Si
と表すこともできる。ここでxは1近傍の値を有することが好ましい。例えばxは、
0.2以上1.5以下が好ましく、0.3以上1.2以下がより好ましい。
【0130】
炭素系材料としては、黒鉛、易黒鉛化性炭素(ソフトカーボン)、難黒鉛化性炭素(ハ
ードカーボン)、カーボンナノチューブ、グラフェン、カーボンブラック等を用いればよ
い。
【0131】
黒鉛としては、人造黒鉛や、天然黒鉛等が挙げられる。人造黒鉛としては例えば、メソ
カーボンマイクロビーズ(MCMB)、コークス系人造黒鉛、ピッチ系人造黒鉛等が挙げ
られる。ここで人造黒鉛として、球状の形状を有する球状黒鉛を用いることができる。例
えば、MCMBは球状の形状を有する場合があり、好ましい。また、MCMBはその表面
積を小さくすることが比較的容易であり、好ましい場合がある。天然黒鉛としては例えば
、鱗片状黒鉛、球状化天然黒鉛等が挙げられる。
【0132】
黒鉛はリチウムイオンが黒鉛に挿入されたとき(リチウム-黒鉛層間化合物の生成時)
にリチウム金属と同程度に低い電位を示す(0.05V以上0.3V以下 vs.Li/
Li)。これにより、リチウムイオン二次電池は高い作動電圧を示すことができる。さ
らに、黒鉛は、単位体積当たりの容量が比較的高い、体積膨張が比較的小さい、安価であ
る、リチウム金属に比べて安全性が高い等の利点を有するため、好ましい。
【0133】
また、負極活物質として、二酸化チタン(TiO)、リチウムチタン酸化物(Li
Ti12)、リチウム-黒鉛層間化合物(Li)、五酸化ニオブ(Nb
)、酸化タングステン(WO)、酸化モリブデン(MoO)等の酸化物を用いること
ができる。
【0134】
また、負極活物質として、リチウムと遷移金属の複窒化物である、LiN型構造をも
つLi3-xN(M=Co、Ni、Cu)を用いることができる。例えば、Li2.
Co0.4は大きな充放電容量(900mAh/g、1890mAh/cm)を
示し好ましい。
【0135】
リチウムと遷移金属の複窒化物を用いると、負極活物質中にリチウムイオンを含むため
、正極活物質としてリチウムイオンを含まないV、Cr等の材料と組み合わ
せることができ好ましい。なお、正極活物質にリチウムイオンを含む材料を用いる場合で
も、あらかじめ正極活物質に含まれるリチウムイオンを脱離させることで、負極活物質と
してリチウムと遷移金属の複窒化物を用いることができる。
【0136】
また、コンバージョン反応が生じる材料を負極活物質として用いることもできる。例え
ば、酸化コバルト(CoO)、酸化ニッケル(NiO)、酸化鉄(FeO)等の、リチウ
ムとの合金を作らない遷移金属酸化物を負極活物質に用いてもよい。コンバージョン反応
が生じる材料としては、さらに、Fe、CuO、CuO、RuO、Cr
等の酸化物、CoS0.89、NiS、CuS等の硫化物、Zn、CuN、Ge
等の窒化物、NiP、FeP、CoP等のリン化物、FeF、BiF
のフッ化物でも起こる。
【0137】
負極活物質層が有することのできる導電助剤およびバインダとしては、正極活物質層が
有することのできる導電助剤およびバインダと同様の材料を用いることができる。
【0138】
<負極集電体>
負極集電体には、正極集電体と同様の材料を用いることができる。なお負極集電体は、
リチウム等のキャリアイオンと合金化しない材料を用いることが好ましい。
【0139】
[電解液]
電解液は、溶媒と電解質を有する。電解液の溶媒としては、非プロトン性有機溶媒が好
ましく、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブ
チレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、γ-ブチロ
ラクトン、γ-バレロラクトン、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネー
ト(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ギ酸メチル、酢酸メチル、酢酸エ
チル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、酪酸メチル、
1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、ジメトキシエタン(DME)、ジメチルスル
ホキシド、ジエチルエーテル、メチルジグライム、アセトニトリル、ベンゾニトリル、テ
トラヒドロフラン、スルホラン、スルトン等の1種、又はこれらのうちの2種以上を任意
の組み合わせおよび比率で用いることができる。
【0140】
また、電解液の溶媒として、難燃性および難揮発性であるイオン液体(常温溶融塩)を
一つ又は複数用いることで、二次電池の内部短絡や、過充電等によって内部温度が上昇し
ても、二次電池の破裂や発火などを防ぐことができる。二次電池を携帯端末や、車両等の
機器に搭載する場合には、二次電池と使用者との距離が密接な状態で、該機器が使用され
る場合がある。二次電池の破裂や発火などが生じた場合には例えば、人体等の使用者に危
険が及ぶ場合がある。電解液の溶媒がイオン液体を有することにより、使用者は、二次電
池が搭載された携帯端末、車両、等をより安全な状態で使用できる。イオン液体は、カチ
オンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。電解液に用いる有機カチオ
ンとして、四級アンモニウムカチオン、三級スルホニウムカチオン、および四級ホスホニ
ウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオンや、イミダゾリウムカチオンおよびピリジニウ
ムカチオン等の芳香族カチオンが挙げられる。また、電解液に用いるアニオンとして、1
価のアミド系アニオン、1価のメチド系アニオン、フルオロスルホン酸アニオン、パーフ
ルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロア
ルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、またはパーフルオロア
ルキルホスフェートアニオン等が挙げられる。
【0141】
また、上記の溶媒に溶解させる電解質としては、例えばLiPF、LiClO、L
iAsF、LiBF、LiAlCl、LiSCN、LiBr、LiI、LiSO
、Li10Cl10、Li12Cl12、LiCFSO、LiC
、LiC(CFSO、LiC(CSO、LiN(CFSO
、LiN(CSO)(CFSO)、LiN(CSO等のリ
チウム塩を一種、又はこれらのうちの二種以上を任意の組み合わせおよび比率で用いるこ
とができる。
【0142】
二次電池に用いる電解液の溶媒として、有機溶媒とイオン液体を混合した溶媒を用いて
もよい。
【0143】
二次電池に用いる電解液は、粒状のごみや電解液の構成元素以外の元素(以下、単に「
不純物」ともいう。)の含有量が少ない高純度化された電解液を用いることが好ましい。
具体的には、電解液に対する不純物の重量比を1%以下、好ましくは0.1%以下、より
好ましくは0.01%以下とすることが好ましい。
【0144】
また、電解液にビニレンカーボネート、プロパンスルトン(PS)、tert-ブチル
ベンゼン(TBB)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、LiBOB、またスク
シノニトリル、アジポニトリル等のジニトリル化合物などの添加剤を添加してもよい。添
加する材料の濃度は、例えば溶媒全体に対して0.1wt%以上5wt%以下とすればよ
い。
【0145】
また、ポリマーを電解液で膨潤させたポリマーゲル電解質を用いてもよい。
【0146】
ポリマーゲル電解質を用いることで、漏液性等に対する安全性が高まる。また、二次電
池の薄型化および軽量化が可能である。
【0147】
ゲル化されるポリマーとして、シリコーンゲル、アクリルゲル、アクリロニトリルゲル
、ポリエチレンオキサイド系ゲル、ポリプロピレンオキサイド系ゲル、フッ素系ポリマー
のゲル等を用いることができる。
【0148】
ポリマーとしては、例えばポリエチレンオキシド(PEO)などのポリアルキレンオキ
シド構造を有するポリマーや、PVDF、およびポリアクリロニトリル等、およびそれら
を含む共重合体等を用いることができる。例えばPVDFとヘキサフルオロプロピレン(
HFP)の共重合体であるPVDF-HFPを用いることができる。また、形成されるポ
リマーは、多孔質形状を有してもよい。
【0149】
また、電解液の代わりに、硫化物系や酸化物系等の無機物材料を有する固体電解質や、
PEO(ポリエチレンオキシド)系等の高分子材料を有する固体電解質を用いることがで
きる。固体電解質を用いる場合には、セパレータやスペーサの設置が不要となる。また、
電池全体を固体化できるため、漏液のおそれがなくなり安全性が飛躍的に向上する。本発
明の一態様の正極を用いることにより例えば、二次電池の充放電の過程を経た後も、固体
電解質との良好な界面を保つことができる。
【0150】
[セパレータ]
また二次電池は、セパレータを有することが好ましい。セパレータとしては、例えば、
紙、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン(ポリアミド)、ビニロン(ポ
リビニルアルコール系繊維)、ポリエステル、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン
を用いた合成繊維等で形成されたものを用いることができる。セパレータはエンベロープ
状に加工し、正極または負極のいずれか一方を包むように配置することが好ましい。
【0151】
セパレータは多層構造であってもよい。たとえばポリプロピレン、ポリエチレン等の有
機材料フィルムに、セラミック系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれら
を混合したもの等をコートすることができる。セラミック系材料としては、たとえば酸化
アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、
たとえばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系
材料としては、たとえばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用
いることができる。
【0152】
セラミック系材料をコートすると耐酸化性が向上するため、高電圧充放電の際のセパレ
ータの劣化を抑制し、二次電池の信頼性を向上させることができる。またフッ素系材料を
コートするとセパレータと電極が密着しやすくなり、出力特性を向上させることができる
。ポリアミド系材料、特にアラミドをコートすると、耐熱性が向上するため、二次電池の
安全性を向上させることができる。
【0153】
たとえばポリプロピレンのフィルムの両面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料を
コートしてもよい。また、ポリプロピレンのフィルムの、正極と接する面に酸化アルミニ
ウムとアラミドの混合材料をコートし、負極と接する面にフッ素系材料をコートしてもよ
い。
【0154】
多層構造のセパレータを用いると、セパレータ全体の厚さが薄くても二次電池の安全性
を保つことができるため、二次電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
【0155】
[外装体]
二次電池が有する外装体としては、例えばアルミニウムなどの金属材料や樹脂材料を用
いることができる。また、フィルム状の外装体を用いることもできる。フィルムとしては
、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド
等の材料からなる膜上に、アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた
金属薄膜を設け、さらに該金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエス
テル系樹脂等の絶縁性合成樹脂膜を設けた三層構造のフィルムを用いることができる。
【0156】
[充放電方法]
二次電池の充放電は、たとえば下記のように行うことができる。
【0157】
≪CC充電≫
まず、充電方法の1つとしてCC充電について説明する。CC充電は、充電期間のすべ
てで一定の電流を二次電池に流し、所定の電圧になったときに充電を停止する充電方法で
ある。二次電池を、図5(A)に示すように内部抵抗Rと二次電池容量Cの等価回路と仮
定する。この場合、二次電池電圧Vは、内部抵抗Rにかかる電圧Vと二次電池容量C
にかかる電圧Vの和である。
【0158】
CC充電を行っている間は、図5(A)に示すように、スイッチがオンになり、一定の
電流Iが二次電池に流れる。この間、電流Iが一定であるため、V=R×Iのオームの
法則により、内部抵抗Rにかかる電圧Vも一定である。一方、二次電池容量Cにかかる
電圧Vは、時間の経過とともに上昇する。そのため、二次電池電圧Vは、時間の経過
とともに上昇する。
【0159】
そして二次電池電圧Vが所定の電圧、例えば4.3Vになったときに、充電を停止す
る。CC充電を停止すると、図5(B)に示すように、スイッチがオフになり、電流I=
0となる。そのため、内部抵抗Rにかかる電圧Vが0Vとなる。そのため、内部抵抗R
での電圧降下がなくなった分、二次電池電圧Vが下降する。
【0160】
CC充電を行っている間と、CC充電を停止してからの、二次電池電圧Vと充電電流
の例を図5(C)に示す。CC充電を行っている間は上昇していた二次電池電圧Vが、
CC充電を停止してから若干低下する様子が示されている。
【0161】
≪CCCV充電≫
次に、上記と異なる充電方法であるCCCV充電について説明する。CCCV充電は、
まずCC充電にて所定の電圧まで充電を行い、その後CV(定電圧)充電にて流れる電流
が少なくなるまで、具体的には終止電流値になるまで充電を行う充電方法である。
【0162】
CC充電を行っている間は、図6(A)に示すように、定電流電源のスイッチがオン、
定電圧電源のスイッチがオフになり、一定の電流Iが二次電池に流れる。この間、電流I
が一定であるため、V=R×Iのオームの法則により、内部抵抗Rにかかる電圧V
一定である。一方、二次電池容量Cにかかる電圧Vは、時間の経過とともに上昇する。
そのため、二次電池電圧Vは、時間の経過とともに上昇する。
【0163】
そして二次電池電圧Vが所定の電圧、例えば4.3Vになったときに、CC充電から
CV充電に切り替える。CV充電を行っている間は、図6(B)に示すように、定電圧電
源のスイッチがオン、定電流電源のスイッチがオフになり、二次電池電圧Vが一定とな
る。一方、二次電池容量Cにかかる電圧Vは、時間の経過とともに上昇する。V=V
+Vであるため、内部抵抗Rにかかる電圧Vは、時間の経過とともに小さくなる。
内部抵抗Rにかかる電圧Vが小さくなるに従い、V=R×Iのオームの法則により、
二次電池に流れる電流Iも小さくなる。
【0164】
そして二次電池に流れる電流Iが所定の電流、例えば0.01C相当の電流となったと
き、充電を停止する。CCCV充電を停止すると、図6(C)に示すように、全てのスイ
ッチがオフになり、電流I=0となる。そのため、内部抵抗Rにかかる電圧Vが0Vと
なる。しかし、CV充電により内部抵抗Rにかかる電圧Vが十分に小さくなっているた
め、内部抵抗Rでの電圧降下がなくなっても、二次電池電圧Vはほとんど降下しない。
【0165】
CCCV充電を行っている間と、CCCV充電を停止してからの、二次電池電圧V
充電電流の例を図6(D)に示す。CCCV充電を停止しても、二次電池電圧Vがほと
んど降下しない様子が示されている。
【0166】
≪CC放電≫
次に、放電方法の1つであるCC放電について説明する。CC放電は、放電期間のすべ
てで一定の電流を二次電池から流し、二次電池電圧Vが所定の電圧、例えば2.5Vに
なったときに放電を停止する放電方法である。
【0167】
CC放電を行っている間の二次電池電圧Vと放電電流の例を図7に示す。放電が進む
に従い、二次電池電圧Vが降下していく様子が示されている。
【0168】
次に、放電レート及び充電レートについて説明する。放電レートとは、電池容量に対す
る放電時の電流の相対的な比率であり、単位Cで表される。定格容量X(Ah)の電池に
おいて、1C相当の電流は、X(A)である。2X(A)の電流で放電させた場合は、2
Cで放電させたといい、X/5(A)の電流で放電させた場合は、0.2Cで放電させた
という。また、充電レートも同様であり、2X(A)の電流で充電させた場合は、2Cで
充電させたといい、X/5(A)の電流で充電させた場合は、0.2Cで充電させたとい
う。
【0169】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0170】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の二次電池が有する電解液として用いることができ
る、イオン液体について説明する。電解液の溶媒として、以下に説明するイオン液体を複
数、混合して用いてもよい。
【0171】
イオン液体は一つ又は複数の種類を組み合わせて用いればよい。該イオン液体は、カチ
オンとアニオンからなり、有機カチオンとアニオンとを含む。
【0172】
該有機カチオンとして、例えば芳香族カチオンや、四級アンモニウムカチオン、三級ス
ルホニウムカチオン、及び四級ホスホニウムカチオン等の脂肪族オニウムカチオン等を用
いることが好ましい。
【0173】
芳香族カチオンとしては、例えば5員環のヘテロ芳香環を含むカチオンであることが好
ましい。5員環のヘテロ芳香環を含むカチオンとしてはベンゾイミダゾリウムカチオン、
ベンゾオキサゾリウムカチオン、ベンゾチアゾリウムカチオン等がある。単環式化合物で
ある5員環のヘテロ芳香環を含むカチオンとしてはオキサゾリウムカチオン、チアゾリウ
ムカチオン、イソオキサゾリウムカチオン、イソチアゾリウムカチオン、イミダゾリウム
カチオン、ピラゾリウムカチオン等がある。化合物の安定性、粘度およびイオン伝導度、
並びに合成の簡易さから、単環式化合物である5員環のヘテロ芳香環を含むカチオンであ
ることが好ましく、特にイミダゾリウムカチオンは粘度の低下が期待できるため、より好
ましい。
【0174】
また、上記イオン液体におけるアニオンとして、例えば、1価のアミドアニオン、1価
のメチドアニオン、フルオロスルホン酸アニオン(SO)、フルオロアルキルスル
ホン酸アニオン、テトラフルオロボレート(BF )、フルオロアルキルボレート、ヘ
キサフルオロホスフェート(PF )またはフルオロアルキルホスフェート等が挙げら
れる。そして、1価のアミドアニオンとしては、(C2n+1SO(n=
0以上3以下)、1価の環状のアミドアニオンとしては、(CFSOなどが
ある。1価のメチドアニオンとしては、(C2n+1SO(n=0以上3
以下)、1価の環状のメチドアニオンとしては、(CFSO(CFSO
)などがある。フルオロアルキルスルホン酸アニオンとしては、(C2m+1SO
(m=0以上4以下)などがある。フルオロアルキルボレートとしては、{BF
2m+1-k4-n(n=0以上3以下、m=1以上4以下、k=0以
上2m以下)などがある。フルオロアルキルホスフェートとしては、{PF(C
2m+1-k6-n(n=0以上5以下、m=1以上4以下、k=0以上2m以
下)などがある。なお、当該アニオンはこれらに限るものではない。
【0175】
5員環のヘテロ芳香環を含むカチオンを有するイオン液体として、例えば、一般式(G
1)で表すことができる。
【0176】
【化1】
【0177】
一般式(G1)中において、Rは、炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、R
乃至Rは、それぞれ独立に、水素原子または炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し
、Rは、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された2つ以上で構成される主鎖を
表し、Aは、1価のイミド系アニオン、スルホニルイミド(IUPAC命名法に従うと
スルホニルアミドとも呼ぶ)アニオン、1価のアミドアニオン、1価のメチドアニオン、
フルオロスルホン酸アニオン、フルオロアルキルスルホン酸アニオン、テトラフルオロボ
レートアニオン、フルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサフルオロホスフェートアニ
オン、またはフルオロアルキルホスフェートアニオンのいずれか一を表す。
【0178】
また、Rの主鎖に置換基が導入されていてもよい。導入される置換基としては、たと
えば、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0179】
なお、一般式(G1)で表されるイオン液体の当該アルキル基は、直鎖状または分岐鎖
状のどちらであってもよい。例えば、エチル基、tert‐ブチル基である。また、一般
式(G1)で表されるイオン液体において、Rは酸素-酸素結合(ペルオキシド)を持
たないことが好ましい。酸素‐酸素間の単結合は非常に壊れやすく、反応性が高いために
爆発性を有する可能性がある。このため、蓄電装置には適さない。
【0180】
また、イオン液体は、6員環のヘテロ芳香環を含んでもよい。例えば、下記一般式(G
2)で表されるイオン液体を用いることができる。
【0181】
【化2】
【0182】
一般式(G2)中において、Rは、C、O、Si、N、S、Pの原子から選択された
2つ以上で構成される主鎖を表し、R乃至R11は、それぞれ独立に、水素原子または
炭素数が1以上4以下のアルキル基を表し、Aは、1価のイミド系アニオン、スルホニ
ルイミド(IUPAC命名法に従うとスルホニルアミドとも呼ぶ)アニオン、1価のアミ
ドアニオン、1価のメチドアニオン、フルオロスルホン酸アニオン、フルオロアルキルス
ルホン酸アニオン、テトラフルオロボレートアニオン、フルオロアルキルボレートアニオ
ン、ヘキサフルオロホスフェートアニオン、またはフルオロアルキルホスフェートアニオ
ンのいずれか一を表す。
【0183】
また、Rの主鎖に置換基が導入されていてもよい。導入される置換基としては、たと
えば、アルキル基、アルコキシ基などが挙げられる。
【0184】
また、四級アンモニウムカチオンを有するイオン液体として、例えば、下記一般式(G
3)で表されるイオン液体を用いることができる。
【0185】
【化3】
【0186】
一般式(G3)中、R12乃至R17は、それぞれ独立に、炭素数が1以上20以下の
アルキル基、メトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、または水素原子のいず
れかを表す。
【0187】
また、イオン液体として、例えば、四級アンモニウムカチオンおよび1価のアニオンか
ら構成され、下記一般式(G4)で表されるイオン液体を用いることができる。
【0188】
【化4】
【0189】
一般式(G4)中、R18乃至R24は、それぞれ独立に、炭素数が1以上20以下の
アルキル基、メトキシ基、メトキシメチル基、メトキシエチル基、または水素原子のいず
れかを表す。
【0190】
また、イオン液体として、例えば、四級アンモニウムカチオンおよび1価のアニオンか
ら構成され、下記一般式(G5)で表されるイオン液体を用いることができる。
【0191】
【化5】
【0192】
一般式(G5)中、n及びmは1以上3以下である。αは0以上6以下とし、nが1の
場合αは0以上4以下であり、nが2の場合αは0以上5以下であり、nが3の場合αは
0以上6以下である。βは0以上6以下とし、mが1の場合βは0以上4以下であり、m
が2の場合βは0以上5以下であり、mが3の場合βは0以上6以下である。なお、αま
たはβが0であるとは、無置換であることを表す。また、αとβが共に0である場合は除
くものとする。X又はYは、置換基として炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状
のアルキル基、炭素数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシ基、又は炭素
数が1以上4以下の直鎖状若しくは側鎖状のアルコキシアルキル基を表す。また、A
1価のアミドアニオン、1価のメチドアニオン、パーフルオロアルキルスルホン酸アニオ
ン、テトラフルオロボレートアニオン、パーフルオロアルキルボレートアニオン、ヘキサ
フルオロホスフェートアニオン及びパーフルオロアルキルホスフェートアニオンのいずれ
かを表す。
【0193】
四級スピロアンモニウムカチオンにおいて、スピロ環を構成する二つの脂肪族環は5員
環、6員環又は7員環のいずれかである。
【0194】
上記一般式(G1)のカチオンの具体例として、例えば構造式(111)乃至構造式(
174)が挙げられる。
【0195】
【化6】
【0196】
【化7】
【0197】
【化8】
【0198】
【化9】
【0199】
【化10】
【0200】
【化11】
【0201】
【化12】
【0202】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0203】
(実施の形態4)
本実施の形態では、先の実施の形態で説明した正極活物質100を有する二次電池の形
状の例について説明する。本実施の形態で説明する二次電池に用いる材料は、先の実施の
形態の記載を参酌することができる。
【0204】
[コイン型二次電池]
まずコイン型の二次電池の一例について説明する。図8(A)はコイン型(単層偏平型
)の二次電池の外観図であり、図8(B)は、その断面図である。
【0205】
コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極
缶302とが、ポリプロピレン等で形成されたガスケット303で絶縁シールされている
。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層30
6により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設
けられた負極活物質層309により形成される。
【0206】
なお、コイン型の二次電池300に用いる正極304および負極307は、それぞれ活
物質層は片面のみに形成すればよい。
【0207】
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウ
ム、チタン等の金属、又はこれらの合金やこれらと他の金属との合金(例えばステンレス
鋼等)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニ
ウム等を被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極3
07とそれぞれ電気的に接続する。
【0208】
これら負極307、正極304およびセパレータ310を電解質に含浸させ、図8(B
)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、
負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介
して圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
【0209】
正極304に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイク
ル特性に優れたコイン型の二次電池300とすることができる。
【0210】
ここで図8(C)を用いて二次電池の充電時の電流の流れを説明する。リチウムを用い
た二次電池を一つの閉回路とみなした時、リチウムイオンの動きと電流の流れは同じ向き
になる。なお、リチウムを用いた二次電池では、充電と放電でアノード(陽極)とカソー
ド(陰極)が入れ替わり、酸化反応と還元反応とが入れ替わることになるため、反応電位
が高い電極を正極と呼び、反応電位が低い電極を負極と呼ぶ。したがって、本明細書にお
いては、充電中であっても、放電中であっても、逆パルス電流を流す場合であっても、充
電電流を流す場合であっても、正極は「正極」または「+極(プラス極)」と呼び、負極
は「負極」または「-極(マイナス極)」と呼ぶこととする。酸化反応や還元反応に関連
したアノード(陽極)やカソード(陰極)という用語を用いると、充電時と放電時とでは
、逆になってしまい、混乱を招く可能性がある。したがって、アノード(陽極)やカソー
ド(陰極)という用語は、本明細書においては用いないこととする。仮にアノード(陽極
)やカソード(陰極)という用語を用いる場合には、充電時か放電時かを明記し、正極(
プラス極)と負極(マイナス極)のどちらに対応するものかも併記することとする。
【0211】
図8(C)に示す2つの端子には充電器が接続され、二次電池300が充電される。二
次電池300の充電が進めば、電極間の電位差は大きくなる。
【0212】
[円筒型二次電池]
次に円筒型の二次電池の例について図9を参照して説明する。円筒型の二次電池600
は、図9(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面および
底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップと電池缶(外装缶)6
02とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0213】
図9(B)は、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。中空円柱状の電池
缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで
捲回された電池素子が設けられている。図示しないが、電池素子はセンターピンを中心に
捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602に
は、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタン等の金属、又はこれ
らの合金やこれらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼等)を用いることができる
。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルやアルミニウム等を被覆することが好ま
しい。電池缶602の内側において、正極、負極およびセパレータが捲回された電池素子
は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、電池素子が設けら
れた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、
コイン型の二次電池と同様のものを用いることができる。
【0214】
円筒型の蓄電池に用いる正極および負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成
することが好ましい。正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負
極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603および負
極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子6
03は安全弁機構612に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接され
る。安全弁機構612は、PTC素子(Positive Temperature C
oefficient)611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。
安全弁機構612は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601
と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が
上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して
異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO)系
半導体セラミックス等を用いることができる。
【0215】
また、図9(C)のように複数の二次電池600を、導電板613および導電板614
の間に挟んでモジュール615を構成してもよい。複数の二次電池600は、並列接続さ
れていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続された後さらに直列に接続
されていてもよい。複数の二次電池600を有するモジュール615を構成することで、
大きな電力を取り出すことができる。
【0216】
図9(D)はモジュール615の上面図である。図を明瞭にするために導電板613を
点線で示した。図9(D)に示すようにモジュール615は、複数の二次電池600を電
気的に接続する導線616を有していてもよい。導線616上に導電板を重畳して設ける
ことができる。また複数の二次電池600の間に温度制御装置617を有していてもよい
。二次電池600が過熱されたときは、温度制御装置617により冷却し、二次電池60
0が冷えすぎているときは温度制御装置617により加熱することができる。そのためモ
ジュール615の性能が外気温に影響されにくくなる。温度制御装置617が有する熱媒
体は絶縁性と不燃性を有することが好ましい。
【0217】
モジュール615が温度制御装置617を有するため、所望の性能に合わせて二次電池
600の温度を変化させることができる。例えば、二次電池600を加熱することにより
、より高い電流密度での充電、および放電が可能となる。例えば、充電の時間を短くでき
る。また、二次電池600を加熱する場合には、二次電池600の電解液の溶媒はイオン
液体を有することが好ましい。イオン液体は有機溶媒と比べて、加熱時の蒸気圧の上昇が
抑えられるため、加熱を行った場合でも、二次電池600の膨らみを抑制することができ
る。すなわち、安全性を確保したまま、加熱により性能を向上させることができる。
【0218】
モジュール615は例えば、二次電池600に加えて、他の蓄電池を有してもよい。例
えばモジュール615は、鉛蓄電池、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタ
、等の蓄電池を有してもよい。これらの蓄電池を用いて温度制御装置617を起動し、動
作させてもよい。
【0219】
正極604に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイク
ル特性に優れた円筒型の二次電池600とすることができる。
【0220】
[二次電池の構造例]
二次電池の別の構造例について、図10乃至図14を用いて説明する。
【0221】
図10(A)及び図10(B)は、二次電池の外観図を示す図である。二次電池は、回
路基板900と、二次電池913と、を有する。二次電池913には、ラベル910が貼
られている。さらに、図10(B)に示すように、二次電池は、端子951と、端子95
2と、アンテナ914と、アンテナ915と、を有する。
【0222】
回路基板900は、端子911と、回路912と、を有する。端子911は、端子95
1、端子952、アンテナ914、アンテナ915、及び回路912に接続される。なお
、端子911を複数設けて、複数の端子911のそれぞれを、制御信号入力端子、電源端
子などとしてもよい。
【0223】
回路912は、回路基板900の裏面に設けられていてもよい。なお、アンテナ914
及びアンテナ915は、コイル状に限定されず、例えば線状、板状であってもよい。また
、平面アンテナ、開口面アンテナ、進行波アンテナ、EHアンテナ、磁界アンテナ、誘電
体アンテナ等のアンテナを用いてもよい。又は、アンテナ914若しくはアンテナ915
は、平板状の導体でもよい。この平板状の導体は、電界結合用の導体の一つとして機能す
ることができる。つまり、コンデンサの有する2つの導体のうちの一つの導体として、ア
ンテナ914若しくはアンテナ915を機能させてもよい。これにより、電磁界、磁界だ
けでなく、電界で電力のやり取りを行うこともできる。
【0224】
アンテナ914の線幅は、アンテナ915の線幅よりも大きいことが好ましい。これに
より、アンテナ914により受電する電力量を大きくできる。
【0225】
二次電池は、アンテナ914及びアンテナ915と、二次電池913との間に層916
を有する。層916は、例えば二次電池913による電磁界を遮蔽する機能を有する。層
916としては、例えば磁性体を用いることができる。
【0226】
なお、二次電池の構造は、図10に限定されない。
【0227】
例えば、図11(A-1)及び図11(A-2)に示すように、図10(A)及び図1
0(B)に示す二次電池913のうち、対向する一対の面のそれぞれにアンテナを設けて
もよい。図11(A-1)は、上記一対の面の一方側方向から見た外観図であり、図11
(A-2)は、上記一対の面の他方側方向から見た外観図である。なお、図10(A)及
図10(B)に示す二次電池と同じ部分については、図10(A)及び図10(B)に
示す二次電池の説明を適宜援用できる。
【0228】
図11(A-1)に示すように、二次電池913の一対の面の一方に層916を挟んで
アンテナ914が設けられ、図11(A-2)に示すように、二次電池913の一対の面
の他方に層917を挟んでアンテナ915が設けられる。層917は、例えば二次電池9
13による電磁界を遮蔽することができる機能を有する。層917としては、例えば磁性
体を用いることができる。
【0229】
上記構造にすることにより、アンテナ914及びアンテナ918の両方のサイズを大き
くすることができる。アンテナ918は、例えば、外部機器とのデータ通信を行うことが
できる機能を有する。アンテナ918には、例えばアンテナ914に適用可能な形状のア
ンテナを適用することができる。アンテナ918を介した二次電池と他の機器との通信方
式としては、NFCなど、二次電池と他の機器との間で用いることができる応答方式など
を適用することができる。
【0230】
又は、図11(B-1)に示すように、図10(A)及び図10(B)に示す二次電池
913に表示装置920を設けてもよい。表示装置920は、端子911に電気的に接続
される。なお、表示装置920が設けられる部分にラベル910を設けなくてもよい。な
お、図10(A)及び図10(B)に示す二次電池と同じ部分については、図10(A)
及び図10(B)に示す二次電池の説明を適宜援用できる。
【0231】
表示装置920には、例えば充電中であるか否かを示す画像、蓄電量を示す画像などを
表示してもよい。表示装置920としては、例えば電子ペーパー、液晶表示装置、エレク
トロルミネセンス(ELともいう)表示装置などを用いることができる。例えば、電子ペ
ーパーを用いることにより表示装置920の消費電力を低減することができる。
【0232】
又は、図11(B-2)に示すように、図10(A)及び図10(B)に示す二次電池
913にセンサ921を設けてもよい。センサ921は、端子922を介して端子911
に電気的に接続される。なお、図10(A)及び図10(B)に示す二次電池と同じ部分
については、図10(A)及び図10(B)に示す二次電池の説明を適宜援用できる。
【0233】
センサ921としては、例えば、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、
光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、
流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定することができる機能を有すればよ
い。センサ921を設けることにより、例えば、二次電池が置かれている環境を示すデー
タ(温度など)を検出し、回路912内のメモリに記憶しておくこともできる。
【0234】
さらに、二次電池913の構造例について図12及び図13を用いて説明する。
【0235】
図12(A)に示す二次電池913は、筐体930の内部に端子951と端子952が
設けられた捲回体950を有する。捲回体950は、筐体930の内部で電解液に含浸さ
れる。端子952は、筐体930に接し、端子951は、絶縁材などを用いることにより
筐体930に接していない。なお、図12(A)では、便宜のため、筐体930を分離し
て図示しているが、実際は、捲回体950が筐体930に覆われ、端子951及び端子9
52が筐体930の外に延在している。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニ
ウムなど)又は樹脂材料を用いることができる。
【0236】
なお、図12(B)に示すように、図12(A)に示す筐体930を複数の材料によっ
て形成してもよい。例えば、図12(B)に示す二次電池913は、筐体930aと筐体
930bが貼り合わされており、筐体930a及び筐体930bで囲まれた領域に捲回体
950が設けられている。
【0237】
筐体930aとしては、有機樹脂など、絶縁材料を用いることができる。特に、アンテ
ナが形成される面に有機樹脂などの材料を用いることにより、二次電池913による電界
の遮蔽を抑制できる。なお、筐体930aによる電界の遮蔽が小さければ、筐体930a
の内部にアンテナ914やアンテナ915などのアンテナを設けてもよい。筐体930b
としては、例えば金属材料を用いることができる。
【0238】
さらに、捲回体950の構造について図13に示す。捲回体950は、負極931と、
正極932と、セパレータ933と、を有する。捲回体950は、セパレータ933を挟
んで負極931と、正極932が重なり合って積層され、該積層シートを捲回させた捲回
体である。なお、負極931と、正極932と、セパレータ933と、の積層を、さらに
複数重ねてもよい。
【0239】
負極931は、端子951及び端子952の一方を介して図10に示す端子911に接
続される。正極932は、端子951及び端子952の他方を介して図10に示す端子9
11に接続される。
【0240】
正極932に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイク
ル特性に優れた二次電池913とすることができる。
【0241】
[ラミネート型二次電池]
次に、ラミネート型の二次電池の例について、図14乃至図20を参照して説明する。
ラミネート型の二次電池は、可撓性を有する構成とすれば、可撓性を有する部位を少なく
とも一部有する電子機器に実装すれば、電子機器の変形に合わせて二次電池も曲げること
もできる。
【0242】
図14を用いて、ラミネート型の二次電池980について説明する。ラミネート型の二
次電池980は、図14(A)に示す捲回体993を有する。捲回体993は、負極99
4と、正極995と、セパレータ996と、を有する。捲回体993は、図13で説明し
た捲回体950と同様に、セパレータ996を挟んで負極994と、正極995とが重な
り合って積層され、該積層シートを捲回したものである。
【0243】
なお、負極994、正極995およびセパレータ996からなる積層の積層数は、必要
な容量と素子体積に応じて適宜設計すればよい。負極994はリード電極997およびリ
ード電極998の一方を介して負極集電体(図示せず)に接続され、正極995はリード
電極997およびリード電極998の他方を介して正極集電体(図示せず)に接続される
【0244】
図14(B)に示すように、外装体となるフィルム981と、凹部を有するフィルム9
82とを熱圧着などにより貼り合わせて形成される空間に上述した捲回体993を収納す
ることで、図14(C)に示すように二次電池980を作製することができる。捲回体9
93は、リード電極997およびリード電極998を有し、フィルム981と、凹部を有
するフィルム982との内部で電解液に含浸される。
【0245】
フィルム981と、凹部を有するフィルム982は、例えばアルミニウムなどの金属材
料や樹脂材料を用いることができる。フィルム981および凹部を有するフィルム982
の材料として樹脂材料を用いれば、外部から力が加わったときにフィルム981と、凹部
を有するフィルム982を変形させることができ、可撓性を有する蓄電池を作製すること
ができる。
【0246】
また、図14(B)および図14(C)では2枚のフィルムを用いる例を示しているが
、1枚のフィルムを折り曲げることによって空間を形成し、その空間に上述した捲回体9
93を収納してもよい。
【0247】
正極995に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイク
ル特性に優れた二次電池980とすることができる。
【0248】
また図14では外装体となるフィルムにより形成された空間に捲回体を有する二次電池
980の例について説明したが、たとえば図15のように、外装体となるフィルムにより
形成された空間に、短冊状の複数の正極、セパレータおよび負極を有する二次電池として
もよい。
【0249】
図15(A)に示すラミネート型の二次電池500は、正極集電体501および正極活
物質層502を有する正極503と、負極集電体504および負極活物質層505を有す
る負極506と、セパレータ507と、電解液508と、外装体509と、を有する。外
装体509内に設けられた正極503と負極506との間にセパレータ507が設置され
ている。また、外装体509内は、電解液508で満たされている。電解液508には、
実施の形態2で示した電解液を用いることができる。
【0250】
図15(A)に示すラミネート型の二次電池500において、正極集電体501および
負極集電体504は、外部との電気的接触を得る端子の役割も兼ねている。そのため、正
極集電体501および負極集電体504の一部は、外装体509から外側に露出するよう
に配置してもよい。また、正極集電体501および負極集電体504を、外装体509か
ら外側に露出させず、リード電極を用いてそのリード電極と正極集電体501、或いは負
極集電体504と超音波接合させてリード電極を外側に露出するようにしてもよい。
【0251】
ラミネート型の二次電池500において、外装体509には、例えばポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリカーボネート、アイオノマー、ポリアミド等の材料からなる膜上に、
アルミニウム、ステンレス、銅、ニッケル等の可撓性に優れた金属薄膜を設け、さらに該
金属薄膜上に外装体の外面としてポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等の絶縁性合成
樹脂膜を設けた三層構造のラミネートフィルムを用いることができる。
【0252】
また、ラミネート型の二次電池500の断面構造の一例を図15(B)に示す。図15
(A)では簡略のため、2つの集電体で構成する例を示しているが、実際は、複数の電極
層で構成する。
【0253】
図16(B)では、一例として、電極層数を16としている。なお、電極層数を16と
しても二次電池500は、可撓性を有する。図15(B)では負極集電体504が8層と
、正極集電体501が8層の合計16層の構造を示している。なお、図15(B)は負極
の取り出し部の断面を示しており、8層の負極集電体504を超音波接合させている。勿
論、電極層数は16に限定されず、多くてもよいし、少なくてもよい。電極層数が多い場
合には、より多くの容量を有する二次電池とすることができる。また、電極層数が少ない
場合には、薄型化でき、可撓性に優れた二次電池とすることができる。
【0254】
ここで、ラミネート型の二次電池500の外観図の一例を図16及び図17に示す。図
16及び図17は、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、正極リ
ード電極510及び負極リード電極511を有する。
【0255】
図18(A)は正極503及び負極506の外観図を示す。正極503は正極集電体5
01を有し、正極活物質層502は正極集電体501の表面に形成されている。また、正
極503は正極集電体501が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負
極506は負極集電体504を有し、負極活物質層505は負極集電体504の表面に形
成されている。また、負極506は負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ
領域を有する。正極及び負極が有するタブ領域の面積や形状は、図18(A)に示す例に
限られない。
【0256】
[ラミネート型二次電池の作製方法]
ここで、図16に外観図を示すラミネート型二次電池の作製方法の一例について、図1
8(B)、(C)を用いて説明する。
【0257】
まず、負極506、セパレータ507及び正極503を積層する。図18(B)に積層
された負極506、セパレータ507及び正極503を示す。ここでは負極を5組、正極
を4組使用する例を示す。次に、正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタ
ブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接等を用いれ
ばよい。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極
リード電極511の接合を行う。
【0258】
次に外装体509上に、負極506、セパレータ507及び正極503を配置する。
【0259】
次に、図18(C)に示すように、外装体509を破線で示した部分で折り曲げる。そ
の後、外装体509の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着等を用いればよい。この
時、後に電解液508を入れることができるように、外装体509の一部(または一辺)
に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
【0260】
次に、外装体509に設けられた導入口から、電解液508を外装体509の内側へ導
入する。電解液508の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性雰囲気下で行うことが好ま
しい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、ラミネート型の二次電池であ
る二次電池500を作製することができる。
【0261】
正極503に、先の実施の形態で説明した正極活物質を用いることで、高容量でサイク
ル特性に優れた二次電池500とすることができる。
【0262】
[曲げることのできる二次電池]
次に、曲げることのできる二次電池の例について図19および図20を参照して説明す
る。
【0263】
図19(A)に、曲げることのできる二次電池500の上面概略図を示す。図19(B
1)、(B2)、(C)にはそれぞれ、図19(A)中の切断線C1-C2、切断線C3
-C4、切断線A1-A2における断面概略図である。電池50は、外装体51と、外装
体51の内部に収容された正極11aおよび負極11bを有する。正極11aと電気的に
接続されたリード12a、および負極11bと電気的に接続されたリード12bは、外装
体51の外側に延在している。また外装体51で囲まれた領域には、正極11aおよび負
極11bに加えて電解液(図示しない)が封入されている。
【0264】
電池50が有する正極11aおよび負極11bについて、図20を用いて説明する。図
20(A)は、正極11a、負極11bおよびセパレータ14の積層順を説明する斜視図
である。図20(B)は正極11aおよび負極11bに加えて、リード12aおよびリー
ド12bを示す斜視図である。
【0265】
図20(A)に示すように、電池50は、複数の短冊状の正極11a、複数の短冊状の
負極11bおよび複数のセパレータ14を有する。正極11aおよび負極11bはそれぞ
れ突出したタブ部分と、タブ以外の部分を有する。正極11aの一方の面のタブ以外の部
分に正極活物質層が形成され、負極11bの一方の面のタブ以外の部分に負極活物質層が
形成される。
【0266】
正極11aの正極活物質層の形成されていない面同士、および負極11bの負極活物質
の形成されていない面同士が接するように、正極11aおよび負極11bは積層される。
【0267】
また、正極11aの正極活物質が形成された面と、負極11bの負極活物質が形成され
た面の間にはセパレータ14が設けられる。図20では見やすくするためセパレータ14
を点線で示す。
【0268】
また図20(B)に示すように、複数の正極11aとリード12aは、接合部15aに
おいて電気的に接続される。また複数の負極11bとリード12bは、接合部15bにお
いて電気的に接続される。
【0269】
次に、外装体51について図19(B1)、(B2)、(C)、(D)を用いて説明す
る。
【0270】
外装体51は、フィルム状の形状を有し、正極11aおよび負極11bを挟むように2
つに折り曲げられている。外装体51は、折り曲げ部61と、一対のシール部62と、シ
ール部63と、を有する。一対のシール部62は、正極11aおよび負極11bを挟んで
設けられ、サイドシールとも呼ぶことができる。また、シール部63は、リード12a及
びリード12bと重なる部分を有し、トップシールとも呼ぶことができる。
【0271】
外装体51は、正極11aおよび負極11bと重なる部分に、稜線71と谷線72が交
互に並んだ波形状を有することが好ましい。また、外装体51のシール部62及びシール
部63は、平坦であることが好ましい。
【0272】
図19(B1)は、稜線71と重なる部分で切断した断面であり、図19(B2)は、
谷線72と重なる部分で切断した断面である。図19(B1)、(B2)は共に、電池5
0及び正極11aおよび負極11bの幅方向の断面に対応する。
【0273】
ここで、正極11aおよび負極11bの幅方向の端部、すなわち正極11aおよび負極
11bの端部と、シール部62との間の距離を距離Laとする。電池50に曲げるなどの
変形を加えたとき、後述するように正極11aおよび負極11bが長さ方向に互いにずれ
るように変形する。その際、距離Laが短すぎると、外装体51と正極11aおよび負極
11bとが強く擦れ、外装体51が破損してしまう場合がある。特に外装体51の金属フ
ィルムが露出すると、当該金属フィルムが電解液により腐食されてしまう恐れがある。し
たがって、距離Laを出来るだけ長く設定することが好ましい。一方で、距離Laを大き
くしすぎると、電池50の体積が増大してしまう。
【0274】
また、積層された正極11aおよび負極11bの合計の厚さが厚いほど、正極11aお
よび負極11bと、シール部62との間の距離Laを大きくすることが好ましい。
【0275】
より具体的には、積層された正極11aおよび負極11bおよび図示しないがセパレー
タ214の合計の厚さを厚さtとしたとき、の合計の厚さを厚さtとしたとき、距離La
は、厚さtの0.8倍以上3.0倍以下、好ましくは0.9倍以上2.5倍以下、より好
ましくは1.0倍以上2.0倍以下であることが好ましい。距離Laをこの範囲とするこ
とで、コンパクトで、且つ曲げに対する信頼性の高い電池を実現できる。
【0276】
また、一対のシール部62の間の距離を距離Lbとしたとき、距離Lbを正極11aお
よび負極11bの幅(ここでは、負極11bの幅Wb)よりも十分大きくすることが好ま
しい。これにより、電池50に繰り返し曲げるなどの変形を加えたときに、正極11aお
よび負極11bと外装体51とが接触しても、正極11aおよび負極11bの一部が幅方
向にずれることができるため、正極11aおよび負極11bと外装体51とが擦れてしま
うことを効果的に防ぐことができる。
【0277】
例えば、一対のシール部62の間の距離Laと、負極11bの幅Wbとの差が、正極1
1aおよび負極11bの厚さtの1.6倍以上6.0倍以下、好ましくは1.8倍以上5
.0倍以下、より好ましくは、2.0倍以上4.0倍以下を満たすことが好ましい。
【0278】
言い換えると、距離Lb、幅Wb、及び厚さtが、下記数式1の関係を満たすことが好
ましい。
【0279】
【数1】
【0280】
ここで、aは、0.8以上3.0以下、好ましくは0.9以上2.5以下、より好まし
くは1.0以上2.0以下を満たす。
【0281】
また、図19(C)はリード12aを含む断面であり、電池50、正極11aおよび負
極11bの長さ方向の断面に対応する。図19(C)に示すように、折り曲げ部61にお
いて、正極11aおよび負極11bの長さ方向の端部と、外装体51との間に空間73を
有することが好ましい。
【0282】
図19(D)に、電池50を曲げたときの断面概略図を示している。図19(D)は、
図19(A)中の切断線B1-B2における断面に相当する。
【0283】
電池50を曲げると、曲げの外側に位置する外装体51の一部は伸び、内側に位置する
他の一部は縮むように変形する。より具体的には、外装体51の外側に位置する部分は、
波の振幅が小さく、且つ波の周期が大きくなるように変形する。一方、外装体51の内側
に位置する部分は、波の振幅が大きく、且つ波の周期が小さくなるように変形する。この
ように、外装体51が変形することにより、曲げに伴って外装体51にかかる応力が緩和
されるため、外装体51を構成する材料自体が伸縮する必要がない。その結果、外装体5
1は破損することなく、小さな力で電池50を曲げることができる。
【0284】
また、図19(D)に示すように、電池50を曲げると、正極11aおよび負極11b
とがそれぞれ相対的にずれる。このとき、複数の積層された正極11aおよび負極11b
は、シール部63側の一端が固定部材17で固定されているため、折り曲げ部61に近い
ほどずれ量が大きくなるように、それぞれずれる。これにより、正極11aおよび負極1
1bにかかる応力が緩和され、正極11aおよび負極11b自体が伸縮する必要がない。
その結果、正極11aおよび負極11bが破損することなく電池50を曲げることができ
る。
【0285】
また、正極11aおよび負極11bと外装体51との間に空間73を有していることに
より、曲げた時内側に位置する正極11aおよび負極11bが、外装体51に接触するこ
となく、相対的にずれることができる。
【0286】
図19および図20で例示した電池50は、繰り返し曲げ伸ばしを行っても、外装体の
破損、正極11aおよび負極11bの破損などが生じにくく、電池特性も劣化しにくい電
池である。電池50が有する正極11aに、先の実施の形態で説明した正極活物質を用い
ることで、さらにサイクル特性に優れた電池とすることができる。
【0287】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を電子機器に実装する例について説
明する。
【0288】
まず実施の形態3の一部で説明した、曲げることのできる二次電池を電子機器に実装す
る例を図21(A)乃至図21(G)に示す。曲げることのできる二次電池を適用した電
子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)
、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォ
トフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情
報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。
【0289】
また、フレキシブルな形状を備える二次電池を、家屋やビルの内壁または外壁や、自動
車の内装または外装の曲面に沿って組み込むことも可能である。
【0290】
図21(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機7400は、筐体740
1に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、
スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機7400は、二
次電池7407を有している。上記の二次電池7407に本発明の一態様の二次電池を用
いることで、軽量で長寿命な携帯電話機を提供できる。
【0291】
図21(B)は、携帯電話機7400を湾曲させた状態を示している。携帯電話機74
00を外部の力により変形させて全体を湾曲させると、その内部に設けられている二次電
池7407も湾曲される。また、その時、曲げられた二次電池7407の状態を図21
C)に示す。二次電池7407は薄型の蓄電池である。二次電池7407は曲げられた状
態で固定されている。なお、二次電池7407は集電体7409と電気的に接続されたリ
ード電極7408を有している。例えば、集電体7409は銅箔であり、一部ガリウムと
合金化させて、集電体7409と接する活物質層との密着性を向上し、二次電池7407
が曲げられた状態での信頼性が高い構成となっている。
【0292】
図21(D)は、バングル型の表示装置の一例を示している。携帯表示装置7100は
、筐体7101、表示部7102、操作ボタン7103、及び二次電池7104を備える
。また、図21(E)に曲げられた二次電池7104の状態を示す。二次電池7104は
曲げられた状態で使用者の腕への装着時に、筐体が変形して二次電池7104の一部また
は全部の曲率が変化する。なお、曲線の任意の点における曲がり具合を相当する円の半径
の値で表したものを曲率半径であり、曲率半径の逆数を曲率と呼ぶ。具体的には、曲率半
径が40mm以上150mm以下の範囲内で筐体または二次電池7104の主表面の一部
または全部が変化する。二次電池7104の主表面における曲率半径が40mm以上15
0mm以下の範囲であれば、高い信頼性を維持できる。上記の二次電池7104に本発明
の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯表示装置を提供できる。
【0293】
図21(F)は、腕時計型の携帯情報端末の一例を示している。携帯情報端末7200
は、筐体7201、表示部7202、バンド7203、バックル7204、操作ボタン7
205、入出力端子7206などを備える。
【0294】
携帯情報端末7200は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、イン
ターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することがで
きる。
【0295】
表示部7202はその表示面が湾曲して設けられ、湾曲した表示面に沿って表示を行う
ことができる。また、表示部7202はタッチセンサを備え、指やスタイラスなどで画面
に触れることで操作することができる。例えば、表示部7202に表示されたアイコン7
207に触れることで、アプリケーションを起動することができる。
【0296】
操作ボタン7205は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オ
フ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を
持たせることができる。例えば、携帯情報端末7200に組み込まれたオペレーティング
システムにより、操作ボタン7205の機能を自由に設定することもできる。
【0297】
また、携帯情報端末7200は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能
である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリー
で通話することもできる。
【0298】
また、携帯情報端末7200は入出力端子7206を備え、他の情報端末とコネクター
を介して直接データのやりとりを行うことができる。また入出力端子7206を介して充
電を行うこともできる。なお、充電動作は入出力端子7206を介さずに無線給電により
行ってもよい。
【0299】
携帯情報端末7200の表示部7202には、本発明の一態様の二次電池を有している
。本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿命な携帯情報端末を提供できる
。例えば、図21(E)に示した二次電池7104を、筐体7201の内部に湾曲した状
態で、またはバンド7203の内部に湾曲可能な状態で組み込むことができる。
【0300】
携帯情報端末7200はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋セ
ンサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサや、タッチセンサ、加圧センサ、加速度セ
ンサ、等が搭載されることが好ましい。
【0301】
図21(G)は、腕章型の表示装置の一例を示している。表示装置7300は、表示部
7304を有し、本発明の一態様の二次電池を有している。また、表示装置7300は、
表示部7304にタッチセンサを備えることもでき、また、携帯情報端末として機能させ
ることもできる。
【0302】
表示部7304はその表示面が湾曲しており、湾曲した表示面に沿って表示を行うこと
ができる。また、表示装置7300は、通信規格された近距離無線通信などにより、表示
状況を変更することができる。
【0303】
また、表示装置7300は入出力端子を備え、他の情報端末とコネクターを介して直接
データのやりとりを行うことができる。また入出力端子を介して充電を行うこともできる
。なお、充電動作は入出力端子を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0304】
表示装置7300が有する二次電池として本発明の一態様の二次電池を用いることで、
軽量で長寿命な表示装置を提供できる。
【0305】
また、先の実施の形態で示したサイクル特性のよい二次電池を電子機器に実装する例を
図21(H)、図22および図23を用いて説明する。
【0306】
日用電子機器に二次電池として本発明の一態様の二次電池を用いることで、軽量で長寿
命な製品を提供できる。例えば、日用電子機器として、電動歯ブラシ、電気シェーバー、
電動美容機器などが挙げられ、それらの製品の二次電池としては、使用者の持ちやすさを
考え、形状をスティック状とし、小型、軽量、且つ、大容量の二次電池が望まれている。
【0307】
図21(H)はタバコ収容喫煙装置(電子タバコ)とも呼ばれる装置の斜視図である。
図21(H)において電子タバコ7500は、加熱素子を含むアトマイザ7501と、ア
トマイザに電力を供給する二次電池7504と、液体供給ボトルやセンサなどを含むカー
トリッジ7502で構成されている。安全性を高めるため、二次電池7504の過充電や
過放電を防ぐ保護回路を二次電池7504に電気的に接続してもよい。図22(H)に示
した二次電池7504は、充電機器と接続できるように外部端子を有している。二次電池
7504は持った場合に先端部分となるため、トータルの長さが短く、且つ、重量が軽い
ことが望ましい。本発明の一態様の二次電池は高容量、良好なサイクル特性を有するため
、長期間に渡って長時間の使用ができる小型であり、且つ、軽量の電子タバコ7500を
提供できる。
【0308】
次に、図22(A)および図22(B)に、2つ折り可能なタブレット型端末の一例を
示す。図22(A)および図22(B)に示すタブレット型端末9600は、筐体963
0a、筐体9630b、筐体9630aと筐体9630bを接続する可動部9640、表
示部9631aと表示部9631bを有する表示部9631、表示モード切り替えスイッ
チ9626、電源スイッチ9627、省電力モード切り替えスイッチ9625、留め具9
629、操作スイッチ9628、を有する。表示部9631には、可撓性を有するパネル
を用いることで、より広い表示部を有するタブレット端末とすることができる。図22
A)は、タブレット型端末9600を開いた状態を示し、図22(B)は、タブレット型
端末9600を閉じた状態を示している。
【0309】
また、タブレット型端末9600は、筐体9630aおよび筐体9630bの内部に蓄
電体9635を有する。蓄電体9635は、可動部9640を通り、筐体9630aと筐
体9630bに渡って設けられている。
【0310】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示さ
れた操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部96
31aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領
域がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部96
31aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部9
631aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表
示画面として用いることができる。
【0311】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一
部をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボー
ド表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれること
で表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0312】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時に
タッチ入力することもできる。
【0313】
また、表示モード切り替えスイッチ9626は、縦表示又は横表示などの表示の向きを
切り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えス
イッチ9625は、タブレット型端末9600に内蔵している光センサで検出される使用
時の外光の光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末
は光センサだけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検
出装置を内蔵させてもよい。
【0314】
また、図22(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示
しているが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表
示の品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネ
ルとしてもよい。
【0315】
図22(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池9
633、DCDCコンバータ9636を含む充放電制御回路9634有する。また、蓄電
体9635として、本発明の一態様に係る蓄電体を用いる。
【0316】
なお、タブレット型端末9600は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630aお
よび筐体9630bを重ね合せるように折りたたむことができる。折りたたむことにより
、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、タブレット型端末9600の
耐久性を高めることができる。また、本発明の一態様の二次電池を用いた蓄電体9635
は高容量、良好なサイクル特性を有するため、長期間に渡って長時間の使用ができるタブ
レット型端末9600を提供できる。
【0317】
また、この他にも図22(A)および図22(B)に示したタブレット型端末は、様々
な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻
などを表示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッ
チ入力機能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有す
ることができる。
【0318】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル
、表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、
筐体9630の片面又は両面に設けることができ、蓄電体9635の充電を効率的に行う
構成とすることができる。なお蓄電体9635としては、リチウムイオン二次電池を用い
ると、小型化を図れる等の利点がある。
【0319】
また、図22(B)に示す充放電制御回路9634の構成、および動作について図22
(C)にブロック図を示し説明する。図22(C)には、太陽電池9633、蓄電体96
35、DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、
表示部9631について示しており、蓄電体9635、DCDCコンバータ9636、コ
ンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、図22(B)に示す充放電制御回路9
634に対応する箇所となる。
【0320】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する
。太陽電池で発電した電力は、蓄電体9635を充電するための電圧となるようDCDC
コンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽電
池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ963
7で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部963
1での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにして蓄電体9635の
充電を行う構成とすればよい。
【0321】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、
圧電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段による蓄
電体9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受信
して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成と
してもよい。
【0322】
図23に、他の電子機器の例を示す。図23において、表示装置8000は、本発明の
一態様に係る二次電池8004を用いた電子機器の一例である。具体的に、表示装置80
00は、TV放送受信用の表示装置に相当し、筐体8001、表示部8002、スピーカ
部8003、二次電池8004等を有する。本発明の一態様に係る二次電池8004は、
筐体8001の内部に設けられている。表示装置8000は、商用電源から電力の供給を
受けることもできるし、二次電池8004に蓄積された電力を用いることもできる。よっ
て、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係
る二次電池8004を無停電電源として用いることで、表示装置8000の利用が可能と
なる。
【0323】
表示部8002には、液晶表示装置、有機EL素子などの発光素子を各画素に備えた発
光装置、電気泳動表示装置、DMD(Digital Micromirror Dev
ice)、PDP(Plasma Display Panel)、FED(Field
Emission Display)などの、半導体表示装置を用いることができる。
【0324】
なお、表示装置には、TV放送受信用の他、パーソナルコンピュータ用、広告表示用な
ど、全ての情報表示用表示装置が含まれる。
【0325】
図23において、据え付け型の照明装置8100は、本発明の一態様に係る二次電池8
103を用いた電子機器の一例である。具体的に、照明装置8100は、筐体8101、
光源8102、二次電池8103等を有する。図23では、二次電池8103が、筐体8
101及び光源8102が据え付けられた天井8104の内部に設けられている場合を例
示しているが、二次電池8103は、筐体8101の内部に設けられていても良い。照明
装置8100は、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8103に
蓄積された電力を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給
が受けられない時でも、本発明の一態様に係る二次電池8103を無停電電源として用い
ることで、照明装置8100の利用が可能となる。
【0326】
なお、図23では天井8104に設けられた据え付け型の照明装置8100を例示して
いるが、本発明の一態様に係る二次電池は、天井8104以外、例えば側壁8105、床
8106、窓8107等に設けられた据え付け型の照明装置に用いることもできるし、卓
上型の照明装置などに用いることもできる。
【0327】
また、光源8102には、電力を利用して人工的に光を得る人工光源を用いることがで
きる。具体的には、白熱電球、蛍光灯などの放電ランプ、LEDや有機EL素子などの発
光素子が、上記人工光源の一例として挙げられる。
【0328】
図23において、室内機8200及び室外機8204を有するエアコンディショナーは
、本発明の一態様に係る二次電池8203を用いた電子機器の一例である。具体的に、室
内機8200は、筐体8201、送風口8202、二次電池8203等を有する。図23
では、二次電池8203が、室内機8200に設けられている場合を例示しているが、二
次電池8203は室外機8204に設けられていても良い。或いは、室内機8200と室
外機8204の両方に、二次電池8203が設けられていても良い。エアコンディショナ
ーは、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8203に蓄積された
電力を用いることもできる。特に、室内機8200と室外機8204の両方に二次電池8
203が設けられている場合、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない時
でも、本発明の一態様に係る二次電池8203を無停電電源として用いることで、エアコ
ンディショナーの利用が可能となる。
【0329】
なお、図23では、室内機と室外機で構成されるセパレート型のエアコンディショナー
を例示しているが、室内機の機能と室外機の機能とを1つの筐体に有する一体型のエアコ
ンディショナーに、本発明の一態様に係る二次電池を用いることもできる。
【0330】
図23において、電気冷凍冷蔵庫8300は、本発明の一態様に係る二次電池8304
を用いた電子機器の一例である。具体的に、電気冷凍冷蔵庫8300は、筐体8301、
冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303、二次電池8304等を有する。図23では、
二次電池8304が、筐体8301の内部に設けられている。電気冷凍冷蔵庫8300は
、商用電源から電力の供給を受けることもできるし、二次電池8304に蓄積された電力
を用いることもできる。よって、停電などにより商用電源から電力の供給が受けられない
時でも、本発明の一態様に係る二次電池8304を無停電電源として用いることで、電気
冷凍冷蔵庫8300の利用が可能となる。
【0331】
なお、上述した電子機器のうち、電子レンジ等の高周波加熱装置、電気炊飯器などの電
子機器は、短時間で高い電力を必要とする。よって、商用電源では賄いきれない電力を補
助するための補助電源として、本発明の一態様に係る二次電池を用いることで、電子機器
の使用時に商用電源のブレーカーが落ちるのを防ぐことができる。
【0332】
また、電子機器が使用されない時間帯、特に、商用電源の供給元が供給可能な総電力量
のうち、実際に使用される電力量の割合(電力使用率と呼ぶ)が低い時間帯において、二
次電池に電力を蓄えておくことで、上記時間帯以外において電力使用率が高まるのを抑え
ることができる。例えば、電気冷凍冷蔵庫8300の場合、気温が低く、冷蔵室用扉83
02、冷凍室用扉8303の開閉が行われない夜間において、二次電池8304に電力を
蓄える。そして、気温が高くなり、冷蔵室用扉8302、冷凍室用扉8303の開閉が行
われる昼間において、二次電池8304を補助電源として用いることで、昼間の電力使用
率を低く抑えることができる。
【0333】
本発明の一態様により、二次電池のサイクル特性が良好となり、信頼性を向上させるこ
とができる。また、本発明の一態様によれば、高容量の二次電池とすることができ、よっ
て、二次電池の特性を向上することができ、よって、二次電池自体を小型軽量化すること
ができる。そのため本発明の一態様である二次電池を、本実施の形態で説明した電子機器
に搭載することで、より長寿命で、より軽量な電子機器とすることができる。本実施の形
態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0334】
(実施の形態6)
本実施の形態では、車両に本発明の一態様である二次電池を搭載する例を示す。
【0335】
二次電池を車両に搭載すると、ハイブリッド車(HEV)、電気自動車(EV)、又は
プラグインハイブリッド車(PHEV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現でき
る。
【0336】
図24において、本発明の一態様である二次電池を用いた車両を例示する。図24(A
)に示す自動車8400は、走行のための動力源として電気モーターを用いる電気自動車
である。または、走行のための動力源として電気モーターとエンジンを適宜選択して用い
ることが可能なハイブリッド自動車である。本発明の一態様を用いることで、航続距離の
長い車両を実現することができる。また、自動車8400は二次電池を有する。二次電池
は、車内の床部分に対して、図7(C)および図7(D)に示した二次電池のモジュール
を並べて使用すればよい。また、図12に示す二次電池を複数組み合わせた電池パックを
車内の床部分に対して設置してもよい。二次電池は電気モーター8406を駆動するだけ
でなく、ヘッドライト8401やルームライト(図示せず)などの発光装置に電力を供給
することができる。
【0337】
また、二次電池は、自動車8400が有するスピードメーター、タコメーターなどの表
示装置に電力を供給することができる。また、二次電池は、自動車8400が有するナビ
ゲーションシステムなどの半導体装置に電力を供給することができる。
【0338】
図24(B)に示す自動車8500は、自動車8500が有する二次電池にプラグイン
方式や非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することがで
きる。図24(B)に、地上設置型の充電装置8021から自動車8500に搭載された
二次電池8024に、ケーブル8022を介して充電を行っている状態を示す。充電に際
しては、充電方法やコネクターの規格等はCHAdeMO(登録商標)やコンボ等の所定
の方式で適宜行えばよい。充電装置8021は、商用施設に設けられた充電ステーション
でもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部から
の電力供給により自動車8500に搭載された二次電池8024を充電することができる
。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行
うことができる。
【0339】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供
給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路や外壁に送電装置を
組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給
電の方式を利用して、車両どうしで電力の送受信を行ってもよい。さらに、車両の外装部
に太陽電池を設け、停車時や走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触
での電力の供給には、電磁誘導方式や磁界共鳴方式を用いることができる。
【0340】
また、図24(C)は、本発明の一態様の二次電池を用いた二輪車の一例である。図2
4(C)に示すスクータ8600は、二次電池8602、サイドミラー8601、方向指
示灯8603を備える。二次電池8602は、方向指示灯8603に電気を供給すること
ができる。
【0341】
また、図24(C)に示すスクータ8600は、座席下収納8604に、二次電池86
02を収納することができる。二次電池8602は、座席下収納8604が小型であって
も、座席下収納8604に収納することができる。二次電池8602は、取り外し可能と
なっており、充電時には二次電池8602を屋内に持って運び、充電し、走行する前に収
納すればよい。
【0342】
本発明の一態様によれば、二次電池のサイクル特性が良好となり、二次電池の容量を大
きくすることができる。よって、二次電池自体を小型軽量化することができる。二次電池
自体を小型軽量化できれば、車両の軽量化に寄与するため、航続距離を向上させることが
できる。また、車両に搭載した二次電池を車両以外の電力供給源として用いることもでき
る。この場合、例えば電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避することができ
る。電力需要のピーク時に商用電源を用いることを回避できれば、省エネルギー、および
二酸化炭素の排出の削減に寄与することができる。また、サイクル特性が良好であれば二
次電池を長期に渡って使用できるため、コバルトをはじめとする希少金属の使用量を減ら
すことができる。
【0343】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例0344】
本実施例では、本発明の一態様である正極活物質と、比較例の正極活物質を作製し、X
RDを用いて特徴を分析した。また、高電圧充電におけるサイクル特性を評価した。
【0345】
[正極活物質の作製]
≪Sample1≫
Sample1では、実施の形態1の図2に示した作製方法で、遷移金属としてコバル
トを有する正極活物質を作製した。まずLiFとMgFのモル比が、LiF:MgF
=1:3となるよう秤量し、溶媒としてアセトンを加えて湿式で混合および粉砕をした。
混合および粉砕はジルコニアボールを用いたボールミルで行い、150rpm、1時間行
った。処理後の材料を回収し、第1の混合物とした。
【0346】
Sample1では、あらかじめ合成された複合酸化物として、豊島製作所製ニッケル
-マンガン-コバルト酸リチウムを用いた。ニッケル-マンガン-コバルト酸リチウムは
、平均粒径(D50)が12μm程度のニッケル-マンガン-コバルト酸リチウムである
。該ニッケル-マンガン-コバルト酸リチウムをSEM-EDXを用いて測定したところ
、ニッケル、マンガンおよびコバルトの原子数比はニッケル:マンガン:コバルト=1:
1.8:1.2であった。なお、原子数比は、測定点合計5点の平均値を算出した。
【0347】
次に、ニッケル-マンガン-コバルト酸リチウムの分子量に対して、第1の混合物が有
するマグネシウムの原子量が0.5原子%となるよう秤量し、乾式で混合した。混合はジ
ルコニアボールを用いたボールミルで行い、150rpm、1時間行った。処理後の材料
を回収し、第2の混合物とした。
【0348】
次に、第2の混合物をアルミナ坩堝に入れ、酸素雰囲気のマッフル炉にて700℃、6
0時間アニールした。酸素の流量は10L/minとした。昇温は200℃/hrとし、
降温は10時間以上かけて行った。加熱処理後の材料を、Sample1の正極活物質と
した。
【0349】
≪Sample2≫
Sample2では、ニッケル-マンガン-コバルト酸リチウムを第1の混合物と混合
せず、アニールのみを行った。アニール条件はSample1と同様とした。
【0350】
≪Sample3≫
特に処理を行わないニッケル-マンガン-コバルト酸リチウムを、Sample3(比
較例)とした。
【0351】
[二次電池の作製]
次に、上記で作製したSample1乃至Sample3を用いて、CR2032タイ
プ(直径20mm高さ3.2mm)のコイン型の二次電池を作製した。
【0352】
正極には、上記で作製した正極活物質と、アセチレンブラック(AB)と、ポリフッ化
ビニリデン(PVDF)を、活物質:AB:PVDF=95:3:2(重量比)で混合し
たスラリーを集電体に塗工したものを用いた。
【0353】
対極にはリチウム金属を用いた。
【0354】
電解液が有する電解質には、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を
用い、電解液には、エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)が
EC:DEC=3:7(体積比)、ビニレンカーボネート(VC)が2wt%で混合され
たものを用いた。
【0355】
セパレータには厚さ25μmのポリプロピレンを用いた。
【0356】
正極缶及び負極缶には、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いた。
【0357】
Sample1乃至Sample3を用いた二次電池の正極には、210kNで加圧し
たものを用いた。
【0358】
[充電前のXRDから格子定数を算出]
Sample1およびSample3を用いた充電前の正極について、CuKα1線に
よる粉末XRD分析を行った。XRDは大気中で測定し、電極は平坦性を保つためにガラ
ス板に張り付けた。XRD装置は粉末サンプル用のセッティングとしたが、サンプルの高
さは装置の要求する測定面に合わせた。
【0359】
得られたXRDパターンを図25(A)に示す。得られたXRDパターンは、DIFF
RAC.EVA(Bruker社製XRDデータ解析ソフト)を用いて、バックグラウン
ド除去とKα2除去を行った。これにより、導電助剤およびバインダの炭素、および密閉
容器等に由来するシグナルも除去されている。
【0360】
[初回充電(1st充電)後のXRD]
Sample1およびSample3を用いた二次電池を、4.6VでCCCV充電し
た。具体的には4.6Vを上限として0.5Cで定電流充電した後、電流値が0.01C
となるまで定電圧充電した。1Cは正極活物質あたりの電流値で137mA/gとした。
そして充電状態の二次電池をアルゴン雰囲気のグローブボックス内で解体して正極を取り
出し、DMC(ジメチルカーボネート)で洗浄して電解液を取り除いた。そしてアルゴン
雰囲気の密閉容器に封入し、XRD解析を行った。
【0361】
図25(B)に、Sample1およびSample3を用いた二次電池を4.6Vで
充電した後の正極のXRDパターンを示す。また、図25(B)において、2θ=18.
5°近傍を拡大した図を図26(A)に、2θ=37.0°近傍を拡大した図を図26
B)に、2θ=37.0°近傍を拡大した図を図27(A)に、それぞれ示す。2θ=1
8.5°近傍のピークと、2θ=45.0°近傍のピークは、ともにブロードなピークで
あった。先に述べた通り、18.5°近傍のピークと45.0°近傍のピークは、37.
0°近傍のピークに比べて、c軸の伸縮の影響を受けやすいと考えられる。これらのピー
クが充電によりブロードに変化したことから、c軸の伸縮が示唆される。また例えば図2
7(A)に示すスペクトルは、二つのピークへの分離が示唆される。よって、Sampl
e1およびSample3は、二つの相を有する可能性が示唆される。
【0362】
[初回放電(1st放電)後のXRD]
Sample1およびSample3を用いた二次電池を4.6VでCCCV充電した
後、2.5VでCC放電した。具体的には4.6Vを上限として0.5Cで定電流充電し
た後、電流値が0.01Cとなるまで定電圧充電し、その後、2.5Vを下限として0.
5Cで定電流放電した。1Cは正極活物質あたりの電流値で137mA/gとした。そし
て充電状態の二次電池をアルゴン雰囲気のグローブボックス内で解体して正極を取り出し
、DMC(ジメチルカーボネート)で洗浄して電解液を取り除いた。そしてアルゴン雰囲
気の密閉容器に封入し、XRD解析を行った。
【0363】
図27(B)に、Sample1およびSample3を用いた二次電池を4.6Vで
充電した後の正極のXRDパターンを示す。また、図28には充電および放電のカーブを
示す。
【0364】
[二回目充電(2nd充電)後のXRD]
Sample1およびSample3を用いた二次電池を、初回充放電と同じ条件を用
いて、充放電を一回行った後、二回目の充電を行い、XRD解析を行った。
【0365】
測定されたXRDパターンについて、TOPASを用いて格子定数を算出した。このと
き原子位置等の最適化は行わず、格子定数のみをフィッティングした。GOF(good
of fitness)、推定される結晶子サイズ、a軸およびc軸の格子定数、a軸
をc軸で割った値(a/c)、および複数の相を有する場合のそれぞれの割合を表1およ
び表2に示す。表1はSample1の解析結果、表2はSample2の解析結果をそ
れぞれ示す。また、表1および表2に記載されているCRは、一回目放電のa/cを1と
して規格化した。
【0366】
【表1】
【0367】
【表2】
【0368】
表1より、Sample1の初回充電後の第1の相と第2の相のa/cの平均値は0.
1990、CRの平均値は1.0000、二回目充電後の第1の相と第2の相のa/cの
平均値は0.1989、CRの平均値は0.9999であった。表2より、Sample
3の初回充電後の第1の相と第2の相のa/cの平均値は0.1976、CRの平均値は
0.9921、二回目充電後の第1の相と第2の相のa/cの平均値は0.1976、C
Rの平均値は0.9922であった。Sample1の方が、CRの値が1に近い値を示
し、放電後からの歪みの異方性が抑えられることが示唆された。
【0369】
[サイクル特性]
次に、Sample1乃至Sample3を用いた二次電池について、サイクル特性を
評価した結果を図29に示す。
【0370】
充放電は25℃で行った。1Cは正極活物質あたりの電流値で137mA/gとした。
充電条件ははCCCV(0.5C、4.6V、終止電流0.01C)、放電条件はCC(
0.5C、2.5V)として50サイクルの充放電を行った際の、放電容量をを示す。図
29(A)にはサイクル数(Cycle number)に伴う放電容量(Discha
rge Capacity)の推移を、図29(B)にはサイクル数(Cycle nu
mber)に伴う放電容量の容量維持率(Capacity Retention Ra
te)を、それぞれ示す。
【0371】
XRDの解析結果より充電と放電の過程において歪みの異方性が抑えられることが示唆
されたSample3では、サイクルに伴う容量減少が抑えられることがわかった。
【符号の説明】
【0372】
11a 正極
11b 負極
12a リード
12b リード
14 セパレータ
15a 接合部
15b 接合部
17 固定部材
50 電池
51 外装体
61 折り曲げ部
62 シール部
63 シール部
71 稜線
72 谷線
73 空間
100 正極活物質
200 活物質層
201 グラフェン化合物
214 セパレータ
300 二次電池
301 正極缶
302 負極缶
303 ガスケット
304 正極
305 正極集電体
306 正極活物質層
307 負極
308 負極集電体
309 負極活物質層
310 セパレータ
500 二次電池
501 正極集電体
502 正極活物質層
503 正極
504 負極集電体
505 負極活物質層
506 負極
507 セパレータ
508 電解液
509 外装体
510 正極リード電極
511 負極リード電極
600 二次電池
601 正極キャップ
602 電池缶
603 正極端子
604 正極
605 セパレータ
606 負極
607 負極端子
608 絶縁板
609 絶縁板
611 PTC素子
612 安全弁機構
613 導電板
614 導電板
615 モジュール
616 導線
617 温度制御装置
900 回路基板
910 ラベル
911 端子
912 回路
913 二次電池
914 アンテナ
915 アンテナ
916 層
917 層
918 アンテナ
920 表示装置
921 センサ
922 端子
930 筐体
930a 筐体
930b 筐体
931 負極
932 正極
933 セパレータ
950 捲回体
951 端子
952 端子
980 二次電池
981 フィルム
982 フィルム
993 捲回体
994 負極
995 正極
996 セパレータ
997 リード電極
998 リード電極
7100 携帯表示装置
7101 筐体
7102 表示部
7103 操作ボタン
7104 二次電池
7200 携帯情報端末
7201 筐体
7202 表示部
7203 バンド
7204 バックル
7205 操作ボタン
7206 入出力端子
7207 アイコン
7300 表示装置
7304 表示部
7400 携帯電話機
7401 筐体
7402 表示部
7403 操作ボタン
7404 外部接続ポート
7405 スピーカ
7406 マイク
7407 二次電池
7408 リード電極
7409 集電体
7500 電子タバコ
7501 アトマイザ
7502 カートリッジ
7504 二次電池
8000 表示装置
8001 筐体
8002 表示部
8003 スピーカ部
8004 二次電池
8021 充電装置
8022 ケーブル
8024 二次電池
8100 照明装置
8101 筐体
8102 光源
8103 二次電池
8104 天井
8105 側壁
8106 床
8107 窓
8200 室内機
8201 筐体
8202 送風口
8203 二次電池
8204 室外機
8300 電気冷凍冷蔵庫
8301 筐体
8302 冷蔵室用扉
8303 冷凍室用扉
8304 二次電池
8400 自動車
8401 ヘッドライト
8406 電気モーター
8500 自動車
8600 スクータ
8601 サイドミラー
8602 二次電池
8603 方向指示灯
8604 座席下収納
9600 タブレット型端末
9625 スイッチ
9626 スイッチ
9627 電源スイッチ
9628 操作スイッチ
9629 留め具
9630 筐体
9630a 筐体
9630b 筐体
9631 表示部
9631a 表示部
9631b 表示部
9632a 領域
9632b 領域
9633 太陽電池
9634 充放電制御回路
9635 蓄電体
9636 DCDCコンバータ
9637 コンバータ
9638 操作キー
9639 ボタン
9640 可動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29