(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128037
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンの共沸混合物及び共沸混合物様組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20240912BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C09K5/04 F
F25B1/00 396Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024108992
(22)【出願日】2024-07-05
(62)【分割の表示】P 2021539982の分割
【原出願日】2020-01-16
(31)【優先権主張番号】62/793,593
(32)【優先日】2019-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク エル.ロビン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン アール.ジュハス
(72)【発明者】
【氏名】ハリソン ケー.ムシミ
(72)【発明者】
【氏名】ルーク デイビッド シモーニ
(57)【要約】
【課題】HFCは、成層圏オゾンの破壊には寄与しないが、「温室効果」への寄与、即ち、地球温暖化に寄与するので懸念がもたれている。
【解決手段】本発明は、例えば、伝熱用途において有用であり得る、エタノール又はイソプロパノールのいずれかと共に、E-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンを含む、共沸組成物及び共沸混合物様組成物を提供する。冷蔵及び伝熱用途において組成物を使用する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物であって、
i)(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと、
ii)エタノール及びイソプロパノールから選択される化合物と、を含み、
前記エタノール又はイソプロパノールが、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン/エタノール共沸混合物、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン/イソプロパノール共沸混合物、又は(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン/エタノール若しくは(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン/イソプロパノールの共沸混合物様組成物を形成するのに有効な量で、前記組成物中に存在する、組成物。
【請求項2】
前記組成物が、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びエタノールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、共沸混合物組成物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、約60℃~約131℃の温度及び約88psia~約441psiaの圧力で、約79~約97モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約21~約3モルパーセントのエタノールを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、約60℃~約120℃の温度及び約83psia~約365psiaの圧力で、約82~約97モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約18~約3モルパーセントのエタノールを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、約60℃~約120℃の温度及び約83psia~約365psiaの圧力で、約82~約97モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約18~約3モルパーセントのエタノールを含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、共沸混合物様組成物である、請求項2に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、約-40℃~約140℃の温度及び約1.3psia~約507.9psiaの圧力で、約72.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約17.2~約0.1モルパーセントのエタノールを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記組成物が、
約-40℃の温度及び約1.3psia~約1.4psiaの圧力で、約99.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約0.3~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約-20℃の温度で約4.1psia~約4.2psiaの圧力で、約99.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約0.8~約0.1モルパーセントのエタノール、
約0℃の温度及び約10.3psia~約10.7psiaの圧力で、約98.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約1.8~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約20℃の温度及び約22.8psia~約23.5psiaの圧力で、約96.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約3.2~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約29.9℃の温度及び約32.2psia~約33.1psiaの圧力で、約96.0~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約4.0~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約40℃の温度及び約44.5psia~約45.9psiaの圧力で、約94.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約5.2~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約60℃の温度及び約80.7psia~約82.9psiaの圧力で、約92.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約7.8~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約80℃の温度及び約137.1psia~約141.0psiaの圧力で、約88.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約11.4~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約100℃の温度及び約226.8psia~約233.4psiaの圧力で、約84.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約15.6~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約120℃の温度及び約353.2psia~約364.0psiaの圧力で、約78.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約21.6~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約140℃の温度及び約492.9psia~約507.9psiaの圧力で、約72.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約27.2~約0.1モルパーセントのエタノール、を含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びイソプロパノールを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、共沸混合物組成物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、約80℃~約120℃の温度及び約139psia~約350psiaの圧力で、約83~約96モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約17~約4モルパーセントのエタノールを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、約68℃~約108℃の温度及び約103psia~約279psiaの圧力で、約87~約99モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約13~約1モルパーセントのエタノールを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、共沸混合物様組成物である、請求項10に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、約-20℃~約120℃の温度及び約46psia~約330psiaの圧力で、約81.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約18.6~約0.1モルパーセントのエタノールを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、約7.5℃~約7.8℃の温度及び約14.7psiaの圧力で、約98.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約1.6~約0.1モルパーセントのエタノールを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、
約-20℃の温度及び約4.1psia~約4.2psiaの圧力で、約99.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約0.4~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約0℃の温度及び約10.4psia~約10.7psiaの圧力で、約99.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約0.8~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約20℃の温度及び約22.8psia~約23.7psiaの圧力で、約98.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約1.8~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約29.9℃の温度及び約32.1psia~約33.4psiaの圧力で、約97.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約2.4~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約40℃の温度及び約44.4psia~約46.4psiaの圧力で、約96.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約2.4~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約60℃の温度及び約79.4psia~約83.0psiaの圧力で、約94.0~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約6~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約80℃の温度及び約133.9psia~約138.4psiaの圧力で、約90.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約9.6~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約100℃の温度及び約217.9psia~約226.0psiaの圧力で、約85.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約14.2~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約120℃の温度及び約329.6psia~約347.5psiaの圧力で、約78.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約21.4~約0.1モルパーセントのエタノール、を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
冷却を生成するためのプロセスであって、請求項1に記載の組成物を凝縮させることと、その後、冷却される物体の近傍で前記組成物を蒸発させることと、を含む、プロセス。
【請求項19】
加熱を生成するためのプロセスであって、請求項1に記載の組成物を蒸発させることと、その後、加熱される物体の近傍で前記組成物を凝縮させることと、を含む、プロセス。
【請求項20】
請求項1に記載の組成物を含む、空調システム、ヒートポンプシステム、又は冷蔵システム。
【請求項21】
前記システムが、蒸発器、圧縮機、凝縮器、及び膨張装置を備える、請求項20に記載の空調システム、ヒートポンプシステム、又は冷蔵システム。
【請求項22】
前記システムが、向流モード又は向流傾向を有する十字流(cross-current)モードで動作する、1つ以上の熱交換器を備える、請求項20に記載の空調システム、ヒートポンプシステム、又は冷蔵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2019年1月17日出願の米国特許仮出願第62/793,593号の利益を主張するものであり、その開示の全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、例えば、伝熱用途において有用であり得るE-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エンを含む共沸組成物又は共沸混合物様組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
過去数十年間にわたり、多くの産業でオゾン破壊性のクロロフルオロカーボン(ozone depleting chlorofluorocarbon、CFC)類及びヒドロクロロフルオロカーボン(hydrochlorofluorocarbon、HCFC)類に代わる代替物を見つける取り組みがなされてきた。CFC及びHCFCは、エアゾール噴射剤、冷媒、洗浄剤、熱可塑性及び熱硬化性発泡体用の膨張剤、伝熱媒体、気体誘電体、消火剤及び抑火剤、動力サイクル作動流体、重合媒体、微粒子除去流体、キャリア流体、バフ磨き研磨剤、並びに置換乾燥剤としての使用を含む、幅広い用途において使用されてきた。用途の広いこれらの化合物の代替物を探索した結果、多くの産業がヒドロフルオロカーボン(hydrofluorocarbon、HFC)類、ヒドロフルオロオレフィン(hydrofluoroolefin、HFO)類、及びヒドロクロロフルオロオレフィン(hydrochlorofluoroolefin、HCFO)類の使用に切り替えている。HFCは、成層圏オゾンの破壊には寄与しないが、「温室効果」への寄与、即ち、地球温暖化に寄与するので懸念がもたれている。その結果、HFC類は調査の対象となっており、その広く普及した使用も将来的には制限されるおそれがある。HFC類と異なり、多くのHFO類及びHCFO類は大気中で比較的速やかに反応して分解するために温室効果には寄与しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許仮出願第62/793,593号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本出願は、とりわけ、
i)(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと、
ii)エタノール及びイソプロパノールから選択される化合物と、を含み、
エタノール又はイソプロパノールが、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと共沸混合物又は共沸混合物様組成物を形成するのに有効な量で、組成物中に存在する、組成物を提供する。
【0006】
本出願は、冷却を生成するための方法を更に提供し、冷却される物体の近傍で、本明細書で提供される組成物を蒸発させることと、その後、当該組成物を凝縮することと、を含む。
【0007】
本出願は、加熱を生成するための方法を更に提供し、加熱される物体の近傍で、本明細書で提供される組成物を凝縮することと、その後、当該組成物を蒸発させることと、を含む。
【0008】
本出願は、本明細書で提供される組成物を含む伝熱システム又は装置(例えば、冷蔵、空調又はヒートポンプ装置)を更に提供する。
【0009】
特に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する当該技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同一の意味を有する。本発明で使用するための方法及び材料が本明細書に記載されており、また、当該技術分野において既知の他の好適な方法及び材料を使用してもよい。材料、方法、及び実施例は、単なる例証であり、限定することを意図するものではない。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、配列、データベースエントリ、及び他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾が生じた場合には、定義を含め、本明細書が優先される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】29.88℃のE-HFO-1336mzz/エタノールのPx図を示す。実験データは、固体点として提供される。実線は、NRTL式を使用した泡点の予測を示す。破線は、予測された露点を示す。
【
図2】29.99℃のE-HFO-1336mzz/イソプロパノールのPx図を示す。実験データは、固体点として提供される。実線は、NRTL式を使用した泡点の予測を示す。破線は、予測された露点を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
任意の2種の化合物の相対揮発度を判定するために、例えば、PTx法を使用することができる。この手順では、既知の体積のセル内の総絶対圧力を、2種の化合物の種々の組成について一定温度で測定する。PTx法の使用については、「Phase Equilibrium in Process Design」、Wiley-Interscience Publisher、1970年、Harold R.Null著、124~126頁に詳細に記載されており、参照により本明細書に組み込まれる。得られた圧力対液体組成のデータは、代替的に蒸気液体平衡データ(又は「VLEデータ」)とも称される。
【0012】
これらの測定値は、例えば、非ランダム二液(NRTL)式のような活量係数式モデルを使用することによって、PTxセル中の平衡状態の蒸気及び液体の組成に変換して液相非理想系を表すことができる。例えば、NRTL式などの活量係数式の使用については、「The Properties of Gases and Liquids」、第4版、McGraw Hill発行、Reid、Prausnitz、及びPoling著、241~387頁、及び「Phase Equilibria in Chemical Engineering」、Butterworth Publishers発行、1985年、Stanley M.Walas著、165~244頁に詳細に記載されている。VLEデータの収集、回帰法による相互作用パラメータの判定、及び系の非理想的挙動を予測するための状態方程式の使用については、「Double Azeotropy in Binary Mixtures of NH3 and CHF2CF2」 C.-P.Chai Kao,M.E.Paulaitis,A.Yokozeki,Fluid Phase Equilibria、127巻(1997年)191~203頁に教示されている。上記の参考文献の全てが、参照により本明細書に組み込まれる。
【0013】
いかなる理論又は説明にも束縛されることを望むものではないが、NRTL式は、PTxセルデータと併せて、本発明のE-HFO-1336mzz組成物の相対揮発度を十分に予測することができ、したがって、蒸留塔などの多段階式分離装置内におけるこれらの混合物の挙動を予測することができると考えられる。
【0014】
定義及び略語
本明細書で使用される際、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」という用語、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、要素のリストを含むプロセス、方法、物品、又は装置は、これらの要素に必ずしも限定されるものではなく、そのようなプロセス、方法、物品、又は装置に対して明示的に記載されていない、又はこれらに固有のものではない、他の要素も含む場合がある。更に、明示的にこれに反する記載がない限り、「又は」は、包括的な「又は」を指し、排他的な「又は」を指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下、すなわち、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)、並びにA及びBの両方が真である(又は存在する)のいずれか1つにより満たされる。
【0015】
本発明で使用される際、「から本質的になる」は、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、成分、又は要素が、特許請求される発明の基本的及び新規の特徴(複数可)、特に本発明のプロセスのいずれかの所望の結果を達成するための作用機序に実質的に影響を及ぼさないことを条件に、文字どおり開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用される。「から本質的になる(consists essentially of)」又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、「含む」と「からなる」との間の中間の立場をとる。
【0016】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載された要素及び成分を説明するために用いられる。これは、単に便宜上なされるものであり、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0017】
本明細書で使用される際、「約」という用語は、実験誤差による変動(例えば、示された値のプラスマイナス約10%)を考慮することを意味する。本明細書で報告される全ての測定値は、特に明記しない限り、「約」という用語が明示的に使用されているか否かに関わらず、「約」という用語によって修飾されるものと理解される。
【0018】
実質的に定沸点の混合物の2成分共沸組成物又は共沸様組成物を、多くの方法で、選択された条件に応じて特徴付けることができる。例えば、異なる圧力では、所与の共沸組成物又は共沸様組成物の組成は、沸点温度と同様、少なくともある程度変化することが当業者にはよく知られている。それにより、2種類の化合物の共沸組成物又は共沸様組成物は、固有の種類の関係を表し、但し、温度及び/又は圧力に応じて変化する組成を有する。したがって、共沸組成物及び共沸様組成物を定義するために、固定された組成ではなく、組成の範囲が多くの場合に使用される。
【0019】
本明細書で使用される際、「共沸組成物」という用語は、平衡状態にある所定の温度において、(液相の)沸点圧力が(蒸気相の)露点圧力と同じである(すなわち、X2=Y2である)ことを意味するものとして理解される。共沸組成物を特徴付ける方法の1つに、液体の部分的蒸発又は蒸留によって生成された蒸気が、その蒸気が蒸発又は蒸留された液体と同じ組成を有することがある(すなわち、混合物は、組成が変化することなく蒸留/還流される)。定沸点組成物は、同じ成分の非共沸混合物と比較して、最大沸点又は最小沸点を示すことから共沸性として特徴付けられる。共沸組成物は、一定温度における未希釈の各成分の蒸気圧に対して混合物の蒸気圧の最小値又は最大値によっても特徴付けられる。
【0020】
本明細書で使用される際、「共沸様組成物」及び「近共沸組成物」という用語は、特定の温度での組成物の泡点圧力(BP)と露点圧力(DP)との差が、泡点圧力に対して5%以下であるような組成物を意味するものとして理解される(すなわち[(BP-VP)/BP]×100≦5)。本明細書で使用される際、「3%共沸様組成物」及び「3%近共沸組成物」という用語は、特定の温度での組成物の泡点圧力(BP)と露点圧力(DP)との差が、泡点圧力に対して3%以下であるような組成物を意味するものとして理解される(すなわち[(BP-VP)/BP]×100≦3)。
【0021】
本発明の目的において「有効量」とは、組み合わされた場合に共沸組成物又は共沸様組成物を形成する本発明の組成物の各成分の量として定義される。この定義には、各成分の量が含まれ、これらの量は、共沸組成物又は共沸様組成物が異なる圧力において存在し続ける限りにおいて(但し沸点は異なる可能性がある)、組成物に加えられる圧力に応じて変化し得る。したがって、有効量には、本明細書に記載される以外の温度又は圧力で共沸組成物又は共沸様組成物を形成する本発明の組成物の各成分の量(例えば重量%で表され得る)が含まれる。
【0022】
本明細書で使用される際、「モル分率」という用語は、2成分組成物中の2つの成分のそれぞれのモル数の合計に対する当該組成物中の1つの成分のモル数の比を意味するものとして理解される(例えばX2=m2/(m1+m2)。
【0023】
化学物質、略語、及び頭字語
BP:泡立ち点圧力
DP:露点圧力
HFC:ヒドロフルオロカーボン
HCFC:ヒドロクロロフルオロカーボン
HCFO:ヒドロクロロフルオロオレフィン
HFO-1336mzz(E)又は(E)-1336mzz:(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタ-2-エン
VLE:気液平衡
NRTL平衡:非ランダム二液平衡
【0024】
共沸混合物及び共沸混合物様組成物
本出願は、
i)(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと、
ii)エタノール及びイソプロパノールから選択される化合物と、を含み、
エタノール又はイソプロパノールが、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと共沸混合物又は共沸混合物様組成物を形成するのに有効な量で、組成物中に存在する、組成物を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態では、組成物は、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びエタノールを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びエタノールから実質的になる。いくつかの実施形態では、組成物は、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びエタノールからなる。いくつかの実施形態では、組成物は、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、エタノール、及び本明細書に記載の1つ以上の非冷媒成分を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、エタノール、及び本明細書に記載の1つ以上の非冷媒成分からなる。
【0026】
いくつかの実施形態では、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びエタノールを含む組成物は、共沸混合物組成物(すなわち、共沸組成物)である。いくつかの実施形態では、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びエタノールを含む組成物は、共沸混合物様組成物である。
【0027】
いくつかの実施形態では、組成物は、約60℃~約131℃の温度及び約88psia~約441psiaの圧力で、約79~約97モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約21~約3モルパーセントのエタノールを含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、組成物は、約60℃~約120℃の温度及び約83psia~約365psiaの圧力で、約82~約97モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約18~約3モルパーセントのエタノールを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、組成物は、約60℃~約120℃の温度及び約83psia~約365psiaの圧力で、約82~約97モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約18~約3モルパーセントのエタノールを含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、組成物は、約-40℃~約140℃の温度及び約1.3psia~約507.9psiaの圧力で、約72.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約17.2~約0.1モルパーセントのエタノールを含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、組成物は、
約-40℃の温度及び約1.3psia~約1.4psiaの圧力で、約99.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約0.3~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約-20℃の温度で約4.1psia~約4.2psiaの圧力で、約99.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約0.8~約0.1モルパーセントのエタノール、
約0℃の温度及び約10.3psia~約10.7psiaの圧力で、約98.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約1.8~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約20℃の温度及び約22.8psia~約23.5psiaの圧力で、約96.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約3.2~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約29.9℃の温度及び約32.2psia~約33.1psiaの圧力で、約96.0~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約4.0~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約40℃の温度及び約44.5psia~約45.9psiaの圧力で、約94.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約5.2~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約60℃の温度及び約80.7psia~約82.9psiaの圧力で、約92.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約7.8~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約80℃の温度及び約137.1psia~約141.0psiaの圧力で、約88.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約11.4~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約100℃の温度及び約226.8psia~約233.4psiaの圧力で、約84.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約15.6~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約120℃の温度及び約353.2psia~約364.0psiaの圧力で、約78.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約21.6~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約140℃の温度及び約492.9psia~約507.9psiaの圧力で、約72.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約27.2~約0.1モルパーセントのエタノール、を含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、組成物は、表2に提供される組成物の群から選択される。いくつかの実施形態では、組成物は、表2に提供される組成物であり、温度及び共沸混合物の圧力は表2に示すとおりである。
【0033】
いくつかの実施形態では、組成物は、表3に提供される組成物の群から選択される。いくつかの実施形態では、組成物は、表3に提供される組成物であり、圧力及び共沸混合物の温度は表3に示すとおりである。
【0034】
いくつかの実施形態では、組成物は、表4に提供される組成物の群から選択される。いくつかの実施形態では、組成物は、表4に提供される組成物であり、温度、沸点圧力、及び露点圧力は、表4に示すとおりである。
【0035】
いくつかの実施形態では、組成物は、表5に提供される組成物の群から選択される。いくつかの実施形態では、組成物は、表5に提供される組成物であり、温度、沸点圧力、及び露点圧力は、表5に示すとおりである。
【0036】
いくつかの実施形態では、組成物は、表6に提供される組成物の群から選択される。いくつかの実施形態では、組成物は、表6に提供される組成物であり、温度は表6に示すとおりである。
【0037】
いくつかの実施形態では、組成物は、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びイソプロパノールを含む。いくつかの実施形態では、組成物は、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びイソプロパノールから実質的になる。いくつかの実施形態では、組成物は、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びイソプロパノールからなる。いくつかの実施形態では、組成物は、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、イソプロパノール、及び本明細書に記載の1つ以上の非冷媒成分を含む。いくつかの実施形態では、組成物は、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、イソプロパノール、及び本明細書に記載の1つ以上の非冷媒成分からなる。
【0038】
いくつかの実施形態では、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びイソプロパノールを含む組成物は、共沸混合物組成物(すなわち、共沸組成物)である。いくつかの実施形態では、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びイソプロパノールを含む組成物は、共沸混合物様組成物である。
【0039】
いくつかの実施形態では、組成物は、約80℃~約120℃の温度及び約139psia~約350psiaの圧力で、約83~約96モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約17~約4モルパーセントのエタノールを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、組成物は、約68℃~約108℃の温度及び約103psia~約279psiaの圧力で、約87~約99モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約13~約1モルパーセントのエタノールを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、組成物は、約-20℃~約120℃の温度及び約46psia~約330psiaの圧力で、約81.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約18.6~約0.1モルパーセントのエタノールを含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、組成物は、約7.5℃~約7.8℃の温度及び約14.7psiaの圧力で、約98.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約1.6~約0.1モルパーセントのエタノールを含む。
【0043】
いくつかの実施形態では、組成物は、
約-20℃の温度で約4.1psia~約4.2psiaの圧力で、約99.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約0.4~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約0℃の温度及び約10.4psia~約10.7psiaの圧力で、約99.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約0.8~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約20℃の温度及び約22.8psia~約23.7psiaの圧力で、約98.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約1.8~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約29.9℃の温度及び約32.1psia~約33.4psiaの圧力で、約97.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約2.4~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約40℃の温度及び約44.4psia~約46.4psiaの圧力で、約96.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約2.4~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約60℃の温度及び約79.4psia~約83.0psiaの圧力で、約94.0~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約6~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約80℃の温度及び約133.9psia~約138.4psiaの圧力で、約90.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約9.6~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約100℃の温度及び約217.9psia~約226.0psiaの圧力で、約85.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約14.2~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約120℃の温度及び約329.6psia~約347.5psiaの圧力で、約78.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約21.4~約0.1モルパーセントのエタノール、を含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、組成物は、表8に提供される組成物の群から選択される。いくつかの実施形態では、組成物は、表8に提供される組成物であり、温度及び共沸混合物の圧力は表8に示すとおりである。
【0045】
いくつかの実施形態では、組成物は、表9に提供される組成物の群から選択される。いくつかの実施形態では、組成物は、表9に提供される組成物であり、圧力及び共沸混合物の温度は表9に示すとおりである。
【0046】
いくつかの実施形態では、組成物は、表10に提供される組成物の群から選択される。いくつかの実施形態では、組成物は、表10に提供される組成物であり、温度、沸点圧力、及び露点圧力は、表10に示すとおりである。
【0047】
いくつかの実施形態では、組成物は、表11に提供される組成物の群から選択される。いくつかの実施形態では、組成物は、表11に提供される組成物であり、温度、沸点圧力、及び露点圧力は、表11に示すとおりである。
【0048】
いくつかの実施形態では、組成物は、表12に提供される組成物の群から選択される。いくつかの実施形態では、組成物は、表12に提供される組成物であり、温度は表12に示すとおりである。
【0049】
使用方法
本明細書で提供される組成物は、熱源からヒートシンクに熱を運ぶために使用される作動流体として作用することができる。そのような伝熱組成物は、流体が相転移するサイクル、すなわち、流体が液体から気体に変化し、再び液体に戻る、又はその逆に変化するサイクルにおける冷媒としても有用であり得る。伝熱システムの例としては、空調機、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、冷水機、満液式蒸発器冷却機、直接膨張冷却機、ウォークインクーラ、高温ヒートポンプ、移動式冷蔵庫、移動式空調ユニット、浸漬冷却システム、データセンタ冷却システム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、本出願は、本明細書で提供される組成物を含む、本明細書に記載される伝熱システム(例えば、伝熱装置)を提供する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、伝熱装置内の作動流体(例えば、冷蔵又は加熱用途のための作動流体)として有用である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、高温ヒートポンプを含む装置又はシステムにおいて有用である。いくつかの実施形態では、高温ヒートポンプは、遠心圧縮器を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、冷却機装置を含む装置又はシステムにおいて有用である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、遠心冷却機装置を含む装置又はシステムにおいて有用である。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、遠心高温ヒートポンプにおいて有用である。
【0050】
機械的な蒸気-圧縮冷蔵、空調、及びヒートポンプシステムは、蒸発器、圧縮器、凝縮器、及び膨張機器を含む。冷蔵サイクルは、1つの工程において冷却効果を生み出し、かつ、異なる工程において加熱効果を生成する、多重の工程において冷媒を再使用する。サイクルは、以下のように説明することができる:液体冷媒が、膨張機器を通って蒸発器に入り、液体冷媒が、低温で、環境から熱を奪うことによって蒸発器内で沸騰して、気体を形成し、冷却を生成する。多くの場合、空気又は伝熱流体は、蒸発器の上を、又は周囲を流れ、蒸発器内の冷媒の蒸発によって生じる冷却効果を、冷却される物体まで伝達する。低圧の気体は、圧縮器へ入り、そこで気体は圧縮され、その圧力及び温度が上昇する。次いで、高圧の(圧縮された)気体状の冷媒は、凝縮器へ入り、そこで冷媒は凝縮され、その熱を環境へ放出する。冷媒は膨張機器に戻り、それを通じて液体は凝縮器におけるより高圧レベルから蒸発器における低圧レベルに膨張し、このようにして、サイクルを繰り返す。
【0051】
冷却される又は加熱される物体は、冷却又は加熱を提供することが望ましい任意の空間、場所、対象物、又は物体として定義され得る。例としては、アパート建物、総合大学の寮、一軒家、若しくは他の付属の家屋若しくは単身者世帯住宅、病院、オフィスビル、スーパーマーケット、単科大学若しくは総合大学の教室若しくは管理棟、及び自動車又はトラックのパッセンジャ・コンパートメントなどの、部屋、アパート、又は建物などの、空調、冷却、又は加熱を必要とする(開放された若しくは閉鎖された)空間などが挙げられる。更に、冷却される物体としては、とりわけ、コンピュータ設備、中央処理ユニット(central processing unit、cpu)、データセンタ、サーババンク、及びパーソナルコンピュータなどの電子機器を挙げることができる。
【0052】
「近傍」とは、蒸発器を介して移動される空気が、冷却される物体内又は周囲を移動するように、冷媒組成物を含有するシステムの蒸発器が、冷却される物体内又は物体に近接してのいずれかに位置されていることを意味する。加熱を生成するためのプロセスでは、「近傍」とは、蒸発器を介して移動される空気が、加熱される物体内又は周囲を移動するように、冷媒組成物を含有するシステムの凝縮器が、加熱される物体内又は物体に近接してのいずれかに位置されていることを意味する。いくつかの実施形態では、伝熱のために、「近傍」とは、例えば、冷却される物体が、伝熱組成物に直接浸漬されるか、又は伝熱組成物を含有する管が、内部でその内若しくは周囲を流れ、例えば、電子設備から出ることを意味し得る。
【0053】
例示的な冷蔵システムとしては、商業用、工業用、又は住宅用冷蔵庫及び冷凍庫、製氷機、内蔵型クーラ及び冷凍庫、自動販売機、満液式蒸発器冷却機、直接膨張冷却機、冷水機、遠心冷却機、ウォークイン及びリーチインクーラ及び冷凍庫、並びに組み合わせシステムを含む設備が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、スーパーマーケットの冷蔵システムにおいて使用され得る。更に、固定型用途は、1つの位置において、冷却を生成するために一次冷媒を使用し、二次伝熱流体を介して、この冷却を遠隔地に移動させる、二次ループシステムを利用し得る。
【0054】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、冷蔵、空調、又はヒートポンプシステム又は装置を含む移動式伝熱システムにおいて有用である。いくつかの実施形態では、上記の組成物は、冷却、空調又はヒートポンプシステム若しくは装置を含む固定式伝熱システムにおいて有用である。
【0055】
本明細書で使用される際、移動式冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムとは、道路、鉄道、海上、又は航空の輸送ユニットに組み込まれる、任意の冷蔵機器、空調機器、又はヒートポンプ機器を指す。移動式空調又はヒートポンプシステムは、自動車、トラック、列車、又は他の輸送システムに使用され得る。移動式冷蔵庫は、トラック、飛行機、又は列車の輸送用冷蔵庫を含み得る。加えて、「複合一貫輸送」システムとして知られている、任意の移動式キャリアに依存しないシステムに冷却を提供することを意味する装置は、本発明に含まれる。かかる複合一貫輸送システムとしては、「コンテナ」(海上/陸上複合輸送)、並びに「スワップボディ」(道路及び鉄道複合輸送)が挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される際、固定式空調又はヒートポンプシステムは、動作中に適所に固定されるシステムである。固定式空調又はヒートポンプシステムは、いずれかの様々な建物に関連付けられ得るか、又は取り付けられ得る。これらの固定式の用途としては、冷却機、住宅用及び高温ヒートポンプを含むヒートポンプ、住宅用、商業用、又は工業用空調システムを含み、かつダクトの有無に関わらず、屋上システムなどの建物に接続される窓付のパッケージ型端末及びそれらの外部を含むがこれらに限定されない、固定式空調及びヒートポンプであり得る。
【0057】
固定式伝熱は、浸漬冷却システム、浸水冷却システム、相転移冷却システム、データセンタ冷却システム、又は単純に液体冷却システムなどの電子機器を冷却するためのシステムを指し得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物を伝熱流体として使用するための方法が提供される。本方法は、当該組成物を熱源からヒートシンクに輸送する工程を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、冷却を生成するための方法が提供され、冷却される物体の近傍で本化合物又は組成物のいずれかを蒸発させることと、その後、当該組成物を凝縮することとを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、加熱を生成するための方法が提供され、加熱される物体の近傍で本組成物のいずれかを凝縮することと、その後、当該組成物を蒸発させることとを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、組成物は、伝熱において有用であり、作動流体は、伝熱成分である。
【0062】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、冷蔵又は空調において使用するためのものである。
【0063】
いくつかの実施形態では、本発明の組成物は、高温ヒートポンプにおいて使用するためのものである。いくつかの実施形態では、高温ヒートポンプは、遠心高温ヒートポンプである。いくつかの実施形態では、高温ヒートポンプは、約50℃超の温度で動作する凝縮器を備える。いくつかの実施形態では、高温ヒートポンプは、約100℃超の温度で動作する凝縮器を備える。いくつかの実施形態では、高温ヒートポンプは、約120℃超の温度で動作する凝縮器を備える。いくつかの実施形態では、高温ヒートポンプは、約150℃超の温度で動作する凝縮器を備える。
【0064】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物のいずれかを含有する熱交換システムであって、空調装置、冷凍庫、冷蔵庫、ヒートポンプ、冷水機、満液式蒸発冷却機、直接膨張式冷却機、ウォークインクーラ、ヒートポンプ、可動式冷蔵庫、可動式空調ユニット、及びこれらの組み合わせを有するシステムからなる群から選択されるシステムが提供される。更に、本明細書で提供される組成物は、これらの組成物が一次冷媒として機能することで二次伝熱流体の冷却を提供し、この二次伝熱流体が遠隔地を冷却する二次ループシステムにおいて有用であり得る。
【0065】
本発明の組成物は、熱交換器内に温度勾配をいくらか有し得る。これにより、向流モード又は向流傾向を有する横流モードで熱交換器が動作している場合、システムは、より効率的に動作し得る。向流傾向とは、熱交換器が向流モードに可能な限り近づくほど、伝熱がより効率的であることを意味する。したがって、空調熱交換器、特に蒸発器は、向流傾向のいくつかの態様を提供するように設計される。
【0066】
したがって、空調又はヒートポンプシステムが本明細書で提供され、当該システムは、向流モード又は向流傾向を有する横流モードで動作する、1つ以上の熱交換器(蒸発器、凝縮器のいずれか又は両方)を含む。
【0067】
いくつかの実施形態では、冷蔵システムが本明細書で提供され、当該システムは、向流モード又は向流傾向を有する横流モードで動作する、1つ以上の熱交換器(蒸発器、凝縮器のいずれか又は両方)を含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムは、固定式冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムである。いくつかの実施形態では、冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムは、移動式冷蔵、空調、又はヒートポンプシステムである。
【0069】
更に、いくつかの実施形態では、開示された組成物は、水、食塩水溶液(例えば、塩化カルシウム)、グリコール、二酸化炭素、又はフッ素化炭化水素流体(例えば、HFC、HCFC、ヒドロフルオロオレフィン、ヒドロクロロフルオロオレフィン、クロロフルオロオレフィン、若しくはパーフルオロカーボン)を含み得る二次伝熱流体の使用によって、遠隔地に冷却を提供する二次ループシステムにおいて一次冷媒として機能し得る。この場合、二次伝熱流体は、蒸発器に隣接しており、冷却される第2の遠隔物体に移動させる前に冷却されることから、冷却される物体である。他の実施形態では、開示される組成物は、二次伝熱流体として機能し、したがって遠隔地に冷却(又は加熱)を伝達又は提供することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、潤滑剤、染料(例えば、紫外線染料)、可溶化剤、相溶化剤、安定剤、トレーサ、パーフルオロポリエーテル、摩耗防止剤、極圧添加剤、腐食及び酸化防止剤、金属表面エネルギー還元剤(metal surface energy reducer)、金属表面不活性化剤、フリーラジカル捕捉剤、泡制御剤、粘度指数改善剤、流動点降下剤、洗剤、粘度調節剤、並びにこれらの混合物からなる群から選択される1種以上の非冷媒成分(本明細書では添加剤とも称される)を更に含む。実際に、これらの任意選択的な非冷媒成分の多くは、1つ以上のこれらの分類に適合し、それら自体が1つ以上の性能特徴の達成に役立つ品質を有し得る。
【0071】
いくつかの実施形態では、1つ以上の非冷媒成分は、組成物全体に対して少ない量で存在する。いくつかの実施形態では、1つ以上の非冷媒成分は、組成物の共沸特性又は共沸混合物様特性に影響を及ぼさない(すなわち、本明細書に記載されるように、1つ以上の非冷媒成分を含む組成物は、共沸混合物組成物又は共沸混合物様組成物である)。いくつかの実施形態では、開示される組成物における添加剤(複数可)の濃度の量は、全組成物の、約0.1重量パーセント未満~約5重量パーセントと同程度までである。本発明のいくつかの実施形態では、添加剤は、開示される組成物において、全組成物の、約0.1重量パーセント~約5重量パーセントの量で、又は約0.1重量パーセント~約3.5重量パーセントの量で存在する。開示される組成物に対して選択される添加剤成分(複数可)は、実用性及び/又は個々の設備構成要素、若しくはシステムの要件に基づいて選択される。
【0072】
いくつかの実施形態では、潤滑剤は、鉱油、アルキルベンゼン、ポリオールエステル、ポリアルキレングリコール、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、パーフルオロポリエーテル、シリコーン、ケイ酸エステル、リン酸エステル、パラフィン、ナフテン、ポリアルファ-オレフィン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0073】
本明細書に開示する潤滑剤は、市販の潤滑剤であってよい。例えば、潤滑剤は、BVM 100NとしてBVA Oilより販売されているパラフィン鉱油、商標名Suniso(登録商標)1GS、Suniso(登録商標)3GS及びSuniso(登録商標)5GSでCrompton Co.より販売されているナフテン系鉱油、商標名Sontex(登録商標)372LTでPennzoilにより販売されているナフテン系鉱油、商標名Calumet(登録商標)RO-30でCalumet Lubricantsにより販売されているナフテン系鉱油、商標名Zerol(登録商標)75、Zerol(登録商標)150及びZerol(登録商標)500でShrieve Chemicalsにより販売されている直鎖アルキルベンゼン、HAB22としてNippon Oilより販売されている分枝鎖アルキルベンゼン、商標名Castrol(登録商標)100でCastrol,United Kingdomにより販売されているポリオールエステル(POE)、Dow(Dow Chemical,Midland,Michigan)のRL-488Aなどのポリアルキレングリコール(PAG)、及びこれらの混合物(本章で開示される任意の混合物を意味する)であってもよい。
【0074】
本明細書に開示する組成物の上記重量比にも関わらず、いくつかの伝熱システムでは、本組成物が使用されている間、そのような伝熱システムの1つ以上の設備構成要素から追加の潤滑剤が得られる可能性があることが理解されている。例えば、いくつかの冷蔵システム、空調システム及びヒートポンプシステムでは、圧縮器及び/又は圧縮器潤滑サンプ内に潤滑剤を充填してもよい。このような潤滑剤は、任意の潤滑添加剤に加えて、このようなシステムの冷媒中に存在する。使用中、圧縮器内にあるとき、冷媒組成物は、ある量の設備潤滑剤を捕捉して、冷媒-潤滑剤組成物を出発比率から変更してもよい。
【0075】
本発明の組成物と共に使用される非冷媒成分は、少なくとも1つの染料を含んでいてよい。染料は、少なくとも1つの紫外線(ultra-violet、UV)染料であってもよい。本明細書で使用される際、「紫外線」染料は、電磁スペクトルの紫外線又は「近」紫外線領域内の光を吸収する紫外線蛍光性組成物又はリン光性組成物として定義される。10ナノメートル~約775ナノメートルの範囲内の波長を有する、少なくともいくらかの放射線を放出する紫外線照射下において、紫外線蛍光染料によって生成された蛍光が検出され得る。
【0076】
紫外線染料は、機器(例えば、冷蔵ユニット、空調器、又はヒートポンプ)中での漏出点又は漏出点近傍において染料の蛍光を観察することができることから、組成物の漏出を検出するにあたって有用な成分である。紫外線発光(例えば、染料からの蛍光)は、紫外線光下で観察されてもよい。したがって、こうした紫外線染料を含有する組成物が装置中の所与の点から漏出した場合、蛍光は、漏出点又は漏出点の近傍で検出され得る。
【0077】
いくつかの実施形態では、紫外線染料は、蛍光染料であってもよい。蛍光染料は、ナフタルイミド、ペリレン、クマリン、アントラセン、フェナントラセン(phenanthracene)、キサンテン、チオキサンテン、ナフトキサンテン、フルオレセイン及び当該染料の誘導体、並びにこれらの組み合わせ(本章で開示される前述の染料又はこれらの誘導体のうちのいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択されてもよい。
【0078】
本発明の組成物と共に使用され得る別の非冷媒成分は、本開示の組成物中において1つ以上の染料の溶解度を改善するために選択される少なくとも1つの可溶化剤を含めてもよい。いくつかの実施形態では、染料の可溶化剤に対する重量比は、約99:1~約1:1の範囲である。可溶化剤としては、炭化水素、炭化水素エーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル(例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル)、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン(例えば、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム、又はこれらの混合物)、エステル、ラクトン、芳香族エーテル、フルオロエーテル、及び1,1,1-トリフルオロアルカン、並びにこれらの混合物(本章で開示されている任意の可溶化剤の混合物を意味する)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物が挙げられる。
【0079】
いくつかの実施形態では、非冷媒成分は、1つ以上の潤滑剤と開示する組成物との相溶性を改善するために少なくとも1つの相溶剤を含む。相溶剤は、炭化水素、炭化水素エーテル、ポリオキシアルキレングリコールエーテル(例えば、ジプロピレングリコールジメチルエーテル)、アミド、ニトリル、ケトン、クロロカーボン(例えば、塩化メチレン、トリクロロエチレン、クロロホルム又はこれらの混合物)、エステル、ラクトン、芳香族エーテル、フルオロエーテル、1,1,1-トリフルオロアルカン、及びこれらの混合物(本章で開示されている任意の相溶化剤の混合物を意味する)からなる群から選択してもよい。
【0080】
可溶化剤及び/又は相溶剤は、ジメチルエーテル(dimethyl ether、DME)など、炭素、水素及び酸素のみを含むエーテルからなる炭化水素エーテル、並びにこれらの混合物(本章で開示されている任意の炭化水素エーテルの混合物を意味する)からなる群から選択されてもよい。
【0081】
相溶剤は、3~15個の炭素原子を含有する直鎖又は環式脂肪族又は芳香族炭化水素相溶剤であり得る。相溶化剤は、中でも、プロピレン及びプロパンを含む少なくともプロパン、n-ブタン及びイソブテンを含むブタン、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン及びシクロペンタンを含むペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン、並びにデカンからなる群から選択され得る少なくとも1つの炭化水素であり得る。市販の炭化水素相溶化剤としては、これらに限定されるものではないが、Exxon Chemical(USA)から商標名Isopar(登録商標)Hで販売されているもの、ウンデカン(C11)とドデカン(C12)との混合物(高純度C11~C12イソ-パラフィン)、Aromatic 150(C9~C11芳香族)(Aromatic 200(C9~C15芳香族)及びNaptha 140(C5~C11パラフィン、ナフテン及び芳香族炭化水素の混合物)、及びそれらの混合物(本章で開示される炭化水素のうちいずれかの混合物を意味する)が挙げられる。
【0082】
相溶剤は、代替的に、少なくとも1つのポリマー性相溶剤であってもよい。ポリマー相溶剤は、フッ素化アクリレート及び非フッ素化アクリレートのランダムコポリマーであり得、このポリマーが、式CH2=C(R1)CO2R2、CH2=C(R3)C6H4R4、及びCH2=C(R5)C6H4XR6で表される少なくとも1つのモノマーの反復単位を含む(式中、Xが酸素又は硫黄であり、R1、R3、及びR5が、H及びC1~C4のアルキルラジカルからなる群から独立して選択され、並びにR2、R4、及びR6がC及びFを含有する炭素鎖系ラジカルからなる群から独立して選択され、チオエーテル、スルホキシド、又はスルホン基及びそれらの混合物の形態でH、Cl、エーテル酸素、若しくは硫黄を更に含有し得る)。そのようなポリマー相溶化剤の例としては、商標名Zonyl(登録商標)PHSでE.I.du Pont de Nemours and Company(Wilmington,DE,19898,USA)から市販されているようなものが挙げられる。Zonyl(登録商標)PHSは、40重量%のCH2=C(CH3)CO2CH2CH2(CF2CF2)mF(Zonyl(登録商標)フルオロメタクリレート又はZFMとも称される)であり、式中、mが、1~12、主に2~8であるものと、60重量%のラウリルメタクリレート(CH2=C(CH3)CO2(CH2)11CH3(LMAとも称される)とを重合することによって作製されたランダムコポリマーである。
【0083】
いくつかの実施形態では、相溶化剤成分は、潤滑剤の金属への粘着性を低下させる方法で、熱交換器中で見出される金属銅、アルミニウム、鋼、又は他の金属及びそれらの合金の表面エネルギーを低下させる(相溶化剤の総量に基づいて)約0.01~30重量%の添加剤を含有する。金属表面エネルギーを低下させる添加剤の例としては、商標名Zonyl(登録商標)FSA、Zonyl(登録商標)FSP及びZonyl(登録商標)FSJにてDuPontから市販されているものが挙げられる。
【0084】
本発明の組成物と共に使用され得る別の非冷媒成分は、金属表面不活性化剤であってもよい。金属表面不活性化剤には、アレオキサリル(areoxalyl)ビス(ベンジリデン)ヒドラジド(CAS登録番号6629-10-3)、N,N’-ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナモイルヒドラジン(CAS登録番号32687-78-8)、2,2,-オキサミドビス-エチル-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナマート(CAS登録番号70331-94-1)、N,N-(ジサリシクリデン(disalicyclidene))-1,2-ジアミノプロパン(CAS登録番号94-91-7)、及びエチレンジアミンテトラ-酢酸(CAS登録番号60-00-4)及びその塩、並びにそれらの混合物(本章に開示される金属表面不活性化剤のうちのいずれかの混合物を意味する)からなる群から選択される。
【0085】
本発明の組成物と共に使用される非冷媒成分は、代替的には、ヒンダードフェノール、チオホスフェート、ブチル化トリフェニルホスホロチオネート、オルガノホスフェート又はホスファイト、アリールアルキルエーテル、テルペン、テルペノイド、エポキシド、フッ素化エポキシド、オキセタン、アスコルビン酸、チオール、ラクトン、チオエーテル、アミン、ニトロメタン、アルキルシラン、ベンゾフェノン誘導体、アリールスルフィド、ジビニルテレフタル酸、ジフェニルテレフタル酸、アセトアルデヒドジメチルヒドラゾンなどのヒドラゾン、イオン性液体、及びそれらの混合物からなる群から選択される安定剤であり得る。テルペン又はテルペノイド安定剤は、ファルネセンを含み得る。ホスファイト安定剤は、ジフェニルホスフィイトを含んでもよい。
【0086】
安定剤は、以下からなる群から選択され得る:トコフェロール;ヒドロキノン;t-ブチルヒドロキノン;モノチオホスフェート、及びジチオホスフェート(Ciba Specialty Chemicals,Basel,Switzerland(以後「Ciba」)から商標名Irgalube(登録商標)63として市販);ジアルキルチオリン酸エステル(Cibaからそれぞれ商標名Irgalube(登録商標)353及びIrgalube(登録商標)350として市販);ブチル化トリフェニルホスホロチオネート(Cibaから商標名Irgalube(登録商標)232として市販);アミンホスフェート(Cibaから商標名Irgalube(登録商標)349(Ciba)として市販);ヒンダードホスファイト(CibaからIrgafos(登録商標)168として市販)、及びトリス-(ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(Cibaから商標名Irgafos(登録商標)OPHとして市販);(Di-n-オクチルホスファイト);及びイソ-デシルジフェニルホスファイト(CibaからIrgafos(登録商標)DDPPとして市販);トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びトリ(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどのトリアルキルホスフェート;トリフェニルホスフェート、リン酸トリクレシル及びトリキシレニルホスフェートを含むトリアリールホスフェート、並びにイソプロピルフェニルホスフェート(IPPP)及びビス(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート(TBPP)を含む混合アルキルアリールホスフェート;Syn-O-Ad(登録商標)8784など、商標名Syn-O-Ad(登録商標)にて市販されているものなどのブチル化トリフェニルホスフェート;商標名Durad(登録商標)620として市販のものなどのtert-ブチル化トリフェニルホスフェート;商標名Durad(登録商標)220及びDurad(登録商標)110で市販されているものなどのイソプロピルトリフェニルホスフェート;アニソール;1,4-ジメトキシベンゼン;1,4-ジエトキシベンゼン;1,3,5-トリメトキシベンゼン;ミルセン、アロオシメン、リモネン(特にd-リモネン);レチナール;ピネン;メントール;ゲラニオール;ファルネソール;フィトール;ビタミンA;テルピネン;δ-3-カレン;テルピノレン;フェランドレン;フェンチェン;ジペンテン;リコピンなどのカラテノイド(caratenoids)、βカロチン、及びゼアキサンチンなどのキサントフィル;ヘパキサンチン及びイソトレチノインなどのレチノイド;ボルナン;1,2-プロピレンオキシド;1,2-ブチレンオキシド;n-ブチルグリシジルエーテル;トリフルオロメチルオキシラン;1,1-ビス(トリフルオロメチル)オキシラン;3-エチル-3-ヒドロキシメチル-オキセタン(例えば、OXT-101(Toagosei Co.,Ltd));3-エチル-3-((フェノキシ)メチル)-オキセタン(例えば、OXT-211(Toagosei Co.,Ltd));3-エチル-3-((2-エチル-ヘキシルオキシ)メチル)-オキセタン(例えば、OXT-212(Toagosei Co.,Ltd));アスコルビン酸;メタンチオール(メチルメルカプタン);エタンチオール(エチルメルカプタン);コエンザイムA;ジメルカプトコハク酸(DMSA);グレープフルーツメルカプタン((R)-2-(4-メチルシクロヘキサ-3-エニル)プロパン-2-チオール));システイン((R)-2-アミノ-3-スルファニル-プロパン酸);リポアミド(1,2-ジチオラン-3-ペンタンアミド);5,7-ビス(1,1-ジメチルエチル)-3-[2,3(又は3,4)-ジメチルフェニル]-2(3H)-ベンゾフラノン(Cibaから商標名Irganox(登録商標)HP-136として市販);ベンジルフェニルスルフィド;ジフェニルスルフィド;ジイソプロピルアミン;商標名Irganox(登録商標)PS802(Ciba)でCibaから市販されているジオクタデシル3,3’-チオジプロピオネート;ジドデシル3,3’-チオプロピオネート(Cibaから商標名Irganox(登録商標)PS800として市販);ジ-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート(Cibaから商標名Tinuvin(登録商標)770として市販);ポリ-(N-ヒドロキシエチル-2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシ-ピペリジルスクシネート(Cibaから商標名Tinuvin(登録商標)622LD(Ciba)として市販);メチルビスタローアミン;ビスタローアミン;フェノール-α-ナフチルアミン;ビス(ジメチルアミノ)メチルシラン(DMAMS);トリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS);ビニルトリエトキシシラン;ビニルトリメトキシシラン;2,5-ジフルオロベンゾフェノン;2’,5’-ジヒドロキシアセトフェノン;2-アミノベンゾフェノン;2-クロロベンゾフェノン;ベンジルフェニルスルフィド;ジフェニルスルフィド;ジベンジルスルフィド;イオン性液体並びにその混合物及びそれらの組み合わせ。
【0087】
本発明の組成物と共に使用される添加剤は、代替的にはイオン性液体安定剤であってもよい。イオン性液体安定剤は、室温(およそ25℃)で液体である有機塩からなる群から選択され得、それらの塩は、ピリジニウム、ピリダジニウム、ピリミジニウム、ピラジニウム、イミダゾリウム、ピラゾリウム、チアゾリウム、オキサゾリウム、及びトリアゾリウム、並びにそれらの混合物からなる群から選択された陽イオン;並びに[BF4]-、[PF6]-、[SbF6]-、[CF3SO3]-、[HCF2CF2SO3]-、[CF3HFCCF2SO3]-、[HCClFCF2SO3]-、[(CF3SO2)2N]-、[(CF3CF2SO2)2N]-、[(CF3SO2)3C]-、[CF3CO2]-、及びF-、並びにそれらの混合物からなる群から選択される陰イオンを含有する。いくつかの実施形態では、イオン性液体安定剤は次からなる群から選択される;emim BF4(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムテトラフルオロホウ酸塩)、bmim BF4(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムテトラボラート);emim PF6(1-エチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート);及びbmim PF6(1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート)からなる群から選択され、これらの全ては、Fluka(Sigma-Aldrich)より入手可能である。
【0088】
いくつかの実施形態では、安定剤は、ヒンダードフェノールであり得、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール;2,4-ジメチル-6-tertブチルフェノール;トコフェロール;などt-ブチルヒドロキノン、ヒドロキノンの他の誘導体などを含むヒドロキノン及びアルキル化ヒドロキノン;など、4,4’-チオ-ビス(2-メチル-6-tert-ブチルフェノール)を含むヒドロキシル化チオジフェニルエーテル;4,4’-チオビス(3-メチル-6-tertブチルフェノール);2,2’-チオビス(4メチル-6-tert-ブチルフェノール);など、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)を含むアルキリデン-ビスフェノール;4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);2,2-、又は4,4-ビフェノールジオール誘導体;2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tertブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tertブチルフェノール);4,4-ブチリデンビス(3-メチル-6-tert-ブチルフェノール);4,4-イソプロピリデンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール);2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-ノニルフェノール);2,2’-イソブチリデンビス(4,6-ジメチルフェノール;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-シクロヘキシルフェノール、2,2-又は4,4-ビフェニルジオール(2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-tert-ブチルフェノール)など);ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT、又は2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール)、(2,6-ジ-tert-アルファ-ジメチルアミノ-p-クレゾール、4,4-チオビス(6-tert-ブチル-m-クレゾール)を含むヘテロ原子を含むビスフェノール;など、アシルアミノフェノール;2,6-ジ-tert-ブチル-4(N,N’-ジメチルアミノメチルフェノール);以下などのスルフィド;ビス(3-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルベンジル)スルフィド;ビス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)スルフィド、並びにこれらの混合物(本項に開示されているフェノールのいずれかの混合物を意味する)など、1つ以上の置換又は環状直鎖又は分岐鎖脂肪族置換基を含むフェノールなどの任意の置換フェノール化合物である。
【0089】
本発明の組成物と共に使用される非冷媒成分は、代替的にトレーサであってもよい。トレーサは、同一の分類の化合物又は異なる分類の化合物の2つ以上のトレーサ化合物であってもよい。いくつかの実施形態では、トレーサは、全組成物の重量に基づいて、約50重量百万分率(ppm)~約1000ppmの合計濃度で組成物中に存在する。他の実施形態では、トレーサは、約50ppm~約500ppmの合計濃度で存在する。代替的に、トレーサは、全濃度約100ppm~約300ppmの合計濃度にて存在する。
【0090】
トレーサは、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、重水素化ヒドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、フルオロエーテル、臭素化化合物、ヨウ化化合物、アルデヒド、及びケトン、亜酸化窒素及びこれらの組み合わせからなる群から選択され得る。代替的に、トレーサは、トリフルオロメタン(HFC-23)、フルオロエタン(HFC-161)、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロプロパン(HFC-227ca)、1,1,1,2,2,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236cb)、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン(HFC-236ea)、1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(HFC-245cb)、1,1,2,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254cb)、1,1,1,2-テトラフルオロプロパン(HFC-254eb)、1,1,1-トリフルオロプロパン(HFC-263fb)、2,2-ジフルオロプロパン(HFC-272ca)、2-フルオロプロパン(HFC-281ea)、1-フルオロプロパン(HFC-281fa)、1,1,1,2,2,3,3,4-ノナフルオロブタン(HFC-329p)、1,1,1-トリフルオロ-2-メチルプロパン(HFC-329mmz)、1,1,1,2,2,4,4,4-オクタフルオロブタン(HFC-338mf)、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン(HFC-338pcc)、1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオロブタン(HFC-347s)、ヘキサフルオロエタン(パーフルオロエタン、PFC-116)、パーフルオロ-シクロプロパン(PFC-C216)、パーフルオロプロパン(PFC-218)、パーフルオロ-シクロブタン(PFC-C318)、パーフルオロブタン(PFC-31-10mc)、パーフルオロ-2-メチルプロパン(CF3CF(CF3)2)、パーフルオロ-1,3-ジメチルシクロブタン(PFC-C51-12mycm)、トランス-パーフルオロ-2,3-ジメチルシクロブタン(PFC-C51-12mym、トランス)、シス-パーフルオロ-2,3-ジメチルシクロブタン(PFC-C51-12mym、シス)、パーフルオロメチルシクロペンタン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロジメチルシクロヘキサン(オルト、メタ又はパラ)、パーフルオロエチルシクロヘキサン、パーフルオロインダン、パーフルオロトリメチルシクロヘキサン及びその異性体、パーフルオロイソプロピルシクロヘキサン、シス-パーフルオロデカリン、トランス-パーフルオロデカリン、シス-又はトランス-パーフルオロメチルデカリン、並びにこれらの混合物からなる群から選択され得る。いくつかの実施形態では、トレーサは、2つ以上のヒドロフルオロカーボン、又は1つ以上のパーフルオロカーボンと組み合わされた1つのヒドロフルオロカーボンを含有するブレンドである。
【0091】
当該組成物の何らかの希釈、汚染、又は他の変更の検出を可能にするために、所定の量でトレーサが本発明の組成物に添加されてもよい。
【0092】
本発明の組成物と共に使用され得る添加剤は、代替的には、米国特許出願公開第2007/0284555号(その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に詳細に説明されているようにパーフルオロポリエーテルであってもよい。
【0093】
非冷媒成分に好適であると上で記載した特定の添加剤は、冷媒として可能性があるものとして特定されていることが理解されるであろう。しかしながら、本発明によれば、これらの添加剤が使用される場合、本発明の冷媒混合物の新規かつ基本的特徴に影響を及ぼし得る量では存在しない。
【0094】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される冷媒組成物は、当該技術分野において標準であるように、所望の量の個々の成分を組み合わせるための任意の簡便な方法によって調製されてもよい。好ましい方法は、所望の成分量を計量し、その後、適切な容器内で成分を組み合わせることである。所望される場合、撹拌を使用してもよい。
【0095】
実施例1.E-HFO-1336mzz/エタノール組成物
E-HFO-1336mzz/エタノールの2成分系を潜在的な共沸及び近共沸挙動について調べた。この2成分系の相対揮発度を判定するため、上で説明されるPTx法を使用した。既知の体積のPTxセル内の圧力を、種々の2成分の組成について29.88℃の一定温度で測定した。収集した実験VLEデータを下記の表1に示す。
【0096】
【表1】
P
exp=実験的に測定された圧力
P
calc=NRTLモデルによって計算された圧力
【0097】
図1は、0~1のE-HFO-1336mzzの液体モル分率の組成範囲にわたった組成データに対する圧力のプロットを示す。上の曲線は泡点(bubble point、BP)の軌跡を表し、下の曲線は露点(dew point、DP)の軌跡を表している。
【0098】
これらのVLEデータに基づき、相互作用係数を抽出した。NRTLモデルを-40~120℃の温度範囲にわたって10℃刻みで使用し、共沸条件(X2=Y2)が満たされるように圧力を変動させた。E-HFO-1336mzz/エタノール系の共沸混合物の得られた予測値を表2に示す。
【0099】
【0100】
NRTLモデルを使用して、1~30atmの圧力範囲にわたり、1atm刻みで共沸混合物を予測し、その結果を表3に示す。
【0101】
【0102】
実験的に測定された結果と比較するために、このモデルを-40~140℃の温度範囲にわたって20℃刻みで、また29.88℃で実行した。各温度で、0~1のE-HFO-1336mzzの液体モル組成の全範囲にわたって(0.002刻みで)、このモデルを実行した。したがって、モデルは、合計で5010個の温度とE-HFO-1336mzzの液体モル組成との組み合わせ(10(温度)×501(組成)=5010)で実行された。表4は、0.10E-HFO-1336mzz液体モル組成物の増分、又は近共沸挙動の境界を示す。
【0103】
【0104】
【0105】
1atmにおけるE-1336mzzとエタノールとの間に形成された近共沸混合物を表5に示す。
【0106】
【0107】
表4及び5の詳細なデータを、表6にまとめて示す。表5の結果から、泡点圧力と露点圧力との間の3%以下の差を有する共沸様組成物は、97.8~99.8モルパーセントのE-HFO-1336mzz及び0.2~2.2モルパーセントのエタノールが7.51~7.83℃で沸騰する1気圧で存在する。3%共沸様組成物の大まかな範囲([(BP-VP)/BP]×100≦3に基づく)を表6に挙げる。
【0108】
【0109】
実施例2.E-HFO-1336mzz/イソプロピルアルコール組成物
E-HFO-1336mzz/イソプロピルアルコール(すなわち、イソプロパノール)の2成分系を潜在的な共沸及び近共沸挙動について調べた。この2成分系の相対揮発度を判定するため、上で説明されるPTx法を使用した。既知の体積のPTxセル内の圧力を、種々の2成分の組成について29.99℃の一定温度で測定した。収集したVLE実験データを下記の表7に示す。
【0110】
【表7】
X
2=E-HFO-1336mzzの液体モル分率
Y
2=E-HFO-1336mzzの蒸気モル分率
P
exp=実験的に測定された圧力
P
calc=NRTLモデルによって計算された圧力
【0111】
表7に提供された蒸気圧対E-HFO-1336mzz液体モル分率データも
図2にプロットされている。実験データの点は、
図2では中黒の点として示されている。実線は、NRTL式を使用した泡点の予測を示す。破線は、予測された露点を示す。
【0112】
これらのVLEデータに基づき、相互作用係数を抽出した。NRTLモデルを-40~120℃の温度範囲にわたって10℃刻みで使用し、共沸条件(X2=Y2)が満たされるように圧力を変動させた。得られた予測されたE-HFO-1336mzz/イソプロピルアルコールにおける共沸混合物及び29.99℃で実験的に決定されたデータを表8に示す。
【0113】
【0114】
このモデルを更に使用して、1~20atmの圧力範囲にわたって1atm刻みで共沸混合物を予測し、その結果を表9に示す。
【0115】
【0116】
実験的に測定された結果と比較する目的で、このモデルを-40~120℃の温度範囲にわたって20℃刻みで、また29.99℃で実行した。各温度で、0~1のE-HFO-1336mzzの液体モル組成の全範囲にわたって(0.002刻みで)、このモデルを実行した)。したがって、モデルは、合計で4509個の温度とE-HFO-1336mzzの液体モル組成との組み合わせ(9(温度)×501(組成)=4509)で実行された。表10は、0.10E-HFO-1336mzz液体モル組成物の増分、又は近共沸挙動の境界を示す。
【0117】
【0118】
【0119】
1atmにおけるE-1336mzzとイソプロピルアルコールとの間に形成された近共沸混合物を表11に示す。0.10E-HFO-1336mzz液体モル組成物の増分、又は近共沸挙動の境界を示す。
【0120】
【0121】
表10~11のデータを、共沸混合物様組成物を(式:[(BP-VP)/BP]×100≦3に基づいて)列挙する表12に要約する。
【0122】
【0123】
他の実施形態
1. いくつかの実施形態では、本出願は、組成物であって、
i)(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと、
ii)エタノール及びイソプロパノールから選択される化合物と、を含み、
エタノール又はイソプロパノールが、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンと共沸混合物又は共沸混合物様組成物を形成するのに有効な量で、組成物中に存在する、組成物を提供する。
【0124】
2. 組成物が、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びエタノールを含む、実施形態1に記載の組成物。
【0125】
3. 組成物が、共沸混合物組成物である、実施形態1又は2に記載の組成物。
【0126】
4. 組成物が、約60℃~約131℃の温度及び約88psia~約441psiaの圧力で、約79~約97モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約21~約3モルパーセントのエタノールを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0127】
5. 組成物が、約60℃~約120℃の温度及び約83psia~約365psiaの圧力で、約82~約97モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約18~約3モルパーセントのエタノールを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0128】
6. 組成物が、約60℃~約120℃の温度及び約83psia~約365psiaの圧力で、約82~約97モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約18~約3モルパーセントのエタノールを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【0129】
7. 組成物が、共沸混合物様組成物である、実施形態1又は2に記載の組成物。
【0130】
8. 組成物が、約-40℃~約140℃の温度及び約1.3psia~約507.9psiaの圧力で、約72.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1、1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約17.2~約0.1モルパーセントのエタノールを含む、実施形態1、2、及び7のいずれか1つに記載の組成物。
【0131】
9. 組成物が、
約-40℃の温度及び約1.3psia~約1.4psiaの圧力で、約99.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約0.3~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約-20℃の温度で約4.1psia~約4.2psiaの圧力で、約99.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約0.8~約0.1モルパーセントのエタノール、
約0℃の温度及び約10.3psia~約10.7psiaの圧力で、約98.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約1.8~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約20℃の温度及び約22.8psia~約23.5psiaの圧力で、約96.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約3.2~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約29.9℃の温度及び約32.2psia~約33.1psiaの圧力で、約96.0~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約4.0~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約40℃の温度及び約44.5psia~約45.9psiaの圧力で、約94.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約5.2~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約60℃の温度及び約80.7psia~約82.9psiaの圧力で、約92.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約7.8~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約80℃の温度及び約137.1psia~約141.0psiaの圧力で、約88.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約11.4~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約100℃の温度及び約226.8psia~約233.4psiaの圧力で、約84.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約15.6~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約120℃の温度及び約353.2psia~約364.0psiaの圧力で、約78.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約21.6~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約140℃の温度及び約492.9psia~約507.9psiaの圧力で、約72.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約27.2~約0.1モルパーセントのエタノール、を含む、実施形態1、2、及び7のいずれか1つに記載の組成物。
【0132】
10. 表2、表3、表4、表5、及び表6に提供される組成物の群から選択される、実施形態1~3及び7のいずれか1つに記載の組成物。
【0133】
11. 組成物が、(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及びイソプロパノールを含む、実施形態1に記載の組成物。
【0134】
12. 組成物が、共沸混合物組成物である、実施形態1又は11に記載の組成物。
【0135】
13. 組成物が、約80℃~約120℃の温度及び約139psia~約350psiaの圧力で、約83~約96モルパーセントの(E)-1,1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約17~約4モルパーセントのエタノールを含む、実施形態1、11、及び12のいずれか1つに記載の組成物。
【0136】
14. 組成物が、約68℃~約108℃の温度及び約103psia~約279psiaの圧力で、約87~約99モルパーセントの(E)-1,1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約13~約1モルパーセントのエタノールを含む、実施形態1、11、及び12のいずれか1つに記載の組成物。
【0137】
15. 組成物が、共沸混合物様組成物である、実施形態1又は11に記載の組成物。
【0138】
16. 組成物が、約-20℃~約120℃の温度及び約46psia~約330psiaの圧力で、約81.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約18.6~約0.1モルパーセントのエタノールを含む、実施形態1、11、及び15のいずれか1つに記載の組成物。
【0139】
17. 組成物が、約7.5℃~約7.8℃の温度及び約14.7psiaの圧力で、約98.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約1.6~約0.1モルパーセントのエタノールを含む、実施形態1、11、及び15のいずれか1つに記載の組成物。
【0140】
18. 組成物が、
約-20℃の温度及び約4.1psia~約4.2psiaの圧力で、約99.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約0.4~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約0℃の温度及び約10.4psia~約10.7psiaの圧力で、約99.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約0.8~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約20℃の温度及び約22.8psia~約23.7psiaの圧力で、約98.2~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約1.8~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約29.9℃の温度及び約32.1psia~約33.4psiaの圧力で、約97.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約2.4~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約40℃の温度及び約44.4psia~約46.4psiaの圧力で、約96.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約2.4~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約60℃の温度及び約79.4psia~約83.0psiaの圧力で、約94.0~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約6~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約80℃の温度及び約133.9psia~約138.4psiaの圧力で、約90.4~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約9.6~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約100℃の温度及び約217.9psia~約226.0psiaの圧力で、約85.8~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約14.2~約0.1モルパーセントのエタノール、又は
約120℃の温度及び約329.6psia~約347.5psiaの圧力で、約78.6~約99.9モルパーセントの(E)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン及び約21.4~約0.1モルパーセントのエタノール、を含む、実施形態1、11、及び15のいずれか1つに記載の組成物。
【0141】
19. 表8、表9、表10,表11,及び表12に提供される組成物の群から選択される、実施形態1、11、12、及び15のいずれか1つに記載の組成物。
【0142】
20. 冷却を生成するためのプロセスであって、実施形態1~19のいずれか1つに記載の組成物を凝縮させる工程と、その後、冷却される物体の近傍で当該組成物を蒸発させる工程と、を含む、プロセス。
【0143】
21. 加熱を生成するためのプロセスであって、実施形態1~19のいずれか1つに記載の組成物を蒸発させる工程と、その後加熱される物体の近傍で当該組成物を凝縮させる工程と、を含む、プロセス。
【0144】
22. 実施形態1~19のいずれか1つに記載の組成物を含む、空調システム、ヒートポンプシステム、又は冷蔵システム。
【0145】
23. システムが、蒸発器、圧縮機、凝縮器、及び膨張装置を備える、実施形態22に記載の空調システム、ヒートポンプシステム、又は冷蔵システム。
【0146】
24. 当該システムが、向流モード又は向流傾向を有する十字流(cross-current)モードで動作する、1つ以上の熱交換器を備える、実施形態22に記載の空調システム、ヒートポンプシステム、又は冷蔵システム。
【0147】
本発明をその詳細な説明と併せて説明してきたが、前述の説明は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲を例示することを意図し、かつ限定するものではないことを理解すべきである。他の態様、利点、及び変更は、以下の特許請求の範囲内である。本発明が、本発明の任意の特定の態様及び/又は実施形態に関して本明細書に記載される特徴のいずれも、本明細書に記載される本発明の任意の他の態様及び/又は実施形態の他の特徴のいずれかのうちの1つ以上と組み合わせることができ、組み合わせの適合性を確実にするために適宜変更することができることが、当業者により理解されるべきである。このような組み合わせは、本開示により企図される本発明の一部であるとみなされる。
【外国語明細書】