(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128065
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】配線用スリーブ
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20240912BHJP
F16L 5/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
H02G3/22
F16L5/00 Q
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024111590
(22)【出願日】2024-07-11
(62)【分割の表示】P 2020166662の分割
【原出願日】2020-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】ダイヤゼブラ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100167977
【弁理士】
【氏名又は名称】大友 昭男
(72)【発明者】
【氏名】木谷 兆博
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雄太
(72)【発明者】
【氏名】高橋 泰
(57)【要約】
【課題】従来の煩わしい工程が不要で防水性を高めつつ、外壁の通孔を通じて外部からの配線を内部へ導入する配線用スリーブを提供する。
【解決手段】本発明にかかる配線用スリーブは、外壁に設けられた配線用の貫通孔の周囲を覆うように前記外壁の外面に取り付けられる配線用スリーブであって、配線が一方側から他方側へ通る通孔を有するスリーブ本体を備え、前記通孔の下部には前記一方側から前記他方側へ向かって下降する傾斜面が形成され、該傾斜面における前記一方側寄りの部分に、前記通孔の横断面における内方向側へ向けて突出する防水壁が設けられ、前記傾斜面における前記他方側寄りの部分に、前記通孔内の水を前記通孔外へ排出する水抜き孔が設けられている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外壁に設けられた配線用の貫通孔の周囲を覆うように前記外壁の外面に取り付けられる配線用スリーブであって、
配線が一方側から他方側へ通る通孔を有し、前記通孔の内部において前記一方側から前記他方側へ向かって、前記通孔の開口断面の面積が拡大し且つ当該通孔の内面下方が下降する傾斜面を有するスリーブ本体と、
前記傾斜面における前記他方側寄りの部分に設けられ、前記外壁に対して固定される、主面の内部に前記通孔の端部を有する板状の第1ベースと
前記傾斜面における前記一方側寄りの部分に設けられ、前記開口断面における内方向側へ向けて突出した防水壁と、を備え、
前記第1ベース及び前記防水壁は、前記スリーブ本体と同じ部材で一体に形成されている、配線用スリーブ。
【請求項2】
請求項1に記載の配線用スリーブにおいて、
前記防水壁が前記傾斜面の前記一方側の端に位置している、配線用スリーブ。
【請求項3】
請求項2に記載の配線用スリーブにおいて、
前記第1ベースが前記通孔の前記他方側の端に位置している、配線用スリーブ。
【請求項4】
請求項3に記載の配線用スリーブにおいて、
前記他方側の端に位置している前記第1ベースの主面に平行な平面と、前記一方側の端に位置している前記防水壁の前記内方向側へ向けた突出の部分に平行な平面とは、互いに略平行である、配線用スリーブ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の配線用スリーブにおいて、
前記他方側に前記外壁が存在し、前記第1ベースの前記他方側の端面には、前記外壁との隙間をシールする第1シール部材が取り付けられている、配線用スリーブ。
【請求項6】
請求項5に記載の配線用スリーブにおいて、
前記一方側にパワーコンディショナ―が配備され、当該パワーコンディショナ―と前記外壁との間に設けられる、配線用スリーブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建屋やコンテナ等の外壁の貫通孔を通じて、外部からの配線を内部へ導入する際に使用される配線用スリーブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、換気用途、配管用途または配線用途等で、外壁の壁材に設けられた貫通孔に設置される種々の壁接続スリーブが使用されている。これらの用途では、壁接続スリーブは、建屋の内部と外部の接続機器等とを接続するため、屋外から屋内への雨水等の流入が防止されている必要がある。一般的に、防水性を高めるために、貫通孔と貫通孔内の配線または配管との間には、例えば防水コーキングが施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この防水コーキングは、外部の接続機器等を設置する際に、煩わしい工程となっている。そこで、特許文献1の壁貫通スリーブのように、防水性を高めるために、外壁に取り付けるためのフランジ部分および屋外の接続機器に接続するためのフランジ部分に防水テープや防水シート等を介在させるものが存在している。
【0005】
特許文献1の壁貫通スリーブは、この構成に加えて、楔形状のスペーサを外壁とフランジ部分との間に介在させてスリーブ自体を傾斜させてスリーブ内の水を一方向へ流しやすくする構成となっている。しかし、楔形状のスペーサを外壁とフランジ部分との間に介在させる工程が必要なため、この構成もやはり外部の接続機器等を設置する際に煩わしい工程となりうるものである。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような従来の煩わしい工程が不要で防水性を高めつつ、外壁の通孔を通じて外部からの配線を内部へ導入する配線用スリーブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明にかかる配線用スリーブは、
外壁に設けられた配線用の貫通孔の周囲を覆うように前記外壁の外面に取り付けられる配線用スリーブであって、
配線が一方側から他方側へ通る通孔を有するスリーブ本体を備え、前記通孔の下部には前記一方側から前記他方側へ向かって下降する傾斜面が形成され、
該傾斜面における前記一方側寄りの部分に、前記通孔の横断面における内方向側へ向けて突出する防水壁が設けられ、
前記傾斜面における前記他方側寄りの部分に、前記通孔内の水を前記通孔外へ排出する水抜き孔が設けられている。
【0009】
この構成によれば、スリーブ本体における通孔の下部に前記一方側から前記他方側へ向かって下降する傾斜面が形成され、該傾斜面における前記一方側寄りの部分に、前記防水壁が設けられ、前記傾斜面における前記他方側寄りの部分に、前記水抜き孔が設けられているので、前記傾斜面により、通孔内部に水が浸入した場合に、内側から外側へ向けて水を流すことができ、前記防水壁により、通孔内部の水が外壁の配線用の貫通孔へ向かうのを阻止できる。また、前記水抜き孔により、傾斜面によって内側から外側へ向けて流した上述の通孔内部の水を配線用スリーブ外部へ排水できる。したがって、従来の煩わしい工程が不要で防水性を高めつつ、外壁の通孔を通じて外部からの配線を内部へ導入する配線用スリーブを提供できる。
【0010】
上記構成において、前記防水壁が前記傾斜面の前記一方側の端に位置していてもよい。これにより、前記傾斜面の最も高い部分(または、前記水抜き孔から最も離れた部分)に防水壁が設けられるので、通孔内部の水が該防水壁を越える可能性を低減できる。
【0011】
上記構成において、前記水抜き孔が前記傾斜面の前記他方側の端に位置していてもよい。これにより、前記傾斜面の最も低い部分に水抜き孔が設けられるので、排水されずに通孔内部に水が残留するのを低減できる。
【0012】
上記構成において、前記スリーブ本体における前記一方側または前記他方側の端部に前記外壁に取り付ける第1ベースが設けられ、該第1ベースの前記一方側または前記他方側に前記外壁との間をシールする第1シール部材が取り付けられていてもよい。これにより、前記外壁と前記第1シール部材との間の防水性を向上できる。この場合に、前記第1シール部材の下部に水を下方へ排出する水抜き溝が形成されていてもよい。これにより、万が一に上述の通孔内部の水が、前記一方側寄りに存在する前記防水壁を越えてしまった場合に、外壁の配線用の貫通孔へ向かうのを阻止できる。
【0013】
上記構成において、前記スリーブ本体における前記他方側または前記一方側の端部に他の接続機器に接続される第2ベースが設けられ、該第2ベースの前記他方側または前記一方側に前記他の接続機器との間をシールする第2シール部材が取り付けられていてもよい。これにより、前記他の接続機器と前記第2シール部材との間の防水性を向上できる。なお、前記第1ベースと前記第2ベースの両方が設けられる場合は、2つのうちのいずれかが前記一方側に設けられ、2つのうちの残りが逆の前記他方側に設けられる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る配線用スリーブは、従来の煩わしい工程が不要で防水性を高めつつ、外壁の通孔を通じて外部からの配線を内部へ導入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る配線用スリーブを使用して、外壁の貫通孔と外部の接続機器とを接続する一例を示す縦断面図である。
【
図2】上記外壁の上記貫通孔の上配線孔と下配線孔とを示す図である。
【
図4】上記配線用スリーブの縦断面を示す正面斜視図である。
【
図6】上記配線用スリーブの縦断面を示す背面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号は、同一または相当部分を示し、特段変更等の説明がない限り、適宜その説明を省略する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係る配線用スリーブを使用して、外壁(または構造壁)の貫通孔と外部の接続機器とを接続する一例を示す全体断面図を示す。
図1では、外壁300は、建屋やコンテナ等(以下、建屋等と呼ぶ)の外壁であり、外部の接続機器は、例えば外壁300に該外壁の外部(外面)で取り付けられているパワーコンディショナー(以下、単にパワコンと呼ぶ)200でありうる。外壁300の外面は、少なくとも上記貫通孔周辺において、厚さ1.6mmの金属プレート等で構成されていてもよい。パワコン200は、建屋等内における設置スペースや自らの動作による騒音や温度上昇が建屋等内の人間へ影響を与えるのを回避するため、建屋等の外部に設置されることが多い。なお、パワコン200は、上記のように外壁の外面に取り付けられる以外に、屋外の土壌等の設置面に設置されていてもよい。
【0018】
配線用スリーブ100は、外壁300に設けられた配線用の貫通孔310の周囲を覆うように外壁300の外面に取り付けられており、本実施形態では、パワコン200の筐体内でパワコン背板210と外壁300との間で、パワコン背板210に設けられた配線用の他の貫通孔(不図示)の周囲を覆うように存在している。
図1の貫通孔310は、外壁300を貫通して建屋等の内部と外部とを連通する。
図2の配線500が通る上配線孔312と下配線孔314からなる。配線用スリーブ100は、後述のねじ孔196を貫く4本のタッピングスクリュのような締結部材である取付ねじSRにより、屋外の作業にて外壁300の4つのねじ孔320に取り付けられる。上配線孔312と下配線孔314とから配線500が屋外へ引き出されさえすれば、配線用スリーブ100の取付けは、屋外の作業のみとすることができる。
【0019】
図3に示すように、配線用スリーブ100は、
図2の配線500が例えば内側である一方側から外側である他方側へ通る通孔152を有する樹脂製のスリーブ本体150を備えて筒状となっている。本実施形態では、スリーブ本体150における内側の端部には、配線用スリーブ100を外壁300に取り付ける第1ベースたる内側ベース198が設けられている。なお、第1ベースは、スリーブ本体150における外側の端部に設けられていてもよい。この内側ベース198は、スリーブ本体150の長手方向に略直交する中空の略角丸長方形状の薄板からなり、その内側に外壁300との間をシールするスポンジや弾性体たるパッキンである第1シール部材192(以下、単にパッキン192)が取り付けられうる。また、本実施形態では、スリーブ本体150における外側の端部には、配線用スリーブ100をパワコン200(より詳しくは、パワコン背板210)に接続される第2ベースたる外側ベース114(
図5)が設けられている。すなわち、外側ベース114は、スリーブ本体150に対して、内側ベース198とは逆の端部に設けられている。なお、第2ベースは、スリーブ本体150における内側の端部に設けられていてもよい。この外側ベース114は、スリーブ本体150の長手方向に略直交する中空の略長丸形状のフランジであり、その外側にパワコン200との間をシールするスポンジまたはゴムのような弾性体たるパッキンである第2シール部材112(以下、単にパッキン112)が取り付けられうる(
図3)。なお、配線用スリーブ100は、取付ねじSRが貫く4つのねじ孔196を有する。パッキン112は、スリーブ本体150の長手方向視で、外側ベース114の上記中空の略長丸形状に近い形状となっている。パッキン192は、スリーブ本体150の長手方向視で、内側ベース198の上記中空の略角丸長方形状に近い形状となっている。なお、4つのねじ孔196と水抜き溝194に対応する部分には、パッキン192は及んでいない(
図5)。
【0020】
図4に示すように、通孔152の下部には内側から外側へ向かって下降する傾斜面154が形成されている。この傾斜面154により、通孔152内部に水が浸入した場合に、内側から外側へ向けて水を流すことができる。この傾斜面154における内側寄りの部分に、通孔152の横断面における内方向側へ向けて突出する例えばひだ状の防水壁170が設けられている。この防水壁170により、通孔152内部の水が外壁の配線用の貫通孔310(
図1、
図2)へ向かうのを阻止できる。より好ましくは、防水壁170は、傾斜面154の内側端190に位置している。また傾斜面154における外側寄りの部分に、通孔152内の水を通孔152外へ排出する水抜き孔130が設けられている。この水抜き孔130により、傾斜面154によって内側から外側へ向けて流した通孔152内部の水を配線用スリーブ100外部へ排水できる。より好ましくは、水抜き孔130が傾斜面154の外側端110に位置している。なお、傾斜面154は、水抜き孔130近傍で、例えば1箇所その傾斜が急となる領域が存在してもよいし、または、その傾斜が水抜き孔130に向けて徐々に急となるように変化等してもよい。さらに、水抜き孔130近傍で、水を水抜き孔130へ向かうように案内する溝が形成されていてもよい。こうした構造により、傾斜面154が内側から外側へ向けて流した通孔152内部の水を水抜き孔130へスムーズに誘導して排水できる。
【0021】
図6に示すように、パッキン192の下部には、水を下方へ排出する水抜き溝194が形成されている。水抜き溝194により、万が一に通孔152内部の水が防水壁170を越えてしまった場合に、外壁の配線用の貫通孔310(
図1、
図2)へ向かうのを阻止できる。
【0022】
以上のように、本実施形態の配線用スリーブは、従来の煩わしい工程が不要で防水性を高めつつ、外壁の通孔を通じて外部からの配線を内部へ導入することができる。また、本実施形態の配線用スリーブにより、意匠上の問題が解決でき、外見を良くすることができる。
【0023】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0024】
100 配線用スリーブ
112 パッキン(第2シール部材)
114 外側ベース(第2ベース)
130 水抜き孔
150 スリーブ本体
152 通孔
154 傾斜面
170 防水壁
192 パッキン(第1シール部材)
194 水抜き溝
198 内側ベース(第1ベース)
200 パワコン(外部の接続機器)
300 外壁
310 貫通孔