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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128093
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】気泡検知方法および気泡検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/024 20060101AFI20240912BHJP
   G01F 1/66 20220101ALI20240912BHJP
   G01F 1/667 20220101ALI20240912BHJP
【FI】
G01N29/024
G01F1/66 101
G01F1/667 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024112487
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2022017761の分割
【原出願日】2022-02-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】西山 滉一郎
(72)【発明者】
【氏名】櫻 敏臣
(72)【発明者】
【氏名】小川 毅
(72)【発明者】
【氏名】小坂 眞弘
(57)【要約】
【課題】配管を通流する流体への気泡の混入をリアルタイムに、かつ定量的に検知できる気泡検知方法および気泡検知装置を提供する。
【解決手段】配管内を通流する流体への気泡の混入を検知する気泡検知方法は、少なくとも前記配管の入側と出側に設置された伝搬時間差式の超音波流量計により流量を計測する工程と、流量から配管を通流する流体の気泡に影響されない正常流量を演算する工程と、正常流量のうち、入側の正常流量と出側の正常流量の差分を演算する工程と、差分から配管を通流する流体へ気泡が混入したことを判定するとともに混入した気泡の量を推定する工程とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管内を通流する流体への気泡混入を検知する気泡検知方法であって、
少なくとも前記配管の入側と出側に設置された伝搬時間差式の超音波流量計により流量を計測する工程と、
前記流量から前記配管を通流する前記流体の気泡に影響されない正常流量を演算する工程と、
前記正常流量のうち、前記入側の正常流量と前記出側の正常流量の差分を演算する工程と、
前記差分から前記配管を通流する前記流体へ気泡が混入したことを判定するとともに混入した気泡の量を推定する工程と、
を有する気泡検知方法。
【請求項2】
前記正常流量を測定する際に、
一定時間の閾値以上の流量を気泡に影響されない流量とし、その移動平均値を前記正常流量とみなす、請求項1に記載の気泡検知方法。
【請求項3】
配管内を通流する流体への気泡混入を検知する気泡検知方法であって、
少なくとも前記配管の入側と出側に設置された伝搬時間差式の超音波流量計で流量を計測する工程と、
前記計測した流量の時間変化によりハンチングを検知する工程と、
前記計測した流量から前記配管を通流する前記流体の気泡に影響されない正常流量を演算する工程と、
前記正常流量のうち、前記入側の正常流量と前記出側の正常流量の差分を演算する工程と、
ハンチングを検知した場合に気泡ありと判定する、および/または、前記差分から前記配管を通流する前記流体へ気泡が混入したことを判定するとともに混入した気泡の量を推定する工程と、
を有する気泡検知方法。
【請求項4】
気泡の判定結果に基づいて異常出力することをさらに有する、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の気泡検知方法。
【請求項5】
配管内を通流する流体への気泡混入を検知する気泡検知装置であって、
少なくとも前記配管の入側と出側に設置された伝搬時間差式の超音波流量計と、
前記配管を通流する前記流体の気泡に影響されない正常流量を演算する正常流量演算部と、
前記正常流量のうち、前記入側の正常流量と前記出側の正常流量の差分を演算する気泡流量演算部と、
前記差分から前記配管を通流する前記流体へ気泡が混入したことを判定するとともに混入した気泡の量を推定する気泡混入判定部と、
を有する気泡検知装置。
【請求項6】
配管内を通流する流体への気泡混入を検知する気泡検知装置であって、
少なくとも前記配管の入側と出側に設置された伝搬時間差式の超音波流量計と、
前記超音波流量計で計測した流量を取り込む流量取り込み部と、
前記計測した流量の時間変化によりハンチングを検知するハンチング判定部と、
前記配管を通流する前記流体の気泡に影響されない正常流量を演算する正常流量演算部と、
前記正常流量のうち、前記入側の正常流量と前記出側の正常流量の差分を演算する気泡流量演算部と、
ハンチングを検知した場合に気泡ありと判定する、および/または、前記差分から前記配管を通流する前記流体へ気泡が混入したことを判定するとともに混入した気泡の量を推定する気泡混入判定部と、
を有する気泡検知装置。
【請求項7】
前記気泡混入判定部での判定結果に基づいて異常出力する異常出力部をさらに有する、請求項5または請求項6に記載の気泡検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管を通流する流体への気泡の混入を検知する気泡検知方法および気泡検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉の炉体の冷却においては、炉体外面の鉄皮の過熱を防止するため、冷却水配管を母材で鋳込んだクーリングステーブ(CS)が使用され、冷却水を炉体に張り巡らされた冷却配管内に循環させる方法がとられる。ここで、冷却配管を保護している母材が炉内の熱または炉内に装入される原料が原因で脱離した場合、冷却配管が破損することがある。冷却配管破損時において炉内の圧力(以下、炉内圧と記す)と冷却水の水圧(以下、CS水圧と記す)の大小関係により、冷却水配管の破損時の影響が異なる。破損時にCS水圧の方が炉内圧より大きい場合は、冷却水が炉内へ漏水する。逆にCS水圧が炉内圧よりも小さい場合は、炉内から冷却配管へ炉内のガスが混入する(図1)。
【0003】
従来、破損した冷却配管における炉内から配管内に混入した気体の検知は、炉内から混入したガスを冷却水系統の検知パイプに捕集、蓄積するガスキャッチャーを用いて行われており(特許文献1)、検知パイプに蓄積されたガスのレベルを目視で確認、またはレベルスイッチ出力等で確認している。
【0004】
また、特許文献2には、冷却配管内の気泡を直接検知する方法として、超音波流量計を用いた気泡混入の検知方法が開示されている。特許文献2の手法では、気泡が混在する場合には超音波の受信信号の感度が低下するため、その現象に基づいて気泡を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭57-125337号公報
【特許文献2】特許第5070446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のガスキャッチャーは検知パイプにガスが蓄積されるまでの時間遅れがあり、ガスの混入をリアルタイムで検知することができない。そのため、冷却配管が破損し、破損した冷却配管の特定が遅れた場合は冷却配管への適切な処置が行われずに炉内へ冷却水の浸水が発生してしまう。
【0007】
一方、市販(汎用)の超音波流量計は流量(流速)の出力しか備えていないため、特許文献2のように、超音波流量計の受信信号の感度低下に基づいて気泡を検知する手法では、受信信号の感度を十分把握することはできず、実際には気泡混入の有無を判定することは困難であるし、気泡混入量の定量把握もできない。
【0008】
そこで、本発明は、配管を通流する流体への気泡の混入をリアルタイムに検知できる気泡検知方法および気泡検知装置を提供する。
また、本発明は、配管を通流する流体への気泡の混入をリアルタイムに、かつ定量的に検知できる気泡検知方法および気泡検知装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下の[1]~[10]を提供する。
【0010】
[1]配管内を通流する流体への気泡の混入を検知する気泡検知方法であって、
前記配管に設置された伝搬時間差式の超音波流量計で流量を計測する工程と、
前記計測した流量の時間変化によりハンチングを検知する工程と、
ハンチングを検知した場合に前記流体に気泡が混入したと判定する工程と、
を有する気泡検知方法。
【0011】
[2]前記計測した流量の前記時間変化は、
時間変化率が閾値より大きいことを監視する方法、
一定時間の流量の標準偏差が閾値より大きいことを監視する方法、および
一定時間の閾値以下の流量の発生比率を監視する方法、
のいずれか一つの方法をもって求める、[1]に記載の気泡検知方法。
【0012】
[3] 配管内を通流する流体への気泡混入を検知する気泡検知方法であって、
少なくとも前記配管の入側と出側に設置された伝搬時間差式の超音波流量計により流量を計測する工程と、
前記流量から前記配管を通流する前記流体の気泡に影響されない正常流量を演算する工程と、
前記正常流量のうち、前記入側の正常流量と前記出側の正常流量の差分を演算する工程と、
前記差分から前記配管を通流する前記流体へ気泡が混入したことを判定するとともに混入した気泡の量を推定する工程と、
を有する気泡検知方法。
【0013】
[4]前記正常流量を測定する際に、
一定時間の閾値以上の流量を気泡に影響されない流量とし、その移動平均値を前記正常流量とみなす、[3]に記載の気泡検知方法。
【0014】
[5]配管内を通流する流体への気泡混入を検知する気泡検知方法であって、
少なくとも前記配管の入側と出側に設置された伝搬時間差式の超音波流量計で流量を計測する工程と、
前記計測した流量の時間変化によりハンチングを検知する工程と、
前記計測した流量から前記配管を通流する前記流体の気泡に影響されない正常流量を演算する工程と、
前記正常流量のうち、前記入側の正常流量と前記出側の正常流量の差分を演算する工程と、
ハンチングを検知した場合に気泡ありと判定する、および/または、前記差分から前記配管を通流する前記流体へ気泡が混入したことを判定するとともに混入した気泡の量を推定する工程と、
を有する気泡検知方法。
【0015】
[6]気泡の判定結果に基づいて異常出力することをさらに有する、[1]から[5]のいずれかに記載の気泡検知方法。
【0016】
[7]配管内を通流する流体への気泡混入を検知する気泡検知装置であって、
前記配管に設置された伝搬時間差式の超音波流量計と、
前記超音波流量計で計測した流量を取り込む流量取り込み部と、
前記計測した流量の時間変化によりハンチングを検知するハンチング判定部と、
ハンチングを検知した場合に前記流体への気泡混入ありと判定する気泡混入判定部と、
を有する気泡検知装置。
【0017】
[8]配管内を通流する流体への気泡混入を検知する気泡検知装置であって、
少なくとも前記配管の入側と出側に設置された伝搬時間差式の超音波流量計と、
前記配管を通流する前記流体の気泡に影響されない正常流量を演算する正常流量演算部と、
前記正常流量のうち、前記入側の正常流量と前記出側の正常流量の差分を演算する気泡流量演算部と、
前記差分から前記配管を通流する前記流体へ気泡が混入したことを判定するとともに混入した気泡の量を推定する気泡混入判定部と、
を有する気泡検知装置。
【0018】
[9]配管内を通流する流体への気泡混入を検知する気泡検知装置であって、
少なくとも前記配管の入側と出側に設置された伝搬時間差式の超音波流量計と、
前記超音波流量計で計測した流量を取り込む流量取り込み部と、
前記計測した流量の時間変化によりハンチングを検知するハンチング判定部と、
前記配管を通流する前記流体の気泡に影響されない正常流量を演算する正常流量演算部と、
前記正常流量のうち、前記入側の正常流量と前記出側の正常流量の差分を演算する気泡流量演算部と、
ハンチングを検知した場合に気泡ありと判定する、および/または、前記差分から前記配管を通流する前記流体へ気泡が混入したことを判定する気泡混入判定部と、
を有する気泡検知装置。
【0019】
[10]前記気泡混入判定部での判定結果に基づいて異常出力する異常出力部をさらに有する、[7]から[9]のいずれかに記載の気泡検知装置。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、配管に伝搬時間差式流量計を設置し、計測した流量の時間変化によりハンチングを検知した際に気泡ありと判定するので、配管を通流する流体中に気泡が混入されたことをリアルタイムに検知することができる。
【0021】
また、本発明によれば、配管の入側および出側に伝搬時間差式流量計を設置し、入側の流量と出側の流量の較差により配管を通流する流体中の気泡の量を推定するので、配管を通流する流体中に混入された気泡をリアルタイムに、かつ定量的に検知することができる。
【0022】
このため、本発明を例えば高炉のクーリングステーブに用いられる冷却水配管に適用することにより、冷却水配管の破損時に破損を早期発見し、適切なタイミングにて処置を施すことで、炉内への冷却水の浸水を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】従来の高炉CSにおいて炉内圧とCS水圧の大小関係による配管の破損時の影響を説明する図である。
図2】高炉CSの配管に通流する冷却水への気泡の混入を検知する気泡検知装置の一例を示す機能ブロック図である。
図3図2の気泡検知装置における気泡検知方法のフローを説明するためのフローチャートである。
図4】ハンチング判定を説明するための図である。
図5】伝搬時間差式の超音波流量計にて給水流速(流量)と排水流速(流量)の較差により気泡の混入を検知する方法を説明するための図である。
図6】給水流速(流量)と排水流速(流量)の較差により気泡の混入を検知する方法の原理を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0025】
<気泡検知装置>
まず、気泡検知装置について説明する。
図2は、高炉CSの配管に通流する冷却水への気泡の混入を検知する気泡検知装置の一例を示す機能ブロック図である。
【0026】
高炉100には、炉体外面の鉄皮101の過熱を防止するため、冷却水配管103を母材で鋳込んだクーリングステーブ(CS)102が設けられている。気泡検知装置1は、冷却水配管103を通流する冷却水への気泡の混入を検知するものであり、冷却水配管103の入側(給水側)と出側(排水側)に設けられた2台の伝搬時間差式の超音波流量計10と、判定部20とを有する。判定部20は、2台の超音波流量計10の実績(流速・流量)を取り込んで処理し気泡混入判定、気泡混入量演算を行うものであり、演算部30と、記憶部40とを有している。
【0027】
演算部30は、実績取り込み部31、ハンチング判定部32、正常流量演算部33、気泡流量演算部34、気泡混入判定部35、異常出力部36からなる。また、記憶部40には気泡混入のアラームや気泡混入量のトレンドが格納される。
【0028】
実績取り込み部31は、冷却水配管103の入側および出側に設けられた超音波流量計10の流速・流量実績を取り込む。
【0029】
ハンチング判定部32は、超音波流量計10で計測した流量の時間変化率によりハンチング判定を行う。
【0030】
正常流量演算部33は、超音波流量計10で計測された流量から気泡に影響されない正常流量を演算する。
【0031】
気泡流量演算部34は、正常流量演算部33で計測された入側(給水側)流量実績と出側(排水側)流量実績の差分(較差)を演算する。
【0032】
気泡混入判定部35は、ハンチング判定部32のハンチング判定結果、および/または気泡流量演算部34での演算結果から冷却水配管103を通流する冷却水への気泡混入判定を行う。具体的には、気泡混入判定部35では、ハンチング判定部32によりハンチングが検知された場合に冷却水配管103を通流する冷却水への気泡混入ありと判定するか、または、気泡流量演算部34での演算結果から、冷却水配管103を通流する冷却水への気泡混入を判定するとともに、混入した気泡の量を推定する。ハンチング判定部32のハンチング判定結果と気泡流量演算部34での演算結果の両方を用いて気泡混入の判定を行ってもよい。
【0033】
ハンチング判定部32のハンチング判定結果のみを用いた場合、冷却水配管103を通流する冷却水への気泡の有無がリアルタイムで検知可能である。気泡流量演算部34で演算した結果を用いた場合、気泡の有無のみならず気泡の量もリアルタイムで検知可能である。また、これらの両方を用いた場合、ハンチング判定結果に基づく気泡混入の有無と、気泡流量演算部34での演算結果に基づく気泡の量の両方が検知可能である。
【0034】
なお、ハンチング判定、および、流量実績の差分(較差)を用いた気泡の量の推定については後で詳細に説明する。
【0035】
異常出力部36は、気泡混入判定部35で冷却水配管103を通流する冷却水への気泡混入ありと判定された場合、または、推定された気泡の量が閾値を超えた場合、外部(上位計算機・パトライト(登録商標)など)へ警報を出力し、記憶部40へ必要な情報を格納する(例えば、警報、時刻、気泡混入量等)。
【0036】
なお、上記気泡検知装置1では、演算部30を、実績取り込み部31、ハンチング判定部32、正常流量演算部33、気泡流量演算部34、気泡混入判定部35、異常出力部36で構成したが、正常流量演算部33、気泡流量演算部34を除いた装置構成にして、ハンチング判定部32のハンチング判定結果により気泡の有無の判定のみを行う装置とすることもできる。このような装置構成の場合、超音波流量計10は、入側または出側に1台設置するだけで気泡の有無を判定することができる。
【0037】
また、演算部30を、ハンチング判定部32を除いた装置構成にして、気泡流量演算部34により正常流量演算部で計測された入側流量実績と出側流量実績の差分を演算することのみにより、冷却水への気泡の混入判定および冷却水に混入した気泡の量の推定を行う装置とすることもできる。
【0038】
<気泡検知方法>
次に、図2のように構成される気泡検知装置1における気泡検知方法のフローについて説明する。図3は気泡検知方法のフローを説明するためのフローチャートである。
【0039】
まず、冷却水配管103の入側および出側に設けられた超音波流量計10の流速・流量実績を実績取り込み部31に取り込む(ステップST1)。
【0040】
次に、ハンチング判定部32において、超音波流量計10で計測した流量の時間変化率によりハンチング判定を行う(ステップST2)。
【0041】
次に、正常流量演算部33により、超音波流量計10で気泡混入の影響を排するように気泡に当たらない超音波を計測した値から気泡に影響されない正常流量を演算する(ステップST3)。
【0042】
次に、気泡流量演算部34により、ステップST3で得られた入側流量実績と出側流量実績の差分を演算し、冷却水配管103を通流する冷却水に混入した気泡の量を推定する(ステップST4)。
【0043】
次に、気泡混入判定部35により、ハンチング判定部32のハンチング判定結果、および/または気泡流量演算部34での演算結果から冷却水配管103を通流する冷却水への気泡混入判定を行う(ステップST5)。具体的には、ステップST5では、ハンチング判定部32によりハンチングが検知された場合に冷却水配管103を通流する冷却水への気泡混入ありと判定するか、または、気泡流量演算部34での演算結果から、冷却水配管103を通流する冷却水への気泡混入を判定するとともに、混入した気泡の量を推定する。ハンチング判定部32のハンチング判定結果と気泡流量演算部34での演算結果の両方を用いて気泡混入の判定を行ってもよい。
【0044】
ステップST5でハンチングが生じていると判定した場合、または気泡混入量が閾値以上と判定された場合、異常出力部36から警報を出力し、記憶部40へ気泡混入量等の必要な情報を格納する(ステップST6)。
【0045】
<ハンチング判定>
次に、上述したハンチング判定について詳細に説明する。
図4に伝搬時間差式の超音波流量計にてハンチングを捉えることにより気泡の混入を検知する方法を示す。図4において、伝搬時間差式の超音波流量計200は、配管300に、超音波の発振、受信を行う一対のセンサー、すなわち発振部200aおよび受信部200bを配して構成される。
【0046】
伝搬時間差方式の超音波流量計200は、図4で示すセンサー測定範囲(超音波通過方向)の超音波の伝搬速度差(発信部200aから受信部200bへの伝搬速度と受信部200bから発信部200aへの伝搬速度の差)から流体の流速を求め、配管断面積を乗ずることにより流量を算出する。
【0047】
ここで、配管300内の流体(冷却水)に気体が混入した場合、センサー測定範囲(超音波伝搬範囲)を気泡が断続的に通過する形となる。この場合気泡と流体の密度差から超音波の伝搬速度が異なるため、流量指示値の時間変化率が急激に増加するので、その場合気泡混入によるハンチングが発生したとみなせる。時間変化率に関しては、例えば、サンプリング周期間のデータの変化を逐次計算し、閾値を超えるかどうかで判定することができる。なお、気泡混入時の急峻な変化を捉えるために、サンプリング周期は1Hz以上が望ましい。
【0048】
他の手法として、流量のばらつき(変動)を監視する手法や、気泡測定の頻度を監視する手法などでもよい。流量のばらつき(変動)を監視する手法は、過去一定時間サンプリングした流量指示値の標準偏差が閾値を超えるかどうかを監視する手法である。また、気泡測定の頻度を監視する手法は、過去一定時間において、気泡を測定したとみなせる閾値以下の流量指示値の発生比率を常時計算して発生比率が閾値を超えるかどうかを監視する手法である。
【0049】
<流量/流速の給水側(入側)と排水側(出側)の指示値の差分(較差)による気泡混入判定>
次に、上述した流量/流速の給水側(入側)と排水側(出側)の指示値の差分(較差)による気泡混入判定について詳細に説明する。
図5に伝搬時間差式の超音波流量計にて給水側流速(流量)と排水側流速(流量)の較差により気泡の混入を検知する方法を示す。この方法の場合、流体への気泡混入の前後の変化を捉えるため、超音波の発信および受信を行う一対のセンサー(発信部および受信部)を有する超音波流量計は給水側と排水側の両方に設置する必要がある。これらの超音波流量計により、給水側と排水側の配管300内の流体(冷却水)の流量及び流速指示値を常時監視し、給水側と排水側の超音波流量計における指示値の較差を把握し、図5の(a)のように較差がない場合は気泡混入「無」と判定し、(b)のように較差がある場合は気泡混入「有」と判定する。
【0050】
以下、配管300において配管が破損し外部の気体が配管内に流入する場合について考える。図5の(b)に示すように、配管の破損箇所から上流(給水)側の流体の体積をV、下流(排水)側の流体の体積をVとする。破損箇所から流入した気体の体積をVとすると、V=V+V>Vが成り立つ。また混入する気体は給水側の流体の流れを妨げ流速を低下する方向に働く。配管300の断面積は一定であることを考慮すると、給水側から見て排水側の流速は増大する。
【0051】
つまり、図6に示すように、配管内に気体が混入すると、気体は流体内部にて分散して気泡状になり、気泡により給水側の流速が低下/排水側の流速が増大するため、給水側に対して排水側の流速が増大する。流速の増大はそのまま流量の増大を意味するため、給水側に対して排水側の流量の増大した分を気泡混入量と見なすことができる。
【0052】
ここで、気泡混入時には、(ハンチング判定)で記載したように汎用の伝搬時間差式の超音波流量計では出力がハンチングすることがあるため、次の論理で正常に流体の速度のみを計測した測定値を扱う。
【0053】
気泡混入時には、発信した超音波と気泡が衝突すると、流量測定値は0になるか、ないしは流量値の値は過小に測定される。ただし、気泡の量がそれほど多くなければ、気泡に当たらずに超音波が伝搬し、流量が正常に測定できるため、正常に測定した信号を判定できれば、気泡の影響を排した流体の速度を検出可能である。
【0054】
この場合に、一定時間の閾値以上の流量指示値については、超音波が気泡に当たらず測定できるため、その際に流体の速度が測定されたとみなすことができ、その時の流量の移動平均値を気泡の影響を排した流体の流量の計測値とする手法をとることができる。
【0055】
その他、気泡の影響を排した流体の速度として、一定時間内の流量指示値から流量が上位に密集した集団をクラスタリング(層別)の手法で統計的に抽出するのでもよい。
【0056】
<実施形態の効果>
以上のように、本実施形態によれば、配管に伝搬時間差式の超音波流量計を設置し、計測した流体(冷却水)の流量の時間変化によりハンチングを検知した際に気泡ありと判定することにより、配管を通流する流体(冷却水)中に気泡が混入されたことをリアルタイムに検知することができる。また、冷却水配管の入側および出側に伝搬時間差式の超音波流量計を設置し、入側の流量と出側の流量の較差により配管を通流する流体中の気泡の量を推定することにより、配管を通流する冷却水中に混入された気泡をリアルタイムに、かつ定量的に検知することができる。さらに、これらの両方を行うことにより、より高精度に気泡の検知をリアルタイムにかつ定量的に行うことができる。
【0057】
このような方法で、高炉CSに用いられる冷却水配管内の冷却水内の気泡を検知することにより、冷却水配管が破損した場合に、破損を早期発見し、適切なタイミングにて処置を施すことで、炉内への冷却水の浸水を防止することが可能となる。
【0058】
<他の適用>
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらはあくまで例示に過ぎず、制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、本発明の要旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0059】
例えば、上記実施形態では、伝搬時間差式の超音波流量計を、入側と出側に2台設置した例を示したが、上述のようにハンチング判定のみを行う場合は、流量計は1台であってもよい。また、配管が長く、気泡混入を早期に検知する必要がある場合は、さらに多くの超音波流量計を設けてもよい。例えば、高炉全体の冷却水配管の破損の早期の特定を目的とするような場合は、配管全体に数百台の超音波流量計を設置する必要がある。
【0060】
また、上記実施形態では、高炉CSの配管に通流する冷却水に混入された気泡を検知する場合を例にとって示したが、これに限らず、流体が通流する配管であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 気泡検知装置
10 伝搬時間差式の超音波流量計
20 気泡判定部
30 演算部
40 記憶部
100 高炉
101 鉄皮
102 クーリングステーブ(CS)
103 冷却水配管(配管)
図1
図2
図3
図4
図5
図6