IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 昭和アルミニウム缶株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-飲料用缶の製造方法 図1
  • 特開-飲料用缶の製造方法 図2
  • 特開-飲料用缶の製造方法 図3
  • 特開-飲料用缶の製造方法 図4
  • 特開-飲料用缶の製造方法 図5
  • 特開-飲料用缶の製造方法 図6
  • 特開-飲料用缶の製造方法 図7
  • 特開-飲料用缶の製造方法 図8
  • 特開-飲料用缶の製造方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128099
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】飲料用缶の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/20 20060101AFI20240912BHJP
   B65D 6/30 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
B65D25/20 P
B65D6/30
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024112732
(22)【出願日】2024-07-12
(62)【分割の表示】P 2020214459の分割
【原出願日】2020-12-24
(71)【出願人】
【識別番号】521469760
【氏名又は名称】アルテミラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100113310
【弁理士】
【氏名又は名称】水戸 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】川畑 和浩
(72)【発明者】
【氏名】石島 秀一
(72)【発明者】
【氏名】氏家 秀明
(72)【発明者】
【氏名】荒川 智弘
(72)【発明者】
【氏名】佐原 秀雄
(57)【要約】
【課題】飲料が収容される飲料用缶に付与された識別情報に起因して飲料缶の見栄えが悪くなることを抑える。
【解決手段】飲料用缶1は、缶蓋が取り付けられる被取り付け部10を備える。この被取り付け部10に対して、印刷によって、この飲料用缶1と他の飲料用缶との識別に用いられる情報である識別情報20が付されている。識別情報20は、一次元のバーコードによって形成されている。なお、識別情報20は、一次元のバーコードに限らず、二次元のバーコードや、数字や文字などのテキスト情報や、記号や図形などで形成してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を少なくとも一端部に有する筒状体であって飲料用缶に用いられる筒状体を形成する形成工程と、
前記筒状体の前記開口が位置する側の前記一端部に、当該筒状体を基に形成される飲料用缶と他の飲料用缶との識別に用いられる識別情報を印刷する印刷工程と、
を含む、飲料用缶の製造方法。
【請求項2】
前記筒状体の前記開口が位置する側の前記一端部の縮径を行う縮径工程を更に備え、
前記縮径工程による前記一端部の縮径が行われる前に、当該一端部に対する前記識別情報の印刷が行われる請求項1に記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項3】
前記縮径が行われる前に行われる、前記一端部に対する前記識別情報の印刷では、
前記筒状体の周方向に延びる形状を有する識別情報であって、当該筒状体の開口縁側の位置する辺の長さの方が当該開口縁側とは反対側に位置する辺の長さよりも大きい形状を有する識別情報の印刷を行う請求項2に記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項4】
前記筒状体の外周面への印刷画像の形成を行う画像形成工程を更に備え、
前記識別情報の印刷を行う前記印刷工程では、
前記外周面のうちの前記印刷画像の形成領域と、前記筒状体の前記一端部に位置する開口縁との間に前記識別情報の印刷を行うとともに、当該形成領域側に当該識別情報が寄るように当該識別情報の印刷を行う請求項1に記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項5】
印刷版を用い、前記筒状体の外周面への印刷画像の形成を行う画像形成工程を更に備え、
前記印刷版を用いた前記外周面への前記印刷画像の形成を行う際に、当該印刷版の一部を前記一端部に接触させて前記識別情報の印刷を行う請求項1に記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項6】
前記印刷工程では、白色のインクを用いて前記識別情報を印刷する請求項1に記載の飲料用缶の製造方法。
【請求項7】
開口を少なくとも一端部に有する筒状体を形成する形成工程と、
前記筒状体の形成に用いられる材料のうちの前記一端部に位置するようになる部分に、当該筒状体を基に形成される飲料用缶と他の飲料用缶との識別に用いられる識別情報を印刷する印刷工程と、
を備える、飲料用缶の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料用缶の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、搬送路上の缶を強制回転させながら、缶のバーコードをバーコードリーダーで読み取って異種缶を検出する異種缶検出方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-23925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
飲料が収容される飲料用缶に識別情報を付与すると、この飲料用缶と他の飲料用缶との識別を行える。ところで、この場合、この飲料用缶に飲料が収容され飲料缶が完成した場合に、この識別情報が露出し、この識別情報に起因してこの飲料缶の見栄えが悪くなるおそれがある。
本発明の目的は、飲料が収容される飲料用缶に付与された識別情報に起因して飲料缶の見栄えが悪くなることを抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明が適用される、飲料缶の製造方法は、開口を少なくとも一端部に有する筒状体であって飲料用缶に用いられる筒状体を形成する形成工程と、前記筒状体の前記開口が位置する側の前記一端部に、当該筒状体を基に形成される飲料用缶と他の飲料用缶との識別に用いられる識別情報を印刷する印刷工程と、を含む、飲料用缶の製造方法である。
【0006】
ここで、前記筒状体の前記開口が位置する側の前記一端部の縮径を行う縮径工程を更に備え、前記縮径工程による前記一端部の縮径が行われる前に、当該一端部に対する前記識別情報の印刷が行われてもよい。
また、前記縮径が行われる前に行われる、前記一端部に対する前記識別情報の印刷では、前記筒状体の周方向に延びる形状を有する識別情報であって、当該筒状体の開口縁側の位置する辺の長さの方が当該開口縁側とは反対側に位置する辺の長さよりも大きい形状を有する識別情報の印刷を行ってもよい。
また、前記筒状体の外周面への印刷画像の形成を行う画像形成工程を更に備え、前記識別情報の印刷を行う前記印刷工程では、前記外周面のうちの前記印刷画像の形成領域と、前記筒状体の前記一端部に位置する開口縁との間に前記識別情報の印刷を行うとともに、当該形成領域側に当該識別情報が寄るように当該識別情報の印刷を行ってもよい。
また、印刷版を用い、前記筒状体の外周面への印刷画像の形成を行う画像形成工程を更に備え、前記印刷版を用いた前記外周面への前記印刷画像の形成を行う際に、当該印刷版の一部を前記一端部に接触させて前記識別情報の印刷を行ってもよい。
また、前記印刷工程では、白色のインクを用いて前記識別情報を印刷してもよい。
【0007】
他の観点から捉えると、本発明が適用される飲料用缶の製造方法は、開口を少なくとも一端部に有する筒状体を形成する形成工程と、前記筒状体の形成に用いられる材料のうちの前記一端部に位置するようになる部分に、当該筒状体を基に形成される飲料用缶と他の飲料用缶との識別に用いられる識別情報を印刷する印刷工程と、を備える、飲料用缶の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、飲料が収容される飲料用缶に付与された識別情報に起因して飲料缶の見栄えが悪くなることを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】飲料用缶の正面図である。
図2図1のII-II線における断面を示した図である。
図3】飲料用缶への缶蓋の取り付けを説明する図である。
図4】(A)、(B)は、巻き締め加工を説明する図である。
図5】飲料用缶の製造方法(製造工程)を説明する図である。
図6】印刷工程、画像形成工程を説明する図である。
図7】フランジ加工を説明する図である。
図8図5の符号VIIIで示す部分の拡大図である。
図9】白色のインクを用いて筒状体に形成した識別情報を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る飲料用缶の正面図である。
本実施形態の飲料用缶1は、筒状(円筒状)に形成された飲料用缶である。
この飲料用缶1の内部には、ビール等のアルコール系飲料や、清涼飲料(非アルコール系飲料)などの飲料(内容物)が充填される。そして、飲料の充填後、この飲料用缶1に対して缶蓋(後述)が取り付けられ、飲料が充填された飲料缶が完成する。
ここで、「飲料用缶」とは、飲料が充填される前の缶体を指す。「飲料缶」とは、飲料が充填され缶蓋が取り付けられた後の缶体を指す。
【0011】
図1に示すように、飲料用缶1は、缶蓋が取り付けられる被取り付け部10を備える。
本実施形態では、この被取り付け部10に対して、印刷によって、この飲料用缶1と他の飲料用缶(不図示)との識別に用いられる情報である識別情報20が付されている。
この識別情報20は、一次元のバーコードによって形成されている。なお、識別情報20は、一次元のバーコードに限らず、二次元のバーコードや、数字や文字などのテキスト情報や、記号や図形などで形成してもよい。
【0012】
このように、飲料用缶1に識別情報20を付与すると、例えば、飲料用缶1の製造段階における飲料用缶1の管理を行いやすくなる。
より具体的には、例えば、識別情報20を基に、複数の飲料用缶1の中から、特定の飲料用缶1を選別したり、複数の飲料用缶1の中から選択された飲料用缶1の種別を、識別情報20を基に把握できたりする。
なお、飲料用缶1に付される識別情報20は、1つの飲料用缶1毎に異なっている必要はなく、共通の性質を有する複数の飲料用缶1を1つの単位として、この単位毎に、1つの識別情報20を付与してもよい。
【0013】
図1に示すように、識別情報20は、飲料用缶1の周方向に延びるように形成されている。言い換えると、本実施形態では、識別情報20の形成領域が、飲料用缶1の周方向に延びている。
また、本実施形態では、識別情報20の形状(識別情報20に外接する線である外接線21の形状)が矩形となっている。また、本実施形態では、矩形形状のこの識別情報20は、飲料用缶1の周方向に延びている。
また、本実施形態では、飲料用缶1の軸方向における識別情報20の寸法L1よりも、飲料用缶1の周方向における識別情報20の寸法L2の方が大きい。
【0014】
本実施形態では、飲料用缶1のうち、被取り付け部10に缶蓋が取り付けられることにより見えなくなる箇所に、識別情報20が付されている。
言い換えると、本実施形態では、飲料用缶1のうち、被取り付け部10に缶蓋が取り付けられることによりこの缶蓋により覆われるようになる箇所に、識別情報20が付されている。
これにより、本実施形態では、被取り付け部10に缶蓋が取り付けられ飲料が充填された飲料缶が完成すると、識別情報20が隠れるようになる。この場合、ユーザが、飲料缶の外側からこの飲料缶を見た場合に、ユーザは、識別情報20を確認(視認)できない。
【0015】
また、本実施形態では、飲料用缶1は、筒状(円筒状)に形成され、一端部31側に円形の開口13を有し、他端部32側に底部14を有する。
本実施形態では、飲料用缶1のこの開口13に、缶蓋が取り付けられる。言い換えると、本実施形態では、飲料用缶1のうち、開口13が設けられている側に位置する一端部31に対して、缶蓋が取り付けられる。
識別情報20は、飲料用缶1のこの一端部31に設けられている。
【0016】
本実施形態では、識別情報20は、飲料用缶1の一端部31に設けられ、また、飲料用缶1の外周面16に設けられている。
また、本実施形態の飲料用缶1は、円筒状の缶胴部12を備える。また、図1では、いわゆるネック処理が行われた飲料用缶1を示しており、缶胴部12よりも開口13側には、缶胴部12から開口13に近づくに従い外径が次第に小さくなる縮径部11が設けられている。
【0017】
さらに、本実施形態では、飲料用缶1の外周面16に、印刷によって形成された画像である印刷画像19が設けられている。印刷画像19は、缶胴部12の外周面16、および、縮径部11の外周面16に設けられている。なお、印刷画像19は、識別情報20の形成箇所には設けられていない。
また、縮径部11のうち、開口縁25側の位置する端部には、開口縁25に近づくに従い径が次第に大きくなるフランジ部26が設けられている。本実施形態では、このフランジ部26の外周面16に、識別情報20が印刷されている。
なお、飲料用缶1を、図1の矢印1Aで示す方向から見た場合に、開口13、開口縁25は、円形となっている。
また、本明細書では、以下、縮径部11のうち、フランジ部26よりも缶胴部12側に位置する部分を、縮径部本体27と称する。
【0018】
図2は、図1のII-II線における断面を示した図である。より具体的には、図2は、飲料用缶1のうちの識別情報20が設けられている部分の断面を示した図である。
識別情報20は、飲料用缶1の外周面16に設けられている。
また、本実施形態では、飲料用缶1の一端部31に位置する開口縁25と、印刷画像19との間に、識別情報20が設けられている。
【0019】
本実施形態では、識別情報20は、開口縁25まで達しておらず、開口縁25と識別情報20との間に、識別情報20が存在しない非存在領域91が設けられている。
識別情報20が開口縁25まで達する構成であると、識別情報20を印刷する際に、識別情報20を構成するインクが、飲料用缶1の内面側に達しやすくなる。
これに対し、本実施形態のように、非存在領域91が存在する構成であると、飲料用缶1の内面側へインクが達しにくくなる。
【0020】
また、本実施形態では、識別情報20と印刷画像19とは接しておらず、識別情報20と印刷画像19との間にも、識別情報20が存在しない非存在領域92が設けられている。
言い換えると、識別情報20と、印刷画像19の形成領域33との間に、識別情報20が形成されていない非存在領域92が設けられている。
これにより、識別情報20が印刷画像19に接することに起因する印刷画像19の質の低下が抑制される。
【0021】
図3は、飲料用缶1への缶蓋50の取り付けを説明する図である。
本実施形態では、飲料用缶1への缶蓋50の取り付けにあたっては、図3の符号3Aで示すように、まず、飲料用缶1の上に缶蓋50を載せる。より具体的には、飲料用缶1のフランジ部26の上に、缶蓋50を載せる。
次いで、缶蓋50の外周縁51および飲料用缶1のフランジ部26の両者に対して、いわゆる巻き締め加工を行う。
【0022】
図4(A)、(B)は、巻き締め加工を説明する図である。
図4(A)は、巻き締め加工を行う前の状態を示し、図4(B)は、巻き締め加工を行った後の状態を示している。
巻き締め加工では、缶蓋50の外周縁51(図4(A)参照)および飲料用缶1の被取り付け部10の両者に対して、これらの部分を図中下方(底部14(図1参照)側)へ曲げる曲げ加工が行われる。
より具体的には、本実施形態では、缶蓋50と飲料用缶1のフランジ部26とが重なっている部分に対して、この重なっている部分を下方へ曲げる曲げ加工が行われる。
【0023】
これにより、本実施形態では、図4(B)に示すように、被取り付け部10のうち、曲げ加工によって内側に位置するようになる箇所10Xに、識別情報20が位置するようになる。
本実施形態では、曲げ加工(巻き締め加工)が行われると、図4(B)に示すように、フランジ部26(図4(A)参照)であった箇所が、縮径部本体27(図1参照)の外周面27A(図1参照)に対向するようになる。
本実施形態では、飲料用缶1のうち、この外周面27Aに対向するようになる部分に、識別情報20が付されている。
【0024】
本実施形態では、曲げ加工によって、飲料用缶1のうちのフランジ部26が設けられている部分が、飲料用缶1の底部14(図1参照)側に折り返される形となる。
これにより、本実施形態では、飲料用缶1のうちの、フランジ部26であった箇所が、飲料用缶1の外周面16(図1参照)に対向する。
そして、この場合、図4(B)に示すように、曲げ加工前にフランジ部26であった箇所と、縮径部本体27(図1参照)との間に、識別情報20が位置する。
言い換えると、本実施形態では、曲げ加工が行われると、飲料用缶1の一部1Eと、飲料用缶1のうちのこの一部1Eに対向する他の部分1Fとの間に、識別情報20が位置する。
【0025】
また、本実施形態では、缶蓋50が取り付けられると、缶蓋50のうちの、Uの字状となっている部分4X(図4(B)参照)(以下、「U字状部分4X」)の内側に、曲げ加工前にフランジ部26であった箇所が位置する。これにより、本実施形態では、曲げ加工が行われると、このU字状部分4Xの内側に、識別情報20が位置する。
さらに、本実施形態では、缶蓋50のうちの、U字状部分4Xに接続された接続部分4Yが、飲料用缶1の一部1Eと飲料用缶1の他の部分1Fとの間に入り、この一部1Eと他の部分1Fとにより挟まれる。
【0026】
図5は、図1にて示した飲料用缶1の製造方法(製造工程)を説明する図である。
飲料用缶1の製造にあたっては、まず、金属板(例えば、アルミニウム板)に対し、潤滑油を塗布した後、カッピングプレスによって打ち抜き加工、絞り加工を行い、カップを成形する(カップ成形)。
そして、ボディメーカーによって、このカップに対して、絞り、しごき(Drawing and Ironing)加工が行われ、さらに、パンチが突き当てられる。これにより、下部にドーム形状を有するDI缶が形成される(DI成形)。
その後、DI缶の上端部を切り揃えるトリミング加工がトリマによって行われる(トリミング)。
【0027】
次いで、トリミング加工が施されたDI缶に残存している潤滑油をウォッシャによって洗い落とす(脱脂洗浄)。次いで、その後の印刷で用いるインクや塗料の密着性を高めるための化成処理が施される(化成処理)。
これらの処理により、符号5Aで示すように、開口72を一端部71Aに有し、他端部71Bに底部73を有する筒状体71であって、上記の飲料用缶1に用いられる筒状体71が形成される。
カップ成形から化成処理までの工程は、筒状体71を形成する形成工程と捉えることができる。
【0028】
さらに、本実施形態では、符号5Bで示すように、印刷工程、画像形成工程が設けられている。
印刷工程では、筒状体71の一端部71Aに対して、上記の識別情報20を印刷する。また、画像形成工程では、筒状体71の外周面71Eへの印刷を行い、上記の印刷画像19を形成する。
【0029】
図6は、印刷工程、画像形成工程を説明する図である。
画像形成工程における印刷画像19の形成は、印刷版80を用いて行う。具体的には、インクが載った状態の印刷版80を筒状体71の外周面71Eに接触させて、この外周面71Eに印刷画像19を形成する。
なお、図6では、1つの印刷版80を表示しているが、印刷画像19が複数色のインクが用いられて形成される画像である場合には、色毎に印刷版80が用意される。この場合、印刷版80を用いた筒状体71への印刷が、印刷版80が設けられている数だけ行われる。
【0030】
印刷工程における識別情報20の印刷は、この印刷版80を用いる。
本実施形態では、この印刷版80に、上記の識別情報20を印刷するための凹凸(インクが付着する凸部、インクが付着しない凹部)が形成されている。本実施形態では、印刷版80を用いて印刷画像19の形成を行う際に、この印刷版80の一部を、筒状体71の一端部71Aに接触させる。これにより、この一端部71Aに識別情報20が形成される。
本実施形態では、印刷版80が共用される形となっており、1つの印刷版80を用いて、印刷画像19および識別情報20の形成を行う。
なお、本実施形態では、印刷版80から筒状体71に直接印刷する例を示したが、印刷版80から識別情報20、印刷画像19を一旦ゴムシートに転写し、このゴムシートから筒状体71に再度転写して印刷してもよい。
【0031】
なお、これに限らず、識別情報20の形成のための専用の印刷版を用意し、この専用の印刷版で、識別情報20の形成を行ってもよい。
また、本実施形態では、印刷版80を用いる場合を一例に説明したが、印刷版80は必須ではなく、印刷画像19および識別情報20は、インクジェットヘッド(インクジェット印刷方式)を用いて形成してもよい。
また、印刷画像19および識別情報20のうちの一方を、印刷版80を用いて形成し、他方を、インクジェットヘッドを用いて形成してもよい。
【0032】
その後、本実施形態では、図5の符号5Dに示すように、内容物である飲料を安定的に保つための樹脂塗料が筒状体71の内周面に塗布される(内面塗装)。
その後、本実施形態では、筒状体71に対して、筒状体71の上部に金型に押しつけられながら口絞りするネック加工がネッカフランジャによって施される(ネック加工)。
【0033】
本実施形態では、このネック加工が行われる工程を、縮径工程と捉えることができ、このネック加工により、筒状体71の一端部71A側の縮径が行われ、上記の縮径部11(図1参照)が形成される。
本実施形態では、印刷工程、画像形成工程の後に、ネック加工の工程(縮径工程)が設けられおり、このネック加工による筒状体71の縮径が行われる前に、筒状体71に対する、印刷画像19の形成、識別情報20の形成が行われる。
【0034】
その後、本実施形態では、スピニング加工が筒状体71の一端部71Aに対して行われ、これにより、筒状体71の一端部71Aに、上記のフランジ部26(図1参照)が形成される(フランジ加工)。
このフランジ加工を経ると、図1にて示した飲料用缶1が完成する。
フランジ加工では、図7(フランジ加工を説明する図)に示すように、スピナーと呼ばれる回転金型90を、筒状体71の一端部71Aに押し当ててフランジ部26(図1参照)を形成する。
【0035】
そして、本実施形態では、完成したこの飲料用缶1が、飲料メーカ等に出荷される。
飲料メーカ等では、図5の符号5Eに示すように、この飲料用缶1の内部に、内容物である飲料が充填される(内容物の充填)。
次いで、飲料用缶1に対して缶蓋50が取り付けられる(缶蓋の取付)。具体的には、上記の巻き締め加工が行われ、飲料用缶1に対して缶蓋50が取り付けられる。これにより、飲料缶が完成する。
本実施形態では、飲料用缶1に缶蓋50が取り付けられると、上記のように、識別情報20が隠れるようになる。
【0036】
図8は、図5の符号VIIIで示す部分の拡大図である。
言い換えると、図8は、筒状体71のうちの識別情報20が印刷された部分を拡大した図である。言い換えると、図8は、筒状体71の縮径が行われる前に一端部71Aに対して行われた印刷により形成された識別情報20を示した図である。
図8に示すように、筒状体71の縮径が行われる前の状態では、形成された識別情報20は、筒状体71の周方向に延びる形状を有する。
【0037】
また、識別情報20は、筒状体71の開口縁71G側の位置する辺である開口縁側辺20Eと、開口縁側辺20Eとは反対側に位置する辺である反対側辺20Fの2つの辺を有する。本実施形態では、開口縁側辺20Eの長さの方が、反対側辺20Fの長さよりも大きい。
言い換えると、識別情報20は、逆台形状に形成されており、これにより、上辺に相当する開口縁側辺20Eの長さの方が、下辺に相当する反対側辺20Fの長さよりも大きい。
【0038】
本実施形態では、このように、識別情報20が逆台形状に形成されており、これにより、筒状体71の縮径を行った後には、図1に示すように、識別情報20が、概ね矩形形状となる。
言い換えると、本実施形態では、筒状体71の縮径を行うと、開口縁側辺20Eの長さと反対側辺20Fの長さとの差が、筒状体71の縮径を行う前に比べて小さくなる。
なお、本実施形態では、最良の実施形態として識別情報20を逆台形に形成したが、フランジ加工により識別情報20が変形した場合であっても識別情報20の識別が可能であれば、識別情報20を矩形に形成しておいてもよい。
【0039】
また、本実施形態では、識別情報20の印刷を行う印刷工程では、図8に示すように、印刷画像19の形成領域33と、筒状体71の開口縁71Gとの間に、識別情報20の印刷を行う。
さらに、本実施形態では、この印刷にあたり、形成領域33側に識別情報20が寄るように識別情報20の印刷を行う。
【0040】
ここで、「形成領域33側に識別情報20が寄る」とは、識別情報20の中央部Cであって筒状体71の軸方向における中央部Cが、開口縁71Gよりも形成領域33に近い側に位置する状態を言う。
これにより、この場合、中央部Cが開口縁71Gに近い側に位置する場合に比べ、開口縁71Gと識別情報20との離間距離が大きくなる。そして、この場合、識別情報20の印刷を行う際に、識別情報20を構成するインクが、筒状体71の内面側に達しにくくなる。
【0041】
ここで、識別情報20の形成(印刷)にあたって使用するインクの組成は特に制限されない。また、識別情報20の形成にあたって使用するインクの色も特に制限されない。
識別情報20の形成にあたって使用するインクの色としては、例えば、黒色が挙げられる。また、その他に、識別情報20の形成にあたって使用するインクとしては、白色のインクが挙げられる。
【0042】
図9は、白色のインクを用い筒状体71に形成した識別情報20を示した図である。
白色のインクを用いて識別情報20の印刷を行う場合は、飲料用缶1の金属の地の部分が、黒色に相当する色となり、バーコードのバーを構成する。また、白色のインクの部分が、互いに隣接するバーの間に位置するスペース(空白)となる。
アルミニウムなどの金属を用いた飲料用缶1では、白色のインクを用いた場合であっても、バーコードを構成する2つの要素であるバーとスペースとを形成できる。
【0043】
白色のインクは、缶胴部12(図1参照)に形成されるメインの印刷画像19にて使用されることも多く、白色のインクを用いると、識別情報20の形成のための専用のインクを用意せずに、識別情報20の形成を行える。
より具体的には、メインの印刷画像19には、商品の識別のためバーコードが含まれることが多く、このバーコードでは、背景が白色となっていることが多い。
【0044】
この場合に、識別情報20を白色のインクで形成すると、識別情報20の形成のための専用のインクを用意せずに、識別情報20の印刷を行える。
より具体的には、本実施形態では、上記の通り、印刷画像19の形成のための印刷版80を用いて印刷画像19を形成するが、この場合に、識別情報20が白色で形成されると、共通の印刷版80と白色のインクとを用いて、印刷画像19および識別情報20の両者の形成を行える。
【0045】
ここで、上記では、いわゆる2ピース缶の製造方法を説明したが、3ピース缶の製造方法にて、筒状体71を形成する場合は、軸方向における一端部および他端部の両端部に開口が設けられた筒状体71を形成することになる。
この場合も、識別情報20を印刷するにあたっては、筒状体71のうちの、缶蓋50が取り付けられる側または底蓋が取り付けられる側のいずれかの端部に、識別情報20を印刷することになる。
【0046】
また、その他に、上記では、筒状体71を形成した後に、この筒状体71に対して識別情報20を形成したが、識別情報20を形成するタイミングはこれに限られない。
例えば、筒状体71を形成する前の材料(板材)の段階のときに、この材料に対して、識別情報20を形成し、その後に、この材料を基に筒状体71を形成してもよい。
【0047】
この場合は、筒状体71の形成に用いられる材料のうち、上記の一端部71A(図5の符号5X参照)(缶蓋50が取り付けられる側の端部)に位置するようになる部分に対して、識別情報20を形成する。
その後、この材料を基に、上記の筒状体71を形成する。
これによっても、筒状体71のうちの缶蓋50が取り付けられる一端部71Aに対して、識別情報20が形成される。
【符号の説明】
【0048】
1…飲料用缶、10…被取り付け部、13…開口、14…底部、16…外周面、19…印刷画像、20…識別情報、20E…開口縁側辺、20F…反対側辺、25…開口縁、31…一端部、32…他端部、50…缶蓋、71…筒状体、71A…一端部、72…開口、80…印刷版
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9