(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128156
(43)【公開日】2024-09-20
(54)【発明の名称】金属加工油用基油、及び不水溶性金属加工油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 105/38 20060101AFI20240912BHJP
C10M 177/00 20060101ALI20240912BHJP
C10N 70/00 20060101ALN20240912BHJP
C10N 40/20 20060101ALN20240912BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20240912BHJP
【FI】
C10M105/38
C10M177/00
C10N70:00
C10N40:20 Z
C10N30:02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024114191
(22)【出願日】2024-07-17
(62)【分割の表示】P 2020016966の分割
【原出願日】2020-02-04
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 辰也
(57)【要約】
【課題】本発明は、高い引火点と室温付近での低い粘度を両立し、更に低温での流動性を有する、不水溶性金属加工油組成物に配合される金属加工油用基油、及び前記金属加工油用基油を含有する不水溶性金属加工油組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の金属加工油用基油は、脂肪酸とネオペンチルグリコールとのエステルを含み、前記脂肪酸が、デカン酸とドデカン酸を含み、前記デカン酸と前記ドデカン酸のモル比(デカン酸/ドデカン酸)が、30/70以上70/30以下である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸とネオペンチルグリコールとのエステルを含む、金属加工油用基油であって、
前記脂肪酸が、デカン酸とドデカン酸を含み、前記デカン酸と前記ドデカン酸のモル比(デカン酸/ドデカン酸)が、30/70以上70/30以下である、金属加工油用基油。
【請求項2】
前記脂肪酸中の前記デカン酸と前記ドデカン酸の合計含有量が、90モル%以上である、請求項1に記載の金属加工油用基油。
【請求項3】
前記エステル中のネオペンチルグリコールジエステルの含有量が、90モル%以上である、請求項1又は2に記載の金属加工油用基油。
【請求項4】
前記エステルは、前記デカン酸と前記ドデカン酸の混合脂肪酸と前記ネオペンチルグリコールとのジエステルを含む、請求項1~3のいずれかに記載の金属加工油用基油。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の金属加工油用基油を含有する、不水溶性金属加工油組成物。
【請求項6】
以下の工程1及び工程2を含む金属加工油用基油の製造方法。
工程1:ネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステル化反応を行う工程であって、前記ネオペンチルグリコールの水酸基1当量に対する前記脂肪酸のカルボキシ基の当量が1.1当量以上であり、前記脂肪酸がデカン酸とドデカン酸の混合脂肪酸であり、前記脂肪酸中の前記デカン酸と前記ドデカン酸の合計含有量が、90モル%以上であり、前記混合脂肪酸中の前記デカン酸と前記ドデカン酸のモル比(デカン酸/ドデカン酸)が、30/70以上70/30以下である工程
工程2:エステル化反応後に過剰分の前記脂肪酸を除去する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属加工油用基油、及び不水溶性金属加工油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
切削・研削加工において、切削工具の冷却性による寿命延長や潤滑性による加工能率の増大等を目的に金属加工油が使用されている。金属加工油組成物には、水に潤滑成分を分散/溶解させた、寿命延長に優れる水溶性金属加工油と、鉱物油や合成油等の油性成分を基材とする加工能率の増大に優れる不水溶性金属加工油との2種類に大別される。
【0003】
不水溶性金属加工油は油性成分を基材とするため可燃性の問題がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、加工性能が高く、耐摩耗性に優れるとともに、油煙の発生を抑制できる金属加工油組成物を提供することを目的として、(A)多価アルコールと脂肪酸のエステルと、(B)単体硫黄とを配合してなり、40℃動粘度が5mm2/s以上70mm2/s以下であり、引火点が200℃以上である金属加工油組成物が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、切削加工への使用に適しており、高引火点を有し、軸受油に必要とされる潤滑性(耐焼付性と耐摩耗性)、低温流動性、酸化安定性の全てをバランス良く向上した合成エステル系潤滑油基油が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2015/107828号公報
【特許文献2】特開2012-102235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、可燃性の問題を解決するためにエステルの引火点を高くすると、粘度が高くなる傾向がある。一方で、使用時の加工性向上のために室温付近(~40℃)での低粘度化が望まれる。
【0008】
本発明は、高い引火点と室温付近での低い粘度を両立し、更に低温での流動性を有する、不水溶性金属加工油組成物に配合される金属加工油用基油、及び前記金属加工油用基油を含有する不水溶性金属加工油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、以下の金属加工油用基油により、上記課題を解決しうることを見出した。
【0010】
すなわち、本発明は、脂肪酸とネオペンチルグリコールとのエステルを含む、金属加工油用基油であって、前記脂肪酸が、デカン酸とドデカン酸を含み、前記デカン酸と前記ドデカン酸のモル比(デカン酸/ドデカン酸)が、30/70以上70/30以下である、金属加工油用基油、に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金属加工油用基油は、特定の脂肪酸とネオペンチルグリコールとのエステルを含むため、高い引火点と室温付近での低い粘度を両立することが可能であり、更に低温での流動性に優れるものである。本発明の金属加工油用基油は、前記特性を有するため、不水溶性金属加工油組成物に配合される基油として好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0013】
<金属加工油用基油>
本発明の金属加工油用基油は、脂肪酸とネオペンチルグリコールとのエステルを含み、前記脂肪酸が、デカン酸とドデカン酸を含み、前記デカン酸と前記ドデカン酸のモル比(デカン酸/ドデカン酸)が、30/70以上70/30以下である。
【0014】
前記デカン酸と前記ドデカン酸のモル比(デカン酸/ドデカン酸)は、引火点向上の観点から、好ましくは35/65以上、より好ましくは37/63以上であり、粘度及び流動点の低減の観点から、好ましくは65/35以下、より好ましくは63/37以下である。
【0015】
前記脂肪酸中の前記デカン酸の含有量は特に制限されないが、引火点を高くし、室温付近での粘度を低下させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
【0016】
前記脂肪酸中の前記ドデカン酸の含有量は特に制限されないが、引火点を高くし、室温付近での粘度を低下させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは30モル%以上、より好ましくは35モル%以上、更に好ましくは40モル%以上であり、そして、好ましくは70モル%以下、より好ましくは65モル%以下、更に好ましくは60モル%以下である。
【0017】
前記脂肪酸中の前記デカン酸と前記ドデカン酸の合計含有量は特に制限されないが、引火点を高くし、室温付近での粘度を低下させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは100モル%である。
【0018】
前記脂肪酸は、本発明の効果を阻害しない範囲で、前記デカン酸及び前記ドデカン酸以外の脂肪酸を含有してもよい。前記デカン酸及び前記ドデカン酸以外の脂肪酸としては、例えば、吉草酸、2-メチル吉草酸、4-メチル吉草酸、n-ヘキサン酸、2-メチルヘキサン酸、5-メチルヘキサン酸、4,4-ジメチルペンタン酸、n-ヘプタン酸、2-メチルヘプタン酸、2-エチルヘキサン酸、2,2-ジメチルヘキサン酸、n-オクタン酸、3,5,5-トリメチルヘキサン酸、n-ノナン酸などの炭素数5以上9以下の脂肪酸;トリデカン酸、テトラデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、リノール酸、エイコサン酸、ベヘン酸、セロチン酸などの炭素数13以上26以下の脂肪酸;13-メチルテトラデカン酸、12-メチルテトラデカン酸、15-メチルヘキサデカン酸、14-メチルヘキサデカン酸、10-メチルヘキサデカン酸、2-ヘキシルデカン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、イソアラキン酸、フィタン酸などの炭素数15以上20以下の分岐脂肪酸;シクロプロパンカルボン酸、シクロブタンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘプタンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸などの炭素数4以上8以下のシクロアルカンモノカルボン酸などが挙げられる。
【0019】
前記エステルは、ネオペンチルグリコールジエステルを主に含むが、本発明の効果を阻害しない範囲で、ネオペンチルグリコールモノエステルを含んでいてもよい。前記ネオペンチルグリコールジエステルとしては、デカン酸とネオペンチルグリコールとのジエステル、ドデカン酸とネオペンチルグリコールとのジエステル、及びデカン酸とドデカン酸の混合脂肪酸とネオペンチルグリコールとのジエステル(つまり、デカン酸とドデカン酸とネオペンチルグリコールとのジエステル)などが挙げられる。
【0020】
前記ネオペンチルグリコールに対する前記脂肪酸のモル比は、引火点を高くし、室温付近での粘度を低下させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは1.6以上、より好ましくは1.8以上、更に好ましくは1.9以上であり、そして、好ましくは2.4以下、より好ましくは2.2以下、更に好ましくは2.1以下である。
【0021】
前記エステルは、引火点を高くし、室温付近での粘度を低下させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、デカン酸とドデカン酸の混合脂肪酸とネオペンチルグリコールとのジエステル(つまり、デカン酸とドデカン酸とネオペンチルグリコールとのジエステル)を含むことが好ましい。
【0022】
前記エステル中の前記ネオペンチルグリコールジエステルの含有量は特に制限されないが、引火点を高くし、室温付近での粘度を低下させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、更に好ましくは100モル%である。
【0023】
前記金属加工油用基油は、前記エステル以外の基油を含有してもよい。前記エステル以外の基油としては、例えば、鉱油及び合成油が挙げられる。鉱油としては、例えば、パラフィン基系原油、中間基系原油、又はナフテン基系原油を常圧蒸留するか常圧蒸留の残渣油を減圧蒸留して得られる留出油、あるいはこれを常法にしたがって精製することによって得られる精製油(例えば、溶剤精製油、水添精製油、脱ロウ処理油、白土処理油等)などが挙げられる。また、合成油としては、例えば、本発明の前記エステル以外のエステル、ポリ-α-オレフィン、オレフィンコポリマーアルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテルなどが挙げられる。
【0024】
前記金属加工油用基油中の前記エステルの含有量は特に制限されないが、引火点を高くし、室温付近での粘度を低下させ、かつ低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0025】
前記金属加工油用基油の40℃動粘度は、室温付近での粘度を低下させる観点から、好ましくは14mm2/s以下、より好ましくは13mm2/s以下であり、金属加工時の潤滑性を向上させる観点から、好ましくは10mm2/s以上、より好ましくは11mm2/s以上、更に好ましくは12mm2/s以上である。
【0026】
前記金属加工油用基油の粘度指数は、温度による粘度変化を小さくする観点から、好ましくは100以上、より好ましくは120以上である。
【0027】
前記金属加工油用基油の流動点は、低温での流動性を向上させる観点から、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-15℃以下である。
【0028】
前記金属加工油用基油の引火点は、可燃性を低下させる観点から、好ましくは250℃以上である。
【0029】
<エステルの調製方法>
本発明の金属加工油用基油は、脂肪酸とネオペンチルグリコールとのエステルを含む。
前記エステルは、前記脂肪酸とネオペンチルグリコールを、公知の方法に従って、エステル化反応を行うことにより調製することができる。例えば、デカン酸とネオペンチルグリコールとのエステル化反応により得られるジエステルと、ドデカン酸とネオペンチルグリコールとのエステル化反応により得られるジエステルとを、特定比率で混合して得る方法、特定比率のデカン酸とドデカン酸の混合脂肪酸とネオペンチルグリコールとのエステル化反応により得る方法が挙げられ、低温での流動性を向上させる観点から、特定比率のデカン酸とドデカン酸の混合脂肪酸とネオペンチルグリコールとのエステル化反応により得る方法が好ましい。脂肪酸とネオペンチルグリコールとのエステルにおけるデカン酸とドデカン酸のモル比は、エステルの調製に用いたデカン酸とドデカン酸のそれぞれのモル数から計算することができる。
【0030】
前記エステルの製造において、エステル化反応促進の観点から、前記ネオペンチルグリコールの水酸基1当量に対する前記脂肪酸のカルボキシ基を1当量より過剰量を用いてエステル化反応を行う工程と、エステル化反応後に過剰分の脂肪酸を除去する工程を含むことが好ましい。前記脂肪酸のカルボキシ基の当量は、前記ネオペンチルグリコールの水酸基1当量に対して、1.1当量以上が好ましく、そして、脂肪酸を除去する工程での負荷を低減する観点から、1.5当量以下が好ましく、1.3当量以下がより好ましい。得られるエステルの水酸基価が、好ましくは3.0mgKOH/g以下、より好ましくは1.5mgKOH/g以下になるまでエステル化反応を行うことが好ましい。エステル化反応後に過剰の脂肪酸を除去する方法としては、例えば、減圧留去、スチーミング、吸着剤を用いた吸着除去などが挙げられる。得られるエステルの酸価が、好ましくは0.3mgKOH/g以下、より好ましくは0.1mgKOH/g以下になるまで脂肪酸を除去することが好ましい。
【0031】
具体的には、本発明の金属加工油用基油の製造方法は、以下の工程1及び工程2を含む。
工程1:ネオペンチルグリコールと脂肪酸とのエステル化反応を行う工程であって、前記ネオペンチルグリコールの水酸基1当量に対する前記脂肪酸のカルボキシ基の当量が1.1当量以上であり、前記脂肪酸がデカン酸とドデカン酸の混合脂肪酸であり、前記脂肪酸中の前記デカン酸と前記ドデカン酸の合計含有量が、90モル%以上であり、前記混合脂肪酸中の前記デカン酸と前記ドデカン酸のモル比(デカン酸/ドデカン酸)が、30/70以上70/30以下である工程
工程2:エステル化反応後に過剰分の前記脂肪酸を除去する工程
【0032】
<不水溶性金属加工油組成物>
本発明の不水溶性金属加工油組成物は、少なくとも前記金属加工油用基油を含有する。本発明の不水溶性金属加工油組成物は、前記金属加工油用基油の他に、一般的な不水溶性金属加工油組成物に配合される添加剤を含有してもよい。前記添加剤としては、例えば、油性剤、極圧剤、界面活性剤、消泡剤、防錆剤、防腐剤、酸化防止剤、及び金属不活性化剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
本発明の不水溶性金属加工油組成物は、前記金属加工油用基油を含有するため、高い引火点と室温付近での低い粘度を両立し、更に低温での流動性を有するものであり、金属の切削・研削加工などに好適に用いられる。
【実施例0034】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。また、各種測定、評価方法は以下のとおりである。
【0035】
実施例1
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた1リットルの4つ口フラスコに、脂肪酸として、デカン酸374.67g(2.17モル)、ドデカン酸261.02g(1.30モル)を加えて混合脂肪酸を調製し、さらに、ネオペンチルグリコール150.80g(1.45モル)を添加した。なお、脂肪酸の添加量は、ネオペンチルグリコールの水酸基1当量に対して脂肪酸の総カルボキシ基が1.2当量になるようにした。
次に、フラスコ内に、窒素ガスを吹き込み、攪拌しながら250℃まで昇温し、18時間250℃を維持し、留出する水分を冷却管を用いてフラスコ外へ除去した。反応終了後、0.13kPaの減圧下で過剰の脂肪酸を留去し、0.13kPaの減圧下で1時間スチーミングを行い、吸着剤(商品名:キョーワード500SH、協和化学工業株式会社製)に残存している脂肪酸を吸着させた後、濾過を行い、縮合エステルを得た。得られた縮合エステルは、酸価が0.1mgKOH/g未満、水酸基価が1.0mgKOH/g未満であり、ネオペンチルグリコールのモノエステル、未反応の脂肪酸、未反応のネオペンチルグリコールのいずれも実質的に含まないことを確認した。得られた縮合エステルは、ネオペンチルグリコールのジエステルが実質的に100%であった。
得られた縮合エステルは、デカン酸のジエステル、ドデカン酸のジエステル、及びデカン酸とドデカン酸のジエステルを含む混合物である。すなわち、得られた縮合エステルは、デカン酸とドデカン酸の混合脂肪酸とネオペンチルグリコールとのジエステルを含む混合物である。縮合エステルの調製に用いた混合脂肪酸の脂肪酸組成がジエステルに反映されるので、得られた縮合エステルを構成する脂肪酸組成は、デカン酸とドデカン酸のモル比(デカン酸/ドデカン酸)が62.5/37.5である。
【0036】
実施例2及び3、比較例1~4
表1に示したデカン酸とドデカン酸のモル比に変えた以外は実施例1と同様の方法で他の縮合エステルを調製した。
【0037】
実施例4
比較例1の縮合エステルと比較例4の縮合エステルを等モルの比率で混合し、デカン酸のジエステルとドデカン酸のジエステルの混合物〔デカン酸とドデカン酸のモル比(デカン酸/ドデカン酸)が50/50〕を調製した。すなわち、調製したジエステルの混合物は、デカン酸とドデカン酸の混合脂肪酸とネオペンチルグリコールとのジエステルを実質的に含まない混合物である。
【0038】
得られた縮合エステルを用いて以下の評価を行った。
<動粘度の評価>
動粘度の評価は、ASTM D7042で要求される精度を満たしたスタビンガー動粘度計(商品名:SVM3000、Anton Paar社製)により、40℃動粘度および100℃動粘度(mm2/s)、粘度指数を測定した。
【0039】
<流動点の評価>
流動点の評価は、JIS K2269に従った測定方法により流動点(℃)を測定した。
【0040】
<引火点の評価>
引火点の評価は、JIS K2265に従った測定方法(クリーブランドオープンカップ式)により引火点(℃)を測定した。
【0041】
【0042】
表1から、デカン酸とドデカン酸のモル比(デカン酸/ドデカン酸)が、30/70以上70/30以下である実施例1~4の縮合エステルは、40℃動粘度が14(mm2/s)以下、かつ引火点が250℃以上であり、高い引火点と室温付近での低い粘度を両立するものであることがわかる。また、実施例1~4の縮合エステルは、流動点が-10℃以下であり、低温での流動性に優れるものである。一方、デカン酸とドデカン酸のモル比(デカン酸/ドデカン酸)が、30/70以上70/30以下を満たさない比較例1~4の縮合エステルは、40℃動粘度が14(mm2/s)を超えるか、あるいは引火点が250℃未満であり、高い引火点と室温付近での低い粘度を両立することができない。