(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128167
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】冷熱生成システム
(51)【国際特許分類】
F25B 17/08 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
F25B17/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037012
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】523088372
【氏名又は名称】SCDC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206184
【弁理士】
【氏名又は名称】幅 敦司
(74)【代理人】
【識別番号】100114834
【弁理士】
【氏名又は名称】幅 慶司
(74)【代理人】
【識別番号】100220870
【弁理士】
【氏名又は名称】中江 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】小林 晋
【テーマコード(参考)】
3L093
【Fターム(参考)】
3L093AA01
3L093PP04
(57)【要約】
【課題】蒸気タービン駆動の排熱を有効利用することが可能な冷熱生成システムを提供する。
【解決手段】冷熱生成システム1000Aが、熱源10から受熱するランキンサイクル110を用いた動力を発生する蒸気タービン装置100と、前記ランキンサイクル110を構成する第1凝縮器102が放出する排熱を作動熱源とする吸着冷凍サイクルを用いて冷熱を冷熱負荷501に出力するとともに冷凍排熱Q4を放出する吸着冷凍装置700と、前記ランキンサイクル110における第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるよう前記蒸気タービン装置及び前記吸着冷凍装置の熱バランスを制御する熱バランス制御機構320,601と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源から受熱するランキンサイクルを用いた動力を発生する蒸気タービン装置と、前記ランキンサイクルを構成する第1凝縮器が放出する排熱を作動熱源とする吸着冷凍サイクルを用いて冷熱を冷熱負荷に出力するとともに冷凍排熱を放出する吸着冷凍装置と、前記ランキンサイクルにおける第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるよう前記蒸気タービン装置及び前記吸着冷凍装置の熱バランスを制御する熱バランス制御機構と、を備える、冷熱生成システム。
【請求項2】
前記熱バランス制御機構は、前記熱源からの受熱を取得する受熱量取得装置と、前記冷熱負荷へ出力する冷熱量を取得する冷熱量取得装置と、前記第1熱媒体の凝縮温度に相関する凝縮温度相関物理量を検知する凝縮温度相関物理量センサと、前記熱バランスの制御として、前記受熱量、前記冷熱量、及び前記凝縮温度相関物理量に基づいて、前記第1熱媒体の前記凝縮温度が前記第1所定温度範囲内に維持されるように、前記冷熱負荷への前記冷熱の出力に応じて前記熱源からの受熱量を制御する受熱量制御回路と、を含む、請求項1に記載の冷熱生成システム。
【請求項3】
前記熱バランス制御機構は、前記冷熱負荷へ出力する冷熱量を取得する冷熱量取得装置と、前記第1熱媒体の凝縮温度に相関する凝縮温度相関物理量を検知する凝縮温度相関物理量センサと、前記熱バランスの制御として、前記冷熱量、及び前記凝縮温度相関物理量に基づいて、前記第1熱媒体の前記凝縮温度が前記第1所定温度範囲内に維持されるとともに前記冷熱負荷の冷熱負荷量に応じた前記冷熱が出力されるように、前記吸着冷凍装置の熱COPを制御する熱COP制御回路を含む、請求項1に記載の冷熱生成システム。
【請求項4】
前記第1凝縮器は、第2熱媒体が前記第1熱媒体と熱交換して昇温することにより熱を放出する作動熱源であり、
前記吸着冷凍装置は、昇温した前記第2熱媒体が、前記吸着冷凍サイクルを構成する吸着器に収容され且つ冷媒を吸着した吸着体を加熱するように前記第1凝縮器と当該吸着器とを通って当該第2熱媒体を循環させる第2熱媒体循環経路を含み、
前記熱COP制御回路は、前記熱COPの制御として、前記第1凝縮器から前記吸着器へ流れる前記第2熱媒体の温度が第2所定温度範囲内に維持されるよう前記第2熱媒体の流量を制御する第2熱媒体流量制御回路を含む、請求項3に記載の冷熱生成システム。
【請求項5】
前記蒸気タービン装置は、前記ランキンサイクルとして、
前記熱源からの熱によって液状の前記第1熱媒体を蒸発させて蒸気状の第1熱媒体を生成する第1蒸発器と、
前記蒸気状の第1熱媒体によって回転動力を生成する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンを回転させた後の蒸気状の第1熱媒体を第2熱媒体との熱交換によって凝縮させて前記液状の第1熱媒体を生成する第1凝縮器と、
前記第1熱媒体を、前記蒸発器、前記蒸気タービン、及び前記第1凝縮器を順に通るように循環させる第1熱媒体循環経路と、を含み、
前記吸着冷凍装置は、前記吸着冷凍サイクルとして、
降温した第3熱媒体で冷却された状態において、蒸気状の冷媒を吸着し、且つ、前記蒸気状の第1熱媒体と熱交換して昇温した前記第2熱媒体によって加熱された状態において、吸着した前記冷媒を蒸気として放出する吸着体を収容する吸着器と、
前記吸着器に収容された前記吸着体から放出された蒸気状の冷媒を前記第3熱媒体との熱交換によって凝縮させて液状の冷媒を生成する第2凝縮器と、
前記液状の冷媒を第4熱媒体との熱交換によって蒸発させて前記蒸気状の冷媒を生成する第2蒸発器と、
前記蒸気状の冷媒と熱交換して昇温した前記第3熱媒体を放熱させて降温させる放熱器と、
前記液状の冷媒と熱交換して降温した前記第4熱媒体の冷熱を前記冷熱負荷に出力する冷熱出力装置と、
前記第2熱媒体を前記第1凝縮器及び前記吸着器を通るように循環させる第2熱媒体循環経路と、
前記第3熱媒体を、前記吸着器、前記第2凝縮器、及び前記放熱器を順に通るように循環させる第3熱媒体循環経路と、
前記第4熱媒体を、前記第2蒸発器及び前記冷熱出力装置を通るように循環させる第4熱媒体循環経路と、
前記冷媒を、前記第2蒸発器、前記吸着器、及び前記第2凝縮器を順に通るように循環させる冷媒循環経路と、
前記吸着体が前記冷媒を吸着する過程において前記吸着器を前記第2蒸発器に接続するとともに前記第3熱媒体循環経路に接続し、且つ前記吸着体が前記冷媒を放出して再生する過程において前記吸着器を前記第2凝縮器に接続するとともに前記第2熱媒体循環経路に接続する吸着再生機構と、を含む、請求項1に記載の冷熱生成システム。
【請求項6】
前記熱バランス制御機構は、前記放熱器から前記吸着器へ流れる前記第3熱媒体の温度が第3所定温度範囲内に維持されるよう前記第3熱媒体の流量を制御する第3熱媒体流量制御回路を含む、請求項5に記載の冷熱生成システム。
【請求項7】
前記熱バランス制御機構は、前記冷熱出力装置から前記第2蒸発器へ流れる前記第4熱媒体の温度が第4所定温度範囲内に維持されるよう前記第4熱媒体の流量を制御する第4熱媒体流量制御回路を含む、請求項5又は6に記載の冷熱生成システム。
【請求項8】
前記冷熱生成システムは、下記i)~ix)のいずれかの温度センサ又は流量センサを備え、前記熱バランス制御機構は、下記i)~ix)のいずれかの温度センサ又は流量センサが検知する温度又は流量に基づいて前記熱バランスを制御する熱バランス制御回路を含む、請求項5乃至7のいずれかに記載の冷熱生成システム。
i)前記第1凝縮器から前記第1蒸発器へ流れる前記第1熱媒体の温度を検知する温度センサ、
ii)前記第1蒸発器から前記蒸気タービンへ流れる前記第1熱媒体の温度を検知する温度センサ、
iii)前記第1凝縮器から前記第1蒸発器へ流れる前記第1熱媒体の流量を検知する流量センサ、
iv)前記吸着器から前記第2凝縮器へ流れる前記第2熱媒体の温度を検知する温度センサ、
v)前記第2熱媒体の流量を検知する流量センサ、
vi)前記第2凝縮器から前記放熱器へ流れる前記第3熱媒体の温度を検知する温度センサ、
vii)前記第3熱媒体の流量を検知する流量センサ、
viii)前記第2蒸発器から前記冷熱出力装置へ流れる前記第4熱媒体の温度を検知する温度センサ、
ix)前記第4熱媒体の流量を検知する流量センサ。
【請求項9】
前記吸着冷凍装置は、各々が吸着体を収容する3以上の吸着器と、前記吸着冷凍サイクルを構成し、冷媒を、第2蒸発器及び第2凝縮器を通るように循環させる冷媒循環経路と、第2熱媒体を、前記第1凝縮器を通るように循環させる第2熱媒体循環経路と、第3熱媒体を、前記第2凝縮器及び放熱器を通って前記第2凝縮器で得た前記温熱を前記放熱器で放熱するように循環させる第3熱媒体循環経路と、を備え、
前記冷熱生成システムは、吸着動作において各々の前記吸着器が前記第2蒸発器に接続されるとともに前記第3熱媒体循環経路における前記放熱器と前記第2凝縮器との間に介挿されて前記吸着体が冷媒を吸着し、再生動作において各々の前記吸着器が前記第2凝縮器に接続されるとともに前記第2熱媒体循環経路に介挿されて前記吸着体が冷媒を放出して再生する吸着再生動作を、前記3以上の吸着器に対して、順次、実行するよう前記吸着冷凍装置の動作を制御する吸着再生制御機構を備える、請求項1に記載の冷熱生成システム。
【請求項10】
各々の前記吸着器に対する前記吸着動作に要する時間Ta及び前記再生動作に要する時間Trが、n(nは3以上の整数)の吸着器について互いに同じであり、
前記吸着再生制御機構は、前記nの吸着器に対する前記吸着再生動作を、当該吸着再生動作に要する時間Tc(Tc=Ta+Tr)の1/nの時間(Tc/n)ずつずらして実行するよう前記吸着冷凍装置の動作を制御することが可能である、請求項9に記載の冷熱生成システム。
【請求項11】
前記吸着再生制御機構は、前記吸着動作において、前記吸着体が冷媒を吸着するよう、各々の前記吸着器を、前記第2蒸発器に接続するとともに前記第3熱媒体循環経路における前記放熱器と前記第2凝縮器との間に介挿し、前記再生動作において、前記吸着体が冷媒を放出して再生するよう、各々の前記吸着器を前記第2凝縮器に接続するとともに前記第2熱媒体循環経路に介挿する吸着再生弁システムと、前記吸着再生動作を、前記3以上の吸着器に対して、順次、実行するよう前記吸着再生弁システムの動作を制御する吸着再生制御回路と、を含み、
前記吸着冷凍装置は、複数の吸着冷凍機と、1の前記放熱器と、前記第2蒸発器で得た前記冷熱を前記冷熱負荷に出力する1の冷熱出力装置と、を備え、
各々の前記吸着冷凍機が、前記第2蒸発器、前記3以上の吸着器、前記第2凝縮器、前記冷媒循環経路、前記第2熱媒体循環経路、前記第3熱媒体循環経路、及び前記吸着再生弁システムを備え、
前記複数の吸着冷凍機の各々の前記第3熱媒体循環経路が、1の前記放熱器を通っており、
前記複数の吸着冷凍機の各々の前記第2熱媒体循環経路が、1の前記第1凝縮器を通っているか、又は複数の前記第1凝縮器をそれぞれ通っており、当該複数の前記第1凝縮器が、前記蒸気タービン装置の前記ランキンサイクルにおける前記第1熱媒体の循環経路の複数の分流経路に設けられており、且つ、
前記吸着再生制御回路は、全ての前記吸着冷凍機の前記3以上の吸着器に対して、前記吸着再生動作を、順次、実行するよう全ての前記吸着冷凍機の前記吸着再生弁システムの動作を制御する制御回路である、請求項9に記載の冷熱生成システム。
【請求項12】
各々の前記吸着冷凍機の各々の前記吸着器に対する前記吸着動作に要する時間Ta及び前記再生動作に要する時間Trが、m(mは1以上の整数)の前記吸着冷凍機のn(nは3以上の整数)の吸着器について互いに同じであり、
前記吸着再生制御回路は、各々の前記吸着冷凍機の前記nの吸着器に対する前記吸着再生動作を、前記再生動作に要する時間Tc(Tc=Ta+Tr)の1/nの時間(Tc/n)ずつずらして実行し、且つ、m(mは1以上の整数)の前記吸着冷凍機の間において、前記吸着再生動作を、前記再生動作に要する時間Tcの1/mnの時間(Tc/mn)ずつずらして実行するよう前記mの吸着冷凍機の前記吸着再生弁システムの動作を制御することが可能である、請求項11に記載の冷熱生成システム。
【請求項13】
複数の前記吸着冷凍装置を含み、
全ての前記吸着冷凍装置が用いる前記吸着冷凍サイクルの作動熱源が、1の前記蒸気タービン装置の1の前記第1凝縮器であるか、又は、1の前記蒸気タービン装置の前記ランキンサイクルにおける前記第1熱媒体の循環経路の複数の分流経路にそれぞれ前記複数の吸着冷凍装置に対応して設けられた複数の前記第1凝縮器である、請求項1乃至12のいずれかに記載の冷熱生成システム。
【請求項14】
前記排熱を前記第1凝縮器から前記吸着冷凍装置の前記吸着冷凍サイクルに運ぶ熱媒体経路に、前記排熱をバックアップするためのバックアップ熱源が設けられている、請求項1乃至13のいずれかに記載の冷熱生成システム。
【請求項15】
前記吸着冷凍装置が、前記冷凍排熱をする放出するための放熱器を含み、前記放熱器が、冷却塔及び電力式ヒートポンプを含む、請求項1乃至14のいずれかに記載の冷熱生成システム。
【請求項16】
前記冷熱負荷である情報通信設備を含む、請求項1乃至15のいずれかに記載の冷熱生成システム。
【請求項17】
前記蒸気タービン装置が、前記ランキンサイクルを用いて発生する動力によって発電する発電機を含み、当該発電機と前記情報通信設備とが、当該発電機が発電する電力の少なくとも一部を当該情報通信設備に供給することが可能なように接続されている、請求項16に記載の冷熱生成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷熱生成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
我が国における発電所や工場などの廃熱(未利用熱エネルギー)の合計は、日本の年間総発電量に相当する年間一兆kWhである(非特許文献1参照)。また、この未利用熱エネルギーの大部分を、200℃以下の廃熱が占める。この廃熱の主たるソースは製鉄業、石油化学産業、紙パルプ産業、セメント産業、その他の素材産業である(非特許文献1参照)。
【0003】
熱は使わなければ冷めて失われ、しかも遠くに移動することができない性質をもつエネルギーである。よって、熱の発生する時間と熱需要のある時間が異なる、あるいは熱源と需要先との距離が離れているなどすると、そのような熱は、結局は需要を満たす有効な熱とはならないためにやむなく廃棄されてしまうという現状がある。
【0004】
一方、電力には常に需要があり、しかも送電網を通じて容易に運ぶことができる。よって、上述の時間や距離のギャップを埋める最上の方法は熱の電力への変換、すなわち発電であるとされる。事実、数百℃を超えるような高温の大きな産業廃熱は、効率よく蒸気タービン発電によって電力変換が可能であり、当然のことながら我が国の産業界は古くから廃熱発電によるエネルギー使用の合理化に取り組んできており、現在はこれ以上改良の余地がないレベルにある。故に、上述の200℃以下の産業廃熱は既に発電を行った後の廃熱である、あるいは通常の方式で発電に利用できるほどの温度や量でないために未利用熱になっているとみることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】産業構造審議会産業技術分科会、「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発事前評価報告書」、経済産業省、平成24年6月
【非特許文献2】(財)省エネルギーセンター、「工場群のエネルギーシステムに関する調査研究」、平成12年度成果報告書 経済産業省
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の理由で、上記200℃以下の産業廃熱の利用技術も電力変換に偏重しており、水に替えて有機溶媒を作動流体としたオーガニックランキンサイクル(バイナリー発電)、ゼーベック効果を利用した熱電変換その他の技術が鋭意開発されている。しかしながら、そもそも利用可能な熱落差が小さいことから自明であるが、これらの方式の発電効率の理論上限は低く、現実には種々の損失によってこの理論上限には届かず(オーガニックランキンサイクルで5%程度、熱電変換で1%以下)、費用対効果の点から広く普及するには至っていない。すなわち、従来、未利用熱の大部分を占める蒸気タービン発電の排熱(廃熱)を有効利用することができなかった。なお、この課題は、蒸気タービンの回転動力を他の装置の駆動に利用する形態にも共通する課題である。
【0007】
本開示は上記のような課題を解決するためになされたもので、蒸気タービン駆動の排熱を有効利用することが可能な冷熱生成システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示のある形態(aspect)に係る、冷熱生成システムは、熱源から受熱するランキンサイクルを用いた動力を発生する蒸気タービン装置と、前記ランキンサイクルを構成する第1凝縮器が放出する排熱を作動熱源とする吸着冷凍サイクルを用いて冷熱を冷熱負荷に出力するとともに冷凍排熱を放出する吸着冷凍装置と、前記ランキンサイクルにおける第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるよう前記蒸気タービン装置及び前記吸着冷凍装置の熱バランスを制御する熱バランス制御機構と、を備える。
【0009】
また、本開示の他の形態(aspect)に係る、冷熱生成システムは、熱源から受熱するランキンサイクルを用いた動力を発生する蒸気タービン装置と、前記ランキンサイクルを構成する第1凝縮器が放出する排熱を作動熱源とする吸着冷凍サイクルを用いて冷熱を冷熱負荷に出力するとともに冷凍排熱を放出する吸着冷凍装置と、を備え、前記吸着冷凍装置は、各々が吸着体を収容する3以上の吸着器と、前記吸着冷凍サイクルを構成し、冷媒を、第2蒸発器及び第2凝縮器を通るように循環させる冷媒循環経路と、第2熱媒体を、前記第1凝縮器を通るように循環させる第2熱媒体循環経路と、第3熱媒体を、前記第2凝縮器及び放熱器を通って前記第2凝縮器で得た前記温熱を前記放熱器で放熱するように循環させる第3熱媒体循環経路と、を備え、前記冷熱生成システムは、吸着動作において各々の前記吸着器が前記第2蒸発器に接続されるとともに前記第3熱媒体循環経路における前記放熱器と前記第2凝縮器との間に介挿されて前記吸着体が冷媒を吸着し、再生動作において各々の前記吸着器が前記第2凝縮器に接続されるとともに前記第2熱媒体循環経路に介挿されて前記吸着体が冷媒を放出して再生する吸着再生動作を、前記3以上の吸着器に対して、順次、実行するよう前記吸着冷凍装置の動作を制御する吸着再生制御機構を備える。
【開示の効果】
【0010】
本開示は、蒸気タービン駆動の排熱を有効利用することが可能な冷熱生成システムを提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態1に係る冷熱生成システムのハードウェアの概要の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、
図1の冷熱生成システムの制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、
図1の冷熱生成システムの吸着再生動作の一例における第1過程を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1の冷熱生成システムの吸着再生動作の一例における第2過程を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施形態1の変形例に係る冷熱生成システムのハードウェアの概要の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態2に係る冷熱生成システムの制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施形態3に係る冷熱生成システムの制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態4に係る冷熱生成システムの制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図9】
図9は、
図8の冷熱生成システムの熱バランス制御の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態5に係る冷熱生成システムの制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施形態6に係る冷熱生成システムのハードウェアの概要の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、吸着器が2の場合における各吸着体の温度変化及び第2熱媒体の排出温度変化の一例を示すグラフである。
【
図13】
図13は、
図11の冷熱生成システムにおける各吸着体の温度変化及び第2熱媒体の排出温度変化の一例を示すグラフである。
【
図14】
図14は、本開示の実施形態7に係る冷熱生成システムのハードウェアの概要の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、
図14の冷熱生成システムにおける各吸着体の温度変化及び第2熱媒体の排出温度変化の一例を示すグラフである。
【
図16】
図16は、本開示の実施形態8に係る冷熱生成システムのハードウェアの概要の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、
図16の冷熱生成システムにおける各冷凍機の第2熱媒体の排出温度変化及び第2熱媒体の戻り温度変化の一例を示すグラフである。
【
図18】
図18は、本開示の実施形態9に係る冷熱生成システムのハードウェアの概要の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示の契機となった知見)
<熱式冷凍機>
本発明者は、蒸気タービン発電の排熱の有効利用について、熱を動力として冷熱を発生する熱式冷凍機に着目した。通常の電力式冷凍機が、電力式圧縮機を用いて冷媒を圧縮輸送して動作する機械圧縮方式であるのに対し、熱式冷凍機は熱によって冷媒を圧縮輸送して動作する熱圧縮方式である。熱式冷凍機の中でも吸着冷凍機は、熱源として55℃又は85℃の温水を供給することによって作動可能であることが知られている。
【0013】
具体的には、日本国特許第4,565,539号には、吸着材としてシリカゲルを用いた単効用吸着冷凍機の供給温水温度及び熱COPが、それぞれ、85℃程度及び0.6程度であることが開示されている。また、日本国特許公開公報2002-372332にはシリカゲルに対して狭い相対蒸気圧範囲で吸着平衡状態が大きく変化する合成ゼオライトの組成・化学構造が開示され、この特性が吸着冷凍機の吸着材に好適であることが述べられている。そして日本国特許第4,669,914号には、上記合成ゼオライトを用いた、55℃の温水で再生可能な吸着材およびこれを用いた吸着冷凍機の設計情報が開示されており、さらに、日本国特許第5,850,051号には、この冷凍機の熱COPが0.6程度であることがデータを付して開示されている。また、日本国特許公開公報2018-128242には、吸着冷凍機も吸収冷凍機と同様に二重効用化が可能であり、その駆動温水温度が85℃程度で理論熱COPが1.0程度になることが、冷凍機の具体的な構成とともに開示されている。
【0014】
<発電効率に代わる冷熱変換効率>
発電効率と冷熱変換効率を単純に比較することは出来ないが、100℃以下の廃熱を用いた吸着冷凍機の熱COPが0.6~1.0であることは、同じ温度において発電効率20%の発電を行い、電力式冷凍機を用いて電力COP3から5で冷熱変換した数値に匹敵する。このように、産業排熱の中でも最もボリュームの多い100℃以下の未利用熱を、効率的に冷熱に変換する技術自体は公知である。
【0015】
ここで、熱COP(熱成績係数)は、(式1)で定義される。
(式1):熱COP=冷凍機の冷熱出力(kW)/冷凍機の消費熱量(kW)
また、電力COP(電力成績係数)は、(式2)で定義される。
(式2):電力COP=冷凍機の冷熱出力(kW)/冷凍機の消費電力(kW)
【0016】
<理想的な熱負荷>
ところで、蒸気タービン発電の排熱を、電力へ変換する代わりに冷熱へ変換することによって、有効利用するためには、電力と同様に、熱の発生と熱需要との時間ギャップ及び熱源と需要先との距離ギャップを埋めることが必要である。
【0017】
そこで、本発明者は、そのような事例として、熱式冷凍機によって未利用熱を冷熱に変換して情報通信設備であるデータセンタ(以下DCという)を冷却する事例に着目した。
【0018】
まず、情報通信産業に不可欠の設備であるDCのエネルギー使用実態について述べる。DCの電力利用効率の指標として(式3)で定義されるPUE値が常用される。
【0019】
(式3):PUE=DCの消費電力(kW)/コンピュータの消費電力(kW)
すなわち、消費電力1000kWのコンピュータを運用してDCの消費電力が2000kWであった場合にPUEは2.0であり、この値が1に近いほど電力利用効率の優れたDCである。我が国の平均的なDCのPUEは2020年現在で1.5程度であり、コンピュータ消費電力の半分ほどの付帯電力が必要である。この付帯電力の最大のものはコンピュータの冷却電力である。
【0020】
コンピュータは、投入した電力は情報(計算解)として出力されるものの、外部に対する物理的な仕事は行わないため、エネルギー的には投入電力がすべて熱に変換されるという特徴がある。よって、常時1000kWの電力を消費するコンピュータは、常時1000kWの冷却を行わなければ熱バランスせず、連続的に運転することができない。電源その他の損失を無視し、上記のPUE1.5の付帯電力がすべて冷却電力によるものと単純化して計算したとき、冷房電力500kWをもって1000kWの冷却を行っているわけであるから、(式2)に定義される冷凍機の電力COPは2.0となる。そして、この程度が我が国においてコンピュータを空冷した場合の実効的な冷却所用電力と考えられる。
【0021】
よって、DCに排熱を排出する設備を導入し、この排熱を利用して、電力式冷凍機で行っていた電力COP=2.0の冷却を、吸着冷凍機で行う電力COP=3~5の冷却に置き換えることにより、エネルギーの合理化を行うことができる。また、情報通信には常に需要があるためにDCには常に冷熱需要があって熱の発生と熱需要との時間ギャップは存在せず、かつ情報は通信回線を通じて容易に運ぶことができるために熱源と需要先との距離ギャップも存在しない。従って、吸着冷凍機によってDCを冷却する、温熱から冷熱への変換は、電力変換に次いで優れた未利用熱利用法と考えられる。また、この未利用熱利用方法において、DCは、理想的な熱負荷であると言える。
【0022】
そこで、本発明者は、蒸気タービン発電の排熱を吸着冷凍機によって冷熱に変換してDCを冷却する冷熱生成システムを想到した。
【0023】
<蒸気タービンの排熱利用の第1の課題>
しかしながら、この冷熱生成システムには、以下のような第1の課題が存在する。
【0024】
ガスタービンであるか蒸気タービンであるかを問わず、タービンの膨張比は(式4)によって定義される数値である。
【0025】
(式4):タービン膨張比=タービン入口圧力/タービン出口圧力
ガスタービンは圧縮タービンと膨張タービンとを同軸接続し、膨張タービンで得られる回転力を圧縮タービンの空気圧縮仕事に用い、この高温高圧の圧縮空気に燃料を吹き込んで爆発させ、この燃焼ガスを膨張タービンで膨張して回転力を得る装置である。そして圧縮タービンの空気圧縮仕事を減らして効率を高めるために、膨張タービンから排出される廃燃焼ガスと圧縮タービンの吸込空気とを熱交換する予熱熱交換器を備え、廃燃焼ガスによって吸込空気を予熱(加熱圧縮)してエネルギー回生を行うのが一般的である。
よって(式4)で定義される膨張比はタービン入口の燃焼ガス圧力と予熱熱交換器に入る前の廃燃焼ガス圧力との比であり、さらに予熱燃焼器を出た後の廃燃焼ガスは通常大気圧である。故に、この後段にどのような熱回収構成をもつ被駆動装置を接続しようとも、圧力損失が著しく高くない限りは被駆動装置が膨張比に与える影響は軽微である。
【0026】
一方、蒸気タービンの大多数を占める復水タービンは、タービン出口圧力(タービン背圧)を低下させて膨張比を高めるために、タービン出口蒸気を冷却して凝縮(復水)するという動作原理に基づいた装置である。つまり、タービン背圧と一対一の関係にある凝縮温度(復水温度)が低ければ低いほど膨張比が高まり、効率が高まる。
【0027】
一般的なプラント設計において、水冷凝縮器を用いたときの凝縮温度は32℃(タービン背圧0.05気圧)、空冷凝縮器を用いたときの凝縮温度は65℃(同0.3気圧)とされる。故に、例えばタービン入り口蒸気が300℃飽和蒸気の場合(蒸気圧力65気圧)、水冷凝縮器を用いた場合の膨張比は1300(65/0.05)、空冷凝縮器を用いた場合には216(65/0.3)となる。このように、蒸気タービンの場合は凝縮温度により大きく膨張比が変わり、効率が変わる。
【0028】
このことは、蒸気タービンの発電排熱の有効利用を考えた場合に、排熱で駆動される被駆動装置の作動温度によって蒸気タービンの効率が影響を受けるということになる。これが蒸気タービンの排熱利用の特殊性であり、当該特殊性に起因する、上記冷熱生成システムの課題である。
【0029】
<第1の知見>
この課題を解決するためには、蒸気タービンの凝縮温度が所定の温度範囲に維持されるように蒸気タービン装置及び吸着冷凍機を熱バランスさせればよい。この場合、廃熱を利用する事業という観点から冷熱需要を賄うことを優先し、冷熱負荷への冷熱出力を、冷熱需要を満たすように維持する必要がある。この制約条件下における蒸気タービン装置及び吸着冷凍機の熱バランスは、蒸気タービン装置の熱源からの受熱量を調整することが可能であれば、そうすることによって実現できる。もし、それが不可能であれば、吸着冷凍機の熱COPを制御することによって、それを実現できる。その結果、蒸気タービン駆動の排熱を有効利用することが可能な冷熱生成システムを提供できる。
【0030】
これが第1の知見である。
【0031】
<第2の知見>
第1の知見から、蒸気タービン装置の熱源からの受熱量又は吸着冷凍機の熱COPを、広範に調整することもできる。そうすると、熱負荷の冷熱需要量が広範に変動しても、当該熱負荷の冷熱需要量の広範な変動に応じて吸着冷凍機の熱COPを広範に調整することによって、蒸気タービンの凝縮温度が所定の温度範囲に維持されるように蒸気タービン装置及び吸着冷凍機を熱バランスさせることができる。そうであるならば、冷熱負荷として、一定の冷熱需要が見込めるDC以外に、冷熱需要が広範に変動する一般の冷熱負荷を対象にすることができる。つまり、第2の知見による冷熱生成システムによれば、冷熱負荷は特に限定されない。
【0032】
<蒸気タービンの排熱利用の第2の課題>
本発明者は、上記第1の課題を検討する過程で、蒸気タービンの排熱利用に吸着冷凍装置を用いる場合に、さらなる第2の課題が存在することに気が付いた。
【0033】
すなわち、蒸気タービンの排熱利用に吸着冷凍装置が用いられる場合、蒸気タービンの凝縮器の排熱が温水(加熱用熱媒体)として吸着冷凍装置に投入される。一方、吸着冷凍装置は、一般に、一対の吸着器を備え、吸着再生制御機構が、当該一対の吸着器の吸着再生動作を、一方の吸着器が吸着動作を行う間に他方の吸着器が再生動作を行うように、制御する。
【0034】
この場合、一方の吸着器が再生動作にあるとき、再生動作の初期においては直前の吸着動作においてその吸着体が冷却水(冷却用熱媒体)によって冷却されていることから、吸着冷凍装置に投入された温水は、冷却水の温度(一例として30℃)に近い温度まで熱消費されて排出される。その後、当該一方の吸着体が温水によって加熱されるに従って当該温水の排出温度が上昇し、当該吸着体が完全に再生された時点では熱消費がほとんどないことから、温水は、投入された温度(一例として55℃)に近い状態で排出される。その後、上記一方の吸着器が吸着動作に切り替わると、他方の吸着器が再生動作に切り替わり、その吸着体が再生動作にあるとき、上記一方の吸着器の吸着体と同じことが起こる。従って、吸着冷凍装置に一定温度の温水を投入しても、温水の排出温度は一定とはならず、とりわけ各吸着器における吸着動作と再生動作との切り替わりのタイミングで急激且つ大きな温度変化が発生する。この温水の急激且つ大きな温度変化は、蒸気タービンの背圧に圧力ショックを引き起こし、当該圧力ショックによってタービンブレードがダメージを受ける可能性がある。
【0035】
<第3の知見>
本発明者は、第3の知見として、この第2の課題を解決するためには、吸着冷凍装置が3以上の吸着器を備え、吸着再生制御機構が、吸着再生動作を、3以上の吸着器に対して、順次、実行するよう吸着冷凍装置の動作を制御すれば良いことを見出した。
【0036】
この場合、少なくとも2つの吸着器の吸着再生動作がずれて部分的に重なるので、その分、温水の排出温度が平準化され、蒸気タービンの背圧の圧力ショックが抑制される。その結果、タービンブレードがダメージを受ける可能性が低減される。
【0037】
<第4の知見>
上述の日本国特許第4,669,914号には、特定のゼオライト系吸着材が至適な動作条件下においては55℃で再生可能であると記載されている。
上述の通り特開2002-372332にはこの特定の合成ゼオライトが狭い相対蒸気圧(吸着冷凍機においては、吸着動作においては吸着器蒸気分圧に対する蒸発器蒸気分圧の相対比、再生動作においては凝縮器蒸気分圧に対する吸着器蒸気分圧の相対比となる)の範囲で大きく平衡状態が変化することが開示されている。さらに上述の日本国特許第4,669,914号には、この特定のゼオライト系吸着材が至適な動作条件下においては55℃で再生可能であると記載されている。
【0038】
これら特許文献の記述の実用的な価値を検証するため、本発明者は、冷却水の温度及び冷水の温度が、それぞれ、季節変動も勘案した通常の温度であるという条件下で、再生温度を40℃~65℃まで変化させ、その間にゼオライト系吸着材の吸着能力が0%~100%まで変化することを実験的に確認した。そして、それ故に、吸着冷凍機に投入する温水の温度制御により冷凍機効率を制御可能であること、これが冷熱生成システムの熱バランスの主たる調整機構となること、そして温水の温度がこの範囲にある場合に、合理的に復水器を設計することによって復水温度(凝縮温度)を70℃以下に抑えることが可能であるという第4の知見を得た。
【0039】
なお、本開示の上記第1乃至第4の知見は、蒸気タービンによって他の装置を駆動する動力を発生する形態にも適用することができる。
【0040】
(本開示の内容)
本開示は、以上の第1乃至第4の知見に基づいて想到されたものである。
【0041】
本開示のある形態(aspect)に係る冷熱生成システムは、熱源から受熱するランキンサイクルを用いた動力を発生する蒸気タービン装置と、前記ランキンサイクルを構成する第1凝縮器が放出する排熱を作動熱源とする吸着冷凍サイクルを用いて冷熱を冷熱負荷に出力するとともに冷凍排熱を放出する吸着冷凍装置と、前記ランキンサイクルにおける第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるよう前記蒸気タービン装置及び前記吸着冷凍装置の熱バランスを制御する熱バランス制御機構と、を備える。
【0042】
この構成によれば、熱バランス制御機構が、ランキンサイクルにおける第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように蒸気タービン装置及び吸着冷凍装置の熱バランスを制御するので、蒸気タービンの出口圧力(タービン背圧)を第1熱媒体の凝縮温度の第1所定温度範囲に対応する範囲に維持することができ、ひいては、蒸気タービンの圧縮比を一定の範囲内に維持できる。その結果、蒸気タービンの効率の低下を防止しつつ、蒸気タービン駆動の排熱を冷熱負荷への冷熱生成に利用することができ、ひいては、蒸気タービン駆動の排熱を有効利用することが可能な冷熱生成システムを提供できる。
【0043】
前記熱バランス制御機構は、前記熱源からの受熱を取得する受熱量取得装置と、前記冷熱負荷へ出力する冷熱量を取得する冷熱量取得装置と、前記第1熱媒体の凝縮温度に相関する凝縮温度相関物理量を検知する凝縮温度相関物理量センサと、前記熱バランスの制御として、前記受熱量、前記冷熱量、及び前記凝縮温度相関物理量に基づいて、前記第1熱媒体の前記凝縮温度が前記第1所定温度範囲内に維持されるように、前記冷熱負荷への前記冷熱の出力に応じて前記熱源からの受熱量を制御する受熱量制御回路と、を含んでもよい。
【0044】
この構成によれば、受熱量制御回路が、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように、冷熱負荷への冷熱の出力に応じて熱源からの受熱量を制御するので、冷熱負荷の冷熱負荷量が変動しても、熱源からの受熱量を制御することによって、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように、蒸気タービン装置及び吸着冷凍装置を熱バランスさせることができる。
【0045】
前記熱バランス制御機構は、前記冷熱負荷へ出力する冷熱量を取得する冷熱量取得装置と、前記第1熱媒体の凝縮温度に相関する凝縮温度相関物理量を検知する凝縮温度相関物理量センサと、前記熱バランスの制御として、前記冷熱量、及び前記凝縮温度相関物理量に基づいて、前記第1熱媒体の前記凝縮温度が前記第1所定温度範囲内に維持されるとともに前記冷熱負荷の冷熱負荷量に応じた前記冷熱が出力されるように、前記吸着冷凍装置の熱COPを制御する熱COP制御回路を含んでもよい。
【0046】
この構成によれば、熱COP制御回路が、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるとともに冷熱負荷の冷熱負荷量に応じた冷熱が出力されるように、吸着冷凍装置の熱COPを制御するので、冷熱負荷の冷熱負荷量が変動しても、吸着冷凍装置の熱COPを制御することによって、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように、蒸気タービン装置及び吸着冷凍装置を熱バランスさせることができる。
【0047】
前記第1凝縮器は、第2熱媒体が前記第1熱媒体と熱交換して昇温することにより熱を放出する作動熱源であり、前記吸着冷凍装置は、昇温した前記第2熱媒体が、前記吸着冷凍サイクルを構成する吸着器に収容され且つ冷媒を吸着した吸着体を加熱するように前記第1凝縮器と当該吸着器とを通って当該第2熱媒体を循環させる第2熱媒体循環経路を含み、前記熱COP制御回路は、前記熱COPの制御として、前記第1凝縮器から前記吸着器へ流れる前記第2熱媒体の温度が第2所定温度範囲内に維持されるよう前記第2熱媒体の流量を制御する第2熱媒体流量制御回路を含んでもよい。
【0048】
ここで、吸着冷凍機の熱COPは、当該吸着冷凍機への第2熱媒体の供給温度を下げることにより所望の値に減少することが可能である。第2熱媒体の供給温度を下げると、再生動作が不完全化し、吸着冷凍機に供給した熱が冷凍出力に十分に変換されなくなる。第2熱媒体の供給温度の低下は、(式5)から判るように、熱輸送量に対して流体流量を増加させて、温度差を低下させることによって可能となる。「温度差」は、運ぶ熱を受け取る前後の熱媒体の温度差である。「流体流量」は、単位時間当たりの流体の流量である。以下では、単位時間当たりの流量(flow rate)を単に「流量」と記載し、特に注意を喚起する場合には、「流量(単位時間当たりの流量)」と記載する。
【0049】
(式5):熱輸送量(kJ/min)=流体比熱(kJ/kg・K)×流体流量(kJ/min)×温度差(K)
つまり、第1凝縮器(二次側)を通流する第2熱媒体の流量を増やすと、第1熱媒から受け取る熱による第2熱媒体の温度上昇(温度差(K))が小さくなり、それによって、熱輸送量である凝縮排熱を第1凝縮器から充分に除去しながらも、吸着冷凍機に供給する第2熱媒体の温度を低下させることが可能になる。
【0050】
また、第2所定温度範囲は、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるような温度範囲に設定される。そのような第2所定温度範囲は、シミュレーション、実験、計算等によって求めることができる。
【0051】
上記構成によれば、第2熱媒体流量制御回路が、第1凝縮器から吸着器へ流れる第2熱媒体の温度が第2所定温度範囲内に維持されるよう第2熱媒体の流量を制御するので、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように吸着冷凍機の熱COPが適宜調整される。
【0052】
前記蒸気タービン装置は、前記ランキンサイクルとして、前記熱源からの熱によって液状の前記第1熱媒体を蒸発させて蒸気状の第1熱媒体を生成する第1蒸発器と、前記蒸気状の第1熱媒体によって回転動力を生成する蒸気タービンと、前記蒸気タービンを回転させた後の蒸気状の第1熱媒体を第2熱媒体との熱交換によって凝縮させて前記液状の第1熱媒体を生成する第1凝縮器と、前記第1熱媒体を、前記蒸発器、前記蒸気タービン、及び前記第1凝縮器を順に通るように循環させる第1熱媒体循環経路と、を含み、前記吸着冷凍装置は、前記吸着冷凍サイクルとして、降温した第3熱媒体で冷却された状態において、蒸気状の冷媒を吸着し、且つ、前記蒸気状の第1熱媒体と熱交換して昇温した前記第2熱媒体によって加熱された状態において、吸着した前記冷媒を蒸気として放出する吸着体を収容する吸着器と、前記吸着器に収容された前記吸着体から放出された蒸気状の冷媒を前記第3熱媒体との熱交換によって凝縮させて液状の冷媒を生成する第2凝縮器と、前記液状の冷媒を第4熱媒体との熱交換によって蒸発させて前記蒸気状の冷媒を生成する第2蒸発器と、前記蒸気状の冷媒と熱交換して昇温した前記第3熱媒体を放熱させて降温させる放熱器と、前記液状の冷媒と熱交換して降温した前記第4熱媒体の冷熱を前記冷熱負荷に出力する冷熱出力装置と、前記第2熱媒体を前記第1凝縮器及び前記吸着器を通るように循環させる第2熱媒体循環経路と、前記第3熱媒体を、前記吸着器、前記第2凝縮器、及び前記放熱器を順に通るように循環させる第3熱媒体循環経路と、前記第4熱媒体を、前記第2蒸発器及び前記冷熱出力装置を通るように循環させる第4熱媒体循環経路と、前記冷媒を、前記第2蒸発器、前記吸着器、及び前記第2凝縮器を順に通るように循環させる冷媒循環経路と、前記吸着体が前記冷媒を吸着する過程において前記吸着器を前記第2蒸発器に接続するとともに前記第3熱媒体循環経路に接続し、且つ前記吸着体が前記冷媒を放出して再生する過程において前記吸着器を前記第2凝縮器に接続するとともに前記第2熱媒体循環経路に接続する吸着再生機構と、を含んでもよい。
【0053】
この構成によれば、蒸気タービン駆動の効率の低下を防止しつつ、蒸気タービン駆動の排熱を冷熱負荷へ供給する冷熱の生成に利用することができる冷熱生成システムを、具体的に実現することができる。
【0054】
前記熱バランス制御機構は、前記放熱器から前記吸着器へ流れる前記第3熱媒体の温度が第3所定温度範囲内に維持されるよう前記第3熱媒体の流量を制御する第3熱媒体流量制御回路を含んでもよい。また、前記熱バランス制御機構は、前記冷熱出力装置から前記第2蒸発器へ流れる前記第4熱媒体の温度が第4所定温度範囲内に維持されるよう前記第4熱媒体の流量を制御する第4熱媒体流量制御回路を含んでもよい。
【0055】
ここで、冷熱負荷に安定して冷熱を出力するためには、冷熱負荷の発熱が安定して冷凍装置に汲み上げられることが必要であり、そのためには動力として第1凝縮器から投入された熱と汲み上げられた熱とが安定して吸着冷凍装置の外に排出されることが必要である。また、その際に行われる熱交換は下記の(式6)で表される。(式6)の「温度差」は互いに熱交換するもの同士の温度差を意味する。
【0056】
(式6):熱交換量(kJ)=熱伝達係数(KJ/m2・K)×熱交換面積(m2)×
温度差(K)
【0057】
(式6)から明らかなように、冷熱負荷の発熱を吸収して吸着冷凍装置に戻される第4熱媒体は、第2蒸発器における冷媒の蒸発温度に対してある程度の温度差がないと、限られた蒸発器の熱交換面積で冷熱負荷の発熱を吸収しきれない。同様に、冷凍排熱を放熱器で廃棄して吸着冷凍装置に戻される第3熱媒体は、十分に低くないと吸着体が温度低下しないために吸着動作が不完全となり、さらに第2凝縮器内の圧力が十分に低下しないために吸着体から第2凝縮器への冷媒蒸気の移動が妨げられて再生動作も不完全となるため、吸着冷凍装置が冷凍能力を十分に発揮しない。つまり、戻り第4熱媒体の温度と戻り第3熱媒体の温度が所定の範囲で安定していることは、吸着冷凍装置のヒートポンプ動作の暗黙の前提条件である。そして、これらの温度を所定の範囲に保つことも、基本的には熱媒体の流量制御によってできることが(式5)から明らかである。
【0058】
また、第3所定温度範囲は、吸着器の吸着及び再生動作が十分に行われるような温度範囲に設定される。また、第4所定温度範囲は、第2蒸発器で冷熱負荷の発熱の吸収が十分行われるような温度範囲に設定される。そのような第3所定温度範囲及び第4所定温度範囲は、シミュレーション、実験、計算等によって求めることができる。
【0059】
上記構成によれば、第3熱媒体流量制御回路が、放熱器から吸着器へ流れる第3熱媒体の温度が第3所定温度範囲内に維持されるよう第3熱媒体の流量を制御するので、吸着器の吸着及び再生動作が十分に行われる。また、第4熱媒体流量制御回路が、冷熱出力装置から第2蒸発器へ流れる第4熱媒体の温度が第4所定温度範囲内に維持されるよう第4熱媒体の流量を制御するので、第2蒸発器で冷熱負荷の発熱の吸収が十分行われる。その結果、吸着冷凍装置のヒートポンプ動作が安定して行われ、ひいては、吸着冷凍装置が、冷熱生成システムの熱バランスを適切に保ちながら十分に冷凍能力を発揮する。
【0060】
前記冷熱生成システムは、下記i)~ix)のいずれかの温度センサ又は流量センサを備え、前記熱バランス制御機構は、下記i)~ix)のいずれかの温度センサ又は流量センサが検知する温度又は流量に基づいて前記熱バランスを制御する熱バランス制御回路を含んでもよい。i)前記第1凝縮器から前記第1蒸発器へ流れる前記第1熱媒体の温度を検知する温度センサ、ii)前記第1蒸発器から前記蒸気タービンへ流れる前記第1熱媒体の温度を検知する温度センサ、iii)前記第1凝縮器から前記第1蒸発器へ流れる前記第1熱媒体の流量を検知する流量センサ、iv)前記吸着器から前記第2凝縮器へ流れる前記第2熱媒体の温度を検知する温度センサ、v)前記第2熱媒体の流量を検知する流量センサ、vi)前記第2凝縮器から前記放熱器へ流れる前記第3熱媒体の温度を検知する温度センサ、vii)前記第3熱媒体の流量を検知する流量センサ、viii)前記第2蒸発器から前記冷熱出力装置へ流れる前記第4熱媒体の温度を検知する温度センサ、ix)前記第4熱媒体の流量を検知する流量センサ。
【0061】
ここで、(式5)から明らかなように、流体のあるデバイスへの流入時と流出時とにおける温度差と流体の循環流量とから熱輸送量を簡単に求めることができる。また、蒸気温度と比エンタルピーとの関係は蒸気表(Steam Table)にまとめられた物性値であり熱バランス制御回路が記憶することができる。
【0062】
従って、上記構成によれば、熱バランス制御回路が、熱源からの受熱、蒸気タービンへの供給熱、吸着冷凍装置への供給熱、冷凍排熱、及び冷熱負荷の発熱を、記憶情報と測定情報とから直接的に演算して求めることが可能である。さらに、熱バランス制御回路は、例えば吸着冷凍装置の第2熱媒体の供給温度、第3熱媒体の供給温度、及び第4熱媒体の供給温度と、吸着冷凍装置の効率との関係等の実験値又は理論値を記憶することが可能であり、また外気温と放熱器性能との関係、蒸気温度と発電効率との関係などの実験値又は理論値を記憶することが可能である。また、上記受熱、各供給熱、冷凍排熱、及び冷熱負荷の発熱の目標熱量に対して、各々の熱媒体の狙い温度及び流量を瞬時に計算して各々のアクチュエーターの動作量を精緻かつ迅速に制御し、冷熱生成システムの熱バランスをいかなる時にも保ちながら、かつ冷熱生成システムの補器動力を削減する等の高級な制御も可能となる。
【0063】
前記吸着冷凍装置は、各々が吸着体を収容する3以上の吸着器と、前記吸着冷凍サイクルを構成し、冷媒を、第2蒸発器及び第2凝縮器を通るように循環させる冷媒循環経路と、第2熱媒体を、前記第1凝縮器を通るように循環させる第2熱媒体循環経路と、第3熱媒体を、前記第2凝縮器及び放熱器を通って前記第2凝縮器で得た前記温熱を前記放熱器で放熱するように循環させる第3熱媒体循環経路と、を備え、前記冷熱生成システムは、吸着動作において各々の前記吸着器が前記第2蒸発器に接続されるとともに前記第3熱媒体循環経路における前記放熱器と前記第2凝縮器との間に介挿されて前記吸着体が冷媒を吸着し、再生動作において各々の前記吸着器が前記第2凝縮器に接続されるとともに前記第2熱媒体循環経路に介挿されて前記吸着体が冷媒を放出して再生する吸着再生動作を、前記3以上の吸着器に対して、順次、実行するよう前記吸着冷凍装置の動作を制御する吸着再生制御機構を備えてもよい。
【0064】
ここで、吸着冷凍装置は、一般に、一対の吸着器を備え、吸着再生制御機構が、当該一対の吸着器の吸着再生動作を、一方の吸着器が吸着動作を行う間に他方の吸着器が再生動作を行うように、制御する。この場合、吸着冷凍装置に一定温度の第2熱媒体を投入しても、第2熱媒体の排出温度は一定とはならず、とりわけ各吸着器における吸着動作と再生動作との切り替わりのタイミングで急激且つ大きな温度変化が発生する。この第2熱媒体の急激且つ大きな温度変化は、蒸気タービンの背圧に圧力ショックを引き起こし、当該圧力ショックによってタービンブレードがダメージを受ける可能性がある。
【0065】
しかし、上記構成によれば、吸着冷凍装置が、各々が吸着体を収容する3以上の吸着器を備え、吸着再生制御機構が、吸着動作において各々の吸着器が第2蒸発器に接続されるとともに第3熱媒体循環経路における放熱器と第2凝縮器との間に介挿されて吸着体が冷媒を吸着し、再生動作において各々の吸着器が第2凝縮器に接続されるとともに第2熱媒体循環経路に介挿されて吸着体が冷媒を放出して再生する吸着再生動作を、3以上の吸着器に対して、順次、実行するよう吸着冷凍装置の動作を制御するので、少なくとも2つの吸着器の吸着再生動作がずれて部分的に重なるので、その分、第2熱媒体の排出温度が平準化され、蒸気タービンの背圧の圧力ショックが抑制される。その結果、タービンブレードがダメージを受ける可能性が低減される。
【0066】
各々の前記吸着器に対する前記吸着動作に要する時間Ta及び前記再生動作に要する時間Trが、n(nは3以上の整数)の吸着器について互いに同じであり、前記吸着再生制御機構は、前記nの吸着器に対する前記吸着再生動作を、当該吸着再生動作に要する時間Tc(Tc=Ta+Tr)の1/nの時間(Tc/n)ずつずらして実行するよう前記吸着冷凍装置の動作を制御することが可能であってもよい。
【0067】
この構成によれば、nの吸着器に対する吸着再生動作が、当該吸着再生動作に要する時間Tcの1/nの時間(Tc/n)ずつずらして行われるので、第2熱媒体の排出温度が、ずらした時間(Tc/n)内では変動するものの時間軸に対して均等に平準化される。また、吸着動作に要する時間Taと再生動作に要する時間Trとが同じであるので、第2熱媒体の排出温度が、ずらした時間(Tc/n)内においても、変動するものの時間軸に対して均等に平準化される。その結果、蒸気タービンの背圧の圧力ショックが、好適に抑制される。
【0068】
前記吸着再生制御機構は、前記吸着動作において、前記吸着体が冷媒を吸着するよう、各々の前記吸着器を、前記第2蒸発器に接続するとともに前記第3熱媒体循環経路における前記放熱器と前記第2凝縮器との間に介挿し、前記再生動作において、前記吸着体が冷媒を放出して再生するよう、各々の前記吸着器を前記第2凝縮器に接続するとともに前記第2熱媒体循環経路に介挿する吸着再生弁システムと、前記吸着再生動作を、前記3以上の吸着器に対して、順次、実行するよう前記吸着再生弁システムの動作を制御する吸着再生制御回路と、を含み、前記吸着冷凍装置は、複数の吸着冷凍機と、1の前記放熱器と、前記第2蒸発器で得た前記冷熱を前記冷熱負荷に出力する1の冷熱出力装置と、を備え、各々の前記吸着冷凍機が、前記第2蒸発器、前記3以上の吸着器、前記第2凝縮器、前記冷媒循環経路、前記第2熱媒体循環経路、前記第3熱媒体循環経路、及び前記吸着再生弁システムを備え、前記複数の吸着冷凍機の各々の前記第3熱媒体循環経路が、1の前記放熱器を通っており、前記複数の吸着冷凍機の各々の前記第2熱媒体循環経路が、1の前記第1凝縮器を通っているか、又は複数の前記第1凝縮器をそれぞれ通っており、当該複数の前記第1凝縮器が、前記蒸気タービン装置の前記ランキンサイクルにおける前記第1熱媒体の循環経路の複数の分流経路に設けられており、且つ、前記吸着再生制御回路は、全ての前記吸着冷凍機の前記3以上の吸着器に対して、前記吸着再生動作を、順次、実行するよう全ての前記吸着冷凍機の前記吸着再生弁システムの動作を制御する制御回路であってもよい。
【0069】
この構成によれば、蒸気タービンの背圧の圧力ショックが、より好適に抑制され、タービンブレードがダメージを受ける可能性がより低減される。また、大規模な熱源及び冷熱負荷に対応することができる。
【0070】
各々の前記吸着冷凍機の各々の前記吸着器に対する前記吸着動作に要する時間Ta及び前記再生動作に要する時間Trが、m(mは1以上の整数)の前記吸着冷凍機のn(nは3以上の整数)の吸着器について互いに同じであり、前記吸着再生制御回路は、各々の前記吸着冷凍機の前記nの吸着器に対する前記吸着再生動作を、前記再生動作に要する時間Tc(Tc=Ta+Tr)の1/nの時間(Tc/n)ずつずらして実行し、且つ、m(mは1以上の整数)の前記吸着冷凍機の間において、前記吸着再生動作を、当該吸着再生動作に要する時間Tcの1/mnの時間(Tc/mn)ずつずらして実行するよう前記mの吸着冷凍機の前記吸着再生弁システムの動作を制御することが可能であってもよい。
【0071】
この構成によれば、大規模な熱源及び冷熱負荷に対応することが可能で、且つ、第2熱媒体の排出温度が、より時間軸に対して均等に平準化され、蒸気タービンの背圧の圧力ショックが、より好適に抑制され、タービンブレードがダメージを受ける可能性がより好適に低減される。
【0072】
複数の前記吸着冷凍装置を含み、全ての前記吸着冷凍装置が用いる前記吸着冷凍サイクルの作動熱源が、1の前記蒸気タービン装置の1の前記第1凝縮器であるか、又は、1の前記蒸気タービン装置の前記ランキンサイクルにおける前記第1熱媒体の循環経路の複数の分流経路にそれぞれ前記複数の吸着冷凍装置に対応して設けられた複数の前記第1凝縮器であってもよい。
【0073】
この構成によれば、より大規模な熱源及び冷熱負荷に対応することが可能で、且つ、タービンブレードがダメージを受ける可能性がより好適に低減される冷熱生成システムを提供できる。
【0074】
前記排熱を前記第1凝縮器から前記吸着冷凍装置の前記吸着冷凍サイクルに運ぶ熱媒体経路に、前記排熱をバックアップするためのバックアップ熱源が設けられていてもよい。
【0075】
この構成によれば、蒸気タービン装置が運転を停止した場合においても、バックアップ熱源を作動熱源として吸着冷凍装置を作動させることができる。
【0076】
前記吸着冷凍装置が、前記冷凍排熱をする放出するための放熱器を含み、前記放熱器が、冷却塔及び電力式ヒートポンプを含んでいてもよい。
【0077】
この構成によれば、基本的に冷却塔によって十分な排熱能力を得ることでき、且つ、温度及び湿度によって変動する冷却塔の排熱能力を、電力式ヒートポンプによって補助することによって、安定して冷凍排熱を放出することができる。
【0078】
前記冷熱生成システムが、前記冷熱負荷である情報通信設備を含んでいてもよい。
【0079】
この構成によれば、常に冷熱需要がある理想的な熱負荷を冷熱生成システム内に確保することができる。
【0080】
前記蒸気タービン装置が、前記ランキンサイクルを用いて発生する動力によって発電する発電機を含み、当該発電機と前記情報通信設備とが、当該発電機が発電する電力の少なくとも一部を当該情報通信設備に供給することが可能なように接続されていてもよい。
【0081】
この構成によれば、熱源の廃熱利用施設である蒸気タービン装置の発電電力を売電する場合における逆潮流を低減することができる。
【0082】
以下、本開示の具体的な実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。また、以下の図は、本開示を説明するための図であるので、本開示に無関係な要素が省略される場合、誇張等のために寸法が正確でない場合、簡略化される場合、複数の図において互いに対応する要素の形態が一致しない場合等がある。
【0083】
また、本願の明細書及び請求の範囲において、表現を簡単にするために、物(部材、装置等)の数を単純に数で表す。
【0084】
また、本開示は、以下の実施形態に限定されない。
【0085】
(実施形態1)
図1は、本開示の実施形態1に係る冷熱生成システムのハードウェアの概要の一例を示す図である。
図2は、
図1の冷熱生成システムの制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、
図2では、
図1の蒸気タービン装置の全容を簡略化して示しており、また、
図1の吸着冷凍機200を簡略化して示している。
【0086】
<冷熱生成システム1000Aの構成の概要>
図1を参照すると、実施形態1に係る冷熱生成システム1000Aは、蒸気タービン装置100と、吸着冷凍装置700と、制御装置300と、を含む。吸着冷凍装置700は、吸着冷凍機200と、放熱器400と、冷熱出力装置500と、を含む。
【0087】
蒸気タービン装置100は、第1蒸発器101において熱伝達構造を介して熱源10と接続され、第1凝縮器102において、第2熱媒体循環経路211を介して吸着冷凍機200と接続されている。吸着冷凍機200は、後述する吸着器202において、第2熱媒体循環経路211を介して蒸気タービン装置100の第1凝縮器102と接続され、吸着器202及び第2凝縮器204において、第3熱媒体循環経路212を介して放熱器400と接続され、第2蒸発器201において、第4熱媒体循環経路214を介して冷熱出力装置500と接続されている。放熱器400は、冷却体401に放熱する。冷熱出力装置500は、冷熱負荷501に冷熱を出力する。制御装置300は、後述する制御系統を介して、冷熱生成システム1000Aの動作を制御する。
【0088】
<冷熱生成システム1000Aの動作の概要>
図1及び
図2を参照すると、冷熱生成システムの1000Aは、制御装置300の制御によって、概略、以下のように動作する。なお、以下では、冷熱生成システム1000Aに入力される又は冷熱生成システム1000Aから出力される熱をQ1~Q5の記号を用いて特定する。Q1~Q5の「熱量」を(Q1)~(Q5)記号を用いて特定する。
【0089】
蒸気タービン装置100は、第1蒸発器101において熱源10から蒸発器入力熱Q1を受熱し、この蒸発器入力熱Q1のうちのタービン入力熱Q2を蒸気タービン103Aに入力して動力を生成する。そして、蒸気タービン装置100は、蒸気タービン103Aの動力生成に利用されなかった凝縮排熱Q3を第1凝縮器102において第2熱媒体循環経路211に排出する。吸着冷凍機200は、第2熱媒体循環経路211に排出された凝縮排熱Q3を作動熱源として、吸着器202に冷媒の吸着再生動作を行わせることによって、第2蒸発器201において、第4熱媒体循環経路214及び冷熱出力装置500を介して冷熱負荷501から冷熱出力としての冷熱負荷501の発熱体発熱Q5を汲み上げるとともに、吸着器202及び第2凝縮器204において、第3熱媒体循環経路212及び放熱器400を介して冷凍排熱Q4を冷却体401に放出する。
【0090】
以下、上述した冷熱生成システム1000Aの構成要素を、ハードウェアの構成及び制御系統の構成の順に説明する。
【0091】
≪ハードウェアの構成≫
<蒸気タービン装置100>
図2を参照すると、蒸気タービン装置100は、ランキンサイクル110を含む。ランキンサイクル110は、第1蒸発器101と、蒸気タービン103Aと、第1凝縮器102と、第1熱媒体タンク105と、第1熱媒体循環経路106と、を含む。
【0092】
{第1蒸発器101}
第1蒸発器101は、熱源10から受熱する蒸発器入力熱Q1によって液状の第1熱媒体を蒸発させて蒸気状の第1熱媒体を生成する。以下では、蒸発器入力熱Q1の熱量を「受熱量(Q1)」と記載する場合がある。第1蒸発器101は熱媒体を蒸発させることができれば特に限定されず、第1蒸発器101として公知の熱媒体蒸発器を用いることができる。第1蒸発器101として、例えば、ボイラーが挙げられる。
【0093】
[熱源10]
熱源10は特に限定されない。熱源10として、地熱利用施設、太陽熱利用施設、工場、ごみ焼却施設(清掃工場)等が例示される。工場として、化学プラント、製鉄所、製紙工場、一般の工場等が例示される。熱源10は、発熱量又は排熱量を、後述する受熱量データとして、受熱量取得部340に送信する。また、熱源10は、発熱量制御部11を有し、冷熱生成システム1000Aの制御装置300の受熱量制御回路320からの発熱量制御指令を受信し、それに基づいて、発熱量又は排熱量を制御する。なお、熱源10からの排熱量を調整する機構として、熱源10から第1蒸発器101へ排熱を輸送する熱媒体の流路に、熱媒体の流量を調整する機構(例えば流量調整弁)を設けてもよい。
【0094】
[第1熱媒体]
第1熱媒体は、通常のランキンサイクル110においては純水であり、まれに低温熱源での動作を目的としてペンタン、ヘキサン等の有機溶媒が用いられる(オーガニックランキンサイクル)。本開示は、通常のランキンサイクル110及びオーガニックランキンサイクルの双方に適用可能である。
【0095】
{蒸気タービン103A}
蒸気タービン103Aは、蒸気状の第1熱媒体によって回転動力を生成する。蒸気タービン103Aは、特に限定されず、蒸気タービン103Aとして、公知の蒸気タービンを用いることができる。蒸気タービン103Aは、回転軸が動力装置103Bと連結されていて、回転動力によって動力装置103Bを駆動する。蒸気タービン103Aと動力装置103Bとが蒸気タービンユニット103を構成する。動力装置103Bは、動力によって仕事をする装置であり、例えば、発電機、工作機等が挙げられる。動力装置103Bは、ここでは、発電機で構成される。以下では、この動力装置としての発電機を「発電機103B」と表記する。
【0096】
{第1凝縮器102}
第1凝縮器102は、蒸気タービン103Aを回転させた後の蒸気状の第1熱媒体を第2熱媒体との熱交換によって凝縮させて液状の第1熱媒体を生成する。第1凝縮器102は熱交換器で構成され、一次側流路を第1熱媒体が流れ、二次側流路を第2熱媒体が流れる。第1凝縮器102として、公知の凝縮器を用いることができる。
【0097】
{第1熱媒体タンク105}
第1熱媒体タンク105は、第1凝縮器102で生成された液状の第1熱媒体を一時的に貯留する。第1熱媒体タンク105は、特に限定されず、第1熱媒体タンク105として、公知の熱媒体タンクを用いることができる。
【0098】
{第1熱媒体循環経路106}
第1熱媒体循環経路106は、第1熱媒体循環流路と第1熱媒体ポンプ104とを含む。第1熱媒体循環流路は、第1蒸発器101の出口から延出して、蒸気タービン103A、第1凝縮器102の一次側流路、及び第1熱媒体タンク105を経由して第1蒸発器101の入口に戻るように形成された閉流路である。第1熱媒体ポンプ104は、第1熱媒体循環流路における第1熱媒体タンク105と第1蒸発器101との間に設けられている。第1熱媒体ポンプ104は、液状の第1熱媒体を第1蒸発器101に向けて圧送することによって、当該第1熱媒体を、第1熱媒体循環流路を通って循環させる。第1熱媒体ポンプ104は、流体を、流量を制御しながら圧送できるものであれば、特に限定されず、第1熱媒体ポンプ104として、公知の流体ポンプを用いることができる。
【0099】
<第2熱媒体循環経路>
第2熱媒体循環経路211は、第2熱媒体循環流路と第2熱媒体ポンプ221とを含む。第2熱媒体循環流路は、第1凝縮器102の二次側流路の出口から延出して、吸着冷凍機200の互い並列に配置された第1及び第2吸着器202A,202Bを経由して第1凝縮器102の二次側流路の入口に戻るように形成された閉流路である。第2熱媒体ポンプ221は、第2熱媒体循環流路における、互いに並列配置された第1及び第2吸着器202A,202Bと第1凝縮器102の入口との間に設けられている。第2熱媒体ポンプ221は、第2熱媒体を第1凝縮器102の二次側流路の入口に向けて圧送することによって、当該第2熱媒体を、第2熱媒体循環流路を通って循環させる。第2熱媒体ポンプ221は、流体を、流量を制御しながら圧送できるものであれば、特に限定されず、第2熱媒体ポンプ221として、公知の流体ポンプを用いることができる。
【0100】
吸着冷凍機200の動作原理上、吸着動作および再生動作のタイミングで、第2熱媒体と第3熱媒体とが不可避的に若干量混ざり合う。従って、第2熱媒体は、第3熱媒体と物質的に同じであることが必要であり、後述する理由により、第3熱媒体は水、従って第2熱媒体も水である。
【0101】
<吸着冷凍機>
吸着冷凍機200は、吸着冷凍サイクル210を含む。吸着冷凍サイクル210は、第2蒸発器201と、第1及び第2吸着器202A,202Bと、第2凝縮器204と、冷媒循環経路213と、吸着再生弁システム209と、を含む。
【0102】
{第2蒸発器201}
第2蒸発器201は、液状の冷媒を第4熱媒体との熱交換によって蒸発させて蒸気状の冷媒を生成する。冷媒は低温用の熱媒体であれば、特に限定されない。冷媒としては、純水が用いられる。第2蒸発器201は、冷媒を蒸発させることができれば特に限定されず、第2蒸発器201として公知の冷媒蒸発器を用いることができる。
【0103】
{吸着器202}
第1及び第2吸着器202A,202Bは、共に、冷媒入口、冷媒出口、加熱冷却媒体入口、及び加熱冷却媒体出口を有する密閉状の容器であり、それぞれ、吸着体203A,203Bを収容する。以下(他の実施形態も含む)では、複数(ここでは2)の吸着器202A,202Bを総称する場合には、吸着器202と表記する。また、複数(ここでは2)の吸着体203A,203Bを総称する場合には、吸着体203と表記する。また、第i吸着器の吸着体を第i吸着体と呼ぶ場合がある。iは1以上の整数である。吸着冷凍機の原理上、吸着器202の数は特に限定されず、1であってもよい。しかしながら、通常、吸着器202の数は2である。これにより、第1及び第2吸着器202A,202Bのうちの一方が吸着動作及び再生動作を行う間に他方が再生動作及び吸着動作を行うことができ、冷媒を連続して圧縮することにより連続的な冷凍出力を得られるためである。
【0104】
吸着体203は、例えば、シリカゲル、ゼオライト等の材料で構成される。特に、ゼオライトは、以下の理由によって吸着体203を構成する材料として好ましい。
【0105】
[ゼオライト]
第4の知見で述べたように、日本国特許第4,669,914号には、特定のゼオライト系吸着材が至適な動作条件下においては55℃で再生可能であると記載されている。本発明者は、冷却水(第3熱媒体)の温度及び冷水(第4熱媒体)の温度が、それぞれ、季節変動も勘案した通常の温度であるという条件下で、再生温度が40℃~65℃まで変化する間にゼオライト系吸着材の吸着能力が0%~100%まで変化することを実験的に確認した。そして、それ故に、吸着冷凍機に投入する温水(第2熱媒体)の温度のコントロールが冷熱生成システムの熱バランスの主たる調整機構となること、そして温水(第2熱媒体)の温度がこの範囲にある場合に、合理的に復水器(第1凝縮器)を設計することによって復水温度(第1熱媒体の凝縮温度)を70℃以下に抑えることが可能であるという知見を得た。従って、吸着体203をゼオライト等の材料で構成することが好ましい。
【0106】
[吸着体203]
吸着体203は、降温した第3熱媒体で冷却された状態において、蒸気状の冷媒を吸着し、且つ、蒸気状の第1熱媒体と熱交換して昇温した第2熱媒体によって加熱された状態において、吸着した冷媒を蒸気(気体)として放出する(離脱させる)。
【0107】
{第2凝縮器204}
第2凝縮器204は、吸着体203から放出された蒸気状の冷媒を第3熱媒体との熱交換によって凝縮させて液状の冷媒を生成する。第2凝縮器204は熱交換器で構成され、一次側流路を冷媒が流れ、二次側流路を第3熱媒体が流れる。第2凝縮器204として、公知の冷媒凝縮器を用いることができる。
【0108】
{冷媒循環経路213}
冷媒循環経路213は、冷媒循環流路と冷媒ポンプ223とを含む。冷媒循環流路は、第2蒸発器201の出口から延出して、吸着器202、及び第2凝縮器204の一次側流路を経由して第2蒸発器201の入口に戻るように形成された閉流路である。冷媒ポンプ223は、冷媒循環流路における第2凝縮器204と第2蒸発器201との間に設けられている。冷媒ポンプ223は、液状の冷媒を第2蒸発器201の入口に向けて圧送することによって、当該冷媒を、冷媒循環流路を通って循環させる。冷媒ポンプ223は、流体を、流量を制御しながら圧送できるものであれば、特に限定されず、冷媒ポンプ223として公知の流体ポンプを用いることができる。
【0109】
{吸着再生弁システム209}
吸着再生弁システム209は、運転制御回路330とともに吸着再生制御機構を構成し、運転制御回路330の制御により、吸着動作において、吸着体203A,203Bが冷媒を吸着するよう、各々の吸着器202A,202Bを、第2蒸発器201に接続するとともに第3熱媒体循環経路212における放熱器400と第2凝縮器204との間に介挿し、再生動作において、吸着体203A,203Bが冷媒を放出して再生するよう、各々の吸着器202A,202Bを第2凝縮器204に接続するとともに第2熱媒体循環経路211に介挿する。
【0110】
具体的には、吸着再生弁システム209は、第1及び第2入口側冷媒開閉弁205A,205Bと、第1及び第2出口側冷媒開閉弁206A,206Bと、第1及び第2入口側熱媒体切替弁207A,207Bと、第1及び第2出口側熱媒体切替弁208A,208Bと、を含む。
【0111】
第1及び第2入口側冷媒開閉弁205A,205Bは、共に、開閉弁で構成され、それぞれ、冷媒循環流路における第1及び第2吸着器202A,202Bの冷媒入口と第2蒸発器201との間に介挿されている。
【0112】
第1及び第2出口側冷媒開閉弁206A,206Bは、共に、開閉弁で構成され、それぞれ、冷媒循環流路における第1及び第2吸着器202A,202Bの冷媒出口と第2凝縮器204との間に介挿されている。
【0113】
第1及び第2入口側熱媒体切替弁207A,207Bは、共に、三方弁で構成され、各々の第1ポートが、それぞれ、第1及び第2吸着器202A,202Bの加熱冷却熱媒体入口と接続され、各々の第2ポートが、それぞれ、後述する第2熱媒体循環流路を介して第1凝縮器102の二次側流路の出口と接続され、各々の第3ポートが、それぞれ、後述する第3熱媒体循環流路を介して放熱器の出口と接続されている。
【0114】
第1及び第2出口側熱媒体切替弁208A,208Bは、共に、三方弁で構成され、各々の第1ポートが、それぞれ、第1及び第2吸着器202A,202Bの加熱冷却熱媒体出口と接続され、各々の第2ポートが、それぞれ、後述する第2熱媒体循環流路を介して第1凝縮器102の二次側流路の入口と接続され、各々の第3ポートが、それぞれ、後述する第3熱媒体循環流路を介して第2凝縮器204の入口と接続されている。
【0115】
<放熱器400>
放熱器400は、第2凝縮器204で蒸気状の冷媒と熱交換して昇温した第3熱媒体を冷却体401との熱交換によって放熱させて降温させる。
【0116】
放熱器400は、熱媒体を冷却体401と熱交換させることができるものであれば、特に限定されない。放熱器400として、冷却塔(開放式熱交換器)、電力式ヒートポンプ、密閉式熱交換器等が例示される。冷却体401は、熱媒体を冷却できるものであれば、特に限定されない。冷却体401として、空気(大気)、水等が例示される。
【0117】
<第3熱媒体循環経路>
第3熱媒体循環経路212は、第3熱媒体循環流路と第3熱媒体ポンプ222とを含む。第3熱媒体循環流路は、放熱器400の出口から延出して、吸着冷凍機200の互い並列に配置された第1及び第2吸着器202A,202B、及び第2凝縮器204の二次側流路を経由して放熱器400の入口に戻るように形成された閉流路である。第3熱媒体ポンプ222は、第3熱媒体循環流路における、放熱器400の出口と、互いに並列配置された第1及び第2吸着器202A,202Bとの間に設けられている。第3熱媒体ポンプ222は、第3熱媒体を第1及び第2吸着器202A,202Bに向けて圧送することによって、当該第3熱媒体を、第3熱媒体循環流路を通って循環させる。第3熱媒体ポンプ222は、流体を、流量を制御しながら圧送できるものであれば、特に限定されず、第3熱媒体ポンプ222として、公知の流体ポンプを用いることができる。
【0118】
第3熱媒体は水である。第3熱媒体が水であり、放熱器400が冷却塔(開放式熱交換器)であり、且つ、冷却体401が空気(大気)であり、第3熱媒体の気化潜熱を用いて大気に放熱冷却を行う系が一般的であり、また好ましいからである。
【0119】
<冷熱出力装置500>
冷熱出力装置500は、液状の冷媒と熱交換して降温した第4熱媒体の冷熱を冷熱負荷501に出力する。冷熱出力装置500は、後述する冷熱量データを冷熱量取得部350に送信してもよい。
【0120】
冷熱出力装置500は、冷熱負荷501の発熱体と熱交換できるものであれば、特に限定されない。冷熱出力装置500は、一般的な例として熱交換器が挙げられ、具体例として、空調設備(規模の大小を問わない)の室内機が挙げられる。冷熱負荷501として、DC、食品工場、一般の工場等が例示される。
冷熱負荷501は、後述する冷熱量データを冷熱量取得部350に送信してもよい。
【0121】
<第4熱媒体循環経路>
第4熱媒体循環経路214は、第4熱媒体循環流路と第4熱媒体ポンプ224とを含む。第4熱媒体循環流路は、第2蒸発器201の二次側流路の出口から延出して、冷熱出力装置500を経由して第2蒸発器201の二次側流路の入り口に戻るように形成された閉流路である。第4熱媒体ポンプ224は、第4熱媒体循環流路における冷熱出力装置500と第2蒸発器201の入口との間に設けられている。第4熱媒体ポンプ224は、第4熱媒体を第2蒸発器201の二次側流路の入口に向けて圧送することによって、当該第4熱媒体を、第4熱媒体循環流路を通って循環させる。第4熱媒体ポンプ224は、流体を、流量を制御しながら圧送できるものであれば、特に限定されず、第4熱媒体ポンプ224として、公知の流体ポンプを用いることができる。
【0122】
第4熱媒体として、水、不凍液が例示される。第4熱媒体が水である場合、第2蒸発器201内で冷却されて凍結する可能性があるが、不凍液にはその可能性が無いので、第4熱媒体は不凍液であることが好ましい。
【0123】
<制御装置300>
制御装置300は、冷熱生成システム1000Aの適所に配置されている。制御装置300は、コンピュータ及び各制御要素との通信を行うための通信器を含む。このコンピュータがプロセッサPr及びメモリMeを含む。制御装置300は、冷熱生成システム1000Aの動作を制御する。制御装置300は、集中制御を行う単独の制御装置で構成されてもよく、分散制御を行う複数の制御装置で構成されてもよい。制御装置300の詳しい構成及び動作は、以下に述べる。
【0124】
≪制御系統の構成≫
図2を参照すると、冷熱生成システム1000Aの制御系統は、制御装置300と、第1熱媒体温度センサ601と、を含む。
【0125】
<制御装置300>
制御装置300は、システム制御回路310と、受熱量取得部340と、冷熱量取得部350と、を含む。システム制御回路310、受熱量制御回路320と運転制御回路330とを含む。システム制御回路310、受熱量取得部340、及び冷熱量取得部350は、それぞれ、通信部と処理部とを含み、処理部で処理される又は処理されたデータを通信部によって受信又は送信する。
【0126】
システム制御回路310、受熱量取得部340、及び冷熱量取得部350の処理部は、メモリMeに格納された専用の制御プログラムをプロセッサPrが読みだして実行することによって実現される機能ブロック(機能モジュール)である。
【0127】
プロセッサPr及びメモリMeを含むコンピュータとして、例えば、マイクロコントローラ、MPU、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)等が挙げられる。
【0128】
本明細書で開示する制御を行う要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成された又はプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、及び/又は、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサPrは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、「回路」、「ユニット」、又は「部」は、列挙された機能を実行するハードウェアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウェアである。ハードウェアは、本明細書に開示されているハードウェアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウェアであってもよい。ハードウェアが回路の一種と考えられるプロセッサPrである場合、「回路」、「ユニット」又は「部」はハードウェアとソフトウェアの組み合わせであり、ソフトウェアはハードウェア及び/又はプロセッサPrの構成に使用される。
【0129】
{受熱量制御回路320}
受熱量制御回路320は、第1熱媒体温度センサ601が検知する第1熱媒体の凝縮温度と、受熱量取得部340が取得する受熱量データと、冷熱量取得部350が取得する冷熱量データと、に基づいて、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように、冷熱負荷501への冷熱の出力に応じて熱源10からの受熱量(Q1)を制御する。受熱量制御回路320は、熱源10の発熱量制御部11に発熱量制御指令を送信し、発熱量制御部11が受信した発熱量制御指令に基づいて、熱源10の発熱量(Q1)又は排熱量(Q1)を制御する。
【0130】
第1所定温度範囲は、蒸気タービン装置100の蒸気タービン103Aの効率の許容範囲等を考慮して決定される。第1所定温度範囲は、例えば、20℃以上70℃以下とされる。第1熱媒体の凝縮温度が70℃以下であれば、蒸気タービン103Aの効率の低下を許容限度内に抑制することができる。また、第1熱媒体の凝縮温度が70℃以下であれば、好ましい第2熱媒体の温度範囲(40℃~65℃)を勘案して必要な温度差を設定し、第1凝縮器102を合理的な伝熱面積の範囲に設計できる。一方、第1所定温度範囲の下限温度は、冷却体401の温度によって律せられる。その理由は以下の通りである。吸着再生動作において、吸着体203は、第2熱媒体によって加熱され、第3熱媒体によって冷却されるので、第2熱媒体の温度は、第3熱媒体の温度より高い。そして、吸着冷凍サイクルにおいて、第3熱媒体は冷却体401によって冷却されるので、第3熱媒体の温度は冷却体401の温度より高い。それ故、第2熱媒体の温度を低く設計するためには、冷却体401の温度を低く設計する必要があるからである。
【0131】
実用的な冷却体401の下限温度は、地下水の10℃程度である。従って、第1所定温度範囲が20℃以上であれば、実用上無理なく、蒸気タービン103Aの効率を良好に維持することができる。受熱量制御回路320は、この第1所定温度範囲を予め記憶部に記憶する。
【0132】
受熱量制御回路320は、熱バランス制御回路の実施形態1における態様の一例である。熱バランス制御回路は、第1熱媒体温度センサ601、受熱量取得部340、及び冷熱量取得部350とともに熱バランス制御機構を構成し、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるよう蒸気タービン装置100及び吸着冷凍装置700の熱バランスを制御する。
【0133】
{運転制御回路330}
運転制御回路330は、冷熱生成システム1000Aの熱バランス以外の動作を制御する。運転制御回路330は、特に吸着再生弁システム209の動作を制御する。従って、運転制御回路330と吸着再生弁システム209とが吸着再生制御機構を構成する。
【0134】
{受熱量取得部340}
受熱量取得部340においては、受熱通信部が、熱源10から受熱量データを受信し、受熱量処理部が受信した受熱量データを、一時保存等、適宜処理する。
【0135】
受熱量データは、熱源10から排出されて蒸気タービン装置100の第1蒸発器101が受け取る蒸発器入力熱Q1の量を示すデータである。具体的には、例えば、熱源10がごみ焼却施設である場合、受熱量データとして、ごみの投入量が挙げられる。熱源10が工場である場合、受熱量データとして、当該工場の排熱を運ぶ熱媒体(例えば温水)の流量が挙げられる。受熱量取得部340は、これらの受熱量データをそのまま「受熱量(Q1)」として用いても良く、あるいは、これらの受熱量データを熱量に変換して「受熱量(Q1)」としてもよい。
【0136】
{冷熱量取得部350}
冷熱量取得部350においては、冷熱通信部が、冷熱負荷501又は冷熱出力装置500から冷熱量データを受信し、冷熱量処理部が受信した冷熱量データを、一時保存等、適宜処理する。
【0137】
冷熱量データは、冷熱負荷501の発熱体が、冷熱出力装置500から供給される冷熱と交換で放出する発熱体発熱Q5の熱量を示すデータである。換言すると、冷熱量データは、冷熱出力装置500が冷熱負荷501から汲み上げた発熱体発熱Q5の熱量を示すデータである。従って、以下では、「発熱体発熱Q5の熱量」を「冷熱量(Q5)」と呼ぶ場合がある。具体的には、例えば、冷熱負荷501がDCある場合、冷熱量データとして、DCの消費電力が挙げられる。例えば、冷熱負荷501が工場である場合、冷熱量データとして、当該工場の冷熱出力装置500としての空調設備の消費電力が挙げられる。例えば、冷熱負荷501が食品工場であり、冷熱出力装置500が当該食品工場の大規模な冷凍設備である場合、冷熱量データとして、当該冷凍設備の冷媒の流量が挙げられる。冷熱量取得部350は、これらの冷熱量データをそのまま「冷熱量(Q5)」として用いても良く、あるいは、これらの冷熱量データを熱量(負の熱量)に変換して「冷熱量(Q5)」としてもよい。
【0138】
{第1熱媒体温度センサ601}
第1熱媒体温度センサ601は、実施形態1における凝縮温度相関物理量センサの態様の一例である。第1熱媒体温度センサ601は、蒸気タービン装置100の第1熱媒体の凝縮温度を検知する。具体的には、第1熱媒体温度センサ601は、第1熱媒体流路における蒸気タービン103Aと第1凝縮器102との間に設けられている。第1熱媒体温度センサ601は、温度センサであれば特に限定されない。第1熱媒体温度センサ601として、測温抵抗体、熱電対、赤外線センサ等の放射温度計等が例示される。
【0139】
≪冷熱生成システム1000Aの動作≫
<一般的な動作>
まず、冷熱生成システム1000Aの一般的な動作を説明する。この動作は、運転制御回路330が冷熱生成システム1000Aの制御要素(特に、第1乃至第4熱媒体ポンプ104,221,222,224及び吸着再生弁システム209)を制御することによって遂行される。
【0140】
図1及び
図2を参照すると、蒸気タービン装置100において、第1蒸発器101が熱源10から受熱した蒸発器入力熱Q1によって第1熱媒体を蒸発させる。第1熱媒体循環経路106が、この蒸気状の第1熱媒体によってタービン入力熱Q2を蒸気タービン103Aに運ぶ。蒸気タービン103Aが、発電機103Bを回転させて、発電機103Bに電力E1を生成させる。第1熱媒体循環経路106が、蒸気タービン103Aから排出された蒸気状の第1熱媒体を第1凝縮器102に運ぶ。第1凝縮器102が、この蒸気状の第1熱媒体を凝縮させる。第1熱媒体循環経路106が、この凝縮された液状の第1熱媒体を、第1熱媒体タンク105及び第1熱媒体ポンプ104を通って、第1蒸発器101に戻す。
【0141】
一方、吸着冷凍装置700において、冷熱出力装置500が冷熱を冷熱負荷501に出力し、その際に冷熱の出力と交換に冷熱負荷501から発熱体発熱Q5を受け取る。第4熱媒体循環経路214がこの発熱体発熱Q5を第4熱媒体によって第2蒸発器201に運ぶ。第2蒸発器201は、発熱体発熱Q5によって冷媒を蒸発させる。
【0142】
また、放熱器400が、第3熱媒体を、冷却体401と熱交換させることによって冷凍排熱Q4を放熱し、それによって、第3熱媒体を降温させる。第3熱媒体循環経路212が、この降温した第3熱媒体を第1及び第2吸着器202A,202Bに運ぶ。
【0143】
さらに、第1凝縮器102が、第1熱媒体を凝縮させるために当該第1熱媒体を第2熱媒体と熱交換させることによって、蒸気タービン103Aの駆動動作に利用されなかった凝縮排熱Q3を排出する。第2熱媒体循環経路211が、この凝縮排熱Q3を第2熱媒体によって第1及び第2吸着器202A,202Bに運ぶ。
【0144】
ここで、吸着再生弁システム209が、第1及び第2吸着器202A,202Bに「吸着動作」及び「再生動作」を行わせる。「吸着動作」は、吸着器202内の吸着体203が、第2蒸発器201から冷媒を蒸気として吸着し、それによって、第2蒸発器201から当該蒸気の気化潜熱が奪われて冷凍出力が生成される動作である。「再生動作」は、吸着器202内の吸着体203が、吸着動作で吸着した冷媒を蒸気として放出し、それによって、吸着体203の吸着機能が再生される動作である。
【0145】
吸着再生弁システム209は、例えば、第1及び第2吸着器202A,202Bの吸着再生動作のサイクルタイム(以下、単に「吸着再生動作サイクルタイム」と呼ぶ)の前半サイクルにおいて、第1入口側冷媒開閉弁205Aを開放するとともに第1出口側冷媒開閉弁206Aを閉止して第1吸着器202Aを第2蒸発器201に接続し、且つ、第1吸着器202Aの入口の接続先を第1入口側熱媒体切替弁207Aによって第3熱媒体循環経路212に切り替えるとともに第1吸着器202Aの出口の接続先を第1出口側熱媒体切替弁208Aによって第3熱媒体循環経路212に切り替え、それによって、第1吸着器202Aを第3熱媒体循環経路212における放熱器400と第2凝縮器204との間に介挿する。これにより、第1吸着器202Aの吸着体203Aが、第3熱媒体によって冷却されて、第2蒸発器201から蒸気状の冷媒を吸着する。
【0146】
また、吸着再生弁システム209は、吸着再生動作サイクルタイムの前半サイクルにおいて、第2入口側冷媒開閉弁205Bを閉止するとともに第2出口側冷媒開閉弁206Bを開放して第2吸着器202Bを第2凝縮器204に接続し、且つ、第2吸着器202Bの入口の接続先を第2入口側熱媒体切替弁207Bによって第2熱媒体循環経路211に切り替えるとともに第2吸着器202Bの出口の接続先を第2出口側熱媒体切替弁208Bによって第2熱媒体循環経路211に切り替え、それによって、第2吸着器202Bを第2熱媒体循環経路211に介挿する。これにより、第2吸着器202Bの吸着体203Bが、第2熱媒体によって加熱されて、吸着していた冷媒を放出する。
【0147】
その後、吸着再生弁システム209は、吸着再生動作サイクルタイムの後半サイクルにおいて、第1入口側冷媒開閉弁205Aを閉止するとともに第1出口側冷媒開閉弁206Aを開放して第1吸着器202Aを第2凝縮器204に接続し、且つ、第1吸着器202Aの入口の接続先を第1入口側熱媒体切替弁207Aによって第3熱媒体循環経路212に切り替えるとともに第1吸着器202Aの出口の接続先を第1出口側熱媒体切替弁208Aによって第2熱媒体循環経路211に切り替え、それによって、第1吸着器202Aを第2熱媒体循環経路211に介挿する。これにより、第1吸着器202Aの吸着体203Aが、第2熱媒体によって加熱されて、吸着していた冷媒を放出する。
【0148】
また、吸着再生弁システム209は、吸着再生動作サイクルタイムの後半サイクルにおいて、第2入口側冷媒開閉弁205Bを開放するとともに第2出口側冷媒開閉弁206Bを閉止して第2吸着器202Bを第2蒸発器201に接続し、且つ、第2吸着器202Bの入口の接続先を第2入口側熱媒体切替弁207Bによって第3熱媒体循環経路212に切り替えるとともに第2吸着器202Bの出口の接続先を第2出口側熱媒体切替弁208Bによって第3熱媒体循環経路212に切り替え、それによって、第2吸着器202Bを第3熱媒体循環経路212における放熱器400と第2凝縮器204との間に介挿する。これにより、第2吸着器202Bの吸着体203Bが、第3熱媒体によって冷却されて、第2蒸発器201からの蒸気状の冷媒を吸着する。
【0149】
第2凝縮器204は、第1吸着器202Aの吸着体203A又は第2吸着器202Bの吸着体203Bから放出された蒸気状の冷媒を第3熱媒体と熱交換させ、それによって、冷媒を凝縮させる。冷媒循環経路213が、この凝縮された液状の冷媒を冷媒ポンプ223によって第2蒸発器201に送る。
【0150】
また、第3熱媒体循環経路212は、第3熱媒体が、第1吸着器202Aの吸着体203A又は第2吸着器202Bの吸着体203Bを冷却するとともに第2凝縮器204において冷媒と熱交換することによって得た熱を、当該第3熱媒体によって放熱器400に運ぶ。放熱器400は、この運ばれた熱を冷凍排熱Q4として、冷却体401に放熱する。
【0151】
このようにして、吸着冷凍機200は、第2熱媒体循環経路211に排出された凝縮排熱Q3を作動熱源として、吸着器202に冷媒の吸着再生動作を行わせることによって、第2蒸発器201において、第4熱媒体循環経路214及び冷熱出力装置500を介して冷熱負荷501から冷熱出力としての冷熱負荷501の発熱体発熱Q5を汲み上げるとともに、吸着器202及び第2凝縮器204において、第3熱媒体循環経路212及び放熱器400を介して冷凍排熱Q4を冷却体401に放出する。
【0152】
<熱バランス制御>
次に、熱バランス制御を説明する。この熱バランス制御は、熱バランス制御回路の実施形態1における態様の一例である受熱量制御回路320によって遂行される。
【0153】
{熱バランスの原理}
図2を参照すると、第1熱媒体循環経路106は、ランキンサイクル回路であって、熱源10から蒸発器入力熱Q1を受熱し、蒸発器入力熱Q1のうちのタービン入力熱Q2を蒸気タービン103Aに入力し、蒸気タービン103Aの動力生成に利用されなかった凝縮排熱Q3を第1凝縮器102から排出する。
【0154】
第2熱媒体循環経路211は、吸着冷凍装置700の再生動作に用いる加熱用の第2熱媒体を循環させる回路である。第2熱媒体は、第1凝縮器102で凝縮排熱Q3により加熱されて吸着冷凍装置700に供給され、吸着冷凍装置700で熱消費された後、第1凝縮器102に戻る。
【0155】
第3熱媒体循環経路212は、吸着冷凍装置700の吸着動作に用いる冷却用の第3熱媒体を循環させる回路である。第3熱媒体は、吸着冷凍装置700で加熱された後、放熱器400でこの加熱熱を冷凍排熱Q4として放熱する。
【0156】
第4熱媒体循環経路214は、吸着冷凍装置700の冷熱を運ぶ第4熱媒体を循環させる回路である。第4熱媒体は、第2蒸発器201で生成される冷熱を、冷熱出力装置500において冷熱負荷501に出力するとともに、その際に冷熱との交換で冷熱負荷501の発熱体発熱Q5を受け取り、これを運んで第2蒸発器201に戻る。
【0157】
冷熱生成システム1000Aは、この4種類の熱媒体循環経路106,211,212,214による熱移動によって、プライマリーサイクルの蒸気タービン103Aが第1蒸発器101からのタービン入力熱Q2を動力として動力装置(ここでは発電機)103Bを駆動し、且つ第1凝縮器102が凝縮排熱Q3を排出するという一連のランキンサイクル動作を行い、またセカンダリーサイクルの吸着冷凍装置700が、第1凝縮器102からの凝縮排熱Q3を作動熱源として冷凍出力を発生し、この冷凍出力で冷熱負荷501の発熱体発熱Q5を汲み上げて、冷凍排熱Q4を系外に廃棄するという一連のヒートポンプ動作を行うことができる。
【0158】
このような冷熱生成システム1000Aの総合利用効率をε1、動力装置103Bのエネルギー効率(ここではタービン発電機の発電効率)をε2、吸着冷凍装置700の熱COPをε3とし、この冷熱生成システム1000Aが熱バランスしているとき、蒸発器入力熱Q1、タービン入力熱Q2、凝縮排熱Q3、冷凍排熱Q4、及び発熱体発熱Q5には以下の関係式が成り立つ。ここに(式10)はヒートポンプ動作のエネルギー保存則である。なお、以下の数式においては、正確には、Q1~Q5は、それぞれ、蒸発器入力熱Q1、タービン入力熱Q2、凝縮排熱Q3、冷凍排熱Q4、及び発熱体発熱Q5の熱量を表す。
【0159】
(式7): Q1×ε1=Q2
【0160】
(式8): Q2×(1-ε2)=Q3
【0161】
(式9): Q3×ε3=Q5
【0162】
(式10): Q3+Q5=Q4
これらをまとめると、
【0163】
(式11): Q1×ε1×(1-ε2)×ε3=Q5
【0164】
(式12): Q1×ε1×(1-ε2)×(1+ε3)=Q4
ここに、ε1は通常のコージェネレーション設備では0.8(80%)程度、ε2は地熱発電や清掃工場では10%程度であって(1-ε2)は0.9(90%)程度、ε3は冷凍機が最適に動作されている場合に0.6(60%)程度である。(式11)から、これらの効率(ε1~ε3)が大きく変わらない限り、熱源10からの蒸発器入力熱Q1の熱量に応じて発熱体発熱Q5の熱量を変動させるか、逆に、発熱体発熱Q5の熱量に応じて蒸発器入力熱Q1の熱量を変動させるかしないと、熱バランスが保たれないことが判る。
【0165】
凝縮温度(タービン背圧)は熱バランス状態のバロメータとなる。すなわち、吸着冷凍装置700が最適に動作されていてε3が通常範囲にある前提において、発熱体発熱Q5が蒸発器入力熱Q1に対して過少である場合には、吸着冷凍装置700は発熱体発熱Q5と釣り合う冷凍仕事しか行わないために吸着冷凍装置700の消費熱量も相応に減少し、本来除去しなければならない凝縮排熱Q3を除去できなくなるので、凝縮温度(タービン背圧)が上昇する。逆に発熱体発熱Q5が蒸発器入力熱Q1に対して過大である場合には、吸着冷凍装置700への投入熱量に対して過剰な冷却仕事を負荷するので、吸着冷凍装置700の吸着体203A,203Bが充分な温度まで上がらなくなり、結果的に第1凝縮器102に向かう第2熱媒体の温度が低下して凝縮温度(タービン背圧)の低下をもたらす。
【0166】
そこで、本実施形態1では、第1凝縮器102における第1熱媒体の凝縮温度が所定の適切な範囲(ここでは第1所定温度範囲)に収まるように、発熱体発熱Q5の熱量に対して蒸発器入力熱Q1の熱量を制御する。なお、廃熱を利用する事業という観点から冷熱需要を賄うことを優先し、冷熱負荷501への冷熱出力を、冷熱需要を満たすように維持する必要があることから、本実施形態1では、蒸発器入力熱Q1の熱量に対して発熱体発熱Q5の熱量を制御することによって、冷熱生成システム1000Aの熱バランスを適切に保つことを想定していない。
【0167】
{熱バランス制御}
次に、熱バランス制御を説明する。
【0168】
熱バランス制御は、受熱量制御回路320によって、以下のように遂行される。
【0169】
受熱量取得部340が、熱源10から受熱量データを取得し、当該受熱量データから受熱量(Q1)を得る。また、冷熱量取得部350が、冷熱出力装置500又は冷熱負荷501から冷熱量データを取得し、当該冷熱量データから冷熱量(Q5)を得る。
【0170】
受熱量制御回路320は、受熱量取得部340から受熱量を取得するとともに冷熱量取得部350から冷熱量(Q5)を取得する。また、受熱量制御回路320は、第1熱媒体温度センサ601から第1熱媒体の凝縮温度を取得する。そして、受熱量制御回路320は、取得した受熱量(Q1)及び冷熱量(Q5)に基づいて、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるような発熱制御指令を生成し、それを、熱源10の発熱量制御部11に送信する。
【0171】
すると、熱源10の発熱量制御部11が受信した発熱量制御指令に基づいて、熱源10の発熱量又は排熱量を制御する。
【0172】
かくして、冷熱生成システム1000Aの熱バランスが、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように制御される。
【0173】
(変形例)
図5は、本開示の実施形態1の変形例に係る冷熱生成システム1000Bのハードウェアの概要の一例を示す図である。
【0174】
図5を参照すると、本変形例では、凝縮温度相関物理量センサとして、蒸気タービン103Aの背圧を検知するタービン背圧センサ610が用いられる。これ以外は、上述の実施形態1の基本構成と同じである。タービン背圧センサ610は、第1熱媒体流路における蒸気タービン103Aと第1凝縮器102との間に設けられる。タービン背圧センサ610として、例えば、拡散型半導体センサ、金属薄膜型センサ等挙げられる。蒸気タービン103Aの背圧は、第1熱媒体の凝縮温度と一対一で対応する。そこで、本変形例では、受熱量制御回路320が、タービン背圧センサ610に検知されたタービン背圧が第1熱媒体の凝縮温度の第1所定温度範囲に対応するタービン背圧の所定圧力範囲に維持されるように、冷熱量(Q5)に応じて受熱量(Q1)を制御する。これにより、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲に維持されるように、冷熱量(Q5)に応じて受熱量(Q1)が制御され、ひいては、冷熱生成システム1000Aの熱バランスが、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように制御される。
【0175】
以上に説明したように、実施形態1によれば、熱バランス制御機構(受熱量制御回路320及び凝縮温度相関物理量センサ(第1熱媒体温度センサ601又はタービン背圧センサ610))が、ランキンサイクルにおける第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように蒸気タービン装置100及び吸着冷凍装置700の熱バランスを制御するので、蒸気タービン103Aの出口圧力(タービン背圧)を第1熱媒体の凝縮温度の第1所定温度範囲に対応する範囲に維持することができ、ひいては、蒸気タービン103Aの圧縮比を一定の範囲内に維持できる。その結果、蒸気タービン103Aの効率の低下を防止しつつ、蒸気タービン駆動の排熱を冷熱負荷501への冷熱生成に利用することができ、ひいては、蒸気タービン駆動の排熱を有効利用することが可能な冷熱生成システム1000A、1000Bを提供できる。
【0176】
また、実施形態1によれば、受熱量制御回路320が、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように、冷熱負荷501への冷熱の出力に応じて熱源10からの受熱量(Q1)を制御するので、冷熱負荷501の冷熱負荷量が変動しても、熱源10からの受熱量(Q1)を制御することによって、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように、蒸気タービン装置100及び吸着冷凍装置700を熱バランスさせることができる。
【0177】
(実施形態2)
図6は、本開示の実施形態2に係る冷熱生成システム1000Cの制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。実施形態2の冷熱生成システム1000Cでは、熱バランス制御機構が、熱バランスの制御として、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるとともに冷熱負荷501の冷熱負荷量に応じた冷熱が出力されるように、吸着冷凍装置700の熱COPを制御する。実施形態2は、この点で実施形態1(変形例を含む)と相違し、これ以外の点は、実施形態1(変形例を含む)と同様である。以下、この相違点を詳しく説明する。
【0178】
<構成>
図6を参照すると、実施形態2では、熱バランス制御機構が、実施形態1の受熱量制御回路320に代えて、熱COP制御回路321を含み、さらに、第2熱媒体温度センサ602を含む。また、制御装置300が、受熱量取得部340を含まない。また、熱COP制御回路321は第2熱媒体流量制御回路325を含む。
【0179】
第2熱媒体温度センサ602は、第2熱媒体循環経路211における第1凝縮器102の出口と吸着冷凍機200の第1及び第2吸着器202A,202Bとの間に設けられている。第2熱媒体温度センサ602は、第1凝縮器102から吸着冷凍機200に供給される第2熱媒体の供給温度を検知する。第2熱媒体温度センサ602として、第1熱媒体温度センサ601と同様に公知の温度センサを用いることができる。
【0180】
<熱COP制御の原理>
実施形態1で説明したように、冷熱生成システム1000Cでは、蒸発器入力熱Q1、タービン入力熱Q2、凝縮排熱Q3、冷凍排熱Q4、及び発熱体発熱Q5が熱バランスする。従って、第2乃至第4熱媒体の温度は、吸着冷凍装置700の運転条件に応じて冷熱生成システム1000Cが熱バランスするように定まる。
【0181】
一方、上述の第4の知見によれば、吸着冷凍機200に投入する第2熱媒体の温度(以下、第2熱媒体の供給温度という)T2のコントロールが冷熱生成システム1000Cの熱バランスの主たる調整機構となり、第2熱媒体の供給温度T2がこの範囲(以下、第2所定温度範囲という)にある場合に、合理的に第1凝縮器102を設計することによって第1熱媒体の凝縮温度を70℃以下に抑えることが可能である。
【0182】
また、(式5)を用いて上述したように、吸着冷凍装置700(吸着冷凍機200)の熱COPは、当該吸着冷凍機200への第2熱媒体の供給温度を下げることにより所望の値に減少することが可能であり、この第2熱媒体の供給温度の低下は、第2熱媒体循環経路211を通流する第2熱媒体の流量(単位時間当たりの流量)を減少させることによって実行できる。
【0183】
そこで、実施形態2では、熱COP制御回路321が、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるとともに冷熱負荷501の冷熱負荷量に応じた冷熱が出力されるように、吸着冷凍装置700の熱COPを制御する。この熱COP制御の際に、第2熱媒体流量制御回路325が、第2熱媒体循環経路211を通流する第2熱媒体の流量を、第2熱媒体の供給温度が第2所定温度範囲内に維持されるように制御する。ここで、第2所定温度範囲は、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるような温度範囲に設定される。そのような第2所定温度範囲は、シミュレーション、実験、計算等によって求めることができる。熱COP制御回路321は、予め、第1及び第2所定温度範囲を記憶部に記憶する。
【0184】
<動作>
熱COP制御回路321は、冷熱量取得部350から冷熱量(Q5)を取得するとともに第2熱媒体温度センサ602から第2熱媒体の供給温度を取得する。そして、第2熱媒体流量制御回路325を含む熱COP制御回路321が、冷熱量(Q5)に応じて、第2熱媒体の供給温度が第2所定温度範囲内に維持されるように第2熱媒体ポンプ221の動作量P2を制御する。これにより、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるとともに冷熱負荷501の冷熱負荷量に応じた冷熱が出力されるように、吸着冷凍装置700の熱COPが制御される。しかしながら、第2所定温度範囲は、冷熱量(Q5)に対して受熱量(Q1)が熱バランスしていることを前提として設定されているので、冷熱量(Q5)及び受熱量(Q1)の一方又は双方の変動によってその熱バランスが崩れた場合、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲から外れる。そのような場合、熱COP制御回路321は、第1熱媒体温度センサ601が検知する第1熱媒体の凝縮温度に基づいて、当該第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内になるように第2熱媒体ポンプ221の動作量P2を制御する。
【0185】
以上に説明したように、実施形態2によれば、熱COP制御回路321が、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるとともに冷熱負荷501の冷熱負荷量に応じた冷熱が出力されるように、吸着冷凍装置700の熱COPを制御するので、冷熱負荷量が変動しても、吸着冷凍装置700の熱COPを制御することによって、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように、蒸気タービン装置100及び吸着冷凍装置700を熱バランスさせることができる。
【0186】
また、第2熱媒体流量制御回路325が、熱COPの制御において、第1凝縮器102から吸着器202へ流れる第2熱媒体の供給温度が第2所定温度範囲内に維持されるよう第2熱媒体の流量を制御するので、第1熱媒体の凝縮温度が第1所定温度範囲内に維持されるように吸着冷凍機200の熱COPが好適に調整される。
【0187】
(実施形態3)
図7は、本開示の実施形態3に係る冷熱生成システム1000Dの制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0188】
図7を参照すると、実施形態3の冷熱生成システム1000Dは、実施形態2の冷熱生成システム1000Cと較べると、熱バランス制御機構が、さらなる制御回路群及び温度センサ群を含む。具体的には、熱COP制御回路321が、第3及び第4熱媒体流量制御回路326,327含み、上記温度センサ群が、第1及び第2熱媒体温度センサ601,602の他に、第3及び第4熱媒体温度センサ603,604を含む。実施形態3は、これらの点で実施形態2と相違し、これ以外の点は、実施形態2と同様である。以下、この相違点を詳しく説明する。
【0189】
<構成>
第3熱媒体温度センサ603は、第3熱媒体循環経路212における放熱器400と第1及び第2吸着器202A,202Bとの間に設けられている。第3熱媒体温度センサ603は、放熱器400からへ第1及び第2吸着器202A,202Bへ流れる第3熱媒体の温度を検知する。
【0190】
第4熱媒体温度センサ604は、第4熱媒体循環経路214における冷熱出力装置500と第2蒸発器201の入口との間に設けられている。第4熱媒体温度センサ604は、冷熱出力装置500から第2蒸発器201へ流れる第4熱媒体の温度を検知する。
【0191】
第3熱媒体流量制御回路326は、放熱器400から吸着器202へ流れる第3熱媒体の温度が第3所定温度範囲内に維持されるよう第3熱媒体の流量を制御する。第3所定温度範囲は、吸着器202の吸着及び再生動作が十分に行われるような温度範囲に設定される。この第3所定温度範囲は、シミュレーション、実験、計算等によって決定される。
【0192】
第4熱媒体流量制御回路327は、冷熱出力装置500から第2蒸発器201へ流れる第4熱媒体の温度が第4所定温度範囲内に維持されるよう第4熱媒体の流量を制御する。第4所定温度範囲は、第2蒸発器201で冷熱負荷501の発熱Q5の吸収が十分行われるような温度範囲に設定される。第4所定温度範囲は、シミュレーション、実験、計算等によって決定される。
【0193】
<動作>
第2熱媒体流量制御回路325を含むCOP制御回路321が、実施形態2の熱COP制御を行う。この熱COP制御において、第3熱媒体流量制御回路326が、第3熱媒体温度センサ603が検知する第3熱媒体の温度に基づいて、第3熱媒体の温度が第3所定温度範囲に維持されるように第3熱媒体ポンプ222の動作量を制御する。これにより、吸着器202の吸着及び再生動作が十分に行われる。また、第4熱媒体流量制御回路327が、第4熱媒体温度センサ604が検知する第4熱媒体の温度に基づいて、第4熱媒体の温度が第4所定温度範囲に維持されるように第4熱媒体ポンプ224の動作量を制御する。これにより、第2蒸発器201で冷熱負荷501の発熱Q5の吸収が十分行われる。
【0194】
従って、本実施形態3によれば、吸着冷凍装置700のヒートポンプ動作が安定して行われ、ひいては、吸着冷凍装置700が、冷熱生成システム1000Dの熱バランスを適切に保ちながら十分に冷凍能力を発揮する。
【0195】
(実施形態4)
図8は、本開示の実施形態4に係る冷熱生成システム1000Eの制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0196】
図8を参照すると、実施形態4の冷熱生成システム1000Eは、実施形態3の冷熱生成システム1000Dに較べて、熱バランス制御機構が、さらなる制御回路及び温度センサ群と流量センサ群とを含み、熱バランス制御回路323が、より高級な熱バランス制御を行う。実施形態4は、これらの点で実施形態3と相違し、これ以外の点は、実施形態3と同様である。以下、この相違点を詳しく説明する。
【0197】
<構成>
まず、冷熱生成システム1000Eの構成を説明する。
【0198】
実施形態4では、上記温度センサ群が、3の第1熱媒体温度センサ601a~601cと、2の第2熱媒体温度センサ602a,602bと、2の第3熱媒体温度センサ603a,603bと、2の第4熱媒体温度センサ604a,604bと、を含む。また、上記流量センサ群が、第1乃至第4熱媒体流量センサ611~614を含む。
【0199】
第1熱媒体温度センサ601aは、第1熱媒体循環経路106における第1蒸発器101の出口と蒸気タービン103Aとの間に設けられ、第1蒸発器101から蒸気タービン103Aへ流れる第1熱媒体の温度を検知する。
【0200】
第1熱媒体温度センサ601bは、実施形態3の第1熱媒体温度センサ601で構成され、第1蒸発器101から蒸気タービン103Aへ流れる第1熱媒体の凝縮温度T1を検知する。
【0201】
第1熱媒体温度センサ601cは、第1熱媒体循環経路106における第1熱媒体タンク105と第1蒸発器101の入口との間に設けられ、第1凝縮器102から第1蒸発器101へ流れる第1熱媒体の温度を検知する。
【0202】
第2熱媒体温度センサ602aは、実施形態3の第2熱媒体温度センサ602で構成され、第1凝縮器102から吸着冷凍機200の第1及び第2吸着器202A,202Bへ流れる第2熱媒体の供給温度T2を検知する。
【0203】
第2熱媒体温度センサ602bは、第2熱媒体循環経路211における吸着冷凍機200の第1及び第2吸着器202A,202Bと第1凝縮器102との間に設けられ、第1及び第2吸着器202A,202Bから第1凝縮器102へ流れる第2熱媒体の温度を検知する。
【0204】
第3熱媒体温度センサ603aは、第3熱媒体循環経路212における吸着冷凍機200の第2凝縮器204と放熱器400との間に設けられ、第2凝縮器204から放熱器400へ流れる第3熱媒体の温度を検知する。
【0205】
第3熱媒体温度センサ603bは、実施形態3の第3熱媒体温度センサ603で構成され、放熱器400から吸着冷凍機200の第1及び第2吸着器202A,202Bへ流れる第3熱媒体の供給温度T3を検知する。
【0206】
第4熱媒体温度センサ604aは、第4熱媒体循環経路214における吸着冷凍機200の第2蒸発器201と冷熱出力装置500との間に設けられ、第2蒸発器201から冷熱出力装置500へ流れる第4熱媒体の温度を検知する。
【0207】
第4熱媒体温度センサ604bは、実施形態3の第4熱媒体温度センサ604で構成され、冷熱出力装置500から吸着冷凍機200の第2蒸発器201へ流れる第4熱媒体の供給温度T4を検知する。
【0208】
第1熱媒体流量センサ611は、第1熱媒体循環経路106における第1熱媒体タンク105と第1蒸発器101との間に設けられ、第1凝縮器102から第1蒸発器101へ流れる第1熱媒体の流量を検知する。
【0209】
第2熱媒体流量センサ612は、第2熱媒体循環経路211の適所に設けられ、第2熱媒体の流量を検知する。
【0210】
第3熱媒体流量センサ613は、第3熱媒体循環経路212の適所に設けられ、第3熱媒体の流量を検知する。
【0211】
第4熱媒体流量センサ614は、第4熱媒体循環経路214の適所に設けられ、第4熱媒体の流量を検知する。
【0212】
第1乃至第4熱媒体温度センサ601a~601c,602a,602b,603a,603b,604a,604bは、既述のように、公知の温度センサで構成することができる。第1乃至第4熱媒体流量センサ611~614として、例えば、公知の流量計を用いることができる。
【0213】
また、制御装置300が、実施形態1の受熱量取得部340を含み、熱バランス制御回路323が実施形態1の受熱量制御回路320及び実施形態3の熱COP制御回路321の機能を備える。
【0214】
ここで、(式5)から明らかなように、流体のあるデバイスへの流入時と流出時とにおける温度差と流体の循環流量とから熱輸送量を簡単に求めることができる。また、蒸気温度と比エンタルピーとの関係は蒸気表(Steam Table)にまとめられた物性値であり、熱バランス制御回路323が記憶することができる。
【0215】
そこで、熱バランス制御回路323は、熱源10からの受熱(Q1)、蒸気タービン103Aへの供給熱(Q2)、吸着冷凍装置700への供給熱(Q3)、冷凍排熱(Q4)、及び冷熱負荷501の発熱(Q5)を、上記(式5)及び蒸気表等の記憶情報と、第1乃至第4熱媒体温度センサ601a~601c,602a,602b,603a,603b,604a,604bによる検知データと、第1乃至第4熱媒体流量センサ611~614の検知データと、から直接的に演算して求める。さらに、熱バランス制御回路323は、例えば、吸着冷凍装置700の第2熱媒体の供給温度T2、第3熱媒体の供給温度T3、及び第4熱媒体の供給温度T4と、吸着冷凍装置700の効率との関係等の実験値又は理論値を予め記憶しており、また、外気温と放熱器400の性能との関係、蒸気温度と発電効率との関係等の実験値又は理論値を予め記憶している。また、上記受熱(Q1)、各供給熱(Q2,Q3)、冷凍排熱(Q4)、及び発熱(Q5)の目標熱量に対して、第1乃至第4熱媒体の各々の狙い温度T1~T4及び流量を瞬時に計算して、第1乃至第4熱媒体にそれぞれ対応する第1乃至第4熱媒体ポンプ104,221,222,224の動作量P1~P4を精緻かつ迅速に制御する。
【0216】
<動作>
次に、以上のように構成された冷熱生成システム1000Eの基本的な動作を、
図9を参照しながら説明する。
【0217】
図9は、
図8の冷熱生成システム1000Eの熱バランス制御の一例を示すフローチャートである。この熱バランス制御は、熱バランス制御回路323によって遂行される。
【0218】
図8及び
図9を参照すると、熱バランス制御回路323は、まず、受熱量(Q1)を変動させる余地があるか否か判定する(ステップS1)。具体的には、熱バランス制御回路323は、受熱量(Q1)が冷熱量(Q5)を上回る場合、受熱量(Q1)を変動させる余地があると判定し(ステップSでYES)、ステップS2に進み、そうでない場合、受熱量(Q1)を変動させる余地がないと判定し(ステップS1でNO)、ステップS10に進む。
【0219】
ステップ2において、熱バランス制御回路323は、第3熱媒体の供給温度T3が適正か否か判定する。具体的には、熱バランス制御回路323は、第3熱媒体の供給温度T3が第3所定温度範囲内にある場合(ステップS2でYES)、ステップS4に進み、第3熱媒体の供給温度T3が第3所定温度範囲内にない場合(ステップS2でNO)、第3熱媒体の供給温度T3が第3所定温度範囲内になるまで第3熱媒体ポンプ222の動作量P3を制御する(ステップS3,ステップS2でYES)。
【0220】
ステップS4において、熱バランス制御回路323は、第4熱媒体の供給温度T4が適正か否か判定する。具体的には、熱バランス制御回路323は、第4熱媒体の供給温度T4が第4所定温度範囲内にある場合(ステップS4でYES)、ステップS6に進み、第4熱媒体の供給温度T4が第4所定温度範囲内にない場合(ステップS4でNO)、第4熱媒体の供給温度T4が第4所定温度範囲内になるまで第4熱媒体ポンプ224の動作量P4を制御する(ステップS5,ステップS4でYES)。
【0221】
ステップS6において、熱バランス制御回路323は、第2熱媒体の供給温度T2が適正か否か判定する。具体的には、熱バランス制御回路323は、第2熱媒体の供給温度T2が第2所定温度範囲内にある場合(ステップS2でYES)、ステップS8に進み、第2熱媒体の供給温度T2が第2所定温度範囲内にない場合(ステップ6でNO)、第2熱媒体の供給温度T2が第2所定温度範囲内になるまで第2熱媒体ポンプ221の動作量P2を制御する(ステップS7,ステップS6でYES)。
【0222】
ステップS8において、熱バランス制御回路323は、第1熱媒体の凝縮温度T1が適正か否か判定する。具体的には、熱バランス制御回路323は、第1熱媒体の凝縮温度T1が第1所定温度範囲内にある場合(ステップS8でYES)、ステップS1に戻り、第1熱媒体の凝縮温度T1が第1所定温度範囲内にない場合(ステップS8でNO)、第1熱媒体の凝縮温度T1が第1所定温度範囲内になるまで受熱量(Q1)、すなわち、熱源10の発熱量又は排熱量を制御する(ステップS9,ステップS8でYES)。
【0223】
一方、ステップS10において、熱バランス制御回路323は、第3熱媒体の供給温度T3が適正か否か判定する。具体的には、熱バランス制御回路323は、第3熱媒体の供給温度T3が第3所定温度範囲内にある場合(ステップS10でYES)、ステップS12に進み、第3熱媒体の供給温度T3が第3所定温度範囲内にない場合(ステップS10でNO)、第3熱媒体の供給温度T3が第3所定温度範囲内になるまで第3熱媒体ポンプ222の動作量P3を制御する(ステップS11,ステップS10でYES)。
【0224】
ステップS12において、熱バランス制御回路323は、第4熱媒体の供給温度T4が適正か否か判定する。具体的には、熱バランス制御回路323は、第4熱媒体の供給温度T4が第4所定温度範囲内にある場合(ステップS12でYES)、ステップS14に進み、第4熱媒体の供給温度T4が第4所定温度範囲内にない場合(ステップS12でNO)、第4熱媒体の供給温度T4が第4所定温度範囲内になるまで第4熱媒体ポンプ224の動作量P4を制御する(ステップS13,ステップS12でYES)。
【0225】
ステップS14において、熱バランス制御回路323は、第1熱媒体の凝縮温度T1が適正か否か判定する。具体的には、熱バランス制御回路323は、第1熱媒体の凝縮温度T1が第1所定温度範囲内にある場合(ステップS14でYES)、ステップS1に戻り、第1熱媒体の凝縮温度T1が第1所定温度範囲内にない場合(ステップS14でNO)、第1熱媒体の凝縮温度T1が第1所定温度範囲内になるまで第2熱媒体ポンプ221の動作量P2を制御する(ステップS15,ステップS14でYES)。
【0226】
なお、熱バランス制御回路323は、この基本的な制御に加えて、上述のように、第1乃至第4熱媒体にそれぞれ対応する第1乃至第4熱媒体ポンプ104,221,222,224の動作量P1~P4を精緻かつ迅速に制御してもよい。
【0227】
以上に説明したように、実施形態4によれば、冷熱生成システム1000Eの熱バランスをいかなる時にも保ちながら、冷熱生成システム1000Eの補器動力を削減する等の高級な制御を行うことができる。
【0228】
(実施形態5)
図10は、本開示の実施形態5に係る冷熱生成システム1000Fの制御系統の構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0229】
図10を参照すると、実施形態5の冷熱生成システム1000Fは、実施形態4の冷熱生成システム1000Eと較べると以下の点で相違する。すなわち、放熱器400が、冷却塔401aと電力式ヒートポンプ401bとで構成されている。また、第2熱媒体循環経路211における第1凝縮器102の出口から第2熱媒体温度センサ602aの温度計測位置までの間にバックアップ熱源216が設けられている。バックアップ熱源216として、例えば、重油炊き又はガス炊きの温水ボイラーが挙げられる。また、冷熱負荷がDC501Aであり、このDC501Aに、無停電電源装置503及びバックアップ発電機504を含む情報通信設備用電力設備が付加されている。実施形態5の冷熱生成システム1000Fは、これ以外の点は、実施形態4の冷熱生成システム1000Eと同様である。
【0230】
具体的には、冷却塔401a及び電力式ヒートポンプ401bは、第3熱媒体循環経路212において互いに直列に設けられている。
【0231】
DC501Aは通信回線502に接続されている。DC501A、無停電電源装置503、バックアップ発電機504、及び電力式ヒートポンプ401bが、蒸気タービン103Aに連結された発電機103Bに、互いに並列に接続されていて、これらが発電機103Bを電源とするマイクログリッドを構成している。そして、このマイクログリッドが、商用電力網505に接続されている。冷熱生成システム1000Fは、このマイクログリッドを含む。
【0232】
このような実施形態5によれば、以下の効果が得られる。
【0233】
DC501Aという常に冷熱需要がある理想的な熱負荷を冷熱生成システム内に確保することができる。また、蒸気タービンユニット103から得られた電力E1を、DC501Aのコンピュータサーバ又は制御補器の動力として使うことができる。とりわけ情報通信設備に関しては電力供給源を多様化することは冗長性の確保の面からも推奨される。また、一般にごみ発電では発電量が少ない、あるいは不安定であるとの理由で売電価格が安いことが多いが、冷熱生成システム1000Fは、内部に常に発電能力以上の電力消費があって商用電力の供給を受けるので、この売電価格に関する問題を解消できる。
【0234】
また、放熱器400が、冷却塔401aと電力式ヒートポンプ401bとで構成されているので、以下のメリットが得られる。すなわち、通常、放熱器400には冷却塔が用いられる。しかしながら、冷却塔は温度及び湿度によって排熱能力が変動し、夏季の最も暑い時間帯には排熱能力が不十分になる恐れがあり、この場合に吸着冷凍装置700の吸着動作が不十分となって冷却能力を喪失する恐れがある。しかし、本実施形態5では、補助的に電力式ヒートポンプ401bを併用して、戻り第3熱媒体の温度が一定値を超えないように第3熱媒体を冷却できるので、DC501Aを安定稼働させることができる。
【0235】
また、第2熱媒体循環経路211の、第2熱媒体が第1凝縮器102から流出して第2熱媒体温度センサ602aで温度計測されるまでの区間にバックアップ熱源216が設けられているため、故障、事故その他の理由で蒸気タービン装置100のランキンサイクル110が停止した場合にも第2熱媒体を適切な温度まで加熱することにより冷却能力を維持し、DC501Aを安定稼働させることができる。
【0236】
(実施形態6)
本開示の実施形態6は、上述の第3の知見に基づく実施形態である。
図11は、実施形態6に係る冷熱生成システム2000Aのハードウェアの概要の一例を示す図である。
【0237】
図11を参照すると、実施形態6の冷熱生成システム2000Aは、実施形態1の冷熱生成システム1000Aと較べると、吸着器202の数及び吸着再生弁システム209の構成要素の数と、制御装置300の構成とが、実施形態1の冷熱生成システム1000Aと相違し、これら以外の点は、実施形態1の冷熱生成システム1000Aと同様である。以下、これらの相違点を詳しく説明する。
【0238】
<構成>
実施形態6では、吸着冷凍機200が、第1乃至第4吸着器202A~202Dを含む。また、吸着再生弁システム209が、第1乃至第4入口側冷媒開閉弁205A~205Dと、第1乃至第4出口側冷媒開閉弁206A~206Dと、第1乃至第4入口側熱媒体切替弁207A~207Dと、第1乃至第4出口側熱媒体切替弁208A~208Dと、を含む。なお、吸着器202の数及びこれに対応する吸着再生弁システム209の要素の数は、ここでは、4であるが、3以上であればよい。
【0239】
第1乃至第4吸着器202A~202Dは、それぞれ、吸着再生弁システム209を介して、第2熱媒体循環流路、第3熱媒体循環流路、及び冷媒循環流路に、互いに並列に介挿されるようにして接続されている。これらの接続態様は、実施形態1と同様であるので、その詳細な説明を省略する。
【0240】
制御装置300は、熱バランス制御回路323、吸着再生制御回路324、及び運転制御回路330を含む。吸着再生制御回路324は、吸着再生弁システム209の動作を制御する。吸着再生弁システム209及び吸着再生制御回路324が吸着再生制御機構を構成する。制御装置300及び熱バランス制御回路323は、協働して、実施形態1の受熱量取得部340、冷熱量取得部350、及び受熱量制御回路320の機能、又は実施形態3の冷熱量取得部350及び熱COP制御回路321の機能を発揮する。なお、例えば、熱源10からの蒸発器入力熱Q1及び冷熱負荷501の発熱体発熱Q5が安定しているような用途においては、熱バランス制御回路323を省略してもよい。
【0241】
<動作>
吸着再生制御機構は、吸着動作において第1乃至第4吸着器202A~202Dがそれぞれ第2蒸発器201に接続されるとともに第3熱媒体循環経路212における放熱器400と第2凝縮器204との間に介挿されて各々の吸着体203A~203Dが冷媒を吸着し、再生動作において第1乃至第4吸着器202A~202Dが第2凝縮器204に接続されるとともに第2熱媒体循環経路211に介挿されて各々の吸着体203A~203Dが冷媒を放出して再生する吸着再生動作を、第1乃至第4吸着器202A~202Dに対して、順次、実行するよう吸着冷凍装置700の動作を制御する。
【0242】
第1乃至第4吸着器202A~202Dの吸着再生動作は、実施形態1で詳述した第1及び第2吸着器202A,202Bの吸着再生動作と同様であるので、その詳しい説明を省略し、補足が必要な動作のみを以下に述べる。
【0243】
冷熱生成システム2000Aでは、各々の吸着器に対する吸着動作に要する時間Ta及び再生動作に要する時間Trが、n(nは3以上の整数)の吸着器について互いに同じであり、吸着再生制御機構は、nの吸着器に対する吸着再生動作を、当該吸着再生動作に要する時間(以下、吸着再生動作のサイクルタイムという)Tc(Tc=Ta+Tr)の1/nの時間(Tc/n)ずつずらして実行するよう吸着冷凍装置700の動作を制御する。このnの吸着器に関する吸着再生動作のサイクルタイム間の「時間ずれ」を、以下では「位相ずれ」と呼ぶ。
【0244】
ここでは、第1乃至第4吸着器202A~202Dのn=4の吸着器に関して、例えば、Taが180秒に設定され、Trが180秒に設定され、Tcが360秒に設定され、且つ、第1乃至第4吸着器202A~202Dの吸着再生動作のサイクルタイム間の位相ずれが、Tc/n=90秒に設定されている。
【0245】
従って、吸着再生制御機構は、第1乃至第4吸着器202A~202Dに対する吸着再生動作のサイクルタイム360秒の吸着再生動作を、90秒ずつ位相をずらして実行するよう吸着冷凍装置700の動作を制御する。
【0246】
<効果>
以上のように構成された冷熱生成システム2000Aの効果を、
図12及び
図13を参照しながら説明する。
図12は、吸着器が2の場合における各吸着体の温度変化及び第2熱媒体の排出温度変化の一例を示すグラフである。
図13は、
図11の冷熱生成システム2000Aにおける各吸着体の温度変化及び第2熱媒体の排出温度変化の一例を示すグラフである。
図12及び
図13において、縦軸は吸着体の温度(℃)を示し、横軸は吸着再生動作の経過時間(秒)を示す。また、
図12において、太い実線は第1吸着体203Aの温度を示し、破線は第2吸着体203Bの温度を示し、細い実線は、吸着冷凍機200からの排出される第2熱媒体の温度(以下、第2熱媒体の排出温度という)を示す。
図13において、太い実線は第1吸着体203Aの温度を示し、破線は第2吸着体203Bの温度を示し、点線は第3吸着体203Cの温度を示し、一点鎖線は第4吸着体203Dの温度を示し、細い実線は、第2熱媒体の排出温度を示す。
【0247】
吸着器が2つの場合、例えば、吸着再生動作のサイクルタイムが360秒であり、サイクルタイム間の位相ずれが180秒である。
【0248】
図12を参照すると、吸着器202の数が2の場合、一方の吸着器(例えば第1吸着器202A)が再生動作にあるとき、再生動作の初期においては直前の吸着動作においてその吸着体203Aが第3熱媒体によって冷却されていることから、吸着冷凍機200に投入された第2熱媒体は、放熱して降温した第3熱媒体の温度(一例として30℃)に近い温度まで熱消費されて排出される。その後、当該一方の吸着体203Aが第2熱媒体によって加熱されるに従って第2熱媒体の排出温度が上昇し、当該吸着体203Aが完全に再生された時点では熱消費がほとんどないことから、第2熱媒体は、投入された温度(一例として55℃)に近い状態で排出される。その後、上記一方の吸着器202Aが吸着動作に切り替わると、他方の吸着器(例えば第2吸着器202B)が再生動作に切り替わり、その吸着体203Bが再生動作にあるとき、上記一方の吸着器202Aの吸着体203Aと同じことが起こる。従って、吸着冷凍機200に一定温度の第2熱媒体を投入しても、第2熱媒体の排出温度は一定とはならず、とりわけ各吸着器202A,202Bにおける吸着動作と再生動作との切り替わりのタイミングで急激且つ大きな温度変化が発生する。この第2熱媒体の急激且つ大きな温度変化は、蒸気タービン103Aの背圧に圧力ショックを引き起こし、当該圧力ショックによってタービンブレードがダメージを受ける可能性がある。
【0249】
これに対し、吸着器202の数が4の場合、
図13を参照すると、常に2の吸着器202は、第3熱媒体が通流され吸着動作中であり、常に残りの2の吸着器は第2熱媒体が通流され再生動作中となる。しかし、再生動作にある2の吸着体203は再生動作の位相がずれているために互いに温度が異なり、これらから排出されて混合されたのちに吸着冷凍機200から排出される第2熱媒体の温度は、両者の平均温度程度となる。よって、
図12に示された温度ショックが緩和され、第2熱媒体の排出温度が平準化される。その結果、蒸気タービン103Aのタービンブレードがダメージを受ける可能性が低減される。
【0250】
(実施形態7)
図14は、本開示の実施形態7に係る冷熱生成システム2000Bのハードウェアの概要の一例を示す図である。
【0251】
図14を参照すると、実施形態7の冷熱生成システム2000Bは、実施形態6の冷熱生成システム2000Aと較べると、吸着器202の数及び吸着再生弁システム209の構成要素の数が、実施形態6の冷熱生成システム2000Aと相違し、これら以外の点は、実施形態6の冷熱生成システム2000Aと同様である。
【0252】
具体的には、実施形態6の冷熱生成システム2000Aにおける吸着器202の数及び吸着再生弁システム209の構成要素の数が4であるのに対し、実施形態7の冷熱生成システム2000Bにおける吸着器202の数及び吸着再生弁システム209の構成要素の数が6である。
【0253】
図15は、
図14の冷熱生成システム2000Bにおける各吸着体の温度変化及び第2熱媒体の排出温度変化の一例を示すグラフである。
図15において、縦軸は吸着体の温度(℃)を示し、横軸は吸着再生動作の経過時間(秒)を示す。また、太い実線は第1吸着体203Aの温度を示し、長めの破線は第2吸着体203Bの温度を示し、短めの破線は第3吸着体203Cの温度を示し、一点鎖線は第4吸着体203Dの温度を示し、二点鎖線は第5吸着体203Eの温度を示し、点線は第6吸着体203Fの温度を示し、細い実線は、第2熱媒体の排出温度を示す。
【0254】
本実施形態7によれば、吸着器202の数及び吸着再生弁システム209の構成要素の数が6であって、実施形態6より多いので、
図15に示すように、第2熱媒体の排出温度がより平準化され、蒸気タービン103Aのタービンブレードがダメージを受ける可能性がより低減される。
【0255】
(実施形態8)
図16は、本開示の実施形態8に係る冷熱生成システム2000Cのハードウェアの概要の一例を示す図である。
【0256】
図16を参照すると、実施形態の冷熱生成システム2000Cは、吸着冷凍装置700が、複数の吸着冷凍機200を点で、実施形態7の冷熱生成システム2000Bと主に相違し、それ例外の点は、実施形態7の冷熱生成システム2000Bと同様である。以下、この相違点を説明する。
【0257】
冷熱生成システム2000Cは、吸着冷凍装置700が、複数(ここでは3)の吸着冷凍機200A~200Cと、1の放熱器400と、1の冷熱出力装置500と、を含む。
【0258】
複数の吸着冷凍機200A~200Cは、それぞれ、実施形態7の吸着冷凍機200で構成されている。以下では、複数の吸着冷凍機の各々を「第j冷凍機」と呼ぶ場合がある。jは1以上の整数である。
【0259】
複数の吸着冷凍機200A~200Cの各々の第3熱媒体循環経路212が、1の放熱器400を通っている。複数の吸着冷凍機200A~200Cの各々の第3熱媒体循環経路212は、互いに合流して放熱器400を通っていても良く、別々に放熱器400を通っていてもよい。
【0260】
また、複数の吸着冷凍機200A~200Cの各々の第2熱媒体循環経路211が第1凝縮器102を通っている。複数の吸着冷凍機200A~200Cの各々の第2熱媒体循環経路211は、互いに合流して第1凝縮器102を通っていても良く、別々に第1凝縮器102を通っていてもよい。
【0261】
さらに、複数の吸着冷凍機200A~200Cの各々の第4熱媒体循環経路214が、1の冷熱負荷501を通っている。複数の吸着冷凍機200A~200Cの各々の第4熱媒体循環経路214は、互いに合流して冷熱負荷501を通っていても良く、別々に冷熱負荷501を通っていてもよい。
【0262】
制御装置300の吸着再生制御回路324(
図11参照)は、全ての吸着冷凍機200A~200Cの6の吸着器202A~202F(
図14参照)に対して、吸着再生動作を、順次、実行するよう全ての吸着冷凍機200A~200Cの吸着再生弁システム209(
図14参照)の動作を制御する。
【0263】
本実施形態8では、各々の吸着冷凍機200A~200Cの各々の吸着器202A~202Fに対する吸着動作に要する時間Ta及び再生動作に要する時間Trが、m(mは1以上の整数:ここでは3)の吸着冷凍機200A~200Cのn(nは3以上の整数:ここでは6)の吸着器202A~202Fについて互いに同じである。
【0264】
吸着再生制御回路324は、各々の吸着冷凍機200A~200Cのnの吸着器202A~202Fに対する吸着再生動作を、再生動作に要する時間Tc(Tc=Ta+Tr)の1/nの時間(Tc/n)ずつずらして実行し、且つ、mの吸着冷凍機200A~200Cの間において、吸着再生動作を、再生動作のサイクルタイムTcの1/mnの時間(Tc/mn:位相ずれ)ずつずらして実行するようmの吸着冷凍機200A~200Cの吸着再生弁システム209(
図14参照)の動作を制御する。こでは、例えば、再生動作のサイクルタイムTcの位相ずれが、Tc/mn=360/(3×6)=20(秒)である。
【0265】
図17は、
図16の冷熱生成システム2000Cにおける各冷凍機の第2熱媒体の排出温度変化及び第2熱媒体の戻り温度変化の一例を示すグラフである。
【0266】
図17において、縦軸は吸着体の温度(℃)を示し、横軸は吸着再生動作の経過時間(秒)を示す。また、長めの破線は第1冷凍機(吸着冷凍機200A)の第2熱媒体の排出温度を示し、短めの破線は第2冷凍機(吸着冷凍機200B)の第2熱媒体の排出温度を示し、一点鎖線は第3冷凍機(吸着冷凍機200C)の第2熱媒体の排出温度を示し、薄い実線は第2熱媒体の戻り温度を示す。第2熱媒体の戻り温度は、各吸着冷凍機200A~200Cから第1凝縮器102の入口へ流れる第2熱媒体の温度である。
【0267】
このような実施形態8によれば、
図17に示されるように、蒸気タービン103A(
図10参照)の背圧の圧力ショックが、より好適に抑制され、タービンブレードがダメージを受ける可能性がより低減される。また、大規模な熱源10(
図10参照)及び冷熱負荷501に対応することができる。
【0268】
(実施形態9)
図18は、本開示の実施形態9に係る冷熱生成システム2000Dのハードウェアの概要の一例を示す図である。
【0269】
図18を参照すると、実施形態の冷熱生成システム2000Dでは、複数(ここでは3)の第1凝縮器102A~102Cが、蒸気タービン装置100のランキンサイクル110(
図2参照)における第1熱媒体の循環経路106の複数(ここでは3)の分流経路106A~106Cに設けられており、複数(ここでは3)の吸着冷凍機200A~200Cの第2熱媒体循環経路211(
図14参照)が、それぞれ、第1熱媒体の循環経路106の複数の分流経路106A~106Cを通っている。実施形態のこれ以外の点は、実施形態8と同様である。
【0270】
このような実施形態9によれば、実施形態8と同様に、蒸気タービン103A(
図10参照)の背圧の圧力ショックが、より好適に抑制され、タービンブレードがダメージを受ける可能性がより低減される。また、大規模な熱源10(
図10参照)及び冷熱負荷501に対応することができる。
【0271】
(実施形態10)
本開示の実施形態10に係る冷熱生成システムは、実施形態6の冷熱生成システム2000A(
図11)又は実施形態7の冷熱生成システム2000B(
図14)を以下のように修正したものである。
【0272】
図11又は
図14を参照すると、実施形態10の冷熱生成システムは、複数の吸着冷凍装置700を含み、全ての吸着冷凍装置700が用いる吸着冷凍サイクルの作動熱源が、1の蒸気タービン装置100の1の第1凝縮器102であるか、又は、1の蒸気タービン装置100のランキンサイクルにおける第1熱媒体の循環経路106の複数の分流経路にそれぞれ複数の吸着冷凍装置700に対応して設けられた複数の第1凝縮器102である。
【0273】
このような実施形態10によれば、より大規模な熱源10(
図10参照)及び冷熱負荷501に対応することが可能で、且つ、タービンブレードがダメージを受ける可能性がより低減される。
【0274】
(その他の実施形態)
実施形態1~4,6~10のいずれかにおいて、実施形態5のバックアップ熱源216を設けてもよい。
【0275】
上記説明から、当業者にとっては、多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0276】
本開示は、蒸気タービン駆動の排熱を有効利用することが可能な冷熱生成システムとして有用である。
【符号の説明】
【0277】
10 熱源
11 発熱量制御部
100 蒸気タービン装置
101 第1蒸発器
102 第凝縮器
103 蒸気タービンユニット
103A 蒸気タービン
104 第1熱媒体ポンプ
105 第1熱媒体タンク
106第1熱媒体循環経路
110 ランキンサイクル
200 吸着冷凍機
201 第2蒸発器
202 吸着器
203 吸着体
204 第2凝縮器
205A~205F 第1乃至第6入口側冷媒開閉弁
206A~206F 第1乃至第6出口側冷媒開閉弁
207A~207F 第1乃至第6入口側熱媒体切替弁
208A~208F 第1乃至第6出口側熱媒体切替弁
209 吸着再生弁システム
210 吸着冷凍サイクル
211 第2熱媒体循環経路
212 第3熱媒体循環経路
213 冷媒循環経路
214 第4熱媒体循環経路
216 バックアップ熱源
221 第2熱媒体ポンプ
222 第3熱媒体ポンプ
223 冷媒体ポンプ
224 第4熱媒体ポンプ
300 制御装置
310 システム制御回路
320 受熱量制御回路
321 熱COP制御回路
323 熱バランス制御回路
324 吸着再生制御回路
325~327 第2乃至第4熱媒体流量制御回路
330 運転制御回路
340 受熱量取得部
350 冷熱量取得部
400 放熱器
401 冷却体
500 冷熱出力装置
601、601a~601c 第1熱媒体温度センサ
602、602a,602b 第2熱媒体温度センサ
603a,603b 第3熱媒体温度センサ
604a,604b 第4熱媒体温度センサ
610 タービン背圧センサ
611~614 第1乃至第4熱媒体流量センサ
700 吸着冷凍機
1000A~1000F,2000A~2000D 冷熱生成システム
Me メモリ
Pr プロセッサ