(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128168
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
H02K 29/08 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
H02K29/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037013
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】的場 尚史
(72)【発明者】
【氏名】湯本 透
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕人
【テーマコード(参考)】
5H019
【Fターム(参考)】
5H019AA08
5H019BB01
5H019BB05
5H019BB19
5H019BB22
5H019CC03
5H019DD01
5H019FF03
(57)【要約】
【課題】軸方向寸法を小さくすることができ、かつロータの回転検知を精度良く行うことが可能なモータ装置を提供する。
【解決手段】ロータ60は、パワーマグネット61が径方向外側に装着される第1筒部60aと、第1筒部60aの径方向内側に設けられ、センサマグネット62が径方向内側に装着される第2筒部60cと、を備え、ケース20は、センサマグネット62と対向するセンサ本体51と、ロータ60の径方向における第1筒部60aと第2筒部60cとの間に設けられ、第1筒部60aおよび第2筒部60cの双方に非接触状態の軸受保持筒21gと、を有し、ロータ60の径方向における軸受保持筒21gと第1筒部60aとの間に、第1ボールベアリングBB1が設けられ、センサマグネット62は、ロータ60の軸方向において第1ボールベアリングBB1よりもセンサ本体51に近接している。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータを収容するケースと、
前記ステータに対して回転するロータと、
前記ロータの駆動に用いられるパワーマグネットと、
前記ロータの回転検知に用いられるセンサマグネットと、
を有するモータ装置であって、
前記ロータは、
前記ロータの軸方向一側に設けられ、前記パワーマグネットが径方向外側に装着される第1筒部と、
前記ロータの軸方向一側でかつ前記第1筒部の径方向内側に設けられ、前記センサマグネットが径方向内側に装着される第2筒部と、
を備え、
前記ケースは、
前記ロータの軸方向において前記センサマグネットと対向する磁気抵抗素子と、
前記ロータの径方向における前記第1筒部と前記第2筒部との間に設けられ、前記第1筒部および前記第2筒部の双方に非接触状態となった第3筒部と、
を有し、
前記ロータの径方向における前記第3筒部と前記第1筒部との間に、軸受部材が設けられ、
前記センサマグネットは、前記ロータの軸方向において前記軸受部材よりも前記磁気抵抗素子に近接している、
モータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置において、
前記ケースは、前記ロータの軸方向に貫通する貫通部を備え、
前記貫通部の内側において、前記センサマグネットおよび前記磁気抵抗素子が軸方向に並んでいる、
モータ装置。
【請求項3】
前記センサマグネットは、S極およびN極が対向配置された円柱形状に形成されている、
請求項1に記載のモータ装置。
【請求項4】
前記第2筒部は、アルミニウム製である、
請求項1に記載のモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータおよびロータを有するモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ステータコアと、ステータコアに対して回転するロータと、を有するモータ装置が記載されている。また、特許文献1に記載されたモータ装置は、ロータの駆動に用いられる円筒マグネットと、ロータの回転検知に用いられるセンサマグネットと、ロータを回転自在に支持する第1,第2ボールベアリングと、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたモータ装置では、ロータの軸方向の異なる位置に、パワーマグネット,センサマグネットおよび軸受部材がそれぞれ配置されている。したがって、モータ装置の軸方向寸法が大きくなり、小型機器等への搭載が難しかった。そこで、パワーマグネット,センサマグネットおよび軸受部材を、それぞれロータの径方向に並べて配置することが考えられる。
【0005】
しかしながら、パワーマグネット,センサマグネットおよび軸受部材を、それぞれロータの径方向に単純に並べると、センサマグネットの磁束の多くが磁性体からなる軸受部材に向いてしまう。これにより、センサマグネットに対向配置された磁気センサによるロータの回転検知の精度が低下する虞があった。
【0006】
本発明の目的は、軸方向寸法を小さくすることができ、かつロータの回転検知を精度良く行うことが可能なモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様のモータ装置では、ステータと、前記ステータを収容するケースと、前記ステータに対して回転するロータと、前記ロータの駆動に用いられるパワーマグネットと、前記ロータの回転検知に用いられるセンサマグネットと、を有するモータ装置であって、前記ロータは、前記ロータの軸方向一側に設けられ、前記パワーマグネットが径方向外側に装着される第1筒部と、前記ロータの軸方向一側でかつ前記第1筒部の径方向内側に設けられ、前記センサマグネットが径方向内側に装着される第2筒部と、を備え、前記ケースは、前記ロータの軸方向において前記センサマグネットと対向する磁気抵抗素子と、前記ロータの径方向における前記第1筒部と前記第2筒部との間に設けられ、前記第1筒部および前記第2筒部の双方に非接触状態となった第3筒部と、を有し、前記ロータの径方向における前記第3筒部と前記第1筒部との間に、軸受部材が設けられ、前記センサマグネットは、前記ロータの軸方向において前記軸受部材よりも前記磁気抵抗素子に近接している。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パワーマグネット,センサマグネットおよび軸受部材を、ロータの径方向に並べて配置でき、モータ装置の軸方向寸法を小さくすることができる。また、センサマグネットが、ロータの軸方向において軸受部材よりも磁気抵抗素子に近接しているので、十分な磁束を磁気抵抗素子に向けることができる。よって、モータ装置の軸方向寸法を小さくすることができ、かつロータの回転検知を精度良く行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】モータ装置をケース側から見た斜視図である。
【
図2】モータ装置を出力部側から見た斜視図である。
【
図8】組み立て手順(1)を説明する分解斜視図である。
【
図9】組み立て手順(2)を説明する分解斜視図である。
【
図10】組み立て手順(3)を説明する分解斜視図である。
【
図11】組み立て手順(4)を説明する分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1はモータ装置をケース側から見た斜視図を、
図2はモータ装置を出力部側から見た斜視図を、
図3は
図1のA-A線に沿う断面図を、
図4はケース単体の内側を示す斜視図を、
図5はステータ単体を示す斜視図を、
図6はロータ単体を示す断面図を、
図7は
図3の破線部Bの拡大断面図をそれぞれ示している。
【0012】
[モータ装置の概要]
図1ないし
図3に示されるように、モータ装置10は、軸方向寸法よりも径方向寸法の方が大きい扁平形状となっている。これにより、モータ装置10は、小型機器等の幅狭のスペースに容易に搭載可能となっている。
【0013】
[モータ装置の詳細]
モータ装置10は、その外郭を形成するモータハウジング11を備えている。モータハウジング11は、略椀状に形成されたケース20と、略円板状に形成された蓋部材30と、を有している。ここで、ケース20および蓋部材30は、何れもアルミニウム製であり、軽量化および放熱性に優れたものとなっている。
【0014】
また、ケース20および蓋部材30は、合計3つの固定ねじSにより互いに固定されている。なお、合計3つの固定ねじSは、モータハウジング11の周方向に等間隔(120度間隔)で配置されている。これらの固定ねじSは、六角レンチ等の締め付け治具(図示せず)により締め付けられる六角ボルトとなっている。
【0015】
[ケース]
図3および
図4に示されるように、ケース20は、底壁部21,筒状壁部22およびフランジ部23を備えている。また、ケース20の厚み方向(軸方向)における底壁部21側とは反対側(軸方向他側)には、開口部24が設けられている。なお、ケース20の内部にはステータ40が設けられ、ステータ40は、ケース20の開口部24からケース20の内部に収容される。
【0016】
底壁部21は、ケース20の軸方向一側(
図3の上側)に設けられ、略円板状に形成されている。筒状壁部22は、底壁部21の径方向外側に一体に設けられ、かつケース20の軸方向他側(
図3の下側)に延びている。フランジ部23は、筒状壁部22の軸方向他側、つまり筒状壁部22の軸方向における底壁部21側とは反対側に一体に設けられ、かつケース20の径方向外側に突出して環状に形成されている。
【0017】
[底壁部]
底壁部21は、径方向外側に配置される略平板状の環状部21aと、径方向内側に配置される略筒状の窪み部21bと、を有している。つまり、環状部21aの径方向外側に、筒状壁部22の軸方向一側が一体に設けられている。また、窪み部21bは、段付きの略筒状に形成されており、環状部21aの径方向内側に、窪み部21bの軸方向一側が一体に設けられている。
【0018】
[センサ装着部]
底壁部21を形成する窪み部21bは、センサ装着部21cを備えている。センサ装着部21cは、環状部21aからケース20の軸方向他側に、一段窪んだ位置に設けられている。センサ装着部21cの径方向内側には、ケース20の軸方向に貫通する第1貫通孔HL1が設けられている。そして、第1貫通孔HL1の軸方向一側には大径穴21dが設けられ、第1貫通孔HL1の軸方向他側には大径穴21dよりも小径となった小径穴21eが設けられている。
【0019】
これにより、大径穴21dと小径穴21eとの間には、センサ位置決め段差部21fが形成される。具体的には、センサ位置決め段差部21fは、磁気センサ50を形成するセンサ本体51の肩部52をガタつかないように支持している。これにより、磁気センサ50のセンサ本体51は、ケース20の径方向に対して位置決めされると共に、ケース20の軸方向他側に対して位置決めされる。
【0020】
[磁気センサ]
ここで、磁気センサ50は、センサ位置決め段差部21fに支持され、かつ扁平の略円柱状に形成されたセンサ本体51を有している。つまり、センサ本体51は、センサ装着部21cに装着されている。そして、センサ本体51は、例えばMRセンサであり、センサ本体51には、磁気センサ50を形成する合計4本のセンサ線SL(
図1参照)の一端部が電気的に接続されている。これに対し、合計4本のセンサ線SLの他端部は、モータ装置10を制御するコントローラ(図示せず)に電気的に接続されている。
【0021】
これにより、コントローラにはセンサ本体51からセンサマグネット62の回転状態を示す信号が入力され、コントローラはロータ60の回転方向や回転位置等を把握する。よって、コントローラは、ロータ60を精度良く制御することができる。なお、センサ本体51は、本発明における磁気抵抗素子に相当する。
【0022】
ここで、ケース20の径方向において、センサ本体51と大径穴21dとの間には、環状の接着剤収容スペースGSが形成されている。接着剤収容スペースGSには、アクリル樹脂系の接着剤Gが隙間なく充填されており、これによりセンサ本体51は、ケース20に対して軸方向一側(
図3の上側)に外れないように強固に固定される。
【0023】
また、
図3に示されるように、ケース20の軸方向他側に対するセンサ装着部21cの窪み量は、センサ装着部21cにセンサ本体51を装着した状態において、環状部21aとセンサ本体51とが面一となる窪み量となっている。すなわち、モータ装置10を径方向(真横)から見たときに、センサ本体51は、ケース20により覆い隠される。
【0024】
[軸受保持筒]
さらに、底壁部21を形成する窪み部21bは、軸受保持筒21gを備えている。軸受保持筒21gは、センサ装着部21cからケース20の軸方向他側に延びている。具体的には、軸受保持筒21gの軸方向長さは、モータ装置10を組み立てた状態において、ステータ40の径方向内側に入り込む軸方向長さとなっている。
【0025】
ここで、軸受保持筒21gの径方向内側には、第1貫通孔HL1に連通する連通孔HLが設けられている。そして、連通孔HLには、モータ装置10を組み立てた状態において、ロータ60の第2筒部60cおよびセンサマグネット62が配置される。また、軸受保持筒21gの軸方向一側で、かつ軸受保持筒21gの径方向外側には、軸受位置決め段差部21hが一体に設けられている。
【0026】
なお、第1貫通孔HL1および連通孔HLは、何れもケース20に設けられており、かつロータ60の軸方向に貫通している。すなわち、第1貫通孔HL1および連通孔HLは、本発明における貫通部に相当する。そして、第1貫通孔HL1および連通孔HLの内側には、これらの軸方向に並ぶようにして、センサ本体51およびセンサマグネット62が配置されている。
【0027】
また、ロータ60の軸方向において、センサ本体51とセンサマグネット62との間には、仕切り壁等が何も存在しない。よって、センサ本体51とセンサマグネット62とを近接配置可能として、センサマグネット62の磁束がセンサ本体51に届き易くなっている。
【0028】
さらに、軸受保持筒21gの径方向外側には、第1ボールベアリングBB1の内輪IR1(
図7参照)が装着されている。つまり、軸受保持筒21gは、第1ボールベアリングBB1を、ケース20の径方向に位置決めする。これに対し、軸受位置決め段差部21hには、第1ボールベアリングBB1の内輪IR1が、軸方向他側から突き当てられている。つまり、軸受位置決め段差部21hは、第1ボールベアリングBB1を、ケース20の軸方向一側に対して位置決めする。
【0029】
[切欠溝]
図1,
図3および
図4に示されるように、ケース20の底壁部21には、切欠溝25が設けられている。切欠溝25は、ケース20の径方向に延びており、ケース20の内外を連通している。具体的には、切欠溝25は、センサ装着部21cの径方向外側に設けられ、底壁部21の環状部21aから筒状壁部22に亘って設けられている。
【0030】
そして、切欠溝25からは、ケース20の内部のステータ40に繋がる合計3本の電源線PLが引き出されている。また、切欠溝25には、磁気センサ50のセンサ本体51に繋がる合計4本のセンサ線SLが横切っている。つまり、切欠溝25には、電源線PLおよびセンサ線SL(合計7本)が収容されている。
【0031】
切欠溝25から引き出される電源線PLおよび切欠溝25を横切るセンサ線SLは、
図3に示されるように、それぞれケース20の径方向(真横)に延びている。これにより、電源線PLおよびセンサ線SLを、ケース20の軸方向一側(
図3の上側)に引き出さずに済む。これによっても、モータ装置10を、小型機器等の幅狭のスペースに容易に搭載可能としている。
【0032】
ここで、
図1に示されるように、切欠溝25は、ゴム等の弾性材料からなるシール部材SM(図中二点鎖線の想像線参照)によって密閉されている。これにより、ケース20の内部への埃等の進入が防止される。なお、シール部材SMの素材としては、シリコーンゴム等が挙げられる。
【0033】
[筒状壁部]
図3および
図4に示されるように、筒状壁部22の径方向内側には、ステータ支持段差部22aが設けられている。ステータ支持段差部22aは、ステータ40を形成するステータコア41の外周部を支持している。これにより、ステータ40は、ケース20の軸方向一側に対して位置決めされる。さらに、ステータコア41の外周部と筒状壁部22の径方向内側との間には、エポキシ系接着剤EGが設けられ(塗布され)ている。これにより、ステータ40は、ケース20に対して回り止めがなされている。
【0034】
このように、ステータ40は、筒状壁部22に設けられたステータ支持段差部22aや係合部により、ケース20の内部の規定位置に対して、回り止めされた状態で精度良く位置決めされる。
【0035】
ステータ40は、筒状壁部22の軸方向における略中央部に配置されている。そして、ケース20の軸方向において、ステータ40と底壁部21との間には、環状の配線室SPが設けられている。配線室SPには、ステータ40に繋がる合計3本の電源線PLや、ステータ40を形成するコイルCLの接続端部(図示せず)が収容される。また、配線室SPには、電源線PLおよびコイルCLの接続端部を、軸方向一側から覆う環状の保護シートPSが収容される。
【0036】
ここで、切欠溝25は、配線室SPを横切るようにして設けられている。言い換えれば、配線室SPには、センサ本体51に繋がる合計4本のセンサ線SLの一部も収容される。
【0037】
配線室SPは、窪み部21bを形成するセンサ装着部21cの周囲に設けられている。つまり、配線室SPは、磁気センサ50を形成するセンサ本体51の周囲に配置されている。言い換えれば、配線室SPは、環状のステータ40(
図5参照)の形状に倣って環状に形成され、配線室SPの径方向内側は所謂デッドスペースであると言える。このように、本実施の形態では、配線室SPの径方向内側のデッドスペースを有効利用し、このデッドスペースにセンサ本体51を配置している。
【0038】
このように、ケース20の径方向において、センサ本体51および配線室SPは互いに重なっている。これにより、モータ装置10の軸方向寸法の短縮化(扁平化)が図られている。さらには、上述のように、モータ装置10を径方向(真横)から見たときに、センサ本体51はケース20により覆い隠される。よって、モータ装置10をフレーム等(図示せず)に取り付ける際に、センサ本体51がフレーム等にぶつかる(接触する)こと等が抑制される。
【0039】
[フランジ部]
図4に示されるように、フランジ部23には、合計3つのねじ挿通穴23aと、合計3つの第1貫通穴23bと、が設けられている。これらのねじ挿通穴23aおよび第1貫通穴23bは、それぞれケース20の軸方向に貫通しており、それぞれのねじ挿通穴23aには固定ねじSが挿通されている(
図3参照)。また、それぞれの第1貫通穴23bには、モータ装置10をフレーム等(図示せず)に固定するためのボルト等(図示せず)が挿通される。
【0040】
[ステータ]
図3および
図5に示されるように、ステータ40は、複数の薄い鋼板(強磁性体)を積層して環状に形成されたステータコア41を備えている。ステータコア41は、合計12個の分割コア41aを周方向に連結して環状に形成されている。そして、それぞれの分割コア41aには、ステータコア41の径方向内側に突出するようにして、ティース41bが一体に設けられている。このように、ステータコア41には、合計12個のティース41b、言い換えれば、合計12個のスロットSTが設けられている。
【0041】
また、ステータ40を形成するティース41bのそれぞれには、プラスチック等の樹脂材料(絶縁体)からなるインシュレータ41cが装着されている。そして、ティース41bには、インシュレータ41cを介してコイルCLが集中巻きにより巻装されている。なお、それぞれのティース41bに巻装されたコイルCLは、ステータコア41の周方向に、U相,V相,W相の三相が交互に現れるように配置されている。
【0042】
ここで、三相のコイルCLの接続端部(図示せず)には、合計3本の電源線PLの一端部が電気的に接続されている。つまり、合計3本の電源線PLは、U相,V相,W相のそれぞれに対応している。そして、U相,V相,W相の電源線PLには、コントローラに設けられたスイッチング素子(MOSFET等)のスイッチング動作により、交互に駆動電流が供給される。これにより、パワーマグネット61を有するロータ60は、所定の回転方向に所定の回転数で回転駆動される。
【0043】
なお、ステータ40の軸方向他側(
図3の下側)には、環状の熱伝導シートHSが設けられている。具体的には、熱伝導シートHSは、ステータ40を形成するコイルCLと、ケース20の開口部24を閉塞する蓋部材30との間に、挟まれるようにして配置されている。これにより、コイルCLの熱が熱伝導シートHSを介して効率良く蓋部材30に伝達され、ひいてはコイルCLの過熱が防止される。
【0044】
[ロータ]
図3,
図6および
図7に示されるように、ステータ40の径方向内側には、ロータユニットRUが回転自在に設けられている。ロータユニットRUは、ステータ40に対して回転する回転体であり、具体的には、ステータ40のコイルCLへの駆動電流の供給により、ロータユニットRUは所定の回転方向に回転駆動される。
【0045】
ロータユニットRUは、ロータ60と、ロータ60の駆動に用いられるパワーマグネット61と、ロータ60の回転検知に用いられるセンサマグネット62と、を有している。つまり、これらのロータ60,パワーマグネット61およびセンサマグネット62は、互いに一体回転される。なお、
図6では、パワーマグネット61およびセンサマグネット62を、二点鎖線(想像線)で示している。
【0046】
ここで、
図7に示されるように、第1ボールベアリングBB1の外輪OR1においても、ロータ60と一緒に回転される。さらには、ロータ60の軸方向一側に設けられ、外輪OR1を軸方向他側(
図3の下側)から支持する外輪支持プレート63や、外輪支持プレート63を軸方向一側に向けて押圧するスプリングワッシャ64においても、ロータ60と一緒に回転される。
【0047】
図6に示されるように、ロータ60は、アルミニウム製(非磁性体)の丸棒を切削加工等することで、段付きの略円筒形状に形成されている。ロータ60の軸方向一側には、大径の第1筒部60aが一体に設けられ、第1筒部60aの径方向外側には、環状に形成されたパワーマグネット61が装着されている。また、第1筒部60aの軸方向一側には、ロータ60の径方向外側に突出するようにして、環状の突当部60bが一体に設けられている。
【0048】
突当部60bには、パワーマグネット61の軸方向一側が突き当てられている。このように、パワーマグネット61は、第1筒部60aによりロータ60の径方向に位置決めされ、突当部60bによりロータ60の軸方向一側に対して位置決めされる。なお、パワーマグネット61は、アクリル樹脂系の接着剤(図示せず)により、第1筒部60aに固定されている。また、パワーマグネット61はロータ駆動用であり、パワーマグネット61が回転することでロータ60は回転駆動される。
【0049】
ここで、
図9に示されるように、パワーマグネット61は、その周方向に極性の異なる着磁部61a,61bを、等間隔(36度間隔)で交互に10個並べることで環状となっている。つまり、パワーマグネット61は、10極のマグネットとなっている。ただし、
図9では、着磁部61a,61bにそれぞれNおよびSの記号のみを付したが、着磁部61aの径方向外側がN極となり径方向内側がS極となる。また、着磁部61bの径方向外側がS極となり径方向内側がN極となる。
【0050】
このように、本実施の形態のモータ装置10では、10極12スロット形のブラシレスモータを採用しており、小型のモータ装置としては比較的多くの極数を有する多極モータとなっている。よって、小型でありながら高出力(高トルク)のモータ装置を実現している。
【0051】
また、
図6に示されるように、ロータ60の軸方向一側で、かつ第1筒部60aの径方向内側には、センサマグネット62が径方向内側に装着される第2筒部60cが一体に設けられている。つまり、第2筒部60cにおいても、アルミニウム製となっている。なお、第1筒部60aおよび第2筒部60cは、何れも同様に軸方向一側に向けて開口しており、かつロータ60の軸方向一側の略1/3を占める部分に配置されている。
【0052】
ここで、
図9に示されるように、センサマグネット62は、単極でかつ円柱形状のマグネットであり、径方向にS極およびN極が対向配置されている。センサマグネット62は、第2筒部60cの径方向内側にアクリル樹脂系の接着剤(図示せず)により固定されている。そして、
図6に示されるように、センサマグネット62の軸方向一側には、所定のエアギャップAGを介して、磁気センサ50のセンサ本体51が対向配置されている。つまり、センサ本体51は、ロータ60の軸方向において、センサマグネット62と対向している。
【0053】
さらに、ロータ60の軸方向他側の略2/3を占める部分は、第1筒部60aよりも小径で、かつ第2筒部60cよりも大径となった出力部60dとなっている。そして、出力部60dの軸方向一側でかつ径方向外側には、第2ボールベアリングBB2の内輪IR2(
図7参照)が装着されている。つまり、出力部60dは、第2ボールベアリングBB2を、ロータ60の径方向に位置決めする。このように、第2ボールベアリングBB2は、ロータ60の軸方向他側に設けられ、ロータ60の出力部60dを回転自在に支持している。
【0054】
また、第1筒部60aの外径は、出力部60dの外径よりも大きくなっており、第1筒部60aと出力部60dとの間には段差部60eが設けられている。そして、段差部60eには、第2ボールベアリングBB2の内輪IR2が、軸方向他側から突き当てられている。つまり、段差部60eは、第2ボールベアリングBB2を、ロータ60の軸方向一側に対して位置決めする。
【0055】
ここで、出力部60dの軸方向他側は、モータハウジング11を形成する蓋部材30(
図3参照)の外部に突出されている。
【0056】
[パワーマグネット,センサマグネットおよび第1ボールベアリングの配置]
図6に示されるように、ロータ60の軸方向一側では、ロータ60の径方向に対して、大径の第1筒部60aと小径の第2筒部60cとが重なるようにして配置されている。具体的には、ロータ60を径方向(真横)から見たときに、第2筒部60cは、第1筒部60aの径方向内側に完全に入り込み、第1筒部60aにより覆い隠される。言い換えれば、第2筒部60cの軸方向長さは、第1筒部60aの軸方向長さよりも短くなっており、第2筒部60cは第1筒部60aを越えて突出していない。
【0057】
これに対し、第2筒部60cの径方向内側に装着されたセンサマグネット62は、その軸方向一側が、第2筒部60cの軸方向一側から所定量突出している。具体的には、センサマグネット62の軸方向一側の略1/4を占める寸法tの部分が、第2筒部60cからその軸方向一側に突出している。また、センサマグネット62の軸方向一側は、第1筒部60aを越えてセンサ本体51に向けて突出している。なお、第1筒部60aからの突出量hは、寸法tの略1/3となっている(h≒t/3)。
【0058】
また、第1筒部60aと第2筒部60cとの間に配置される第1ボールベアリングBB1は、センサマグネット62に対して、軸方向他側に若干オフセットしている(ずれている)。具体的には、第1ボールベアリングBB1の軸方向寸法L1は、センサマグネット62の軸方向寸法L2よりも小さくなっており(L1<L2)、かつ第1ボールベアリングBB1の軸方向一側および第2筒部60cの軸方向一側は面一となっている。つまり、第1ボールベアリングBB1においても、第2筒部60cと同様に、第1筒部60aの径方向内側に完全に入り込んでいる。
【0059】
なお、ロータ60の軸方向において、ロータ60と第1ボールベアリングBB1との間には、外輪支持プレート63およびスプリングワッシャ64(何れも
図7および
図9参照)を収容する環状の収容部ACが形成されている。具体的には、
図6に示されるように、収容部ACは、ロータ60の径方向において、パワーマグネット61と重なっている。つまり、収容部ACに収容される外輪支持プレート63およびスプリングワッシャ64は、ロータ60の径方向において、パワーマグネット61と重なっている。ここで、スプリングワッシャ64は、第1ボールベアリングBB1をケース20に向けて押圧する機能を有する。
【0060】
このように、センサマグネット62の軸方向一側を、第1ボールベアリングBB1,第2筒部60cおよび第1筒部60aよりも突出させることで、センサマグネット62の磁束の多くが鋼材製(磁性体)の第1ボールベアリングBB1に向かうことが抑制される。すなわち、センサマグネット62は、ロータ60の軸方向において第1ボールベアリングBB1よりもセンサ本体51に近接しているので、センサマグネット62の磁束がセンサ本体51に届き易くなっている。
【0061】
これにより、センサマグネット62の磁束は、センサマグネット62の軸方向一側にエアギャップAGを介して配置された磁気センサ50(センサ本体51)に対して確実に届く。よって、磁気センサ50の十分なセンシング精度が確保される。
【0062】
ここで、実際のモータ装置10の体格を考慮して、センサ本体51に届く磁束について解析した。なお、前提として、センサ本体51がセンシング可能な磁束密度の最低値を「約50mT(ミリテスラ)」とし、センサマグネット62の残留磁束密度を「約1.05T(テスラ)」とし、センサ本体51とセンサマグネット62との間のエアギャップAGを「約0.6mm」とし、センサマグネット62の第1ボールベアリングBB1からの突出量(寸法t)を「約1.0mm」とした。
【0063】
この場合、センサ本体51に届く磁束(センサマグネット62の磁束密度)は、センサ本体51がセンシング可能な磁束密度の最低値(約50mT)を上回る「約78mT(ミリテスラ)」となった。したがって、実際のモータ装置10の体格を考慮しても、センサ本体51の十分なセンシング精度が確保されることが判った。
【0064】
また、第1筒部60aの径方向外側にパワーマグネット61が固定され、第2筒部60cの径方向内側にセンサマグネット62が固定され、ロータ60の径方向における第1筒部60aと第2筒部60cとの間に、ケース20に設けられた軸受保持筒21g(
図7参照)が、第1筒部60aおよび第2筒部60cの双方に非接触状態で設けられている。つまり、ケース20の径方向において、径方向外側から、第1筒部60a,軸受保持筒21gおよび第2筒部60cがこの順番で重なっている。よって、第1,第2筒部60a,60cを有するロータ60は、ケース20の軸受保持筒21gに対して回転自在となっている。
【0065】
第1ボールベアリングBB1は、ロータ60の径方向において、軸受保持筒21gと第1筒部60aとの間に設けられている。ここで、軸受保持筒21gは、本発明における第3筒部に相当し、第1ボールベアリングBB1は、本発明における軸受部材に相当する。具体的には、第1ボールベアリングBB1の内輪IR1が軸受保持筒21gの径方向外側に装着され、第1ボールベアリングBB1の外輪OR1が第1筒部60aの径方向内側に装着されている。
【0066】
これにより、
図3および
図6に示されるように、第1筒部60aに装着されるパワーマグネット61,第2筒部60cに装着されるセンサマグネット62および、軸受保持筒21gと第1筒部60aとの間の第1ボールベアリングBB1は、ロータ60の径方向において互いに重なっている。よって、モータ装置10の軸方向寸法を、十分に短縮化(扁平化)可能としている。
【0067】
ここで、収容部ACに収容される外輪支持プレート63およびスプリングワッシャ64は、第1ボールベアリングBB1の外輪OR1を、ロータ60の軸方向一側、つまりケース20に向けて押圧する。これらの外輪支持プレート63およびスプリングワッシャ64は、特に、モータ装置10の組み立て時に機能するものであって、外輪支持プレート63およびスプリングワッシャ64の動作については、後で詳述する。
【0068】
[蓋部材]
図2,
図3および
図7に示されるように、蓋部材30は、略円板状に形成されている。蓋部材30の中心部分には、モータ装置10の軸方向に延びるようにして筒状のボス部31が一体に設けられている。そして、ボス部31の径方向内側には、ロータ60の出力部60dが挿通される第2貫通孔HL2が設けられている。
【0069】
第2貫通孔HL2は、モータ装置10の軸方向においてケース20の第1貫通孔HL1と対向している。また、第2貫通孔HL2は、モータハウジング11の内外を連通しており、第2貫通孔HL2には、第2ボールベアリングBB2が装着されている。
【0070】
具体的には、第2貫通孔HL2には、第2ボールベアリングBB2の外輪OR2が装着され、かつ外輪OR2の軸方向一側に設けられたフランジFRが、ボス部31の軸方向一側に引っ掛けられている。ここで、フランジFRは、外輪OR2の径方向外側に突出するように環状に一体に設けられ、第2ボールベアリングBB2は、フランジ付きのボールベアリングとなっている。なお、第1,第2ボールベアリングBB1,BB2は、何れも安価でかつ容易に入手可能な汎用品となっている。
【0071】
このように、蓋部材30の中心部分に設けられるボス部31は、第2ボールベアリングBB2を径方向に位置決めすると共に、第2ボールベアリングBB2を軸方向他側に対して位置決めする。
【0072】
また、蓋部材30に設けられるボス部31の周囲には、合計3つの雌ねじ部32が設けられている。これらの雌ねじ部32は、蓋部材30の軸方向他側に所定の高さで突出されている。合計3つの雌ねじ部32は、蓋部材30の周方向に等間隔(120度間隔)で配置されており、モータ装置10を組み立てた状態において、ケース20のフランジ部23に設けられたねじ挿通穴23a(
図3参照)と対向する。そして、それぞれの雌ねじ部32には、
図3に示されるように、固定ねじSが締め付けられている。
【0073】
さらに、蓋部材30におけるボス部31の周囲には、合計3つの第2貫通穴33が設けられている。これらの第2貫通穴33は、モータ装置10を組み立てた状態において、ケース20のフランジ部23に設けられた第1貫通穴23b(
図1および
図4参照)と対向する。すなわち、第2貫通穴33には、モータ装置10をフレーム等(図示せず)に固定するためのボルト等(図示せず)が挿通される。
【0074】
[組み立て手順について]
次に、以上のように形成されたモータ装置10の組み立て手順(組み立て方法)について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に示される組み立て手順は、複数ある組み立て手順の内の一例であって、もちろん、他の組み立て手順でもモータ装置10を組み立てることが可能である。
【0075】
図8は組み立て手順(1)を説明する分解斜視図を、
図9は組み立て手順(2)を説明する分解斜視図を、
図10は組み立て手順(3)を説明する分解斜視図を、
図11は組み立て手順(4)を説明する分解斜視図をそれぞれ示している。
【0076】
[手順1]
まず、
図8に示されるように、磁気センサ50,ケース20,保護シートPS,ステータ40および第1ボールベアリングBB1を準備する。そして、矢印M1に示されるように、保護シートPSをケース20の内側に入れる。このとき、保護シートPSの切り欠きKをケース20の切欠溝25に合わせる。
【0077】
次いで、ステータ40の径方向外側に引き出された合計3本の電源線PLを、矢印M2に示されるように湾曲させる。具体的には、それぞれの電源線PLを、ステータ40の軸方向一側(
図8では下側)に湾曲させる。これに引き続き、それぞれの電源線PLを、ケース20の内側から切り欠きKおよび切欠溝25の部分に通し、ケース20の外側に引き出す。そして、矢印M3に示されるように、ステータ40をケース20の内側に入れる。
【0078】
このとき、ステータコア41の軸方向一側の外周部を、筒状壁部22のステータ支持段差部22aに突き当てる。その際に、ステータ40および筒状壁部22の回り止めとして機能する係合部(図示せず)を互いに係合させ、ステータ40がケース20に対して回転しないようにする。
【0079】
次に、第1ボールベアリングBB1を、矢印M4に示されるように、軸受保持筒21gに対して、その軸方向他側(
図8では上側)から臨ませる。そして、第1ボールベアリングBB1の内輪IR1を軸受保持筒21gに装着すると共に、内輪IR1の軸方向一側を軸受位置決め段差部21hに突き当てる。
【0080】
次いで、矢印M5に示されるように、ケース20の軸方向一側からケース20の中央部に向けて、磁気センサ50を形成するセンサ本体51を臨ませる。そして、センサ本体51の肩部52を、センサ位置決め段差部21f(
図3および
図7参照)に突き当てる。このとき、磁気センサ50を形成する合計4本のセンサ線SLを、ケース20の切欠溝25に沿わせるようにする。
【0081】
また、肩部52とセンサ位置決め段差部21fとの間に接着剤(図示せず)を塗布すると共に、接着剤収容スペースGSに接着剤G(
図3および
図7参照)を充填する。これにより、ステータアッシーSAの組み立てが完了する。
【0082】
[手順2]
次に、ロータユニットRUを組み立てる。具体的には、
図9に示されるように、第2ボールベアリングBB2,パワーマグネット61,ロータ60,センサマグネット62,スプリングワッシャ64および外輪支持プレート63を準備する。
【0083】
そして、矢印M6に示されるように、ロータ60の軸方向他側(
図9の下側)から、ロータ60の第1筒部60aにパワーマグネット61を臨ませる。このとき、パワーマグネット61の径方向内側および第1筒部60aの径方向外側の少なくとも何れか一方に、接着剤(図示せず)を塗布しておく。その後、第1筒部60aにパワーマグネット61を装着する。
【0084】
次に、矢印M7に示されるように、ロータ60の軸方向他側から、ロータ60の出力部60dに第2ボールベアリングBB2を臨ませる。このとき、第2ボールベアリングBB2のフランジFRを軸方向一側(
図9の上側)に向ける。そして、第2ボールベアリングBB2を形成する内輪IR2の軸方向一側を、ロータ60の段差部60e(
図3および
図7参照)に突き当てる。これにより、ロータ60に第2ボールベアリングBB2が装着される。
【0085】
その後、矢印M8に示されるように、ロータ60の軸方向一側から、ロータ60の第2筒部60cにセンサマグネット62を臨ませる。このとき、センサマグネット62の外周および第2筒部60cの径方向内側の少なくとも何れか一方に、接着剤(図示せず)を塗布しておく。その後、第2筒部60cにセンサマグネット62を装着する。
【0086】
次いで、矢印M9および矢印M10に示されるように、ロータ60の軸方向一側から、ロータ60の第1筒部60aと第2筒部60cとの間の収容部ACに、スプリングワッシャ64および外輪支持プレート63をこの順番で入れる。このとき、外輪支持プレート63の外輪支持凸部63aが、軸方向一側を向くようにする。なお、外輪支持凸部63aは、第1ボールベアリングBB1の外輪OR1を、軸方向他側から支持する部分である。
【0087】
これにより、第2ボールベアリングBB2,スプリングワッシャ64および外輪支持プレート63が装着されたロータユニットRUの組み立てが完了する。
【0088】
[手順3]
次に、
図10に示されるように、[手順2]で組み立てられたロータユニットRUを、蓋部材30に組み付ける作業を行う。具体的には、まず、軸方向一側(
図10の上側)に熱伝導シートHSが装着された蓋部材30を準備する。
【0089】
そして、矢印M11に示されるように、蓋部材30の軸方向一側から、蓋部材30を形成するボス部31の第2貫通孔HL2に、ロータユニットRU(第2ボールベアリングBB2,スプリングワッシャ64および外輪支持プレート63付き)を臨ませる。そして、ロータユニットRUの出力部60dおよび第2ボールベアリングBB2を、第2貫通孔HL2に装着する。
【0090】
このとき、ロータユニットRUに組み付けられた第2ボールベアリングBB2のフランジFRを、軸方向一側からボス部31に突き当てる(
図7参照)。これにより、ロータユニットRU(第2ボールベアリングBB2,スプリングワッシャ64および外輪支持プレート63付き)が蓋部材30に組み付けられて、蓋部材アッシーLAの組み立てが完了する。
【0091】
[手順4]
次に、
図11に示されるように、[手順1]で組み立てられたステータアッシーSAと、[手順3]で組み立てられた蓋部材アッシーLAを準備する。そして、矢印M12に示されるように、ステータアッシーSAの軸方向他側(開口部24側)と、蓋部材アッシーLAの軸方向一側(熱伝導シートHS側)とを、互いに突き合わせるように臨ませる。
【0092】
このとき、
図7の太破線に示されるように、第1ボールベアリングBB1の外輪OR1の径方向外側および第1筒部60aの径方向内側の少なくとも何れか一方に、アクリル系接着剤ALを塗布しておく。そして、
図11の矢印M13に示されるように、ロータ60の第1筒部60aと第2筒部60cとの間に、軸受保持筒21gおよび第1ボールベアリングBB1(
図7参照)を入れる。
【0093】
次いで、矢印M14に示されるように、ケース20の軸方向一側(
図11の上側)から合計3つの固定ねじSをそれぞれ締め付ける。具体的には、固定ねじSを、フランジ部23のねじ挿通穴23aに挿通しつつ、六角レンチ等の締め付け治具(図示せず)を用いて、蓋部材30の雌ねじ部32に締め付ける。なお、固定ねじSの締め付け作業は、外輪OR1の径方向外側と第1筒部60aの径方向内側との間に塗布されたアクリル系接着剤ALが硬化する前に終える。
【0094】
すると、
図7に示されるように、アクリル系接着剤ALが硬化する前であるため、スプリングワッシャ64のばね力Fにより、ロータ60は軸方向他側に押圧され、第1ボールベアリングBB1の外輪OR1は軸方向一側に押圧される。これにより、ロータ60がケース20および蓋部材30に対して軸方向にがたつくことが防止される。
【0095】
具体的には、スプリングワッシャ64の軸方向他側に作用するばね力Fにより、第2ボールベアリングBB2の内輪IR2が、ロータ60の段差部60eにより、押圧力f1で軸方向他側に押圧される。すると、第2ボールベアリングBB2の外輪OR2に設けられたフランジFRが、押圧力f2で軸方向一側からボス部31に押し付けられる。これにより、第2ボールベアリングBB2の軸方向へのがたつきが抑えられる(第2ボールベアリングBB2のがたつき吸収機能)。
【0096】
一方、スプリングワッシャ64の軸方向一側に作用するばね力Fにより、第1ボールベアリングBB1の外輪OR1が、外輪支持プレート63の外輪支持凸部63aにより、押圧力f3で軸方向一側に押圧される。すると、第1ボールベアリングBB1の内輪IR1が、押圧力f4で軸方向他側からケース20の軸受位置決め段差部21hに押し付けられる。これにより、第1ボールベアリングBB1の軸方向へのがたつきが抑えられる(第1ボールベアリングBB1のがたつき吸収機能)。
【0097】
その後、アクリル系接着剤ALが硬化されて、第1ボールベアリングBB1の外輪OR1が第1筒部60aに固定される。これにより、モータ装置10を形成するロータ60のがたつきが取り除かれた状態となる。
【0098】
このように、アクリル系接着剤ALが硬化する前に、
図11に示されるように、合計3つの固定ねじSをそれぞれ締め付けることで、第1,第2ボールベアリングBB1,BB2のがたつきが取り除かれて、ひいてはロータ60の軸方向へのがたつきを無くすことができる。特に、ロータ60の軸方向へのがたつきは、精度低下を招く虞がある。よって、本実施の形態のように、モータ装置10においてロータ60のがたつきを取り除くことは、重要な要件の1つとなっている。
【0099】
以上詳述したように、本実施の形態のモータ装置10によれば、ロータ60は、ロータ60の軸方向一側に設けられ、パワーマグネット61が径方向外側に装着される第1筒部60aと、ロータ60の軸方向一側でかつ第1筒部60aの径方向内側に設けられ、センサマグネット62が径方向内側に装着される第2筒部60cと、を備え、ケース20は、ロータ60の軸方向においてセンサマグネット62と対向するセンサ本体51と、ロータ60の径方向における第1筒部60aと第2筒部60cとの間に設けられ、第1筒部60aおよび第2筒部60cの双方に非接触状態となった軸受保持筒21gと、を有し、ロータ60の径方向における軸受保持筒21gと第1筒部60aとの間に、第1ボールベアリングBB1が設けられ、センサマグネット62は、ロータ60の軸方向において第1ボールベアリングBB1よりもセンサ本体51に近接している。
【0100】
これにより、パワーマグネット61,センサマグネット62および第1ボールベアリングBB1を、ロータ60の径方向に並べて配置でき、モータ装置10の軸方向寸法を小さくすることができる。また、センサマグネット62が、ロータ60の軸方向において第1ボールベアリングBB1よりもセンサ本体51に近接しているので、十分な磁束をセンサ本体51に向けることができる。よって、モータ装置10の軸方向寸法を小さくすることができ、かつロータ60の回転検知を精度良く行うことが可能となる。
【0101】
また、本実施の形態のモータ装置10によれば、ケース20は、ロータ60の軸方向に貫通する第1貫通孔HL1および連通孔HLを備え、第1貫通孔HL1および連通孔HLの内側において、センサマグネット62およびセンサ本体51が軸方向に並んでいる。
【0102】
これにより、センサ本体51とセンサマグネット62とを、互いに近接して配置することができ、ひいてはセンサマグネット62の磁束をセンサ本体51に届き易くすることができる。よって、ロータ60の回転検知をより精度良く行うことが可能となる。
【0103】
さらに、本実施の形態のモータ装置10によれば、センサマグネット62は、S極およびN極が対向配置された円柱形状に形成されている。
【0104】
これにより、簡素な形状で安価なマグネットを用いて、ロータ60の回転検知を行うことができる。
【0105】
また、本実施の形態のモータ装置10によれば、第2筒部60cは、アルミニウム製である。
【0106】
これにより、第2筒部60cを非磁性体として、センサマグネット62のより多くの磁束を、センサ本体51に向けることができる。よって、ロータ60の回転検知をさらに精度良く行うことが可能となる。
【0107】
さらに、本実施の形態のモータ装置10によれば、構成部品の小型化および軽量化を図り、モータ装置10の軸方向寸法を小さくすることができるので、構成部品の製造エネルギーの省力化を図ることができる。よって、国連で定められた持続可能な開発目標(SDGs)における特に目標7(すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的なエネルギーへのアクセスを確保する)および目標13(気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる)を実現することができる。
【0108】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、モータ装置10は、小型の駆動源である車載用アクチュエータにも適用することができる。
【0109】
また、上記実施の形態では、ケース20,蓋部材30およびロータ60の素材を、それぞれアルミニウム製としたが、本発明はこれに限らず、他の素材(例えば、鉄等)としても構わない。ただし、センサ本体51のセンシング精度を高めるには、上記実施の形態のように、非磁性体であるアルミニウム製とするのが望ましい。
【0110】
その他、上記実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上記実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0111】
10:モータ装置,11:モータハウジング,20:ケース,21:底壁部,21a:環状部,21b:窪み部,21c:センサ装着部,21d:大径穴,21e:小径穴,21f:センサ位置決め段差部,21g:軸受保持筒(第3筒部),21h:軸受位置決め段差部,22:筒状壁部,22a:ステータ支持段差部,23:フランジ部,23a:ねじ挿通穴,23b:第1貫通穴,24:開口部,25:切欠溝,30:蓋部材,31:ボス部,32:雌ねじ部,33:第2貫通穴,40:ステータ,41:ステータコア,41a:分割コア,41b:ティース,41c:インシュレータ,50:磁気センサ,51:センサ本体(磁気抵抗素子),52:肩部,60:ロータ,60a:第1筒部,60b:突当部,60c:第2筒部,60d:出力部,60e:段差部,61:パワーマグネット,61a,61b:着磁部,62:センサマグネット,63:外輪支持プレート,63a:外輪支持凸部,64:スプリングワッシャ,AC:収容部,AG:エアギャップ,AL:アクリル系接着剤,BB1:第1ボールベアリング(軸受部材),BB2:第2ボールベアリング,CL:コイル,EG:エポキシ系接着剤,FR:フランジ,G:接着剤,GS:接着剤収容スペース,HL:連通孔(貫通部),HL1:第1貫通孔(貫通部),HL2:第2貫通孔,HS:熱伝導シート,IR1,IR2:内輪,LA:蓋部材アッシー,OR1,OR2:外輪,PL:電源線,PS:保護シート,RU:ロータユニット,S:固定ねじ,SA:ステータアッシー,SL:センサ線,SM:シール部材,SP:配線室,ST:スロット