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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128172
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ジェットファン
(51)【国際特許分類】
   E21F 1/00 20060101AFI20240913BHJP
   E21F 17/02 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
E21F1/00 Z
E21F17/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037017
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】中原 健吾
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で左右側面方向の揺れを抑制できるジェットファンを提供する。
【解決手段】ジェットファン1は、筒状ケーシング2の軸方向Xに沿って送風するものであって、吊下部20と、揺れ抑制部10と、を備える。吊下部20は、軸方向Xにおける中間部4とトンネルの上部3とを連結する。揺れ抑制部10は、ジェットファン1の運転中に生じる揺れであって、軸方向Xと垂直なジェットファン1の左右側面方向Yに生じる揺れを抑制し、方向安定部11と、ターンバックル14とを備える。方向安定部11は、上端部がトンネルの上部3に固定され、その上部から鉛直下方に延びる。ターンバックル14は、ジェットファン1と方向安定部11とを連結し、ジェットファン1及び方向安定部11との連結時に、送風方向Bに対して平行なジェットファン1の軸Aと略平行である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状ケーシングの軸方向に沿って送風するジェットファンであって、
前記軸方向における中間部とトンネルの上部とを連結する吊下部と、
前記ジェットファンの運転中に生じる揺れであって、前記軸方向と垂直な前記ジェットファンの左右側面方向に生じる揺れを抑制する揺れ抑制部と、を備え、
前記揺れ抑制部は、
上端部が前記トンネルの前記上部に固定され前記上部から鉛直下方に延びた方向安定部と、
前記ジェットファンと前記方向安定部とを連結するターンバックルと、を備え、
前記ターンバックルは、
前記ジェットファン及び前記方向安定部との連結時に、送風方向に対して平行な前記ジェットファンの軸と略平行であるジェットファン。
【請求項2】
前記方向安定部は、
前記ジェットファンの前記送風方向における上流側の開口よりもさらに前記上流側に設けられる上流方向安定部と、
前記ジェットファンの前記送風方向における下流側の開口よりもさらに前記下流側に設けられる下流方向安定部と、を備え、
前記ターンバックルは、
前記ジェットファンの上流側と前記上流方向安定部とを連結する上流ターンバックルと、
前記ジェットファンの下流側と前記下流方向安定部とを連結する下流ターンバックルと、を備える、請求項1に記載のジェットファン。
【請求項3】
前記揺れ抑制部は、
前記ジェットファンの外周面における頂部に設けられる頂部接続部を備え、
前記ターンバックルは、
前記頂部接続部との接続時に前記頂部接続部の開口に挿入される棒状の固定具である内方固定具を備え、
前記頂部接続部は、
前記内方固定具を挿入可能な頂部接続開口と、
前記内方固定具が前記頂部接続開口に挿入された状態で前記頂部接続開口の内周に前記内方固定具が移動可能な空間である内方周囲空間と、を備える請求項1に記載のジェットファン。
【請求項4】
前記方向安定部は、
前記上端部が固定される前記トンネルの前記上部から鉛直下方に方向安定開口を備え、
前記ターンバックルは、
前記方向安定開口と接続する外方接続部を備え、
前記外方接続部は、
前記方向安定開口との接続時に前記方向安定開口に挿入される棒状の固定具である外方固定具を備え、
前記方向安定開口は、
前記外方固定具が前記方向安定開口に挿入された状態で前記方向安定開口の内周に前記外方固定具が移動可能な空間である外方周囲空間を備える請求項1に記載のジェットファン。
【請求項5】
前記揺れ抑制部は、
前記ジェットファンの外周面における頂部に設けられる頂部接続部を備え、
前記方向安定部は、
前記上端部が固定される前記トンネルの前記上部から鉛直下方であって、前記頂部接続部に対して水平位置に方向安定開口を備える請求項1に記載のジェットファン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トンネル等に使用されるジェットファンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、道路トンネルの天井に設置され、その噴流による圧力上昇によりトンネル内を換気するジェットファンが知られている。ジェットファンは、トンネル内の気流に対して逆方向に運転することで、トンネル内の気流の方向や風量をコントロールする用途にも使用されている。
【0003】
ここで、従来のジェットファン101の設置方法について、図6を参照しながら説明する。図6(a)は、従来のジェットファン101の吊り下げ状態を正面から見た図であり、図6(b)は、その状態を側面から見た図である。
【0004】
ジェットファン101は、筒状ケーシング102の側面の両側に設けられた側部支持部材122と、トンネルの上部(天井壁)103に配設した側部吊部材121とを、連結具120を介して連結する。また、ジェットファンの先端頂部に設けられた頂部支持部材112と、トンネルの上部103に配設した頂部吊部材111とを、連結具110を介して連結する。頂部支持部材112と頂部吊部材111との連結は、ジェットファン101の側面から見て斜めに行われる。
【0005】
上記構成により、側部部材(側部支持部材122、側部吊部材121)にてジェットファン101の荷重が支えられる。また、ジェットファン101の運転に伴う推力によって生じる、筒状ケーシング102の軸Aに沿った軸方向X(前後方向、縦方向)の揺れが、頂部部材(頂部支持部材112、頂部吊部材111)にて抑制される。
【0006】
しかしながら、側面から見て斜め方向に連結された連結具110は、軸方向Xから見て左右側面方向Y(横方向)から加えられた力に伴う移動を規制できない。よって、ジェットファン101は、運転に伴って左右側面方向Yの揺れが発生する。
【0007】
特許文献1は、このような横方向の揺れ(横揺れ)を抑制するために、筒状ケーシングの軸方向両端部の端部外壁とトンネル天井壁との連結を、ジェットファンの側面から見て斜めで且つ軸方向に見て略V字状又は略逆ハの字状に連結する、ジェットファンの支持構造を開示する。この支持構造により、ジェットファンは、左右側面方向Y(横方向)から加えられた力に伴う移動(横揺れ)を規制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3909221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載のジェットファンの支持構造は、筒状ケーシングの軸方向両端部の端部外壁とトンネル天井壁との連結に必要な連結具が多く必要であり、構造が大掛かりなものとなっていた。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、簡易な構造で左右側面方向の揺れを抑制できるジェットファンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本開示のある態様のジェットファンは、筒状ケーシングの軸方向に沿って送風するものであって、吊下部と、揺れ抑制部と、を備える。吊下部は、軸方向における中間部とトンネルの上部とを連結する。揺れ抑制部は、ジェットファンの運転中に生じる揺れであって、軸方向と垂直なジェットファンの左右側面方向に生じる揺れを抑制し、方向安定部と、ターンバックルとを備える。方向安定部は、上端部がトンネルの上部に固定され、その上部から鉛直下方に延びる。ターンバックルは、ジェットファンと方向安定部とを連結し、ジェットファン及び方向安定部との連結時に、送風方向に対して平行なジェットファンの軸と略平行である。
【発明の効果】
【0012】
本開示のジェットファンによれば、簡易な構造で左右側面方向の揺れを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るジェットファンの吊り下げ状態を正面から見た図である。
図2図2は、同ジェットファンの吊り下げ状態を側面から見た図である。
図3図3は、同ジェットファンの上流側に設けられた揺れ抑制部の概略断面図である。
図4図4は、同ジェットファンの揺れ抑制部に設けられたターンバックルの形状を示す図である。
図5図5(a)は、図3に示すVa部分を拡大した拡大図であり、図5(b)は、図3に示すVb部分を拡大した拡大図である。
図6図6(a)は、従来のジェットファンの吊り下げ状態を正面から見た図であり、図6(b)は、その状態を側面から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。よって、以下の実施の形態で示される、数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本発明を限定する主旨ではない。従って、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0015】
まず、本発明の一実施形態に係るジェットファン1の概略構成について、図1図3を参照して説明する。図1は、ジェットファン1の吊り下げ状態を正面から見た図であり、図2は、その状態を側面から見た図である。図3は、ジェットファン1の上流側に設けられた揺れ抑制部10の概略断面図である。
【0016】
ジェットファン1は、道路トンネル等のトンネルの上部(天井壁)3に吊下げられた状態で設置され、筒状ケーシング2と、筒状ケーシング2内部に設けられたファン(図示せず)及びそのファンを回転する電動機(図示せず)とにより構成される。
【0017】
ジェットファン1は、電動機によりファンを回転させることで、図2に示す筒状ケーシング2の軸Aに沿った方向である軸方向X(以下、単に「軸方向X」と言う。)に沿って送風する。ジェットファン1は、電動機の回転方向を切り替えることで、軸方向Xに沿った方向B(図2において紙面左側から右側に向く方向)と、方向Bとは逆方向(図2において紙面右側から左側に向く方向)との両方向に、送風方向を変更可能である。
【0018】
ジェットファン1は、筒状ケーシング2の両端において軸方向Xと垂直に設けられた開口から噴出される噴流による圧力上昇によって、トンネル内を換気する。また、ジェットファン1は、従来のジェットファン101と同様に、トンネル内の気流に対して逆方向に運転することで、トンネル内の気流の方向や風量をコントロールすることも可能である。
【0019】
なお、以下の説明では、ジェットファン1が方向Bに送風することを想定して説明し、図2の紙面左側を上流側、図2の紙面右側を下流側とする。また、ジェットファン1の上流側の開口がある面をジェットファン1の正面とする。また、以下の説明において、方向Bをジェットファン1の「送風方向B」とする。
【0020】
ジェットファン1は、図2に示す通り、吊下部20と、揺れ抑制部10とを有している。ジェットファン1は、吊下部20及び揺れ抑制部10により、トンネルの上部3に支持される。
【0021】
吊下部20は、筒状ケーシング2の軸方向Xにおける中間部4と、トンネルの上部3とを連結するもので、少なくとも側部支持部材22と、側部吊部材21と、側部連結具23とにより構成される。
【0022】
側部支持部材22は、筒状ケーシング2の中間部4において、軸方向Xに対して右側にある筒状ケーシング2の右側面と、軸方向Xに対して左側にある左側面とのそれぞれに、軸方向Xに並んで2か所ずつ、合計4か所設けられている。
【0023】
側部吊部材21は、トンネルの上部3に4か所設けられており、4つある側部吊部材21と側部支持部材22とが一対一に対応する。側部連結具23は、1の側部支持部材22と、その1の側部支持部材22に対応する側部吊部材21とを連結する。
【0024】
吊下部20は、4つある側部吊部材21と側部支持部材22との対を、4つの側部連結具23を用いてそれぞれ連結している。このとき、吊下部20は、ジェットファン1を軸方向Xに見て手前側(図2の紙面左側)に設けられた側部吊部材21と側部支持部材22との対と、奥側(図2の紙面右側)に設けられた側部吊部材21と側部支持部材22との対とは、それぞれ逆ハの字となるように連結される。
【0025】
また、吊下部20は、ジェットファン1を軸方向Xと垂直な左右側面方向Yから見て、手前側(ジェットファン1の右側面側)に設けられた側部吊部材21と側部支持部材22との対と、奥側(ジェットファン1の左側面側)に設けられた側部吊部材21と側部支持部材22との対とは、それぞれ逆ハの字となるように連結される。
【0026】
ジェットファン1は、このように構成された吊下部20により、ジェットファン1の荷重が支えられる。
【0027】
揺れ抑制部10は、ジェットファン1の運転中に生じる揺れであって、軸方向Xと垂直なジェットファン1の左右側面方向Yに生じる揺れ(横揺れ)を抑制するものである。揺れ抑制部10は、図2及び図3に示す通り、方向安定部11と、ターンバックル14と、頂部接続部15とを有している。
【0028】
方向安定部11は、ジェットファン1の送風方向Bにおける上流側に設けられた上流方向安定部11aと、ジェットファン1の送風方向Bにおける下流側に設けられた下流方向安定部11bとを有している。
【0029】
上流方向安定部11aは、上端部が、トンネルの上部3に設けられた上流頂部吊部材12aと接続されることでトンネルの上部3に固定される。そして、上流方向安定部11aは、上端部が固定されるトンネルの上部3から鉛直下方に延びるようにして設けられる。
【0030】
また、上流方向安定部11aは、ジェットファン1の送風方向Bにおける上流側の開口よりもさらに上流側に設けられる。これにより、ジェットファン1に鉛直方向の揺れが生じたとしても、ジェットファン1が鉛直下方に延びる上流方向安定部11aと接触することを抑制できる。また、作業者が、上流方向安定部11aのトンネルの上部3への取り付けや交換を行う場合に、ジェットファン1が邪魔とならずに、その作業を容易に行うことができる。
【0031】
下流方向安定部11bは、上端部が、トンネルの上部3に設けられた下流頂部吊部材12bと接続されることでトンネルの上部3に固定される。そして、下流方向安定部11bは、上端部が固定されるトンネルの上部3から鉛直下方に延びるようにして設けられる。
【0032】
また、下流方向安定部11bは、ジェットファン1の送風方向Bにおける下流側の開口よりもさらに下流側に設けられる。これにより、ジェットファン1に鉛直方向の揺れが生じたとしても、ジェットファン1が鉛直下方に延びる下流方向安定部11bと接触することを抑制できる。また、作業者が、下流方向安定部11bのトンネルの上部3への取り付けや交換を行う場合に、ジェットファン1が邪魔とならずに、その作業を容易に行うことができる。
【0033】
上流方向安定部11a及び下流方向安定部11bは、それぞれ、上端部が固定されるトンネルの上部3から鉛直下方に延びた下部に、方向安定開口13(上流方向安定開口13a、下流方向安定開口13b)が設けられている。
【0034】
ターンバックル14は、ジェットファン1と方向安定部11とを連結する連結具であり、上流ターンバックル14aと下流ターンバックル14bとを有している。上流ターンバックル14aは、ジェットファン1の上流側と上流方向安定部11aとを連結する。下流ターンバックル14bは、ジェットファン1の下流側と下流方向安定部11bとを連結する。
【0035】
ここで、図4を参照して、ターンバックル14(上流ターンバックル14a、下流ターンバックル14b)の詳細構成について説明する。図4は、ターンバックル14の形状を示す図である。図4において、ターンバックル14の中央部より左側は、ターンバックル14の正面を示した図であり、右側は、左側の正面から90度回転させたターンバックル14の平面を示した図である。なお、ターンバックル14として設けられる上流ターンバックル14aと下流ターンバックル14bとは、同一の形状を有しているので、ここではターンバックル14としてまとめて説明する。
【0036】
ターンバックル14は、内部に雌ねじが切られた筒状のパイプ部38に対し、一端から第一ジョーボルト31が螺合され、他端から第二ジョーボルト32が螺合されて組み立てられる。第一ジョーボルト31及び第二ジョーボルト32は、同一の形状をしており、それぞれ、パイプ部38と螺合する側と反対側に、シャックル状の第一ジョー33又は第二ジョー34が設けられている。
【0037】
第一ジョー33は、ジェットファン1の外周面における頂部に設けられた後述の頂部接続部15と接続する。第一ジョー33は、パイプ部38と反対側にあるU字金具の2つの先端部にそれぞれ開口が設けられている。そのU字金具のU字部に頂部接続部15が挿入される。そして、第一ジョー33の2つの開口と頂部接続部15の開口とに、棒状の固定具(例えばピン付きボルト)である内方固定具33aを挿入してナットで固定することで、第一ジョー33とジェットファン1の頂部接続部15とが接続される。
【0038】
第二ジョー34は、方向安定部11に設けられた方向安定開口13と接続する。第二ジョー34にも、第一ジョー33と同様に、パイプ部38と反対側にあるU字金具の2つの先端部にそれぞれ開口が設けられている。そのU字金具のU字部に方向安定部11が挿入される。そして、第二ジョー34の2つの開口と方向安定部11の方向安定開口13とに、棒状の固定具(例えばピン付きボルト)である外方固定具34aを挿入してナットで固定することで、第二ジョー34と方向安定部11とが接続される。なお、第二ジョー34が、本発明の外方接続部に該当する。
【0039】
以上のようにして、ターンバックル14は、ジェットファン1と方向安定部11とを連結する。このとき、第一ジョーボルト31及び/又は第二ジョーボルト32とパイプ部38との螺合の長さを調整することで、ターンバックル14は、ジェットファン1と方向安定部11との距離に合わせて、ターンバックル14の長さを調整できる。
【0040】
また、上流ターンバックル14aは、図2及び図3に示す通り、ジェットファン1及び上流方向安定部11aとの連結時に、送風方向Bに対して平行なジェットファン1の筒状ケーシング2の軸Aと略平行となるように、ジェットファン1が構成される。
【0041】
また、下流ターンバックル14bも、ジェットファン1及び下流方向安定部11bとの連結時に、送風方向Bに対して平行なジェットファン1の筒状ケーシング2の軸Aと略平行となるように、ジェットファン1が構成される。
【0042】
頂部接続部15は、ジェットファン1の筒状ケーシング2の外周面における頂部に設けられ、ジェットファン1と方向安定部11とを連結するターンバックル14の第一ジョー33に接続される部位である。頂部接続部15は、上流頂部接続部15aと下流頂部接続部15bとを有する。上流頂部接続部15aは、ジェットファン1の上流側の開口付近に設けられ、上流ターンバックル14aの第一ジョー33と接続される。下流頂部接続部15bは、ジェットファン1の下流側の開口付近に設けられ、下流ターンバックル14bの第一ジョー33と接続される。
【0043】
ここで、図5(a)を参照して、頂部接続部15の詳細構成、及び、頂部接続部15とターンバックル14との接続状態について説明する。図5(a)は、図3に示すVa部分(上流頂部接続部15a付近)を拡大した拡大図である。
【0044】
なお、上流頂部接続部15aと下流頂部接続部15bとは同一の構成を有し、また、上流頂部接続部15aと上流ターンバックル14aとの接続状態、及び、下流頂部接続部15bと下流ターンバックル14bとの接続状態も同様である。よって、ここでは、上流頂部接続部15a及び下流頂部接続部15bをまとめて頂部接続部15とし、上流ターンバックル14a及び下流ターンバックル14bをまとめてターンバックル14として説明する。
【0045】
頂部接続部15は、頂部接続開口35と、内方周囲空間36とを有している。頂部接続開口35は、ターンバックル14の第一ジョー33を構成する内方固定具33aを挿入可能な、円形状の開口を備えた部位である。ジェットファン1は、ターンバックル14の第一ジョー33の先端部に設けられた2つの開口に挟まれた位置に頂部接続開口35を配置して、内方固定具33aを挿入して固定することで、頂部接続部15とターンバックル14とが接続される。
【0046】
内方周囲空間36は、ターンバックル14の内方固定具33aが頂部接続開口35に挿入された状態で、頂部接続開口35の内周に内方固定具33aが移動可能な空間である。内方周囲空間36は、ジェットファン1が設置されるトンネルの設計値からのずれを吸収するための「遊び」として設けられたものである。
【0047】
即ち、実際のトンネルは、設計値に対して大きさに多少のずれが生じていたり、トンネルの内壁を構成するコンクリートに凹凸が生じていたりする。これにより、トンネルの設計図に基づいてジェットファン1の揺れ抑制部10を含む支持構造を設計したとしても、設計通りに取り付けられない場合が多々生じる。
【0048】
頂部接続部15は、内方周囲空間36を有することにより、そのずれが吸収され、ターンバックル14と確実に接続できる。ただし、ジェットファン1に左右側面方向Yの力が加わると、内方固定具33aは内方周囲空間36内を移動できるので、ジェットファン1は左右側面方向Yに揺れを発生させるおそれがある。
【0049】
しかしながら、ジェットファン1は、頂部接続部15に内方周囲空間36を設けたとしても、揺れ抑制部10の構成によって、後述する理由により左右側面方向Yの揺れを抑制できる。
【0050】
次に、図5(b)を参照して、方向安定開口13の詳細構成、及び、方向安定開口13とターンバックル14との接続状態について説明する。図5(b)は、図3に示すVb部分(上流方向安定開口13a付近)を拡大した拡大図である。
【0051】
なお、上流方向安定開口13aと下流方向安定開口13bとは同一の構成を有し、また、上流方向安定開口13aと上流ターンバックル14aとの接続状態、及び、下流方向安定開口13bと下流ターンバックル14bとの接続状態も同様である。よって、ここでは、上流方向安定開口13a及び下流方向安定開口13bをまとめて方向安定開口13とし、上流ターンバックル14a及び下流ターンバックル14bをまとめてターンバックル14として説明する。
【0052】
ジェットファン1は、ターンバックル14の第二ジョー34の先端部に設けられた2つの開口に挟まれた位置に、方向安定開口13を配置して、外方固定具34aを挿入して固定することで、方向安定部11とターンバックル14とが接続される。
【0053】
ここで、方向安定開口13は、外方周囲空間37を有している。外方周囲空間37は、ターンバックル14の第二ジョー34を構成する外方固定具34aが方向安定開口13に挿入された状態で、方向安定開口13の内周に外方固定具34aが移動可能な空間である。外方周囲空間37は、内方周囲空間36と同様に、ジェットファン1が設置されるトンネルの設計値からのずれを吸収するための「遊び」として設けられたものである。
【0054】
方向安定開口13は、外方周囲空間37を有することにより、取り付けられるトンネルの設計値からのずれが吸収され、ターンバックル14と確実に接続できる。ただし、ジェットファン1に左右側面方向Yの力が加わると、外方固定具34aは外方周囲空間37内を移動できるので、内方周囲空間36の場合と同様に、ジェットファン1は左右側面方向Yに揺れを発生させるおそれがある。
【0055】
しかしながら、ジェットファン1は、方向安定開口13に外方周囲空間37を設けたとしても、揺れ抑制部10の構成によって、後述する理由により左右側面方向Yの揺れを抑制できる。
【0056】
ここで、図2及び図3にも示す通り、方向安定部11の方向安定開口13は、方向安定部11の上端部が固定されるトンネルの上部3から鉛直下方に延びた下部であって、頂部接続部15に対して水平位置に設けられる。これにより、ターンバックル14は、この方向安定開口13と頂部接続部15とに接続することで、ジェットファン1及び方向安定部11の連結時に、送風方向Bに対して平行なジェットファン1の筒状ケーシング2の軸Aと略平行となるようにすることができる。
【0057】
次いで、以上のように構成されたジェットファン1に対し、左右側面方向Yに力が加わった場合の揺れ抑制部10の作用について、図2を参照しながら説明する。
【0058】
揺れ抑制部10のターンバックル14は、第一ジョー33が、ジェットファン1の筒状ケーシング2の外周面における頂部に設けられた頂部接続部15と接続され、第二ジョー34が、方向安定部11の方向安定開口13と接続される。
【0059】
ここで、方向安定部11は、上端部がトンネルの上部3に固定されている。これにより、ジェットファン1に対して左右側面方向Yに力が加わり、左右側面方向Yにジェットファン1の頂部接続部15が移動しようとした場合、外方周囲空間37があるため、その頂部接続部15は、方向安定開口13が支点となって、ターンバックル14を半径とした球面上を移動しようとする。
【0060】
しかしながら、ターンバックル14は、送風方向Bに対して平行なジェットファン1の筒状ケーシング2の軸Aと略平行となるように、ジェットファン1の頂部接続部15と方向安定部11の方向安定開口13とを連結している。これは、ジェットファン1を左右側面方向Yから見た場合の方向安定部11と頂部接続部15との距離が、最も離れた状態にあると言うことができる。
【0061】
そしてこの状態は、ジェットファン1の上流側にある揺れ抑制部10も、下流側にある揺れ抑制部10も同じである。つまり、ジェットファン1を左右側面方向Yから見た場合の上流方向安定部11aと上流頂部接続部15aとの距離(以下「側面視上流側距離」と言う。)が、最も離れた状態にある。同時に、ジェットファン1を左右側面方向Yから見た場合の下流方向安定部11bと下流頂部接続部15bとの距離(以下「側面視下流側距離」と言う。)が、最も離れた状態にある。
【0062】
このような状態において、例えば、ジェットファン1の上流頂部接続部15aが左右側面方向Yに移動しようとした場合、側面視上流側距離が短くなるように上記球面上を移動することになる。しかしながら、側面視下流側距離が既に最も離れた状態であるため、上流頂部接続部15aが移動することにより短くなる側面視上流側距離の分だけ、側面視下流側距離を伸ばすことができない。加えて、上流頂部接続部15aと下流頂部接続部15bとの距離は固定である。
【0063】
よって、ジェットファン1の上流頂部接続部15aが左右側面方向Yに移動しようとしても、下流ターンバックル14bに引っ張られるため、上流ターンバックル14aの動きが規制されることになる。
【0064】
これは、ジェットファン1の下流頂部接続部15bが左右側面方向Yに移動しようとした場合も同様である。即ち、側面視上流側距離が既に最も離れた状態であるため、下流頂部接続部15bが移動することにより短くなる側面視下流側距離の分だけ、側面視上流側距離を伸ばすことができない。よって、ジェットファン1の下流頂部接続部15bが左右側面方向Yに移動しようとしても、上流ターンバックル14aに引っ張られ、下流頂部接続部15bの動きが規制される。
【0065】
従って、ジェットファン1は、左右側面方向Yの移動が規制され、その位置が安定的に保たれることになり、方向安定部11とターンバックル14とを設けるだけで、簡易な構造で左右側面方向Yの揺れを抑制できる。
【0066】
以上説明したように、本発明の一実施形態に係るジェットファン1によれば、以下の効果を享受する。
【0067】
(1)ジェットファン1は、方向安定部11とターンバックル14とにより構成される揺れ抑制部10を有している。方向安定部11は、その上端部がトンネルの上部3に固定され、その上部3から鉛直下方に延びている。ターンバックル14は、その方向安定部11とジェットファン1とを連結する。このとき、ターンバックル14が、送風方向Bに対して平行なジェットファン1の軸Aと略平行となるように、方向安定部11とジェットファン1とを連結する。これにより、ジェットファン1に対して左右側面方向Yに力が加わったとしても、ターンバックル14の左右側面方向Yの移動が規制される。よって、ジェットファン1は、揺れ抑制部10として、方向安定部11とターンバックル14とを設けるだけで、簡易な構造で左右側面方向Yの揺れを抑制できる。
【0068】
(2)ジェットファン1は、送風方向Bにおける上流側と下流側とのそれぞれに、方向安定部11(上流方向安定部11a、下流方向安定部11b)と、ターンバックル14(上流ターンバックル14a、下流ターンバックル14b)とが設けられている。そして、上流ターンバックル14aによって、ジェットファン1の上流側と上流方向安定部11aとが連結され、下流ターンバックル14bによって、ジェットファン1の下流側と下流方向安定部11bとが連結される。これにより、ジェットファン1は、上流方向安定部11a及び上流ターンバックル14aと、下流方向安定部11b及び下流ターンバックル14bとが相互に作用し合い、ジェットファン1の左右側面方向Yの動きを規制できる。よって、ジェットファン1は、方向安定部11とターンバックル14とをそれぞれ上流側と下流側に設けるだけで、簡易な構造で左右側面方向Yの揺れを抑制できる。
【0069】
(3)ジェットファン1は、上流方向安定部11aが、ジェットファン1の送風方向Bにおける上流側の開口よりもさらに上流側に設けられ、下流方向安定部11bが、ジェットファン1の送風方向Bにおける下流側の開口よりもさらに下流側に設けられている。これにより、ジェットファン1に鉛直方向の揺れが生じたとしても、ジェットファン1が鉛直下方に延びる上流方向安定部11a又は下流方向安定部11bと接触することを抑制できる。また、作業者が、上流方向安定部11a又は下流方向安定部11bのトンネルの上部3への取り付けや交換を行う場合に、ジェットファン1が邪魔とならずに、その作業を容易に行うことができる。
【0070】
(4)揺れ抑制部10は、ジェットファン1の外周面における頂部に頂部接続部15を有しており、ターンバックル14の内方固定具33aを頂部接続部15の開口に挿入することで、ターンバックル14が頂部接続部15と接続される。ここで、頂部接続部15には、内方固定具33aが挿入可能な頂部接続開口35と、内方固定具33aが頂部接続開口35に挿入された状態で、頂部接続開口35の内周に内方固定具33aが移動可能な空間である内方周囲空間36とが設けられている。頂部接続部15は、この内方周囲空間36により、取り付けられるトンネルの設計値からのずれが吸収され、ターンバックル14と確実に接続できる。ただし、ジェットファン1に左右側面方向Yの力が加わると、内方固定具33aは内方周囲空間36内を移動できるので、ジェットファン1は左右側面方向Yに揺れを発生させるおそれがある。しかしながら、ジェットファン1は、頂部接続部15に内方周囲空間36を設けたとしても、(1)に記載した作用効果により、左右側面方向Yの揺れを抑制できる。
【0071】
(5)方向安定部11は、上端部が固定されるトンネルの上部3から鉛直下方に方向安定開口13が設けられ、第二ジョー34によって、ターンバックル14は方向安定開口13と接続される。ここで、ターンバックル14の第二ジョー34は、方向安定開口13との接続時に方向安定開口13に挿入される外方固定具34aを有している。一方、方向安定開口13には外方周囲空間37が設けられ、外方固定具34aが方向安定開口13に挿入された状態で、方向安定開口13の内周に外方固定具34aが移動可能に構成される。この外方周囲空間37により、取り付けられるトンネルの設計値からのずれが吸収され、方向安定開口13とターンバックル14とを確実に接続できる。ただし、ジェットファン1に左右側面方向Yの力が加わると、外方固定具34aは外方周囲空間37内を移動できるので、ジェットファン1は左右側面方向Yに揺れを発生させるおそれがある。しかしながら、ジェットファン1は、方向安定開口13に外方周囲空間37を設けたとしても、(1)に記載した作用効果により、左右側面方向Yの揺れを抑制できる。
【0072】
(6)方向安定部11の方向安定開口13は、方向安定部11の上端部が固定されるトンネルの上部3から鉛直下方であって、頂部接続部15に対して水平位置に設けられている。これにより、ターンバックル14は、送風方向Bに対して平行なジェットファン1の軸Aと略平行となるように、方向安定部11とジェットファン1とを連結できる。よって、ジェットファン1は、このターンバックル14と方向安定部11との作用により、簡易な構造で左右側面方向Yの揺れを抑制できる。
【0073】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、各実施形態は、以下に説明する変形例も含めて、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部又は複数部分を、その実施形態に追加しあるいはその実施形態の構成の一部又は複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。また、上記各実施形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
【0074】
上記実施形態は、上流方向安定部11aが、ジェットファン1の送風方向Bにおける上流側の開口よりもさらに上流側に設けられ、下流方向安定部11bが、ジェットファン1の送風方向Bにおける下流側の開口よりもさらに下流側に設けられた。これに対し、上流方向安定部11aが、ジェットファン1の送風方向Bにおける上流側の開口よりも下流側に設けられ、下流方向安定部11bが、ジェットファン1の送風方向Bにおける下流側の開口よりも上流側に設けられてもよい。上流ターンバックル14a及び下流ターンバックル14bが、ジェットファン1と上流方向安定部11a又は下流方向安定部11bとの連結時に、送風方向Bに対して平行なジェットファン1の軸Aと略平行であれば、上記実施形態の(1)に記載した作用効果を得ることができる。ただしこの場合、ジェットファン1が鉛直方向に揺れが生じても上流方向安定部11a及び下流方向安定部11bと衝突しないように構成するのが望ましい。
【0075】
上記実施形態は、ジェットファン1の送風方向Bにおける上流側と下流側とで、同一の構成を持った揺れ抑制部10を設ける場合について説明した。これに対し、ジェットファン1は、いずれか一方の側のみ、方向安定部11とターンバックル14とによって揺れ抑制部10を構成し、他方の側は異なる構成によって、左右側面方向Yの揺れを抑制する構成を取ってもよい。例えば、他方の側は、所謂「遊び」を無くし、トンネルの上部3に対して移動できないように完全に固定されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本開示は、トンネル等に使用されるジェットファンに用いることが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 ジェットファン
2 筒状ケーシング
3 上部
4 中間部
10 抑制部
11 方向安定部
11a 上流方向安定部
11b 下流方向安定部
12a 上流頂部吊部材
12b 下流頂部吊部材
13 方向安定開口
13a 上流方向安定開口
13b 下流方向安定開口
14 ターンバックル
14a 上流ターンバックル
14b 下流ターンバックル
15 頂部接続部
15a 上流頂部接続部
15b 下流頂部接続部
20 吊下部
21 側部吊部材
22 側部支持部材
23 側部連結具
31 第一ジョーボルト
32 第二ジョーボルト
33 第一ジョー
33a 内方固定具
34 第二ジョー
34a 外方固定具
35 頂部接続開口
36 内方周囲空間
37 外方周囲空間
38 パイプ部
101 ジェットファン
102 筒状ケーシング
103 上部
110 連結具
111 頂部吊部材
112 頂部支持部材
120 連結具
121 側部吊部材
122 側部支持部材
A 軸
B 送風方向
X 軸方向
Y 左右側面方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6