(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128175
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】静電潜像現像用トナー及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/093 20060101AFI20240913BHJP
G03G 9/087 20060101ALI20240913BHJP
G03G 8/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G03G9/093
G03G9/087 325
G03G9/087 331
G03G8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037020
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮島 謙史
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 奈津紀
(72)【発明者】
【氏名】門馬 実乃里
(72)【発明者】
【氏名】宮下 真帆
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500CA03
2H500CA06
2H500CA16
2H500EA41B
2H500EA42B
2H500EA60A
2H500FA20
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、後加工によるニスの塗布性が良好で、ニスの密着性が得られ、かつ、感光体のクリーニング不良を抑制することができる静電潜像現像用トナー及び画像形成方法を提供することである。
【解決手段】本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂を含有するコア・シェル型のトナー母体粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、コア部の前記結着樹脂の主鎖が、ビニル系モノマーの重合体であり、かつ、側鎖にシリコーン部位を有し、シェル部の前記結着樹脂が、ポリエステルを含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂を含有するコア・シェル型のトナー母体粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
コア部の前記結着樹脂の主鎖が、ビニル系モノマーの重合体であり、かつ、側鎖にシリコーン部位を有し、
シェル部の前記結着樹脂が、ポリエステルを含有することを特徴とする静電潜像現像用トナー。
【請求項2】
前記シリコーン部位を有するモノマー由来の構造部分が、前記コア部及び前記シェル部の前記結着樹脂全体に対して、2~10質量%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項3】
前記コア部の前記結着樹脂が、炭素数12~22までのアルキル基を側鎖に有するモノマー由来の構造部分を含有することを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項4】
前記アルキル基を側鎖に有するモノマー由来の構造部分が、前記コア部及び前記シェル部の前記結着樹脂全体に対して、5~20質量%の範囲内であることを特徴とする請求項3に記載の静電潜像現像用トナー。
【請求項5】
静電潜像現像用トナーを用いた画像形成方法であって、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の前記静電潜像現像用トナーを、記録媒体上に定着した後、後加工として前記記録媒体上の少なくとも一部をニスでコートすることを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電潜像現像用トナー及び画像形成方法に関する。また、本発明は、特に、後加工によるニスの塗布性が良好で、ニスの密着性が得られ、かつ、感光体のクリーニング不良を抑制できる静電潜像現像用トナー等に関する。
【背景技術】
【0002】
トナー画像形成後の後加工として、ニスなどによるコートを行う場合がある。この場合に、耐ホットオフセット性を向上させるために、トナーに含有されているワックスが原因となり、ニスがはじいてしまう問題がある。そのため、定着温度を調整することにより、トナー画像表面のワックス量を制御することが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、前記の方法では装置使用中の定着温度の振れを考慮すると、耐ホットオフセット性及びトナー画像へのニス塗布性の両立が十分ではない。
そこで、トナー中のワックスを用いずトナー結着樹脂中にシリコーン部位を導入することで定着性と耐ホットオフセット性を両立する手法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
この手法は、ポリエステル主鎖にシリコーン部位を側鎖として導入するものである。
【0004】
しかしながら、主鎖が極性の高いポリエステルであるため、側鎖の疎水性の高いシリコーン部位は微視的に相分離状態になっていると考えられる。そのために、定着時の画像表面にシリコーン部位リッチな部分が局在する。結果として、定着後のトナー画像に微視的にシリコーン部位リッチな部分とポリエスエルリッチな部分が存在することになる。そして、この画像にニスを塗布すると、シリコーンリッチな部分で微視的にニスの濡れ性が悪化し、ニスとトナー画像との密着性悪化が起こる。
【0005】
また、外添剤であるシリカ粒子は、静電的な力によりトナー母体粒子に付着している。しかし、現像機内中でトナー母体粒子表面にシリコーン部位が露出していると、シリカ粒子とトナー母体粒子との仕事関数が近くなり、十分な静電的付着力が得られなくなる。そのため、母体粒子から外添剤が脱離し、感光体ドラムのクリーニング不良が起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-36825号公報
【特許文献2】特開2020-86033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、後加工によるニスの塗布性が良好で、ニスの密着性が得られ、かつ、感光体のクリーニング不良を抑制できる静電潜像現像用トナー及び画像形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、コア部の結着樹脂と、シェル部の結着樹脂を特定の樹脂にすることの重要性を見いだした。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0009】
1.少なくとも結着樹脂を含有するコア・シェル型のトナー母体粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、
コア部の前記結着樹脂の主鎖が、ビニル系モノマーの重合体であり、かつ、側鎖にシリコーン部位を有し、
シェル部の前記結着樹脂が、ポリエステルを含有することを特徴とする静電潜像現像用トナー。
【0010】
2.前記シリコーン部位を有するモノマー由来の構造部分が、前記コア部及び前記シェル部の前記結着樹脂全体に対して、2~10質量%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の静電潜像現像用トナー。
【0011】
3.前記コア部の前記結着樹脂が、炭素数12~22までのアルキル基を側鎖に有するモノマー由来の構造部分を含有することを特徴とする第1項に記載の静電潜像現像用トナー。
【0012】
4.前記アルキル基を側鎖に有するモノマー由来の構造部分が、前記コア部及び前記シェル部の前記結着樹脂全体に対して、5~20質量%の範囲内であることを特徴とする第3項に記載の静電潜像現像用トナー。
【0013】
5.静電潜像現像用トナーを用いた画像形成方法であって、
第1項から第4項までのいずれか一項に記載の前記静電潜像現像用トナーを、記録媒体上に定着した後、後加工として表面加工装置により前記記録材上の少なくとも一部をニスでコートすることを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記手段により、後加工によるニスの塗布性が良好で、ニスの密着性が得られ、かつ、感光体のクリーニング不良を抑制できる静電潜像現像用トナー及び画像形成方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0015】
本発明のトナーは、コア部の結着樹脂が、ビニル系モノマーの重合体であり、かつ、側鎖にシリコーン部位を有し、シェル部の前記結着樹脂が、ポリエステルを含有する。
すなわち、コア部は、結着樹脂の主鎖が極性の高いポリエステルと比較して、極性の低いスチレン・アクリル樹脂が主鎖である。
そのため、主鎖のスチレン・アクリル樹脂と、側鎖のシリコーン部位とが微視的に局在することを抑制できる。よって、定着時の画像表面にシリコーン部位のリッチな部分が局在することがなくなり、ニスの濡れ性の局所的な悪化が起こらず、良好な画像とニスの密着性が得られる。
また、シリコーン部位を前記コア部に導入し、シェル部で被覆する。これによって、トナー母体粒子の表面近傍にシリコーン部位が露出することを抑えられる。その結果、外添剤粒子(例えば、シリカ粒子)と、トナー母体粒子表面に十分な静電的付着力が働き、外添剤粒子の遊離が発生しづらくなる。そのために、遊離した外添剤粒子による感光体ドラムのクリーニング不良が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る画像形成装置の構造を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂を含有するコア・シェル型のトナー母体粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、コア部の前記結着樹脂の主鎖が、ビニル系モノマーの重合体であり、かつ、側鎖にシリコーン部位を有し、シェル部の前記結着樹脂が、ポリエステルを含有することを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0018】
本発明の実施態様としては、前記シリコーン部位を有するモノマー由来の構造部分が、前記コア部及びシェル部の前記結着樹脂全体に対して、2~10質量%の範囲内であることが好ましい。これにより、スチレン・アクリル樹脂と、シリコーン部位とが微視的に局在することをより抑制できる。その結果、ニスの塗布性及びニスの密着性がより優れる。また、クリーニング性も良好となる。
【0019】
前記コア部の前記結着樹脂が、炭素数12~22までのアルキル基を側鎖に有するモノマー由来の構造部分を含有すること好ましい。これにより、前記コア部の前記結着樹脂の極性がシリコーン部位と近づく。そのため、シリコーン部位の局在が抑えられる。
【0020】
前記アルキル基を側鎖に有するモノマー由来の構造部分が、前記コア部及びシェル部の前記結着樹脂全体に対して、5~20質量%の範囲内であることが好ましい。これにより、前記シリコーン部位の局在がより抑制できる。
【0021】
本発明の画像形成方法は、静電潜像現像用トナーを用いた画像形成方法であって、前記静電潜像現像用トナーを、記録媒体上に定着した後、後加工として表面加工装置により前記記録材上の少なくとも一部をニスでコートすることを特徴とする。
これにより、ニスの塗布性及びニスの密着性に優れた画像を形成することができる。また、感光体のクリーニング不良も防止できる。
【0022】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0023】
[1]静電潜像現像用トナー
本発明の静電潜像現像用トナーは、少なくとも結着樹脂を含有するコア・シェル型のトナー母体粒子を含む静電潜像現像用トナーであって、コア部の前記結着樹脂の主鎖が、ビニル系モノマーの重合体であり、かつ、側鎖にシリコーン部位を有し、シェル部の前記結着樹脂が、ポリエステルを含有することを特徴とする。
【0024】
以下、本発明の静電潜像現像用トナーを、単に「トナー」ともいう。
本発明のトナーは、トナー母体粒子と、トナー母体粒子表面に配置される外添剤とを備えるトナー粒子を含む。
本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。本発明に係る「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂を含有するものである。その他必要に応じて、トナー母体粒子は、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、トナー粒子の集合体のことをいう。
【0025】
本発明では、前記トナー母体粒子を、コア・シェル構造とすることにより、コア部とシェル部との間に界面が存在する。そのため、非相溶度が高い場合は、トナー帯電時に発生した電荷が効率的にトラップされるために電荷漏洩を防ぐことができ、相溶度を高くすることで、電荷漏洩度合いを制御できる。
なお、シェル部は、コア粒子を完全に被覆するものに限られず、一部、コア粒子の表面が露出されていてもよい。コア・シェル構造は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や走査型プローブ顕微鏡(SPM)等の公知の手段を用いて、トナーの断面の構造を観察することによって確認できる。
【0026】
また、シェル部の含有量は、トナー母体粒子全体に対して、5~50質量%の範囲内であることが好ましく、10~30%の範囲内がより好ましい。シェル部の含有量が、5~50質量%の範囲内であると、トナー母体粒子の表面にシリコーン部位が露出することを抑制できる。その結果、外添剤粒子の遊離を抑制でき、感光体のクリーニング不良を抑制できる。
【0027】
前記コア部を構成する結着樹脂は、主鎖がビニル系モノマーの重合体であり、かつ、側鎖にシリコーン部位を有する。すなわち、前記結着樹脂は、側鎖にシリコーン部位を有するビニル樹脂を含有する。側鎖にシリコーン部位を有するビニル樹脂は、非晶性樹脂であることが好ましい。
前記シェル部を構成する結着樹脂としては、ポリエステルを含有する。当該ポリエステルは、結晶性ポリエステルであっても非晶性ポリエステルであってもよい。特に、非晶性ポリエステルであることが帯電性の点で好ましい。
【0028】
本発明において、「結晶性樹脂」とは、示差走査熱量測定(DSC:Differential scanning calorimetry)により得られる吸熱曲線において、融点、すなわち昇温時に明確な吸熱ピークを有する樹脂をいう。「明確な吸熱ピーク」とは、10℃/minの昇温速度で昇温したときの吸熱曲線において半値幅が15℃以内のピークをいう。一方、「非晶性樹脂」とは、上記と同様の示差走査熱量測定を行った際に得られる吸熱曲線において、ガラス転移が生じたことを示すベースラインのカーブは見られるが、上述した明確な吸熱ピークが見られない樹脂のことをいう。
【0029】
さらに、本発明に係るトナー母体粒子は、その他必要に応じて、着色剤、離型剤(ワックス)、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。
【0030】
<コア部の結着樹脂>
コア部の結着樹脂は、当該結着樹脂の主鎖(又は主骨格)が、ビニル系モノマーの重合体であり、かつ、側鎖にシリコーン部位を有する。すなわち、前記コア部の結着樹脂は、側鎖にシリコーン部位を有するビニル樹脂である。
【0031】
前記側鎖にシリコーン部位を有するビニル樹脂は、少なくともビニル系モノマーと、シリコーン(メタ)アクリレートモノマーを用いた重合により得られる樹脂である。
また、前記側鎖にシリコーン部位を有するビニル樹脂は、前記ビニル系モノマー及びシリコーン(メタ)アクリレートモノマーに加えて、アルキル基を側鎖に有するモノマーを用いた重合により得られる樹脂であることが好ましい。
【0032】
本発明において、「(メタ)アクリル」との記載は、メタクリル及び/又はアクリルを表す。「(メタ)アクリロイル」との記載は、メタクリロイル及び/又はアクリロイルを表す。「(メタ)アクリレート」との記載は、メタクリレート及び/又はアクリレートを表す。
なお、以下の説明において、「単量体」と「モノマー」は同じ意味である。
【0033】
前記ビニル樹脂として、具体的には、アクリル樹脂、スチレン・アクリル共重合体樹脂等が挙げられる。中でも、非晶性のビニル樹脂としては、前記ビニル系モノマーであるスチレン系モノマーと、アクリル系モノマーが重合したスチレン・アクリル系樹脂であることが好ましい。これにより、フィルミングの発生をより確実に抑制できるという効果が得られる。
【0034】
(i)ビニル系モノマー
本発明に係る側鎖にシリコーン部位を有するビニル樹脂を構成する、前記ビニル系モノマーとしては、芳香族ビニルモノマー、多官官能ビニル系モノマー又はその他のビニル系単モノマー等が挙げられる。
【0035】
(芳香族系ビニルモノマー)
芳香族系ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロロスチレン、p-エチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-tert-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、3,4-ジクロロスチレン等、及びその誘導体が挙げられる。これらの芳香族ビニル系モノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
(多官能ビニル系モノマー)
また、前記ビニル系モノマーとして、下記の多官能ビニル系モノマーを使用しても良い。多官能ビニルモノマーとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のジアクリレート、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の三級以上のアルコールのジメタクリレート及びトリメタクリレートあるいはジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0037】
(その他のビニル系モノマー)
さらに、前記ビニル系モノマーとして、下記のその他のビニル系モノマーも使用できる。
当該その他のビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、ビニル酢酸等の酸単量体、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブチレン塩化ビニル、N-ビニルピロリドン、ブタジエン等が挙げられる。
【0038】
(ii)アルキル基を側鎖に有するモノマー
前記アルキル基を側鎖に有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを使用することが好ましい。
前記アルキル基を側鎖に有するモノマーは、炭素数が12から22までのアルキル基を側鎖に有するモノマーであることが好ましい。
「炭素数が12から22までのアルキル基」とは、(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが有するアルキル基の炭素数である。複数の(メタ)アクリル酸エステル系モノマーを用いる場合には、モル比と各(メタ)アクリル酸エステル系モノマーが有するアルキル基の炭素数をかけたものの合計をいう。
具体的には、炭素数12のモノマーAを1molと、炭素数16のモノマーBを9mol用いる場合は、以下の式により炭素数を算出できる。
12×1/10+16×9/10=15.6(炭素数)
【0039】
((メタ)アクリル酸エステル系モノマー)
(メタ)アクリル酸エステル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸-2-エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸-2-エチルヘキシル、β-ヒドロキシアクリル酸エチル、γ-アミノアクリル酸プロピル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸エステル系モノマーは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
(iii)シリコーン(メタ)アクリレートモノマー
前記シリコーン(メタ)アクリレートモノマーは、主鎖にポリシロキサン結合を有し、その末端及び/又は側鎖に(メタ)アクリル酸を付加した化合物とすることができる。
シリコーン(メタ)アクリレートモノマーの原料となるシリコーンは、公知の1官能(単官能)、2官能、3官能又は4官能のシラン化合物(例えば、アルコキシシラン等)が任意の組み合わせで重合したオルガノポリシロキサンとすることができる。特に、前記シリコーンは単官能であることが、側鎖の動きが妨げられないため好ましい。
【0041】
前記シリコーン(メタ)アクリレートモノマーの具体的構造としては、以下のものが挙げられる。
CHR=CHCO2C2H4Si(OCH3)3
CHR=C(CH3)CO2C3H6Si(OCH3)3
CHR=C(CH3)CO2C2H4Si(OC2H5)3
CHR=CHCO2C3H6Si(OCH3)3
CHR=CHCO2C2H4Si(OC2H5)3
CHR=CHCO2C4H8Si(OCH3)3
CHR=C(CH3)CO2C4H8Si(OCH3)3
CHR=C(CH3)CO2C4H8Si(OC2H5)3
CHR=C(CH3)CO2C4H8Si(CH3)2(OC2H5)
CHR=CHCO2C2H4)2Si(CH3)(OC2H5)
CHR=CHCO2C3H6Si(OSi(CH3)3)3
なお、「R」はH又はCH3である。
【0042】
また、シリコーン(メタ)アクリレートの市販品としては、TEGORad2100、TEGORad2500(商品名、いずれもEvonik社製)が挙げられる。その他、KR-418、KP-423、(商品名、いずれも信越化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0043】
前記アルキル基を側鎖に有するモノマー由来の構造部分は、前記コア部及び前記シェル部の前記結着樹脂全体に対して、5~20質量%の範囲内であることが好ましい。
また、当該アルキル基を側鎖に有するモノマー由来の構造部分は、前記コア部の結着樹脂に対して、5~40質量%の範囲内であることが好ましい。
【0044】
前記シリコーン部位を有するモノマー由来の構造部分は、前記コア部及び前記シェル部の前記結着樹脂全体に対して、2~10質量%の範囲内であることが好ましい。
また、当該シリコーン部位を有するモノマー由来の構造部分は、前記コア部の結着樹脂に対して、2~15質量%の範囲内であることが好ましい。
【0045】
<シェル部の結着樹脂>
シェル部の結着樹脂は、ポリエステルを含有する。
【0046】
シェル部の結着樹脂に用いられるポリエステルは、結晶性ポリエステルであっても非晶性ポリエステルであってもよいが、非晶性ポリエステルであることが帯電性の点で好ましい。
【0047】
(結晶性ポリエステル)
前記結晶性ポリエステルとは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)及びその誘導体と、2価以上のアルコール(多価アルコール)及びその誘導体との重縮合反応によって得られる公知のポリエステルのうち、結晶性を示す樹脂である。
【0048】
結晶性ポリエステルを形成するための多価カルボン酸成分とは、1分子中にカルボキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、コハク酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸;及びこれらカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1~3のアルキルエステルなどが挙げられる。結晶性ポリエステルを形成するための多価カルボン酸成分としては、飽和脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
結晶性ポリエステルを形成するための多価アルコール成分とは、1分子中にヒドロキシ基を2個以上含有する化合物である。具体的には、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-へキサンジオール、1,7-へプタンジオール、1,8-オクタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブテンジオールなどの脂肪族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトールなどの3価以上の多価アルコールなどが挙げられる。結晶性ポリエステルを形成するための多価アルコール成分としては、脂肪族ジオールを用いることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
結晶性ポリエステルの製造方法としては、特に制限はなく、上述の多価カルボン酸と多価アルコールとを触媒下で反応させる一般的なポリエステルの重合法を用いて製造することができる。当該製造方法としては、例えば直接重縮合やエステル交換法を、単量体の種類によって使い分けて製造することが好ましい。
【0051】
また、直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸を、前記多価カルボン酸及び/又は多価アルコールと組み合わせて用いることができる。
結晶性ポリエステルを形成するための直鎖脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、5-ヒドロキシペンタン酸、6-ヒドロキシヘキサン酸、7-ヒドロキシペンタン酸、8-ヒドロキシオクタン酸、9-ヒドロキシノナン酸、10-ヒドロキシデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、14-ヒドロキシテトラデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、18-ヒドロキシオクタデカン酸:及びこれらのヒドロキシカルボン酸が環化したラクトン化合物、又は炭素数1~3のアルコールとのアルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
また、結晶性ポリエステルを形成する際に、多価カルボン酸と多価アルコール成分とを用いることで反応を制御することが容易になり、目的の分子量の樹脂を得ることができるため好ましい。
【0053】
結晶性ポリエステルの製造に使用することのできる触媒としては、例えばチタンテトラエトキシド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどのチタン触媒や、ジブチルスズジクロライド、ジブチルスズオキシド、ジフェニルスズオキシドなどのスズ触媒などが挙げられる。
【0054】
上記の多価カルボン酸成分と多価アルコール成分との使用比率は、多価アルコール成分のヒドロキシ基[OH]と多価カルボン酸成分のカルボキシ基[COOH]との当量比[OH]/[COOH]が、好ましくは1.5/1~1/1.5、さらに好ましくは1.2/1~1/1.2の範囲内である。
【0055】
結晶性ポリエステルは、その酸価が5~30mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、より好ましくは10~25mgKOH/g、さらに好ましくは15~25mgKOH/gの範囲内である。この酸価は、1gの試料に含まれる酸の中和に必要な水酸化カリウム(KOH)の質量をmg単位で表したものである。樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に準じて下記手順により測定される。
【0056】
(試薬の準備)
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶解し、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を調製する。JIS特級水酸化カリウム7gをイオン交換水5mLに溶解し、エチルアルコール(95体積%)を加えて1リットルとする。炭酸ガスに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、濾過して、水酸化カリウム溶液を調製する。標定はJIS K0070-1992の記載に従う。
【0057】
(本試験)
粉砕した試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として調製したフェノールフタレイン溶液を数滴加えて、調製した水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は指示薬の薄い紅色が約30秒間続いた時とする。
【0058】
(空試験)
試料を用いない(すなわち、トルエン/エタノール(トルエン:エタノールが体積比で2:1)の混合溶液のみとする。)こと以外は、上記本試験と同様の操作を行う。
【0059】
本試験と空試験の滴定結果を下記式(a)に代入して酸価を算出する。
【0060】
式(a) A=〔(C-B)×f×5.6〕/S
A:酸価(mgKOH/g)
B:空試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
C:本試験時の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)
f:0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液のファクター
S:試料の質量(g)
【0061】
結晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、十分な低温定着性及び優れた長期耐熱保管安定性を確実に両立して得るという観点から、3000~100000であるとが好ましお。また、前記重量平均分子量は、4000~50000であるとより好ましく、5000~20000であると特に好ましい。上記のジオール成分とジカルボン酸成分との使用比率は、ジオール成分のヒドロキシル基の当量[OH]とジカルボン酸成分のカルボキシル基の当量[COOH]との比[OH]/[COOH]が、1.5/1~1/1.5であると好ましく、1.2/1~1/1.2であるとより好ましい。
【0062】
(非晶性ポリエステル)
非晶性ポリエステルは、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸)と、2価以上のアルコール(多価アルコール)との重縮合反応によって得られる。
具体的な非晶性ポリエステルについては特に制限はなく、本技術分野における従来公知の非晶性ポリエステルが用いられ得る。
【0063】
非晶性ポリエステルの具体的な製造方法は、特に限られるものではなく、公知のエステル化触媒を利用して、多価カルボン酸及び多価アルコールを重縮合する(エステル化する)ことにより当該樹脂を製造することができる。
【0064】
非晶性ポリエステルの重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、例えば、5000~100000の範囲内であることが好ましく、5000~50000の範囲内であることがより好ましい。上記重量平均分子量(Mw)が5000以上であると、トナーの耐熱保管性を向上させることができ、100000以下であると、低温定着性をより向上させることができる。
【0065】
非晶性ポリエステルの調製に用いられる多価カルボン酸及び多価アルコールの例としては、特に制限されないが、以下が挙げられる。
【0066】
《多価カルボン酸》
テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、などの芳香族カルボン酸類、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、アルケニル無水コハク酸、アジピン酸などの脂肪族カルボン酸類、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸類が挙げられる。
これらの多価カルボン酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
これら多価カルボン酸の中、芳香族カルボン酸を使用することが好ましく、また、より良好な定着性を確保するために架橋構造又は分岐構造をとるためにジカルボン酸とともに3価以上のカルボン酸(トリメリット酸やその酸無水物等)を併用することが好ましい。
3価以上のカルボン酸としては、例えば、1,2,3-ベンゼントリカルボン酸、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、1,3,5-ベンゼントリカルボン酸、11,2,4-ナフタレントリカルボン酸等、及びこれらの無水物やこれらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いて
もよい。
【0068】
《多価アルコール》
エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、などの脂肪族ジオール類、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールAなどの脂環式ジオール類、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール類が挙げられる。これら多価アルコールは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
これら多価アルコールの中、芳香族ジオール類、脂環式ジオール類が好ましく、このうち芳香族ジオールがより好ましい。また、より良好な定着性を確保するため、架橋構造又は分岐構造をとるためにジオールとともに3価以上の多価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール)を併用してもよい。
【0070】
なお、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって得られたポリエステルに、さらにモノカルボン酸、及び/又はモノアルコールを加えて、重合末端のヒドロキシ基、及び/又はカルボキシ基をエステル化し、ポリエステルの酸価を調整してもよい。
【0071】
モノカルボン酸としては酢酸、無水酢酸、安息香酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、無水プロピオン酸等を挙げることができ、モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、オクタノール、2-エチルヘキサノール、トリフルオロエタノール、トリクロロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、フェノールなどを挙げることができる。
【0072】
本発明に用いられる非晶性ポリエステルとしては、スチレン・アクリル系重合体等から構成されるビニル系重合セグメントと、非晶性ポリエステルから構成されるポリエステル系重合セグメントとが、両反応性単量体を介して結合したハイブリッド非晶性ポリエステルを用いることもできる。
【0073】
ビニル系重合セグメントの含有比率は、ハイブリッド非晶性ポリエステルの総質量に対して、5~30質量%の範囲内であることが好ましく、10~20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0074】
ハイブリッド非晶性ポリエステルが、5~30質量%の範囲内でビニル系重合セグメントを含有することで、電荷保持と電荷漏洩のバランスをコントロールすることが可能となる。
【0075】
<その他の成分>
(着色剤)
着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、染料、顔料などを任意に使用することができる。カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、又はランプブラックなどが使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、又はコバルトなどの強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、又はマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などを用いることができる。
【0076】
染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95などを用いることができ、またこれらの混合物も用いることができる。顔料としてはC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同48:3、同53:1、同57:1、同81:4、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ
31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同15:4、又は同60などを用いることができ、これらの混合物も用いることができる。
【0077】
白色用の着色剤としては、無機顔料(例えば、チタンホワイト、ジンクホワイト、チタンストロンチウムホワイト、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、サチンホワイト、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、非晶質シリカ、コロイダルシリカ、ホワイトカーボン、カオリン、焼成カオリン、デラミネートカオリン、アルミノケイ酸塩、セリサイト、ベントナイト、スメクサイト等)、又は有機顔料(例えば、ポリスチレン樹脂粒子、尿素ホリマリン樹脂粒子等)が挙げられる。
【0078】
トナー母体粒子中における上記着色剤の含有量は、適宜に、そして独立して決めることができる。前記着色剤の顔料は、例えば画像の色再現性を確保する観点から、1~30質量%の範囲内であることが好ましく、2~20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0079】
また、着色剤の粒子の大きさは、体積平均粒径で、例えば10~1000nmの範囲内であることが好ましく、50~500nmの範囲内であることがより好ましく、80~300nmの範囲内であることがさらに好ましい。
【0080】
当該体積平均粒径は、カタログ値であってもよい。また、着色剤の体積平均粒径(体積基準のメジアン径)は、例えば、「UPA-150」(マイクロトラック・ベル株式会社製)によって測定することができる。
【0081】
(離型剤)
本発明に係るトナーは、離型剤(「ワックス」ともいう。)を含有し得る。離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
【0082】
離型剤として、具体的には、例えばポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス;マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス;パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス;ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス;カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘニル、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18-オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス;エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0083】
離型剤としては、結着樹脂を構成する樹脂と相溶するなどの相互作用を有さないものを用いることが好ましい。
【0084】
これらのうちでも、低温定着時の離型性の観点から、融点の低いもの、具体的には、融点が60~100℃の範囲内のものを用いることが好ましい。
【0085】
離型剤の含有割合は、トナー中に1~20質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは5~20質量%の範囲内である。トナーにおける離型剤の含有割合が上記範囲であることにより、分離性及び定着性が確実に両立して得られる。
【0086】
離型剤のトナーへの導入方法としては、後述のトナーの製造方法の凝集、融着工程において、離型剤のみよりなる粒子をコア用樹脂粒子(非晶性ビニル樹脂粒子)、シェル用樹脂粒子(結晶性ポリエステル樹脂粒子)などとともに水系媒体中で凝集、融着する方法が挙げられる。
離型剤粒子は、離型剤を水系媒体に分散させた分散液として得ることができる。離型剤粒子の分散液は、界面活性剤を含有する水系媒体を離型剤の融点より高い温度に加熱し、溶融した離型剤溶液を加えて機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させた後、冷却することによって調製することができる。
【0087】
また、コア用樹脂が例えばスチレン・アクリル樹脂である場合には、凝集、融着工程に供されるスチレン・アクリル樹脂粒子に離型剤をあらかじめ混合させておくことによって、当該離型剤をトナーへ導入することもできる。
【0088】
具体的には、スチレン・アクリル樹脂を形成するための重合性単量体の溶液に離型剤を溶解させる。この溶液を、界面活性剤を含有する水系媒体中に加え、上記と同様に機械的撹拌などの機械的エネルギーや超音波エネルギーなどを付与して微分散させる。その後、重合開始剤を加えて所望の重合温度で重合を行う。このような、いわゆるミニエマルション重合法によって、離型剤を含有する非晶性樹脂粒子の分散液を調製することができる。
【0089】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、公知の種々の化合物を用いることができる。その例には、ニグロシン系染料、ナフテン酸又は高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、及び、サリチル酸金属塩、が含まれる。
【0090】
本発明のトナーにおける荷電制御剤の含有量は、コア部及びシェル部の結着樹脂100質量部に対して通常0.1~10質量部の範囲内であり、好ましくは0.5~5質量%の範囲内である。
【0091】
また、荷電制御剤の粒子の大きさは、数平均一次粒径で例えば10~1000nmの範囲内であり、好ましくは50~500nmの範囲内であり、より好ましくは80~300nmの範囲内である。
【0092】
[2]トナー粒子の製造方法
本発明に係るトナー粒子を製造する方法としては、特に限定されず、混練粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、溶解懸濁法、ポリエステル伸長法、分散重合法など公知の方法が挙げられる。これらの中でも、粒径の均一性、形状の制御性観点からは、乳化凝集法を採用することが好ましい。
【0093】
本発明に係るトナー粒子は、具体的に以下の手順を含む製造方法によって製造することができる。ただし、ここでは一例を開示することに過ぎず、本発明は、以下の製造方法の例に制限されることがない。
【0094】
本発明に係るトナー粒子は、水系媒体中で作製される湿式法によって製造されることが好ましく、例えば乳化凝集法などによって製造することができる。
【0095】
乳化凝集法は、結着樹脂を構成する樹脂粒子の水性分散液を必要に応じてその他のトナー構成成分の粒子の水性分散液と混合する。次いで、pH調整による粒子表面の反発力と電解質体よりなる凝集剤の添加による凝集力とのバランスを取りながら緩慢に凝集させる。その後、平均粒径及び粒度分布を制御しながら会合を行うと同時に、加熱撹拌することで微粒子間の融着を行って形状制御を行うことにより、トナーを製造する方法である。
【0096】
本発明に係るトナー粒子の好ましい製造方法として、乳化凝集法を用いてコア・シェル構造を有するトナー粒子を得る場合の一例を以下に示す。
(1)水系媒体中に着色剤粒子が分散されてなる着色剤粒子分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる樹脂粒子分散液(コア用/シェル用樹脂粒子分散液)を調製する工程
(3)着色剤粒子分散液とコア用樹脂粒子分散液とを混合して凝集用樹脂粒子分散液を得る。次いで、凝集剤の存在下で着色剤粒子及び結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子としての凝集粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
(4)コア粒子を含む分散液中に、シェル用の結着樹脂粒子を含むシェル用樹脂粒子分散液を添加する。そして、コア粒子表面にシェル用の粒子を凝集、融着させてコア・シェル構造のトナー母体粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
(5)トナー母体粒子の分散液(トナー母体粒子分散液)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程(濾別、洗浄工程)
(6)トナー母体粒子を乾燥する工程(乾燥工程)
(7)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程(外添剤処理工程)
【0097】
コア・シェル構造を有するトナー粒子は、まず、コア粒子用の結着樹脂粒子と着色剤粒子とを凝集、融着させてコア粒子を作製する。次いで、コア粒子の分散液中にシェル用の結着樹脂粒子を添加してコア粒子表面にシェル用の結着樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0098】
本発明において、「水系媒体」とは、水50~100質量%と、水溶性の有機溶媒0~50質量%とからなる媒体をいう。
水溶性の有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランを例示することができる。前記有機溶媒としては、得られる樹脂を溶解しないアルコール系有機溶媒を使用することが好ましい。
【0099】
(1)着色剤粒子分散液調製工程
着色剤粒子分散液は、着色剤を水系媒体中に分散することにより調製することができる。着色剤の分散処理は、着色剤が均一に分散されることから、水系媒体中において界面活性剤濃度を臨界ミセル濃度(CMC)以上にした状態で行われることが好ましい。着色剤の分散処理に使用する分散機としては、公知の種々の分散機を用いることができる。
【0100】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレン(n)アルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、アラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN-アルキル-N,N-ジメチルアンモニウムベタインなどの両性界面活性剤などが挙げられる。また、界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤やカチオン性界面活性剤も使用することができる。
【0101】
この着色剤粒子分散液調製工程において調製される着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の分散径は、体積基準のメジアン径で10~300nmの範囲内とされることが好ましい。この着色剤粒子分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、電気泳動光散乱光度計「ELS-800(大塚電子社製)」で測定されるものである。
【0102】
着色剤は、後述のコア用樹脂粒子分散液調整工程において、ミニエマルション法を用いてあらかじめコア用樹脂(非晶性ビニル樹脂)を形成するための単量体溶液に溶解又は分散させることによってトナー中に導入してもよい。
【0103】
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂粒子が分散されてなる樹脂粒子分散液(コア用/シェル用樹脂粒子分散液)を調製する工程
結着樹脂を水系媒体中に分散させる方法としては、水系直接分散法、溶解乳化脱溶法、転送乳化法などが挙げられる。
前記水系直接分散法は、結着樹脂を界面活性剤が添加された水系媒体中に超音波分散法やビーズミル分散法などにより分散させる方法である。
前記溶解乳化脱溶法とは、結着樹脂を溶剤中に溶解させ、これを水系媒体中に分散させて乳化粒子(油滴)を形成した後、溶剤を除去する方法である。
【0104】
この結着樹脂粒子分散液調製工程において得られる結着樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば50~500nmの範囲にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA-EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したものである。
【0105】
コア用の結着樹脂粒子分散液は、以下のようにして重合処理を行って調製することができる。
具体的には、まず、臨界ミセル濃度(CMC)以下の界面活性剤を含有した水系媒体を用意する。次いで、当該水系媒体中に、非晶性ビニル樹脂を形成するための重合性単量体に対して、必要に応じて離型剤や荷電制御剤などのトナー構成成分を溶解又は分散させた液を添加する。次いで、機械的エネルギーを加えて液滴を形成させる。その後、水溶性のラジカル重合開始剤を添加して、液滴中において重合反応を進行させることにより、コア用樹脂粒子分散液(非晶性樹脂粒子分散液)を調製することができる。
なお、前記液滴中に油溶性の重合開始剤が含有されていてもよい。このようなコア用樹脂粒子分散液調製工程においては、機械的エネルギーを付与して乳化(液滴の形成)する処理が必須となる。
前記機械的エネルギーの付与手段としては、ホモミキサー、超音波、マントンゴーリンなどの強い撹拌又は超音波振動エネルギーの付与手段を挙げることができる。
【0106】
シェル用の結着樹脂粒子分散液は、前記コア用の結着樹脂粒子分散液と同様に重合処理を行って調製することができる。
【0107】
コア用/シェル用樹脂粒子分散液の調製工程において、界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
【0108】
(重合開始剤)
この工程において使用される重合開始剤としては、公知の種々の重合開始剤を使用することができる。
具体的には、例えば過酸化水素、過酸化アセチル、過酸化クミル、過酸化-tert-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化クロロベンゾイル、過酸化ジクロロベンゾイル、過酸化ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸-tert-ヒドロペルオキシド、過ギ酸-tert-ブチル、過酢酸-tert-ブチル、過安息香酸-tert-ブチル、過フェニル酢酸-tert-ブチル、過メトキシ酢酸-tert-ブチル、過N-(3-トルイル)パルミチン酸-tert-ブチルなどの過酸化物類;2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′-アゾビス-(2-アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、4,4′-アゾビス-4-シアノ吉草酸、ポリ(テトラエチレングリコール-2,2′-アゾビスイソブチレート)などのアゾ化合物などが挙げられる。これらの中でも、水溶性重合開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過酸化水素、2,2′-アゾビス(2-アミジノプロパン)塩酸塩、2,2′-アゾビス-(2-アミジノプロパン)硝酸塩、1,1′-アゾビス(1-メチルブチロニトリル-3-スルホン酸ナトリウム)、4,4′-アゾビス-4-シアノ吉草酸を好ましく用いることができる。
【0109】
また、重合開始剤としては、過硫酸塩とメタ重亜硫酸塩、過酸化水素とアスコルビン酸のようなレドックス重合開始剤を用いることもできる。
【0110】
(連鎖移動剤)
特に、コア用結着樹脂粒子分散液調製工程においては、非晶性ビニル樹脂の分子量を調整することを目的として、一般的に用いられる連鎖移動剤を用いることができる。連鎖移動剤としては特に限定されるものではなく、例えばアルキルメルカプタン、メルカプト脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0111】
このコア用結着樹脂粒子分散液調製工程において得られる非晶性ビニル樹脂粒子の平均粒径は、体積基準のメジアン径で例えば50~500nmの範囲内にあることが好ましい。なお、体積基準のメジアン径は、「UPA-EX150」(マイクロトラック・ベル社製)を用いて測定したものである。
【0112】
(3)着色剤粒子分散液とコア用樹脂粒子分散液とを混合して凝集用樹脂粒子分散液を得て、凝集剤の存在下で着色剤粒子及びコア用樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子としての凝集粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
【0113】
この工程は、上記の工程で形成した分散液に含まれる着色剤粒子とコア用樹脂粒子を、水系媒体中で凝集、融着させるものである。この工程では、水系媒体中にコア用樹脂粒子分散液及び着色剤粒子分散液を添加して、これらの粒子を凝集、融着させる。
【0114】
着色剤粒子分散液及びコア用樹脂粒子分散液を凝集、融着する具体的な方法としては、以下のとおりである。
水系媒体中に凝集剤を臨界凝集濃度以上となるよう添加する。次いで、コア用樹脂粒子のガラス転移点以上であって、かつ、離型剤の融解ピーク温度以上の温度に加熱する。これによって、着色剤粒子とコア用樹脂粒子の塩析を進行させると同時に融着を並行して進める。そして、所望の粒径まで成長したところで、凝集停止剤を添加して粒子成長を停止させ、さらに、必要に応じて粒子形状を制御するために加熱を継続して行う。
【0115】
この方法においては、凝集剤を添加した後に放置する時間をできるだけ短くして速やかにコア用結着樹脂のガラス転移点以上の温度に加熱することが好ましい。この理由は明確ではないが、塩析した後の放置時間によっては粒子の凝集状態が変動して粒径分布が不安定になったり、融着させた粒子の表面性が変動したりする問題が発生することが懸念されるためである。この昇温までの時間としては通常30分以内であることが好ましく、10分以内であることがより好ましい。
【0116】
また、昇温速度としては1℃/分以上であることが好ましい。昇温速度の上限は特に規定されるものではないが、急速な融着の進行による粗大粒子の発生を抑制する観点から、15℃/分以下とすることが好ましい。さらに、反応系がガラス転移点以上の温度に到達した後、当該反応系の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させることが肝要である。これにより、トナーの成長と、融着とを効果的に進行させることができ、最終的に得られるトナーの耐久性を向上させることができる。
【0117】
(凝集剤)
使用する凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。
金属塩としては、例えばナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩などの一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。
具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガンなどを挙げることができる。これらの中で、少量で凝集を進めることが可能であり、凝集性の制御も容易であることから、2価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0118】
この工程において界面活性剤を使用する場合は、界面活性剤として、例えば上述の界面活性剤と同様のものを用いることができる。
【0119】
(4)コア粒子を含む分散液中に、シェル用の結着樹脂粒子を含むシェル用樹脂粒子分散液を添加して、コア粒子表面にシェル用の粒子を凝集、融着させてコア・シェル構造のトナー母体粒子を形成する工程(凝集・融着工程)
当該工程は、(3)の凝集剤の存在下で着色剤粒子及びコア用樹脂粒子を凝集、融着させてコア粒子としての凝集粒子を形成する工程(凝集・融着工程)と同様に、コア粒子表面にシェル用の粒子を凝集、融着させてコア・シェル構造のトナー母体粒子を形成する。
【0120】
(5)トナー母体粒子の分散液(トナー母体粒子分散液)からトナー母体粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程(濾別、洗浄工程)
(6)トナー母体粒子を乾燥する工程(乾燥工程)
濾別、洗浄工程及び乾燥工程は、公知の種々の方法を採用して行うことができる。
【0121】
(7)トナー母体粒子に外添剤を添加する工程(外添剤処理工程)。
この外添処理工程は、乾燥処理したトナー母体粒子に、本発明に係る外添剤を添加、混合する工程である。
【0122】
外添剤の添加方法としては、乾燥されたトナー母体粒子に粉体状の外添剤を添加して混合する乾式法が挙げられ、混合装置としては、ヘンシェルミキサー、コーヒーミルなどの機械式の混合装置を用いることができる。
【0123】
[3]トナー粒子の物性
<トナー粒子の平均粒径>
本発明に係るトナー粒子においては、平均粒径が、例えば体積基準のメジアン径で3~8μmの範囲内であることが好ましく、より好ましくは5~8μmの範囲内である。
【0124】
この平均粒径は、例えば後述する乳化凝集法を採用して製造する場合には、使用する凝集剤の濃度や有機溶媒の添加量、融着時間、重合体の組成などによって制御することができる。体積基準のメジアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0125】
トナーの体積基準のメジアン径は、例えば、「マルチサイザー3」(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステムを接続した測定装置を用いて測定・算出できる。
【0126】
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mLに添加して馴染ませる。前記界面活性剤溶液は、トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液である。
その後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャ径を100μmとする。さらに、測定範囲である2~60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒径を体積基準のメジアン径とする。
【0127】
<トナー粒子の平均円形度>
本発明に係るトナー粒子においては、平均円形度が0.930~1.000の範囲内であることが好ましく、0.950~0.995の範囲内であることがより好ましい。
平均円形度が上記の範囲であることにより、個々のトナー粒子が破砕しにくくなって摩擦帯電付与部材の汚染が抑制されてトナーの帯電性が安定し、また、形成される画像において画質が高いものとなる。
【0128】
本発明において、トナー粒子の平均円形度は、「FPIA-3000」(Sysmex社製)を用いて測定されるものである。
【0129】
具体的には、試料(トナー粒子)を界面活性剤入り水溶液にてなじませ、超音波分散処理を1分間行って分散させる。その後、「FPIA-3000」(Sysmex社製)により、測定条件HPF(高倍率撮像)モードにて、HPF検出数3000~10000個の適正濃度で撮影を行い、個々のトナー粒子について下記式(T)に従って円形度を算出する。次いで、各トナー粒子の円形度を加算し、全トナー粒子数で除することにより算出される。
式(T):円形度=(粒子像と同じ投影面積をもつ円の周囲長)/(粒子投影像の周囲長)
【0130】
<トナー粒子の軟化点>
トナー粒子の軟化点は、当該トナーに低温定着性を得る観点から、80~120℃の範囲内であることが好ましく、より好ましくは90~110℃の範囲内である。
【0131】
トナー粒子の軟化点は、下記に示すフローテスターによって測定されるものである。
【0132】
具体的には、まず、20℃、50%RHの環境下において、試料(トナー)1.1gをシャーレに入れ、平らにならす。当該試料を12時間以上放置した後、成型器「SSP-10A」(島津製作所社製)によって3820kg/cm2の力で30秒間加圧し、直径1cmの円柱型の成型サンプルを作製する。
次いで、この成型サンプルを、フローテスター「CFT-500D」(島津製作所社製)により、円柱型ダイの穴(1mm径×1mm)より、直径1cmのピストンを用いて予熱終了時から押し出す。ここで、24℃、50%RHの環境下で、荷重196N(20kgf)、開始温度60℃、予熱時間300秒間、昇温速度6℃/分の条件で行う。
成型サンプルを前記のように押し出し、昇温法の溶融温度測定方法でオフセット値5mmの設定で測定したオフセット法温度Toffsetが、軟化点とされる。
【0133】
[4]現像剤
本発明のトナーは、次の現像剤に好適に使用できる。例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが挙げられる。本発明のトナーは、前記の場合について、いずれも好適に使用できる。
【0134】
前記磁性体としては、例えば、マグネタイト、γ-ヘマタイト、又は各種フェライトなどを使用できる。
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。
キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散してなるいわゆる樹脂分散型キャリアを用いることが好ましい。
【0135】
被覆用の樹脂としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、又はフッ素樹脂などが用いられる。
また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができる。このような樹脂として、例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用できる。
【0136】
キャリアの体積基準のメジアン径は、20~100μmの範囲内であることが好ましく、25~60μmの範囲内であることがより好ましい。
キャリアの体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置により測定することができる。前記レーザー回折式粒度分布測定装置としては、「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)が挙げられる。
トナーのキャリアに対する混合量は、トナーとキャリアとの合計質量を100質量%として、2~10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0137】
[5]画像形成方法
本発明の画像形成方法は、前記した本発明の静電潜像現像用トナーを用いた画像形成方法であって、前記静電潜像現像用トナーを、記録媒体上に定着した後、後加工として前記記録媒体上の少なくとも一部をニスでコートすることを特徴とする。
以下、ニスでコートする工程を、後加工工程ともいう。
【0138】
具体的に、本発明の画像形成方法は、前記後加工工程のほか、少なくとも、像保持体の帯電工程、静電荷像形成工程、静電荷像現像工程、トナー画像転写工程、トナー画像定着工程及びクリーニング工程を有することが好ましい。
【0139】
<帯電工程>
本工程では、電子写真感光体を帯電させる。帯電させる方法は、特に限定されず、例えば、帯電ローラーによって電子写真感光体の帯電が行われる帯電ローラー方式など、公知の方法でよい。
【0140】
<静電荷像形成工程>
本工程では、電子写真感光体(静電荷像担持体)上に静電荷像を形成する。
【0141】
電子写真感光体としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリシラン又はフタロポリメチンなどの有機感光体よりなるドラム状のものが挙げられる。
【0142】
静電荷像の形成は、例えば、電子写真感光体の表面を帯電手段により一様に帯電させ、露光手段により電子写真感光体の表面を像様に露光することにより行われる。なお、静電荷像とは、このような帯電手段によって電子写真感光体の表面に形成される像である。
【0143】
帯電手段及び露光手段としては、特に限定されず、電子写真方式において一般的に使用されているものを用いることができる。
【0144】
<現像工程>
現像工程は、静電荷像を、トナー(一般的には、トナーを含む乾式現像剤)により現像してトナー像を形成する工程である。
【0145】
トナー像の形成は、例えば、トナーを含む乾式現像剤を用いて、トナーを摩擦撹拌させて帯電させる撹拌器と、回転可能なマグネットローラーとからなる現像手段を用いて行われる。
【0146】
具体的には、現像手段においては、例えば、トナーとキャリアとが混合撹拌され、その際の摩擦によりトナーが帯電し、回転するマグネットローラーの表面に保持され、磁気ブラシが形成される。マグネットローラーは、電子写真感光体近傍に配置されているため、マグネットローラーの表面に形成された磁気ブラシを構成するトナーの一部は、電気的な吸引力によって電子写真感光体の表面に移動する。その結果、静電荷像がトナーにより現像されて電子写真感光体の表面にトナー像が形成される。
【0147】
<転写工程>
本工程では、記録媒体へのトナー像の転写をする。
【0148】
トナー像の記録媒体への転写は、トナー像を記録媒体に剥離帯電することにより行われる。
【0149】
転写手段としては、例えば、コロナ放電によるコロナ転写器、転写ベルト、転写ローラーなどを用いることができる。
【0150】
また、転写工程は、例えば、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、このトナー像を記録媒体上に二次転写する態様の他、電子写真感光体上に形成されたトナー像を直接記録媒体に転写する態様などによって行うこともできる。
【0151】
<定着工程>
本発明に係る定着工程では、トナーを用いて形成された未定着画像(トナー像)が転写された記録材を、加熱された定着ベルト又は定着ローラーと、加圧部材との間を通過させることにより、当該未定着画像を当該記録材に定着させる工程を有する。用いられる定着ベルト又は定着ローラーが、本発明に係る定着部材であるときに、画像形成装置の紙出力速度が高速化(複写速度70cpm以上、いわゆるSeg.5以上の画像形成装置を使用)しても、高い定着分離性能を発揮し、かつ画像ムラを起こさない効果を得ることができる。
【0152】
定着工程の方式としては、具体的には、例えば、定着回転体としての定着ベルト又は定着ローラーと、当該定着ベルト又は定着ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧部材としての加圧ローラーとにより構成されてなるベルト定着方式又はローラー定着方式のものが挙げられる。
【0153】
<クリーニング工程>
本工程では、感光体、中間転写体などの現像剤担持体上には、画像形成に使用されなかった又は転写されずに残った現像剤を現像剤担持体上から除去する。
【0154】
クリーニングの方法は、特に限定されないが、先端が感光体等のクリーニング対象に当接して設けられた、感光体表面を擦過するブレードが用いられる方法であることが好ましい。
【0155】
本発明に係る画像形成方法において、有彩色又は黒色トナーの画像は、最終的には記録媒体上に転写され形成される。
【0156】
記録媒体としては、特に制限されず、例えば、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙又はコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙等の紙類;ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム等の樹脂製フィルム;布などを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、記録媒体の色は特に限定されず、種々の色の記録媒体を使用することができる。
【0157】
<後加工工程>
本工程は、記録媒体上にトナーを定着して形成した画像表面に、ニスを塗布し、塗布した塗布膜を硬化させる工程である。
後加工工程は、特に図示しないが、前記画像表面にニスを塗布することで、ニスの膜を形成し、その後、活性線を照射して硬化させることにより行う。
【0158】
ニスの塗布方法としては、ニスを塗布することができれば特に制限はない。当該塗布方法として、具体的には、ロールコーティング法、インクジェット法、噴霧法等が挙げられるが、ロールコーティング法が好ましい。
【0159】
なお、本発明において、「ロールコーティング」とは、JIS K 5500において2本又はそれ以上の横置硬質ロール(「ローラー」ともいう。)の間に平らな物体を通過させて塗布液を塗る方法と定義されるものである。
【0160】
ニスの表面張力は、温度25℃において、30mN/m以下であることが塗布性の観点から好ましい。
また、ニスを塗布して、ニスの膜を硬化させた硬化膜の厚さは、1~10mmの範囲内であることが好ましい。
【0161】
ニスは、活性線硬化型樹脂又はその成分単量体(モノマー)を主成分とすることが好ましい。ニスは、透明であり、活性硬化型樹脂又は当該樹脂を構成する成分単量体(モノマー)を有機溶剤や水に溶解させ、分散した液である。前記活性硬化型樹脂としては、紫外線硬化型樹脂が好ましい。
また、ニスは、具体的には、(i)反応性単量体(モノマー)、(ii)アクリル系樹脂、(iii)重合開始剤、及び(iv)その他表面張力調整剤からなることが好ましい。
さらに、ニスは、水系樹脂エマルジョンであることが好ましい。
【0162】
(i)反応性単量体
反応性単量体(モノマー)は、活性光線(紫外線、可視光線、電子線等)の照射により重合して硬化する化合物である。反応性単量体は、下記の光重合開始剤及び顔料分散剤のいずれにも該当しないものをいう。
【0163】
反応性単量体(モノマー)としては、光重合性化合物が用いられる。
なお、「光重合開始剤」とは、活性光線の照射により、重合性化合物の重合反応を開始し得る機能を有する活性種を生成する化合物をいう。
また、「顔料分散剤」とは、トナー粒子において顔料を安定に均一分散させるものである。
【0164】
《光重合性化合物》
光重合性化合物としては、従来公知の種々の光重合性化合物を用いることができる。光重合性化合物は、不飽和カルボン酸エステル化合物であることが好ましく、(メタ)アクリレートであることがより好ましい。
【0165】
(メタ)アクリレートとしては、例えばトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート等の二官能(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセリンプロポキシトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート等の三官能以上の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0166】
(メタ)アクリレートは、変性物であってもよく、例えばエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート等のエチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート等のプロピレンオキサイド変性(メタ)アクリレート等のアルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート;カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のカプロラクトン変性(メタ)アクリレート;及びカプロラクタム変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のカプロラクタム変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレートが好ましい。
【0167】
上記三官能以上の単量体(モノマー)比率が上がると、液の粘度が向上する。
二官能の三官能以上の単量体(モノマー)比率で液粘度の調整が可能である。
また、粘度の調整のため、ビニルピロリドン、アクリロイルモノフォリン等の希釈剤を用いても良い。
【0168】
(ii)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂(ポリマー)は以下の単量体(モノマー)を重合させたものであるがこれらに限定されない。
(メタ)アクリル酸エステル単量体(モノマー)の例には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル及びこれらの誘導体が含まれる。
【0169】
上記アクリル系樹脂はスチレンが共重合されていても良い。
スチレンが共重合されている場合、スチレンの共重合比率は90質量%以下が好ましい。
【0170】
アクリル系樹脂の分子量Mwは3000~40000の範囲内が好ましい。
【0171】
アクリル系樹脂の液体に対する比率は、接着性、塗布性及び筋のような品質の観点から、5~20質量%の範囲内が好ましい。
【0172】
(iii)重合開始剤
活性光線硬化性化合物がラジカル重合性の官能基を有する化合物であるときは、重合開始剤はラジカル重合開始剤を含む。活性光線硬化性化合物がカチオン重合性の官能基を有する化合物であるときは、重合開始剤は光酸発生剤を含む。
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤と光酸発生剤の両方の組み合わせであってもよい。
【0173】
ラジカル重合開始剤には、開裂型ラジカル重合開始剤及び水素引き抜き型ラジカル重合開始剤が含まれる。
【0174】
《開裂型ラジカル重合開始剤》
開裂型ラジカル重合開始剤の例には、ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケタール、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-2-モルホリノ(4-チオメチルフェニル)プロパン-1-オン及び2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノンなどを含むアセトフェノン系の開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル及びベンゾインイソプロピルエーテルなどを含むベンゾイン系の開始剤、2,4,6-トリメチルベンゾインジフェニルホスフィンオキシドなどを含むアシルホスフィンオキシド系の開始剤、ベンジル、並びにメチルフェニルグリオキシエステルなどが含まれる。
【0175】
《水素引き抜き型ラジカル重合開始剤》
水素引き抜き型ラジカル重合開始剤の例には、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル-4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチル-ジフェニルサルファイド、アクリル化ベンゾフェノン、3,3’,4,4’-テトラ(t-ブチルペルオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどを含むベンゾフェノン系の開始剤、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン及び2,4-ジクロロチオキサントンなどを含むチオキサントン系の開始剤、ミヒラーケトン及び4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノンな
どを含むアミノベンゾフェノン系の開始剤、10-ブチル-2-クロロアクリドン、2-エチルアンスラキノン、9,10-フェナンスレンキノン、並びにカンファーキノンなどが含まれる。
【0176】
《光酸発生剤》
光酸発生剤の例には、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、ヨードニウム(4-メチルフェニル)(4-(2-メチルプロピル)フェニル)ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート及び3-メチル-2-ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネートなどが含まれる。
【0177】
《配合量》
重合開始剤の配合量は、ニスの全質量に対して、0.1~10質量%の範囲内であることが好ましく、2~8質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0178】
(iV)表面張力調整剤
その他、表面張力調整剤として、石油系の界面活性剤、フッ素系の界面活性剤を添加しても良い。
石油系、フッ素系の界面活性剤はアニオン性、ノニオン性界面活性剤が好適である。
また、粗さ付与のために、有機/無機の微粒子を添加しても良い。
【0179】
(v)水性液状物質(水系樹脂エマルジョン)
本発明に係るニスは、水系樹脂エマルジョンであることが好ましい。
本発明で用いることのできる水系樹脂エマルジョンは、樹脂又はその構成成分である単量体(モノマー)が水分散された状態のものである。
好ましい単量体(モノマー)としては、アクリロニトリル、スチレン、アクリレート類(アクリル酸、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート)、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ブタジエン、塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンが挙げられ、これらの単量体(モノマー)を二つ以上組み合わせた共重合体が好ましい。
また、共重合体に組み込まれた酢酸ビニルをケン化し、酢酸ビニルの一部、又は全部をビニルアルコールに導いた熱可塑性樹脂、ポリウレタン、シリコーン-アクリル共重合体などが好ましく用いられる。また、ポリエステル、ポリウレタン樹脂も用いることができる。
【0180】
[6]画像形成装置
本発明の画像形成方法における帯電工程、静電荷像形成工程、静電荷像現像工程、トナー画像転写工程、トナー画像定着工程及びクリーニング工程は、以下の画像形成装置によって行われる。
なお、後加工工程については、前記したとおり、ニスを塗布するニス塗布部と、ニスの塗布膜に活性線を照射して硬化する硬化部とを備えた後加工装置により行う。
前記ニス塗布部としては、ニスを塗布できれば特に限定されないが、好ましくはロールコーティング法に用いられるロールコーター等が挙げられる。
前記硬化部としては、例えば、紫外線を照射する光照射装置が挙げられる。光照射装置が紫外線を照射することによって、ニスの塗布膜が硬化する。
以下では、前記画像形成装置について説明する。
【0181】
本発明に係る画像形成装置は、少なくとも、像保持体の帯電手段、静電荷像形成手段、静電荷像現像手段、トナー画像転写手段、トナー画像定着手段及びクリーニング手段を備える電子写真画像形成装置であって、本発明に係る静電荷像現像用二成分現像剤を用いることが好ましい。
【0182】
詳細には、像保持体と、前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した前記像保持体の表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、本発明の静電荷像現像用トナーを用いて、前記像保持体の表面に形成された静電荷像をトナー画像として現像する現像手段と、前記像保持体の表面に形成されたトナー画像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、前記記録媒体の表面に転写されたトナー画像を定着する定着手段と、クリーニング手段、とを備える。
【0183】
本発明の電子写真画像形成装置は、例えば、
図1に示すような画像形成装置を用いることができる。
図1は、画像形成装置の一例における構成を示す断面概要図である。
この画像形成装置100は、タンデム型カラー画像形成装置と称せられるものである。当該画像形成装置100は、垂直方向に縦列配置された4組の画像形成部(画像形成ユニット)10Y、10M、10C及び10Bkと、中間転写体ユニット7と、給紙手段21及び定着手段24とを有する。画像形成装置100の本体Aの上部には、原稿画像読み取り装置SCが配置されている。
【0184】
中間転写体ユニット7は、ローラー71、72、73及び74を巻回して回動可能な無端ベルト状中間転写体70、一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bk、及びクリーニング手段6bとからなる。
【0185】
前記4組の画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkは、それぞれ、ドラム状の感光体1Y、1M、1C及び1Bkを中心に有し、その周囲に配置された帯電手段2Y、2M、2C及び2Bkと、露光手段3Y、3M、3C及び3Bkと、回転する現像手段4Y、4M、4C及び4Bkと、感光体1Y、1M、1C及び1Bkをクリーニングするクリーニング手段6Y、6M、6C及び6Bkを有する。
画像形成装置100は、感光体1Y、1M、1C及び1Bkとして、上記の本発明に係る感光体を備える。
【0186】
画像形成ユニット10Y、10M、10C及び10Bkは、それぞれ、イエロー色、マゼンタ色、シアン色及び黒色のトナー像を形成する。
本発明における帯電工程、露光工程及び現像工程は、感光体上にトナー像を形成する工程である。画像形成装置100においては、画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkで、本発明に係る感光体1Y、1M、1C及び1Bk及び本発明に係るトナーを用いて、以下のとおり行われる。
なお、トナーは上記のようにキャリアともに混合されて二成分現像剤として用いることができる。
【0187】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkは、感光体1Y、1M、1C、1Bkにそれぞれ形成するトナー像の色が異なるだけで、同じ構成である。したがって、画像形成ユニット10Yを例にして詳細に説明する。
【0188】
画像形成ユニット10Yは、像形成体である感光体1Yの周囲に、帯電手段2Y、露光手段3Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを配置する。画像形成ユニット10Yは、感光体1Y上にイエロー(Y)のトナー像を形成するものである。また、本実施の形態においては、この画像形成ユニット10Yのうち、少なくとも感光体1Y、帯電手段2Y、現像手段4Y、クリーニング手段6Yを一体化するように設けている。
【0189】
帯電手段2Yは、感光体1Yに対して一様な電位を与える手段である。本発明においては、帯電手段としては、接触又は非接触のローラー帯電方式のもの等が挙げられる。特に、帯電手段として、接触のローラー帯電方式のものであることが本発明の効果がより有効となる点で好ましい。
【0190】
露光手段3Yは、帯電手段2Yによって一様な電位を与えられた感光体1Y上に、画像信号(イエロー)に基づいて露光を行い、イエローの画像に対応する静電荷像を形成する手段である。この露光手段3Yとしては、感光体1Yの軸方向にアレイ状に発光素子を配列したLEDと結像素子とから構成されるもの、又は、レーザー光学系等が用いられる。
【0191】
現像手段4Yは、例えばマグネットを内蔵し、二成分現像剤を保持して回転する現像スリーブ及び感光体1Yとこの現像スリーブとの間に直流及び/又は交流バイアス電圧を印加する電圧印加装置よりなるものである。
【0192】
クリーニング手段6Yは、先端が感光体1Yの表面に当接するよう設けられたクリーニングブレードと、このクリーニングブレードより上流側に設けられた、感光体1Yの表面に接触するブラシローラーとにより構成される。
クリーニングブレードは、感光体1Yに付着した残留トナーを除去する機能とともに、感光体1Yの表面を擦過する機能を有する。
【0193】
ブラシローラーは、感光体1Yに付着した残留トナーの除去、クリーニングブレードで除去された残留トナーの回収機能を有する。さらに、ブラシローラーは、感光体1Y表面を擦過する機能を有する。すなわち、ブラシローラーは、感光体1Y表面と接触し、その接触部においては、感光体1Yと進行方向が同方向に回転し、感光体1Y上の残留トナーや紙粉を除去するとともに、クリーニングブレードで除去された残留トナーを搬送し回収する。
【0194】
上記感光体上に形成されたトナー像を転写材に転写する転写工程は、以下のとおり、中間転写体を用い、中間転写体上にトナー像を一次転写した後、このトナー像を転写材上に2次転写する。
【0195】
画像形成ユニット10Y、10M、10C、10Bkより形成された各色のトナー像は、一次転写手段としての一次転写ローラー5Y、5M、5C、5Bkにより、中間転写体ユニット7が有する回動する無端ベルト状中間転写体70上に逐次転写されて、合成されたカラー画像が形成される。
無端ベルト状中間転写体70は、複数のローラー71、72、73及び74により巻回され、回動可能に支持された半導電性エンドレスベルト状の第2の像担持体である。
【0196】
無端ベルト状中間転写体70上で合成されたカラー画像は、次いで、転写材(定着された最終画像を担持する画像支持体:例えば普通紙、透明シート等)Pに転写される。
具体的には、給紙カセット20内に収容された転写材Pは、給紙手段21により給紙され、複数の中間ローラー22A、22B、22C、22D、レジストローラー23を経て、二次転写手段としての二次転写ローラー5bに搬送される。
そして、二次転写ローラー5bにて、無端ベルト状中間転写体70から転写材P上にカラー画像が一括転写(二次転写)される。カラー画像が転写された転写材Pは、定着手段24により定着処理され、排紙ローラー25に挟持されて機外の排紙トレイ26上に載置される。
【0197】
定着手段24は、例えば、熱ローラー定着方式のものが挙げられる。この熱ローラー定着方式のものは、内部に加熱源を備えた加熱ローラーと、この加熱ローラーに定着ニップ部が形成されるよう圧接された状態で設けられた加圧ローラーとにより構成されてなる。
【0198】
一方、二次転写手段としての二次転写ローラー5bにより転写材Pにカラー画像を転写する。その後、転写材Pを曲率分離した無端ベルト状中間転写体70は、クリーニング手段6bにより残留トナーが除去される。
【0199】
画像形成処理中、一次転写ローラー5Bkは常時、感光体1Bkに当接している。他の一次転写ローラー5Y、5M、5Cはカラー画像形成時にのみ、それぞれ対応する感光体1Y、1M、1Cに当接する。二次転写ローラー5bは、ここを転写材Pが通過して二次転写が行われる時にのみ、無端ベルト状中間転写体70に当接する。
【0200】
また、画像形成装置100においては、装置本体Aから、画像形成部10Y、10M、10C、10Bkと、中間転写体ユニット7とからなる筐体8を、支持レール82L、82Rを介して引き出し可能にしてある。
【0201】
なお、
図1に示す画像形成装置100を用いて、カラーのレーザープリンターにおける画像形成システムを説明した。しかし、本発明の画像形成システムは、モノクローのレーザープリンターやコピー機にも同様に適用可能である。また、露光光源もレーザー以外の光源、例えばLED光源を用いてもよい。
【実施例0202】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0203】
[離型剤微粒子分散液(W)の調製]
離型剤としてエステル化合物:ベヘン酸ベヘニル450質量部、ラウリル硫酸ナトリウム50質量部及びイオン交換水3500質量部を80℃に加熱した。そして、ウルトラタラクスT50(IKA社製)にて十分に分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、離型剤微粒子分散液(W)を調製した。
前記離型剤微粒子分散液(W)に分散された離型剤微粒子の体積基準のメジアン径は、180nmであった。
【0204】
[コア用樹脂粒子分散液の調製]
<非晶性樹脂粒子の分散液(C1)の調製>
5Lの反応容器に、撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた。この反応容器に、ポリオキシエチレン-2-ドデシルエーテル硫酸ナトリウム5質量部と、イオン交換水3000質量部とを仕込んだ。次いで、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を75℃に昇温させた。
昇温後、過硫酸カリウム(KPS)5質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加し、液温を75℃とした。その後、スチレン640質量部、アクリル酸ブチル10質量部、2-エチルヘキシルアクリレート80質量部、シリコーンメタクリレート(KR-418、信越シリコーン社製)60質量部、メタクリル酸10質量部及びn-オクチルメルカプタン8質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃において3時間にわたって加熱、撹拌することによって樹脂粒子(C1)の分散液を調製した。
【0205】
<非晶性樹脂粒子の分散液(C2)~(C12)及び(C14)の調製>
前記非晶性樹脂粒子の分散液(C1)の調製において、下記表のとおりに仕込み量を変更して調製した。
【0206】
<非晶性樹脂粒子の分散液(C13)の調製>
(1)非晶性樹脂粒子(c13)の作製
四つ口フラスコに窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した。この四つ口フラスコに、下記材料を入れて、230℃で8時間縮重合反応させ、非晶性ポリエステルである非晶性樹脂(c13)を得た。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(BPA-EO)
50質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(BPA-PO)
249質量部
テレフタル酸(TPA) 81質量部
オクチルコハク酸無水物 50質量部
アクリル酸 40質量部
スチレン 50質量部
シリコーンメタクリレート(KR-418、信越シリコーン社製)
30質量部
オクチル酸スズ(エステル化触媒) 20質量部
ジブチルパーオキサイド 30質量部
【0207】
(2)非晶性樹脂粒子の分散液(C13)の調製
非晶性樹脂(c13)を「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕した。粉砕した前記非晶性樹脂(c12)100質量部と、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部とを混合し、撹拌しながら分散した。
分散には、超音波ホモジナイザー「US-150T」(日本精機製作所社製)を用い、V-LEVEL、300μAで60分間超音波分散を行った。これにより、非晶性樹脂粒子の分散液(C13)を調製した。
【0208】
【0209】
[シェル用樹脂粒子分散液の調製]
<非晶性樹脂粒子の分散液(S1)の調製>
(1)非晶性樹脂(s1)の作製
四つ口フラスコに、窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した。この四つ口フラスコに、下記材料を入れて、230℃で8時間縮重合反応させた後、160℃まで冷却した。
ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物(BPA-EO)
50質量部
ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物(BPA-PO)
249質量部
テレフタル酸(TPA) 81質量部
フマル酸(FA) 36質量部
エステル化触媒(オクチル酸スズ) 2質量部
その後、前記四つ口フラスコに、無水トリメリット酸30質量部を添加したのち、230℃で3時間宿重合反応をさせた。さらに、8kPaで1時間反応させ、非晶性ポリエステルである非晶性樹脂(s1)を得た。
【0210】
(2)非晶性樹脂粒子の分散液(S1)の調製
非晶性樹脂(s1)を「ランデルミル 形式:RM」(徳寿工作所社製)で粉砕した。粉砕した前記非晶性樹脂(s2)100質量部と、あらかじめ作製した0.26質量%濃度のラウリル硫酸ナトリウム溶液638質量部とを混合し、撹拌しながら分散した。
分散には、超音波ホモジナイザー「US-150T」(日本精機製作所社製)を用い、V-LEVEL、300μAで60分間超音波分散を行った。これにより、非晶性樹脂粒子の分散液(S1)を調製した。
【0211】
<非晶性樹脂粒子の分散液(S2)の調製>
5Lの反応容器に、撹拌装置、温度センサー、冷却管及び窒素導入装置を取り付けた。この反応容器に、ポリオキシエチレン-2-ドデシルエーテル硫酸ナトリウム5質量部と、イオン交換水3000質量部とを仕込み、撹拌した。撹拌は、窒素気流下230rpmの撹拌速度で行い、撹拌しながら内温を75℃に昇温させた。
昇温後、過硫酸カリウム(KPS)5質量部をイオン交換水200質量部に溶解させたものを添加した。液温を75℃とした後、スチレン500質量部、アクリル酸ブチル80質量部、メタクリル酸160質量部及びn-オクチルメルカプタン12質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、75℃において3時間にわたって加熱、撹拌した。これによって非晶性ビニル樹脂である樹脂粒子〔S2〕の分散液を調製した。
【0212】
[着色剤粒子の水系分散液(Bk)の調製]
ドデシル硫酸ナトリウム90質量部をイオン交換水1600質量部に添加した。この溶液を撹拌しながら、カーボンブラック(リーガル330R:キャボット社製)420質量部を徐々に添加した。次いで、撹拌装置「クレアミックス」(エム・テクニック(株)製)を用いて、前記溶液を分散処理することにより、着色剤微粒子の水系分散液〔Bk〕を調製した。
得られた水系分散液〔Bk〕について、着色剤微粒子の平均粒径(体積基準のメジアン径)は110nmであった。
【0213】
[トナー(1)の製造]
反応容器に撹拌装置、温度センサー及び冷却管を取り付けた。当該反応容器に、コア用の非晶性樹脂粒子の水系分散液(C1)320質量部(固形分換算)、イオン交換水2000質量部を投入した。さらに、前記反応容器に、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10に調整した。
その後、前記反応容器に、着色剤粒子の水系分散液(Bk)40質量部(固形分換算)を投入した。
次いで、塩化マグネシウム30質量部をイオン交換水30質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃において10分間かけて添加した。
その後、3分間放置した後に昇温を開始し、この系を60分間かけて90℃まで昇温し、90℃を保持したまま粒子成長反応を継続した。この状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター・ベックマン社製)にて会合粒子の粒径を測定した。そして、体積基準のメジアン径が6.1μmになった時点で、シェル用の非晶性樹脂粒子の水系分散液(S1)を添加した。
その後、塩化ナトリウム100質量部をイオン交換水450質量部に溶解した水溶液を添加し、90℃の状態で加熱撹拌し、粒子の融着を進行させた。トナーの平均円形度の測定装置を用いて(HPF検出数を4000個)、平均円形度が0.960になった時点で2.5℃/minの冷却速度で30℃に冷却した。前記平均円形度の測定装置としては、「FPIA-2100」(Sysmex社製)を用いた。
次いで、固液分離し、脱水したトナーケーキをイオン交換水に再分散し固液分離する操作を3回繰り返して洗浄したのち、40℃で24時間乾燥させることにより、トナー粒子(1)を得た。
得られたトナー粒子(1)100質量部に、疎水性シリカ1.6質量部及び疎水性酸化チタン0.6質量部を添加した。「ヘンシェルミキサー」(三井三池化工機社製)により回転翼周速35mm/secで20分間混合し、体積平均粒径が6.1μmである、トナー(1)を得た。なお、前記疎水性シリカは、数平均一次粒子径が12nm、疎水化度が68であった。前記疎水性酸化チタンは、数平均一次粒子径が20nm、疎水化度が63であった。
【0214】
[トナー(2)~(18)の製造]
前記トナー(1)の製造において、コア用樹脂粒子分散液及びシェル用樹脂粒子分散液を下記表のとおりに変更した以外は同様にして、トナー(2)~(18)を製造した。
【0215】
[現像剤の製造]
フェライト粒子(体積基準のメジアン径:50μm(パウダーテック株式会社製))100質量部と、メチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート共重合体樹脂(一次粒子の体積基準のメジアン径:85nm)4質量部とを、水平撹拌羽根式高速撹拌装置に入れ、撹拌羽根の周速:8m/s、温度:30℃の条件で15分間混合した。そして、120℃まで昇温して撹拌を4時間継続した。その後、冷却し、200メッシュの篩を用いてメチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート共重合体樹脂の破片を除去することにより、樹脂被覆キャリアを作製した。
この樹脂被覆キャリアを、上記のトナー(1)~(18)の各々に、トナーとキャリアとの合計質量に対してトナーの濃度が7質量%になるよう混合し、それぞれ二成分現像剤(1)~(18)を製造した。
【0216】
【0217】
[評価]
<クリーニング性>
評価機は、AccurioPress C14000(コニカミノルタ社製)を用いた。当該評価機に作製した現像剤を搭載し、常温・常湿環境(NN環境;23℃、50%RH)で、5%の印字チャートにて50000枚プリントの耐久試験を実施した。
耐久試験後、顕微鏡で感光体表面を観察し、奥、中央、手前3か所の20mm×40mmの視野における現像剤由来の付着物の合計個数を測定した。測定結果を下記の基準で評価し、「AAA」、「AA」及び「A」を品質上問題ないと判断した。
AAA:付着物なし
AA:付着物1個以上6個未満
A:付着物が6個以上11個未満
B:付着物が11個以上
【0218】
<耐ホットオフセット性>
評価機は、bizhub Press C14000(コニカミノルタ社製)を用いた。常温常湿(温度23℃、湿度50%RH)で、A3サイズの塗工紙「OKトップコート+(157g/m2)」(王子製紙株式会社製)上に対し、トナー付着量が4g/m2のベタ画像を出力する定着実験を行った。定着の設定温度を120℃から200℃まで5℃ずつ昇温するよう変更しながら、定着実験を繰り返し行った。
ベタ画像のホットオフセットを目視で評価し、下記評価基準にしたがって耐ホットオフセット性を評価した。「AAAA」、「AAA」、「AA」及び「A」を品質上問題ないと判断した。
AAAA:180℃以下でホットオフセットなし
AAA:170℃以上180℃未満でホットオフセット発生
AA:160℃以上170℃未満でホットオフセット発生
A:150℃以上160℃未満でホットオフセット発生
B:150℃未満でホットオフセット発生
【0219】
<ニス密着性>
AccurioPress C14000(コニカミノルタ社製)でA3サイズの塗工紙「OKトップコート+(157g/m2)」(王子製紙株式会社製)上にトナー付着量が4g/m2のベタ画像を出力した。この画像上に、ニスコータ(BNテクノロジーズ社製 Digi UV Coater)を用いて、速度30m/分、塗布厚約5μmになるようにUVニスを塗布した。
上記方法で塗布されたベタ画像上のニスに、セロファンテープ(CT-12、ニチバン社製)を貼った。セロファンテープを剥がすことで、ニス密着性を評価した。評価基準は以下のとおりである。「AAAA」、「AAA」、「AA」及び「A」を品質上問題ないと判断した。
AAAA:ニス剥離なし
AAA:セロファンテープの接着面積に対し、10%未満の剥離
AA:セロファンテープの接着面積に対し、10%以上20%未満の剥離
A:セロファンテープの接着面積に対し、20%以上30%未満の剥離
B:セロファンテープの接着面積に対し、30%以上の剥離
【0220】
【0221】
上記結果に示されるように、本発明のトナーは、比較例のトナーに比べて、クリーニング性、耐オフセット性及びニスの密着性に優れていることが認められる。