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特開2024-128180硬化体の配合方法、硬化体用組成物、及び硬化体
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  • 特開-硬化体の配合方法、硬化体用組成物、及び硬化体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128180
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】硬化体の配合方法、硬化体用組成物、及び硬化体
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/02 20060101AFI20240913BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20240913BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20240913BHJP
   C04B 18/08 20060101ALI20240913BHJP
   C04B 22/06 20060101ALI20240913BHJP
   C04B 22/10 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B18/14 A
C04B18/10 Z
C04B18/08 Z
C04B18/14 Z
C04B22/06 Z
C04B22/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037027
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000220675
【氏名又は名称】東京都下水道サービス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000229667
【氏名又は名称】日本ヒューム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 幸彦
(74)【代理人】
【識別番号】100194283
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 大勇
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】江口 秀男
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MA00
4G112MB06
4G112PA26
4G112PA27
4G112PA28
4G112PA29
4G112PB03
4G112PB08
(57)【要約】
【課題】従来より性能の高いコンクリートの硬化体の配合方法を提供する。
【解決手段】
水と、水和反応性材料と、潜在水硬性材料と、ポゾラン反応性材料と、水酸化物イオン供給材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、高性能減水剤とが配合される。水和反応性材料、潜在水硬性材料とポゾラン反応性材料とは、粒径又は比表面積において、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分が、材料粒子の硬化反応で粒子表面に生成、析出した硬化反応生成物で充填され、緻密化されるように調製される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、水和反応性材料と、潜在水硬性材料と、ポゾラン反応性材料と、水酸化物イオン供給材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、高性能減水剤とが配合され、
前記水和反応性材料、前記潜在水硬性材料と前記ポゾラン反応性材料とは、粒径又は比表面積において、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分が、材料粒子の硬化反応で粒子表面に生成、析出した硬化反応生成物で充填され、緻密化されるように調製される
ことを特徴とする硬化体の配合方法。
【請求項2】
前記水和反応性材料は、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、水酸化カルシウム、及び水和反応を発現して硬化する材料のいずれか又は任意の組み合わせを含み、
前記潜在水硬性材料は、高炉スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰、及びアルカリ雰囲気の中で水硬反応を発現して硬化する材料のいずれか又は任意の組み合わせを含み、
前記ポゾラン反応性材料は、フライアッシュ、下水汚泥焼却灰、シリカフューム、コンクリート用火山ガラス微粉末、及びアルカリの刺激によりポゾラン反応を発現して硬化する材料のいずれか又は任意の組み合わせを含み、
前記水酸化物イオン供給材は、水酸化カリウム、炭酸カリウム、消石灰のいずれか又は任意の組み合わせを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の硬化体の配合方法。
【請求項3】
前記水和反応性材料と、前記潜在水硬性材料と前記ポゾラン反応性材料は、
粒径が大きく又は比表面積が小さい材料の硬化反応の発現開始時期を、粒径が小さく又は比表面積が大きい材料より遅らせるように調製される
ことを特徴とする請求項1に記載の硬化体の配合方法。
【請求項4】
前記水和反応性材料、前記潜在水硬性材料、及び前記ポゾラン反応性材料の硬化で生成する硬化反応生成物が、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する空隙を埋めて、前記部分が緻密化されるようにし、
前記硬化反応生成物は、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウムアルミノシリケート水和物、カルシウムシリケート水和物、ハイドロタルサイト、エトリンガイト、及びモノサルフェートを含み、
前記空隙は、ゲル空隙と、毛細管空隙、マイクロ孔、メソ孔、及びマクロ孔を含む
ことを特徴とする請求項3に記載の硬化体の配合方法。
【請求項5】
材料粒子の表面に生成されて析出する硬化反応生成物が、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分において形成された円柱状又は円錐状でモデル化される前記部分に存在する細孔の拡底部を閉塞することにより、前記細孔の先狭部に存在する粒径が小さく、又は比表面積が大きい材料の硬化反応の発現に必要な硬化反応必要物質が前記細孔の先狭部へ移動するのを阻害させないように調整され、
前記硬化反応必要物質は、ゲル水、水酸化物イオン、ケイ酸化合物、及び酸化マグネシウムを含む
ことを特徴とする請求項4に記載の硬化体の配合方法。
【請求項6】
粒径が大きい、又は比表面積が小さい材料から、粒径が小さく、又は比表面積が大きい材料へと硬化反応の発現が開始するように、硬化反応発現開始までの時間が遅い前記ポゾラン反応性材料と硬化反応の発現が早い前記潜在水硬性材料と、水和反応性材料を組み合わせて配合し、
前記硬化反応必要物質の前記細孔の先狭部への移動を促し、
前記細孔の先狭部の中、及び細孔先狭部の近傍に存在する粒径が小さく、又は比表面積が大きい材料の硬化反応の発現と、材料粒子表面への前記硬化反応生成物の生成と析出とを促し、
材料粒子表面の前記硬化反応生成物で、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する円柱状又は円錐状でモデル化される細孔を先狭部から拡底部へと向けて充填することを特徴とする請求項5に記載の硬化体の配合方法。
【請求項7】
水と、水和反応性材料と、潜在水硬性材料と、ポゾラン反応性材料と、水酸化物イオン供給材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、高性能減水剤とが配合され、
前記水和反応性材料と、前記潜在水硬性材料と前記ポゾラン反応性材料は、粒径、又は比表面積が、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分が材料の硬化反応発現で粒子表面に析出する硬化反応生成物で緻密化されるように調製される
ことを特徴とする硬化体用組成物。
【請求項8】
水と、水和反応性材料と、潜在水硬性材料と、ポゾラン反応性材料と、水酸化物イオン供給材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、高性能減水剤とを配合し、
前記水酸化物イオン供給材は、水酸化カリウム、炭酸カリウム、消石灰、及び前記水酸化物イオン供給材以外の水酸化物イオンの化合物材料のいずれか又は任意の組み合わせを含む
ことを特徴とする硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にコンクリートの硬化体の配合方法、硬化体用組成物、及び硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、セメント等の水和反応性材料、潜在水硬性をもつ材料(以下、「潜在水硬性材料」)、及びポゾラン反応性をもつ材料(以下、「ポゾラン反応性材料」という。)のいずれか又は材料を組み合わせて配合し、水和反応、潜在水硬反応、及びポゾラン反応のいずれか又はこの反応を組み合わせて硬化させた硬化体である。
【0003】
従来、耐薬品性の向上、耐硫酸性の向上、硫化水素、二酸化炭素の浸透や海水の侵入を抑制することを目的として、普通ポルトランドセメントに産業副産物である高炉スラグ微粉末やフライアッシュを混合したもの、又は普通ポルトランドセメントの配合量を少なくしたものが存在する。
【0004】
さらに、特許文献1を参照すると、普通ポルトランドセメントに代えて、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカフューム、及び、下水汚泥焼却灰を配合したものに細骨材と粗骨材を加えて硬化させた硬化体である耐酸性コンクリートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際特開第2019/172349号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
単一の材料、又は特許文献1に記載された従来のコンクリートのように、複数の材料を配合して製造される硬化体は、より緻密な硬化体とすることで、高い耐硫酸性や耐薬品性、及び二酸化炭素の浸透や海水の侵入に対する抵抗性を向上させることが可能であると考えられた。このため、材料が硬化反応を発現することで硬化体を緻密化する配合方法を確立する技術的なニーズがあった。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の問題を解消し、より性能の高い硬化体の配合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の硬化体の配合方法は、水と、水和反応性材料と、潜在水硬性材料と、ポゾラン反応性材料と、水酸化物イオン供給材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、高性能減水剤とが配合され、前記水和反応性材料、前記潜在水硬性材料と前記ポゾラン反応性材料とは、粒径又は比表面積において、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分が、材料粒子の硬化反応で粒子表面に生成、析出した硬化反応生成物で充填され、緻密化されるように調製されることを特徴とする。
本発明の硬化体の配合方法は、前記水和反応性材料は、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、水酸化カルシウム、及び水和反応を発現して硬化する材料のいずれか又は任意の組み合わせを含み、前記潜在水硬性材料は、高炉スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰、及びアルカリ雰囲気の中で水硬反応を発現して硬化する材料のいずれか又は任意の組み合わせを含み、前記ポゾラン反応性材料は、フライアッシュ、下水汚泥焼却灰、シリカフューム、コンクリート用火山ガラス微粉末、及びアルカリの刺激によりポゾラン反応を発現して硬化する材料のいずれか又は任意の組み合わせを含み、前記水酸化物イオン供給材は、水酸化カリウム、炭酸カリウム、消石灰のいずれか又は任意の組み合わせを含むことを特徴とする。
本発明の硬化体の配合方法は、前記水和反応性材料と、前記潜在水硬性材料と前記ポゾラン反応性材料は、粒径が大きく又は比表面積が小さい材料の硬化反応の発現開始時期を、粒径が小さく又は比表面積が大きい材料より遅らせるように調製されることを特徴とする。
本発明の硬化体の配合方法は、前記水和反応性材料、前記潜在水硬性材料、及び前記ポゾラン反応性材料の硬化で生成する硬化反応生成物が、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する空隙を埋めて、前記部分が緻密化されるようにし、前記硬化反応生成物は、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウムアルミノシリケート水和物、カルシウムシリケート水和物、ハイドロタルサイト、エトリンガイト、及びモノサルフェートを含み、前記空隙は、ゲル空隙と、毛細管空隙、マイクロ孔、メソ孔、及びマクロ孔を含むことを特徴とする。
本発明の硬化体の配合方法は、材料粒子の表面に生成されて析出する硬化反応生成物が、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分において形成された円柱状又は円錐状でモデル化される前記部分に存在する細孔の拡底部を閉塞することにより、前記細孔の先狭部に存在する粒径が小さく、又は比表面積が大きい材料の硬化反応の発現に必要な硬化反応必要物質が前記細孔の先狭部へ移動するのを阻害させないように調整され、前記硬化反応必要物質は、ゲル水、水酸化物イオン、ケイ酸化合物、及び酸化マグネシウムを含むことを特徴とする。
本発明の硬化体の配合方法は、粒径が大きい、又は比表面積が小さい材料から、粒径が小さく、又は比表面積が大きい材料へと硬化反応の発現が開始するように、硬化反応発現開始までの時間が遅い前記ポゾラン反応性材料と硬化反応の発現が早い前記潜在水硬性材料と、水和反応性材料を組み合わせて配合し、前記硬化反応必要物質の前記細孔の先狭部への移動を促し、前記細孔の先狭部の中、及び細孔先狭部の近傍に存在する粒径が小さく、又は比表面積が大きい材料の硬化反応の発現と、材料粒子表面への前記硬化反応生成物の生成と析出とを促し、材料粒子表面の前記硬化反応生成物で、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する円柱状又は円錐状でモデル化される細孔を先狭部から拡底部へと向けて充填することを特徴とする。
本発明の硬化体用組成物は、水と、水和反応性材料と、潜在水硬性材料と、ポゾラン反応性材料と、水酸化物イオン供給材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、高性能減水剤とが配合され、前記水和反応性材料と、前記潜在水硬性材料と前記ポゾラン反応性材料は、粒径、又は比表面積が、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分が材料の硬化反応発現で粒子表面に析出する硬化反応生成物で緻密化されるように調製されることを特徴とする。
本発明の硬化体は、水と、水和反応性材料と、潜在水硬性材料と、ポゾラン反応性材料と、水酸化物イオン供給材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、高性能減水剤とを配合し、前記水酸化物イオン供給材は、水酸化カリウム、炭酸カリウム、消石灰、及び前記水酸化物イオン供給材以外の水酸化物イオンの化合物材料のいずれか又は任意の組み合わせを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水和反応性材料と、潜在水硬性材料とポゾラン反応性材料の硬化で材料粒子の表面に析出、生成する硬化反応生成物とにより、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する空隙が充填され、この部分が緻密化することが可能なコンクリートの硬化体の配合方法を提供することができる。これにより、従来のコンクリートより耐薬品性、耐硫酸性、中性化に対する抵抗性、塩害に対する抵抗性の改善に有効な緻密な硬化体となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施例に係るIBPMコンクリートの粒子表面における硬化反応生成物による細孔容積の低減についての実験結果を示すグラフである。
図2】本発明の比較例に係るOPCコンクリートの粒子表面における硬化反応生成物による細孔容積の低減についての実験結果を示すグラフである。
図3】本発明の実施例に係るFCコンクリートの粒子表面における硬化反応生成物による細孔容積の低減についての実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
本発明の発明者らは、コンクリートの硬化体に配合する硬化反応発現開始時間が異なる材料粒子を粒径に応じて硬化反応を発現させることで硬化体を緻密化させることを目指して鋭意開発を行った。硬化体として包含される従来の産業副産物を使用したコンクリートは、早期の強度発現の確保に主眼をおいて、使用する材料の種類とその材料の混合比率の調整を行ってきた。
これについて、本発明では、硬化体に配合する材料の種類や混合比率や配合割合を調製するのみではなく、配合する材料の粒径、又は材料粒子の比表面積や材料が硬化反応を発現開始するまでの時間の違いにより、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分の緻密さを向上させることを目的として、鋭意実験と開発を進めた。
【0012】
具体的には、従来の普通ポルトランドセメント、又は高炉セメントやフライアッシュセメントを用いたコンクリートでは、コンクリートのうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する空隙の中にある3nmから30μmまで広い範囲に分布する毛細管空隙のうち、コンクリートの耐久性の良否に影響を及ぼす3nmから0.01μm未満の範囲の細孔の容積を養生期間の増加で低減することはできなかった。
このため、本発明では、配合する材料の硬化反応発現開始までの時間の違いを考慮しつつ、材料の種類や粒径、又は比表面積を工夫して調製することで、硬化後の硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分をより緻密化することで3nmから0.01μm未満の細孔容積を低減することを可能とした。硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分について、硬化体中に様々な径で存在するゲル空隙、毛細管空隙、マイクロ孔、メソ孔、及びマクロ孔等の空隙(以下、「細孔」という。)を充填することを可能とする。結果として、従来のコンクリート(材料粒子の硬化反応発現開始までの時間の違いを考慮しないで材料の種類や粒子の粒径を設定して配合されたコンクリートを指す)よりも顕著に緻密化することができることを確認した。
【0013】
より詳しく説明すると、本実施形態に係る硬化体の配合方法は、水と、水和反応性材料、ポゾラン反応性材料、潜在水硬性材料、及び消石灰、水酸化物イオン供給材と、膨張材と、細骨材と、粗骨材と、高性能減水剤とが配合され、水和反応性材料と、潜在水硬性材料と、ポゾラン反応性材料とは、材料の硬化反応の種類の違いに合わせて粒径又は比表面積について、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分が緻密化されるように調製されることを特徴とする。
このように、硬化体に配合する材料の性状を調製することで、硬化体をより緻密なものとすることができる。結果として、硫酸や薬品による浸食、硫化水素、及び二酸化炭素の浸透、海水の侵入に対する抵抗性を向上させることができる。
【0014】
以下、本発明の硬化体の配合方法の実施の形態の詳細について説明する。
本実施形態に係る硬化体の配合方法は、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する細孔を縮減する。この上で、細孔全容積を低減するために必要な、材料粒子の硬化反応が発現開始するまでの時間の違いを考慮しつつ、粒径又は比表面積を設定する。これにより、材料粒子の硬化反応で粒子表面に生成、析出した硬化反応生成物で充填され、緻密化されるようにする。
【0015】
具体的には、本実施形態に係る硬化体の配合方法において、硬化体のうち、細骨材と粗骨材を除く部分に配合する材料は、1種類又は2種類以上である。1種類の場合は、異なる2つの粒径の粒子又は異なる2つの比表面積の粒子を、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する細孔の充填を考慮して調整する。
また、水和反応性材料、潜在水硬性材料、ポゾラン反応性材料のうち、2種類以上配合する場合は、それぞれの材料粒子の粒径は、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する細孔の充填を考慮して調整する。
この際、硬化体に配合する材料は、材料の粒径が大きくなるほど、又は比表面積が小さくなるほど、硬化反応発現開始までの時間が長い材料とする。具体的には、2種類の材料を配合する場合は、粒径が大きい粒子は硬化反応発現開始が遅いポゾラン反応性材料とし、粒径が小さな粒子は硬化反応発現開始時間が早い潜在水硬性材料、又は水和反応性材料とすることが可能である。
【0016】
上述の2種類の材料が配合された硬化反応の組み合わせは、(1)ポゾラン反応(粒径が大きな、又は比表面積が小さな材料)と潜在水硬反応(粒径が小さな、又は比表面積が大きな材料)、(2)ポゾラン反応(粒径が大きな、又は比表面積が小さな材料)と水和反応(粒径が小さな、又は比表面積が大きな材料)、又は(3)潜在水硬反応と水和反応のいずれか、又は粒径が大きな又は比表面積が小さな材料、若しくは粒径が小さな又は比表面積が大きな材料、となる。この上で、大きな粒子、又は比表面積が小さな粒子より、小さな粒子、又は硬化反応発現開始時間が早い比表面積が大きな粒子の組み合わせであれば可能である。
【0017】
具体的には、本実施形態に係る硬化体の配合方法において、水和反応性材料は、ポルトランドセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、水酸化カルシウム、及びこれら以外の水和反応を発現して硬化する材料のいずれか又は任意の組み合わせを含む。
このうち、ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドであってもよい。
さらに、これら以外の水和反応を発現して硬化する材料は、例えば、コンクリートと同様の硬化体を製造するのに用いられる無機化合物であってもよい。
【0018】
一方、潜在水硬性材料は、高炉スラグ微粉末、及び下水汚泥焼却灰、及びこれら以外のアルカリ雰囲気の中で水硬反応を発現して硬化する材料のいずれか又は任意の組み合わせを含む。
ポゾラン反応性材料は、フライアッシュ、下水汚泥焼却灰、シリカフューム、コンクリート用火山ガラス微粉末、ポゾラン反応性材料、及びこれら以外のアルカリの刺激によりポゾラン反応を発現して硬化する材料のいずれか又は任意の組み合わせを含む。
【0019】
より具体的には、本実施形態に係る硬化体の配合方法では、例えば、特許文献1に記載された耐酸性コンクリートと同様に、フライアッシュ(以下、「FA」とも省略する。)と、高炉スラグ微粉末(以下、「BFS」とも省略する。)とを主材料とし、下水汚泥焼却灰のうち、粒度調整を行った汚泥焼却灰である後述する「スーパーアッシュ」(以下、「SA」とも省略する。)及びシリカフューム(以下、「SF」とも省略する。)を含んだ産業副産物を配合する。以下、この本実施形態に係る硬化体を「IBPM」(Industrial By-Product Materials)ともいう。
ここで、本実施形態に係る硬化体の配合方法の材料の物理的性状(性質)、比重、比表面積、粒径、及び硬化反応の条件の一例について、下記の表1に示す。
【0020】
【表1】
【0021】
本実施形態においては、上述のように、材料粒子の大きさの異なる、又は比表面積が異なる材料の種類、硬化反応の発現が開始するまでの時間の違いで設定した。
本実施形態に係る硬化体に配合される、これらの材料の特徴は、以下のようになる:
【0022】
本実施形態に係るSFは、アーク式電気炉から排ガス中のダストとして集塵される大部分が非晶質で球形のシリカ(SiO2)等である。シリカフュームは、フライアッシュ同様に球形をした材料であるが、粒径はフライアッシュよりさらに小さい材料である。
【0023】
本実施形態に係る下水汚泥焼却灰としては、特許文献1に記載されているような、下水汚泥焼却灰を粒度調整したSAを用いた。
SAは、下水汚泥焼却灰を特定の粒径まで破砕粉砕したもので、高炉スラグ微粉末と同様に水硬性を発現する。SAの粒度分布は、FAや高炉スラグ微粉末に比較して広い範囲に分布している。このため、粒径が小さな粒子はポゾラン反応で硬化を発現し、それより大きな粒子は潜在水硬反応を示す粒子によって構成される材料である。
【0024】
本実施形態に係るBFSは、銑鉄製造過程で副産される微粉末である。
BFSは、カルシウムシリケート水和物及びカルシウムアルミネート水和物を生成して硬化する「潜在水硬性」により、水分供給とアルカリ刺激剤により硬化する。本実施形態に係る硬化体において、主に強度を生じさせる材料である。
【0025】
本実施形態に係るFAは、火力発電所において石炭の微粉炭燃焼の集塵機で捕集されるコンクリート用のポラゾン石炭灰(フライアッシュ)である。フライアッシュは、主成分がシリカとアルミナなので、アルカリ刺激材によりアルカリ雰囲気中でカルシウムシリケート水和物等を生成するポゾラン反応により硬化する。
具体的には、本実施形態に係るFAは、粒径が7μmより大きい球形をした材料である。
【0026】
これらの他にも、本実施形態に係る緻密化に関係する材料として、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、下水汚泥焼却灰、シリカフューム以外のものを材料として用いることが可能である。たとえば、コンクリート用火山ガラス微粉末、廃ガラス微粉末、及びアルカリ雰囲気で硬化する、コンクリート用材料を用いることも可能である。
【0027】
以下、本実施形態においては、潜在水硬性材料は、例えば、BFS、及びSAのいずれか又は任意の組み合わせを含む。
また、本実施形態においては、ポゾラン反応性材料は、FA、SA、及びSFのいずれか又は任意の組み合わせを含むことを特徴とする。
【0028】
本実施形態に係る水酸化物イオン供給材は、水酸化カリウム、炭酸カリウム、及び消石灰のいずれか又は任意の組み合わせを含むんでいてもよい。
ここで、炭酸カリウムは、水に溶解すると、加水分解によりKOHとH2CO3に分解し、さらにKOHがK+とOH-に電離することで水中にOH-を遊離させ、潜在水硬反応やポゾラン反応の誘発材となるものと考えられる。すなわち、本実施形態においては、このように、広義の意味で、硬化体の反応時に水酸化物イオンを供給する材料を用いることが可能である。さらに、上述した以外の水酸化物イオンの化合物材料を用いることも可能である。
【0029】
さらに、詳しく説明すると、本実施形態に係る硬化体の配合方法は、配合する材料の粒径と硬化反応の発現開始時間の差に着目して、水和反応性材料と、潜在水硬性材料及びポゾラン反応性材料の配合を調製し、コンクリートに配合される粒子が、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する細孔の直径を縮減して、この部分の緻密化ができるように調製される。
【0030】
すなわち、本実施形態に係る硬化体の配合方法では、配合材料の粒径と材料の硬化反応の種類の違いによる硬化反応発現開始時間の早遅を設定する。
これにより、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分の細孔を、配合した材料粒子の表面に析出する硬化反応生成物で充填する。結果として、部分に存在する細孔直径を縮減するとともに容積を低減し、上述の部分を緻密化することができる。
【0031】
具体的には、本実施形態に係る硬化体の配合方法は、粒径が大きい材料から小さな材料について、ポゾラン反応性材料と潜在水硬性材料、又は水和性材料を組み合わせて配合される。
【0032】
より詳しく説明すると、本実施形態に係る硬化体の配合方法は、配合する水和反応性材料、潜在水硬性材料、及びポゾラン反応性材料の粒子の径を小さな径から大きな径とし、更に、硬化反応の発現を小さな径から大きな径の材料に順に開始させるように組み合わせる。
これにより、粒径が同じで硬化反応の発現が同時に開始する単一の粒子を配合する普通ポルトランドセメントよりも空隙に対する充填性が向上し、本実施形態に係る硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分を緻密化することが可能となる。
【0033】
または、水和反応性材料、潜在水硬性材料及びポゾラン反応性材料の硬化反応の発現開始時間の違いに合わせて、配合する粒子の大きさを組み合わせる。
これによっても、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する細孔の容積を、粒子の表面に析出する析出物である硬化反応生成物で縮減することが可能である。
【0034】
さらに具体的には、水和反応性材料、又は潜在水硬性材料及びポゾラン反応性材料として、小さい粒径、又は比表面積が大きな材料から、大きな粒径、又は比表面積が小さい材料を多種類組み合わせて配合することが効果的である。
この際、粒径が広い範囲に分布し、材料の粒径の違いによって、潜在水硬性材料、及びポゾラン反応性材料の両方の硬化反応性状を有するSAを配合することが好適である。
【0035】
このように構成することで、材料が練り混ぜられてから小さな粒子、又は比表面積が大きな材料が硬化反応の発現を開始し、更に、養生期間が増加するにつれて、大きな粒子、又は比表面積が小さな材料が硬化反応の発現が開始される。
これにより、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分にある細孔は、粒子の表面に発生した硬化反応生成物で充填されることで、緻密化される。この硬化反応生成物は、ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、カルシウムアルミノシリケート水和物、カルシウムシリケート水和物、ハイドロタルサイト、エトリンガイト、及びモノサルフェート等である。
【0036】
まとめると、本実施形態において、硬化体の配合を粒径の大きな材料から粒径が小さなものへと順番に、ポゾラン反応性材料であるFA、潜在水硬性材料であるBFS、潜在水硬性材料であるSA、ポゾラン反応性材料であるSA、ポゾラン反応性材料であるSFとすることで、粒径が大きな、又は比表面積が小さな材料が硬化反応を発現する前に、粒径が小さい、又は比表面積が大きい材料の硬化反応を発現させる。これにより、円柱状、又は円錐状を呈する細孔の拡底部が、粒子表面に析出する硬化反応生成物で閉塞されることなく、細孔先狭部にある、より小さな、又は比表面積が大きな粒子(本実施形態の例ではSF)の硬化発現に必要な硬化反応必要物質の供給を阻害しない。これにより、配合されたすべての材料粒子が硬化反応を発現し、粒子表面に硬化反応生成物を析出させることで硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する細孔直径を縮減させるとともに積算細孔容積を低減させる。
【0037】
また、本実施形態において、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分は、表1に示す材料の物理的性状の通り、異なる粒径の潜在水硬性材料とポゾラン反応性材料で構成されている。潜在水硬性材料は、ポゾラン反応性材料に比較して硬化反応の発現が早い。このため、硬化体中に配合される潜在水硬性材料をポゾラン反応性材料の粒径より小さく、又は比表面積を大きくすることで、粒子表面への硬化生成物の析出によって円柱状、又は円錐状を呈する細孔の拡底部の閉塞による硬化反応必要物質の細孔先狭部への移動を阻害させることがない。硬化反応発現までの時間が遅く、粒径が大きい、又は比表面積が小さいポゾラン反応性材料を配合することで、円柱状又は円錐状を呈する細孔の先狭部まで、更に、粒径が小さい、又は比表面積が大きいポゾラン反応性材料の硬化発現に必要なポゾラン反応必要物質をポゾラン反応性材料の硬化反応が完了するまで供給しつづけることで、細孔先狭部に存在するポゾラン反応性材料であるSFの硬化反応の発現と粒子表面への硬化反応生成物の析出を促させることができる。
【0038】
本実施形態に係る硬化体用組成物は、上述の硬化体の配合方法により配合された各材料から水を除いたプレミックスや混合物(以下、単に「混合物」と称する。)の形式で提供されてもよい。この混合物は、更に、粗骨材、細骨材に含まれる砂、及び高性能減水剤のいずれか又は任意の組み合わせを除いた形式で提供されてもよい。この場合、プレキャストか現場打設かにより、配合比等を変更してもよい。
【0039】
本実施形態に係る硬化体は、遠心力成形で締め固める、振動成型する、又は、現場施工で打設されて製造されてもよい。
【0040】
また、本実施形態の産業副産物として、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、下水道汚泥焼却灰、及びシリカフューム以外のものを用いることも可能である。たとえば、CaやSiや各種無機金属等を含む、バイオマス発電所の焼却灰、煤塵、鉱物精錬の残渣等も用いることが可能である。また、下水道汚泥焼却灰としても、特許文献1に記載されたスーパーアッシュ以外のものを用いることも可能である。
また、アルカリ刺激材として、消石灰以外にも、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属水和物、石膏等も用いることが可能である。
【実施例0041】
以下で、図を参照しながら本発明の実施例について説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0042】
(硬化体組成物及び硬化体の配合例)
本実施例では、配合する材料粒子の直径、又は比表面積と材料の硬化反応発現の早遅の違いを考慮しつつ、表1に示す材料を配合し、材齢が14日と91日に達するまで気温摂氏20度、相対湿度50%の恒温恒湿室において気中養生の試験を行った。
これにより、本実施例に係る硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分の全細孔容積を低減させることができるか調べた。
【0043】
まず、下記の表2に本実施例に係る硬化体の材料割合表を示す。表2は、硬化体1m3あたりの配合割合と単位重量割合である。
【0044】
【表2】
【0045】
下記の表3に本実施例に係る硬化体の配合を示す。表3は、硬化体1m3あたりの配合例を示す。
【0046】
【表3】
【0047】
(硬化体組成物及び硬化体の製造と試験)
本実施例の硬化体用組成物として、表1に記載したIBPMを、ポゾラン反応性材料であるFAと、潜在水硬反応性材料であるBFSと、潜在水硬性材料とポゾラン反応性材料の双方の性質を有するSAと、ポゾラン反応性材料であるSFとを、表2に示す割合で混合して製造した。この上で、各材料を表3に記載した配合して練り上げ、本実施例に係る硬化体として、IBPMコンクリートを製造した。
この上で、材齢14日と材齢91日で、水銀圧入式ポロシメータを用いて硬化体中から細骨材と粗骨材を取り除いた部分の細孔径分布を測定した。
【0048】
(結果)
まず、コンクリートに配合する材料粒子の種類と粒径とを、上述の実施形態に対応して設定した。
図1に、本実施例の配合方法を用いて配合したIBPMコンクリートの粒子表面における硬化反応生成物による細孔容積の低減について測定した結果を示す。具体的には、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分の細孔分布を水銀圧入式ポロシメータで測定した。それぞれ、図1(a)は、材齢が14日に達するまで気中養生を行った後に測定したものを示す。図1(b)は、材齢が91日に達するまで気中養生を行った後に測定したものを示す。
各グラフにおいて、左側縦軸は積算細孔容積(ml/g)を、右側縦軸は細孔容積(ml/g)を、横軸は細孔直径(μm)を示す。実線は、細孔容積(ml/g)を、破線は積算細孔容積(ml/g)を示す。
【0049】
結果として、本実施例であるIBPMを配合した硬化体(IBPMコンクリート)は、材齢14日から材齢91日に養生日数が伸びると、図1の(イ)に示す細孔直径0.003μmから細孔直径0.010μmの範囲にある直径の細孔容積が減少し、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分が緻密になった。
具体的には、IBPMを配合した硬化体は、気中養生材齢が14日から91日に増加すると、硬化体中から細骨材及び粗骨材を除いた部分の全細孔容積は、0.211ml/gから0.169ml/gへと減少した。すなわち、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する細孔の容積が低減した。
【0050】
このように、硬化体に配合する材料粒子の大きさ、又は比表面積の違いと硬化体中における材料粒子の硬化反応発現開始時間の違いが、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分の緻密化に関係することが示された。
【0051】
次に、硬化体の材料の種類と、配合する材料粒子の大きさと、硬化体のうち、細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する細孔の細孔直径と細孔容積、および細孔直径と積算細孔容積を測定した。
具体的には、配合される材料が1種類で構成されたOPC(以下、単に「OPC」とも記載する。)を比較例として、配合される材料が2種類で、材料の硬化反応発現開始時間に差があるFCコンクリート(以下、単に「FC」とも記載する。)を実施例として、細骨材及び粗骨材を除いた部分の細孔径分布と、細孔容積と、積算細孔容積を、水銀圧入式ポロシメータを用いて測定した。
【0052】
表4は、材料粒子の粒径と材料粒子が硬化反応発現の関係を検証するOPC及びFCの各硬化体について、材料の比重、比表面積、粒径、及び1m3あたりの単位重量を示す。
【0053】
【表4】
【0054】
表4において、上述のように、OPCは、普通ポルトランドセメントの硬化体である。FCは、普通ポルトランドセメントに他の材料を配合した硬化体である。FCは、普通ポルトランドセメントより粒径が大きく、又は比表面積が小さく硬化反応発現開始までの時間が遅いフライアッシュを配合した硬化体である。
【0055】
ここで、OPCは、材料粒子の粒径又は比表面積が等しく、硬化反応発現開始時間に差がない単一の硬化反応材料で構成される。FCは、粒径が大きく又は比表面積が小さく硬化反応発現開始時間が遅いポゾラン反応性材料であるフライアッシュと、フライアッシュより粒径が小さい、又は比表面積が大きく硬化反応発現が開始するまでの時間が早い水和反応性材料である普通ポルトランドセメントとで構成される。
すなわち、ここでは、OPCが比較例、FCが実施例となる。
【0056】
表5は、材料粒子の粒径と硬化発現の関係を検証する硬化体1m3あたりの配合重量を示す。
【0057】
【表5】
【0058】
図2は、比較例として、OPCコンクリートの粒子表面における硬化反応生成物による細孔容積の低減について、細骨材及び粗骨材を除いた部分の細孔分布を水銀圧入式ポロシメータで測定した結果を示したものである。図2(a)は材齢が14日に達するまで気中養生を行った後に測定した結果である。図2(b)は材齢が91日に達するまで気中養生を行った後に測定した結果である。各グラフにおいて、左側縦軸は積算細孔容積(ml/g)を、右側縦軸は細孔容積(ml/g)を、横軸は細孔直径(μm)を示す。実線は細孔容積(ml/g)を、破線は積算細孔容積(ml/g)を示す。
【0059】
結果として、気中養生材齢の期間が図2(a)の材齢14日から(b)材齢91日へと増加すると、図2の(イ)に示す0.3μmを越える大きな細孔容積が減少し、(ロ)に示す直径が0.3μmから0.006μmの範囲にある細孔容積が増加した。一方、図2(ハ)に示す細孔直径0.006μm未満の細孔容積は減少しなかった。
【0060】
すなわち、OPCで作製した1種類の材料、同じ粒径、又は比表面積が単一である材料粒子を配合した際、硬化体の硬化体中から細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する、半径3nmから30μmの範囲にある細孔(以下、「毛細管空隙」という。)のうち、直径が0.3μmを越える細孔の容積を低減できた。しかしながら、細孔直径0.006μm未満の細孔容積は低減しなかった。
【0061】
つまり、硬化反応材料が1種類で単一粒径、又は比表面積が単一である配合は、気中養生期間が14日から91日に増加しても、図2(ハ)に示したように、直径0.006μm未満の細孔径分布は変化せず、材料粒子の硬化反応の発現による細孔直径の縮減はできなかった。
よって、単一粒径又は比表面積が単一であれば、硬化反応発現開始までの時間に差が生じない材料粒子を配合した硬化体は、細孔径分布は変化するが、総細孔容積は低減しないことが示された。
【0062】
次に、実施例として、コンクリートに配合する材料粒子を水和反応性材料とポゾラン反応性材料の2種類とし、大粒径である材料をポゾラン反応性材料に小粒径である材料粒子を水和反応性材料としたFCコンクリートの細孔分布を測定した。すなわち、配合する材料を水和反応性材料とポゾラン反応性材料の2種類とし、更に、粒径を2種類又は比表面積が異なる2つの材料とした。配合した材料のうち、大きな粒径を有する材料はフライアッシュであり、小さな粒子又は比表面積が大きな粒子は普通ポルトランドセメントである。硬化反応の発現が開始するまでの時間は、水和反応性材料である普通ポルトランドセメントが早く、それに遅れて、ポゾラン反応性材料であるフライアッシュが硬化反応を発現する。
【0063】
図3は、FCコンクリートの粒子表面における硬化反応生成物による細孔容積の低減を示す。具体的には、細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する細孔の細孔分布を水銀圧入式ポロシメータで測定した結果を示す。図3(a)は材齢が14日に達するまで気中養生を行った後に測定結果である。図3(b)は材齢が91日に達するまで気中養生を行った後に測定結果である。図中の左側縦軸は積算細孔容積(ml/g)を、右側縦軸は細孔容積(ml/g)を、横軸は細孔直径(μm)を示す。図中の実線は細孔容積(ml/g)を、破線は積算細孔容積(ml/g)を示す。
【0064】
結果として、FCコンクリート、すなわち2種類の材料粒子から構成されるフライアッシュセメントB種を配合した硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分の細孔分布は、気中養生材齢が14日から91日に増加すると、図3の「イ」に示すように、細孔直径が0.03μm未満の細孔容積を低減した。さらに、図3の「ロ」に示すように、毛細管空隙の下限より小さな細孔直径0.006μm未満の細孔容積も低減した。
【0065】
すなわち、粒径が大きな又は比表面積が小さな粒子であるフライアッシュよりも、粒径が小さな又は比表面積が大きい粒子である普通ポルトランドセメントの硬化反応の発現が開始するまでの時間を早くすることで、毛細管空隙の下限より小さな細孔直径0.006μm未満の細孔の容積を低減することができた。
【0066】
このように、硬化反応の発現が開始するまでの時間が異なる材料を配合した硬化体では、硬化反応の発現が開始するまでの時間が早い材料の粒径を小さく、又は比表面積を大きくし、硬化反応発現が開始するまでの時間が遅れる材料の粒径を大きく、又は比表面積を小さくすることで、硬化体のうち細骨材及び粗骨材を除いた部分に存在する細孔のうち、毛細管空隙の下限より小さな細孔直径0.006μm未満の細孔容積を低減し、緻密化することができた。
【0067】
なお、上記実施の形態の構成及び動作は例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実行することができることは言うまでもない。
図1
図2
図3