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特開2024-128185ガラス基板のめっき方法およびガラス配線基板と配線基板の製造方法。
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128185
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ガラス基板のめっき方法およびガラス配線基板と配線基板の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/20 20060101AFI20240913BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240913BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
C23C18/20 Z
H05K1/03 610B
H05K3/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037034
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】598014825
【氏名又は名称】株式会社クオルテック
(72)【発明者】
【氏名】杉林 祐至
(72)【発明者】
【氏名】朴 潤烈
(72)【発明者】
【氏名】高原 博司
【テーマコード(参考)】
4K022
5E343
【Fターム(参考)】
4K022AA03
4K022AA42
4K022BA08
4K022BA36
4K022CA04
4K022CA09
4K022CA19
4K022CA21
4K022CA29
4K022DA03
5E343AA02
5E343AA26
5E343BB24
5E343DD34
5E343ER02
5E343FF16
5E343GG02
(57)【要約】
【課題】ガラス基板は金属めっき膜の付着強度がなく、ガラス基板に回路はパターンを形成することができなかった。
【解決手段】
ガラス基板101は処理液に浸漬させる。処理液201には金属イオンを含有している。ガラス基板101に超音波801を印加し、Si-OとNaのイオン性結合を弱くすることにより、ガラス基板101中にあるNaは処理液201aに溶出する。金属イオンは1価のNaイオンよりSi-Oに結合する力が強いため、容易に置換される。ガラス基板101内に置換された金属イオンは無電解めっきの金属と結合することにより、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成される。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属イオンを有するガラス基板と、
金属イオンを含有する処理液と、
超音波を出力する超音波装置を具備し、
前記ガラス基板を前記処理液に浸漬し、
前記ガラス基板を前記処理液に浸漬した状態で前記超音波装置から前記超音波を、前記ガラス基板に照射することを特徴とするガラス基板の製造装置。
【請求項2】
アルカリ金属イオンを有するガラス基板を、金属イオンを含有する処理液に浸漬し、
前記ガラス基板に超音波を照射することにより、前記アルカリ金属イオンと前記金属イオンとを置換させることを特徴とするガラス基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板、セラミック基板等の無機材料基板等の表面にめっき膜を形成する方法、ガラス基板の製造方法、ガラス基板の製造装置、ガラス基板の加工方法、ガラス基板の加工装置、セラミック等の無機材料基板の加工方法、ガラス基板配線基板、セラミック配線基板等の無機材料基板等に電子素子等を実装する金属配線パターンを形成する方法、電子部品等を実装した配線回路基板等、車、窓ガラスに使用する赤外線等の遮光ガラス基板101に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばガラス製の基板(ガラス基板)に積層し、表面の全面に金属膜を形成した後、フォトリソグラフィの技術により、金属膜をパターン化して金属配線を設けている。金属膜のパターン化のためにはガラス基板の表面を処理して金属膜の付着力を向上させる必要がある。
【0003】
特許文献1には、ナトリウムを含むガラスを特定の塩を含む無機塩に接触させることによって、ガラス中のNaと前記無機塩中のKとをイオン交換する化学強化工程が開始されている。特許文献2には、含金属無機物に強酸水溶液を混ぜ、含金属無機物を強酸水溶液に分散させて分散液とする工程が開始されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-006615
【特許文献2】特開2012-250423
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ガラス基板のフォトリソグラフィはレジスト塗布、露光、現像、エッチング等の工程を要し、工程数が多く、煩雑である。また、ガラス基板は金属めっき膜の付着強度がなく、ガラス基板に回路はパターンを形成することができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガラス基板の製造装置は、アルカリ金属イオンを有するガラス基板と、金属イオンを含有する処理液と、超音波を出力する超音波装置を具備し、前記ガラス基板を前記処理液に浸漬し、前記ガラス基板を前記処理液に浸漬した状態で前記超音波装置から前記超音波を、前記ガラス基板に照射することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のガラス基板の製造方法は、アルカリ金属イオンを有するガラス基板を、金属イオンを含有する処理液201に浸漬し、前記ガラス基板に超音波801を照射することにより、前記アルカリ金属イオンと前記金属イオンとを置換させることを特徴とする。
【0008】
ガラス基板101は処理液に浸漬させる。処理液201には金属イオンを含有している。ガラス基板101に超音波801を印加し、Si-OとNaのイオン性結合を弱くすることにより、ガラス基板101中にあるNaは処理液201aに溶出する。金属イオンは1価のNaイオンよりSi-Oに結合する力が強いため、容易に置換される。ガラス基板101内に置換された金属イオンは無電解めっきの金属と結合することにより、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、難めっき材料からなる被めっき層に
対しても、特殊な薬液又はフォトリソグラフィの技術を用いることなく、容易に、密着性
が良好であるめっき、配線パターン、めっき基板、配線基板、遮光ガラスを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のガラス基板等のめっき方法の説明図である。
図2】化学強化ガラス基板等の製造方法の説明図である。
図3】本発明のガラス基板等のめっき方法の説明図である。
図4】本発明のガラス基板等のめっき方法の説明図である。
図5】本発明のガラス基板等のめっき方法の説明図である。
図6】本発明のガラス基板等のめっき方法および製造装置の説明図である。
図7】本発明のガラス基板等のめっき方法および製造装置の説明図である。
図8】本発明のガラス基板等のめっき方法および製造装置の説明図である。
図9】本発明のガラス基板等のめっき方法の説明図である。
図10】本発明のガラス基板等のめっき方法の説明図である。
図11】本発明のガラス基板等のめっき方法および製造装置の説明図である。
図12】本発明のガラス基板等のめっき方法および製造装置の説明図である。
図13】本発明のガラス基板等のめっき方法および製造装置の説明図である。
図14】本発明のガラス基板等のめっき方法および製造装置の説明図である。
図15】本発明のガラス基板等のめっき方法および製造装置の説明図である。
図16】本発明のガラス基板等のめっき方法および製造装置の説明図である。
図17】本発明のガラス基板等のめっき方法および製造装置の説明図である。
図18】本発明のガラス基板等のめっき方法および製造装置の説明図である。
図19】本発明のガラス基板等のめっき方法の説明図である。
図20】本発明の回路基板の製造方法の説明図である。
図21】本発明の回路基板の製造方法のフローチャート図である。
図22】本発明のガラス基板等のめっき方法の説明図である。
図23】本発明の回路基板の製造方法の説明図である。
図24】本発明のガラス基板等のめっき方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を当該実施の形態を示す図面に基づいて説明する。明細書、図面で記載する実施形態では、理解を容易にするため、あるいは作図を容易にするため、省略、拡大、縮小する場合がある。
本明細書、図面で説明した本発明の実施例は、一部または全部を、それぞれを組み合わせることができる。
【0012】
本明細書、図面では、ガラス基板等101の加工方法、めっき方法、ガラス基板等101製造装置を例示して説明するが、本願発明はこれに限定するものではない。たとえば、ガラス基板101をセラミック基板等の無機材料の板、構成であっても本願発明は適用できることは言うまでもない。また、ガラスとセラミック等の無機材料の混合物からなる板あるいは物体であっても良いことは言うまでもない。
主として、実施例ではガラス基板101として、説明するが、基板でなくとも良く、たとえばガラスシート、ガラス薄膜であっても良い。
【0013】
また、基材を金属等のガラス材料以外で構成され、表面をガラスコーティングされた基板において、ガラスコーティングの表面を金属イオン置換、金属移動させた部材、方法にも本願発明は適用できることは言うまでもない。
【0014】
本明細書、図面の実施例において、ガラス基板101あるいはセラミック基板101等の板状のものを例示して説明をするが、本願発明は板状または平面上のものに限定されない。たとえば、円筒形、球形、レンズ形等であっても良い。
【0015】
ガラス基板101として、ソーダガラス、ライムガラス、石英ガラス、鉛ガラス、ホウ珪酸ガラス、結晶化ガラスの基板あるいは基材が例示される。セラミック基板101として、酸化アルミニウム、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム等からなる基板あるいは基材が例示される。
【0016】
図2は、ガラス基板101のイオン交換処理法の説明図である。ガラス基板101のイオン交換処理は、処理液201に含まれている種々の1価の陽イオンをガラス基板101に含まれているK等のアルカリ金属イオンと置換し、ガラス基板101中に処理液201に含まれるイオンを導入する。
【0017】
なお、本発明の明細書、図面において、説明に不要な事項、箇所等は省略あるいは図示をしていない。たとえば、図2(a)において、処理液201には、マイナスイオンも発生するが、図示を省略している。また、各層の膜厚は図示するために、厚みは模式的に図示している。以上の事項は、本発明の他の実施例、図面等のおいても同様である。
【0018】
ガラス基板101では、室温においてアルカリ金属イオンはガラス基板101中のSiまたはAlが共有している酸素と強いイオン結合を形成しているが、ガラス基板101温度を300℃以上に上昇させることにより得られる熱エネルギーによって、酸素とアルカリ金属イオンの結合力が弱くなり、アルカリ金属イオンが移動可能な状態になる。
【0019】
アルカリ金属イオンが移動可能な状態となったガラス基板101を任意の1価の陽イオンを含む溶融塩等の処理液201に浸漬させると、ガラス基板101中のイオンと処理液201に含まれるイオンとの濃度勾配が生じる。生じた濃度勾配が駆動力となり、ガラス基板101中のイオンと処理液201に含まれるイオンとの相互拡散が生じ、イオン交換が起こる。
【0020】
図2に図示するように、ガラス転移温度より低い温度で処理する場合には、ガラス基板101中に含まれるアルカリ金属よりも大きなイオン半径を有するアルカリ金属の溶融塩201と接触させる。Na(ガラス)<->K(溶融塩)のようなイオン交換を行う(図2(a))。イオン交換によって、占有容積の大きなアルカリ金属イオンがガラス中に拡散するため、ガラス表層の圧縮応力が増加して、ガラスの機械的強度が向上する。
【0021】
が拡散することにより、ガラス基板101の表面層のガラスは内部ガラスより線膨張係数が大きくなるため、冷却とともに表面の圧縮応力が増加し、ガラスの機械的強度が向上する(図2(b))。
【0022】
図3は本発明のガラス基板101のめっき方法の説明図である。本発明は、超音波装置を導入することにより、一般的な水溶液や有機溶媒中においてでもイオン交換が可能となる。
【0023】
ガラス基板101等に処理液201から保護する保護膜あるいは保護シート(図示せず)を形成することも有効である。保護する保護膜あるいは保護シートを形成または配置し、保護する保護膜あるいは保護シートをエッチング等により、所定形状または所定配置にパターニングすることも有効である。
【0024】
保護膜あるいは保護シートとして、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、あるいはこれらの樹脂をシート化したシート類が例示される。あるいは金属等の蒸着膜が例示される。
【0025】
パターニングにより保護膜あるいは保護シートを剥離あるいは除去された箇所あるいは位置はガラス基板101等の表面に処理液201が直接に接する。あるいは、硬化前の保護膜あるいは保護シートを紫外線で露光することにより、硬化させ、未硬化の部分を洗浄して除去する。保護膜あるいは保護シートが除去された該当箇所は、金属イオンなどの置換、金属の進行、移動が発生あるいは促進される。金属イオンなどの置換、金属の進行の処理後に、残存する保護膜あるいは保護シートは、剥離液等で除去する。
【0026】
溶液に超音波をかけることで、ガラス中のSi-O・・・M(M:Li、Na等)で表されるような酸素とイオンの静電的な結合(静電結合)を弱くなり、溶融塩の場合と同様な効果が表れる。処理液201中に含まれる金属イオンとガラスの中のMイオンが交換反応を起こすことである。溶融塩においても、超音波を導入することにより、Mが振動する。上記Si-O・・・M(M:Li、Naなど)の酸素とイオンの静電的な結合(静電結合)がさらに弱くなり、イオン交換がより活発になる。金属イオンの交換速度が速くなることから、処理時間や材料費の削減効果が発揮される。
【0027】
本発明のガラス基板101等のめっき方法は、第一段階として、Naイオンを他の金属イオンに置き換える。ガラス基板101を水に入れても、ガラスの中にあるNaは水の中に溶出されない。
【0028】
本発明はガラス基板101に超音波を印加して、Si-OとNaのイオン性結合を弱くする。この時に溶液中に溶けている金属イオン(Ni2+、Cu2+、Fe2+、Fe3+、Au、Au2+、Ag、Ag2+など)とNaが置き換える反応が起こる。
【0029】
複数の超音波装置301を使用し、異なる周波数の超音波801を照射することにより、異なる超音波の位相差が発生し、位相差が一致した箇所に超音波印加状態が増強される。あるいは、位相差が一致しない箇所は超音波印加状態が低減する。このように超音波の位相状態を発生することにより、ガラス基板101等に超音波801の印加状態の分布を発生することができ、各位置で、金属イオンなどの置換、金属の進行を変化させ、金属めっき状態の分布を形成あるいは発生させることができる。
【0030】
2価の金属イオンは1価のNaイオンよりSi-Oに結合する力が強いため、容易に置き換えることが可能である。2価の金属イオンは二つのSi-Oと結合する。これはイオン交換樹脂を使ったイオン交換の原理である。超音波を印加することによりガラス基板101の表層に金属イオンが配置される。金属イオンの配置あるいは分布状態により、金属めっき膜が形成、構成することができる
【0031】
ガラス基板101に超音波801を印加すること、ガラス基板101の表面と裏面間に直流の電圧による電界を印加すること、ガラス基板101の表面に炭酸ガスレーザ等を用いて配線形成部を加熱することにより、金属イオンの配置が促進、進行される。
【0032】
直流の電圧による電界を印加、レーザ光105による加熱を実施している時に、金属イオンの移動あるいは移動量が変化する。この変化あるいは移動を直流電流計で測定し、また、モニターすることにより金属イオンの移動状態あるいは置換状態を制御する。
【0033】
本発明の第2段階は、第1段階で得られたガラス基板101を純水で洗浄した後、無電解めっき液に入れて無電解めっきを行う。ガラス基板101の表層には金属イオンが有するため、この金属イオンと無電解めっき液の中の金属イオンが還元剤により還元され金属結合を形成し、ガラス基板101の表層に金属膜116(無電解めっき膜116)が形成または構成される。
本発明の第3段階は、第2段階で得られたガラス基板101表面に無電解めっき膜116に電解めっき膜117を形成する。
【0034】
図1は本発明のガラス基板101のめっき方法の説明図である。フッ素原子を含むプラスチック原料が塗布あるいは形成された容器107(図示せず)に処理液201が充填され、処理液201にガラス基板101が浸漬される。フッ素原子を含むプラスチック原料としてポリテトラフルオロエチレンが例示される。ポリテトラフルオロエチレンはテトラフルオロエチレンの重合体で、フッ素原子と炭素原子のみからなるフッ素樹脂である。ガラス基板101が浸漬された状態で、超音波801が印加される。
【0035】
なお、本発明の実施例において、ガラス基板101の金属イオンを置換するとして説明するが、これに限定するものではない。プラスチック基板、セラミック基板、金属基板等の無機材料以外の基板の表面にガラス材料などの無機材料が蒸着あるいは塗布もしくは形成された基板であっても良い。また、基板等の板状に限定されるものではなく、円筒形、球形、三角錐形、円弧状形等の他のいずれの形状であっても良い。また、ガラス基板に限定するものではなく、セラミック基板でも良い。
【0036】
超音波は20kHz以上の周波数を持つ音波である。超音波は周波数が高いと減衰が激しくなるが指向性が良くなる。したがって、ホーン303を用いてガラス基板101に照射する場合は、ガラス基板101に近接させて小領域に超音波801を照射する場合は、高い周波数の超音波を使用することが好ましい。また、ガラス基板101全体に超音波を照射する場合は、比較的低い周波数の超音波を照射することが好ましい。
【0037】
複数のホーン303を組み合わせて超音波801を照射することにより、超音波の強弱分布が発生させることができる。超音波の強弱分布を発生することにより、ガラス基板101等に超音波801の印加状態の分布を発生することができる。超音波801の強弱分に対応して、金属イオンなどの置換、金属の進行を変化させ、金属めっき状態の分布を形成あるいは発生させることができる。
【0038】
以上のように、本発明のガラス基板101のめっき方法あるいはガラス基板の加工方法もしくはガラス基板の製造方法において、超音波を照射する単位面積、加工強度に対応して超音波の周波数を変化あるいは変更する。
【0039】
本実施の一形態では、例として、20kHz、1~100W/cmの出力の超音波を用いたが、この条件に限定されるものではない。超音波の出力が低くなると反応時間が長くなり、超音波の出力が高くなりすぎるとガラス基板101が破壊する可能性がある。ガラス基板101に印加する周波数は、ガラス基板101の重量、面積を考慮し、ガラス基板101の共振周波数と一致しないように設定する。ガラス基板101の共振周波数がF(KHz)であれば、超音波の周波数は、F×0.8以下、F×1.2以上に設定する。
【0040】
超音波装置301の超音波801の出力側には、ホーン303が取付けられ、イオン置換を実施するガラス基板101に超音波801を印加できるように構成されている。ガラス基板101に照射する面積は、異なるホーン303と取り替えることにより容易に変更することができる。
【0041】
ホーン303の形状として、円形、正方形、ライン形が例示される。たとえば、ライン形の場合は、ガラス基板101の短辺のサイズと略一致させる。ラインの長さに対応するように、超音波801を発生する複数個の圧電セラミックス素子をライン状に配置あるいは実装して構成する。ライン状のホーン303はガラス基板101の長辺方向に順次移動させて、金属置換を実施する。
【0042】
超音波801を発生する複数個の圧電セラミックス素子をマトリックス状に配置して回路基板110サイズに構成し、回路基板110サイズで金属置換を実施することも好ましい。
【0043】
ガラス基板101に印加する超音波801の強度は、印加する該当箇所への最初は、平均値よりも弱くし、金属置換が進展すると伴に強度を高くすることが好ましい。金属置換はガラス基板101の内部になるほど、置換するのに必要な超音波801のエネルギーが大きくなるためと推定される。
【0044】
超音波は、圧電セラミックスを振動させることによって発生する。電気エネルギーを振動エネルギーに変える圧電セラミックスを用いる。圧電セラミックスは、高純度な粉体(酸化チタン・酸化バリウム等)を高温度で焼き固めた多結晶体セラミックスである。圧電セラミックスに音や振動を加えると電圧が発生し、逆に電圧をかけると振動する。大きな超音波801を発生するためには、多数の圧電セラミックスを使用し、各圧電セラミックスは同期を取って、位相を揃えてガラス基板101に印加する。
【0045】
超音波801の周波数は工程において、可変できるように構成することが好ましい。また、ガラス基板101のサイズ、材質に対応して周波数を変更することが好ましい。また、処理液201の濃度、置換状態に対応して周波数を変化させることが好ましい。周波数は超音波801を発生させる圧電セラミックス素子に印加する電気信号の交流電圧周波数を変化させることにより容易に変更できる。
【0046】
超音波振動子は発振器からの高周波電力を超音波振動に変換するもので、電歪型、磁歪型の2種類がある。電歪型は電圧を加えると伸び縮みし、磁歪型は磁界を加えると伸び縮みする。現在は使い勝手の良さなどから電歪型が主に使われている。
【0047】
電歪型振動子は、交流電圧を加えると振動するチタン酸ジルコン酸鉛(通称PZT)が主に使われている。PZTの作動周波数は約400kHz以上となっている。このPZTを使用し低周波用に開発された振動子が、ボルト締めランジュバン型振動子(Bolt-clamped Langevin type transducer BLT又はBL振動子)になる。
BL振動子は、PZT振動子を金属のブロックではさみ・ネジ(ボルト)で締め付け圧力をかけることで振動性能を向上させる。また、金属部を含めて共振させる為、15kHz~200kHzの周波数で作動する振動子ができる。
ホーン303は超音波801を一定方向に集束発射、または受波するための反射器で、この形状寸法により、センサの指向特性が決定される。
【0048】
周波数が高く、振動面積が大きいほど指向性が鋭くなり、音波を効率よく発射することができる。ホーン303の形状、振動子の振動モードなどによって指向特性が大きく左右される。求める動作領域に応じてセンサ部形状、使用周波数、振動子の種類などを決定する。超音波801の周波数は、20kHz以上100kHz以下が好ましい。
【0049】
超音波を照射する際に発生する気泡(cavitation bubbles)の強さは40℃より高くなると減少する傾向がある。ガラス基板101の表面のイオン置換を活性化させるために40℃より高い温度である50℃以上の温度で行うことが好ましい。
【0050】
加熱は40℃~100℃(水の沸騰温度)で行う。好ましくは50℃~100℃である。ただし、処理液201が有機溶媒の場合は、250℃まで加温できる場合がある。
【0051】
温度が高いほど金属イオンの置換速度は、向上する。処理液201の沸騰温度まで上げて実施するは安全性の面から好ましくない。一方で、40℃以下の温度では置換速度が遅くなり好ましくない。好ましくは50℃以上の温度に加温して処理を行う。
【0052】
処理液201として、水系の場合、強酸を純水に薄めたものが例示される。強酸は、塩酸と硝酸の混合酸、塩酸、硝酸、硫酸を用いることが好ましい。強酸と水の比率を1:1~1:3で混合する。
【0053】
処理液201は酸性であれば特に制限されず、pH7以下であればよく、用いられる酸が弱酸であっても強酸であってもよい。具体的には塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、炭酸及びクエン酸等の酸が好ましい。これらの酸は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
また、処理液201として、有機溶媒系が例示される。一例として、アルコール類、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、アミン類、アミド類、硫黄化合物が例示される。
【0055】
また、処理液201として、イオン液体系でも良い。たとえば、イミダゾリウム塩、ピロリジニウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩が例示される。
【0056】
有機溶媒中でイオンの置き換える場合は水系と異なり、酸が不要である。つまり、有機溶媒中に金属化合物を加えた処理液201にガラス基板101を入れ、超音波を印加する。処理液201の温度は、有機溶媒の沸点近傍まで加温してガラス基板101のイオンを置き換えることができる。例えば、炭酸プロピレンの沸点は240℃であるので、この温度の近傍まで加温して反応させることができる。
【0057】
また、処理液201として、深共晶溶媒系が例示される。深共晶溶媒(Deep eutectic solvents、DESs)の一般式はCatzYに構成される。Catはアンモニウム、ホスホニウムまたはスルホ二ウムの陽イオンで、Xはルイス塩基でハライド陰イオンである。Yはルイスまたはブレンステッド酸を示し、zはY分子の数である。一番よく使われるCatはChCl(ChCl=HOC(CHCl)である。深共晶溶媒は以下の4種類に大別される。
タイプ1 CatzMCl
M=Zn、Sn、Fe、Al、Ga、In
タイプ2 CatzMCl・yH
M=Cr(II)、Co、Cu、Ni、Fe
タイプ3 CatzRZ
Z=CONH、COOH、OH
タイプ4 MCl+RZ=MClx-1+RZ+MClx+1
M=Al、Zn、Z=CONH、OH
タイプ3でCatをChClにした場合、深共晶溶媒が液体になる温度(℃)は以下のとおりである。
【0058】
尿素(12℃)、チオ尿素(69℃)、1-メチール尿素(29℃)、1,3-ジメチール尿素(70)、1,1-ジメチール尿素(149℃)、アセトアミド(51℃)、ベンズアミド(92℃)、アジピン酸(85℃)、安息香酸(95℃)、クエン酸(69℃)、マロン酸(10℃)、シュウ酸(34℃)、フェニル酢酸(25℃)、フェニルホスホン酸(20℃)、こはく酸(71℃)、トリカルバリル酸(90℃)。これらの融点より高い温度でガラスの交換反応が可能である。
【0059】
タイプ4の場合、ZnCl+有機物の場合の融点(℃)は、有機物=尿素(9℃)、アセトアミド(-16℃)、エチレングリコール(-30℃)、ヘキサンジオール(-23℃)である。これらの融点より高い温度でガラスの交換反応が可能である。
【0060】
処理液201に混合させるめっき金属としては、めっき金属RO(Rは、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、CuおよびNiから選ばれる少なくとも1種類)である。または、M(Mは、Fe、Ti、V、Cr、Pr、Ce、Bi、Eu、Mn、Er、Nd、W、Rb、K、Zr、B、Na、Li、Au、S、Cr、およびAgから選ばれる少なくとも1種類)であり、pとqはMとOの原子比である。また、KNO、NaNO、CoSO、NaSO、LiSO、LiCl、NaClである。
以上のめっき金属は、処理液201の水、有機溶媒、イオン液体、深共晶溶媒に溶かしても良いし、これらの溶媒を混合させたもの溶かしても良い。
【0061】
本発明のガラス基板101のめっき方法における金属イオンの置換は、処理液201に含まれている種々の1価の陽イオンをガラスに含まれているK、Na等のアルカリ金属イオンと置換することで、ガラス基板101中に処理液201に含まれるイオンを導入する技術である。
【0062】
ガラス等では、室温においてアルカリ金属イオンはガラス中のSiまたはAlが共有している酸素と強いイオン結合を形成している。ガラス基板101に超音波801を印加することにより、得られる熱エネルギーによって、酸素とアルカリ金属イオンの結合力が弱くなり、アルカリ金属イオンが移動可能な状態になる。
【0063】
図3に図示するように、アルカリ金属イオンが移動可能な状態となったガラスを任意の陽イオンを含む溶融塩等の処理液201に浸漬させると、ガラス中のイオンと処理液に含まれるイオンとの濃度勾配が生じる。生じた濃度勾配が駆動力となり、ガラス基板101中のイオンと処理液201に含まれるイオンとの相互拡散が生じ、イオン交換が起こる。
【0064】
ガラスのイオン交換反応はガラス基板101中に含まれるイオン結合を弱めることが重要である。本発明では超音波装置301を導入することにより、一般的な水溶液や有機溶媒中においてもイオン交換が可能となる。
【0065】
ガラス基板101に、超音波801を印加することにより、ガラス中のSi-O・・・M(M=Li、Naなど)で表されるような酸素とイオンの静電的な結合を弱くなる。そのため、溶融塩の場合と同様な効果が表れ、処理液201中に含まれる金属イオンとガラスの中のMイオンが交換反応を起こす。
【0066】
溶融塩においても、超音波801を導入することにより、上記Si-O・・・M(M=Li、Na等)の酸素とイオンの静電的な結合がさらに弱くなり、イオン交換がより活発になる。金属イオンの交換速度が速くなることから、処理時間や材料費の削減効果が期待できる。
図1に図示するように、ガラス基板101の最表面からNaやKが抜け(リーチングし)、代わりに金属イオン(Cu)が入り込む(置換される)。
【0067】
金属イオン(Cu)はガラス基板101の表面から5nm以上の範囲で置換される。このましくは、20nm以上がより好ましい。置換の厚みは処理液201の濃度、ナトリウム濃度、温度、時間等により制御することができる。
【0068】
本発明は、Na(ガラス)<--> Cu、Cu2+、Ag、Ni2+のイオン交換処理によって、Cuなどをガラス基板101中に導入する。Cu、Ni2+がガラス基板101の導入されることにより、ガラス基板101の表面にCu等の無電解めっき膜116を付着することができる。
【0069】
図1は、ガラス基板101の表面にCu置換を行い、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116を形成する実施例の説明図である。以下、本発明の一態様としての実施例について説明する。
(実施例1-1)
【0070】
容器107に100gのCaCl・6HOと0.5gのCuClを混合し、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×1mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数40kHz、出力2W/cmとし、10時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0071】
次に、0.3gのホルムアルデヒド、0.8gのNaOH、3gのエチレンジアミン四酢酸の水溶液100mlを50℃に保ちながら乾燥後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0072】
上記の作成したホルムアルデヒド水溶液に0.2gのCuSO・5HOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
【0073】
以上の実施例において、ガラス基板101を金属イオンが含有する処理液201に浸漬した状態で、超音波801を照射した後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥し、その後、アルカリ溶液等に浸漬した後に無電解めっき液に浸漬して無電解めっき膜116を形成すると記載したが、本発明はこれに限定するものではない。超音波801を印加後のガラス基板101を乾燥させる工程を省いて、連続して無電解めっき膜116の工程を実施しても良いことは言うまでもない。
【0074】
また、超音波801をガラス基板101に印加し、その後、処理液201に無電解めっき液を注入して、連続して無電解めっき膜116の工程を実施しても良いことは言うまでもない。
以上の事項は、本発明の他の実施例においても同様である。
(実施例1-2)
【0075】
容器107に純水100mlを入れた後CuSO・5HOを5g溶かし、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数40kHz、出力2W/cmとし、10時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0076】
次に、0.3gのホルムアルデヒド、0.8gのNaOH、3gのエチレンジアミン四酢酸の水溶液100mLを50℃に保ちながら乾燥後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0077】
上記の作成したホルムアルデヒド水溶液に0.2gのCuSO・5HOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
(実施例1-3)
【0078】
容器107に純水100mlを入れた後50gのCu(NO・3HOを溶かし、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数40kHz、出力2W/cmとし、10時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0079】
次に、0.3gのホルムアルデヒド、0.8gのNaOH、3gのエチレンジアミン四酢の水溶液100mLを50℃に保ちながら乾燥後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0080】
上記の作成したホルムアルデヒド水溶液に0.2gのCuSO・5HOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
(実施例1-4)
【0081】
容器107に純水100mlを入れた後50gのCuClを溶かし、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数20kHz、出力2W/cmとし、10時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0082】
次に、0.3gのホルムアルデヒド、0.8gのNaOH、3gのエチレンジアミン四酢酸の水溶液100mLを50℃に保ちながら乾燥後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0083】
上記の作成したホルムアルデヒド水溶液に0.2gのCuSO・5HOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
【0084】
図4は、ガラス基板101の表面にNi置換を行い、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116を形成する実施例の説明図である。以下、本発明の一態様としての実施例について説明する。
(実施例2-1)
【0085】
容器107に100gのCaCl・6HOと0.5gのNiClを混合し、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数40kHz、出力2W/cmとし、10時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0086】
次に、3gの次亜リン酸と5gのコハク酸の水溶液100mLを90℃に保ちながら乾燥後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0087】
上記の作成した次亜リン酸水溶液に5gのNiSO・6HOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
(実施例2-2)
【0088】
容器107に純水100mlを入れた後、NiSO・6HOを50g溶かし、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数40kHz、出力2W/cmとし、10時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0089】
次に、3gの次亜リン酸と5gのコハク酸の水溶液100mLを90℃に保ちながら乾燥後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0090】
上記の作成した次亜リン酸水溶液に5gのNiSO・6HOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
(実施例2-3)
【0091】
容器107に1mol/Lの硫酸水溶液100mlを入れた後NiSO・6HOを50g溶かし、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数20kHz、出力2W/cmとし、10時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0092】
次に、3gの次亜リン酸と5gのコハク酸の水溶液100mLを90℃に保ちながら乾燥後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0093】
上記の作成した次亜リン酸水溶液に5gのNiSO・6HOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
(実施例2-4)
【0094】
容器107に1mol/Lの硝酸水溶液100mlを入れた後50gのNi(NO・6HOを溶かし、温度を50℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数20kHz、出力2W/cmとし、1時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0095】
次に、3gの次亜リン酸と5gのコハク酸の水溶液100mLを90℃に保ちながら乾燥後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0096】
上記の作成した次亜リン酸水溶液に5gのNiSO・6HOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
(実施例2-5)
【0097】
容器107に5gの塩化コリン(ChCl、ChCl = HOC(CHCl)と40gの尿素と1.3gのNiClとを混合し、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数40kHz、出力2W/cmとし、1時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0098】
次に、3gの次亜リン酸と5gのコハク酸の水溶液100mLを90℃に保ちながら乾燥後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0099】
上記の作成した次亜リン酸水溶液に5gのNiSO・6HOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
(実施例2-6)
【0100】
容器107にジメチルスルホキシド100mlを入れた後5gのNiSOを溶かし、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数40kHz、出力2W/cmとし、1時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0101】
次に、3gの次亜リン酸と5gのコハク酸の水溶液100mLを90℃に保ちながら乾燥後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0102】
上記の作成した次亜リン酸水溶液に5gのNiSO・6HOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
(実施例2-7)
【0103】
容器107に1-アリル-3-ブチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニルイミド)100mlを入れた後1gのNiSOを溶かし、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数40kHz、出力2W/cmとし、10時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0104】
次に、3gの次亜リン酸と5gのコハク酸の水溶液100mLを90℃に保ちながら乾燥後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0105】
上記の作成した次亜リン酸水溶液に5gのNiSO・6HOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
【0106】
図5は、ガラス基板101の表面にAg置換を行い、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116を形成する実施例の説明図である。以下、本発明の一態様としての実施例について説明する。
(実施例3-1)
【0107】
容器107に100gのCaCl・6HOと0.03gのAgClを混合し、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数40kHz、出力2W/cmとし、1時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0108】
次に、0.4mol/Lのホルムアルデヒド水溶液100mLにアンモニア水を加えpHを11に調整した液に乾燥後のガラス基板101を10時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0109】
上記の作成した0.4mol/Lのホルムアルデヒド水溶液に1gのAgNOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
(実施例3-2)
【0110】
容器107にジメチルスルホキシド100mlを入れた後5gのAgNOを溶かし、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数40kHz、出力2W/cmとし、10時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0111】
次に、0.4mol/Lのホルムアルデヒド水溶液100mLにアンモニア水を加えpHを11に調整した液に乾燥後のガラス基板101を10時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0112】
上記の作成した0.4mol/Lのホルムアルデヒド水溶液に1gのAgNOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
(実施例3-3)
【0113】
容器107に5gの塩化コリン(ChCl、ChCl=HOC(CHCl)と40gの尿素と0.5gのAgClとを混合し、温度を80℃に保ちイオン交換用の処理液201を作製した。その液に30mm×70mm×2mmtのソーダガラス基板101を浸漬し、超音波装置301で超音波801を照射した。超音波801は周波数40kHz、出力2W/cmとし、10時間照射した。その後、ガラス基板101を取出し純水で洗浄した後、室温で乾燥した。
【0114】
次に、0.4mol/Lのホルムアルデヒド水溶液100mLにアンモニア水を加えpHを11に調整した液に乾燥後のガラス基板101を10時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察にてガラス基板101内に含まれるイオンが交換されていることを確認した。
【0115】
上記の作成した0.4mol/Lのホルムアルデヒド水溶液に1gのAgNOを溶解させた。その溶液にイオン交換後のガラス基板101を1時間浸漬した。その後、そのガラス基板101を純水で洗浄し、室温で乾燥させた後、表面観察を行ったところ、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成されていた。
【0116】
上記Cuのイオン交換実施例1-1、1-2、1-3、1-4、Niのイオン交換実施例2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7、Agのイオン交換実施例3-1、3-2、3-3において、ガラスの中のNaイオンと金属イオンの交換速度を比較したところ、AgとCuの場合がNiの場合よりイオン交換速度が速い結果となった。
【0117】
この結果は水溶液中で金属イオンに配位した水の交換速度において、AgとCuが10~10-1で、Niが10-1であることと関連性があると考えられる。即ち、水の交換速度が速くなるほど金属に配位している水が離れやすくなる。本特許で、金属イオンに配位している水のような配位子が金属イオンから離れやすいほどイオン交換が有利になるので、ガラス中のNaイオンと金属イオンの交換速度はAgとCuがNiより早い結果となったと考えられる。
【0118】
また、Cuのイオン交換実施例1-1、1-2、1-3、1-4の中で、実施例1-1が最もイオン交換が速かった。その理由として金属イオンの周りに水のような配位子が配位することによって金属イオンの半径が大きくなる効果があり、ガラスの中のNaイオンとのイオン交換の際不利に働くからである。
【0119】
実施例1-1で、CaCl・6HOとCuClを混合した系において、Cuイオンの周りに配位が可能な水はほとんどないため、Cuイオンがガラスの中のNaイオンと交換する際、配位した水による妨げる効果は小さく、交換速度は相対的に速くなったと考えられる。
【0120】
Niのイオン交換実施例2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、2-7の中で、非水系の実施例2-5、2-6、2-7の場合のイオン交換が速い結果となった。
【0121】
この結果は塩化コリン、ジメチルスルホキシド、イオン液体は水よりNiに配位する能力が小さいからだと考えられる。その中でも実施例2-6の場合が最もイオン交換速度が速かった。
【0122】
その理由としてジメチルスルホキシドの処理液を使った2-6が塩化コリンの2-5とイオン液体の2-7より粘性が最も低いことが原因だと結論付けられる。Agのイオン交換実施例3-1、3-2、3-3においても上記と同様ジメチルスルホキシドの3-2が最もイオン交換が速かった。
【0123】
図6図7図9は、本発明のガラス基板の加工装置の説明図および構成図である。ガラス基板101は搬送ローラ302上を搬送される。ガラス基板101は処理液201に浸漬される。
【0124】
温度調整器304は処理液201を加温する。温度調整器304として液体加熱用ヒーターが例示される。液体加熱用ヒーターとして、液体用インラインヒーター、液体用フランジヒーター、液体用プラグヒーター、投込みヒーター、シーズヒーターエレメント、潜水ヒーターがある。拡散ファン(攪拌ファン)305は、処理液201が均一な温度分布となるように、処理液201を攪拌する。
【0125】
超音波装置301は、XYZ移動ステージ401に取り付けられ、Z方向(上下方向)、X方向(ガラス基板101の長辺方向)、Y方向(ガラス基板101の短辺方向)に移動し、また、位置決めされる。位置決めにはリニアモーターにより実施される。
【0126】
超音波装置301には、ホーン303が取付けられ、指向性を有する超音波801がガラス基板101に印加できるように構成されている。超音波装置301は、Z軸方向に移動し、ガラス基板101に近接するように位置決めされる。
【0127】
図7の本発明の構成図では、ホーン303は正方形(立方体)のように図示しているが、これに限定するものではない。円形、楕円形、矩形であっても良い。また、ホーン303をライン(線)形状としても良い。たとえば、ライン形状の長さをガラス基板101の短辺の長さと一致させても良い。
【0128】
超音波装置301は、Z方向(上下方向)を変化させてガラス基板101に近接して位置決めされる。また、X方向(ガラス基板101の長辺方向)、Y方向(ガラス基板101の短辺方向)に移動し、ガラス基板101に超音波801を照射して金属イオンの置換を行う。
【0129】
ガラス基板101は所定温度に設定された処理液201に浸漬された状態で超音波801が印加される。超音波装置301を導入することにより、一般的な水溶液や有機溶媒中においてイオン交換が可能となる。
【0130】
超音波801をガラス基板101に印加することにより、ガラス基板101中のSi-O・・・M(M:Li、Na等)で表されるような酸素とイオンの静電的な結合(イオン結合)を弱くなる。処理液201中に含まれる金属イオンとガラスの中のMイオンが交換反応を起こす。
【0131】
ガラス基板101がソーダガラス基板の場合は、Naが振動する。上記Si-O・・・Naの酸素とイオンの静電的な結合(静電結合)がさらに弱くなり、イオン交換がより活発になり、金属イオンの交換速度が速くなる。
図6に図示するように、本発明のガラス基板101の加工方法は、第一段階として、Naイオンを他の金属イオンに置き換える。
【0132】
本発明はガラス基板101に超音波を印加して、Si-OとNaのイオン性結合を弱くする。この時に溶液中に溶けている金属イオン(Cu、Ag、Ni2+)とNaが置き換える反応が起こる。ガラス基板101の表面が金属イオンと置換あるいは配置される。
【0133】
次に、ガラス基板101は洗浄工程に投入され、ガラス基板は洗浄される。次に、処理液201は、アルカリ洗浄液、無電解めっき液に変更され、無電解めっき膜形成工程が実施される。
【0134】
図8は本発明の加工装置の構成図および説明図である。ガラス基板101は搬送ローラ302に搬送され、位置決めされて処理液201に浸漬される。一例として、実施例で説明したようにガラス基板101に銅めっき膜を形成する場合は、処理液201として、たとえば、CaCl・6HOと0.5gのCuClを混合したものを使用する。処理液201の温度は所定温度(たとえば、温度を80℃)に維持される。
【0135】
処理液201は容器107を循環する。処理液201は注排出穴121aから容器107内に注入され、また、処理液201は注排出穴121bから容器107外に排出される。
【0136】
処理液201は補充容器403に充填される。充填された処理液201は電動ポンプ404で送出され、フィルタ405で雑物が除去されて、注排出穴121aから容器107内に注入される。
【0137】
また、処理液201bは注排出穴121bから容器107外に排出され、イオン交換装置(活性炭等)406でNa等のアルカリ金属が吸着される。アルカリ金属が吸着された処理液201bは、補充容器403に戻される。補充容器403に処理液201bを戻すか否かは電磁弁402で制御される。
【0138】
超音波装置301は、X軸方向は移動ステージ401Xで移動し、Y軸方向は移動ステージ401Yで移動する。ガラス基板101に超音波801の印加により、ガラス基板101中のアルカリ金属(Na等)が処理液201に溶出される。超音波801の強度は、1~200W/cmであり、ガラス基板101の材質、単位時間あたりの強度、処理液201の温度等によって所定値に設定される。
【0139】
超音波装置301を導入し、処理液201およびガラス基板101に超音波801を印加することにより、処理液201中に含まれる金属イオンとガラスの中のアルカリ金属Naイオンが交換反応を起こす。処理液201に溶出したアルカリ金属は、イオン交換装置406のイオン交換樹脂でアルカリ金属を吸着する。アルカリ金属を除去された処理液201は注入排出穴121aから容器107内に注入され、再利用される。
以上の工程により、処理液201内の金属イオン(Cu、Ag、Ni等)は、ガラス基板101の表面に侵入し、また、置換される。
次の工程では、処理液201は、純水あるいはイオン交換水に変更され、これらにより、ガラス基板101の表面および裏面は洗浄される。
次の工程では、ホルムアルデヒド、NaOH、エチレンジアミン四酢酸からなる処理液201としてのホルムアルデヒド水溶液を容器107に注入する。
【0140】
次の工程では、前工程のホルムアルデヒド水溶液にCuSO・5HOを溶解させ処理液201を、容器107に注入、循環させて、無電解めっき膜116をガラス基板101の表面に形成する。
【0141】
超音波を印加することによりガラス基板101の表層に金属イオンが配置される。また、ガラス基板101を純水あるいはイオン交換水で洗浄した後、無電解めっき液に入れて無電解めっきを行う。ガラス基板101の表層には金属イオンが有するため、この金属イオンと無電解めっき液中の金属イオンが還元剤により還元されることにより金属結合を形成し、ガラス基板101の表層に金属膜116(無電解めっき膜116)が形成または構成される。
【0142】
以上のように、容器107に充填する処理液を変更することにより、ガラス基板101への金属イオン置換と、無電解めっき膜116の形成とを一貫して実施することができる。
【0143】
以上の実施例は、無電解めっき膜116として銅めっき膜を形成する場合である。Niめっき膜、銀めっき膜の場合も同様であり、以前に説明した実施例の手順と処理液を使用すれば良い。
図9は本発明の他の実施例におけるガラス基板101のめっき方法の説明図である。本発明はガラス基板101に直流電界を印加することを特徴とする。
【0144】
ガラス基板101の表面(処理対象面)は処理液201aと接している。ガラス基板101の裏面(反対面)は処理液201bと接している。処理液201aと処理液201bとは電流経路が発生しないように絶縁されている。したがって、陽極電極(+)106aから陰極電極(-)106bへの電界はガラス基板101を通過する。
【0145】
本発明は、図9に示すように処理対象面が陽極電極(+)106a、反対面が陰極電極(-)106bとなるように電界を印加しながら、超音波801をガラス基板101に印加する。処理液201aは銅(Cu)イオンを含有する。
【0146】
なお、本発明の実施例は、銅めっき膜116を形成するとして説明するが本発明はこれに限定するものではない。銀(Ag)めっき、ニッケル(Ni)の場合であっても適用できることは言うまでもない。以上の場合の処理液201は(実施例)で説明しているので説明を省略する。
【0147】
なお、主として、本発明は金属めっきのガラス基板を例示して説明するが、これに限定するものではない。たとえば、車のバック面のガラスに赤外線の遮光等を目的としてガラスの表面あるいは表層に、銀等の金属を置換、あるいは構成、形成したガラス基板等であっても、本願発明の技術的範疇である。
電界印加によるクーロン場が駆動力となって、ガラス基板101中の陽イオンであるアルカリ金属イオンが陰極電極(-)106bに向かって移動する。
【0148】
電界によって移動するガラス基板101中の成分は、主としてアルカリ金属イオンである。各アルカリ金属イオンは、イオン半径に依存して、Li>Na>Kの順で移動しやすい傾向にある。
ガラス基板101には、超音波装置301から超音波801を印加する。超音波801はホーン303により狭指向性の超音波801となる。
【0149】
陰極電極(-)106b側のガラス基板101の裏面に到達したアルカリ金属イオンは、ガラス陰極電極(-)106b側の処理液201bに移動する。移動したアルカリ金属イオンに置き換わる形で、陽極電極(+)106a側の処理液201aから陽イオン(Cu)がガラス基板101の表面からガラス基板中に移動する。これらの反応が同時並行に起こる。
【0150】
ガラス基板101の処理面(表面)は、超音波801を印加する。同時にレーザ光105を照射することにより、ガラス基板101の表面が加熱され、また、活性化する。
【0151】
ガラス基板101の表面からアルカリ金属イオンに置き換わる形で、陽極電極(+)106a側の処理液201aから陽イオン(Cu)がガラス基板101の表面に侵入する。
【0152】
レーザ光105はガラス基板101に吸収され、透過しない波長のものが好ましい。たとえば、炭酸ガスレーザ装置(carbon dioxide laser、COレーザ)が例示される。その他、YAGレーザ、YVOレーザが例示される。
【0153】
ガラス基板101あるいはガラスシート101の表面にレーザ装置104からのレーザ光105が照射される。光ガラス基板101の表面はレーザ光105で加熱され、また、同時に超音波801が印加される。超音波801とレーザ光105の作用により、アルカリ金属イオンの移動と、ガラス基板101の表面からの陽イオン(Cu)の侵入が加速され、短時間で行程が完了する。
【0154】
ガラス基板101の表面に処理液201から保護する保護膜あるいは保護シート(図示せず)を形成し、保護膜あるいは保護シートにレーザ光を照射して、保護膜あるいは保護シートを除去して、除去した箇所に処理液201と接するようにし、めっきパターンなどを形成する場合は、レーザ装置104として、DUV装置(深紫外)レーザ装置(波長266nm)、青色ダイオードレーザ装置(半導体)(波長 445nm~450nm)、グリーンレーザ装置(波長532nm)等を使用しても良いことは言うまでもない。
【0155】
本発明の加工方法では、直流電界によって、ガラス基板101中のアルカリ金属イオンは陰極電極(-)106b側へ順次移動し、イオン交換が起こるため、均一なイオン交換された層が形成される。
【0156】
陰極電極(-)106bからガラス基板101外に抜けたアルカリ金属イオンの電荷を補うように、陽極電極(+)106a側の溶融塩から1価のイオンがガラス基板101中に入る。したがって、電極106aと電極106b間に電流が流れる。
本発明は、処理液201aと処理液201b間にリーク電流が流れないように絶縁し、直流電界がガラス基板101中を通過するように構成している。
【0157】
陽極電極(+)106aと陰極電極(-)106b間に流れる電荷量は、電流計102で測定あるいはモニターすることができる。電流計102の測定値により、金属イオンの置換状態を把握することができる。
【0158】
レーザ光105と照射強度、位置、超音波801の照射領域(処理面積)と、電流計102の電流値あるいは電流変化から、ガラス基板101の処理厚み、処理状態を把握することができる。
【0159】
超音波801の強度を高くすることにより、処理時間を短縮することができる。しかし、超音波801の強度を高くする場合、ガラス基板101の破損、ガラス基板101の表面のクラック発生に注意が必要である。
レーザ光105を照射することにより、また、電界印加と超音波印加との相乗効果により、処理時間を短縮することができる。
【0160】
本発明は、超音波801印加、超音波801印加+レーザ光105照射、超音波801印加+直流電圧印加、超音波801印加+直流電圧印加+レーザ光105照射、直流電圧印加+レーザ光105照射の組み合わせがある。組み合わせ装置、組み合わせエネルギーが多いほど処理時間を短縮することができる。
【0161】
処理液201からガラス基板101にイオンが拡散することにより処理が進行する。処理温度が処理時間に大きく影響し、処理温度が低いほど処理時間は長くなる。処理液201の温度を高くすることにより、処理時間を短縮することができる。また、ガラス基板101の表面にレーザ光105を照射することにより、ガラス基板101の表面が加熱され、処理時間を短縮することができる。
【0162】
直流電圧の印加は、印加電圧を高くするほど、イオン交換が加速される。したがって、電極106aと電極106b間の距離が短いほど、ガラス基板101に印加される電界強度は高くなる。したがって、直流電圧装置103が発生する電圧が所定値の場合、加工するガラス基板101の板厚が薄いほど、ガラス基板101に印加する電界強度は高くなる。また、ガラス基板101と電極106間の距離(ギャップ)が短いほどガラス基板101に印加する電界強度は高くなる。
【0163】
電極106aと電極106bとの距離が近い箇所ほど、電極106aと電極106b間に電界強度が強くなる。電極106a、電極106bとが鋭角を持つように、たとえば、三角形状に形成、構成し、前記三角形状の鋭角部を一致させることにより、鋭角部間に距離が短くなり、電界強度を強くすることができる。
【0164】
以上の工程後、処理液201を無電解めっき液に変更することにより、図9(b)に図示するように、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116が形成される。
たとえば、銅めっき液といて、ホルムアルデヒド水溶液に0.2gのCuSO・5HOを溶解させた処理液が例示される。
図10は、無電解めっき膜116としてニッケル(Ni)めっき膜116を形成する場合の実施例である。
【0165】
基本的な工程は、銅めっき膜116を同様であるので説明を省略する。金属イオンの置換するための処理液201と、ニッケルめっき膜を形成する処理液201が銅めっき膜116の場合と異なる。
【0166】
たとえば、Na等のアルカリ金属と、Ni等の金属イオンとの置換に使用する処理液201は、CaCl・6HOとNiClを混合したものを採用する。ニッケルめっき膜116を形成する処理液201には、次亜リン酸とコハク酸の次亜リン酸水溶液にガラス基板101を浸漬し、次亜リン酸水溶液にNiSO・6HOを溶解させたものを使用する。
以上のニッケルめっき膜116の形成の実施例は(実施例)で説明しているため説明を省略する。
【0167】
なお、以上の事項は、銀(Ag)めっき膜116の形成方法においても(実施例)に記載し、また、銅(Cu)めっき膜116あるいはニッケル(Ni)めっき膜116の製造あるいは加工方法と同様であるので説明を省略する。
図11図12図13図14は、主として直流電圧印加方法による本発明のガラス基板101等のめっき膜の形成装置の説明図および構成図である。
【0168】
図12に図示するように、ガラス基板101の上方に、近接して電極106aが配置される。ガラス基板101の下方に、近接して電極106bが配置される。電極106aと電極106bはガラス基板101を狭持するようにして配置される。ただし、電極106とガラス基板101間には処理液201が配置される。
処理液201にはアルカリ金属等が溶出させるため、処理液201は電極106とガラス基板101間を循環するように構成されている。
【0169】
温度調整器304aは処理液201aを加温する。温度調整器304として液体加熱用ヒーターが例示される。液体加熱用ヒーターとして、液体用インラインヒーター、液体用フランジヒーター、液体用プラグヒーター、投込みヒーター、シーズヒーターエレメント、潜水ヒーターがある。拡散ファン(攪拌ファン)305aは、処理液201aが均一な温度分布となるように、処理液201aを攪拌する。
【0170】
温度調整器304bは処理液201bを加温する。拡散ファン(攪拌ファン)305bは、処理液201bが均一な温度分布となるように、処理液201bを攪拌する。
【0171】
処理液201aは、容器107の対角位置に配置された注入排出穴121aを介して循環する。循環は図8で説明したように、電動ポンプ404、電磁弁402を制御することにより実施される。処理液201bも同様であり、容器107の対角位置に配置された注入排出穴121bを介して循環する。循環は図8で説明したように、電動ポンプ404、電磁弁402を制御することにより実施される。
処理液201aと処理液201bとは接触しないようにされている。電極106aからの電界はガラス基板101を通過して電極106bに到達する。
【0172】
図12に図示するように、ガラス基板101は、密閉部108と密閉部109で狭持される。密閉部109はガラス基板101の下側から、ガラス基板101の周囲を密閉する。密閉部108はガラス基板101の上側から、ガラス基板101の周囲を密閉する。密閉部の材質として、フッ素原子を含むプラスチック原料が例示される。フッ素原子を含むプラスチック原料としてポリテトラフルオロエチレンが例示される。ポリテトラフルオロエチレンはテトラフルオロエチレンの重合体で、フッ素原子と炭素原子のみからなるフッ素樹脂である。
密閉部108と密閉部109により、ガラス基板101の上側の処理液201bとガラス基板101の下側の処理液201aは分離される。
【0173】
電極106は、電界形成、電流を流す板状や棒状などの導体であり、いずれの構成であっても良い。望ましくは、ガラス基板101に対して平行配置するものであり、電極106aと電極106bを平行して配置できる構造である。本発明では電極106とするが、正極、負極であっても良い。また、陽極、陰極であっても良い。
【0174】
直流電圧装置103が発生する直流電圧は、300V以上3000V以下が好ましい。ガラス基板101に印加されるのは電界強度(V/m)であり、電界強度(V/m)は、100(V/m)以上1000(V/m)以下に設定あるいは調整できるように構成する。
【0175】
発生する直流電圧は、極性を反転できるように構成する。たとえば、本願発明の直流電圧装置103は、図21(a)に図示するように、電極106aにマイナス(-)電圧を印加し、電極106bにプラス(+)電圧を印加した状態から、図21(b)に図示するように、電極106aにプラス(+)電圧を印加し、電極106bにマイナス(-)電圧を印加した状態に変化させることができる。
【0176】
電流計102は、電極106aと電極106b間に流れる電流を測定あるいはモニターする機能を有する。測定した電流値は、コントローラ407に伝送され、コントローラ407は、レーザ装置104、超音波装置301の出力等を制御する。
【0177】
スイッチ(開閉器)120は電極106に印加する電圧あるいは電流を印加し、また、遮断する機能を有する。メカニカルなスイッチ、アナログスイッチ等の電気的なスイッチが該当する。
【0178】
図11では、電極106は移動ステージ(図示せず)に搭載され、ガラス基板101の長辺方向に移動することより、ガラス基板101に順次、電界を印加する。なお、図7に図示するように、電極106a、電極106bをXY方向に移動する移動ステージに取り付けても良い。
【0179】
図13は、本発明のガラス基板のめっき装置の構成図および説明図である。なお、以下の実施例において、ガラス基板101には、(1)超音波801と印加すること、(2)電極106により電界(電圧)を印加すること、(3)レーザ光105と照射することを実施するとして説明するが本発明はこれに限定するものではない。(1)(2)(3)のうち、少なくとも2つの組み合わせであれば良いことは言うまでもない。
【0180】
たとえば、(1)超音波801と印加すること+(2)電極106により電界(電圧)を印加することが例示される。(1)超音波801と印加すること+(3)レーザ光105と照射することが例示される。
【0181】
図12図13に図示するように、ガラス基板101には超音波801が印加され、電極106aと電極106b間に電圧が印加されることによりガラス基板101に直流電界が印加される。
本発明は、超音波装置301を導入することにより、水溶液や有機溶媒中においてでも金属イオン交換が容易となる。
【0182】
ガラス基板101に超音波801を印加することにより、ガラス基板101中のSi-O・・・M(M:Li、Na等)で表されるような酸素とイオンの静電的な結合(静電結合)が弱くなる。また、処理液201中に含まれる金属イオン(Cu、Ag、Ni2+、Cu2+等)とガラスの中のMn+イオンが交換反応を起こす。
【0183】
ガラス基板101の表面(処理対象面)は処理液201aと接している。ガラス基板101の裏面(反対面)は処理液201bと接している。陽極電極(+)106aから陰極電極(-)106bへの電界はガラス基板101を通過する。
電極106間の電界印加により、ガラス基板101中の陽イオンであるアルカリ金属イオンが陰極電極(-)106bに向かって移動する。
【0184】
陰極電極(-)106b側のガラス基板101の裏面に到達したアルカリ金属イオンは、ガラス陰極電極(-)106b側の処理液201bに移動する。移動したアルカリ金属イオンに置き換わる形で、陽極電極(+)106a側の処理液201aから陽イオン(Cu、Ag、Ni2+、Cu2+等)がガラス基板101の表面からガラス基板中に移動する。
【0185】
ガラス基板101の表面からアルカリ金属イオンに置き換わる形で、陽極電極(+)106a側の処理液201aから陽イオン(Cu)がガラス基板101の表面に侵入する。
【0186】
ガラス基板101に超音波801を印加すること、ガラス基板101の表面と裏面間に直流の電圧による電界を印加することにより、金属イオンの置換が促進される。
【0187】
直流の電圧による電界を印加している時に、金属イオンの移動あるいは移動量が変化する。この変化あるいは移動を直流電流計102で測定し、また、モニターすることにより金属イオンの移動状態をモニターし、また、置換状態を制御する。
【0188】
以上の動作を、図11に図示するように、電極106を矢印方向に移動し、また、超音波801の照射位置を移動させることにより、順次、ガラス基板101の表面に金属イオン置換を実施することができる。
【0189】
なお、図11図12図13の実施例において、電極106位置を順次移動させながら、金属イオン置換を実施するとしたが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、ガラス基板101の左半分を金属イオンに置換し、次にガラス基板101の右半分を金属イオンに置換しても良い。
【0190】
本発明の第2段階は、第1段階で得られたガラス基板101を純水で洗浄した後、無電解めっき液に入れて無電解めっきを行う。ガラス基板101の表層には金属イオンが有するため、この金属イオンと無電解めっき液中の金属とが結合し、ガラス基板101の表層に金属膜116(無電解めっき膜116)が形成または構成される。
【0191】
図12に図示するように、ガラス基板101に超音波801を印加すること、ガラス基板101の表面と裏面間に直流の電圧による電界を印加することにより、金属イオンの置換が促進され、あるいは実施される。
【0192】
直流の電圧による電界の強度を変化させることにより、金属イオンの置換速度を変化あるいは制御することができる。また、超音波801が照射するガラス基板101の単位面積あたりの強度を変化させることにより、金属イオンの置換速度を変化あるいは制御することができる。
【0193】
金属イオンの移動あるいは移動量の変化量は、電流計102でモニターすることができる。電流計102が測定する電流の大きさにより、超音波801、電界の強さを制御する。以上の事項は、図6図8でも説明しているので説明を省略する。
【0194】
図13(a)->図13(b)に図示するように、レーザ装置104でレーザ光105を照射しても良い。ガラス基板101にレーザ光105を照射し、また、超音波801を照射し、電極106により電界を印加する。
【0195】
電極106により電界を印加する位置、レーザ光105を照射する位置、また、超音波801を照射する位置を順次、移動させてガラス基板101の表面に金属イオンの置換を実施する。
レーザ光105の照射、超音波801の照射、電界の印加が相乗効果を発揮し、ガラス基板101の表面の金属イオン置換が促進される。
【0196】
図14は、ガラス基板101に、複数の回路基板110を形成する実施例の説明図である。複数の回路基板110は、1枚のガラス基板101から多数個取りされる。
【0197】
ガラス基板101にレーザ光105を照射されると、レーザ光105を照射されたガラス基板101の表面は加熱され、金属イオンの置換、進行が加速される。レーザ光105は指向性が良く、微細な回路配線パターンを描画できる。レーザ光105で描画された回路配線パターン112に沿って、金属イオンの置換を実施することができる。
【0198】
図14に図示するように、超音波801を照射し、金属イオン置換が活性化された状態で、レーザ光105を照射することにより、金属イオンされた、あるいは金属イオンを多く有する微細な回路配線パターン112を描画することができる。
【0199】
電極106による電界を印加する位置はA方向に移動し、電極106の移動位置に合わせてレーザ光105を照射する位置、超音波801を照射する位置も移動させる。電極106からの電界の印加により、金属イオンを回路配線パターン112に定着することができる。
電極106の移動ステップは、回路基板110単位でも良いし、回路基板110を複数ステップに分割して移動させても良い。
【0200】
回路基板110の表面に処理液201から保護する保護膜あるいは保護シート(図示せず)を形成することも有効である。保護膜あるいは保護シートとして、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂、あるいはこれらの樹脂をシート化したシート類が例示される。あるいは金属材料等から構成されるメタルマスクでも良い。あるいは蒸着薄膜からなる金属パターンでも良い。
【0201】
保護膜あるいは保護シートにより、処理液201が回路基板110に直接に接しないように構成あるいは配置し、回路基板110、ガラス基板101を処理液201中に浸透あるいは浸漬、浸水させる。
【0202】
レーザ装置104により保護膜あるいは保護シートにレーザ光105が照射され、レーザ光105が照射された箇所の保護膜あるいは保護シートが除去される。保護膜あるいは保護シートが除去された箇所の回路基板110、ガラス基板101の表面は、処理液201が直接に接するようになり、金属イオンなどの置換、金属の移動が発生する。
【0203】
たとえば、図14に図示するように、配線パターン112の箇所の保護膜あるいは保護シートが除去されると、配線パターン112部の金属イオンなどの置換、金属の移動が発生し、良好な配線パターン112を形成、構成することができる。
【0204】
以上の事項あるいは内容は、図1図4図5図10図19図22図24等の他の実施例にも適用できることは言うまでもない。また、組み合わせをできることは言うまでもない。
【0205】
図13図14の実施例では、超音波801およびレーザ光105を照射した後、電極106によりガラス基板101に電界を印加するように図示しているが、本発明はこれに限定するものではない。
【0206】
図15に図示するように、電極106にガラス基板101に電界を印加し、また、超音波801を印加して、ガラス基板101の表面を活性化し、その後、レーザ光105を照射して回路配線パターン112を描画しても良い。
【0207】
また、電極106の位置を左右(A方向、B方向)に、小刻みに移動し、電極106の左右(A方向、B方向)の移動に同期させて、レーザ光105を照射して回路配線パターン112を描画することを繰り返すことにより、回路基板110の配線パターン112を完成させても良い。左右(A方向、B方向)の移動は複数回、同一位置を含むように実施することが好ましい。
【0208】
電極106の位置を左右(A方向、B方向)に、移動し、また、超音波801を照射することにより、レーザ光105を照射する位置が、常時活性化され、効率良く配線パターン112を形成することができる。
【0209】
以上のように、本発明は、(1)超音波801と印加すること、(2)電極106により電界(電圧)を印加すること、(3)レーザ光105と照射することの順番に限定されるものではない。(1)超音波801と印加すること、(2)電極106により電界(電圧)を印加すること、(3)レーザ光105と照射することを同時に実施しても良い。
【0210】
また、例えば、(2)電極106により電界(電圧)を印加することを先行させ、(1)超音波801と印加すること、(3)レーザ光105と照射することを後に実施しても良い。
【0211】
図16は本発明のガラス基板101の加工方法の説明図である。レーザ光105の照射、超音波801の照射、電極106の印加により、アルカリ金属イオン、金属イオンが移動し、電流計102に電流が流れる。
【0212】
電流計102に流れる電流の大きさは、レーザ光105の照射、超音波801の照射、電極106の印加の状況に対応して変化する。電流の変化は、金属イオンの置換状況に応じて変化する。したがって、電流計102に流れる電流をモニターすることによりガラス基板101の表面に金属イオンが注入、置換されたことを把握できる。
【0213】
レーザ光105の照射により回路配線パターン112を描画する場合は、配線パターン112の描画面積に対応して電流計102に流れる電流が変化する。たとえば、図16(b)に図示するように、電流値は変化し、電流の変化は回路基板110端子で繰り返す。回路基板110に配線パターン112の形成量、形成位置が決まっているからである。
【0214】
電流計102、スイッチ120、直流電圧装置103は直流電界制御装置202内に格納され、直流電界制御装置202は電流計102のデータをコントローラ407に送出する。コントローラ407は、電流データにより、超音波801の強度、レーザ光105の強度、電極106の位置(移動)を制御する。
【0215】
図16に図示すように、コントローラ407は直流電界制御装置202の直流電圧装置103の出力電圧値、電圧の極性を制御する。また、スイッチ120のオンオフを制御する。また、電流計102に流れる電流値を取得する。
【0216】
電極106は、ガラス基板101の上面に配置された電極106a、ガラス基板101の下面に配置された電極106bから構成される。電極106aと電極106b間には、処理液201aと処理液201b間に流れるリーク電流が発生する場合がある。リーク電流は電流計102に測定される。リーク電流は暗電流として、超音波801の照射、レーザ光105の照射、電極106の電圧印加により発生する電流から差分する。
【0217】
図16(b)に図示するように、配線パターン112の描画面積に対応して電流計102に流れる電流が変化する。電流値は変化し、電流の変化は回路基板110端子で繰り返す。この繰り返し電流パターンに一致するように、超音波801の照射強度、レーザ光105の照射強度、電極106の電圧印加強度を制御、調整あるいは設定する。
【0218】
図17は本発明の加工装置の構成図および説明図である。超音波装置301、レーザ装置104、電極106に電圧を印加する直流電界制御装置202を具備する。
【0219】
ガラス基板101は搬送ローラ(図示せず)に搬送され、位置決めされて、処理液201に浸漬される。一例として、実施例で説明したようにガラス基板101に銅めっき膜を形成する場合は、処理液201として、CaCl・6HOと0.5gのCuClを混合したものを使用する。温度調整器304により、処理液201、ガラス基板101は加温される。処理液201の温度は所定温度(たとえば、温度を80℃)に維持される。温度は処理工程に対応させて変更、調整する。
【0220】
処理液201(処理液201a、処理液201b)は容器107を循環する。処理液201は注排出穴121aから容器107内に注入され、また、処理液201は注排出穴121bから容器107外に排出される。注排出穴121a、注排出穴121bは処理液201a、処理液201bに対応して配置されている。
【0221】
処理液201は補充容器403に充填される。充填された処理液201は電動ポンプ404で送出され、フィルタ405で雑物が除去されて、注排出穴121aから容器107内に注入される。また、処理液201のpHの調整が実施される。
【0222】
処理液201bは注排出穴121bから容器107外に排出され、イオン交換装置406のイオン交換樹脂により、ガラス基板101sから溶出してNa等のアルカリ金属が吸着される。アルカリ金属が吸着された処理液201bは、補充容器403に戻される。補充容器403に処理液201bを戻すか否かは電磁弁402で制御される。
【0223】
超音波装置301はZ軸方向を移動し、ガラス基板101に近接して超音波801を印加する位置に位置調整が実施される。超音波装置301は、X軸方向は移動ステージ401Xで移動し、Y軸方向は移動ステージ401Yで移動する。
レーザ装置104が発生するレーザ光105はガルバノミラーで走査され、配線パターン112の形成位置に調査する。
【0224】
なお、本発明において、レーザ光105により配線パターン112を形成するとしたが、これに限定するものではない。レーザ光105をライン状あるいは一定の面積に照射するように構成し、ガラス基板101の表面を加温して活性化させる構成であっても良いことは言うまでもない。
【0225】
本発明の実施例は、他の実施例と組み合わせることができることは言うまでもない。また、実施例の全部の構成あるいは一部の構成を他の実施例に適用できることは言うまでもない。また、実施例の全部の方法あるいは一部の方法を他の実施例に適用できることは言うまでもない。
【0226】
ガラス基板101に超音波801の印加により、ガラス基板101中のアルカリ金属(Na等)が処理液201に溶出される。また、ガラス基板101に超音波801の印加により、ガラス基板101に金属イオンが注入あるいは置換される。
超音波801の強度は、1~200W/cmであり、ガラス基板101の材質、単位時間あたりの強度、処理液201の温度等によって所定値に設定される。
【0227】
また、レーザ光105の照射、直流電圧に印加により、ガラス基板101中のアルカリ金属(Na等)が処理液201に溶出される。また、ガラス基板101に超音波801の印加により、ガラス基板101に金属イオンが注入あるいは置換される。
以上の事項は相乗効果により、アルカリ金属イオンの溶出、金属イオンの置換は加速化、活性化され、工程時間を短縮できる。
【0228】
処理液201およびガラス基板101に超音波801を印加することにより、処理液201中に含まれる金属イオンとガラスの中のアルカリ金属Naイオンが交換反応を起こす。レーザ光105の照射、直流電圧の印加により、加速化され、アルカリ金属の溶出、金属イオンの置換が実現する。
【0229】
処理液201に溶出したアルカリ金属は、イオン交換装置406のイオン交換樹脂でアルカリ金属を吸着する。アルカリ金属を除去された処理液201は注入排出穴121aから容器107内に注入され、再利用される。
図11図12図13図14図15図16で説明したように、レーザ光105の照射位置、電圧の照射位置、超音波801の照射位置は順次移動する。
以上の工程により、処理液201内の金属イオン(Cu、Ag、Ni等)は、ガラス基板101の表面に侵入し、また、置換される。
次の工程では、処理液201は、純水あるいはイオン交換水に変更され、これらにより、ガラス基板101の表面および裏面は洗浄される。
【0230】
次の工程では、ホルムアルデヒド、NaOH、エチレンジアミン四酢酸)次亜リン酸からなる処理液201としてのホルムアルデヒド水溶液を容器107に注入する。
【0231】
次の工程では、前工程のホルムアルデヒド水溶液にCuSO・5HOを溶解させ処理液201を、容器107に注入、循環させて、無電解めっき膜116をガラス基板101の表面に形成する。
【0232】
以上の実施例は、めっき膜が無電解銅めっき膜116の場合である。他の実施例で説明したように、無電解めっき膜116の種類、材質に対応して、処理液201、めっき液を変更することは言うまでもない。
【0233】
超音波801の印加、レーザ光105の照射、直流電圧の印加によりガラス基板101の表層に金属イオンが配置される。また、ガラス基板101を純水あるいはイオン交換水で洗浄した後、無電解めっき液に入れて無電解めっきを行う。ガラス基板101の表層には金属イオンが有するため、この金属イオンと無電解めっき液中の金属とが結合し、ガラス基板101の表層に金属膜116(無電解めっき膜116)が形成または構成される。
【0234】
以上のように、容器107に充填する処理液201を変更することにより、ガラス基板101への金属イオン置換と、無電解めっき膜116の形成とを一貫して実施することができる。
【0235】
以上の実施例は、無電解めっき膜116として銅めっき膜を形成する場合である。Niめっき膜、銀めっき膜の場合も同様であり、以前に説明した実施例の手順と処理液201を使用すれば良い。
【0236】
図18は、本発明のガラス基板101の製造装置の説明図および構成図である。ホーン303を介して、ガラス基板101に超音波801が印加される。ホーン303の中央部にレーザ光105が通過する導波路が形成されている。
【0237】
注入排出穴121はホーン303に取り付けられている。注入排出穴121から処理液201aが供給され、処理液201aはホーン303を介してガラス基板101の表面に供給される。
【0238】
ホーン303等は導電体で構成され、ホーン303が電極106aとして機能する。ガラス基板101の裏面には電極106bが配置される。ガラス基板101と電極106b間に処理液201bが充填され、循環される。ホーン303(電極106a)と電極106b間には、直流電界制御装置202の直流電圧装置103により、直流電圧が印加される。
【0239】
レーザ光105はホーン303に形成されたレーザ光通過穴114を透過する。レーザ光105は処理液201a中およびホーン303内を通過して、ガラス基板101に照射される。ガラス基板101の金属イオンが置換される置換部115(例えば、配線パターン112)に処理液201aが供給され、ホーン303から超音波801が印加される。また、レーザ光105が照射され、電極106により直流電圧が印加される。
【0240】
ホーン303は移動ステージ(図示せず)により、ガラス基板101に近接するようにZ軸方向の位置決め、変更が実施される。ホーン303は移動ステージ(図示せず)により、X軸方向、Y軸方向に移動、位置決めされ、置換部(金属イオン部)115に位置決めされる。
【0241】
図9図10等の実施例では、電極106aと電極106bとは同一サイズで、平行して配置され、電極106aと電極106b間に平行の電界が印加されるかのように説明した。本発明はこれに限定するものではない。一方の電極106を小サイズとし、電極106aと電極106b間に平行電界以外の電界を発生するように構成しても良い。
【0242】
ガラス基板101からのアルカリ金属の溶出、金属イオンの置換は、電界強度に相関する。電界強度が高い部位では、アルカリ金属の溶出、金属イオンの置換が促進される。電界強度が弱い部位では、アルカリ金属の溶出、金属イオンの置換が進行しない。
【0243】
図19は、本発明のガラス基板101の加工方法の説明図である。図19において、電極106aはガラス基板101の中央部付近に形成または配置されている。
【0244】
電極106aから電極106bへの電気力線は、電極106aと電極106bとが近い位置で強くなり、遠いほど電気力線は弱くなる。したがって、電気力線は図19(a)に図示するように、円弧状となる。中央部の電気力線805aが強く、周辺部の電気力線805bが弱い。
【0245】
図19(a)に図示するように、ガラス基板101表面の一部領域に配置した電極106aとガラス基板101裏面に配置した電極106b間に直流電圧を印加する。電極106a近傍には他の部分に比較して強電界が印加されるため、Ag、Pb2+等との置換が集中する。
【0246】
電気力線805が強い部位は金属イオンの置換、アルカリ金属の溶出作用が強くなる。電気力線805が弱い部位は金属イオンの置換、アルカリ金属の溶出作用が弱くなる。
【0247】
電気力線805の密度分布により、図19(b)に図示する金属イオンの分布が発生させることができる。ガラス基板101において金属イオンが集中する部位は、屈折率が高くなる。金属イオンがない、あるいは少ない部位は屈折率がガラス基板101の屈折率と大差がない。したがって、図19(b)の金属イオン(金属)の分布を発生させることにより、レンズ効果を発揮、あるいはレンズとして機能させることができる。
【0248】
図19(b)に図示するように、ガラス基板101の一部の領域でのNaを、Ag、Pb2+と置換することにより、ガラス基板101中に屈折率の分布を形成することができる。
電界印加によりAg(薄膜)->Na(ガラス)のイオン交換を行い、あるいはPb2+(薄膜)->Na(ガラス)のイオン交換を行う。
【0249】
以上の実施例は、電極106の位置、配置により、電気力線805の強弱分布を発生させる方法であった。しかし、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、レーザ光105の照射により、ガラス基板101に温度の高低分布を発生されると温度に相関する金属イオン等の分布が発生する。
【0250】
また、超音波801の照射により、あるいはホーン303の形状によりガラス基板101に超音波801の強弱分布を発生されると超音波801の強弱に相関する金属イオン等の分布が発生する。したがって、電気力線の密度分布だけでなく、レーザ光105、超音波801によっても、図19(b)に図示する金属イオンの分布を構成することができ、図19(c)に図示・説明するレンズ効果を発揮させることができる。
【0251】
図19(c)は、高屈折率部802、低屈折率部803(高屈折率部802よりも低い部分≒ガラス基板101の屈折率)が発生し、光線804は集光される。したがって、ガラス基板101にマイクロレンズを形成または作製することができる。
【0252】
光線804を良好に集光するため、ガラス基板101の光出射側に無電解めっき膜116bを形成する。無電解めっき膜116bは、レンズの焦点部にピンホール状の穴を形成する。隣接したレンズ(高屈折率部802)の周辺部には無電解めっき116aを形成する。
図1図4図5図9図10図12図19等の実施例では、電極106aを陽極(+)とし、電極106bを陰極(-)とする実施例である。
図22は、電極106a、電極106bの電位極性を変化させる本発明の製造方法の説明図である。
【0253】
図22(a)に図示するように、電極106aを陰極(-)とし、電極106bを陽極(+)としている。処理液201にガラス基板101が浸漬される。ガラス基板101が浸漬された状態で、超音波801が印加される。
【0254】
本発明の実施例において、ガラス基板101の金属イオンを置換するとして説明するが、これに限定するものではない。金属基板等の無機材料以外の基板の表面にガラス材料などの無機材料が蒸着あるいは塗布もしくは形成された基板であっても良い。
【0255】
ホーン303を用いてガラス基板101に照射する場合は、ガラス基板101に近接させて小領域に超音波801を照射する場合は、高い周波数の超音波801を使用することが好ましい。また、ガラス基板101全体に超音波801を照射する場合は、比較的低い周波数の超音波801を照射することが好ましい。
【0256】
図22の実施例において、図22(a)の時に照射する超音波801aの周波数と、図22(b)の時に照射する超音波801bの周波数とは異ならせることが好ましい。異ならせることにより、無電解めっき膜116aと無電解めっき膜116bの膜質、膜厚を変化させることができる。
【0257】
図22(a)の時に照射する超音波801aの強度と、図22(b)の時に照射する超音波801bの強度とは異ならせることが好ましい。異ならせることにより、無電解めっき膜116aと無電解めっき膜116bの膜質、膜厚を変化させることができる。
【0258】
以上のように、本発明のガラス基板101のめっき方法あるいはガラス基板の加工方法もしくはガラス基板の製造方法において、超音波を照射する単位面積、加工強度に対応して超音波の周波数を変化あるいは変更する。
【0259】
ガラス基板101に印加する超音波801の強度は、印加する該当箇所への最初は、平均値よりも弱くし、金属置換が進展すると伴に強度を高くすることが好ましい。金属置換はガラス基板101の内部になるほど、置換するのに必要な超音波801のエネルギーが大きくなるためと推定される。
【0260】
本発明は、ガラス基板101の表面に処理液201aを接触させ、ガラス基板101の裏面に処理液201bを接触させる。電極106aと電極106b間に直流電圧を印加する。処理液201aと処理液201bとはガラス基板101等で接触しないように構成する。
【0261】
図22(a)において、電極106aはマイナス(-)電位とし、電極106bはプラス(+)電位とする。直流電圧を高くすると、ガラス基板101表面近傍のアルカリイオンがガラス基板101表面方向へ移動する。
【0262】
アルカリ金属イオンが移動可能な状態となったガラスを任意の陽イオンを含む溶融塩等の処理液201に浸漬させると、ガラス中のイオンと処理液に含まれるイオンとの濃度勾配が生じる。生じた濃度勾配が駆動力となり、ガラス基板101中のイオンと処理液201に含まれるイオンとの相互拡散が生じ、イオン交換が起こる。
【0263】
ガラスのイオン交換反応はガラス基板101中に含まれるイオン結合を弱めることが重要である。図22(a)に図示するように、超音波装置301で超音波801aを照射することによりイオン交換が容易となる。図22(a)に図示するように、ガラス基板101の最表面からNaやKが抜ける(リーチングする)。
【0264】
次に、図22(b)に図示するように、電極106aをプラス(+)とし、電極106bをマイナス(-)電位に変更する。処理液201にガラス基板101が浸漬される。ガラス基板101が浸漬された状態で、超音波801bを印加する。また、必要に応じてレーザ光105を照射する。
【0265】
処理液201a、処理液201bには金属イオンを溶解させる。ガラス基板101の最表面からNaやKが抜けた代わりに金属イオン(Cu)が入り込む(置換される)。金属イオン(Cu)はガラス基板101の表面から5nm以上の範囲で置換される。このましくは、20nm以上がより好ましい。置換の厚みは処理液201の濃度、ナトリウム濃度、温度、時間等により制御することができる。
【0266】
図22(b)に図示するように、Na(ガラス)<-->Cuの金属イオン交換処理によって、Cuをガラス基板101中に導入する。Cuがガラス基板101の導入されることにより、ガラス基板101の表面にCu等の無電解めっき膜116を付着することができる。
【0267】
図22(c)は、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116aが形成され、ガラス基板101の裏面に無電解めっき膜116bが形成される。無電解めっき膜116aは、レーザ光105の作用により付着強度の高く形成される。無電解めっき膜116bは、均一性が付着強度の高く形成される。無電解めっき膜116aは電気回路の配線パターンとして有効であり、無電解めっき膜116bは、グランド層、シールド層として有効である。
【0268】
なお、図22の実施例において、Cu無電解めっき膜116を形成するとして説明したが、Ni、Agであっても処理液201を変更するだけで対応できることは言うまでもない。
【0269】
図22は、ガラス基板101の一方の面にレーザ光105を照射した実施例である。図24は、ガラス基板101の両方の面にレーザ光105を照射した実施例である。図24は、電極106a、電極106bの電位極性を変化させる本発明の製造方法の説明図である。
【0270】
図24(a)に図示するように、電極106aを陰極(-)とし、電極106bを陽極(+)としている。処理液201にガラス基板101が浸漬される。ガラス基板101が浸漬された状態で、ガラス基板101の裏面から超音波801aが印加される。
【0271】
図24の実施例において、図24(a)の時に照射する超音波801aの周波数、レーザ光105aの強度と、図24(b)の時に照射する超音波801bの周波数、レーザ光105bの強度のうち、少なくとも一方とは異ならせることが好ましい。異ならせることにより、無電解めっき膜116aと無電解めっき膜116bの膜質、膜厚を変化させることができる。
【0272】
以上のように、本発明のガラス基板101のめっき方法あるいはガラス基板の加工方法もしくはガラス基板の製造方法において、超音波を照射する単位面積、加工強度に対応して超音波の周波数、レーザ光105の強度、レーザ光の波長を変化あるいは変更する。
【0273】
本発明は、ガラス基板101の表面に処理液201aを接触させ、ガラス基板101の裏面に処理液201bを接触させる。電極106aと電極106b間に直流電圧を印加する。処理液201aと処理液201bとはガラス基板101等で接触しないように構成する。
【0274】
図24(a)において、電極106aはマイナス(-)電位とし、電極106bはプラス(+)電位とする。ガラス基板101表面近傍のアルカリイオンが処理液201aに移動する。ガラス基板101の裏面からは、銅(Cu)金属イオンガラス基板101の裏面に移動する。
【0275】
ガラスのイオン交換反応はガラス基板101中に含まれるイオン結合を弱めることが重要である。図24(a)に図示するように、超音波装置301で超音波801aを照射することによりイオン交換が容易となる。図24(a)に図示するように、ガラス基板101の表面から処理液201aにNaやKが抜ける。
【0276】
次に、図24(b)に図示するように、電極106aをプラス(+)とし、電極106bをマイナス(-)電位に変更する。処理液201にガラス基板101が浸漬される。ガラス基板101が浸漬された状態で、ガラス基板101の表面から超音波801bを印加する。また、必要に応じてレーザ光105bを照射する。
【0277】
処理液201a、処理液201bには金属イオンを溶解させる。ガラス基板101の表面からNaやKが抜けた代わりに金属イオン(Cu)が入り込む(置換される)。金属イオン(Cu)はガラス基板101の表面から5nm以上の範囲で置換される。このましくは、20nm以上がより好ましい。置換の厚みは処理液201の濃度、ナトリウム濃度、温度、時間等により制御することができる。
【0278】
図24(b)に図示するように、Na(ガラス)<->Cuの金属イオン交換処理によって、Cuをガラス基板101中に導入する。Cuがガラス基板101の導入されることにより、ガラス基板101の表面にCu等の無電解めっき膜116を付着することができる。
【0279】
図24(c)は、ガラス基板101の表面に無電解めっき膜116aが形成され、ガラス基板101の裏面に無電解めっき膜116bが形成される。無電解めっき膜116a、無電解めっき膜116bは、レーザ光105の作用により付着強度の高く形成される。
【0280】
なお、図24の実施例において、Cu無電解めっき膜116を形成するとして説明したが、Ni、Agであっても処理液201を変更するだけで対応できることは言うまでもない。
図20は、本発明の電子回路基板の製造方法の説明図である。また、図21は、本発明の電子回路基板の製造方法のフローチャート図である。
【0281】
図20(a)は本発明のガラス基板101の加工方法あるいは製造装置で作製したガラス基板101である。ガラス基板101はアルカリ金属イオン、金属イオンがイオン交換されえて形成されて金属イオン部115が形成されている(S01)。ガラス基板101の表面には、配線パターン112となる金属イオン部(金属イオンの置換部)が形成されている。
次に、ガラス基板101をイオン交換水あるいは純水で洗浄し、乾燥させる(S2)。
図20(b)に図示するように、ガラス基板101の表面に無電解Cuめっきを行い、無電解めっき膜116を形成する(S03)。
【0282】
処理液201としての無電解Cuめっき液としては、強アルカリ領域でホルマリンを還元剤とする還元析出型の無電解Cuめっき液を用いることができる。キレート剤としては、EDTA又はロッシェル塩を用いることができる。
【0283】
無電解めっきの前に、無電解Cuめっき液中の還元剤がガラス基板101上で電子を放出するように触媒となるPdを付与する。無電解Cuめっき液中のCuイオンが、還元剤の酸化反応で放出される電子によって還元され、ガラス基板101の表面に析出し、無電解めっき膜116が形成される。
【0284】
次に、不要な無電解めっき膜116を除去する。次に、図20(c)に図示するように、電解Cuめっき形成工程を行い、無電解めっき膜116上に電解めっき膜117を形成する(S04)。電解Cuめっき液組成及びめっき条件の一例を下記に示す。
<電解Cuめっき液組成>
硫酸銅・五水和物:100g/L
硫酸:190g/L
塩素:50mg/L
光沢剤:適量
<電解Cuめっき条件>
液温:室温
電流密度:2A/dm2
【0285】
次にベーキング工程を実施する。例えば80~200℃で、30分間~1時間ベーキングを行う(S04)。また、図20(d)に図示するように、電解めっき膜118を端子として、半田118により電子部品119を実装して完成する。
図22図24の実施例では、ガラス基板101の表面と裏面の両方に金属イオンの置換部115を形成することができる。
図23は、図22図24で製造されたガラス基板101にめっき膜を形成する製造方法の説明図である。
【0286】
図23(a)は、図22図23で説明した本発明のガラス基板101の加工方法あるいは製造装置で作製したガラス基板101である。図22図24の実施例では、ガラス基板101の表面と裏面の両方に金属イオンの置換部115を形成することができる。
【0287】
ガラス基板101はアルカリ金属イオン、金属イオンがイオン交換されえて形成されて金属イオン部115が形成されている。ガラス基板101の表面には、配線パターン112となる金属イオン部(金属イオンの置換部)が形成されている。
【0288】
ガラス基板101をイオン交換水あるいは純水で洗浄し、乾燥させる。次に、図23(b)に図示するように、ガラス基板101の表面に無電解Cuめっきを行い、無電解めっき膜116を形成する。
【0289】
処理液201としての無電解Cuめっき液としては、強アルカリ領域でホルマリンを還元剤とする還元析出型の無電解Cuめっき液を用いることができる。キレート剤としては、EDTA又はロッシェル塩を用いることができる。
【0290】
無電解めっきの前に、無電解Cuめっき液中の還元剤がガラス基板101上で電子を放出するように触媒となるPdを付与する。無電解Cuめっき液中のCuイオンが、還元剤の酸化反応で放出される電子によって還元され、ガラス基板101の表面に析出し、無電解めっき膜116が形成される。
【0291】
次に、不要な無電解めっき膜116を除去する。次に、図23(c)に図示するように、電解Cuめっき形成工程を行い、無電解めっき膜116上に電解めっき膜117を形成する。電解Cuめっき液組成及びめっき条件の一例を下記に示す。
<電解Cuめっき液組成>
硫酸銅・五水和物:100g/L
硫酸:190g/L
塩素:50mg/L
光沢剤:適量
<電解Cuめっき条件>
液温:室温
電流密度:2A/dm2
【0292】
次にベーキング工程を実施する。例えば80~200℃で、30分間~1時間ベーキングを行う。また、図23(d)に図示するように、電解めっき膜118を端子として、半田118により電子部品119を実装して完成する。
【0293】
たとえば、車のガラスには、赤外線を遮光することなどを目的として、銀等からなる膜を形成するが、本願発明は、この車のガラスの形成、作製方法、あるいは車のガラスにも適用できることは言うまでもない。
【0294】
また、スマートフォンの回路基板にも適用できることは言うまでもない。また、回路基板は表面に配線を形成する1層あるいは両面基板に限定されるものではなく、多層基板にも適用することができる。たとえば、ガラス基板に配線パターン112を形成し、蒸着などの技術を用いて、配線の上にガラス層を形成し、配線パターン112を形成すれば良い。また、配線の層間接続は、スルーホールを形成する箇所にレーザ光105を照射して金属置換を発生させ、スルーホールを形成して2層間の配線パターン112を接続すれば良い。
【0295】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本明細書及び図面に記載した事項あるいは内容は、相互に組み合わせることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0296】
101 ガラス(セラミック)基板(シート)
102 電流計
103 直流電圧装置
104 レーザ装置
105 レーザ光
106 電極
107 容器
108 密閉部
109 密閉部
110 回路基板
112 配線パターン
114 レーザ光通過穴
115 金属イオン部(置換部)
116 無電解めっき膜
117 電解めっき膜
118 はんだ
119 電子部品
120 スイッチ(開閉器)
121 注入排出穴
201 処理液
202 直流電界制御装置
301 超音波装置
302 搬送ローラ
303 ホーン
304 温度調整器
305 拡散ファン(攪拌ファン)
401 移動ステージ
402 電磁弁
403 補充容器
404 電動ポンプ
405 フィルタ
406 イオン交換装置(アルカリ金属吸着器)
407 コントローラ
801 超音波
802 高屈折率部
803 低屈折率部
804 光線
805 電気力線

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