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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128190
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04303 20160101AFI20240913BHJP
   H01M 8/04228 20160101ALI20240913BHJP
   H01M 8/04746 20160101ALI20240913BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20240913BHJP
【FI】
H01M8/04303
H01M8/04228
H01M8/04746
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037047
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 剛広
(72)【発明者】
【氏名】松井 晋一郎
(72)【発明者】
【氏名】平岩 琢也
(72)【発明者】
【氏名】品川 学
(72)【発明者】
【氏名】行實 文明
(72)【発明者】
【氏名】寺口 直希
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 祐介
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB17
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA28
5H127BA57
5H127BA58
5H127BA59
5H127BA62
5H127BB02
5H127DA11
5H127DC04
5H127DC08
5H127DC09
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】燃料電池スタックまたは燃料電池モジュールの作動停止状態で周囲温度が上昇し、燃料ガス系統内の圧力が上昇しても、燃料ガス系統の設計圧力を超えるおそれを低減する。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池スタックを有する燃料電池モジュールと、燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス系統と、燃料ガス系統を開閉する上流側ブロック弁および下流側ブロック弁と、上流側ブロック弁と下流側ブロック弁との間で燃料ガス系統から分岐して設けられるベント系統と、ベント系統を開閉するブリード弁と、を備える。燃料電池スタックの作動停止を実行するときに、上流側ブロック弁を閉じた後にブリード弁を開き、さらに所定時間経過後に、下流側ブロック弁を閉じる減圧制御が実施される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックを有する燃料電池モジュールと、
前記燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス系統と、
前記燃料ガス系統を開閉する上流側ブロック弁および下流側ブロック弁と、
前記上流側ブロック弁と前記下流側ブロック弁との間で前記燃料ガス系統から分岐して設けられるベント系統と、
前記ベント系統を開閉するブリード弁と、を備え、
前記燃料電池スタックの作動停止を実行するときに、前記上流側ブロック弁を閉じた後に前記ブリード弁を開き、さらに所定時間経過後に、前記下流側ブロック弁を閉じる減圧制御が実施される、燃料電池システム。
【請求項2】
前記減圧制御では、前記下流側ブロック弁を閉じる前に、前記ブリード弁を閉じる、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記減圧制御では、前記下流側ブロック弁を閉じると同時に、前記ブリード弁を閉じる、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記上流側ブロック弁と前記燃料電池スタックとの間の前記燃料ガス系統に配置される第1圧力センサをさらに備え、
前記所定時間は、前記第1圧力センサの測定値が、予め設定された設定値以下となるまでの時間である、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記第1圧力センサは、前記燃料ガス系統において、前記下流側ブロック弁と前記燃料電池スタックとの間に配置される、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記第1圧力センサは、前記燃料ガス系統において、前記上流側ブロック弁と前記下流側ブロック弁との間に配置される、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記燃料ガス系統において、前記下流側ブロック弁と前記燃料電池スタックとの間に配置される減圧部と、
前記減圧部と前記燃料電池スタックとの間の前記燃料ガス系統から分岐する排出流路部に配置されるリリーフ弁と、をさらに備え、
前記排出流路部は、前記リリーフ弁とは反対側の下流側において、前記ベント系統に合流する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記燃料ガス系統において、前記減圧部と前記燃料電池スタックとの間に配置される第2圧力センサをさらに備え、
前記減圧制御では、前記第2圧力センサの値が所定値以上になった場合、前記上流側ブロック弁を閉じるとともに、前記下流側ブロック弁および前記ブリード弁を開く、請求項7に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記ブリード弁と前記大気開放口との間で、前記ベント系統と連通するドレイン部をさらに備える、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記燃料ガス系統と接続される不活性ガス供給通路をさらに備え、
前記ベント系統は、凝縮水逆流防止部を有し、
前記燃料電池スタックの作動停止状態において、前記不活性ガス供給通路から供給される不活性ガスを凝縮水逆流防止部に導く乾燥制御が実施される、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記乾燥制御では、前記上流側ブロック弁および前記ブリード弁を開き、前記下流側ブロック弁を閉じた状態で、前記不活性ガス供給通路から前記不活性ガスを供給する、請求項10に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
前記燃料ガス系統と前記不活性ガス供給通路との合流部よりも下流側、かつ、前記上流側ブロック弁よりも上流側で、前記燃料ガス系統から分岐して前記ベント系統に合流するパージ系統をさらに備え、
前記パージ系統は、パージ通路およびパージ弁を含む、請求項10に記載の燃料電池システム。
【請求項13】
前記乾燥制御では、前記上流側ブロック弁、前記下流側ブロック弁、および前記ブリード弁を全て閉じた状態で、前記パージ弁を開いた後、前記不活性ガス供給通路から前記不活性ガスを供給する、請求項12に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、DBB(ダブルブロックアンドブリード)と呼ばれるバルブ装置を備えた燃料電池システムが開示されている。例えば特許文献1の燃料電池システムでは、燃料電池装置の運転停止時に、燃料ガス供給路に配置される2つの遮断弁(ブロック弁)を閉じるとともに、2つの遮断弁の間の空間を、ブリード弁を開くことによって開放して、燃料電池装置への燃料ガスの供給を停止させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-9544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料ガスの供給停止時に2つの遮断弁を同時に閉じると、燃料ガス供給路(燃料ガス系統)において、下流側の遮断弁と、燃料電池装置が有する燃料電池スタックまたは燃料電池モジュール(上記燃料電池スタックを含むモジュール)との間の配管内に、燃料電池スタックまたは燃料電池モジュールの通常動作時の供給圧力で燃料ガスが残存する。このため、例えば、燃料ガスの上記供給圧力と上記配管の設計圧力との差が小さい場合、燃料電池スタックまたは燃料電池モジュールの作動停止状態で周囲温度が上昇すると、上記配管内の燃料ガスが膨張して、上記配管内の圧力が設計圧力を超えてしまうおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、燃料電池スタックまたは燃料電池モジュールの作動停止状態で周囲温度が上昇し、燃料ガス系統内の圧力が上昇しても、燃料ガス系統の設計圧力を超えるおそれを低減することができる燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る燃料電池システムは、燃料電池スタックを有する燃料電池モジュールと、前記燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス系統と、前記燃料ガス系統を開閉する上流側ブロック弁および下流側ブロック弁と、前記上流側ブロック弁と前記下流側ブロック弁との間で前記燃料ガス系統から分岐して設けられるベント系統と、前記ベント系統を開閉するブリード弁と、を備え、前記燃料電池スタックの作動停止を実行するときに、前記上流側ブロック弁を閉じた後に前記ブリード弁を開き、さらに所定時間経過後に、前記下流側ブロック弁を閉じる減圧制御が実施される。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、燃料電池スタックまたは燃料電池モジュールの作動停止状態で周囲温度が上昇し、燃料ガス系統内の圧力が上昇しても、燃料ガス系統の設計圧力を超えるおそれを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の一形態に係る燃料電池システムの概略の構成を示す説明図である。
図2】上記燃料電池システムでの減圧制御による動作の流れを示すフローチャートである。
図3】上記減圧制御の有無における、燃料ガス系統内の圧力の変化を模式的に示すグラフである。
図4】他の減圧制御による動作の流れを示すフローチャートである。
図5】さらに他の減圧制御による動作の流れを示すフローチャートである。
図6】上記燃料電池システムの他の構成を模式的に示すブロック図である。
図7図6の構成を備えた燃料電池システムの減圧制御による動作の流れを示すフローチャートである。
図8】上記燃料電池システムのさらに他の構成を模式的に示すブロック図である。
図9】上記燃料電池システムのさらに他の構成を模式的に示すブロック図である。
図10】上記燃料電池システムのさらに他の構成を模式的に示すブロック図である。
図11】上記燃料電池システムのさらに他の構成を模式的に示すブロック図である。
図12】上記燃料電池システムのさらに他の構成を模式的に示すブロック図である。
図13】上記燃料電池システムのさらに他の構成を模式的に示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は同一相当部分については同一の参照符号を付し、特に必要がない場合には説明を繰り返さない。
【0010】
<1.燃料電池システムの概要>
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池システム100の概略の構成を示す説明図である。なお、図1において、実線の矢印は、流体通路(詳細例は配管)、および流体通路内を流れる流体の流れ方向を示す。また、図1において、破線は配線を示す。
【0011】
なお、本実施形態では、燃料電池システム100で用いる燃料ガスとして、水素を用いる例について説明する。ただし、水素以外の燃料ガス(例えばメタンを主成分とするガス)を用いて発電するシステムについても、本実施形態の構成および制御を適用することが可能である。また、本実施形態で説明する燃料電池システム100は、特に限定される趣旨ではないが、例えば船舶での利用に好適であり、さらに、陸上での利用(定置による利用)にも好適である。
【0012】
図1に示すように、燃料電池システム100は筐体1を備える。筐体1は、一例として直方体形状であるが、他の形状であってもよい。筐体1は、第1区画11と、第2区画12と、仕切壁13と、を含んで構成される。
【0013】
第1区画11と第2区画12とは、隣接して配置される。本実施形態では、第1区画11と第2区画12とは、上下に並ぶ。第1区画11は、第2区画12の上方に配置される。なお、第1区画11と第2区画12とが上下に並ぶ構成は例示であり、他の構成であってもよい。例えば、第1区画と第2区画とは左右に並ぶ構成であってもよい。
【0014】
仕切壁13は、第1区画11と第2区画12とを区切る。仕切壁13は、第1区画11の底壁を構成する。また、仕切壁13は、第2区画12の上壁を構成する。すなわち、仕切壁13は、第1区画11と第2区画12とで共用する壁である。
【0015】
(1-1.第1区画の内部構成)
図1に示すように、第1区画11には、燃料電池モジュール2が配置される。本実施形態では、第1区画11に収容される燃料電池モジュール2の数は4つである。なお、筐体1に収容される燃料電池モジュール2の数は、単数であってもよいし、4つ以外の複数であってもよい。
【0016】
燃料電池モジュール2は、燃料電池スタック2aを含んで構成される。すなわち、本実施形態の燃料電池システム100は、燃料電池スタック2aを備える。また、燃料電池モジュール2は、昇圧コンバータ、空気送風用のコンプレッサ、および、冷却液循環用のポンプ(いずれも不図示)を含んで構成される。燃料電池スタック2aは、積層された複数のセルによって構成される。各セルは、固体高分子電解質膜と、アノード極と、カソード極と、一対のセパレータとを有する。アノード極とカソード極とは、固体高分子電解質膜を挟む。アノード極は、負極(燃料極)である。アノード極は、アノード触媒層およびガス拡散層を含む。カソード極は、正極(空気極)である。カソード極は、カソード触媒層およびガス拡散層を含む。アノード極と固体高分子電解質膜とカソード極とは、膜-電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を構成する。一対のセパレータは、膜-電極接合体を挟む。各セパレータは複数の溝を有する。一方のセパレータの各溝は、水素ガスの流路を形成する。他方のセパレータの各溝は、酸化剤ガス(例えば空気)の流路を形成する。
【0017】
アノード極側では、水素が触媒によって水素イオンと電子とに分解される。水素イオンは固体高分子電解質膜を透過してカソード極側に移動する。一方、電子は外部回路を通ってカソード極側に移動する。これにより、電流が発生する(発電する)。カソード極側では、酸化剤ガスに含まれる酸素が、外部回路を流れてきた電子と、固体高分子電解質膜を透過した水素イオンと結合して水を生成する。生成された水は、排気に含まれて燃料電池システム100の外部に放出される。燃料電池スタック2aにより発電された電力は、昇圧コンバータにより昇圧されて、燃料電池システム100の外部に取り出される。
【0018】
また、燃料電池モジュール2は、水素循環ポンプ2bを有する。水素循環ポンプ2bは、燃料電池スタック2aでの発電に利用されなかった余剰の水素を、燃料電池スタック2aに戻すために設けられる。これにより、余剰の水素の燃料電池スタック2aでの再利用が図られる。
【0019】
燃料電池モジュール2は、インジェクタ21aを有する。インジェクタ21aは、燃料ガスである水素を減圧して燃料電池スタック2aに供給する。インジェクタ21aは、後述する減圧部21(図9参照)の一例である。上記のインジェクタ21aは、遮断機能を備えた調圧弁であってもよい。また、燃料電池モジュール2は、インジェクタ21aを含まない構成であってもよい。この場合、燃料電池スタック2aの作動圧力は、後述する個別配管33の作動圧力と同じになる。
【0020】
第1区画11には、燃料ガス系統3が配置される。すなわち、本実施形態の燃料電池システム100は、燃料ガス系統3を備える。燃料ガス系統3は、燃料電池モジュール2の燃料電池スタック2aに、燃料ガスとしての水素を供給する。
【0021】
より詳細には、燃料ガス系統3は、燃料ガス供給配管31と、分岐部32と、個別配管33と、を含む。分岐部32は、燃料ガス供給配管31と、4つの個別配管33とを接続する。4つの個別配管33はそれぞれ、燃料電池モジュール2と接続される。外部水素供給通路300から筐体1内の燃料ガス供給配管31内に入った水素は、後述するバルブ装置5を介して、分岐部32に至り、分岐部32にて4つの個別配管33に振り分けられる。そして、各個別配管33を流れる水素が、各燃料電池モジュール2に供給される。
【0022】
第1区画11には、ベント部4がさらに配置される。ベント部4は、共用ベント通路41と、個別ベント通路42と、を含む。共用ベント通路41および個別ベント通路42は、配管により構成することができる。各燃料電池モジュール2から排出される不要な水素は、各個別ベント通路42を介して共用ベント通路41に送られる。そして、上記水素は、共用ベント通路41と繋がる後述のベント系統44を介して、大気開放口43から排出される。
【0023】
なお、図1では、大気開放口43は、筐体1の側面に設けられているが、筐体1の他の面(例えば上面)に設けられてもよい。また、大気開放口43にさらに他の配管(外部ベント通路)が接続され、上記他の配管を介して水素が筐体1の外部の適切な場所に排出される構成であってもよい。さらに、個々の個別ベント通路42を流れる水素を直接(共用ベント通路41を介さずに)、筐体1の外部に排出する構成としてもよい。
【0024】
ベント部4は、ベント系統44をさらに含む。すなわち、本実施形態の燃料電池システム100は、ベント系統44を備える。ベント系統44は、後述するバルブ装置5の上流側ブロック弁51と下流側ブロック弁52との間で燃料ガス系統3から分岐して設けられて大気開放口43に繋がる配管である。ベント系統44には、上述の共用ベント通路41が接続されている。
【0025】
なお、筐体1の水素入口(筐体1と外部水素供給通路300との接続部)と、上流側ブロック弁51との間の水素配管内圧力が設計圧力以上に上昇することを防ぐ観点では、上流側ブロック弁51は、筐体11の外部に設置されていてもよい。
【0026】
第1区画11には、DBBと呼ばれるバルブ装置5がさらに配置される。バルブ装置5は、上流側ブロック弁51と、下流側ブロック弁52と、ブリード弁53と、を含む。上流側ブロック弁51および下流側ブロック弁52は、燃料ガス系統3(特に燃料ガス供給配管31)に設けられて、燃料ガス系統3を開閉(開通または遮断)する弁である。上流側ブロック弁51および下流側ブロック弁52は、燃料ガス供給配管31内を水素が流れる方向において、上流側からこの順で配置される。したがって、下流側ブロック弁52は、上流側ブロック弁51と燃料電池モジュール2との間に位置する。ブリード弁53は、上記のベント系統44を開閉する弁である。
【0027】
燃料電池モジュール2を作動させる場合、上流側ブロック弁51および下流側ブロック弁52を開き、ブリード弁53を閉じることにより、燃料ガス系統3を流れる水素が、燃料電池モジュール2に供給される。また、上流側ブロック弁51および下流側ブロック弁52を閉じることにより、燃料電池モジュール2への水素の供給が停止される。このとき、ブリード弁53を開くことにより、燃料ガス系統3(特に燃料ガス供給配管31)において、上流側ブロック弁51と下流側ブロック弁52との間の空間に滞留する水素を、ベント系統44を介して筐体1の外部に放出することができる。
【0028】
このように、本実施形態の燃料電池システム100は、上流側ブロック弁51および下流側ブロック弁52と、ベント系統44と、ブリード弁53と、を備える。
【0029】
第1区画11には、各種のセンサ6がさらに配置される。センサ6には、水素濃度を検知する水素センサ、配管内の圧力を検知する圧力センサ、所定箇所の温度を検知する温度センサ等が含まれる。これらのセンサ6は、第1区画11内の適切な位置に配置される。
【0030】
(1-2.第2区画の内部構成)
第2区画12には、燃料電池モジュール2の作動に関わる補機が配置される。上記補機には、配電盤15が含まれる。配電盤15は、筐体1の内部から外部に配線を取り出したり、外部から内部へと配線を入れたりする部分である。配電盤15には、各種の端子およびリレーが含まれる。また、配電盤15は、筐体1の内部の配線と、外部の配線との接続部を含む。
【0031】
ここで、筐体1の内部の配線には、燃料電池モジュール2で発電した電力が流れる電力線、燃料電池モジュール2の制御を行うための制御線、各種のセンサ6と繋がるセンサ線と、が含まれる。上記配線は、仕切壁13に設けられたシール部(図示せず)を介して、第1区画11と第2区画12とに跨って配置される。配電盤15は、筐体1の外部に配置される制御装置500と、通信線CLを介して接続される。通信線CLとしては、例えばケーブルなどの有線を用いることができる。なお、通信線CLは無線ネットワークを含み、筐体1と制御装置500とで相互に無線通信可能であってもよい。
【0032】
制御装置500は、筐体1内の各部の動作を制御する装置である。すなわち、本実施形態の燃料電池システム100は、制御装置500を備える。制御装置500は、例えばPLC(Programable Logic Controller)で構成される。制御装置500から、筐体1の配電盤15に対して、通信線CLを介して制御信号を送ることにより、筐体1内の各部を制御することができる。なお、制御装置500は、筐体1内(例えば配電盤15)に配置されて、外部からリモートで制御されることにより、筐体1の各部が制御される構成であってもよい。
【0033】
このほか、第2区画12には、空気取込部、熱交換器等も配置される。空気取込部は、燃料電池スタック2aが有する空気極に供給する空気を取り込む。熱交換器は、冷媒を用いて燃料電池モジュール2を冷却するために設けられる。空気取込部および熱交換器は、それぞれの燃料電池モジュール2に対応して設けられる。空気取込部から燃料電池モジュール2に向かって流れる空気の流路、および熱交換器と燃料電池モジュールとの間で循環する冷媒の流路は、仕切壁13に設けられたシール部(図示せず)を介して、第1区画11と第2区画12とに跨って配置される。
【0034】
<2.減圧制御について>
本実施形態では、センサ6で検知した値が異常を示す値であった場合など、燃料電池スタック2aの作動停止を実行するときに、バルブ装置5の各バルブ(上流側ブロック弁51、下流側ブロック弁52、ブリード弁53)の開閉のタイミングを以下のように制御することにより、燃料ガス系統3内の圧力を減圧するようにしている。このような減圧制御の主体は、制御装置500である。すなわち、制御装置500から送られる制御信号に基づいて、バルブ装置5の各バルブの開閉が制御される。以下、本実施形態の減圧制御について説明する。なお、燃料電池スタック2aの作動停止は、燃料電池モジュール2の作動停止、つまり、燃料電池モジュール2による発電停止と考えることもできる。
【0035】
図2は、本実施形態の減圧制御による動作の流れを示すフローチャートである。図3は、上記減圧制御の有無における、燃料ガス系統3内(ここでは下流側ブロック弁52よりも下流側の配管内とする)の圧力の変化を模式的に示すグラフである。なお、図3において、太線のグラフは、本実施形態の減圧制御を行った場合の圧力変化を示し、細線のグラフは、上記減圧制御を行わなかった場合の圧力変化を示す。
【0036】
燃料電池モジュール2(燃料電池スタック2a)の作動中、各種のセンサ6は、第1区画11内の水素濃度等を常時または定期的に検知している。センサ6での検知信号は、配電盤15を介して制御装置500に出力される(S1)。燃料電池スタック2aが作動している間、燃料電池スタック2aに水素を供給するため、バルブ装置5の上流側ブロック弁51および下流側ブロック弁52は開放されており、ブリード弁53は閉じられている。
【0037】
制御装置500は、燃料電池システム100の停止要求があった場合(S2にてYes)、筐体1に制御信号を送信し、バルブ装置5の上流側ブロック弁51を閉じる(S3)。ここでは、上流側ブロック弁51を閉じた時刻をt1とする。なお、燃料電池システム100の停止要求があった場合とは、制御装置500側で、燃料電池システム100での発電を停止させる通常の停止操作があった場合のほか、センサ6で検知した値が異常を示す値であり、燃料電池システム100を停止させる必要があると制御装置500側で判断した場合を指す。
【0038】
次に、制御装置500は、筐体1に制御信号を送信し、バルブ装置5のブリード弁53を開く(S4)。ここでは、ブリード弁53を開いた時刻をt2とする。ブリード弁53を開くことにより、燃料ガス系統3において、上流側ブロック弁51よりも下流側の配管内に残存する水素が、ベント系統44を通り、大気開放口43を介して筐体1の外部に放出される。したがって、図3に示すように、燃料ガス系統3の配管内の圧力(特に上流側ブロック弁51よりも下流側の圧力)は、時刻t2を過ぎると時間経過に伴って減少する。
【0039】
制御装置500は、時刻t2から所定時間Tpが経過するまで待機し(S5にてNo)、時刻t2から所定時間Tpが経過すると(S5にてYes)、筐体1に制御信号を送信して、バルブ装置5の下流側ブロック弁52を閉じる(S6)。ここでは、下流側ブロック弁52を閉じた時刻をt3とする。その後、制御装置500は、筐体1に制御信号を送信して、ブリード弁53を閉じる(S7)。ブリード弁53を閉じた時刻をt4とする。これにより、一連の減圧制御が終了する。
【0040】
以上のように、本実施形態では、燃料電池スタック2aの作動停止を実行するときに、制御装置500により、以下の減圧制御が実施される。すなわち、上流側ブロック弁51を閉じた後にブリード弁53を開き(S3、S4)、ブリード弁53を開いてから所定時間Tpの経過後に、下流側ブロック弁52を閉じる(S5、S6)。
【0041】
S3にて上流側ブロック弁51を閉じた後、S6にて下流側ブロック弁52を閉じる前に、S4にてブリード弁53を開くことにより、上流側ブロック弁51よりも下流側の燃料ガス系統3の配管に残存する燃料ガス(水素)を先にブリード弁53から大気に放出させることができる。これにより、その後、S6にて下流側ブロック弁52を閉じても、下流側ブロック弁52と燃料電池スタック2aとの間の燃料ガス系統3の配管内の圧力を、燃料ガス系統3の設計圧力Prよりも十分に小さくすることができる。したがって、燃料電池スタック2aの作動停止状態(=燃料電池モジュール2の作動停止状態)で、周囲温度が上昇することにより、燃料ガス系統3内に残存する燃料ガスが膨張し、これによって燃料ガス系統3内の圧力が上昇しても、燃料ガス系統3内の圧力が、設計圧力Prを超えるおそれを小さくすることができる。その結果、安全性を向上させることができる。
【0042】
例えば、燃料ガス系統3の配管の設計圧力Prが、0.99MPaGであり、燃料ガスが供給圧力のままで配管内に残存していると仮定したときの上記供給圧力が、0.90MPaG(10℃)であるとする。なお、上記の「G」は、大気圧(絶対圧力で0.101325MPa)を基準としたゲージ圧であることを示す(以下でも同様とする)。この状態では、燃料電池スタック2aの作動停止状態で、燃料ガス(例えば水素)の温度が40℃に上昇すると、上記配管内の圧力は、1.006MPaGとなり、上記の設計圧力Prを超えることになる(図3の細線のグラフ参照)。これに対して、本実施形態の減圧制御では、下流側ブロック弁52と燃料電池スタック2aとの間の燃料ガス系統3の配管内の圧力を、燃料ガス系統3の設計圧力Prよりも十分に小さくしてから、下流側ブロック弁52を閉じる。このため、その後、燃料電池スタック2aの作動停止状態で、周囲温度が上昇しても、燃料ガス系統3内の圧力が、設計圧力Prを超えるおそれが低減される(図3の太線のグラフ参照)。
【0043】
図4は、本実施形態の他の減圧制御による動作の流れを示すフローチャートである。図4では、S5の後、S5-1にて先にブリード弁53を閉じてから、S6にて下流側ブロック弁52を閉じるようにした以外は、図2の減圧制御と同じである。
【0044】
S4以降で、ブリード弁53を開いたままにすると、筐体1の外部の空気(燃料ガス以外の気体)が、大気開放口43およびベント系統44を介して、下流側ブロック弁52よりも下流側の燃料ガス系統3に入り込む。S4において、ブリード弁53を開くのは、下流側ブロック弁52よりも下流側の燃料ガス系統3の配管内の圧力を抜くためである。ブリード弁53を開いてから所定時間Tpが経過することにより、この目的は達成されるため、S5の後は早期にブリード弁53を閉じて、燃料ガス系統3に入り込む空気の量を減らすことが望ましい。この観点では、図4に示すように、上記減圧制御において、下流側ブロック弁52を閉じる前に、ブリード弁53を閉じてもよい(S5-1、S6参照)。
【0045】
図5は、本実施形態のさらに他の減圧制御による動作の流れを示すフローチャートである。図5では、S5の後、S6-1にて、ブリード弁53を閉じると同時に、下流側ブロック弁52を閉じるようにした以外は、図2の減圧制御と同じである。
【0046】
上記と同様の観点、つまり、燃料ガス系統3に入り込む空気の量を減らす観点では、図5に示すように、上記減圧制御において、下流側ブロック弁52を閉じると同時に、ブリード弁53を閉じてもよい(S6-1参照)。
【0047】
図6は、本実施形態の燃料電池システム100の他の構成を模式的に示すブロック図である。図6に示すように、燃料電池システム100は、センサ6として、第1圧力センサ61を備えていてもよい。第1圧力センサ61は、上流側ブロック弁51と燃料電池スタック2aとの間の燃料ガス系統3に配置される。
【0048】
このように第1圧力センサ61が配置される場合、図2のS5の所定時間Tpは、第1圧力センサ61の測定値が、予め設定された設定値Pth以下となるまでの時間であってもよい。
【0049】
図7は、図6の構成を備えた燃料電池システム100の減圧制御による動作の流れを示すフローチャートである。図7では、S5をS5-2に置き換えた以外は、図2の減圧制御と同じである。S5-2では、第1圧力センサ61の測定値が設定値Pth以下となった場合には、制御装置500は、筐体1に制御信号を送信し、下流側ブロック弁52を閉じる(S6)。
【0050】
所定時間Tpを上記のように設定すると、S4の後、第1圧力センサ61の測定値が設定値Pth以下となった場合には、S4でブリード弁53を開いてから所定時間Tpが経過したことになる。したがって、S5-2の後はS6に移行して下流側ブロック弁52を閉じることにより、図2の減圧制御と同様に、周囲温度の上昇によって、燃料ガス系統3内の圧力が、燃料ガス系統3の設計圧力Prを超えるおそれを低減することができる。
【0051】
ここで、下流側ブロック弁52と燃料電池スタック2aとの間の燃料ガス系統3内の圧力を直接測定することができれば、上記圧力を直接監視することができる点で望ましい。この点では、図6に示したように、第1圧力センサ61は、燃料ガス系統3において、下流側ブロック弁52と燃料電池スタック2aとの間に配置されることが望ましい。
【0052】
図8は、本実施形態の燃料電池システム100のさらに他の構成を模式的に示すブロック図である。図8に示すように、上記した第1圧力センサ61は、燃料ガス系統3において、上流側ブロック弁51よりも下流側で、かつ、下流側ブロック弁52よりも上流側に配置されてもよい。
【0053】
このように第1圧力センサ61が配置されると、上流側ブロック弁51、下流側ブロック弁52、およびブリード弁53を全て閉じた後に、燃料ガス系統3およびベント系統44において、上流側ブロック弁51、下流側ブロック弁52、およびブリード弁53によって囲まれる遮蔽空間内の圧力を、第1圧力センサ61によって検知することができる。例えば、上記遮蔽空間内の圧力が時間経過とともに減少する場合には、いずれかのバルブ、またはバルブと配管との繋ぎ目において、燃料ガスの漏れが生じている可能性があることがわかる。このように、上記遮蔽空間内の圧力の変化を監視して、燃料ガスの漏れの有無を検出するリークチェックを行うことができる点では、第1圧力センサ61は、燃料ガス系統3において、上流側ブロック弁51と下流側ブロック弁52との間に配置されてもよい。
【0054】
図9は、本実施形態の燃料電池システム100のさらに他の構成を模式的に示すブロック図である。図9に示すように、燃料電池モジュール2は、燃料電池スタック2aに加えて、減圧部21と、リリーフ弁22と、を有する。なお、図9のその他の構成は、図6と同じである。
【0055】
減圧部21は、燃料ガス系統3において、下流側ブロック弁52と燃料電池スタック2aとの間に配置される。減圧部21は、下流側ブロック弁52を通過した水素を減圧して噴射するインジェクタで構成される。例えば、減圧部21は、下流側ブロック弁52を通過した、供給圧力0.9MPaGの水素を、0.2MPaGに減圧して燃料電池スタック2aに供給する。
【0056】
リリーフ弁22は、減圧部21と燃料電池スタック2aとの間の燃料ガス系統3から分岐する排出流路部23に配置される。排出流路部23は、リリーフ弁22とは反対側の下流側において、共用ベント通路41を介してベント系統44に合流する。なお、排出流路部23は、図1で示した個別ベント通路42と同じ配管としてもよい。このように、図9の燃料電池システム100は、減圧部21と、リリーフ弁22と、を備える。
【0057】
例えば、燃料電池スタック2aの耐圧を0.6MPaGとしたとき、減圧部21から燃料電池スタック2aに供給される水素の供給圧力が0.4~0.5MPaGになると、リリーフ弁22が開き、排出流路部23を開放する。この場合、減圧部21を通る水素は、排出流路部23および共用ベント通路41を流れてベント系統44に合流し、大気開放口43から筐体1の外部に排出される。したがって、減圧部21が何らかの原因で故障した場合など、減圧部21での水素の供給圧力の減圧が適切に行わなかった場合には、燃料電池スタック2aを保護するために、リリーフ弁22が開くように構成される。このようなリリーフ弁22は、例えば機械式のバルブで構成される。
【0058】
リリーフ弁22から排出される燃料ガス(水素)の排出経路をコンパクトにするためには、リリーフ弁22が開いたときに流れる燃料ガスを、上述のベント系統44を利用して外部に排出する構成とすることが望ましい。ベント系統44の一部を、リリーフ弁22から排出される燃料ガスの排出経路と共用化し、これによって構成のコンパクト化を図ることができる点では、図8に示すように、リリーフ弁22が配置される排出流路部23は、ベント系統44に合流することが望ましい。
【0059】
図10は、本実施形態の燃料電池システム100のさらに他の構成を模式的に示すブロック図である。図10に示すように、燃料電池モジュール2は、図9の構成に加えて、第2圧力センサ62をさらに有する。すなわち、図10の燃料電池システム100は、第2圧力センサ62を備える。第2圧力センサ62は、燃料ガス系統3において、減圧部21と燃料電池スタック2aとの間に配置される。
【0060】
本実施形態の制御装置500による減圧制御では、第2圧力センサ62の値が所定値(例えば0.3MPaG)以上になった場合、上流側ブロック弁51を閉じるとともに、下流側ブロック弁52およびブリード弁53を開いてもよい。その理由は、以下の通りである。
【0061】
第2圧力センサ62の値が所定値以上になった場合、減圧部21における供給圧力の所定圧(例えば0.2MPaG)までの減圧が行われておらず、この場合、減圧部21に何らかの異常(例えば故障)が生じたと判断することができる。この場合において、上流側ブロック弁51を閉じることにより、燃料電池スタック2aへの燃料ガスの供給を停止させて、燃料電池スタック2aが過昇圧となる事態を回避することができる。また、下流側ブロック弁52およびブリード弁53を開くことにより、燃料ガス系統3内が減圧されるため、リリーフ弁22が作動しないようにする(開かないようにする)ことができる。リリーフ弁22が作動すると、リリーフ弁22の寿命が作動回数に応じて短くなることが懸念される。さらに、機械式のリリーフ弁22が作動すると、次にリリーフ弁22が閉じるまでに時間がかかり、復旧が遅れることも懸念される。つまり、減圧部21に何らかの異常が生じた場合に、リリーフ弁22を作動させないようにすることで、リリーフ弁22の作動寿命が低下することを回避することができるとともに、短時間での復旧も可能となる。このような観点では、上記のように、第2圧力センサ62の値に基づいて、上流側ブロック弁51、下流側ブロック弁52、およびブリード弁53の開閉を制御することが望ましい。
【0062】
図11は、本実施形態の燃料電池システム100のさらに他の構成を模式的に示すブロック図である。図11に示す燃料電池システム100は、ドレイン部45をさらに備える。ドレイン部45は、ブリード弁53と大気開放口43との間で、ベント系統44と連通する。このようなドレイン部45は、ベント系統44と接続されるドレイン配管451と、ドレイン配管451を開閉するドレイン弁452と、を有して構成される。ドレイン弁452の開閉制御は、制御装置500からの制御信号に基づいて行われる。
【0063】
ドレイン部45を設けることにより、例えば周囲の温度低下によって、ベント系統44内で水分が凝縮し、結露した場合でも、凝縮水(結露水)をドレイン部45から排出することができる。例えば、ドレイン弁452を開いておけば、ドレイン配管451を介して凝縮水を所定の場所に排出することができる。したがって、凝縮水がブリード弁53側に流れ込むことが防止される。このような凝縮水のベント系統44への逆流を防止する観点では、ベント系統44と連通するドレイン部45を設けることが望ましい。
【0064】
図12は、本実施形態の燃料電池システム100のさらに他の構成を模式的に示すブロック図である。図12に示すように、ベント系統44は、凝縮水逆流防止部46を有する。凝縮水逆流防止部46は、ベント系統44の一部が下方に凹む形状に折り曲げられて構成される。
【0065】
また、燃料電池システム100は、不活性ガス供給通路71をさらに備える。不活性ガス供給通路71は、上流側ブロック弁51よりも上流側で、燃料ガス系統3と接続される。不活性ガス供給通路71には、不活性ガスとしての窒素が供給される。なお、不活性ガスは、上記の窒素には限定されず、アルゴン等であってもよい。不活性ガス供給通路71と燃料ガス系統3との接続部である合流部72には、切替バルブ(図示せず)が配置される。制御装置500(図1参照)からの制御信号に基づいて、切替バルブの開閉を適切に制御することにより、不活性ガス供給通路71から燃料ガス系統3への不活性ガスの導入およびその停止を切り替えることができる。不活性ガス供給通路71には、逆止弁(図示せず)も配置される。
【0066】
図12の構成においては、制御装置500からの制御信号に基づき、燃料電池スタック2aの作動停止状態において、上述した減圧制御の後、乾燥制御が実施されてもよい。上記乾燥制御では、不活性ガス供給通路71から供給される不活性ガスを、凝縮水逆流防止部46に導く。
【0067】
ベント系統44内で水分が凝縮し、結露した場合でも、不活性ガスを凝縮水逆流防止部46に導くことにより、凝縮水を凝縮水逆流防止部46に留まらせて、ブリード弁53側に流れ込むことを防止することができる。さらに、凝縮水逆流防止部46に滞留する凝縮水に不活性ガスを当てて乾燥、蒸発させ、大気開放口43から放出させることもできる。したがって、図11のように、ドレイン部45および凝縮水の排出経路を設けることなく、凝縮水を気化させて容易に排出することができる点では、制御装置500は上記の乾燥制御を実施することが望ましい。
【0068】
特に、上記の乾燥制御では、減圧制御の後(例えば図2のS7でブリード弁53を閉じた後)、以下のようにバルブ装置5を制御することにより、不活性ガス供給通路71から供給される不活性ガスを、ベント系統44および凝縮水逆流防止部46に導き、凝縮水に確実に当てることができる。すなわち、上記乾燥制御では、上流側ブロック弁51およびブリード弁53を開き、下流側ブロック弁52を閉じた状態で、不活性ガス供給通路71から不活性ガスを供給する。
【0069】
図13は、本実施形態の燃料電池システム100のさらに他の構成を模式的に示すブロック図である。図13に示す燃料電池システム100は、図12の構成に加えて、パージ系統47をさらに備える。パージ系統47は、燃料ガス系統3と不活性ガス供給通路71との合流部72よりも下流側、かつ、上流側ブロック弁51よりも上流側で、燃料ガス系統3から分岐してベント系統44に合流する。このようなパージ系統47は、パージ通路471およびパージ弁472を含む。パージ通路471は、燃料ガス系統3とベント系統44とを接続する。パージ弁472は、パージ通路471を開閉する。パージ弁472の開閉制御は、制御装置500からの制御信号に基づいて行われる。
【0070】
例えば、上流側ブロック弁51を閉じた状態で、パージ弁472を開くことにより、不活性ガス供給通路71から供給される不活性ガスを、パージ通路471を介してベント系統44に導くことができる。これにより、上流側ブロック弁51を閉じた状態でも、凝縮水逆流防止部46に滞留する凝縮水に不活性ガスを当てて乾燥、蒸発させ、大気開放口43から放出させることができる。
【0071】
このとき、上流側ブロック弁51は閉じているため、燃料ガス系統3における上流側ブロック弁51よりも下流側には、不活性ガスが侵入しない。上流側ブロック弁51よりも下流側に不活性ガスが侵入すると、その後(例えば燃料電池スタック2aでの発電再開時に)燃料ガスでパージを行う際に、上記不活性ガスを押し出す必要があり、その分、パージに使用する燃料ガスの量が増える。上記構成では、上流側ブロック弁51よりも下流側の燃料ガス系統3の配管内に不活性ガスが入らないため、パージに使用する燃料ガスの量を減らすことができ、究極的には、上記配管内への燃料ガスのパージを不要とすることができる。
【0072】
このように、燃料ガスのパージの量を減らすことができる点では、不活性ガスを流す上記のパージ系統47を設ける構成が望ましい。
【0073】
特に、上記の乾燥制御では、減圧制御の後(例えば図2のS7でブリード弁53を閉じた後)、以下のようにバルブ装置5およびパージ弁472を制御することにより、上流側ブロック弁51よりも下流側への不活性ガスの侵入を確実に低減することができる。すなわち、上記の乾燥制御では、上流側ブロック弁51、下流側ブロック弁52、およびブリード弁53を全て閉じた状態で、パージ弁472を開いた後、不活性ガス供給通路71から不活性ガスを供給する。
【0074】
<3.その他>
各図面で示した構成および制御は、適宜組み合わせることが可能である。例えば図4および図5で示した、ブリード弁53および下流側ブロック弁52を閉じるタイミングについては、全ての減圧制御に適用可能である。また、図11図13で示した構成は、図6図8図10のいずれにも適用可能である。
【0075】
<4.付記>
本実施形態で説明した燃料電池システムは、以下の付記に示す燃料電池システムと表現することもできる。
【0076】
付記(1)の燃料電池システムは、
燃料電池スタックを有する燃料電池モジュールと、
前記燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス系統と、
前記燃料ガス系統を開閉する上流側ブロック弁および下流側ブロック弁と、
前記上流側ブロック弁と前記下流側ブロック弁との間で前記燃料ガス系統から分岐して設けられるベント系統と、
前記ベント系統を開閉するブリード弁と、を備え、
前記燃料電池スタックの作動停止を実行するときに、前記上流側ブロック弁を閉じた後に前記ブリード弁を開き、さらに所定時間経過後に、前記下流側ブロック弁を閉じる減圧制御が実施される。
【0077】
付記(2)の燃料電池システムは、付記(1)の燃料電池システムにおいて、
前記減圧制御では、前記下流側ブロック弁を閉じる前に、前記ブリード弁を閉じる。
【0078】
付記(3)の燃料電池システムは、付記(1)の燃料電池システムにおいて、
前記減圧制御では、前記下流側ブロック弁を閉じると同時に、前記ブリード弁を閉じる。
【0079】
付記(4)の燃料電池システムは、付記(1)から(3)のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記上流側ブロック弁と前記燃料電池スタックとの間の前記燃料ガス系統に配置される第1圧力センサをさらに備え、
前記所定時間は、前記第1圧力センサの測定値が、予め設定された設定値以下となるまでの時間である。
【0080】
付記(5)の燃料電池システムは、付記(4)に記載の燃料電池システムにおいて、
前記第1圧力センサは、前記燃料ガス系統において、前記下流側ブロック弁と前記燃料電池スタックとの間に配置される。
【0081】
付記(6)の燃料電池システムは、付記(4)に記載の燃料電池システムにおいて、
前記第1圧力センサは、前記燃料ガス系統において、前記上流側ブロック弁と前記下流側ブロック弁との間に配置される。
【0082】
付記(7)の燃料電池システムは、付記(1)から(6)のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料ガス系統において、前記下流側ブロック弁と前記燃料電池スタックとの間に配置される減圧部と、
前記減圧部と前記燃料電池スタックとの間の前記燃料ガス系統から分岐する排出流路部に配置されるリリーフ弁と、をさらに備え、
前記排出流路部は、前記リリーフ弁とは反対側の下流側において、前記ベント系統に合流する。
【0083】
付記(8)の燃料電池システムは、付記(7)に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料ガス系統において、前記減圧部と前記燃料電池スタックとの間に配置される第2圧力センサをさらに備え、
前記減圧制御では、前記第2圧力センサの値が所定値以上になった場合、前記上流側ブロック弁を閉じるとともに、前記下流側ブロック弁および前記ブリード弁を開く。
【0084】
付記(9)の燃料電池システムは、付記(1)から(8)のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記ブリード弁と前記大気開放口との間で、前記ベント系統と連通するドレイン部をさらに備える。
【0085】
付記(10)の燃料電池システムは、付記(1)から(9)のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料ガス系統と接続される不活性ガス供給通路をさらに備え、
前記ベント系統は、凝縮水逆流防止部を有し、
前記燃料電池スタックの作動停止状態において、前記不活性ガス供給通路から供給される不活性ガスを凝縮水逆流防止部に導く乾燥制御が実施される。
【0086】
付記(11)の燃料電池システムは、付記(10)に記載の燃料電池システムにおいて、
前記乾燥制御では、前記上流側ブロック弁および前記ブリード弁を開き、前記下流側ブロック弁を閉じた状態で、前記不活性ガス供給通路から前記不活性ガスを供給する。
【0087】
付記(12)の燃料電池システムは、付記(10)に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料ガス系統と前記不活性ガス供給通路との合流部よりも下流側、かつ、前記上流側ブロック弁よりも上流側で、前記燃料ガス系統から分岐して前記ベント系統に合流するパージ系統をさらに備え、
前記パージ系統は、パージ通路およびパージ弁を含む。
【0088】
付記(13)の燃料電池システムは、付記(12)に記載の燃料電池システムにおいて、
前記乾燥制御では、前記上流側ブロック弁、前記下流側ブロック弁、および前記ブリード弁を全て閉じた状態で、前記パージ弁を開いた後、前記不活性ガス供給通路から前記不活性ガスを供給する。
【0089】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明の燃料電池システムは、例えば船舶または陸上での電力の生成に利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
2 燃料電池モジュール
2a 燃料電池スタック
3 燃料ガス系統
21 減圧部
22 リリーフ弁
23 排出流路部
43 大気開放口
44 ベント系統
45 ドレイン部
46 凝縮水逆流防止部
47 パージ系統
51 上流側ブロック弁
52 下流側ブロック弁
53 ブリード弁
61 第1圧力センサ
62 第2圧力センサ
71 不活性ガス供給通路
72 合流部
100 燃料電池システム
471 パージ通路
472 パージ弁
500 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13