(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128191
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20240913BHJP
H01M 8/0444 20160101ALI20240913BHJP
【FI】
H01M8/04 N
H01M8/04 H
H01M8/0444
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037049
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 剛広
(72)【発明者】
【氏名】松井 晋一郎
(72)【発明者】
【氏名】平岩 琢也
(72)【発明者】
【氏名】品川 学
(72)【発明者】
【氏名】行實 文明
(72)【発明者】
【氏名】寺口 直希
(72)【発明者】
【氏名】久保 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】丸谷 祐介
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB21
5H127AC02
5H127BA02
5H127BA05
5H127DB04
5H127DB14
5H127DC91
5H127EE25
5H127EE27
5H127EE29
(57)【要約】
【課題】燃料電池モジュールが設置される区画内で、燃料ガス濃度の高いエリアが局所的に生成されにくくする。
【解決手段】燃料電池システムは、燃料電池スタックを有する燃料電池モジュールと、燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス系統と、換気流生成部と、を備える。燃料ガス系統は、燃料ガス漏洩リスク部を有する。換気流生成部は、燃料ガス漏洩リスク部に指向した換気流を生成する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックを有する燃料電池モジュールと、
前記燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス系統と、
換気流生成部と、を備え、
前記燃料ガス系統は、燃料ガス漏洩リスク部を有し、
前記換気流生成部は、前記燃料ガス漏洩リスク部に指向した換気流を生成する、燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料ガス漏洩リスク部は、燃料ガス配管継手、配管フランジ、バルブ、燃料ポンプの少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記燃料ガスに対して非防爆型の電気機器をさらに備え、
前記換気流生成部は、前記非防爆型の電気機器とは異なる方向に前記換気流を指向させる、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記燃料ガスは水素ガスであり、
前記非防爆型の電気機器は、少なくとも1つの前記燃料ガス漏洩リスク部よりも下方に配置される、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記燃料電池モジュールと、前記燃料ガス系統と、前記換気流生成部と、を格納した第1区画と、
前記燃料電池モジュールと繋がるカソード空気系統の空気取込部を格納した第2区画と、
前記カソード空気系統を除いて、前記第1区画と前記第2区画との間での空気の流通を遮蔽する隔壁と、を備える、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記第1区画に設けられる吸気口および換気口と、
前記第1区画を換気する換気装置と、
前記第1区画内の燃料ガス濃度を検知するガス検知器と、をさらに備え、
前記ガス検知器が所定値以上の前記燃料ガス濃度を検知した場合に、前記非防爆型の電気機器の作動を停止する、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記換気流生成部は、送風ファンである、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記換気流生成部は、吸込ファンである、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記燃料電池モジュールおよび前記燃料ガス系統は、共通の筐体に収容されており、
前記筐体は、前記筐体の外部に配置される外部燃料ガス配管と接続されており、
前記外部燃料ガス配管は、内管と、外管と、を有し、
前記内管は、前記筐体内の前記燃料ガス系統と接続されており、
前記外管は、前記内管の外周面に対して所定の隙間を隔てて配置され、
前記内管と前記外管との間の前記隙間は、前記筐体内に開口し、
前記換気流生成部は、前記外部ガス配管の前記隙間に換気用流体を導入する流体導入部を有し、
前記燃料ガス漏洩リスク部は、前記筐体に対する前記外部ガス配管の接続側から見て、前記内管と前記外管との間の前記隙間と重なって位置する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記筐体内において、前記燃料電池モジュールは、前記燃料ガス漏洩リスク部に対して、前記筐体と前記外部燃料ガス配管との接続側とは反対側に位置しており、
前記燃料電池モジュールと前記燃料ガス漏洩リスク部との間には、遮蔽板が配置されている、請求項9に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の燃料電池モジュールを用いた燃料電池システムが開示されている。例えば特許文献1には、複数の燃料電池モジュールを複数台ずつ別々の区画に設置し、各区画を1台の換気装置によって換気する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、燃料電池システムを例えば船舶に搭載するにあたっては、様々なルールに従う必要がある。例えば、あるルールによれば、燃料電池を設置する区画は、特定の危険度区域(第1種危険度区域)と定められている。なお、上記ルールの一例としては、Interim guidelines for the safety of ships using fuel cell power installations (IMO:国際海事機関)が挙げられる。さらに、上記ルールでは、所轄官庁が認めることを条件として、所定の分類方法に基づいて危険度区域を定めてもよいことが例外的に規定されている。上記分類方法では、燃料ガスの漏洩リスクがある部分における漏洩頻度、換気流の流速などの条件に基づき、設置区画の危険度区域を、予め設定された分類フローに従って求める。
【0005】
設置区画の危険度区域の中で、最も安全な区域(通常運転状態では無視できる範囲の危険度である区域)には、燃料ガスに対して非防爆型の電気機器を設置することができる。したがって、異常時には上記電気機器への電力供給を停止する設計とすることで各国のルールをクリアすることができた場合には、上記の安全区域に、上記電気機器として非防爆型の燃料電池モジュールを設置することができる。
【0006】
ところが、上記の安全区域には、分類上、高い換気度が要求される。このため、燃料電池モジュールが設置される区画内で、燃料ガス濃度の高いエリアが局所的に生成されることを低減することが必要となる。この点、特許文献1のように、複数の区画を1台の換気装置によって換気する構成では、区画ごとの換気が不十分となりやすく、各区画内で燃料ガス濃度の高いエリアが局所的に生成されるおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、燃料電池モジュールが設置される区画内で、燃料ガス濃度の高いエリアが局所的に生成されにくい燃料電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面に係る燃料電池システムは、燃料電池スタックを有する燃料電池モジュールと、前記燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス系統と、換気流生成部と、を備え、前記燃料ガス系統は、燃料ガス漏洩リスク部を有し、前記換気流生成部は、前記燃料ガス漏洩リスク部に指向した換気流を生成する。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成によれば、燃料電池モジュールが設置される区画内で、燃料ガス濃度の高いエリアが局所的に生成されにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る燃料電池システムの外観を示す概略斜視図である。
【
図2】上記燃料電池システムの内部の構成を示す概略図である。
【
図3】上記燃料電池システムが備える燃料モジュールを拡大して示す説明図である。
【
図4】上記燃料電池システムの筐体の内部に設けられる仕切壁の断面図である。
【
図5】上記燃料電池システムが備えるバルブ装置の詳細を示すブロック図である。
【
図6】上記燃料電池システムの水素供給用接続部の周辺の構成を、筐体前方から見たときの説明図である。
【
図7】上記水素供給用接続部の周辺の構成を、筐体右側から見たときの説明図である。
【
図8】上記燃料電池システムの主要部の構成を模式的に示す説明図である。
【
図9】上記燃料電池システムの主要部の他の構成を模式的に示す説明図である。
【
図10】上記燃料電池システムにおいて、異常時の制御に関わる構成を示すブロック図である。
【
図11】異常時の制御による動作の流れを示すフローチャートである。
【
図12】高換気度を実現し得る換気流速の算出の流れを示すフローチャートである。
【
図13】換気流量を算出するにあたって用いる各パラメータと、各実施例での各パラメータの値とを示す説明図である。
【
図14】上記各パラメータと、各実施例での各パラメータの値とを示す説明図である。
【
図15】実施例1での換気流量と換気流速との関係を示す説明図である。
【
図16】実施例2での換気流量と換気流速との関係を示す説明図である。
【
図17】実施例3での換気流量と換気流速との関係を示す説明図である。
【
図18】実施例4での換気流量と換気流速との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は同一相当部分については同一の参照符号を付し、特に必要がない場合には説明を繰り返さない。
【0012】
<1.燃料電池システムの概要>
図1は、本発明の実施形態に係る燃料電池システム100の外観を示す概略斜視図である。
図2は、本発明の実施形態に係る燃料電池システム100の内部の構成を示す概略図である。なお、
図2において、実線、一点鎖線、および、二点鎖線の矢印は、流体通路(詳細例は配管)、および、流体通路を流体が流れる向きを示す。また、
図2において、破線は、配線を示す。まず、
図1および
図2を参照して、燃料電池システム100の概要について説明する。
【0013】
なお、本実施形態では、燃料電池システム100で用いる燃料ガスとして、水素を用いる例について説明するが、水素以外の燃料ガス(例えばメタンを主成分とするガス)を用いて発電するシステムについても、本実施形態の構成および制御を適用することが可能である。また、燃料電池システム100は、特に限定される趣旨ではないが、例えば船舶での利用に好適である。
【0014】
図1に示すように、燃料電池システム100は筐体1を備える。
図2に示すように、筐体1は燃料電池モジュール2を収容する。換言すると、燃料電池システム100は燃料電池モジュール2を備える。詳細には、筐体1に収容される燃料電池モジュール2の数は4つである。ただし、筐体1に収容される燃料電池モジュール2の数は、単数でも4つ以外の複数でもよい。本実施形態では、燃料電池モジュール2は、燃料ガス(水素)に対して非防爆型の電気機器である。
【0015】
燃料電池モジュール2は、燃料電池スタック2aを有する。また、燃料電池モジュール2は、昇圧コンバータ、空気送風用のコンプレッサ、および、燃料電池スタック2aを冷却するための冷却液循環用のポンプを含んで構成される。
【0016】
燃料電池スタック2aは、積層された複数のセルによって構成される。各セルは、固体高分子電解質膜と、アノード極と、カソード極と、一対のセパレータとを有する。アノード極とカソード極とは、固体高分子電解質膜を挟む。アノード極は、負極(燃料極)である。アノード極は、アノード触媒層およびガス拡散層を含む。カソード極は、正極(空気極)である。カソード極は、カソード触媒層およびガス拡散層を含む。アノード極と固体高分子電解質膜とカソード極とは、膜-電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を構成する。一対のセパレータは、膜-電極接合体を挟む。各セパレータは複数の溝を有する。一方のセパレータの各溝は、水素ガスの流路を形成する。他方のセパレータの各溝は、酸化剤ガス(例えば空気)の流路を形成する。
【0017】
アノード極側では、水素が触媒によって水素イオンと電子とに分解される。水素イオンは固体高分子電解質膜を透過してカソード極側に移動する。一方、電子は外部回路を通ってカソード極側に移動する。これにより、電流が発生する(発電する)。カソード極側では、酸化剤ガスに含まれる酸素が、外部回路を流れてきた電子と、固体高分子電解質膜を透過した水素イオンと結合して水を生成する。生成された水は、排気に含まれて燃料電池システム100の外部に放出される。燃料電池スタック2aにより発電された電力は、昇圧コンバータにより昇圧されて、燃料電池システム100の外部に取り出される。
【0018】
図3は、燃料電池モジュール2を拡大して示す説明図である。燃料電池モジュール2の燃料電池スタック2aには、水素供給配管締込み継手2bを介して、後述する水素流通路5の水素供給通路51が接続される。したがって、水素供給通路51から供給される水素は、水素供給配管締込み継手2bを介して燃料電池スタック2aに供給される。水素供給配管締込み継手2bは、燃料電池スタック2aと水素供給通路51との繋ぎ目に位置することから、水素が漏洩するリスクのある部分であり、燃料ガス漏洩リスク部400を構成する。燃料電池モジュール2から排出される水素は、後述するベント通路52の共用ベント通路521に送られる。
【0019】
また、燃料電池モジュール2は、水素循環ポンプ2cを有する。水素循環ポンプ2cは、燃料電池スタック2aでの発電に利用されなかった余剰の水素を、燃料電池スタック2aに戻すために設けられる。これにより、余剰の水素の燃料電池スタック2aでの再利用が図られる。水素循環ポンプ2cも、構造上、水素が漏洩するリスクのある部分であり、燃料ガス漏洩リスク部400を構成する。
【0020】
水素供給配管締込み継手2bおよび水素循環ポンプ2cはどちらも、燃料電池スタック2aに燃料ガスである水素を供給することから、燃料ガス系統5Aの一部を構成する。つまり、燃料ガス系統5Aは、水素供給配管締込み継手2bおよび水素循環ポンプ2cを、燃料ガス漏洩リスク部400として備える。
【0021】
本実施形態のように、筐体1内(特に後述する第1区画11内)に燃料ガス漏洩リスク部400が存在すると、第1区画11内で燃料ガスが漏洩したときに、第1区画11内で燃料ガス濃度の高いエリアが局所的に生成されるおそれがある。このようなエリアが生成されにくくするため、本実施形態では、換気流生成部150(
図8参照)を配置している。なお、換気流生成部150の詳細については後述する。
【0022】
図1に示すように、燃料電池システム100は塩分除去装置3を備える。塩分除去装置3は塩分除去フィルタ3aを有する。塩分除去フィルタ3aは、筐体1の後述する第2区画前壁12aの窓部123に設けられる。塩分除去フィルタ3aにより、塩分が除去された空気が、燃料電池システム100の筐体1内に取り込まれる。これにより、筐体1内での塩害が抑制される。筐体1内に取り込まれた空気は、後述する空気取込部9(
図2参照)を介して燃料電池モジュール2に送られ、燃料電池スタック2aでの発電に利用される。
【0023】
燃料電池システム100が備える筐体1は、一例として直方体形状である。以下での説明の便宜上、燃料電池システム100の説明にあたって、方向を次のように定義する。燃料電池システム100が配置される水平な床面に対して直交する方向を上下方向とし、床面に対して燃料電池システム100が配置される側を上として上下を定義する。また、筐体1の塩分除去装置3が配置される側を前側とし、筐体1の前側と反対となる側を後側として前後を定義する。上下方向および前後方向と直交する方向を左右方向とし、前方から後方に向かって左となる側を左側、右となる側を右側として左右を定義する。筐体1を上方から平面視した場合に、筐体1の長手方向は左右方向であり、短手方向は前後方向である。これらの方向は単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定する意図はない。
【0024】
<2.燃料電池システムの詳細構成>
[2-1.区画の概要]
図2に示すように、筐体1は、第1区画11と、第2区画12と、仕切壁13と、を含む。第2区画12は、第1区画11に隣接して位置する。詳細には、第1区画11と第2区画12とは、上下に並ぶ。第1区画11は、第2区画12の上方に配置される。なお、第1区画11と第2区画12とが上下に並ぶ構成は例示であり、他の構成であってもよい。例えば、第1区画と第2区画とは左右に並ぶ構成であってもよい。第1区画11には、燃料電池モジュール2が配置される。第2区画12には、燃料電池モジュール2の作動に関わる補機が配置される。補機については後述する。
【0025】
仕切壁13は、第1区画11と第2区画12とを区画する(仕切る)隔壁である。仕切壁13は、第1区画11の底壁を構成する。また、仕切壁13は、第2区画12の上壁を構成する。
【0026】
なお、第1区画11は、仕切壁13の他、第1区画前壁11a、第1区画後壁11b、第1区画左壁11c、第1区画右壁11d、および、第1区画上壁11eとで構成される。第1区画前壁11aは、筐体1の前面壁1aの上部を構成する。第1区画後壁11bは、筐体1の後面壁1bの上部を構成する。第1区画左壁11cは、筐体1の左面壁1cの上部を構成する。第1区画右壁11dは、筐体1の右面壁1dの上部を構成する。第1区画上壁11eは、筐体1の上面壁1eを構成する。
【0027】
また、第2区画12は、仕切壁13の他、第2区画前壁12a、第2区画後壁12b、第2区画左壁12c、第2区画右壁12d、および、第2区画底壁12eとで構成される。第2区画前壁12aは、筐体1の前面壁1aの下部を構成する。第2区画後壁12bは、筐体1の後面壁1bの下部を構成する。第2区画左壁12cは、筐体1の左面壁1cの下部を構成する。第2区画右壁12dは、筐体1の右面壁1dの下部を構成する。第2区画底壁12eは、筐体1の底面壁1fを構成する。
【0028】
仕切壁13は、第1区画11と第2区画12とを気密に区画する。本実施形態では、詳細は後述するように、第1区画11は、燃料ガス系統5Aが設けられる区画であり、水素が漏洩する可能性がある区画である。しかし、2つの区画(第1区画11、第2区画12)を気密に区画する仕切壁13が設けられるため、第1区画11で水素の漏洩が発生しても、第2区画12に水素が流入することを防止できる。したがって、第2区画12に配置される機器を、水素に対する防爆構造とする必要性をなくすことができる。また、第2区画12に漏洩した水素を換気する機能を設ける必要性をなくすことができる。
【0029】
図4は、筐体1の内部に設けられる仕切壁13の断面図である。
図4に示すように、仕切壁13は、一部に、上下方向に貫通する貫通孔131を有する。貫通孔131は、例えば配線や配管等の部材4を通すために設けられる。部材4には、配線および配管のうち少なくとも一方が含まれてよい。本実施形態では、部材4は、配線および配管を含む。
図4に示す例において、部材4は配線41である。仕切壁13には、複数の配線41のそれぞれに対して貫通孔131が1つずつ設けられている。ただし、これは例示であり、1つの貫通孔131が、複数の配線41を纏めて通す構成であってもよい。なお、配線41には、電力線および信号線が含まれる。信号線には、制御線およびセンサ線が含まれる。
【0030】
図4に示すように、仕切壁13には、貫通孔131を塞ぐシール構造132が設けられる。シール構造132により気密性が確保され、第1区画11で水素の漏洩が発生しても、第2区画12に水素が流入することを防止できる。シール構造132は、例えばシリコーン系コーキング剤などのシーリング材を用いて構成されてよい。
図4は、シーリング材を用いて気密性を確保する構成を示す。他の例として、シール構造132は、ケーブルグランドを用いて構成されてもよい。
【0031】
なお、第1区画11と第2区画12とに跨って配置される部材4が配管である場合にも、配線41の場合と同様のシール構造が適用されてよい。例えば部材4が後述する空気配管421(
図2参照)であっても、空気配管421を除く部分がシール構造132によってシールされる。そして、空気配管421が貫通孔131を通って第1区画11と第2区画12とを跨いて配置される。
【0032】
[2-2.第1区画の詳細]
図2に示すように、第1区画11には、水素流通路5(太い実線)が配置される。別の言い方をすると、燃料電池システム100は、筐体1内に配置される水素流通路5を備える。詳細には、水素流通路5は、燃料電池モジュール2に水素を供給する水素供給通路51を含む。水素供給通路51は、燃料電池スタック2aに燃料ガスとしての水素を供給する燃料ガス系統5Aを構成する。すなわち、燃料電池システム100は、水素供給通路51を、燃料ガス系統5Aとして備える。また、水素流通路5は、燃料電池モジュール2から水素を排出するベント通路52を含む。水素流通路5は、配管により構成することができる。
【0033】
筐体1は、第1区画11を構成する壁11a~11e、13のうち、仕切壁13とは異なる壁に、水素流通路5と当該筐体1の外部に配置される外部水素流通路200とを接続する接続部6(
図1参照)を有する。接続部6は、水素流通路5と外部水素流通路200との接続を行う接続箇所そのものでもよいが、両者の接続を実現するための手段であってもよい。本実施形態では、接続部6は、第1区画11内に配置される水素流通路5の端部を筐体1の外部に露出或いは配置させる開口部である。当該開口部を利用して、水素流通路5と外部水素流通路200との接続を行うことができる。接続は、具体的には、配管同士の接続である。
【0034】
本実施形態では、接続部6は、第1区画右壁11dに設けられる。ただし、接続部6は、第1区画左壁11c等の、仕切壁13以外の第1区画11を構成する壁に設けられてもよい。接続部6が第1区画11を構成する仕切壁13以外の壁に設けられることにより、第2区画12に水素流通路5が配置されない構成とすることができる。すなわち、第2区画12において、水素の漏洩に対する対策を施す必要をなくすことができる。これにより、燃料電池システム100における水素の漏洩に対する対策を容易とすることができる。
【0035】
外部水素流通路200も、筐体1の内部に配置される水素流通路5と同様に、水素供給用の通路である外部水素供給通路201と、水素排気用の通路である外部ベント通路202とを含む。これに対応して、接続部6も、水素供給通路51と外部水素供給通路201とを接続するための水素供給用接続部61と、ベント通路52と外部ベント通路202とを接続するためのベント用接続部62とを有する(
図1参照)。本実施形態では、水素供給用接続部61およびベント用接続部62は、第1区画11を構成する同一の壁(第1区画右壁11d)に設けられている。ただし、これは例示であり、水素供給用接続部61とベント用接続部62とは、第1区画11を構成する互いに異なる壁に設けられてもよい。
【0036】
本実施形態では、第1区画11には、複数(例えば4つ)の燃料電池モジュール2が配置される。複数の燃料電池モジュール2は、左右方向に並んで配置される。外部水素供給通路201から筐体1内の水素供給通路51内に入った水素は、バルブ装置53を介して、水素供給通路51を4つに分岐する分岐部56に至る。なお、バルブ装置53の詳細については後述する。分岐部56において、水素は、各燃料電池モジュール2に対して専用に設けられた4つの水素供給通路51に分配される。そして、分配された水素は、各燃料電池モジュール2へと供給される。
【0037】
ベント通路52は、複数の燃料電池モジュール2の間で共用される共用ベント通路521を含む。各燃料電池モジュール2から排出される水素は、共用ベント通路521に送られ、外部ベント通路202から排出される。なお、燃料電池モジュール2ごとに別々のベント通路を設けて、別々に筐体1の外部に上記水素を排出する構成としてもよい。
【0038】
図5は、バルブ装置53の詳細を示すブロック図である。バルブ装置53は、DBB(ダブルブロックアンドブリード)と呼ばれる弁構造を有する。詳細には、バルブ装置53は、上流側ブロック弁531と、下流側ブロック弁532と、ブリード弁533と、を含む。上流側ブロック弁531および下流側ブロック弁532は、燃料ガス系統5A(特に水素供給通路51)に設けられて、燃料ガス系統5Aを開閉(開通または遮断)する。上流側ブロック弁531および下流側ブロック弁532は、水素供給通路51内を水素が流れる方向において、上流側からこの順で配置される。したがって、下流側ブロック弁532は、上流側ブロック弁531と燃料電池モジュール2との間に位置する。
【0039】
ブリード弁533は、ベント系統522を開閉する弁である。ベント系統522は、上流側ブロック弁531と下流側ブロック弁532との間で燃料ガス系統5Aから分岐して設けられて共用ベント通路521に繋がる配管である。
【0040】
燃料電池モジュール2を作動させる場合、上流側ブロック弁531および下流側ブロック弁532を開き、ブリード弁533を閉じることにより、燃料ガス系統5A(水素供給通路51内)を流れる水素が、燃料電池モジュール2に供給される。また、上流側ブロック弁531および下流側ブロック弁532を閉じることにより、燃料電池モジュール2への水素の供給が停止される。このとき、ブリード弁533を開くことにより、燃料ガス系統5Aにおいて、上流側ブロック弁531と下流側ブロック弁532との間の空間に滞留する水素を、ベント系統522および共用ベント通路521を介して筐体1の外部に放出することができる。
【0041】
上記の上流側ブロック弁531、下流側ブロック弁532、およびブリード弁533は、構造上、水素が漏洩するリスクのある部分であり、水素循環ポンプ2c(
図3参照)等と同様に、燃料ガス漏洩リスク部400を構成する。すなわち、バルブ装置53が配置される燃料ガス系統5Aは、上流側ブロック弁531、下流側ブロック弁532、およびブリード弁533を、燃料ガス漏洩リスク部400として有する。このとき、上流側ブロック弁531、下流側ブロック弁532、およびブリード弁533をいずれもバルブと呼ぶと、燃料ガス系統5Aは、燃料ガス漏洩リスク部400としてのバルブを有するとも言える。
【0042】
図6および
図7は、上記した水素供給用接続部61の周辺の概略の構成を示す説明図である。なお、
図6は、筐体1を前方から見たときの状態を示す。
図7は、筐体1を右側から、つまり、外部水素供給通路201(外部ガス配管)の接続側から見たときの状態を示す。
【0043】
水素供給用接続部61は開口部APであり、当該開口部APを利用して、燃料ガス系統5Aの水素供給通路51を構成する配管51Pと、外部水素流通路200の外部水素供給通路201を構成する配管201Pとが接続される。2つの配管51P、201Pが接続された状態で、水素供給用接続部61を構成する開口部APは、その全体が塞がれず、当該開口部APを介して第1区画11の内部は、筐体1の外部と連通している。
【0044】
外部水素供給通路201を構成する配管201Pの周囲には、当該配管201Pを囲むように外管203が配置される。換言すると、外部水素供給通路201を構成する配管201Pは、外管203の内側に配置される内管である。以下、
図6および
図7の説明に際して、外部水素供給通路201を構成する配管201Pのことを、内管201Pと呼ぶ。
【0045】
筐体1には、例えば螺子を利用して外管203が取り付けられる。外管203は、水素供給用接続部61を構成する開口部APを囲む。外管203の内径は、開口部APの直径よりも大きい。内管201Pと外管203との間に形成される内部空間204は、開口部APを介して第1区画11の内部と連通する。内部空間204には、流体導入部205から換気用流体(例えば空気)を流すことが可能となっている。すなわち、第1区画11は、内管201Pと外管203との間の内部空間204を介して換気用流体を供給可能に設けられる。
【0046】
このように、本実施形態では、燃料電池モジュール2および燃料ガス系統5Aが共通の筐体1に収容されている。そして、筐体1は、筐体1の外部に配置される外部水素流通路200(外部燃料ガス配管)と接続される。外部水素流通路200は、内管201Pと、外管203と、を有する。内管201Pは、筐体1内の燃料ガス系統5A(例えば配管51P)と接続される。外管203は、内管201Pの外周面に対して所定の隙間(内部空間204)を隔てて配置される。内管201Pと外管203との間の隙間は、筐体1内に開口する。
【0047】
内部空間204を利用して換気用流体を第1区画11内に供給することができるために、後述する吸気口111のサイズを小さくすることができる。また、場合によっては、吸気口111を設けない構成とすることができる。また、内管201Pから水素が漏洩した場合でも、漏洩した水素を換気用流体と共に内部空間204から第1区画11内に送り、安全に水素を外部に排出することができる。なお、第1区画11からの換気用流体の排出については後述する。
【0048】
内管201Pと接続される配管51Pは、第1配管51P1と、第2配管51P2と、を含む。第1配管51P1は、内管201Pと接続される。第1配管51P1は、内管201Pとの接続側(右側)から左側に向かって真っすぐ延びた後、下方に向かって屈曲する形状を有する(
図6参照)。第2配管51P2は、第1配管51P1とバルブ装置53とを連結する。第2配管51P2は、第1配管51P1との接続側から下方に延びた後、筐体1の後方に向かって屈曲し、その後上方に向かって屈曲してバルブ装置53と接続される(
図7参照)。
【0049】
第1配管51P1と第2配管51P2とは。互いのフランジがボルト締結されて連結される。第1配管51P1と第2配管51P2との連結部分を、ここでは、配管フランジ51Fと呼ぶ。配管フランジ51Fは、水素が漏洩するリスクのある部分であり、燃料ガス漏洩リスク部400を構成する。すなわち、燃料ガス系統5Aは、燃料ガス漏洩リスク部400としての配管フランジ51Fを有する。
【0050】
図6に示すように、筐体1内において、燃料電池モジュール2は、燃料ガス漏洩リスク部400としての配管フランジ51Fに対して左側に位置する。つまり、燃料電池モジュール2は、配管フランジ51Fに対して、筐体1と外部水素流通路200との接続側とは反対側に位置する。
【0051】
図1および
図2に示すように、第1区画11には、換気用の吸気口111および換気口112が設けられる。吸気口111は、第1区画11を構成する壁11a~11e、13のうち、仕切壁13を除く少なくとも一つの壁に設けられてよい。本実施形態では、吸気口111は、第1区画右壁11dに設けられる。第1区画右壁11dに設けられる吸気口111は、当該壁を左右方向に貫通する貫通孔である。吸気口111から換気用流体が、第1区画11内に供給される。吸気口111には、換気用流体を供給するための配管が取り付けられる。換気用流体は、例えば空気であるが、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスであってもよい。
【0052】
第1区画11は、当該区画内を換気する換気装置、又は、換気装置と接続される換気装置接続部を有する。本実施形態では、
図1および
図2に示すように、第1区画11は、換気装置300と接続される換気装置接続部113を有する。換気装置接続部113は、換気口112を含んで構成される。換気装置300は、換気口112に対して換気用流体の流れの下流側に配置される。換気装置300は、筐体1側に設けられてもよいし、筐体1が設置される船舶側に設けられてもよい。いずれの場合でも、換気装置300の駆動により、第1区画11内の流体は、換気口112を介して第1区画11の外部へと排出される。したがって、第1区画11内で水素が漏洩した場合であっても、第2区画12に水素が漏れ込まないように、換気用流体と共に水素を筐体1の外部に排出することができる。
【0053】
詳細には、換気口112は、第1区画上壁11e(筐体1の上面壁1e)に設けられる。すなわち、換気装置接続部113は、第1区画11の上壁である第1区画上壁11eに設けられる。水素が漏洩した場合でも、燃料電池モジュール2の上方に水素を誘導すればよいため、水素の排出を行い易くすることができる。
【0054】
なお、換気装置300は、第1区画11の内部に設けられてもよい。この場合、換気装置300は、換気口112に対して換気用流体の流れの上流側に配置される構成とすればよい。この場合も、換気装置300は、第1区画11の上壁である第1区画上壁11eに設けられることが好ましい。
【0055】
その他、第1区画11には、排気路7およびリザーブタンク8が配置される(
図2参照)。なお、
図2において、排気路7は、細い二点鎖線で示される。
【0056】
排気路7は、燃料電池モジュール2に接続される。排気路7は、詳細には排気管である。燃料電池モジュール2の排気は、排気路7の中を流通する。燃料電池モジュール2の排気中には、発電時に生じた水蒸気と、燃料電池モジュール2に供給されたものの発電に使用されなかった酸素および窒素と、燃料電池スタック2aのアノード経路から適時パージ排出される水素と、が含まれる。
【0057】
本実施形態では、第1区画11に配置される4つの燃料電池モジュール2のそれぞれに別々の排気路7が接続される。すなわち、第1区画11には、4つの排気路7が配置される。4つの排気路7は、第1区画11内に配置される排気路集合部71に連結される。排気路集合部71は、第1区画11の右端部に配置される。4つの排気路7における排気は、排気路集合部71で一纏めとされ、1つの末端排気路72(
図1参照)により第1区画11の外部に放出される。
【0058】
なお、
図1に示すように、末端排気路72の先端(右端)は、第1区画右壁11dから外部に突出する。末端排気路72の先端には、外部排気路(不図示)が接続され、燃料電池モジュール2における排気を適所に放出する。
【0059】
リザーブタンク8は、燃料電池モジュール2用に設けられる冷却システムCSに含まれる(
図2参照)。詳細には、燃料電池モジュール2用に設けられる冷却システムCSは、第1冷却システムCS1と第2冷却システムCS2とを含む。このために、詳細には、リザーブタンク8には、第1冷却システムCS1が有する第1リザーブタンク81と、第2冷却システムCS2が有する第2リザーブタンク82とが含まれる。
【0060】
第1冷却システムCS1は、燃料電池モジュール2が有する燃料電池スタック2aを冷却する冷却システムである。すなわち、第1区画11には、燃料電池モジュール2が有する燃料電池スタック2aを冷却する第1冷却システムCS1に含まれるリザーブタンク81が配置される。第1冷却システムCS1は、燃料電池モジュール2に含まれるポンプ(不図示)の駆動により、燃料電池スタック2aを冷却する第1クーラントを循環させる。第1リザーブタンク81は、必要に応じて、第1クーラントを溜めたり、排出したりする。
【0061】
第1リザーブタンク81は、燃料電池スタックよりも上方に配置される。このために、不具合により第1クーラントに水素が含有された場合でも、水素を燃料電池スタック2aよりも高い位置に逃がすことができる。なお、第1冷却システムCS1は、燃料電池モジュール2ごとに設けられる。このために、本実施形態にでは、第1区画11には、4つの第1リザーブタンク81が配置される。
【0062】
図2に示すように、各第1リザーブタンク81は、エア抜き管811(細い実線)と繋がっている。また、
図1に示すように、エア抜き管811の端部は、第1区画右壁11dにおいて開口部(不図示)を介して外部に露出する。不具合によって第1クーラントに水素が含有された場合でも、エア抜き管811を介して第1区画11の外部に水素を排出することができる。
【0063】
第2冷却システムCS2は、燃料電池モジュール2が有する電気機器(特にパワーエレクトロニクス機器)を冷却する冷却システムである。第1区画11には、燃料電池モジュール2が有する上記電気機器を冷却する第2冷却システムCS2に含まれるリザーブタンク82が配置される。第2冷却システムCS2は、燃料電池モジュール2の外部に配置されるクーラントポンプ83(
図8参照)の駆動により、上記電気機器を冷却する第2クーラントを循環させる。第2リザーブタンク82は、必要に応じて、第2クーラントを溜めたり、排出したりする。
【0064】
なお、第2冷却システムCS2は、燃料電池モジュール2ごとに設けられる。このために、本実施形態では、第1区画11には、4つの第2リザーブタンク82が配置される。
【0065】
上記のクーラントポンプ83は、本実施形態では、燃料ガス(水素)に対して非防爆型の電気機器である。すなわち、燃料電池システム100は、非防爆型の電気機器としてのクーラントポンプ83を備える。本実施形態では、非防爆型の電気機器が設置される第1区画11内の換気度を高めるために、換気装置300とは別の換気手段が第1区画11に配置されている。なお。上記の換気手段の詳細については後述する。
【0066】
[2-3.第2区画の詳細]
上述のように、第2区画12には、燃料電池モジュール2の作動に関わる補機が配置される。補機には、
図2で示した空気取込部9、熱交換器10、および、配電盤20が含まれる。
【0067】
空気取込部9は、燃料電池スタック2aが有する空気極に供給される空気を取り込む。本実施形態では、第2区画12に、空気取込部9が配置される。すなわち、空気取込部9は、水素の漏洩が生じない区画に配置される。この配置により、水素を含む空気が空気取込部9から取り込まれるという事態を防止できる。したがって、水素を含んだ空気が燃料電池スタックの空気極に供給されることを防止できる。
【0068】
詳細には、第2区画12には、空気取込部9が、第1区画11に複数配置される燃料電池モジュール2と同数配置される。空気取込部9が燃料電池モジュール2ごとに設けられるため、複数の燃料電池モジュール2のいずれかに不具合が生じた場合に、全ての燃料電池モジュール2を停止する必要がなく、不具合が生じていない燃料電池モジュール2を稼働させ続けることができる。
【0069】
空気取込部9は、詳細にはフィルタを含んで構成される。空気取込部9には、空気を流す空気配管421(
図2において太い二点鎖線で示される)が接続される。空気取込部9および空気配管421は、カソード空気系統421Aを構成する。空気配管421は、
図4で示した部材4に含まれる。空気配管421は、第1区画11と第2区画12とに跨って配置される。燃料電池モジュール2に含まれるコンプレッサが作動することにより、空気取込部9から取り込まれた空気は、燃料電池モジュール2に含まれる燃料電池スタック2aの空気極に供給される。以上のことから、本実施形態の燃料電池システム100は、燃料電池モジュール2と繋がるカソード空気系統421Aの空気取込部9を格納した第2区画12を備える、と言える。
【0070】
熱交換器10は、燃料電池モジュール2用に設けられる冷却システムCSを構成する。上述のように、本実施形態においては、冷却システムCSは、第1冷却システムCSと第2冷却システムCSとを含む。このために、詳細には、熱交換器10は、第1冷却システムCS1を構成する第1熱交換器101と、第2冷却システムCS2を構成する第2熱交換器102とを含む。第1熱交換器101および第2熱交換器102は、燃料電池モジュール2ごとに設けられる。すなわち、第2区画12には、4つの第1熱交換器101と、4つの第2熱交換器102とが配置される。
【0071】
第1熱交換器101は、第1クーラントと、筐体1の外部から供給される第3クーラントとの間で熱交換を行う。
【0072】
第1クーラントは、第1熱交換器101と燃料電池モジュール2に含まれるポンプとを接続する第1クーラント配管422を利用して、燃料電池スタック2aから第1熱交換器101へと送られる共に、第1熱交換器101から燃料電池スタック2aに戻される。なお、第1クーラント配管422は、
図4で示した部材4に含まれる。第1クーラント配管422は、第1区画11と第2区画12とに跨って配置される。第1クーラント配管422は、
図2において細い一点鎖線で示されている。
【0073】
第3クーラントは、第2区画12内に配置される第3クーラント配管424を用いて、筐体1の外部から第1熱交換器101に供給されると共に、第1熱交換器101から筐体1の外部へと排出される。第2区画右壁12dには、
図1に示すように、第3クーラントの供給および排出を行うための第3クーラント配管424を外部の配管と接続するための接続口121が設けられる。なお、第3クーラント配管424への第3クーラントの供給は、筐体1の外部に配置される装置が利用される。第3クーラントは、特に限定する趣旨ではないが、海水であってよい。第3クーラント配管424は、
図2において太い一点鎖線で示されている。
【0074】
第2熱交換器102は、第2クーラントと、筐体1の外部から供給される第3クーラントとの間で熱交換を行う。第3クーラントの供給と排出を行う設備は、第1熱交換器101と共用される。
【0075】
第2クーラントは、第2熱交換器102と燃料電池モジュール2に含まれるポンプとを接続する第2クーラント配管423を利用して、燃料電池モジュール2に含まれる電気機器から第2熱交換器102へと送られる共に、第2熱交換器102から上記電気機器に戻される。なお、第2クーラント配管423は、
図4で示した部材4に含まれ、第1区画11と第2区画12とに跨って配置される。第2クーラント配管423は、
図2において細い一点鎖線で示されている。
【0076】
第3クーラントは、第2区画12内に配置される第3クーラント配管424を用いて、筐体1の外部から第2熱交換器102に供給されると共に、第2熱交換器102から筐体1の外部へと排出される。
【0077】
配電盤20は、第2区画12の右端部に配置される。第2区画右壁12dには、配電盤20と接続される電線を配置する電線配置部122が設けられる。電線配置部122は、詳細には、筐体1の内部から外部に電線を取り出したり、外部から内部へと電線を入れたりする部分である。また、電線配置部122は、筐体1の内部の電線と、外部の電線を接続する部分であってもよい。電線配置部122は、電線を通す開口や、電線を接続するコネクタ等で構成されてよい。
【0078】
配電盤20には、各種の端子およびリレーが含まれる。各種の端子には、例えば、燃料電池モジュール2で発電した電力が流れる電力線411(
図2の太い破線)と接続される端子が含まれる。なお、電力線411は、第1区画11と第2区画12とに跨って配置される配線41(
図3参照)に含まれる。また、各種の端子には、燃料電池モジュール2の制御を行うための制御線412(
図2の細い破線)と接続される端子が含まれる。なお、制御線412は、第1区画11と第2区画12とに跨って配置される配線41(
図3参照)に含まれていてもよい。その他、各種の端子には、圧力センサや温度センサ等のセンサと繋がるセンサ線と接続される端子が含まれる。また、各種の端子には、制御装置500と通信を行う通信線CLと繋がる端子等が含まれる。
【0079】
制御装置500は、筐体1内の各部の動作を制御する装置である。すなわち、本実施形態の燃料電池システム100は、制御装置500を備える。制御装置500は、例えばPLC(Programable Logic Controller)で構成される。本実施形態では、制御装置500は、筐体1の外部に配置され、通信線CLを介して筐体1の配電盤20と通信可能に接続される。これにより、配電盤20を介して筐体1内の各部を制御することができる。なお、制御装置500は、筐体1内(例えば配電盤20)に配置されて、外部からリモートで制御されることにより、筐体1の各部を制御する構成であってもよい。
【0080】
<3.換気流生成部について>
前述のIMOルールでは、燃料電池設置区画は、原則、第一種危険度区域(Zone 1)に設定される。ただし、所轄官庁の判断に基づき、IEC60079-10-1による危険度区域分類が適用される場合がある。第一種危険度区域および第二種危険度区域(Zone 2またはZone 2NE)に設置する電気機器については、危険度区域の区分に応じた防爆仕様であることが求められ、危険度区域のグレードが高いほど、より安全性の高い防爆仕様であることが求められる。しかし、安全性の高い防爆仕様の電気機器は、より大型で高コストである。そこで、燃料電池設置区画がグレードの低い危険度区域(例えばZone 2NE)に分類されることが検討される。燃料電池設置区画がグレードの低い危険度区域に分類されるためには、高い換気度が必要となる。すなわち、燃料ガス濃度の高いエリアが局所的に生成されにくくすることが必要となる。そこで、本実施形態では、換気流生成部を設けて高い換気度を実現するようにしている。以下、換気流生成部の詳細について説明する。
【0081】
図8は、本実施形態の燃料電池システム100の主要部の構成を模式的に示す説明図である。
図9は、上記主要部の他の構成を示す説明図である。
図8および
図9に示すように、燃料電池システム100は、換気流生成部150を備える。換気流生成部150は、筐体1内(第1区画11内)に設置され、燃料ガス漏洩リスク部400に指向した換気流を生成する。
図8および
図9では、燃料ガス漏洩リスク部400として、水素供給配管締込み継手2bを想定している。
【0082】
ここで、「燃料ガス漏洩リスク部400に指向した換気流」とは、例えば、
図8に示すように、換気流生成部150から燃料ガス漏洩リスク部400の方向に吐き出されて、燃料ガス漏洩リスク部400に直接向かう換気流W1であってもよい。また、
図9に示すように、換気流生成部150が周囲の空気を吸い込むことにより、燃料ガス漏洩リスク部400から換気流生成部150の方向に向かって風Wsが流れる結果、周囲から燃料ガス漏洩リスク部400の方向に向かって流れ込む換気流W2であってもよい。前者の換気流W1は、換気流生成部150を送風ファン150aで構成することによって実現される。後者の換気流W2は、換気流生成部150を吸込ファン150bで構成することによって実現される。
図8は、換気流生成部150を送風ファン150aで構成した場合を示し、そのときに流れる換気流W1の向きを実線の矢印で示す。また、
図9は、換気流生成部150を吸込ファン150bで構成した場合を示し、そのときに流れる換気流W2の向きを破線の矢印で示す。
【0083】
このような換気流生成部150は、例えばDCファンで構成される。DCファンは、直流電源から供給される電力によって駆動される。なお、換気流生成部150は、「燃料ガス漏洩リスク部400に指向した換気流」を生成することができればよく、上記のDCファンには限定されず、その他のファンまたは装置を用いることもできる。
【0084】
本実施形態では、換気流生成部150は、
図8および
図9に示すように、燃料ガス漏洩リスク部400の下方で、かつ、上述したクーラントポンプ83の横に配置されているが、配置位置は特に限定されない。
【0085】
上記のように換気流生成部150を設けることにより、燃料ガス系統5Aによって燃料電池スタック2aに供給される燃料ガス(水素)が、燃料ガス漏洩リスク部400から万が一漏洩した場合でも、換気流生成部150が生成した換気流W1またはW2により、漏洩した燃料ガスを速やかに拡散させることができる。これにより、第1区画11内で燃料ガス濃度が局所的に高いエリアが生成されにくくして、高い換気度を実現することができる。したがって、各国のルールにもよるが、燃料電池モジュール2の設置区画の危険度区域の中で、高い換気度が要求される区域(ルール上で最も安全な区域)に、本実施形態のような非防爆型の燃料電池モジュール2を設置することが可能となる。言い換えれば、船舶に搭載する燃料電池モジュール2として、非防爆型の燃料電池モジュール2を採用することが可能となる。
【0086】
なお、上記の換気度は、換気流量と換気流速とによって規定される。換気流量は、燃料ガス漏洩リスク部400から漏洩した燃料ガスの流量(漏洩流量)を、燃焼(爆発)下限濃度以下に希釈するために必要な換気流の流量である。換気流速は、燃料ガス漏洩リスク部400の周辺を流れる換気流の流速である。本実施形態では、燃料電池モジュール2の設置区画である第1区画11内を、通常時は安全場所である第二種危険度区域(例えばZone 2NE)に分類するために、換気流生成部150によって高換気度を実現し得る換気流速を、燃料ガス漏洩リスク部400の種類ごとにシミュレーションによって具体的に検証した。その結果(実施例)については後述する。
【0087】
ところで、燃料ガスに対して非防爆型のファンを用いて、燃料電池システム100を低コストで実現することを重視する場合には、燃料ガス漏洩リスク部400から漏洩した燃料ガスが、換気流生成部150に接触することを低減することが望ましい。このような観点では、換気流生成部150は、燃料ガス漏洩リスク部400に対して換気流W1を吹き付ける構成が望ましい。つまり、非防爆型のファンを用いることを重視する場合、換気流生成部150は、換気流W1を送り出す送風ファン150aであることが望ましい。
【0088】
一方、周辺部品のレイアウトの自由度を増大させることを重視する場合、燃料ガス漏洩リスク部400から漏洩した燃料ガスを周囲に拡散させることなく回収できるようにすることが望ましい。したがって、上記レイアウトの自由度を重視する観点では、換気流生成部150は、空気を吸い込むことによって換気流W2を生成する吸込ファン150bであることが望ましい。なお、この場合、吸込ファン150bは、防爆仕様であることが望ましい。
【0089】
本実施形態では、燃料ガス漏洩リスク部400は、水素供給配管締込み継手2b(燃料ガス配管継手)、配管フランジ51F、バルブ(上流側ブロック弁531、下流側ブロック弁532、ブリード弁533)、水素循環ポンプ2c(燃料ポンプ)の少なくともいずれかを含む。これらはいずれも、燃料ガスの漏洩リスクがある部分である。換気流生成部150を設けて高い換気度を実現することができる本実施形態の構成は、水素供給配管締込み継手2b等を燃料ガス漏洩リスク部400として備える燃料電池システム100に非常に有効となる。
【0090】
なお、燃料ガス漏洩リスク部400は、上記の他に、バルブシール部、コンプレッサ、ポンプシール部、リリーフ弁などの、燃料ガスの漏洩リスクがある箇所を含んでいてもよい。
【0091】
本実施形態では、
図8に示すように、換気流生成部150(送風ファン150a)によって生成される換気流W1は、換気流生成部150から燃料ガス漏洩リスク部400に向かって流れる。つまり、換気流W1は、換気流生成部150から、換気流生成部150の横に配置されたクーラントポンプ83に向かう方向とは異なる方向に流れる。また、
図9に示すように、換気流生成部150(吸込ファン150b)によって生成される換気流W2は、燃料ガス漏洩リスク部400の周囲から、燃料ガス漏洩リスク部400に向かって流れる。つまり、換気流W2は、燃料ガス漏洩リスク部400の周囲からクーラントポンプ83に向かう方向とは異なる方向に流れる。
【0092】
燃料ガス漏洩リスク部400から燃料ガスが漏洩した場合に、非防爆型の電気機器であるクーラントポンプ83で着火が起こるリスクを低減するためには、燃料ガス漏洩リスク部400から漏洩した燃料ガスが換気流に載ってクーラントポンプ83に向かって流れることを低減することが望ましい。そのためには、換気流生成部150よって生成される換気流W1またはW2が、クーラントポンプ83に向かう方向とは異なる方向に流れるように、換気流生成部150を配置することが望ましい。つまり、換気流生成部150は、クーラントポンプ83とは異なる方向に換気流W1またはW2を指向させる向きに配置されることが望ましい。
【0093】
本実施形態では、送風方向(換気流W1が流れる方向)または吸込方向(風Wsが流れる方向)が上下方向となる向きに換気流生成部150を配置している。つまり、送風方向または吸込方向が、換気流生成部150とクーラントポンプ83とが並ぶ横方向とは異なる方向となる向きに換気流生成部150を配置している。このような向きに換気流生成部150を配置することにより、クーラントポンプ83とは異なる方向に換気流W1またはW2を指向させる構成を実現している。
【0094】
本実施形態では、燃料電池モジュール2に供給する燃料ガスとして、水素(水素ガス)を用いている。水素は空気よりも軽いため、燃料ガス漏洩リスク部400から漏洩すると、上昇する。したがって、例えば換気流生成部150の停止中に、燃料ガス漏洩リスク部400から水素ガスの漏洩が発生した場合に、非防爆型の電気機器に水素ガスが接触することを低減する観点では、
図8および
図9に示すように、非防爆型の電気機器(例えばクーラントポンプ83)は、少なくとも1つの燃料ガス漏洩リスク部400よりも下方に配置されることが望ましい。
【0095】
図8等に示すように、筐体1の第1区画11は、燃料電池モジュール2と、燃料ガス系統5Aと、上記の換気流生成部150と、を格納している。本実施形態では、前述のように、カソード空気系統421Aを構成する空気配管421が、仕切壁13の貫通孔131(
図4参照)を通って第1区画11と第2区画12とを跨いて配置され、空気配管421以外の部分は、シール構造132(
図4参照)によってシールされる。このため、カソード空気系統421A以外では、第1区画11と第2区画12との間での空気の流通が遮蔽される。
【0096】
したがって、仮に、第1区画11に格納された燃料ガス系統5Aの燃料ガス漏洩リスク部400から燃料ガスが漏洩した場合でも、その漏洩した燃料ガスが、第1区画11から第2区画12に侵入することは回避される。その結果、漏れた上記燃料ガスが第2区画12内の空気取込部9から取り込まれて、空気配管421を介して燃料電池モジュール2のカソード(空気極)に供給されることも回避される。
【0097】
このように、燃料ガス漏洩リスク部400から燃料ガスが漏洩した場合に、漏洩した燃料ガスが、燃料電池モジュール2のカソードに供給されることを回避する観点では、燃料電池システム100が、カソード空気系統421Aを除いて、第1区画11と第2区画12との間での空気の流通を遮蔽する隔壁となる仕切壁13を備えることが望ましい。
【0098】
<4.換気流生成部の他の構成について>
図6および
図7で示したように、配管フランジ51Fが燃料ガス漏洩リスク部400を構成する場合、配管フランジ51Fは、筐体1に対する外部水素供給通路201(外部ガス配管)の接続側から見て、内管201Pと外管203との間の隙間(内部空間204)と重なって位置することが望ましい(特に
図7参照)。本実施形態では、上記接続側から見て、配管フランジ51Fの全体が内部空間204と重なって位置する。なお、上記接続側から見て、配管フランジ51Fの一部が内部空間204と重なって位置してもよい。
【0099】
この場合、流体導入部205が換気流生成部150を構成してもよい。つまり、換気流生成部150は、外部水素供給通路201の内部空間204に換気用流体を導入する流体導入部205を有してもよい。流体導入部205から内部空間204に換気用流体を導入すると、換気用流体は内部空間204を流れて筐体1内に取り込まれる。上記接続側から見て、配管フランジ51Fが内部空間204と重なって位置することにより、配管フランジ51Fから燃料ガスが漏洩した場合でも、内部空間204を流れた換気用流体(換気流)を、配管フランジ51Fに直接かつ効率よく当てて、漏洩した燃料ガスを速やかに拡散させることができる。
【0100】
したがって、例えば、配管フランジ51Fに対して送風することを目的とするファンを、流体導入部205とは別に設ける必要がなくなる。また、この場合、内管201Pと外管203とを含む二重管(外部水素流通路200)に接続される既存の流体導入部205を、換気流生成部150として有効利用できる利点もある。
【0101】
また、燃料ガス漏洩リスク部400としての配管フランジ51Fから漏洩した燃料ガスが、内部空間204を流れる換気流によって拡散された後、燃料電池モジュール2に向かって流れることを低減する観点では、
図6のように、燃料電池モジュール2と配管フランジ51Fとの間に遮蔽板54を配置することが有効である。この場合、遮蔽板54が、換気流によって拡散された燃料ガスの燃料電池モジュール2の方向への進行を阻害する邪魔板となる。上記燃料ガスは、その後、燃料電池モジュール2を避けて換気口112(
図2等参照)へ向かって流れ、換気装置300によって筐体1の外部に排出される。
【0102】
<5.異常時の制御について>
図8および
図9に示すように、本実施形態の燃料電池システム100は、第1区画11に設けられる上述した吸気口111および換気口112と、第1区画11を換気する換気装置300と、を備える。加えて、燃料電池システム100は、ガス検知器160を備える。ガス検知器160は、筐体1内の燃料ガス濃度を検知するセンサである。
【0103】
本実施形態では、燃料ガスは水素ガスであるため、ガス検知器160は水素濃度を検知する水素センサで構成される。ガス検知器160は、例えば換気口112の近傍に設けられる。なお、ガス検知器160は、燃料ガス漏洩リスク部400の近傍に設けられてもよい。また、ガス検知器160の個数は、1個であってもよいし、複数であってもよい。
【0104】
本実施形態では、燃料ガスの漏れに対する安全を確保するため、
図2で示した制御装置500によって以下の制御が行われる。
図10は、燃料電池システム100において、異常時の制御に関わる構成を示すブロック図である。
図11は。異常時の制御による動作の流れを示すフローチャートである。
【0105】
なお、ここでは、換気流生成部150として、水素に対して非防爆型の送風ファン150aを用いているとする。また、換気装置300は水素に対して防爆型のファンであるとする。燃料電池システム100には、燃料電池システム100に対して各種の指示を入力するためのシステム操作パネル600が設けられる。システム操作パネル600は、例えばタッチパネル付きの表示装置で構成される。システム操作パネル600は、筐体1の外部の制御装置500と一体化されていてもよいし、制御装置500とは別体で設けられて、制御装置500と通信可能であってもよい。また、システム操作パネル600は、筐体1に設けられてもよい。
【0106】
燃料電池モジュール2が作動中であれば(S1にてYes)、ガス検知器160は、筐体1内の水素ガスの濃度を検出する(S2)。なお、S1にて、燃料電池モジュール2が作動しているとき、送風ファン150aおよび換気装置300も作動している。S2で取得された水素濃度の検出値が所定値未満であれば(S3にてNo)、S1に戻って以降の動作を繰り返す。
【0107】
一方、水素濃度の検出値が所定値以上であれば(S3にてYes)、制御装置500は、燃料電池モジュール2の停止を指示する制御信号を筐体1に出力する(S4)。これにより、燃料電池モジュール2の作動が停止する。また、制御装置500は、水素に対して非防爆型の送風ファン150aの停止を指示する制御信号を筐体1に出力する(S5)。これにより、送風ファン150aが停止する。なお、システム操作パネル600のモニタには、燃料電池モジュール2および送風ファン150aが停止したことが情報として表示される。換気装置300は防爆型であるため、換気を継続させる。
【0108】
なお、換気装置300は、例えば船舶側に設けられていてもよい。この場合、換気装置300は制御装置500と通信可能に繋がっていないが、繋がっていてもよい。また、システム操作パネル600にて、燃料電池モジュール2の停止指示を手動で入力した場合は、S4以降の動作が行われる。
【0109】
以上のように、燃料ガスの漏れにより、第1区画11内の燃料ガス濃度が所定値以上となった場合には、安全を確保するために、非防爆型の電気機器である送風ファン150aの作動を停止させることが望ましい(S3、S5参照)。また、第1区画11内の燃料ガス濃度を所定値未満に低減して、燃料ガスの漏れの影響を最小限に留める点では、送風ファン150aの作動が停止した後であっても、防爆型の換気装置300は、第1区画11内の換気を継続することが望ましい。
【0110】
なお、S4で燃料電池モジュール2の作動を停止させた場合、バルブ装置53の遮断弁(上流側ブロック弁531、下流側ブロック弁532)を閉じてもよい。
【0111】
<6.換気流生成部によって実現し得る換気流速について>
次に、換気流生成部150によって高換気度を実現し得る換気流速について検証した結果を、実施例として説明する。以下では、燃料ガス漏洩リスク部400として、配管フランジ51F(実施例1)、水素供給配管締込み継手2b(実施例2)、上流側ブロック弁531(実施例3)、水素循環ポンプ2c(実施例4)、を例に挙げて検証した。そして、国際規格(IEC60079-10-1)に基づき、実施例1~4のそれぞれについて、高換気度を実現し得る換気流速を算出した。
【0112】
図12は、高換気度を実現し得る換気流速の算出の流れを示すフローチャートである。以下のフローを、実施例1~4ごとに行う。まず、燃料ガス漏洩リスク部400における漏洩ガスの放出開口部の面積(想定口径)を特定する(S11)。次に、燃料ガス漏洩リスク部400における漏洩ガスの放出特性を算出する(S12)。この放出特性は、漏洩ガスの流量を燃焼下限濃度以下に希釈するために必要な換気流の流量(換気流量Qc)に対応する。そして、最後に、高換気度を実現するために必要な換気流の換気流速uwを、換気流量Qcに基づいて求める(S13)。
【0113】
図13および
図14は、換気流量Qcを算出するにあたって用いる各パラメータと、実施例1~4での各パラメータの値とを示している。なお、
図13および
図14において、「AE-X」の形式で示した値は、「A×10
-X」であることを示す。各パラメータの内容は、以下の通りである。
【0114】
Cdは、放出開口部の特性である放出係数を示す。Sは放出開口部の面積を示す。なお、上記の面積については、漏洩リスク部ごとに上記の規格で予め推奨値として定められた値を用いる。Pはプロセス圧力、すなわち、燃料電池モジュール2が設置される第1区画11内の圧力を示す。γは比熱比を示す。Mは気体または蒸気のモル質量を示す。Zは圧縮係数を示す。Rは気体定数を示す。Tは流体、気体または液体の温度を示し、ここでは20℃(絶対温度で293.15K)とする。Wgは気体の質量放出率を示し、
図13の式(A)によって定義される。Qgは気体の体積放出率を示す。なお、単位のNLMは、Normal Litter /Minの略である。
【0115】
Paは大気圧を示す。Taは周囲温度を示し、ここでは20℃(絶対温度で293.15K)とする。ρgは、気体または蒸気の密度を示し、
図14の式(B)によって定義される。LFLは燃焼下限濃度(Lower Flammability Limit)を示す。Qcは、
図14の式(C)によって定義される換気流量を示す。uw_hは、高希釈(高換気度)を実現するために必要な換気流速を示す(_hはhigh dilutionの意味)。
【0116】
図15~
図18は、換気流量Qcと換気流速uwとで規定される高希釈(換気度:高)、中希釈(換気度:中)、低希釈(換気度:低)の各領域を示すとともに、実施例1~4のそれぞれにおいて、式(C)によって求めた換気流量Qcを座標平面上にプロットした図である。なお、図中の縦軸(換気流速uw)および横軸(換気流量Qc)は、いずれも対数表示である。また、境界線L1は、高希釈の領域と、中希釈の領域との境界線を示す。境界線L2は、中希釈の領域と、低希釈の領域との境界線を示す。
【0117】
これらの図面より、高希釈、すなわち、高換気度を実現するためには、実施例1~4における換気流量Qcの値で、最低、境界線L1上の換気流速uw(すなわちuw_h)を実現することが必要となる。実施例1~4では、
図14で示した換気流速uw_hの値を実現し得る換気流生成部150(例えば送風ファン150a)を適切に選定して設置することにより、設置区画内の高換気度を実現することができる。
【0118】
設置区画内の高換気度を実現することができれば、上記規格に基づき、換気有効度および放出等級を満足すること、各国で定められたルールを満足することを条件として、燃料電池モジュール2の設置場所である第1区画11内を、安全区域(Zone 2NE)に分類することができ、これによって、非防爆型の燃料電池モジュール2を第1区画11内に設置することができる。なお、換気有効度については、例えば船体側の換気ファンで燃料電池システム100の筐体1内を常時換気することにより、満足することができる。放出等級については、実施例1~4で示したいずれの燃料ガス漏洩リスク部400についても、燃料電池システム100の通常運転時には燃料ガスの放出または漏洩が発生しないため、この条件も満足することができる。
【0119】
<4.付記>
本実施形態で説明した燃料電池システムは、以下の付記に示す燃料電池システムと表現することもできる。
【0120】
付記(1)の燃料電池システムは、
燃料電池スタックを有する燃料電池モジュールと、
前記燃料電池スタックに燃料ガスを供給する燃料ガス系統と、
換気流生成部と、を備え、
前記燃料ガス系統は、燃料ガス漏洩リスク部を有し、
前記換気流生成部は、前記燃料ガス漏洩リスク部に指向した換気流を生成する。
【0121】
付記(2)の燃料電池システムは、付記(1)に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料ガス漏洩リスク部は、燃料ガス配管継手、配管フランジ、遮断弁、燃料ポンプの少なくともいずれかを含む。
【0122】
付記(3)の燃料電池システムは、付記(1)または(2)に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料ガスに対して非防爆型の電気機器をさらに備え、
前記換気流生成部は、前記非防爆型の電気機器とは異なる方向に前記換気流を指向させる。
【0123】
付記(4)の燃料電池システムは、付記(3)に記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料ガスは水素ガスであり、
前記非防爆型の電気機器は、少なくとも1つの前記燃料ガス漏洩リスク部よりも下方に配置される。
【0124】
付記(5)の燃料電池システムは、付記(1)から(4)のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池モジュールと、前記燃料ガス系統と、前記換気流生成部と、を格納した第1区画と、
前記燃料電池モジュールと繋がるカソード空気系統の空気取込部を格納した第2区画と、
前記カソード空気系統を除いて、前記第1区画と前記第2区画との間での空気の流通を遮蔽する隔壁と、を備える。
【0125】
付記(6)の燃料電池システムは、付記(3)に記載の燃料電池システムにおいて、
前記第1区画に設けられる吸気口および換気口と、
前記第1区画を換気する換気装置と、
前記第1区画内の燃料ガス濃度を検知するガス検知器と、をさらに備え、
前記ガス検知器が所定値以上の前記燃料ガス濃度を検知した場合に、前記非防爆型の電気機器の作動を停止する。
【0126】
付記(7)の燃料電池システムは、付記(1)から(6)のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記換気流生成部は、送風ファンである。
【0127】
付記(8)の燃料電池システムは、付記(1)から(6)のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記換気流生成部は、吸込ファンである。
【0128】
付記(9)の燃料電池システムは、付記(1)から(8)のいずれかに記載の燃料電池システムにおいて、
前記燃料電池モジュールおよび前記燃料ガス系統は、共通の筐体に収容されており、
前記筐体は、前記筐体の外部に配置される外部燃料ガス配管と接続されており、
前記外部燃料ガス配管は、内管と、外管と、を有し、
前記内管は、前記筐体内の前記燃料ガス系統と接続されており、
前記外管は、前記内管の外周面に対して所定の隙間を隔てて配置され、
前記内管と前記外管との間の前記隙間は、前記筐体内に開口し、
前記換気流生成部は、前記外部ガス配管の前記隙間に換気用流体を導入する流体導入部を有し、
前記燃料ガス漏洩リスク部は、前記筐体に対する前記外部ガス配管の接続側から見て、前記内管と前記外管との間の前記隙間と重なって位置する。
【0129】
付記(10)の燃料電池システムは、付記(9)に記載の燃料電池システムにおいて、
前記筐体内において、前記燃料電池モジュールは、前記燃料ガス漏洩リスク部に対して、前記筐体と前記外部燃料ガス配管との接続側とは反対側に位置しており、
前記燃料電池モジュールと前記燃料ガス漏洩リスク部との間には、遮蔽板が配置されている。
【0130】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の燃料電池システムは、例えば船舶での電力の生成に利用可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 筐体
2 燃料電池モジュール
2a 燃料電池スタック
2b 水素供給配管締込み継手(燃料ガス漏洩リスク部)
2c 水素循環ポンプ(燃料ガス漏洩リスク部、燃料ポンプ)
5A 燃料ガス系統
9 空気取込部
11 第1区画
12 第2区画
13 仕切壁(隔壁)
51F 配管フランジ(燃料ガス漏洩リスク部)
54 遮蔽板
83 クーラントポンプ(非防爆型の電気機器)
100 燃料電池システム
111 吸気口
112 換気口
150 換気流生成部
150a 送風ファン
150b 吸込ファン
160 ガス検知器
200 外部水素流通路(外部燃料ガス配管)
201P 内管
203 外管
204 内部空間(隙間)
205 流体導入部
300 換気装置
400 燃料ガス漏洩リスク部
421A カソード空気系統
531 上流側ブロック弁(燃料ガス漏洩リスク部、バルブ)
532 下流側ブロック弁(燃料ガス漏洩リスク部、バルブ)
533 ブリード弁(燃料ガス漏洩リスク部、バルブ)