(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128229
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】枕および枕用シート素材
(51)【国際特許分類】
A47G 9/10 20060101AFI20240913BHJP
D04B 21/14 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
A47G9/10 B
A47G9/10 E
D04B21/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037087
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】594094870
【氏名又は名称】有限会社ナンワ
(71)【出願人】
【識別番号】594054520
【氏名又は名称】株式会社ユニチカテクノス
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 豊
(72)【発明者】
【氏名】石井 謙市郎
【テーマコード(参考)】
3B102
4L002
【Fターム(参考)】
3B102AA02
3B102AA09
3B102AB00
3B102AC01
4L002AA07
4L002AB02
4L002CA00
4L002CB01
4L002DA00
4L002EA00
4L002FA06
(57)【要約】
【課題】従来にない素材により形成されることで就寝時の快適性の向上を図った枕を得る。
【解決手段】袋体12の内部に中材13が収容された枕11である。中材13は、シート状のクッション材14が複数積層された構成である。各クッション材14は、ダブルラッセル編地にて構成されている。クッション材14は、使用者の頭を受ける部分に貫通穴18が形成されていることが好適である。複数のクッション材14において、貫通穴18の形状を相違させることができる。中材13は、使用者の頭を受ける部分に貫通穴18が形成されている第1のクッション材と、使用者の頭を受ける部分に貫通穴18が形成されていない第2のクッション材とが積層されている構成とすることもできる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体の内部に中材が収容された枕であって、前記中材は、シート状のクッション材が複数積層された構成であり、前記各クッション材は、ダブルラッセル編地にて構成されていることを特徴とする枕。
【請求項2】
シート状のクッション材は、使用者の頭を受ける部分に貫通穴が形成されていることを特徴とする請求項1記載の枕。
【請求項3】
複数のクッション材において、貫通穴の形状が相違することを特徴とする請求項2記載の枕。
【請求項4】
中材は、使用者の頭を受ける部分に貫通穴が形成されている第1のクッション材と、使用者の頭を受ける部分に貫通穴が形成されていない第2のクッション材とが積層されていることを特徴とする請求項1記載の枕。
【請求項5】
枕の中材を構成する枕用シート素材であって、複数積層されることで前記枕の中材を形成するシート状のクッション材にて構成され、前記シート状のクッション材はダブルラッセル編地にて構成されていることを特徴とする枕用シート素材。
【請求項6】
使用者の頭を受けることになる部分に貫通穴が形成されていることを特徴とする請求項5記載の枕用シート素材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は枕および枕用シート素材に関する。
【背景技術】
【0002】
就寝時に使用する枕として、袋体の内部に多数の粒状の充填物が充填されたものが知られている(特許文献1)。特許文献1では、充填物として、樹脂製の中空パイプ、微小発泡ビーズ、低反発ウレタン微粉末、マイクロファイバー綿、羽毛、檜チップなどが例示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来にない素材により形成されることで就寝時の快適性の向上を図った枕を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明の、袋体の内部に中材が収容された枕において、前記中材は、シート状のクッション材が複数積層された構成であり、前記各クッション材は、ダブルラッセル編地にて構成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の枕において、シート状のクッション材は、使用者の頭を受ける部分に貫通穴が形成されていることが好適であり、複数のクッション材において、貫通穴の形状が相違する構成とすることもできる。
【0007】
本発明の枕によれば、中材は、使用者の頭を受ける部分に貫通穴が形成されている第1のクッション材と、使用者の頭を受ける部分に貫通穴が形成されていない第2のクッション材とが積層されていることが好適である。
【0008】
本発明の、枕の中材を構成する枕用シート素材は、複数積層されることで前記枕の中材を形成するシート状のクッション材にて構成され、前記シート状のクッション材はダブルラッセル編地にて構成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の枕用シート素材によれば、使用者の頭を受けることになる部分に貫通穴が形成されていることが好適である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、袋体の内部に中材が収容された枕において、前記中材は、シート状のクッション材が複数積層された構成であり、前記各クッション材はダブルラッセル編地であることで、独特のクッション感を得ることができて、就寝時の快適性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】
図1の枕の袋体に収容される中材の端部を袋体とともに示す図である。
【
図3】中材を収容体に収容させるときの状態を示す図である。
【
図6】シート状のクッション材の一例の表面を示す図である。
【
図8】シート状のクッション材の他の例を示す図である。
【
図9】シート状のクッション材のさらに他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1~
図3に示すように、本発明の枕11は、袋体12の内部に中材13が収容された構成である。袋体12は綿布帛やその他の適当な布地によって構成することができる。中材13は、枕用シート素材としてのシート状のクッション材14が、複数積層された構成である。図示の枕では、中材13は、厚さ約3mmのクッション材14が15枚積層されている。
図4は、このようにクッション材14が積層された構成の中材13の全体を示す。
【0013】
中材13は、複数種類のクッション材14が積層されたものであるが、各クッション材の基本的な構成は共通している。以下、その共通点について説明する。
【0014】
すなわち、各クッション材14は、ダブルラッセル編地にて構成されている。ダブルラッセル編地は、
図5に示すように、表地15と裏地16とを有するとともに、これら表地15と裏地16とを連結する多数の連結糸17を有することで、所要の弾力性を発揮することが可能である。表地15は、メッシュ状体すなわちメッシュ構造の編物布帛である。裏地16は、地組織すなわちメッシュ構造ではない一般的な目の詰まった編地にて構成することが好適である。あるいは、裏地16は、表地と同様のメッシュ構造の編物布帛とすることもできる。連結糸17は、表地15の構成糸条と、裏地16の構成糸条とを繋ぐものである。
【0015】
表地15のメッシュ構造は、多角形状のメッシュ構造であり、図示の例ではメッシュの形状が四角形すなわち菱形である。本発明の実施の形態において、表地15のメッシュ構造は、多角形の一辺が2~60コースの編目により構成されることが好適である。一辺を構成する編目の個数をこの範囲とするのは、メッシュの立体形状の安定性の観点や枕の中材としての適当な弾力性の観点などによる。
【0016】
連結糸17はダブルラッセル編地の厚み方向に配列され、表地15の構成糸条と裏地16の構成糸条との間に編み構造によって多数本の連結糸17が配置されている。その繊度は、クッション材14の形態安定性の観点から、100デシテックス以上であることが好ましい。
【0017】
クッション材14すなわちダブルラッセル編地を構成する糸条は、このダブルラッセル編地が枕11の中材13としての好適な弾性を有することができる適宜の材料にて構成することができる。そのような材料としては、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルや、ポリアミドや、その他の熱可塑性樹脂を挙げることができる。なかでも、表地15と裏地16とをポリエステルにて構成することで、所要の弾力性を発揮することができるとともに、連結糸17をポリアミドにて構成することで、適度の反発性を発揮することができる。これにより、使用者が頭を載せたときに、枕11の中材13に適した沈み込み状態を実現することができる。あるいは、硬さの異なる糸を混ぜて使用することで、クッション性を調節することができる。
【0018】
図3および
図4から理解できるように、図示のクッション材14では、同クッション材14に厚み方向の貫通穴18が形成されている。貫通穴18は、クッション材14に切り抜き加工を施すことなどによって、形成することができる。貫通穴18は、枕11に求められる使用感などに応じて適宜の形状および寸法とすることができる。
図6および
図7は、貫通穴18として直径10cm程度の円形の貫通穴18aが形成されたクッション材14を示す。
図6では表地15の表面が同時に示され、
図7では裏地16の表面が同時に示されている。
図8は、貫通穴18として長円形の貫通穴18bが形成されたクッション材14の表地15側を示し、
図9は、貫通穴18として
図6のものよりも小径の円形の貫通穴18cが形成されたクッション材14の表地15側を示す。
【0019】
図3、
図4、
図10に示すように、貫通穴18として異なる種類の貫通穴18a、18b、18cを有するクッション材14をそれぞれ複数ずつ用いて、枕11に求められる使用感などに応じて適宜に積層することで、中材13を構成することができる。
【0020】
図10に示すように、貫通穴18は、使用者20の頭部21を受ける部分に形成されていることが好適である。使用者20は、頭部21を中材13の貫通穴18の位置に載せるように枕11を使用することで、枕11への頭部21の沈み込み量が適正になることや、頭部21の位置が安定することなどによって、快適感を得ることができる。このとき、頭部21を中材13の貫通穴18の位置に載せることで、頭部21の重みを受けて貫通穴18が広がり、それによって、頭部21が必要以上に枕11に沈み込むことを防止できる。これによって、いわゆる低反発性と高反発性との間の中間的な反発性や頭部21の沈み込み性を実現することができる。しかも、クッション材14にて構成された中材13において、使用者20の首部22に対応する部分には貫通穴18は形成されていない。このため、使用者20が容易に寝返りすることができるなどの利点がある。
【0021】
たとえば
図10の例では、円形の貫通穴18aが形成された複数のクッション材14と、長円形の貫通穴18bが形成された複数のクッション材14と、小径の円形の貫通穴18cが形成された複数のクッション材14とが、上から下に向けてこの順に積層されている。なお、貫通穴18を有しないシート状のクッション材(図示せず)も、適宜に用いることができる。場合によっては、貫通穴18を有しないクッション材だけを積層して中材13を構成することもできる。
【0022】
クッション材14は、ダブルラッセル編地を構成する糸の種類や繊度などを変えることで、所望の硬さすなわちクッション性すなわち弾力性を有したものとすることができる。そして、この硬さと上述の貫通穴18とを組み合わせることによって、さらにダブルラッセル編地の厚さや中材13におけるクッション材14の使用枚数などを調節することによって、最適な使用感を達成することができる。
【0023】
クッション材14の厚みは、たとえば3~10mm程度とすることができる。このクッション材14の厚みと、中材13を構成するためのクッション材14の積層枚数とを調節することで、使用者20の希望する枕11の高さおよびクッション性を実現することができる。
【0024】
中材13を構成するクッション材14は、合成樹脂などを用いたダブルラッセル編地にて構成されているため、洗濯性が良好である。
【0025】
図示は省略するが、枕11を構成する袋体12と、この袋体12の内部に収容する中材13との位置ずれを防止するための適宜の手段を設けることが好適である。このような位置ずれ防止の手段として、たとえば袋体12の内面に、摩擦係数の大きい、ずれ防止用の膜材を貼り付けるなどとすることが好適である。また、袋体12やクッション材14に消臭加工を施すことができる。これにより、枕11に良好な消臭性を付与することができる。
【実施例0026】
下記の条件で、貫通穴18を有しないクッション材14を製造した。
【0027】
[編機]
ダブルラッセル編機、22ゲージ、4枚筬(L1~L4)を用いた。L1~L4の筬には、下記の「糸使い」の欄に記載の糸を供給した。そして、下記の「組織」に基づき、ダブルラッセル編地を編成した。得られたダブルラッセル編地の厚みは約3mm、目付は約230g/m2であった。
【0028】
[糸使い]
L1、L2(表地):ポリエチレンテレフタレート製のマルチフィラメント糸(83デシテックス/36フィラメント) 3in1out
L3(連結糸):ポリエチレンテレフタレート製のモノフィラメント糸(37.3デシテックス) Allin
L4(裏地):ポリエチレンテレフタレート製のマルチフィラメント糸(83デシテックス/36フィラメント) Allin
【0029】
[組織]
L1:3-4,3-3/3-2,3-3/3-4,3-3/3-2,1-1/1-0,1-1/1-2,1-1/1-0,1-1/1-2,3-3//
L2:1-0,1-1/1-2,1-1/1-0,1-1/1-2,3-3/3-4,3-3/3-2,3-3/3-4,3-3/3-2,1-1//
L3:1-2,2-3/2-1,1-0//
L4:1-1,0-1/1-1,2-1//
【0030】
得られたクッション材14に切り抜き加工を施すことで、貫通穴18を有するクッション材14を得ることができた。