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特開2024-128230過給機の過回転防止装置、内燃機関システム及び過給機の運転方法
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  • 特開-過給機の過回転防止装置、内燃機関システム及び過給機の運転方法 図1
  • 特開-過給機の過回転防止装置、内燃機関システム及び過給機の運転方法 図2
  • 特開-過給機の過回転防止装置、内燃機関システム及び過給機の運転方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128230
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】過給機の過回転防止装置、内燃機関システム及び過給機の運転方法
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/18 20060101AFI20240913BHJP
   F02B 39/00 20060101ALI20240913BHJP
   F02B 37/12 20060101ALI20240913BHJP
   F01D 21/00 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
F02B37/18 F
F02B39/00 F
F02B37/18 D
F02B37/18 E
F02B37/12 302G
F01D21/00 R
F01D21/00 V
F01D21/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037088
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】518131296
【氏名又は名称】三菱重工マリンマシナリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】松尾 哲也
(72)【発明者】
【氏名】白川 太陽
【テーマコード(参考)】
3G005
3G071
【Fターム(参考)】
3G005EA04
3G005EA16
3G005FA27
3G005FA42
3G005FA45
3G005GA02
3G005GA03
3G005GB27
3G005JA28
3G071AB06
3G071BA03
3G071CA09
3G071DA11
3G071GA06
(57)【要約】
【課題】構造が簡単であり、過給機の過回転を効果的に防止できる過給機の過回転防止装置、内燃機関システム及び過給機の運転方法を提供する。
【解決手段】過給機は、内燃機関から排出される排ガスにより駆動するように構成されたタービンと、内燃機関からタービンに排ガスを導くための排ガス導入ラインと、タービンから排ガスを排出するための排ガス排出ラインと、排ガス導入ラインから分岐し、タービンを迂回して排ガス排出ラインに合流するバイパスラインと、を備え、過給機の過回転防止装置は、バイパスラインに設けられ、バイパスラインにおける排ガスの流れを遮断する安全弁であって、排ガス導入ラインからバイパスラインに導かれる排ガスの圧力が所定圧力を超えたときに破壊されるように構成された弁体を有する安全弁と、バイパスラインに設けられ、バイパスラインを開閉するように構成された開閉弁と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過給機の過回転を防止するための過給機の過回転防止装置であって、
前記過給機は、
内燃機関から排出される排ガスにより駆動するように構成されたタービンと、
前記内燃機関から前記タービンに前記排ガスを導くための排ガス導入ラインと、
前記タービンから前記排ガスを排出するための排ガス排出ラインと、
前記排ガス導入ラインから分岐し、前記タービンを迂回して前記排ガス排出ラインに合流するバイパスラインと、を備え、
前記過給機の過回転防止装置は、
前記バイパスラインに設けられ、前記バイパスラインにおける前記排ガスの流れを遮断する安全弁であって、前記排ガス導入ラインから前記バイパスラインに導かれる前記排ガスの圧力が所定圧力を超えたときに破壊されるように構成された弁体を有する安全弁と、
前記バイパスラインに設けられ、前記バイパスラインを開閉するように構成された開閉弁と、を備える、
過給機の過回転防止装置。
【請求項2】
前記安全弁の前記弁体は、前記バイパスラインにおける前記排ガスの流れを遮断する隔壁を含む、
請求項1に記載の過給機の過回転防止装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の過給機の過回転防止装置と、
前記過給機と、
前記内燃機関と、を備え、
前記内燃機関は、船舶に搭載される主機エンジンからなる、
内燃機関システム。
【請求項4】
過給機の運転方法であって、
前記過給機は、
内燃機関から排出される排ガスにより駆動するように構成されたタービンと、
前記内燃機関から前記タービンに前記排ガスを導くための排ガス導入ラインと、
前記タービンから前記排ガスを排出するための排ガス排出ラインと、
前記排ガス導入ラインから分岐し、前記タービンを迂回して前記排ガス排出ラインに合流するバイパスラインと、を備え、
前記過給機の運転方法は、
前記排ガス導入ラインから前記バイパスラインに導かれる前記排ガスの圧力が所定圧力を超えたときに、前記バイパスラインにおける前記排ガスの流れを遮断する安全弁の弁体が破壊され、前記安全弁が開放される安全弁開放ステップと、
前記安全弁開放ステップ後に、前記バイパスラインに設けられた前記バイパスラインを開閉するように構成され、前記弁体が破壊されていない通常運転中及び前記弁体の破壊時に開状態が維持される開閉弁を閉じる開閉弁閉止ステップと、を備える、
過給機の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過給機の過回転防止装置、該過回転防止装置を備える内燃機関システム及び過給機の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の異常燃焼などにより過給機に通常よりも多大な排ガスが供給された場合に、過給機の過回転が発生する虞がある。過給機の過回転が発生すると、過給機の回転軸を支持する軸受の損傷や回転軸に取り付けられた羽根車の破損などのような、内燃機関の運転を継続することが困難な不具合が発生する虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-44481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
内燃機関には過給機の過回転を防止するための過回転防止構造が設けられることがある。内燃機関に設けられた過回転防止構造では、過給機の過回転を効果的に防止することができない虞がある。
【0005】
過給機には、タービンを迂回するバイパスラインであるウエイストゲートに設けられたウエイストゲートバルブを備えるものがある(特許文献1参照)。タービンに多大な排ガスが供給される虞がある場合には、ウエイストゲートバルブを開き、排ガスをバイパスさせる運用が行われることがある。上記運用では、過給機の過回転の兆候の察知が困難であり、ウエイストゲートバルブの開閉などの過給機の制御が複雑になるという問題がある。
【0006】
特に内燃機関がガス燃料により運転するガスエンジンである場合には、空燃比制御を主な制御対象とするウエイストゲートバルブでは過給機の過回転を防止する運用との両立が困難であるという問題がある。また、ウエイストゲートバルブの構造自体が複雑なものであるため、過給機のコスト増の要因になっている。
【0007】
上述の事情に鑑みて、本開示の少なくとも一実施形態は、構造が簡単であり、過給機の過回転を効果的に防止できる過給機の過回転防止装置、内燃機関システム及び過給機の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る過給機の過回転防止装置は、
過給機の過回転を防止するための過給機の過回転防止装置であって、
前記過給機は、
内燃機関から排出される排ガスにより駆動するように構成されたタービンと、
前記内燃機関から前記タービンに前記排ガスを導くための排ガス導入ラインと、
前記タービンから前記排ガスを排出するための排ガス排出ラインと、
前記排ガス導入ラインから分岐し、前記タービンを迂回して前記排ガス排出ラインに合流するバイパスラインと、を備え、
前記過給機の過回転防止装置は、
前記バイパスラインに設けられ、前記バイパスラインにおける前記排ガスの流れを遮断する安全弁であって、前記排ガス導入ラインから前記バイパスラインに導かれる前記排ガスの圧力が所定圧力を超えたときに破壊されるように構成された弁体を有する安全弁と、
前記バイパスラインに設けられ、前記バイパスラインを開閉するように構成された開閉弁と、を備える。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る内燃機関システムは、
前記過給機の過回転防止装置と、
前記過給機と、
前記内燃機関と、を備え、
前記内燃機関は、船舶に搭載される主機エンジンからなる。
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態に係る過給機の運転方法は、
過給機の運転方法であって、
前記過給機は、
内燃機関から排出される排ガスにより駆動するように構成されたタービンと、
前記内燃機関から前記タービンに前記排ガスを導くための排ガス導入ラインと、
前記タービンから前記排ガスを排出するための排ガス排出ラインと、
前記排ガス導入ラインから分岐し、前記タービンを迂回して前記排ガス排出ラインに合流するバイパスラインと、を備え、
前記過給機の運転方法は、
前記排ガス導入ラインから前記バイパスラインに導かれる前記排ガスの圧力が所定圧力を超えたときに、前記バイパスラインにおける前記排ガスの流れを遮断する安全弁の弁体が破壊され、前記安全弁が開放される安全弁開放ステップと、
前記安全弁開放ステップ後に、前記バイパスラインに設けられた前記バイパスラインを開閉するように構成され、前記弁体が破壊されていない通常運転中及び前記弁体の破壊時に開状態が維持される開閉弁を閉じる開閉弁閉止ステップと、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、構造が簡単であり、過給機の過回転を効果的に防止できる過給機の過回転防止装置、内燃機関システム及び過給機の運転方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の一実施形態に係る過給機の過回転防止装置を備える内燃機関システムの模式図である。
図2図1に示される過給機の過回転防止装置を説明するための説明図である。
図3図1に示される過給機の運転方法のタイムチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0014】
(内燃機関システム)
図1は、本開示の一実施形態に係る過給機の過回転防止装置2を備える内燃機関システム1の模式図である。幾つかの実施形態に係る過給機の過回転防止装置2は、過給機3の過回転による損傷から過給機3を保護するためのものである。過給機の過回転防止装置2は、内燃機関システム1に搭載される。内燃機関システム1は、図1に示されるように、内燃機関(エンジン)10と、上述した過給機の過回転防止装置2と、上述した過給機(ターボチャージャ)3と、を備える。過給機3は、図1に示されるように、内燃機関10から排出される排ガスのエネルギにより駆動するように構成されたタービン4と、内燃機関10に導かれる燃焼用気体(例えば、空気)を圧縮するように構成された遠心圧縮機5と、を備える。
【0015】
図示される実施形態では、内燃機関システム1は、図1に示されるように、燃料を貯蔵するように構成された燃料貯蔵タンク11と、燃料貯蔵タンク11に貯蔵された燃料を抜き出して内燃機関10に導くための燃料導入ライン12と、燃焼用気体を遠心圧縮機5に導くための燃焼用気体導入ライン13と、遠心圧縮機5により圧縮された燃焼用気体である圧縮燃焼用気体を内燃機関10に導くための圧縮燃焼用気体導入ライン14と、をさらに備える。燃料としては、例えば、液化天然ガスなどのガス燃料や燃料油などの液体燃料が挙げられる。燃焼用気体としては、例えば、空気が挙げられる。ガス燃料により運転する内燃機関10は、液体燃料により運転する内燃機関10に比べて、内燃機関10から排出される排ガスの排出量の変動が大きい。本開示は、内燃機関10から排出される排ガスの排出量の変動が大きなガス燃料により運転する内燃機関10にも好適に適用可能である。
【0016】
図示される実施形態では、過給機3は、図1に示されるように、内燃機関10から排出される排ガスをタービン4に導くための排ガス導入ライン15と、タービン4から排ガスを排出するための排ガス排出ライン16と、をさらに備える。排ガス導入ライン15は、一端が内燃機関10に接続され、他端がタービン4に接続される。排ガス排出ライン16は、一端がタービン4に接続される。
【0017】
燃料導入ライン12、燃焼用気体導入ライン13、圧縮燃焼用気体導入ライン14、排ガス導入ライン15及び排ガス排出ライン16の各々は、流体を流通させるための流路を形成するものであり、例えば、配管によって形成される。
【0018】
燃料導入ライン12を介して燃料貯蔵タンク11から内燃機関10に送られた燃料、及び、圧縮燃焼用気体導入ライン14を介して遠心圧縮機5から内燃機関10に送られた圧縮燃焼用気体(例えば、圧縮空気)は、内燃機関10における燃焼に供されるようになっている。内燃機関10における燃焼により生じた排ガスは、排ガス導入ライン15を介して内燃機関10からタービン4に送られ、タービン4を駆動させるようになっている。
【0019】
過給機3は、一方側にタービン4が取り付けられ、他方側に遠心圧縮機5が取り付けられた回転シャフト31をさらに備える。遠心圧縮機5は、回転シャフト31を介してタービン4と同軸上に連結されているため、タービン4の駆動に連動して駆動するようになっている。遠心圧縮機5を駆動させることで、燃焼用気体導入ライン13から遠心圧縮機5に燃焼用気体が吸入され、圧縮される。遠心圧縮機5により圧縮された圧縮燃焼用気体は、圧縮燃焼用気体導入ライン14を介して内燃機関10に送られる。タービン4を通過した排ガスは、排ガス排出ライン16を介して内燃機関システム1の外部に排出されるようになっている。
【0020】
(バイパスライン)
過給機3は、図1に示されるように、排ガス導入ライン15から分岐し、タービン4を迂回して排ガス排出ライン16に合流するバイパスライン17をさらに備える。バイパスライン17は、一端が排ガス導入ライン15に接続され、他端が排ガス排出ライン16に接続される。バイパスライン17は、排ガスを流通させるための流路を形成するものであり、例えば、配管によって形成される。
【0021】
(過給機の過回転防止装置)
上述した過給機の過回転防止装置2は、バイパスライン17に設けられた安全弁21と、バイパスライン17に設けられた開閉弁22と、を備える。図示される実施形態では、開閉弁22は、安全弁21よりもバイパスライン17の上記他端側に配置されているが、安全弁21よりもバイパスライン17の上記一端側に配置されていてもよい。
【0022】
安全弁21は、バイパスライン17における排ガスの流れを遮断する弁体23を有する。弁体23は、弁体23よりもバイパスライン17の上記一端側を流れる排ガスに面して、該排ガスの圧力を受ける受圧面231を有する。弁体23は、排ガス導入ライン15からバイパスライン17に導かれる排ガスの圧力、具体的には、弁体23が受ける圧力が所定圧力を超えたときに破壊されるように構成されている。ここで、弁体23の強度は、バイパスライン17に導かれる排ガスの温度が高温になるほど低下するため、上記所定圧力は、弁体23の材質や形状だけでなく、過回転時におけるバイパスライン17に導かれる排ガスの温度(設定温度)を考慮して決定されるようになっていてもよい。
【0023】
図2は、図1に示される過給機3の過回転防止装置2を説明するための説明図である。図3は、図1に示される過給機3の運転方法のタイムチャートの一例を示す図である。図3では、時間Tを横軸とし、縦軸に過給機3、安全弁21及び開閉弁22の動作状態が表されている。図3に示されるNRは、通常運転の過給機3を示すものであり、図3に示されるORは、安全弁21が作動する非常時の過給機3を示すものである。開閉弁22は、バイパスライン17を開閉するように構成されている。図3に示されるように、開閉弁22は、安全弁21が作動する前の通常運転時及び安全弁21の作動時(図3のT1)において開状態が維持されており、排ガスが開閉弁22を通過できるようになっている。
【0024】
非常時の過給機3は、内燃機関10の異常燃焼などによって、タービン4に導かれる排ガスの圧力や流量が通常運転時よりも急激に増加する。タービン4に導かれる排ガスの圧力や流量が急激に増加すると、過給機3に過回転が生じる虞がある。
【0025】
タービン4に導かれる排ガスの圧力が急上昇し、所定圧力を超えた場合において、排ガスの圧力を直接的に受ける安全弁21の弁体23が破壊される。図2に示されるように、安全弁21の弁体23が破壊されると、安全弁21が開放される。
【0026】
安全弁21の弁体23が破壊されると、バイパスライン17の上記一端側と上記他端側との間の圧力差により、バイパスライン17を介して排ガス導入ライン15から排ガス排出ライン16に排ガスが流れる。これにより、タービン4に導かれる排ガスの圧力を低減できるため、過給機3の過回転を抑制できる。開状態の開閉弁22は、弁体23が破壊されたときに、バイパスライン17を流れる排ガスの流れを過度に阻害することがないため、バイパスライン17を介して比較的大量の排ガスを速やかに排ガス排出ライン16に導くことができる。安全弁21の弁体23が破壊された後に、開閉弁22を閉状態とすることで、バイパスライン17における排ガスの流れが遮断される。
【0027】
上記の構成によれば、タービン4に導かれる排ガスの圧力が急上昇し、所定圧力を超えた場合において、安全弁21の弁体23が破壊され、安全弁21が開放される。安全弁21は、弁体23の開度を制御する必要がなく、安全弁21としての機能を排ガスの圧力上昇に対して応答性良く発揮させることができるため、過給機3の過回転を効果的に防止できる。安全弁21の作動後は、開閉弁22を閉じる(図3参照)ことでバイパスライン17における排ガスの流れを遮断できるので、安全弁21としての機能を発揮して弁体23が破壊されても過給機3の運転を継続できる。安全弁21及び開閉弁22を備える過給機3の過回転防止装置2は、構造が簡単であり、過給機3の過回転を効果的に防止できる。
【0028】
幾つかの実施形態では、図1及び図2に示されるように、上述した安全弁21の弁体23は、バイパスライン17における排ガスの流れを遮断する隔壁(ダイアフラム)23Aを含む。図示される実施形態では、隔壁23Aは、金属材料により構成され、バイパスライン17の延在方向に交差する方向に沿って延びる隔膜である。安全弁21は、バイパスライン17に取り付けられ、弁体23である隔壁23Aの外周縁部を支持する弁体支持部24をさらに含む。なお、弁体支持部24は、弁体23を支持するようになっていればよく、図示される形状に限定されるものではない。
【0029】
上記の構成によれば、隔壁23Aは、排ガスの圧力上昇に対する応答性が良好である。このため、隔壁23Aを弁体23とすることで、安全弁21としての機能を排ガスの圧力上昇に対して応答性良く発揮させることができる。
【0030】
本開示の幾つかの実施形態に係る過回転防止装置2は、上述した内燃機関10が船舶に搭載される主機エンジン10Aからなる場合に好適に適用可能である。なお、過回転防止装置2は、内燃機関10が自動車用のエンジンや陸上に設置された発電用のエンジンにも適用可能である。
【0031】
幾つかの実施形態では、上述した内燃機関システム1は、上記船舶に搭載される。内燃機関システム1は、図1に示されるように、上述した主機エンジン10Aと、主機エンジン10Aに取り付けられる上述した過給機3と、過給機3に取り付けられる上述した過回転防止装置2と、を備える。
【0032】
上記の構成によれば、主機エンジン10Aを搭載する船舶は、例えば運河などの運航速度に制限が設けられる海域を通過する際に、主機エンジン10Aに未燃燃料が溜まることがある。この主機エンジン10Aは、上記海域から離れて船舶の運航速度を上昇させた際に急激な燃焼変化が生じることがある。主機エンジン10Aに取り付けられる過給機3に過回転防止装置2を設けることで、主機エンジン10Aが急激な燃焼変化を生じたとしても、過給機3の過回転を効果的に防止できる。主機エンジン10Aに取り付けられた過給機3に過回転が生じると、主機エンジン10Aの運転を停止させる必要がある。主機エンジン10Aの運転を停止させると、上記船舶の運転を継続させることが困難となる。過回転防止装置2を備える内燃機関システム1は、安全弁21の作動後も過給機3や主機エンジン10Aを停止させずに運転を継続させることができるため、上記船舶の運転を継続させることができる。
【0033】
幾つかの実施形態に係る過給機3の運転方法は、図1に示されるような、上述した過回転防止装置2が設けられた過給機3の運転方法である。過給機3の運転方法は、図3に示されるように、安全弁開放ステップS1と、開閉弁閉止ステップS2と、を備える。
【0034】
安全弁開放ステップS1では、排ガス導入ライン15からバイパスライン17に導かれる排ガスの圧力が所定圧力を超えたときに、バイパスライン17における排ガスの流れを遮断する安全弁21の弁体23が破壊され、安全弁21が開放されることが行われる。
【0035】
開閉弁閉止ステップS2では、安全弁開放ステップS1後に、上述した開閉弁22を閉じることが行われる。開閉弁閉止ステップS2は、安全弁21の作動時(図3のT1)よりも後の、タービン4に導かれる排ガスの圧力や流量が通常運転時に戻った後(図3のT2以降)に行われる。開閉弁22は、開閉弁閉止ステップS2よりも前(図3のT2よりも前)、すなわち弁体23が破壊されていない通常運転中及び弁体23の破壊時、は開状態が維持されている。
【0036】
上記の方法によれば、安全弁開放ステップS1では、タービン4に導かれる排ガスの圧力が急上昇し、所定圧力を超えた場合において、排ガスの圧力を直接的に受ける安全弁21の弁体23が破壊される。安全弁21は、弁体23の開度を制御する必要がなく、安全弁21としての機能を排ガスの圧力上昇に対して応答性良く発揮させることができるため、過給機3の過回転を効果的に防止できる。開閉弁閉止ステップS2では、安全弁21の作動後に開閉弁22を閉じることでバイパスライン17における排ガスの流れを遮断できるので、安全弁21としての機能を発揮して弁体23が破壊されても過給機3の運転を継続できる。
【0037】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0038】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0039】
上述した幾つかの実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握されるものである。
【0040】
1)本開示の少なくとも一実施形態に係る過給機の過回転防止装置(2)は、
過給機(3)の過回転を防止するための過給機(3)の過回転防止装置(2)であって、
前記過給機(3)は、
内燃機関(10)から排出される排ガスにより駆動するように構成されたタービン(4)と、
前記内燃機関(10)から前記タービン(4)に前記排ガスを導くための排ガス導入ライン(15)と、
前記タービン(4)から前記排ガスを排出するための排ガス排出ライン(16)と、
前記排ガス導入ライン(15)から分岐し、前記タービン(4)を迂回して前記排ガス排出ライン(16)に合流するバイパスライン(17)と、を備え、
前記過給機の過回転防止装置(2)は、
前記バイパスライン(17)に設けられ、前記バイパスライン(17)における前記排ガスの流れを遮断する安全弁(21)であって、前記排ガス導入ライン(15)から前記バイパスライン(17)に導かれる前記排ガスの圧力が所定圧力を超えたときに破壊されるように構成された弁体(23)を有する安全弁(21)と、
前記バイパスライン(17)に設けられ、前記バイパスライン(17)を開閉するように構成された開閉弁(22)と、を備える。
【0041】
上記1)の構成によれば、タービン(4)に導かれる排ガスの圧力が急上昇し、所定圧力を超えた場合において、安全弁(21)の弁体(23)が破壊され、安全弁(21)が開放される。安全弁(21)は、弁体(23)の開度を制御する必要がなく、安全弁(21)としての機能を排ガスの圧力上昇に対して応答性良く発揮させることができるため、過給機(3)の過回転を効果的に防止できる。安全弁(21)の作動後は、開閉弁(22)を閉じることでバイパスライン(17)における排ガスの流れを遮断できるので、安全弁(21)としての機能を発揮して弁体(23)が破壊されても過給機(3)の運転を継続できる。安全弁(21)及び開閉弁(22)を備える過給機(3)の過回転防止装置(2)は、構造が簡単であり、過給機(3)の過回転を効果的に防止できる。
【0042】
2)幾つかの実施形態では、上記1)に記載の過給機の過回転防止装置(2)であって、
前記安全弁(21)の前記弁体(23)は、前記バイパスライン(17)における前記排ガスの流れを遮断する隔壁(23A)を含む。
【0043】
上記2)の構成によれば、隔壁(23A)は、排ガスの圧力上昇に対する応答性が良好である。このため、隔壁(23A)を弁体(23)とすることで、安全弁(21)としての機能を排ガスの圧力上昇に対して応答性良く発揮させることができる。
【0044】
3)本開示の少なくとも一実施形態に係る内燃機関システム(1)は、
上記1)又は2)に記載の過給機の過回転防止装置(2)と、
前記過給機(3)と、
前記内燃機関(10)と、を備え、
前記内燃機関(10)は、船舶に搭載される主機エンジン(10A)からなる。
【0045】
上記3)の構成によれば、主機エンジン(10A)を搭載する船舶は、例えば運河などの運航速度に制限が設けられる海域を通過する際に、主機エンジン(10A)に未燃燃料が溜まることがある。この主機エンジン(10A)は、上記海域から離れて船舶の運航速度を上昇させた際に急激な燃焼変化が生じることがある。主機エンジン(10A)に取り付けられる過給機(3)に過回転防止装置(2)を設けることで、主機エンジン(10A)が急激な燃焼変化を生じたとしても、過給機(3)の過回転を効果的に防止できる。主機エンジン(10A)に取り付けられた過給機(3)に過回転が生じると、主機エンジン(10A)の運転を停止させる必要がある。主機エンジン(10A)の運転を停止させると、上記船舶の運転を継続させることが困難となる。過回転防止装置(2)を備える内燃機関システム(1)は、安全弁(21)の作動後も過給機(3)や主機エンジン(10A)を停止させずに運転を継続させることができるため、上記船舶の運転を継続させることができる。
【0046】
4)本開示の少なくとも一実施形態に係る過給機の運転方法は、
過給機(3)の運転方法であって、
前記過給機(3)は、
内燃機関(10)から排出される排ガスにより駆動するように構成されたタービン(4)と、
前記内燃機関(10)から前記タービン(4)に前記排ガスを導くための排ガス導入ライン(15)と、
前記タービン(4)から前記排ガスを排出するための排ガス排出ライン(16)と、
前記排ガス導入ライン(15)から分岐し、前記タービン(4)を迂回して前記排ガス排出ライン(16)に合流するバイパスライン(17)と、を備え、
前記過給機の運転方法は、
前記排ガス導入ライン(15)から前記バイパスライン(17)に導かれる前記排ガスの圧力が所定圧力を超えたときに、前記バイパスライン(17)における前記排ガスの流れを遮断する安全弁(21)の弁体(23)が破壊され、前記安全弁(21)が開放される安全弁開放ステップ(S1)と、
前記安全弁開放ステップ(S1)後に、前記バイパスライン(17)に設けられた前記バイパスライン(17)を開閉するように構成され、前記弁体(23)が破壊されていない通常運転中及び前記弁体(23)の破壊時に開状態が維持される開閉弁(22)を閉じる開閉弁閉止ステップ(S2)と、を備える。
【0047】
上記4)の方法によれば、安全弁開放ステップ(S1)では、タービン(4)に導かれる排ガスの圧力が急上昇し、所定圧力を超えた場合において、排ガスの圧力を直接的に受ける安全弁(21)の弁体(23)が破壊される。安全弁(21)は、弁体(23)の開度を制御する必要がなく、安全弁(21)としての機能を排ガスの圧力上昇に対して応答性良く発揮させることができるため、過給機(3)の過回転を効果的に防止できる。開閉弁閉止ステップ(S2)では、安全弁(21)の作動後に開閉弁(22)を閉じることでバイパスライン(17)における排ガスの流れを遮断できるので、安全弁(21)としての機能を発揮して弁体(23)が破壊されても過給機(3)の運転を継続できる。
【符号の説明】
【0048】
1 内燃機関システム
2 過回転防止装置
3 過給機
4 タービン
5 遠心圧縮機
10 内燃機関
10A 主機エンジン
11 燃料貯蔵タンク
12 燃料導入ライン
13 燃焼用気体導入ライン
14 圧縮燃焼用気体導入ライン
15 排ガス導入ライン
16 排ガス排出ライン
17 バイパスライン
21 安全弁
22 開閉弁
23 弁体
23A 隔壁
24 弁体支持体
31 回転シャフト
231 受圧面
S1 安全弁開放ステップ
S2 開閉弁閉止ステップ
図1
図2
図3