(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128232
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】パワーステアリング装置
(51)【国際特許分類】
B62D 3/06 20060101AFI20240913BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240913BHJP
F16H 1/16 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B62D3/06
B62D5/04
F16H1/16 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037096
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】596148478
【氏名又は名称】クノールブレムゼ商用車システムジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】吉武 敦
(72)【発明者】
【氏名】中村 慎二
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 智嗣
(72)【発明者】
【氏名】杉本 直也
【テーマコード(参考)】
3D333
3J009
【Fターム(参考)】
3D333CB03
3D333CB22
3D333CB52
3D333CC14
3D333CC15
3D333CD05
3D333CD14
3D333CD16
3D333CD17
3D333CE03
3D333CE10
3J009DA03
3J009DA04
3J009DA05
3J009EA15
3J009EA19
3J009EA23
3J009EB24
3J009EC06
3J009ED12
3J009ED14
3J009FA08
3J009FA14
(57)【要約】
【課題】パワーステアリング装置において調心機構の製造コストの増加を抑制する。
【解決手段】調心機構39が、ウォームシャフト21を回転可能に保持する第3ボールベアリングBb3と、ウォームホイール22側に第3ボールベアリングBb3を付勢可能な板状ばね部材56と、第3ボールベアリングBb3および板状ばね部材56を保持するホルダ部材57とを備える。ホルダ部材57の軸方向一端部57aのうち薄肉部57pと径方向に対向する部位には、ホルダ部材57の内周面57gから径方向内側へ張り出した一端側張り出し部57rが形成されている。第3ボールベアリングBb3がホルダ部材57に保持された状態では、第3ボールベアリングBb3のアウタレース59の軸方向一端側の面59bが一端側張り出し部57rの当接面57zに当接している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイールの操舵操作を転舵輪に伝達する操舵機構と、
前記操舵機構に操舵力を付与する電動モータと、
前記電動モータの回転力を前記操舵機構に伝達する減速機であって、前記電動モータ側に設けられたウォームシャフトと、前記操舵機構側に設けられ、前記ウォームシャフトと噛み合うウォームホイールとを有する、前記減速機と、
前記ウォームシャフトを収容するシャフト収容部と、前記ウォームホイールを収容するホイール収容部とを有するハウジングと、
前記シャフト収容部の長手方向両端部のうち前記電動モータが設けられている側と反対側に設けられた空間であるホルダ収容部と、
前記ウォームシャフトの軸方向両端部のうち前記電動モータが設けられている側と反対側において前記ウォームシャフトを回転可能に保持する軸受と、
前記ホルダ収容部に設けられ、内側に前記軸受を収容する軸受収容部を有する円筒状のホルダ部材であって、このホルダ部材の軸方向両端部のうち前記電動モータ側に位置する軸方向端部の内周から径方向内側に張り出した張り出し部を有し、該張り出し部は前記軸受に当接する、前記ホルダ部材と、
前記ホルダ収容部に設けられ、前記軸受の外周に弾性的に当接する円弧状をなす板状の付勢部材であって、前記ウォームシャフトが前記ウォームホイールから離間する方向の力を受けたときに、前記ウォームホイール側に前記軸受を付勢する、前記付勢部材と、
を備えることを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーステアリング装置であって、
前記ホルダ部材は、その外周部から前記ホルダ部材の径方向外側に突出した凸部を有し、前記凸部は、前記ホルダ収容部に設けられた溝部に嵌め込まれることを特徴とするパワーステアリング装置。
【請求項3】
請求項1に記載のパワーステアリング装置であって、
前記ホルダ部材は、該ホルダ部材の内部と外部とを連通させる一対のスロットと、該一対のスロットを仕切る仕切り壁部とを有しており、
前記付勢部材は、前記仕切り壁部によって支持されていることを特徴とするパワーステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーステアリング装置として、以下の特許文献1に記載されたパワーステアリング装置が知られている。
【0003】
特許文献1のパワーステアリング装置では、ウォームホイールとウォームシャフトのウォームとのバックラッシュを調整するために、調心機構がウォームシャフトの軸方向一端部の外周部に設けられている。この調心機構は、軸受と、該軸受の周囲に配置され、該軸受をウォームホイール側に付勢する付勢部材と、軸受および付勢部材を収容するホルダ部材と、該ホルダ部材を収容し、ウォームシャフト用ハウジングの内周面に圧入されるキャップ部材と、ホルダ部材とキャップ部材との間に配置されたOリングとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のパワーステアリング装置では、調心機構が、軸受、付勢部材、ホルダ部材、キャップ部材およびOリングからなる比較的多くの部品点数によって構成されているため、調心機構の製造コストが増加してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みて案出されたものであり、調心機構の製造コストの増加を抑制可能なパワーステアリング装置を提供することを1つの目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明では、パワーステアリング装置は、ホルダ収容部に設けられ、内側に軸受を収容する軸受収容部を有する円筒状のホルダ部材を有し、該ホルダ部材は、軸方向両端部のうち電動モータ側に位置する軸方向端部の内周から径方向内側に張り出した張り出し部を有し、張り出し部は軸受に当接する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パワーステアリング装置において、調心機構の製造コストの増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ステアリングホイール側から見たときのパワーステアリング装置の部分断面図である。
【
図2】
図1の線A-Aに沿って切断したパワーステアリング装置の縦断面図である。
【
図3】
図2のステアリング装置の部分的な拡大断面図である。
【
図5】(a)は、
図4の線B-Bに沿って切断した調心機構の断面図、(b)は、(a)の線C-Cに沿って切断した調心機構の断面図である。
【
図6】(a)は、突起部側から見たときのホルダ部材の正面図、(b)は、(a)の線D-Dに沿って切断したホルダ部材の断面図、(c)は、ホルダ部材の背面図である。
【
図7】突起部側から見たときのホルダ部材の斜視図である。
【
図8】突起部とは反対側から見たときのホルダ部材の斜視図である。
【
図9】
図4と同じ視点から見たときのホルダ部材の斜視図である。
【
図10】
図9の奥側から見たときのホルダ部材の斜視図である。
【
図12】(a)は、ホルダ部材の成型工程図、(b)は、型抜き工程図である。
【
図13】(a)は、ホルダ部材の配置工程図、(b)は、板状ばね部材の組み付け工程図、(c)は、第3ボールベアリングの挿入工程図、(d)は、完成後の調心機構を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明のパワーステアリング装置の一実施形態について説明する。
【0011】
図1は、ステアリングホイール側から見たときのパワーステアリング装置の部分断面図である。
図2は、
図1の線A-Aに沿って切断したパワーステアリング装置の縦断面図、
図3は、
図2のステアリング装置の部分的な拡大断面図である。
図2では、説明の便宜上、操舵軸7の長手方向を「軸方向」と定義し、操舵軸7と直交する方向を「径方向」と定義し、さらに、操舵軸7の周囲の方向を「周方向」と定義する。また、軸方向のうち図示せぬステアリングホイールに連係する側(各図中の上側)「一端」とし、ピストン28に連係する側(各図中の下側)を「他端」として説明する。なお、
図2では、電動モータ2、EPSコントローラ3およびウォームシャフト21等を破線で示してある。
【0012】
ステアリング装置は、大型車両等に用いられるインテグラル型のステアリング装置であり、ステアリング装置本体1、電動モータ2およびEPSコントローラ(ECU)3から主に構成されている。
【0013】
ステアリング装置本体1は、操舵機構4と、セクタシャフト5と、パワーシリンダ6と、を備えている。
【0014】
操舵機構4は、図示せぬステアリングホイールからの操舵操作(回転力)の入力に供するものであり、操舵軸7を有している。操舵軸7は、一部がハウジング8内に収容されており、入力軸9、接続軸10、中間軸11および出力軸12を備えている。
【0015】
入力軸9は、円筒状に形成されており、一端側がステアリングホイールに連係されており、運転者の操舵トルクの入力に供する。また、
図2および
図3に示すように、入力軸9は、他端部が概ね円筒状の接続軸10内に挿入されている。入力軸9の外周部には、軸方向中央に、第1ニードルベアリングNb1を収容する第1環状収容溝9aが形成されており、軸方向他端に、第2ニードルベアリングNb2を収容する環状窪み部9bが形成されている。入力軸9は、第1および第2ニードルベアリングNb1,Nb2を介して接続軸10の内周面によって回転可能に支持されている。
【0016】
接続軸10は、一端側で入力軸9の他端部を収容し、さらに、他端側がスプライン部13を介して中間軸11に連結されることで入力軸9と中間軸11とを接続する。なお、接続軸10の他端側は、スプライン部13ではなく、ねじ部を介して中間軸11に接続されても良い。
図2および
図3に示すように、接続軸10は、一端側から他端側にかけて段差縮径状に連続する円筒状をなしており、一端側に位置する大径円筒部10aと、該大径円筒部10aと一体に形成され、大径円筒部10aよりも小径に形成された小径円筒部10bと、を有している。大径円筒部10aの外周部の軸方向中央よりも僅かに上方の位置には、径方向外側に突出する円環状をなす円環状突出部10cが形成されている。
【0017】
図3に示すように、円環状突出部10cの径方向端面には、一端側に段差縮形状に設けられた段部10dが設けられており、該段部10dとハウジング8の一部を構成する入力側ハウジング14の内周壁との間に、接続軸10を回転可能に支持する第1ボールベアリングBb1が設けられている。第1ボールベアリングBb1は、ボルト15を介して入力側ハウジング14に固定される際に生じる締め付け力により、入力側ハウジング14に設けられた段差部14aに対して第1ボールベアリングBb1のアウタレース17を留め輪16によって一端側へ押し付けることで入力側ハウジング14に固定されている。
【0018】
また、小径円筒部10bの外周部は、円筒状の中間軸11の後述の小径凹部20bの内周部にスプライン部13を介して固定されている。
【0019】
中間軸11は、一端側が第1トーションバー18を介して入力軸9と相対回転可能に連結されるとともに、外周部に設けられた減速機19を介した電動モータ2の駆動トルクの入力に供する。中間軸11の軸方向一端面11aには、接続軸10の円環状突出部10cよりも他端側の部位を収容する収容凹部20が一端側に向かって開口形成されている。収容凹部20は、一端側に位置し、接続軸10の大径円筒部10aの他端側の外径に対応した内径を有する円形の大径凹部20aと、該大径凹部20aと軸方向に隣接し、小径円筒部10bの外径に対応した内径を有する円形の小径凹部20bと、を備えている。中間軸11の一端側の外周部には、電動モータ2に接続され、ウォームシャフト21とウォームホイール22とを噛み合わせてなるウォームギヤからなる減速機19が設けられている。
【0020】
ウォームホイール22は、入力側ハウジング14に設けられたホイール収容部14b内に収容されている。ウォームホイール22は、円筒状をなす金属製の芯金部23と、該芯金部23の一端側の外周部に設けられた合成樹脂製の斜歯部24と、を有している。なお、斜歯部24は、金属材料によって形成されても良い。斜歯部24は、ウォームシャフト21の外周に形成されたウォームと噛み合う。
【0021】
また、芯金部23の他端側の外周部には、斜歯部24とウォームとの噛み合い部から漏れたグリスの出力軸12側への侵入および拡散を防止する環状のグリス拡散防止部材25が設けられている。グリス拡散防止部材25は、斜歯部24の外径よりも大きな外径を有し、例えば圧入によって芯金部23の下端側の外周部に固定されている。
【0022】
また、中間軸11の他端側は、出力軸12の一端側拡径部に形成された開口凹部12a内に挿入されている。出力軸12は、一端側が第2トーションバー26を介して中間軸11と相対回転可能に連結され、この中間軸11により入力される操舵トルクを、変換機構であるボールねじ機構27を介してピストン28に出力する。
【0023】
ボールねじ機構27は、他端側の外周部に螺旋溝であるボール溝27aが形成されたねじ軸としての上記出力軸12と、該出力軸12の外周側に設けられて内周部にボール溝27aに対応する螺旋溝であるボール溝27bが形成されたナットとしての上記ピストン28と、該ピストン28と出力軸12との間に設けられた複数のボール27c(
図2に一部を破線で示す)と、から構成されている。
【0024】
中間軸11と出力軸12との間には、コントロールバルブとしての周知のロータリバルブ29が構成されている。ロータリバルブ29は、中間軸11および出力軸12の相対回転角により導き出される第2トーションバー26の捩れ量および捩れの方向に応じて車両に搭載された図示せぬポンプ装置により供給される作動液を後述する第1、第2液室(圧力室)P1,P2へと選択的に供給する。
【0025】
セクタシャフト5は、セクタギヤ5aを有し、該セクタギヤ5aが操舵軸7の他端側外周に設けられたピストン28のラック歯28aと噛み合うことにより、ピストン28の軸方向移動に伴って回動する。セクタシャフト5は、図示せぬピットマンアームを介して転舵輪に連係され、転舵に供する。
【0026】
このように、上記ボールねじ機構27、セクタシャフト5およびピットマンアームは、操舵軸7に入力された回転力(操舵力)を転舵輪の転舵力へと変換させる伝達機構を構成する。なお、ボールねじ機構27等を用いずにステアリング装置が構成される場合には、上記伝達機構として、例えばラック&ピニオン機構を構成するラックバー、ピニオン軸等を用いることができる。
【0027】
パワーシリンダ6は、ハウジング8内において摺動可能に収容された筒状のピストン28が一対の液室である第1、第2液室P1,P2を画定することによって構成されており、操舵トルクを補助するアシストトルクを生成する油圧アクチュエータである。
【0028】
電動モータ2は、第1トーションバー18の捩じれ量に応じて中間軸11に回転トルクを付与する3相交流式のブラシレスモータとして構成されている。
図1および
図2に示すように、電動モータ2は、EPSコントローラ3と一体に構成されており、入力軸9等を収容する入力側ハウジング14と一体に形成された円筒状のモータ用ハウジング30内に収容されている。
図1に示すように、電動モータ2は、モータシャフト31を有しており、このモータシャフト31のうちEPSコントローラ3が設けられている側と反対側の軸方向端部が、モータ側カップリング32およびウォーム側カップリング33を介してウォームシャフト21に接続されている。ウォームシャフト21は、概ね円筒状のウォームシャフト用ハウジング34に設けられたシャフト収容部34a内に収容されており、このウォームシャフト用ハウジング34は、接続部材35を介してモータ用ハウジング30に接続されている。
【0029】
ここで、以下の説明の便宜上、
図1において、ウォームシャフト21の両端部のうち電動モータ2が設けられている側の端部を「一端部21a」と定義し、一方、電動モータ2が設けられている側と反対側の端部を「他端部21b」と定義する。
【0030】
図1に示すように、ウォームシャフト21の一端部21a寄りの外周部には、ウォームシャフト21を回転可能に支持する軸受である深溝玉軸受36が設けられている。深溝玉軸受36の外周部(アウタレース)の軸方向他端部が、ウォームシャフト用ハウジング34の内周部に設けられた段部34bに当接しており、一方、深溝玉軸受36の内周部(インナレース)の軸方向他端部が、ウォームシャフト21の外周部に設けられた段部21cに当接している。また、深溝玉軸受36の外周部の軸方向一端部に隣接した位置には、段部34bに対して深溝玉軸受36の外周部を押圧して深溝玉軸受36を保持する円筒状の第1押圧部材37が設けられている。第1押圧部材37の外周面には雄ねじ部が設けられており、この雄ねじ部が、ウォームシャフト用ハウジング34の内周面に設けられた雌ねじ部にねじ留めされることで、深溝玉軸受36の外周部が段部34bと第1押圧部材37との間で保持される。また、深溝玉軸受36の内周部の軸方向一端部に隣接した位置には、段部21cに対して深溝玉軸受36の内周部を押圧して深溝玉軸受36を保持する円環状の第2押圧部材38が設けられている。第2押圧部材38の内周面には雌ねじ部が設けられており、この雌ねじ部が、ウォームシャフト21の外周面に設けられた雄ねじ部にねじ留めされることで、深溝玉軸受36の内周部が段部21cと第2押圧部材38との間で保持される。
【0031】
ウォームシャフト21の外周のうち他端部21b寄りの部位には、ウォームが一体に形成されており、該ウォームは、ウォームホイール22の斜歯部24と噛み合っている。
【0032】
また、ウォームシャフト21の他端部21bには、ウォームホイール22の回転によりウォームシャフト21がウォームホイール22から離間する方向に押されたときにウォームシャフト21をウォームホイール22側へ押し戻すことでバックラッシュを調整可能な調心機構39が設けられている。この調心機構39は、シャフト収容部34aの長手方向両端部のうち電動モータ2が設けられている側と反対側に設けられた空間である調心機構収容部(ホルダ収容部)34cに収容される。より詳細には、調心機構39は、調心機構39の後述の金属製のホルダ部材57の外周部が調心機構収容部34cの内周面に圧入されることによりウォームシャフト用ハウジング34の内周面に固定されている。調心機構39の具体的な構成については、後に詳細に説明される。
【0033】
図1に示されるように、ウォームシャフト用ハウジング34の軸方向両端部34d,3eのうち電動モータ2とは反対側に位置する軸方向両端部34eの内周部には、段差縮径状に形成された縮径部34fが形成されている。この縮径部34fには、呼吸弁40が設けられており、この呼吸弁40は、モータ用ハウジング30内の電動モータ2の各種電子部品の発熱により膨張した空気を、ウォームシャフト用ハウジング34内に通流させてから外部に逃がす。
【0034】
図3に示すように、トルクセンサ41は、第1トーションバー18が環状のトルクセンサ41の内部を貫通した状態で、接続軸10の円環状突出部10cよりも一端側の外周部の周囲に設けられている。トルクセンサ41は、永久磁石42と、一対の第1、第2ヨーク43,44と、一対の第1、第2集磁リング45,46と、磁気センサ47と、から主に構成されている。永久磁石42、ヨーク43,44および集磁リング45,46は、いずれも操舵軸7の回転中心線とほぼ同心円上となるように配置されている。
【0035】
永久磁石42は、磁性材料によりほぼ円筒状に形成され、接続軸10の一端部外周に取付固定された磁性部材である。永久磁石42は、該永久磁石42の周方向に沿ってN極とS極が交互に配置(着磁)されることで構成されている。
【0036】
一対のヨーク43,44は、いずれも軟磁性体によりほぼ円筒状に形成されている。このヨーク43,44は、それぞれ中間軸11側となる一端側が周方向に沿って一列に整列し、永久磁石42と径方向で対向するように設けられている。一方、他端側は、ヨーク43が内周側に配置され、ヨーク44が外周側に配置されることで、径方向に対向している。
【0037】
一対の集磁リング45,46は、両ヨーク43,44の他端側へと漏洩した永久磁石42による磁束を所定の範囲に集約するほぼ円環状のリングであり、ヨーク43,44の他端側の径方向間に配置される。集磁リング45は外周側に配置され、集磁リング46は内周側に配置されており、両者は径方向に対向している。集磁リング45,46の径方向間には、ホール素子48が配置されている。集磁リング45の周方向の所定位置には、径方向内側へ押圧されてなる集磁部45aが設けられており、一方、集磁リング46の周方向における集磁部45aと対向する位置には、径方向外部へ突出させてなる集磁部46aが設けられている。
【0038】
磁気センサ47は、集磁部45aと集磁部46aとの間の径方向隙間に収容配置されたホール素子48と、このホール素子48をトルクセンサ41の上方に配置された制御基板49に接続するための接続端子50と、から構成されている。磁気センサ47は、ホール素子48によるホール効果を利用することでホール素子48により集磁部45a,46aの間を通過する磁束を検出し、この磁束に応じた信号を制御基板49に出力する。これにより、制御基板49における入力軸9と中間軸11との間の相対回転角の演算や、該相対回転角に基づく操舵トルクの演算が行われる。
【0039】
ハウジング8は、一端側が開口し他端側が閉塞されてなる筒状をなし、第1、第2液室P1,P2を画定する出力側ハウジング51と、該出力側ハウジング51の一端開口部を閉塞するように設けられ、内部に出力軸12等を収容する中間ハウジング52と、該中間ハウジング52に連結され、入力軸9、接続軸10、中間軸11の一部およびトルクセンサ41を収容する上述の入力側ハウジング14と、から構成されている。
【0040】
出力側ハウジング51の内部には、操舵軸7の軸方向に沿って形成されたパワーシリンダ本体部51aと、該パワーシリンダ本体部51aと直交するように、かつ、一部がパワーシリンダ本体部51aへと臨むように形成されたシャフト部51bと、が設けられている。パワーシリンダ本体部51a内には、出力軸12に連係するピストン28が収容されることで、ピストン28をもって一端側の第1液室P1と他端側の第2液室P2とが画定されている。また、シャフト部51b内には、軸方向一端側がピストン28に連係すると共に他端側が図示せぬピットマンアームを介して転舵輪に連係されるセクタシャフト5が収容されている。
【0041】
ピストン28およびセクタシャフト5の各外周部には、相互に噛み合い可能なラック歯28aおよびセクタギヤ5aが設けられている。ラック歯28aおよびセクタギヤ5aが噛み合うことによりピストン28の軸方向移動に伴ってセクタシャフト5が回動し、これにより、ピットマンアームが車体幅方向に引っ張られることで、転舵輪の向きが変更される。
【0042】
図2に示すように、中間ハウジング52の内周側には、互いに重なり合う中間軸11および出力軸12が挿入される軸挿入孔52aが、一端側から他端側へと軸方向に沿って段差縮径状に貫通している。そして、一端側の大径部には出力軸12を回転可能に支持する軸受Bnが設けられている。一方、他端側の小径部には、図示せぬポンプ装置と連通する導入ポート53と、該導入ポート53より導入された液圧を各液室P1,P2に給排する給排ポート54と、該給排ポート54を介して各液室P1,P2から排出された作動液を図示せぬリザーバタンクへ排出する排出ポート55と、が設けられている。なお、給排ポート54は、出力軸12の一端側拡径部に設けられた第1給排通路L1を介して第1液室P1と連通するとともに、出力側ハウジング51内部に設けられた第2給排通路L2等を介して第2液室P2と連通している。
【0043】
かかる構成から、ステアリング装置では、運転者がステアリングホイールを操舵すると、ポンプ装置により圧送された作動液がロータリバルブ29を介して操舵方向に応じた一方側の液室P1,P2に供給されるとともに、他方側の液室P1,P2から供給量に対応する作動液(余剰分)がリザーバタンクへと排出される。そして、当該液圧によりピストン28が駆動される結果、ピストン28に作用する液圧に基づいたアシストトルクがセクタシャフト5へと付与される。
【0044】
図4は、調心機構39の斜視図である。
図5(a)は、
図4の線B-Bに沿って切断した調心機構39の断面図、
図5(b)は、
図5(a)の線C-Cに沿って切断した調心機構39の断面図である。なお、説明の都合上、
図5(a)は、
図4の線B-Bに沿って調心機構39を切断した後に上下反転させた向きの調心機構39を示している。
図6(a)は、突起部57m側から見たときのホルダ部材57の正面図、
図6(b)は、
図6(a)の線D-Dに沿って切断したホルダ部材57の断面図、
図6(c)は、ホルダ部材57の背面図である。
図7は、突起部57m側から見たときのホルダ部材57の斜視図である。
図8は、突起部57mとは反対側から見たときのホルダ部材57の斜視図である。
図9は、
図4と同じ視点から見たときのホルダ部材57の斜視図である。
図10は、
図9の奥側から見たときのホルダ部材57の斜視図である。
図11は、板状ばね部材56の平面図である。
【0045】
調心機構39は、ウォームシャフト21を回転可能に保持する軸受である第3ボールベアリングBb3と、ウォームホイール22側に第3ボールベアリングBb3を付勢可能な付勢部材である板状ばね部材56と、
図4に示すように第3ボールベアリングBb3および板状ばね部材56を収容および保持するホルダ部材57とを備えている。
【0046】
図5(a)および
図5(b)に示すように、第3ボールベアリングBb3は、円環状のインナレース58と、該インナレース58よりも大径に形成され、インナレース58の外周側に配置されるアウタレース59と、インナレース58とアウタレース59との間に配置される複数のボール60とを有している。
【0047】
板状ばね部材56は、金属からなる細長い板状部材を、
図5(b)および
図11に示すように概ねC字状に湾曲させることにより形成されている。
図11に示すように、板状ばね部材56は、後述の第1仕切り壁部64の平面部64aおよび一対の曲面部64b,64cの形状に概ね追従した形状を有する被支持部56aと、該被支持部56aの一端から円弧状に延びる第1円弧部56bと、該第1円弧部56bの先端から内側へ折れ曲がってから外側に折れ曲がり、径方向断面(ホルダ部材57の径方向に沿った断面)が概ねV字状をなす第1付勢部56cと、被支持部56aの他端から円弧状に延びる第2円弧部56dと、該第2円弧部56dの先端から内側へ折れ曲がってから外側へ折れ曲がり、径方向断面が概ねV字状をなす第2付勢部56eと、第2円弧部56dの外周部から外側へ分岐し、円弧状に延びる分岐部56fと、該分岐部56fの先端から内側に折れ曲がってから外側に折れ曲がり、径方向断面が概ねV字状をなす折れ曲がり部56gとを有している。
【0048】
被支持部56aは、ホルダ部材57の後述の第1仕切り壁部64に嵌まることで第1仕切り壁部64に支持される。
【0049】
第1付勢部56cは、第3ボールベアリングBb3の外周面と接触し、ウォームホイール22側(
図5(b)において第1仕切り壁部64側)へ第3ボールベアリングBb3を付勢する第1円弧面部56hを有している。
【0050】
同様に、第2付勢部56eは、第3ボールベアリングBb3の外周面と接触し、ウォームホイール22側へ第3ボールベアリングBb3を付勢する第2円弧面部56iを有している。
【0051】
分岐部56fは、第2円弧部56dの周方向長さの半分程度の長さを有しており、折れ曲がり部56gに接続されている側の第2円弧部56dの部分を外側から覆っている。
【0052】
また、折れ曲がり部56gは、第1および第2付勢部56c,56eとほぼ同様の形状を有しており、第2付勢部56eの外側に位置している。
【0053】
ホルダ部材57は、後述するホルダ部材製造装置69に金属材料を流し込んで成形することにより概ね円筒状に形成されている。ここで、以下の説明の便宜上、ホルダ部材57の軸方向両端部(
図6(b)の左右方向における両端部)のうち
図6(b)の右側の軸方向端部を「軸方向一端部57a」と定義し、一方、
図6(b)の左側の軸方向端部を「軸方向他端部57b」と定義する。また、円筒状のホルダ部材57の中心Oを通り、
図6(a)および
図6(c)の上下方向に延びる中心線を「第1中心線CL1」と定義し、一方、ホルダ部材57の中心Oを通り、第1中心線CL1と直交する中心線を「第2中心線CL2」と定義する。
【0054】
図6(a)および
図6(c)に示すように、ホルダ部材57の外周面57cには、該外周面57cからホルダ部材57の径方向外側へ半円弧状に突出した凸部である第1~第3半円弧状凸部57d,57e,57fが突出形成されている。第1半円弧状凸部57dは、ホルダ部材57の外周面57cにおいて第1中心線CL1とオーバーラップする位置に形成されている。また、第2半円弧状凸部57eは、例えば
図6(c)に示すように第1半円弧状凸部57dから所定の角度、本実施形態では約65度だけ時計方向にずれた位置に形成されている。また、第3半円弧状凸部57fは、例えば
図6(c)に示すように第1半円弧状凸部57dから所定の角度、本実施形態では約65度だけ反時計方向にずれた位置に形成されている。第2半円弧状凸部57eおよび第3半円弧状凸部57fは、第1中心線CL1に対して左右対称となる位置に配置されている。また、
図7および
図10に示すように、第1半円弧状凸部57dは、後述の第1スロット62および第2スロット63の幅に対応した部分以外が、軸方向一端部57aから軸方向他端部57b近傍にかけて直線状に延びており、軸方向他端部57b側の端部が先細りの形状となっている。一方、
図7および
図10に示すように、第2および第3半円弧状凸部57e,57fは、軸方向一端部57aから軸方向他端部57b近傍にかけて直線状に延びており、軸方向他端部57b側の各端部が先細りの形状となっている。第1~第3半円弧状凸部57d,57e,57fは、ウォームシャフト用ハウジング34(
図1参照)に設けられた図示せぬ各溝部に嵌め込まれ、これにより、ホルダ部材57の周方向位置がウォームシャフト用ハウジング34に対して規定される。従って、ウォームシャフト用ハウジング34に対するホルダ部材57のがたつきが抑制される。
【0055】
また、
図6(b)に示すように、ホルダ部材57の軸方向他端部57bに隣接した部位は、ホルダ部材57の内周面57gからホルダ部材57の径方向内側に張り出す比較的厚肉の他端側張り出し部57hとなっている。ここで、内周面57gは、ウォームホイール22に対する第3ボールベアリングBb3の移動を許容すべく、第1中心線CL1に沿った直径の長さが第2中心線CL2に沿った直径の長さよりも僅かに長くなる長穴の内周面となっている。他端側張り出し部57hは、ホルダ部材57の周方向において180度を超える範囲にわたって、一方の周方向端面57iから他方の周方向端面57jへと円弧状に延びている。
図6(a)および
図6(c)に示すように、他端側張り出し部57hは、第2中心線CL2を挟んで第1半円弧状凸部57dとは反対側に位置した一対の周方向端面57i,57jと、該一対の周方向端面57i,57j同士を接続する円弧状の内面57kとを有している。
図6(a)および
図6(c)に示すように、一対の周方向端面57i,57jは、第2中心線CL2よりも上側において第2中心線CL2寄りに位置している。
【0056】
また、
図6(b)に示すように、他端側張り出し部57hには、軸方向他端部57bからホルダ部材57の軸方向外側に突出した概ね立方体状の突起部57mが形成されている。
図6(a)に示すように、突起部57mは、第1中心線CL1とオーバーラップする位置であり、かつ円弧状の内面57kと隣接した位置に形成されている。また、
図8に示すように、突起部57mは、内面57kと連続した突起部内側面57nを有している。
【0057】
また、
図5(a)に示すように、第3ボールベアリングBb3および板状ばね部材56がホルダ部材57に収容された状態では、第3ボールベアリングBb3のアウタレース59の軸方向他端側の面59aが他端側張り出し部57hの対向面57oに当接している。また、調心機構39がウォームシャフト用ハウジング34の上述の調心機構収容部34cに収容された状態では、突起部57mは、ウォームホイール22側に位置するように配置される(
図1参照)。この状態では、ホルダ部材57の軸方向一端部57aは、電動モータ2側に位置しており、一方、ホルダ部材57の軸方向他端部57bは、電動モータ2とは反対側に位置することになる。
【0058】
また、
図6(b)に示すように、ホルダ部材57の軸方向一端部57a側において第1半円弧状凸部57dに隣接した部位は、ホルダ部材57の周囲壁を構成する他の部位よりも最も薄肉に形成された薄肉部57pとなっている。
図6(c)に示すように、薄肉部57pは、第1半円弧状凸部57dが形成された箇所から第2半円弧状凸部57eおよび第3半円弧状凸部57f側へ向かうにつれて徐々に厚肉となるように形成されている。
図6(b)に示すように、薄肉部57pとホルダ部材57の内周面57gとの間には、ホルダ部材57への第3ボールベアリングBb3の挿入時にホルダ部材57と第3ボールベアリングBb3との干渉を避けるための傾斜面57qが形成されている。
図6(b)に示すように、傾斜面57qは、軸方向他端部57b側へ向かうにつれて軸方向一端部57aからの距離が徐々に増加するように傾斜している。また、
図6(c)および
図9に示すように、傾斜面57qは、ホルダ部材57の周方向に延びる概ね三日月形状をなしている。
【0059】
また、
図6(b)に示すように、ホルダ部材57の軸方向一端部57aのうち薄肉部57pと径方向に対向する部位には、ホルダ部材57の内周面57gから径方向内側へ張り出した一端側張り出し部57rが形成されている。
図6(b)に示すように、ホルダ部材57の軸方向(
図6(b)において左右方向)に沿った一端側張り出し部57rの幅は、ホルダ部材57の軸方向に沿った他端側張り出し部57hの幅よりも小さくなっている。
図6(a)に示すように、一端側張り出し部57rは、ホルダ部材57の周方向において所定の角度、本実施形態では約90度の範囲にわたって概ね三日月状に形成されている。
図6(c)に示すように、一端側張り出し部57rは、軸方向一端部57a側の開口部61に隣接した円弧状先端部57sを有しており、この円弧状先端部57sは、ホルダ部材57の内周面57gよりも小さい曲率を有している。
図6(c)に示すように、ホルダ部材57の周方向における円弧状先端部57sの両端部は、ホルダ部材57の内周面57gよりも大きい曲率を有した一対の湾曲部57t,57uに接続されており、この一対の湾曲部57t,57uは、第1中心線CL1に平行な一対の直線部57v,57wにそれぞれ接続されている。
【0060】
図6(c)および
図10に示すように、連続した湾曲部57tおよび直線部57vよりも内側には、軸方向一端部57aから軸方向他端部57b側に後退した段状部57xが形成されている。同様に、連続した湾曲部57uおよび直線部57wよりも内側には、軸方向一端部57aから軸方向他端部57b側に後退した面部57yが形成されている。
図5(a)に示すように、第3ボールベアリングBb3および板状ばね部材56がホルダ部材57に収容された状態では、第3ボールベアリングBb3のアウタレース59の軸方向一端面59bが一端側張り出し部57rの当接面57zに当接している。
【0061】
図5(b)に示すように、第1半円弧状凸部57dと第2半円弧状凸部57eとの間のホルダ部材57の部位には、ホルダ部材57の内部と外部とを連通させる第1スロット62が形成されている。第1スロット62は、調心機構39の組立時に板状ばね部材56の第1付勢部56cおよび第1円弧部56bが挿入される挿入口となる。同様に、第1半円弧状凸部57dと第3半円弧状凸部57fとの間のホルダ部材57の部位には、ホルダ部材57の内部と外部とを連通させる第2スロット63が形成されている。また、第2スロット63は、調心機構39の組立時に板状ばね部材56の第2付勢部56e、第2円弧部56d、折れ曲がり部56gおよび分岐部56fが挿入される挿入口となる。
図5(b)に示すように、第1スロット62および第2スロット63は、第1仕切り壁部64によって仕切られており、該第1仕切り壁部64を挟んで左右対称の位置に形成されている。また、
図7および
図10に示すように、第1スロット62および第2スロット63は、ホルダ部材57の軸方向中央部よりも僅かに軸方向一端部57a側にずれた位置に形成されている。
図5(b)に示すように、第1仕切り壁部64は、第2中心線CL2と平行な平面部64aと、該平面部64aの両側部に接続される一対の曲面部64b,64cと、ホルダ部材57の内周面57gの一部とを有している。平面部64aは、板状ばね部材56の厚さ分だけ、ホルダ部材57の外周面57cよりも内側に位置している。
【0062】
図5(b)に示すように、ホルダ部材57は、第3ボールベアリングBb3を挟んで第1スロット62および第2スロット63とは反対側に設けられた第3スロット65および第4スロット66を有している。第3スロット65および第4スロット66は、第1仕切り壁部64とホルダ部材57の径方向に対向する位置に設けられた第2仕切り壁部67によって仕切られている。
図5(b)に示すように、第2仕切り壁部67は、ホルダ部材57の外周面57cと滑らかに連続する円弧状の外側面部67aと、外側面部67aの両側部に接続される平面である一対の接続平面部67b,67cと、ホルダ部材57の内周面57gの一部とを有している。
図5(b)に示すように、第3スロット65および第4スロット66は、第1スロット62および第2スロット63と同様の周方向範囲にわたってホルダ部材57の周方向に延びている。また、第3スロット65および第4スロット66は、ホルダ部材57の軸方向において第1スロット62および第2スロット63と同じ位置に設けられている。
図5(b)に示すように、第3ボールベアリングBb3および板状ばね部材56がホルダ部材57に収容された状態では、第1付勢部56cの自由端である末端部が、第3スロット65内に配置されており、一方、第2付勢部56eおよび折れ曲がり部56gの自由端である各末端部が、第4スロット66内に配置されている。
【0063】
また、例えば
図6(a)、
図7および
図8に示すように、ホルダ部材57の軸方向他端部57b側の外周縁部には、円形に連続した面取り部68が形成されている。
【0064】
図12は、ホルダ部材57の製造方法を示す説明図であり、
図12(a)は、ホルダ部材57の成型工程図、
図12(b)は、型抜き工程図である。
【0065】
ホルダ部材57を製造するホルダ部材製造装置69は、第1型70、第2型71、第3型72および第4型73を備えている。
【0066】
第1型70は、ホルダ部材57の軸方向一端部57aと、ホルダ部材57の内周側の形状の一部と、ホルダ部材57の外周側の形状の一部と、を形状付ける金型である。第1型70は、土台部70aと、該土台部70aの中央部から立ち上がる円柱状の立設部70bと、
図12(a)および
図12(b)の紙面に対して手前側および奥行側からホルダ部材57を挟むように土台部70aから立ち上がる一対の側壁部70c(
図12(b)には、1つの側壁部70cのみが示されている)とを有している。立設部70bは、ホルダ部材57の軸方向一端部57aが設置される設置面70dを有している。立設部70bの設置面70dから、第1突出部70eが第4型73側に突出している。第1突出部70eは、段差状に形成されており、一端側張り出し部57rの当接面57zと面一の位置にある第1面70fと、一部が他端側張り出し部57hの対向面57oおよび第4型73の後述の第5面70jと当接する第2面70gと、ホルダ部材57に形成された傾斜面57qと当接する傾斜面である第3面70hとを有している。また、第1突出部70eの外周面は、ホルダ部材57の他端側張り出し部57hの対向面57oよりも薄肉部57p側の内周面の形状に対応している。各側壁部70cは、ホルダ部材57の外形の一部の周方向領域に対応した形状を有した図示せぬ曲面を有している。
【0067】
第2型71は、第1~第3半円弧状凸部57d,57e,57fを含む側のホルダ部材57の外周側の形状の一部を形状付ける金型である。第2型71は、第1型70の土台部70aおよび一対の側壁部70cの間に形成された第1窪み部74の間に配置される。第2型71は、第1~第3半円弧状凸部57d,57e,57fを含む側のホルダ部材57の外周部の一部に対応した円弧状に延びる第1内周面部71aと、該第1内周面部71aから径方向内側へ突出し、第1スロット62の形成に供する第1スロット形成部(
図12(b)では省略されている)と、第1内周面部71aから径方向内側へ突出し、第2スロット63の形成に供する第2スロット形成部71bとを有している。
図12(a)に示す状態では、第1内周面部71aは、第1型70の各側壁部70cに設けられた上述の曲面に滑らかに接続される。また、第2型71は、第4型73の後述の第1円柱部73eが挿入される第1挿入穴71cを有している。
図12(b)に示すように、第1挿入穴71cは、第2型71の上面71dのうち第1内周面部71a近傍の位置から、第2型71の下面71eのうち第1内周面部71aから比較的遠い位置へと傾斜するように貫通形成されている。第2型71は、第1円柱部73eが引き抜かれるにつれて立設部70bから遠ざかるように土台部70aおよび各側壁部70cに沿って摺動可能となっている。
【0068】
第3型72は、第1~第3半円弧状凸部57d,57e,57fを含まない側のホルダ部材57の外周側の形状の一部を形状付ける金型である。第3型72は、第1型70の立設部70bを挟んで第2型71と反対側に位置し、かつ第1型70の土台部70aおよび一対の側壁部70cの間に形成された第2窪み部75の間に配置される。第3型72は、第1~第3半円弧状凸部57d,57e,57fを含まない側のホルダ部材57の外周部の一部に対応した円弧状に延びる第2内周面部72aと、第2内周面部72aから径方向内側へ突出し、第3スロット65の形成に供する第3スロット形成部(
図12(b)では省略されている)と、第2内周面部72aから径方向内側へ突出し、第4スロット66の形成に供する第4スロット形成部72bとを有している。
図12(a)に示す状態では、第2内周面部72aは、第1型70の各側壁部70cに設けられた上述の曲面に滑らかに接続される。また、第3型72は、第4型73の後述の第2円柱部73fが挿入される第2挿入穴72cを有している。
図12(b)に示すように、第2挿入穴72cは、第3型72の上面72dのうち第2内周面部72a近傍の位置から、第3型72の下面72eのうち第2内周面部72aから比較的遠い位置へと傾斜するように貫通形成されている。第2挿入穴72cは、第1型70の立設部70bを挟んで第1挿入穴71cと対称となるように形成されている。第3型72は、第2円柱部73fが引き抜かれるにつれて立設部70bから遠ざかるように土台部70aおよび各側壁部70cに沿って摺動可能となっている。
【0069】
第4型73は、ホルダ部材57の軸方向他端部57b側の内周側および外周側の形状の一部と、一端側張り出し部57rの当接面57zとを形状付ける金型である。第4型73は、ホルダ部材57の他端側張り出し部57hの対向面57oよりも軸方向他端部57b側の外形に対応した円形の凹部73a(
図12(a)および
図12(b)において実線および破線で示される)を有している。
図12(a)および
図12(b)に示すように、凹部73aの底部73bのうち突起部57mに対応した位置には、第4型73の上面73cへと貫通する注入通路73dが形成されており、この注入通路73dを通して、金属材料が第4型73の外部から凹部73aへと流し込まれる。注入通路73dは、凹部73aの底部73bから第4型73の上面73cへ向かうにつれて先細りとなるように延びている。
【0070】
また、第4型73は、第2型71に設けられた第1挿入穴71cに摺動可能に挿入される第1円柱部73eと、第3型72に設けられた第2挿入穴72cに摺動可能に挿入される第2円柱部73fと、凹部73aの底部73bから第1型70側へと突出する第2突出部73gと、をさらに有している。
【0071】
第1円柱部73eは、第1挿入穴71cと同じ傾斜角度で傾斜するように第4型73の下面73hから延びている。
【0072】
同様に、第2円柱部73fは、第2挿入穴72cと同じ傾斜角度で傾斜するように第4型73の下面73hから延びている。
【0073】
図12(a)に示すように、第2突出部73gは、第1型70に設けられた第1突出部70eと協働してホルダ部材57の内周側の形状を形成するように段差状に形成されている。第2突出部73gは、第1突出部70eの第1面70fおよびホルダ部材57の当接面57zに当接する第4面73iと、第1突出部70eの第2面70gに当接する第5面70jとを有している。
【0074】
次に、
図12(a)および
図12(b)を参照しながら、ホルダ部材57の製造方法について説明する。
【0075】
まず、
図12(a)に示すように、第1型70に第2型71および第3型72を密着させるとともに、第2型71の第1挿入穴71cおよび第3型72の第2挿入穴72cに第4型73の第1円柱部73eおよび第2円柱部73fを挿入しておく。これにより、ホルダ部材57の形状に対応した空間が、第1~第4型70,71,72,73の間に形成される。
【0076】
次に、
図12(a)の矢印Aで示す注入方向に沿って第1型70の注入通路73dを介して第1~第4型70,71,72,73の間の空間に金属材料を注入する。これにより、この空間が金属材料で満たされる。
【0077】
金属材料の硬化後に、
図12(b)に示すように、第1~第3型70,71,72から離間する方向に第4型73を移動させる。この移動に伴い、第1型70の第1円柱部73eおよび第2円柱部73fは、第1挿入穴71cおよび第2挿入穴72cを介して第2型71と第3型72とを互いに離間させる方向の力を作用させる。第2型71と第3型72との離間と共に、第1スロット形成部、第2スロット形成部71b、第3スロット形成部および第4スロット形成部72bが移動することで、第1~第4スロット62,63,65,66(
図12(b)には、第2スロット63および第4スロット66のみが示されている)が残される。
【0078】
最後に、第1型70を取り除くことにより、ホルダ部材57が形成される。
【0079】
図13は、調心機構39の組み立て方法を示す説明図であり、(a)は、ホルダ部材57の配置工程図、(b)は、板状ばね部材56の組み付け工程図、(c)第3ボールベアリングBb3の挿入工程図、(d)は、完成後の調心機構39を示す説明図である。
【0080】
まず、
図13(a)に示すように、図示せぬ治具を用いて、第1スロット62および第2スロット63(
図13(a)には第2スロット63のみが示されている)が下方側に位置する姿勢でホルダ部材57を配置する。
【0081】
次に、
図13(b)に矢印Cで示すように第1半円弧状凸部57dの外側からホルダ部材57の内部側へと第1スロット62および第2スロット63を介して板状ばね部材56を挿入する。
【0082】
板状ばね部材56の挿入後には、
図13(c)に示すように、ホルダ部材57の軸方向一端部57a側の開口部61から第3ボールベアリングBb3を挿入する。この挿入の際には、
図13(c)に示すように、第3ボールベアリングBb3のアウタレース59のうちホルダ部材57の一端側張り出し部57r側が薄肉部59p側よりも軸方向他端部57bに近づくように第3ボールベアリングBb3を傾斜させた姿勢で、矢印Dで示すように薄肉部57p側から一端側張り出し部57r側に第3ボールベアリングBb3を挿入していく。そして、
図13(c)に示す位置まで第3ボールベアリングBb3を挿入した後に、第3ボールベアリングBb3を回動方向E(
図13(c)において時計回りの方向)に回動させることにより、
図13(d)に示すように、第3ボールベアリングBb3がホルダ部材57に保持される。第3ボールベアリングBb3が保持された状態では、第3ボールベアリングBb3のアウタレース59の軸方向一端側の面59bが一端側張り出し部57rの当接面57zに当接しており、一方、第3ボールベアリングBb3のアウタレース59の軸方向他端側の面59aが他端側張り出し部57hの対向面57oに当接している。
【0083】
従来技術では、調心機構は、5つの部品点数、つまり軸受、付勢部材、ホルダ部材、キャップ部材およびOリングを有している。より詳細には、この調心機構では、電動モータ側が円形に開口した円筒状のホルダ部材内に軸受および付勢部材を収容し、ホルダ部材の外周にOリングを設けたうえで、キャップ部材によって軸受、付勢部材、ホルダ部材およびOリングを集約していた。従って、調心機構の部品点数が比較的多くなり、調心機構の製造コストが増加してしまうという問題があった。
【0084】
これに対し、上記のように、本実施形態では、ホルダ部材は、軸方向両端部57a,57bのうち電動モータ2側に位置する軸方向一端部57aの内周面57gから径方向内側に張り出した一端側張り出し部57rを有している。そして、一端側張り出し部57rの当接面57zが第3ボールベアリングBb3のアウタレース59の軸方向一端側の面59bに当接している。一端側張り出し部57rは、第3ボールベアリングBb3がホルダ部材57の開口部61から電動モータ2側へ脱落することを防止しながら、板状ばね部材56と共に第3ボールベアリングBb3を集約する。このため、調心機構39の部品点数は、3点、つまり第3ボールベアリングBb3、板状ばね部材56およびホルダ部材57となり、従来技術の調心機構と比べて、調心機構39の製造コストを削減することができる。
【0085】
また、本実施形態では、ホルダ部材57は、その外周部からホルダ部材57の径方向外側に突出した第1~第3半円弧状凸部57d,57e,57fを有しており、第1~第3半円弧状凸部57d,57e,57fは、ウォームシャフト用ハウジング34に設けられた各溝部に嵌め込まれる。このため、第1~第3半円弧状凸部57d,57e,57fと各溝部の嵌め合いにより、ウォームシャフト用ハウジング34に対してホルダ部材57を堅固に固定し、ウォームシャフト用ハウジング34からの調心機構39の脱落を抑制することができる。
【0086】
さらに、本実施形態では、ホルダ部材57は、該ホルダ部材57の内部と外部とを連通させる一対の第1スロット62および第2スロット63と、該一対の第1スロット62および第2スロット63を仕切る第1仕切り壁部64とを有しており、板状ばね部材56は、第1仕切り壁部64によって支持されている。このため、第1スロット62および第2スロット63内の空間分だけホルダ部材57の金属材料が必要なくなるので、ホルダ部材57の製造コストを削減することができる。さらに、第1スロット62と第2スロット63との間に設けられた第1仕切り壁部64により、板状ばね部材56を保持するとともに、板状ばね部材56の付勢方向、即ち第1仕切り壁部64へ向かう方向を容易に設定することができる。
【符号の説明】
【0087】
2・・・電動モータ、4・・・操舵機構、7・・・操舵軸、21・・・ウォームシャフト、22・・・ウォームホイール、34・・・ウォームシャフト用ハウジング、39・・・調心機構、Bb3・・・第3ボールベアリング、56・・・板状ばね部材、57・・・ホルダ部材、57a・・・軸方向一端部、57b・・・軸方向他端部、57d・・・第1半円弧状凸部、57e・・・第2半円弧状凸部、57f・・・第3半円弧状凸部、57r・・・一端側張り出し部、57h・・・他端側張り出し部、57z・・・当接面、62・・・第1スロット、63・・・第2スロット、69・・・ホルダ部材製造装置、70・・・第1型、71・・・第2型、72・・・第3型、73・・・第4型、73i・・・第4面