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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128240
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/6582 20110101AFI20240913BHJP
【FI】
H01R13/6582
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037111
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤 浩晃
(72)【発明者】
【氏名】竹内 和也
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA14
5E021FB02
5E021FC19
5E021LA09
5E021LA16
(57)【要約】
【課題】グランド部材(筐体)とダイキャスト製外導体との接続信頼性を高めたコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、内導体11と、内導体11の外周を包囲するダイキャスト製外導体13と、ダイキャスト製外導体13を装着するハウジング14と、外部のグランド部材70及びダイキャスト製外導体13に電気的に接触する接触部材15と、を備え、ハウジング14に対して相手ハウジング30が嵌合する側を前側とした場合に、接触部材15は、ダイキャスト製外導体13における前側を向く前向き対向面13Hとハウジング14における後側を向く後向き対向面14Gとの間に挟み込まれる被挟持部15Kと、被挟持部15Kの前側に連なる支点部15Lと、支点部15Lの前側においてハウジング14の外面から離れる方向、且つ前方に延びてグランド部材70に接触する弾性変形可能な弾性接触部15Bと、を有している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内導体と、
前記内導体の外周を包囲するダイキャスト製外導体と、
前記ダイキャスト製外導体を装着するハウジングと、
外部のグランド部材及び前記ダイキャスト製外導体に電気的に接触する接触部材と、
を備え、
前記ハウジングに対して相手ハウジングが嵌合する側を前側とした場合に、
前記接触部材は、
前記ダイキャスト製外導体における前側を向く前向き対向面と前記ハウジングにおける後側を向く後向き対向面との間に挟み込まれる被挟持部と、
前記被挟持部の前側に連なる支点部と、
前記支点部の前側において前記ハウジングの外面から離れる方向、且つ前方に延びて前記グランド部材に接触する弾性変形可能な弾性接触部と、
を有している、コネクタ。
【請求項2】
前記支点部は、前記ハウジングの外面に支持される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記弾性接触部が前記グランド部材に接触する接触位置から前記支点部までの距離は、前記被挟持部が前記前向き対向面に接触する位置から前記支点部までの直線距離よりも大きい、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記後向き対向面に凹設される圧入凹部を有し、
前記被挟持部は、前記圧入凹部に圧入状態で配置され、
前記圧入凹部は、前記ダイキャスト製外導体が装着された装着状態において、前記前向き対向面で閉塞される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記被挟持部は、前記圧入凹部への前記圧入状態において、前記圧入凹部の壁面に係止する係止部を有している、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記係止部は、前記被挟持部から前後方向と交差する左右方向の各々に突出する第1係止部と、前記被挟持部から前向きに突出する第2係止部と、を有している、請求項5に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、合成樹脂製のハウジングを金属製のシェルで覆った構成のコネクタが開示されている。シェルは、板金で構成されている。シェルには、外部の筐体に弾性接触可能なシェル側グランド接続部が設けられている。外部の筐体(グランド部材)に弾性接触可能な構成は、特許文献2、3に開示された構成等も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-207411号公報
【特許文献2】特開平10-289760号公報
【特許文献3】特開2019-140013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コネクタにおいて、より高周波域で通信を行うような場合、外導体(シェル)の構成を、内導体の周囲を隙間なく包囲する構成とすることが好ましい。外導体をこのような構成とするには、外導体をダイキャスト製とすることが考えられる。外導体をダイキャスト製とした場合、外導体自身に外部の筐体に対して弾性接触する構成を設けることは困難である。このため、外部の筐体と外導体との導通を確実に図る技術が求められる。
【0005】
そこで、本開示は、グランド部材とダイキャスト製外導体との接続信頼性を高めたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、
内導体と、
前記内導体の外周を包囲するダイキャスト製外導体と、
前記ダイキャスト製外導体を装着するハウジングと、
外部のグランド部材及び前記ダイキャスト製外導体に電気的に接触する接触部材と、
を備え、
前記ハウジングに対して相手ハウジングが嵌合する側を前側とした場合に、
前記接触部材は、
前記ダイキャスト製外導体における前側を向く前向き対向面と前記ハウジングにおける後側を向く後向き対向面との間に挟み込まれる被挟持部と、
前記被挟持部の前側に連なる支点部と、
前記支点部の前側において前記ハウジングの外面から離れる方向、且つ前方に延びて前記グランド部材に接触する弾性変形可能な弾性接触部と、
を有している。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、グランド部材とダイキャスト製外導体との接続信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態のコネクタの分解斜視図である。
図2図2は、グランド部材に覆われた状態のコネクタの側断面図である。
図3図3は、ダイキャスト製外導体を示す斜視図である。
図4図4は、ハウジングを示す斜視図である。
図5図5は、接続部材を示す斜視図である。
図6図6は、ハウジングに接続部材を取り付けた状態を示す背面図である。
図7図7は、図6におけるA-A断面図である。
図8図8は、コネクタにおける被挟持部を拡大して示す要部拡大側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)内導体と、
前記内導体の外周を包囲するダイキャスト製外導体と、
前記ダイキャスト製外導体を装着するハウジングと、
外部のグランド部材及び前記ダイキャスト製外導体に電気的に接触する接触部材と、
を備え、
前記ハウジングに対して相手ハウジングが嵌合する側を前側とした場合に、
前記接触部材は、
前記ダイキャスト製外導体における前側を向く前向き対向面と前記ハウジングにおける後側を向く後向き対向面との間に挟み込まれる被挟持部と、
前記被挟持部の前側に連なる支点部と、
前記支点部の前側において前記ハウジングの外面から離れる方向、且つ前方に延びて前記グランド部材に接触する弾性変形可能な弾性接触部と、
を有している。
【0010】
この構成によれば、弾性接触部をハウジングに近づける向きに押圧すると、支点部を介して、ダイキャスト製外導体の前向き対向面に被挟持部を押し付ける方向の力を作用させることができるので、接触部材をダイキャスト製外導体とグランド部材との両方に良好に接触させることができる。
【0011】
(2)前記支点部は、前記ハウジングの外面に支持されることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、支点部の位置がぶれ難く、弾性接触部をハウジングに近づける向きに押圧力を付与すると、支点部を介して、被挟持部に対してダイキャスト製外導体の前向き対向面に押し付ける方向の力に効率的に変換することができる。
【0013】
(3)前記弾性接触部が前記グランド部材に接触する接触位置から前記支点部までの距離は、前記被挟持部が前記前向き対向面に接触する位置から前記支点部までの直線距離よりも大きいことが好ましい。
【0014】
この構成によれば、弾性接触部がグランド部材に接触する接触位置から支点部までの距離(すなわち、力点から支点までの距離)が、被挟持部がダイキャスト製外導体の前向き対向面に接触する位置から支点部までの直線距離(すなわち、作用点から支点までの直線距離)よりも大きいことになる。このため、被挟持部に対して前向き対向面に押し付ける方向の力をより効率的に作用させることができる。
【0015】
(4)前記ハウジングは、前記後向き対向面に凹設される圧入凹部を有し、
前記被挟持部は、前記圧入凹部に圧入状態で配置され、
前記圧入凹部は、前記ダイキャスト製外導体が装着された装着状態において、前記前向き対向面で閉塞されることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、ハウジングにおける圧入凹部を形成する金型構造を簡素化し易い。
【0017】
(5)前記被挟持部は、前記圧入凹部への前記圧入状態において、前記圧入凹部の壁面に係止する係止部を有していることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、接触部材がハウジングから離脱することを抑制し易い。
【0019】
(6)前記係止部は、前記被挟持部から前後方向と交差する左右方向の各々に突出する第1係止部と、前記被挟持部から前向きに突出する第2係止部と、を有していることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、被挟持部が圧入凹部から離脱することをより強固に抑制することができる。
【0021】
[本開示の実施形態の詳細]
<実施形態1>
本開示のコネクタを具体化した実施形態1を、図1から図7を参照して説明する。図中、「前側」、「後側」、「上側」、「下側」、「右側」、及び「左側」は、それぞれ「F」、「B」、「U」、「D」、「R」、及び「L」で表される。本実施形態1では、左右方向は、幅方向に相当する。前側は、ハウジング14に対して相手ハウジング30が嵌合する側である。コネクタ10は、回路基板Sに実装される基板用コネクタである。コネクタ10は、図1に示すように、内導体11と、誘電体12と、ダイキャスト製外導体13と、ハウジング14と、接触部材15と、を備える。
【0022】
<内導体の構成>
内導体11は、導電性の金属板材からなり、全体として細長く延びるように形成されている。内導体11は、相手接続部11Aと、基板接続部11Bと、相手接続部11Aと基板接続部11Bとの間に配置されるつなぎ部11Cと、を有している。相手接続部11Aは、前後方向に延びている。図2に示すように、相手接続部11Aは、後部が誘電体12に保持され、前部が誘電体12の前方に突出している。つなぎ部11Cと基板接続部11Bとは、誘電体12の後方に露出して配置される。つなぎ部11Cは、相手接続部11Aの後端から後方下向きに傾斜しつつ延びている。基板接続部11Bは、つなぎ部11Cの下端から後向きに延び、回路基板Sの導電部分に半田付けして接続される。
【0023】
<誘電体の構成>
図1に示すように、誘電体12は、絶縁性の合成樹脂材によって全体としてブロック状に形成されている。誘電体12は、側面から視るとL字形をなしている。誘電体12は、前後方向に延びる端子装着部12Aと、端子装着部12Aの後端に連なって上下方向に延びる端子引出部12Bと、を有している。端子装着部12Aは、左右一対の装着孔12Cを有している(図2参照)。各装着孔12Cは、端子装着部12A内を前後方向に貫通している。装着孔12Cには、後方から相手接続部11Aが挿入される。相手接続部11Aの後部は、装着孔12Cに圧入された状態で保持される。
【0024】
<ダイキャスト製外導体の構成>
ダイキャスト製外導体13は、例えば、亜鉛ダイキャスト等の鋳造体である。ダイキャスト製外導体13内には、内導体11を装着した誘電体12が配置される(図2参照)。ダイキャスト製外導体13は、外部から内導体11にノイズが進入することを抑制し、且つ内導体11から外部へのノイズの漏洩を抑制するシールド部材としての機能を有する。フード部13Bは、相手接続部11Aの外周を隙間なく包囲するので、良好なシールド性を確保することができる。
【0025】
ダイキャスト製外導体13は、外導体本体13Aと、外導体本体13Aから前方に延びるフード部13Bと、外導体本体13Aから外側に向けて鍔状に張り出す板状の鍔部13Cを有している。外導体本体13Aは、後方から視ると門型形状をなしている。外導体本体13Aの前端は、鍔部13Cの後面に連なっている。
【0026】
外導体本体13Aは、シールド性の他、内導体11の基板接続部11Bに外部からの異物の干渉を防止する機能をも有する。また、外導体本体13Aの後端部を塞ぐ閉塞部材(図示せず)を外導体本体13Aに取り付けることによって基板接続部11Bへの異物の干渉を防止する機能を高める場合もある。外導体本体13Aは、左右側壁の下端から下向きに延びる複数の取付突部13Dを有している。各取付突部13Dは、円柱状をなし、回路基板Sに形成された取付孔Hに挿入される(図2参照)。
【0027】
フード部13Bは、四隅が丸みを帯びた角筒状をなしている。図2に示すように、フード部13Bは、内側の後部に誘電体12の端子装着部12Aが嵌合可能とされている。内導体11の相手接続部11Aの前部は、フード部13B内の前部に突出して配置される。
【0028】
図3に示すように、鍔部13Cは、平板状をなし、フード部13Bの基端側から径方向外側に張り出している。鍔部13Cの前側の面は、ダイキャスト製外導体13における前側を向く前向き対向面13Hである。ダイキャスト製外導体13は、鍔部13Cの前向き対向面13Hから前方に突出する複数の係止突部13Eを有している。各係止突部13Eは、フード部13Bの外周面にも前後方向に沿って連結されている。各係止突部13Eは、ハウジング14の後述する各係止凹部14Dに挿入されて係止される。係止突部13Eは、矩形ブロック状の凸本体部13Fと、凸本体部13Fの前端部から前後方向と交差する方向に張り出す圧入突起13Gと、を有している。
【0029】
<ハウジングの構成>
ハウジング14は、絶縁性の合成樹脂材によって形成されている。図4に示すように、ハウジング14は、背面視矩形の平板状をなす基壁14Aと、基壁14Aから前方に突出する角筒状の嵌合筒部14Bと、を有している。嵌合筒部14B内には、相手ハウジング30が嵌合される(図2参照)。基壁14Aの後面は、ハウジング14における後側を向く後向き対向面14Gである。
【0030】
基壁14Aには、貫通孔14Cが貫通して形成されている。貫通孔14Cには、ダイキャスト製外導体13のフード部13Bが挿入される(図2参照)。基壁14Aには、複数の係止凹部14Dが形成されている。各係止凹部14Dは、断面矩形状をなし、後向き対向面14Gから前向きに凹んで形成され、前端が基壁14Aの内側において閉塞されている。各係止凹部14Dにおける径方向内側を向く内端は、貫通孔14Cに連通するように開口している。
【0031】
基壁14Aの後向き対向面14Gの上端部には、前向きに凹設された圧入凹部14Hが設けられている。圧入凹部14Hは、第1圧入凹部14Fと、一対の第2圧入凹部14Eと、を有している。第1圧入凹部14Fは、基壁14Aの左右方向中央部に形成されている。第1圧入凹部14Fは、基壁14Aの後向き対向面14Gから前向きに凹んで形成され、前端が基壁14Aの内側において閉塞されている。第1圧入凹部14Fは、接触部材15の後述する第1被挟持部15Cに対応している。第1圧入凹部14Fの上端は、上向きに開口している。
【0032】
一対の第2圧入凹部14Eは、基壁14Aの左右方向両端部の各々に一つずつ形成されている。一対の第2圧入凹部14Eの間には、第1圧入凹部14Fが配置されている。これら第2圧入凹部14Eは、接触部材15の後述する第2被挟持部15Dに対応している。各第2圧入凹部14Eは、基壁14Aの後向き対向面14Gから前向きに凹んで形成され、前端が基壁14Aの内側において閉塞されている。各第2圧入凹部14Eの上端は、上向きに開口している。言い換えると、各第2圧入凹部14Eは、ハウジング14の外面(上面)に開口している。各第2圧入凹部14Eは、ハウジング14の後向き対向面14Gに開口している。
【0033】
<接触部材の構成>
接触部材15は、金属板を曲げ加工等して一体に成形されている。図5に示すように、接触部材15は、ハウジング14の外面(上面)に取り付けられる連結部15Aと、連結部15Aの前端に連結する弾性接触部15Bと、を有している。連結部15Aは、連結本体15Jと、被挟持部15Kと、を有している。被挟持部15Kは、第1被挟持部15C、一対の第2被挟持部15Dと、を有している。連結本体15Jは、ハウジング14の上面(外面)と平行な幅方向に沿った平板状をなしている。
【0034】
第1被挟持部15Cは、連結本体15Jの左右方向の中央部の後端部から下向きに突出している。第1被挟持部15Cは、板厚方向を前後方向に向けている。第1被挟持部15Cは、前後方向から視ると矩形状をなしている。第1被挟持部15Cには、係止部15Gである一対の第1係止部15Mと、一対の第1後向き係止部15Qと、が設けられている。一対の第1係止部15Mは、第1被挟持部15Cの左右方向両端縁から前後方向と交差する左右方向の外側の各々に突出して設けられている。各第1係止部15Mは、下端から上端に向けて左右方向の外側に徐々に拡がるように傾斜して形成されており、上端部には、上向きの切出し面が形成されている。
【0035】
一対の第1後向き係止部15Qは、第1被挟持部15Cの後面から後向きに突出して設けられている。これら第1後向き係止部15Qは、第1被挟持部15Cの後面における左右方向の両端部に1つずつ設けられている。各第1後向き係止部15Qは、下端から上端に向けて後向きに徐々に突出するように傾斜して形成されており、上端部には、上向きの切出し面が形成されている。
【0036】
図6に示すように、第1被挟持部15Cは、ハウジング14の第1圧入凹部14Fに上方から挿入されると、第1圧入凹部14Fに圧入状態で配置される。この圧入状態において、第1係止部15Mは、第1圧入凹部14Fの左右方向の内向きの壁面に食い込んで係止する。これにより、第1被挟持部15Cは、第1圧入凹部14F内に圧入状態で配置され、第1圧入凹部14Fから脱落することが抑制される。一対の第1後向き係止部15Qは、ダイキャスト製外導体13がハウジング14に装着された装着状態において第1圧入凹部14Fを後方から閉塞するダイキャスト製外導体13の前向き対向面13Hに食い込んで係止する(図2、8参照)。これによっても、第1被挟持部15Cは、第1圧入凹部14Fから脱落することが抑制される。
【0037】
図5に示すように、一対の第2被挟持部15Dは、連結本体15Jの幅方向(左右方向)の両端部から各々が下向きに突出している。これら第2被挟持部15Dは、板厚方向を左右方向に向けている。各第2被挟持部15Dは、側方から視ると下部の前側が矩形状に切り欠かれた段付き状とされている。各第2被挟持部15Dの下端は、第1被挟持部15Cの下端よりも下方に位置している。
【0038】
各第2被挟持部15Dには、係止部15Gである第2係止部15Nと、第2後向き係止部15Rと、が設けられている。第2係止部15Nは、第2被挟持部15Dの上部の前端、及び下部の前端から1つずつ前向きに突出している。第2係止部15Nは、下端から上端に向けて前向きの突出量が徐々に大きくなるように傾斜しており、上端部には、上向きの切立ち面が形成されている。第2後向き係止部15Rは、第2被挟持部15Dの上部の後端から後向きに突出している。第2後向き係止部15Rは、下端から上端に向けて後向きの突出量が徐々に大きくなるように傾斜しており、上端部には、上向きの切立ち面が形成されている。第2後向き係止部15Rの第2被挟持部15Dからの後向きの突出量は、第2係止部15Nの第2被挟持部15Dからの前向きの突出量よりも小さい。
【0039】
ダイキャスト製外導体13の鍔部13Cによって後方が閉塞されたハウジング14の第2圧入凹部14Eに各第2被挟持部15Dを上方から挿入すると、各第2被挟持部15Dは、第2圧入凹部14Eに圧入状態で配置される。この圧入状態において、第2係止部15Nは、第2圧入凹部14Eの前端に位置する後向きの壁面に食い込んで係止する(図7参照)。これとともに、第2後向き係止部15Rは、ダイキャスト製外導体13がハウジング14に装着された装着状態において第2圧入凹部14Eを後方から閉塞するダイキャスト製外導体13の前向き対向面13Hに食い込んで係止する(図7参照)。これにより、第2被挟持部15Dは、第2圧入凹部14E内に圧入状態で配置され、第2圧入凹部14Eから脱落することが抑制される。
【0040】
弾性接触部15Bは、連結部15Aの前端部に、左右方向に複数、本実施形態1の場合は5つ並んで配置されている。弾性接触部15Bは、互いに同一形状で形成されている。弾性接触部15Bは、連結本体15Jの前端から前方上向きに傾斜して延びている。弾性接触部15Bは、連結本体15Jの前端に連結した部分を支点部15Lとして上下方向に弾性変形可能とされている。支点部15Lは、連結本体15Jを介して第1被挟持部15Cの前側に連なっている。
【0041】
弾性接触部15Bは、延出方向の先端部が下向きに屈曲され、上向きに湾曲した頂部15Eが形成されている。コネクタ10が取り付けられた回路基板Sに対しコネクタ10を覆うように導電性の筐体であるグランド部材70を取り付ける(図2参照)。すると、弾性接触部15Bの各頂部15Eは、グランド部材70の内面によって下向きに押圧されて弾性変形し、グランド部材70の内面に弾性接触した状態が維持される(図2、8参照)。これにより、接触部材15は、グランド部材70に電気的に接続される。
【0042】
<コネクタの組み付けについて>
先ず、ダイキャスト製外導体13のフード部13Bをハウジング14の貫通孔14Cに後方から挿入する。挿入過程の終盤で、係止突部13Eが係止凹部14Dに後方から挿入される。ダイキャスト製外導体13の鍔部13Cの前向き対向面13Hが基壁14Aの後向き対向面14Gに対面して突き当たると、ダイキャスト製外導体13の組み付け動作が停止される(図2参照)。こうして、鍔部13Cは、ハウジング14の後向き対向面14Gにおける第1圧入凹部14F、及び一対の第2圧入凹部14Eの開口を後方から閉塞するように配置される(図2、7参照)。外導体本体13Aは、ハウジング14の後方にハウジング14と並んで配置される(図2参照)。
【0043】
係止突部13Eが係止凹部14Dに正規に挿入されると、圧入突起13Gが係止凹部14Dの周方向で対向する対向面に圧入状態で接触する。これにより、係止突部13Eが係止凹部14Dに係止され、ダイキャスト製外導体13がハウジング14に対して抜け止めされた状態に保持される。
【0044】
次に、内導体11が圧入された誘電体12をダイキャスト製外導体13に取り付ける。具体的には、端子装着部12Aを前向きにして、内導体11の基板接続部11Bが下端に配置された姿勢にして、端子装着部12Aをダイキャスト製外導体13のフード部13Bに圧入する(図2参照)。
【0045】
次に、接触部材15をハウジング14に取り付ける。具体的には、弾性接触部15Bを前側に配置し、第1被挟持部15C、及び一対の第2被挟持部15Dが下向きに突出する姿勢にする。そして、第1被挟持部15Cを第1圧入凹部14Fに圧入するとともに、一対の第2被挟持部15Dをハウジング14の一対の第2圧入凹部14Eに圧入する(図6参照)。そして、連結本体15Jがハウジング14の上面に接触したところで、ハウジング14への接触部材15の取り付けが完了する(図2参照)。このとき、支点部15Lは、ハウジング14の上面(外面)に支持された状態となる。また、第1被挟持部15C、及び一対の第2被挟持部15Dは、前向き対向面13Hと後向き対向面14Gとの間に挟みこまれた状態になる(図2、7参照)。
【0046】
このとき、第1被挟持部15Cの第1後向き係止部15Qは、第1圧入凹部14Fを後方から閉塞する鍔部13Cの前向き対向面13Hに食い込む(図2、8参照)。これとともに、一対の第2被挟持部15Dの第2後向き係止部15Rは、第2圧入凹部14Eを後方から閉塞する鍔部13Cの前向き対向面13Hに食い込む(図7参照)。これによって、接触部材15と、ダイキャスト製外導体13と、が電気的に接触する。こうして、コネクタ10は、完成する。
【0047】
次に、コネクタ10を回路基板Sに取り付ける。そして、グランド部材70を、コネクタ10を覆うように回路基板Sに取り付ける。すると、弾性接触部15Bの頂部15Eは、グランド部材70の内面によって下向きに押圧され、弾性接触部15Bが弾性変形した状態に維持される(図2、8参照)。弾性接触部15Bは、支点部15Lの前側においてハウジング14の上面(外面)から上向きに離れる方向、且つ前方に延びてグランド部材70に弾性接触する(図2、8参照)。このとき、弾性接触部15Bの頂部15Eがグランド部材70に接触する接触位置から支点部15Lまでの距離L1は、第1被挟持部15Cの第1後向き係止部15Qが前向き対向面13Hに接触する位置から支点部15Lまでの直線距離L2よりも大きい(図2、8参照)。このとき、弾性接触部15Bが弾性変形した状態にされたことに伴い、第1被挟持部15C、及び一対の第2被挟持部15Dには、支点部15Lを中心として、後向きに回転する向きに応力が生じる。この応力は、第1後向き係止部15Q及び第2後向き係止部15Rが鍔部13Cの前向き対向面13Hに食い込む方向に生じるので、接触部材15を介したダイキャスト製外導体13とグランド部材70との導通をより確実なものにできる。
【0048】
次に、本構成の効果を例示する。
コネクタ10は、内導体11と、内導体11の外周を包囲するダイキャスト製外導体13と、ダイキャスト製外導体13を装着するハウジング14と、外部のグランド部材70及びダイキャスト製外導体13に電気的に接触する接触部材15と、を備える。接触部材15は、被挟持部15Kと、支点部15Lと、弾性接触部15Bと、を有している。ハウジング14に対して相手ハウジング30が嵌合する側を前側とした場合に、被挟持部15Kは、ダイキャスト製外導体13における前側を向く前向き対向面13Hとハウジング14における後側を向く後向き対向面14Gとの間に挟み込まれる。支点部15Lは、被挟持部15Kの前側に連なる。弾性接触部15Bは、支点部15Lの前側においてハウジング14の外面から離れる方向、且つ前方に延びてグランド部材70に接触し、弾性変形可能である。この構成によれば、弾性接触部15Bをハウジング14に近づける向きに押圧すると、支点部15Lを介して、ダイキャスト製外導体13の前向き対向面13Hに被挟持部15Kを押し付ける方向の力を作用させることができるので、接触部材15をダイキャスト製外導体13とグランド部材70との両方に良好に接触させることができる。
【0049】
支点部15Lは、ハウジング14の外面に支持される。この構成によれば、支点部15Lの位置がぶれ難く、弾性接触部15Bをハウジング14に近づける向きに押圧力を付与すると、支点部15Lを介して、被挟持部15Kに対してダイキャスト製外導体13の前向き対向面13Hに押し付ける方向の力に効率的に変換することができる。
【0050】
弾性接触部15Bがグランド部材70に接触する接触位置から支点部15Lまでの距離L1は、被挟持部15Kが前向き対向面13Hに接触する位置から支点部15Lまでの直線距離L2よりも大きい。この構成によれば、弾性接触部15Bがグランド部材70に接触する接触位置から支点部15Lまでの距離L1(すなわち、力点から支点までの距離)が、被挟持部15Kがダイキャスト製外導体13の前向き対向面13Hに接触する位置から支点部15Lまでの直線距離L2(すなわち、作用点から支点までの直線距離)よりも大きいので、被挟持部15Kに対して前向き対向面13Hに押し付ける方向の力をより効率的に作用させることができる。
【0051】
ハウジング14は、後向き対向面14Gに凹設される圧入凹部14Hを有し、被挟持部15Kは、圧入凹部14Hに圧入状態で配置され、圧入凹部14Hは、ダイキャスト製外導体13が装着された装着状態において、前向き対向面13Hで閉塞される。この構成によれば、ハウジング14における圧入凹部14Hを形成する金型構造を簡素化し易い。
【0052】
被挟持部15Kは、圧入凹部14Hへの圧入状態において、圧入凹部14Hの壁面に係止する係止部15Gを有している。この構成によれば、接触部材15がハウジング14から離脱することを抑制し易い。
【0053】
係止部15Gは、第1被挟持部15Cから前後方向と交差する左右方向の各々に突出する第1係止部15Mと、第2被挟持部15Dから前向きに突出する第2係止部15Nと、を有している。この構成によれば、第1被挟持部15C及び第2被挟持部15Dが第1圧入凹部14F及び第2圧入凹部14Eから離脱することをより強固に抑制することができる。
【0054】
<他の実施形態>
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0055】
実施形態1とは異なり、板面から左右方向に向けて突出する係止部を第2被挟持部に設けてもよい。また、第1被挟持部の後向き係止部を前向きに突出して形成してもよい。
【0056】
実施形態1とは異なり、ダイキャスト製外導体の材質として、アルミ合金等からなるアルミダイキャスト製であっても良い。
【0057】
実施形態1とは異なり、接続部材をハウジングに取り付けた後、ダイキャスト製外導体をハウジングに取り付けてもよい。
【0058】
実施形態1とは異なり、鍔部は上方に突出するのみでもよい。
【符号の説明】
【0059】
10…コネクタ
11…内導体
11A…相手接続部
11B…基板接続部
11C…つなぎ部
12…誘電体
12A…端子装着部
12B…端子引出部
12C…装着孔
13…ダイキャスト製外導体
13A…外導体本体
13B…フード部
13C…鍔部
13D…取付突部
13E…係止突部
13F…凸本体部
13G…圧入突起
13H…前向き対向面
14…ハウジング
14A…基壁
14B…嵌合筒部
14C…貫通孔
14D…係止凹部
14E…第2圧入凹部(圧入凹部)
14F…第1圧入凹部(圧入凹部)
14G…後向き対向面
14H…圧入凹部
15…接触部材
15A…連結部
15B…弾性接触部
15C…第1被挟持部(被挟持部)
15D…第2被挟持部(被挟持部)
15E…頂部
15G…係止部
15J…連結本体
15K…被挟持部
15L…支点部
15M…第1係止部(係止部)
15N…第2係止部(係止部)
15Q…第1後向き係止部
15R…第2後向き係止部
30…相手ハウジング
70…グランド部材
H…取付孔
L1…弾性接触部がグランド部材に接触する接触位置から支点部までの距離
L2…被挟持部が前向き対向面に接触する位置から支点部までの直線距離
S…回路基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8