(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128250
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】廃電池の放電方法及びリチウムイオン二次電池のリサイクル方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
H01M10/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037125
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】仲本 朝嗣
(72)【発明者】
【氏名】佐野 篤史
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031EE01
5H031RR02
(57)【要約】
【課題】安全かつ効率的な廃電池の放電方法及びリチウムイオン二次電池のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【解決手段】この廃電池の放電方法は、表面に銅よりイオン化傾向の低い金属を含む導電性粉体に、廃電池を接触させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に銅よりイオン化傾向の低い金属を含む導電性粉体に、廃電池を接触させる、廃電池の放電方法。
【請求項2】
前記導電性粉体は、銅よりイオン化傾向の低い金属で表面がコートされた粉体である、請求項1に記載の廃電池の放電方法。
【請求項3】
絶縁性粉体をさらに含み、
前記導電性粉体と前記絶縁性粉体を混合した混合粉体に、前記廃電池を接触させる、請求項1に記載の廃電池の放電方法。
【請求項4】
前記金属は、金、白金を含む、請求項1に記載の廃電池の放電方法。
【請求項5】
前記金属は、1種類以上の合金を含む、請求項1に記載の廃電池の放電方法。
【請求項6】
請求項1に記載の廃電池の放電方法を用いて廃電池を放電する放電工程を有する、リチウムイオン二次電池のリサイクル方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃電池の放電方法及びリチウムイオン二次電池のリサイクル方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、携帯電話、ノートパソコン等のモバイル機器やハイブリットカー等の動力源としても広く用いられている。
【0003】
リチウムイオン二次電池には、コバルト、ニッケル、マンガン等の有価金属が含まれ、これらの有価金属の回収が求められている。
【0004】
廃電池をリサイクルする際に、安全性の確保の観点から廃電池の残留電力を放電することが行われている。廃電池を塩化ナトリウム水溶液に浸漬することで、廃電池を放電することができる。しかしながら、この方法では、廃電池の正極端子が放電中に電気化学的に酸化溶解し、完全放電しない場合がある。また塩化ナトリウム水溶液は、廃電池を腐食させるため、後工程に悪影響を及し、有価金属の収率や品質の低下を及ぼす。
【0005】
例えば、特許文献1には、溶液に浸漬させずに、廃電池を放電できる方法が開示されている。特許文献1に開示の廃電池の処理方法は、黒鉛等の炭素質の導電性粉体に廃電池を埋め込み、圧力を加えることで放電を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
放電が急速に生じると、放電を担う導電性粉体の導電率が急上昇し、廃電池が発熱、発火する場合がある。また廃電池が発火すると、導電性粉体が粉塵爆発を生じる場合もある。つまり、特許文献1に記載の廃電池の処理方法は、安全性の観点で懸念がある。
【0008】
本開示は上記問題に鑑みてなされたものであり、安全かつ効率的な廃電池の放電方法及び電池のリサイクル方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0010】
(1)第1の態様にかかる廃電池の放電方法は、表面に銅よりイオン化傾向の低い金属を含む導電性粉体に、廃電池を接触させる。
【0011】
(2)上記態様にかかる廃電池の放電方法において、前記導電性粉体は、銅よりイオン化傾向の低い金属で表面がコートされた粉体でもよい。
【0012】
(3)上記態様にかかる廃電池の放電方法は、絶縁性粉体をさらに含み、前記導電性粉体と前記絶縁性粉体を混合した混合粉体に、前記廃電池を接触させてもよい。
【0013】
(4)上記態様にかかる廃電池の放電方法において、前記金属は、金、白金を含んでもよい。
【0014】
(5)上記態様にかかる廃電池の放電方法において、前記金属は、1種類以上の合金を含んでもよい。
【0015】
(6)第2の態様にかかるリチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、上記態様にかかる廃電池の放電方法を用いて廃電池を放電する放電工程を有する。
【発明の効果】
【0016】
上記態様に係る廃電池の放電方法及びリチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、安全で効率性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係るリチウムイオン二次電池のリサイクル方法のフロー図である。
【
図2】本実施形態に係るリチウムイオン二次電池のリサイクル方法において、回収対象となる廃電池の一例の模式図である。
【
図3】本実施形態に係る廃電池の放電方法を説明するための模式図である。
【
図4】実施例1~5及び比較例1~3における電池の放電結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等は実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0019】
図1は、リチウムイオン二次電池のリサイクル方法の一例のフロー図である。本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、例えば、回収工程S1と放電工程S2と分解工程S3と熱処理工程S4と粉砕工程S5と粒径調整工程S6と精製工程S7と再生工程S8とを含む。
【0020】
回収工程S1では、使用済みの廃電池を回収する。廃電池は、例えば、リチウムイオン二次電池である。回収工程S1は、他の業者が行ってもよい。本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池のリサイクル方法では、回収済みの廃電池をリサイクル処理してもよい。
【0021】
図2は、本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池のリサイクル方法において、回収対象となる廃電池の一例の模式図である。リチウムイオン二次電池100は、発電素子40と外装体50と非水電解液(図示略)とを備える。外装体50は、発電素子40の周囲を被覆する。発電素子40は、発電素子40に接続された一対の端子60、62によって外部と接続される。非水電解液は、外装体50内に収容されている。
図2では、外装体50内に発電素子40が一つの場合を例示したが、発電素子40が複数積層されていてもよい。またリチウムイオン二次電池100は、円筒型、角型、ラミネート型、ボタン型等のいずれでもよい。発電素子40は、セパレータ10と正極20と負極30とを備える。
【0022】
正極20は、例えば、正極集電体22と正極活物質層24とを有する。正極活物質層24は、正極集電体22の少なくとも一面に接する。
【0023】
正極集電体22は、例えば、導電性の板材である。正極集電体22は、例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス等の金属薄板である。
【0024】
正極活物質層24は、例えば、正極活物質を含む。正極活物質層24は、必要に応じて、導電助剤、バインダーを含んでもよい。
【0025】
正極活物質は、イオンの吸蔵及び放出、イオンの脱離及び挿入(インターカレーション)、又は、イオンとイオンのカウンターアニオン(例えば、PF6
-)とのドープ及び脱ドープを可逆的に進行させることが可能な電極活物質を用いることができる。イオンとしては、リチウム、マグネシウム等を用いることができる。
【0026】
正極活物質として、例えば、コバルト酸リチウム(LiCoO2)、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)、リチウムマンガンスピネル(LiMn2O4)、及び、一般式:LiNixCoyMnzMaO2(x+y+z+a=1、0≦x<1、0≦y<1、0≦z<1、0≦a<1、MはAl、Mg、Nb、Ti、Cu、Zn、Crより選ばれる1種類以上の元素)で表される複合金属酸化物、リチウムバナジウム化合物(LiV2O5)、オリビン型LiMPO4(ただし、Mは、Co、Ni、Mn、Fe、Mg、Nb、Ti、Al、Zrより選ばれる1種類以上の元素又はVOを示す)、チタン酸リチウム(Li4Ti5O12)、LiNixCoyAlzO2(0.9<x+y+z<1.1)、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセンなどが挙げられる。
【0027】
導電助剤は、正極活物質の間の電子伝導性を高める。導電助剤は、例えば、カーボン粉末、カーボンナノチューブ、炭素材料、金属微粉、炭素材料及び金属微粉の混合物、導電性酸化物である。カーボン粉末は、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等である。金属微粉は、例えば、銅、ニッケル、ステンレス、鉄等の粉である。正極活物質層24におけるバインダーは、正極活物質同士を結合する。バインダーは、公知のものを用いることができる。
【0028】
負極30は、例えば、負極集電体32と負極活物質層34とを有する。負極活物質層34は、負極集電体32の少なくとも一面に接する。
【0029】
負極集電体32は、例えば、導電性の板材である。負極集電体32は、正極集電体22と同様のものを用いることができる。
【0030】
負極活物質層34は、負極活物質とバインダーとを含む。負極活物質層34は、必要に応じて導電助剤を含んでもよい。
【0031】
負極活物質は、イオンを吸蔵・放出可能な化合物であればよく、公知のリチウムイオン二次電池に用いられる負極活物質を使用できる。負極活物質は、例えば、金属リチウム、リチウム合金、炭素材料、リチウムと合金化できる物質である。炭素材料は、例えば、イオンを吸蔵・放出可能な黒鉛(天然黒鉛、人造黒鉛)、カーボンナノチューブ、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、低温度焼成炭素等である。リチウムと合金化できる物質は、例えば、シリコン、スズ、亜鉛、鉛、アンチモンである。リチウムと合金化できる物質は、例えば、これらの単体金属でも、これらの元素を含む合金又は酸化物でもよい。またリチウムと合金化できる物質は、その表面の少なくとも一部が導電性材料(例えば、炭素材料)等で被覆された複合体でもよい。
【0032】
負極活物質層34に用いられる導電助剤及びバインダーは、正極活物質層24と同様のものを用いることができる。
【0033】
セパレータ10は、正極20と負極30とに挟まれる。セパレータ10は、正極20と負極30とを隔離し、正極20と負極30との短絡を防ぐ。セパレータ10は、正極20及び負極30に沿って面内に広がる。リチウムイオンは、セパレータ10を通過できる。
【0034】
セパレータ10は、例えば、電気絶縁性の多孔質構造を有する。セパレータ10は、例えば、ポリオレフィンフィルムの単層体又は積層体である。セパレータ10は、ポリエチレンやポリプロピレン等の混合物の延伸膜でもよい。セパレータ10は、セルロース、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエチレン及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種の構成材料からなる繊維不織布でもよい。セパレータ10は、例えば、固体電解質であってもよい。セパレータ10は、無機コートセパレータでもよい。
【0035】
電解液は、外装体50内に封入され、発電素子40に含浸している。非水電解液は、例えば、非水溶媒と電解塩とを有する。電解塩は、非水溶媒に溶解している。電解液は、公知の電解液を用いることができる。電解液は、例えば、非水溶媒と電解質塩とを含む。
【0036】
外装体50は、その内部に発電素子40及び非水電解液を密封する。外装体50は、非水電解液の外部への漏出や、外部からのリチウムイオン二次電池100内部への水分等の侵入等を抑止する。外装体50は、例えば
図2に示すように、金属箔52と、金属箔52の各面に積層された樹脂層54と、を有する。外装体50は、例えば、金属箔52を高分子膜(樹脂層54)で両側からコーティングした金属ラミネートフィルムである。金属箔52は、例えばアルミ箔である。樹脂層54は、例えば、ポリプロピレン等の高分子膜である。
【0037】
端子60と端子62のそれぞれは、負極30と正極20のそれぞれに接続されている。正極20に接続された端子62は正極端子であり、負極30に接続された端子60は負極端子である。端子60、62は、外部との電気的接続を担う。端子60、62は、アルミニウム、ニッケル、銅等の導電材料から形成されている。
【0038】
次いで、放電工程S2を行う。放電工程S2は、リチウムイオン二次電池100の残留電荷を放電する。放電工程S2は、本実施形態にかかる廃電池の放電方法を用いて行う。
図3は、本実施形態に係る廃電池の放電方法を説明するための模式図である。
【0039】
放電工程S2では、回収した廃電池100を所定の粉体101と接触させる。廃電池100は、所定の粉体101に載置してもよいし、所定の粉体101に押し当ててもよいし、所定の粉体101内に埋めてもよいし、所定の粉体101中で転がしてもよい。放電工程S2では、廃電池に荷重を加えてもよいし、加えなくてもよい。
【0040】
所定の粉体101は、導電性粉体を含む。導電性粉体は、表面に銅よりイオン化傾向の低い金属を含む。導電性粉体は、表面が銅よりイオン化傾向の低い金属で表面がコートされた粉体でも、銅よりイオン化傾向の低い金属の粉体でもよい。ここで、金属は、単体金属でも、合金でもよい。また金属は1種類に限られず、2種類以上でもよい。銅よりイオン化傾向の低い単体金属は、例えば、金、白金である。銅よりイオン化傾向の低い合金は、例えば、銅パラジウム合金、銅白金合金等である。
【0041】
導電性粉体が、金属で表面がコートされた粉体の場合、導電性粉体は母材とコート層とを含む。コート層は、上述の銅よりイオン化傾向の低い金属を含む。母材は特に問わないが、例えば、Ni、Fe、Cu等の金属粉、SiO2等の酸化物粉、樹脂粉である。耐熱性の観点から母材は金属粉、酸化物粉が好ましく、安全性の観点からは酸化物粉が特に好ましい。イオン化傾向の低い金属は高価な場合が多いが、安価な母材を用いることで、粉体101の価格を抑えることができる。
【0042】
また粉体101は、導電性粉体と絶縁性粉体の混合粉体でもよい。絶縁性粉体は、例えば、シリカ粉、樹脂粉である。粉体に絶縁性粉体を加えると、粉体101全体の導電性を抑制でき、廃電池100が急速に放電することにより生じる発熱を抑制できる。そのため、粉体101が混合粉体を含む場合は、荷重を加えて廃電池100を粉体101に押し当てても、過剰な発熱等は生じにくい。荷重を加えて廃電池100を粉体101に押し当てると、廃電池100の放電効率が高まる。
【0043】
粉体101における絶縁性粉体の重量比は、例えば、20%以上40%以下である。絶縁性粉体の重量比を変えることで、粉体101全体の導電性を制御し、廃電池100の放電速度を設計することができる。
【0044】
また粉体101は、上述の導電性粉体、絶縁性粉体の他に、別の導電性粉体を含んでもよい。例えば、粉体101は、炭素材料の粉体を含んでもよい。
【0045】
粉体101のメディアン径(D50)は問わないが、例えば500μm以上であることが好ましい。また導電性粉体のメディアン径(D50)は問わないが、例えば500μm以上であることが好ましい。粉体101のメディアン径が大きいと、放電により導電性粉体が発熱しても、粉塵爆発等が生じにくい。また導電性粉体の導電性が過剰になることを抑えるために、導電性粉体のメディアン径は600μm以下であってもよい。
【0046】
次いで、分解工程S3を行う。分解工程S3では、リチウムイオン二次電池100から有価金属を含む部材を取り出す。有価金属を含む部材は、例えば、正極20である。分解工程S3で有価金属を含む部材を他の部材と分離することで、ブラックマスに含まれる回収対象以外の不純物量を減らすことができる。ブラックマスは、熱処理工程S4及び粉砕工程S5後の選別対象となる試料である。分解工程S3は、行わなくてもよい。分解工程S3を省くことで、手間とコストを削減できる。
【0047】
次いで、熱処理工程S4を行う。熱処理工程S4では、少なくとも正極活物質層24を熱処理する。熱処理は、例えば、焼成処理である。分解工程S3を行った場合は、正極活物質層24又は正極20を焼成してもよい。分解工程S3を行わない場合は、リチウムイオン二次電池100全体を焼成してもよい。熱処理工程S4の温度は、例えば、600℃である。
【0048】
次いで、粉砕工程S5を行う。粉砕工程S5では、熱処理後の試料を粉砕する。熱処理後の試料を粉砕することで、ブラックマスが得られる。粉砕は、公知の方法で行うことができる。例えば、二軸破砕機、ハンマーミル等の破砕装置を用いて粉砕工程S5を行うことができる。正極集電体22、負極集電体32は、展性があり、粉砕工程S5を行うと1mm以上の粒子になりやすい。正極活物質、負極活物質は、粉砕工程S5を行うと1mm未満の粒子になりやすい。
【0049】
次いで、粒径調整工程S6を行う。粒径調整工程S6は、例えば、篩分けで行うことができる。粒径調整工程S6は、行わなくてもよい。粒径調整工程S6では、例えば、平均粒径を100μm以下の粒子を取得する。粒径調整工程S6を行うと、例えば、正極集電体22及び負極集電体32由来の1mm以上の粒子を除去できる。また粒径を揃えることで、精製工程S7における選別効率を高めることができる。
【0050】
ブラックマスをスラリー化する場合は、例えば、粉砕した微粉を水又は有機溶剤に加えることで行う。また微粉に水を加えた懸濁スラリーに界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤を加えると、負極活物質由来のカーボンと正極活物質由来の微粉とを、液中に均一に分散させることができる。
【0051】
次いで、精製工程S7を行う。精製工程S7の方法は、公知の方法を用いることができる。例えば、ブラックマスを酸溶解後に抽出剤を用いて溶媒抽出を行うことで、有価金属を選別できる。この他、比重の違いを利用した比重分離、風力選別等も、精製工程S7に適用できる。
【0052】
精製後のサンプルは、例えば、水洗する。懸濁スラリーを用いた場合は、界面活性剤が付着している場合があり、水洗することで、界面活性剤を除去できる。
【0053】
次いで、再生工程S8を行う。再生工程S8では、回収された試料を、再度リチウムイオン二次電池に再利用する。
【0054】
本実施形態にかかる廃電池の放電方法は、表面に銅よりイオン化傾向の低い金属を含む粉体を用いて放電を行うことで、安全かつ効率的に廃電池を放電することができる。
【0055】
イオン化傾向の高い金属を含む粉体は、大気中で表面酸化されやすい。その結果、粉体が十分な導電性を維持できず、廃電池100を粉体に接触させても、効率的に放電が生じない場合がある。これに対し、イオン化傾向の低い金属は、酸化されにくく、大気中でも良好な導電性を維持できる。
【0056】
またイオン化傾向の低い金属は、廃電池100との接触の際に発熱により酸化燃焼する危険性も低い。
【0057】
すなわち、本実施形態に係る廃電池の放電方法は、比較的高価なイオン化傾向の低い金属を含む粉体をあえて放電材として用いることで、安全かつ効率的に廃電池を放電することができる。
【0058】
また本実施形態にかかるリチウムイオン二次電池のリサイクル方法は、上述の廃電池の放電方法を用いるため、効率的で、安全性が高い。またリチウムイオン二次電池をリサイクルすることで、エネルギーの安定供給に寄与し、持続可能な開発目標に貢献する。
【0059】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【実施例0060】
「実施例1」
図4は、実施例1の処理を説明するための画像である。まず廃電池を準備した。廃電池は、サイズ規格18650のリチウムイオン電池であり、電極端子は鉄及びニッケル等の金属で構成されている。
【0061】
次いで、粉体を準備した。粉体として単体の金の粉を用いた。粉体のメディアン径は2μmであった。
【0062】
次いで、粉体と廃電池とを接触させ、廃電池の残留電圧の時間変化を求めた。廃電池の残留電圧は、回路計で測定した。廃電池の残留電圧は、廃電池と粉体とを接触させてから、1時間経過、2時間経過、3時間経過、5時間経過、7時間経過、23時間経過のそれぞれで測定した。測定した結果を
図4に示す。
【0063】
「実施例2」
実施例2は、Niの表面を金でコーティングした粉を粉体として用いた点が、実施例1と異なる。実施例2の粉体の粒径は、30μmであった。そして、実施例1と同様の方法で、廃電池の残留電圧の時間変化を求めた。測定した結果を
図4に示す。
【0064】
「実施例3」
実施例3は、実施例2の粉体とシリカ粉との混合粉体を粉体として用いた点が、実施例2と異なる。実施例3では、混合粉体全体に対するシリカ粉の質量比を20wt%とした。シリカ粉のメディアン径は、0.8μmであった。そして、実施例1と同様の方法で、廃電池の残留電圧の時間変化を求めた。測定した結果を
図4に示す。
【0065】
「実施例4、5」
実施例4、5は、混合粉体におけるシリカ粉の混合比を変更した点が実施例3と異なる。実施例4では、混合粉体全体に対するシリカ粉の質量比を30wt%とした。実施例5では、混合粉体全体に対するシリカ粉の質量比を40wt%とした。そして、実施例1と同様の方法で、廃電池の残留電圧の時間変化を求めた。測定した結果を
図4に示す。
【0066】
「比較例1」
比較例1は、メディアン径が50μmの鉄粉を粉体として用いた点が、実施例1と異なる。そして、実施例1と同様の方法で、廃電池の残留電圧の時間変化を求めた。測定した結果を
図4に示す。
【0067】
「比較例2」
比較例2は、メディアン径が10μmのニッケル粉を粉体として用いた点が、実施例1と異なる。そして、実施例1と同様の方法で、廃電池の残留電圧の時間変化を求めた。測定した結果を
図4に示す。
【0068】
「比較例3」
比較例3は、メディアン径が200μmの銅粉を粉体として用いた点が、実施例1と異なる。そして、実施例1と同様の方法で、廃電池の残留電圧の時間変化を求めた。測定した結果を
図4に示す。
【0069】
実施例1~5及び比較例1~3の廃電池の放電条件を表1にまとめた。
【0070】
【0071】
図4に示すように、比較例1~3に係る廃電池の放電方法では、廃電池を十分放電させることができなった。これに対し、実施例1~5に係る廃電池の放電方法は、放電を速やかに進行させることができた。これは、比較例1~3に係る廃電池の放電方法では、放電材である粉体の表面が大気により酸化され、放電材として十分な導電性を確保できなかったためと考えられる。
【0072】
また
図4に示すように、実施例3~5に係る廃電池の放電方法は、実施例1及び2に係る廃電池の放電方法と比較して、放電が緩やかに進行した。つまり、実施例3~5に係る廃電池の放電方法は、急速な放電に伴う放電材の発熱が生じにくく、安全性に優れる。