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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128263
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】穿孔装置
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/14 20060101AFI20240913BHJP
   B23B 51/12 20060101ALI20240913BHJP
   E21B 25/04 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B28D1/14
B23B51/12
E21B25/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037149
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】502263905
【氏名又は名称】ダイヤモンド機工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000165424
【氏名又は名称】株式会社コンセック
(71)【出願人】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 立
(72)【発明者】
【氏名】向井 啓通
(72)【発明者】
【氏名】垣中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】上條 宏明
(72)【発明者】
【氏名】平田 豪
(72)【発明者】
【氏名】神田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】綿川 文治
(72)【発明者】
【氏名】大下 貴史
(72)【発明者】
【氏名】眞野 敬英
【テーマコード(参考)】
3C037
3C069
【Fターム(参考)】
3C037AA05
3C037BB16
3C037FF09
3C069AA04
3C069BA09
3C069BB01
3C069BB03
3C069BC03
3C069BC04
3C069CA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】コアビットの連結が穿孔時に意図せず解除されることを抑制しつつ、保守時にはコアビットの連結を容易に解除可能な穿孔装置を提供する。
【解決手段】穿孔装置は、チューブ22の外周面に係合部24を有したコアビット21と、連結部35から係合部24に第1方向R1の回転力を伝えてコアビット21を回転させるカップリング部31と、を備える。係合部24は、前方に面する第1面24B及び第2面24Cを備える。コアビット21を第1方向R1に回転させながら前進させる穿孔時において、第1面24Bと連結部35とが当接し、かつ第2面24Cと連結部35とが離間する。コアビット21を第1方向R1に回転させながら後退させる引き抜き時において、第2面24Cと連結部35とが当接する。第1面24Bを含む平面とチューブ22の中心軸Aとがなす第1角度θ1は、第2面24Cを含む平面と中心軸Aとがなす第2角度θ2よりも小さい。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に刃を備えたチューブの外周面に凸部である係合部を有したコアビットと、
前記係合部に嵌合する連結部を備え、前記連結部から前記係合部に第1方向の回転力を伝えて前記コアビットを前記第1方向に回転させる回転機構部と、を備え、
前記コアビットを前記第1方向に回転させながら前進させる穿孔と、前記コアビットを前記第1方向に回転させながら後退させる引き抜きと、を行う穿孔装置であって、
前記係合部は、前方に面する第1面及び第2面であって、前記穿孔時に前記連結部と当接する前記第1面と、前記穿孔時に前記連結部と離間し、かつ、前記引き抜き時に前記連結部と当接する前記第2面と、を備え、
前記係合部の突端と対向する視点から見て、前記第1面を含む平面と前記チューブの中心軸とがなす第1角度は、前記第2面を含む平面と前記中心軸とがなす第2角度よりも小さい
ことを特徴とする穿孔装置。
【請求項2】
前記回転機構部は、前記連結部と、前記チューブの基端部が内嵌する受け部と、を有するカップリング部を備え、
前記連結部は、前記受け部から前記チューブの先端側に突出した第1係止部と、前記第1係止部の先端から前記第1方向に突出して前記係合部に対する前記先端側に位置する第2係止部と、を備え、
前記第2係止部は、前記穿孔時に前記第1面と当接する第1係止面と、前記穿孔時に前記第2面と離間し、前記引き抜き時に前記第2面と当接する第2係止面と、を備え、
前記第1係止面は、前記第2係止面よりも基端側に位置し、かつ、前記第1面よりも周方向の長さが長い
ことを特徴とする請求項1に記載の穿孔装置。
【請求項3】
前記受け部は、前記チューブの基端側の端面と対向する底面を備え、
前記端面と前記底面との間には、弾性部材が配置される
ことを特徴とする請求項2に記載の穿孔装置。
【請求項4】
前記チューブを回転不能に保持する状態と、前記チューブの保持を解除する状態とを切り換え可能な保持部をさらに備え、
前記保持部により前記チューブを保持した状態で、前記回転機構部により前記連結部を前記第1方向に回転させることにより前記係合部と前記連結部とを嵌合させ、
前記保持部により前記チューブを保持した状態で、前記回転機構部により前記連結部を前記第1方向と反対の第2方向に回転させることにより前記係合部と前記連結部との嵌合を解除する
ことを特徴とする請求項1ないし3のうち何れか一項に記載の穿孔装置。
【請求項5】
前記コアビットの下方に位置し、前記チューブの中心軸に沿って移動可能な引掛部材をさらに備え、
前記引掛部材は、前記コアビットの外周面に位置する段差に当接して引っ掛けることが可能な形状を有する
ことを特徴とする請求項4に記載の穿孔装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に刃が配置されたチューブを有するコアビットを備える穿孔装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートなどの構造物を穿孔するための穿孔装置の一例は、コアビットと、コアビットを回転させる回転機構部とを備える(例えば、特許文献1参照)。コアビットは、円筒形状のチューブと、チューブの先端に配置された刃とを備える。チューブは、回転機構部からの回転を効率よく伝達するために、螺合などの連結手段によって回転機構部の接続部に強固に連結されている。穿孔装置は、コアビットを回転させながら直進することにより、穿孔対象物に孔を形成する。穿孔が完了すると、コアビットは、穿孔時と同じ方向に回転しながら穿孔対象物から引き抜かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-177740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コアビットの刃が摩耗した場合やチューブ内に穿孔による残留物が残った場合等には、コアビットと回転機構部との連結を解除してコアビットを取り外す必要がある。このため、回転機構部にコアビットを連結する構造は、コアビットの保守時に連結を解除できるように、穿孔時には固着を抑制し、かつ、引き抜き時には回転による意図しない解除を抑制することを望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための穿孔装置は、先端に刃を備えたチューブの外周面に凸部である係合部を有したコアビットと、前記係合部に嵌合する連結部を備え、前記連結部から前記係合部に第1方向の回転力を伝えて前記コアビットを前記第1方向に回転させる回転機構部と、を備え、前記コアビットを前記第1方向に回転させながら前進させる穿孔と、前記コアビットを前記第1方向に回転させながら後退させる引き抜きと、を行う穿孔装置であって、前記係合部は、前方に面する第1面及び第2面であって、穿孔時に前記連結部と当接する前記第1面と、前記穿孔時に前記連結部と離間し、かつ、前記引き抜き時に前記連結部と当接する前記第2面と、を備え、前記係合部の突端と対向する視点から見て、前記第1面を含む平面と前記チューブの中心軸とがなす第1角度は、前記第2面を含む平面と前記中心軸とがなす第2角度よりも小さい。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コアビットの連結が穿孔時に意図せず解除されることを抑制しつつ、保守時にはコアビットの連結を容易に解除できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、穿孔装置の正面図である。
図2図2は、図1における2-2線から見た断面図である。
図3図3は、コアビットとカップリング部とを拡大して示す分解斜視図である。
図4図4は、コアビットとカップリング部とを拡大して示す正面図である。
図5図5は、コアビットとカップリング部とを拡大して示す断面図である。
図6図6は、引掛部材を拡大して示す平面図である。
図7図7は、コアビットと保持部とを拡大して示す上面図である。
図8図8は、コアビットとカップリング部とを拡大して示す斜視図である。
図9図9は、コアビットとカップリング部との連結が解除された状態の穿孔装置の正面図である。
図10図10は、穿孔時の係合部と連結部とを拡大して示す正面図である。
図11図11は、引き抜き時の係合部と連結部とを拡大して示す正面図である。
図12図12は、連結が解除されたコアビットと引掛部材とを拡大して示す正面図である。
図13図13は、係合部及び連結部の変更例における穿孔時の状態を示す正面図である。
図14図14は、係合部及び連結部の変更例における引き抜き時の状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図1図14を用いて、穿孔装置の一実施形態を説明する。
[穿孔装置]
図1に示す穿孔装置10は、穿孔対象物に対して水平方向に延在する長孔を形成する。穿孔対象物は、一例として鉄筋コンクリートブロックである。
【0009】
穿孔装置10は、略直方体形状の支持枠11を備える。支持枠11は、四角枠状の第1フレーム12及び第3フレーム14と、第1フレーム12及び第3フレーム14の角部同士を繋ぐ4つの第2フレーム13とを備える。第1フレーム12は、第3フレーム14よりも穿孔対象物側に位置する。第1フレーム12及び第3フレーム14は、互いに平行に配置される。第2フレーム13は、第1フレーム12と第3フレーム14との間で、これらと直交する方向に延在するように配置される。なお、第3フレーム14から第1フレーム12に向かう方向を前方とし、第1フレーム12から第3フレーム14に向かう方向を後方とする。
【0010】
穿孔装置10は、支持枠11によって支持される穿孔部20を備える。穿孔部20は、コアビット21と、回転機構部30と、直動機構部40とを備える。コアビット21は、回転機構部30に連結される。回転機構部30は、連結されたコアビット21を回転させる。直動機構部40は、回転機構部30を並進させることによって、回転機構部30に連結されたコアビット21を並進させる。
【0011】
コアビット21は、全体として中空の略円筒形状を有する。コアビット21は、チューブ22を備える。チューブ22は、1m程度の長尺の円筒形状を有する。チューブ22の中心軸Aは、第2フレーム13の延在方向と平行である。チューブ22の基端、すなわち、第3フレーム14側の端部は、回転機構部30に連結される。
【0012】
コアビット21は、ビット部23を備える。ビット部23は、チューブ22の先端、すなわち、チューブ22の両端部のなかで第1フレーム12側(穿孔対象物側)の端部に螺合されることで、チューブ22と一体に構成される。ビット部23の先端には、複数の円弧形状の刃(チップ)が、ビット部23の周方向に間隔をおいて固着される。刃は、一例として、内周側が外周側よりも突出した形状を有する。ビット部23は、チューブ22から螺退させて交換することができる。
【0013】
回転機構部30は、カップリング部31と、モータ32と、接続部33とを備える。カップリング部31は、コアビット21に接続部33を接続する。モータ32は、一例として、正逆回転モータである。モータ32の回転は、非図示のギアや回転軸などを介して接続部33に伝達され、さらに、接続部33を介してカップリング部31に伝達される。これにより、コアビット21が回転する。
【0014】
接続部33は、中空の円筒形状を有する。接続部33の内部の空間は、コアビット21の内部の空間と繋がる。接続部33には、集塵用ホースHが接続される。コアビット21の内部の空間は、接続部33及び集塵用ホースHを介して図示しない吸引装置に接続される。吸引装置は、コアビット21の内部に位置する粉塵を吸引する。
【0015】
直動機構部40は、ガイドレール41と、可動部42とを備える。ガイドレール41は、支持枠11内において、コアビット21の下方の位置でチューブ22の中心軸Aに沿って第2フレーム13と平行に延在する。可動部42は、ガイドレール41上を移動する。可動部42には、回転機構部30が取り付けられる。可動部42は、回転機構部30をガイドレール41に沿って並進させることで、回転機構部30に連結されたコアビット21を並進させる。
【0016】
例えば、ガイドレール41は、ラックギアを備える。可動部42は、ピニオンギアと、ピニオンギアを回転させるモータとを備える。可動部42は、ピニオンギアを回転させることで、ガイドレール41のラックギア上を移動する。
【0017】
ガイドレール41は、第1支持部43と、第2支持部44とを備える。第1支持部43及び第2支持部44は、チューブ22が回転可能、かつ、中心軸Aが延びる軸方向にチューブ22が並進可能な状態で、チューブ22を下方から支持する。第1支持部43及び第2支持部44は、一例として、チューブ22の外周面に当接するボールローラである。
【0018】
第1支持部43は、ガイドレール41のうち第2支持部44よりも先端側に配置される。第1支持部43は、一例として、ガイドレール41に対して移動不能に固定される。第2支持部44は、ガイドレール41に対して移動可能に取り付けられた移動台45上に配置される。移動台45は、例えば、可動部42と連動するように可動部42に取り付けられる。
【0019】
ガイドレール41は、引掛部材46を備える。引掛部材46は、例えば、U字状など、コアビット21の外周面に位置する段差と係合してコアビット21に引掛部材46を引っ掛けることが可能な形状を有する。引掛部材46は、例えば、第2支持部44とともに移動台45上に配置される。すなわち、第2支持部44及び引掛部材46は、可動部42の移動に追従して移動台45が移動することによってガイドレール41に沿って並進する。
【0020】
穿孔装置10は、回転機構部30によってコアビット21を第1方向R1に回転させた状態で、回転機構部30を介してコアビット21を前進させてコアビット21の刃を穿孔対象物に押し当てることで穿孔対象物の穿孔を行う。また、穿孔完了後には、回転機構部30によってコアビット21を第1方向R1に回転させた状態で、回転機構部30を介してコアビット21を後退させることで穿孔対象物からコアビット21を引き抜く。
【0021】
図2に示すように、穿孔装置10は、一対の差込ブラケットBを備える。差込ブラケットBは、差込ブラケットBの両端部のなかで第3フレーム14側の端部が開口した中空の四角柱形状を有する。一対の差込ブラケットBは、第2フレーム13と平行、かつ、互いに離間して配置される。差込ブラケットBは、穿孔装置10を移動させるためのフォークリフトのフォークが差し込まれる。
【0022】
穿孔装置10は、ベースプレート15を備える。ベースプレート15は、第1フレーム12の第3フレーム14側の面に取り付けられる。ベースプレート15は、中心に貫通孔15Aを備える。貫通孔15Aは、チューブ22を遊挿可能な大きさの円形状を有する。
【0023】
ベースプレート15の上部には、第1取付部材16Aを介してローラ17が取り付けられる。ローラ17は、チューブ22の外周面に当接するように配置される。また、支持枠11の下部には、第2取付部材16Bを介してガイドレール41が取り付けられる。
【0024】
チューブ22は、2つの第1支持部43によって、貫通孔15Aに遊挿された状態のチューブ22を下方から支持する状態を図示している。チューブ22は、第3フレーム14側においても同様に、2つの第2支持部44によって下方から支持されている。
【0025】
穿孔装置10は、保持部50を備える。保持部50は、一対の保持部材51を備える。ベースプレート15には、貫通孔15Aを挟んで一対の第3取付部材16Cが設けられる。各保持部材51は、第3取付部材16Cを介してベースプレート15に固定される。
【0026】
各保持部材51は、内蔵するエアシリンダによって伸縮する伸縮部52と、伸縮部52の先端に配置された当接部53とを備える。各保持部材51は、当接部53同士がチューブ22を挟んで互いに対向するように配置される。各当接部53の中心は、チューブ22の中心軸Aと直交する線上に配置される。各当接部53は、伸縮部52が伸長した際に、チューブ22に当接する。
【0027】
保持部50は、2つの保持部材51の当接部53によって、チューブ22を挟み込むように押圧することにより、保持部50に対してチューブ22を回転不能かつ直動不能に保持する。保持部50は、当接部53による押圧を解除することにより、チューブ22の保持を解除する。すなわち、保持部50は、伸縮部52が当接部53を移動させることで、チューブ22を保持する状態と、保持を解除した状態とを切り換え可能に構成される。
【0028】
穿孔装置10は、図示しない制御装置を備える。制御装置は、回転機構部30の動作、直動機構部40の動作、及び、保持部50の動作を制御する。制御装置は、コアビット21を第1方向R1に回転させながら穿孔対象物に向けて直進させることで穿孔を行う。制御装置は、コアビット21を第1方向R1に回転させながら穿孔対象物から後退させることでコアビット21の引き抜きを行う。また、制御装置は、保持部50を制御してコアビット21のチューブ22を保持した状態で、回転機構部30を移動及び回転させることで、コアビット21と回転機構部30との着脱を行なう。
【0029】
[コアビットと回転機構部との連結]
以下、穿孔装置10の説明において、中心軸Aの延びる方向を単に軸方向ともいう。また、チューブ22の周方向を単に周方向、及びチューブ22の径方向を単に径方向ともいう。なお、径方向のなかで、穿孔時にチューブ22が回転する方向が第1方向R1であり、第1方向R1とは反対の方向が第2方向R2である。
【0030】
図3に示すように、チューブ22は、略一定の外径を有する本体部22Aと、チューブ22の軸方向における両端部のなかで回転機構部30側の端部に位置する基端部22Bと、本体部22Aよりも大きな外径を有する大径部22Cとを備える。大径部22Cは、軸方向においてチューブ22における本体部22Aよりも回転機構部30に近い。大径部22Cは、本体部22Aと基端部22Bとの間に位置する。本体部22Aと大径部22Cとの間の段差は、チューブ22の外周面に位置する段差の一例である。
【0031】
チューブ22は、複数の係合部24を備える。係合部24は、チューブ22の外周面において径方向の外側に向けて突出した凸部である。係合部24は、例えば、大径部22Cの外周面において、中心軸A上の点を中心として相互に隣り合う係合部24の中心角が90度になるように互いに離間している。各係合部24は、周方向に等配される。チューブ22は、複数の係合部24の一例として4つの係合部24を備えてもよい。本体部22Aと係合部24との間の段差は、チューブ22の外周面に位置する段差の一例である。
【0032】
凸部である係合部24の頂面は、係合部24の突端である。係合部24の頂面は、多角形状を有する。係合部24の頂面は、径方向の外側に向けて突出した複数の端面に囲まれる。係合部24における複数の端面は、突き当て面24Aと、第1面24Bと、第2面24Cとを備える。突き当て面24Aは、中心軸Aと平行な面であって、係合部24において第2方向R2に面する端面である。突き当て面24Aは、中心軸Aを含む平面上に配置されてもよい。第1面24B及び第2面24Cは、チューブ22の中心軸Aと交差する別々の平面上に配置される。第1面24B及び第2面24Cは、係合部24の端面のなかで穿孔対象物側、すなわち、前方に面する。第1面24B及び第2面24Cは、相互に隣り合う面である。第1面24Bは、第2面24Cに対して突き当て面24A側に位置する。
【0033】
回転機構部30のカップリング部31は、受け部34と、複数の連結部35とを備える。受け部34は、チューブ22の中心軸Aと同軸の有底円筒形状を有する。受け部34は、チューブ22の基端部22Bが内嵌する。受け部34は、外周に等間隔で形成された複数の孔34Hを備える。孔34Hは、チューブ22の基端部22Bとカップリング部31との隙間に入り込んだ微量の粉塵を排出するために用いられる。
【0034】
連結部35は、受け部34からチューブ22の先端側に向けて突出した片である。連結部35には、チューブ22が備える係合部24が嵌合する。連結部35は、チューブ22における係合部24の配置と対応するように、周方向に等間隔を空けてカップリング部31に配置される。4つの係合部24がチューブ22の外周面に等配される場合、4つの連結部35は、例えば、相互に隣り合う連結部35の中心角が90度になるように互いに離間してカップリング部31の外周面に等配される。
【0035】
連結部35は、受け部34からチューブ22の先端側に突出した第1係止部36と、第1係止部36の先端からチューブ22の周方向に突出する第2係止部37とを備える。第2係止部37の先端は、第1係止部36から穿孔時の回転方向となる第1方向R1に向かって突出する。連結部35は、第1係止部36と第2係止部37とによってL字状の外形を有する。受け部34及び連結部35は、係合部24に対する第1方向R1の回転によって係合部24を受け入れ、かつ、係合部24に対する第2方向R2の回転によって係合部24を離すように、第1方向R1に向けて拡開された鉤状を有する。
【0036】
連結部35は、複数の端面を備える。連結部35が備える複数の端面は、被突き当て面36Aと、第1係止面37Aと、第2係止面37Bとを備える。被突き当て面36Aは、第1係止部36が備える面である。被突き当て面36Aは、中心軸Aと平行な面であって、第1方向R1に面する。被突き当て面36Aは、中心軸Aを含む平面上に配置されてもよい。第1係止面37A及び第2係止面37Bは、第2係止部37が備える面である。第1係止面37A及び第2係止面37Bは、中心軸Aと交差する別々の平面上に配置される。第1係止面37A及び第2係止面37Bは、穿孔対象物と反対側、すなわち、後方に面する。第1係止面37A及び第2係止面37Bは、相互に隣り合う面である。第1係止面37Aは、第2係止面37Bよりも第2係止部37の基端側に位置する。
【0037】
カップリング部31には、受け部34と連結部35とによって凹部38が形成される。各凹部38には、チューブ22の係合部24が1つずつ嵌合する。隣り合う連結部35の周方向の間隔は、係合部24の周方向の長さよりも大きい。係合部24は、隣り合う連結部35の間を通過して凹部38に嵌合する。第1係止部36は、係合部24に対して第2方向R2側に配置される。第2係止部37は、係合部24に対してチューブ22の先端側に配置される。なお、相互に隣り合う連結部35の間隔は、1つの連結部35が備える第2係止部37の先端と、当該先端に隣接する他の連結部35が備える第1係止部36との距離に相当する。
【0038】
図4に示すように、係合部24は、カップリング部31の連結部35と嵌合可能に構成される。係合部24及び連結部35は、係合部24が凹部38に位置する状態で、突き当て面24Aと被突き当て面36Aとが対向し、第1面24Bと第1係止面37Aとが対向し、第2面24Cと第2係止面37Bとが対向する。
【0039】
係合部24の頂面と対向する視点から見て、中心軸Aと第1面24Bを含む平面とがなす第1角度θ1は、中心軸Aと第2面24Cを含む平面とがなす第2角度θ2よりも小さい。第1角度θ1は、例えば、75度である。第2角度θ2は、例えば、90度である。また、換言すると、中心軸Aと直交する直交面と第1面24Bを含む平面とがなす角度は、当該直交面と第2面24Cを含む平面とがなす角度よりも大きい。直交面と第1面24Bを含む平面とがなす角度は、例えば、15度である。直交面と第2面24Cを含む平面とがなす角度は、例えば、0度である。
【0040】
第1面24Bと第2面24Cとがなす優角は、第1係止面37Aと第2係止面37Bとがなす優角と等しい。したがって、チューブ22とカップリング部31とが同軸に配置された状態で、第1面24Bと第1係止面37Aとが平行、かつ、第2面24Cと第2係止面37Bとが平行になる。すなわち、中心軸Aと第1係止面37Aを含む平面とがなす角度が第1角度θ1に等しく、かつ、中心軸Aと第2係止面37Bを含む平面とがなす角度が第2角度θ2に等しい状態となる。
【0041】
係合部24の第1面24Bは、係合部24の頂面と対向する視点から見て、第2方向R2に向かうにつれて、係合部24における軸方向の幅が小さくなるように傾斜する。同様に、第2係止部37の第1係止面37Aは、係合部24の頂面と対向する視点から見て、第2方向R2に向かうにつれて、凹部38における軸方向の幅が小さくなるように傾斜する。
【0042】
凹部38において、受け部34と第2係止面37Bとの間の軸方向の幅は、係合部24における軸方向の幅の最大値と等しいか、それよりも大きい。第1係止面37Aは、第1面24Bよりも周方向の長さが長い。したがって、突き当て面24Aと被突き当て面36Aとが当接した状態では、第2面24Cと第2係止面37Bとが離間する。第2面24Cと第2係止面37Bとが当接した状態では、突き当て面24Aと被突き当て面36Aとが離間する。
【0043】
図5に示すように、チューブ22の基端部22Bは、チューブ22の基端側の端面22Sを備える。カップリング部31の受け部34は、端面22Sと対向する底面34Sを備える。端面22Sと底面34Sとの間には、環状の弾性部材39が配置される。弾性部材39は、例えば、シート状のゴムである。弾性部材39は、受け部34に内嵌されたチューブ22に対して、チューブ22の先端側に向かう反力を付与する。
【0044】
受け部34は、円板34Aを備える。円板34Aは、カップリング部31に内嵌しているチューブ22の内周面との間、及び、弾性部材39との間に隙間を設けて配置される。受け部34は、軸中心に延在する貫通孔が形成されている。受け部34の貫通孔は、チューブ22の内部の空間と、接続部33に接続された集塵用ホースHとを繋ぐ。
【0045】
[引掛部材]
以下、図6を参照して、引掛部材46について詳述する。なお、図6では、引掛部材46の後方から引掛部材46を見た状態を図示している。また、図6では、チューブ22が備える係合部24の外形を二点鎖線で示している。
【0046】
引掛部材46は、一例として板状部材である。引掛部材46は、上方に面する円弧面46S1を備える。円弧面46S1の曲率半径は、チューブ22の大径部22Cの外周面における半径と同程度、もしくは、それよりも大きな径を有する。円弧面46S1は、回転機構部30に連結されたコアビット21のチューブ22が備える本体部22Aの下方において、本体部22Aの外周面と離間した状態で当該外周面と対向する。
【0047】
引掛部材46は、穿孔対象物と反対の後方に面する引掛面46S2を備える。引掛面46S2は、係合部24の第1面24B及び第2面24Cと対向する。引掛面46S2の周方向における長さは、相互に隣り合う係合部24の周方向の間隔よりも大きい。したがって、引掛部材46の後方から見て、少なくとも1つの係合部24と引掛面46S2とが重なる。
【0048】
[穿孔方法]
次に、図1を用いて穿孔装置10を用いた穿孔方法について説明する。穿孔対象物に穿孔を行う際には、コアビット21を穿孔装置10に設置する。その後、図示しないフォークリフトの一対のフォークを差込ブラケットBに挿入した状態で、穿孔装置10を持ち上げて移動させる。そして、第1フレーム12が穿孔対象物に対向するように穿孔装置10を配置する。次に、穿孔装置10の集塵用ホースHを、図示しない吸引装置に接続する。吸引装置は、カップリング部31、接続部33及び集塵用ホースHを介してチューブ22の内部の空気を排出する。
【0049】
そして、制御装置は、回転機構部30のモータ32及び直動機構部40の可動部42のモータを駆動させる。これにより、コアビット21は、第1方向R1に回転しながら穿孔対象物の当接面から内部へと水平方向に直進する。このとき、ビット部23の刃が円環形状に切削を行なう。さらに、切削によって発生した粉塵は、吸引装置による吸引力と回転するチューブ22の遠心力とを受けて、チューブ22の内周面に沿いながら後方に移動する。そして、粉塵は、チューブ22の内周面と円板34Aとの隙間、円板34Aと底面34Sとの間を通して、カップリング部31の貫通孔から集塵用ホースHに排出される。
【0050】
その後、コアビット21による切削が完了した場合、コアビット21を第1方向R1に回転させながら、直動機構部40の可動部42を駆動してコアビット21を後退させる。これにより、コアビット21が穿孔対象物から引き抜かれることで、穿孔対象物に長孔が形成される。
【0051】
[コアビットの着脱方法]
次に、穿孔装置10におけるコアビット21の着脱方法について説明する。まず、穿孔に伴ってビット部23の刃が摩耗した場合や、穿孔後にチューブ22内の残留物を取り除きたい場合などの保守時に、コアビット21と回転機構部30との連結を解除する方法について説明する。なお、以下のコアビット21の着脱方法は、制御装置を用いて穿孔装置10の各部を遠隔から操作することによって行われる。
【0052】
図7に示すように、制御装置は、保持部50の一対の保持部材51のエアシリンダを制御することで、図7の二点鎖線で示すように各伸縮部52を伸長させる。そして、一対の当接部53は、コアビット21のチューブ22を挟み込むように押圧する。これにより、チューブ22は、回転不能かつ直動不能に固定される。
【0053】
図8に示すように、次いで、制御装置は、回転機構部30のモータ32を回転させる。ここでは、制御装置は、図8に示す状態のカップリング部31を第2方向R2に回転させる。これにより、凹部38の内部に位置するチューブ22の係合部24と連結部35との嵌合が解除される。
【0054】
図9に示すように、次いで、直動機構部40のモータを稼働させて、可動部42を第3フレーム14側に移動(後退)させる。これにより、コアビット21とカップリング部31との連結が解除される。そして、コアビット21のチューブ22に吊り具などを掛止する。その後、制御装置は、保持部50のエアシリンダを制御することで、伸縮部52を縮小させる。これにより、保持部50は、チューブ22の固定を解除する。そして、コアビット21を掛止した吊り具によって吊り上げて移動させる。その後、移動先において、コアビット21のチューブ22内から残留物を除去したり、摩耗した刃を有するビット部23を新たな刃のビット部23と交換したりする。
【0055】
次に、回転機構部30にコアビット21を連結する方法について説明する。まず、図9に示す状態のように、コアビット21を吊り具などで吊り下げることで、穿孔装置10内において、回転機構部30の前方にコアビット21を配置する。そして、制御装置は、再び保持部50の一対の伸縮部52を伸長させることで、新たに配置したチューブ22を回転不能かつ直動不能に固定する。
【0056】
次いで、制御装置は、直動機構部40のモータを稼働させて、カップリング部31の連結部35が、チューブ22の係合部24の間を通過するように、可動部42を第1フレーム12側に移動(前進)させる。そして、制御装置は、回転機構部30のモータ32を第1方向R1に回転させる。これにより、カップリング部31がチューブ22に対して回転することで、チューブ22の係合部24がカップリング部31の凹部38に嵌合する。以上により、新たなチューブ22が穿孔装置10に連結される。
【0057】
[実施形態の作用:穿孔時]
以下、図10を参照して穿孔時の係合部24及び連結部35の状態について説明する。
図10に示すように、穿孔がはじめられるとき、カップリング部31が第1方向R1に回転することで、係合部24と連結部35との連結部分を介してカップリング部31の回転力がコアビット21に伝達される。これにより、突き当て面24Aが被突き当て面36Aに突き当たるまで、凹部38のなかで係合部24が第2係止部37に対して相対的に移動する。
【0058】
ビット部23が穿孔対象物に押し当てられると、コアビット21には、穿孔対象物から受ける摩擦力F1が回転に対する抵抗として作用しはじめる。すなわち、穿孔時には、コアビット21に対して第2方向R2に摩擦力F1が作用しはじめる。
【0059】
また、穿孔がはじめられるとき、直動機構部40が回転機構部30を穿孔対象物に向かって前進させることで、カップリング部31の底面34Sが弾性部材39を介してチューブ22の端面22Sを押圧する。このとき、コアビット21に対して前方に向かう弾性部材39からの反力F2が作用する。
【0060】
したがって、穿孔がはじめられると、係合部24には、連結部35から伝達される回転力に加え、係合部24が第1係止部36に近づく方向の摩擦力F1と、係合部24が第2係止部37に近づく方向の反力F2が作用する。このとき、第1係止面37Aが第1面24Bよりも長いことから、第2面24Cと第2係止面37Bとの間に間隙Gが形成される。すなわち、穿孔が続けられると、摩擦力F1及び反力F2によって、第1面24Bが第1係止面37Aに当接し続けるとともに、第2面24Cが第2係止面37Bから離間する。
【0061】
この際、第1角度θ1が第2角度θ2よりも小さい。このため、反力F2を垂直抗力として第1係止面37Aから受ける第1面24Bの摩擦力は、第2係止面37Bから受ける第2面24Cの摩擦力よりも小さい。したがって、相対的に摩擦力が大きい第2面24Cと第2係止面37Bとが穿孔時に離間することで、穿孔時における係合部24と連結部35との間の摩擦力が低減される。
【0062】
仮に、穿孔時における係合部24と連結部35との間の摩擦力が大きい場合には、係合部24が連結部35に噛み込み易くなる。その結果、係合部24と連結部35との連結を解除するために要する力が、保持部50がチューブ22を固定した状態でチューブ22を保持する力よりも大きくなる場合がある。この場合、コアビット21とカップリング部31との連結の解除ができなくなる。この点、穿孔時における係合部24と連結部35との間の摩擦力を低減することで、穿孔対象物からの摩擦力F1が大きい場合などであっても、係合部24が連結部35に噛み込むことを抑制できる。これによって、コアビット21とカップリング部31との連結を容易に解除することができる。
【0063】
[実施形態の作用:引き抜き時]
以下、図11を参照して穿孔後にコアビット21を引き抜く際(以下、引き抜き時)の係合部24及び連結部35の状態について説明する。
【0064】
図11に示すように、引き抜き時には、図10に示す状態から、穿孔時と同様にカップリング部31が第1方向R1に回転することで、係合部24と連結部35との連結部分を介してカップリング部31の回転力がコアビット21に伝達される。同時に、直動機構部40が回転機構部30を穿孔対象物から後退させることで、コアビット21の係合部24にはカップリング部31の連結部35からの後方に向かう引き抜き力F3が作用する。
【0065】
コアビット21の引き抜き時には、コアビット21の回転速度とカップリング部31の回転速度との差異により、コアビット21に第1方向R1の慣性力F4が作用する場合がある。慣性力F4は、凹部38に位置する係合部24と連結部35との連結が解除される方向の力である。慣性力F4は、例えば、コアビット21とカップリング部31とが同じ回転速度で回転する状態からカップリング部31の回転速度が減速した際に、コアビット21に作用する。例えば、穿孔中に穿孔対象物の一部が折れるなどして、穿孔後のチューブ22内に当該一部が残留する場合には、特に慣性力F4が大きくなる。
【0066】
このとき、慣性力F4が第1面24Bと第1係止面37Aとの間の摩擦力よりも大きくなると、引き抜き力F3と慣性力F4とによって、第1面24Bが第1係止面37Aを滑るようにして、係合部24が第2係止部37の先端に向けて移動する。これによって、係合部24と連結部35との連結が緩められる。そして、第2面24Cと第2係止面37Bとが当接する位置まで係合部24が移動すると、第2係止面37Bから受ける第2面24Cの摩擦力によって、連結部35から受ける係合部24の摩擦力が大きくなる。すなわち、第2面24Cと第2係止面37Bとの間の摩擦力によって、緩められた係合部24と連結部35との連結が外れてしまうことを抑制できる。このとき、受け部34の底面34Sとチューブ22の端面22Sとの間に配置された弾性部材39の反力によって、第2面24Cと第2係止面37Bとの間の摩擦力をより高めることができる。
【0067】
なお、図11では、引き抜き時において、第1面24Bが第1係止面37Aから離間した状態を図示しているが、第2面24Cと第2係止面37Bとが当接したときに、第1面24Bと第1係止面37Aとが当接していてもよい。また、引き抜き時において、コアビット21に伝達される回転力に対して引き抜き力F3が大きい場合には、慣性力F4が作用していない状態でも、引き抜き力F3によって第2面24Cが第2係止面37Bに当接する状態となる。このような場合でも、第2面24Cが第2係止面37Bに当接していることから、係合部24と連結部35との連結が外れることを抑制できる。
【0068】
[実施形態の作用:引掛部材]
以下、図12を参照して引掛部材46の作用について説明する。
図12に示すように、コアビット21の引き抜き時において、仮にコアビット21とカップリング部31との連結が意図せず解除された場合では、引掛部材46の引掛面46S2と係合部24の第2面24Cとが対向する。
【0069】
この状態で、直動機構部40が回転機構部30を穿孔対象物から後退させると、直動機構部40の可動部42と連動して移動台45に配置された引掛部材46が後退する。すると、引掛部材46の引掛面46S2が係合部24の第2面24Cに当接することで、引掛部材46が係合部24に引っ掛かる。これにより、コアビット21とカップリング部31との連結が意図せず解除された場合であっても、直動機構部40と連動して移動する引掛部材46によってコアビット21を穿孔対象物から引き抜くことができる。
【0070】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)穿孔時において、第1面24Bが連結部35に当接し、かつ、第2面24Cが連結部35から離間することで、係合部24と連結部35との間の摩擦力が小さくなるため、係合部24の連結部35への噛み込みを抑制できる。一方で、コアビット21の引き抜き時において、第2面24Cが連結部35に当接することで、係合部24と連結部35との間の摩擦力が大きくなるため、係合部24と連結部35との連結が意図せず外れることを抑制できる。すなわち、コアビット21と回転機構部30との連結が意図せず解除されることを抑制しつつ、保守時にはコアビット21と回転機構部30との連結を容易に解除できる。
【0071】
(2)第1係止面37Aが第1面24Bよりも長いことから、穿孔時には第2面24Cと第2係止面37Bとの間に間隙Gが形成される。これにより、穿孔時における係合部24と連結部35との間の摩擦力が低減されることで、係合部24の連結部35への噛み込みが抑制される。また、コアビット21の引き抜き時に係合部24と連結部35との連結が解除される方向の慣性力F4がチューブ22に作用する場合がある。このとき、第2面24Cが第2係止面37Bに当接することで、係合部24と連結部35との間の摩擦力が大きくなる。これにより、係合部24と連結部35との連結が外れることを抑制できる。
【0072】
(3)受け部34の底面34Sとチューブ22の端面22Sとの間に配置された弾性部材39によって、係合部24と連結部35とが当接する接触力を高めることができる。これにより、引き抜き時における第2面24Cと第2係止面37Bとの間の摩擦力をより高めることができる。
【0073】
(4)保持部50によってコアビット21のチューブ22を一時的に固定した状態で、回転機構部30を第2方向R2に回転させることで、カップリング部31とチューブ22との連結を解除できる。また、連結が解除されたコアビット21のチューブ22を固定した状態で、回転機構部30を第1方向R1に回転させることにより、カップリング部31の連結部35にチューブ22の係合部24を嵌合させてチューブ22とカップリング部31とを連結できる。したがって、コアビット21のチューブ22を固定するための保持部50を設けることで、コアビット21と回転機構部30との連結、及びその解除を遠隔で行うことができる。
【0074】
(5)穿孔装置10が引掛部材46を備えることで、コアビット21の引き抜き時にコアビット21と回転機構部30との連結が意図せず解除された場合でも、連結が解除されたコアビット21を引掛部材46によって引き抜くことができる。
【0075】
[変更例]
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0076】
・引掛部材46が直動機構部40の可動部42と連動する構成に代えて、引掛部材46が可動部42との動作とは別に独立して移動する構成でもよい。
・引掛部材46は、例えば、本体部22Aと大径部22Cとの間の段差など、コアビット21の外周面に位置する係合部24以外の段差に当接することで、コアビット21を引っ掛ける構成でもよい。
【0077】
・穿孔装置10において、コアビット21と回転機構部30との連結が意図せず解除されることが十分に抑制される場合には、引掛部材46を割愛してもよい。
・穿孔装置10が保持部50を備える構成に代えて、保持部50と同等の機能を有する保持装置を用いてコアビット21のチューブ22を固定してもよい。
【0078】
・弾性部材39の厚さや材質は、係合部24と連結部35とが当接する際に十分な接触力が得られるように任意に選択すればよい。また、係合部24と連結部35とが当接する際に十分な接触力が得られるのであれば、弾性部材39は省略されてもよい。
【0079】
・係合部24及び連結部35の構成は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、図13及び図14に示すように、係合部24において、第2面24Cが第1面24Bに対して突き当て面24A側に位置し、かつ、第2係止面37Bが第1係止面37Aよりも第2係止部37の基端側に位置する構成でもよい。この場合、第2係止面37Bは、第2面24Cよりも周方向の長さが長い。
【0080】
図13に示すように、穿孔時には、カップリング部31から伝達される回転力によって、係合部24が凹部38のうち第2係止部37の基端側に移動する。このとき、第2係止面37Bが第2面24Cよりも周方向の長さが長いことで、第2面24Cと第2係止面37Bとの間に間隙Gが形成される。これにより、穿孔対象物からの摩擦力F1が大きい場合であっても、穿孔時に係合部24が連結部35に噛み込むことを抑制できる。
【0081】
図14に示すように、コアビット21の引き抜き時には、コアビット21の回転速度とカップリング部31の回転速度との差異により、コアビット21に慣性力F4が作用する場合がある。すると、第1面24Bが第1係止面37Aを滑るようにして、係合部24が凹部38のうち第2係止部37の先端側に移動する。そして、第2面24Cと第2係止面37Bとが当接する位置まで係合部24が移動することで、第2面24Cと第2係止面37Bとの間の摩擦力によって、係合部24と連結部35との間の摩擦力が大きくなる。以上説明した作用によって、図13及び図14に示す係合部24及び連結部35の構成であっても、(1)の効果に準じた効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0082】
θ1…第1角度、θ2…第2角度、A…中心軸、G…間隙、R1…第1方向、R2…第2方向、10…穿孔装置、11…支持枠、20…穿孔部、21…コアビット、22…チューブ、22A…本体部、22B…基端部、22C…大径部、22S…端面、23…ビット部、24…係合部、24A…突き当て面、24B…第1面、24C…第2面、30…回転機構部、31…カップリング部、32…モータ、34…受け部、34S…底面、35…連結部、36…第1係止部、36A…被突き当て面、37…第2係止部、37A…第1係止面、37B…第2係止面、38…凹部、39…弾性部材、40…直動機構部、41…ガイドレール、42…可動部、45…移動台、46…引掛部材、50…保持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14