(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128264
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】穿孔装置、集塵方法、及び、集塵装置
(51)【国際特許分類】
B28D 1/14 20060101AFI20240913BHJP
B28D 7/02 20060101ALI20240913BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20240913BHJP
B23B 47/34 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B28D1/14
B28D7/02
B23Q11/00 M
B23B47/34 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037150
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(71)【出願人】
【識別番号】502263905
【氏名又は名称】ダイヤモンド機工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000165424
【氏名又は名称】株式会社コンセック
(71)【出願人】
【識別番号】596105208
【氏名又は名称】第一カッター興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 立
(72)【発明者】
【氏名】向井 啓通
(72)【発明者】
【氏名】垣中 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】上條 宏明
(72)【発明者】
【氏名】平田 豪
(72)【発明者】
【氏名】神田 俊介
(72)【発明者】
【氏名】綿川 文治
(72)【発明者】
【氏名】大下 貴史
(72)【発明者】
【氏名】眞野 敬英
【テーマコード(参考)】
3C011
3C036
3C069
【Fターム(参考)】
3C011BB15
3C036HH15
3C069AA04
3C069BA09
3C069BB01
3C069BC03
3C069BC04
3C069CA07
3C069DA07
3C069EA01
(57)【要約】
【課題】チューブ内に堆積した粉塵を集塵することが可能な穿孔装置、集塵方法、及び、集塵装置を提供する。
【解決手段】穿孔装置10は、先端に刃が配置された円筒形状のチューブ22を有するコアビット21と、コアビット21を回転させる回転機構部30と、回転機構部30に連結されたコアビット21を、チューブ22の中心軸Aに沿って移動させる直動機構部40と、を備える。穿孔装置10は、コアビット21を第1回転速度で回転させながら前進させることにより穿孔を行う。穿孔装置10は、コアビット21をチューブ22の内径に応じて設定される第2回転速度で回転させることで、穿孔により生じた粉塵をチューブ22内に舞った状態とし、この状態で集塵装置100によって粉塵を吸引する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端に刃が配置された円筒形状のチューブを有するコアビットと、
前記コアビットを回転させる回転機構部と、
前記回転機構部に連結された前記コアビットを、前記チューブの中心軸に沿って移動させる直動機構部と、を備え、
前記コアビットを第1回転速度で回転させながら前進させることにより穿孔する穿孔装置であって、
前記穿孔により生じた粉塵が前記チューブ内に堆積した前記コアビットを前記チューブの内径に応じて設定される第2回転速度で回転させることで、前記チューブ内に舞った状態の前記粉塵を集塵装置によって吸引する
ことを特徴とする穿孔装置。
【請求項2】
前記第2回転速度を角速度ω[rad/sec]とし、重力加速度をg[m/sec2]とし、前記チューブの内径をr[m]として表したときに、
前記角速度ωは、0.75×√(g/r)<ω<1.25×√(g/r)を満たす
ことを特徴とする請求項1に記載の穿孔装置。
【請求項3】
前記第2回転速度は、前記第1回転速度よりも小さい
ことを特徴とする請求項1または2に記載の穿孔装置。
【請求項4】
先端に刃が配置された円筒形状のチューブを有するコアビットを第1回転速度で回転させながら前進させることで穿孔を行う際に生じる粉塵であって、前記チューブ内に堆積した前記粉塵を前記穿孔後に吸引する集塵方法であって、
前記チューブの内径に応じて設定される第2回転速度で前記コアビットを回転させることにより前記チューブ内で舞った状態の前記粉塵を吸引する
ことを特徴とする集塵方法。
【請求項5】
前記チューブの内径が小さいほど前記第2回転速度が大きくなるように前記コアビットを回転させた状態で前記粉塵を吸引する
ことを特徴とする請求項4に記載の集塵方法。
【請求項6】
先端に刃が配置された円筒形状のチューブを有するコアビットを第1回転速度で回転させながら前進させることで穿孔を行う際に生じる粉塵であって、前記チューブ内に堆積した前記粉塵を前記穿孔後に吸引する集塵装置であって、
前記チューブの内径に応じて設定される第2回転速度で前記コアビットを回転させることにより前記チューブ内で舞った状態の前記粉塵を吸引する
ことを特徴とする集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端に刃が配置されたコアビットを備える穿孔装置、並びに、コアビットを用いた穿孔に伴って生じる粉塵を吸引する集塵方法及び集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート等の構造物を穿孔するための穿孔装置の一例は、中空の円筒形状を有するチューブの先端に刃が配置されたコアビットを回転させながら穿孔対象物に押し当てることで穿孔を行う(例えば、特許文献1参照)。この種の穿孔装置では、穿孔中に発生した粉塵(切粉)をチューブの内部から吸引して排出しながら穿孔を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
粉塵を吸引しながら穿孔を行った場合であっても、穿孔後のチューブ内には穿孔中に発生した粉塵が堆積して残存している場合がある。このような場合に、チューブ内に堆積した粉塵を集塵することが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための穿孔装置は、先端に刃が配置された円筒形状のチューブを有するコアビットと、前記コアビットを回転させる回転機構部と、前記回転機構部に連結された前記コアビットを、前記チューブの中心軸に沿って移動させる直動機構部と、を備え、前記コアビットを第1回転速度で回転させながら前進させることにより穿孔する穿孔装置であって、前記穿孔により生じた粉塵が前記チューブ内に堆積した前記コアビットを前記チューブの内径に応じて設定される第2回転速度で回転させることで、前記チューブ内に舞った状態の前記粉塵を集塵装置によって吸引する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、チューブ内に堆積した粉塵を集塵することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】
図3は、粉塵が堆積したチューブの断面図である。
【
図4】
図4は、集塵工程において、コアビットを第2回転速度で回転させた状態のチューブの断面図である。
【
図5】
図5は、集塵工程におけるチューブ内を撮影した画像(A)~(C)であって、それぞれ異なる回転速度でチューブを回転させたときのチューブ内の画像である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、
図1~
図5を用いて、本発明の一実施形態を説明する。
[穿孔装置]
図1に示す穿孔装置10は、穿孔対象物に対して水平方向に延在する長孔を形成する。穿孔対象物は、一例として鉄筋コンクリートブロックである。
【0009】
穿孔装置10は、略直方体形状の支持枠11を備える。支持枠11は、四角枠状の第1フレーム12及び第3フレーム14と、第1フレーム12及び第3フレーム14の角部同士を繋ぐ4つの第2フレーム13とを備える。なお、第3フレーム14から第1フレーム12に向かう方向を前方とし、第1フレーム12から第3フレーム14に向かう方向を後方とする。
【0010】
穿孔装置10は、支持枠11によって支持される穿孔部20を備える。穿孔部20は、コアビット21と、回転機構部30と、直動機構部40とを備える。コアビット21は、回転機構部30に連結される。回転機構部30は、連結されたコアビット21を回転させる。直動機構部40は、回転機構部30を並進させることによって、回転機構部30に連結されたコアビット21を並進させる。
【0011】
コアビット21は、全体として中空の略円筒形状を有する。コアビット21は、チューブ22を備える。チューブ22は、1m程度の長尺の円筒形状を有する。チューブ22の中心軸Aは、第2フレーム13の延在方向と平行である。チューブ22の基端、すなわち、第3フレーム14側の端部は、回転機構部30に連結される。
【0012】
コアビット21は、ビット部23を備える。ビット部23は、チューブ22の先端、すなわち、チューブ22の両端部のなかで第1フレーム12側(穿孔対象物側)の端部に螺合されることで、チューブ22と一体に構成される。ビット部23の先端には、複数の円弧形状の刃(チップ)が、ビット部23の周方向に間隔をおいて固着される。刃は、一例として、内周側が外周側よりも突出した形状を有する。ビット部23は、チューブ22から螺退させて交換できる。
【0013】
回転機構部30は、カップリング部31と、モータ32と、接続部33とを備える。カップリング部31は、コアビット21に接続部33を接続する。モータ32は、一例として、正逆回転モータである。モータ32の回転は、非図示のギアや回転軸などを介して接続部33に伝達され、さらに、接続部33を介してカップリング部31に伝達される。これにより、コアビット21が回転する。
【0014】
接続部33は、中空の円筒形状を有する。接続部33の内部の空間は、コアビット21の内部の空間と繋がる。接続部33には、集塵用ホースHが接続される。コアビット21の内部の空間は、接続部33及び集塵用ホースHを介して集塵装置100に接続される。集塵装置100は、チューブ22の基端側(穿孔対象物と反対側)からチューブ22内の空気を吸引し、これによってチューブ22の内部に位置する粉塵を集塵する。
【0015】
直動機構部40は、ガイドレール41と、可動部42とを備える。ガイドレール41は、支持枠11内において、コアビット21の下方の位置でチューブ22の中心軸Aに沿って第2フレーム13と平行に延在する。可動部42は、ガイドレール41上を移動する。可動部42には、回転機構部30が取り付けられる。可動部42は、回転機構部30をガイドレール41に沿って並進させることで、回転機構部30に連結されたコアビット21を並進させる。
【0016】
例えば、ガイドレール41は、ラックギアを備える。可動部42は、ピニオンギアと、ピニオンギアを回転させるモータとを備える。可動部42は、ピニオンギアを回転させることで、ガイドレール41のラックギア上を移動する。
【0017】
ガイドレール41は、第1支持部43と、第2支持部44とを備える。第1支持部43及び第2支持部44は、チューブ22が回転可能、かつ、軸方向に移動可能な状態で、チューブ22を下方から支持する。第1支持部43及び第2支持部44は、一例として、チューブ22の外周面に当接するボールローラである。
【0018】
第1支持部43は、ガイドレール41のうち第2支持部44よりも先端側に配置される。第1支持部43は、一例として、ガイドレール41に対して移動不能に固定される。第2支持部44は、ガイドレール41に対して移動可能に取り付けられた移動台45上に配置される。移動台45は、例えば、可動部42と連動するように可動部42に取り付けられる。
【0019】
ガイドレール41は、引掛部材46を備える。引掛部材46は、例えば、U字状など、コアビット21の外周面に位置する段差と係合してコアビット21に引掛部材46を引っ掛けることが可能な形状を有する。引掛部材46は、例えば、第2支持部44とともに移動台45上に配置される。引掛部材46は、穿孔後にコアビット21を引き抜く際に、コアビット21と回転機構部30との連結が意図せず外れた場合にコアビット21と係合することで、コアビット21を所定の位置まで移動させる。
【0020】
穿孔装置10は、回転機構部30によってコアビット21を第1方向R1に回転させた状態で、回転機構部30を介してコアビット21を前進させてコアビット21の刃を穿孔対象物に押し当てることで穿孔対象物の穿孔を行う。また、穿孔完了後には、回転機構部30によってコアビット21を第1方向R1に回転させた状態で、回転機構部30を介してコアビット21を後退させることで穿孔対象物からコアビット21を引き抜く。
【0021】
図2に示すように、穿孔装置10は、一対の差込ブラケットBを備える。差込ブラケットBは、差込ブラケットBの両端部のなかで第3フレーム14側の端部が開口した中空の四角柱形状を有する。一対の差込ブラケットBは、第2フレーム13と平行、かつ、互いに離間して配置される。差込ブラケットBは、穿孔装置10を移動させるためのフォークリフトのフォークが差し込まれる。
【0022】
穿孔装置10は、ベースプレート15を備える。ベースプレート15は、第1フレーム12の第3フレーム14側の面に取り付けられる。ベースプレート15は、中心に貫通孔15Aを備える。貫通孔15Aは、チューブ22を遊挿可能な大きさの円形状を有する。
【0023】
ベースプレート15の上部には、第1取付部材16Aを介してローラ17が取り付けられる。ローラ17は、チューブ22の外周面に当接するように配置される。また、支持枠11の下部には、第2取付部材16Bを介してガイドレール41が取り付けられる。
【0024】
チューブ22は、2つの第1支持部43によって、貫通孔15Aに遊挿された状態のチューブ22を下方から支持される。チューブ22は、第3フレーム14側においても同様に、2つの第2支持部44によって下方から支持される。
【0025】
穿孔装置10は、保持部50を備える。保持部50は、一対の保持部材51を備える。ベースプレート15には、貫通孔15Aを挟んで一対の第3取付部材16Cが設けられる。各保持部材51は、第3取付部材16Cを介してベースプレート15に固定される。
【0026】
各保持部材51は、内蔵するエアシリンダによって伸縮する伸縮部52と、伸縮部52の先端に配置された当接部53とを備える。各当接部53は、伸縮部52が伸長した際にチューブ22に当接する。保持部50は、コアビット21をカップリング部31に対して着脱する際に、2つの当接部53によってチューブ22を挟み込むように押圧することにより、チューブ22を回転不能かつ直動不能に保持する。
【0027】
穿孔装置10は、図示しない制御装置を備える。制御装置は、回転機構部30、直動機構部40、保持部50、及び、集塵装置100の各部の動作を制御する。制御装置は、例えば、遠隔で操作可能に構成される。
【0028】
[穿孔の手順]
穿孔対象物に穿孔を行う穿孔方法は、穿孔工程と、集塵工程とを含む。なお、以下に示す集塵工程は、本発明の集塵方法の一例である。
【0029】
穿孔工程では、まず、フォークリフトによって第1フレーム12が穿孔対象物に対向するように穿孔装置10を配置する。次に、穿孔装置10の集塵用ホースHを、集塵装置100に接続する。制御装置は、集塵装置100によってカップリング部31、接続部33及び集塵用ホースHを介してチューブ22の内部の空気を排出する。
【0030】
制御装置は、回転機構部30のモータ32及び直動機構部40の可動部42のモータを駆動することで、コアビット21を所定の第1回転速度で回転させながら穿孔対象物に向けて前進させる。これにより、コアビット21は、第1方向R1に回転しながら穿孔対象物の当接面から内部へと水平方向に直進する。このとき、ビット部23の刃は、穿孔対象物に対して円環形状に切削を行なう。切削によって発生した粉塵は、集塵装置100の吸引による空気の流れと回転するチューブ22の遠心力とにより、チューブ22の後方側に移動することで集塵用ホースHから排出される。
【0031】
コアビット21による切削が完了した場合、コアビット21を第1方向R1に回転させながら、直動機構部40の可動部42を駆動してコアビット21を後退させる。これにより、穿孔対象物におけるコアビット21の内部に位置する部分がコアビット21とともに引き抜かれて穿孔対象物に長孔が形成される。穿孔後には、コアビット21を第1方向R1に回転させながら後退させることで穿孔対象物からコアビット21を引き抜く。以上の手順により穿孔工程が完了する。
【0032】
集塵工程は、穿孔工程が完了した後に行われる。集塵工程では、まず、制御装置は、回転機構部30のモータ32を駆動することで、コアビット21を所定の第2回転速度で回転させる。第2回転速度は、チューブ22内に残留した粉塵がチューブ22内で舞った状態となる速度である。第2回転速度は、チューブ22の内径に応じて設定される。集塵工程では、チューブ22の内径が小さいほど第2回転速度が大きくなるようにチューブ22を回転させる。例えば、制御装置は、操作者がチューブ22の内径の値を入力することによって、入力された内径の値に応じた第2回転速度でコアビット21を回転させる。
【0033】
次いで、制御装置は、集塵装置100によってカップリング部31、接続部33及び集塵用ホースHを介してチューブ22の内部の空気を排出する。集塵装置100は、チューブ22内の空気を、チューブ22の基端側から吸引する。これにより、チューブ22内に残留した粉塵を排出する。以上の手順により集塵工程が完了する。
【0034】
集塵工程の第2回転速度は、例えば、コアビット21を高速で回転させる穿孔工程の第1回転速度よりも小さい。これにより、穿孔に要する時間を削減できるとともに、穿孔後に好適に集塵を行うことができる。
【0035】
[実施形態の作用]
図3に示すように、穿孔によって生じた粉塵Pは、その一部が穿孔工程で集塵装置100によってチューブ22の内部から排出されるものの、穿孔工程が完了した段階でもチューブ22内に残存している場合がある。
【0036】
例えば、穿孔工程後にコアビット21の回転が停止されると、チューブ22内の粉塵Pは、チューブ22内の下部に堆積する。この状態で集塵装置100による集塵を行っても、粉塵Pに含まれる粒子同士の凝集力や、チューブ22の内周面に対する粒子の付着力によって粉塵Pが集塵されにくい場合がある。また、チューブ22の中心軸Aと直交する断面内において、集塵装置100の吸引によって生じる気流の強さの差異によっても、粉塵Pが集塵されにくい場合がある。
【0037】
図4に示すように、本実施形態の集塵工程では、コアビット21を回転させた状態でチューブ22内の空気を吸引する。これにより、集塵工程では、粉塵Pがチューブ22内に舞った状態で集塵が行われる。なお、
図4では、コアビット21を第1方向R1に回転させる場合を例示しているが、第1方向R1と反対の方向に回転させてもよい。
【0038】
粉塵Pがチューブ22内に舞った状態、すなわち、粉塵Pがチューブ22内で分散した状態で吸引を行うことで、粉塵Pに含まれる粒子同士の凝集力や、チューブ22の内周面に対する粒子の付着力が弱められた状態で集塵を行うことができる。また、チューブ22の中心軸Aと直交する断面内において、集塵装置100の吸引によって生じる気流の強弱が存在する場合でも、粉塵Pに含まれる粒子が当該断面内において相対的に吸引力が強い位置に達したときに吸引される。
【0039】
[第2回転速度]
以下、第2回転速度について詳述する。集塵工程におけるコアビット21の回転速度として設定される第2回転速度は、チューブ22の内径r[m]に応じて設定される速度であって、粉塵Pがチューブ22内で舞う速度である。
【0040】
具体的には、チューブ22が回転すると、粉塵Pがチューブ22の回転に追従してチューブ22内を移動する。このとき、粉塵Pには遠心力Fが作用する。遠心力Fは、チューブ22の内径r、粉塵Pの単位質量m[kg]、及び第2回転速度としての角速度ω[rad/sec]を用いてF=mrω2として近似することができる。
【0041】
例えば、集塵工程におけるコアビット21の回転速度が過剰に大きい場合、チューブ22内の粉塵Pは、遠心力Fによってチューブ22の内周面に張り付いた状態となる。そのため、粉塵Pの大部分は、チューブ22の内周面に沿ってチューブ22内を回転する状態となる。
【0042】
逆に、集塵工程におけるコアビット21の回転速度が過剰に小さい場合、チューブ22内の粉塵Pに作用する遠心力Fが小さくなる。これにより、粉塵Pがチューブ22の回転に追従しにくくなるため、粉塵Pの大部分は、チューブ22の下部に堆積したままの状態となる。
【0043】
したがって、第2回転速度ωは、粉塵Pがチューブ22内の下部に堆積せず、かつ、粉塵Pがチューブ22の内周面に張り付かない程度の大きさに設定される。換言すると、第2回転速度ωは、粉塵Pが遠心力Fによってチューブ22の下部から上部に持ち上げられ、かつ、粉塵Pが上部に達した際に、粉塵Pに作用する重力Wによって遠心力Fが打ち消されることで粉塵Pが落下する程度の大きさに設定される。特に、チューブ22のなかで最高点となる中心軸Aの直上もしくはその近傍で、重力Wによって粉塵Pに作用する遠心力Fが打ち消されることが好ましい。
【0044】
粉塵Pに作用する重力Wは、重力加速度g[m/sec2]を用いてW=mgとして表される。第2回転速度ωは、中心軸Aの直上において遠心力Fが重力Wによって打ち消される状態となるために、F=Wすなわちmrω2=mgを満たすように設定される。したがって、第2回転速度ωは、ω=√(g/r)満たすように設定される。
【0045】
これにより、チューブ22の下部に位置する粉塵Pは、遠心力Fによってチューブ22の下部から上部に持ち上げられる。また、チューブ22の上部に達した粉塵Pは、遠心力Fが重力Wによって打ち消されることによってチューブ22の上部から下部に落下する。チューブ22の回転に伴って粉塵Pがこのような動きを繰り返すことにより、粉塵Pがチューブ22内で舞った状態となる。
【0046】
なお、粉塵Pは、チューブ22の内周面よりも中心軸Aに近い位置に存在する。そのため、実際に粉塵Pに作用する遠心力Fは、中心軸Aから粉塵Pまでの距離と内径rとの差異の分だけ、mrω2よりも小さい。したがって、ω=√(g/r)を満たすように第2回転速度ωを設定することで、少なくとも中心軸Aの直上において実際に粉塵Pに作用する遠心力Fが重力Wよりも小さくなる。これにより、遠心力Fによって粉塵Pをチューブ22の下部から上部に持ち上げつつ、粉塵Pが遠心力Fによってチューブ22の内周面に張り付くことを抑制できる。
【0047】
第2回転速度ωは、0.75×√(g/r)<ω<1.25×√(g/r)を満たすことが好ましい。さらに、第2回転速度ωは、0.8×√(g/r)≦ω≦1.2×√(g/r)を満たすことがより好ましい。第2回転速度ωを上記の範囲内に設定することで、粉塵Pがチューブ22内の下部に堆積せず、かつ、粉塵Pがチューブ22の内周面に張り付かない程度の遠心力Fを粉塵Pに付与できる。
【0048】
図5には、集塵工程におけるチューブ22の内部を撮影した画像(A)~(C)を示す。画像(A)は、第2回転速度ω=0.75×√(g/r)でチューブ22を回転させた状態のチューブ22の内部を撮影したものである。画像(B)は、第2回転速度ω=√(g/r)でチューブ22を回転させた状態のチューブ22の内部を撮影したものである。画像(C)は、第2回転速度ω=1.25×√(g/r)でチューブ22を回転させた状態のチューブ22の内部を撮影したものである。なお、画像(A)~(C)の撮影には、内径r=0.1mのチューブ22を用いた。
【0049】
画像(A)のように√(g/r)として算出される値と比較して第2回転速度ωが小さい場合には、チューブ22内の下部に堆積する粉塵Pの量が多くなる。また、画像(C)のように√(g/r)として算出される値と比較して第2回転速度ωが大きい場合には、粉塵Pがチューブ22の内周面に張り付く状態となるため、チューブ22の中心軸Aの近傍に存在する粉塵Pの量が少なくなる。画像(A)や画像(C)の状態では、粉塵Pに含まれる粒子同士の凝集力や、チューブ22の内周面に対する粒子の付着力、チューブ22の断面内における気流の強弱などの影響によって、粉塵Pが吸引されにくくなる。
【0050】
これに対して、画像(B)のように第2回転速度ωがω=√(g/r)を満たすように設定されることで、粉塵Pがチューブ22内に舞った状態、すなわち、粉塵Pがチューブ22内で分散した状態とすることができる。これにより、チューブ22内の粉塵Pを好適に集塵できる。
【0051】
[実施形態の効果]
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)集塵工程において、コアビット21を第2回転速度ωで回転させることによりチューブ22内に堆積した粉塵Pが舞った状態で吸引を行うことで、チューブ22内の粉塵Pを好適に集塵できる。
【0052】
(2)第2回転速度ωが0.75×√(g/r)<ω<1.25×√(g/r)を満たすように設定されることで、粉塵Pがチューブ22内の下部に堆積せず、かつ、粉塵Pがチューブ22の内周面に張り付かない程度の遠心力Fを粉塵Pに付与できる。
【0053】
(3)穿孔工程では相対的に大きな速度である第1回転速度で穿孔を行い、かつ、穿孔後の集塵工程では相対的に小さな速度である第2回転速度ωで集塵を行うことで、穿孔工程に要する時間を削減できるとともに、集塵工程で好適に集塵を行うことができる。
【0054】
(4)集塵工程において、チューブ22の内径rが小さいほど第2回転速度ωが大きくなるようにチューブ22を回転させることで、粉塵Pをチューブ22内で好適に舞った状態とすることができる。
【0055】
[変更例]
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0056】
・第2回転速度ωは、堆積した粉塵Pがチューブ22内で舞う程度の大きさであれば特に限定されない。例えば、集塵工程における第2回転速度ωが穿孔工程における第1回転速度と同じであってもよいし、第2回転速度ωが第1回転速度よりも大きくてもよい。
【0057】
・第2回転速度ωは、「√(g/r)」として算出される値に対して任意の係数をかけることで補正を行った値でもよい。例えば、チューブ22の内周面に対する粉塵Pに含まれる粒子の付着力が大きい場合など、粉塵Pがチューブ22の内周面に張り付きやすい場合には、第2回転速度ωを小さくして遠心力Fを弱めてもよい。また、粉塵Pの量が多く堆積した粉塵Pの厚みが大きい場合など、粉塵Pがチューブ22の上部に持ち上がりにくい場合には、第2回転速度ωを大きくして遠心力Fを強めてもよい。このとき、粉塵Pがチューブ22内の下部に堆積せず、かつ、粉塵Pがチューブ22の内周面に張り付かないのであれば、第2回転速度ωが0.75×√(g/r)以下でもよいし、1.25×√(g/r)以上でもよい。
【符号の説明】
【0058】
ω…第2回転速度(角速度)、A…中心軸、F…遠心力、H…集塵用ホース、P…粉塵、r…内径、R1…第1方向、W…重力、10…穿孔装置、11…支持枠、20…穿孔部、21…コアビット、22…チューブ、23…ビット部、30…回転機構部、31…カップリング部、40…直動機構部、50…保持部、100…集塵装置。