(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128272
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】自動走行方法、自動走行プログラム、自動走行システム、及び作業車両
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
A01B69/00 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037164
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】本間 暉
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 智久
(72)【発明者】
【氏名】幸 英浩
(72)【発明者】
【氏名】太田 航平
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】赤瀬 正樹
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043AB15
2B043AB19
2B043BA08
2B043BA09
2B043BB01
2B043BB04
2B043BB06
2B043BB07
2B043BB08
2B043BB14
2B043DA17
2B043DC01
2B043EB05
2B043EB16
2B043EB17
2B043EB18
2B043ED12
2B043EE01
2B043EE05
2B043EE06
(57)【要約】
【課題】作業効率が低下しにくい自動走行方法、自動走行プログラム、自動走行システム、及び作業車両を提供する。
【解決手段】自動走行方法は、圃場F1において目標経路R10に従って散布機1を自動走行させることと、一時停止処理を実行することと、停止予約処理を実行することと、を有する。一時停止処理は、散布機1の自動走行中に一時停止条件を満たすことにより、その場に散布機1を走行再開可能な態様で停止させる処理である。停止予約処理は、散布機1の自動走行中に停止予約条件を満たすことにより、散布機1を走行させた後で散布機1を走行再開可能な状態で停止させる処理である。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業地において目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、
前記作業車両の自動走行中に一時停止条件を満たすことにより、その場に前記作業車両を走行再開可能な態様で停止させる一時停止処理を実行することと、
前記作業車両の自動走行中に停止予約条件を満たすことにより、前記作業車両を走行させた後で前記作業車両を走行再開可能な状態で停止させる停止予約処理を実行することと、を有する、
自動走行方法。
【請求項2】
前記作業車両の自動走行中に緊急停止条件を満たすことにより、その場に前記作業車両を走行再開不能な態様で停止させる緊急停止処理を実行すること、を更に有する、
請求項1に記載の自動走行方法。
【請求項3】
前記作業地は、前記作業車両による作業を行う作業領域と、前記作業車両による作業を行わない非作業領域と、を含み、
前記停止予約処理では、前記作業領域において前記停止予約条件を満たすと、前記非作業領域まで前記作業車両を走行させてから前記作業車両を停止させる、
請求項1又は2に記載の自動走行方法。
【請求項4】
前記停止予約処理において、前記非作業領域まで前記作業車両を走行させてから前記作業車両を停止させる場合、前記作業領域における走行再開時の作業開始位置に対応する位置で前記作業車両を停止させる、
請求項3に記載の自動走行方法。
【請求項5】
前記作業地のうち前記停止予約処理で前記作業車両を停止させない停止禁止領域を設定すること、を更に有する、
請求項1又は2に記載の自動走行方法。
【請求項6】
前記停止予約処理に伴って報知を行うこと、を更に有する、
請求項1又は2に記載の自動走行方法。
【請求項7】
前記報知は、前記停止予約条件を満たした第1時点、前記作業車両を停止させた第2時点、及び、前記第1時点から前記第2時点にかけての期間、の少なくとも一つにおいて行われる、
請求項6に記載の自動走行方法。
【請求項8】
前記停止予約条件は複数の条件を含み、
前記複数の条件のうちのいずれの条件を満たしたかを出力すること、を更に有する、
請求項1又は2に記載の自動走行方法。
【請求項9】
前記目標経路は、前記作業車両によって作業対象に対する作業を行う作業経路と、前記作業経路の始端位置よりも手前の予備位置から前記始端位置にかけて設定される予備経路と、を含み、
前記予備経路において前記作業車両に作業を開始させる、
請求項1又は2に記載の自動走行方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の自動走行方法を、
1以上のプロセッサに実行させるための自動走行プログラム。
【請求項11】
作業地において目標経路に従って作業車両を自動走行させる自動走行処理部を備え、
前記自動走行処理部は、
前記作業車両の自動走行中に一時停止条件を満たすことにより、その場に前記作業車両を走行再開可能な態様で停止させる一時停止処理と、
前記作業車両の自動走行中に停止予約条件を満たすことにより、前記作業車両を走行させた後で前記作業車両を走行再開可能な状態で停止させる停止予約処理と、を実行可能に構成されている、
自動走行システム。
【請求項12】
請求項11に記載の自動走行システムと、
前記自動走行システムに制御される走行部と、を備える、
作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業地において目標経路に従って作業車両を自動走行させる自動走行方法、自動走行プログラム、自動走行システム、及び作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術として、作業地において目標経路に従って作業車両を自動走行させる自動走行システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。関連技術に係る自動走行システムによれば、作業車両は、作業地において複数列に配置された作業対象物に対して所定の作業を行いながら所定の列順序で自動走行する。作業車両は、所定の作業として、圃場(作業地)に植えられた作物(作業対象物)に薬液又は水等の散布物を散布する散布作業を行う。
【0003】
上記関連技術では、通信網を介して作業車両と通信可能な操作端末において、オペレータの操作によって、作業車両に対する作業開始指示、及び走行停止指示等を受け付けることが可能である。操作端末から走行停止指示を取得すると、作業車両は、自動走行を停止し、散布作業を停止する。これにより、オペレータは、作業車両から離れた場所において、作業車両を停止させることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記関連技術においては、作業車両が作業地の作業領域内で薬液等の散布物の散布作業中に、操作端末から走行停止指示があった場合、作業車両がその場で停止する。そのため、例えば、停止した作業車両にオペレータが近寄るには、散布物が散布された作業領域内に入る必要があり、オペレータが散布物に晒されない対策をとる等、作業効率の低下につながる可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、作業効率が低下しにくい自動走行方法、自動走行プログラム、自動走行システム、及び作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る自動走行方法は、作業地において目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、前記作業車両の自動走行中に一時停止条件を満たすことにより、その場に前記作業車両を走行再開可能な態様で停止させる一時停止処理を実行することと、前記作業車両の自動走行中に停止予約条件を満たすことにより、前記作業車両を走行させた後で前記作業車両を走行再開可能な状態で停止させる停止予約処理を実行することと、を有する。
【0008】
本発明の一の局面に係る自動走行プログラムは、前記自動走行方法を、1以上のプロセッサに実行させるための自動走行プログラムである。
【0009】
本発明の一の局面に係る自動走行システムは、作業地において目標経路に従って作業車両を自動走行させる自動走行処理部を備える。前記自動走行処理部は、一時停止処理と、停止予約処理と、を実行可能に構成されている。前記一時停止処理は、前記作業車両の自動走行中に一時停止条件を満たすことにより、その場に前記作業車両を走行再開可能な態様で停止させる処理である。前記停止予約処理は、前記作業車両の自動走行中に停止予約条件を満たすことにより、前記作業車両を走行させた後で前記作業車両を走行再開可能な状態で停止させる処理である。
【0010】
本発明の一の局面に係る作業車両は、前記自動走行システムと、前記自動走行システムに制御される走行部と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、作業効率が低下しにくい自動走行方法、自動走行プログラム、自動走行システム、及び作業車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る散布機を左前方側から見た外観図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る散布機を背面側から見た背面の外観図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る散布機が使用される作物列の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る散布機を用いた自動作業システムの全体構成を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る自動作業システムの主要な構成を示す概略ブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る散布機を左側から見た左側面の外観図である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る散布機を右側から見た右側面の外観図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る散布機を上方から見た上面の外観図である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る散布機を背面側から見た背面の外観図である。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る散布機を斜め後方から見た状態を示す概略図である。
【
図11】
図11は、
図7の領域Z1の拡大図であって、吹出内には手動操作装置の外観図を示している。
【
図12】
図12は、実施形態1に係る散布機の自動走行の動作を説明する概略図である。
【
図13】
図13は、実施形態1に係る散布機の自動走行の停止に関する動作を説明する概略図である。
【
図14】
図14は、実施形態1に係る散布機の停止予約に関する動作を説明する概略図である。
【
図15】
図15は、実施形態1に係る散布機の停止予約に関する動作を説明する概略図である。
【
図16】
図16は、実施形態1に係る自動走行方法のうち、特に自動走行の停止に関する処理の一例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、実施形態1に係る散布機の作業経路への進入時の動作を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する趣旨ではない。
【0014】
(実施形態1)
[1]全体構成
まず、本実施形態に係る散布機1の全体構成について、
図1~
図5を参照して説明する。本実施形態では、散布機1は、圃場F1で育成されている作物V1(
図2参照)に対して、例えば、薬液、水又は肥料等の散布物を散布する散布作業を行う。この散布機1は、圃場F1等の作業地において、目標経路に従って自動走行しながら各種の作業を行う「作業車両」の一例である。
【0015】
つまり、散布機1は、作業として、例えば薬液、水又は肥料等の散布物を散布する散布作業を実行可能な作業車両である。本開示でいう「作業車両」には、散布機の他、例えば、トラクタ、田植機、噴霧機、播種機、移植機及びコンバイン等の作業車両が含まれる。さらに、本開示でいう「作業車両」は農業機械(農機)に限らず、例えば、建設機械(建機)等であってもよい。
【0016】
また、本開示でいう「圃場」は、作業車両である散布機1が移動しながら、例えば散布作業等の各種の作業を行う作業地の一例であって、農産物を育成する果樹園、牧草地、田んぼ及び畑等を含む。この場合、圃場F1で育成される作物V1は農産物である。さらに、植木畑で植木を育成している場合には植木畑が圃場F1となり、林業のように森林にて木材となる樹木を育成する場合には森林が圃場F1となる。この場合、圃場F1で育成される作物V1は植木又は樹木等である。ただし、作業車両が作業を行う作業地は、圃場F1に限らず、圃場F1以外であってもよい。例えば、作業車両が建設機械であれば、建設機械が作業を行う現場が、作業地となる。
【0017】
本実施形態では一例として、散布機1は、葡萄園又は林檎園等の果樹園である圃場F1を移動しつつ、圃場F1で育成されている作物V1に対して薬液を散布する車両であることとする。この場合、薬液は散布物の一例である。また、作物V1は、散布物(薬液)が散布される散布対象物の一例であって、例えば葡萄の果樹である。散布対象物である作物V1は、作業車両としての散布機1による作業の対象となる作業対象物の一例でもある。ここでいう散布物としての「薬液」は、農業の効率化又は農作物の保存等に使用される農薬であって、除草剤、殺菌剤、防黴剤、殺虫剤、除草剤、殺鼠剤、作物V1の生長促進剤及び発芽抑制剤等を含む。
【0018】
作物V1は、圃場F1において所定の間隔で複数列に配置されている。具体的には、
図3に示すように、複数の作物V1は、平面視における縦方向A1に直線状に並べて植えられている。縦方向A1に直線状に並ぶ複数の作物V1は、作物列Vr1を構成する。
図3には、それぞれ縦方向A1に並ぶ6つの作物V1を含む3つの作物列Vr1を例示している。各作物列Vr1は幅方向A2に所定ピッチW1で配置されている。これにより、隣り合う作物列Vr1間には、作物列Vr1間の間隔に相当する幅W2(<W1)を有し、縦方向A1に沿って延びる作業通路が形成される。散布機1は、この作業通路を通って縦方向A1に移動(走行)しつつ、作物V1に対して散布物(薬液)の散布を行う。
【0019】
詳しくは後述するが、圃場F1を走行する散布機1は、門型の形状を有する機体10を備えている。つまり、機体10は、左右方向D2に並べて配置される第1ブロック10L及び第2ブロック10Rと、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rの上端部同士を連結する連結部10Cと、を有している。これにより、機体10は、第1ブロック10L、第2ブロック10R及び連結部10Cにて、空間Sp1の左方、右方及び上方の三方を囲む門型の形状を構成する。つまり、機体10の内側には、前後方向D3に開放された空間Sp1が形成される。
【0020】
さらに、散布機1は、左右方向D2に並ぶ一対のクローラ111L,111Rを含む走行部11を備えている。一対のクローラ111L,111Rは、それぞれ第1ブロック10L及び第2ブロック10Rの下部に設けられており、空間Sp1に対して左右方向D2の両側に位置する。
【0021】
散布機1は、
図2に示すように、門型に形成された機体10にて1つの作物列Vr1を跨いだ姿勢で走行しつつ、この作物列Vr1の作物V1、及びこの作物列Vr1に隣接する作物列Vr1の作物V1に対して散布物(薬液)を散布することが可能である。言い換えれば、散布機1は、門型に形成された機体10の内側の空間Sp1に、散布対象物(作業対象物)である作物V1を通過させるようにして走行可能である。つまり、
図2に例示すように、左右方向D2に並ぶ3つの作物列Vr11,Vr12,Vr13がある場合、散布機1は、これら3つの作物列Vr11,Vr12,Vr13のうちの任意の作物列Vr1を機体10で跨いで走行可能である。
【0022】
ここで、機体10が中央の作物列Vr12を跨ぐとすれば、第1ブロック10Lが左端の作物列Vr11と作物列Vr12との間の作業通路を走行し、第2ブロック10Rが右端の作物列Vr13と作物列Vr12との間の作業通路を走行する。そして、散布機1は、作物列Vr11の作物V11、作物列Vr12の作物V12、及び作物列Vr13の作物V13に対して、同時に散布物(薬液)を散布可能である。このように、本実施形態に係る散布機1は、走行中において、3列分の散布対象物(作物V1)に対して同時に散布物(薬液)を散布可能であるので、1列ずつ散布する構成に比べて、散布作業の効率がよい。
【0023】
さらに、本実施形態では一例として、散布機1は、人(オペレータ)の操作(遠隔操作を含む)によらず、自動運転により動作する無人機である。そのため、散布機1は、
図4及び
図5に示すように、第1操作端末210、第2操作端末220、サーバ201、基地局202及び衛星203等と共に、自動作業システム200を構成する。言い換えれば、自動作業システム200は、散布機1と、第1操作端末210と、第2操作端末220と、サーバ201と、基地局202と、衛星203とを含んでいる。ただし、第1操作端末210、第2操作端末220、サーバ201、基地局202及び衛星203のうちの少なくとも一つは、自動作業システム200の構成要素に含まれなくてもよく、例えば、自動作業システム200はサーバ201、基地局202及び衛星203を含まなくてもよい。
【0024】
散布機1、第1操作端末210、第2操作端末220及びサーバ201は、相互に通信可能である。本開示でいう「通信可能」とは、有線通信又は無線通信(電波又は光を媒体とする通信)の適宜の通信方式により、直接的、又は通信網(ネットワーク)N1若しくは中継器等を介して間接的に、情報を授受できることを意味する。例えば、散布機1及び第1操作端末210は、インターネット、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、公衆電話回線、携帯電話回線網、パケット回線網又は無線LAN等の通信網N1を介して通信可能である。ここでは、散布機1及び第1操作端末210はそれぞれ通信網N1に対して無線接続される。そのため、散布機1及び第1操作端末210間の通信は、少なくとも無線通信を含む。また、散布機1及び第1操作端末210のそれぞれと、サーバ201ともまた、通信網N1を介して無線通信可能である。
【0025】
衛星203は、GNSS(Global Navigation Satellite System)等の衛星測位システムを構成する測位衛星であり、GNSS信号(衛星信号)を送信する。基地局202は、衛星測位システムを構成する基準点(基準局)である。基地局202は、散布機1の現在位置等を算出するための補正情報を散布機1に送信する。
【0026】
本実施形態に係る散布機1は、機体10の現在位置(緯度、経度及び高度等)、及び現在方位等を検出する測位装置2を備えている。測位装置2は、衛星203から送信されるGNSS信号を用いて、機体10の現在位置及び現在方位等を特定(算出)する測位処理を実行する。測位装置2は、例えば、2台の受信機(基地局202及びアンテナ21)が受信する測位情報(GNSS信号等)と、基地局202で生成される補正情報と、に基づいて測位を行うRTK(Real Time Kinematic)測位等の比較的高精度な測位方式を採用する。
【0027】
第1操作端末210は、例えば、スマートフォン又はタブレット端末等の、オペレータが携帯可能な汎用の情報処理装置である。第1操作端末210は、オペレータの操作に応じて、少なくとも散布機1の自動走行を停止させるための停止指示(一時停止指示)を散布機1に出力(送信)することで、散布機1の遠隔操作が可能に構成されている。ここで、第1操作端末210は、通信網N1を介して散布機1と無線通信することにより、通信網N1に接続可能(通信可能)な環境であれば、散布機1の遠方、つまり圃場F1の遠隔地においても、散布機1を制御することが可能である。
【0028】
第1操作端末210は、
図5に示すように、各種の情報を表示する表示部211と、操作を受け付ける操作部212と、を備える。表示部211は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を含む。操作部212は、例えば、タッチパネル、物理スイッチ、マウス又はキーボード等を含む。本実施形態では一例として、液晶ディスプレイからなる表示部211とタッチパネルからなる操作部212とが一体化されて、タッチパネルディスプレイを構成する。そのため、オペレータは、表示部211に表示される操作画面において操作部212を操作することで、第1操作端末210から散布機1に対して、例えば、停止指示(一時停止指示)の出力等を行うことが可能である。
【0029】
さらに、第1操作端末210は、散布機1の自動走行のための目標経路等、散布機1の制御に関する種々の情報を設定(登録)する機能を有している。つまり、オペレータは、表示部211に表示される操作画面において操作部212を操作することで、目標経路等を設定可能である。ここで設定される目標経路等の情報は、散布機1に対して、直接的に又はサーバ201等を介して間接的に送信され、散布機1の自動走行に使用される。
【0030】
また、第1操作端末210は、散布機1の自動走行中において、散布機1の現在位置、現在方位及び(散布)作業状況等の、散布機1の動作に係る種々の情報を表示部211に表示可能である。一例として、第1操作端末210は、圃場F1を模したマップ上に、目標経路と共に、散布機1の現在位置等を表示する監視画面を表示部211に表示することで、オペレータにおいては、視覚的に散布機1の状況を把握しやすくなる。ここで、監視画面には、例えば、散布物としての薬液の残量、燃料の残量及びバッテリ残量等の情報についても表示されることが好ましい。
【0031】
第2操作端末220は、オペレータが携帯可能な専用の無線通信端末である。第2操作端末220は、オペレータの操作に応じて、少なくとも散布機1の自動走行を停止させるための停止指示(一時停止指示)を散布機1に出力(送信)することで、散布機1の遠隔操作が可能に構成されている。ここで、第2操作端末220は、第1操作端末210とは別系統の通信によって、散布機1と通信可能に構成されている。
【0032】
具体的に、第2操作端末220は、通信網N1を介さずに散布機1と直接的に無線通信することにより、散布機1と接続可能(通信可能)な環境であれば、散布機1から離れた位置からでも、散布機1の操作が可能である。ただし、第2操作端末220が散布機1と接続可能な範囲は、例えば、圃場F1内又は圃場F1の周辺のように、第1操作端末210に比較して、散布機1から近距離となる範囲に限られている。そのため、オペレータは、基本的に散布機1を視認可能な場所であれば、第2操作端末220を操作することで、散布機1を制御することが可能である。
【0033】
第2操作端末220は、
図4及び
図5に示すように、それぞれ個別に操作を受け付ける、第1操作部221と、第2操作部222と、第3操作部223と、を備える。第1操作部221、第2操作部222及び第3操作部223の各々は、例えば、物理スイッチ、タッチパネル、マウス又はキーボード等を含む。本実施形態では一例として、第1操作部221、第2操作部222及び第3操作部223は、それぞれ物理スイッチ(メカニカルスイッチ)であるモーメンタリ型の押釦スイッチにて構成されている。そのため、オペレータは、第1操作部221、第2操作部222及び第3操作部223の各々を操作することで、第2操作端末220から散布機1に対して、例えば、停止指示(一時停止指示及び緊急停止指示)の出力等を行うことが可能である。
【0034】
ここで、第1操作部221、第2操作部222及び第3操作部223には、それぞれ異なる機能が割り当てられている。そのため、オペレータが第1操作部221、第2操作部222及び第3操作部223のいずれを押す(操作する)かによって、第2操作端末220は、散布機1に対して異なる指示を出力(送信)する。具体的に、第1操作部221には「一時停止」、第2操作部222には「緊急停止」、第3操作部223には「走行開始」がそれぞれ割り当てられる。したがって、例えば、オペレータが第1操作部221を操作すると、第2操作端末220は、散布機1の自動走行を停止させるための停止指示の一種である一時停止指示を出力する。
【0035】
このように、本実施形態では、散布機1は、少なくとも第1操作端末210及び第2操作端末220を含む複数種類の操作端末と無線通信可能であって、これら複数種類の操作端末の各々からの指示に従って制御される。言い換えれば、第1操作端末210及び第2操作端末220は、それぞれ散布機1を遠隔操作可能な、遠隔操作装置(リモートコントローラ)を構成し、オペレータは、散布機1から離れた場所においても、散布機1の自動走行を停止させること等が可能となる。
【0036】
サーバ201は、サーバ装置等の情報処理装置である。サーバ201は、散布機1を自動走行させる目標経路等の情報を、散布機1に送信する。
【0037】
また、本実施形態では、説明の便宜上、
図1に示すように、散布機1が使用可能な状態での鉛直方向を上下方向D1と定義する。さらに、平面視において散布機1の中心点から見た方向を基準として、左右方向D2及び前後方向D3を定義する。つまり、散布機1の前進時における散布機1の進行方向が前後方向D3の前方となり、散布機1の後退時における散布機1の進行方向が前後方向D3の後方となる。ただし、これらの方向は、散布機1の使用方向(使用時の方向)を限定する趣旨ではない。
【0038】
[2]散布機の詳細
次に、散布機1の構成について、
図1、
図2、
図5~
図11を参照してより詳細に説明する。
図1は、散布機1を左前方側から見た外観図であり、
図2は、散布機1を背面側(後方)から見た背面の外観図である。
図5は、散布機1の主要な構成を示す概略ブロック図である。
図6は、散布機1を左側から見た左側面の外観図であり、
図7は、散布機1を右側から見た右側面の外観図であり、
図8は、散布機1を上方から見た上面の外観図である。
図9は、散布機1を背面側(後方)から見た背面の外観図である。
図10は、散布機1を斜め後方から見た状態を示す概略図であって、吹出内には一部拡大図を示している。
図11は、
図7の領域Z1の拡大図であって、吹出内には手動操作装置8の外観図を示している。
【0039】
散布機1は、機体10と、走行部11と、支持フレーム3と、散布装置4と、を備えている。本実施形態では、
図5に示すように、散布機1は、測位装置2、制御装置7、手動操作装置8、気流発生部5、通信装置60、ユーザインタフェース61、障害物検出装置62、動力源63、タンク64(
図7参照)、表示器65及びセンサ装置66等を更に備えている。また、散布機1は、燃料タンク及びバッテリ等を更に備える。本実施形態では、機体10及び支持フレーム3等の散布機1の構造体は、基本的に金属製であって、必要な強度及び対候性等に応じて材質が選択される。ただし、散布機1の構造体は金属製に限らず、例えば、樹脂又は木材等が適宜用いられてもよい。
【0040】
機体10は、散布機1の本体であって、測位装置2及び支持フレーム3等の散布機1の殆どの構成要素が支持される。機体10は、フレーム101(
図2参照)と、カバー102と、を有している。フレーム101は、機体10の骨格を構成する部材であって、例えば動力源63及びタンク64等の重量物を支持する。カバー102は、機体10の外郭を構成する部材であって、フレーム101及びフレーム101に搭載された部材の少なくとも一部を覆うようにフレーム101に取り付けられている。機体10の後面(背面)及び右側面の一部では、フレーム101がカバー102に覆われておらずフレーム101が露出する。カバー102は、複数の部分に分割されており、これら複数の部分がフレーム101から個別に取外可能に構成されている。そのため、カバー102は、例えば、動力源63等の一部の装置(部材)に対応する部分のみ取り外すことが可能であって、これにより動力源63等の一部の装置(部材)を露出させることができる。
【0041】
機体10は、上述したように、左右方向D2に並べて配置される第1ブロック10L及び第2ブロック10Rを有している。第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとは、左右方向D2において、一定値以上の間隔をあけた状態で互いに対向する。本実施形態では一例として、第1ブロック10Lが左側に位置し、第2ブロック10Rが右側に位置している。そのため、機体10の左側部分は第1ブロック10Lによって構成され、機体10の右側部分は第2ブロック10Rによって構成される。さらに、機体10は、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとを連結する連結部10Cを有している。正面視において(前方から見て)、連結部10Cは左右方向D2に沿って長さを有しており、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rはそれぞれ上下方向D1に沿って長さを有している。
【0042】
ここで、連結部10Cは、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとの上端部同士を連結しているので、言い換えれば、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rは、それぞれ連結部10Cの(左右方向D2の)両端部から下方に突出する。これにより、機体10は、第1ブロック10L、第2ブロック10R及び連結部10Cにて、前後方向D3の両側に加えて下方に開放された門型の形状を構成する。そして、機体10の内側には、第1ブロック10L、第2ブロック10R及び連結部10Cにて三方が囲まれ、かつ前後方向D3に開放された空間Sp1が形成される。
【0043】
要するに、機体10は、
図2に示すように、第1ブロック10Lと第2ブロック10Rとの間に、散布装置4(作業部)による作業(散布作業)の対象となる作物V1(作業対象物)を通過させる空間Sp1を形成する。具体的に、散布対象物である作物V1の標準的な大きさを基準に、それ以上の高さ及び幅の空間Sp1を形成するように、機体10の各部の寸法が設定される。そのため、標準的な大きさの作物V1であれば、機体10は、作物V1を跨いだ状態で、作物V1が機体10に接触しないように所定値以上の間隔を空けた状態で、空間Sp1にて作物V1の通過を許容することができる。空間Sp1を作物V1が通過中にあっては、第1ブロック10Lは作物V1の左方に位置し、第2ブロック10Rは作物V1の右方に位置し、連結部10Cは作物V1の上方に位置する。
【0044】
より詳細には、本実施形態では、機体10は、左右方向D2において略対称に構成されている。第1ブロック10L及び第2ブロック10Rは、側面視において略同サイズかつ同形状の矩形状に形成されている。第1ブロック10L及び第2ブロック10Rは、それぞれ上下方向D1、左右方向D2及び前後方向D3のうちで左右方向D2の寸法が最小となる、左右方向D2に扁平な形状を有している。また、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rは、それぞれ上下方向D1において中央部より上方の部分が、上端側ほど左右方向D2の寸法が小さくなるテーパ状に形成されている。連結部10Cは、平面視において、左右方向D2よりも前後方向D3の寸法が大きくなるような矩形状に形成されている。連結部10Cは、上下方向D1、左右方向D2及び前後方向D3のうちで上下方向D1の寸法が最小となる、上下方向D1に扁平な形状を有している。
【0045】
このように、機体10は、大まかには、第1ブロック10L、第2ブロック10R及び連結部10Cの3つの部分(ブロック)に分けることができる。そして、第1ブロック10L、第2ブロック10R及び連結部10Cの各々が、フレーム101及びカバー102を有している。言い換えれば、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rの各々が、フレーム101及びカバー102を有している。さらに、測位装置2及び支持フレーム3等の散布機1の殆どの構成要素は、第1ブロック10L、第2ブロック10R及び連結部10Cに分散して設けられている。
【0046】
走行部11は、散布機1を走行させる走行装置(車体)であって、機体10の下部に設けられている。走行部11により、機体10は地面を走行(旋回を含む)することで、圃場F1内を左右方向D2及び前後方向D3に移動可能となる。このような走行部11が機体10に設けられていることで、散布機1は、圃場F1内を移動しながら、作業(散布作業)を行うことが可能である。
【0047】
走行部11は、左右方向D2に並ぶ一対のクローラ(履帯)111L,111Rを含んでいる(
図1参照)。一対のクローラ111L,111Rは左右方向D2に一定の間隔を空けて配置されており、これら一対のクローラ111L,111R間には、散布対象物である作物V1を通過させるための空間Sp1が形成される。つまり、空間Sp1の左方に位置する左側のクローラ111Lと、空間Sp1の右方に位置する右側のクローラ111Rとは、空間Sp1を挟んで互いに対向する。左側のクローラ111Lと右側のクローラ111Rとを特に区別しない場合、各クローラ111L,111Rを単に「クローラ111」とも呼ぶ。また、走行部11は、クローラ111を駆動するモータ112(
図1参照)を備えている。つまり、走行部11は、モータ112にて無端帯状のクローラ111を駆動することにより、散布機1を走行させるクローラ式(無限軌道式)の走行装置である。
【0048】
ここで、モータ112は、一対のクローラ111L,111Rに対応して少なくとも2個設けられている。左側のクローラ111Lを駆動する左側のモータ112と、右側のクローラ111Rを駆動する右側のモータ112とは、個別にクローラ111を駆動可能である。本実施形態では一例として、モータ112は、油圧モータ(油圧アクチュエータ)であって、油圧ポンプからの作動油が供給されることで、クローラ111を駆動する。この構成によれば、圃場F1の路面状況が荒れているような場合でも、機体10は比較的安定して走行することが可能である。
【0049】
ここで、クローラ111及びモータ112は、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rのそれぞれの下部に設けられている。つまり、第1ブロック10Lは、左側のクローラ111L及び当該クローラ111Lを駆動するモータ112を有し、第2ブロック10Rは、右側のクローラ111R及び当該クローラ111Rを駆動するモータ112を有している。本実施形態では、一対のクローラ111L,111R及び一対のモータ112は、左右方向D2において略対称に構成されている。このように、一対の走行部11が空間Sp1の分だけ左右方向D2に離れて配置されていることで、散布機1は、左右方向D2のいずれかが低くなるような横傾斜の斜面等を含む様々な圃場F1の路面状況において、比較的安定した姿勢で走行することが可能である。
【0050】
ここで、一対のクローラ111L,111Rは、静油圧式無段変速装置による独立変速が可能な状態で動力源63からの動力により駆動される。そのため、機体10は、一対のクローラ111L,111Rが前進方向に等速駆動されることにより前進方向に直進する前進状態になり、一対のクローラ111L,111Rが後進方向に等速駆動されることにより後進方向に直進する後進状態になる。また、機体10は、一対のクローラ111L,111Rが前進方向に不等速駆動されることにより前進しながら旋回する前進旋回状態になり、一対のクローラ111L,111Rが後進方向に不等速駆動されることで後進しながら旋回する後進旋回状態になる。また、機体10は、一対のクローラ111L,111Rのいずれか一方が駆動停止された状態で他方が駆動されることによりピボット旋回(信地旋回)状態になり、一対のクローラ111L,111Rが前進方向と後進方向とに等速駆動されることでスピン旋回(超信地旋回)状態になる。また、機体10は、一対のクローラ111L,111Rが駆動停止されることで走行停止状態になる。
【0051】
また、第1ブロック10Lには、動力源63等が搭載され、第2ブロック10Rには、タンク64等が搭載される。このように、機体10の第1ブロック10L及び第2ブロック10Rに、散布機1の構成部品が振り分けて配置されることにより、散布機1は、左右方向D2のバランスの均衡化及び低重心化が図られている。その結果、散布機1は、圃場F1の斜面等を安定して走行することができる。
【0052】
測位装置2は、上述したように、機体10の現在位置及び現在方位等を検出する装置である。測位装置2は、少なくともアンテナ21を有している。アンテナ21は、衛星203から送信されるGNSS信号等を受信する。つまり、アンテナ21は、機体10の位置を特定するための位置特定用アンテナを含む。ここで、アンテナ21は、衛星203からの信号(GNSS信号)を受信しやすくなるように、機体10の上面(天面)上に配置されている。言い換えれば、アンテナ21は、機体10のうち最も高い位置よりも更に高い位置に配置されている。さらに、測位装置2は、機体10の姿勢を検出する姿勢検出部等を含んでいる。
【0053】
本実施形態では、測位装置2は、第1アンテナであるアンテナ21とは別に、第2アンテナであるアンテナ22を更に有している。測位装置2は、これら2つのアンテナ21,22のそれぞれでGNSS信号等を受信する。ここで、アンテナ22(第2アンテナ)は、アンテナ21(第1アンテナ)に対して前後方向D3に並ぶように配置される。これにより、測位装置2は、アンテナ21,22のそれぞれで信号(GNSS信号等)の送受信が可能である。特に、アンテナ21,22が位置特定用アンテナである場合には、機体10の前部と後部とのそれぞれにおいて、現在位置を特定できるので、機体10の向き(現在方位)も含めて特定することが可能となる。
【0054】
支持フレーム3は、機体10の前後方向D3の一端部に取り付けられ、後述する散布装置4の散布ノズル41を支持する部材である。本実施形態では、支持フレーム3は、機体10の後端部に取り付けられている。支持フレーム3は、機体10と同様に、門型の形状を有し、背面視において(後方から見て)、機体10と重なる位置に配置されている。つまり、支持フレーム3は、左右方向D2に並べて配置される縦フレーム3L(第1縦フレーム)及び縦フレーム3R(第2縦フレーム)と、縦フレーム3L及び縦フレーム3Rの上端部同士を連結する横フレーム3Cと、を有している。これにより、支持フレーム3は、縦フレーム3L、縦フレーム3R及び横フレーム3Cにて、空間Sp1の左方、右方及び上方の三方を囲む門型の形状を構成する。
【0055】
具体的に、支持フレーム3は、左右方向D2に並べて配置される縦フレーム3L及び縦フレーム3Rを有している。縦フレーム3Lと縦フレーム3Rとは、左右方向D2において、一定値以上の間隔をあけた状態で互いに対向する。本実施形態では一例として、縦フレーム3Lが左側に位置し、縦フレーム3Rが右側に位置している。そのため、縦フレーム3Lは機体10の第1ブロック10Lの後方に位置し、縦フレーム3Rは機体10の第2ブロック10Rの後方に位置する。そして、背面視において(後方から見て)、横フレーム3Cは左右方向D2に沿って長さを有しており、縦フレーム3L及び縦フレーム3Rはそれぞれ上下方向D1に沿って長さを有している。
【0056】
ここで、横フレーム3Cは、縦フレーム3Lと縦フレーム3Rとの上端部同士を連結しているので、言い換えれば、縦フレーム3L及び縦フレーム3Rは、それぞれ横フレーム3Cの(左右方向D2の)両端部から下方に突出する。このように、支持フレーム3は、左右方向D2に沿って長さを有する横フレーム3Cと、それぞれ上下方向D1に沿って長さを有し、横フレーム3Cの両端部から下方に突出する一対の縦フレーム3L,3Rを含んでいる。これにより、支持フレーム3は、縦フレーム3L、縦フレーム3R及び横フレーム3Cにて、前後方向D3の両側に加えて下方に開放された門型の形状を構成する。そして、支持フレーム3の内側には、縦フレーム3L、縦フレーム3R及び横フレーム3Cにて三方が囲まれ、かつ前後方向D3に開放された空間Sp1が形成される。
【0057】
要するに、支持フレーム3は、
図2に示すように、一対の縦フレーム3L,3Rの間に散布装置4(作業部)による作業(散布作業)の対象となる作物V1(作業対象物、散布対象物)を通過させる空間Sp1を形成する。具体的に、散布対象物である作物V1の標準的な大きさを基準に、それ以上の高さ及び幅の空間Sp1を形成するように、支持フレーム3の各部の寸法が設定される。そのため、標準的な大きさの作物V1であれば、支持フレーム3は、作物V1を跨いだ状態で、作物V1が支持フレーム3に接触しないように所定値以上の間隔を空けた状態で、空間Sp1にて作物V1の通過を許容することができる。空間Sp1を作物V1が通過中にあっては、縦フレーム3Lは作物V1の左方に位置し、縦フレーム3Rは作物V1の右方に位置し、横フレーム3Cは作物V1の上方に位置する。
【0058】
より詳細には、本実施形態では、支持フレーム3は、左右方向D2において略対称に構成されている。縦フレーム3L及び縦フレーム3Rは、断面が円形状となる円筒状を有している。本実施形態では一例として、縦フレーム3L及び縦フレーム3Rは、それぞれ円筒状の部材が2本ずつ並設されて構成されている。横フレーム3Cは、断面が矩形状となる角筒状を有している。ここで、縦フレーム3L及び縦フレーム3Rは、それぞれ横フレーム3Cに対して、連結金具、筋交金具又は溶接等の適宜の固定手段によって強固に固定されている。そのため、縦フレーム3L及び縦フレーム3Rは、それぞれ横フレーム3Cに対して直交した状態を維持する。言い換えれば、背面視において、縦フレーム3Lと横フレーム3Cとの間の角部、及び縦フレーム3Rと横フレーム3Cとの間の角部は、それぞれ直角となる。
【0059】
また、本実施形態では、支持フレーム3は、一対の縦フレーム3L,3Rと横フレーム3Cとの相対的な位置関係を維持した状態で、回転軸Ax1(
図8及び
図9参照)を中心として回転可能に機体10に支持されている。回転軸Ax1は、横フレーム3Cに設けられた支点部31を通り前後方向D3に沿った軸である。つまり、作業部(散布ノズル41)を支持する支持フレーム3は、前後方向D3に沿った回転軸Ax1を中心として回転可能に機体10に支持されている。ここで、本開示でいう「回転軸」は、回転体の回転運動の中心となる仮想的な軸(直線)を意味する。つまり、回転軸Ax1は、実体を伴わない仮想軸である。ただし、回転軸Ax1は、例えば軸ピンのように実体を伴う部材であってもよい。
【0060】
散布装置4は、散布ノズル41等を有している。散布装置4は、タンク64に貯留されている散布物としての薬液を、散布対象物である作物V1に散布する散布作業を実行する。散布ノズル41は、支持フレーム3に支持されており、散布物の散布を行う部位である。本実施形態では一例として、散布ノズル41は、実際に散布物(薬液)の出口となる吐出口(散布部)である。散布装置4は、散布ノズル41を複数(本実施形態では一例として12個)有している。
【0061】
散布装置4は、散布ノズル41に加えて、散布管42、ポンプ43(
図7参照)、バルブ44(
図7参照)及び散布用配管等を有している。散布ノズル41は、作業(散布作業)を実行する作業部の一例であり、支持フレーム3に支持される。支持フレーム3は機体10に支持されるので、散布ノズル41(作業部)は機体10に間接的に支持されることになる。本実施形態では、散布ノズル41は、散布管42に取り付けられている。散布管42は、散布用配管により、バルブ44を介してポンプ43に接続されている。ポンプ43は、タンク64に貯留されている散布物(薬液)を散布管42に圧送する。バルブ44は、電磁バルブ等の電子制御式のバルブユニットであって、散布物を散布する際の圧力(噴霧圧)及び散布パターン等を変更する。これにより、タンク64内の薬液は、ポンプ43にてバルブ44及び散布管42を介して散布ノズル41へと供給され、散布ノズル41から散布される。ここで、散布ノズル41からは霧状の薬液が吐出(噴霧)される。
【0062】
より詳細には、
図9及び
図10に示すように、散布管42は、上下方向D1に長さを有する配管であって、支持フレーム3の縦フレーム3L及び縦フレーム3Rの各々に対して2本ずつ取り付けられている。つまり、本実施形態では、散布装置4は計4本の散布管42を有している。縦フレーム3L及び縦フレーム3Rの各々に取り付けられる2本(一対)の散布管42は、左右方向D2に並べて配置されている。各散布管42は、その上端部から注入される散布物としての薬液を、菅内を通して下方に流しつつ、3つの散布ノズル41から吐出させる。各散布管42には、散布ノズル41が3つずつ取り付けられており、これにより散布装置4は計12個の散布ノズル41を有している。
【0063】
各散布ノズル41は、対応する散布管42に、上下方向D1に位置変更可能に取り付けられている。これにより、各散布ノズル41は、隣り合う散布ノズル41との間隔及び散布管42に対する高さ位置を散布対象物(作物V1)に応じて変更することができる。また、各散布ノズル41は、機体10に対する上下方向D1及び左右方向D2の位置、並びに向き(角度)を散布対象物に応じて変更可能に取り付けられている。ただし、散布装置4において、各散布管42に設けられる散布ノズル41の個数等は、散布対象物(作物V1)の種類、又は各散布管42の長さ等に応じて適宜変更が可能である。
【0064】
気流発生部5は、散布ノズル41から吐出される散布物(薬液)を搬送する気流を発生する。気流発生部5は、散布ノズル41と共に支持フレーム3に支持されている。すなわち、本実施形態に係る散布機1は、気流発生部5で発生する気流を利用して散布物(薬液)を散布する、エアアシスト方式の散布機である。これにより、散布機1は、散布ノズル41から比較的離れた位置にある散布対象物(作物V1)に対しても、効率的に散布物(薬液)を散布することが可能である。
【0065】
気流発生部5は、ダクト51と、送風機52と、を有している。ダクト51は、上下方向D1に沿って空気を流す流路を形成する。送風機52は、ダクト51に空気を流す。気流発生部5は、ダクト51に形成された吹出孔511(
図10参照)から吹き出す空気が気流を形成する。要するに、気流発生部5は、送風機52がダクト51に送り込む空気をダクト51内の流路を通して吹出孔511から吹き出すことにより、吹出孔511から外方へと流れる空気の流れ(気流)を発生する。この構成によれば、比較的広範囲にわたって安定した気流を発生させることができる。さらに、気流発生部5は、送風機52の制御によって気流の風量を調節可能である。そして、気流発生部5は、風量を調節することで散布物の搬送距離を調節することができ、風量が大きいほど散布物を遠方まで搬送することが可能である。したがって、本実施形態に係る散布機1では、散布装置4による散布物の散布範囲を調節することができる。
【0066】
より詳細には、ダクト51は、上下方向D1に長さを有する配管であって、支持フレーム3の縦フレーム3L及び縦フレーム3Rの各々に対して1本ずつ取り付けられている。つまり、本実施形態では、気流発生部5は計2本のダクト51を有している。各ダクト51には、ダクト51の左側面及び左側面の各々に、上下方向D1に沿って一列に並ぶように複数の吹出孔511が形成されている。さらに、各ダクト51の後方側には、散布装置4の2本の散布管42が固定されている。
【0067】
ここで、ダクト51、これに取り付けられる2本の散布管42、及びこれら2本の散布管42に取り付けられる計6つの散布ノズル41は、左右方向D2において対称に配置されている。そして、2本の散布管42のうち、左側の散布管42に設けられた3つの散布ノズル41は、左前方に向けて散布物(薬液)を吐出し、右側の散布管42に設けられた3つの散布ノズル41は、右前方に向けて散布物(薬液)を吐出する。そのため、左側の散布ノズル41から吐出される霧状の散布物は、ダクト51から左方に吹き出す気流に乗って左方へ搬送され、右側の散布ノズル41から吐出される霧状の散布物は、ダクト51から右方に吹き出す気流に乗って右方へ搬送される。
【0068】
よって、複数(12個)の散布ノズル41のうち、最左端の散布管42に設けられた3つの散布ノズル41は、機体10の左外方に位置する作物V1に向けて薬液を左向きに散布する。複数の散布ノズル41のうち、最左端の散布管42に隣接する左内側の散布管42に設けられた3つの散布ノズル41は、機体10の内側の空間Sp1に位置する作物V1に向けて薬液を右向きに散布する。複数の散布ノズル41のうち、最右端の散布管42に設けられた3つの散布ノズル41は、機体10の右外方に位置する作物V1に向けて薬液を右向きに散布する。複数の散布ノズル41のうち、最右端の散布管42に隣接する右内側の散布管42に設けられた3つの散布ノズル41は、機体10の内側の空間Sp1に位置する作物V1に向けて薬液を左向きに散布する。
【0069】
上記の構成により、散布装置4においては、支持フレーム3の縦フレーム3Lに設けられた2本の散布管42及び6つの散布ノズル41が左側の散布ユニットとして機能する。また、支持フレーム3の縦フレーム3Rに設けられた2本の散布管42及び6つの散布ノズル41が右側の散布ユニットとして機能する。そして、左右一対の散布ユニットは、機体10の後方において、左右方向D2への散布が可能な状態で、両者間に作物V1の通過を許容する間隔(空間Sp1)を空けて配置されている。
【0070】
また、散布装置4は、複数(12個)の散布ノズル41が複数系統に分けれており、系統ごとに制御可能に構成されている。本実施形態では一例として、4本の散布管42のうち左右方向D2における内側の2本の散布管42に設けられた6つの散布ノズル41が第1系統、最左端の散布管42に設けられた3つの散布ノズル41が第2系統、最右端の散布管42に設けられた3つの散布ノズル41が第3系統に分類される。そのため、散布装置4による散布パターンには、全ての散布ノズル41から散布物(薬液)を散布する全散布パターンと、散布方向が限定された限定散布パターンとが含まれる。限定散布パターンには、第1系統の6つの散布ノズル41のみ散布を行う第1散布パターンと、第2系統の3つの散布ノズル41のみ散布を行う第2散布パターンと、第3系統の3つの散布ノズル41のみ散布を行う第3散布パターンと、が含まれる。さらに、限定散布パターンには、第1系統及び第2系統の9つの散布ノズル41のみ散布を行う第4散布パターンと、第1系統及び第3系統の9つの散布ノズル41のみ散布を行う第5散布パターンと、第2系統及び第3系統の6つの散布ノズル41のみ散布を行う第6散布パターンと、が含まれる。
【0071】
散布装置4は、制御装置7によって制御され、上述した複数の散布パターン(全散布パターン及び6つの限定散布パターンの計6パターン)が適宜切り替えられる。少なくとも、散布装置4のバルブ44は、複数の散布ノズル41の系統ごとに設けられており、本実施形態では、3系統(第1系統、第2系統及び第3系統)に対応するべく3つのバルブ44が設けられている。これら複数(ここでは3つ)のバルブ44は、制御装置7によって個別に制御され散布パターンを変更する。また、散布装置4は、系統ごとに散布物を散布する際の圧力(噴霧圧)を変更することでも、散布物の散布範囲を変更可能である。さらに、本実施形態では、気流発生部5の風量を調節することでも散布物の散布範囲を調節できるので、散布対象物(作物V1)又は散布物(薬液)に応じて、より多様な散布範囲を実現可能である。
【0072】
ところで、本実施形態では、上述したように支持フレーム3は、機体10に対して相対的に固定されるのではなく、回転軸Ax1を中心に回転可能に構成されている。支持フレーム3が回転することにより、支持フレーム3に支持されている複数の散布ノズル41についても回転軸Ax1を中心に回転することになる。
【0073】
また、本実施形態に係る散布機1は、支持フレーム3を能動的に回転させるアクチュエータ等を備えていない。そのため、支持フレーム3は、支持フレーム3に対して外力が作用して初めて回転することになる。例えば、機体10が横傾斜の斜面を走行する際には、支持フレーム3の自重、つまり支持フレーム3に作用する重力によって、支持フレーム3が回転する。ここで、支持フレーム3、及び支持フレーム3に支持される部材(散布ノズル41、散布管42及び気流発生部5等)が、左右方向D2に対称となる重量バランスであれば、機体10が水平に保たれている限りは支持フレーム3が中立位置に維持されることになる。
【0074】
以上説明したような回転可能な支持フレーム3によれば、例えば、機体10が横傾斜の斜面を走行中には、支持フレーム3が回転することによって、散布ノズル41による散布物(薬液)の散布量のムラ(散布ムラ)の発生が生じにくい。要するに、支持フレーム3が機体10に固定的に支持されているとすれば、横傾斜の斜面を走行する際、機体10が傾くことがある。そして、この場合、地面(圃場F1)から鉛直方向にまっすぐ延びる作物V1(散布対象物)においては、その上部と下部とで散布ノズル41からの距離が異なり、散布物の散布量にムラが生じる可能性がある。これに対して、本実施形態に係る散布機1では、支持フレーム3が回転することで、支持フレーム3、及び支持フレーム3に支持されている散布ノズル41等については、水平面を走行する際と同じ姿勢を維持することができる。そのため、地面(圃場F1)から鉛直方向にまっすぐ延びる作物V1(散布対象物)においても、その上部と下部とで散布ノズル41からの距離がばらつきにくくなり、散布物の散布量のムラの発生を抑制しやすい。
【0075】
通信装置60は、
図5に示すように、第1通信部601と、第2通信部602と、を有している。第1通信部601及び第2通信部602は、それぞれ個別に動作可能であって、互いに異なるプロトコルの通信を行うことで、サーバ201、第1操作端末210及び第2操作端末220等の外部機器との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インタフェースである。つまり、通信装置60は、第1通信部601による通信、及び第2通信部602による通信を含む、複数の通信チャネル(周波数帯域等)での通信が可能に構成されている。
【0076】
第1通信部601は、一例として、画像データ等のデータ量の多いデータを高速で送受信するべく、例えば、Wi-Fi(登録商標)等の規格に準拠した、2.4GHz帯の電波を通信媒体として用いる無線通信を採用する。第1通信部601は、無線通信により通信網N1と接続可能である。そのため、第1通信部601は、通信網N1を介して、第1操作端末210及びサーバ201等との間で通信可能となる。ここで、第1通信部601は、少なくとも第1操作端末210及びサーバ201等との間で双方向の通信が可能である。
【0077】
第2通信部602は、第1通信部601に比較してデータ量の少ないデータの送受信に対応するべく、例えば、免許を必要としない小電力無線(特定小電力無線)等の規格に準拠した、400MHz帯又は920MHz帯の電波を通信媒体として用いる無線通信を採用する。第2通信部602は、無線通信により第2操作端末220と接続可能である。そのため、第2通信部602は、直接的に、第2操作端末220との間で通信可能となる。ここで、第2通信部602は、少なくとも第2操作端末220との間で双方向の通信が可能である。
【0078】
ユーザインタフェース61は、ユーザに対する情報の出力と操作の受け付けとの少なくとも一方を行う装置である。ここでは、ユーザインタフェース61は、
図7に示すように、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部611と、操作を受け付けるタッチパネル、つまみ又は押釦スイッチのような操作部612と、を有する。ユーザの一例であるオペレータは、表示部611に表示される操作画面に従って、操作部612を操作して各種設定を行うことが可能である。具体的に、オペレータは、ユーザインタフェース61の操作部612を操作して、散布装置4の動作条件等の設定を行う。散布装置4の動作条件の一例としては、散布ノズル41から散布物を散布する際の圧力(噴射圧)及び流量等がある。
【0079】
障害物検出装置62は、第1センサ621と、第2センサ622と、第3センサ623と、第4センサ624と、を備えている。第1センサ621~第4センサ624は、いずれも機体10の前方に向けて配置されている。第1センサ621は機体10の上面の左前端部、第2センサ622は機体10の上面の右前端部、第3センサ623は第1ブロック10Lの前面、第4センサ624は第2ブロック10Rの前面に、それぞれ配置される。また、障害物検出装置62は、第5センサ625(
図6参照)と、第6センサ626(
図7参照)と、を更に備えている。第5センサ625及び第6センサ626は、いずれも機体10の後方に向けて配置されている。第5センサ625は縦フレーム3L、第6センサ626は縦フレーム3Rに取り付けられている。
【0080】
第1センサ621~第6センサ626の各々は、例えば、イメージセンサ(カメラ)、ソナーセンサ、レーダ又はLiDAR(Light Detection and Ranging)等のセンサを含み、機体10の周辺状況を検知する。本実施形態では一例として、第1センサ621~第6センサ626の各々は、光又は音が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、測定範囲の各測距点(測定対象物)までの距離を測定する3次元センサである。機体10の周辺状況には、例えば、機体10の進行方向の前方に存在する物体(障害物等)の有無、及び物体の位置(距離及び方位)等が含まれる。
【0081】
また、障害物検出装置62は、前方接触センサ627と、後方接触センサ628と、を更に備えている。前方接触センサ627は、機体10の前方側に左右一対配置され、後方接触センサ628は、機体10の後方側に左右一対配置されている。前方接触センサ627及び後方接触センサ628の各々は、障害物が接触した場合に障害物を検出する。各センサは、障害物を検出した場合に検出信号を制御装置7に送信する。
【0082】
動力源63は、少なくとも走行部11に動力を供給する駆動源である。動力源63は、例えばディーゼルエンジン等のエンジンを有する。動力源63は、油圧ポンプを駆動し、走行部11のモータ112等に油圧ポンプから作動油を供給させることで、走行部11等を駆動する。測位装置2、制御装置7及び通信装置60等の電子機器は、バッテリに接続されており、動力源63の停止中も動作可能である。
【0083】
タンク64は、薬液等の散布物を貯留する。タンク64に貯留されている散布物は、散布装置4に供給され、散布装置4の散布ノズル41から散布される。タンク64には、外部から散布物である薬液を補充可能である。タンク64の容量は、一例として200L程度である。
【0084】
表示器65は、機体10の上面に配置されている。表示器65は、一例として上下方向D1に長さを有する円柱状に形成されている。表示器65は、散布機1の動作状態(走行状態及び散布作業の実行状態等)に応じて点灯状態が変化する。これにより、散布機1の周囲からでも散布機1の動作状態が視認可能となる。
【0085】
センサ装置66は、例えば、散布物としての薬液の残量及び燃料の残量を検知する残量センサを含む。一例として、センサ装置66は、タンク64内の薬液の量から、薬液残量を検知する。同様に、センサ装置66は、燃料タンク内の燃料の量から、燃料残量を検知する。
【0086】
制御装置7は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の1以上のプロセッサと、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等の1以上のメモリとを有するコンピュータシステムを主構成とし、種々の処理(情報処理)を実行する。本実施形態では、制御装置7は、散布機1全体の制御を行う統合コントローラであって、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)からなる。ただし、制御装置7は、統合コントローラと別に設けられていてもよいし、1つのプロセッサ、又は複数のプロセッサを主構成としてもよい。
【0087】
制御装置7は、
図5に示すように、取得処理部71と、自動走行処理部72と、手動走行処理部73と、報知処理部74と、出力処理部75と、散布処理部76と、を備えている。本実施形態では一例として、制御装置7は1以上のプロセッサを有するコンピュータシステムを主構成とするので、1以上のプロセッサが制御プログラムを実行することにより、これら複数の機能部(取得処理部71等)が実現される。制御装置7に含まれる、これら複数の機能部は、複数の筐体に分散して設けられていてもよいし、1つの筐体に設けられていてもよい。
【0088】
制御装置7は、機体10の各部に設けられたデバイスと通信可能に構成されている。つまり、制御装置7には、少なくとも走行部11、測位装置2、散布装置4、気流発生部5、通信装置60、ユーザインタフェース61、障害物検出装置62、動力源63及び表示器65等が接続されている。これにより、制御装置7は、走行部11及び散布装置4等を制御したり、測位装置2、通信装置60及び障害物検出装置62等から電気信号を取得したりすることが可能である。制御装置7は、各種の情報(データ)の授受を、各デバイスと直接的に行ってもよいし、中継器等を介して間接的に行ってもよい。
【0089】
制御装置7は、上記機能部に加えて、エンジン制御部、及び静油圧式無段変速装置に関する制御を行うHST(Hydro-Static Transmission)制御部等を更に含んでいる。エンジン制御部はエンジン(動力源63)に関する制御を行う。HST制御部は静油圧式無段変速装置に関する制御を行う。
【0090】
取得処理部71は、各デバイスから電気信号(データを含む)を取得する取得処理を実行する。本実施形態では、取得処理部71は、少なくとも第1操作端末210及び第2操作端末220から停止指示等の操作信号を取得する。さらに、取得処理部71は、後述する手動操作装置8からの操作信号を取得する。これにより、制御装置7は、例えば、第1操作端末210、第2操作端末220及び手動操作装置8の操作に対応する操作信号を、取得処理部71にて取得することが可能である。さらに、取得処理部71は、散布物としての薬液の残量及び燃料の残量等の情報(データ)を、センサ装置66から取得する。
【0091】
自動走行処理部72は、測位装置2から取得する測位情報などに基づいて機体10を圃場F1の目標経路に沿って自動走行させる。具体的に、自動走行処理部72は、測位装置2により測位される機体10の位置及び方位を含む測位情報に基づいて、目標経路に沿って走行部11を自動走行させる。例えば、測位情報がRTK測位可能な状態になって、第2操作端末220の第3操作部223をオペレータが操作(例えば長押し)すると、第2操作端末220は走行開始指示(作業開始指示)を散布機1に出力する。自動走行処理部72は、第2操作端末220から走行開始指示を取得すると、測位装置2により測位される機体10の測位情報に基づいて散布機1の自動走行を開始させる。これにより、散布機1は、目標経路に沿って自動走行を開始し、散布装置4による散布作業を開始する。
【0092】
手動走行処理部73は、取得処理部71にて取得される手動操作装置8からの操作信号に従って走行部11を制御する走行制御処理を実行する。つまり、制御装置7は、手動走行処理部73にて走行部11を制御することにより、オペレータによる手動操作装置8の操作に応じて走行部11を制御すること、つまり走行部11の手動運転が可能となる。
【0093】
報知処理部74は、表示器65及び音出力部等を制御して報知処理を実行する。例えば、報知処理部74は、表示器65の点灯状態を、散布機1の動作状態(走行状態及び散布作業の実行状態等)に応じて変化させることにより、散布機1の周囲の人に対して散布機1の動作状態に応じた報知を行う。
【0094】
出力処理部75は、第1操作端末210等に情報を出力する出力処理を実行する。例えば、出力処理部75は、第1操作端末210に対して種々の情報を出力することで、第1操作端末210の表示部211に種々の情報を表示させることが可能である。
【0095】
散布処理部76は、散布装置4及び気流発生部5等の作業(散布作業)に関する散布制御処理を行う。具体的に、散布処理部76は、散布機1が作業開始位置において自動走行を開始すると、予め定められた目標経路に含まれる制御情報に基づいて散布パターンを切り替える切替信号を散布装置4に出力する。散布装置4は、切替信号を受信すると所定の散布パターンで散布作業を実行する。
【0096】
手動操作装置8は、散布機1を手動制御するための装置である。散布機1は、手動操作装置8がオペレータの操作に応じて出力する操作信号を制御装置7(取得処理部71)にて取得する。
【0097】
本実施形態では、手動操作装置8は、十分な長さを有するケーブルにて散布機1の制御装置7に接続されており、制御装置7と有線通信する。そのため、オペレータは、散布機1の機体10に搭乗することなく、例えば、機体10の周囲に立った状態で、手動操作装置8にて散布機1を手動操作することが可能である。ここで、手動操作装置8は、電波又は光を利用した無線通信により散布機1(制御装置7)と通信してもよく、この場合であっても、オペレータは、機体10の外部から、手動操作装置8にて散布機1を手動操作することが可能である。要するに、手動操作装置8は機体10の外部において操作可能である。そのため、例えば、運搬車に対する散布機1の積み下ろし等に際し、オペレータは、機体10の外部の安全な場所で散布機1を手動操作することができる。
【0098】
また、本実施形態では、
図11に示すように、機体10には手動操作装置8を収納可能な収納部80が設けられている。そして、制御装置7の自動走行処理部72は、収納部80に手動操作装置8が収納されている場合に限り、散布機1(作業車両)の自動走行を開始させる。すなわち、散布機1の自動走行時のように、手動操作装置8を使用しないときには、機体10の収納部80に手動操作装置8を収納しておくことが可能であり、手動操作装置8の紛失防止等につながる。そして、収納部80に手動操作装置8が収納されていない状態では、散布機1は自動走行を開始しないので、オペレータに対しては、手動操作装置8を使用しないときには、機体10の収納部80に手動操作装置8を収納することを癖づけることが可能である。
【0099】
具体的に、収納部80は、ユーザインタフェース61等と同じく第2ブロック10R側に設けられている。ユーザインタフェース61は、作業(散布作業)に関する調節のための操作を受け付ける操作部612と、操作に関連する情報を表示する表示部611と、を含んでいる。例えば液晶ディスプレイからなる表示部611は、第2ブロック10Rの外側面(右側面)における前端寄りの位置に配置され、表示部611の下方には、操作部612としてのつまみ又は押釦スイッチ等が配置されている。そして、収納部80は、第2ブロック10Rの外側面(右側面)における操作部612の更に下方に配置されている。収納部80は、手動操作装置8を収納するのに十分な大きさの凹部からなる。
【0100】
収納部80の内部には、接触式又は非接触式のセンサ(スイッチを含む)が設けられており、収納部80に手動操作装置8が収納されているか否かは当該センサにて検知される。当該センサの検知結果は、制御装置7(の取得処理部71)にて取得される。自動走行処理部72は、当該センサの検知結果が、収納部80に手動操作装置8が収納されていることを示す場合に限って、第2操作端末220から走行開始指示を取得すると散布機1の自動走行を開始させる。つまり、自動走行処理部72は、当該センサの検知結果が、収納部80に手動操作装置8が収納されていないことを示す場合には、たとえ第2操作端末220から走行開始指示を取得しても散布機1の自動走行を開始させない。
【0101】
手動操作装置8は、
図5に示すように、第1走行操作部81と、第2走行操作部82と、切替操作部83と、表示灯84と、を有している。本実施形態では一例として、
図11の吹出内に示すように、第1走行操作部81、第2走行操作部82及び切替操作部83はそれぞれ、レバースイッチ、スライドスイッチ、ジョイスティック、シーソスイッチ又は押釦スイッチ等の様々な種類のメカニカルスイッチからなる。手動操作装置8は、その内部に回路基板を有しており、オペレータから第1走行操作部81、第2走行操作部82又は切替操作部83に対する操作を受け付けると、当該操作に応じた操作信号(電気信号)を出力する。例えば、オペレータが第1走行操作部81を上方へ操作すると、手動操作装置8は、第1走行操作部81が上方へ操作されたことを表す操作信号を出力する。
【0102】
第1走行操作部81、第2走行操作部82及び切替操作部83には、それぞれ以下の操作が割り当てられている。オペレータから見て縦方向(上下方向)に操作可能なレバースイッチからなる第1走行操作部81には、機体10を前進及び後進させるための操作が割り当てられている。オペレータから見て横方向(左右方向)に操作可能なレバースイッチからなる第2走行操作部82には、機体10を左旋回及び右旋回させるための操作が割り当てられている。押釦スイッチからなる切替操作部83には、走行部11を手動走行させる手動走行モードを有効化するための操作が割り当てられている。表示灯84は、例えばLEDであって手動走行モードが有効である場合に点灯する。
【0103】
本実施形態では、第1走行操作部81及び第2走行操作部82はいずれもレバータイプ(スティックタイプ)の操作具であるので、例えば、第1走行操作部81は、「中立位置」と「前進位置」との間、又は「中立位置」と「後進位置」との間で移動させる操作を受付可能である。同様に、第2走行操作部82は、「中立位置」と「右旋回位置」との間、又は「中立位置」と「左旋回位置」との間で移動させる操作を受付可能である。ここで、「中立位置」はニュートラルポジションであって、第1走行操作部81及び第2走行操作部82にオペレータが触れていない状態では、第1走行操作部81及び第2走行操作部82はいずれも「中立位置」に復帰する。第1走行操作部81の「前進位置」はオペレータから見て上方側の可動限界位置、「後進位置」はオペレータから見て下方側の可動限界位置である。第2走行操作部82の「右旋回位置」はオペレータから見て右方側の可動限界位置、「左旋回位置」はオペレータから見て左方側の可動限界位置である。そのため、手動操作装置8は、例えば、オペレータより「中立位置」から「前進位置」側(つまり上方側)へ第1走行操作部81の移動を伴う操作を受け付けると、その操作量(第1走行操作部81の移動量)に応じた操作信号を出力する。
【0104】
[3]自動走行方法
以下、
図12~
図17を参照しつつ、主として制御装置7によって実行される作業車両(散布機1)の自動走行に係る制御方法、つまり自動走行方法について説明する。
【0105】
本実施形態に係る自動走行方法は、コンピュータシステムを主構成とする制御装置7にて実行されるので、言い換えれば、作業車両(散布機1)の自動走行プログラム(以下、単に「自動走行プログラム」という)にて具現化される。つまり、本実施形態に係る自動走行プログラムは、自動走行方法に係る各処理を1以上のプロセッサに実行させるためのコンピュータプログラムである。このような自動走行プログラムは、例えば、制御装置7及び第1操作端末210等によって協働して実行されてもよい。
【0106】
そして、自動走行方法を実行する制御装置7は、
図5に示すように、測位装置2及び通信装置60等と共に、自動走行システム100を構成する。自動走行システム100は、作業車両(散布機1)の自動走行に係る処理を実行するシステムである。言い換えれば、本実施形態に係る自動走行システム100は、自動走行処理部72等を含む制御装置7と、測位装置2と、通信装置60とを含んでいる。ただし、測位装置2及び通信装置60のうちの少なくとも一つは、自動走行システム100の構成要素に含まれなくてもよく、例えば、自動走行システム100は、測位装置2を含まなくてもよい。
【0107】
上記より、本実施形態に係る自動走行システム100は、少なくとも(制御装置7の)自動走行処理部72を備えている。自動走行処理部72は、走行部11を制御することによって、作業地(圃場F1)において目標経路に従って作業車両(散布機1)を自動走行させる。そして、制御装置7は、散布機1の機体10に搭載されており、散布機1の構成要素の一部である。そのため、自動走行システム100は、走行部11及び散布装置4等と共に、作業車両としての散布機1を構成する。言い換えれば、本実施形態に係る作業車両(散布機1)は、自動走行システム100と、自動走行システム100に制御される走行部11と、を備える。
【0108】
[3.1]基本動作
まず、自動走行処理部72が自動走行処理を実行することによって、作業車両としての散布機1が作業地としての圃場F1内を自動走行するときの、基本的な動作について説明する。
【0109】
自動走行処理部72は、所定の自動走行条件を満たしている状態で、取得処理部71が自動走行開始指示を取得することをもって、散布機1の自動走行を開始する。自動走行条件は、例えば、目標経路R10(
図12参照)が設定されていること、散布機1のエンジン(動力源63)を始動するキースイッチ(エンジンキースイッチ)がON状態であること、及び散布機1が作業開始位置Ps1(
図12参照)に位置することを含む。すなわち、目標経路R10が設定され、かつエンジンが稼働している状態で、散布機1が手動操作装置8による手動操作によって目標経路R10の作業開始位置Ps1に移動させられると、自動走行条件を満たすことになる。この状態で、例えば、オペレータが第2操作端末220の第3操作部223を操作し、第2操作端末220から散布機1に対して自動走行開始指示が出力されることによって、自動走行処理部72は散布機1の自動走行を開始する。
【0110】
ここでは一例として、
図12に示すように、7つの作物列Vr11~Vr17が存在する圃場F1を、作業地として仮定する。この圃場F1は、作物列Vr11~Vr17が形成される作業領域F11(
図12の斜線領域)と、作業領域F11を囲むように作業領域F11の周囲に形成される枕地領域としての非作業領域F12と、を含む。作業領域F11は、圃場F1のうち、散布機1による散布作業が行われる領域である。非作業領域F12は、散布機1による散布作業が行われない領域である。すなわち、作業地(圃場F1)は、作業車両(散布機1)による作業を行う作業領域F11と、作業車両(散布機1)による作業を行わない非作業領域F12と、を含む。
【0111】
そして、散布機1は、このような圃場F1内を、予め設定された目標経路R10に沿って自動走行(自律走行)することが可能である。例えば、散布機1は、作業開始位置Ps1から作業終了位置Pg1まで、複数の作業経路R1及び複数の移動経路R2を含む目標経路R10に沿って自動走行する。複数の作業経路R1は、それぞれ散布機1が作業対象物(散布対象物)である作物V1に対して作業(散布作業)を行う直線状の経路であり、複数の移動経路R2は、それぞれ散布機1が散布作業を行わないで作物列Vr1間を移動する経路(非作業経路)であって旋回経路及び直進経路を含み得る。
【0112】
図12の例では、目標経路R10は、作業領域F11において、それぞれ作物列Vr1の長手方向(つまり複数の作物V1が並ぶ方向)である縦方向A1に沿って形成される、4つの作業経路R11~R14を含んでいる。ここでは一例として、作業経路R11は作物列Vr11上に設定され、作業経路R12は作物列Vr13上に設定され、作業経路R13は作物列Vr15上に設定され、作業経路R14は作物列Vr17上に設定されている。移動経路R2は、作業領域F11から見て縦方向A1の両側に位置する非作業領域F12において、幅方向A2に隣接する作業経路R11~R14間を接続するように形成されている。つまり、基本的には、目標経路R10のうち、作業経路R1は作業地(圃場F1)のうちの作業領域F11に形成され、移動経路R2は非作業領域F12に形成される。
【0113】
上記目標経路R10によれば、散布機1は、作業開始位置Ps1から作業経路R11に沿って縦方向A1の一方(
図12の上方)に向けて作業領域F11を走行し、その後、移動経路R2に沿って次の作業経路R12の始端に向けて非作業領域F12を走行する。それから、散布機1は、作業経路R12に沿って縦方向A1の他方(
図12の下方)に向けて作業領域F11を走行し、その後、移動経路R2に沿って次の作業経路R13の始端に向けて非作業領域F12を走行する。それから、散布機1は、作業経路R13に沿って縦方向A1の一方に向けて作業領域F11を走行し、その後、移動経路R2に沿って次の作業経路R14の始端に向けて非作業領域F12を走行する。最後に、散布機1は、作業経路R14に沿って縦方向A1の他方に向けて作業終了位置Pg1まで作業領域F11を走行する。
【0114】
ここで、散布機1は、平面視において、機体10の後部における左右方向D2の中心に配置されたアンテナ21の位置をもって、現在位置が特定されることとする。そのため、散布機1が目標経路R10に沿って自動走行する際、機体10の後部の左右方向D2の中心が目標経路R10上を通過することになる。さらに、散布機1は、上述したように、門型の機体10にて1つの作物列Vr1を跨いだ姿勢で走行しつつ、この作物列Vr1の作物V1、及びこの作物列Vr1に隣接する作物列Vr1の作物V1に対して散布物(薬液)を散布する。
【0115】
したがって、例えば、
図12に示すように、散布機1が作物列Vr15上に設定された作業経路R13を走行中には、機体10は、作物列Vr15を跨いで走行する。このとき、第1ブロック10Lが作物列Vr14と作物列Vr15との間の作業通路を走行し、第2ブロック10Rが作物列Vr15と作物列Vr16との間の作業通路を走行する。さらに、このとき、散布機1は、作物列Vr15の作物V1、左側に位置する作物列Vr14の作物V1、及び右側に位置する作物列Vr16の作物V1に対して、同時に散布物(薬液)を散布可能である。
【0116】
また、散布機1は、所定の列順序で自動走行を行う。
図12の例では、作業経路R1は、作物列Vr11,Vr13,Vr15,Vr17のように、作物列Vr1の配列順に1列おきに設定されている。そのため、散布機1は、複数の作物列Vr1を1列おきに自動走行することとなる。散布機1は、複数の作物列Vr1を1列おきに走行しながらも、幅方向A2に隣接する3列分の散布対象物(作物V1)に対して同時に散布物(薬液)を散布することで、全ての散布対象物に対する散布作業が可能である。ただし、このような作業経路R1の設定は一例に過ぎず、散布機1は、作物列Vr1の配列順に1列ごとに走行してもよいし、複数列おきに走行してもよい。
【0117】
ここで、散布機1は、作業経路R1を走行中に散布作業を行い、移動経路R2を走行中には散布作業を行わない。そのため、散布機1は、作業経路R1の走行を開始する際に散布作業を開始し、作業経路R1を終端まで走行すると散布作業を停止する。そして、散布機1は、散布作業を停止した状態で移動経路R2を走行し、次の作業経路R1の始端に到達すると散布作業を再開する。これにより、散布機1は、作業領域F11を走行中には散布作業を行い、非作業領域F12を走行中には散布作業を行わないこととなる。
【0118】
図12の例では、移動経路R2は、緩旋回での右旋回又は左旋回のための旋回経路を含むが、散布機1の方位を変更するための旋回態様は、「緩旋回」に限らず、例えば、「信地旋回」及び「超信地旋回」等を含んでもよい。さらに、散布機1の旋回態様は、いわゆる「フィッシュテールターン」等のように、限られたスペース内で機体10の旋回を可能とするために、前進と後進とを切り替えつつ機体10を旋回させる旋回態様を含んでもよい。
【0119】
また、目標経路R10は、例えば、作業車両(散布機1)に関する作業車両情報、圃場F1に関する圃場情報、及び作業(ここでは散布作業)に関する作業情報等の情報に基づいて生成される。作業車両情報は、例えば、散布機1の機種、散布機1のアンテナ21の位置、作業機(ここでは散布装置4)の種類、作業機のサイズ及び形状、散布装置4の機体10に対する位置、機体10の作業中の車速及びエンジン回転数等の情報を含む。圃場情報は、圃場F1の位置及び形状、作業開始位置Ps1、作業終了位置Pg1及び作業方向等の情報を含む。ここでいう作業方向とは、圃場F1から枕地等の非作業領域F12を除いた領域である作業領域F11において、散布作業を行いながら散布機1を走行させる方向を意味する。作業情報は、散布機1が非作業領域F12において旋回する場合にスキップする作業経路R1の数であるスキップ数、非作業領域F12の幅等の情報を含む。
【0120】
これら作業車両情報、圃場情報及び作業情報等は、例えば、オペレータが、第1操作端末210において登録する操作を行うことにより手動で設定してもよい。あるいは、例えば、圃場F1の位置及び形状等の情報は、オペレータが散布機1を手動操作して圃場F1の外周に沿って一回り周回走行させ、そのときのアンテナ21の位置情報の推移を記録することで、自動的に取得してもよい。
【0121】
生成された目標経路R10は、散布機1の制御装置のメモリ(記憶部)に記憶され、自動走行処理部72による自動走行に使用される。また、目標経路R10は、第1操作端末210の表示部211等に表示させることも可能である。
【0122】
[3.2]自動走行の停止
次に、自動走行処理部72において、自動走行中の作業車両としての散布機1を停止させる「自動走行の停止」に係る処理について説明する。
【0123】
すなわち、本実施形態に係る自動走行方法は、自動走行中の散布機1を停止させるための処理を含んでいる。一例として、散布物としての薬液の残量が閾値を下回った場合、又は燃料の残量が閾値を下回った場合等には、散布機1を停止させて、オペレータが、散布物(薬液)又は燃料の補給を行う必要がある。また、例えば、自動走行中に散布機1が目標経路R10を逸脱する等、自動走行の継続に支障があるようなエラーが発生した場合にも、散布機1を停止させる必要がある。そこで、このような自動走行中の散布機1を停止させる必要が生じた場合等において、自動走行処理部72は、散布機1の自動走行処理を中断(中止)し、散布機1を停止させることが可能である。
【0124】
本開示でいう「自動走行中の作業車両の停止」は、自動走行中の作業車両(散布機1)の走行部11の動作を停止して、作業車両(散布機1)をある位置に止まらせること、つまり停車状態とすることを意味する。さらに、自動走行中の作業車両(散布機1)が作業(ここでは散布作業)を実行中であれば、自動走行中の作業車両の停止に伴って、散布装置4及び気流発生部5の動作を停止させ、作業についても停止(中断)する。
【0125】
ここにおいて、散布機1の停止の態様には、大きく分けて「一時停止」と「緊急停止」とがある。本開示でいう「一時停止」は、作業車両(散布機1)を走行再開可能な態様で停止させることを意味する。本開示でいう「緊急停止」は、作業車両(散布機1)を走行再開不能な態様で停止させることを意味する。
【0126】
具体的に、散布機1を一時停止させた場合には、エンジン(動力源63)を稼働させたままで、走行開始指示があるまで走行部11を一時的に停止させる。よって、一時停止した散布機1においては、例えば、第2操作端末220からの走行開始指示を取得処理部71が取得することで、自動走行処理部72は、停車状態にある散布機1に自動走行を再開(開始)させる。一方、散布機1を緊急停止させた場合には、エンジン(動力源63)を停止させる。よって、緊急停止した散布機1においては、例えば、第2操作端末220からの走行開始指示を取得処理部71が取得しても、自動走行処理部72は、停車状態にある散布機1に自動走行を再開(開始)させることができない。つまり、緊急停止した散布機1を再始動するには、第2操作端末220等の遠隔操作だけでは足りないのであって、散布機1のエンジンを始動するキースイッチをON状態にしてエンジンを再始動する必要がある。
【0127】
ところで、本実施形態では、自動走行処理部72は、散布機1を走行再開可能な態様で停止させる「一時停止」のための処理として、少なくとも一時停止処理と停止予約処理との2種類の処理を実行可能に構成されている。「一時停止処理」は、散布機1の自動走行中に一時停止条件を満たすことにより、その場に散布機1を走行再開可能な態様で停止させる処理である。「停止予約処理」は、散布機1の自動走行中に停止予約条件を満たすことにより、散布機1を走行させた後で散布機1を走行再開可能な状態で停止させる処理である。
【0128】
すなわち、一時停止処理及び停止予約処理は、いずれも作業車両としての散布機1を走行再開可能な態様で停止(つまり一時停止)させるための処理である。そして、一時停止処理では、一時停止条件を満たした位置に散布機1を停止させるのに対し、停止予約処理では、停止予約条件を満たした位置から散布機1を移動させてから散布機1を停止させることが可能である。言い換えれば、一時停止処理は散布機1を即座に一時停止させる処理であるのに対し、停止予約処理は散布機1を即座に一時停止させるのではなく将来の一時停止の予約を行う処理である。
【0129】
すなわち、一時停止処理及び停止予約処理は、いずれも作業車両としての散布機1を走行再開可能な態様で停止(つまり一時停止)させるための処理である。そして、一時停止処理では、一時停止条件を満たした位置に散布機1を停止させるのに対し、停止予約処理では、停止予約条件を満たした位置から散布機1を移動させてから散布機1を停止させることが可能である。言い換えれば、一時停止処理は散布機1を即座に一時停止させる処理であるのに対し、停止予約処理は散布機1を即座に一時停止させるのではなく将来の一時停止の予約を行う処理である。
【0130】
そのため、例えば
図13に示すように、散布機1が作業経路R13を自動走行している場面を想定すると、一時停止処理によれば、作業経路R13上の一時停止条件を満たした位置P1(つまりその場)に散布機1が停止する。一方、停止予約処理によれば、作業経路R13上の停止予約条件を満たした位置P21から、しばらく散布機1を走行させ、位置P21から離れた位置P22に散布機1を停止させることができる。そして、一時停止処理及び停止予約処理のいずれであっても、散布機1は、停止した位置P1,P22から走行再開可能である。
図13では、上段に一時停止処理による散布機1の動作を示し、下段に停止予約処理による散布機1の動作を示す。
【0131】
以上説明したように、本実施形態に係る自動走行方法は、作業地(圃場F1)において目標経路R10に従って作業車両(散布機1)を自動走行させることと、一時停止処理を実行することと、停止予約処理を実行することと、を有する。一時停止処理は、作業車両(散布機1)の自動走行中に一時停止条件を満たすことにより、その場に作業車両(散布機1)を走行再開可能な態様で停止させる処理である。停止予約処理は、作業車両(散布機1)の自動走行中に停止予約条件を満たすことにより、作業車両(散布機1)を走行させた後で作業車両(散布機1)を走行再開可能な状態で停止させる処理である。
【0132】
これにより、例えば、作業車両(散布機1)が作業地(圃場F1)の作業領域F11内で薬液等の散布物の散布作業中に、停止予約条件を満たすことがあっても、作業車両(散布機1)をその場で停止させずに、しばらく走行させてから停止させることが可能である。そのため、例えば、作業車両(散布機1)が作業領域F11外で停止するとすれば、停止した作業車両(散布機1)にオペレータが近寄る場合でも、散布物が散布された作業領域F11内に入る必要はなく、オペレータが散布物に晒されない対策をとる必要もない。結果的に、オペレータが散布物に晒されない対策をとる等の、作業効率の低下につながることを回避でき、作業効率が低下しにくい自動走行方法を提供することが可能である。
【0133】
ここで、本実施形態では、上述した一時停止処理及び停止予約処理は、自動走行システム100における自動走行処理部72によって実行可能である。つまり、自動走行システム100は、作業地(圃場F1)において目標経路R10に従って作業車両(散布機1)を自動走行させる自動走行処理部72を備え、自動走行処理部72にて一時停止処理と停止予約処理とを実行可能である。
【0134】
この構成によれば、オペレータが散布物に晒されない対策をとる等の、作業効率の低下につながることを回避でき、作業効率が低下しにくい自動走行システム100及びそれを備える作業車両(散布機1)を提供することが可能である。
【0135】
また、本実施形態に係る自動走行方法は、作業車両(散布機1)の自動走行中に緊急停止条件を満たすことにより、その場に作業車両(散布機1)を走行再開不能な態様で停止させる緊急停止処理を実行すること、を更に有する。緊急停止処理では、一時停止処理と同様に、緊急停止条件を満たした位置(その場)に散布機1を停止させる。言い換えれば、緊急停止処理は、一時停止処理と同様に、散布機1を即座に一時停止させる処理である。
【0136】
このような緊急停止処理によれば、作業車両としての散布機1を走行再開可能な態様で停止(つまり一時停止)させる一時停止処理及び停止予約処理とは異なり、散布機1を走行再開不能な態様で停止(つまり緊急停止)させることが可能となる。そして、緊急停止した散布機1に自動走行を再開させるには、例えば、散布機1のエンジンを再始動するべく、オペレータは、散布機1を直接的に操作する必要がある。したがって、例えば、散布機1の周辺に人がいる等、散布機1の自動走行に際して比較的に緊急度の高い支障が生じている場合には、緊急停止処理により、散布機1を確実に停止させた上で、安易に散布機1が走行を再開することも防止できる。
【0137】
ここにおいて、「一時停止条件」は、自動走行処理部72が一時停止処理を実行するための条件であって、一時停止条件を満たせば一時停止処理が実行される。「停止予約条件」は、自動走行処理部72が停止予約処理を実行するための条件であって、停止予約条件を満たせば停止予約処理が実行される。「緊急停止条件」は、自動走行処理部72が緊急停止処理を実行するための条件であって、緊急停止条件を満たせば緊急停止処理が実行される。一時停止条件、停止予約条件及び緊急停止条件としては、それぞれ異なる条件が設定されている。
【0138】
本実施形態では一例として、一時停止条件は、取得処理部71が第2操作端末220からの一時停止指示を取得することを含む。一方、停止予約条件は、取得処理部71が第1操作端末210からの一時停止指示を取得すること(以下、「第1条件」という)を含む。さらに、停止予約条件は、例えば、散布物としての薬液又は燃料等の補給対象の残量が閾値を下回ること(以下、「第2条件」という)を含む。このように、停止予約条件は複数の条件を含み、これら複数の条件(第1条件及び第2条件)のうちのいずれかの条件を満たせば停止予約条件を満たすことになる。緊急停止条件は、取得処理部71が第2操作端末220からの緊急停止指示を取得することを含む。本実施形態では、第1操作端末210は緊急停止指示を出力できないこととする。
【0139】
上記条件が設定されている場合、例えば、オペレータが第1操作部221を操作することにより、第2操作端末220から散布機1に一時停止指示が出力されると、自動走行処理部72は、一時停止条件を満たすと判断し、その場で散布機1を停止させる一時停止処理を実行する。
【0140】
一方、オペレータが表示部211に表示される操作画面において操作部212を操作することで、第1操作端末210から散布機1に一時停止指示が出力されると、自動走行処理部72は、停止予約条件のうちの第1条件を満たすと判断し、散布機1をしばらく走行させた後に停止させる停止予約処理を実行する。また、散布物としての薬液の残量が閾値を下回るか、あるいは燃料の残量が閾値を下回ると、自動走行処理部72は、停止予約条件のうちの第2条件を満たすと判断し、散布機1をしばらく走行させた後に停止させる停止予約処理を実行する。
【0141】
また、オペレータが第2操作部222を操作することにより、第2操作端末220から散布機1に緊急停止指示が出力されると、自動走行処理部72は、緊急停止条件を満たすと判断し、その場で散布機1を停止させる緊急停止処理を実行する。
【0142】
これにより、例えば、オペレータが第1操作端末210と第2操作端末220とのいずれで、散布機1を走行再開可能な態様で停止(つまり一時停止)させるための操作をするかによって、停止予約処理と一時停止処理とのいずれが実行されるかが決まる。したがって、オペレータは、例えば、緊急度に応じて、第1操作端末210と第2操作端末220とのいずれで一時停止指示を出すか決定することができる。一例として作業休憩等のように、しばらくは走行を継続できるような場合、作業領域F11内にオペレータを進入させないことを優先し、停止予約処理により、散布機1をその場で停止させずにしばらく走行させることが可能である。一方、自動走行中に散布機1が目標経路R10を逸脱する等、自動走行の継続に支障があるようなエラーが発生した場合には、一時停止処理により、散布機1をその場で停止させることが可能である。
【0143】
本実施形態では特に、第1操作端末210は、通信網N1を介して散布機1と通信するため、散布機1と直接的に無線通信する第2操作端末220に比べて、通信にタイムラグ等が生じやすい。そのため、第1操作端末210での一時停止のための操作に対しては、しばらく散布機1を走行させてから停止させる停止予約処理が実行されるとしても、オペレータは違和感を覚えにくい。一方、散布機1を視認可能な場所から操作される第2操作端末220での一時停止のための操作に対しては、散布機1を即座に停止させる一時停止処理が実行されるので、オペレータは違和感を覚えにくい。
【0144】
また、散布物としての薬液の残量が閾値を下回るか、あるいは燃料の残量が閾値を下回った場合には、オペレータの操作によらずに、自動的に、散布機1をしばらく走行させた後に停止させる停止予約処理が実行される。したがって、薬液又は燃料等の補給対象の補給が必要な場合には、補給対象の残量がゼロ(0)になる前に、確実に散布機1を停止させることができる。
【0145】
以下、停止予約処理についてより詳しく説明する。本実施形態では、
図13の下段に示すように、停止予約処理では、作業領域F11において停止予約条件を満たすと、非作業領域F12まで作業車両(散布機1)を走行させてから作業車両(散布機1)を停止させる。つまり、
図13の例であれば、作業領域F11に設定された作業経路R13を走行中の散布機1は、少なくとも作業領域F11から脱出するまでは走行した後に、停止することになる。散布機1は、非作業領域F12まで走行した後で停止すればよく、例えば、非作業領域F12に到達してすぐに停止してもよいし、非作業領域F12を更に走行してから停止してもよい。このように、停止予約処理によれば、散布機1は作業領域F11外で停止することになるため、停止した散布機1にオペレータが近寄る場合でも、散布物が散布された作業領域F11内にオペレータが入る必要がない。
【0146】
ここで、本実施形態では、停止予約処理において、停止予約条件を満たした後に散布機1を走行させる際、自動走行処理部72は、目標経路R10に従って散布機1を自動走行させることとする。つまり、自動走行中の散布機1は、停止予約条件を満たした位置から停止予約処理によって停止させられる位置までは、目標経路R10に沿って自動走行を継続する。そのため、
図13の例では、作業経路R13上の位置P21で停止予約条件を満たすと、散布機1は、当該位置P21から作業経路R13の終端まで作業経路R13上を走行し、さらに作業経路R14につながる移動経路R2上の位置P22で停止するまで当該移動経路R2上を走行する。しかも、散布機1は、作業経路R1を自動走行中には散布作業を行うので、位置P21から作業経路R13の終端までは散布作業を継続し、作業経路R13の終端にて散布作業を停止する。
【0147】
そのため、停止予約条件における第2条件としての補給対象(散布物及び燃料)の閾値は、少なくとも散布機1が作業領域F11から脱出するまで走行及び作業(散布作業)を継続できるだけの余裕を見越して設定される。実際には、停止予約処理によって散布機1が停止した後、これら補給対象を補給するには、例えば圃場F1の周辺に設定された補給位置まで、散布機1をオペレータが手動操作して移動させる。そのため、特に燃料についての閾値は、補給位置まで散布機1が走行を継続できるだけの余裕を見越して設定される。
【0148】
また、本実施形態に係る自動走行方法では、停止予約処理による散布機1の停止位置を、例えば、オペレータが第1操作端末210の設定画面等で選択(指定)可能である。上述したように停止位置を非作業領域F12内に設定するか否かについても、オペレータが選択してもよい。
【0149】
選択可能な停止位置の一例として、
図14に示すように、走行再開時の作業開始(再開)位置の手前がある。すなわち、
図14の上段に示すように、散布機1が作業経路R11上の位置P21にあるときに停止予約条件を満たした場合に、
図14の下段に示すように、作業経路R11の次の作業経路R12の手前に、停止位置(位置P22)を設定することが可能である。
図14の例では、作業経路R11上の位置P21で停止予約条件を満たすと、散布機1は、当該位置P21から作業経路R11の終端まで作業経路R11上を走行し、さらに作業経路R12につながる移動経路R2上の位置P22で停止するまで当該移動経路R2上を走行する。ここで、位置P22は、走行再開時の作業開始(再開)位置としての作業経路R12の始端に対して、散布機1の進行方向の直前に当たる。
【0150】
要するに、
図14の例では、停止予約処理において、非作業領域F12まで作業車両(散布機1)を走行させてから作業車両(散布機1)を停止させる場合、作業領域F11における走行再開時の作業開始位置に対応する位置P22で作業車両(散布機1)を停止させる。このように、一時停止後の走行再開時の作業開始位置に対応する位置P22で散布機1が停止することで、オペレータにとっては、次の作業対象となる作物列Vr1が明確となる。そのため、例えば、補給対象(散布物及び燃料)の補給のために、停止予約処理によって散布機1が停止した後、補給位置まで散布機1をオペレータが手動操作して移動させる場合でも、オペレータは、自動走行の再開時に散布機1を戻すべき位置を把握しやすい。必要であれば、オペレータは、散布機1を手動操作する際に、散布機1が停止している位置P22にマーキング等を施してもよい。
【0151】
つまり、散布作業のように、どこまで作業が完了しているかが見た目では判別しにくい作業においては、走行再開時の作業開始位置がオペレータにとって分かりにくいことがあるところ、本実施形態では、当該作業開始位置が明確となるため、走行再開が容易となる。例えば、第1操作端末210の表示部211に、目標経路R10を含むマップを表示させれば、走行再開時の作業開始位置も確認可能であるが、このようなマップの確認も不要とできる。
【0152】
選択可能な停止位置の他の例として、
図15に示すように、作業地としての圃場F1のうち任意に設定される停止禁止領域F121を除いた位置がある。すなわち、本実施形態に係る自動走行方法は、作業地(圃場F1)のうち停止予約処理で作業車両(散布機1)を停止させない停止禁止領域F121を設定すること、を更に有する。停止禁止領域F121が設定されることで、停止予約処理において、散布機1は圃場F1のうちの停止禁止領域F121以外の位置P22に停止することになる。停止禁止領域F121は、例えば、オペレータが第1操作端末210にて任意に設定する。
【0153】
図15の例では、非作業領域F12としての枕地のうち縦方向A1の一方側(
図15の下方側)の枕地が、人の進入禁止エリアF13にて囲まれている。そのため、人の進入禁止エリアF13で囲まれた縦方向A1の一方側の枕地が、停止禁止領域F121として設定されている。
図15の例では、作業経路R12上の位置P21で停止予約条件を満たすと、散布機1は、当該位置P21から作業経路R12の終端まで作業経路R12上を走行し、さらに作業経路R13につながる移動経路R2上を走行する。ここで、当該移動経路R2上の位置P23は、停止禁止領域F121に含まれるので、散布機1は、当該位置P23では停止せずに、次の作業経路R13の終端まで作業経路R13上を走行する。散布機1は、さらに作業経路R14につながる移動経路R2上の位置P22で停止するまで当該移動経路R2上を走行する。ここで、位置P22は、非作業領域F12としての枕地のうち縦方向A1の他方側(
図15の上方側)の枕地である停止可能領域F122に含まれているので、散布機1は当該位置P22にて停止する。
【0154】
このように、作業地(圃場F1)に停止禁止領域F121を設定できることで、例えば、オペレータが(作業領域F11を通らずには)進入することができないようなエリアで、停止予約処理によって散布機1が停止することを回避できる。結果的に、一時停止を認めない領域が指定されることで、作業効率の更なる向上を図ることが可能である。
【0155】
また、本実施形態に係る自動走行方法は、停止予約処理に伴って報知を行うこと、を更に有する。ここでいう「報知」は、例えば、オペレータ又はその他の人に対して、何らかの警報又は通知等を行うことを意味し、表示器65及び音出力部等による報知を含む。すなわち、自動走行処理部72が停止予約処理を実行するに際しては、報知処理部74は、表示器65及び音出力部等を制御して報知を行う。これにより、例えば、停止予約処理の実行状態をオペレータ又はその他の人に対して知らせることが可能となる。
【0156】
具体的に、報知は、停止予約条件を満たした第1時点、作業車両(散布機1)を停止させた第2時点、及び、第1時点から第2時点にかけての期間、の少なくとも一つにおいて行われる。すなわち、散布機1の一時停止が予約された第1時点、散布機1を実際に一時停止させる第2時点、及び、その間の期間の少なくともいずれかに、停止予約処理に伴う報知が行われる。
【0157】
本実施形態では一例として、停止予約条件を満たした第1時点から散布機1を実際に停止させる第2時点にかけての期間に、報知処理部74が、機体10に搭載されている表示器65及び音出力部等を制御して機体10の周囲に報知を行う。これにより、間もなく散布機1が停止することを周囲の人に知らせることができる。さらに、本実施形態では、第2時点において、報知処理部74が、第1操作端末210に報知信号を送信し、第1操作端末210からオペレータに散布機1が停止した旨を報知する。これにより、例えば、圃場F1から離れた場所にいるオペレータに対して、散布機1が一時停止したことを知らせることができる。
【0158】
また、本実施形態に係る自動走行方法は、停止予約条件に含まれる複数の条件のうちのいずれの条件を満たしたかを出力すること、を更に有する。ここでいう「出力」の態様としては、例えば、通信により外部端末(第1操作端末210等)への送信、表示、音声出力、記録及び印刷等を含む。本実施形態では一例として、出力処理部75は、第1操作端末210からの一時停止指示を取得した(第1条件)のか、散布物としての薬液の残量が閾値を下回った(第2条件)のか、あるいは、燃料の残量が閾値を下回った(第2条件)のかを、第1操作端末210に送信する。これにより、第1操作端末210は、停止予約処理が実行された原因となる事象を、表示等によってオペレータに提示することが可能である。したがって、オペレータにおいては、停止予約処理によって一時停止した散布機1に対して、散布物又は燃料の補給等の必要な処置を迅速に行うことが可能となる。
【0159】
図16は、本実施形態に係る自動走行方法のうち、自動走行の停止に係る処理の一例を示すフローチャートである。
【0160】
すなわち、自動走行処理部72は、作業車両である散布機1の自動走行中に、第1操作端末210からの一時停止指示を取得したか否かを判断する(S1)。オペレータが第1操作端末210に対して一時停止の操作を行った場合、取得処理部71が第1操作端末210から一時停止指示を取得するので(S1:Yes)、自動走行処理部72は処理をステップS3に移行させる。
【0161】
自動走行処理部72は、取得処理部71が第1操作端末210から一時停止指示を取得しない場合(S1:No)、自動走行処理部72は、補給対象としての散布物(薬液)又は燃料の残量低下の有無を判断する(S2)。散布物(薬液)の残量が閾値を下回るか、燃料の残量が閾値を下回ると、自動走行処理部72は、補給対象の残量低下と判定し(S2:Yes)、処理をステップS3に移行させる。
【0162】
ステップS3では、自動走行処理部72は、停止予約条件を満たすと判定して、停止予約処理を開始する。停止予約処理が開始すると、自動走行処理部72は、散布機1をその場で停止させるのではなく、任意の停止位置まで散布機1を自動走行させる(S4)。散布機1が停止位置に到達すると、自動走行処理部72は、散布機1を一時停止させ(S5)、処理をステップS6に移行させる。
【0163】
ステップS6では、第2操作端末220からの走行開始指示を取得したか否かを判断する。オペレータが第2操作端末220の第3操作部223を長押しして走行再開の操作(走行開始の操作と同じ)を行った場合、取得処理部71が第2操作端末220から走行開始指示を取得するので(S6:Yes)、自動走行処理部72は、散布機1に自動走行を再開させる(S7)。
【0164】
オペレータが第2操作端末220の第3操作部223を長押して走行再開の操作を行うまでは、第2操作端末220から走行開始指示が出力されないので(S6:No)、自動走行処理部72はステップS6を繰り返し実行する。そのため、散布機1の自動走行は再開されず、散布機1は停止し続ける。
【0165】
一方、第1操作端末210からの一時停止指示がなく(S1:No)、かつ補給対象の残量低下がなければ(S2:No)、自動走行処理部72は、第2操作端末220からの一時停止指示を取得したか否かを判断する(S8)。オペレータが第2操作端末220の第1操作部221を押して一時停止の操作を行った場合、取得処理部71が第2操作端末220から一時停止指示を取得するので(S8:Yes)、自動走行処理部72は、処理をステップS5に移行させる。つまり、この場合、ステップS3,S4がスキップされるので、自動走行処理部72は、その場で散布機1を一時停止させる(S5)。
【0166】
また、第2操作端末220からの一時停止指示もなければ(S8:No)、自動走行処理部72は、第2操作端末220からの緊急停止指示を取得したか否かを判断する(S9)。オペレータが第2操作端末220の第2操作部222を押して緊急停止の操作を行った場合、取得処理部71が第2操作端末220から緊急停止指示を取得するので(S9:Yes)、自動走行処理部72は、その場で散布機1を緊急停止させる(S10)。第2操作端末220からの緊急停止指示もなければ(S9:No)、自動走行処理部72は、散布機1の自動走行を継続させたまま一連の処理を終了する。
【0167】
作業車両である散布機1の自動走行中は、自動走行処理部72はステップS1~S10の処理を繰り返し実行する。ただし、
図16に示すフローチャートは一例に過ぎず、処理が適宜追加又は省略されてもよいし、処理の順番が適宜入れ替わってもよい。
【0168】
[3.3]その他の機能
本実施形態に係る自動走行方法は、散布機1を作業経路R1へ進入させる際の動作に係る下記処理を有している。目標経路R10は、上述したように作業経路R1及び移動経路R2を含んでいる。そのため、散布機1は、目標経路R10に沿って自動走行する場合、移動経路R2から作業経路R1にかけて走行することとなり、その際、新たな作業経路R1に進入することとなる。
【0169】
そして、例えば
図17に示すように、目標経路R10は、作業経路R1と、予備経路R3と、を含む。作業経路R1は、作業車両(散布機1)によって作業対象(作物列Vr1)に対する作業を行う経路である。予備経路R3は、作業経路R1の始端位置P31よりも手前の予備位置P32から始端位置P31にかけて設定される経路である。自動走行方法は、予備経路R3において作業車両(散布機1)に作業を開始させる。
図17では、作業経路R1への進入時の散布機1の動作を模式的に示している。
【0170】
図17の例では、作業地としての圃場F1における作業領域F11と非作業領域F12との境界上に設定される作業経路R1の始端位置P31に、目標経路R10の手前側(上流側)に所定距離だけずれた位置に、予備位置P32が設定されている。そして、自動走行処理部72は、例えば、機体10の後部に配置されたアンテナ21の位置が、予備経路R3の始端である予備位置P32にくると、散布機1に作業(散布作業)を開始させる。
【0171】
これに対して、比較例においては、散布機1が目標経路R10を自動走行する場合、アンテナ21の位置が作業経路R1の始端位置P31に到達すると、散布機1が作業を開始する。つまり、この比較例では、散布機1が非作業領域F12から作業領域F11に移行して初めて、散布機1に作業を開始させる。本実施形態に係る自動走行方法では、このような比較例に比べて、散布機1による作業の開始位置を目標経路R10の手前側(上流側)にオフセットさせることにより、散布機1による作業の開始タイミングを早めることができる。
【0172】
したがって、本実施形態に係る自動走行方法では、例えば、散布装置4又は気流発生部5が動作を開始してから安定動作するまでにタイムラグが生じるとしても、散布機1による作業の開始タイミングを早めることで、当該タイムラグを小さく(又は解消)することが可能である。その結果、当該タイムラグに応じた散布むら等の不具合が生じにくくなる。つまり、作業対象である作物列Vr1の全体に対して、散布機1による作業(散布)のむら等を生じにくくできる。ここで、作物列Vr1よりも手前で散布作業を開始できるよう、散布装置4及び気流発生部5等が安定動作するまでに要する時間(タイムラグ)を考慮して、予備位置P32が設定されていることが好ましい。
【0173】
さらにまた、作業地としての圃場F1が例えば葡萄園等の果樹園である場合、作物列Vr1を杭で固定するため、作物列Vr1の並び方向(縦方向A1)の両端の杭から斜めにワイヤ(支線)W10が張られている場合がある。このような場合、ワイヤW10と機体10との接触を回避すべく、ワイヤW10の位置を考慮して自動走行を行う必要がある。
【0174】
そこで、本実施形態では、
図17に例示するように、目標経路R10は、移動経路R2(の終端)と作業経路R1(の始端)との間に設定される導入経路R4を更に含む。導入経路R4は、移動経路R2の終端から、作業経路R1の延長方向(ここでは縦方向A1)に沿って延びる直線状の経路である。導入経路R4を自動走行中には、散布機1は作業を行わない。
【0175】
具体的に、
図17においては、目標経路R10は、作業経路R1、移動経路R2、予備経路R3及び導入経路R4を有している。導入経路R4は、その始端(つまり移動経路R2の終端)である位置P33から予備位置P32にかけて設定されている。
【0176】
目標経路R10は、作業経路R1とも移動経路R2とも別である、このような導入経路R4を含んでいる。そして、導入経路R4上を散布機1が走行することにより、作業経路R1へ進入する際の散布機1の姿勢(方位)が安定し、機体10は、作物列Vr1と同様にワイヤW10を跨ぐことになる。これにより、機体10がワイヤW10に接触しにくくなり、機体10と作物列Vr1との双方が傷つくことを抑制できる。
【0177】
このような作業経路R1への進入時の動作は、散布機1が目標経路R10に沿って自動走行を実行中のみならず、例えば、一時停止した散布機1が自動走行を再開するときであっても同様に適用し得る。
【0178】
[4]変形例
以下、実施形態1の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。
【0179】
本開示における制御装置7は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしての1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における制御装置7としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。また、制御装置7に含まれる一部又は全部の機能部は電子回路で構成されていてもよい。
【0180】
また、制御装置7の少なくとも一部の機能が、1つの筐体内に集約されていることは制御装置7に必須の構成ではなく、制御装置7の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。反対に、制御装置7において、複数の装置(例えば制御装置7及び第1操作端末210)に分散されている機能が、1つの筐体内に集約されていてもよい。さらに、制御装置7の少なくとも一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。
【0181】
散布機1は、葡萄園又は林檎園等の果樹園に限らず、その他の圃場F1、又は圃場F1以外の作業地での作業に用いられてもよい。さらに、散布機1が散布する散布物は薬液に限らず、例えば、水、肥料、消毒液若しくはその他の液体、又は粉体等であってもよい。散布物が散布される散布対象物も同様に、葡萄の果樹に限らず、その他の作物、又は作物以外の物体(無機物を含む)であってもよい。また、散布機1は、自動運転により動作する無人機に限らず、散布機1は、人(オペレータ)の操作(遠隔操作を含む)により動作する構成であってもよく、例えば、オペレータが搭乗可能な乗用タイプ(有人機)であってもよい。この場合でも、散布機1の現在位置を把握するために、散布機1にはアンテナ21等が設けられる。
【0182】
また、停止予約処理において、停止予約条件を満たした後に散布機1を走行させる際には、自動走行処理部72が、目標経路R10に従って散布機1を自動走行させることは必須ではない。例えば、停止予約条件を満たした後に散布機1を走行させる際には、自動走行処理部72は、目標経路R10とは別に設定される退避用経路に従って散布機1を走行させてもよい。退避用経路は、一例として、散布物の補給位置又は燃料の補給位置等へ散布機1を移動させるための経路である。
【0183】
また、停止予約処理は、停止予約条件を満たした場合に散布機1を走行させた後で散布機1を停止(一時停止)させればよく、非作業領域F12まで散布機1を走行させることは必須ではない。つまり、停止予約処理は、例えば、停止予約条件を満たした時点から、所定時間又は所定距離だけ散布機1を走行させた後に散布機1を停止(一時停止)させてもよい。
【0184】
また、支持フレーム3は、機体10の前後方向D3の一端部に取り付けられていればよく、機体10の前方に取り付けられていてもよい。この場合、支持フレーム3に支持されている作業部(散布ノズル41)についても、機体10の後方ではなく前方に配置されることになる。
【0185】
また、散布機1は、前後方向D3に並ぶ一対の散布装置4を備えていてもよい。これにより、散布機1は、前後方向D3に並ぶ一対の散布装置4(作業装置)の各々において、作業(散布作業)を実行することができ、いずれか一方の散布装置4のみで作業を行う場合に比べて、作業効率の向上を図ることができる。また、散布機1は、回転軸Ax1を中心として支持フレーム3を機体10に対して回転させる回転力を発生する回転駆動装置を更に備えていてもよい。
【0186】
また、機体10は、左右方向D2に並ぶ第1ブロック10L及び第2ブロック10Rを有していればよく、第1ブロック10L及び第2ブロック10Rが左右逆転していてもよい。つまり、動力源63等が設けられた第1ブロック10Lが右側に位置し、ユーザインタフェース61等が設けられた第2ブロック10Rが左側に位置してもよい。
【0187】
また、走行部11は、クローラ式の走行装置に限らず、例えば、1つ又は複数の車輪を有し、車輪の回転によって走行する構成であってもよい。また、走行部11は、油圧モータによって駆動される構成に限らず、例えば、電動モータによって駆動される構成であってもよい。
【0188】
また、散布機1は、実施形態1のようにエアアシスト方式の散布機に限らず、例えば、静電散布方式、又はエアアシスト方式と静電散布方式とを組み合わせた方式等であってもよい。静電散布方式の散布機1であれば、気流発生部5は省略可能である。
【0189】
また、動力源63は、エンジンに限らず、例えば、モータ(電動機)を有していてもよいし、エンジンとモータとを含むハイブリッド式の動力源であってもよい。
【0190】
また、散布機1は、機体10が門型の形状ではなく、機体10全体が隣接する一対の作物列Vr1の間(作業通路)を走行する態様であってもよい。この場合、散布機1は、作物列Vr1を跨がずに各作業通路を走行する。この場合、散布装置4は、左右方向D2の両方に薬液を散布する散布パターンと、左方のみに薬液を散布する散布パターンと、右方のみに薬液を散布する散布パターンとを切り替えて散布作業を行う。
【0191】
また、アンテナ21,22は、位置特定用アンテナに限らず、例えば、無線通信用のアンテナであってもよい。さらに、アンテナ21,22は、受信用に限らず、送信用、又は受信及び送信用であってもよい。
【0192】
また、ユーザインタフェース61は、表示部611に加えて又は代えて、例えば、音声出力等によりユーザに情報を提示する手段を有してもよい。さらに、ユーザインタフェース61の操作部612を用いて調整項目(流量又は圧力等)の少なくとも一つは、制御装置によって自動的に調整されてもよい。この場合、操作部612は適宜省略可能であって、ユーザインタフェース61は、調整結果を表示部611に表示するだけでもよい。
【0193】
同様に、第1操作端末210及び第2操作端末220についても、実施形態1の構成に限らず、例えば、キーボード、マウス等のポインティングディバイス、音声入力、ジェスチャ入力又は他の端末からの操作信号に応じて一時停止指示等を出力するように構成されてもよい。
【0194】
また、実施形態1では、作業車両の一例として散布機1について説明したが、作業車両は散布機1に限らない。例えば、作業車両は摘芯機であってもよく、この場合、摘芯作業を行う摘芯部が作業部の一例となり、支持フレーム3に支持される。
【0195】
〔発明の付記〕
以下、上述の実施形態から抽出される発明の概要について付記する。なお、以下の付記で説明する各構成及び各処理機能は取捨選択して任意に組み合わせることが可能である。
【0196】
<付記1>
作業地において目標経路に従って作業車両を自動走行させることと、
前記作業車両の自動走行中に一時停止条件を満たすことにより、その場に前記作業車両を走行再開可能な態様で停止させる一時停止処理を実行することと、
前記作業車両の自動走行中に停止予約条件を満たすことにより、前記作業車両を走行させた後で前記作業車両を走行再開可能な状態で停止させる停止予約処理を実行することと、を有する、
自動走行方法。
【0197】
<付記2>
前記作業車両の自動走行中に緊急停止条件を満たすことにより、その場に前記作業車両を走行再開不能な態様で停止させる緊急停止処理を実行すること、を更に有する、
付記1に記載の自動走行方法。
【0198】
<付記3>
前記作業地は、前記作業車両による作業を行う作業領域と、前記作業車両による作業を行わない非作業領域と、を含み、
前記停止予約処理では、前記作業領域において前記停止予約条件を満たすと、前記非作業領域まで前記作業車両を走行させてから前記作業車両を停止させる、
付記1又は2に記載の自動走行方法。
【0199】
<付記4>
前記停止予約処理において、前記非作業領域まで前記作業車両を走行させてから前記作業車両を停止させる場合、前記作業領域における走行再開時の作業開始位置に対応する位置で前記作業車両を停止させる、
付記3に記載の自動走行方法。
【0200】
<付記5>
前記作業地のうち前記停止予約処理で前記作業車両を停止させない停止禁止領域を設定すること、を更に有する、
付記1~4のいずれかに記載の自動走行方法。
【0201】
<付記6>
前記停止予約処理に伴って報知を行うこと、を更に有する、
付記1~5のいずれかに記載の自動走行方法。
【0202】
<付記7>
前記報知は、前記停止予約条件を満たした第1時点、前記作業車両を停止させた第2時点、及び、前記第1時点から前記第2時点にかけての期間、の少なくとも一つにおいて行われる、
付記6に記載の自動走行方法。
【0203】
<付記8>
前記停止予約条件は複数の条件を含み、
前記複数の条件のうちのいずれの条件を満たしたかを出力すること、を更に有する、
付記1~7のいずれかに記載の自動走行方法。
【0204】
<付記9>
前記目標経路は、前記作業車両によって作業対象に対する作業を行う作業経路と、前記作業経路の始端位置よりも手前の予備位置から前記始端位置にかけて設定される予備経路と、を含み、
前記予備経路において前記作業車両に作業を開始させる、
付記1~8のいずれかに記載の自動走行方法。
【0205】
<付記10>
付記1~9のいずれかに記載の自動走行方法を、
1以上のプロセッサに実行させるための自動走行プログラム。
【符号の説明】
【0206】
1 散布機(作業車両)
11 走行部
72 自動走行処理部
100 自動走行システム
F1 圃場(作業地)
F11 作業領域
F12 非作業領域
F121 停止禁止領域
Ps1 作業開始位置
R1 作業経路
R3 予備経路
R10 目標経路
P31 始端位置
P32 予備位置