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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128288
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】磁気クランプ装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/32 20060101AFI20240913BHJP
   B29C 45/64 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B29C33/32
B29C45/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037193
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】391003989
【氏名又は名称】株式会社コスメック
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【弁理士】
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】赤松 浩司
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AJ08
4F202AM29
4F202CA11
4F202CA30
4F202CL50
4F202CR03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】直列に接続される探りコイルの位置によらずに、各探りコイルの検出精度が一定にされた探りコイルを有する磁気クランプ装置を提供すること。
【解決手段】複数のマグネットクランプのコア部材の夫々に探りコイル26が巻かれている。マグネットクランプはプレート10に穿孔された設置孔13に収容されており、隣り合う2つの設置孔13を跨がって連絡孔14が穿孔されている。探りコイル26は、最上流の探りコイル26から最下流の探りコイル26へ接続する往路と、往路を折りかえして最下流の探りコイル26から最上流の探りコイル26へ接続する復路とを有するように、直列に接続されている。各探りコイル26は、往路において端子s1から端子s2に接続する1ターン未満の導体w1をコア部材に巻いており、復路において1ターン未満の導体w1分に相当する導体w2を逆方向にコア部材に巻いている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
極性が反転不可能な反転不可能磁石で周囲を取り囲まれた磁気ポールと、前記磁気ポールの下面に配置された極性が反転可能な反転可能磁石とを具備する複数のマグネットクランプと、
夫々が前記複数のマグネットクランプのコア部材に巻かれた複数の探りコイルと、
前記複数のマグネットクランプの夫々を収容する複数の設置孔と、隣り合う2つの設置孔を跨がる複数の連絡孔とが穿孔された磁性体からなるプレートとを備え、
夫々の前記設置孔に収容された探りコイルが当該設置孔を跨がる前記連絡孔を経由して直列に接続される磁気クランプ装置において、
前記直列に接続される探りコイルの接続経路は、最上流の探りコイルから最下流の探りコイルへ接続する往路と、前記往路を折りかえして前記最下流の探りコイルから前記最上流探りコイルへ接続する復路とを有し、
前記接続経路中の各探りコイルは、往路において上流側の端子から下流側の端子に接続する1ターン未満の導体を前記コア部材に巻いており、復路において前記1ターン未満の導体分に相当する導体を逆方向に前記コア部材に巻いていることを特徴とする磁気クランプ装置。
【請求項2】
請求項1の磁気クランプ装置において、前記探りコイルは、少なくとも3本の輪状の導体パターンが形成された基板により構成され、当該基板前の導体パターンが切断、短絡されて前記コア部材を少なくとも1ターン周回する導体と、前記往路において上流側の端子から下流側の端子に接続する1ターン未満の前記導体と、復路において前記1ターン未満の導体分に相当して逆方向に前記コア部材を巻く前記導体とを形成していることを特徴とする磁気クランプ装置。
【請求項3】
極性が反転不可能な反転不可能磁石で周囲を取り囲まれた磁気ポールと、前記磁気ポールの下面に配置された極性が反転可能な反転可能磁石とを具備する複数のマグネットクランプと、
夫々が前記複数のマグネットクランプのコア部材に巻かれた複数の探りコイルと、
前記複数のマグネットクランプの夫々を収容する複数の設置孔と、隣り合う2つの設置孔を跨がる複数の連絡孔とが穿孔された磁性体からなるプレートとを備え、
夫々の前記設置孔に収容された探りコイルが当該設置孔を跨がる前記連絡孔を経由して直列に接続される磁気クランプ装置において、
前記直列に接続される探りコイルの接続経路は、最上流の探りコイルから最下流の探りコイルへ接続する往路と、前記往路を折りかえして前記最下流の探りコイルから前記最上流の探りコイルへ接続する復路とを有し、
前記各探りコイルは、往路において上流側の端子から下流側の端子に接続する1ターン未満の導体を前記コア部材に巻いており、復路において前記1ターン未満の導体による1ターンへの不足分に相当する導体を順方向に前記コア部材に巻いていることを特徴とする磁気クランプ装置。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気クランプ装置に磁気吸着された金型の吸着状態の変化を検出する探りコイルを有する磁気クランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機のプラテンには、磁気吸着力を利用して射出成形機へ金型を固定する磁気クランプ装置のプレートが取付けられる。磁気クランプ装置のプレートは磁性体であって、多数の設置孔が穿孔され、極性反転不可能な磁石(ネオジム磁石)と可能な磁石(アルニコ磁石)とを有したマグネットクランプが各孔に埋め込まれている。マグネットクランプは、アルニコ磁石の磁気極性をコイルにより制御することにより、プレート内で閉鎖する磁気回路と、金型を経由する磁気回路とを切り替えことができる。
【0003】
マグネットクランプには、例えば、特許文献1に示されるような探りコイルが具備されている。探りコイルは、金型の剥がれにより発生する磁束の変化を検出するコイルであり、複数のマグネットクランプの夫々に配置されて、1乃至数ターンだけマグネットクランプの周囲に巻かれるコイルである。いくつかのマグネットクランプの探りコイルを直列に接続することにより、所定の範囲の磁束の測定をする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5301117号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のマグネットクランプを制御するために、プレートには制御線を配線するために設置孔の間を繋ぐ連絡孔が設けられている。プレートに多くの磁束を通過させるために、連絡孔の位置は限定的である。マグネットクランプを1周する探りコイルを用いた場合、直列に接続する探りコイルが直線上に並んで配置されていれば、各探りコイルは、各マグネットクランプを1周回して、さらに半周することになる。1周半の各探りコイルでは、各マグネットクランプが発生する磁束は、コイルの1回巻きを貫いて起電力を発生させる。さらに、半周分のコイルに対しても磁束の影響により、起電力が発生する(この起電力は、コイルの半径に大きく依存する)。
【0006】
一方、探りコイルはマグネットブロックの配置によってその位置が決まるが、探りコイルを直列に接続する際には、上下左右に配置される探りコイル同士を接続しなければならない。このとき、探りコイルに対して半周、1/4周などの半端な導体が付加されることになる。この半端な導体により、マグネットクランプの磁束から誘導を受ける起電力が、各探りコイルの位置によってバラ付く。これは、各探りコイルは、一定の磁束の変化に対して一定の起電力を発生することができない、つまり検出精度が一定ではないことを意味する。
【0007】
本発明は、直列に接続される探りコイルの位置によらずに、各探りコイルの検出精度が一定にされた探りコイルを有する磁気クランプ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の磁気クランプ装置は、極性が反転不可能な反転不可能磁石で周囲を取り囲まれた磁気ポールと、前記磁気ポールの下面に配置された極性が反転可能な反転可能磁石とを具備する複数のマグネットクランプと、
夫々が前記複数のマグネットクランプのコア部材に巻かれた複数の探りコイルと、
前記複数のマグネットクランプの夫々を収容する複数の設置孔と、隣り合う2つの設置孔を跨がる複数の連絡孔とが穿孔された磁性体からなるプレートとを備え、
夫々の前記設置孔に収容された探りコイルが当該設置孔を跨がる前記連絡孔を経由して直列に接続される磁気クランプ装置において、
前記直列に接続される探りコイルの接続経路は、最上流の探りコイルから最下流の探りコイルへ接続する往路と、前記往路を折りかえして前記最下流の探りコイルから前記最上流探りコイルへ接続する復路とを有し、
前記接続経路中の各探りコイルは、往路において上流側の端子から下流側の端子に接続する1ターン未満の導体を前記コア部材に巻いており、復路において前記1ターン未満の導体分に相当する導体を逆方向に前記コア部材に巻いていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の磁気クランプ装置は、極性が反転不可能な反転不可能磁石で周囲を取り囲まれた磁気ポールと、前記磁気ポールの下面に配置された極性が反転可能な反転可能磁石とを具備する複数のマグネットクランプと、
夫々が前記複数のマグネットクランプのコア部材に巻かれた複数の探りコイルと、
前記複数のマグネットクランプの夫々を収容する複数の設置孔と、隣り合う2つの設置孔を跨がる複数の連絡孔とが穿孔された磁性体からなるプレートとを備え、
夫々の前記設置孔に収容された探りコイルが当該設置孔を跨がる前記連絡孔を経由して直列に接続される磁気クランプ装置において、
前記直列に接続される探りコイルの接続経路は、最上流の探りコイルから最下流の探りコイルへ接続する往路と、前記往路を折りかえして前記最下流の探りコイルから前記最上流探りコイルへ接続する復路とを有し、
前記各探りコイルは、往路において上流側の端子から下流側の端子に接続する1ターン未満の導体を前記コア部材に巻いており、復路において前記1ターン未満の導体による1ターンへの不足分に相当する導体を順方向に前記コア部材に巻いていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
探りコイルの往路で1ターンに満たない半端に巻かれた導体(α分)に対して巻いて、復路でそのα分だけ逆方向に巻くことにより、余分に発生する誘導電圧を相殺することができ、各探りコイルの検出精度を一定にすることができる。または、復路で(1-α)分だけ順方向に巻くことにより、往路の半端に巻かれた導体(α分)を1ターン分のコイルにすることができ、各探りコイルの検出精度を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】射出成形機を説明する図であり、図1Aは射出成形機の全体図、図1Bは射出成形機のプラテンに搭載されるプレートの平面図である。
図2】プレートの断面を示す図であり、図2Aは一部横断面を示す図、図2Bはプレートからマグネットクランプを分離した状態を示す図、図2Cは、X-X面でプレートを切り取った斜視断面図である。
図3図3は従来の探りコイルについて説明する図であり、図3Aは従来の探りコイルの結線経路を示す図、図3B図3Dは探りコイルの巻き方の例を示す図である。
図4図4は本実施例の探りコイルについて説明する図であり、図4Aは本実施例の探りコイルの結線経路を示す図、図4B図4Dは探りコイルの巻き方の例を示す図である。
図5図5は探りコイルの具体例を示す図であり、図5Aは探りコイルに用いられるリング状の基板を示す図、図5Bは基板の導体パターンを示す図、図5C図5Nは共通基板から作成された各種の探りコイルを示す図である。
図6】他の実施例を示す図であり、図6A図6Cは探りコイルの巻き方の例を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を説明する。
図1Aにおいて射出成形機1は、左右のプラテン2と、左側のプラテン2を左右方向に前進・後退移動自在にガイド支持するガイドロッド9とを備えている。夫々のプラテン2には、金型を磁気吸着するプレート10が夫々取り付けられている。3は樹脂を射出するノズル、4は液晶表示画面付きのコントローラ、7は金型M1から射出成形物を押し出すエジェクタロッドである。
【0013】
図1Bは、プレート10を表面から見た図である。プレート10の表面には、多数のマグネットクランプ11が配置されている。近接センサや磁束の変化を検出する磁束コイル等も配置されている(図示せず)。
【0014】
図2は、プレート10のX-X断面図である。図2Aでは、マグネットクランプ11の中心を切断するようにXーX面を定めている。プレート10には、マグネットクランプが挿入される多数の設置孔13が穿孔されている。また、プレート10には、隣合う2つの設置孔13に跨がるように多数の連絡孔14が、設置孔13の背後に穿孔されている。連絡孔14は、マグネットクランプ11の制御に必要なケーブルの結線を行う配線空間として用いられる。シール材5は、マグネットクランプ11とプレート10の間をシールして、塵、水滴等の浸入を防ぐ。
【0015】
図2Bはマグネットクランプ11をプレート10から分離して示している。マグネットクランプ11は円筒状であり(中心軸線cと称する)、磁気ポール21と、磁気ポール21の周囲を取り囲んで配置された極性反転不可能な磁石(反転不可能磁石22、例えば、ネオジム磁石)と、磁気ポール21の下面に配置された極性反転可能な磁石(反転可能磁石23、例えば、アルニコ磁石)と、反転可能磁石23の周囲に配置されたボビン24と、ボビン24に巻かれたコイル25とを有している。ボビン24の下側面には、探りコイル26が配置されている。探りコイル26は、中心軸線c方向の磁束の変化を測定するものであり、マグネットクランプ11のコア部材に巻かれる。本実施例では、中心軸線cが貫く磁気ポール21と反転不可能磁石22がコア部材に相当する。
【0016】
磁気ポール21は、鋼のような強磁性材料から形成されている。磁気ポール21と反転可能磁石23は中心軸線cに沿って夫々が締結孔21a、23aを有しており、締結孔21a、23aは互いに連通している。プレート10の表側(金型をクランプする側、図中の上側)からボルト8が挿入され、貫通できるようになっている。締結孔21a、23aは、ネジ山の無い通し孔である。
【0017】
磁気ポール21は、その外周の側面21bの壁に沿って反転不可能磁石22を受けている。マグネットクランプ11がプレート10の設置孔13に収容されたとき、設置孔13の内周の側面31aと磁気ポール21の外周の側面21bとの間に反転不可能磁石22が配置される。
【0018】
反転可能磁石23は、磁気ポール21の裏側に配置されている。反転可能磁石23の周囲に巻かれたコイル25により、反転可能磁石23は磁気極性が切換え可能な磁石を形成する。マグネットクランプ11が設置孔13に収容されたとき、設置孔13の底面31bと磁気ポール21との間に反転可能磁石23が配置される。
【0019】
図2Cにおいて、設置孔13は、連絡孔14と一部が連通している。この連通した部分を利用して、コイル25の端子25aが連絡孔に現れるようになっている。連絡孔14内では、コイル25の結線を行い、必要な制御電流が供給される。連絡孔14は、設置孔13の周囲の所定の角度位置に設けられている。本実施例では、連絡孔14は、ある1つの設置孔13を中心(中心軸線cと一致する)として角度0度、90度、180度、270度の角度位置に選択的に設けられている。この他の角度位置、例えば角度60度毎でも良いが、設置孔13同士を最短で連絡する必要があるため、連絡孔14が設けられる角度位置には制限がある。
【0020】
本実施例では、反転可能磁石23を通過する磁束が、円状の探りコイル26によってその円の内側を通るようになっている。尚、探りコイルは、シール材5の直下に配置して、磁気ポール21を通過する磁束が通る様にしても良い。連絡孔の位置で、多数の探りコイル26を直列に結線する。連絡孔は、近接センサ等の他の電気回路の結線にも利用される(図示せず)。連絡孔は、プレートの裏側から閉鎖可能なように蓋6が取り付けられる。
【0021】
図3は従来の探りコイルkについて説明する図であり、図3Aはマグネットクランプ11を取り除いたプレート10と従来の探りコイルkの結線経路を破線で示している。プレート10には、連絡孔14が設置孔13に跨がって穿孔されている。また、各設置孔13に描かれた薄塗の太いベクトル記号vは、当該設置孔13に配置されるべき探りコイルkを直列接続する際に、当該探りコイルkの端子s1と端子s2(図3B~3D参照)に向かう向きを理解出来るように、象徴的に表わされた記号である。
【0022】
破線は、1つのグループを形成する探りコイルkが配置される複数の設置孔13を、連絡孔14を経由して配線で結んでいる。探りコイルkは、プレート10の右側で3グループ、左側で3グループの計6つのグループが配置されている。このグループ分けは任意で有り、どの様なグループ分けでもかまわない。各グループでは、連絡孔14の配線により、複数の探りコイルkが直列に接続されている。コントローラ4は、直列接続されたグループで検出された電圧の変化を測定する。
【0023】
図3Aにおいて、図面左下の5つ設置孔13を経由するグループpに着目すると、直列に接続された最も端側の設置孔13、及びこれに続く2番目の設置孔13に描かれた2つのベクトル記号v1は、設置孔13の直径方向(図面横方向)に延びている。そして、2番目に続く3番目、4番目の設置孔13に描かれたベクトル記号v3、v4は、設置孔13の中で時計回りに90度屈曲して延びている。
【0024】
設置孔13にはマグネットクランプ11が収容されるが、図3B図3Dはマグネットクランプ11が具備する探りコイルkの巻き方の例を示している。探りコイルkは、1ターンのコイルである。直径方向(図面横方向)に延びるベクトル記号v1、v2が描かれた位置に配置される探りコイルkは、図3Bに示すように更に1ターンに満たないα分(半周分)の余分な導体w1が付加されている。余分な範囲をexで示した。α分の導体w1を加えて巻かないと、端子s1と端子s2が直径上に配置できないからである。
【0025】
時計回りに90度屈曲して延び、かつ、ベクトル記号v3が描かれた位置に配置される探りコイルkの場合、端子s2に接続するため、更にαを1/4周分とする導体w1が巻かれる(図3C)。半時計回りに90度屈曲して延びるベクトル記号v5が描かれた位置に配置される探りコイルkの場合、3/4周分とする導体w1が巻かれる(図3D)。図3B図3Dにおいて、1周の探りコイルkに対して加えられた導体w1の長さは、端子s1と端子s2の角度位置の関係により異なっている。金型の剥がれにより発生するマグネットクランプ11の磁束の変化が同じでも、導体w1の相違により、探りコイルkが発生する起電力に差異が生じてしまう。
【0026】
図4は、本実施例による探りコイル26について説明する図である。図4Aには、本実施例による設置孔13に設置されるべき探りコイル26の結線経路を破線で示している。図3のときと同様にプレート10の右側で3グループ、左側で3グループの計6つのグループが配置されている。図4Aにおいて、図面左下のグループpに着目すると、破線は設置孔13及び連絡孔14において、往復する経路を有している点で、図3Aの例とは異なっている。往復する経路とは、往路において、最も上流側の探りコイル26から最も下流側の探りコイル26へ接続する往路と、当該往路を折りかえして最も下流側の探りコイル26から最も上流側の探りコイル26へ接続する復路をいう。最も上流側の探りコイル26がコントローラ4に最も近く、往路から復路に折りかえされる最も下流側の探りコイル26がコントローラ4から最も遠い。そして、各探りコイル26は、探りコイル26の往路の端子s1の角度位置に復路の端子s3の位置が並んで設けられている。また、往復の経路においては、端子s2の位置に、復路の端子s4の位置が並んで設けられている。最も上流側の探りコイル26と最も下流側の探りコイル26との間に存在する探りコイル26も端子s1~s4の関係は同様である。端子s1と端子s3が並んで設けられるのは、同じ連絡孔14を経由して配線されるからである。また、端子s2と端子s4が並んで設けられるのも、同様に同じ連絡孔14を経由して配線されるからである。
【0027】
図4B図4Dは、探りコイル26の巻き方の例を示している。各探りコイル26は、1ターンの探りコイルであって、夫々が図3B図3Dの探りコイルkに対応している。図4Aにおいて直径方向(図面横方向)に延びるベクトル記号vが描かれた位置に配置される探りコイル26には、図4Bに示す探りコイル26が配置される。この探りコイル26では、往路において半周分の導体w1(余分な範囲ex)で生じる起電力をキャンセルするように、復路に太線で示す半周の導体w2が逆方向に巻かれている。また、時計回りに90度屈曲して延びるベクトル記号v5が描かれた位置に配置される探りコイルの場合には、図3Cは、往路において1/4周分とする導体w1(余分な範囲ex)で生じる起電力をキャンセルするように、復路に太線で示す1/4周分とする導体w2が逆方向に巻かれて追加されている。図3Dは、反時計回りに90度屈曲して延びるベクトル記号v5が描かれた位置に配置される探りコイルの場合には、往路において3/4周分とする導体w1(余分な範囲ex)で生じる起電力をキャンセルするように、復路に太線で示す3/4周分とする導体w2が逆方向に巻かれて追加されている。このように、図3B図3Dでは、往路に1ターンに満たないで巻かれたα分の導体w1(余分な範囲ex)に対して、図4B図4Dでは復路で逆方向にα分の導体w2が巻かれる。
【0028】
図5は、探りコイル26の具体例を示している。図5Aは、探りコイル26に用いられるリング状の基板40であり、ボビン24の下側面に取り付けられる。基板40には、図5Bに示すように3本の輪状の導体パターン41が同心円状に印刷されている。導体パターン41に、切断、短絡の処理を施すことにより、基板40内に往復する回路を作成する事ができる。図5C図5Nは、基板40から作成された各種の探りコイル26を示しており、各探りコイルの中心に描かれたベクトル記号vは、上述したように往路の上流側の端子s1から下流側の端子s2へ向かう向きを理解出来るように、象徴的に表わされた記号である。図4C図4Nの探りコイル26の例では、ベクトル記号vとの関係では、時計回りに電流が流れるようになっている。図4C図4Nの図中において、破線は、切断された(もしくは、電気が流れる経路から分離された)導体パターン41を示している。
【0029】
往路では探りコイルの1ターンにさらにα分の導体w1(余分な範囲ex)に相当する導体パターン41だけ残して切断し、一方復路でそのα分だけ逆方向に導体w2の導体パターン41を追加するとで余分に発生する誘導電圧を相殺する。反時計回りに電流を流す探りコイル26は、図4C図4Nの例に対して鏡対象の構成にすれば良い。
【0030】
このように、1ターンの探りコイル26を作成する場合、3本の輪状の導体パターンが印刷された共通基板を用いれば、上流、下流の位置関係の全てに対応して、往路、復路を有する探りコイル26が作成できる。
【0031】
なお、上記実施例においては、探りコイル26は1ターンのものを示したが、nターンの巻線(nは自然数)を有するものであっても良い。この場合、基板40は、n+2周の導体パターンを有することになる。また、基板40として、1層の導体パターンを有するものを示したが、両面に導体パターンを有する基板、もしくは、多数の配線層を有する基板であっても良い。
【0032】
以上述べたように、本実施例によれば、探りコイル26の往路では、1またはnターンにα分の導体w1を加え、一方復路でそのα分だけ逆方向に導体w2を巻くことで、余分に発生する誘導電圧を相殺することができる。本実施例においては、往路に1または複数ターンのコイルを巻いたものを示したが、復路に1または複数ターンを巻くことも可能である。
【0033】
図6は、他の実施例を示す図である。
先の実施例においては、探りコイル26の往路では、1またはnターンにα分の導体w1を加え、一方復路でそのα分だけ逆方向に導体w2を巻くことで余分に発生する誘導電圧を相殺していた。本実施例では、往路で1ターンに満たないα分だけ巻かれた導体w1(余分な範囲ex)に対して、復路で同一方向に(1-α)ターン分だけ導体w3を巻いて、1ターンを完成させるものである。
【0034】
図6Aに示す長径方向に延びるベクトル記号v1が描かれた探りコイル26の例においては、往路において1ターンに追加して半周分だけ巻かれる導体w1(余分な範囲ex)に対して、復路に太線で示す半周分の導体w3が順方向に巻かれて追加されている。この結果、往路、復路で1ターンの巻線が追加されている。
【0035】
また、図6Bでは、時計回りに90度屈曲して延びるベクトル記号v3が描かれた探りコイル26の場合には、往路において1/4周分とする導体w1(余分な範囲ex)に対して、復路に太線で示す3/4周分とする導体w3が順方向に巻かれて追加されている。図6Cは、反時計回りに90度屈曲して延びるベクトル記号v5が描かれた探りコイル26の場合には、往路において3/4周分とする導体w1(余分な範囲ex)に対して、復路に太線で示す1/4周分とする導体w3が順方向に巻かれて追加されている。このように、図6A図6Cでは、往路に追加的に巻かれた1ターン未満のα分の導体w1に対して、合計して1ターンとなるように復路で導体w3を(1-α)ターン分だけ巻くことで、1ターンを完成させている。図6A図6Cにおいて、図示しなかった他のベクトル記号に寄って表される探りコイル26についても同様に、往路に追加的に巻かれた1ターン未満のα分の導体w1に対して、合計して1ターンとなるように復路で導体w3を(1-α)ターン分だけ巻くことで、1ターンを完成させるのである。
【0036】
本実施例においても、往路で1ターンの探りコイル26の例であるが、往路でnターン(nは自然数)であっても良い。また、本実施例では、往路、復路とも同方向に探りコイル26を巻くものであるため、一般化すると、往路でmターン+α、復路でkターン+(1-α)とすることもできる(m、kは0を含む自然数)。図6においては、ベクトル記号v1、v3、v5に対応する探りコイル26のみを示したが、図5に示す他の携帯のベクトル記号vについても同様である。
【0037】
本実施例においては、探りコイル26の往路では、往路、復路の1ターンに満たない余分な導体を合わせて1ターン分とすることで、どの探りコイルのターン数も等しく半端な導体なく揃えることができる。
【0038】
本実施例においては、往路に1または複数ターンのコイルを巻いたものを示したが、復路に1または複数ターンを巻くこと、または、往路と復路に夫々に1または複数ターンのコイルを巻くことも可能である。
【0039】
変形例として、薄板リング状の基板40の上面に導体パターンを印刷しているが、筒状の基板40の外周面または内周面に導体パターンを(印刷、又は、導線の貼り付けなどによって)形成されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 射出成形機
2 プラテン
3 ノズル
4 コントローラ
5 シール材
6 蓋
7 エジェクタロッド
8 ボルト
9 ガイドロッド
10 プレート
11 マグネットクランプ
13 設置孔
14 連絡孔
21 磁気ポール
22 反転不可能磁石
23 反転可能磁石
24 ボビン
25 コイル
26 探りコイル
40 基板
41 導体パターン

図1
図2
図3
図4
図5
図6