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  • 特開-積層体および積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128290
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】積層体および積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240913BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20240913BHJP
   H05K 3/38 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
B32B15/08 U
H05K3/12 610B
B32B15/08 J
H05K3/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037195
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】弁理士法人G-chemical
(72)【発明者】
【氏名】坂本 浩捷
【テーマコード(参考)】
4F100
5E343
【Fターム(参考)】
4F100AA01A
4F100AB17C
4F100AB24
4F100AB24C
4F100AK01B
4F100AK49
4F100AK53
4F100AK53B
4F100AT00A
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA21B
4F100BA21C
4F100DE01
4F100DE01C
4F100EH46
4F100EH46C
4F100EH61
4F100EJ08
4F100EJ08B
4F100EJ48
4F100EJ48C
4F100GB48
4F100JA05A
4F100JB12A
4F100JB12B
4F100JB13
4F100JB13B
4F100JB16
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JG01
4F100JK06
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00C
5E343AA02
5E343AA12
5E343AA17
5E343AA18
5E343AA22
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB72
5E343DD03
5E343DD12
5E343FF02
5E343FF05
5E343GG02
5E343GG16
(57)【要約】
【課題】金属層の導電性に優れつつ、高温環境下において基材と金属層との間に剥離が生じにくく密着性に優れる積層体を提供する。また、金属層の導電性に優れつつ、高温環境下において基材と金属層との間に剥離が生じにくく密着性に優れる積層体を製造する方法を提供する。
【解決手段】積層体1は、基材2と、基材2の少なくとも一方の面に積層された受容層4と、受容層4を介して基材2に積層された金属層3とを少なくとも備える。受容層4は、硬化型樹脂および熱可塑性樹脂を含む。金属層3は、200nm以下の平均粒子径を有する銀粒子および/または銅粒子の焼結体を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された受容層と、前記受容層を介して前記基材に積層された金属層と、を備え、
前記受容層は、硬化型樹脂および熱可塑性樹脂を含み、
前記金属層は、200nm以下の平均粒子径を有する、銀粒子および/または銅粒子の焼結体を含む、積層体。
【請求項2】
前記受容層の厚さが2.0μm以下であり、かつ前記受容層の厚さに対する前記金属層の厚さの比(金属層/受容層)が1.6以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
下記耐久パラメータが14.0以上である、請求項1に記載の積層体。
耐久パラメータ:[前記受容層の厚さに対する前記金属層の厚さの比(金属層/受容層)]×[前記硬化型樹脂の含有割合に対する前記熱可塑性樹脂の含有割合の質量比(熱可塑性樹脂/硬化型樹脂)]
【請求項4】
前記硬化型樹脂は熱硬化型樹脂である、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記熱硬化型樹脂はエポキシ系樹脂の硬化物である、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記基材を形成する材料が、無機材料、硬化型樹脂材料、またはガラス転移点および融点の少なくとも一方が180℃以上の熱可塑性樹脂材料を含む、請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体を備えた電子デバイス。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体の製造方法であり、
前記基材の少なくとも一方の面に、硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含む硬化する前の硬化性受容層を形成し、前記硬化性受容層の表面に銀粒子および/または銅粒子を含む導電性インクを塗布した後、前記銀粒子および/または前記銅粒子を焼結することによって前記金属層を形成する工程を備える、積層体の製造方法。
【請求項9】
前記銀粒子および/または前記銅粒子の焼結と同時に、前記硬化性受容層を硬化する、請求項8に記載の積層体の製造方法。
【請求項10】
前記銀粒子および/または前記銅粒子を焼結した後に、前記硬化性受容層を硬化する、請求項8に記載の積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体および積層体の製造方法に関する。本開示は、より具体的には、基材と、受容層と、金属層とが積層した、金属層と基材との密着性に優れる積層体、および上記積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子部品に使用される積層体(回路基板等)について、基材にスクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷等の印刷技術によって導電性インクを塗布した後、焼成することによって配線パターン等の金属層を形成できることから生産性の向上や製造コストの低減に有効であるプリント配線基板等の開発が活発に行われている。中でも、基材について、柔軟で、ロールトゥロールによる加工が可能であるポリマーフィルムが好ましく使用されるようになっている。
【0003】
しかし、導電性インクの焼結体である金属層と、基材であるポリマーフィルムには、密着性に乏しいという問題があり、この問題を解消するために、基材上にプライマー層を設けてから金属層を形成することが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、透明基材の上に、プライマー層と、金属ナノ粒子により形成された金属層とが順次積層されている積層体が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、未硬化または半硬化の熱硬化性樹脂で形成された下地層を有する基板と、その下地層に支持された金属ナノ粒子インクを塗布して焼結させる金属薄膜とを備えた積層体が開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、受容層を基材上に適用し、金属ナノ粒子分散物を、受容層の少なくとも一部の上に適用して金属パターンを形成する工程を含み、受容層が1~75μmの間の粗さRzを有する、基材上に導電性パターンを調製する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2018/030202号
【特許文献2】国際公開第2016/194389号
【特許文献3】特開2021-503178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、プリント配線基板において、高密度実装化やパッケージの小型化による放熱の困難化、あるいは自動車のエンジン回りでの使用の増加等によって、200℃以上の高温環境下での使用において信頼性が一層求められるようになっている。しかしながら、特許文献1に記載の積層体は、プライマー層(受容層)が金属層の膨張・収縮に追随できないため、高温環境下において受容層と金属層との間に剥離が生じやすく密着性が不十分であるという問題があった。
【0009】
また、特許文献2の積層体は、下地層(受容層)を形成する熱硬化性樹脂を硬化する際に発生する硬化収縮に起因する応力によって金属薄膜(金属層)が割れて、導電性が損なわれやすいという問題があった。また、特許文献3の方法は、受容層を形成するUV硬化型インクジェットインクを硬化する際に発生する硬化収縮に起因する応力によって金属パターン(金属層)が割れて、導電性が損なわれやすいという問題があった。
【0010】
従って、本開示の目的は、金属層の導電性に優れつつ、高温環境下において基材と金属層との間に剥離が生じにくく密着性に優れる積層体を提供することである。また、本開示の他の目的は、金属層の導電性に優れつつ、高温環境下において基材と金属層との間に剥離が生じにくく密着性に優れる積層体を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、基材と、受容層と、金属層とを積層した積層体について、上記受容層を、硬化型樹脂および熱可塑性樹脂を含む構成とすることにより、金属層の導電性に優れつつ、200℃以上の高温環境下において基材に対する金属層の密着性に優れる積層体が得られることを見出した。本開示は、これらの知見に基づいて完成されたものに関する。
【0012】
すなわち、本開示は、基材と、上記基材の少なくとも一方の面に積層された受容層と、上記受容層を介して上記基材に積層された金属層と、を備え、上記受容層は、硬化型樹脂および熱可塑性樹脂を含み、上記金属層は、200nm以下の平均粒子径を有する、銀粒子および/または銅粒子の焼結体を含む、積層体を提供する。
【0013】
上記受容層の厚さは2.0μm以下であり、かつ上記受容層の厚さに対する上記金属層の厚さの比(金属層/受容層)は1.6以上であることが好ましい。
【0014】
上記積層体の下記耐久パラメータは14.0以上であることが好ましい。
耐久パラメータ:[上記受容層の厚さに対する上記金属層の厚さの比(金属層/受容層)]×[上記硬化型樹脂の含有割合に対する上記熱可塑性樹脂の含有割合の質量比(熱可塑性樹脂/硬化型樹脂)]
【0015】
上記硬化型樹脂は、熱硬化型樹脂であることが好ましい。
【0016】
上記熱硬化型樹脂は、エポキシ系樹脂の硬化物であることが好ましい。
【0017】
上記基材を形成する材料は、無機材料、硬化型樹脂材料、またはガラス転移点および融点の少なくとも一方が180℃以上の熱可塑性樹脂材料を含むことが好ましい。
【0018】
本開示は、また、上記積層体を備えた電子デバイスを提供する。
【0019】
本開示は、また、上記積層体の製造方法であり、上記基材の少なくとも一方の面に、硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含む硬化する前の硬化性受容層を形成し、上記硬化性受容層の表面に銀粒子および/または銅粒子を含む導電性インクを塗布した後、上記銀粒子および/または上記銅粒子を焼結することによって上記金属層を形成する工程を備える、積層体の製造方法を提供する。
【0020】
上記製造方法は、上記銀粒子および/または上記銅粒子の焼結と同時に、上記硬化性受容層を硬化するものであってよい。
【0021】
上記製造方法は、上記銀粒子および/または上記銅粒子を焼結した後に、上記硬化性受容層を硬化するものであってよい。
【発明の効果】
【0022】
本開示の積層体は、金属層の導電性に優れつつ、高温環境下において基材と金属層との密着性に優れる。また、本開示の製造方法によれば、金属層の導電性に優れつつ、高温環境下において基材と金属層との密着性に優れる積層体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の積層体の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<積層体>
本開示の積層体は、基材と、上記基材の少なくとも一方の面に積層された受容層と、上記受容層を介して上記基材に積層された金属層とを少なくとも備える。上記受容層は、硬化型樹脂および熱可塑性樹脂を含む。また、上記金属層は、200nm以下の平均粒子径を有する銀粒子および/または銅粒子の焼結体を含む。
【0025】
図1に、本開示の一実施形態に係る積層体を示す。図1に示す積層体1は、基材2と、基材2上に積層して設けられた受容層4と、さらに、受容層4上に積層して設けられた金属層3を備える。金属層3は、受容層4を介して基材2に積層されている。
【0026】
(受容層)
上記受容層は、上記基材の少なくとも一方の面に積層される層である。上記金属層は、上記受容層に直接積層され、上記受容層を介して上記基材に積層される。本開示では、上記受容層を設けることによって、上記基材と上記金属層との密着性(特に、高温環境下における密着性)を優れたものとすることができる。
【0027】
本開示に係る受容層は、硬化型樹脂および熱可塑性樹脂を含む。本明細書では、硬化性樹脂の硬化物を、硬化型樹脂と称する。上記硬化型樹脂としては、熱硬化型樹脂および光硬化型樹脂が挙げられる。熱硬化型樹脂は、熱硬化性樹脂の硬化物であり、光硬化型樹脂は、光硬化性樹脂の硬化物である。上記硬化型樹脂は、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。
【0028】
上記熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ウレア系樹脂、メラミン系樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂等が挙げられる。中でも、金属層との密着性に優れる受容層が得られやすい点から、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂が好ましく、より好ましくはエポキシ系樹脂である。
【0029】
上記エポキシ系樹脂としては、1分子中にエポキシ基を2個以上有する単量体、その重合体またはそれらの混合物を用いることができる。上記エポキシ系樹脂としては、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等)、スチルベン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等)、多官能エポキシ樹脂(トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等)、アラルキル型エポキシ樹脂(フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等)、ナフトール型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹脂、有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂(ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等)などが挙げられる。中でも、上記熱可塑性樹脂として熱可塑性ポリイミド系樹脂を用いた場合に相溶性がよく、また、加工しやすく高耐熱の受容層が得られやすい点から、グリシジルアミン型エポキシ樹脂が好ましい。
【0030】
上記フェノール系樹脂としては、例えば、ノボラック型フェノール系樹脂、レゾール型フェノール系樹脂、アリールアルキレン型フェノール系樹脂(キシリレン型フェノール樹脂、ビフェニルジメチレン型フェノール樹脂等)などが挙げられる。上記フェノール系樹脂は、異なる重量平均分子量を有する2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記光硬化性樹脂としては、1分子中にエチレン性不飽和基を2個以上有する単量体、その重合体またはそれらの混合物を用いることができる。上記光硬化性樹脂としては、例えば、ポリエステルアクリル系樹脂、ポリエーテルアクリル系樹脂、ウレタンアクリル系樹脂、カーボネートアクリル系樹脂、エポキシアクリル系樹脂等が挙げられる。
【0032】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、熱可塑性ポリイミド系樹脂、フェノキシ樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンオキサイド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂は、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。
【0033】
上記熱可塑性樹脂としては、高耐熱かつ加工性に優れる点から、ガラス転移点および融点の少なくとも一方が150℃以上(より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは240℃以上)である熱可塑性樹脂が好ましい。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリカーボネート系樹脂(ガラス転移点150℃、融点なし)、ポリサルフォン系樹脂(ガラス転移点190℃、融点なし)、ポリブチレンテレフタレート(ガラス転移点43℃、融点223℃)、ナイロン6(ガラス転移点47℃、融点225℃)、ナイロン66(ガラス転移点50℃、融点269℃)、ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移点75℃、融点260℃)、液晶ポリマー(ガラス転移点100~130℃、融点280~370℃)、ポリエチレンナフタレート(ガラス転移点120℃、融点270℃)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(ガラス転移点126℃、融点282℃)、ナイロン9T(ガラス転移点140℃、融点306℃)、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂(ガラス転移点143℃、融点343℃)、ポリエーテルイミド系樹脂(ガラス転移点217℃、融点なし)、ポリエーテルサルフォン系樹脂(ガラス転移点225℃、融点なし)、熱可塑性ポリイミド系樹脂(ガラス転移点100~320℃、融点300~400℃)等が挙げられる。中でも、一層高耐熱の受容層が得られやすい点から、熱可塑性ポリイミド系樹脂が特に好ましく用いられる。
【0034】
また、上記熱可塑性樹脂は、高耐熱かつ加工性に優れる点から、軟化点が100℃以上であることが好ましく、より好ましくは120℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。
【0035】
上記受容層中の、上記硬化型樹脂の含有割合に対する上記熱可塑性樹脂の含有割合の質量比(熱可塑性樹脂/硬化型樹脂)は、5.5~99であることが好ましく、より好ましくは6.6~33、さらに好ましくは8.0~19である。上記質量比が5.5以上であると、受容層の硬化の際に金属層に割れが生じにくく、上記質量比が99以下であると、受容層に対する金属層の密着性が優れたものとなりやすい。
【0036】
上記受容層は、上記硬化型樹脂および上記熱可塑性樹脂以外のその他の成分を含んでいてもよい。上記その他の成分としては、特に限定されないが、例えば、軟化剤、安定剤、接着促進剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、粘着付与樹脂、繊維類、酸化防止剤、加水分解防止剤、増粘剤、顔料等の着色剤、充填材、粘着付与樹脂などが挙げられる。上記受容層中の、上記その他の成分の含有割合は、上記受容層の総量(100質量%)に対して、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。
【0037】
上記受容層は、例えば、プライマー層、易接着処理層、ハードコート層などのコーティング層であってよく、中でも、プライマー層であることが好ましい。
【0038】
上記受容層の厚さは、2.0μm以下であることが好ましく、より好ましくは0.015~2.0μm、さらに好ましくは0.05~1.5μm、特に好ましくは0.1~1.0μmである。
【0039】
(金属層)
上記金属層は、金属から構成される層であり、上記受容層に直接積層される。上記金属層は導電性を有する層であるが、金属以外のその他の成分を含んでいてもよい。
【0040】
上記金属層は、200nm以下の平均粒子径を有する、銀粒子および/または銅粒子(以下、金属微粒子という場合がある)の焼結体を含む。上記焼結体によると、導電性に優れる金属層を容易に作製することができる。上記焼結体が、平均粒子径200nm以下の金属微粒子を焼成して得られることは、上記焼結体の一部分を切り出して断面を露出させ、走査型電子顕微鏡を用いて断面を観察し、取得した断面画像において金属微粒子に基づく形状を特定し、当該形状について平均粒子径200nm以下であれば、当該形状は平均粒子径200nm以下の金属微粒子によるものと確認することができる。このような焼結体は、例えば、平均粒子径200nm以下の金属微粒子を含む導電性インクを塗布した後、溶剤を揮発させ、残存する金属微粒子を焼成することによって得ることができる。
【0041】
上記金属層を構成する金属微粒子の平均粒子径は、上述のように200nm以下であり、好ましくは150nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm以下、特に好ましくは60nmである。下限は特に限定されないが、例えば、0.5nmまたは1.0nmである。
【0042】
上記金属層中の金属の含有割合は、上記金属層の総量(100質量%)に対して、60質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは95質量%以上である。
【0043】
上記金属層は、上記積層体において層内に空隙を有することが好ましい。上記空隙は、金属微粒子表面の溶融により金属微粒子同士が融着して金属層を形成すると同時に、金属微粒子間の隙間が完全に埋まらないことにより生じる。上記金属層中の空隙率は、上記金属微粒子の粒子径や金属の種類などを適宜選択することにより調整することができる。上記金属層の空隙率は、0.1~50%であることが好ましく、より好ましくは5~40%、さらに好ましくは10~30%である。上記空隙率が上記範囲内であると、上記金属層の導電性および密着性がより優れる。
【0044】
上記空隙率は、上記金属層の一部分を取り出して断面を露出させ、走査型電子顕微鏡を用いて金属層断面を観察し、取得した断面画像を解析することにより金属の占有率を算出し、そして下記式より算出することができる。
空隙率[%]=100-占有率[%]
【0045】
上記金属層の厚さは、例えば、0.025~30.0μmが好ましく、より好ましくは0.1~20.0μm、さらに好ましくは0.5~5.0μm、特に好ましくは1.0~3.0μmである。
【0046】
上記金属層の導電性は、比抵抗について、30μΩ・cm以下であることが好ましく、より好ましくは20μΩ・cm以下、さらに好ましくは10μΩ・cm以下である。上記比抵抗が30μΩ・cm以下であると金属層の導電性がより良好となる。上記比抵抗は4端子法により測定される。
【0047】
(厚さの比(金属層/受容層))
上記受容層の厚さに対する上記金属層の厚さの比(金属層/受容層)は、1.6以上であることが好ましく、より好ましくは1.7以上、さらに好ましく2.0以上、特に好ましくは5.0以上である。上記厚さの比(金属層/受容層)の上限は、特に限定されないが、例えば、15、13、または11である。上記厚さの比(金属層/受容層)が1.6以上であると、受容層の硬化の際に金属層が割れにくくなる。
【0048】
(耐久パラメータ)
本開示の積層体は、下記に定義する耐久パラメータについて、14.0以上であることが好ましく、より好ましくは17.0以上、さらに好ましくは20.0以上、特に好ましくは25.0以上、最も好ましくは29.0以上である。上記耐久パラメータが20.0以上であると、受容層の硬化の際に金属層に割れが生じにくく、使用の際に受容層と金属層とが剥離しにくくなる。
耐久パラメータ:[上記受容層の厚さに対する上記金属層の厚さの比(金属層/受容層)]×[硬化型樹脂の含有割合に対する上記熱可塑性樹脂の含有割合の質量比(熱可塑性樹脂/硬化型樹脂)]
【0049】
(基材)
上記基材としては、上記金属層を設けるために使用される公知乃至慣用のものが使用できる。上記基材を形成する材料としては、例えば、無機材料(半導体、セラミックス、ガラス、金属等)や樹脂材料(硬化型樹脂、熱可塑性樹脂材料)等が挙げられる。
【0050】
上記熱可塑性樹脂材料としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂(ナイロン66、ナイロン6、ナイロン9T等)、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、液晶ポリマー、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリサルフォン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂等が挙げられる。
【0051】
上記硬化型樹脂材料としては、例えば、ポリイミド系樹脂、イソシアネート系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ガラスエポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、柔軟で高耐熱の基材が得られやすい点から、ポリイミド系樹脂が特に好ましく用いられる。
【0052】
上記基材は、単層であってもよいし、複数の層が積層した複層であってもよい。
【0053】
上記樹脂材料が硬化型樹脂材料の場合、JIS K 7191に準じて荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が180℃以上であることが好ましく、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは240℃以上である。
【0054】
上記樹脂材料は、柔軟で大面積のフィルム・シートを成形しやすい点から熱可塑性樹脂材料であってもよい。また、高耐熱の基材が得られやすい点から、上記熱可塑性樹脂材料は、ガラス転移点および融点の少なくとも一方が180℃以上であることが好ましく、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは240℃以上である。上記ガラス転移点および融点の少なくとも一方の上限は、特に限定されないが、例えば400℃である。ガラス転移点および融点の少なくとも一方が180℃以上の熱可塑性樹脂材料としては、例えば、ポリブチレンテレフタレート(ガラス転移点43℃、融点223℃)、ナイロン6(ガラス転移点47℃、融点225℃)、ナイロン66(ガラス転移点50℃、融点269℃)、ポリエチレンテレフタレート(ガラス転移点75℃、融点260℃)、液晶ポリマー(ガラス転移点100~130℃、融点280~370℃)、ポリエチレンナフタレート(ガラス転移点120℃、融点270℃)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂(ガラス転移点126℃、融点282℃)、ナイロン9T(ガラス転移点140℃、融点306℃)、ポリエーテルエーテルケトン系樹脂(ガラス転移点143℃、融点343℃)、ポリエーテルイミド系樹脂(ガラス転移点217℃、融点なし)、ポリエーテルサルフォン系樹脂(ガラス転移点225℃、融点なし)、熱可塑性ポリイミド系樹脂(ガラス転移点185~320℃、融点320~400℃)等が挙げられる。
【0055】
また、上記熱可塑性樹脂材料は、JIS K 7191に準じて荷重1.82MPaで測定した荷重たわみ温度が、好ましくは180℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは240℃以上のものであってもよい。
【0056】
<積層体の製造方法>
本開示の、基材と、上記基材の少なくとも一方の面に積層された受容層と、上記受容層を介して上記基材に積層された金属層とを備えた積層体は、上記基材の少なくとも一方の面に硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含む硬化する前の硬化性受容層を形成し、上記受容層の表面に、上記金属微粒子を含む導電性インクを塗布して塗膜とした後、上記塗膜に含まれる上記金属微粒子を焼結することによって金属層を形成する工程を備える方法により製造することができる。
【0057】
上記受容層は、上記硬化性受容層を硬化することによって形成することができる。上記硬化性受容層は、例えば、公知乃至慣用の混練方法(溶融混練等)によって上記硬化性樹脂および上記熱可塑性樹脂を混練した後、シートやフィルム状にしてから基材上に貼付することや、上記硬化性樹脂および上記熱可塑性樹脂を有機溶剤に溶解した後、基材上に塗布して塗膜としてから乾燥・硬化すること等によって形成することができる。
【0058】
上記の基材上に塗布する方法としては、特に限定されず、公知乃至慣用の塗布方法を採用することができ、例えば、スピンコート、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ディスペンサ印刷、凸版印刷(フレキソ印刷)、昇華型印刷、オフセット印刷、レーザープリンタ印刷(トナー印刷)、凹版印刷(グラビア印刷)、コンタクト印刷、マイクロコンタクト印刷等が挙げられる。
【0059】
上記硬化性受容層の硬化は、上記導電性インクを塗布する前に行ってよいし、上記金属微粒子を焼結した後に、あるいは上記焼結と同時に行ってもよい。中でも、硬化の際に金属層の割れが生じにくくなる点から、上記金属微粒子を焼結した後、または上記金属微粒子の焼結と同時に上記硬化性受容層の硬化を行うことが好ましい。
【0060】
上記硬化の際の温度(硬化温度)は、300℃以下が好ましく、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。硬化温度が200℃以下であると、基材が耐熱性の低い樹脂材料であっても熱変形を抑制することができる。また、硬化温度が200℃以下であると、金属微粒子の焼結後に硬化性受容層を硬化することが容易となる。
【0061】
上記硬化の際の時間(硬化時間)は、硬化性樹脂の種類、配合量、塗布量、硬化温度等によって変動するが、好ましくは5時間以下、より好ましくは1時間以下、さらに好ましくは30分間以下である。下限は、特に限定されないが、通常30秒程度である。
【0062】
上記基材を形成する材料としては、上述の本開示の積層体が備える基材において例示・説明したものと同様のものが挙げられ、上記硬化性受容層に含まれる硬化性樹脂および熱可塑性樹脂としては、上述の本開示の積層体が備える受容層において例示・説明したものと同様のものが挙げられる。
【0063】
上記導電性インクの塗布は、硬化前の硬化性受容層、または硬化後の受容層に対して行われる。上記導電性インクは、例えば、上記金属微粒子を適切な溶剤(分散媒体、特に有機溶剤)中に懸濁状態で分散させることにより作製することができる。
【0064】
上記金属微粒子としては、上述の本開示の積層体が備える金属層において例示・説明した金属微粒子と同じものが挙げられる。上記金属微粒子は、表面が有機保護剤で被覆された構成を有する表面修飾金属微粒子であることが好ましい。上記表面修飾金属微粒子は、金属微粒子間の間隔が確保されて凝集が抑制されるので、溶剤中の分散性に優れる。上記金属微粒子は、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。
【0065】
上記金属微粒子は、金属ナノ粒子であることが好ましい。なお、本明細書では「金属ナノ粒子」とは、一次粒子の大きさ(平均一次粒子径)が1000nm未満である金属微粒子をいう。金属ナノ粒子の平均一次粒子径は、200nm以下であることが好ましく、より好ましくは0.5~150nm、さらに好ましくは0.5~100nm、特に好ましくは1~80nm、最も好ましくは1.0~60nmである。
【0066】
上記有機保護剤としては、特に限定されず、金属微粒子の保護剤(安定剤)として用いられる公知乃至慣用の有機保護剤が挙げられる。上記有機保護剤としては、例えば、カルボキシ基、ヒドロキシ基、カルボニル基、アミド基、エーテル基、アミノ基、スルホ基、スルホニル基、スルフィン酸基、スルフェン酸基、メルカプト基、リン酸基、亜リン酸基等の官能基を有する有機保護剤が挙げられる。上記官能基としては、中でも、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基、メルカプト基が好ましく、より好ましくはアミノ基である。上記有機保護剤は、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。
【0067】
上記アミノ基を有する有機保護剤としてはアミンが挙げられる。上記アミンはアンモニアの少なくとも1つの水素原子が炭化水素基で置換された化合物であり、第一級アミン、第二級アミン、および第三級アミンが挙げられる。また、上記アミンはモノアミンであってもよく、ジアミン等の多価アミンであってもよい。
【0068】
上記アミンとしては、中でも、下記式(a-1)で表され、式中のR1、R2、R3が同一または異なって、水素原子または一価の炭化水素基(R1、R2、R3が共に水素原子である場合は除く)であり、総炭素数が6以上であるモノアミン(1)、下記式(a-1)で表され、式中のR1、R2、R3が同一または異なって、水素原子または一価の炭化水素基(R1、R2、R3が共に水素原子である場合は除く)であり、総炭素数が5以下であるモノアミン(2)、および下記式(a-2)で表され、式中のR8が二価の炭化水素基であり、R4~R7は同一または異なって、水素原子または一価の炭化水素基であり、総炭素数が8以下であるジアミン(3)から選択される少なくとも一種を含有することが好ましく、特に、モノアミン(1)と、モノアミン(2)および/またはジアミン(3)とを併せて含有することが好ましい。
【化1】
【0069】
上記炭化水素基としては、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基が挙げられる。中でも、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基が好ましく、特に脂肪族炭化水素基が好ましい。従って、上記モノアミン(1)、モノアミン(2)、ジアミン(3)としては、脂肪族モノアミン(1)、脂肪族モノアミン(2)、脂肪族ジアミン(3)が好ましい。
【0070】
一価の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基などが挙げられる。一価の脂環式炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニなどが挙げられる。二価の脂肪族炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基などが挙げられる。二価の脂環式炭化水素基としては、シクロアルキレン基、シクロアルケニレン基などが挙げられる。
【0071】
1、R2、R3における一価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基等の炭素数1~20程度のアルキル基;ビニル基、アリル基、メタリル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、5-ヘキセニル基等の炭素数2~20程度のアルケニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等の炭素数3~20程度のシクロアルキル基;シクロペンテニル基、シクロへキセニル基等の炭素数3~20程度のシクロアルケニル基などが挙げられる。
【0072】
4~R7における一価の炭化水素基としては、例えば、R1、R2、R3における一価の炭化水素基として例示されたもののうち、炭素数7以下のものが挙げられる。
【0073】
8における二価の炭化水素基としては、例えば、メチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘプタメチレン基等の炭素数1~8のアルキレン基;ビニレン基、プロペニレン基、1-ブテニレン基、2-ブテニレン基、ブタジエニレン基、ペンテニレン基、ヘキセニレン基、ヘプテニレン基、オクテニレン基等の炭素数2~8のアルケニレン基などが挙げられる。
【0074】
上記R1~R8における炭化水素基は、種々の置換基[例えば、ハロゲン原子、オキソ基、ヒドロキシ基、置換オキシ基(例えば、C1-4アルコキシ基、C6-10アリールオキシ基、C7-16アラルキルオキシ基、C1-4アシルオキシ基等)、カルボキシ基、置換オキシカルボニル基(例えば、C1-4アルコキシカルボニル基、C6-10アリールオキシカルボニル基、C7-16アラルキルオキシカルボニル基等)、シアノ基、ニトロ基、スルホ基、複素環式基等]を有していてもよい。上記ヒドロキシ基やカルボキシ基は有機合成の分野で慣用の保護基で保護されていてもよい。
【0075】
モノアミン(1)は、金属ナノ粒子に高分散性を付与する機能を有する化合物であり、例えば、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、ヘプタデシルアミン、オクタデシルアミン等の直鎖状アルキル基を有する第一級アミン;イソヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン、tert-オクチルアミン等の分岐鎖状アルキル基を有する第一級アミン;シクロヘキシルアミン等のシクロアルキル基を有する第一級アミン;オレイルアミン等のアルケニル基を有する第一級アミン等;N,N-ジプロピルアミン、N,N-ジブチルアミン、N,N-ジペンチルアミン、N,N-ジヘキシルアミン、N,N-ジペプチルアミン、N,N-ジオクチルアミン、N,N-ジノニルアミン、N,N-ジデシルアミン、N,N-ジウンデシルアミン、N,N-ジドデシルアミン、N-プロピル-N-ブチルアミン等の直鎖状アルキル基を有する第二級アミン;N,N-ジイソヘキシルアミン、N,N-ジ(2-エチルヘキシル)アミン等の分岐鎖状アルキル基を有する第二級アミン;トリブチルアミン、トリヘキシルアミン等の直鎖状アルキル基を有する第三級アミン;トリイソヘキシルアミン、トリ(2-エチルヘキシル)アミン等の分岐鎖状アルキル基を有する第三級アミンなどが挙げられる。
【0076】
モノアミン(1)の中でも、アミノ基が金属微粒子(特に金属ナノ粒子)表面に吸着した際に他の金属微粒子との間隔をより確保できるため、金属微粒子同士の凝集を防ぐ作用が向上する点で、総炭素数6以上の直鎖状アルキル基を有するアミン(特に、第一級アミン)が好ましい。また、モノアミン(1)における総炭素数の上限は、入手のし易さ、および焼結時における除去のし易さの点で、18程度が好ましく、さらに好ましくは16、特に好ましくは12である。モノアミン(1)としては、特に、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン等が好ましい。
【0077】
また、モノアミン(1)の中でも、分岐鎖状アルキル基を有するアミン(特に、第一級アミン)を用いると、同じ総炭素数の直鎖状アルキル基を有するアミンを用いる場合に比べ、分岐鎖状アルキル基の立体的因子により、より少ない量で、金属ナノ粒子に高分散性を付与することができる。そのため、焼結時において、特に低温焼結時において、上記アミンを効率よく除去することができ、より導電性に優れた焼結体が得られる点で好ましい。
【0078】
上記分岐鎖状アルキル基を有するアミンとしては、特に、イソヘキシルアミン、2-エチルヘキシルアミン等の総炭素数6~16(好ましくは6~10)の分枝鎖状アルキル基を有するアミンが好ましく、特に、立体的因子の観点から、2-エチルヘキシルアミン等の、窒素原子から2番目の炭素原子において枝分かれしている構造を有する分岐鎖状アルキル基を有するアミンが有効である。
【0079】
モノアミン(1)としては、中でも、脂肪族炭化水素基と1つのアミノ基とからなり且つ該脂肪族炭化水素基の炭素総数が6以上である脂肪族炭化水素モノアミンを含むことが好ましい。
【0080】
モノアミン(2)は、モノアミン(1)に比べると炭化水素鎖が短いので、それ自体は銀ナノ粒子に高分散性を付与する機能は低いと考えられるが、モノアミン(1)より極性が高く金属原子への配位能が高いため、錯体形成促進効果を有すると考えられる。また、炭化水素鎖が短いため、低温焼結においても、短時間(例えば30分間以下、好ましくは20分間以下)で金属微粒子表面から除去することができ、導電性に優れた焼結体が得られる。
【0081】
モノアミン(2)としては、例えば、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、tert-ペンチルアミン等の、直鎖状または分岐鎖状アルキル基を有する総炭素数2~5の第一級アミン;N-メチル-N-プロピルアミン、N-エチル-N-プロピルアミン、N,N-ジメチルアミン、N,N-ジエチルアミン等の、直鎖状または分岐鎖状アルキル基を有する総炭素数2~5の第二級アミンなどが挙げられる。
【0082】
モノアミン(2)としては、中でも、n-ブチルアミン、イソブチルアミン、sec-ブチルアミン、tert-ブチルアミン、ペンチルアミン、イソペンチルアミン、tert-ペンチルアミン等の直鎖状または分岐鎖状アルキル基を有する総炭素数2~5(好ましくは、総炭素数4~5)の第一級アミンが好ましく、特にn-ブチルアミン等の直鎖状アルキル基を有する総炭素数2~5(好ましくは、総炭素数4~5)の第一級アミンが好ましい。
【0083】
モノアミン(2)は、中でも、脂肪族炭化水素基と1つのアミノ基とからなり且つ該脂肪族炭化水素基の炭素総数が5以下である脂肪族炭化水素モノアミン(2)が好ましい。
【0084】
ジアミン(3)の総炭素数は8以下(例えば、1~8)であり、モノアミン(1)より極性が高く金属原子への配位能が高いため、錯体形成促進効果を有すると考えられる。また、ジアミン(3)は、錯体の熱分解工程において、より低温且つ短時間での熱分解を促進する効果があり、ジアミン(3)を使用すると金属ナノ粒子製造をより効率的に行うことができる。さらに、ジアミン(3)を含む保護剤で被覆された構成を有する表面修飾金属ナノ粒子は、極性の高い溶剤を含む分散媒体中において優れた分散安定性を発揮する。さらに、ジアミン(3)は、炭化水素鎖が短いため、低温焼結においても、短時間(例えば30分間以下、好ましくは20分間以下)で金属ナノ粒子表面から除去することができ、導電性に優れた焼結体が得られる。
【0085】
ジアミン(3)としては、例えば、エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,7-ヘプタンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン等の、式(a-2)中のR4~R7が水素原子であり、R8が直鎖状または分岐鎖状アルキレン基であるジアミン;N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、N,N’-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン等の式(a-2)中のR4、R6が同一またhは異なって直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、R5、R7が水素原子であり、R8が直鎖状または分岐鎖状アルキレン基であるジアミン;N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジメチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジエチル-1,4-ブタンジアミン、N,N-ジメチル-1,6-ヘキサンジアミン等の式(a-2)中のR4、R5が同一または異なって直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、R6、R7が水素原子であり、R8が直鎖状または分岐鎖状アルキレン基であるジアミンなどが挙げられる。
【0086】
これらの中でも、式(a-2)中のR4、R5が同一または異なって直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、R6、R7が水素原子であり、R8が直鎖状または分岐鎖状アルキレン基であるジアミン[特に、式(a-2)中のR4、R5が直鎖状アルキル基であり、R6、R7が水素原子であり、R8が直鎖状アルキレン基であるジアミン]が好ましい。
【0087】
式(a-2)中のR4、R5が同一または異なって直鎖状または分岐鎖状アルキル基であり、R6、R7が水素原子であるジアミン、すなわち第一級アミノ基と第三級アミノ基を有するジアミンは、上記第一級アミノ基は金属原子に対して高い配位能を有するが、上記第三級アミノ基は金属原子に対する配位能に乏しいため、形成される錯体が過剰に複雑化することが防止され、それにより、錯体の熱分解工程において、より低温且つ短時間での熱分解が可能となる。これらの中でも、低温焼結において短時間で金属ナノ粒子表面から除去できる点から、総炭素数6以下(例えば、1~6)のジアミンが好ましく、総炭素数5以下(例えば、1~5)のジアミンがより好ましい。
【0088】
ジアミン(3)は、中でも、脂肪族炭化水素基と2つのアミノ基とからなり且つ該脂肪族炭化水素基の炭素総数が8以下である脂肪族炭化水素ジアミン(3)が好ましい。
【0089】
上記アミンとして、モノアミン(1)と、モノアミン(2)および/またはジアミン(3)とを併せて含有する場合において、これらの使用割合は、特に限定されないが、アミン全量[モノアミン(1)+モノアミン(2)+ジアミン(3);100モル%]を基準として、下記範囲であることが好ましい。
・モノアミン(1)の含有量:例えば5~65モル%(下限は、好ましくは10モル%、より好ましくは15モル%である。また、上限は、好ましくは50モル%、より好ましくは40モル%、さらに好ましくは35モル%である)
・モノアミン(2)とジアミン(3)の合計含有量:例えば35~95モル%(下限は、好ましくは50モル%、より好ましくは60モル%、さらに好ましくは65モル%である。また、上限は、好ましくは90モル%、より好ましくは85モル%である)
【0090】
さらに、モノアミン(2)とジアミン(3)を共に使用する場合、モノアミン(2)とジアミン(3)の各含有量は、アミン全量[モノアミン(1)+モノアミン(2)+ジアミン(3);100モル%]を基準として、下記範囲であることが好ましい。
・モノアミン(2):例えば5~70モル%(下限は、好ましくは10モル%、より好ましくは15モル%である。また、上限は、好ましくは65モル%、より好ましくは60モル%である)
・ジアミン(3):例えば5~50モル%(下限は、好ましくは10モル%である。また、上限は、好ましくは45モル%、より好ましくは40モル%である)
【0091】
モノアミン(1)の含有量が上記下限値以上であると、金属ナノ粒子の分散安定性に優れ、上記上限値以下であると低温焼結によってアミンが除去されやすい傾向がある。
【0092】
モノアミン(2)の含有量が上記範囲内であると、錯体形成促進効果が得られやすい。また、低温且つ短時間での焼結が可能となり、さらに、焼結時にジアミン(3)が金属ナノ粒子表面から除去されやすくなる。
【0093】
ジアミン(3)の含有量が上記範囲内であると、錯体形成促進効果および錯体の熱分解促進効果が得られやすい。また、ジアミン(3)を含む保護剤で被覆された構成を有する表面修飾金属ナノ粒子は、極性の高い溶剤を含む分散媒体中において優れた分散安定性を発揮する。
【0094】
上記導電性インクにおいては、金属原子への配位能が高いモノアミン(2)および/またはジアミン(3)を用いると、それらの使用割合に応じて、モノアミン(1)の使用量を減量することができ、低温短時間での焼結の場合において、これらアミンが金属ナノ粒子表面から除去されやすくなり、金属ナノ粒子の焼結を充分に進行させることができるようになる。
【0095】
上記有機保護剤として使用するアミンは、モノアミン(1)、モノアミン(2)、およびジアミン(3)以外のその他のアミンを含有していてもよい。有機保護剤に含まれる全アミンにおけるモノアミン(1)、モノアミン(2)、およびジアミン(3)の合計含有量の占める割合は、例えば60質量%以上(例えば60~100質量%)が好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。すなわち、上記その他のアミンの含有量は、40質量%以下が好ましく、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。
【0096】
上記アミン[特に、モノアミン(1)+モノアミン(2)+ジアミン(3)]の使用量は特に限定されないが、金属ナノ粒子の原料である金属化合物の金属原子1モルに対して、1~50モル程度が好ましく、実質的に無溶剤中において表面修飾金属ナノ粒子が得られる点で、2~50モルが好ましく、特に好ましくは6~50モルである。上記アミンの使用量が上記下限値以上であると、錯体の生成工程において、錯体に変換されない金属銀化合物が残存しにくく、その後の熱分解工程において、金属ナノ粒子の均一性が高くなり、粒子の肥大化や、熱分解しない金属化合物の残存を抑制することができる。
【0097】
上記導電性インク中の上記金属微粒子の含有割合は、40~80質量%であることが好ましく、より好ましくは50~70質量%である。
【0098】
上記溶剤としては、金属微粒子の分散に用いられる公知乃至慣用のものを使用することができ、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、n-ペンタノール、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、メントール等のアルコール;ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコール-n-ブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチル-イソペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルシクロペンチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールメチル-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル等のエーテルなどの有機溶剤が挙げられる。また、上記溶剤としては、ターピネオール、ジヒドロターピネオール等のテルペン系溶剤なども挙げられる。上記溶剤は、所望の濃度や粘性に応じて、溶剤の種類や量を適宜定めることができる。これらは、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。
【0099】
上記溶剤としては、中でも、アルコール、エーテル、炭化水素、テルペン系溶剤が好ましい。
【0100】
上記導電性インクは、金属微粒子および有機溶媒以外のその他の成分を含んでいてもよい。上記導電性インクは、例えば粘度等を調整する目的で、水やバインダ樹脂を含んでいてもよい。上記バインダ樹脂は、1種のみを使用してもよいし2種以上を使用してもよい。上記バインダ樹脂としては、導電性インクに配合される公知乃至慣用のものが挙げられ、例えば、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、セルロース系樹脂(例えばエチルセルロース)などが挙げられる。上記導電性インク中の上記バインダ樹脂の含有割合は、例えば10質量%以下であり、金属層の導電性に優れる点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.1質量%以下、特に好ましくは0.01質量%以下である。
【0101】
上記導電性インクを塗布する方法は、特に限定されず、公知乃至慣用の塗布方法を採用することができ、例えば、スピンコート、インクジェット印刷、スクリーン印刷、ディスペンサ印刷、凸版印刷(フレキソ印刷)、昇華型印刷、オフセット印刷、レーザープリンタ印刷(トナー印刷)、凹版印刷(グラビア印刷)、コンタクト印刷、マイクロコンタクト印刷等が挙げられる。
【0102】
上記金属層は、焼成によって、上記塗膜を形成する導電性インク中の溶剤が揮発するとともに、金属微粒子が焼結することによって形成される。
【0103】
上記焼成の際の温度(焼成温度)は、500℃以下が好ましく、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下である。焼成温度が200℃以下であると、基材が耐熱性の低い樹脂材料であっても熱変形を抑制することができ、また、金属微粒子の焼結後に硬化性受容層を硬化することが容易となる。
【0104】
上記焼結の際の時間(焼結時間)は、導電性インクの種類、塗布量、焼結温度等によって変動するが、好ましくは5時間以下、より好ましくは1時間以下、さらに好ましくは30分間以下である。下限は、特に限定されないが、通常30秒程度である。
【0105】
本開示の製造方法における上記受容層および上記金属層の厚さは、上述の本開示の積層体が備える受容層および金属層において例示・説明した厚さと同じである。
【0106】
本開示に係る積層体は、例えば、電磁波制御材、回路基板、アンテナ、放熱板、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ(FED)、ICカード、ICタグ、太陽電池、LED素子、有機トランジスタ、コンデンサー(キャパシタ)、電子ペーパー、フレキシブル電池、フレキシブルセンサ、メンブレンスイッチ、タッチパネル、EMIシールド等の電子デバイスに適用することができる。
【0107】
本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は、一例であって、本開示の趣旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。また、本開示に係る各発明は、実施形態や以下の実施例によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例0108】
以下に、実施例に基づいて本開示の一実施形態をより詳細に説明する。
【0109】
(実施例1)
シクロヘキサノン(東京化成工業(株)製)53.5gに、エポキシ樹脂(グリシジルアミン型、商品名「jER630」、三菱ケミカル(株)製)1.5gを溶解させた後、熱可塑性ポリイミド樹脂溶液(商品名「PIAD300」、荒川化学工業(株)製、固形分30%シクロヘキサノン溶液、樹脂の軟化点140℃)45.0gを混合して溶液組成物を調製した。組成物中の、エポキシ樹脂の含有割合に対する熱可塑性ポリイミド樹脂の含有割合の質量比(熱可塑性ポリイミド樹脂/エポキシ樹脂)は9であった。
【0110】
基材(熱硬化性ポリイミドフィルム、商品名「カプトン」、東レ・デュポン(株)製、熱硬化性ポリイミドの荷重たわみ温度380℃)上に、上記溶液組成物を、バーコーターを用いて塗布し塗膜としてから120℃で3分間乾燥した。乾燥後の塗膜(硬化する前の硬化性受容層)の厚さは0.3μmとなった。
【0111】
上記基材上に形成された上記塗膜上に、銀ナノ粒子インク(商品名「DNS-163」、(株)ダイセル製、銀ナノ粒子の平均粒子径20μm)を、インクジェット印刷装置((株)アルバック製)を用いて塗布し銀塗膜としてから、200℃で30分間加熱して、上記銀塗膜を乾燥・焼成(焼結)すると同時に上記塗膜を硬化することによって、基材に受容層を介して金属層が積層された積層体を作製した。金属層の厚さは1.0μmであった。
【0112】
厚さの比(金属層/受容層)は3.3であり、耐久パラメータ[厚さの比(金属層/受容層)×質量比(熱可塑性ポリイミド樹脂/エポキシ樹脂)]の値は29.7であった。
【0113】
(実施例2)
金属層の厚さを3μmとした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。厚さの比(金属層/受容層)は10であり、耐久パラメータの値は90.0であった。
【0114】
(実施例3)
受容層の厚さを0.6μmとし、金属層の厚さを3.0μmとした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。厚さの比(金属層/受容層)は5であり、耐久パラメータの値は45.0であった。
【0115】
(実施例4)
溶液組成物の調製に用いるエポキシ樹脂の量を0.75gに変更して質量比(熱可塑性ポリイミド樹脂/エポキシ樹脂)を18とし、受容層の厚さを0.6μmとした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。厚さの比(金属層/受容層)は1.7であり、耐久パラメータの値は30.6であった。
【0116】
(実施例5)
基材をガラス(商品名「AS-2K」、(株)東新理興製)とした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。厚さの比(金属層/受容層)は3.3であり、耐久パラメータの値は29.7であった。
【0117】
(実施例6)
受容層の厚さを0.6μmとし、金属層の厚さを0.95μmとした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。厚さの比(金属層/受容層)は1.6であり、耐久パラメータの値は14.4であった。
【0118】
(実施例7)
受容層の厚さを1.5μmとし、金属層の厚さを3.0μmとした以外は実施例1と同様にして積層体を作製した。厚さの比(金属層/受容層)は2であり、耐久パラメータの値は18.0であった。
【0119】
(実施例8)
120℃で3分間乾燥した塗膜(硬化する前の硬化性受容層)上に塗布し、塗布した銀塗膜を120℃で30分間加熱して乾燥・焼成(焼結)して導電層を形成した後、200℃で30分間加熱して上記塗膜を硬化させて受容層を形成した以外は、実施例1と同様にして積層体を作製した。厚さの比(金属層/受容層)は3.3であり、耐久パラメータの値は29.7であった。
【0120】
(比較例1)
受容層を形成する樹脂材料としてシリコーン樹脂(非硬化型樹脂、公進ケミカル(株)製)とした以外は実施例3と同様にして積層体を作製した。厚さの比(金属層/受容層)は5であった。
【0121】
(比較例2)
受容層を形成する樹脂材料としてメラミン樹脂(商品名「ACS-018」、非硬化型樹脂、公進ケミカル(株)製)とした以外は実施例3と同様にして積層体を作製した。厚さの比(金属層/受容層)は5であった。
【0122】
<評価>
実施例および比較例で作製した積層体について、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0123】
(1)外観の評価
作製した積層体の金属層の表面を光学顕微鏡を用いて観察し、以下の評価基準に従って評価した。
【0124】
(外観の評価基準)
○:金属層にクラックが全く発生していない
△:金属層にクラックがわずかに発生している
×:金属層に多くのクラックが発生している
【0125】
(2)導電性
作製した積層体の金属層の導電性について4端子法により比抵抗を測定し、以下の評価基準に従って評価した。
【0126】
(導電性の評価基準)
◎:比抵抗が10μΩ・cm以下
○:比抵抗が10μΩ・cm超30μΩ・cm以下
△:導通しているが、比抵抗が30μΩ・cm超
×:導通していない
【0127】
(3)密着性
作製した積層体の金属層について、ASTM D 3559-Bに準拠したクロスカット剥離試験を行い、以下の評価基準に従って評価した。
【0128】
(密着性の評価基準)
○:5B
△:4B~1B
×:0B
【0129】
(4)密着性(260℃)
作製した積層体の金属層について、260℃で5分間加温し、室温にて1日保管した後に、ASTM D 3559-Bに準拠したクロスカット剥離試験を行い、上記(3)密着性と同様の評価基準に従って評価した。密着性(260℃)に優れるほど、高温環境下において基材と金属層との密着性に優れることを示す。
【0130】
【表1】
【0131】
実施例1~8において、良好な、外観(評価〇、△)、導電性(評価◎、△)、密着性(評価〇)、および密着性(260℃)(評価〇)を得られることが示された。一方、受容層が硬化型樹脂および熱可塑性樹脂を含まない場合の比較例1、2では、密着性(260℃)に劣ることが示された(評価×)。
【0132】
以下、本開示に係る発明のバリエーションを記載する。
[付記1]基材と、前記基材の少なくとも一方の面に積層された受容層と、前記受容層を介して前記基材に積層された金属層と、を備え、
前記受容層は、硬化型樹脂および熱可塑性樹脂を含み、
前記金属層は、200nm以下の平均粒子径を有する、銀粒子および/または銅粒子の焼結体を含む、積層体。
[付記2]前記受容層の厚さが2.0μm以下であり、かつ前記受容層の厚さに対する前記金属層の厚さの比(金属層/受容層)が1.6以上である付記1に記載の積層体。
[付記3]下記耐久パラメータが14.0以上である、付記1または2に記載の積層体。
耐久パラメータ:[前記受容層の厚さに対する前記金属層の厚さの比(金属層/受容層)]×[前記硬化型樹脂の含有割合に対する前記熱可塑性樹脂の含有割合の質量比(熱可塑性樹脂/硬化型樹脂)]
[付記4]前記硬化型樹脂は熱硬化型樹脂である、付記1~3のいずれか1つに記載の積層体。
[付記5]前記熱硬化型樹脂はエポキシ系樹脂の硬化物である、付記4に記載の積層体。
[付記6]前記エポキシ系樹脂はグリシジルアミン型エポキシ樹脂である、付記1~5のいずれか1つに記載の積層体。
[付記7]前記熱可塑性樹脂は熱可塑性ポリイミド系樹脂である、付記1~6のいずれか1つに記載の積層体。
[付記8]前記熱可塑性樹脂のガラス転移点および融点の少なくとも一方が150℃以上(より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは240℃以上)である、付記1~7のいずれか1つに記載の積層体。
[付記9]前記受容層中の、前記硬化型樹脂の含有割合に対する前記熱可塑性樹脂の含有割合の質量比(熱可塑性樹脂/硬化型樹脂)が5.5~99(より好ましくは6.6~33、さらに好ましくは8.0~19)である、付記1~8のいずれか1つに記載の積層体。
[付記10]前記受容層の厚さが2.0μm以下(好ましくは0.015~2.0μm、より好ましくは0.05~1.5μm、さらに好ましくは0.1~1.0μm)である、付記1~9のいずれか1つに記載の積層体。
[付記11]前記銀粒子および/または前記銅粒子の平均粒径が150nm以下(好ましくは100nm以下、より好ましくは100nm以下、さらに好ましくは80nm)である、付記1~10のいずれか1つに記載の積層体。
[付記12]前記金属層中の金属の含有割合が60質量%以上(好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上)である、付記1~11のいずれか1つに記載の積層体。
[付記13]前記金属層中の空隙率が0.1~50%(好ましくは5~40%、より好ましくは10~30%)である、付記1~12のいずれか1つに記載の積層体。
[付記14]前記金属層の厚さが0.025~30.0μm(好ましくは0.1~20.0μm、より好ましくは0.5~5.0μm、さらに好ましくは1.0~3.0μm)である、付記1~13のいずれか1つに記載の積層体。
[付記15]前記金属層の比抵抗が30μΩ・cm以下(好ましくは20μΩ・cm以下、より好ましくは10μΩ・cm)である、付記1~14のいずれか1つに記載の積層体。
[付記16]前記受容層の厚さに対する前記金属層の厚さの比(金属層/受容層)が1.6以上(好ましくは1.7以上、より好ましくは2.0以上、さらに好ましくは5.0以上)である、付記1~15のいずれか1つに記載の積層体。
[付記17]前記耐久パラメータが14.0以上(好ましくは17.0以上、より好ましくは20.0以上、さらに好ましくは25.0以上、特に好ましくは29.0以上)である、付記1~15のいずれか1つに記載の積層体。
[付記18]前記基材を形成する材料が、無機材料、硬化型樹脂材料、またはガラス転移点および融点の少なくとも一方が180℃以上の熱可塑性樹脂材料を含む、付記1~17のいずれか1つに記載の積層体。
[付記19]前記基材を形成する材料が硬化型樹脂材料である、付記18に記載の積層体。
[付記20]前記硬化型樹脂材料はポリイミド系樹脂である、付記19に記載の積層体。
[付記21]前記硬化型樹脂材料の荷重たわみ温度が、180℃以上(好ましくは200℃以上、より好ましくは240℃以上)である、付記19または20に記載の積層体。
[付記22]付記1~21のいずれか1つに記載の積層体を備えた電子デバイス。
[付記23]付記1~21のいずれか1つに記載の積層体の製造方法であり、
前記基材の少なくとも一方の面に、硬化性樹脂および熱可塑性樹脂を含む硬化する前の硬化性受容層を形成し、前記硬化性受容層の表面に銀粒子および/または銅粒子を含む導電性インクを塗布した後、前記銀粒子および/または前記銅粒子を焼結することによって前記金属層を形成する工程を備える、積層体の製造方法。
[付記24]前記銀粒子および/または前記銅粒子の焼結と同時に、前記硬化性受容層を硬化する、付記23に記載の積層体の製造方法。
[付記25]前記銀粒子および/または前記銅粒子を焼結した後に、前記硬化性受容層を硬化する、付記23に記載の積層体の製造方法。
【符号の説明】
【0133】
1 積層体
2 基材
3 金属層
4 受容層
図1