(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024128301
(43)【公開日】2024-09-24
(54)【発明の名称】掘削支援装置、掘削支援方法および掘削支援プログラム
(51)【国際特許分類】
E02F 9/26 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
E02F9/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023037220
(22)【出願日】2023-03-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金 多仁
(72)【発明者】
【氏名】淺原 彰規
(72)【発明者】
【氏名】刑部 好弘
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB00
(57)【要約】
【課題】掘削作業の効率化を図ること。
【解決手段】掘削支援装置は、地中における掘削対象領域から作業対象配管以外の他の配管を除いた掘削可能領域を取得する第1取得処理と、前記掘削対象領域内の作業対象配管の配置領域を取得する第2取得処理と、前記第1取得処理によって取得された掘削可能領域のうち、前記第2取得処理によって取得された作業対象配管の配置領域から地面までの掘削領域候補を、掘削工数に関する指標に基づいて探索する探索処理と、前記探索処理による探索結果を出力する出力処理と、を実行する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する掘削支援装置であって、
前記プロセッサは、
地中における掘削対象領域から作業対象配管以外の他の配管を除いた掘削可能領域を取得する第1取得処理と、
前記掘削対象領域内の作業対象配管の配置領域を取得する第2取得処理と、
前記第1取得処理によって取得された掘削可能領域のうち、前記第2取得処理によって取得された作業対象配管の配置領域から地面までの掘削領域候補を、掘削工数に関する指標に基づいて探索する探索処理と、
前記探索処理による探索結果を出力する出力処理と、
を実行することを特徴とする掘削支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の掘削支援装置であって、
前記探索処理では、前記プロセッサは、前記掘削領域候補を、前記掘削領域候補の形状に関する前記指標に基づいて探索する、
ことを特徴とする掘削支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載の掘削支援装置であって、
前記探索処理では、前記プロセッサは、前記掘削領域候補を、前記掘削領域候補の形状における辺の長さに関する前記指標に基づいて探索する、
を実行することを特徴とする掘削支援装置。
【請求項4】
請求項2に記載の掘削支援装置であって、
前記探索処理では、前記プロセッサは、前記掘削領域候補を、前記掘削領域候補の形状における面積に関する前記指標に基づいて探索する、
を実行することを特徴とする掘削支援装置。
【請求項5】
請求項2に記載の掘削支援装置であって、
前記探索処理では、前記プロセッサは、前記掘削領域候補を、前記掘削領域候補の形状における頂点の数に関する前記指標に基づいて探索する、
ことを特徴とする掘削支援装置。
【請求項6】
請求項2に記載の掘削支援装置であって、
前記探索処理では、前記プロセッサは、前記掘削領域候補を、前記掘削領域候補の掘削機器に関する前記指標に基づいて探索する、
ことを特徴とする掘削支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載の掘削支援装置であって、
前記探索処理では、前記プロセッサは、前記掘削領域候補を、前記掘削領域候補の前記掘削機器の幅と前記掘削機器を搬入出する作業現場の出入り口の幅との差分に関する前記指標に基づいて探索する、
ことを特徴とする掘削支援装置。
【請求項8】
請求項1に記載の掘削支援装置であって、
前記第1取得処理では、前記プロセッサは、前記掘削対象領域から前記他の配管およびその近傍領域を除いた掘削可能領域を取得する、
ことを特徴とする掘削支援装置。
【請求項9】
請求項1に記載の掘削支援装置であって、
前記第2取得処理では、前記プロセッサは、前記作業対象配管およびその近傍領域を含む前記作業対象配管の配置領域を取得する、
ことを特徴とする掘削支援装置。
【請求項10】
プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する掘削支援装置が実行する掘削支援方法であって、
前記プロセッサは、
地中における掘削対象領域から作業対象配管以外の他の配管を除いた掘削可能領域を取得する第1取得処理と、
前記掘削対象領域内の作業対象配管の配置領域を取得する第2取得処理と、
前記第1取得処理によって取得された掘削可能領域のうち、前記第2取得処理によって取得された作業対象配管の配置領域から地面までの掘削領域候補を、掘削工数に関する指標に基づいて探索する探索処理と、
前記探索処理による探索結果を出力する出力処理と、
を実行することを特徴とする掘削支援方法。
【請求項11】
プロセッサに、
地中における掘削対象領域から作業対象配管以外の他の配管を除いた掘削可能領域を取得する第1取得処理と、
前記掘削対象領域内の作業対象配管の配置領域を取得する第2取得処理と、
前記第1取得処理によって取得された掘削可能領域のうち、前記第2取得処理によって取得された作業対象配管の配置領域から地面までの掘削領域候補を、掘削工数に関する指標に基づいて探索する探索処理と、
前記探索処理による探索結果を出力する出力処理と、
を実行させることを特徴とする掘削支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削を支援する掘削支援装置、掘削支援方法および掘削支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス、水道などのような、地下インフラの保守点検のため、掘削作業が行われている。これらの地下インフラは、同じ場所に種類の異なる配管が混在しているという特徴を持つため、掘削の際には周辺に存在する他のインフラの配管情報が必要になり、そのデータの共有や活用が干渉事故の防止や作業の効率において重要である。しかし、現状では、こういった地下インフラデータの共有と活用が円滑に行われておらず、掘削の際にインフラ干渉事故や作業延長が発生している。
【0003】
そこで、掘削作業を支援する方法がいくつか提案されている。たとえば、特許文献1は、掘削作業を好適に支援することができる情報処理装置を開示する。この情報処理装置は、埋設物が埋設された埋設地を地中探査装置で計測した計測データを取得する取得部と、教師用の前記計測データと、該教師用の計測データに対応する地中の前記埋設物の位置とを学習済みの学習済みモデルを用いて、取得した前記計測データから前記埋設物の位置を推定する推定部と、前記埋設物の位置に基づき、掘削装置4による前記埋設地の掘削可能範囲を特定する特定部とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、掘削装置による掘削可能範囲を特定することにとどまる。そのため特許文献1では、対象の地下インフラ資産を保守点検するためには、どのように掘削すれば効率的に掘削できるかを算出できない。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、掘削作業の効率化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明の一側面となる掘削支援装置は、プログラムを実行するプロセッサと、前記プログラムを記憶する記憶デバイスと、を有する掘削支援装置であって、前記プロセッサは、地中における掘削対象領域から作業対象配管以外の他の配管を除いた掘削可能領域を取得する第1取得処理と、前記掘削対象領域内の作業対象配管の配置領域を取得する第2取得処理と、前記第1取得処理によって取得された掘削可能領域のうち、前記第2取得処理によって取得された作業対象配管の配置領域から地面までの掘削領域候補を、掘削工数に関する指標に基づいて探索する探索処理と、前記探索処理による探索結果を出力する出力処理と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の代表的な実施の形態によれば、掘削作業の効率化を図ることができる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、掘削支援装置の構成例を示す概略ブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した配管計測データの一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、掘削機器データの一例を示す説明図である。
【
図4】
図4は、作業図面の一例を示す説明図である。
【
図5】
図5は、掘削可能領域を含む地中データの例1を示す説明図である。
【
図6】
図6は、掘削可能領域を含む地中データの例2を示す説明図である。
【
図7】
図7は、掘削可能領域生成処理手順例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、掘削工数指標算出処理手順例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図8に示した掘削領域算出処理(ステップS803)の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、掘削領域情報表示画面の一例を示す説明図である。
【
図11】
図11は、掘削支援装置による掘削支援処理を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<掘削支援装置>
図1は、掘削支援装置の構成例を示す概略ブロック図である。掘削支援装置100は、入出力部110と、制御部120と、記憶部130と、を有する。入出力部110は、キーボード111、マウス112、タッチパネル、テンキー、スキャナ、マイク(不図示)などを含む入力デバイスと、ディスプレイ113や通信インタフェース、プリンタ、スピーカ(不図示)などを含む出力デバイスと、を有する。ユーザは、入力部のキーボード111またはマウス112から命令を入力し、出力部のディスプレイ113から結果を視覚的に確認することができる。
【0011】
また、制御部120は、内部に少なくともメモリ121およびプロセッサ123を備える。メモリ121は、プロセッサ123の作業エリアとなる。メモリ121には、掘削支援プログラム122が展開される。この掘削支援プログラム122は、プロセッサ123が実行する命令によって構成される。
【0012】
プロセッサ123は、掘削支援プログラム122の命令に従い演算を実行し、記憶部130へのアクセスおよび入出力部110との情報の交換などを行う。
【0013】
以下の説明において、掘削支援プログラム122が実行する処理は、実際には、掘削支援プログラム122に記述された命令に従いプロセッサ123によって実行される処理である。
【0014】
記憶部130には、少なくとも、配管計測データ131、掘削機器データ132、掘削領域データ133および地図データ134が格納され、掘削支援プログラム122はこれらのデータを読み込むことができる。記憶部130は、たとえば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、フラッシュメモリにより構成される。
【0015】
ここで、記憶部130は、制御部120に内蔵されても、制御部120の外部に接続されてもよい、また、制御部120から通信インタフェースを介してネットワーク経由でアクセスできる別の装置に接続されてもよい。
【0016】
配管計測データ131は、地下に埋まっている配管に対する計測データを保持する。配管の太さおよび位置に関する情報を有する。
【0017】
掘削機器データ132は、掘削機器の種別、横幅および制御精度に関する情報を有する。
【0018】
掘削領域データ133は、保守点検対象の配管およびその埋設地に対する、掘削可能領域および掘削工数が少なくなる掘削領域に関する情報を有する。
【0019】
地図データ134は、少なくとも、道路の情報を含み、さらに、その他に、ユーザに場所を理解させる情報を有しても良い。たとえば、地名、行政改、鉄道、衛星画像、等高線および海岸線などの情報が挙げられる。
【0020】
<配管計測データ131>
図2は、
図1に示した配管計測データ131の一例を示す説明図である。配管計測データ131は、フィールドとして、配管計測ID211、半径212、始点緯度213、始点経度214、始点深さ215、終点緯度216、終点経度217、終点深さ218、計測精度219を有する。
【0021】
配管計測ID211は、中空円筒形状である計測対象配管の計測を一意に特定する識別情報である。
【0022】
半径212は、計測対象配管の軸方向に直交する断面の中心から断面端部までの長さである。
【0023】
始点緯度213は、計測対象配管が配置された位置の一端側の緯度である。
【0024】
始点経度214は、計測対象配管の配置された位置の一端側の経度である。
【0025】
始点深さ215は、始点緯度213および始点経度214における深さ方向の位置である。
【0026】
始点緯度213、始点経度214および始点深さ215により、計測対象配管の始点の3次元位置が特定される。
【0027】
終点緯度216は、計測対象配管が配置された位置の他端側の緯度である。
【0028】
終点経度217は、計測対象配管の配置された位置の他端側の経度である。
【0029】
終点深さ218は、終点緯度216および終点経度217における深さ方向の位置である。
【0030】
終点緯度216、終点経度217および終点深さ218により、計測対象配管の終点の3次元位置が特定される。
【0031】
計測精度219は、計測対象配管の計測時における位置誤差を考慮した値である。
【0032】
<掘削機器データ132>
図3は、掘削機器データ132の一例を示す説明図である。掘削機器データ132は、フィールドとして、掘削機器種別311、横幅312、制御精度313を有する。
【0033】
掘削機器種別311は、掘削機器の種別を示す。
【0034】
横幅312は、掘削機器の横幅である。なお、掘削機器種別311が「ショベル」など人手で扱う道具の場合は、一般的な人の横幅が格納される。
【0035】
制御精度313は、掘削機器種別311で特定される種別の掘削機器で掘削する場合の精度である。たとえば、「油圧ショベル1」の場合、横幅312が250cmであり、制御精度313が15cmであるため、265cm(=250cm+15cm)の横幅で掘削されることを示す。
【0036】
<作業図面>
図4は、作業図面の一例を示す説明図である。作業図面400は、直交しあうX方向およびY方向で張られる作業現場のXY平面401を示す地図データである。XY平面401は、地面を示す。作業図面400は、たとえば、XY平面401において、出入り口402と、配管列403と、作業範囲404と、作業対象配管405と、を含む。
【0037】
出入り口402は、作業員や掘削機器、配管などが地中に搬入され、または、地中から搬出される位置である。出入り口402は、その位置(緯度、経度)と幅とを有する。出入り口402の位置(緯度、経度)および幅は、ユーザ操作により設定可能である。
【0038】
配管列403は、地中に埋設されている、連結された複数の配管である。各々の配管は、両端の位置(始点緯度213、始点経度214、始点深さ215、終点緯度216、終点経度217、終点深さ218)を有する。このほかにも図示していない配管が存在するものとする。
【0039】
作業範囲404は、作業員が掘削機器を用いて作業を行う領域である。作業範囲404は、たとえば、XY平面401に平行な矩形で指定される。矩形の左上頂点の位置(緯度、経度、深さ)と右下頂点の位置(緯度、経度、深さ)とにより、作業範囲404の位置が特定される。作業範囲404の位置は、ユーザ操作により設定可能である。
【0040】
作業対象配管405は、配管列403の一部の配管である。作業対象配管405は、ユーザ操作により保守点検などの作業対象として選択される。
【0041】
<掘削可能領域を含む地中データ>
図5は、掘削可能領域を含む地中データの例1を示す説明図である。Z方向は、X方向およびY方向に直交し、XY平面401(地面)からの地中の深さ方向となる。
【0042】
地中データ500は、XZ平面に平行な面である。地中データ500は、算出範囲510を含む。本例の場合、地中データ500全体が算出範囲510となるが、算出範囲510は地中データ500の一部でもよい。また、ユーザ操作により、地中データ500の中から算出範囲510が指定されてもよい。
【0043】
算出範囲510は、掘削可能領域514および掘削領域の算出対象となる地中の掘削対象領域である。作業対象配管405は、作業対象となる配管である。作業対象配管405は、たとえば、作業図面400における両端の位置(緯度、経度、深さ)で特定される。
【0044】
他の配管512は、作業対象配管405以外の配管である。掘削領域バッファ513は、掘削可能領域514および掘削領域の算出の際に、他の配管512が占めている領域に加えて考慮すべき近傍領域であり、たとえば、掘削機器の制御精度313、計測精度219分の円環である。掘削可能領域514は、掘削が可能な領域であり、算出範囲510から他の配管512とその掘削領域バッファ513とを除いた領域である。
【0045】
図6は、掘削可能領域を含む地中データの例2を示す説明図である。
図6は、
図5の状態から、掘削領域616が設定された状態を示す。掘削領域バッファ615は、作業対象配管405に対するバッファ領域である。掘削領域616は、最少の掘削工数で掘削される領域である。
【0046】
<掘削可能領域514の生成処理>
図7は、掘削可能領域生成処理手順例を示すフローチャートである。
図7の掘削可能領域生成処理は、掘削可能領域514を生成する処理であり、プロセッサ123が掘削支援プログラム122により実行する。
【0047】
プロセッサ123は、ユーザ操作により、作業図面400から作業対象配管405の位置を取得する(ステップS701)。作業対象配管405の位置とは、作業対象配管405の両端の緯度、経度、および深さである。
【0048】
プロセッサ123は、作業図面400から作業範囲404を特定し、掘削可能領域514の算出範囲510とする(以下、算出範囲RAと表記する場合がある。)(ステップS702)。
【0049】
プロセッサ123は、配管計測データ131から、算出範囲RA内に存在するすべての配管(作業対象配管405および他の配管512)の位置(始点緯度213、始点経度214、始点深さ215、終点緯度216、終点経度217、終点深さ218)を取得し、その領域をRPとする(ステップS703)。領域RPは、一例として、始点位置(始点緯度213、始点経度214、始点深さ215)と、終点位置(終点緯度216、終点経度217、終点深さ218)とをつなぐ直線上の各点を中心点として直線に垂直な方向の半径212の距離内の領域とする。すなわち、領域RPは、配管(作業対象配管405および他の配管512)が占める領域である。
【0050】
プロセッサ123は、掘削機器データ132から、ユーザの入力により選択された掘削機器種別311に対応する制御精度313を取得し、制御精度313を用いて配管の領域RPを、掘削領域バッファ513,615を含む領域RP´に補正する(ステップS704)。
【0051】
補正の一例として、領域RP´は、領域RPにおいて、始点位置(始点緯度213、始点経度214、始点深さ215)と、終点位置(終点緯度216、終点経度217、終点深さ218)とをつなぐ直線上の各点を中心点として直線に垂直な方向の半径212と制御精度313とを加算した距離内の領域とする。
【0052】
このように、制御精度313を加算することにより、制御精度313の範囲内で意図した制御との相違があっても工事対象ではない他の配管512に干渉することなく掘削ができるように掘削可能領域514を決定することができる。なお、中心点からの距離を求める際に、プロセッサ123は、配管計測データ131の計測精度219を加算してもよい。
【0053】
プロセッサ123は、配管計測データ131から作業対象配管405の位置と一致する配管位置(始点緯度213、始点経度214、始点深さ215、終点緯度216、終点経度217、終点深さ218)を取得し、その領域を作業対象配管405の配置領域RTとする(ステップS705)。配置領域RTは、領域RPと同様の処理で求められる。
【0054】
また、作業図面400から求められた作業対象配管405の位置を用いて、配管計測データ131から再度その配管位置を取得することにより、作業図面400における作業対象配管405の位置が正確でない場合に有効である。
【0055】
掘削可能領域514は、算出範囲510(RA)から他の配管512およびその掘削領域バッファ513(RP´)を除いた3次元の領域である。プロセッサ123は、掘削可能領域514をRKとすると、下記式(1)により、掘削可能領域RKを計算し、掘削領域データ133に保存する(ステップS706)。
【0056】
RK=RA-RP´+RT・・・(1)
【0057】
これにより、掘削可能領域514の生成処理が終了する。
【0058】
<掘削工数指標算出処理>
図8は、掘削工数指標算出処理手順例を示すフローチャートである。
図8の掘削工数指標算出処理は、プロセッサ123が掘削支援プログラム122により実行する処理である。
【0059】
後述するステップS907から得られる掘削領域候補をRFとする。また、配管が埋設されている地下の3次元モデルにおいて、配管の中心軸を通り配管の長手方向に平行でかつ地面401に直交する配管断面を用いる。掘削領域候補(RF)についても、3次元領域ではなく、配管断面と平行な断面を適用する。この断面は、たとえば、後述する掘削領域1042のような断面となる。
【0060】
すなわち、プロセッサ123は、掘削領域候補RFから、掘削領域候補RFの辺の長さの和LKと、掘削領域候補RFの面積SKと、掘削領域候補RFの頂点の数NKとを求める(ステップS801)。
【0061】
プロセッサ123は、掘削工数指標Kを、下記式(2)により算出する。(ステップS802)
【0062】
K=LK+SK+NK-(LE-LC)・・・(2)
【0063】
プロセッサ123は、掘削工数指標Kを出力し、掘削工数指標算出処理を終了する(ステップS803)。
【0064】
なお、掘削工数指標Kは、掘削領域候補RFの辺の長さの和LK、掘削領域候補RFの面積SK、掘削領域候補RFの頂点の数NK、および(LE-LC)のうち少なくとも1つが含まれていればよい。
【0065】
たとえば、掘削領域候補RFの辺の長さの和LKが小さいほど、他の配管512およびその掘削領域バッファ513との干渉を回避するために掘削領域候補RFが地面401に至るまでの経路において折れ曲がる回数が少なくなり、地面401までの距離が短くなる。
【0066】
掘削領域候補RFの面積SKが小さいほど、他の配管512およびその掘削領域バッファ513との干渉を回避するために掘削領域候補RFが地面401に至るまでの経路において折れ曲がる回数が少なくなり、地面401までの距離が短くなる。また、掘削領域候補RFの面積SKが小さいほど、作業対象配管405の半径が短く、掘削領域バッファ615も小さいほど、掘削領域候補RFの面積SKが小さくなる。
【0067】
掘削領域候補RFの頂点の数NKが少ないほど、他の配管512およびその掘削領域バッファ513との干渉を回避するために掘削領域候補RFが地面401に至るまでの経路において折れ曲がる回数が少なくなる。
【0068】
(LE-LC)が大きいほど、掘削機器種別311の掘削機器を出入り口402から余裕をもって搬入出させることができ、掘削工数の削減に寄与する。このように、掘削領域候補RFの形状に関する指標(LK、SK、NK)や掘削機器種別311に関する指標(LE-LC)に基づいて、作業対象配管405から地面401までの掘削領域候補RFにおける掘削の工数を適切に掘削工数指標Kの計算により評価することができる。
【0069】
<掘削領域探索処理>
図9は、掘削領域探索処理の詳細な処理手順例を示すフローチャートである。掘削領域算出処理は、掘削領域616を探索する処理である。
【0070】
プロセッサ123は、ユーザの入力により読み込まれた作業図面400から、作業現場の出入り口402の幅LEを取得する(ステップS901)。
【0071】
プロセッサ123は、掘削機器データ132から、ユーザの入力により選択された掘削機器種別311の横幅312を取得し、LCとする(ステップS902)。
【0072】
LEは出入り口402の幅であり、LCは掘削機器種別311の横幅312である。プロセッサ123は、LE-LCを計算し、計算結果が0に等しいか小さい場合は、計算を止めて、出入り口402の幅LEより横幅312の小さい掘削機器種別311を選択するようユーザにアラートを出す(ステップS903)。
【0073】
プロセッサ123は、
図7の処理(S701~S706)によって掘削領域データ133に保存された掘削可能領域514を、掘削可能領域R
Kとして取得する(ステップS904)。
【0074】
プロセッサ123は、配管計測データ131から、ユーザの入力により読み込まれた作業図面400から求められる作業対象配管405の位置と一致する配管のエントリを特定し、特定した配管の領域を作業対象配管405の配置領域RTとする(ステップS905)。
【0075】
プロセッサ123は、掘削機器データ132から、ユーザの入力により選択された掘削機器種別311に対応する制御精度313を取得し(以下、制御精度a)、ステップS704と同様、制御精度313を用いて作業対象配管405の配置領域RTを作業対象配管405の補正後配置領域RT´に補正する(ステップS906)。
【0076】
なお、プロセッサ123は、配管計測データ131の計測精度219を用いて作業対象配管405の配置領域RTを作業対象配管405の補正後配置領域RT´に補正してもよい。これにより、位置誤差の範囲内で配管位置に相違があっても支障なく掘削ができるように掘削領域を決定することができる。
【0077】
プロセッサ123は、掘削可能領域RKに含まれる、補正後作業対象配管405の配置領域RT´から地面401までの掘削領域候補RFを生成する(ステップS907)。公知の経路探索方法やユーザ設定の手法を用いることにより実行する。
【0078】
その際、プロセッサ123は、制御精度aを用いることによってユーザが選択した掘削機器種別311の掘削機器での掘削が可能になるように掘削領域候補RFを求める。これにより、制御精度313の範囲内で意図した制御との相違があっても支障なく掘削ができるように掘削領域を決定することができる。
【0079】
プロセッサ123は、掘削工数指標算出処理を実行する(ステップS908)。具体的には、たとえば、プロセッサ123は、
図8に示したように、掘削領域候補R
Fを用いて掘削工数指標Kを計算する。
【0080】
プロセッサ123は、掘削工数指標Kが最小であれば、処理を止めて掘削領域候補RFを掘削領域として出力し、最小でない場合はS907から再度処理を実行する(ステップS909)。また、この際に掘削工数指標Kが最小であるかどうかを判断することを、勾配降下法、最急降下法などの公知の最適化手法やユーザ設定の最適化手法を用いることにより実行する。
【0081】
また、プロセッサ123は、作業対象配管405の補正後配置領域R
T´から地面401までの掘削領域候補R
Fを求める際には、3次元的に掘削禁止エリア(
図6の他の配管512、掘削領域バッファ513)を迂回するように求める。この迂回は計算幾何学のアルゴリズムのような公知の方法で実現できる。
【0082】
掘削工数指標Kは、
図8の処理(S801~S803)に掘削領域候補R
Fを入力することにより求められる。プロセッサ123は、掘削領域候補R
F生成、および、その掘削工数指標Kを最小にする掘削領域を求める最適化を、勾配降下法、最急降下法などの公知の最適化手法やユーザ設定の最適化手法を用いることにより実行する。プロセッサ123は、掘削領域を掘削領域データ133に保存する。これにより、掘削領域探索処理が終了する。
【0083】
<掘削領域情報表示画面>
図10は、掘削領域情報表示画面の一例を示す説明図である。掘削領域情報表示画面1000は、プロセッサ123が掘削支援プログラム122を実行することによりディスプレイ113に表示される。
【0084】
ユーザがマウス112の操作で掘削領域情報表示画面1000上のメニュバー1010のうちファイルをクリックすることで、作業図面400のファイルを参照することができる。また、当該クリックで、掘削支援装置100は、作業図面400を読み込む。
【0085】
作業図面400の読み込み直後では、掘削領域情報表示画面1000には、地
図1020が表示される。この表示に際しては、地図データ134と作業図面400とが使用される。具体的には、作業図面400上の位置を示す情報を用いて、その周辺の地図情報が地
図1020に表示される。また、地
図1020には、作業図面400上の位置および範囲とを用いて、作業図面400が示している位置および範囲が黒い四角図形1021で表示される。
【0086】
また、作業図面400の読み込み直後では、掘削領域情報表示画面1000には、配管の概略
図1040が3次元表示される。その際、掘削可能領域1041および掘削領域1042はまだ表示されない。これらは掘削機器種別311の選択後に表示される。
【0087】
また、同様に、掘削領域情報表示画面1000には、配管の概略断面
図1050、1060、1070が表示される。配管の概略断面
図1050、1060、1070も同様に、この時点では、まだ掘削可能領域1041および掘削領域1042は表示されない。
【0088】
ユーザは、マウス112の操作で、配管の概略断面
図1050、1060、1070の頂点1043、1045,1047を動かすことで、配管の概略断面
図1050、1060、1070の切断面位置を選択できる。また、そのときの切り目の位置は、配管の概略断面
図1050、1060、1070の輪郭線1044、1046、1048でも確認できる。
【0089】
掘削領域情報表示画面1000には、掘削機器種別311の数だけ、掘削機器種別選択チェックボックス1031、1032が表示される。ユーザは、マウス112を通じ、これらのうち、一つを選択できる。
【0090】
掘削機器種別選択の直後では、配管の概略
図1040には、掘削可能領域1041および掘削領域1042が色で表示される。同様に、配管の概略断面
図1050、1060、1070にも、掘削可能領域1041および掘削領域1042が表示される。
【0091】
<掘削支援シーケンス>
図11は、掘削支援装置による掘削支援処理を示すシーケンス図である。プロセッサ123は、掘削支援プログラム122により、配管計測データ131、掘削機器データ132および地図データ134をHDD140から読み込む。また。プロセッサ123は、掘削支援プログラム122により、掘削領域情報表示画面1000を表示する(ステップS1102)。
【0092】
ユーザが操作により、入出力部110から作業図面400が入力されると、プロセッサ123は、掘削支援プログラム122により、配管計測データ131および地図データ134を掘削領域情報表示画面1000に表示する(ステップS1103)。
【0093】
ユーザが掘削機器種別311を選択すると、プロセッサ123は、掘削支援プログラム122により、
図7の掘削可能領域生成処理を実行する。この際、掘削可能領域514が記憶部130の掘削領域データ133に書き込まれる。
【0094】
その後に、プロセッサ123は、掘削支援プログラム122により、ステップS801~S805を実行する。また、この際、掘削領域616が記憶部130の掘削領域データ133に書き込まれる(ステップS1104)。
【0095】
プロセッサ123は、掘削支援プログラム122により、掘削領域情報表示画面1000に掘削可能領域514を表示する。また、掘削領域情報表示画面1000に掘削領域616を表示する。
【0096】
このように、本実施例によれば、掘削作業の効率化を図ることができる。具体的には、たとえば、掘削作業の工数を最少化し、他の配管512との干渉を抑制することができる。
【0097】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。たとえば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、または置換をしてもよい。
【0098】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、たとえば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0099】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、IC(Integrated Circuit)カード、SDカード、DVD(Digital Versatile Disc)の記録媒体に格納することができる。
【0100】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0101】
100 掘削支援装置
131 配管計測データ
132 掘削機器データ
133 掘削領域データ
134 地図データ
219 計測精度
301 プロセッサ
311 掘削機器種別
313 制御精度
400 作業図面
401 地面
402 出入り口
404 作業範囲
405 作業対象配管
500 地中データ
510 算出範囲
512 他の配管
513,615 掘削領域バッファ
514 掘削可能領域
616 掘削領域
1000 掘削領域情報表示画面